説明

薄膜基板、表示装置、加熱装置、薄膜基板加熱方法及び表示装置製造方法

【課題】絶縁性基板を発熱プレートに接触させて加熱すると共に、基板を導電性のホットプレートから剥離する際に、基板の剥離帯電を抑制する。
【解決手段】薄膜トランジスタ基板は、ガラス基板である絶縁性基板11と、絶縁性基板11の一方の面上で外縁に沿って内側に形成された導電膜12とで構成される。加熱装置30は、薄膜トランジスタ基板10を加熱する際に発熱する発熱プレート31と、薄膜トランジスタ基板10の導電膜12を吸着して固定させる吸着穴32と、薄膜トランジスタ基板10と接触し、発熱プレート31上に載置させると共に、発熱プレート31から剥離させる基板支持部33と、基板支持部33を昇降させる昇降機構34と、により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜基板、表示装置、加熱装置、薄膜基板加熱方法及び表示装置製造方法に係り、より詳しくは、薄膜が形成される薄膜基板及びその製造方法、その薄膜基板を使用した表示装置及びその製造方法、その薄膜基板を加熱するための加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置をはじめとする表示装置の薄膜トランジスタ基板、カラーフィルタ基板及び半導体集積回路の製造時に用いられるシリコン基板等に半導体回路等の薄膜を形成する工程には、様々な熱処理工程が含まれている。例えば、液晶表示装置の薄膜トランジスタ基板では、絶縁性のガラス基板に配線をフォトリソグラフィ工程を用いて形成する際のレジストのベーク工程や、配向膜を形成する際の焼成工程等がそれにあたる。このような熱処理工程において使用される加熱源には、加熱炉、ホットプレート、赤外線ランプ、温風などがあるが、このうちホットプレートを用いた場合には、熱伝達を原理とした加熱であるため、他の加熱源に比べ短時間に基板を昇温することが可能である。
【0003】
ホットプレートによる加熱では、通常、熱処理の対象となる基板は、ロボットアームがホットプレートまで搬送し、ホットプレート上に突き出している複数のピン状の基板支持部の上に載置する。引き続き基板支持部の昇降動作により基板は、ホットプレート上に静置される。ホットプレート上にて所定の加熱処理が行なわれると、基板は基板支持部の昇降動作によりホットプレート上から剥離され、ロボットアームにより次工程へと搬送される。
【0004】
ここで、ホットプレート上からの基板を剥離する際には、ガラスなどの絶縁性の基板と、主にアルミニウムなどの材料で構成される導電性のホットプレートとの剥離となるため、基板が帯電する現象が起こる(以下、「剥離帯電」という。)。このような剥離帯電は、直接的に基板に形成された配線の短絡の原因となるだけでなく、空気中の微粒子を吸いよせ、回路不具合の原因となり、特に液晶表示装置等の表示装置の基板の場合には、表示機能に影響を与える恐れがある。
【0005】
特許文献1には、ホットプレートを用いた加熱方法として、基板とホットプレートの間に所定の距離を設けて加熱する、一般にプロキシミティ加熱と呼ばれる方法が開示されている。特許文献2は、剥離帯電は基板とホットプレートとの接触面の面積に比例するため、基板支持部の昇降順序を2段階にし、1度に剥離する面積を小さくすることで、基板の剥離帯電を小さくすることについて開示している。また、特許文献3は、絶縁性基板の接触面に帯電しにくい材料のコーティングを施し、基板の剥離帯電を抑制することについて開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭63−079636号公報
【特許文献2】特開平11−251257号公報
【特許文献3】特開平06−212102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
剥離帯電は、絶縁体と導電体を剥離する際に生じる現象であるため、絶縁体と導電体を接触させなければ発生しない。そのため、上述の剥離帯電を抑制する方法はそれぞれ有効であると考えられる。しかしながら、特許文献1の方法では、基板の剥離帯電は発生しないものの、加熱原理が輻射熱および空気を介した熱伝導であるため加熱時間が増加し、これにより熱処理工程にかかる時間を増加させてしまう。例えば、20℃から200℃に加熱する場合、基板をホットプレートに接触させて加熱する場合は10秒程で昇温されるのに対し、基板とホットプレートの間に1mmの距離を設けたプロキシミティ加熱の場合は200秒程の時間を必要とする。
