説明

薄膜形成方法、デバイスの製造方法、ステージ装置

【課題】 液滴吐出法を用いた薄膜形成工程において、基板をステージに吸着して乾燥処理を行なう場合に生じる乾燥むらの発生を防止する。
【解決手段】 本発明のステージ装置は、基板11上に配置された液滴を乾燥する際に基板11を吸着保持するために用いられるステージ装置である。本発明のステージ装置は、基板11を吸着するための吸着穴4aが形成された載置台4を備え、吸着穴4aが基板11の薄膜形成領域F以外の領域に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成方法、デバイスの製造方法、ステージ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーフィルタを始めとする機能層の形成方法として、インクジェット装置を用いる方法が提案されている。当該インクジェット装置においては、例えば、赤、緑、青の各色素の液滴が充填されたインクジェットヘッドをスキャンしながら、ガラス基板上に各液滴を吐出することにより、容易にカラーフィルタを製造することが可能となる。また、インクジェット装置及びインクジェット方法の応用範囲は、カラーフィルタの製造工程だけでなく、金属材料を含む液体を所定パターンで描画して金属配線を形成する工程や、発光材料や正孔注入材料を含む液体材料を描画して画素を形成する工程においても利用可能である。即ち、インクジェット装置は、分散液や溶液に対して分散又は溶解する機能性材料であれば各種機能層の製造工程に適用可能である。
ところで、インクジェット装置を用いた成膜工程においては、膜ムラの防止や着弾精度を向上するために、液体材料の描画工程や乾燥工程は基板をステージ上に吸着して撓みのない状態で行なう。しかし、このように基板を真空吸着すると、液体材料を乾燥させたときに、真空吸着している部分としていない部分との間で乾燥膜の膜厚に不均一性が生じることがある。この原因としては、基板を真空吸着したときの基板の局所的な撓み等が考えられる。特許文献1では、この対策として、基板とステージの間に中が空洞で空気を送り込める構造の軟質ゴムを挟み、導入空気を調節することによって、吸着に伴う基板の撓みを補正する方法を提案している。
【特許文献1】特開2000−223388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この方法では、基板に塗布する溶剤が基板の裏面に回り込むことでゴムの溶出が発生し、歩留まりの低下を招く虞がある。また、均一な薄膜を形成するために、導入空気の温度を管理する必要があり制御が煩雑になる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、液滴吐出法を用いた薄膜形成工程において、基板をステージに吸着した状態で乾燥処理を行なう場合に生じる乾燥ムラの発生を防止することのできる薄膜形成方法、デバイスの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、このような薄膜形成工程に用いて好適なステージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するため、本発明の薄膜形成方法は、機能性材料を含む液体材料を液滴として基板上に配置し、該液滴を乾燥して膜化する工程を含む薄膜の形成方法であって、前記液滴の乾燥工程が、前記基板の前記液滴の配置領域以外の領域を吸着して前記基板をステージ装置に保持した状態で行なわれることを特徴とする。
本方法では、基板を液滴の配置領域(即ち、薄膜の形成領域)を避けた位置で吸着するので、仮に吸着位置が局所的に撓んだとしても、これによって薄膜の乾燥状態にムラが生じることはない。
【0005】
本発明の薄膜形成方法では、前記ステージ装置が概ね平坦面に形成された載置台を備え、該載置台の表面に前記基板を吸着するための複数の吸着穴が設けられており、前記液滴の乾燥工程が、前記基板を前記載置台の吸着穴に吸着させた状態で行なわれるものとすることができる。
本方法では、基板を面で支持する構成を採用しているので載置台の構造が簡単になり、又、従来のステージ装置の吸着位置を変更するのみで本発明に対応することができる。
【0006】
本発明の薄膜形成方法では、前記ステージ装置が、先端に吸着穴が形成された複数の突起状の支持ピンが設けられた載置台を備え、前記液滴の乾燥工程が、前記基板を前記支持ピンの吸着穴に吸着させた状態で行なわれるものとすることができる。
この方法では、基板の裏面側を載置台から概ね浮かした状態で保持できるので、基板を表面側及び裏面側の両面側から均一に加熱できるようになる。よって、前述のように基板を面で支持する構成に比べて、基板の温度分布が少なくなり、乾燥ムラをより少なくすることができる。
