説明

薄膜転写材及びその製造方法並びに薄膜付き成形体及びその製造方法

【課題】膜強度の優れた薄膜を成形体の表面に容易に形成することができる薄膜転写材を提供する。
【解決手段】仮支持体と、前記仮支持体の少なくとも一つの表面に形成されている微粒子積層膜とを備える薄膜転写材であって、
(1)前記積層膜は、微粒子を含む微粒子層の1層又は2層以上の積層であり、各微粒子層の少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有し、
(2)前記積層膜は、屈折率及び微粒子の平均一次粒子径の少なくともいずれかが異なる二種類以上の微粒子層の積層であるか、または一種類の微粒子層の1層又は2層以上であり、
(3)前記積層膜の前記仮支持体側から一種類目の1層以上の微粒子層を構成する微粒子の平均一次粒子径が、70〜500nmの範囲内である薄膜転写材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜転写材とその製造方法及びこの薄膜転写材を用いた薄膜付き成形体並びにその製造方法に関し、更に詳しくは、プラスチック製、ガラス製等の成形体に薄膜を形成することのできる薄膜転写材とその製造方法並びに薄膜付き成形体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックに代表される有機材料は、無機材料と比べて成形性・量産性・柔軟性・軽量などの長所があるため、日用雑貨から産業分野まで幅広く大量に使用されている。しかし、プラスチックでも、機械的強度、光学特性、耐熱性・寸法精度・物質透過性などが改善できれば、さらにその価値が増し、また、無機材料に置き換えて使用できる。近年、プラスチック材料は、これを無機材料と複合化することによりプラスチック材料単体では不可能な用途に応用することができるようになるが、その複合化技術として、無機薄膜をプラスチック成形体表面に形成する技術が進歩してきた。
【0003】
従来の無機薄膜形成技術は、ドライプロセスを利用したものが主たる薄膜形成方法であった。その例としては、化学的気相成長法(CVD)、熱CVD、プラズマCVD(PCVD)、光CVD、CVDの無機薄膜応用例、物理的気相成長法(PVD)、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどが挙げられる。
【0004】
一方、ウエットプロセスを利用した無機薄膜形成法も提案されてきている。そのような例としては、塗布方法を利用した薄膜形成方法があり、スプレー法、吹きつけ法、溶射法、ウエット・オン・ウエット法、液相析出法、メッキ法、ゾルゲル法、LB法、微粒子利用法、塗布方法などが挙げられる。
【0005】
このような無機薄膜の用途、応用分野は、産業用だけでなく、医療用などにも広がっている。なかでも、フラットパネル型ディスプレイ用の反射防止膜が注目される。
【0006】
例えば、現在一般的に行われている反射防止膜の製造方法は、真空蒸着やスパッタ法のようなドライ法、あるいはゾルゲル法や塗布法のようなウエット法である。近年、価格面の要求からドライ法に代わるウエット法の反射防止処理が主流となっている。
【0007】
一方、ウエット法でありながら、ナノメータースケールの薄膜を形成する方法として、交互積層法が提案されている。交互積層法は、G.Decherらによって1992年に発表された有機薄膜を形成する方法であり、正電荷を有するポリマー電解質(ポリカチオン)と負電荷を有するポリマー電解質(ポリアニオン)の水溶液に、基材を交互に浸漬することで基板上に静電的引力によって吸着したポリカチオンとポリアニオンの組が積層して複合膜(交互積層膜)が得られるものである。
【0008】
この交互積層法を利用した無機薄膜の製造法として、Y.Lvovらは、シリカやチタニア、セリアの各微粒子分散液を用いて、微粒子の表面電荷と反対電荷を有するポリマー電解質を交互積層法で積層する方法を報告している(非特許文献1参照)。この報告によると、負の表面電荷を有するシリカの微粒子とその反対電荷を持つポリカチオンであるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)またはポリエチレンイミン(PEI)などとを交互に積層することで、シリカ微粒子とポリマー電解質が交互に積層された微粒子積層薄膜を形成することが可能である。
【0009】
このような交互積層法を用いて形成された無機薄膜からなる反射防止膜が提案されているが、膜の強度が弱いために、物理的な摩擦などによる膜の損傷、剥離が容易に起こり、ディスプレイなどの最表面への適用には適さなかった。
【0010】
そこで、交互積層法で形成した単層の微粒子膜(無機膜)を、粘着性の透明樹脂に付着させる、または溶融性のある透明樹脂と融着させ、接着させる方法(特許文献1参照)、または、基材上に交互積層法で形成した微粒子積層膜の上面に透明基板を付着させて、基材を取り除くことで、微粒子積層膜を転写することで光学機能材を作製する方法が提案されている。(特許文献2参照)
一方、微粒子を用いた膜強度の高い反射防止膜を得る方法として、まず離型フィルムに機能性微粒子層を形成し、最終的に反射防止膜を形成する透明プラスチック基材に、硬化前のハードコート樹脂層を形成して、機能性微粒子層とハードコート樹脂層の双方が面するように圧着し、機能性微粒子層をハードコート樹脂層に埋没させて、ハードコート樹脂層を硬化(活性光線などにより)させ、離型フィルムを剥がすことによって、膜強度の高い反射防止膜を得る方法(特許文献3参照)、また、機能性超微粒子層、例えば、低屈折率超微粒子層又は高屈折率超微粒子層を、ハードコート層に埋没させて透明機能性膜を得る方法(特許文献4及び特許文献5参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−6108号公報
【特許文献2】特開2002−361767号公報
【特許文献3】特開平7−156326号公報
【特許文献4】特開平7−225302号公報
【特許文献5】特開2009−113476号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】ラングミュアー(Langmuir)、第13巻、1997年、6195−6203頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1や特許文献2の発明は機能性微粒子膜の片方の面が、透明樹脂層に完全に埋没されておらず、十分な膜強度を得ることは困難であった。また、表面の微粒子と微粒子との空間に脂などが入り込むと、屈折率が変化して、光学機能が劣化するという課題があった。
【0014】
また、特許文献3や特許文献4の方法では、機能性超微粒子層(例えば、低屈折率超微粒子層、高屈折率超微粒子層)の形成方法は、超微粒子の分散液自体、又は、超微粒子にバインダー樹脂と混ぜた超微粒子の分散液を塗布する方法により、超微粒子膜を形成する方法であったため、十分な膜強度を得ることは困難であった。バインダー樹脂と混ぜた超微粒子層は、また、微粒子と微粒子の間に空隙を有しておらず、超微粒子層の超微粒子間の間隙にハードコート樹脂層の樹脂が入り込むように超微粒子層を埋没させることは困難であり、十分な膜強度を得ることは難しいという問題がある。また、超微粒子に混ぜて塗布するバインダー樹脂自体が、ハードコート樹脂と同じ素材の場合でも、界面が発生するためにその密着強度を得るために、表面処理などの工程が必要となることがある。
【0015】
特許文献5の方法では、微粒子と微粒子の間に形成される空隙量が高いため、膜強度を向上させることが可能であるが、微粒子膜の形成されていないハードコート樹脂と比較すると機械強度が著しく劣ることがある。
【0016】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたもので、成形体の表面に微粒子層を埋没、転写させることにより十分な膜強度が得られる微粒子膜を形成することができる薄膜転写材及びその製造方法並びにこの薄膜付き成形体及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、次のものに関する。
【0018】
(1)仮支持体と、前記仮支持体の少なくとも一つの表面に形成されている微粒子積層膜とを備える薄膜転写材であって、
(1)前記積層膜は、微粒子を含む微粒子層の1層又は2層以上の積層であり、各微粒子層の少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有し、
(2)前記積層膜は、屈折率及び微粒子の平均一次粒子径の少なくともいずれかが異なる二種類以上の微粒子層の積層であるか、または一種類の微粒子層の1層又は2層以上であり、
(3)前記積層膜の前記仮支持体側から一種類目の1層以上の微粒子層を構成する微粒子の平均一次粒子径が、70〜500nmの範囲内であることを特徴とする薄膜転写材。
【0019】
(2) 前記微粒子が、無機酸化物である前記(1)に記載の薄膜転写材。
【0020】
(3) 前記無機酸化物が、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウム及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物からなるものである前記(2)記載の薄膜転写材。
【0021】
