説明

薄膜付き基板の製造方法

【課題】薄膜と基板における密着性、光学特性、生産性に優れ、各種機能を有する薄膜付きの基板を提供すること。
【解決手段】以下の工程(1)〜(3)を含む薄膜形成方法により薄膜を形成させる薄膜付き基板の製造方法であって、基板としてアクリル系樹脂(a)及び脂肪族ポリエステル系樹脂(b)を含む樹脂組成物の成形体を用いる薄膜付き基板の製造方法;
(1)円筒状支持体上に基板を据え付け、該円筒状支持体を回転させる工程、
(2)前記円筒状支持体の回転中に、該円筒状支持体の周辺に設けられたスパッター装置を操作して、前記基板に物質を堆積させる工程、
(3)前記基板に物質を堆積させる工程と同時に、前記円筒状支持体の周辺に沿って前記スパッター装置から離間して設けられたイオン源装置を操作して、反応性ガスのガスプラズマを形成し、前記基板に堆積した物質と前記反応性ガスとを反応させる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板と薄膜との密着性に優れた、薄膜付きのプラスチック基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電気・電子分野、自動車分野等で様々な機能性のプラスチック基板が用いられている。
その中の1つで例えば、液晶テレビに代表される薄型ディスプレイ市場においては、その市場規模の拡大に伴い、より鮮明な画像をより低価格で得たいという要求が高まっている。これを実現するために重要となるのが、各種光学フィルム、シートに代表される機能性プラスチック基板である。この機能性プラスチック基板においては、機能付与を目的として、プラスチック基板表面に様々な薄膜が形成され、これにより高度な機能(光学特性、導電性他)、生産性、耐久性等が実現される。
【0003】
このような基板への薄膜形成方法としては様々な方法が知られている。
【0004】
その中でも、特許文献1に開示される回転する円筒状の基板支持体の周辺に設けたスパッター装置とイオン源装置を利用して、物質の蒸着等の堆積と、堆積膜の酸化等の化学反応とを連続して交互に行う方法は、基板上に緻密な薄膜を再現性よく形成することが可能であり、様々な形状の基板にも均一な厚みの薄膜を形成できるので、好ましい薄膜形成方法である。
【0005】
しかしながら、この方法をプラスチック基板に適用した場合、薄膜と基板との間の密着性が不十分となり、薄膜が剥がれてしまう不具合がある。密着性不足を補うために、基板に表面処理を施したり、密着層を形成した後に薄膜を形成することも行われているが、このような方法では生産性に問題がある。
【0006】
【特許文献1】特許第2695514号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、回転する円筒状の基板支持体の周辺に設けたスパッター装置とイオン源装置を利用して、物質の堆積と、堆積膜の酸化等を連続して交互に行う方法を用いて、プラスチック基板に表面処理や密着層の形成を行うことなく、密着性の高い薄膜を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、回転する円筒状の基板支持体の周辺に設けたスパッター装置とイオン源装置を利用して、物質の堆積と、堆積膜の酸化等を連続して交互に行う方法について鋭意検討した結果、プラスチック基板としてアクリル系樹脂と脂肪族ポリエステル系樹脂を含む樹脂組成物の成形体を用いた場合には、予め表面処理や密着層の形成を行わなくても密着性の高い薄膜を形成することができることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の工程(1)〜(3)を含む薄膜形成方法により薄膜を形成させる薄膜付き基板の製造方法であって、基板としてアクリル系樹脂(a)及び脂肪族ポリエステル系樹脂(b)を含む樹脂組成物の成形体を用いる薄膜付き基板の製造方法;
(1)円筒状支持体上に基板を据え付け、該円筒状支持体を回転させる工程、
(2)前記円筒状支持体の回転中に、該円筒状支持体の周辺に設けられたスパッター装置を操作して、前記基板に物質を堆積させる工程、
(3)前記基板に物質を堆積させる工程と同時に、前記円筒状支持体の周辺に沿って前記スパッター装置から離間して設けられたイオン源装置を操作して、反応性ガスのガスプラズマを形成し、前記基板に堆積した物質と前記反応性ガスとを反応させる工程である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラスチック基板に予め表面処理や密着層の形成を行わなくても、回転する円筒状の基板支持体の周辺に設けたスパッター装置とイオン源装置を利用して、物質の堆積と、堆積膜の酸化等を連続して交互に行う方法により密着性に優れた薄膜を形成できるので、簡易な方法で各種機能(反射防止性、導電性、電磁波シールド性、近赤外線吸収性、紫外線カット性、高表面硬度性、ガスバリア性、防汚性等)を有する緻密な薄膜付きの基板を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0012】
