説明

薄膜製造方法

【課題】カルコゲン元素を含む化合物半導体の均一な薄膜を容易に生産する。
【解決手段】カルコゲン元素を含む化合物半導体の薄膜の製造時に、該化合物半導体に含まれるカルコゲン元素以外の金属元素とカルコゲン元素とを含んでいる皮膜が一主面上に各々配されている複数の基板が準備される。そして、一加熱炉内の基板配置領域に複数の基板のうちの2以上の基板が配置される。更に、複数のガス排出部による一加熱炉内からの排気が調整されることによって、2以上の基板に配されている各皮膜に接している所定サイズの空間領域に、前記カルコゲン元素を含む気体を、前記2以上の基板に配されている各前記皮膜についての前記金属元素の含有量と前記カルコゲン元素の含有量との差を示す指標に応じて単位時間当たりの前記カルコゲン元素の供給量が異なるように流されながら、2以上の基板が加熱されることで、該2以上の基板上に化合物半導体の薄膜が各々形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体の薄膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
I−III−VI族化合物半導体から成る光吸収層を具備した太陽電池パネルがある。このI−III−VI族化合物半導体としては、Cu(In,Ga)Se2(CIGSとも言う)等といったカルコパイライト系の化合物半導体が採用される。
【0003】
この太陽電池パネルでは、例えば、ガラス製の基板上に、例えば、Moから成る下部電極層が形成され、この下部電極層の上にI−III−VI族化合物半導体から成る光吸収層が形成されている。さらに、その光吸収層の上には、硫化亜鉛または硫化カドミウム等から成るバッファ層と、酸化亜鉛等から成る透明の上部電極層とがこの順に積層されている。
【0004】
ところで、I−III−VI族化合物半導体から成る光吸収層を形成する種々の方法が提案されている。
【0005】
例えば、I−B族元素単体の微粉末とVI−B族元素単体の微粉末とIII−B族元素を含む有機金属塩とが溶剤に分散した液を導電性基板上に塗布し、熱処理を行うことで、I−III−VI系の化合物半導体の薄膜を製造する方法が提案されている(特許文献1等)。この熱処理は、不活性気体中もしくは還元雰囲気で行われる。さらに、特許文献1には、熱処理が行われる雰囲気にVI−B元素もしくはVI−B族元素の化合物が存在すると、I−B族元素とIII−B族元素とによるアロイ膜と速やかに化合することが記載されている。
【0006】
また、I−B族元素の有機金属塩とIII−B族元素の有機金属塩とを含む有機金属塩溶液を導電性基板上に被着させた後に、VI−B族元素を含む非酸化性雰囲気で熱処理を行うことで、I−III−VI系のカルコパイライト構造を有する化合物半導体の薄膜を製造する方法が提案されている(特許文献2等)。
【0007】
また、薄膜気相成長装置において、同心円状に区切られた区間の何れかに供給される成膜反応ガスの流量および濃度のうちの少なくとも一方を調整することで、膜厚および電気特性が全面にわたって均一である薄膜が形成され得る方法および装置が提案されている(特許文献3等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−53314号公報
【特許文献2】特開2001−274176号公報
【特許文献3】特開2001−351864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、I−B族元素であるCu、III−B族元素であるInとGaおよびVI−B族元素であるSeの各元素に係る金属錯体を含む溶液が導電性基板上に塗布されることで皮膜が形成される場合を想定する。この場合、基板に形成された皮膜に不活性気体中もしくは還元雰囲気で熱処理が施されると、有機物が熱分解される。その後、さらに、有機物が熱分解された皮膜をそれぞれ有する複数の基板が、一つの加熱炉内に設置され、VI−B族元素であるSeの気体を含む雰囲気で皮膜に熱処理が施されることで、I−III−VI族化合物半導体であるCIGSの薄膜が形成され得る。この製造方法によれば、CIGSの薄膜が効率良く大量に生産され得る。
【0010】
しかしながら、熱処理によって皮膜中の有機物が熱分解する際に、皮膜中に含まれるSeの一部が気化し、基板間において皮膜に含有されるSeの量に差が生じ得る。この場合、例えば、図20で示されるように、Seの含有量がそれぞれ異なる皮膜が一主面上に配されている複数の基板15が、加熱炉12内においてSeの濃度が略均一な雰囲気で加熱されると、形成されるCIGSの薄膜間において組成のばらつきが生じ得る。なお、例えば、加熱炉12内で、複数の基板15がカセット14内に配列され、Seを含む気体が封じ込められており、攪拌用ファン13によってSeを含む気体が破線の矢印で示されるように攪拌されることで、Seの濃度が略均一な雰囲気が実現され得る。
【0011】
また、一基板上に形成される皮膜についても、熱処理によって皮膜中の有機物が熱分解する際に、この皮膜中に含まれるSeの一部が気化し、皮膜内において含有されるSeの量にばらつきが生じ得る。この場合には、Seの含有量がばらついている皮膜が一主面上に配されている基板が、加熱炉内においてSeの濃度が略均一な雰囲気で加熱されると、一基板上に形成されるCIGSの薄膜内においても組成のばらつきが生じ得る。
【0012】
上述した化合物半導体の薄膜間あるいは薄膜内において組成のばらつきが生じ得る問題は、CIGSの薄膜を製造する技術に限られず、カルコゲン元素を含む化合物半導体の薄膜を製造する技術一般に共通する。
【0013】
そこで、カルコゲン元素を含む化合物半導体の均一な薄膜を容易に生産することができる製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様に係る薄膜製造方法は、カルコゲン元素を含む化合物半導体の薄膜を製造する薄膜製造方法であって、前記化合物半導体に含まれる前記カルコゲン元素以外の金属元素と前記カルコゲン元素とを含んでいる皮膜が一主面上にそれぞれ配されている複数の基板を準備する工程を有する。また、該薄膜製造方法は、一加熱炉内の基板配置領域に前記複数の基板のうちの2以上の基板を配置する工程を有する。さらに、該薄膜製造方法は、複数のガス排出部による前記一加熱炉内からの排気を調整することによって、前記2以上の基板に配されている各前記皮膜に接している所定サイズの空間領域に、前記カルコゲン元素を含む気体を、前記2以上の基板に配されている各前記皮膜についての前記金属元素の含有量と前記カルコゲン元素の含有量との差を示す指標に応じて単位時間当たりの前記カルコゲン元素の供給量が異なるように流しながら、前記2以上の基板を加熱することで、前記2以上の基板上に前記化合物半導体の薄膜をそれぞれ形成する工程を有する。
【0015】
他の一態様に係る薄膜製造方法は、カルコゲン元素を含む化合物半導体の薄膜を製造する薄膜製造方法であって、前記化合物半導体に含まれる前記カルコゲン元素以外の金属元素と前記カルコゲン元素とを含んでいる皮膜が一主面上にそれぞれ配されている複数の基板を準備する工程を有する。また、該薄膜製造方法は、一加熱炉内の基板配置領域に前記複数の基板のうちの1以上の基板を配置する工程を有する。さらに、該薄膜製造方法は、複数のガス排出部による前記一加熱炉内からの排気を調整することによって、前記1以上の基板に配されている各前記皮膜に接している所定サイズの各空間領域に、前記カルコゲン元素を含む気体を、前記1以上の基板に配されている各前記皮膜についての前記金属元素の含有量と前記カルコゲン元素の含有量との差を示す指標の分布に応じて単位時間当たりの前記カルコゲン元素の供給量が異なるように流しながら、前記1以上の基板を加熱することで、前記1以上の基板上に前記化合物半導体の薄膜をそれぞれ形成する工程を有する。
【発明の効果】
【0016】
上記一態様および他の一態様に係る薄膜製造方法の何れによっても、カルコゲン元素を含む化合物半導体の均一な薄膜を容易に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係る薄膜製造装置を示す概略図である。
【図2】図1にて一点鎖線II−IIで示した位置におけるXY断面を示す図である。
【図3】図1にて二点鎖線III−IIIで示した位置におけるXY断面を示す図である。
【図4】太陽電池パネルの製造フローを示すフローチャートである。
【図5】太陽電池パネルの製造途中の状態を模式的に示す図である。
【図6】太陽電池パネルの製造途中の状態を模式的に示す図である。