【0008】
また、特許文献2のように、基板を段階的に剥離した場合には、帯電量を減少させることはできるものの、充分に小さくすることはできないため、依然として空気中の微粒子を吸い寄せてしまう。また、特許文献3のように、基板をコーティングした場合には、帯電量を充分に小さくすることはできるものの、近年用いられている2m角以上の大型のガラス基板では、材料コストが増大する。また、液晶ディスプレイとしての表示機能を低下させないようにするため、コーティングの材料は透明度の高い材料しか使用できない。さらに、剥離時に基板下面のコーティングと基板支持部の先端が接触してコーティングが剥がれてしまう恐れもある。
【0009】
本発明は上述のような事情に鑑みてされたものであり、薄膜基板をホットプレートに接触させて加熱すると共に、薄膜基板を導電性のホットプレートから剥離する際に、薄膜基板の剥離帯電を抑制する薄膜基板、薄膜基板の加熱方法、加熱装置、その薄膜基板を用いた表示装置及びその表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の薄膜基板は、薄膜が形成される薄膜基板であって、絶縁性の基材からなる絶縁性基板と、前記絶縁性基板の一方の面上で、前記絶縁性基板の外縁に沿って内側に形成された導電膜である周囲導電膜と、を備える薄膜基板である。
【0011】
ここで、「薄膜基板」の語は、基板上に薄膜が形成される基板を意味し、「薄膜」には、薄膜トランジスタをはじめとする半導体回路だけでなく、液晶表示装置のカラーフィルタ等、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリングやインクジェット等により形成される薄膜すべてを含むものとする。また、「外縁に沿って」が意味する形状は、外縁に接する形状のほか、外縁から離れていて外縁に沿う形状を含むものとする。
【0012】
また、本発明の薄膜基板は、前記絶縁性基板の前記周囲導電膜の内側に、格子状に形成された導電膜である格子状導電膜を更に備えることができる。
【0013】
また、本発明の薄膜基板では、前記形成された格子状に形成された導電膜の領域が切断される、とすることができる。
【0014】
また、本発明の薄膜基板において、前記周囲導電膜及び前記格子状導電膜は、表示領域となる領域の周囲の領域に、光を遮る材料により形成されてもよい。
【0015】
また、本発明の薄膜基板は、前記絶縁性基板の前記周囲導電膜の内側に、前記周囲導電膜とは独立して複数箇所に形成された導電膜である独立導電膜を更に備えてもよい。
【0016】
また、本発明の薄膜基板において、前記周囲導電膜及び前記独立導電膜は、表示領域となる領域の周囲の領域に、光を遮る材料により形成されていてもよい。
【0017】
本発明の表示装置は、透明な絶縁性の基材からなる矩形状の絶縁性基板と、前記絶縁性基板の少なくとも一方の面の角部に形成された導電膜である周囲導電膜と、を備える表示装置である。
【0018】
また、本発明の表示装置において、前記周囲導電膜は、前記角部を含み前記絶縁性基板の外縁に沿って内側に形成される、とすることができる。
【0019】
本発明の加熱装置は、薄膜が形成される薄膜基板の加熱工程に用いられる加熱装置であって、前記薄膜基板の一方の面上で、前記薄膜基板の外縁に沿って内側に形成された導電膜の少なくとも一部を吸着する吸着部と、前記薄膜基板を加熱するために、高温となる発熱プレート部と、前記薄膜基板の前記導電膜と前記吸着部とを剥離し、前記薄膜基板を支持する基板支持部と、を備える加熱装置である。
【0020】
また、本発明の加熱装置において、前記薄膜基板の前記導電膜は、前記形成された導電膜の内側に、更に格子状に形成され、前記吸着部は、前記格子状に形成された導電膜の一部も更に吸着する、とすることができる。
【0021】
また、本発明の加熱装置において、前記薄膜基板の前記導電膜は、前記形成された導電膜の内側に、更にそれぞれ独立して複数箇所に形成され、前記吸着部は、前記複数箇所に形成された導電膜の一部も更に吸着する、ことができる。
【0022】