本発明においては、プラスチック基板に、種々の機能を発現する薄膜が形成される。このような機能としては、反射防止性、導電性、電磁波シールド性、近赤外線吸収性、紫外線カット性、高表面硬度性、ガスバリア性、防汚性等が挙げられる。
【0013】
まず、薄膜形成方法について説明する。
【0014】
本発明における薄膜形成方法においては、円筒状の支持体に据え付けられた基板は、(ア)物質を堆積させるための少くとも1個のスパッター装置、及び(イ)基板に堆積した物質と反応させるための反応性ガスプラズマを形成する少なくとも1個のイオン源装置の下を交互に通過し、これにより薄膜が形成される。
【0015】
本発明において使用するスパッター装置の種類には限定はなく、例えば、平面磁電管やCNAG回転磁電管等を用いることができる。特に、特許文献1に開示されるスパッター装置を好ましく用いることができる。
スパッター装置により基板に堆積させる物質にも限定はないが金属が好ましく、例えば、珪素、タンタル、ニオブ、錫、インジウム、チタン等が挙げられる。
【0016】
本発明において使用するイオン源装置は、反応性ガスのプラズマを形成できるものであれば特に限定はなく、例えば、平面磁電管などを用いることができる。特に、特許文献1に開示されるイオン源装置を好ましく用いることができる。
また、反応性ガスの種類としては、例えば、酸素、窒素、水素又は気体状の炭素酸化物などが挙げられる。
【0017】
スパッター装置とイオン源装置は、円筒状支持体周辺に沿って、互いに離間するように設置され、物質の堆積のためのゾーンと反応のためのゾーンを完全に物理的に分離する。スパッター装置とイオン源装置とに同様の磁電管陰極を用いる場合には、スパッター装置の反応性ガス(たとえば酸素)の分圧を低くして物質の堆積を行い、他方イオン源装置の反応性ガスの分圧を高くしてで酸化等のための反応性の強いプラズマを発生させることが好ましい。
【0018】
本発明の薄膜形成方法において、基板及び各装置は、円筒状支持体の内側又は外側(又は双方)に設置できる。また、複数個のスパッター装置やイオン源装置を使用して、堆積速度を増加させたり、膜形成する材料の数を増やすこともできる。
各装置はチェンバ内に設けることができ、物質の堆積及び、酸化等の反応のために別々に、連続して又は同時に動作させることができる。例えば、Ta25及びSiO2の層を交互に迅速に形成するために、4つの装置を設けて、タンタルの堆積、酸化、珪素の堆積、酸化を順に実施することもできる。
【0019】
本発明の薄膜形成方法においては、スパッター装置の陰極の電力と基板の回転速度間の関係を調整することにより、基板がスパッター装置の下を通過するたびに、一層以上の原子層を堆積することができる。さらに、その他の材料の陰極を追加し、各陰極への電力を調整することにより、所望の割合で効果的に合金堆積膜を形成することができる。たとえば、陰極への相対電力を調整するだけで、広い面積にわたってNi及びCrの陰極から所望の割合でNiCr薄膜を形成できる。さらに、イオン源装置により物質蒸着膜を酸化させれば、超伝導材料として知られているバリウム銅イットリウムのような酸化物の薄膜を形成することも可能となる。
【0020】
次に、本発明における基板について説明する。
本発明において基板とは、平面状及び/又は曲面状の表面を有するフィルム、シート、板、或いは凹凸のある板、湾曲した板、管等の部材をいう。
【0021】
本発明において使用するプラスチック基板は、アクリル系樹脂(a)及び脂肪族ポリエステル系樹脂(b)を含む樹脂組成物を成形して得られる。
【0022】
本発明においてアクリル系樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体の重合体を含む高分子化合物をいう。
【0023】
本発明におけるアクリル系樹脂(a)の具体例としては、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルより選ばれる1種以上の単量体を重合したものが挙げられ、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、メタクリル酸メチルの単独重合体又は他の単量体との共重合体が好ましい。
【0024】
メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸アルキルエステル類;アクリル酸アルキルエステル類;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類等が挙げられる。
これらメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体の中でも、特にアクリル酸アルキルエステル類は、耐熱分解性に優れ、これを共重合させて得られるメタクリル系樹脂の成形加工時の流動性が高いため好ましい。