【図7】太陽電池パネルの製造途中の状態を模式的に示す図である。
【図8】太陽電池パネルの製造途中の状態を模式的に示す図である。
【図9】太陽電池パネルの製造途中の状態を模式的に示す図である。
【図10】太陽電池パネルの製造途中の状態を模式的に示す図である。
【図11】太陽電池パネルの製造途中の状態を模式的に示す図である。
【図12】太陽電池パネルの製造途中の状態を模式的に示す図である。
【図13】太陽電池パネルの構成を模式的に示す平面図である。
【図14】図13にて一点鎖線XIV−XIVで示した位置におけるXZ断面を示す図である。
【図15】第1変形例に係る薄膜製造装置を示す概略図である。
【図16】第2変形例に係る薄膜製造装置を示す概略図である。
【図17】図16にて一点鎖線XVII−XVIIで示した位置におけるXY断面を示す図である。
【図18】図16にて二点鎖線XVIII−XVIIIで示した位置におけるXY断面を示す図である。
【図19】第3変形例に係る薄膜製造装置を示す概略図である。
【図20】化合物半導体の薄膜製造装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図面においては同様な構成および機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。また、図面は模式的に示されたものであり、各図における各種構造のサイズおよび位置関係等は正確に図示されたものではない。
【0019】
なお、図1から図3、図5から図19には、加熱炉2および該加熱炉2に付属する各部の配置関係を明示するために、該加熱炉2の長手方向(例えば、図1の図面視左右方向)をX軸方向とする右手系のXYZ座標系が付されている。但し、複数のガス供給源S6、複数のガス排出調整部E7および制御部C1,C1A〜C1Cについては、加熱炉2に対する配置関係が描かれたものではない。また、図1、図15、図16、図19および図20では、気体が流れる様子が破線の矢印によって模式的に描かれている。
【0020】
<(1)一実施形態>
<(1−1)薄膜製造装置>
薄膜製造装置1は、加熱炉2、複数のガス供給部6、複数のガス排出部7、ヒーター8、複数のガス供給源S6、複数のガス排出調整部E7および制御部C1を備えている。図1では、加熱炉2、複数のガス供給部6、複数のガス排出部7およびヒーター8についてのXZ断面と、複数のガス供給源S6と、複数のガス排出調整部E7と、制御部C1とが模式的に示されている。図2では、加熱炉2およびヒーター8のXY断面と、複数のガス排出部7と、複数のガス排出調整部E7とが模式的に示されている。図3では、加熱炉2およびヒーター8のXY断面と、複数のガス供給部6と、複数のガス供給源S6とが模式的に示されている。
【0021】
加熱炉2は、略直方体の箱形を有している筐体である。加熱炉2の外縁は、XY平面に略平行な2面、XZ平面に略平行な2面およびYZ平面に略平行な2面を有している。そして、加熱炉2は、内部空間2Iを有している。なお、加熱炉2は、略直方体のものに限られず、加熱対象物を配置することが可能な内部空間を有していれば良い。また、加熱炉2の材料としては、例えば、耐熱性に優れているニッケル基の超合金等が採用され得る。ニッケル基の超合金とは、ニッケルを50質量%以上含む合金である。ニッケル基の超合金としては、例えば、インコネル(登録商標)等が挙げられる。
【0022】
内部空間2Iには、カセット4が配される。カセット4には、2以上の所定数の加熱対象物である基板(被加熱基板とも言う)5が一方向に配列されている状態で装着される。ここでは、一方向が、X方向であり、2以上の所定数が12である。さらに、カセット4では、各被加熱基板5の表裏の主面がYZ平面に略平行となる。つまり、隣り合う被加熱基板5同士が相互に対向し合っている。また、カセット4に装着されている隣り合う被加熱基板5の間隔は、例えば、略一定とされれば良い。
【0023】
なお、図1から図3では、−X側から1番目に配される被加熱基板5に符号51が付され、−X側からn番目(ここではnは1〜12の整数)に配される被加熱基板5に符号5nが付されている。カセット4は、2以上の被加熱基板5が配置される略直方体の空間領域(基板配置領域とも言う)4ARを囲む相互に連結された12の枠体を主に有している。図1から図3では、カセット4の外縁が一点鎖線で示されている。
【0024】
複数のガス供給部6は、内部空間2Iの下部において一方向に配列されている。ここでは、一方向がX方向である。また、隣り合うガス供給部6の間隔は、例えば、略一定とされれば良い。なお、図1および図3では、−X側から1番目に配されているガス供給部6に符号61が付され、−X側からn番目(ここではnは1〜12の整数)に配されているガス供給部6に符号6nが付されている。
【0025】
そして、+Z側から見た場合、例えば、n番目のガス供給部6nが、n番目の被加熱基板5nよりも若干−X側に配される。換言すれば、+Z側から見た場合、例えば、m番目(mは1〜11の整数)の被加熱基板5mが、m番目のガス供給部6mとm+1番目のガス供給部6m+1との間に配される。
【0026】
各ガス供給部6は、内部空間2Iの底部に沿って−Y側の端部からY方向に延設されている管状の部材である。また、各ガス供給部6には、+Z側に複数の開口60が設けられている。各ガス供給部6では、複数の開口60が一方向に略直交する他方向に略一定の間隔で配列されている。ここでは、他方向がY方向である。
【0027】
複数のガス供給源S6は、複数のガス供給部6に所定の気体を供給する。各ガス供給源S6は、例えば、所定の気体を貯蔵しているタンク、ポンプ、配管および弁等を有している。なお、図1および図3では、−X側から1番目に配されているガス供給源S6に符号S61が付され、−X側からn番目(ここではnは1〜12の整数)に配されているガス供給源S6に符号S6nが付されている。
【0028】
そして、n番目のガス供給源S6nが、n番目のガス供給部6nに接続されており、n番目のガス供給部6nに所定の気体を供給する。これにより、複数のガス供給部6が、基板配置領域4ARに向けて所定の気体を供給する。所定の気体は、カルコゲン元素を含む気体である。なお、カルコゲン元素は、Se、Te、Sのうちの少なくとも1以上の元素であれば良い。さらに、所定の気体には、カルコゲン元素を含む気体の他に、還元性の気体および不活性の気体のうちの少なくとも一方の気体(非酸化性気体とも言う)が含まれていれば良い。
【0029】
複数のガス排出部7は、内部空間2Iの上部において一方向に配列されている。ここでは、一方向がX方向である。また、隣り合うガス排出部7の間隔は、例えば、略一定とされれば良い。なお、図1および図2では、−X側から1番目に配されているガス排出部7に符号71が付され、−X側からn番目(ここではnは1〜12の整数)に配されているガス排出部7に符号7nが付されている。
【0030】
そして、−Z側から見た場合、例えば、n番目のガス排出部7nが、n番目の被加熱基板5nよりも若干−X側に配される。換言すれば、−Z側から見た場合、例えば、m番目(mは1〜11の整数)の被加熱基板5mが、m番目のガス排出部7mとm+1番目のガス排出部7m+1との間に配される。
【0031】
各ガス排出部7は、1以上の管状の部材を含んでいれば良い。該各管状の部材の内部空間は、開口70を介して加熱炉2の内部空間2Iに連通している。図2では、各ガス排出部7に、複数の管状の部材ならびに複数の開口70が含まれている例が示されている。この場合、各ガス排出部7では、複数の開口70が一方向に略直交する他方向に略一定の間隔で配列されていれば良い。ここでは、他方向がY方向である。
【0032】
複数のガス排出調整部E7は、複数のガス排出部7による内部空間2Iからの気体の排出を調整する。各ガス排出調整部E7は、例えば、排気用のポンプ、配管および弁等を有していれば良い。なお、図1および図2では、−X側から1番目に配されているガス排出調整部E7に符号E71が付され、−X側からn番目(ここではnは1〜12の整数)に配されているガス排出調整部E7に符号E7nが付されている。
【0033】
そして、n番目のガス排出調整部E7nが、n番目のガス排出部7nに接続されており、n番目のガス排出部7nによる内部空間2Iからの気体の排出量を調整する。ここで、ガス排出部7による内部空間2Iからの気体の排出量が多ければ、内部空間2Iにおいて、気体の排出を補うような気体の流れが生じ得る。このため、例えば、各ガス排出部7による内部空間2Iからの単位時間当たりの気体の排出量によって、基板配置領域4ARを通過する所定の気体の流れが調整され得る。該所定の気体は、複数のガス供給部6から基板配置領域4ARに向けて供給される気体である。