本発明の薄膜基板製造方法は、薄膜基板の一方の面上で、前記薄膜基板の外縁に沿って内側に形成された導電膜の一部を吸着し、発熱プレート部に前記薄膜基板を固定する吸着工程と、前記発熱プレート部が発熱することにより、前記吸着工程において固定された前記薄膜基板を加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後、前記吸着部による吸着を停止し、前記薄膜基板の前記導電膜と前記吸着部とを剥離し、前記薄膜基板を支持する剥離支持工程と、を備える薄膜基板製造方法である。
【0023】
また、本発明の薄膜基板製造方法は、前記吸着工程では、前記形成された導電膜の内側に、更に格子状に形成された導電膜の一部を更に吸着し、前記基板支持工程では、前記格子状に形成された導電膜を更に剥離する、とすることができる。
【0024】
また、本発明の薄膜基板製造方法は、前記吸着工程では、前記形成された導電膜の内側に、更にそれぞれ独立して複数箇所に形成された導電膜の一部を更に吸着し、前記基板支持工程では、前記複数箇所に形成された導電膜を更に剥離する、とすることができる。
【0025】
また、本発明の薄膜基板製造方法は、前記吸着工程において、前記導電膜に囲われた内側の領域は、前記発熱プレート部との間で密閉される、とすることができる。
【0026】
本発明の表示装置製造方法は、上述の薄膜基板製造方法のうち、いずれかの一つの薄膜基板製造方法により薄膜基板を加熱する加熱工程と、前記加熱工程を経て製造された前記薄膜基板を切断する切断工程と、を備える表示装置製造方法である。
【0027】
また、本発明の表示装置製造方法は、前記切断工程の前に、前記薄膜基板及び絶縁性の基材からなる他の薄膜基板とを、前記薄膜基板と前記他の薄膜基板との間に液晶組成物を封止して接着する接着工程を更に備える、とすることができる。
【0028】
また、本発明の表示装置製造方法は、前記切断工程においては、前記薄膜基板上の導電膜が形成された領域を切断する、とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】本発明の第1実施形態に係る表示装置用の薄膜トランジスタ基板の概略を示した平面図である。
【図1B】図1AのIB−IB線における断面図である。
【図2A】本発明の第1実施形態に係り、表示装置用の薄膜トランジスタ基板を加熱装置の発熱プレートに設置した状態を示す平面図である。
【図2B】図2AのIIB−IIB線における断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係り、薄膜トランジスタ基板と加熱装置とを使用した加熱方法を説明するための図である。
【図4A】薄膜トランジスタ基板が載置された発熱プレートの吸着穴付近の拡大断面を示す図である。
【図4B】図4Aと同じ視点の図であり、加熱された薄膜トランジスタ基板の様子を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係り、薄膜トランジスタ基板を用いた液晶表示装置の製造方法の概略を示す図である。
【図6】本発明の表示装置に係る液晶表示装置を示す図である。
【図7】本発明の比較例に係るカラーフィルタ基板及び加熱装置について示す図である。
【図8A】本発明の第2実施形態に係り、表示装置用のカラーフィルタ基板を加熱装置の発熱プレートに設置した状態を示す平面図である。
【図8B】図8AのVIIIB−VIIIB線における断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係り、カラーフィルタ基板を用いた液晶表示装置の製造方法の概略を示す図である。
【図10】切断後の液晶表示パネルの平面図である。
【図11】本発明の第2実施形態の変形例に係り、表示装置用のカラーフィルタ基板を加熱装置の発熱プレートに設置した状態を示す平面図である。
【図12】図11のカラーフィルタ基板の切断後のカラーフィルタ基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0031】
[第1実施形態]