(4) 前記微粒子が、表面または内部に中空または多孔質構造を有するものである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の薄膜転写材。
【0022】
(5) 前記微粒子層が、微粒子と高分子電解質との積層であるか、または微粒子に高分子電解質を混合した層である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の薄膜転写材。
【0023】
(6) 前記微粒子積層膜が反射防止膜である前記(1)〜(5)のいずれかに記載の薄膜転写材。
【0024】
(7) 前記微粒子積層膜に、重合性不飽和二重結合を有するシリコーンオリゴマーが付着している前記(1)〜(6)のいずれかに記載の薄膜転写材。
【0025】
(8) 仮支持体を、(1)イオン性の表面電荷を有する微粒子の分散液と、前記微粒子の表面電荷と反対符号の電荷を有する高分子電解質溶液とに交互に一度以上浸漬する工程、または(2)高分子電解質溶液と、前記高分子電解質の電荷と反対符号の表面電荷を有する微粒子の分散液に交互に一度以上浸漬する工程、のいずれか一方を
行う微粒子積層膜形成工程を含み、
前記微粒子積層膜形成工程において、少なくとも最初に浸漬する微粒子の分散液の微粒子は、平均一次粒子径が、70〜500nmの範囲内であり、
前記微粒子積層膜形成工程により、仮支持体上に少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有する微粒子積層膜を形成することを特徴とする薄膜転写材の製造方法。
【0026】
(9) 浸漬する各工程の後、かつ次の工程の前に、リンスする工程を含む前記(8)記載の薄膜転写材の製造方法。
【0027】
(10) 仮支持体に、微粒子の分散液を一度以上塗布する微粒子積層膜形成工程を含み、少なくとも最初に塗布する微粒子の分散液の微粒子は、平均一次粒子径が、70〜500nmの範囲内であり、前記形成工程により仮支持体上に少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有する微粒子積層膜を形成することを特徴とする薄膜転写材の製造方法。
【0028】
(11) 仮支持体に、微粒子の分散液と、高分子電解質溶液とに交互に一度以上塗布する微粒子積層膜形成工程を含み、
微粒子積層膜形成工程において、少なくとも最初に塗布する微粒子の分散液の微粒子は、平均一次粒子径が、70〜500nmの範囲内であり、
前記微粒子積層膜形成工程により仮支持体上に少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有する微粒子積層膜が形成されることを特徴とする薄膜転写材の製造方法。
【0029】
(12) さらに、ロール状に巻き取られたシート状の仮支持体を引き出す工程を含み、
前記微粒子積層膜形成工程を連続的に行う前記(8)〜(11)のいずれかに記載の薄膜転写材の製造方法。
【0030】
(13) 仮支持体上に形成された微粒子積層膜の微粒子に、分子内に水酸基と反応する官能基一つ以上と重合性不飽和二重結合一つ以上を有するシリコーンオリゴマーを付着させる工程を含む前記(8)〜(12)のいずれかに記載の薄膜転写材の製造方法。
【0031】
(14) 成形体の表面に前記(1)〜(7)のいずれかに記載の薄膜転写材の微粒子積層膜が、転写により埋没固定化されている薄膜付き成形体。
【0032】
(15) 成形体が、その表面に永久支持層を有するものである前記(14)記載の薄膜付き成形体。
【0033】
(16) 前記永久支持層が、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂または活性エネルギー線硬化樹脂のいずれかを少なくとも含むものである前記(15)記載の薄膜付き成形体。
【0034】
(17) 成形体の未硬化のまたは軟化した表面に前記(1)〜(7)のいずれかに記載の薄膜転写材の微粒子積層膜を転写することにより、前記成形体表面に前記微粒子積層膜を埋没させることを特徴とする薄膜付き成形体の製造方法。
【0035】
(18) 成形体が、その表面に永久支持層を有するものである前記(17)記載の薄膜付き成形体の製造方法。
【0036】
(19) 永久支持層が、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂または活性エネルギー線硬化樹脂のいずれかを少なくとも含むものである前記(18)記載の薄膜付き成形体の製造方法。
【0037】
(20) 薄膜転写材を射出成形金型内に挟み込む工程、前記薄膜転写材の微粒子積層膜側に溶融材料を射出することにより成形体を形成すると同時に、前記成形体の表面に前記薄膜転写材の微粒子積層膜を埋没させる工程、その後、仮支持体を剥離する工程を含む前記(17)記載の薄膜付き成形体の製造方法。
【0038】
(21) 薄膜転写材の微粒子積層膜側を成形体に重ねて熱圧着することにより、未硬化のまたは軟化した成形体の表面に前記薄膜転写材の微粒子積層膜を埋没させる工程、その後、仮支持体を剥離する工程を含む前記(17)記載の薄膜付き成形体の製造方法。
【0039】
(22) 永久支持層が表面に形成された成形体を用い、薄膜転写材の微粒子積層膜側を前記永久支持層に重ねて、熱圧着又は活性光線の照射を行う工程により、前記永久支持層の未硬化のまたは軟化した表面に前記薄膜転写材の微粒子積層膜を埋没させる前記(19)に記載の薄膜付き成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0040】
本発明の薄膜転写材の、薄膜を構成する微粒子積層膜は微粒子と微粒子との間に大きな空隙を有しているため、成形体表面への転写により、成形体表面材料が微粒子積層膜に入り込みやすくなり、成形体の最表面層における成形体表面材料の微粒子に対する割合を多くすることが可能となる。その結果、成形体表面材料と同程度の高い膜強度を有する薄膜付き成形体を得ることができる。また、各種成形体の表面に、加工コスト、生産性に優れ、光学特性、外観性、耐久性にも優れた薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の薄膜転写材の一例を模式的に示す断面図。
【図2】本発明の薄膜付き成形体の一例を示す断面図。
【図3】薄膜付き成形体の製造法の一例を示す断面図。
【図4】薄膜付き成形体の連続的製法の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の薄膜は、ハードコート膜、ガスバリア膜、透明蒸着、ハイブリッド膜、光反射膜、光反射防止膜、導電膜、帯電防止膜、制電膜、透明導電膜、電磁波遮蔽膜、印刷用紙用薄膜、磁気テープ用フェライト膜、光触媒・親水・防汚・防曇・撥水膜、光触媒膜、親水親油性膜、撥水性膜、農業用防曇膜、遮断膜、近赤外線遮断膜、紫外線防御膜、透明断熱膜、抗菌・防臭膜等の機能を有する膜、炭素系薄膜、ダイヤモンド薄膜、ダイヤモンド状炭素膜等の素材膜、医療用膜生体骨用膜、人工血管膜、人工臓器用膜などの医療用途膜、多孔質膜などに応用される。
【0043】
また、適応される工業製品の分野としては、センサ、記録・記憶、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープ、光テープ、記録紙、太陽電池、ディスプレイ、フィルムLCD、PDP、タッチパネル、反射防止フィルム、光学部品、透明光学部品、光導波路部材、機械部材、粘着ラベルなどが挙げられる。
【0044】
中でも、近年、ブラウン管(Cathode−Ray Tube:CRT)をはじめ、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)、プラズマディスプレイパネル(PlasmaDisplay Panel:PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイパネル(Electroluminescent Display Panel:ELP)、エレクトロクロミックディスプレイ(Electrochemical Chromic Display:ECD)等、ディスプレイ分野、特にフラットパネル型ディスプレイの分野の進歩は目ざましく、これらは屋内のみならず携帯電話、携帯用情報端末等の移動端末の普及に伴い、屋外でも使用されるようになってきた。
【0045】
これらのディスプレイにおいては、特に屋外で使用する場合の表示画面の視認性を高めるために、反射防止膜が必須となっており、従来よりもさらに優れた反射防止効果を持ち、耐久性にも優れた光学薄膜を各種ディスプレイの表面に設けることが必要とされている。本発明における薄膜は、このような反射防止膜として特に有用である。
【0046】
本発明の薄膜転写材における微粒子積層膜は、微粒子を含み、少なくとも一箇所の微粒子間に空隙が形成されている。さらに仮支持体表面付近の微粒子積層膜中の微粒子間には大きな空隙が形成されているのが好ましい。前記薄膜転写材を成形体表面に転写することにより、成形体表面材料が微粒子積層膜の前記空隙に入り込み、成形体の最表面層(薄膜転写材における仮支持体側に最も近い側)における成形体表面材料の微粒子に対する割合を多くすることが可能となる。その結果、機械特性、膜強度に優れる薄膜を有する成形体を得ることができる。
【0047】