これらは一種又は二種以上組み合わせて使用することもできる。
【0025】
メタクリル酸メチルに、アクリル酸アルキルエステル類を共重合させる場合、アクリル酸アルキルエステル類の使用量は、耐熱分解性の観点から0.1重量%以上であることが好ましく、耐熱性の観点から15重量%以下であることが好ましい。0.2重量%以上14重量%以下であることがさらに好ましく、1重量%以上12重量%以下であることがとりわけ好ましい。
【0026】
アクリル酸アルキルエステル類としては、アクリル酸メチル及びアクリル酸エチルが、0.1〜1重量%といった少量メタクリル酸メチルと共重合させるだけでも前述の成形加工時の流動性の改良効果が著しく得られるため、好ましい。
【0027】
アクリル系樹脂(a)の重量平均分子量は、5万〜20万であることが好ましい。重量平均分子量は成形品の強度の観点から5万以上が好ましく、成形加工性、流動性の観点から20万以下が好ましい。さらに好ましい範囲は7万〜15万である。
また、本発明においてはアイソタクチックポリメタクリル酸エステルとシンジオタクチックポリメタクリル酸エステルを同時に用いることもできる。
【0028】
アクリル系樹脂(a)を製造する方法として、例えばキャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、アニオン重合等の一般に行われている重合方法を用いることができるが、光学用途としては微小な異物の混入はできるだけ避けることが好ましく、この観点からは懸濁剤や乳化剤を用いない塊状重合や溶液重合が望ましい。
溶液重合を行う場合には、単量体の混合物をトルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素の溶媒に溶解して調製した溶液を用いることができる。塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により生じる遊離ラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
【0029】
重合反応に用いられる開始剤としては、ラジカル重合において用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えば、アゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を用いることができる。
特に、90℃以上の高温下で重合を行わせる場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましい。具体的には、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等を挙げることができる。
これらの開始剤は、例えば、0.005〜5重量%の範囲で用いることが好ましい。
【0030】
重合反応に必要に応じて用いられる分子量調節剤としては、ラジカル重合において用いる任意のものが使用でき、例えばブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2−エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。
これらの分子量調節剤は、アクリル系樹脂(a)の重合度が好ましい範囲内に制御されるような濃度範囲で添加される。
【0031】
本発明の脂肪族ポリエステル系樹脂(b)としては、例えば、脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールの重縮合体を主たる構成成分とする重合体などが挙げられる。
なお、本発明において主たる構成成分であるとは、該構成成分が50重量%以上を占めることをいう。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体の具体例としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ3−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ酪酸、ポリ4−ヒドロキシ吉草酸、ポリ3−ヒドロキシヘキサン酸及びポリカプロラクトンなどが挙げられ、脂肪族多価カルボン酸と脂肪族多価アルコールの重縮合体を主たる構成成分とする重合体の具体例としては、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート及びポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。
これらの脂肪族ポリエステルは、単独ないし2種以上を用いることができる。
【0032】
これらの脂肪族ポリエステル系樹脂(b)の中でも、ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体が好ましく、特にポリ乳酸系樹脂が好ましく使用される。
