説明

薄膜形成装置及び薄膜形成方法

【課題】薄膜材料の使用効率が高く、大型基板に所定の形状の薄膜を形成できる技術を提供する。
【解決手段】
材料ガス放出装置30は、内部に材料ガスが配置される中空の蒸気タンク32h、32dと、載置面13と対面する位置に配置され、蒸気タンク32h、32dにそれぞれ接続された複数の放出装置本体311、312、313と、各放出装置本体311、312、313を、載置面13に平行で薄膜形成方向5と直角な成分を有する方向にそれぞれ個別に移動する位置調整装置とを有している。材料ガス放出装置30と処理台12を一の薄膜形成方向5に沿って相対移動させながら、各放出装置本体311、312、313から材料ガスを真空槽11内に放出させて載置面13上の成膜対象物20に到達させ、直線状の薄膜を複数本同時に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜形成装置及び薄膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に所定の形状の有機又は無機分子の薄膜を形成する場合に真空蒸着法が行われていた。図5は真空蒸着法で用いられる従来の薄膜形成装置100の一例の内部構成図を示している。
【0003】
真空蒸着法では、真空排気装置112により真空排気された真空槽111内で、基板122に所定の形状の開口を有するマスク121を貼り合わせ、基板122から離れた位置に配置された蒸発源141から薄膜材料145を加熱して材料ガスを放出させ、放出された材料ガスをマスク121の開口から露出する基板122の表面に到達させ、基板122の表面に開口と同じ形状の薄膜を形成する。符号142は薄膜材料145を加熱する加熱装置を示している。
【0004】
しかしながら、この真空蒸着法では、マスク121が蒸発源141からの熱を受けて膨張すると、マスク121の開口の形状が変形し、基板122に形成される薄膜の形状が変形するという問題があった。そこで、成膜中にマスク121を冷却しておく必要があるのだが、近年の基板の大型化に伴ってマスクも大型化し、冷却装置124によりマスク121の周辺部を冷却しても、マスク121の中央部を効果的に冷却できないという問題が生じていた。すなわち、大面積の基板に微細な形状の薄膜を形成することが困難であった。
【0005】
また、マスク121と基板122とを貼り合わせるために、マスク121と基板122とのアライメントに時間がかかり、生産効率が悪かった。
さらに、蒸発源141から放出された材料ガスは真空槽111内に拡散し、マスク121の開口が微細な場合には、開口を通過して基板122に付着する材料ガスの充填率が悪かった。
【0006】
また、基板122に成膜すると同時に材料ガスはマスク121の開口の外側の遮蔽部にも付着する。マスク121の遮蔽部に堆積する薄膜が厚くなると、この薄膜が開口の縁を覆って、基板122に形成される薄膜の形状が歪むという問題があった。また、マスク121の遮蔽部に付着した薄膜材料は無駄になったり、パーティクルになったりして、コストと品質面で問題があった。
【0007】
さらに、基板122とマスク121以外にも、真空槽111の槽壁や防着板(不図示)にも材料ガスは付着し、薄膜材料が無駄になったり、パーティクルになったりして、コストと品質面で問題があった。
【0008】
一方、特許文献1又は特許文献2では、インクジェット吐出装置から薄膜材料を含有する吐出液を吐出させ、基板の所定位置に着弾させて、基板に所定の形状の薄膜を形成するインクジェット法が開示されている。インクジェット法では、真空蒸着法における上記問題が生じないという利点がある。
【0009】
しかしながら、インクジェット法では、吐出液には薄膜材料に加えて溶剤が含まれる。基板に形成される薄膜中に溶剤が残留すると、薄膜の膜質に影響するという問題があった。また、基板表面に予め別の薄膜(下地膜)が形成されている場合には、基板表面に吐出液が着弾すると、吐出液中の溶剤がこの下地膜を損傷するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−106278号公報
【特許文献2】特開2005−56614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、薄膜材料の使用効率が高く、大型基板に所定の形状の薄膜を形成できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、真空槽と、前記真空槽内に配置され、成膜対象物が載置面上に配置される処理台と、材料ガスを前記真空槽内に放出させて前記載置面上の前記成膜対象物に到達させ、薄膜を形成する材料ガス放出装置と、前記材料ガス放出装置と前記処理台を、前記載置面と平行な一の薄膜形成方向に沿って相対移動する移動装置とを有する薄膜形成装置であって、前記材料ガス放出装置は、内部に前記材料ガスが配置される中空の蒸気タンクと、前記載置面と対面する位置に配置され、前記蒸気タンクにそれぞれ接続された複数の放出装置本体と、各前記放出装置本体を、前記載置面に平行で前記薄膜形成方向と直角な成分を有する方向にそれぞれ個別に移動する位置調整装置と、を有し、各前記放出装置本体には、先端が前記載置面に向けられた細管がそれぞれ接続され、前記蒸気タンク内の前記材料ガスが、各前記放出装置本体に供給され、各前記細管の先端から放出され、前記処理台に配置された成膜対象物の表面に到達して薄膜が形成される薄膜形成装置である。