【0007】
本発明の薄膜形成方法では、前記載置台の支持ピンと支持ピンとの間に、前記基板の裏面側に向けて気体を噴出する気体噴出口が設けられており、前記液滴の乾燥工程が、前記気体噴出口から前記基板の裏面側に気体を吹き付け、該気体の押圧力によって前記基板の前記支持ピンによって支持されない部分を支持しながら行なわれるものとすることができる。
前述のように支持ピンによって基板を支持する構成では、支持ピンによって支持されない部分の基板が撓み、この撓んだ部分に膜厚ムラが生じる場合がある。本方法では、この支持ピンに支持されない部分を気体の噴射圧力によって浮かせるので、このような膜厚ムラが生じることはない。
【0008】
本発明の薄膜形成方法では、前記気体の温度が前記乾燥工程における乾燥温度と略同じ温度に設定されているものとすることができる。
こうすることで、基板を表面側及び裏面側の両面側から均一に加熱することができる。
【0009】
本発明のデバイスの製造方法は、薄膜の形成工程を含むデバイスの製造方法であって、前記薄膜が前述した本発明の薄膜形成方法により形成されたことを特徴とする。
これにより、デバイスの高品質化を図ることができる。
【0010】
本発明のステージ装置は、機能性材料を含む液体材料を液滴として基板上に配置し、該液滴を乾燥して膜化する工程を含む薄膜の形成工程において、前記基板上に配置された前記液滴を乾燥する際に前記基板を吸着保持するために用いられるステージ装置であって、前記基板を吸着するための吸着穴が形成された載置台を備え、前記吸着穴が前記基板の薄膜形成領域以外の領域に配置されていることを特徴とする。
このステージ装置では、基板の吸着位置が液滴の配置領域(即ち、薄膜形成領域)を避ける位置に設けられているので、乾燥ムラのない均一な膜を形成することができる。
【0011】
本発明のステージ装置では、前記載置台が略平坦面に形成されているものとすることができる。
本発明では、基板を面で支持する構成を採用しているので載置台の構造が簡単になり、又、従来のステージ装置の吸着位置を変更するのみで本発明に対応することができる。
【0012】
本発明のステージ装置では、前記載置台に、先端に前記吸着穴が形成された複数の突起状の支持ピンが設けられ、該複数の支持ピンによって前記基板を支持するように構成されたものとすることができる。
本発明では、基板の裏面側を載置台から概ね浮かした状態で保持できるので、基板を表面側及び裏面側の両面側から均一に加熱できるようになる。よって、前述のように基板を面で支持する構成に比べて、基板の温度分布が少なくなり、乾燥ムラをより少なくすることができる。
【0013】
本発明のステージ装置では、前記載置台の前記支持ピンと支持ピンとの間に、前記基板の裏面側に向けて気体を噴出する気体噴出口が設けられているものとすることができる。
前述のように支持ピンによって基板を支持する構成では、支持ピンによって支持されない部分の基板が撓み、この撓んだ部分に膜厚ムラが生じる場合がある。本発明では、この支持ピンに支持されない部分を気体の噴射圧力によって浮かせるので、このような膜厚ムラが生じることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
図1は、本発明の薄膜形成方法に用いる液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。本発明の薄膜形成方法は、機能性材料を含む液体材料を液滴として基板11上に配置し、該液滴を乾燥して膜化することによって薄膜を形成するものである。本実施形態では、この液滴の配置工程(液滴吐出工程)を、図1の液滴吐出装置100を用いて行なう。
【0015】
図1に示すように、液滴吐出装置100は、液滴吐出ヘッド10、液滴吐出ヘッド10をX方向に駆動するためのX方向ガイド軸2、X方向ガイド軸2を回転させるX方向駆動モータ3、基板11を載置するための載置台4、載置台4をY方向に駆動するためのY方向ガイド軸5、Y方向ガイド軸5を回転させるY方向駆動モータ6、クリーニング機構部14、及びこれらを統括的に制御する制御装置8等を備えている。X方向ガイド軸2及びY方向ガイド軸5はそれぞれ、基台7上に固定されている。なお、図1では、液滴吐出ヘッド10は、基板11の進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド10の角度を調整し、基板11の進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド10の角度を調整することで、ノズル間のピッチを調節することができる。また、基板11とノズル面との距離を任意に調節できるようにしてもよい。