【0034】
例えば、複数のガス排出部7から単位時間当たりに排出される気体の量が、X方向に高まるように、各ガス排出調整部E7が、各ガス排出部7からの気体の排出量を調整する。これにより、基板配置領域4ARにおいて、所定サイズの空間領域を単位時間毎に流れる気体に含まれているカルコゲン元素の供給量が、X方向に高められ得る。なお、この場合、例えば、各ガス供給部6から内部空間2Iへの所定の気体の供給量ならびに所定の気体におけるカルコゲン元素の濃度は、略一定であれば良い。
【0035】
ここで言う所定サイズの空間領域は、例えば、各被加熱基板5の一主面に接する所定サイズの空間領域であれば良い。より具体的には、所定サイズは、例えば、隣り合う被加熱基板5の間に位置する空間のサイズであれば良い。また、各被加熱基板5の一主面は、例えば、各被加熱基板5の−X側の主面であれば良い。また、単位時間としては、例えば、数秒以上で且つ数十秒以下の範囲の任意の時間が採用され得る。
【0036】
ヒーター8は、加熱炉2の周囲に巻かれている。ヒーター8による加熱により、内部空間2Iの基板配置領域4ARに配される複数の被加熱基板5が、例えば、400℃以上で且つ600℃以下の範囲内の所定温度まで略均一に加熱され得る。
【0037】
制御部C1は、例えば、プロセッサを有しており、薄膜製造装置1の全体の動作を制御する。例えば、制御部C1によって、複数のガス供給源S6から複数のガス供給部6への気体の供給、複数のガス排出調整部E7による複数のガス排出部7を介した気体の排出、およびヒーター8による加熱等が制御され得る。
【0038】
<(1−2)薄膜製造装置を用いた太陽電池パネルの製造>
ここで、上記構成を有する薄膜製造装置1を用いた太陽電池パネル121の製造プロセスの一例について説明する。
【0039】
ここでは、薄膜製造装置1を用いて太陽電池パネル121の光吸収層131が形成される。光吸収層131は、第1導電型(ここではp型の導電型)を有するI−III−VI族化合物半導体の層である。I−III−VI族化合物半導体とは、I−III−VI族化合物を主に含む半導体である。なお、I−III−VI族化合物を主に含む半導体とは、I−III−VI族化合物を70mol%以上含む半導体のことを言う。以下の記載においても、「主に含む」は「70mol%以上含む」ことを意味する。I−III−VI族化合物は、I−B族元素(11族元素とも言う)とIII−B族元素(13族元素とも言う)とVI−B族元素(16族元素とも言う)とを主に含む化合物である。I−III−VI族化合物としては、例えば、CuInSe2(CISとも言う)、Cu(In,Ga)Se2(CIGSとも言う)およびCu(In,Ga)(Se,S)2(CIGSSとも言う)等が採用され得る。ここでは、光吸収層131が、CIGSを主に含む。
【0040】
図4は、薄膜製造装置1を用いた太陽電池パネル121の製造フローを例示するフローチャートである。図5から図12は、太陽電池パネル121の製造途中の様子を模式的に示すXZ断面図である。図13は、太陽電池パネル121の構成を模式的に示す平面図である。図14は、図13において一点鎖線XIV−XIVで示した位置におけるXZ断面を示す図である。
【0041】
まず、図4のステップST1では、基板101が準備される。図5は、基板101の一例を示す図である。基板101は、複数の光電変換セル110を支持するものである。基板101に含まれる主な材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、樹脂および金属等が採用され得る。また、基板101の厚さは、例えば、1mm以上で且つ3mm以下程度であれば良い。
【0042】
次に、ステップST2では、洗浄された基板101の略全面に、スパッタリング法または蒸着法等が用いられて、下部電極層102が形成される。図6には、下部電極層102が形成された状態が示されている。下部電極層102は、基板101の−X側の主面(一主面とも言う)の上に設けられた導電層である。下部電極層102に含まれる主な材料としては、例えば、Mo、Al、Ti、TaおよびAu等の導電性を有する各種金属等が採用され得る。また、下部電極層102の厚さは、例えば、0.2μm以上で且つ1μm以下程度であれば良い。
【0043】
ステップST3では、下部電極層102の上面のうちの所定の形成対象位置からその直下の基板101の上面にかけて、Y方向に直線状に延在する溝部P1が形成される。図7には、溝部P1が形成された後の状態が示されている。溝部P1は、例えば、YAGレーザーまたはその他のレーザーの光が走査されつつ所定の形成対象位置に照射されることで形成され得る。
【0044】
ステップST4では、I−B族元素であるCu、III−B族元素であるInとGaおよびVI−B族元素であるSeの各元素に係る金属錯体を含む溶液が下部電極層2の上から塗布されて皮膜が形成される。該皮膜の厚さは、例えば、数μm以上で且つ十数μm以下程度であれば良い。
【0045】
ステップST5では、基板101の上に形成された皮膜に不活性気体中もしくは還元雰囲気で熱処理が施される。熱処理の温度は、50℃以上で且つ300℃以下であれば良い。このとき、皮膜が乾燥されるとともに皮膜中の有機物が熱分解される。その結果、下部電極層102上および溝部P1内に有機物が熱分解された皮膜130が形成される。図8には、皮膜130が形成された状態が示されている。
【0046】
ここで、ステップST1〜ST5の処理が、複数の基板101に対して行われることで、基板101の一主面上に下部電極層102と皮膜130とがそれぞれ積層されている複数の被加熱基板5が準備され得る。つまり、皮膜130が一主面上にそれぞれ配されている複数の被加熱基板5が準備され得る。該皮膜130には、光吸収層131に主に含まれる化合物半導体としてのCIGSに含有されるカルコゲン元素と該カルコゲン元素以外の金属元素とが含まれている。なお、ここでは、カルコゲン元素がSeであり、カルコゲン元素以外の金属元素がCu、InおよびGaである。
【0047】
ところで、ステップST5では、熱処理によって皮膜中のカルコゲン元素としてのSeの一部が雰囲気中に蒸散し得る。ここで、例えば、皮膜中におけるCu、InおよびGaの略全量を含む化学量論組成のCIGSを形成するために必要であるSeの含有量を2mmolとする。ここで、含有量は、例えば、皮膜の単位面積当たりに含まれる物質量であれば良い。この場合、熱処理の前後において、例えば、皮膜中のSeの含有量が2mmolから約1.6mmol以上で且つ約1.8mmol以下の範囲まで低下し得る。つまり、熱処理の条件によって、複数の被加熱基板5の皮膜130において、例えば、Seの含有量が約1.6mmol以上で且つ約1.8mmol以下の範囲でばらつき得る。
【0048】
ステップST6では、各被加熱基板5の皮膜130について、カルコゲン元素としてのSeの含有量とCIGSに含まれるカルコゲン元素以外の金属元素としてのCu、InおよびGaの含有量との差(含有量差とも言う)を示す指標が取得される。ここで、含有量差は、化学量論組成のCIGSを形成するために皮膜130の外部から供給すべきカルコゲン元素としてのSeの不足量に比例する。このため、例えば、含有量差が増大すれば、カルコゲン元素としてのSeの不足量も増大する。そして、該含有量差を示す指標としては、例えば、皮膜130におけるカルコゲン元素としてのSeの濃度に係る値、および皮膜130の厚さのうちの少なくとも一方が採用され得る。なお、皮膜130におけるSeの濃度は、例えば、X線を用いた組成分析、およびICP発光分光分析法を用いた質量分析等によって測定され得る。また、皮膜130の厚さは、X線を用いた膜厚測定器、膜厚計および反射干渉計等によって測定され得る。
【0049】
ここで、複数の被加熱基板5における皮膜130の膜厚が略一定である場合には、皮膜130におけるカルコゲン元素としてのSeの濃度に係る値が、含有量差を間接的に精度良く示し得る。該Seの濃度に係る値としては、例えば、化学量論組成のCIGSの形成に必要である皮膜130におけるSeの濃度(理想濃度とも言う)C0と、実際の皮膜130におけるSeの濃度(実濃度とも言う)C1との差(不足濃度とも言う)C12であれば良い。ここでは、C12=C0−C1の関係が成立する。ところで、化学量論組成のCIGSにおけるカルコゲン元素としてのSeの含有量とその以外の金属元素の含有量との間には所定の関係が存在する。このため、皮膜130における膜厚と主面の面積との積である体積V1が既知であれば、不足濃度C12から含有量差が算出され得る。このため、カルコゲン元素としてのSeの不足濃度が、含有量差を間接的に精度良く示し得る。従って、複数の被加熱基板5について皮膜130の膜厚が略一定に制御される場合には、含有量差を示す指標として、各皮膜130におけるカルコゲン元素としてのSeの不足濃度が採用されれば良い。