本発明は薄膜形成装置であって、前記成膜対象物の表面のアライメントマークを撮像する撮像装置と、前記撮像装置の撮像画像から、前記アライメントマークと各前記放出装置本体との相対位置を認識し、前記位置調整装置に制御信号を送って、各前記放出装置本体を、前記成膜対象物の表面の各前記放出装置本体とそれぞれ対応する所定位置に移動させる制御装置と、を有する薄膜形成装置である。
本発明は薄膜形成装置であって、前記蒸気タンクと前記放出装置本体とを接続する供給管の少なくとも一部は曲がることができる柔軟な材質で形成された薄膜形成装置である。
本発明は薄膜形成装置であって、前記蒸気タンクとは離間した位置に、内部に薄膜材料が配置されたガス発生装置が配置され、前記ガス発生装置は前記蒸気タンクに接続され、前記ガス発生装置内で前記薄膜材料が加熱されて蒸発して前記材料ガスが生成され、前記蒸気タンクに供給されるように構成された薄膜形成装置である。
本発明は薄膜形成装置であって、前記材料ガス放出装置は、各前記放出装置本体よりも前記載置面に近い位置に、前記載置面と対面して配置された防熱板と、各前記防熱板に形成され、前記細管が挿通された孔とを有し、前記細管の先端は前記防熱板よりも前記処理台に近い位置に配置された薄膜形成装置である。
本発明は薄膜形成装置であって、前記細管と前記孔の内周とは離間された薄膜形成装置である。
本発明は薄膜形成装置であって、前記細管と前記孔の内周との間には断熱材が配置された薄膜形成装置である。
本発明は、真空槽内を真空排気し、材料ガスを、前記真空槽内に配置された放出装置本体に供給し、前記放出装置本体に接続された細管の先端から放出させ、前記細管の先端と対面する成膜対象物の表面に到達させながら、前記放出装置本体と前記成膜対象物を、前記成膜対象物表面と平行な一の薄膜形成方向と平行に相対移動させて、前記成膜対象物の表面に薄膜を形成する薄膜形成方法であって、複数台の前記放出装置本体が互いに同じ蒸気タンクに接続された材料ガス放出装置を用いて、前記成膜対象物表面に、成膜すべき領域である成膜直線を前記薄膜形成方向と平行に複数本あらかじめ定めておき、各前記放出装置本体を、前記成膜対象物表面と平行で前記薄膜形成方向と直角な成分を有する方向にそれぞれ個別に移動させて、各前記細管の先端をそれぞれ異なる前記成膜直線と対面させ、材料ガスを、前記蒸気タンク内に供給して各前記放出装置本体に分配し、各前記細管の先端からそれぞれ放出させ、前記成膜対象物の表面に到達させながら、前記材料ガス放出装置と前記成膜対象物を、前記薄膜形成方向と平行に相対移動させて、前記成膜対象物の表面の複数の前記成膜直線上に同時に薄膜を形成する薄膜形成方法である。
本発明は薄膜形成方法であって、各前記放出装置本体を前記成膜対象物表面と平行で前記薄膜形成方向と直角な成分を有する方向にそれぞれ個別に移動させる前に、前記成膜対象物の表面のアライメントマークを撮像し、撮像結果から、前記アライメントマークと各前記放出装置本体との相対位置を認識する薄膜形成方法である。
【発明の効果】
【0013】
マスクを用いなくても所定の形状の薄膜を形成することができるので、大面積基板にパターン膜を形成することが容易になる。
直線状の薄膜を複数本同時に形成することができるので、成膜速度が上がる。
細管の先端から放出された材料ガスが広がる前に成膜対象物の表面に到達させ、付着させるので、薄膜材料を節約できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の薄膜形成装置の平面図
【図2】本発明の薄膜形成装置のA−A線切断断面図
【図3】放出装置本体の内部構成図
【図4】(a)〜(c):細管の先端の中空部分の形状を説明するための図
【図5】従来の薄膜形成装置の一例の内部構成図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<薄膜形成装置の構造>
本発明の薄膜形成装置の構造を説明する。
図1は薄膜形成装置10の一例の平面図、図2は同A−A線切断断面図を示している。
【0016】
この薄膜形成装置10は、真空槽11と、真空槽11内に配置され、成膜対象物20が載置面13上に配置される処理台12と、材料ガスを真空槽11内に放出させて載置面13上の成膜対象物20に到達させ、薄膜を形成する材料ガス放出装置30と、材料ガス放出装置30と処理台12を、載置面13と平行な一の薄膜形成方向5に沿って相対移動する移動装置とを有している。図1では真空槽11を省略している。
【0017】
処理台12は、板状の成膜対象物20を配置する載置面13を有しており、ここでは処理台12は、載置面13を鉛直上方に向け、真空槽11の内部に配置されている。
真空槽11には真空ポンプ14が接続されており、内部を真空排気できるようにされている。
【0018】
材料ガス放出装置30は、内部に材料ガスが配置される1乃至複数個の中空の蒸気タンク32h、32dと、載置面13と対面する位置に配置され、蒸気タンク32h、32dにそれぞれ接続された複数の放出装置本体311、312、313と、各放出装置本体311、312、313を、載置面13に平行で薄膜形成方向5と直角な成分を有する方向にそれぞれ個別に移動する位置調整装置531、532、533とを有している。
【0019】
本例の薄膜形成装置10は、第一の蒸気タンク32hと第二の蒸気タンク32dの二台を有している。ここでは第一、第二の蒸気タンク32h、32dは真空槽11の内部に配置されているが、真空槽11の外側に配置されていてもよい。