【0016】
液滴吐出ヘッド10は、機能性材料を含有する分散液からなる液体材料をノズル(吐出口)から吐出するものであり、X方向ガイド軸2に固定されている。ここで、機能性材料とは、膜化したときに所定の機能を発揮する材料の総称であり、係る機能としては、電気・電子的機能(導電性、絶縁性、圧電性、焦電性、誘電性等)、光学的機能(光選択吸収、反射性、偏光性、光選択透過性、非線形光学性、蛍光あるいはリン光等のルミネッセンス、フォトクロミック性等)、磁気的機能(硬磁性、軟磁性、非磁性、透磁性等)、化学的機能(吸着性、脱着性、触媒性、吸水性、イオン伝導性、酸化還元性、電気化学特性、エレクトロクロミック性等)、機械的機能(耐摩耗性等)、熱的機能(伝熱性、断熱性、赤外線放射性等)、生体的機能(生体適合性、抗血栓性等)等の種々の機能がある。本実施形態では、主にカラーフィルタの顔料や有機EL材料等の表示デバイス用の材料を想定しているが、これに限定されない。
【0017】
X方向駆動モータ3は、ステッピングモータ等であり、制御装置8からX軸方向の駆動パルス信号が供給されると、X方向ガイド軸2を回転させる。X方向ガイド軸2の回転により、液滴吐出ヘッド10が基台7に対してX軸方向に移動する。
【0018】
液体吐出方式としては、圧電体素子であるピエゾ素子を用いてインクを吐出させるピエゾ方式、液体材料を加熱し発生した泡(バブル)により液体材料を吐出させるバブル方式など、公知の様々な技術を適用できる。このうち、ピエゾ方式は、液体材料に熱を加えないため、材料の組成等に影響を与えないという利点を有する。なお、本例では、液体材料選択の自由度の高さ、及び液滴の制御性の良さの点から上記ピエゾ方式を用いる。
【0019】
載置台4はY方向ガイド軸5に固定され、Y方向ガイド軸5には、Y方向駆動モータ6、16が接続されている。この載置台4には、真空吸着装置等の公知の吸着機構が設けられており、基板11を所定の位置に位置決めした状態で固定できるようになっている。Y方向駆動モータ6、16は、ステッピングモータ等であり、制御装置8からY軸方向の駆動パルス信号が供給されると、Y方向ガイド軸5を回転させる。Y方向ガイド軸5の回転により、載置台4が基台7に対してY軸方向に移動する。
クリーニング機構部14は、液滴吐出ヘッド10をクリーニングし、ノズルの目詰まりなどを防ぐものである。クリーニング機構部14は、上記クリーニング時において、Y方向の駆動モータ16によってY方向ガイド軸5に沿って移動する。
【0020】
このように構成された液滴吐出装置100は、サーマルチャンバ等の乾燥装置の中に設置されており、載置台4に基板を保持したまま、液滴の配置工程と液滴の乾燥工程とを連続して行なうことができるようになっている。すなわち、本実施形態では、液滴吐出装置100は本発明のステージ装置を兼ねるものとなっている。
【0021】
次に、本実施形態の液滴吐出装置100による薄膜形成方法について説明する。
本実施形態の液滴吐出装置100では、まず、基板11を所定の位置に位置決めした状態で載置台4に吸着し、固定する。次に、液滴吐出ヘッド10から液体材料を吐出しながら、X方向駆動モータ3及び/又はY方向駆動モータ6を介して、基板11と液滴吐出ヘッド10とを相対移動させることにより、基板11上に液体材料を配置する。液滴吐出ヘッド10の各ノズルからの液滴の吐出量は、制御装置8から上記ピエゾ素子に供給される電圧によって制御される。また、基板11上に配置される液滴のピッチは、上記相対移動の速度、及び液滴吐出ヘッド10からの吐出周波数(ピエゾ素子への駆動電圧の周波数)によって制御される。また、基板11上に液滴を開始する位置は、上記相対移動の方向、及び上記相対移動時における液滴吐出ヘッド10からの液滴の吐出開始のタイミング制御等によって制御される。次に、基板11を載置台4に吸着させたまま、サーマルチャンバ(乾燥装置)内で乾燥し、表面に配置された液体材料を膜化する。サーマルチャンバ内の温度は、基板11に温度分布が生じないように管理されるものとする。
以上により、基板11上に機能性材料からなる薄膜のパターンが形成される。
【0022】
ところで、本実施形態では、基板11を載置台4に吸着させた状態で乾燥工程を行なうため、基板11の吸着された部分と吸着されない部分との間で温度分布が生じ、基板面内に乾燥ムラが生じることがある。そこで、本実施形態では、載置台4による基板11の吸着位置を薄膜の形成領域、即ち、液滴の配置領域に対して平面的に重ならない領域に設置し、基板11を載置台4に設置する際に、基板11の吸着位置と薄膜の形成領域とが重ならないように正確に位置決めするようにしている。