【0050】
また、複数の被加熱基板5の皮膜130におけるカルコゲン元素としてのSeの濃度が略一定である場合には、皮膜130の膜厚の増加に比例して含有量差が増大する。このため、皮膜130の膜厚が、含有量差を間接的に精度良く示し得る。例えば、皮膜130における主面の面積S1とカルコゲン元素の実濃度C1とが所定値に設定され、皮膜130の膜厚がT1であれば、皮膜130におけるカルコゲン元素の含有量Mc1が、Mc1=S1×T1×C1の式によって算出され得る。そして、化学量論組成のCIGSを形成するために必要となる皮膜130におけるカルコゲン元素以外の金属元素の単位体積V0当たりの含有量をM2とすると、含有量差D0は、D0=M2×S1×T1/V0−Mc1の式によって算出され得る。ここで、皮膜130における厚さT1以外の数値が予め設定されていれば、皮膜130の厚さが、含有量差を間接的に精度良く示し得る。従って、複数の被加熱基板5について皮膜130におけるカルコゲン元素としてのSeの濃度が略一定に制御される場合には、含有量差を示す指標として、各皮膜130の厚さが採用されれば良い。
【0051】
なお、複数の被加熱基板5において皮膜130におけるカルコゲン元素の不足濃度および該皮膜130の厚さの双方がばらつく場合には、含有量差を示す指標として、各皮膜130についてのカルコゲン元素の不足濃度および該皮膜130の厚さの双方が採用されれば良い。
【0052】
ここでは、例えば、ステップST5で準備される複数の被加熱基板5のうち、ステップST7以降の工程において用いられる全ての被加熱基板5に配されている各皮膜130が対象とされた測定が行われて、各被加熱基板5の皮膜130に係る指標が取得され得る。この場合、X線を用いた膜厚測定器、膜厚計および反射干渉計等による皮膜130の厚さの測定によって指標が取得されれば、指標を得るための物理的な測定によって皮膜130が損傷し難い。
【0053】
また、例えば、ステップST5で準備される複数の被加熱基板5のうち、一部の被加熱基板5に配されている各皮膜130が対象とされた測定結果に基づき、各被加熱基板5の皮膜130に係る指標が取得されても良い。この場合、測定対象の被加熱基板5に配されている皮膜130と略同一の条件で形成された別の皮膜130については、略同一の指標が得られるものとみなされる。これにより、ステップST5で準備された後にステップST7以降の工程で用いられる全ての被加熱基板5に配されている各皮膜130についての指標が取得され得る。この場合には、皮膜130についての指標を得るための物理的な測定に要する時間の短縮と、物理的な測定による皮膜130の損傷の低減とが図られ得る。
【0054】
なお、測定対象となる一部の被加熱基板5には、ステップST7以降の工程で用いられる被加熱基板5が含まれていても良いし、含まれていなくても良い。また、測定対象となる一部の被加熱基板5は、1つの被加熱基板5であっても良いし、2以上の被加熱基板5であっても良い。つまり、測定対象となる一部の被加熱基板5は、少なくとも1つの被加熱基板5であれば良い。
【0055】
なお、皮膜130の形成条件としては、例えば、ステップST4で下部電極層2上から塗布される溶液の条件、ステップST4における溶液の塗布の条件、およびステップST5における熱処理の条件等が考えられ得る。このため、例えば、同一ロットの溶液および同一の塗布装置が用いられて、同一の熱処理炉の略同一の位置における熱処理によって形成された皮膜130については、同一の指標が得られるものとみなされ得る。したがって、例えば、塗布用の溶液、塗布装置および熱処理炉のうちの何れか1つが変更される度に、皮膜130を対象とした測定が行われて、該皮膜130に係る指標が得られれば良い。
【0056】
ステップST7では、カセット4に2以上の被加熱基板5が配列され、該カセット4が薄膜製造装置1の加熱炉2内の基板配置領域4ARに配される。このとき、ステップST6で取得された各皮膜130についての指標に基づいて、2以上の被加熱基板5が含有量差の順に配列される。ここで、2以上の被加熱基板5は、ステップST5で準備される複数の被加熱基板5のうちの全ての被加熱基板5であっても良いし、一部の被加熱基板5であっても良い。なお、ここでは、例えば、12枚の被加熱基板5が配列される。
【0057】
ここで、仮に、皮膜130の厚さが略一定であり、皮膜130におけるCu、InおよびGaの略全量を含む化学量論組成のCIGSを形成するために必要である皮膜130におけるSeの理想濃度が20である場合を想定する。この場合、例えば、皮膜130におけるSeの不足濃度が、1.8,2,2.2,・・・,3.6,3.8,4と言った具合に、0.2ずつ順に高まるように複数の被加熱基板5がカセット4においてX方向に配列される。別の観点から言えば、例えば、皮膜130におけるSeの濃度を示す数値が、18.2,18,17.8,・・・,16.4,16.2,16といった具合に、0.2ずつ順に低下するように複数の被加熱基板5がカセット4においてX方向に配列される。具体的には、例えば、カセット4においてn番目に配される被加熱基板5nの皮膜130におけるSeの不足濃度を示す数値が、所定数としての12の段階の1.6+0.2×nとされ得る。
【0058】
また、仮に、皮膜130におけるSeの濃度が略一定であり、皮膜130の基準となる厚さが3μmである場合を想定する。この場合、例えば、皮膜130の厚さが、2.9,2.92,2.94,・・・,3.08,3.1,3.12μmといった具合に、0.02μmずつ皮膜130の厚さが増大するように複数の被加熱基板5がカセット4においてX方向に配列される。具体的には、例えば、カセット4においてn番目に配される被加熱基板5nの皮膜130の厚さが、所定数としての12の段階の2.88+0.02×nとされ得る。
【0059】
なお、例えば、所定数のうちの一段階以上の含有量差に係る指標に対応する被加熱基板5が得られていない場合には、該被加熱基板5と同一サイズの他の基板(ダミー基板とも言う)が用いられても良い。つまり、所定数の被加熱基板5のうちの1以上の被加熱基板5が、ダミー基板に置換されても良い。これにより、所望の条件を満たす被加熱基板5が得られない場合であっても、カルコゲン元素を含む化合物半導体の均一な薄膜を容易に大量に生産することができる。ここで、ダミー基板として、例えば、不良品となった被加熱基板5が繰り返し採用されれば良い。また、ダミー基板として、例えば、ガラス製の基板等といった被加熱基板5とは異なる基板が採用されても良い。
【0060】
ステップST8では、薄膜製造装置1において、2以上の被加熱基板5に対する加熱処理が行われる。該加熱処理は、カルコゲン元素の気体と非酸化性気体とを含む雰囲気中で行われれば良い。具体的には、各皮膜130に接している所定サイズの空間領域に、各指標に応じて単位時間当たりのカルコゲン元素の供給量が異なるようにカルコゲン元素を含む気体が流される。これにより、例えば、基板配置領域4ARにおいて、所定サイズの空間領域を単位時間に流れる気体に含まれているカルコゲン元素の供給量が、X方向に高められ得る。なお、供給量は、例えば、物質量で規定されれば良い。
【0061】
ここでは、例えば、複数のガス排出部7による内部空間2Iからの排気が調整されることで、所定サイズの各空間領域において単位時間当たりに流れる気体におけるカルコゲン元素の供給量が調整され得る。具体的には、例えば、各ガス排出部7による内部空間2Iからの単位時間当たりの気体の排出量によって、所定サイズの各空間領域において単位時間当たりに流れる気体におけるカルコゲン元素の供給量が調整され得る。
【0062】
このような調整は、例えば、複数のガス排出部7の一方向の配列順に従って、該複数のガス排出部7による単位時間当たりの気体の排出量が高められることで実現され得る。つまり、例えば、複数のガス排出部7のうち、指標が相対的に高い値を示す皮膜130の近くに配されているガス排出部7による気体の排出量が相対的に高められれば良い。換言すれば、複数のガス排出部7のうち、指標が相対的に低い値を示す皮膜130の近くに配されているガス排出部7による気体の排出量が相対的に低減されれば良い。
【0063】