【0020】
第一、第二の蒸気タンク32h、32dとは離間した位置には、内部に薄膜材料が配置された一乃至複数台のガス発生装置33hR、33hG、33hB、33dR、33dG、33dBが配置されている。
【0021】
本例の薄膜形成装置10は、R、G、Bの第一のガス発生装置33hR、33hG、33hBと、R、G、Bの第二のガス発生装置33dR、33dG、33dBを有している。R、G、Bの第一のガス発生装置33hR、33hG、33hB内にはR(赤)、G(緑)、B(青)の各色のホストとなる有機薄膜材料がそれぞれ別々に配置され、R、G、Bの第二のガス発生装置33dR、33dG、33dB内にはR、G、Bの各色のドーパントとなる有機材料がそれぞれ別々に配置されている。
【0022】
第一、第二の蒸気タンク32h、32dには、内部と連通する第一、第二の配管38h、38dがそれぞれ接続されている。R、G、Bの第一のガス発生装置33hR、33hG、33hBはそれぞれR、G、Bの第一のバルブ39hR、39hG、39hBを介して第一の配管38hに接続され、R、G、Bの第二のガス発生装置33dR、33dG、33dBは、それぞれR、G、Bの第二のバルブ39dR、39dG、39dBを介して第二の配管38dに接続されている。
【0023】
各ガス発生装置33hR、33hG、33hB、33dR、33dG、33dBには、ここでは不図示の線状のヒータがそれぞれ巻き回されている。ヒータが発熱すると、各ガス発生装置33hR、33hG、33hB、33dR、33dG、33dB内の薄膜材料がそれぞれ個別に加熱され、蒸発温度以上の温度に昇温して、薄膜材料の蒸気から成る材料ガスが生成されるようになっている。
【0024】
また、各ガス発生装置33hR、33hG、33hB、33dR、33dG、33dBには、キャリアガスを放出するキャリアガス導入装置37hR、37hG、37hB、37dR、37dG、37dBがそれぞれ接続されている。
【0025】
R、G又はBの第一のバルブ39hR、39hG又は39hBを開いた状態で、キャリアガス導入装置37hR、37hG又は37hBからR、G又はBの第一のガス発生装置33hR、33hG又は33hBにキャリアガスを導入すると、生成されたR、G又はBのホストの材料ガスはキャリアガスと一緒に第一の配管38hを通って第一の蒸気タンク32hに供給されるようになっている。
【0026】
また、R、G又はBの第二のバルブ39dR、39dG又は39dBを開いた状態で、キャリアガス導入装置37dR、37dG又は37dBからR、G又はBの第二のガス発生装置33dR、33dG又は33dBにキャリアガスを導入すると、生成されたR、G又はBのホストの材料ガスはキャリアガスと一緒に第二の配管38dを通って第二の蒸気タンク32dに供給されるようになっている。
【0027】
放出装置本体311、312、313の構造は同じであり、図3に、一台の放出装置本体311を例にして説明する。
放出装置本体311は、載置面13と対面する位置に配置されており、ここでは載置面13の上方に配置されている。
【0028】
放出装置本体311の載置面13と対面する部分には、細管351が鉛直に設けられており、細管351の先端は、載置面13に向けられている。細管351の中空部分は、放出装置本体311の内部の空間に接続されている。
【0029】
蒸気タンク32h、32dと放出装置本体311は、少なくとも一部が曲がることができる柔軟な材質で形成された供給管34h1、34d1で接続されている。柔軟な材質には、例えば耐熱性のゴムやベローズを用いることができる。
【0030】
ここでは供給管34h1、34d1の一部は伸び縮みできるように構成されているが、曲がることができるならばこの構成に限定されず、弛んでいたものが伸びたり、弛むことで縮むように構成されていてもよい。
【0031】
ここでは放出装置本体311には供給管34h1、34d1の一端がそれぞれ固定され、供給管34h1、34d1の他端は蒸気タンク32h、32dにそれぞれ固定されている。供給管34h1、34d1の一端と他端の間の少なくとも一部は柔軟な材質で形成され、放出装置本体311を蒸気タンク32h、32dに対して幅方向6成分を有する方向に相対移動させると、相対移動に伴って供給管34h1、34d1は屈曲できるようになっている。
【0032】
蒸気タンク内32h、32dに供給された材料ガスは、キャリアガスと一緒に供給管34h1、34d1を通り、放出装置本体311に供給される。
ここでは蒸気タンク32h、32dの外周と供給管34h1、34d1の外周には線状ヒータ61が巻き回されており、線状ヒータ61を発熱させると、蒸気タンク32h、32dと供給管34h1、34d1とが加熱されて薄膜材料の蒸発温度以上の温度に昇温するようにされている。従って、蒸気タンク32h、32dの内部に供給された材料ガスが、蒸気タンク32h、32dの内壁面や供給管34h1、34d1の内壁面に析出しないようになっている。
【0033】
ここでは二本の供給管34h1、34d1によって、第一、第二の蒸気タンク32h、32dが放出装置本体311とそれぞれ別々に接続され、ホスト用の有機材料ガスとドーパント用の有機材料ガスは別々に、キャリアガスと一緒に放出装置本体311に供給され、放出装置本体311内で混合され、細管351を通って細管351の先端から真空槽11の内部に放出される。
【0034】