薄膜転写材を構成する仮支持体は、その材料は特に限定されるものではないが、変形又は屈曲可能なプラスチックによるフィルムが適当である。例えば、ポリエステル、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の延伸又は未延伸の透明プラスチックフィルム等が挙げられる。
【0048】
仮支持体自体は、微粒子積層膜を仮支持体から剥離した際に仮支持体に微粒子積層膜が全く残らないような離型性を有しているか、離型性が付与されたものであれば、仮支持体として使用することができる。離型性が付与されたものは、例えば、ワックス類、高級脂肪酸の塩又はエステル類、フッ化アルキル化化合物、ポリビニルアルコール、低分子量ポリエチレン等の離型剤が添加される等である。カップリング剤などの表面改質剤を用いても良い。
【0049】
仮支持体の厚さは、特に限定されるものではないが、通常4〜150μmの範囲、好ましくは12〜100μmの範囲、さらに好ましくは20〜50μmの範囲のものを用いるのが、しわや亀裂などのない薄膜転写材の製造が容易となる点から好ましい。
【0050】
上記仮支持体の少なくとも一方の表面に形成される微粒子積層膜の膜厚は特に限定しないが、光学薄膜として利用する場合には、50〜150nmが好ましい。また、微粒子積層膜の屈折率は、1.12〜2.00が好ましい。例えば、屈折率が異なる微粒子積層膜が複数種積層された場合は、反射防止膜や反射膜、光学フィルター、半透過半反射膜として利用できる。
【0051】
微粒子積層膜中に含まれる微粒子としては、無機微粒子が好ましく、無機酸化物、無機フッ化物がより好ましく、特に金属酸化物、金属フッ化物等の金属含有微粒子が好ましい。具体的には、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、シリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニア(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(Nb)、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、セリア(CeO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ビスマス(Bi)などが挙げられる。これらの微粒子から選択された1種類もしくは、2種以上の金属酸化物微粒子の混合物を組み合わせて用いることができる。
【0052】
透明な薄膜を得るためには、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウム及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物を用いると好ましい。
【0053】
仮支持体上に形成された微粒子が積み重なってなる微粒子積層膜には、微粒子と微粒子の間に空隙が存在する。ここで述べる空隙とは、転写する過程で、未硬化のまたは軟化した成形体または後述する永久支持層の構成材料が入り込むことができる空間のことである。隣り合う微粒子同士は接触している部分があっても無くてもよい。成形体表面に上記の微粒子積層膜からなる薄膜が、その空隙に成形体の一部または成形体の表面に形成された永久支持層の一部が入り込むようにして、薄膜が成形体表面に埋没して、成形体と一体化することにより、薄膜という観点からは、その密着性や耐擦傷性など機械的特性が向上する。この空隙の大きさが大きいほど、成形体表面材料が入り込みやすくなり、薄膜付き成形体の強度は高くなる。
【0054】
1次粒子がつながった形状の粒子を用いるよりも、粒子径の大きな微粒子を使用することが、容易に空隙を大きくすることができるため、好ましい。
【0055】
空隙率が小さすぎると、空隙への上記入り込みが不十分になる傾向があり、粒子間の結着が不十分になる傾向がある。また、空隙率が大きすぎると、微粒子積層膜としての形状を留めておくことが困難となる傾向がある。
【0056】
微粒子が、表面または内部に、中空または多孔質構造を有することは、空隙が多くなるため、特に低屈性率の薄膜を作製する上で好ましい。成形体の一部または成形体の表面に形成された永久支持層が微粒子積層膜の粒子間の空隙に十分入り込んで、微粒子との密着性や耐擦傷性などの機械的特性を向上させながら、微粒子自体の内部の空隙によって、低屈折率化された薄膜が形成できる。
【0057】
微粒子積層膜は、前記積層膜は、微粒子を含む微粒子層の1層又は2層以上の積層であり、各微粒子層の少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有する。
【0058】
また、前記積層膜は、屈折率及び微粒子の平均一次粒子径の少なくともいずれかが異なる二種類以上の微粒子層の積層であるか、または一種類(同種類)の微粒子層の1層又は2層以上である。二種類以上の場合、微粒子積層膜内の各種類の微粒子層は、1層のみでも2層以上の積層でもよい。すなわち、同じ種類の微粒子層のみの積層膜であってもよいし、その上に、さらに前記微粒子層と種類が異なる別の微粒子層からなる積層膜が形成されていてもよい。
【0059】
なお、「一種類」の微粒子層の積層膜とは、一種類の微粒子のみからなる微粒子層の積層膜だけでなく、異なる微粒子の混合物の微粒子層からなる積層膜全体で積層方向に局在化せず均等に分散している場合や、微粒子と後述する高分子とからなる微粒子層が積層している場合も含む。
【0060】
積層膜が二種類以上の場合、本発明において、仮支持体に近い種類から順に「一種類目」「二種類目」・・・とする。転写後は成形体の表面に位置するのは一種類目の微粒子層であるため、例えば一種類目の微粒子層は屈折率を所定の値とし、二種類目の微粒子積層膜は成形体表面材料に埋没しやすいよう所定の平均一次粒子径の微粒子を用いることにより、多機能の微粒子積層膜を得ることができる。これら二種類以上の微粒子層は、屈折率、微粒子の平均1次粒子径の少なくともいずれかが異なるものである。複数種類の微粒子層の物性の違いは、さらに、微粒子の元素成分、微粒子同士の混合比等でも調整できる。三種類目以降の微粒子層も同様である。
【0061】
本発明では、前記前記仮支持体側から一種類目の1層以上の微粒子層(以下、一種類目の層ともいう。)を構成する微粒子の平均一次粒子径が、70〜500nmの範囲内である必要がある。その理由は、微粒子の平均1次粒子径が小さすぎると、微粒子と微粒子の空隙の大きさが小さくなり、成形体表面に転写する際に、微粒子が成形体表面材料に埋没することが困難になるためである。この層は成形体と一体化したときに表面になるので、空隙率が大きいことが好ましい。
【0062】
好ましい下限は微粒子と微粒子との間の上記空隙の大きさの理由により、70nmであり、より好ましい下限は80nmである。また、好ましい上限は、微粒子積層膜表面の凹凸を低減する理由により、150nmであり、より好ましい上限は120nmである。なお、本発明において、微粒子の平均一次粒子径は、特記しない限りBET法で測定した値である。
【0063】
前記一種類目の層の微粒子には、屈折率を調整して光学的な機能を高めるために、平均1次粒子径が70〜500nmとなる範囲内で、粒子径や元素成分の異なる微粒子を混合しても良い。1次粒子径の異なる微粒子を混合する場合には、微粒子間の空隙を著しく小さくするような粒子径、混合量は好ましくない。具体的には、1次粒子径は、10〜500nmが好ましく、さらに好ましくは20〜50nmである。混合量は、10〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜30重量%である。混合量が多すぎると大きな空隙を埋めてしまい、少なすぎると光学的な機能向上が得られないからである。
【0064】
仮支持体上に形成する二種類目以降の層を構成する微粒子は、粒子の形状は特に限定されないが、平均1次粒子径は、10〜500nmが好ましく、さらに好ましくは15〜50nmである。その理由は、微粒子の平均1次粒子径が小さすぎると、微粒子と微粒子の空隙の大きさが小さくなり、成形体表面に転写する際に、微粒子が成形体表面材料に埋没することが困難になるためであり、500nm以上の粒子は、水分散が困難であるため、コーティング中に沈殿しやすい傾向がある。また、微粒子の平均1次粒子径が50nmより大きいと、ミー散乱のため膜の白化が起こる傾向があるので透明な光学薄膜用途には不向きであるためである。
【0065】
なお、特許文献3に開示されるように、微粒子分散液とバインダー樹脂を混ぜて仮支持体に塗布して形成される微粒子層の薄膜を転写する方法では、硬化性樹脂が入り込むために十分な隙間を、微粒子層に形成することができないために、微粒子間を結着することが困難であった。
【0066】
本発明における微粒子積層膜は、微粒子分散液を仮支持体に直接塗布する方法、交互積層法などによって作製することができる。交互積層法によると、pH調整(pHを3〜9に調整すると空隙率は比較的大きく、それ以外の範囲では空隙率が比較的小さくなるように制御される)等、微粒子の表面電位を調整することができるので、形成される微粒子積層膜の空隙率を制御しやすい。
【0067】
交互積層法によれば、仮支持体を高分子電解質溶液(ポリカチオンまたはポリアニオン)と微粒子分散液に交互に浸し、微粒子積層膜を仮支持体に作製する。このように、交互積層法の場合、形成される微粒子層は高分子電解質と微粒子とが積層されているが、微粒子積層膜の中に含まれる高分子電解質の比率は、1重量%以下であり、微粒子間の空隙を全て埋めるものではない。