図1A及び図1Bは、本発明の第1実施形態に係る表示装置用の薄膜トランジスタ基板10の概略を示した図である。図1Aは薄膜トランジスタ基板10の平面図であり、図1Bは、図1AのIB−IB線における断面図である。薄膜トランジスタ基板10は、ガラス基板である絶縁性基板11と、絶縁性基板11の一方の面上で外縁に沿って内側に形成された導電膜12とで構成されている。なお、導電膜12が形成された反対側の面には半導体回路を構成するための薄膜が形成されている。導電膜12の膜厚は0.01〜1mmである。導電膜12の材料は絶縁性基板11に成膜可能な導電性材料であり、例えば、ガラス基板に対しては、金、銀、銅、プラチナ、アルミニウム、チタン、クロム、タンタル、スズ、亜鉛、およびこれらを基材とした合金や、ポリアセチレン、ポリアズレン、ポリフェニレン、ポリフェニルアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレンなどの導電性ポリマーなどを用いることができる。これらの導電性材料は、スパッタリング、スピンコート、インクジェットなどの方法により、パターニング用のマスクを使用して絶縁性基板11の片面に成膜される。なお、絶縁性基板11の外周部に設けられた導電膜12の幅Bは、後述する半導体回路18が設けられた領域、すなわち液晶ディスプレイの表示領域の外に形成されるようにすることで、非透明な導電性材料を用いることができる。
【0032】
図2A及び図2Bは、薄膜トランジスタ基板10を、本発明の加熱装置の一実施形態である加熱装置30の発熱プレート31上に載置した際の状態を示した図である。図2Aは平面図であり、図2Bは、図2AのIIB−IIB線における断面図である。加熱装置30は、薄膜トランジスタ基板10を加熱する際に発熱する発熱プレート31と、内部に負圧を発生させることにより薄膜トランジスタ基板10の導電膜12を吸着して固定させる吸着穴32と、薄膜トランジスタ基板10と接触し、発熱プレート31上に載置させると共に、発熱プレート31から剥離させる基板支持部33と、基板支持部33を昇降させる昇降機構34と、により構成されている。
【0033】
発熱プレート31は、絶縁性基板11を加熱するための平坦な導電体の部材である。基板支持部33は、先端部が薄膜トランジスタ基板10に触れることにより、薄膜トランジスタ基板10を昇降させることができる複数のピン状の部材で構成され、先端部が発熱プレート31の上面よりも上及び下に移動できるように昇降機構34に取り付けられている。吸着穴32は薄膜トランジスタ基板10を吸着するために設けられ、薄膜トランジスタ基板10の導電膜12に接触するように配置され、発熱プレート31を貫通して設けられ、真空ポンプなどに接続されている。
【0034】
図3は、第1実施形態に係り、薄膜トランジスタ基板10と加熱装置30とを使用した加熱方法を説明するための図である。この図に示されるように、まず、基板支持部33の先端を発熱プレート31の上面よりも上に突き出した状態において(ステップS11)、導電膜12の設けられた面を下にした薄膜トランジスタ基板10はロボットアーム47により搬送され、基板支持部33上に載置される(ステップS12)。この際、基板支持部33は導電膜12とは接触しない位置に配置されているため、導電膜12が破損する恐れはない。薄膜トランジスタ基板10を基板支持部33に載置した後、昇降機構34が降下し、基板支持部33上の薄膜トランジスタ基板10が発熱プレート31上に載置され、吸着穴32が導電膜12の部分を吸着し、発熱プレート31が発熱することにより、薄膜トランジスタ基板10の加熱を開始する(ステップS13)。加熱の終了後、昇降機構34は再び上昇し、薄膜トランジスタ基板10を発熱プレート31から剥離させる(ステップS14)。
【0035】
図4A及び図4Bは、薄膜トランジスタ基板10が載置された発熱プレート31の吸着穴32付近の拡大断面を示す図である。図4Aに示されるように、薄膜トランジスタ基板10が発熱プレート31上に載置される際、導電膜12と発熱プレート31が接触し、導電膜12は吸着穴32に吸引され吸着される。その後、絶縁性基板11と発熱プレート31との間で、導電膜12により密閉された空気が熱膨張すると共に、絶縁性基板11自体も加熱されていくにつれて熱膨張するが、絶縁性基板11の導電膜12が形成された部分は吸着されて動かないために基板の面方向に伸びることができず、図4Bに示されるように、基板の中央部分が凸状となる。
【0036】
例えば、熱膨張率0.0000052/℃、200mm角、厚さ1mmのホウケイ酸ガラスでは、20℃から200℃まで加熱すると0.2mm程の熱膨張が生じ、基板の中央部分が4mm程ホットプレート面から離れ、凸状に変形する。この変形は絶縁性基板11の全長より十分小さいため、絶縁性基板11が破損する恐れはない。絶縁性基板11の中央部分が凸状に変形することにより、吸着穴32の存在しない導電膜12の内側部分は発熱プレート31と接触しないため、剥離した際に剥離帯電が生じることはない。