図4(a)は放出装置本体311の載置面13と対面する部分の模式図を示している。細管351の先端の中空部分の形状は、四辺が薄膜形成方向5又は載置面13と平行で薄膜形成方向5と直角な幅方向6と平行な四角形であり、ここでは正方形である。従って、材料ガスは細管351の先端から幅方向6に対して均一な放出量で放出される。
【0035】
位置調整装置531はここでは不図示の動力発生部とガイドを有している。動力発生部は例えば真空対応のモーターやピエゾ素子である。ガイドは載置面13に平行で薄膜形成方向5と直角な成分を有する方向に沿って延設されている。
【0036】
位置調整装置531はモーターやピエゾ素子の動力を冷却容器411に伝達して、冷却容器411を放出装置本体311と一緒に、ガイドに沿って移動させるように構成されている。供給管34h1、34d1の少なくとも一部は柔軟な材質で形成されており、位置調整装置531を動作させると、供給管34h1、34d1を屈曲させながら、静止した蒸気タンク32h、32dに対して放出装置本体311を、載置面13に平行で薄膜形成方向5と直角な成分を有する方向に移動できるようになっている。
【0037】
図2を参照し、各放出装置本体311、312、313の細管351、352、353は、載置面13に平行で薄膜形成方向5と直角な幅方向6に離間して配置されている。各位置調整装置531、532、533をそれぞれ個別に動作させると、隣り合う二つの細管351、352、353の幅方向6の間隔をそれぞれ調整できる。
【0038】
また、材料ガス放出装置30は、成膜対象物20の表面のアライメントマークを撮像する撮像装置511、512、513と、撮像装置511、512、513の撮像画像から、アライメントマークと各放出装置本体311、312、313との相対位置を認識し、位置調整装置531、532、533に制御信号を送って、各放出装置本体311、312、313を、成膜対象物20の表面の、各放出装置本体311、312、313とそれぞれ対応する所定位置に移動させる制御装置52とを有している。
【0039】
撮像装置511、512、513はここではCCDカメラであり、撮像面を載置面13と対面させて配置され、成膜対象物20の表面に設けられたアライメントマークを撮像し、撮像画像を制御装置52に電送するように構成されている。
【0040】
本例では撮像装置511、512、513は、各冷却容器411、412、413の壁面にそれぞれ取り付けられている。各撮像装置511、512、513の構造は同じであり、符号511の撮像装置で代表して説明すると、撮像装置511で撮像された撮像画像内の位置と、この冷却容器411内に配置された放出装置本体311の細管351との幅方向6の相対位置関係を予め求めておくと、撮像装置511の撮像画像から、アライメントマークと放出装置本体311の細管351との幅方向6の相対位置が分かるようになっている。
【0041】
放出装置本体311、312、313にはそれぞれ異なる撮像装置511、512、513が冷却容器411、412、413を介して取り付けられており、例えば成膜対象物20の表面が熱の影響で部分的に伸縮するなど、成膜対象物20と材料ガス放出装置30のいずれか一方又は両方に長さの不確定要素があっても、アライメントマークと放出装置本体311、312、313の細管351、352、353との幅方向6の相対位置がそれぞれ正確に分かるようになっている。
【0042】
制御装置52は、撮像装置511、512、513から電送された撮像画像中からアライメントマークを認識し、アライメントマークと放出装置本体311、312、313の細管351、352、353との幅方向6の相対位置を認識する。
【0043】
成膜対象物20表面に各放出装置本体311、312、313とそれぞれ対応する所定位置が予め定められている場合には、制御装置52は、放出装置本体311、312、313の細管351、352、353と、成膜対象物20表面の対応する所定位置との間の幅方向6の誤差量をそれぞれ求め、位置調整装置531、532、533に制御信号を送って、放出装置本体311、312、313をそれぞれ個別に移動させて前記誤差量の絶対値をそれぞれ減少させ、各放出装置本体311、312、313の細管351、352、353の先端を、成膜対象物20表面の対応する所定位置と対面させるように構成されている。
【0044】
移動装置はここでは直線状のレール18と、不図示のモーターとを有している。レール18は、載置面13と平行な一の薄膜形成方向5と平行に向けられて、処理台12と真空槽11の壁面との間に配置され、ここでは処理台12の下方を向いた面と真空槽11の底面との間に配置されている。処理台12のレール18と対面する部分にはレール18に沿って直線状の溝が設けられ、レール18は溝に嵌め合わされ、処理台12はレール18に沿って滑動可能にされている。モーターは動力を処理台12に伝達して、処理台12をレール18に沿って一定の速度で直線移動できるように構成されている。
【0045】
移動装置によって処理台12を移動すると、処理台12上の成膜対象物20は、静止した放出装置本体311、312、313の下方を、一の薄膜形成方向5に沿って直線移動するようになっており、蒸気タンク32h、32dから各放出装置本体311、312、313に分配され、各細管351、352、353の先端から放出された材料ガスによって、成膜対象物20表面には、マスクを設けなくても、直線状の薄膜が薄膜形成方向5と平行に複数本同時に形成される。