【0068】
まず、仮支持体は、そのまま用いるか、または離型処理を行って用いる。また、高分子電解質や微粒子を仮支持体表面に吸着させるために、仮支持体表面に表面電荷を効率よく導入する方法としては、強電解質高分子であるポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)又はポリエチレンイミン(PEI)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の交互積層膜をあらかじめ仮支持体に形成する方法がある。
【0069】
仮支持体の表面電荷がマイナスであれば、はじめにカチオン性の溶液または分散液に浸漬する。逆に、仮支持体の表面電荷がプラスであれば、はじめにアニオン性の溶液または分散液に浸漬する。すなわち、仮支持体を、(1)イオン性の表面電荷を有する微粒子の分散液と、前記微粒子の表面電荷と反対符号の電荷を有する高分子電解質溶液とに交互に一度以上浸漬する工程、または(2)高分子電解質溶液と、前記高分子電解質の電荷と反対符号の表面電荷を有する微粒子の分散液に交互に一度以上浸漬する工程、のいずれか一方を行う微粒子積層膜形成工程である。
【0070】
仮支持体に少なくとも最初に塗布または浸漬する微粒子の分散液が微粒子積層膜における前記一種類目の層になるので、平均一次粒子径が、70〜500nmの範囲内である。微粒子積層膜の二種類目以降の層を積層する場合は、引き続き二種類目の微粒子分散液および/または高分子電解質溶液を使用する。
【0071】
浸漬時間は高分子電解質や微粒子、積層したい膜厚によって適宜調整する。例えば光学薄膜の場合は、50〜150nmが好ましい。微粒子積層膜が、適当な膜厚になるまで、高分子電解質溶液と微粒子分散液への浸漬を交互に繰り返す。
【0072】
各浸漬工程の後、次の反対電荷を有する溶液又は分散液に浸漬する工程の前に溶媒または分散媒のみによる洗浄によって余剰分を洗い流す工程(リンス工程)を経ることが好ましい。また、積層された高分子電解質や微粒子が膜を形成しているが、互いに静電的に吸着しているために、このリンス工程で剥離することはない。また、反対電荷の溶液に、静電的に吸着していない高分子電解質または微粒子、言い換えれば、分子間力などの弱い結合によって吸着しており脱離しやすいもの、を次の作業又は工程に持ち込むことを防ぐために、リンス工程は、行った方が好ましい。反対電荷を有する物質を次の作業又は工程に持ち込むことによって溶液内でカチオン、アニオンが混ざり、沈殿を起こすことがある。高分子電解質溶液への浸漬後にリンス工程を行うことによって、微粒子の間に入り込んだ余分の高分子電解質を取り除く効果がある。
【0073】
高分子電解質の濃度は、溶媒に対する高分子電解質の溶解度及びによって適宜決定されるが、適正な濃度よりも高濃度であると、リンス工程で余剰の溶液を洗い流しにくくなるために、空隙を埋めてしまう。また低濃度すぎると、吸着する仮支持体の面積に対して、溶質である高分子電解質の量が十分でないため、交互積層による膜形成ができない。
【0074】
高分子電解質の濃度及び微粒子の濃度は、それぞれ、0.00001重量%以上30重量%以下の範囲から適宜選択することが好ましく、0.001重量%以上20重量%以下がさらに好ましく、0.01重量%以上10重量%以下が特に好ましい。高分子電解質溶液及び微粒子分散液による浸漬時間は、それぞれ、1秒間以上120分間以下の間で適宜選択することが好ましく、10秒間以上300秒間以下の範囲であることがより好ましい。
【0075】
上記の交互積層法において、高分子電解質又は微粒子の層の形成は、これらを含む溶液又は分散液の仮支持体への浸漬により行う場合を説明したが、このような場合に限らず、上記の溶液又は分散液が、仮支持体に接触して膜を形成することができる方法であればよい。具体的には、スプレー法、キャスト法、バーコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ロールコート法などを用いて、仮支持体上に微粒子の分散液と高分子電解質溶液とを交互に直接塗布し、乾燥することにより微粒子積層膜を形成することができる。この場合、仮支持体の表面電荷に応じた塗布の順番は特に限定されない。
【0076】
なお、微粒子分散液は、水やアルコールに分散させたゾル状微粒子分散液を用いるのが好ましい。微粒子分散液の分散媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、ブチロニトリルなどのニトリル系溶剤、水等が挙げられ、2種類以上を混合した分散媒を用いても良い。
【0077】
さらに仮支持体との濡れを良くするために、微粒子分散性を悪化させない程度に界面活性剤を加えても良い。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双性界面活性剤等が挙げられるが、非イオン性界面活性剤やアニオン性界面活性剤が好適である。界面活性剤の濃度は、0.001重量%以上5重量%以下の範囲から適宜選択することが好ましく、0.01重量%以上0.5重量%以下がさらに好ましい。
【0078】
また、微粒子分散液を直接塗布する方法は、スプレー法、キャスト法、バーコート法、ダイコート法、グラビアコート法、ロールコート法等により、仮支持体に微粒子分散液を直接塗布し、乾燥することを必要に応じて繰り返して、所望の厚さの微粒子積層膜を得ることができる。ゾル状微粒子分散液の分散溶媒としては、上述と同じ溶剤、水等が挙げられ、2種類以上の溶媒の混合溶媒を用いても良い。また、微粒子分散液には、同様に界面活性剤を加えても良い。
【0079】
また、シート状の仮支持体がロール状に巻き取られているものを引き出し、前記いずれかの微粒子積層膜形成工程を、好ましくは各浸漬に次いでリンスする工程を含めて、連続的に行う交互積層法によっても薄膜転写材を製造することができる。この方法は、長尺のフィルム基材を仮支持体とする場合には好適に用いることができる。
【0080】
上記高分子電解質(ポリアニオン又はポリカチオン)としては、電荷を有する官能基を主鎖または側鎖に持つ高分子を用いることができる。この場合、ポリアニオンとしては、一般的に、スルホン酸、硫酸、カルボン酸など負電荷を帯びることのできる官能基を有するものであり、たとえば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸(PVS)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリマレイン酸、ポリフマル酸などが用いられる。また、ポリカチオンとしては、一般に、4級アンモニウム基、アミノ基などの正電荷を帯びることのできる官能基を有するもの、たとえば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジンなどを用いることができる。これらの有機高分子イオンは、いずれも水溶性あるいは水と有機溶媒との混合液に可溶なものである。
【0081】
前記の微粒子積層膜は、微粒子同士または微粒子とポリカチオン又はポリアニオンの間に作用する分子間力、水素結合、共有結合、イオン結合などにより、微粒子同士、微粒子と仮支持体とが吸着若しくは結合している。仮支持体との間の接着力は、転写に際し、剥離を妨げない程度のものである。仮支持体に対するピール強度が、0.1N/10mm以上10N/10mm以下の範囲の粘着力を有する粘着テープで容易に剥がせることが望ましい。転写する工程で、仮支持体から容易に剥がすことができ、硬化性樹脂に埋没させやすいからである。
【0082】
前記微粒子積層膜には、イオン性、または反応性の官能基を付加しても良い。反応性の基を付加することにより、薄膜転写材を構成する微粒子積層膜と薄膜付き成形体を構成する樹脂とを化学的に結合させることができ、機械特性、膜強度に優れる薄膜付き成形体を得ることができる。
【0083】
前記微粒子積層膜に、イオン性、または反応性の官能基を付与する方法としては、微粒子にシリコーンオリゴマーを付着する方法が挙げられる。このシリコーンオリゴマーとしては、分子中に水酸基と反応する官能基一つ以上と重合性不飽和二重結合一つ以上を有していれば、その分子量や構造等に特に制限はない。
【0084】
シリコーンオリゴマーを付着する場合、微粒子の表面に水酸基を有することが好ましい。それが金属酸化物を含むものであれば、雰囲気から水分子の吸着により表面水酸基が存在する(「ぬれ技術ハンドブック」、株式会社テクノシステム、2005年12月20日、p.81参照)。金属フッ化物も同様に表面水酸基を有する。また、表面に水酸基をより多く導入するための表面処理を微粒子に施しても良い。表面処理の方法としては、酸素プラズマ処理、コロナ処理、プラズマアッシング処理などのドライプロセスによる、表面改質処理によって、酸化物の表面に、水酸基を多く生成させる方法や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを含む、強アルカリ性の水溶液、またはアルコール溶液、あるいは水とアルコールの混合溶液に接触させることよって、水酸化物イオンが、表面酸化物と反応して、水酸基を多く生成させる方法がある。
【0085】
金属フッ化物も、酸素プラズマ処理により、高エネルギーの酸素ラジカルが、金属元素と反応して、表面に酸化物を形成し、その後、雰囲気からの水分の吸着により、表面水酸基が生成する。