本発明において、ポリ乳酸系樹脂とは、L−乳酸及び/又はD−乳酸を主たる構成成分とする重合体である。
【0033】
ポリ乳酸系樹脂において、L−乳酸単位と、D−乳酸単位の構成モル比は、L−体とD−体あわせて100%に対し、L体ないしD体いずれかが85%以上が好ましく、さらに好ましくは一方が90%以上であり、さらに好ましくは一方が94%以上の重合体である。本発明においてはL−乳酸を主体とするポリL乳酸とD−乳酸を主体とするポリD乳酸を同時に用いることもできる。
ポリ乳酸系樹脂は、L体ないしD体以外の乳酸誘導体モノマー又は、ラクチドと共重合可能な他成分を共重合していてもよく、このような成分としてはジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が挙げられる。
ポリ乳酸系樹脂は、直接脱水縮合、ラクチドの開環重合等公知の重合法で重合することができる。また必要に応じてポリイソシアネート等の結合剤を用いて、高分子量化することもできる。
ポリ乳酸系樹脂の好ましい重量平均分子量範囲は、機械的性質の観点から重量平均分子量が30,000以上であることが好ましく、加工性の観点から1000,000以下であることが好ましい。さらに好ましくは50,000〜500,000、最も好ましくは100,000〜280,000である。
【0034】
また、ポリ乳酸系樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、乳酸以外の他の共重合成分0.1〜30重量%を含んでいてもよい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類;グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類;グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−又はγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。これらの共重合成分は、単独ないし2種以上を用いることができる。
【0035】
脂肪族ポリエステル系樹脂(b)の製造方法としては、既知の重合方法を用いることができ、特にポリ乳酸系樹脂については、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを採用することができる。具体的には、辻秀人著「Polylactide」in Biopolymers Vol.4(Wiley−VCH 2002年刊)PP129−178や、特表平05−504731号公報の方法を好ましく用いることができる。
【0036】
本発明においては、耐加水分解抑制剤を加えることにより、脂肪族ポリエステル系樹脂(b)成分の加水分解による分子量低下を抑えることが可能となり、例えば強度低下等を抑えることができる。このような耐加水分解抑制剤としては、脂肪族ポリエステル樹脂(b)の末端官能基であるカルボン酸及び水酸基との反応性を有する化合物、例えばカルボジイミド化合物、イソアネート化合物、オキソゾリン系化合物などが挙げられる。特に、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む。)は、脂肪族ポリエステル樹脂(b)とよく溶融混練でき、3重量%以下といった少量添加で加水分解を抑制できるため好適である。
【0037】
分子中に1個以上のカルボジイミド基を有するカルボジイミド化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む。)としては、例えば、触媒として有機リン系化合物又は有機金属化合物を用い、各種ポリマーイソシアネートを約70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒中で脱炭酸縮合反応に付することにより合成することができるもの等が挙げられる。
ポリカルボジイミドとしては、種々の方法で製造したものを使用することができるが、基本的には従来のポリカルボジイミドの製造方法(米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.0rg.Chem.28, 2069−2075(1963)、Chemical Review l981,Vol.81No.4、p619−621)により製造したものを用いることができる。
ポリカルボジイミドを製造するための原料である有機ジイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートやこれらの混合物を挙げることができ、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートが挙げられる。
【0038】