【0046】
本発明の移動装置は、処理台12と放出装置本体311、312、313を、薄膜形成方向5に沿って相対的に直線移動できるならば上記構成に限定されず、静止した処理台12に対して放出装置本体311、312、313を薄膜形成方向5に沿って直線移動するように構成してもよいし、処理台12と放出装置本体311、312、313を、薄膜形成方向5に沿ってそれぞれ個別に直線移動するように構成してもよい。
【0047】
図2を参照し、各放出装置本体311、312、313は、加熱装置を有しており、加熱装置から供給される熱で、放出装置本体311、312、313内部に供給された材料ガスが、放出装置本体311、312、313の内壁面に析出しないようにされている。
【0048】
ここでは、加熱装置は線状ヒータ361、362、363で構成され、線状ヒータ361、362、363が放出装置本体311、312、313の外周に巻き回されている。線状ヒータ361、362、363を発熱させると、放出装置本体311、312、313と、細管351、352、353とが加熱されて、供給された薄膜材料の蒸発温度以上の温度に昇温するようにされている。
【0049】
放出装置本体311、312、313と載置面13との間には、防熱板421、422、423がそれぞれ配置されている。
ここでは、各放出装置本体311、312、313は、それぞれ別々の冷却容器411、412、413内に配置されている。
【0050】
各冷却容器411、412、413は、底面部分が放出装置本体311、312、313と載置面13の間に配置されており、各冷却容器411、412、413の底面部分が、加熱された放出装置本体311、312、313や、放出装置本体311、312、313に巻き回された線状ヒータ361、362、363から放出される輻射熱を遮蔽して、輻射熱が載置面13上に配置された成膜対象物20に到達しないようにする防熱板421、422、423にされている。
【0051】
各防熱板421、422、423は、載置面13と対面し、載置面13とは離間して配置されている。各防熱板421、422、423には、それぞれ孔431、432、433が設けられ、各冷却容器411、412、413内に配置された放出装置本体311、312、313に接続された細管351、352、353は、防熱板421、422、423の孔431、432、433に挿通され、各細管351、352、353の先端は、防熱板421、422、423よりも載置面13に近い位置まで伸ばされ、細管351、352、353から放出される材料ガスが防熱板421、422、423に接触しないようにされている。
【0052】
ここでは、冷却容器411、412、413の側壁の外周には、液状の冷却媒体が流れる冷却管441、442、443が巻き回されており、輻射熱は冷却容器411、412、413で遮蔽され、真空槽11の槽壁が加熱されないようになっている。
【0053】
防熱板421、422、423の載置面13に向く面とは反対の面には輻射熱が到達するが、防熱板421、422、423は冷却容器411、412、413と接触しており、冷却管441、442、443によって冷却容器411、412、413が冷却されると、防熱板421、422、423は間接的に冷却され、高温にはならないようになっている。
【0054】
防熱板421、422、423の孔431、432、433の内周面の直径は、細管351、352、353の外径よりも大きく、放出装置本体311、312、313の幅よりも小さくされており、細管351、352、353の外周面と孔431、432、433の内周面が離間しているか、又は、細管351、352、353の外周面と内周面の間の部分に断熱材が充填されている。
【0055】
どちらの場合でも、昇温された細管351、352、353の熱は防熱板421、422、423には伝導されず、細管351、352、353先端が薄膜材料の蒸発温度未満の温度に冷却されないようになっている。
【0056】
このように、細管351、352、353の先端は蒸発温度以上にされており、細管351、352、353の先端で材料ガスが凝縮して閉塞されないようになっている。また、載置面13上に配置された成膜対象物20が、輻射熱によって加熱されないようになっている。
【0057】
処理台12の内部には冷却装置16が配置されており、成膜対象物20は冷却装置16によって冷却され、成膜対象物20の表面に到達した材料ガスは効率的に凝集され、材料ガスが成膜対象物20表面で反射されて真空槽11内に拡散しにくいようにされている。
【0058】
図4(a)を参照し、例えば、細管351、352、353の先端の中空部分の幅は20μm程度であり、成膜する線(成膜直線)の幅によって載置面13上に配置した成膜対象物20表面と細管351、352、353の先端との間の距離は0.01mm以上5cm以下の範囲で成膜することができる。このとき、細管351、352、353から放出された材料ガスは広がる前に成膜対象物20に到達して付着し、真空槽11内に拡散することが抑制され、薄膜材料が無駄にならない。
【0059】
薄膜からなる線の幅は細管351、352、353の先端の中空部分の幅および成膜対象物20表面と細管351、352、353の先端との間の距離で調整できる。細管351、352、353の先端の中空部分の幅が小さいと成膜対象物20表面と細管351、352、353の先端との間の距離が短いほど薄膜からなる線の幅は小さい。