【0037】
また、薄膜トランジスタ基板10の導電膜12部分が吸着されていることにより、絶縁性基板11と発熱プレート31との間に生じた空間が密閉された状態となり、空間の温度が急速に上昇する。これにより、基板とホットプレートの間に所定の距離を設けるプロキシミティ加熱に比べ急速に基板に熱を伝えることができ、絶縁性基板11を短時間で加熱することが可能である。より詳細には、20℃から200℃に加熱する場合、ホットプレートに接触させて加熱する場合は10秒程で昇温できるのに対し、基板とホットプレートの間に1mmの距離を設けたプロキシミティ加熱の場合は200秒程の時間がかかり、本発明による加熱の場合には40秒程で昇温できる。
【0038】
図5は、薄膜トランジスタ基板10を用いた液晶表示装置の製造方法の概略を示す図である。一方の面の外縁に沿って内側に導電膜12が形成された薄膜トランジスタ基板10は、導電膜12のない他方の面に、薄膜が重ねられて形成されるトランジスタ等の半導体回路18が形成される(ステップS21)。この半導体回路18の形成の際に、焼成等により薄膜トランジスタ基板10に生じた残留応力の緩和等を目的として、薄膜トランジスタ基板10は加熱処理される(ステップS22)。加熱処理では、図3と同様に、薄膜トランジスタ基板10は、発熱プレート31上に、導電膜12が発熱プレート31に接触するように設置されて、加熱される。
【0039】
引き続き、半導体回路18の上層には配向膜14が形成され(ステップS23)、半導体回路18の形成時と同様の加熱処理が行われる(ステップS24)。加熱処理後、薄膜トランジスタ基板10と、上述と同様の工程でカラーフィルタの形成されたカラーフィルタ基板20とをそれぞれ常温まで冷却し、配向膜14及びカラーフィルタ基板20の配向膜24の形成された面を向い合わせて張り合わせ、その間に液晶17を封止する(ステップS25)。その後、重ね合わされた2つの基板の周囲の余分な部分が切断され(ステップS26)、液晶表示パネル25となる。この液晶表示パネル25に、回路基板や筐体等を取り付けることにより、図6に示されるような、液晶表示装置26が完成する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、薄膜基板の導電膜と導電性の発熱プレートとを接触させて加熱すると共に、接触していない絶縁性基板と発熱プレートで構成される空間を密閉しているため、加熱時間を短縮することができる。また、薄膜基板の導電膜と導電性の発熱プレートのみが接触されているため、剥離帯電を抑制することができる。
【0041】
[第2実施形態]
図7は、本発明の比較例に係るカラーフィルタ基板50及び加熱装置55について示す図である。カラーフィルタ基板50は、第1実施形態の薄膜トランジスタ基板10と同様に、ガラス基板である絶縁性基板51と、絶縁性基板51の一方の面上で外縁に沿って内側に形成された導電膜52とで構成されている。また、加熱装置55は、第1実施形態の加熱装置55と同様に、カラーフィルタ基板50を加熱する際に発熱する発熱プレート56と、内部に負圧を発生することにより薄膜トランジスタ基板10を吸着して固定させる吸着穴57と、により構成されている。
【0042】
カラーフィルタ基板50は、上述した第1実施形態の薄膜トランジスタ基板10と比較して、全長Lと厚さTの比が大きくなっている。カラーフィルタ基板50の絶縁性基板51の全長Lと厚さTの比が大きい場合、絶縁性基板51は自重により基板中央部付近が下にたわみ、発熱プレート56と接触してしまう。例えば、300mm角、厚さ1mm、ヤング率80MPa、ポワソン比0.2、密度2.5g/cmのガラス基板では、基板中央部が1.4mm程下にたわみ、導電膜52の厚さTを超えてしまうため、発熱プレート56と接触してしまう。絶縁性基板51と発熱プレート56が接触すると、剥離の際に剥離帯電が生じる恐れがある。
【0043】
図8A及び図8Bは、本発明の第2実施形態に係り、表示装置用のカラーフィルタ基板を加熱装置の発熱プレートに設置したの状態を示す図である。図8Aは平面図であり、図8Bは、図8AのVIIIB−VIIIB線における断面図である。カラーフィルタ基板60は、切断されて複数の画像表示装置のカラーフィルタ基板として用いられる、いわゆる多数個取り基板であり、ガラス基板である絶縁性基板61と、絶縁性基板61の一方の面上で外縁に沿って内側に形成された周囲導電膜62と、周囲導電膜62の内側に、格子状に形成された格子状導電膜63とで構成されている。