耐加水分解抑制剤の好ましい量は、アクリル系樹脂(a)成分、脂肪族ポリエステル系樹脂(b)成分あわせて100重量部に対し、耐加水分解抑制剤を0.01〜50重量部であることが好ましい。耐加水分解抑制効果の発現の観点から0.01重量以上が好ましく、光学特性の観点から50重量部以下が好ましい。より好ましい範囲は、0.01〜30重量部の範囲であり、さらに好ましくは、0.1〜30重量部である。
【0039】
本発明においてアクリル系樹脂(a)と脂肪族ポリエステル系樹脂(b)を含む樹脂組成物におけるアクリル系樹脂(a)の割合(重量部)は、アクリル系樹脂(a)と脂肪族ポリエステル系樹脂(b)の合計量100重量部に対して、薄膜との密着性、光弾性係数、リタデーション、強度、耐熱性等の点から、0.1重量部以上99.9重量部以下であることが好ましく、20重量部以上95重量部以下であることがさらに好ましく、40重量部以上90重量部以下であることがとりわけ好ましい。
【0040】
本発明の基板は、その光弾性係数が−13×10-12/Pa以上12×10-12/Pa以下であることが好ましい。光弾性係数とは、外力による複屈折の変化の生じやすさを表す係数で、種種の文献に記載があり(例えば化学総説、No.39、1998(学会出版センター発行))、下式により定義される。
R[/Pa]=Δn/σR
ここで、σRは伸張応力[Pa]、Δnは応力付加時の複屈折であり、Δnは下式により定義される。
Δn=n1−n2
ここで、n1は伸張方向と平行な方向に偏光面を有する光に対する屈折率、n2は伸張方向と垂直な方向に偏光面を有する光に対する屈折率である。
光弾性係数の値がゼロに近いほど外力による複屈折の変化が小さいことを示しており、各用途において設計された複屈折の変化が小さいことを意味し、光学特性に優れることになる。
【0041】
基板の光弾性係数の値は−10×10-12(/Pa)以上9×10-12(/Pa)以下であることがさらに好ましく、−5×10-12(/Pa)以上5×10-12(/Pa)以下であることがとりわけ好ましい。光弾性係数をこのような値にコントロールすることは、アクリル系樹脂(a)と脂肪族ポエステル系樹脂(b)における両者の配合比により行うことができる。
【0042】
さらに、本発明の基板に使用する樹脂組成物には、効果を著しく損なわない範囲内で、各種目的に応じて任意の樹脂成分、添加剤を配合することができる。
任意に配合してもよい樹脂成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体等のスチレン系樹脂;ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、脂肪族以外のポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂;及びフェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられ、1種以上を用いることができる。
【0043】
添加剤としては、樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。無機充填剤、酸化鉄等の顔料;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の軟化剤・可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;難燃剤;帯電防止剤;有機繊維,ガラス繊維,炭素繊維,金属ウィスカ等の補強剤;着色剤、その他添加剤等が挙げられる。
【0044】
本発明の基板に使用される樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて、必要に応じて耐加水分解抑制剤や上記その他の成分を添加して溶融混練して製造することができる。
【0045】
本発明における基板の形態としてフィルムやシートが挙げられる。
基板の成形方法としては、特に制限されるものではなく、射出成形、シート成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形、インフレーション成形、押出成形、発泡成形、キャスト成形等、公知の方法で基板に成形することが可能であり、圧空成形、真空成形等の二次加工成形法も用いることができる。中でも、押出成形、キャスト成形が好ましく用いられる。
このとき例えば、Tダイ、円形ダイ等が装着された押出機等を用いて、未延伸のフィルムやシートを押出成形することができる。押出成形により成形品を得る場合は、事前に各種樹脂成分、添加剤等を溶融混練した材料を用いることもできるし、押出成形時に溶融混練を経て成形することもできる。また、各種樹脂成分に共通な溶媒、例えばクロロホルム、二塩化メチレン等の溶媒を用いて、各種樹脂成分を溶解後、キャスト乾燥固化することにより未延伸のフィルムやシートをキャスト成形もすることができる。
さらに必要に応じて、未延伸フィルムやシートを、機械的流れ方向に一軸延伸、機械的流れ方向に直行する方向に一軸延伸することができる。また、ロール延伸とテンター延伸の逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸することにより2軸延伸フィルム、シートを製造することもできる。