【0060】
本発明の細管351、352、353の先端の中空部分の形状は、四辺が薄膜形成方向5又は幅方向6に平行な四角形であるならば、図4(a)に示すような正方形に限定されず、図4(b)に示すように薄膜形成方向5の長さが幅方向6の長さより長い幅細長方形でもよいし、図4(c)に示すように薄膜形成方向5の長さが幅方向6の長さより短い幅広長方形でもよい。
【0061】
幅細長方形の場合には、正方形の場合と同じ移動速度で処理台12と放出装置本体311、312、313とを薄膜形成方向5に沿って相対移動させ、同じ放出量で材料ガスを放出させると、正方形の場合よりも薄膜を厚く形成することができる。
また、幅広長方形の場合には、正方形の場合よりも幅方向6の幅が広い薄膜を形成することができる。
【0062】
なお、図1に示すように、真空槽11内には膜厚センサ62h、62dが配置され、第一、第二の配管38h、38dにサンプル管がそれぞれ設けられ、R、G又はBの第一、第二のガス発生装置33hR、33hG、33hB、33dR、33dG、33dBで発生され、第一、第二の配管38h、38dに供給された材料ガスが膜厚センサ62h、62dの検出面にそれぞれ到達して薄膜が形成されるようになっている。
【0063】
膜厚センサ62h、62dが検出する薄膜の膜厚と、成膜対象物20表面に形成される薄膜の膜厚との関係を予め求めておくと、膜厚センサ62h、62dが検出した膜厚の値によって、成膜対象物20表面の薄膜の膜厚値が分かる。
【0064】
膜圧センサ62h、62dの検出結果を第一、第二のガス発生装置33hR、33hG、33hB、33dR、33dG、33dBのヒータにフィードバックし、放出装置本体311、312、313の細管351、352、353から放出される蒸気量を制御するように構成してもよい。
【0065】
<薄膜形成方法>
本発明の薄膜形成装置10を用いた薄膜形成方法を説明する。
成膜対象物20表面に、成膜すべき領域である直線状の成膜直線を互いに平行に複数本予め定めておき、また、一乃至複数のアライメントマークを予め定めておく。
また、一本の成膜直線に対して一台の放出装置本体を対応づけておく。すなわち、各放出装置本体はそれぞれ異なる成膜直線と対応づけられる。
【0066】
図1を参照し、本例では成膜対象物20表面には、三本一組のR、G、Bの成膜直線22R、22G、22Bが複数組、互いに平行に配置されている。
各成膜直線22R、22G、22Bに、対応する複数の放出装置本体ここでは311、312、313を3台予め定めておく。
また、撮像装置511、512、513で撮像された撮像画像内の位置と、放出装置本体311、312、313の細管351、352、353との幅方向6の相対位置関係を予め求めておく。
【0067】
R、G、Bの第一のガス発生装置33hR、33hG、33hB内にR、G、Bのホストの有機材料をそれぞれ配置し、R、G、Bの第二のガス発生装置33dR、33dG、33dB内にR、G、Bのドーパントの薄膜材料をそれぞれ配置する。
真空排気装置20により真空槽11内を真空排気し、以後真空排気を継続して真空雰囲気を維持する。
【0068】
真空槽11内の真空雰囲気を維持しながら、成膜対象物20を真空槽11内に搬入し、成膜対象物20表面の成膜直線22R、22G、22Bを薄膜形成方向5と平行に向けて、処理台12の載置面13に配置する。
撮像装置511、512、513により、成膜対象物20表面のアライメントマークを撮像する。
【0069】
制御装置52は、撮像装置511、512、513の撮像結果からアライメントマークを認識し、アライメントマークと各放出装置本体311、312、313の細管351、352、353との幅方向6の相対位置を認識し、ここでは各放出装置本体311、312、313の細管351、352、353と、それぞれ対応するRの成膜直線22Rとの間の幅方向6の誤差量をそれぞれ求める。
【0070】
次いで、制御装置52は、放出装置本体311、312又は313の前記誤差量が予め決めた許容値以下でない場合には、位置調整装置531、532又は533に制御信号を送って、当該放出装置本体311、312又は313を移動させて前記誤差量の絶対値を減少させ、各放出装置本体311、312、313の細管351、352、353の先端を、それぞれ異なるRの成膜直線22Rと対面させる。
【0071】
R、G、Bの第一、第二のバルブ39hR、39hG、39hB、39dR、39dG、39dBをそれぞれ閉じておく。
処理台12の冷却装置16により成膜対象物20を冷却しておく。
また、冷却管441、442、443に、薄膜材料の蒸発温度未満に温度管理された冷却媒体を流して、冷却容器411、412、413を冷却しておく。
【0072】
線状ヒータ61、361、362、363により、第一、第二の蒸気タンク32h、32dと各供給管34h1、34d1、34h2、34d2、34h3、34d3と各放出装置本体311、312、313を、薄膜材料の蒸発温度以上の温度に加熱しておく。
ここでは、Rの第一、第二のガス発生装置33hR、33dR内のR色のホストとドーパントの有機薄膜材料をそれぞれ加熱して、蒸気を発生させる。
【0073】
Rの第一、第二のキャリアガス導入装置37hR、37dRからRの第一、第二のガス発生装置33hR、33dR内にキャリアガスを導入し、Rの第一、第二のバルブ39hR、39dRを開けて、R色のホストとドーパントの材料ガスをキャリアガスと一緒に第一、第二の蒸気タンク32h、32dにそれぞれ別々に導入する。