【0044】
加熱装置70は、カラーフィルタ基板60を加熱する際に発熱する発熱プレート71と、内部に負圧を発生させることによりカラーフィルタ基板60の周囲導電膜62及び格子状導電膜63を発熱プレート71に吸着して固定させる吸着穴72と、カラーフィルタ基板60と接触し、発熱プレート71上に載置させると共に、発熱プレート71から剥離させる基板支持部73と、基板支持部73を昇降させる昇降機構74と、により構成されている。上述した第1実施形態の加熱装置30と異なる点は、カラーフィルタ基板60の格子状導電膜63に対応する部分にも吸着穴72が設けられている点である。
【0045】
なお、格子状導電膜63を形成する導電性材料と、周囲導電膜62を形成する導電性材料は、必ずしも同じ材料を用いる必要はない。格子状導電膜63が周囲導電膜62の内側に格子状に設けられているため、その部分を吸着した場合、全長Lと厚さTの比が小さい基板を加熱しているのと同様に、絶縁性基板61が発熱プレート71と接触することがなく、すなわち、剥離した際にも剥離帯電が生じることがない。また、基板支持部73は周囲導電膜62及び格子状導電膜63とは接触しない位置に配置されていることで、周囲導電膜62及び格子状導電膜63が破損する恐れもない。
【0046】
図9は、図8A及び図8Bに示したカラーフィルタ基板60を用いた液晶表示装置の製造方法の概略を示す図である。周囲導電膜62及び格子状導電膜63が形成されたカラーフィルタ基板60は、周囲導電膜62及び格子状導電膜63のない他方の面に、カラーフィルタの薄膜64が形成される(ステップS31)。この薄膜64の形成の際に、焼成等によりカラーフィルタ基板60に生じた残留応力の緩和等を目的として、第1実施形態の図3と同様に、カラーフィルタ基板60は加熱処理される(ステップS32)。加熱処理では、カラーフィルタ基板60は、発熱プレート71上に、周囲導電膜62及び格子状導電膜63が発熱プレート71に接触するように設置されて、周囲導電膜62及び格子状導電膜63は吸着穴72(図8B)に吸引されることにより、カラーフィルタ基板60が固定され、加熱される。
【0047】
引き続き、周囲導電膜62及び格子状導電膜63の上層には配向膜65が形成され(ステップS33)、周囲導電膜62及び格子状導電膜63の形成時と同様の加熱処理が行われる(ステップS34)。加熱処理後、カラーフィルタ基板60と、上述と同様の工程で薄膜トランジスタの形成された薄膜トランジスタ基板69とをそれぞれ常温まで冷却し、配向膜65及び薄膜トランジスタ基板69の配向膜75の形成された面を向い合わせて張り合わせ、その間に液晶67を封止する(ステップS35)。その後、重ね合わされた2つの基板の周囲の余分な部分が切断され(ステップS36)、液晶表示パネル76となる。
【0048】
図10には、切断後の液晶表示パネル76の平面図が示されている。本実施形態では、切断される領域は周囲導電膜62及び格子状導電膜63が設けられた領域となっており、図10に示されるように、周囲導電膜62及び格子状導電膜63が設けられた領域は、液晶表示パネル76の表示領域77の外側であり、周囲導電膜62及び格子状導電膜63が非透明な物質により形成されても、表示に影響をあたえない。この液晶表示パネル76に、回路基板や筐体等を取り付けることにより、第1実施形態の図6と同様の液晶表示装置が完成する。
【0049】
図11は、本発明の第2実施形態の変形例に係り、表示装置用のカラーフィルタ基板80を加熱装置90の発熱プレート91に設置した状態を示す平面図である。カラーフィルタ基板80は、ガラス基板である絶縁性基板81と、絶縁性基板81の一方の面上で外縁に沿って内側に形成された周囲導電膜82と、周囲導電膜82の内側に、周囲導電膜82とは独立に、矩形状に複数形成された独立導電膜83とで構成されている。
【0050】
加熱装置90は、第1実施形態と同様に、カラーフィルタ基板80を加熱する際に発熱する発熱プレート91と、内部に負圧を発生することによりカラーフィルタ基板80の周囲導電膜82及び独立導電膜83を吸着して固定させる吸着穴92と、カラーフィルタ基板80と接触し、発熱プレート91上に載置させると共に、発熱プレート91から剥離させる基板支持部93と、基板支持部93を昇降させる不図示の昇降機構と、により構成されている。この変形例において、上述の第2実施形態と異なる点は、格子状導電膜63の代わりに複数の独立した独立導電膜83が形成されており、発熱プレート91上の吸着穴92は、周囲導電膜82及び独立導電膜83に対応する面に設けられている点である。
