薄膜形成方法
【課題】薄膜中に有機物等が残存しにくく、耐熱性が低い基体も使用できる薄膜形成方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも表面が界面光電気化学反応作用を有する金属化合物から成る粒子、前記粒子の表面を修飾する有機物、及び前記有機物で表面を修飾された前記粒子を分散させる分散媒から成る塗布液を、基体の表面に塗布して、塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜に、前記金属の界面光電気化学反応作用を促進する波長の電磁波を照射して前記粒子の表面を修飾する前記有機物を光分解する露光工程と、を備えることを特徴とする薄膜形成方法。
【解決手段】少なくとも表面が界面光電気化学反応作用を有する金属化合物から成る粒子、前記粒子の表面を修飾する有機物、及び前記有機物で表面を修飾された前記粒子を分散させる分散媒から成る塗布液を、基体の表面に塗布して、塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜に、前記金属の界面光電気化学反応作用を促進する波長の電磁波を照射して前記粒子の表面を修飾する前記有機物を光分解する露光工程と、を備えることを特徴とする薄膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体の表面に、例えば、金属化合物等から成る薄膜を形成する薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細にパターン化された金属化合物薄膜が、フラットパネルディスプレーの透明導電膜、記憶素子の誘電体膜等として広く用いられている。
パターン化された金属化合物薄膜を得る方法としては、光リソグラフィー法が知られている。この方法では、まず、金属化合物薄膜をスパッタリング等の物理的方法で製膜し、この上に感光性レジスト層を形成する。次に、所望のパターンを描画したフォトマスクを通して感光性レジスト層を露光することで潜像を形成し、これを現像してパターンを得る。このパターンを介して金属酸化物薄膜をエッチングし、レジスト層を除去すると、パターン化された金属化合物薄膜が得られる。この光リソグラフィー法は、上記のように、多段階の工程が必要であり、より少ない工程でパターン形成可能な方法が望まれている。
【0003】
そこで、感光性レジスト層を用いずに、パターン化された金属化合物薄膜を得る方法として、次のような方法が提案されている。
(i)光重合/光溶解法:感光性物質と、金属化合物前駆体である金属錯体又は金属化合物微粒子とを混合して成る塗布液を、基体の表面に塗布して塗布膜を形成する。次に、塗布膜のうち、一部のみに光照射を行う。光照射された部分では、感光性物質が重合し、不溶化する。次に、現像液で未照射部分を除去すると、塗布膜のうち、光照射により不溶化された部分のみが基体の表面に残る。最後に、焼成することで、感光性物質を除去する(特許文献1〜5参照)。
【0004】
(ii)分散性制御法:まず、有機分子で表面を修飾された金属微粒子から成る膜を基体の表面に形成する。次に、膜のうち、最終的に残したい部分に、レーザ光や紫外線を照射する。レーザ光を照射された部分では、有機分子が熱分解される。また、紫外線を照射された部分では、有機分子が金属微粒子から脱離する。次に、現像液を用いて現像を行うと、膜のうち、有機分子が熱分解又は脱離した部分は、現像液に対し不溶化しているので、基体の表面に残り、レーザ光や紫外線を照射されていない部分は除去される。紫外線の照射で有機分子を金属微粒子から脱離させる場合は、最後に、焼成することで、有機化合物を分解する(特許文献6〜10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-114506 号公報
【特許文献2】特開2001-31417 号公報
【特許文献3】特開平10-20438 号公報
【特許文献4】特開2000-208824号公報
【特許文献5】特開2001-143526 号公報
【特許文献6】特開2001-149774 号公報
【特許文献7】特開2005-259861号公報
【特許文献8】特開2008-159754号公報
【特許文献9】特開2008-274096 号公報
【特許文献10】特開2008-83605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の光重合/光溶解法では、塗布膜を焼成して、感光性物質を分解除去することが必要である。そのため、この方法では、耐熱性が低いプラスチック等から成る基体への製膜は難しい。また、感光性物質は塗布膜中に存在するので、焼成しても、完全に除去することは困難であり、感光性物質が金属化合物薄膜中に残存し、物性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
また、上記の分散性制御法のうち、レーザ光を使用する方法では、金属薄膜及び基体が高温になるので、耐熱性が低いプラスチック等から成る基体の場合は使用できない。また、上記の分散性制御法のうち、紫外線照射により有機分子を金属微粒子から脱離させる方法でも、塗布膜中の有機分子を焼成により除去する必要があるので、耐熱性が低いプラスチック等から成る基体への適用は難しい。さらに、有機分子は塗布膜中に存在するので、焼成しても、完全に除去することは困難であり、有機分子が金属薄膜中に残存し、物性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、薄膜中に有機物等が残存しにくく、耐熱性が低い基体も使用できる薄膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薄膜形成方法は、
少なくとも表面が界面光電気化学反応作用を有する金属化合物から成る粒子、前記粒子の表面を修飾する有機物、及び前記有機物で表面を修飾された前記粒子を分散させる分散媒から成る塗布液を、基体の表面に塗布して、塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜に、前記金属の界面光電気化学反応作用を促進する波長の電磁波を照射して前記粒子の表面を修飾する前記有機物を光分解する露光工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の薄膜形成方法では、粒子の表面を修飾する有機物を、粒子の表面で生じる界面光電気化学反応作用により分解するので、有機物が薄膜中に残り、薄膜の物性に悪影響を及ぼしてしまうようなことがない。
【0010】
また、本発明の薄膜形成方法では、上述したように、粒子の表面を修飾する有機物を、粒子の表面で生じる界面光電気化学反応作用により分解するので、有機物を分解するための焼成処理が必須ではない。そのため、例えば、耐熱性が低い材料(例えば、ガラス転移点温度が低い低耐熱性のプラスチック)から成る基体上にも、薄膜を形成できる。
【0011】
本発明の薄膜形成方法は、例えば、パターン化された薄膜を形成する用途に用いることができる。この場合、本発明の薄膜形成方法は、前記露光工程のとき、前記塗布膜のうち、一部のみに前記電磁波を照射するとともに、前記露光工程の後、前記有機物で表面を修飾された前記粒子は溶解するが、前記有機物で表面を実質的に修飾されていない前記粒子は溶解しない現像液により、前記塗布膜のうち、前記一部以外の部分を除去する現像工程を備える。前記露光工程のとき、例えば、所定のフォトマスクを用いて、前記一部を設定することができる。
【0012】
本発明の薄膜形成方法によれば、従来の光リソグラフィー法のように、感光性レジスト層を設ける必要がなく、膜のエッチングも必要ないので、工程を簡略化できる。
また、従来のリソグラフィー法のようにエッチングによってパターンを形成する方法は、酸化チタンのように酸、アルカリに対して極めて安定な物質から成る薄膜の場合には適用できなかったが、本発明の薄膜形成方法は、そのような物質から成る薄膜にも適用できる。
【0013】
前記界面光電気化学反応は、粒子の表面を構成する金属化合物の電子構造が半導体性を示すことにより生じる。界面光電気化学反応は次の三つに大別される。
(a) 光触媒反応(図1(a)参照)
金属化合物のバンドギャップを電磁波により励起すると電荷分離が起こり、価電子帯に正孔が、伝導帯に励起電子が生成する。正孔が物質分解に十分な高い酸化還元電位を持ち、励起電子が、金属化合物外の電子受容体(例えば、酸素)を還元するような十分に低い電位を持てば、粒子の表面を修飾する有機物を分解する。
(b) 界面光電荷移動(図1(b)参照)
有機物が粒子の表面に結合すると、光励起により、有機物のHOMO(最高占有分子軌道)から、金属化合物の伝導帯への直接電子移動が可能になる場合がある。この時、光吸収スペクトルには、この有機物−金属化合物間の電子遷移に基づく新たな吸収帯が現れ、この吸収帯を励起するような波長の光を照射すると、有機物に正孔が生成し、この正孔によって有機物が自己分解する。
(c) 光増感反応(図1(c)参照)
有機物のLUMO(最低非占分子軌道)のエネルギーレベルが、金属化合物の伝導帯のエネルギーレベルより十分に高ければ、有機物の光吸収帯を励起すると、励起電子が有機物から金属化合物へと移動し、有機物に生じた正孔によって自己分解が起こる。
これらの界面光電気化学反応に加えて、有機物自身の光化学反応が同時に起こってもよい。例えば、メチレンブルーなどの色素を金属化合物に結合させた場合は、色素の光励起により、上記(c)の分光増感に加え、色素の励起三重項状態と酸素分子の反応で発生した活性な一重項酸素によっても色素は分解されうる。
【0014】
金属化合物のバンドギャップエネルギーは様々であり、バンドギャップが広い金属化合物では、バンドギャップ励起のみで反応を進行させようとすると、より短波長側の紫外線光源が必要となる。しかし、バンドギャップの直接励起に基づく上記(a)の反応に加え、より長波長側に光吸収を示しうる上記(b), (c)の反応を併用することで、汎用のHg-Xeランプではバンドギャップ励起を行えない金属化合物でも、有機物を分解できる場合がある。
【0015】
前記金属化合物としては、半導体性を示す(価電子帯、伝導帯、バンドギャップを持つような電子構造を有する)ものを用いることができる。具体的には、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属フッ化物、金属カルコゲナイドなどを用いることができる。中でも、光触媒活性が知られているものが適しており、これには、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タングステンなどが挙げられる。前記金属化合物および有機物は、塗布液や現像液中で化学変化や分解を生じにくいことが望ましい。前記金属化合物は、複数の金属種を含んでいてもよい。そのような金属化合物としては、例えば、CIGS太陽電池に用いられるCu(InxGa1-x)Se等が挙げられる。
【0016】
前記粒子は、例えば、その表面に、銅、銀、金、白金、パラジウム、ルテニウムなどの金属微粒子や別種の金属化合物微粒子が結合していても良い。前記粒子は、複数の金属化合物種あるいは金属種から成るコア−シェル型の複合粒子でも良い。例えば、AgコアTiO2シェル微粒子やCdSe-ZnS発光性量子ドットが挙げられる。
【0017】
前記有機物は、それで表面を修飾した粒子が、塗布液及び現像液中で分散するようなものを広く用いることができる。また、有機物は、塗布液及び現像液中で、粒子の表面から分離しにくいものが好ましい。有機物は、イオン性、非イオン性、親水性、疎水性のいずれであってもよく、塗布液用溶媒、現像液、金属化合物の種類に応じて、適宜選択できる。酸化チタンから成る粒子の場合、分子内に2個以上の金属と結合しうる官能基を持ち、金属原子と官能基が五員環、六員環を有するキレート構造を取る有機物を用いれば、良好な薄膜が得られる。
【0018】
有機物として、例えば、以下の化学式1を構造単位として含む鎖状または環状分子が挙げられる。
【0019】
【化1】