【0023】
図2は、載置台4の構成の一例を示す断面模式図(図2(a))及び平面模式図(図2(b))図である。本例では、薄膜形成領域Fに形成される膜としてカラーフィルタや有機EL発光層等を想定しており、薄膜形成領域Fは画素配列に対応して基板11上にマトリクス状に配置されている。図2の載置台4は表面が略平坦面に形成されており、この平坦面全体で基板11を支持する構造となっている。この載置台4の表面には、薄膜形成領域Fの配置されない領域、即ち、非画素領域に対応する位置に前述の吸着穴4aが格子状に多数配置されている。
【0024】
図3は、載置台4の他の構成例を示す図である。本例の載置台において図2の載置台4と異なる点は、載置台4の表面に、先端に吸着穴4aが形成された多数の突起状の支持ピン4bが設けられ、基板11がこの支持ピン4bの先端に吸着保持されている点のみである。吸着穴4a(即ち、支持ピン4bの位置)と薄膜形成領域Fとの位置関係は前述の図2と同様である。この構成では、載置台4に突起構造を形成するので構造は複雑になるが、基板11の裏面側を載置台4から概ね浮かした状態で保持できるので、基板11を表面側及び裏面側の両面側から均一に加熱できるようになる。よって、図2のように基板11を面で支持する構成に比べて、基板11の温度分布が少なくなり、乾燥ムラをより少なくすることができる。なお、この構造では、基板11になるべく温度分布を生じさせないようにするという観点からは、支持ピン4bと基板11との接触面積はなるべく少ない方が好ましいが、このように接触面積を小さくしてしまうと、液滴の配置工程(描画工程)において基板11が設置位置からずれてしまうことがある。このため、本構成においては、このようなずれを防止するために、支持ピン4bの先端にゴム等の滑り止めを設けることが好ましい。この場合、滑り止めの材料としては耐溶剤性を有するものを用いる。
【0025】
図4は、載置台4の更に他の構成例を示す図である。本例の載置台において図3の載置台と異なる点は、支持ピン4bと支持ピン4bとの間に、基板11の裏面側に向けて気体を噴出する気体噴出口4cが設けられている点のみである。図4において気体噴出口4cは各薄膜形成領域Fの中央部、即ち、格子状に配置された4つの支持ピン4bの中央部に配置されている。前述のように支持ピン4bによって基板11を支持する構成では、支持ピン4bによって支持されない部分の基板が撓み、この撓んだ部分に膜厚ムラが生じる場合がある。本例では、この支持ピン4bに支持されない部分を気体の噴射圧力によって浮かせるので、このような膜厚ムラが生じることはない。なお、この例では、気体噴出口4cから噴射する気体の温度は、乾燥工程における乾燥温度(即ち、サーマルチャンバ内の温度)と略等しい温度に設定することが望ましい。こうすることで、基板11を表面側及び裏面側の両面側から均一に加熱することができ、より乾燥ムラの少ない薄膜が得られるようになる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態では、基板11の吸着位置を薄膜の形成領域Fを避けた位置に設けているので、乾燥ムラのない均一な膜を形成することができる。
【0027】
次に、本発明の薄膜形成方法の適用例について説明する。ここでは、本発明をカラーフィルタや有機EL装置等のデバイスの製造方法に適用した例について説明する。
まず、図5を用いて、本発明をカラーフィルタの構成要素となる膜の形成方法に適用した例について説明する。図5は基板P上に形成されるカラーフィルタを示す図であり、図6はカラーフィルタの製造手順を示す図である。図5に示すように、本例では長方形形状の基板P上に生産性を向上させる観点から複数個のカラーフィルタ領域251をマトリクス状に形成する。これらカラーフィルタ領域251は、後で基板Pを切断することにより、液晶表示装置に適合するカラーフィルタとして用いることができる。カラーフィルタ領域251は、R(赤)の液状体組成物、G(緑)の液状体組成物、及びB(青)の液状体組成物をそれぞれ所定のパターン、本例では従来公知のストライプ型で形成される。なお、この形成パターンとしては、ストライプ型の他に、モザイク型、デルタ型、あるいはスクウェア型などでもよい。そして、RGBそれぞれの液状体組成物には上述した界面活性剤が添加されている。
【0028】