また、該加熱処理における熱処理温度は、例えば、400℃以上で且つ600℃以下であれば良い。そして、該加熱処理によって、例えば、皮膜130におけるCIGSの結晶化が進み、CIGSを主に含む光吸収層131が形成され得る。これにより、各被加熱基板5は、基板101上に均一な光吸収層131が配されている基板(処理後基板とも言う)150となる。
【0064】
なお、複数のガス排出部7による内部空間2Iからの単位時間当たりの気体の排出量については、例えば、薄膜製造装置1が用いられた実験によって最適な排出量に設定され得る。該最適な排出量は、例えば、複数のガス排出部7による内部空間2Iからの単位時間当たりの気体の排出量と、各被加熱基板5に係る含有量差を示す指標と、各処理後基板150におけるCIGSの含有量との関係が実験的に求められることで、決定され得る。CIGSの含有量は、例えば、物質量で示されれば良い。
【0065】
ステップST9では、太陽電池パネル121の製造プロセスにおけるその後の工程が行われる。ここで、その後の工程の一例について説明する。
【0066】
まず、ステップST8で形成された光吸収層131の上に、バッファ層132が形成される。バッファ層132は、光吸収層131の第1導電型とは異なる第2導電型(ここではn型の導電型)を有する半導体を主に含む。該バッファ層132は、化学浴槽堆積法(CBD法)によって形成され得る。例えば、酢酸カドミウムとチオ尿素とがアンモニア水に溶解させられることで作製された溶液に光吸収層131が浸漬されることで、CdSを主に含むバッファ層132が形成され得る。これにより、光吸収層131とバッファ層132とが積層されている光電変換層103が形成され得る。図9には、光吸収層131とバッファ層132とが形成された状態が示されている。
【0067】
次に、バッファ層132の上面のうちの所定の形成対象位置から下部電極層102の上面に至る領域に、一方向(ここではY方向に相当する方向)に直線状に延在する溝部P2が形成される。図10には、溝部P2が形成された後の状態が示されている。溝部P2は、スクライブ針が用いられたメカニカルスクライビング等によって形成され得る。
【0068】
次に、光電変換層103の上面から溝部P2の内部にかけて上部電極層104が形成される。図11には、上部電極層104が形成された後の状態が示されている。上部電極層104は、スパッタリング法、蒸着法または化学的気相成長(CVD)法等によって形成され得る。例えば、バッファ層132上に、アルミニウムが添加された酸化亜鉛を主に含む透明な上部電極層104が形成される。このとき、溝部P2内に、上部電極層104のうちの垂下する部分(垂下部とも言う)104aが形成される。
【0069】
次に、上部電極層104の上面のうちの所定の形成対象位置から溝部P2の内部にかけて集電電極105が形成される。図12には、集電電極105が形成された後の状態が示されている。集電電極105は、上部電極層104の一主面上に設けられる線状の電極部である。集電電極105は、複数の集電部105aと連結部105bと垂下部105cとを備えている。集電電極105は、例えば、銀等の金属粉が樹脂製のバインダー等に分散させられた金属ペーストが所定のパターンを有するように印刷され、印刷後の金属ペーストが乾燥によって固化されることで形成され得る。
【0070】
そして、集電電極105が形成された後、上部電極層104の上面のうちの所定の形成対象位置から下部電極層102の上面に至る領域に、一方向(ここではY方向に相当する方向)に直線状に延在する溝部P3が形成される。これにより、図13および図14で示される基板101上に複数の光電変換セル110が配されている太陽電池パネル121が得られる。溝部P3は、溝部P2と同様に、スクライブ針が用いられたメカニカルスクライビング等によって形成され得る。
【0071】
なお、図13および図14で示されるように、複数の集電部105aは、Y軸方向に離間しており、各集電部105aがZ軸方向に延在している。連結部105bは、Y軸方向に延設されており、各集電部105aが接続されている。垂下部105cは、連結部105bの下部に接続され、溝部P2内に形成されている。ここで、垂下部105cと垂下部104aとを含む接続部145が、溝部P2を通って隣の光電変換セル110から延伸されている下部電極層102に接続する。つまり、太陽電池パネル121では、基板101上に配されている複数の光電変換セル110が電気的に直列に接続されている。図13および図14では、2つの光電変換セル110が描かれているが、太陽電池パネル121には、3以上の所定数の光電変換セル110がZ方向に配列され得る。
【0072】
<(1−3)一実施形態のまとめ>
以上のように、本実施形態に係る薄膜製造装置1では、加熱炉2において、2以上の被加熱基板5が含有量差の順に配列される。そして、加熱炉2において、該2以上の被加熱基板5が加熱される。この加熱時に、複数のガス排出部7による内部空間2Iからの気体の排出が調整されることで、各皮膜130に接している所定サイズの空間領域に、各皮膜130の含有量差に係る指標に応じて単位時間当たりのカルコゲン元素の供給量が異なるようにカルコゲン元素を含む気体が流される。これにより、カルコゲン元素を含む化合物半導体の均一な薄膜が容易に生産され得る。さらに、2以上の被加熱基板5に対して一度に加熱処理が施されることで、2以上の光吸収層131が形成される。このため、カルコゲン元素を含む化合物半導体の均一な薄膜が大量に生産され得る。
【0073】
また、各ガス排出部7による内部空間2Iからの単位時間当たりの気体の排出量によって、所定サイズの各空間領域において単位時間当たりに流れる気体におけるカルコゲン元素の供給量が調整され得る。これにより、複数のガス排出部7による内部空間2Iからの気体の排出が容易に調整され得る。
【0074】
<(2)変形例>
なお、本発明は上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0075】
<(2−1)第1変形例>
上記一実施形態に係る薄膜製造装置1では、各ガス排出部7による内部空間2Iからの単位時間当たりの気体の排出量の調整によって、所定サイズの各空間領域において単位時間当たりに流れる気体に含まれるカルコゲン元素の供給量が調整されたが、これに限られない。例えば、内部空間2Iから気体を排出する複数のガス排出部7が配されている密度(配設密度とも言う)によって、所定サイズの各空間領域において単位時間当たりに流れる気体に含まれるカルコゲン元素の供給量が調整されても良い。
【0076】
具体的には、例えば、上記一実施形態に係る薄膜製造装置1において、複数のガス排出調整部E7によって、複数のガス排出部7のうちの一部のガス排出部7から内部空間2I内の気体が排出されるように調整されれば良い。より具体的には、例えば、内部空間2Iから気体を排出する複数のガス排出部7の配設密度が、一方向に高められれば良い。ここでは、一方向は、例えば、X方向である。
【0077】
この場合、例えば、一部のガス排出部7に含まれる各ガス排出部7による内部空間2Iからの単位時間当たりの気体の排出量は略一定であれば良い。また、例えば、各ガス排出調整部E7における弁の開閉等によって、複数のガス排出部7のうちの一部のガス排出部7を介して内部空間2I内の気体が排出されるように調整されれば良い。
【0078】
図15は、本変形例に係る薄膜製造装置1Aの構成を模式的に示す図である。該薄膜製造装置1Aは、上記一実施形態に係る薄膜製造装置1がベースとされて、制御部C1が制御部C1Aに変更されたものである。該薄膜製造装置1Aでは、制御部C1Aの制御によって、各ガス排出調整部E7における弁の開閉が調整され得る。
【0079】
図15には、一例として、斜線のハッチングが付されているガス排出調整部E7の弁の開放によって、対応するガス排出部7を介して内部空間2Iの気体が排出される様子が示されている。具体的には、図15には、4,7,9,11,12番目のガス排出部74,77,79,711,712を介して内部空間2Iの気体が排出される様子が示されている。そして、制御部C1Aの制御によって、例えば、単位時間においてガス排出部74,77,79,711,712の各ガス排出部7を介して内部空間2Iから排出される気体の量が、略一定とされれば良い。
【0080】
なお、内部空間2Iから気体を排出する複数のガス排出部7の配設密度は、薄膜製造装置1Aが用いられた実験によって最適な配設密度に設定され得る。また、複数のガス排出調整部E7および複数のガス排出部7のうち、内部空間2Iからの気体の排出に使用されないガス排出調整部E7およびガス排出部7は、省略されても良い。
【0081】
<(2−2)第2変形例>