化学式1において、αは、−CmH2(m-d)OR1, −CmH2(m-d)COO R1, −CmH2(m-d)COR1, −CmH2(m-d)NR1R2, −CmH2(m-d)SR1, −CmH2(m-d)SO3, −NHCOR1, −OCOR1から成る群(以下第1α群とする)から選ばれるものであり、βは、水素又は第1α群から選ばれるものである。mは0以上の任意の整数、dは0または官能基の炭化水素部分に含まれる二重結合数である。 0はその元素が存在しないことを意味する。R1, R2としては、水素または任意の官能基を含むことができる。ξ、Ψは水素または特に制限されない構造を持つ。
化学式1で表される有機物としては、例えば、表1に示されるものがある。
【0020】
【表1】
また、有機物として、例えば、以下の化学式2を構造単位として含む鎖状または環状分子が挙げられる。
【0021】
【化2】
化学式2において、nは1以上の整数とする。k, lは0以上の整数とする。EはOまたはSである。[ ]xは[ ]内の単位がC1とCn+1の間にX個存在することを意味する。Xが0のときは、[ ]内の単位が存在しないことを意味する。C1, Cn+1間のC, E, Nの順番は特に限定されない。[Cn-1]n-1のC-C結合の中には任意の数の二重結合が含まれても良い。[Cn-1]n-1のCと[N]lのNの間に任意の数の二重結合が存在しても良い。αは、−CmH2(m-d)OR1, −CmH2(m-d)COO R1, −CmH2(m-d)COR1, −CmH2(m-d)NR1R2, −CmH2(m-d)SR1, −CmH2(m-d)SO3, −NHCOR1, −OCOR1から成る群(以下、第2α群とする)から選ばれるものであり、βは、水素又は第2α群から選ばれるものである。mは0以上の任意の整数、dは0または官能基の炭化水素部分に含まれる二重結合数である。0はその元素が存在しないことを意味する。R1, R2としては、水素または任意の官能基を含むことができる。ξ、Ψは水素または特に制限されない構造をもつ。
化学式2で表される有機物としては、例えば、表2に示されるものがある。
【0022】
【表2】
また、有機物として、例えば、以下の化学式3を構造単位として含む鎖状または環状分子が挙げられる。
【0023】
【化3】
化学式3において、nは1以上の整数とする。k, lは0以上の整数とする。EはOまたはSである。[ ]xは[ ]内の単位がC1とCn+1の間にX個存在することを意味する。Xが0のときは、[ ]内の単位が存在しないことを意味する。C1, Cn+1間のC, E, Nの順番は特に限定されない。α、βは、それぞれ、= O, =N-OH, = NH, =Sから選ばれるものである。ξ、Ψは、水素または特に制限されない構造を持つ。
化学式3で表される有機物としては、例えば、表3に示されるものがある。
【0024】
【表3】
また、有機物として、例えば、以下の化学式4を構造単位として含む鎖状または環状分子が挙げられる。
【0025】
【化4】
化学式4において、nは1以上の整数とする。k, lは0以上の整数とする。EはOまたはSである。[ ]xは[ ]内の単位がC1とCn+1の間にX個存在することを意味する。Xが0のときは、[ ]内の単位が存在しないことを意味する。C1, Cn+1間のC, E, Nの順番は特に限定されない。αは、次の官能基から選択されるものである。
【0026】
=O, =N-OH, =NH, =S
また、βは、次の官能基から選択されるものである。
−CmH2(m-d)OR1, −CmH2(m-d)COO R1, −CmH2(m-d)COR1, −CmH2(m-d)NR1R2, −CmH2(m-d)SR1, −CmH2(m-d)SO3, −NHCOR1, −OCOR1
mは0以上の任意の整数、dは0または官能基の炭化水素部分に含まれる二重結合数である。0はその元素が存在しないことを意味する。R1, R2としては、水素または任意の官能基を含むことができる。ξ、Ψは水素または特に制限されない構造を持つ。
化学式4で表される有機物としては、例えば、表4に示されるものがある。
【0027】
【表4】
また、有機物として、例えば、以下の化学式5を構造単位として含む分子が挙げられる。
【0028】
【化5】
化学式5において、nは1以上の整数。[C]nはN1とN2間にn個の炭素が存在することを示す。[C]nの部分に任意の数のC-C二重結合が含まれても良い。α、β、χ、δは、それぞれ、水素または次の官能基から選ばれるものである。
CmH2(m-d)OH, CmH2(m-d)COOH, CmH2(m-d), C6H5, CmH2mC6H5
mは0以上の任意の整数、dは0または官能基の炭化水素部分に含まれる二重結合数である。0はその元素が存在しないことを意味する。ω、ξ、Ψは水素または特に制限されない構造である。
化学式5で表される有機物としては、例えば、表5に示されるものがある。
【0029】
【表5】
また、有機物として、例えば、以下の化学式6で表される分子が挙げられる。
【0030】
【化6】
化学式6において、点線の部分が存在しても良い。ξ、Ψとして各々3個以下の任意の構造の官能基を持つことができる。
化学式6で表される有機物としては、例えば、表6に示されるものがある。
【0031】
【表6】
また、有機物として、例えば、以下の化学式7で表される分子が挙げられる。
【0032】
【化7】
化学式7において、点線の部分が存在しても良い。ξ、Ψとして各々3個以下の任意の構造の官能基を持つことができる。
化学式7で表される有機物としては、例えば、表7に示されるものがある。
【0033】
【表7】
また、有機物として、例えば、以下の化学式8で表される分子が挙げられる。
【0034】
【化8】
化学式8において、ξ、Ψとして各々3個以下の任意の構造の官能基を持つことができる。
化学式8で表される有機物としては、例えば、表8に示されるものがある。
【0035】
【表8】
また、有機物として、例えば、以下の化学式9を構造単位として含む分子が挙げられる。
【0036】
【化9】
化学式9において、点線の部分に芳香環が付加されていても良い。芳香環には、許される最大数以下の任意の数の特に構造が制限されない官能基が結合していても良い。α、βは、それぞれ、次の官能基から成る群から選択されるものである。Xは、可能な数の、水素または特に構造が制限されない官能基である。
【0037】
=O, −CmH2(m-d)OR1, −CmH2(m-d)COO R1, −CmH2(m-d)COR1, −CmH2(m-d)NR1R2, −CmH2(m-d)SR1, −CmH2(m-d)SO3, −NHCOR1, −OCOR1
mは0以上の任意の整数、dは0または官能基の炭化水素部分に含まれる二重結合数である。0はその元素が存在しないことを意味する。R1, R2としては、水素または任意の官能基を含むことができる。
化学式9で表される有機物としては、例えば、表9に示されるものがある。
【0038】
【表9】
有機物がπ電子を持つ場合、有機物−金属化合物間で界面光電荷移動が起こる。酸化チタンから成る粒子の場合、有機物として、π電子を持つ1,2-エンジオール型化合物や芳香族化合物で表面を修飾すると、界面光電荷移動に基づく新たな吸収帯が発現し、本来、色を示さないこれらの有機物が着色する。このような有機物では、金属化合物のバンドギャップ励起に加え、この吸収帯の励起でも界面光電気化学反応が進行する。
【0039】
前記露光工程において電磁波を照射する光源としては、金属化合物のバンドギャップに対応した電磁波を照射する光源や、界面光電荷移動吸収帯を励起し得る光を放射する任意の光源を用いることができる。また、露光光源の形状も任意で、近接場光学顕微鏡などを光源として用いてもよい。有機物の分解は、走査型電気化学顕微鏡などによって電気化学的に分解活性種を発生させることで行ってもよい。また、電子線ビームリソグラフィー法で電子を照射することにより、有機物を分解してもよい。
【0040】
前記基体としては、有機物で修飾されていない粒子が、現像工程で剥離・溶解しないものが好ましい。基体は、エッチング等、粒子との密着性を増強するような処理をしてから用いてもよい。また、有機物で修飾されていない粒子と基体との密着性を調節するために、基体の表面をシランカップリング剤、高分子化合物等で修飾してもよい。
酸化チタンから成る粒子の場合、基体として、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、合成石英、シリコンウェハー、低耐熱性のポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド等が好適である。
【0041】
前記現像液としては、金属化合物自身を分解しないもの、有機物を分解、脱離させないものが好ましく、例えば、酸、アルカリ水溶液、有機溶媒等が挙げられる。現像液は、金属化合物の種類、有機物の種類等に応じて適宜選択できる。酸化チタン、スズ添加酸化インジウムから成る粒子の場合は、既存のレジスト剤の現像に汎用されているテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】界面光電気化学反応の原理を説明する説明図である。
【図2】紫外線の照射前後における塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを表すグラフである。
【図3】表面をクマリンで修飾された酸化チタンの紫外可視吸収スペクトルと、酸化チタンのみの紫外可視吸収スペクトルを表すグラフである。
【図4】紫外線照射前後における塗布膜の赤外吸収スペクトルを表すグラフである。
【図5】紫外線照射前後における有機物の残存率を表すグラフである。
【図6】有機物の化学構造を表す説明図である。
【図7】パターン化された薄膜を表す顕微鏡写真である。
【図8】紫外線の照射前後における塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを表すグラフである。
【図9】パターン化された薄膜を表す顕微鏡写真である。
【図10】Ag@TiO2コアシェルナノ粒子の構造を表す断面図である。
【図11】紫外線の照射前後における塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを表すグラフである。
【図12】パターン化された薄膜を表す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0044】
1.金属化合物薄膜の形成
(1−1)塗布液Aの調製
球状の酸化チタン微粒子(I)を、公知の方法(C. J. Barbe et al., J. Am. Ceram. Soc. 80(12), 3157-3171 (1997))に従って合成した。具体的には、まず、80 mLの0.1 M HCl水溶液に、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬)12mLを、撹拌しながら添加した。生成した白色固体を超音波洗浄器で分散した後、油浴中で、100℃, 4時間加熱した。冷却後、試料を超音波洗浄器で2時間超音波処理して粒子を分散し、やや白みがかった透明酸化チタンゾルを得た。
【0045】
次に、上記の酸化チタンゾル1.5 mLを、アセトン5 mLに滴下し、酸化チタンを析出させた。これを遠心分離で回収した後、5 mLのN, N-ジメチルアセトアミドに懸濁した。これに、酸化チタンに対して等モルの有機物を添加し、油浴中で、100℃, 30分間加熱撹拌した。冷却後、これにアセトン1 mL, ヘキサン5 mLを添加して有機物で表面を修飾された酸化チタン粒子を析出させ、遠心分離で沈殿させた。これをアセトンで2回洗浄した後、エタノール3 mLに懸濁したものと塗布液Aとした。
【0046】
上記有機物としては、表10、表11、及び表12に示すものをそれぞれ用いた。
【0047】
【表10】
【0048】
【表11】
【0049】
【表12】
(1−2)塗布液Bの調製
棒状の酸化チタン微粒子(II)を、公知技術(P. D. Cozzoli et al., J. Am. Chem. Soc. 125, 14539-14548 (2003))に従って合成した。具体的には、オレイン酸35 gに5 mmolのチタンテトライソプロポキシドを添加し、撹拌した後、これに2 mLの25wt%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を添加し、さらに100℃で4時間、撹拌した。冷却後、反応溶液5 mLに15 mLのメタノールを添加して酸化チタンを析出させ、遠心分離で回収した。