【0051】
図12には、図11のカラーフィルタ基板80の切断後のカラーフィルタ基板85が示されている。本実施形態において、切断は、独立導電膜83上を通過するように行われるため、切断後のカラーフィルタ基板85の四隅には、独立導電膜83が残る。なお、この場合においても、独立導電膜83は、表示領域87の外側に形成されているため、独立導電膜83が非透明な物質により形成されても、表示に影響をあたえない。
【0052】
この変形例のように構成した場合であっても、上述した第2実施形態のカラーフィルタ基板60と同様に、独立導電膜83が周囲導電膜82の内側に設けられているため、その部分を吸着した場合、全長Lと厚さTの比が小さい基板を加熱しているのと同様に、絶縁性基板81が発熱プレート91と接触せず、すなわち、剥離した際にも剥離帯電が生じることがない。また、基板支持部93は周囲導電膜82及び独立導電膜83とは接触しない位置に配置されていることで、周囲導電膜82及び独立導電膜83が破損する恐れもない。また、第2実施形態のカラーフィルタ基板60と比較して、導電膜を形成する面積が小さいため、導電膜を形成するための材料を削減することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、薄膜基板の導電膜と導電性の発熱プレートとを接触させて加熱すると共に、接触していない絶縁性基板と発熱プレートで構成される空間を密閉するため、加熱時間を短縮することができる。また、薄膜基板の導電膜と導電性の発熱プレートのみが接触されているため、剥離帯電を抑制することができる。また、絶縁性基板が大きい場合であっても、絶縁性基板が直接発熱プレートに接触することがないため、剥離帯電を抑制することができる。
【0054】
なお、上述の各実施形態においては、薄膜基板を適用する表示装置を液晶表示装置としたが、薄膜基板を用いる有機EL表示装置等その他の表示装置であってもよい。
【0055】
また、本発明の絶縁性基板をガラス基板としたが、半導体ウェハ等のガラス基板以外の絶縁性基板であってもよく、表示装置以外の装置に用いられるものでもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 薄膜トランジスタ基板、11 絶縁性基板、12 導電膜、14 配向膜、17 液晶、18 半導体回路、20 カラーフィルタ基板、24 配向膜、25 液晶表示パネル、26 液晶表示装置、30 加熱装置、31 発熱プレート、32 吸着穴、33 基板支持部、34 昇降機構、47 ロボットアーム、50 カラーフィルタ基板、51 絶縁性基板、52 導電膜、55 加熱装置、56 発熱プレート、57 吸着穴、60 カラーフィルタ基板、61 絶縁性基板、62 周囲導電膜、63 格子状導電膜、64 薄膜、65 配向膜、67 液晶、69 薄膜トランジスタ基板、70 加熱装置、71 発熱プレート、72 吸着穴、73 基板支持部、74 昇降機構、75 配向膜、76 液晶表示パネル、77 表示領域、80 カラーフィルタ基板、81 絶縁性基板、82 周囲導電膜、83 独立導電膜、85 カラーフィルタ基板、87 表示領域、90 加熱装置、91 発熱プレート、92 吸着穴、93 基板支持部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜が形成される薄膜基板であって、
絶縁性の基材からなる絶縁性基板と、
前記絶縁性基板の一方の面上で、前記絶縁性基板の外縁に沿って内側に形成された導電膜である周囲導電膜と、を備える薄膜基板。
【請求項2】
前記絶縁性基板の前記周囲導電膜の内側に、格子状に形成された導電膜である格子状導電膜を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜基板。
【請求項3】
前記形成された格子状に形成された導電膜の領域が切断される、ことを特徴とする請求項2に記載の薄膜基板。
【請求項4】