上記一実施形態では、各皮膜130に接している所定サイズの空間領域に、各皮膜130の含有量差に係る指標に応じて単位時間当たりのカルコゲン元素の供給量が異なるようにカルコゲン元素を含む気体が流されたが、これに限られない。例えば、各皮膜130に接している所定サイズの各空間領域に、各皮膜130の含有量差に係る指標の面内分布に応じて単位時間当たりのカルコゲン元素の供給量が異なるようにカルコゲン元素を含む気体が流されても良い。
【0082】
図16は、本変形例に係る薄膜製造装置1Bの構成を模式的に示す図である。該薄膜製造装置1Bは、上記一実施形態に係る薄膜製造装置1がベースとされて、制御部C1が制御部C1Bに変更されたものである。また、本変形例では、内部空間2Iに配される一実施形態に係るカセット4がカセット4Bに変更されている。
【0083】
図16では、図1と同様に、加熱炉2、複数のガス供給部6、複数のガス排出部7およびヒーター8についてのXZ断面と、複数のガス供給源S6と、複数のガス排出調整部E7と、制御部C1Bとが模式的に示されている。なお、図16では、皮膜130についての含有量差に係る指標の面内分布が、濃淡によって模式的に示されている。
【0084】
また、図17では、図2と同様に、加熱炉2およびヒーター8のXY断面と、複数のガス排出部7と、複数のガス排出調整部E7とが模式的に示されている。図18では、図3と同様に、加熱炉2およびヒーター8のXY断面と、複数のガス供給部6と、複数のガス供給源S6とが模式的に示されている。
【0085】
図16から図18で示されるように、カセット4Bには、2以上の所定数の被加熱基板5Bが一方向と垂直な他方向に配列されている状態で装着される。ここでは、一方向がX方向であり、他方向がY方向であり、2以上の所定数が7である。さらに、カセット4Bでは、各被加熱基板5の表裏の主面がXZ平面に略平行となる。つまり、隣り合う被加熱基板5B同士が相互に対向し合っている。また、カセット4Bに装着されている隣り合う被加熱基板5Bの間隔は、例えば、略一定とされれば良い。さらに、被加熱基板5Bは、上記一実施形態に係る被加熱基板5とほぼ同様な構成を有していれば良い。なお、被加熱基板5Bの製造途中の様子ならびに完成品を示す図4〜図14については、X軸、Y軸およびZ軸が、Y軸、Z軸およびX軸にそれぞれ置換されれば良い。
【0086】
なお、図17および図18では、−Y側から1番目に配される被加熱基板5に符号5B1が付され、−Y側からm番目(ここではmは1〜7の整数)に配される被加熱基板5Bに符号5Bmが付されている。カセット4Bは、2以上の被加熱基板5Bが配置される略直方体の基板配置領域4ARを囲む相互に連結された12の枠体を主に有している。図17および図18では、カセット4Bの外縁が一点鎖線で示されている。
【0087】
そして、例えば、複数のガス排出部7によって単位時間当たりに排出される気体の量が、X方向に高まるように、各ガス排出調整部E7が、各ガス排出部7を介した気体の排出量を調整する。これにより、基板配置領域4ARにおいて、所定サイズの各空間領域において単位時間当たりに流れる気体に含まれているカルコゲン元素の含有量が、X方向に高められ得る。なお、この場合、例えば、各ガス供給部6から内部空間2Iへの所定の気体の供給量ならびに所定の気体におけるカルコゲン元素の濃度は、略一定であれば良い。
【0088】
ここで言う所定サイズの空間領域は、例えば、各被加熱基板5Bの一主面に接する所定サイズの空間領域であれば良い。より具体的には、該各空間領域は、例えば、各被加熱基板5Bの一主面を仮想的に複数の領域(分割領域とも言う)に等分した場合、一分割領域について、該一分割領域から該一分割領域の法線方向に所定距離の範囲内にある空間であれば良い。なお、一分割領域は、例えば、一辺が数μm以上で且つ数十mm以下の長方形または正方形の領域であれば良い。また、所定距離は、例えば、数μm以上で且つ数mm以下の距離であれば良い。具体的には、所定距離は、例えば、カセット4Bに装着されている隣り合う2つの被加熱基板5Bの間隔と同一であれば良い。また、被加熱基板5Bの一主面は、例えば、被加熱基板5Bの−Y側の主面であれば良い。また、単位時間としては、例えば、数秒以上で且つ数十秒以下の範囲の任意の時間が採用され得る。
【0089】
上記構成を有する薄膜製造装置1Bを用いた太陽電池パネル121の製造プロセスは、例えば、上記一実施形態に係る製造プロセスのうちのステップST6〜ST8がステップST6B〜ST8Bに変更されたものであれば良い。
【0090】
ステップST6Bでは、各被加熱基板5の皮膜130について、含有量差を示す指標の面内分布が取得される。該指標としては、上記一実施形態と同様に、例えば、皮膜130におけるカルコゲン元素の濃度に係る値としての不足濃度、および皮膜130の厚さのうちの少なくとも一方が採用されれば良い。そして、例えば、分割領域毎に指標が得られることで、指標の面内分布が取得されれば良い。
【0091】
ここでは、例えば、ステップST5で準備される複数の被加熱基板5Bのうち、ステップST7B以降の工程において用いられる全ての被加熱基板5Bの皮膜130が対象とされた測定が行われて、各皮膜130に係る指標の面内分布が取得され得る。つまり、ステップST7B以降の工程において用いられる2以上の被加熱基板5Bにそれぞれ配されている各皮膜130を対象とした測定が行われることで、該各皮膜130に係る指標の面内分布が取得され得る。また、例えば、ステップST7B以降の工程において用いられる2以上の被加熱基板5Bのうちの少なくとも1つの被加熱基板5Bに配されている各皮膜130を対象とした測定が行われることで、該各皮膜130に係る指標の面内分布が取得されても良い。この場合、X線を用いた膜厚測定器、膜厚計および反射干渉計等による皮膜130の厚さの測定によって指標の面内分布が取得されれば、指標の面内分布を得るための物理的な測定によって皮膜130が損傷し難い。
【0092】
また、例えば、ステップST5で準備される複数の被加熱基板5Bのうち、ステップST7B以降の工程において用いられる2以上の被加熱基板5Bとは異なる別の被加熱基板5Bに配されている皮膜130を対象とした測定が行われても良い。そして、この測定結果に基づき、該2以上の被加熱基板5Bの皮膜130に係る指標の面内分布が取得されても良い。この場合、測定対象の被加熱基板5Bに配されている皮膜130と略同一の条件で形成された他の皮膜130については、略同一の指標の面内分布が得られるものとみなされる。これにより、ステップST5で準備された後にステップST7B以降の工程で用いられる2以上の被加熱基板5Bに配されている皮膜130についての指標の面内分布が取得され得る。そして、皮膜130についての指標を得るための物理的な測定に要する時間の短縮、ならびにステップST7B以降の工程において用いられる2以上の被加熱基板5Bを対象とした物理的な測定による皮膜130の損傷の低減または回避が図られ得る。
【0093】
別の観点から言えば、例えば、ステップST5で準備される複数の被加熱基板5Bのうち、一部の被加熱基板5Bに配されている各皮膜130が対象とされた測定結果に基づき、各被加熱基板5Bの皮膜130に係る指標が取得されても良い。この場合、測定対象の被加熱基板5Bに配されている皮膜130と略同一の条件で形成された別の皮膜130については、略同一の指標が得られるものとみなされる。これにより、ステップST5で準備された後にステップST7B以降の工程で用いられる全ての被加熱基板5Bに配されている各皮膜130についての指標が取得され得る。この場合には、皮膜130についての指標を得るための物理的な測定に要する時間の短縮と、物理的な測定による皮膜130の損傷の低減とが図られ得る。
【0094】
なお、測定対象となる一部の被加熱基板5Bには、ステップST7B以降の工程で用いられる被加熱基板5Bが含まれていても良いし、含まれていなくても良い。また、測定対象となる一部の被加熱基板5Bは、1つの被加熱基板5Bであっても良いし、2以上の被加熱基板5Bであっても良い。つまり、測定対象となる一部の被加熱基板5Bは、少なくとも1つの被加熱基板5Bであれば良い。
【0095】
ステップST7Bでは、ステップST5で準備される複数の被加熱基板5のうちの2以上の被加熱基板5Bがカセット4Bに装着され、該カセット4Bが薄膜製造装置1Bの加熱炉2内の基板配置領域4ARに配置される。このとき、2以上の被加熱基板5Bに配されている各皮膜130についての含有量差を示す指標の面内分布が、略同一であれば良い。このような2以上の被加熱基板5Bは、ステップST1〜ST5の処理が略同一の条件下で行われることで、準備され得る。
【0096】