【0050】
次に、上記のようにして得られた棒状の酸化チタン微粒子(II)をメタノールで1回洗浄した後、トルエン5 mLに懸濁し、塗布液Bとした。なお、塗布液B中の棒状の酸化チタン微粒子(II)は、表面をオレイン酸(有機物)で修飾されている。
(1−3)塗布液Cの調製
前記塗布液Bの調製過程で得られた反応溶液5 mLにメタノール15 mLを入れて酸化チタンを析出させた後、沈殿をメタノール5 mLで1回洗浄し、これをトルエン5 mL/N,N-ジメチルアセトアミド5 mLの混合溶媒に懸濁した。これに酸化チタンと等モルの没食子酸を加え、100℃で30分間撹拌した。没食子酸の添加により、液は赤褐色に着色した。冷却後、ヘキサン5 mLを添加して酸化チタンを析出させ、遠心分離で沈殿させた。沈殿をアセトンで2回洗浄し、最終的にエタノール5 mLに懸濁して、塗布液Cとした。なお、塗布液C中の棒状の酸化チタン微粒子(II)は、表面を没食子酸(有機物)で修飾されている。
(1−4)成膜
基板(基体)として、表13に示すものをそれぞれ用いた。
【0051】
【表13】
基板のうち、PC, PETから成るものは、エタノールで表面を脱脂してから用いた。他の基板は前処理なしでそのまま用いた。
【0052】
基板の表面に塗布液0.5 mLをスピンコート法により塗布し、塗布膜を形成した。塗布液としては、前記塗布液A、B、Cをそれぞれ用いた。スピンコートの条件は、1000 rpm, 20秒間とした。塗布後、PC, PETから成る基板の場合は、50℃で2分間乾燥し、その他の基板の場合は、100℃で2分間乾燥した。
(1−5)露光
成膜後の基板上に、フォトマスクを載せ、その上に、2 mm厚の合成石英板を重ね、全体をクリップで固定した。フォトマスクは、銅メッシュ(TEM用グリッドメッシュ)であって、表14に示すものをそれぞれ用いた。
【0053】
【表14】
ライトガイド付きHg-Xeランプ光源(LA-310UV; 林時計工業)を用い、基板に紫外線を照射し、露光を行った。ランプ光源から石英板までの距離は、紫外線強度計(カスタム社製UVA-365)で測定した紫外線強度が15 mW cm-2になるように調整した。
(1−6)現像
所定時間露光を行った後の基板を、2.5wt%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に30秒間浸漬して現像処理を行った。その後、ミリポア水で30秒間洗浄してTMAHを除去した後、空気を吹き付けて乾燥した。
【0054】
2.金属化合物薄膜の評価
(2−1)有機物の光分解試験(その1)
塗布液に含まれる粒子の表面を修飾している有機物が光分解することを確かめるための試験を行った。
【0055】
塗布液Aのうち、有機物として6,7-ジヒドロキシ-4-メチルクマリン(以下、クマリンとする)を用いたものを、合成石英から成る基板の全面に塗布、乾燥して、塗布膜を形成した。そして、紫外可視分光光度計U-3310 (日立)を用いて、塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。
【0056】
次に、塗布膜に対し、Hg-Xeランプを用いて、紫外線を照射した。紫外線の照射は、全光の場合と、シャープカットフィルター(390 nmで透過率50%、シグマ光機SCF-50S-39L)を通した光を照射する場合とを、それぞれ行った。
【0057】
紫外線の照射後、再び、塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。図2(a)に、紫外線照射を行う前の紫外可視吸収スペクトルS1と、全光の紫外線照射を60分間行った後での紫外可視吸収スペクトルS2とを示す。
【0058】
また、図2(b)に、シャープカットフィルターを通した紫外線照射を10分間行った後での紫外可視吸収スペクトルS3と、シャープカットフィルターを通した紫外線照射を180分間行った後での紫外可視吸収スペクトルS4とを示す。なお、図2(b)において、S3とS4の間に位置するスペクトルは、紫外線照射時間が10分と180分との間(70、100、130、160分)である場合におけるスペクトルである。
【0059】
また、図3に、表面をクマリンで修飾された酸化チタンの紫外可視吸収スペクトルS5と、酸化チタンのみの紫外可視吸収スペクトルS6を示す。
S1とS5は同一であり、S2とS6は同一である。また、S4とS6も同一である。この結果から、全光の紫外線照射でも、シャープカットフィルターを通した紫外線照射でも、酸化チタン粒子の表面を修飾していたクマリンが分解されることが確認できた。
【0060】
なお、シャープカットフィルターを通した紫外線の波長は、酸化チタンのバンドギャップに対応する波長ではないが、シャープカットフィルターを通した紫外線照射でも、酸化チタン粒子の表面を修飾していたクマリンが分解されることから、バンドギャップ励起による光触媒反応だけではなく、界面光電荷移動によっても、クマリンが分解されることが確認できた。
【0061】
また、上記の塗布膜について、紫外線照射前、紫外線照射10分後、及び紫外線照射20分後に、赤外吸収スペクトルを測定した。赤外吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR-670 (日本分光)を用いて、一回反射ATR法で測定した。その結果を図4の(a)〜(c)に示す。また、酸化チタンのみの赤外吸収スペクトルを図4(d)に示す。
【0062】
紫外線照射前の赤外吸収スペクトルには、1200-1800 cm-1の波長域に8本程度のクマリンの官能基由来の吸収(図4(a)において*で示すピーク)が見られた。紫外線照射によって、これらのピークは小さくなり、紫外線照射20分後の赤外吸収スペクトルは、酸化チタンのみの赤外吸収スペクトルとほぼ同じになった。この結果から、紫外線照射後において、クマリンは、酸化チタンの表面から脱離しただけではなく、分解除去されていることが確認できた。
(2−2)有機物の光分解試験(その2)
塗布液に含まれる粒子の表面を修飾している有機物が光分解することを確かめるための試験を行った。
【0063】
塗布液Aのうち、有機物がプロトカテク酸、サリチル酸、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン、1,2-ヘキサンジオールであるものを、それぞれ、合成石英基板の表面に塗布、乾燥し、塗布膜を形成した。この塗布膜に、Hg-Xeランプを用いて紫外線を照射した。そして、所定時間ごとに、紫外可視吸収スペクトルを測定した。さらに、以下の式により、その時点における有機物の残存率Xを算出した。
【0064】
X=(A−A0)/A0
ここで、Aは、その時点における有機物のピーク波長での吸光度であり、A0は、紫外線を充分長時間照射し、紫外可視吸収スペクトルが定常状態となったときの有機物のピーク波長での吸光度である。結果を図5に示す。
【0065】
図5に示すように、いずれの有機物も、紫外線照射により分解された。特に、直鎖アルキル基のみからなる1,2-ヘキサンジオールは、最も分解が速く、次に、プロトカテク酸が速かった。ベンゼン環を二個有する1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオンは、やや分解が遅かった。以上の結果から、有機物として、芳香族を持たないアルキルジオール、カルボン酸を用いれば、分解速度を高めることができることが確認できた。
【0066】
プロトカテク酸、没食子酸などのカテコール誘導体は、室温で撹拌しただけで使用できるという簡便さがあり、また、界面光電荷移動吸収帯が出現するため、より長波長側の光を吸収できるという点で利点がある。
【0067】
プロトカテク酸、没食子酸などの芳香族化合物が粒子の表面に結合して界面光電荷移動吸収帯が現れれば、より長波長の光で分解反応を引き起こすことができ、金属化合物のバンドギャップが励起されなくとも、有機物の分解が生じることがある。このため、有機物の選択は、光源の波長、金属化合物のバンドギャップエネルギー、界面光電荷移動吸収帯の有無等を考えて行うことが好ましい。バンドギャップ励起できるような光源下ではアルキルジオールや脂肪酸が有機物として適しており、表面に有機物が結合することで界面電荷移動吸収帯が現れるような金属化合物を、界面光電荷移動吸収帯のみを励起できるような光源下で用いる場合は、カテコール誘導体のような芳香族1,2-ジオール誘導体が有機物として適している。
(2−3)露光の有無による溶解性の変化の試験
塗布液Aのうち、有機物が表15に示すものを、それぞれ、合成石英基板の表面に塗布、乾燥し、塗布層を形成した。
【0068】
【表15】
露光を行うことなく、この塗布層が形成された石英基板を、TMAHに30秒間浸漬して現像処理を行った。その後、ミリポア水で30秒間洗浄してTMAHを除去した後、空気を吹き付けて乾燥した。また、現像前後において、有機物の紫外可視吸収スペクトルを測定した。
【0069】
また、塗布層を形成した後、露光を行ってから、上と同様に現像処理を行った。そして、現像前後において、有機物の紫外可視吸収スペクトルを測定した。なお、露光は、有機物が分解され、紫外可視吸収スペクトルが定常状態に落ち着くまで充分時間をかけて行った。有機物が粒子の表面を修飾しても紫外可視吸収スペクトルに大きな変化が見られない1,2-ヘキサンジオール、1,2-ドデカンジオール、オクタン酸の場合は、一回反射ATRで測定した赤外吸収スペクトルが定常になるまで露光を行った。
【0070】
以下の式により、露光を行わずに現像した場合に塗布膜がどれだけ残るかを表す露光無しの残膜率Y1と、露光を行ってから現像した場合に塗布膜がどれだけ残るかを表す露光後の残膜率Y2とを算出した。
【0071】
Y1=(B2−B0)/(B1−B0)
Y2=(B3−B0)/(B1−B0)
ここで、B0は、有機物の吸収波長における、合成石英基板のみの吸光度である。B1は、露光を行った後、現像前における吸光度である。B2は、露光を行わずに現像した後における吸光度である。B3は、露光を行ってから現像した後における吸光度である。
【0072】
その結果を上記表15に示す。
表15に示すように、いずれの有機物の場合でも、残膜率Y1は低く、残膜率Y2は高かった。よって、塗布液Aを用いれば、露光を行った部分については現像後でも基板に残存し、露光を行わなかった部分については、現像により除去され、結果としてパターン化された薄膜の形成が可能であることが確認できた。
残膜率Y1は、有機物のうち、金属に結合可能な二個以上の官能基を持ち、金属原子−官能基−官能基が結合する炭素原子が五員環あるいは六員環のキレート構造を取り得る分子(図6参照)で特に低かった。これに該当する有機物としては、1,2-エンジオール型、ヒドロキシキノリン、1,2-ジオール型、β-ジケトン型、サリチル酸がある。特に、1,2-エンジオール型のプロトカテク酸、没食子酸、クマリンは、酸化チタンと混合して室温で撹拌するだけで安定に粒子の表面に結合し、低い残膜率Y1が得られ、製造の容易さという点で大きな利点があることがわかった。
また、金属に結合可能な官能基を一個しか持たないような有機物でも、有機物と酸化チタンをN,N-ジメチルアセトアミドなど極性非プロトン性溶媒中で加熱することで、低い残膜率Y1は、が得られた。
(2−4)パターン解像度試験(その1)
前記「1.金属化合物薄膜の形成」で形成した、パターン化された薄膜を目視で観察した。フォトマスク(表14におけるNo.1のフォトマスク)通りのパターンが形成されていれば、○と評価し、パターンが形成されていなければ×と評価した。
【0073】
塗布液Aのうち、有機物が上記表15に示すものについての結果を上記表15に示す。表15に示すように、いずれの有機物の場合でも、パターンが形成されていた。また、塗布液B、Cを用いた場合でも、正確なパターンが形成できた。
(2−5)パターン解像度試験(その2)
前記「1.金属化合物薄膜の形成」で形成した、パターン化された薄膜を、レーザ顕微鏡VK-9700(キーエンス製)で観察した。