【0074】
第一、第二の蒸気タンク32h、32d内の材料ガスは、キャリアガスと一緒に各放出装置本体311、312、313に分配され、各放出装置本体311、312、313内で混合し、混合ガスが細管351、352、353の先端から放出され、成膜対象物20表面のそれぞれ異なるRの成膜直線22Rに到達して凝集し、付着する。
【0075】
キャリアガスは成膜対象物20表面で反射して真空ポンプ14により真空排気される。従って、キャリアガスは形成される薄膜に残留せず、薄膜の膜質に影響しない。また成膜対象物20表面に予め別の薄膜である下地膜が形成されている場合でも、キャリアガスはこの下地膜を損傷しない。
【0076】
移動装置により処理台12を成膜対象物20と一緒に、薄膜形成方向5に沿って一定の速度で、各放出装置本体311、312、313に対して相対的に直線移動させると、マスクを設けなくても、互いに平行な複数本の成膜直線22R上にR色の直線状の有機薄膜が同時に形成される。
【0077】
次いでRの第一、第二のバルブ39hR、39dRを閉じて、材料ガスが成膜対象物20に到達しない状態にする。
薄膜形成装置10は、各放出装置本体311、312、313を一緒に、処理台12に対して、幅方向6に沿って相対移動する不図示の補助移動装置を有している。
【0078】
補助移動装置により、各放出装置本体311、312、313を一緒に、処理台12に対して、幅方向6に相対移動させて、放出装置本体311、312、313の細管351、352、353の先端を、それぞれ異なる未成膜のRの成膜直線22Rと対面させる。
【0079】
補助移動装置による移動の精度が粗い場合には、移動後に、撮像装置511、512、513により成膜対象物20の表面のアライメントマークとなるパターンを認識し、制御装置52により放出装置本体311、312、313と対応する未成膜のRの成膜直線22Rとの誤差量をそれぞれ求め、放出装置本体311、312又は313の誤差量が予め決めた許容値以下でない場合には、位置調整装置531、532又は533により当該放出装置本体311、312又は313を個別に移動させて、放出装置本体311、312、313の細管351、352、353の先端を、対応するRの成膜直線22Rとそれぞれ正確に対面させてもよい。
【0080】
次いで、Rの第一、第二のバルブ39hR、39dRを開いて、細管351、352、353の先端からR色の材料ガスを放出させ、成膜対象物20表面の互いに異なる未成膜のRの成膜直線22Rにそれぞれ付着させる。
【0081】
移動装置により処理台12を成膜対象物20と一緒に、薄膜形成方向5に沿って一定の速度で、各放出装置本体311、312、313に対して相対的に直線移動させると、互いに平行な複数本の未成膜のRの成膜直線22R上にR色の直線状の有機薄膜がそれぞれ同時に形成される。
【0082】
上述の成膜工程を繰り返して、成膜対象物20表面の他のRの成膜直線22RにもそれぞれR色の有機薄膜を形成する。
一本の成膜すべき成膜直線22Rの幅よりも、一本の細管351、352又は353が一回の相対移動で形成する薄膜の幅が狭い場合には、複数回相対移動させて、一回の相対移動で形成する薄膜を複数本側面を接触させて成膜する。
一回の相対移動で複数本の薄膜が同時に形成されるので、一本の細管だけから材料ガスを放出させる場合よりも成膜速度が上がる。
【0083】
Rの成膜直線22Rに薄膜を形成し終えた後、ここでは移動装置により放出装置本体311、312、313を成膜対象物20の外周の外側に移動させ、材料ガスが成膜対象物20に到達しない状態で、Rの第一、第二のガス発生装置33hR、33dR内にキャリアガスを導入しながら、薄膜材料の加熱を停止する。第一、第二の蒸気タンク32h、32dと各放出装置本体311、312、313内に残留していたR色の材料ガスはキャリアガスと一緒に真空槽11内に排出され、真空ポンプ14により真空排気される。R色の材料ガスを排出し終えた後、Rの第一、第二のバルブ39hR、39dRを閉じる。
【0084】
補助移動装置により各放出装置本体311、312、313を一緒に、処理台12に対して、幅方向6に相対移動させて、放出装置本体311、312、313の細管351、352、353の先端を、それぞれ異なるGの成膜直線22Gと対面させ、Rの成膜直線22Rの成膜工程と同様にして、Gの成膜直線22GにG色の有機薄膜をそれぞれ形成する。
【0085】
Gの成膜直線22Gに薄膜を形成し終えた後、Gの成膜直線22Gの成膜工程と同様にして、Bの成膜直線22BにB色の有機薄膜をそれぞれ形成する。
このようにして、成膜対象物20の表面に、R色と、G色と、B色の三本一組の直線状の有機薄膜が複数組、互いに平行に形成される。
【0086】
有機ELディスプレイを作製する際、HIL/HTLをフレームマスクで成膜した後、本発明でR、G、B発光ドットを作製し、次いでフレームマスクでETL/EIL/電極層を作ることが可能である。
【0087】
本発明で形成する薄膜は、一層に限定されず、例えば、成膜対象物20側から、R色、G色又はB色の場合、TCO基板/HIL/HTL/EL(R)/ETL/EILの多層の薄膜、TCO基板/HIL/HTL/EL(G)/ETL/EILの多層の薄膜、又はTCO基板/HIL/HTL/EL(B)/ETL/EILの多層の薄膜を形成し、これらRGBの薄膜を、成膜対象物20上に、繰り返しこの順序で配置することができる。