【0046】
次に、薄膜形成方法の具体例を概略図を用いて説明する。
図1及び図2は、それぞれ本発明において使用できる薄膜形成装置10の単純化模式的透視図及び横断面図である。装置10は真空加工室を形成するハウジング11を含み、図2に示される適する真空ポンプ系12に結合している。真空ポンプ系には、排気口13により真空室の排気を行うために低温ポンプ又はその他の適する真空ポンプ又はそれらの組合せが含まれる。
装置10には軸16のまわりを回転するように取付けられ、種々の形状及び寸法の基板15の取付に適合する円筒状の側面を有するケージ様ドラム14も含まれる。基板15は、ドラムの外周又は内周に沿って離隔して位置するスパッター装置に外面又は内面が面するようにドラム14上に直接取付けることができる。
【0047】
さらに、装置10においては、複数個の磁電管増大スパッター装置30及びイオン源装置30がドラム14の外周のまわりに位置する。一例においては、珪素をスパッター装置26を用いて蒸着し、タンタルをスパッター装置27を用いて蒸着し、イオン源装置28により酸素を基板に蒸着した物質と反応させて、物質層(単層又は多層)を酸化物に変換させる。このようにして、ドラム14を回転させ、スパッター装置及びイオン源装置26、27及び28を選択的に動作させることにより、物質及び/又はそれらの酸化物を実質的にいかなる望ましい組合せであっても選択的に基板上に形成しうる。
【0048】
たとえば、ドラム14を回転させ、連続的にイオン源装置28を動作させながらスパッター装置26及び27を連続的に動作させることにより、装置10は、基板上に数原子の厚さの珪素層を形成して珪素をSiO2に酸化し、次いで数原子の厚さのタンタル層を形成してタンタルをTa25に酸化させることができる。この順序は、精確に厚さの制御されたSiO2及びTa25の層の複合光学薄膜を形成するために、必要に応じて繰返したり、変えたりできる。
【0049】
この薄膜形成装置10の操作例について説明する。
最初に、基板を円筒状の支持体の周囲上に取付ける。次いで真空密閉室をたとえば1×10-6torrに排気し、選択された速度でドラムの回転を開始する。次に、スパッター装置を、入口マニホールドからパッターガス(代表的にはアルゴン)を流し入れ、電力供給源から陰極へ電力を供給することにより作動させる。物質の堆積を開始する前は、スパッター装置のシャッターを堆積が開始しないように閉じておく。スパッター装置の操作を開始すると同時にイオン源装置の操作を開始する。
【0050】
安定した選択された電力、ガス流及び圧力をスパッター装置及びイオン源装置に供給し、選択された堆積及び酸化速度を供給するために必要な回転速度で操作するドラムを用い、選択的にシャッターを開くことにより、望ましい堆積及び酸化の連続作業が行われる。
たとえば、金属1のスパッター装置、イオン源装置、金属2のスパッター装置及びイオン源装置の順で、ドラム14の周囲のまわりに4つのスパッター装置及びイオン源装置が位置すると仮定すると、シャッター開口の組み合わせにより以下の薄膜が得られる。
1.金属1の堆積及び酸化;金属2の堆積及び酸化→金属1酸化物の上に金属2酸化物(すなわち、金属1のスパッター装置のシャッター及びイオン源装置のシャッターを一緒に開き、次いで金属2のスパッター装置のシャッター及びイオン源装置のシャッターを一緒に開く)
2.金属1;金属2及び酸化→金属1の上に金属2酸化物
3.金属1及び酸化;金属2→金属1酸化物の上に金属2
4.金属2;金属1及び酸化→金属2の上に金属1酸化物
5.金属2及び酸化;金属1→金属2酸化物の上に金属1
6.金属1及び金属2同時(すなわち、金属1のスパッター装置及び金属2陰極のシャッターを同時に開く)→金属1及び金属2の混合物の層;
7.金属1及び金属2及び酸化(金属1、金属2のスパッター装置及びイオン源装置のシャッターを一緒に開く)→金属1及び金属2の混合酸化物。
【0051】
複数のスパッター装置を用いることにより、実質的に無限の組合せの種々の物質の多層薄膜が形成できる。
二種類以上の金属及び/又はその他の物質の混合物を形成する場合には、スパッター装置のシャッターは開いたまま保持し、スパッター装置の電力、圧力、開口寸法及び/又は数を調節することにより一方の金属の他の金属に対する割合を変化させることが好ましい。また、一般的には、層の厚さは、化合物、混合物のいずれであっても、関連するスパッター装置のシャッターを開いている時間の長さにより決定する。
【0052】
たとえば、基板の平面に垂直な方向に組成が連続して変化する薄膜、従って光学的性質が連続して変化する薄膜も形成できる。組成の分布は、スパッター装置に供給される電力を連続的又は周期的に変化させることにより、又はスパッター装置の開口又はシャッターの開放を連続的に変化させることにより得られる。
【実施例】
【0053】
次に実施例によって本発明を説明する。