【0074】
図7に、塗布液として、塗布液Aのうち、有機物がプロトカテク酸であるものを用い、基板として合成石英基板を用いた場合に形成されたパターン化された薄膜を示す。
どのフォトマスクを用いた場合でも、マスクの開口部には薄膜が残り、遮光部の薄膜は除去されていた。600、2000メッシュのフォトマスクの場合は、残膜部間の距離は、マスクの線径と同じ5μmであった。2000メッシュのフォトマスクの場合は、残膜部の一辺の長さは7.5μmであり、フォトマスクの開口の一辺の長さに等しかった。また、フォトマスクの線の歪みも、パターン化された薄膜では忠実に再現されており、5μm以下のパターンでも十分に製作可能であることが確認できた。
(2−6)基板の種類に関して
前記「1.金属化合物薄膜の形成」で形成した、パターン化された薄膜において、基板の種類のみ異なり、その他は同条件であるものを、レーザ顕微鏡VK-9700(キーエンス製)で観察した。なお、塗布液としては、塗布液Aのうち、有機物がプロトカテク酸であるものを用いた。また、基板の種類は、前記表13に記載された基板のうち、合成石英、PC、PET、ポリイミドとした。
【0075】
いずれの基板を用いた場合でも、600、2000メッシュのフォトマスクに用いてパターン化された薄膜の形成が可能で、基板が合成石英である場合と同程度の寸法再現性が得られた。
(2−7)現像液濃度に関する試験
基本的には前記「1.金属化合物薄膜の形成」と同様の方法であるが、現像液であるTMAH濃度を様々に変化させて試験を行った。
【0076】
その結果、TMAH濃度が0.025wt%以上であれば、プロトカテク酸で修飾された酸化チタン粒子を溶解可能であり、パターン化された薄膜が形成可能であることが確認できた。また、現像液として、2.5wt%TMAHと同一モル濃度のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミンの水溶液で、2.5wt%TMAHと同じように現像できることがわかった。
【実施例2】
【0077】
1.金属化合物薄膜の形成
(1−1)塗布液Dの調製
酢酸インジウム0.2 M、塩化スズ(II)20 mMをN,N-ジメチルアセトアミド(DMA)へ添加し、これにトリエチルアミン0.6 Mを加えて、140℃で1時間加熱撹拌した。加熱撹拌により酢酸インジウムは溶解し、透明暗緑色の液体になった。これに、DMAに対して5vol%の水を添加し、140℃でさらに3時間加熱撹拌した。水の添加によってインジウム錯体の加水分解が進み、溶液は白濁した。反応後、遠心分離でITOナノ粒子を回収し、アセトンで2回洗浄した。得られたITOは暗青色で、還元型ITOと思われる。
【0078】
ITOナノ粒子をDMAに懸濁し(濃度は約0.16 M)、Inに対して1/3当量の有機物を添加して室温で30分間放置した。有機物としては、表16に示すものをそれぞれ用いた。
【0079】
【表16】
放置後、液にヘキサン5 mL, アセトン1 mLを添加し、遠心分離で、表面を有機物で修飾されたナノ粒子を回収した。これをエタノール3 mLに懸濁したものを、塗布液Dとした。
(1−2)成膜、露光、現像
塗布液Dを用い、前記実施例1と同様にして、成膜、露光、現像を行い、基板上にパターン化された薄膜を形成した。ただし、基板としては、50×50×2mmサイズの合成石英基板を用いた。
【0080】
2.金属化合物薄膜の評価
(2−1)有機物の光分解試験
塗布液に含まれる粒子の表面を修飾している有機物が光分解することを確かめるための試験を行った。
【0081】
塗布液Dのうち、有機物がクマリンであるものを、合成石英から成る基板の全面に塗布、乾燥して、塗布膜を形成した。そして、紫外可視分光光度計U-3310 (日立)を用いて、塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。
【0082】
次に、塗布膜に対し、Hg-Xeランプを用いて、紫外線を照射した。紫外線の照射後、再び、塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。図8に、紫外線照射を行う前の紫外可視吸収スペクトルS7と、紫外線照射を20分間行った後での紫外可視吸収スペクトルS8とを示す。
【0083】
紫外可視吸収スペクトルS7には、350nmの部分に、界面光電荷移動吸収帯が現れていた。紫外可視吸収スペクトルS8では、このピークが消失し、クマリン自身が吸収を持つ200〜250nm付近の吸光度も減少した。この結果から、紫外線照射により、ITO粒子の表面を修飾していたクマリンが分解されることが確認できた。
(2−2)露光の有無による溶解性の変化の試験
前記実施例1と同様にして、塗布液Dについて、露光を行わずに現像した場合に塗布膜がどれだけ残るかを表す露光無しの残膜率Y1と、露光を行ってから現像した場合に塗布膜がどれだけ残るかを表す露光後の残膜率Y2とを算出した。
【0084】
その結果を表17に示す。
【0085】
【表17】
表17に示すように、いずれの有機物の場合でも、残膜率Y1は低く、残膜率Y2は高かった。よって、塗布液Dを用いれば、露光を行った部分については現像後でも基板に残存し、露光を行わなかった部分については、現像により除去され、結果としてパターン化された薄膜の形成が可能であることが確認できた。
(2−3)パターン解像度試験
前記「1.金属化合物薄膜の形成」で形成した、パターン化された薄膜について、目視により評価した。フォトマスク通りのパターンが形成されていれば、○と評価し、露光部の膜は残存しているものの、未露光部にも膜の残存が目視で確認された場合は、△と評価し、パターンが形成されていなければ×と評価した。
【0086】
その結果を上記表17に示す。表17に示すように、いずれの有機物の場合でも、パターンが形成されていた。
図9に、有機物がクマリンである塗布液Dを用い、基板として合成石英基板を用いた場合に形成されたパターン化された薄膜を示す。図9(a)はフォトマスクが600メッシュの場合であり、図9(b)はフォトマスクが2000メッシュの場合である。
【0087】
どのフォトマスクを用いた場合でも、マスクの開口部には薄膜が残り、遮光部の薄膜は除去されていた。また、フォトマスクの線の歪みも、パターン化された薄膜では忠実に再現されており、5μm以下のパターンでも十分に製作可能であることが確認できた。
【実施例3】
【0088】
1.金属化合物薄膜の形成
(1−1)塗布液Eの調製
公知技術(T. Hirakwa & P. V. Kamat, J. Am. Chem. Soc. 127, 3928-3934 (2005).)に従い、Ag@TiO2コアシェルナノ粒子を合成した。ここで、Ag@TiO2コアシェルナノ粒子とは、図10に示すように、Agから成るコアの周囲を、TiO2から成るシェルで覆う構造を有する粒子である。
【0089】
具体的には、硝酸銀を2 mLの水で溶解し(最終濃度: 15 mM)、これに2-プロパノール 18 mL, N, N-ジメチルホルムアミド10 mLを添加し、チタン(トリエタノールアミナート)イソプロポキシド (Aldrich)を終濃度8.3 mMになるように添加した。これを120℃まで加熱し、液が茶褐色になったところで加熱を終了した。冷却後、クマリンをTiに対して1/2当量添加し、さらに120℃で30分間加熱した。冷却後、液にヘキサン5 mL / アセトン 1 mLを添加して粒子を凝集させ、遠心分離で回収した。これをエタノールで2度洗浄した後、最終的にエタノール5 mLに懸濁したものを塗布液Eとした。塗布液Eには、Ag@TiO2コアシェルナノ粒子が含まれており、その表面はクマリンで修飾されている。
(1−2)成膜、露光、現像
塗布液Eを用い、前記実施例1と同様にして、成膜、露光、現像を行い、基板上にパターン化された薄膜を形成した。
2.金属化合物薄膜の評価
(2−1)有機物の光分解試験
塗布液Eに含まれる粒子の表面を修飾している有機物が光分解することを確かめるための試験を行った。
【0090】
塗布液Eのうち、有機物がクマリンであるものを、合成石英から成る基板の全面に塗布、乾燥して、塗布膜を形成した。そして、紫外可視分光光度計U-3310 (日立)を用いて、塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。
【0091】
次に、塗布膜に対し、Hg-Xeランプを用いて、紫外線を照射した。紫外線の照射後、再び、塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。図11に、紫外線照射を行う前の紫外可視吸収スペクトルS9と、紫外線照射を10分間行った後での紫外可視吸収スペクトルS10とを示す。なお、図11においてS10よりも下側に位置するスペクトルは、紫外線照射が20、30、40、50、60、70分間の場合のスペクトルである。
【0092】
紫外線照射10分で全波長域において吸光度が減少し、定常状態になった。この段階で、200-250 nmのクマリンそのものの吸収に由来する吸収スペクトルの微細構造が消えており、クマリンが分解されていると考えられる。
【0093】
なお、30分以上紫外線を照射すると、450 nm付近の銀の表面プラズモン共鳴吸収帯の吸光度が減少し続けが、これは銀微粒子が分解しているためと考えられる。以上から、Ag@TiO2コアシェル粒子でも、酸化チタンやITOなどの金属酸化物微粒子と同様、表面に修飾した有機物が紫外線照射で分解されることが確かめられた。
(2−2)露光の有無による溶解性の変化の試験
前記実施例1と同様にして、塗布液Eについて、露光を行わずに現像した場合に塗布膜がどれだけ残るかを表す露光無しの残膜率Y1と、露光を行ってから現像した場合に塗布膜がどれだけ残るかを表す露光後の残膜率Y2とを算出した。
【0094】
その結果を表18に示す。
【0095】
【表18】
表18に示すように、残膜率Y1は低く、残膜率Y2は高かった。よって、塗布液Eを用いれば、露光を行った部分については現像後でも基板に残存し、露光を行わなかった部分については、現像により除去され、結果としてパターン化された薄膜の形成が可能であることが確認できた。
(2−3)パターン解像度試験
前記「1.金属化合物薄膜の形成」で形成した、パターン化された薄膜について、レーザ顕微鏡VK-9700(キーエンス製)で観察した。その顕微鏡像を図12に示す。図12(a)はフォトマスクが300メッシュの場合であり、図12(b)はフォトマスクが100×400メッシュの場合である。
【0096】
どのフォトマスクを用いた場合でも、マスクの開口部には薄膜が残り、遮光部の薄膜は除去されていた。また、フォトマスクの形状が、パターン化された薄膜では忠実に再現されていた。
【0097】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体の表面に、例えば、金属化合物等から成る薄膜を形成する薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細にパターン化された金属化合物薄膜が、フラットパネルディスプレーの透明導電膜、記憶素子の誘電体膜等として広く用いられている。
パターン化された金属化合物薄膜を得る方法としては、光リソグラフィー法が知られている。この方法では、まず、金属化合物薄膜をスパッタリング等の物理的方法で製膜し、この上に感光性レジスト層を形成する。次に、所望のパターンを描画したフォトマスクを通して感光性レジスト層を露光することで潜像を形成し、これを現像してパターンを得る。このパターンを介して金属酸化物薄膜をエッチングし、レジスト層を除去すると、パターン化された金属化合物薄膜が得られる。この光リソグラフィー法は、上記のように、多段階の工程が必要であり、より少ない工程でパターン形成可能な方法が望まれている。
【0003】
そこで、感光性レジスト層を用いずに、パターン化された金属化合物薄膜を得る方法として、次のような方法が提案されている。
(i)光重合/光溶解法:感光性物質と、金属化合物前駆体である金属錯体又は金属化合物微粒子とを混合して成る塗布液を、基体の表面に塗布して塗布膜を形成する。次に、塗布膜のうち、一部のみに光照射を行う。光照射された部分では、感光性物質が重合し、不溶化する。次に、現像液で未照射部分を除去すると、塗布膜のうち、光照射により不溶化された部分のみが基体の表面に残る。最後に、焼成することで、感光性物質を除去する(特許文献1〜5参照)。