前記周囲導電膜及び前記格子状導電膜は、表示領域となる領域の周囲の領域に、光を遮る材料により形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の薄膜基板。
【請求項5】
前記絶縁性基板の前記周囲導電膜の内側に、前記周囲導電膜とは独立して複数箇所に形成された導電膜である独立導電膜を更に備える、ことを特徴とする請求項1に記載の薄膜基板。
【請求項6】
前記周囲導電膜及び前記独立導電膜は、表示領域となる領域の周囲の領域に、光を遮る材料により形成されている、ことを特徴とする請求項5に記載の薄膜基板。
【請求項7】
透明な絶縁性の基材からなる矩形状の絶縁性基板と、
前記絶縁性基板の少なくとも一方の面の角部に形成された導電膜である周囲導電膜と、を備える表示装置。
【請求項8】
前記周囲導電膜は、前記角部を含み前記絶縁性基板の外縁に沿って内側に形成されている、ことを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
薄膜が形成される薄膜基板の加熱工程に用いられる加熱装置であって、
前記薄膜基板の一方の面上で、前記薄膜基板の外縁に沿って内側に形成された導電膜の少なくとも一部を吸着する吸着部と、
前記薄膜基板を加熱するために、高温となる発熱プレート部と、
前記薄膜基板の前記導電膜と前記吸着部とを剥離し、前記薄膜基板を支持する基板支持部と、を備える加熱装置。
【請求項10】
前記薄膜基板の前記導電膜は、前記形成された導電膜の内側に、更に格子状に形成され、
前記吸着部は、前記格子状に形成された導電膜の一部も更に吸着する、ことを特徴とする請求項9に記載の加熱装置。
【請求項11】
前記薄膜基板の前記導電膜は、前記形成された導電膜の内側に、更にそれぞれ独立して複数箇所に形成され、
前記吸着部は、前記複数箇所に形成された導電膜の一部も更に吸着する、ことを特徴とする請求項9に記載の加熱装置。
【請求項12】
薄膜基板の一方の面上で、前記薄膜基板の外縁に沿って内側に形成された導電膜の一部を吸着し、発熱プレート部に前記薄膜基板を固定する吸着工程と、
前記発熱プレート部が発熱することにより、前記吸着工程において固定された前記薄膜基板を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程の後、前記吸着部による吸着を停止し、前記薄膜基板の前記導電膜と前記吸着部とを剥離し、前記薄膜基板を支持する剥離支持工程と、を備える薄膜基板製造方法。
【請求項13】
前記吸着工程では、前記形成された導電膜の内側に、更に格子状に形成された導電膜の一部を更に吸着し、
前記基板支持工程では、前記格子状に形成された導電膜を更に剥離する、ことを特徴とする請求項12に記載の薄膜基板製造方法。
【請求項14】
前記吸着工程では、前記形成された導電膜の内側に、更にそれぞれ独立して複数箇所に形成された導電膜の一部を更に吸着し、
前記基板支持工程では、前記複数箇所に形成された導電膜を更に剥離する、ことを特徴とする請求項12に記載の薄膜基板製造方法。
【請求項15】
前記吸着工程において、前記導電膜に囲われた内側の領域は、前記発熱プレート部との間で密閉される、ことを特徴とする請求項12に記載の薄膜基板製造方法。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれかの一つの薄膜基板加熱方法により薄膜基板を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程を経て製造された前記薄膜基板を切断する切断工程と、を備える表示装置製造方法。
【請求項17】
前記切断工程の前に、前記薄膜基板及び絶縁性の基材からなる他の薄膜基板とを、前記薄膜基板と前記他の薄膜基板との間に液晶組成物を封止して接着する接着工程を更に備える、ことを特徴とする請求項16に記載の表示装置製造方法。
【請求項18】
前記切断工程においては、前記薄膜基板上の導電膜が形成された領域を切断する、ことを特徴とする請求項16に記載の表示装置製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−173363(P2011−173363A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40087(P2010−40087)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】