【0086】
さらに、微粒子の表面水酸基の存在密度を高める方法としては、金属アルコキシド、代表的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ポリシラザン、及びそれらを、加水分解させた、シラノール基(Si−OH)を分子内に複数有する重合物と微粒子を接触させて、重合物に含まれる水酸基の一部が微粒子と化学結合し、一部の水酸基を表面水酸基として残留させる方法もある。なお、シリコーンオリゴマーで処理した後、微粒子の表面の水酸基や、水酸基と反応性の基が一部残っていても良い。
【0087】
シリコーンオリゴマーが有する水酸基と反応する官能基としては、ハロゲン、アルコキシル基、アシル基、シラノール基等が好ましい。ハロゲン、アルコキシル基、アシル基等は、Siに結合している基で、加水分解により、シラノール基を生成する基である。
【0088】
また、本発明におけるシリコーンオリゴマーは、1官能性シロキサン単位(RSiO1/2)、2官能性シロキサン単位(RSiO2/2)及び3官能性シロキサン単位(RSiO3/2)から選ばれる少なくとも1種類のシロキサン単位を含有するものであり、2官能性シロキサン単位(RSiO2/2)及び3官能性シロキサン単位(RSiO3/2)から選ばれる少なくとも1種類のシロキサン単位を分子中に少なくとも1個有するものが好ましい(なお、上記いずれの式においても、Rは有機基、水酸基、ハロゲン等であり、複数のR基又はシリコーンオリゴマー中の複数のR基は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい)。本発明におけるシリコーンオリゴマーには、4官能性シロキサン単位(SiO4/2)が含まれていてもよい。
【0089】
また、シリコーンオリゴマーの重合度は、2〜30のものが好ましく、より好ましくは3〜10である。シリコーンオリゴマーの重合度が大きすぎると、微粒子積層膜の微粒子間の空隙にシリコーンオリゴマーが入りにくくなり、仮支持体表面付近の微粒子とシリコーンオリゴマーとの反応が不十分となり、膜強度の向上効果が低下する傾向がある。ここで、重合度は、その重合体の分子量(低重合度の場合)又はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン若しくはポリエチレングリコールの検量線を利用して測定した数平均分子量から算出したものである。
【0090】
前記したシロキサン単位におけるRは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、アセチルオキシ基等のアシル基、水酸基などの水酸基と反応性の基、ビニル基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシ基等の重合性不飽和二重結合を有する基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、塩素、臭素等のハロゲン、その他の基であり、本発明におけるシリコーンオリゴマーは、その分子中に、水酸基と反応性の基及び重合性不飽和二重結合を有する基をそれぞれ1個以上有するものである。
【0091】
本発明のシリコーンオリゴマーは、分子中に含まれる水酸基と反応性の基の少なくとも一部と、微粒子表面の水酸基の一部とが反応することにより、強固に微粒子と結合し、さらに、その分子中の重合性不飽和二重結合を硬化性樹脂と反応させることにより、微粒子積層膜と硬化性樹脂とを強固に結合させる役目をする。
【0092】
反応の進行は、膜の赤外吸収スペクトルを測定することにより確認できる。具体的には、それぞれ、シラノール基のSi−OHの赤外吸収スペクトルのピーク波長、例えば波数3500〜3800cm−1帯の吸収の減少または消失、及び重合性不飽和結合の赤外吸収スペクトルのピーク波長、例えば955〜985cm−1帯、915〜905cm−1帯の吸収の減少または消失により、確認することができる。
【0093】
本発明におけるシリコーンオリゴマーは、シラン化合物を加水分解、重縮合させて得ることができる。
【0094】
このシラン化合物は、例えば、一般式(I)
[化1]
R′SiX4−n (I)
(式中Xは、加水分解してOH基を生成する基であり、例えば、塩素、臭素等のハロゲン又は−OR″を示し、ここで、R″は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を示し、R′は重合性不飽和二重結合を含有する基、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基等の有機基その他の基を示し、nは0又は1〜3の整数を意味する)で表される化合物である。
【0095】
一般式(I)で表されるシラン化合物のうち、nが1、2又は3の化合物(順次、3官能性シラン化合物、2官能性シラン化合物及び1官能性シラン化合物という)のうち、少なくとも1種類を必須成分として用いることが好ましく、特に、3官能性シラン化合物又は2官能性シラン化合物を必須成分として用いることが好ましい。4官能性シラン化合物(一般式(I)でnが0である化合物)を、一部使用しても良い。
【0096】
上記シラン化合物(原料モノマー)を加水分解した時点で、OH基(シラノール基)が導入され、これが縮合することにより、オリゴマー化される。このとき、残存するOH基又は原料モノマー中のアルコキシ基又はアシル基(−OR″)が残存している場合、これらの残存基が水酸基と反応性の基(シリコーンオリゴマー分子内に存在する)となる。これらの残存量は、加水分解時の水の量や縮合度を調整することにより調整することができる。
【0097】
本発明におけるシリコーンオリゴマーは、分子中に重合性二重結合を有する。このために、上記のシラン化合物として、R′(R′が複数個ある時は少なくとも1個のR′)が重合性不飽和二重結合を含有する基である1〜3官能性シラン化合物(好ましくは、2又は3官能性シラン化合物)が必須成分として用いられる。
【0098】
また、本発明におけるシリコーンオリゴマーが、分子中に上記R′として、アルキル基、アリール基等の非反応性の有機基を含有していると、それが付着されている微粒子積層膜が親油化され、該微粒子積層膜が埋設されるべき硬化性樹脂との親和性を向上させることができる。
【0099】
前記3官能性シラン化合物は、具体的には、重合性不飽和二重結合を含有するシラン化合物として、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等があり、重合性不飽和二重結合を含有していないシラン化合物として、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、メチルトリアセチルオキシシラン等を挙げることができる。
【0100】
前記2官能性シラン化合物は、具体的には、重合性不飽和二重結合を含有するシラン化合物として、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等があり、重合性不飽和二重結合を含有しないシラン化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニジメトキシシラン、ジフェニジエトキシシラン、ジメチルジアセチルオキシシラン等がある。
【0101】
前記1官能性シラン化合物としては、3−メタクリロイルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、トリメチルモノメトキシシラン、トリメチルモノエトキシシラン、トリメチルモノアセチルオキシシラン等がある。
【0102】
前記4官能性シラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラアセチルオキシシラン等がある。
【0103】
シラン化合物の好ましい使用量は次のとおりである。重合性不飽和二重結合を含有する基を有するシラン化合物が、シラン化合物全体に対して50〜100モル%、特に70〜100モル%、その他のシラン化合物が、0〜50モル%、特に0〜30モル%の割合で使用され、また、2官能シラン化合物又は3官能シラン化合物が50〜100モル%、4官能性シラン化合物及び1官能性シラン化合物は、それぞれ、0〜50モル%、特に0〜30モル%であって、全体が100モル%となるような割合で使用される。
【0104】
本発明におけるシリコーンオリゴマーは、前記したシラン化合物を加水分解、重縮合して製造されるが、このとき、触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、フッ酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、スルホン酸、ギ酸等の有機酸を使用することが好ましく、アンモニア、トリメチルアンモニウムなどの塩基性触媒を用いることもできる。これら触媒は、一般式(I)で表されるシラン化合物の量に応じて適当量用いられるが、好適には一般式(I)で表されるシラン化合物1モルに対し0.001〜0.5モルの範囲で用いられる。
【0105】
また、上記の加水分解・重縮合は、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチルなどのエステル系溶剤、ブチロニトリルなどのニトリル系溶剤等の溶媒中で行うことが好ましい。
【0106】