【0004】
(ii)分散性制御法:まず、有機分子で表面を修飾された金属微粒子から成る膜を基体の表面に形成する。次に、膜のうち、最終的に残したい部分に、レーザ光や紫外線を照射する。レーザ光を照射された部分では、有機分子が熱分解される。また、紫外線を照射された部分では、有機分子が金属微粒子から脱離する。次に、現像液を用いて現像を行うと、膜のうち、有機分子が熱分解又は脱離した部分は、現像液に対し不溶化しているので、基体の表面に残り、レーザ光や紫外線を照射されていない部分は除去される。紫外線の照射で有機分子を金属微粒子から脱離させる場合は、最後に、焼成することで、有機化合物を分解する(特許文献6〜10参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-114506 号公報
【特許文献2】特開2001-31417 号公報
【特許文献3】特開平10-20438 号公報
【特許文献4】特開2000-208824号公報
【特許文献5】特開2001-143526 号公報
【特許文献6】特開2001-149774 号公報
【特許文献7】特開2005-259861号公報
【特許文献8】特開2008-159754号公報
【特許文献9】特開2008-274096 号公報
【特許文献10】特開2008-83605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の光重合/光溶解法では、塗布膜を焼成して、感光性物質を分解除去することが必要である。そのため、この方法では、耐熱性が低いプラスチック等から成る基体への製膜は難しい。また、感光性物質は塗布膜中に存在するので、焼成しても、完全に除去することは困難であり、感光性物質が金属化合物薄膜中に残存し、物性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
また、上記の分散性制御法のうち、レーザ光を使用する方法では、金属薄膜及び基体が高温になるので、耐熱性が低いプラスチック等から成る基体の場合は使用できない。また、上記の分散性制御法のうち、紫外線照射により有機分子を金属微粒子から脱離させる方法でも、塗布膜中の有機分子を焼成により除去する必要があるので、耐熱性が低いプラスチック等から成る基体への適用は難しい。さらに、有機分子は塗布膜中に存在するので、焼成しても、完全に除去することは困難であり、有機分子が金属薄膜中に残存し、物性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、薄膜中に有機物等が残存しにくく、耐熱性が低い基体も使用できる薄膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の薄膜形成方法は、
少なくとも表面が界面光電気化学反応作用を有する金属化合物から成る粒子、前記粒子の表面を修飾する有機物、及び前記有機物で表面を修飾された前記粒子を分散させる分散媒から成る塗布液を、基体の表面に塗布して、塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜に、前記金属の界面光電気化学反応作用を促進する波長の電磁波を照射して前記粒子の表面を修飾する前記有機物を光分解する露光工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の薄膜形成方法では、粒子の表面を修飾する有機物を、粒子の表面で生じる界面光電気化学反応作用により分解するので、有機物が薄膜中に残り、薄膜の物性に悪影響を及ぼしてしまうようなことがない。
【0010】
また、本発明の薄膜形成方法では、上述したように、粒子の表面を修飾する有機物を、粒子の表面で生じる界面光電気化学反応作用により分解するので、有機物を分解するための焼成処理が必須ではない。そのため、例えば、耐熱性が低い材料(例えば、ガラス転移点温度が低い低耐熱性のプラスチック)から成る基体上にも、薄膜を形成できる。
【0011】
本発明の薄膜形成方法は、例えば、パターン化された薄膜を形成する用途に用いることができる。この場合、本発明の薄膜形成方法は、前記露光工程のとき、前記塗布膜のうち、一部のみに前記電磁波を照射するとともに、前記露光工程の後、前記有機物で表面を修飾された前記粒子は溶解するが、前記有機物で表面を実質的に修飾されていない前記粒子は溶解しない現像液により、前記塗布膜のうち、前記一部以外の部分を除去する現像工程を備える。前記露光工程のとき、例えば、所定のフォトマスクを用いて、前記一部を設定することができる。
【0012】
本発明の薄膜形成方法によれば、従来の光リソグラフィー法のように、感光性レジスト層を設ける必要がなく、膜のエッチングも必要ないので、工程を簡略化できる。
また、従来のリソグラフィー法のようにエッチングによってパターンを形成する方法は、酸化チタンのように酸、アルカリに対して極めて安定な物質から成る薄膜の場合には適用できなかったが、本発明の薄膜形成方法は、そのような物質から成る薄膜にも適用できる。
【0013】
前記界面光電気化学反応は、粒子の表面を構成する金属化合物の電子構造が半導体性を示すことにより生じる。界面光電気化学反応は次の三つに大別される。
(a) 光触媒反応(図1(a)参照)
金属化合物のバンドギャップを電磁波により励起すると電荷分離が起こり、価電子帯に正孔が、伝導帯に励起電子が生成する。正孔が物質分解に十分な高い酸化還元電位を持ち、励起電子が、金属化合物外の電子受容体(例えば、酸素)を還元するような十分に低い電位を持てば、粒子の表面を修飾する有機物を分解する。
(b) 界面光電荷移動(図1(b)参照)
有機物が粒子の表面に結合すると、光励起により、有機物のHOMO(最高占有分子軌道)から、金属化合物の伝導帯への直接電子移動が可能になる場合がある。この時、光吸収スペクトルには、この有機物−金属化合物間の電子遷移に基づく新たな吸収帯が現れ、この吸収帯を励起するような波長の光を照射すると、有機物に正孔が生成し、この正孔によって有機物が自己分解する。
(c) 光増感反応(図1(c)参照)
有機物のLUMO(最低非占分子軌道)のエネルギーレベルが、金属化合物の伝導帯のエネルギーレベルより十分に高ければ、有機物の光吸収帯を励起すると、励起電子が有機物から金属化合物へと移動し、有機物に生じた正孔によって自己分解が起こる。
これらの界面光電気化学反応に加えて、有機物自身の光化学反応が同時に起こってもよい。例えば、メチレンブルーなどの色素を金属化合物に結合させた場合は、色素の光励起により、上記(c)の分光増感に加え、色素の励起三重項状態と酸素分子の反応で発生した活性な一重項酸素によっても色素は分解されうる。
【0014】
金属化合物のバンドギャップエネルギーは様々であり、バンドギャップが広い金属化合物では、バンドギャップ励起のみで反応を進行させようとすると、より短波長側の紫外線光源が必要となる。しかし、バンドギャップの直接励起に基づく上記(a)の反応に加え、より長波長側に光吸収を示しうる上記(b), (c)の反応を併用することで、汎用のHg-Xeランプではバンドギャップ励起を行えない金属化合物でも、有機物を分解できる場合がある。
【0015】
前記金属化合物としては、半導体性を示す(価電子帯、伝導帯、バンドギャップを持つような電子構造を有する)ものを用いることができる。具体的には、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属フッ化物、金属カルコゲナイドなどを用いることができる。中でも、光触媒活性が知られているものが適しており、これには、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化スズ、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タングステンなどが挙げられる。前記金属化合物および有機物は、塗布液や現像液中で化学変化や分解を生じにくいことが望ましい。前記金属化合物は、複数の金属種を含んでいてもよい。そのような金属化合物としては、例えば、CIGS太陽電池に用いられるCu(InxGa1-x)Se等が挙げられる。
【0016】
前記粒子は、例えば、その表面に、銅、銀、金、白金、パラジウム、ルテニウムなどの金属微粒子や別種の金属化合物微粒子が結合していても良い。前記粒子は、複数の金属化合物種あるいは金属種から成るコア−シェル型の複合粒子でも良い。例えば、AgコアTiO2シェル微粒子やCdSe-ZnS発光性量子ドットが挙げられる。
【0017】
前記有機物は、それで表面を修飾した粒子が、塗布液及び現像液中で分散するようなものを広く用いることができる。また、有機物は、塗布液及び現像液中で、粒子の表面から分離しにくいものが好ましい。有機物は、イオン性、非イオン性、親水性、疎水性のいずれであってもよく、塗布液用溶媒、現像液、金属化合物の種類に応じて、適宜選択できる。酸化チタンから成る粒子の場合、分子内に2個以上の金属と結合しうる官能基を持ち、金属原子と官能基が五員環、六員環を有するキレート構造を取る有機物を用いれば、良好な薄膜が得られる。
【0018】
有機物として、例えば、以下の化学式1を構造単位として含む鎖状または環状分子が挙げられる。
【0019】
【化1】
化学式1において、αは、−CmH2(m-d)OR1, −CmH2(m-d)COO R1, −CmH2(m-d)COR1, −CmH2(m-d)NR1R2, −CmH2(m-d)SR1, −CmH2(m-d)SO3, −NHCOR1, −OCOR1から成る群(以下第1α群とする)から選ばれるものであり、βは、水素又は第1α群から選ばれるものである。mは0以上の任意の整数、dは0または官能基の炭化水素部分に含まれる二重結合数である。 0はその元素が存在しないことを意味する。R1, R2としては、水素または任意の官能基を含むことができる。ξ、Ψは水素または特に制限されない構造を持つ。
化学式1で表される有機物としては、例えば、表1に示されるものがある。
【0020】
【表1】
また、有機物として、例えば、以下の化学式2を構造単位として含む鎖状または環状分子が挙げられる。
【0021】
【化2】
化学式2において、nは1以上の整数とする。k, lは0以上の整数とする。EはOまたはSである。[ ]xは[ ]内の単位がC1とCn+1の間にX個存在することを意味する。Xが0のときは、[ ]内の単位が存在しないことを意味する。C1, Cn+1間のC, E, Nの順番は特に限定されない。[Cn-1]n-1のC-C結合の中には任意の数の二重結合が含まれても良い。[Cn-1]n-1のCと[N]lのNの間に任意の数の二重結合が存在しても良い。αは、−CmH2(m-d)OR1, −CmH2(m-d)COO R1, −CmH2(m-d)COR1, −CmH2(m-d)NR1R2, −CmH2(m-d)SR1, −CmH2(m-d)SO3, −NHCOR1, −OCOR1から成る群(以下、第2α群とする)から選ばれるものであり、βは、水素又は第2α群から選ばれるものである。mは0以上の任意の整数、dは0または官能基の炭化水素部分に含まれる二重結合数である。0はその元素が存在しないことを意味する。R1, R2としては、水素または任意の官能基を含むことができる。ξ、Ψは水素または特に制限されない構造をもつ。
化学式2で表される有機物としては、例えば、表2に示されるものがある。
【0022】
【表2】
また、有機物として、例えば、以下の化学式3を構造単位として含む鎖状または環状分子が挙げられる。
【0023】
【化3】
化学式3において、nは1以上の整数とする。k, lは0以上の整数とする。EはOまたはSである。[ ]xは[ ]内の単位がC1とCn+1の間にX個存在することを意味する。Xが0のときは、[ ]内の単位が存在しないことを意味する。C1, Cn+1間のC, E, Nの順番は特に限定されない。α、βは、それぞれ、= O, =N-OH, = NH, =Sから選ばれるものである。ξ、Ψは、水素または特に制限されない構造を持つ。
化学式3で表される有機物としては、例えば、表3に示されるものがある。