このようなカラーフィルタ領域251を形成するには、まず図6(a)に示すように透明の基板Pの一方の面に対し、バンク252が形成される。このバンク252の形成方法は、スピンコート後に露光、現像する。バンク252は平面視格子状に形成され、格子で囲まれるバンク内部にインクが配置される。このとき、バンク252は撥液性を有することが好ましい。また、バンク252はブラックマトリクスとして機能することが好ましい。次に、図6(b)に示すように、前記液滴吐出ヘッドから液状体組成物の液滴254が吐出され、フィルタエレメント253に着弾する。吐出する液滴254の量については、加熱工程における液状体組成物の体積減少を考慮した十分な量とする。このようにして基板P上の全てのフィルタエレメント253に液滴254を充填したら、ヒータを用いて基板Pが所定の温度(例えば70℃程度)となるように加熱処理される。この加熱処理により、液状体組成物の溶媒が蒸発して液状体組成物の体積が減少する。この体積現状の激しい場合には、カラーフィルタとして十分な膜厚が得られるまで、液滴吐出工程と加熱工程とを繰り返す。この処理により、液状体組成物に含まれる溶媒が蒸発して、最終的に液状体組成物に含まれる固形分のみが残留して膜化し、図6(c)に示すようなカラーフィルタ255となる。次いで、基板Pを平坦化し、且つカラーフィルタ255を保護するために、図6(d)に示すようにカラーフィルタ255やバンク252を覆って基板P上に保護膜256を形成する。この保護膜256の形成にあたっては、スピンコート法、ロールコート法、リッピング法などの方法を採用することができるが、カラーフィルタ255と同様に、液滴吐出法により行うこともできる。次いで、図6(e)に示すようにこの保護膜256の全面に、必要に応じて、スパッタ法や真空蒸着法などによって透明導電膜257を形成する。その後、透明導電膜257をパターニングし、図6(f)に示すように画素電極258をフィルタエレメント253に対応させてパターニングする。なお、液晶表示パネルの駆動にTFT(Thin Film Transistor)を用いる場合には、このパターニングは不用となる。
以上により、カラーフィルタが製造される。
【0029】
次に、図7,図8を用いて、本発明を有機EL装置の製造方法に適用した例について説明する。なお、図7,図8には、説明を簡略化するために単一の画素についてのみが図示されている。
まず、図7(a)に示すように、有機EL素子を駆動するための駆動回路を備えた基板Pを用意する。図7(a)において、符号643は画素駆動素子としてのTFT、643Aはゲート電極、643aはソース領域、643bはドレイン領域、643cはチャネル領域、720はゲート絶縁膜、730は層間絶縁膜、736,738はコンタクトホール、632は信号線、633は共通給電線、641は画素電極、740は層間絶縁膜をそれぞれ示している。ここで、信号線632及び共通給電線633、さらには走査線(図示せず)に挟まれた部分が、後述の正孔注入層や発光層の形成場所となる。
【0030】
次に、この基板Pに対して、前記の形成場所を囲むようにバンク650が形成される。このバンク650は仕切部材として機能するものであり、例えばポリイミド等の絶縁性有機材料で形成するのが好ましい。また、バンク650は、液滴吐出ヘッドから吐出される液状体組成物に対して非親和性を示すものが好ましい。バンク650に非親和性を発現させるためには、例えばバンク650の表面をフッ素系化合物などで表面処理するといった方法が採用される。フッ素化合物としては、例えばCF、SF、CHFなどがあり、表面処理としては、例えばプラズマ処理、UV照射処理などが挙げられる。そして、このような構成のもとに、正孔注入層や発光層の形成場所、すなわちこれらの形成材料の塗布位置とその周囲のバンク650との間に、十分な高さの段差611が形成される。次いで、図7(b)に示すように、基板Pの上面を上に向けた状態で、正孔注入層形成用材料を含む液状体組成物(液滴)614Aが液滴吐出ヘッドによりバンク650に囲まれた塗布位置、すなわちバンク650内に選択的に塗布される。次いで、図7(c)に示すように加熱あるいは光照射により液状体組成物614Aの溶媒を蒸発させて、画素電極641上に、固形の正孔注入層640Aが形成される。
【0031】