また、この反応に際して、水が存在させられる。水の量も適宜決められるが、多すぎる場合には塗布液の保存安定性が低下するなどの問題があるので、水の量は、一般式(I)で表されるシラン化合物1モルに対して、0〜5モル%が好ましく、0.5〜4モルの範囲とすることがより好ましい。
【0107】
シリコーンオリゴマーの製造は、上記の条件、配合を調整してゲル化しないように行われる。
【0108】
シリコーンオリゴマーは、上記の反応溶媒と同じ溶媒に溶解して使用することが作業性の点で好ましい。このためには、上記の反応生成溶液をそのまま使用してもよく、反応生成溶液からシリコーンオリゴマーを分離し、改めて上記溶媒に溶解してもよい。
【0109】
微粒子表面の水酸基と反応する、シリコーンオリゴマーの分子内に存在するシラノール基は、オリゴマーを合成する過程で発生した、縮合反応に寄与しなかった、シラノール残基を用いる。さらに、反応性を高めるために、溶媒に溶解した、シリコーンオリゴマー溶液に、前記の酸または、アルカリ触媒及び水を添加して、オリゴマー分子内に残った、下垂文化により水酸基を生成する基の加水分解反応(例えば、アルコキシ基の脱アルコール反応)を促進することにより、増やすこともできる。シラノールの導入時期は、微粒子と接触させる直前であることが好ましい。反応性が高いために、オリゴマー同士の自己重合が進み、溶液がゲル化するおそれがあるからである。
【0110】
上記のシリコーンオリゴマーで微粒子積層膜を処理する方法は、特に制限されないが、ディップコートやスプレーコート等が好適に用いられる。シリコーンオリゴマーの微粒子積層膜への付着量は、0.01〜5重量%の範囲が好ましく、より好ましくは、0.05〜2重量%である。付着量が0.01重量%未満では機械強度の向上効果は得にくく、5重量%を超えると、転写する過程で硬化性樹脂が微粒子積層膜の空隙に入りにくくなる恐れがある。
【0111】
シリコーンオリゴマーを用いて微粒子積層膜を処理する際のシリコーンオリゴマーの処理液や処理条件は、特に制限されないが、シリコーンオリゴマーを溶剤に溶解した溶液中に浸漬した後、又は、該溶液をスプレーした後、乾燥のため、また、微粒子表面の水酸基とシリコーンオリゴマーの官能基(必要なら加水分解する)とを縮合させて結合させるために、50〜200℃、好ましくは80〜150℃に加熱することが好ましく、このときの加熱時間は、5分から60分間、より好ましくは10分〜30分間が好適である。溶剤を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、シリコーンオリゴマーの固形分濃度が0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%となる量が好適である。溶剤としては、特に制限はなく、例えばメタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤が好適に用いられる。
【0112】
前記微粒子積層膜をシリコーンオリゴマーで処理することにより、微粒子積層膜に重合性不飽和二重結合を付与することができ、これを成形体に転写した後、熱ラジカル反応、電子線の照射等によって、硬化性樹脂と化学的に結合させることができるため、成形体の表面強度を向上させることができる。
【0113】
本発明の薄膜転写材を用いて、表面に薄膜が形成される成形体としては、硬化性樹脂のフィルム又はシートその他の成形体、下地成形体を硬化性樹脂で被覆してなる成形体などがある。上記の硬化性樹脂としては、ハードコート膜用樹脂等の被覆用樹脂、アクリルフィルム若しくはシート用樹脂などがある。
【0114】
上記下地成形体としては、樹脂、ガラス、シリコンなどの半導体、金属、無機酸化物等からなる全ての固体品が包含される。形状はフィルム、シート、板、曲面を有する形状、筒状、糸状、などである。フィルム状又はシート状の材料としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、ポリエーテルサルフォン、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂や、ガラス基板などがある。表面に樹脂膜や無機膜がコートされているものも含まれる。例えば、片面に易接着処理をされたポリエステルフィルム、特に、易接着ポリエチレンテレフタレート(易接着PET)フィルムが好適に使用できる。
【0115】
下地成形体としては、射出成形体を用いることができる。このための樹脂としては、導光板の表面、光学レンズ、各種計器の表示部、自動車、電車等の窓ガラス等を構成し得るものであれば、その材料は特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂(ABS樹脂、AS樹脂、ポリフェニレンオキシドスチレン共重合体等)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0116】
薄膜が反射防止膜である場合、成形体として透明なものを用い、この表面に薄膜を形成したものは、それ自体、反射防止材料として、応用範囲が広い。また、LCDディスプレイに用いる偏光板に反射防止機能を有する薄膜を形成してもよい。例えば、ワープロ、コンピュータ、テレビ、ディスプレイパネル、携帯電話等の各種のディスプレイの前面板、液晶表示装置等に用いる導光板の表面、透明プラスチック類からなるサングラスレンズ、度付きめがねレンズ、カメラのファインダーレンズ等の光学レンズ、各種計器の表示部、自動車、電車等の窓ガラス等が挙げられる。なお、これらの成形体は、樹脂以外の材料、例えば、ガラス等により形成されている場合であっても、樹脂と同様の効果を発揮することができる。
【0117】
薄膜転写材の微粒子積層膜側を成形体に重ねて熱圧着することにより、成形体の表面に前記薄膜転写材の微粒子積層膜を埋没させ、その後仮支持体を剥離すると、薄膜転写材の薄膜(微粒子積層膜)は、成形体表面に転写される。このためには、薄膜転写材の薄膜(微粒子積層膜)が成形体(硬化性樹脂)表面に接する時には、薄膜の微粒子間空隙中に硬化性樹脂が入り込むことができる程度に硬化性樹脂が未硬化であるかまたは軟化していて流動性を有していることが必要である。さらに、この硬化性樹脂は、薄膜が硬化性樹脂に埋め込まれた後、硬化できるものである。また、成形体がその表面に、機械的強度や耐環境性付与のための永久支持層を有していてもよく、このように永久支持層が表面に形成された成形体を用い、薄膜転写材の微粒子積層膜側を前記永久支持層に重ねて、熱圧着又は活性光線の照射を行うことにより、前記永久支持層の未硬化のまたは軟化した表面に前記薄膜転写材の微粒子積層膜を埋没させることができる。この場合は前記微粒子間空隙中に永久支持層の樹脂が入り込む。
【0118】
交互積層法で形成された微粒子積層膜は、どちらかといえば微粒子に対する空隙の割合が高い方であるため、ある程度粘度の高い表面であっても、微粒子を埋没させやすい。
【0119】
硬化性樹脂表面の薄膜(微粒子積層膜)が転写される面は、それが固体状であっても、加熱や加圧により、流動、変形することで、微粒子積層膜が埋没することができればよい。硬化性樹脂表面の薄膜(微粒子積層膜)が転写される面は、転写する温度での粘度が、1mP・s以上500,000mP・s以下の範囲であることが好ましい。
【0120】
この反射防止膜形成用などの薄膜転写材料を成形体の表面に転写すると、この成形体の表面に優れた反射防止膜等の機能膜を形成することができる。さらに、本発明の薄膜転写材料を使用すれば、機能膜を、蒸着法やスパッタ法などの気相法ではなく、転写による簡便な方法で形成することが可能となる。
【0121】
前記硬化性樹脂のうち、例えば永久支持層としては、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂または活性エネルギー線硬化樹脂の少なくともいずれかを含むことが好ましい。また、例えば、ハードコート層用樹脂として有用なものとしては、熱硬化性モノマー若しくは光硬化性モノマー又はそれらのオリゴマー若しくはポリマーと熱硬化性モノマー若しくは光硬化性モノマーとの混合物に熱重合開始剤または光重合開始剤等を配合してなる液状物等が挙げられる。
【0122】
ハードコート層用樹脂としては、特に、紫外線硬化性モノマーやそのオリゴマー、ポリマーと該モノマーとの混合物に光重合開始剤等を配合してなる液状物が好適に挙げられる。さらに、架橋剤成分が含まれていてもよい。
【0123】
上記の熱硬化性モノマーまたは光硬化性モノマーとしては、(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、更に、短時間で光硬化できる点から、アクリレート系モノマーを含むことがより好ましい。そのようなアクリレート系モノマーの例としては、n−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等が挙げられるが、n−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレートが好ましく、2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。メタクリレート系モノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等がまた、これらの(メタ)アクリレート系モノマーは2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0124】