次に、実施例で用いた評価法、プラスチック基板について説明する。
<1>評価方法
<1−1>視感度反射率の測定
以下の測定機を用いて行った。
測定機:島津製作所社製フォトダイオードアレイ分光光度計「MultiSpec−1500」
<1−2>全光線透過率の測定
以下の測定機を用いて行った。
測定機:村上色彩技術研究所社製積分球式分光透過率測定機「DOT−3C」
<1−3>表面抵抗値の測定
以下の測定機を用いて行った。
測定機:三菱化学社製接触式表面抵抗計「MCP−T360」
<1−4>薄膜の基板に対する密着性の測定
以下の規格に準じてテープ剥離試験を行い、薄膜が残った面積(剥離しなかった面積)の割合(%)を測定した。薄膜が全て残ったとき(剥離がなかったとき)は100%となり、全て剥離したときは0%となる。この値が大きいほど良好な結果と判断される。(規格では6段階に分類され、分類0の剥離なき状態は100%に相当し、分類6の剥離状態は0%に相当することになる。)
規格:JIS K5600−5−6
<1−5>基板に用いた樹脂の分子量
GPC[東ソー製GPC−8020、検出RI,カラム昭和電工製Shodex K−
805,801連結]を用い、溶媒はクロロホルム、測定温度40℃で、市販標準ポリス
チレン換算で重量平均分子量を求めた。
【0054】
<2>用いた原材料、フィルムの準備
<2−1>アクリル系樹脂(a)(メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体)(P−1)
メタクリル酸メチル89.2重量部、アクリル酸メチル5.8重量部、及びキシレン5重量部からなる単量体混合物に、1,1−ジ−t−ブチルパ−オキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン0.0294重量部、及びn−オクチルメルカプタン0.115重量部を添加し、均一に混合した。
この溶液を内容積10リットルの密閉式耐圧反応器に連続的に供給し、攪拌下に平均温度130℃、平均滞留時間2時間で重合した後、反応器に接続された貯槽に連続的に送り出し、一定条件下で揮発分を除去し、さらに押出機に連続的に溶融状態で移送し、押出機にてアクリル系樹脂(a)であるメタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体(P−1)のペレットを得た。
得られた共重合体(P−1)のアクリル酸メチル含量は6.0重量%、ASTM−D1238に準拠して測定した230℃、3.8キログラム荷重のメルトフローレート値は1.0g/10分であった。
<2−2>脂肪族ポリエステル系樹脂(b)(ポリ乳酸)(P−2)
特表平05−504731号公報に記載の方法に従って、錫系触媒を用いたラクチドの開環重合法により脂肪族ポリエステル系樹脂(b)であるポリ乳酸(L乳酸とD乳酸の共重合体)(P−2)のペレットを得た。
得られたポリ乳酸(P−2)の重量平均分子量は176,000であった。
<2−3>基板
テクノベル製Tダイ装着押し出し機(KZW15TW−25MG−NH型/幅150mmTダイ装着/リップ厚0.5mm)のホッパーに、P−1、P−2のそれぞれのペレットを表1、2に示す組成比でドライブレンドして投入した。押出機のシリンダー温度とTダイの温度を調整して押出成形を行い、延伸機で表1と2に示す延伸条件でフィルムを得た。
表1と2には、組成、成形条件、延伸条件、得られたフィルムの厚みを示した。
【0055】
[実施例1〜6及び比較例1]
以下の方法で反射防止被膜付きの基板を得た。
図1、図2に示す装置を用いて、スパッター装置1とスパッター装置2を適宜オン・オフしながら以下に示す条件で表1に示す配合のプラスチック基板(フィルム)上に光学多層膜を形成した。結果を表1に示す。
【0056】
スパッター装置1のターゲット :ニオブ
スパッター装置2のターゲット :シリコン
スパッター装置1のガス:アルゴン300sccm
スパッター装置2のガス:アルゴン300sccm
スパッター装置1の電力:7kW
スパッター装置2の電力:7kW
イオン源装置の動作:5アンペア、100sccm O2
膜形成後の焼成 :無し
【0057】
表1に示すように、各基板には、非常に高い全光線透過率と低い視感度反射率を与えるNb25の層とSiO2の層の複数層からなる薄い(100nm厚)膜が形成された。そして、基板としてアクリル系樹脂(a)と脂肪族ポリエステル系樹脂(b)を含む樹脂組成物の成形体を用いた実施例1〜6においては、薄膜の基板に対する密着性が、比較例であるアクリル系樹脂(a)単体の成形体を用いた場合より格段に優れていた。
このように、本発明では基板の表面処理や密着層の形成を行わなくても、良好な反射防止薄膜を直接基板に形成させることができた。
【0058】
【表1】

【0059】
[実施例7〜12及び比較例2]
以下の方法でITO膜付きの基板を得た。
図1、図2に示す装置を用いて、片方のスパッター装置は使用せずに以下の条件で表2に示す配合のプラスチック基板(フィルム)上にITOからなる光学被膜を形成した。結果を表2に示す。