【0024】
【表3】
また、有機物として、例えば、以下の化学式4を構造単位として含む鎖状または環状分子が挙げられる。
【0025】
【化4】
化学式4において、nは1以上の整数とする。k, lは0以上の整数とする。EはOまたはSである。[ ]xは[ ]内の単位がC1とCn+1の間にX個存在することを意味する。Xが0のときは、[ ]内の単位が存在しないことを意味する。C1, Cn+1間のC, E, Nの順番は特に限定されない。αは、次の官能基から選択されるものである。
【0026】
=O, =N-OH, =NH, =S
また、βは、次の官能基から選択されるものである。
−CmH2(m-d)OR1, −CmH2(m-d)COO R1, −CmH2(m-d)COR1, −CmH2(m-d)NR1R2, −CmH2(m-d)SR1, −CmH2(m-d)SO3, −NHCOR1, −OCOR1
mは0以上の任意の整数、dは0または官能基の炭化水素部分に含まれる二重結合数である。0はその元素が存在しないことを意味する。R1, R2としては、水素または任意の官能基を含むことができる。ξ、Ψは水素または特に制限されない構造を持つ。
化学式4で表される有機物としては、例えば、表4に示されるものがある。
【0027】
【表4】
また、有機物として、例えば、以下の化学式5を構造単位として含む分子が挙げられる。
【0028】
【化5】
化学式5において、nは1以上の整数。[C]nはN1とN2間にn個の炭素が存在することを示す。[C]nの部分に任意の数のC-C二重結合が含まれても良い。α、β、χ、δは、それぞれ、水素または次の官能基から選ばれるものである。
CmH2(m-d)OH, CmH2(m-d)COOH, CmH2(m-d), C6H5, CmH2mC6H5
mは0以上の任意の整数、dは0または官能基の炭化水素部分に含まれる二重結合数である。0はその元素が存在しないことを意味する。ω、ξ、Ψは水素または特に制限されない構造である。
化学式5で表される有機物としては、例えば、表5に示されるものがある。
【0029】
【表5】
また、有機物として、例えば、以下の化学式6で表される分子が挙げられる。
【0030】
【化6】
化学式6において、点線の部分が存在しても良い。ξ、Ψとして各々3個以下の任意の構造の官能基を持つことができる。
化学式6で表される有機物としては、例えば、表6に示されるものがある。
【0031】
【表6】
また、有機物として、例えば、以下の化学式7で表される分子が挙げられる。
【0032】
【化7】
化学式7において、点線の部分が存在しても良い。ξ、Ψとして各々3個以下の任意の構造の官能基を持つことができる。
化学式7で表される有機物としては、例えば、表7に示されるものがある。
【0033】
【表7】
また、有機物として、例えば、以下の化学式8で表される分子が挙げられる。
【0034】
【化8】
化学式8において、ξ、Ψとして各々3個以下の任意の構造の官能基を持つことができる。
化学式8で表される有機物としては、例えば、表8に示されるものがある。
【0035】
【表8】
また、有機物として、例えば、以下の化学式9を構造単位として含む分子が挙げられる。
【0036】
【化9】
化学式9において、点線の部分に芳香環が付加されていても良い。芳香環には、許される最大数以下の任意の数の特に構造が制限されない官能基が結合していても良い。α、βは、それぞれ、次の官能基から成る群から選択されるものである。Xは、可能な数の、水素または特に構造が制限されない官能基である。
【0037】
=O, −CmH2(m-d)OR1, −CmH2(m-d)COO R1, −CmH2(m-d)COR1, −CmH2(m-d)NR1R2, −CmH2(m-d)SR1, −CmH2(m-d)SO3, −NHCOR1, −OCOR1
mは0以上の任意の整数、dは0または官能基の炭化水素部分に含まれる二重結合数である。0はその元素が存在しないことを意味する。R1, R2としては、水素または任意の官能基を含むことができる。
化学式9で表される有機物としては、例えば、表9に示されるものがある。
【0038】
【表9】
有機物がπ電子を持つ場合、有機物−金属化合物間で界面光電荷移動が起こる。酸化チタンから成る粒子の場合、有機物として、π電子を持つ1,2-エンジオール型化合物や芳香族化合物で表面を修飾すると、界面光電荷移動に基づく新たな吸収帯が発現し、本来、色を示さないこれらの有機物が着色する。このような有機物では、金属化合物のバンドギャップ励起に加え、この吸収帯の励起でも界面光電気化学反応が進行する。
【0039】
前記露光工程において電磁波を照射する光源としては、金属化合物のバンドギャップに対応した電磁波を照射する光源や、界面光電荷移動吸収帯を励起し得る光を放射する任意の光源を用いることができる。また、露光光源の形状も任意で、近接場光学顕微鏡などを光源として用いてもよい。有機物の分解は、走査型電気化学顕微鏡などによって電気化学的に分解活性種を発生させることで行ってもよい。また、電子線ビームリソグラフィー法で電子を照射することにより、有機物を分解してもよい。
【0040】
前記基体としては、有機物で修飾されていない粒子が、現像工程で剥離・溶解しないものが好ましい。基体は、エッチング等、粒子との密着性を増強するような処理をしてから用いてもよい。また、有機物で修飾されていない粒子と基体との密着性を調節するために、基体の表面をシランカップリング剤、高分子化合物等で修飾してもよい。
酸化チタンから成る粒子の場合、基体として、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、合成石英、シリコンウェハー、低耐熱性のポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド等が好適である。
【0041】
前記現像液としては、金属化合物自身を分解しないもの、有機物を分解、脱離させないものが好ましく、例えば、酸、アルカリ水溶液、有機溶媒等が挙げられる。現像液は、金属化合物の種類、有機物の種類等に応じて適宜選択できる。酸化チタン、スズ添加酸化インジウムから成る粒子の場合は、既存のレジスト剤の現像に汎用されているテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を現像液として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】界面光電気化学反応の原理を説明する説明図である。
【図2】紫外線の照射前後における塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを表すグラフである。
【図3】表面をクマリンで修飾された酸化チタンの紫外可視吸収スペクトルと、酸化チタンのみの紫外可視吸収スペクトルを表すグラフである。
【図4】紫外線照射前後における塗布膜の赤外吸収スペクトルを表すグラフである。
【図5】紫外線照射前後における有機物の残存率を表すグラフである。
【図6】有機物の化学構造を表す説明図である。
【図7】パターン化された薄膜を表す顕微鏡写真である。
【図8】紫外線の照射前後における塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを表すグラフである。
【図9】パターン化された薄膜を表す顕微鏡写真である。
【図10】Ag@TiO2コアシェルナノ粒子の構造を表す断面図である。
【図11】紫外線の照射前後における塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを表すグラフである。
【図12】パターン化された薄膜を表す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0044】
1.金属化合物薄膜の形成
(1−1)塗布液Aの調製
球状の酸化チタン微粒子(I)を、公知の方法(C. J. Barbe et al., J. Am. Ceram. Soc. 80(12), 3157-3171 (1997))に従って合成した。具体的には、まず、80 mLの0.1 M HCl水溶液に、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬)12mLを、撹拌しながら添加した。生成した白色固体を超音波洗浄器で分散した後、油浴中で、100℃, 4時間加熱した。冷却後、試料を超音波洗浄器で2時間超音波処理して粒子を分散し、やや白みがかった透明酸化チタンゾルを得た。
【0045】
次に、上記の酸化チタンゾル1.5 mLを、アセトン5 mLに滴下し、酸化チタンを析出させた。これを遠心分離で回収した後、5 mLのN, N-ジメチルアセトアミドに懸濁した。これに、酸化チタンに対して等モルの有機物を添加し、油浴中で、100℃, 30分間加熱撹拌した。冷却後、これにアセトン1 mL, ヘキサン5 mLを添加して有機物で表面を修飾された酸化チタン粒子を析出させ、遠心分離で沈殿させた。これをアセトンで2回洗浄した後、エタノール3 mLに懸濁したものと塗布液Aとした。
【0046】
上記有機物としては、表10、表11、及び表12に示すものをそれぞれ用いた。
【0047】
【表10】
【0048】
【表11】
【0049】
【表12】
(1−2)塗布液Bの調製
棒状の酸化チタン微粒子(II)を、公知技術(P. D. Cozzoli et al., J. Am. Chem. Soc. 125, 14539-14548 (2003))に従って合成した。具体的には、オレイン酸35 gに5 mmolのチタンテトライソプロポキシドを添加し、撹拌した後、これに2 mLの25wt%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を添加し、さらに100℃で4時間、撹拌した。冷却後、反応溶液5 mLに15 mLのメタノールを添加して酸化チタンを析出させ、遠心分離で回収した。
【0050】
次に、上記のようにして得られた棒状の酸化チタン微粒子(II)をメタノールで1回洗浄した後、トルエン5 mLに懸濁し、塗布液Bとした。なお、塗布液B中の棒状の酸化チタン微粒子(II)は、表面をオレイン酸(有機物)で修飾されている。
(1−3)塗布液Cの調製
前記塗布液Bの調製過程で得られた反応溶液5 mLにメタノール15 mLを入れて酸化チタンを析出させた後、沈殿をメタノール5 mLで1回洗浄し、これをトルエン5 mL/N,N-ジメチルアセトアミド5 mLの混合溶媒に懸濁した。これに酸化チタンと等モルの没食子酸を加え、100℃で30分間撹拌した。没食子酸の添加により、液は赤褐色に着色した。冷却後、ヘキサン5 mLを添加して酸化チタンを析出させ、遠心分離で沈殿させた。沈殿をアセトンで2回洗浄し、最終的にエタノール5 mLに懸濁して、塗布液Cとした。なお、塗布液C中の棒状の酸化チタン微粒子(II)は、表面を没食子酸(有機物)で修飾されている。
(1−4)成膜
基板(基体)として、表13に示すものをそれぞれ用いた。
【0051】
【表13】
基板のうち、PC, PETから成るものは、エタノールで表面を脱脂してから用いた。他の基板は前処理なしでそのまま用いた。
【0052】
基板の表面に塗布液0.5 mLをスピンコート法により塗布し、塗布膜を形成した。塗布液としては、前記塗布液A、B、Cをそれぞれ用いた。スピンコートの条件は、1000 rpm, 20秒間とした。塗布後、PC, PETから成る基板の場合は、50℃で2分間乾燥し、その他の基板の場合は、100℃で2分間乾燥した。
(1−5)露光
成膜後の基板上に、フォトマスクを載せ、その上に、2 mm厚の合成石英板を重ね、全体をクリップで固定した。フォトマスクは、銅メッシュ(TEM用グリッドメッシュ)であって、表14に示すものをそれぞれ用いた。
【0053】
【表14】
ライトガイド付きHg-Xeランプ光源(LA-310UV; 林時計工業)を用い、基板に紫外線を照射し、露光を行った。ランプ光源から石英板までの距離は、紫外線強度計(カスタム社製UVA-365)で測定した紫外線強度が15 mW cm-2になるように調整した。
(1−6)現像