これらの(メタ)アクリレート系モノマーに加えて、極性基を有する(メタ)アクリレート系モノマーを適宜使用することにより吸湿時の白濁を抑制することができる。このための極性基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、1−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、1−ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有アクリレート、ジエチレングリコールやトリエチレングリコール等のポリエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールやトリプロピレングリコール等のポリプロピレングリコールモノアクリレート、ジブチレングリコールやトリブチレングリコール等のポリブチレングリコールモノアクリレート等のアクリレート系モノマー、これらのモノマーのアクリロイル基をメタクリロイル基に換えたメタクリレート系モノマーなどが挙げられる。これらのうち、アクリレート系モノマーが好ましく、さらに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、1−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、1−ヒドロキシブチルアクリレートがより好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレートが特に好ましい。また、これらの(メタ)アクリレートは系モノマー2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0125】
架橋剤成分として重合性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物を使用することができる。このような化合物としては、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリエレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
【0126】
重合性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物としては、さらに、次に掲げるものなどが使用できる。これらのモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0127】
一般式(a)
【化1】

【0128】
(ただし、式中、Rはエチレン基又はプロピレン基を示し、m及びnはそれぞれ独立に、1〜20の整数を示す。)で示されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジアクリレート化合物、これらのアクリロイル基をメタクリロイル基に換えた化合物。
【0129】
一般式(b)
【化2】

【0130】
(ただし、式中、m及びnはそれぞれ独立に、1〜10の整数を示す。)で示されるビスフェノールAのエピクロルヒドリン変性物とアクリル酸の付加エステル化物、これらのアクリロイル基をメタクリロイル基にかえた化合物。
【0131】
一般式(c)
【化3】

【0132】
(ただし、式中、Rはエチレン基又はプロピレン基を示し、m及びnはそれぞれ独立に、1〜20の整数を示す。)で示されるリン酸のアルキレンオキシド付加物のジアクリレート化合物、これらのアクリロイル基をメタクリロイル基にかえた化合物。
【0133】
一般式(d)
【化4】

【0134】
(ただし、式中、m及びnはそれぞれ独立に、1〜10の整数を示す。)で示されるフタル酸のエピクロリン変性物とアクリル酸の付加エステル化物、これらのアクリロイル基をメタクリロイル基にかえた化合物。
【0135】
一般式(e)
【化5】

【0136】
(ただし、式中、m及びnはそれぞれ独立に、1〜20の整数を示す。)で示される1,6−ヘキサンジオールのエピクロリン変性物とアクリル酸の付加エステル化物(アクリロイル基を一分子中に2個有するもの)、これらのアクリロイル基をメタクリロイル基にかえた化合物。
【0137】
一般式(f)
【化6】

【0138】
(ただし、式中、Rはエチレン基又はプロピレン基を示し、3個のmはそれぞれ独立に、1〜20の整数を示す。)で示されるリン酸のアルキレンオキシド付加物のトリアクリレート化合物、これらのアクリロイル基をメタクリロイル基にかえた化合物。
【0139】
一般式(g)
【化7】

【0140】
(ただし、式中、Rはエチレン基又はプロピレン基を示し、m、m′及びm″はそれぞれ独立に、1〜20の整数を示す。)で示されるトリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加物のトリアクリレート化合物、これらのアクリロイル基をメタクリロイル基にかえた化合物。
【0141】
上記の熱または光硬化性モノマーと共に使用される重合開始剤としては、熱重合開始剤、レドックス触媒、光重合開始剤等、通常のラジカル重合に使用できるものはいずれも使用することができる。重合開始剤は、単量体の総量に対して0.01〜10重量%の範囲で使用されることが好ましい。
【0142】
熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン−1−カルボニトリル、アゾジベンゾイル等のアゾ化合物などがあり、レドックス触媒としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性触媒及び過酸化物あるいは過硫酸塩と還元剤の組み合わせがある。
【0143】
上記の光重合開始剤としては、例えば、紫外線等の光線に感度を有するものが使用される。例えば、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、2,2−ジメトキシ―1,2−ジフェニルエタン―1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等が挙げられるが、樹脂組成物を着色させないものとしては1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系化合物、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)及びこれらを組み合わせたものが好ましい。また特に厚いシートを作製するためにはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系化合物を含む光重合開始剤が好ましい。また、シートの臭気を減らすためにはオリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)が好ましい。これらの光重合開始剤の好ましい配合量は、単量体の総量に対して0.5〜2重量%であり、複数を組み合わせて使用しても良い。さらに、光重合開始剤を用いるときには、ベンゾフェノンやナフタレン等の光増感剤を必要に応じて添加することができる。さらに、分子量調整剤として、メルカプタン系化合物、チオグリコール、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマー等を必要に応じて添加することができる。
【0144】
このような硬化性樹脂は、特に、ハードコート剤としては、下地成形体上に、例えば0.5〜5.0μm程度塗布されることが好ましい。塗布方法としては、ロールコート、スピンコート、ディップコートなどの公知の方法を採用することができる。
【0145】
アクリルフィルム又はシート用の硬化性樹脂も上記と同様の組成を有するものを使用することができる。
【0146】
硬化性樹脂の膜(又は層)は、上記したように、下地成形体上に塗布する方法により、形成することができる。また、下地成形体の代わりに、樹脂フィルム、ガラス、金属等から成るからなる剥離性の基材の上に、硬化性樹脂の膜を塗布等により形成してもよい。このとき、薄膜をその表面に転写後、剥離性基材は剥離され、下地成形体のない成形体が得られる。
【0147】
また、硬化性樹脂の膜(又は層)は、連続式キャスト製板法により得ることもできる。例えば、所定の間隔をもって対向して走行する一対のエンドレスベルトの対向面と、前記エンドレスベルトの走行に追随して走行する二つのガスケットとから形成される空間部に、本発明の薄膜転写材を繰り出すと共に硬化性樹脂を注入し、薄膜転写材の微粒子積層膜を埋没させ、硬化性樹脂を硬化させる。その後、エンドレスベルトから仮支持体2の付いた成形体を取り出し、仮支持材を剥離することにより、薄膜付き成形体が得られる。
【0148】
また、射出成形法では、薄膜転写材を射出成形金型内に挟み込み、次に前記薄膜転写材の微粒子積層膜側に溶融材料を射出することにより成形体を形成すると同時に、前記成形体の表面に前記薄膜転写材の微粒子積層膜を埋没させる。その後、仮支持体を剥離することにより薄膜付き成形体が得られる。
【0149】
次に、図面を用いて、本発明を説明する。
【0150】
図1は、本発明の薄膜転写材の一例を模式的に示す断面図である。薄膜転写材1は、仮支持体2の表面上に微粒子積層膜3が形成された構造を有する。微粒子積層膜3は、微粒子と高分子電解質を含み、微粒子は層をなしており、このような微粒子層が複数積層されており(図面では3層として表示)、各層間に高分子電解質が存在する。