ステップST8Bでは、薄膜製造装置1Bにおいて、2以上の被加熱基板5Bに対する加熱処理が行われる。該加熱処理は、カルコゲン元素の気体と非酸化性気体とを含む雰囲気中で行われれば良い。具体的には、各皮膜130に接している所定サイズの各空間領域に、該各皮膜130に係る指標の面内分布に応じて単位時間当たりのカルコゲン元素の供給量が異なるようにカルコゲン元素を含む気体が流される。
【0097】
ここでは、例えば、複数のガス排出部7による内部空間2Iからの排気が調整されることで、所定サイズの各空間領域において単位時間当たりに流れる気体に含まれるカルコゲン元素の供給量が調整され得る。具体的には、例えば、各ガス排出部7による内部空間2Iからの単位時間当たりの気体の排出量によって、所定サイズの各空間領域において単位時間当たりに流れる気体に含まれるカルコゲン元素の供給量が調整され得る。
【0098】
このような調整は、例えば、各皮膜130に係る指標の値が一方向に行けば行くほど高まる傾向を示す場合には、複数のガス排出部7による単位時間における気体の排出量が、該複数のガス排出部7の一方向の配列順に従って高められることで実現され得る。つまり、例えば、複数のガス排出部7のうち、各皮膜130において指標が相対的に高い値を示す部分の近くに配されているガス排出部7による気体の排出量が相対的に高められれば良い。換言すれば、複数のガス排出部7のうち、各皮膜130において指標が相対的に低い値を示す部分の近くに配されているガス排出部7による気体の排出量が相対的に低減されれば良い。
【0099】
また、該加熱処理における熱処理温度は、例えば、400℃以上で且つ600℃以下であれば良い。そして、該加熱処理によって、各皮膜130におけるCIGSの結晶化が進み、CIGSを主に含む光吸収層131が形成され得る。これにより、2以上の被加熱基板5Bは、基板101上に均一な光吸収層131がそれぞれ配されている処理後基板150となる。
【0100】
なお、複数のガス排出部7による内部空間2Iからの単位時間当たりの気体の排出量については、例えば、薄膜製造装置1Bが用いられた実験によって最適な排出量に設定され得る。該最適な排出量は、例えば、複数のガス排出部7による内部空間2Iからの単位時間当たりの気体の排出量と、各被加熱基板5に係る指標の面内分布と、各処理後基板150におけるCIGSの含有量の面内分布との関係が実験的に求められることで、決定され得る。
【0101】
以上のように、本変形例に係る薄膜製造装置1Bでは、加熱炉2において、皮膜130についての含有量差を示す指標の面内分布が略同一である2以上の被加熱基板5Bが配置される。そして、加熱炉2において、該2以上の被加熱基板5Bが加熱される。該加熱時に、複数のガス排出部7による内部空間2Iからの気体の排出が調整されることで、各皮膜130に接している所定サイズの各空間領域に、該各皮膜130の含有量差に係る指標の面内分布に応じて単位時間当たりのカルコゲン元素の供給量が異なるようにカルコゲン元素を含む気体が流される。これにより、カルコゲン元素を含む化合物半導体の均一な薄膜が容易に生産され得る。
【0102】
<(2−3)第3変形例>
上記第2変形例に係る薄膜製造装置1Bでは、各ガス排出部7による内部空間2Iからの単位時間当たりの気体の排出量によって、所定サイズの各空間領域において単位時間当たりに流れる気体に含まれるカルコゲン元素の供給量が調整されたが、これに限られない。例えば、内部空間2Iから気体を排出する複数のガス排出部7が配されている密度(配設密度とも言う)によって、所定サイズの各空間領域において単位時間当たりに流れる気体に含まれるカルコゲン元素の供給量が調整されても良い。
【0103】
具体的には、例えば、上記第2変形例に係る薄膜製造装置1Bにおいて、複数のガス排出調整部E7によって、複数のガス排出部7のうちの一部のガス排出部7を介して内部空間2I内の気体が排出されるように調整されれば良い。より具体的には、例えば、皮膜130において指標の値が一方向に行けば行くほど高まる傾向を示す場合には、内部空間2Iから気体を排出する複数のガス排出部7の配設密度が、一方向に高められれば良い。ここでは、一方向は、例えば、X方向である。
【0104】
この場合、例えば、各ガス排出部7による内部空間2Iからの単位時間当たりの気体の排出量は略一定であれば良い。また、例えば、各ガス排出調整部E7における弁の開閉等によって、複数のガス排出部7のうちの一部のガス排出部7を介して内部空間2I内の気体が排出されるように調整されれば良い。
【0105】
図19は、本変形例に係る薄膜製造装置1Cの構成を模式的に示す図である。該薄膜製造装置1Cは、上記第2変形例に係る薄膜製造装置1Bがベースとされて、制御部C1Bが制御部C1Cに変更されたものである。該薄膜製造装置1Cでは、制御部C1Cの制御によって、各ガス排出調整部E7における弁の開閉が調整され得る。
【0106】
図19には、一例として、斜線のハッチングが付されているガス排出調整部E7が弁の開放によって、対応するガス排出部7を介して内部空間2Iの気体が排出される様子が示されている。具体的には、図19には、4,7,9,11,12番目のガス排出部74,77,79,711,712を介して内部空間2Iの気体が排出される様子が示されている。そして、制御部C1Cの制御によって、例えば、単位時間においてガス排出部74,77,79,711,712のうちの各ガス排出部7を介して内部空間2Iから排出される気体の量が、略一定とされれば良い。
【0107】
なお、内部空間2Iから気体を排出する複数のガス排出部7の配設密度は、薄膜製造装置1Cが用いられた実験によって最適な配設密度に設定され得る。また、複数のガス排出調整部E7および複数のガス排出部7のうち、内部空間2Iからの気体の排出に使用されないガス排出調整部E7およびガス排出部7は、省略されても良い。
【0108】
<(3)その他の変形例>
◎例えば、上記一実施形態および第1〜3変形例に係る薄膜製造装置1,1A〜1Cを用いて製造される太陽電池パネル121では、光吸収層131が、I−III−VI族化合物半導体を含んでいたが、これに限られない。例えば、光吸収層131に含まれる化合物半導体は、カルコゲン元素を含む化合物半導体であれば良い。カルコゲン元素を含む化合物半導体としては、例えば、Cu、Zn、Sn、Sの4元素を主に含むI−II−IV−VI族化合物半導体(CZTS)、およびCdとTeの2元素を主に含むII−VI族化合物半導体が採用され得る。すなわち、薄膜製造装置1,1A〜1Cによって、カルコゲン元素を含む化合物半導体の薄膜が製造されれば良い。
【0109】
◎また、上記一実施形態および第1〜3変形例に係る薄膜製造装置1,1A〜1Cでは、加熱炉2の底部から所定の気体が導入され、加熱炉2の上部から排気されたが、これに限られない。例えば、加熱炉2において、被加熱基板5が水平面に沿って配置され、側方部から所定の気体の導入および排気が行われても良い。
【0110】
◎また、上記一実施形態および第1〜3変形例に係る薄膜製造装置1,1A〜1Cでは、基板配置領域4ARにおいて、所定サイズの各空間領域を単位時間当たりに流れる気体に含まれているカルコゲン元素の供給量が、X方向に単純に高められた。しかしながら、これに限られない。
【0111】
例えば、カセット4に配列される複数の被加熱基板5のうちの略中央の被加熱基板5における含有量差が最も高く、両端に近づけば近づくほど、被加熱基板5における含有量差が低くなる場合を想定する。この場合には、所定サイズの各空間領域を単位時間当たりに流れる気体に含まれているカルコゲン元素の供給量が、基板配置領域4ARの−X側の一端から略中央にかけてX方向に高められ、該略中央から+X側の他端にかけてX方向に低められても良い。
【0112】
さらに、上記一実施形態および第1変形例に係る薄膜製造装置1,1Aでは、皮膜130についての含有量差を示す指標に拘わらず、基板配置領域4ARに2以上の被加熱基板5が配置されても良い。この場合にも、各皮膜130についての含有量差を示す指標に応じて単位時間当たりのカルコゲン元素の供給量が異なるように、カルコゲン元素を含む気体が流されれば良い。
【0113】
また、例えば、カセット4Bに配される各被加熱基板5Bのうちの略中央の領域における含有量差が最も高く、両端に近づけば近づくほど、含有量差が低くなる場合を想定する。この場合には、所定サイズの各空間領域を単位時間当たりに流れる気体に含まれているカルコゲン元素の供給量が、基板配置領域4ARの−X側の一端から略中央にかけてX方向に高められ、該略中央から+X側の他端にかけてX方向に低められても良い。
【0114】