所定時間露光を行った後の基板を、2.5wt%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に30秒間浸漬して現像処理を行った。その後、ミリポア水で30秒間洗浄してTMAHを除去した後、空気を吹き付けて乾燥した。
【0054】
2.金属化合物薄膜の評価
(2−1)有機物の光分解試験(その1)
塗布液に含まれる粒子の表面を修飾している有機物が光分解することを確かめるための試験を行った。
【0055】
塗布液Aのうち、有機物として6,7-ジヒドロキシ-4-メチルクマリン(以下、クマリンとする)を用いたものを、合成石英から成る基板の全面に塗布、乾燥して、塗布膜を形成した。そして、紫外可視分光光度計U-3310 (日立)を用いて、塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。
【0056】
次に、塗布膜に対し、Hg-Xeランプを用いて、紫外線を照射した。紫外線の照射は、全光の場合と、シャープカットフィルター(390 nmで透過率50%、シグマ光機SCF-50S-39L)を通した光を照射する場合とを、それぞれ行った。
【0057】
紫外線の照射後、再び、塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。図2(a)に、紫外線照射を行う前の紫外可視吸収スペクトルS1と、全光の紫外線照射を60分間行った後での紫外可視吸収スペクトルS2とを示す。
【0058】
また、図2(b)に、シャープカットフィルターを通した紫外線照射を10分間行った後での紫外可視吸収スペクトルS3と、シャープカットフィルターを通した紫外線照射を180分間行った後での紫外可視吸収スペクトルS4とを示す。なお、図2(b)において、S3とS4の間に位置するスペクトルは、紫外線照射時間が10分と180分との間(70、100、130、160分)である場合におけるスペクトルである。
【0059】
また、図3に、表面をクマリンで修飾された酸化チタンの紫外可視吸収スペクトルS5と、酸化チタンのみの紫外可視吸収スペクトルS6を示す。
S1とS5は同一であり、S2とS6は同一である。また、S4とS6も同一である。この結果から、全光の紫外線照射でも、シャープカットフィルターを通した紫外線照射でも、酸化チタン粒子の表面を修飾していたクマリンが分解されることが確認できた。
【0060】
なお、シャープカットフィルターを通した紫外線の波長は、酸化チタンのバンドギャップに対応する波長ではないが、シャープカットフィルターを通した紫外線照射でも、酸化チタン粒子の表面を修飾していたクマリンが分解されることから、バンドギャップ励起による光触媒反応だけではなく、界面光電荷移動によっても、クマリンが分解されることが確認できた。
【0061】
また、上記の塗布膜について、紫外線照射前、紫外線照射10分後、及び紫外線照射20分後に、赤外吸収スペクトルを測定した。赤外吸収スペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR-670 (日本分光)を用いて、一回反射ATR法で測定した。その結果を図4の(a)〜(c)に示す。また、酸化チタンのみの赤外吸収スペクトルを図4(d)に示す。
【0062】
紫外線照射前の赤外吸収スペクトルには、1200-1800 cm-1の波長域に8本程度のクマリンの官能基由来の吸収(図4(a)において*で示すピーク)が見られた。紫外線照射によって、これらのピークは小さくなり、紫外線照射20分後の赤外吸収スペクトルは、酸化チタンのみの赤外吸収スペクトルとほぼ同じになった。この結果から、紫外線照射後において、クマリンは、酸化チタンの表面から脱離しただけではなく、分解除去されていることが確認できた。
(2−2)有機物の光分解試験(その2)
塗布液に含まれる粒子の表面を修飾している有機物が光分解することを確かめるための試験を行った。
【0063】
塗布液Aのうち、有機物がプロトカテク酸、サリチル酸、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン、1,2-ヘキサンジオールであるものを、それぞれ、合成石英基板の表面に塗布、乾燥し、塗布膜を形成した。この塗布膜に、Hg-Xeランプを用いて紫外線を照射した。そして、所定時間ごとに、紫外可視吸収スペクトルを測定した。さらに、以下の式により、その時点における有機物の残存率Xを算出した。
【0064】
X=(A−A0)/A0
ここで、Aは、その時点における有機物のピーク波長での吸光度であり、A0は、紫外線を充分長時間照射し、紫外可視吸収スペクトルが定常状態となったときの有機物のピーク波長での吸光度である。結果を図5に示す。
【0065】
図5に示すように、いずれの有機物も、紫外線照射により分解された。特に、直鎖アルキル基のみからなる1,2-ヘキサンジオールは、最も分解が速く、次に、プロトカテク酸が速かった。ベンゼン環を二個有する1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオンは、やや分解が遅かった。以上の結果から、有機物として、芳香族を持たないアルキルジオール、カルボン酸を用いれば、分解速度を高めることができることが確認できた。
【0066】
プロトカテク酸、没食子酸などのカテコール誘導体は、室温で撹拌しただけで使用できるという簡便さがあり、また、界面光電荷移動吸収帯が出現するため、より長波長側の光を吸収できるという点で利点がある。
【0067】
プロトカテク酸、没食子酸などの芳香族化合物が粒子の表面に結合して界面光電荷移動吸収帯が現れれば、より長波長の光で分解反応を引き起こすことができ、金属化合物のバンドギャップが励起されなくとも、有機物の分解が生じることがある。このため、有機物の選択は、光源の波長、金属化合物のバンドギャップエネルギー、界面光電荷移動吸収帯の有無等を考えて行うことが好ましい。バンドギャップ励起できるような光源下ではアルキルジオールや脂肪酸が有機物として適しており、表面に有機物が結合することで界面電荷移動吸収帯が現れるような金属化合物を、界面光電荷移動吸収帯のみを励起できるような光源下で用いる場合は、カテコール誘導体のような芳香族1,2-ジオール誘導体が有機物として適している。
(2−3)露光の有無による溶解性の変化の試験
塗布液Aのうち、有機物が表15に示すものを、それぞれ、合成石英基板の表面に塗布、乾燥し、塗布層を形成した。
【0068】
【表15】
露光を行うことなく、この塗布層が形成された石英基板を、TMAHに30秒間浸漬して現像処理を行った。その後、ミリポア水で30秒間洗浄してTMAHを除去した後、空気を吹き付けて乾燥した。また、現像前後において、有機物の紫外可視吸収スペクトルを測定した。
【0069】
また、塗布層を形成した後、露光を行ってから、上と同様に現像処理を行った。そして、現像前後において、有機物の紫外可視吸収スペクトルを測定した。なお、露光は、有機物が分解され、紫外可視吸収スペクトルが定常状態に落ち着くまで充分時間をかけて行った。有機物が粒子の表面を修飾しても紫外可視吸収スペクトルに大きな変化が見られない1,2-ヘキサンジオール、1,2-ドデカンジオール、オクタン酸の場合は、一回反射ATRで測定した赤外吸収スペクトルが定常になるまで露光を行った。
【0070】
以下の式により、露光を行わずに現像した場合に塗布膜がどれだけ残るかを表す露光無しの残膜率Y1と、露光を行ってから現像した場合に塗布膜がどれだけ残るかを表す露光後の残膜率Y2とを算出した。
【0071】
Y1=(B2−B0)/(B1−B0)
Y2=(B3−B0)/(B1−B0)
ここで、B0は、有機物の吸収波長における、合成石英基板のみの吸光度である。B1は、露光を行った後、現像前における吸光度である。B2は、露光を行わずに現像した後における吸光度である。B3は、露光を行ってから現像した後における吸光度である。
【0072】
その結果を上記表15に示す。
表15に示すように、いずれの有機物の場合でも、残膜率Y1は低く、残膜率Y2は高かった。よって、塗布液Aを用いれば、露光を行った部分については現像後でも基板に残存し、露光を行わなかった部分については、現像により除去され、結果としてパターン化された薄膜の形成が可能であることが確認できた。
残膜率Y1は、有機物のうち、金属に結合可能な二個以上の官能基を持ち、金属原子−官能基−官能基が結合する炭素原子が五員環あるいは六員環のキレート構造を取り得る分子(図6参照)で特に低かった。これに該当する有機物としては、1,2-エンジオール型、ヒドロキシキノリン、1,2-ジオール型、β-ジケトン型、サリチル酸がある。特に、1,2-エンジオール型のプロトカテク酸、没食子酸、クマリンは、酸化チタンと混合して室温で撹拌するだけで安定に粒子の表面に結合し、低い残膜率Y1が得られ、製造の容易さという点で大きな利点があることがわかった。
また、金属に結合可能な官能基を一個しか持たないような有機物でも、有機物と酸化チタンをN,N-ジメチルアセトアミドなど極性非プロトン性溶媒中で加熱することで、低い残膜率Y1は、が得られた。
(2−4)パターン解像度試験(その1)
前記「1.金属化合物薄膜の形成」で形成した、パターン化された薄膜を目視で観察した。フォトマスク(表14におけるNo.1のフォトマスク)通りのパターンが形成されていれば、○と評価し、パターンが形成されていなければ×と評価した。
【0073】
塗布液Aのうち、有機物が上記表15に示すものについての結果を上記表15に示す。表15に示すように、いずれの有機物の場合でも、パターンが形成されていた。また、塗布液B、Cを用いた場合でも、正確なパターンが形成できた。
(2−5)パターン解像度試験(その2)
前記「1.金属化合物薄膜の形成」で形成した、パターン化された薄膜を、レーザ顕微鏡VK-9700(キーエンス製)で観察した。
【0074】
図7に、塗布液として、塗布液Aのうち、有機物がプロトカテク酸であるものを用い、基板として合成石英基板を用いた場合に形成されたパターン化された薄膜を示す。
どのフォトマスクを用いた場合でも、マスクの開口部には薄膜が残り、遮光部の薄膜は除去されていた。600、2000メッシュのフォトマスクの場合は、残膜部間の距離は、マスクの線径と同じ5μmであった。2000メッシュのフォトマスクの場合は、残膜部の一辺の長さは7.5μmであり、フォトマスクの開口の一辺の長さに等しかった。また、フォトマスクの線の歪みも、パターン化された薄膜では忠実に再現されており、5μm以下のパターンでも十分に製作可能であることが確認できた。
(2−6)基板の種類に関して
前記「1.金属化合物薄膜の形成」で形成した、パターン化された薄膜において、基板の種類のみ異なり、その他は同条件であるものを、レーザ顕微鏡VK-9700(キーエンス製)で観察した。なお、塗布液としては、塗布液Aのうち、有機物がプロトカテク酸であるものを用いた。また、基板の種類は、前記表13に記載された基板のうち、合成石英、PC、PET、ポリイミドとした。
【0075】
いずれの基板を用いた場合でも、600、2000メッシュのフォトマスクに用いてパターン化された薄膜の形成が可能で、基板が合成石英である場合と同程度の寸法再現性が得られた。
(2−7)現像液濃度に関する試験
基本的には前記「1.金属化合物薄膜の形成」と同様の方法であるが、現像液であるTMAH濃度を様々に変化させて試験を行った。
【0076】
その結果、TMAH濃度が0.025wt%以上であれば、プロトカテク酸で修飾された酸化チタン粒子を溶解可能であり、パターン化された薄膜が形成可能であることが確認できた。また、現像液として、2.5wt%TMAHと同一モル濃度のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミンの水溶液で、2.5wt%TMAHと同じように現像できることがわかった。
【実施例2】
【0077】
1.金属化合物薄膜の形成
(1−1)塗布液Dの調製
酢酸インジウム0.2 M、塩化スズ(II)20 mMをN,N-ジメチルアセトアミド(DMA)へ添加し、これにトリエチルアミン0.6 Mを加えて、140℃で1時間加熱撹拌した。加熱撹拌により酢酸インジウムは溶解し、透明暗緑色の液体になった。これに、DMAに対して5vol%の水を添加し、140℃でさらに3時間加熱撹拌した。水の添加によってインジウム錯体の加水分解が進み、溶液は白濁した。反応後、遠心分離でITOナノ粒子を回収し、アセトンで2回洗浄した。得られたITOは暗青色で、還元型ITOと思われる。