【符号の説明】
【0088】
5……薄膜形成方向
10……薄膜形成装置
11……真空槽
12……処理台
13……載置面
20……成膜対象物
30……材料ガス放出装置
311、312、313……放出装置本体
32h、32d……蒸気タンク
351、352、353……細管
33hR、33dG、33hB、33dR、33hG、33dB……ガス発生装置
34h1、34d1、34h2、34d2、34h3、34d3……供給管
421、422、423……防熱板
431、432、433……孔
511、512、513……撮像装置
52……制御装置
531、532、533……位置調整装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽と、
前記真空槽内に配置され、成膜対象物が載置面上に配置される処理台と、
材料ガスを前記真空槽内に放出させて前記載置面上の前記成膜対象物に到達させ、薄膜を形成する材料ガス放出装置と、
前記材料ガス放出装置と前記処理台を、前記載置面と平行な一の薄膜形成方向に沿って相対移動する移動装置とを有する薄膜形成装置であって、
前記材料ガス放出装置は、
内部に前記材料ガスが配置される中空の蒸気タンクと、
前記載置面と対面する位置に配置され、前記蒸気タンクにそれぞれ接続された複数の放出装置本体と、
各前記放出装置本体を、前記載置面に平行で前記薄膜形成方向と直角な成分を有する方向にそれぞれ個別に移動する位置調整装置と、
を有し、
各前記放出装置本体には、先端が前記載置面に向けられた細管がそれぞれ接続され、前記蒸気タンク内の前記材料ガスが、各前記放出装置本体に供給され、各前記細管の先端から放出され、前記処理台に配置された成膜対象物の表面に到達して薄膜が形成される薄膜形成装置。
【請求項2】
前記成膜対象物の表面のアライメントマークを撮像する撮像装置と、
前記撮像装置の撮像画像から、前記アライメントマークと各前記放出装置本体との相対位置を認識し、前記位置調整装置に制御信号を送って、各前記放出装置本体を、前記成膜対象物の表面の各前記放出装置本体とそれぞれ対応する所定位置に移動させる制御装置と、
を有する請求項1記載の薄膜形成装置。
【請求項3】
前記蒸気タンクと前記放出装置本体とを接続する供給管の少なくとも一部は曲がることができる柔軟な材質で形成された請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項4】
前記蒸気タンクとは離間した位置に、内部に薄膜材料が配置されたガス発生装置が配置され、
前記ガス発生装置は前記蒸気タンクに接続され、前記ガス発生装置内で前記薄膜材料が加熱されて蒸発して前記材料ガスが生成され、前記蒸気タンクに供給されるように構成された請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項5】
前記材料ガス放出装置は、
各前記放出装置本体よりも前記載置面に近い位置に、前記載置面と対面して配置された防熱板と、
各前記防熱板に形成され、前記細管が挿通された孔とを有し、
前記細管の先端は前記防熱板よりも前記処理台に近い位置に配置された請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の薄膜形成装置。
【請求項6】
前記細管と前記孔の内周とは離間された請求項5記載の薄膜形成装置。
【請求項7】
前記細管と前記孔の内周との間には断熱材が配置された請求項5記載の薄膜形成装置。
【請求項8】
真空槽内を真空排気し、材料ガスを、前記真空槽内に配置された放出装置本体に供給し、前記放出装置本体に接続された細管の先端から放出させ、前記細管の先端と対面する成膜対象物の表面に到達させながら、前記放出装置本体と前記成膜対象物を、前記成膜対象物表面と平行な一の薄膜形成方向と平行に相対移動させて、前記成膜対象物の表面に薄膜を形成する薄膜形成方法であって、
複数台の前記放出装置本体が互いに同じ蒸気タンクに接続された材料ガス放出装置を用いて、
前記成膜対象物表面に、成膜すべき領域である成膜直線を前記薄膜形成方向と平行に複数本あらかじめ定めておき、
各前記放出装置本体を、前記成膜対象物表面と平行で前記薄膜形成方向と直角な成分を有する方向にそれぞれ個別に移動させて、各前記細管の先端をそれぞれ異なる前記成膜直線と対面させ、
材料ガスを、前記蒸気タンク内に供給して各前記放出装置本体に分配し、各前記細管の先端からそれぞれ放出させ、前記成膜対象物の表面に到達させながら、前記材料ガス放出装置と前記成膜対象物を、前記薄膜形成方向と平行に相対移動させて、前記成膜対象物の表面の複数の前記成膜直線上に同時に薄膜を形成する薄膜形成方法。
【請求項9】
各前記放出装置本体を前記成膜対象物表面と平行で前記薄膜形成方向と直角な成分を有する方向にそれぞれ個別に移動させる前に、前記成膜対象物の表面のアライメントマークを撮像し、撮像結果から、前記アライメントマークと各前記放出装置本体との相対位置を認識する請求項8記載の薄膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−87387(P2012−87387A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236426(P2010−236426)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】