さらに、例えば、各開口70において単位時間当たりに排出される気体の量が調整可能であれば、複数のガス排出部7による内部空間2Iからの気体の排出が細かく調整され得る。この場合、各皮膜130についての含有量差を示す指標の面内分布が同一でなくても、各皮膜130に接している所定サイズの各空間領域に、該各皮膜130の含有量差に係る指標の面内分布に応じて単位時間当たり量のカルコゲン元素の供給量が異なるようにカルコゲン元素を含む気体が流され得る。
【0115】
◎また、上記第2および第3変形例に係る薄膜製造装置1B,1Cでは、加熱炉2に配されている2以上の被加熱基板5Bに対して、一度に加熱処理が施されたが、これに限られない。例えば、加熱炉2に一被加熱基板5Bが配された状態で、該一被加熱基板5Bに対して加熱処理が施されても良い。つまり、一加熱炉2に配されている1以上の被加熱基板5Bに対して、一度に加熱処理が施されれば良い。
【0116】
この場合、ステップST6Bにおいて、ステップST1〜ST5で準備される複数の被加熱基板5Bのうちの1以上の被加熱基板5Bにそれぞれ配されている皮膜130についての含有量差を示す指標の面内分布が得られれば良い。具体的には、例えば、ステップST7B以降の処理に用いられる1以上の被加熱基板5Bにそれぞれ配されている各皮膜130を対象とした測定が行われることで、該各皮膜130に係る指標の面内分布が取得され得る。なお、ステップST5で準備される複数の被加熱基板5Bのうち、ステップST7B以降の処理に用いられる1以上の被加熱基板5Bとは異なる別の被加熱基板5Bに配されている皮膜130を対象とした測定が行われても良い。このとき、該測定結果に基づき、該1以上の被加熱基板5Bの皮膜130に係る指標の面内分布が取得され得る。
【0117】
また、ステップST7Bにおいて、一加熱炉2内の基板配置領域4ARに、ステップST1〜ST5で準備される複数の被加熱基板5Bのうちの1以上の被加熱基板5Bが配置される。そして、ST8Bにおいて、該1以上の被加熱基板5Bに加熱処理が施されれば良い。なお、このとき、1以上の被加熱基板5Bに配されている各皮膜130に接している所定サイズの各空間領域に、各皮膜130についての含有量差を示す指標の面内分布に応じて単位時間当たりのカルコゲン元素の供給量が異なるようにカルコゲン元素を含む気体が単位時間当たりに流されれば良い。
【0118】
◎また、上記一実施形態および第1〜3変形例に係る薄膜製造装置1,1A〜1Cでは、含有量差を示す指標として、例えば、皮膜130におけるカルコゲン元素の濃度に係る値として不足濃度が採用される例を示して説明したが、これに限られない。例えば、化学量論組成のCIGSの形成に必要である皮膜130におけるカルコゲン元素の理想濃度が既知であれば、皮膜130におけるカルコゲン元素の実濃度から不足濃度が一義的に算出され得る。このため、含有量差を示す指標として、皮膜130におけるカルコゲン元素の濃度がそのまま採用される態様も考えられ得る。但し、この場合には、含有量差を示す指標が増大すれば、実際の含有量差が減少する。つまり、含有量差を示す指標が増大すれば、皮膜130の外部から供給すべきカルコゲン元素の不足量は減少する。
【0119】
◎なお、上記一実施形態および各種変形例をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0120】
1,1A〜1C 薄膜製造装置
2 加熱炉
2I 内部空間
4,4B カセット
4AR 基板配置領域
5,5B 被加熱基板
6 ガス供給部
7 ガス排出部
101 基板
102 下部電極層
103 光電変換層
104 上部電極層
105 集電電極
110 光電変換セル
121 太陽電池パネル
130 皮膜
131 光吸収層
132 バッファ層
150 処理後基板
C1,C1A,C1B,C1C 制御部
E7 ガス排出調整部
S6 ガス供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルコゲン元素を含む化合物半導体の薄膜を製造する薄膜製造方法であって、
前記化合物半導体に含まれる前記カルコゲン元素以外の金属元素と前記カルコゲン元素とを含んでいる皮膜が一主面上にそれぞれ配されている複数の基板を準備する工程と、
一加熱炉内の基板配置領域に前記複数の基板のうちの2以上の基板を配置する工程と、
複数のガス排出部による前記一加熱炉内からの排気を調整することによって、前記2以上の基板に配されている各前記皮膜に接している所定サイズの空間領域に、前記カルコゲン元素を含む気体を、前記2以上の基板に配されている各前記皮膜についての前記金属元素の含有量と前記カルコゲン元素の含有量との差を示す指標に応じて単位時間当たりの前記カルコゲン元素の供給量が異なるように流しながら、前記2以上の基板を加熱することで、前記2以上の基板上に前記化合物半導体の薄膜をそれぞれ形成する工程とを有する薄膜製造方法。
【請求項2】
前記複数の基板のうちの一部の基板に配されている各前記皮膜を対象として測定した結果に基づいて、前記2以上の基板にそれぞれ配されている各前記皮膜についての前記指標をそれぞれ得る工程をさらに有する請求項1に記載の薄膜製造方法。
【請求項3】
前記2以上の基板にそれぞれ配されている各前記皮膜を対象として測定することによって、前記2以上の基板にそれぞれ配されている各前記皮膜についての前記指標をそれぞれ得る工程をさらに有する請求項1に記載の薄膜製造方法。
【請求項4】
カルコゲン元素を含む化合物半導体の薄膜を製造する薄膜製造方法であって、
前記化合物半導体に含まれる前記カルコゲン元素以外の金属元素と前記カルコゲン元素とを含んでいる皮膜が一主面上にそれぞれ配されている複数の基板を準備する工程と、
一加熱炉内の基板配置領域に前記複数の基板のうちの1以上の基板を配置する工程と、
複数のガス排出部による前記一加熱炉内からの排気を調整することによって、前記1以上の基板に配されている各前記皮膜に接している所定サイズの各空間領域に、前記カルコゲン元素を含む気体を、前記1以上の基板に配されている各前記皮膜についての前記金属元素の含有量と前記カルコゲン元素の含有量との差を示す指標の分布に応じて単位時間当たりの前記カルコゲン元素の供給量が異なるように流しながら、前記1以上の基板を加熱することで、前記1以上の基板上に前記化合物半導体の薄膜をそれぞれ形成する工程とを有する薄膜製造方法。
【請求項5】
前記複数の基板のうちの前記1以上の基板とは異なる別の基板に配されている前記皮膜を対象として測定した結果に基づいて、前記1以上の基板に配されている各前記皮膜についての指標の分布をそれぞれ得る工程をさらに有する請求項4に記載の薄膜製造方法。
【請求項6】
前記複数の基板のうちの前記1以上の基板のうちの少なくとも1つの基板に配されている各前記皮膜を対象として測定することによって、前記1以上の基板に配されている各前記皮膜についての指標の分布をそれぞれ得る工程をさらに有する請求項4に記載の薄膜製造方法。
【請求項7】
前記1以上の基板に配されている各前記皮膜を対象として測定することによって、前記1以上の基板に配されている各前記皮膜についての指標の分布をそれぞれ得る工程をさらに有する請求項6に記載の薄膜製造方法。
【請求項8】
前記指標として、各前記皮膜における前記カルコゲン元素の濃度に係る値を用いる請求項1から請求項7の何れか1つの請求項に記載の薄膜製造方法。
【請求項9】
前記指標として、各前記皮膜の厚さを用いる請求項1から請求項7の何れか1つの請求項に記載の薄膜製造方法。
【請求項10】
前記複数のガス排出部のうちの各前記ガス排出部による前記一加熱炉内からの単位時間当たりの気体の排出量によって、各前記空間領域において前記単位時間当たりに流れる気体に含まれる前記カルコゲン元素の供給量を調整する請求項1から請求項9の何れか1つの請求項に記載の薄膜製造方法。
【請求項11】
前記一加熱炉内から気体を排出する前記複数のガス排出部の配設密度によって、各前記空間領域において前記単位時間当たりに流れる気体に含まれる前記カルコゲン元素の供給量を調整する請求項1から請求項9の何れか1つの請求項に記載の薄膜製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図16】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−93445(P2013−93445A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234789(P2011−234789)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】