【0078】
ITOナノ粒子をDMAに懸濁し(濃度は約0.16 M)、Inに対して1/3当量の有機物を添加して室温で30分間放置した。有機物としては、表16に示すものをそれぞれ用いた。
【0079】
【表16】
放置後、液にヘキサン5 mL, アセトン1 mLを添加し、遠心分離で、表面を有機物で修飾されたナノ粒子を回収した。これをエタノール3 mLに懸濁したものを、塗布液Dとした。
(1−2)成膜、露光、現像
塗布液Dを用い、前記実施例1と同様にして、成膜、露光、現像を行い、基板上にパターン化された薄膜を形成した。ただし、基板としては、50×50×2mmサイズの合成石英基板を用いた。
【0080】
2.金属化合物薄膜の評価
(2−1)有機物の光分解試験
塗布液に含まれる粒子の表面を修飾している有機物が光分解することを確かめるための試験を行った。
【0081】
塗布液Dのうち、有機物がクマリンであるものを、合成石英から成る基板の全面に塗布、乾燥して、塗布膜を形成した。そして、紫外可視分光光度計U-3310 (日立)を用いて、塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。
【0082】
次に、塗布膜に対し、Hg-Xeランプを用いて、紫外線を照射した。紫外線の照射後、再び、塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。図8に、紫外線照射を行う前の紫外可視吸収スペクトルS7と、紫外線照射を20分間行った後での紫外可視吸収スペクトルS8とを示す。
【0083】
紫外可視吸収スペクトルS7には、350nmの部分に、界面光電荷移動吸収帯が現れていた。紫外可視吸収スペクトルS8では、このピークが消失し、クマリン自身が吸収を持つ200〜250nm付近の吸光度も減少した。この結果から、紫外線照射により、ITO粒子の表面を修飾していたクマリンが分解されることが確認できた。
(2−2)露光の有無による溶解性の変化の試験
前記実施例1と同様にして、塗布液Dについて、露光を行わずに現像した場合に塗布膜がどれだけ残るかを表す露光無しの残膜率Y1と、露光を行ってから現像した場合に塗布膜がどれだけ残るかを表す露光後の残膜率Y2とを算出した。
【0084】
その結果を表17に示す。
【0085】
【表17】
表17に示すように、いずれの有機物の場合でも、残膜率Y1は低く、残膜率Y2は高かった。よって、塗布液Dを用いれば、露光を行った部分については現像後でも基板に残存し、露光を行わなかった部分については、現像により除去され、結果としてパターン化された薄膜の形成が可能であることが確認できた。
(2−3)パターン解像度試験
前記「1.金属化合物薄膜の形成」で形成した、パターン化された薄膜について、目視により評価した。フォトマスク通りのパターンが形成されていれば、○と評価し、露光部の膜は残存しているものの、未露光部にも膜の残存が目視で確認された場合は、△と評価し、パターンが形成されていなければ×と評価した。
【0086】
その結果を上記表17に示す。表17に示すように、いずれの有機物の場合でも、パターンが形成されていた。
図9に、有機物がクマリンである塗布液Dを用い、基板として合成石英基板を用いた場合に形成されたパターン化された薄膜を示す。図9(a)はフォトマスクが600メッシュの場合であり、図9(b)はフォトマスクが2000メッシュの場合である。
【0087】
どのフォトマスクを用いた場合でも、マスクの開口部には薄膜が残り、遮光部の薄膜は除去されていた。また、フォトマスクの線の歪みも、パターン化された薄膜では忠実に再現されており、5μm以下のパターンでも十分に製作可能であることが確認できた。
【実施例3】
【0088】
1.金属化合物薄膜の形成
(1−1)塗布液Eの調製
公知技術(T. Hirakwa & P. V. Kamat, J. Am. Chem. Soc. 127, 3928-3934 (2005).)に従い、Ag@TiO2コアシェルナノ粒子を合成した。ここで、Ag@TiO2コアシェルナノ粒子とは、図10に示すように、Agから成るコアの周囲を、TiO2から成るシェルで覆う構造を有する粒子である。
【0089】
具体的には、硝酸銀を2 mLの水で溶解し(最終濃度: 15 mM)、これに2-プロパノール 18 mL, N, N-ジメチルホルムアミド10 mLを添加し、チタン(トリエタノールアミナート)イソプロポキシド (Aldrich)を終濃度8.3 mMになるように添加した。これを120℃まで加熱し、液が茶褐色になったところで加熱を終了した。冷却後、クマリンをTiに対して1/2当量添加し、さらに120℃で30分間加熱した。冷却後、液にヘキサン5 mL / アセトン 1 mLを添加して粒子を凝集させ、遠心分離で回収した。これをエタノールで2度洗浄した後、最終的にエタノール5 mLに懸濁したものを塗布液Eとした。塗布液Eには、Ag@TiO2コアシェルナノ粒子が含まれており、その表面はクマリンで修飾されている。
(1−2)成膜、露光、現像
塗布液Eを用い、前記実施例1と同様にして、成膜、露光、現像を行い、基板上にパターン化された薄膜を形成した。
2.金属化合物薄膜の評価
(2−1)有機物の光分解試験
塗布液Eに含まれる粒子の表面を修飾している有機物が光分解することを確かめるための試験を行った。
【0090】
塗布液Eのうち、有機物がクマリンであるものを、合成石英から成る基板の全面に塗布、乾燥して、塗布膜を形成した。そして、紫外可視分光光度計U-3310 (日立)を用いて、塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。
【0091】
次に、塗布膜に対し、Hg-Xeランプを用いて、紫外線を照射した。紫外線の照射後、再び、塗布膜の紫外可視吸収スペクトルを測定した。図11に、紫外線照射を行う前の紫外可視吸収スペクトルS9と、紫外線照射を10分間行った後での紫外可視吸収スペクトルS10とを示す。なお、図11においてS10よりも下側に位置するスペクトルは、紫外線照射が20、30、40、50、60、70分間の場合のスペクトルである。
【0092】
紫外線照射10分で全波長域において吸光度が減少し、定常状態になった。この段階で、200-250 nmのクマリンそのものの吸収に由来する吸収スペクトルの微細構造が消えており、クマリンが分解されていると考えられる。
【0093】
なお、30分以上紫外線を照射すると、450 nm付近の銀の表面プラズモン共鳴吸収帯の吸光度が減少し続けが、これは銀微粒子が分解しているためと考えられる。以上から、Ag@TiO2コアシェル粒子でも、酸化チタンやITOなどの金属酸化物微粒子と同様、表面に修飾した有機物が紫外線照射で分解されることが確かめられた。
(2−2)露光の有無による溶解性の変化の試験
前記実施例1と同様にして、塗布液Eについて、露光を行わずに現像した場合に塗布膜がどれだけ残るかを表す露光無しの残膜率Y1と、露光を行ってから現像した場合に塗布膜がどれだけ残るかを表す露光後の残膜率Y2とを算出した。
【0094】
その結果を表18に示す。
【0095】
【表18】
表18に示すように、残膜率Y1は低く、残膜率Y2は高かった。よって、塗布液Eを用いれば、露光を行った部分については現像後でも基板に残存し、露光を行わなかった部分については、現像により除去され、結果としてパターン化された薄膜の形成が可能であることが確認できた。
(2−3)パターン解像度試験
前記「1.金属化合物薄膜の形成」で形成した、パターン化された薄膜について、レーザ顕微鏡VK-9700(キーエンス製)で観察した。その顕微鏡像を図12に示す。図12(a)はフォトマスクが300メッシュの場合であり、図12(b)はフォトマスクが100×400メッシュの場合である。
【0096】
どのフォトマスクを用いた場合でも、マスクの開口部には薄膜が残り、遮光部の薄膜は除去されていた。また、フォトマスクの形状が、パターン化された薄膜では忠実に再現されていた。
【0097】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面が界面光電気化学反応作用を有する金属化合物から成る粒子、前記粒子の表面を修飾する有機物、及び前記有機物で表面を修飾された前記粒子を分散させる分散媒から成る塗布液を、基体の表面に塗布して、塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
前記塗布膜に、前記金属の界面光電気化学反応作用を促進する波長の電磁波を照射して前記粒子の表面を修飾する前記有機物を光分解する露光工程と、
を備えることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項2】
前記露光工程のとき、前記塗布膜のうち、一部のみに前記電磁波を照射するとともに、
前記露光工程の後、前記有機物で表面を修飾された前記粒子は溶解するが、前記有機物で表面を実質的に修飾されていない前記粒子は溶解しない現像液により、前記塗布膜のうち、前記一部以外の部分を除去する現像工程を備えることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成方法。
【請求項3】
前記露光工程のとき、所定のフォトマスクを用いて、前記一部を設定することを特徴とする請求項2記載の薄膜形成方法。
【請求項4】
前記金属化合物は、酸化チタン又はスズ添加インジウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜形成方法。
【請求項5】
前記界面光電気化学反応作用は、光触媒作用、界面光電荷移動作用、及び光増感反応作用から成る群から選ばれる1以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜形成方法。
【請求項1】
少なくとも表面が界面光電気化学反応作用を有する金属化合物から成る粒子、前記粒子の表面を修飾する有機物、及び前記有機物で表面を修飾された前記粒子を分散させる分散媒から成る塗布液を、基体の表面に塗布して、塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
前記塗布膜に、前記金属の界面光電気化学反応作用を促進する波長の電磁波を照射して前記粒子の表面を修飾する前記有機物を光分解する露光工程と、
を備えることを特徴とする薄膜形成方法。
【請求項2】
前記露光工程のとき、前記塗布膜のうち、一部のみに前記電磁波を照射するとともに、
前記露光工程の後、前記有機物で表面を修飾された前記粒子は溶解するが、前記有機物で表面を実質的に修飾されていない前記粒子は溶解しない現像液により、前記塗布膜のうち、前記一部以外の部分を除去する現像工程を備えることを特徴とする請求項1記載の薄膜形成方法。
【請求項3】
前記露光工程のとき、所定のフォトマスクを用いて、前記一部を設定することを特徴とする請求項2記載の薄膜形成方法。
【請求項4】
前記金属化合物は、酸化チタン又はスズ添加インジウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜形成方法。
【請求項5】
前記界面光電気化学反応作用は、光触媒作用、界面光電荷移動作用、及び光増感反応作用から成る群から選ばれる1以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜形成方法。
【図4】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−214290(P2010−214290A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63879(P2009−63879)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(390021577)東海旅客鉄道株式会社 (413)
【Fターム(参考)】
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