【0060】
スパッター装置のターゲット :インジウム及び酸化錫
スパッター装置のガス : アルゴン 300sccm
スパッター装置の電力 : 7kW
イオン源装置の動作:5アンペア、100sccm O2
【0061】
各基板には、高い全光線透過率と低い表面抵抗値を有する薄い(100nm厚)ITO膜が形成された。該膜は1層から成っており、QWOT(Quarter Wave Optical Thickness;1/4波長光学的厚さ)は20nmであった。そして、基板としてアクリル系樹脂(a)と脂肪族ポリエステル系樹脂(b)を含む樹脂組成物の成形体を用いた実施例7〜12においては、薄膜の基板に対する密着性が、比較例であるアクリル系樹脂(a)単体の成形体用いた場合より格段に優れていた。
このように、本発明では基板の表面処理や密着層の形成を行わなくても、良好なITO膜を直接基板に形成させることができた。
【0062】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明により製造された薄膜付きの基板は、光学特性、生産性に優れ、かつ各種機能(反射防止性、導電性、電磁波シールド性、近赤外線吸収性、紫外線カット性、高表面硬度性、ガスバリア性、防汚性等)を有する該薄膜が密着性良く基板についているので、ブラウン管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、偏光板、プラズマディスプレイ、各種光学フィルター、その他有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、表面伝導電子放出型ディスプレイ(SED)、リアプロジェクションテレビ等の各種ディスプレイに貼付したり、、組み込んで使用されたり、メガネ、光導波路、各種窓材等として活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明において使用できる薄膜形成装置の簡単化模式的透視図である。
【図2】本発明において使用できる薄膜形成装置の簡単化模式的横断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 薄膜形成装置
11 ハウジング
12 真空ポンプシステム
13 排気ポート
14 ドラム
15 基板
26、27 スパッター装置
28 イオン源装置
30 スパッター装置又はイオン源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)〜(3)を含む薄膜形成方法により薄膜を形成させる薄膜付き基板の製造方法であって、基板としてアクリル系樹脂(a)及び脂肪族ポリエステル系樹脂(b)を含む樹脂組成物の成形体を用いる薄膜付き基板の製造方法;
(1)円筒状支持体上に基板を据え付け、該円筒状支持体を回転させる工程、
(2)前記円筒状支持体の回転中に、該円筒状支持体の周辺に設けられたスパッター装置を操作して、前記基板に物質を堆積させる工程、
(3)前記基板に物質を堆積させる工程と同時に、前記円筒状支持体の周辺に沿って前記スパッター装置から離間して設けられたイオン源装置を操作して、反応性ガスのガスプラズマを形成し、前記基板に堆積した物質と前記反応性ガスとを反応させる工程。
【請求項2】
前記薄膜が、酸化物、窒化物、水素化物、硫化物、含炭素化合物、金属、合金及びそれらの複合材料から選択される少なくとも1種を含む請求項1の製造方法。
【請求項3】
前記薄膜が、金属、金属酸化物、金属窒化物及びその他の反応した金属化合物から選択される少なくとも1種を含む請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、アクリル系樹脂(a)と脂肪族ポリエステル系樹脂(b)の合計量100重量部に対して、アクリル系樹脂(a)を0.1〜99.9重量部含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アクリル系樹脂(a)が、メタクリル酸メチルの単独重合体又はメタクリル酸メチルと他の単量体との共重合体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)が、ヒドロキシカルボン酸を主たる構成成分とする重合体である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記脂肪族ポリエステル系樹脂(b)が、ポリ乳酸系樹脂である請求項6に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−138267(P2008−138267A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327225(P2006−327225)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】