次いで、図8(a)に示すように、基板Pの上面を上に向けた状態で、液滴吐出ヘッドより、発光層形成用材料(発光材料)を含む液状体組成物614Bがバンク650内の正孔注入層640A上に選択的に塗布される。発光層形成用材料を含む液状体組成物(液滴)614Bを液滴吐出ヘッドから吐出すると、液状体組成物614Bはバンク650内の正孔注入層640A上に塗布される。ここで、液状体組成物614Bの吐出による発光層の形成は、赤色の発色光を発光する発光層形成用材料を含む液状体組成物、緑色の発色光を発光する発光層形成用材料を含む液状体組成物、青色の発色光を発光する発光層形成用材料を含む液状体組成物を、それぞれ対応する画素に吐出し塗布することによって行う。なお、各色に対応する画素は、これらが規則的な配置となるように予め決められている。このようにして各色の発光層形成用材料を含む液状体組成物614Bを吐出し塗布したら、液状体組成物614B中の溶媒を蒸発させることにより、図8(b)に示すように正孔層注入層640A上に固形の発光層640Bが形成され、これにより正孔層注入層640Aと発光層640Bとからなる発光部640が得られる。その後、図8(c)に示すように、透明基板Pの表面全体に、あるいはストライプ状に反射電極654が形成される。
以上により、有機EL素子が製造される。
【0032】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のステージ装置の一例である液滴吐出装置の概略斜視図。
【図2】液滴吐出装置に備えられる載置台の構成を示す模式図。
【図3】載置台の他の構成例を示す模式図。
【図4】載置台の更に他の構成例を示す模式図。
【図5】本発明のデバイスの一例であるカラーフィルタの模式図。
【図6】カラーフィルタの製造方法を説明するための工程図。
【図7】デバイスの一例である有機EL装置の製造方法を説明するための工程図。
【図8】図7に続く工程図。
【符号の説明】
【0034】
4…載置台、4a…吸着穴、4b…支持ピン、4c…気体噴出口、10…液滴吐出ヘッド、11,P…基板、100…液滴吐出装置(ステージ装置)、254,614A,614B…液滴、F…薄膜形成領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性材料を含む液体材料を液滴として基板上に配置し、該液滴を乾燥して膜化する工程を含む薄膜の形成方法であって、
前記液滴の乾燥工程が、前記基板の前記液滴の配置領域以外の領域を吸着して前記基板をステージ装置に保持した状態で行なわれることを特徴とする、薄膜形成方法。
【請求項2】
前記ステージ装置が概ね平坦面に形成された載置台を備え、該載置台の表面に前記基板を吸着するための複数の吸着穴が設けられており、前記液滴の乾燥工程が、前記基板を前記載置台の吸着穴に吸着させた状態で行なわれることを特徴とする、請求項1記載の薄膜形成方法。
【請求項3】
前記ステージ装置が、先端に吸着穴が形成された複数の突起状の支持ピンが設けられた載置台を備え、前記液滴の乾燥工程が、前記基板を前記支持ピンの吸着穴に吸着させた状態で行なわれることを特徴とする、請求項1記載の薄膜形成方法。
【請求項4】
前記載置台の支持ピンと支持ピンとの間に、前記基板の裏面側に向けて気体を噴出する気体噴出口が設けられており、前記液滴の乾燥工程が、前記気体噴出口から前記基板の裏面側に気体を吹き付け、該気体の押圧力によって前記基板の前記支持ピンによって支持されない部分を支持しながら行なわれることを特徴とする、請求項3記載の薄膜形成方法。
【請求項5】
前記気体の温度が前記乾燥工程における乾燥温度と略同じ温度に設定されていることを特徴とする、請求項4記載の薄膜形成方法。
【請求項6】
薄膜の形成工程を含むデバイスの製造方法であって、前記薄膜が請求項1〜5のいずれかの項に記載の方法により形成されたことを特徴とする、デバイスの製造方法。
【請求項7】
機能性材料を含む液体材料を液滴として基板上に配置し、該液滴を乾燥して膜化する工程を含む薄膜の形成工程において、前記基板上に配置された前記液滴を乾燥する際に前記基板を吸着保持するために用いられるステージ装置であって、
前記基板を吸着するための吸着穴が形成された載置台を備え、前記吸着穴が前記基板の薄膜形成領域以外の領域に配置されていることを特徴とする、ステージ装置。
【請求項8】
前記載置台が略平坦面に形成されていることを特徴とする、請求項7記載のステージ装置。
【請求項9】
前記載置台に、先端に前記吸着穴が形成された複数の突起状の支持ピンが設けられ、該複数の支持ピンによって前記基板を支持するように構成されたことを特徴とする、請求項7記載のステージ装置。
【請求項10】
前記載置台の前記支持ピンと支持ピンとの間に、前記基板の裏面側に向けて気体を噴出する気体噴出口が設けられていることを特徴とする、請求項9記載のステージ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−26521(P2006−26521A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208515(P2004−208515)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】