【0151】
微粒子積層膜3の微粒子の間には、空隙があり、この空隙に入り込むようにしてシリコーンオリゴマーが付着している(図示せず)。
【0152】
図2は、本発明の薄膜付き成形体の一例を示す断面図であり、この薄膜付き成形体4は、成形体の構成材料であるプラスチック5の表面付近に上記の微粒子積層膜(薄膜)3を埋没させて微粒子転写層6を形成したものである。この微粒子転写層6の微粒子間空隙には、成形体の構成材料5であるプラスチックが入り込んでおり、表面は、上記微粒子積層膜3と構成材料5が一体となって複合化していると言ってよい。この微粒子積層膜3内の微粒子と構成材料5の間にシリコーンオリゴマーが介在している(図示せず)。
【0153】
図3は、薄膜付き成形体の製造方法の一例を示す断面図である。薄膜転写材1と成形体7を準備する(図3(a))。薄膜転写材1は、仮支持体2上にシリコーンオリゴマーが付着している微粒子積層膜3を積層したものである。成形体7は、樹脂成形体(下地成形体)8の表面に硬化性樹脂層(ただし、未硬化の前駆体である。)9が積層されている。硬化性樹脂層9は、加熱又は活性光線の照射により硬化可能な樹脂からなる。ついで、薄膜転写材1と成形体7とを微粒子積層膜3と硬化性樹脂層9とが接するようにして重ねる。この重ねた状態で、仮支持体3側から圧力をかけ、さらに加熱及び/又は活性光線の照射を行う。この時、硬化を完全に行っても、部分的に行っても良い。この時点で、部分的に又は完全に硬化された硬化性樹脂層9に微粒子積層膜3が埋没された状態で、微粒子転写層6が形成されている(図3(b))。その後、仮支持体3を剥離する。先に、部分的に硬化された硬化性樹脂層9は、ついで、必要に応じて、さらに硬化を進める。このようにして、薄膜付き成形体が得られる(図3(c))。
【0154】
上記における硬化の程度は、仮支持体3が容易に剥離でき、且つ剥離した際に薄膜や硬化性樹脂層9が仮支持体3に残らない条件とすることが好ましい。
【0155】
なお、上記において、樹脂成形体(下地成形体)8の代わりに剥離性基材を用いてもよい。
【0156】
硬化性樹脂層の硬化度(硬化率)は、加熱及び/又は活性光線の照射に伴って、硬化反応を起こす官能基が、反応によって消失する様子を赤外吸収スペクトルによって観察することで測定できる。
【0157】
例えば、重合性不飽和結合を含むモノマーである場合は、赤外線吸収スペクトルにおける、波数1630cm−1付近に観察される、エチレン性二重結合の吸収を観察することで算出できる。その強度の初期値と消失後の値を100と0に規格化することで、硬化途中の硬化率(部分硬化の硬化度)を算出することができる(「樹脂の硬化度・硬化挙動の測定と評価方法」サイエンスアンドテクノロジー社、2007年7月13日発刊)。
【0158】
また、熱硬化型の場合は、DSC(示差走査熱分析)を用いて測定することができる。DSC(示差走査熱量測定法)は、測定温度範囲内で、発熱、吸熱の無い標準試料との温度差をたえず打ち消すように熱量を供給または除去するゼロ位法を測定原理とするものであり、測定装置が市販されておりそれを用いて測定できる。熱硬化型接着剤の反応は、発熱反応であり、一定の昇温速度で試料を昇温していくと、試料が反応し熱量が発生する。その発熱量をチャートに出力し、ベースラインを基準として発熱曲線とベースラインで囲まれた面積を求め、これを発熱量とする。室温から200℃まで5〜10℃/分の昇温速度で測定し、上記した発熱量を求める。これらは、全自動で行なうものもあり、それを使用すると容易に行なうことができる。つぎに、支持体に永久支持層を塗布し、乾燥して得た発熱量は、つぎのようにして求める。まず、25℃で真空乾燥器を用いて溶剤を乾燥させた未架橋・未硬化の永久支持層の全発熱量を測定し、これをA(J/g)とする。つぎに、塗工、乾燥した永久支持層の発熱量を測定し、これをBとする。永久支持層の硬化率C(%)(加熱、乾燥により発熱を終えた状態)は、つぎの数式(I)で与えられる。
【0159】
数式(I)
[数1]
C(%)={(A−B/A)}×100 ・・・(I)
このようにして、樹脂成形体の表面に薄膜を付与することができる。仮支持体上からの加圧及び加熱は、例えば、シリコンゴムロールを用いて行うことができる。この場合、シリコンゴムロール表面は15℃以上250℃以下程度の温度、1kg/cm以上20kg/cm以下程度の圧力が適当である。
【0160】
長尺のフィルム基材を仮支持体として該仮支持体上にシリコーンオリゴマーが付着した微粒子積層膜が形成されロール状に巻かれてなる薄膜転写材を用いた、両面に薄膜が付いている薄膜付き成形体の連続的製法の一実施例について図4を用いて説明する。
【0161】
図4において、樹脂製のシート401は連続的に成形された成形体であり、コーティングヘッド411、412により樹脂製シート401両面に硬化性樹脂層402(未硬化)がコーティングされる。さらにこのコーティング後の樹脂製シート401を、両面から薄膜転写材421、422と接合し、プレスロール431、432によりプレス圧力を調整することで膜厚をコントロールしながら硬化性樹脂層402と薄膜転写材421、422とが接するようにして重ねる。前記硬化性樹脂層402は、活性光線の照射により硬化可能な樹脂からなり、薄膜転写材421、422は、仮支持体451、452の硬化性樹脂層402と接する面にシリコーンオリゴマーが付着した微粒子積層膜が形成されている。薄膜転写材421、422が重ねられた樹脂製シート401へ活性光線照射装置441、442により、活性光線の照射を行う。活性光線の照射量は、仮支持体451、452が容易に剥離でき、且つ剥離した際に薄膜や硬化性樹脂層402が仮支持体451,452に残らない条件とする。
【0162】
次いで、活性光線が照射された樹脂製シート401から、プレスロール461、462を通じ、仮支持体451、452を剥離する。この剥離で得られた、薄膜付き成形体403に、活性光線照射装置471、472を用いて活性光線の照射を行い、硬化性樹脂層402の硬化度をすすめる。照射終了の時点で、硬化性樹脂層402の硬化率が74%以上になっていることが好ましい。
【0163】
このようにして、加工コストや生産性に優れた薄膜付き成形体を得ることができる。なお、硬化性樹脂層402は、加熱により硬化可能な樹脂でも良く、このとき、硬化性樹脂層402の硬化は加熱によって行なわれる。また、薄膜を形成する面が片面で良い場合は、片面にのみ硬化性樹脂層をコーティングして薄膜を形成しても良い。
【実施例1】
【0164】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0165】
1.仮支持体
片面に易接着層とよばれる極性基を付与された樹脂層があるPETフィルム(A4100、東洋紡績(株)製、150mm×150mm×125μm厚)を用いた。
【0166】
2.無機薄膜転写材の作製(仮支持体上への微粒子積層膜の形成)
微粒子水分散液として、BET法で測定した平均一次粒子径が85nmの球状シリカ微粒子が分散したシリカ水分散液1重量%(スノーテックス(ST)ZL、日産化学工業(株)製、シリカゾル)及び、BET法で測定した平均一次粒子径が15nmの導電性アンチモン酸亜鉛微粒子が分散したアンチモン酸亜鉛水分散液1重量%(セルナックスCXZ330H−F2、日産化学工業(株)製、酸化亜鉛ゾル)を用意した。これらの微粒子分散液のpHは未調整とした。高分子電解質として、PDDA水溶液0.3重量%を用意し、pHは9に調製した。
【0167】
まず、上記のPETフィルム(仮支持体)を、PDDA水溶液に1分間浸漬し、リンス用の超純水に3分間浸漬する工程(ア)、シリカ水分散液に1分間浸漬した後、リンス用の超純水に3分間浸漬する工程(イ)をこの順に施した。この工程(ア)1回と工程(イ)1回を順に行うのを1サイクルとし、このサイクルを4回(微粒子交互積層回数)行い、仮支持体表面にシリカ微粒子積層膜(一種類目)を作製した。引き続き、上記アンチモン酸亜鉛水分散液とPDDA水溶液を用い、前記シリカ微粒子積層膜の作製方法に準じて、交互積層回数を5回としてシリカ微粒子積層膜上にアンチモン酸化亜鉛微粒子積層膜(二種類目)を形成して、2種類の微粒子積層膜を有する仮支持体(無機薄膜転写材)を得た。
【0168】
3.未硬化の塗膜を有する下地成形体(硬化性樹脂層)
下地成形体として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA、三菱レイヨン(株)製、アクリライトL、屈折率1.49、150mm×150mm×1mm厚)を用いた。PMMAは、永久支持層との密着性を強化するために、プライマー処理を実施した。プライマー剤としてメチルエチルケトンで1.0重量%に希釈したウレタン系コーティング剤(三洋化成工業(株)製、コートロンMW−060)を用いた。プライマー剤は、アプリケータを用いて厚さ30μmに成形体に塗工し、乾燥後に80℃で30分間熱処理を行った。
【0169】
また、硬化性樹脂として、光硬化性のハードコート樹脂(日立化成工業(株)製、ヒタロイド7902)97重量部と光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)3重量部とを混ぜた光硬化性樹脂を用いた。この光硬化性樹脂を上記下地成形体のプライマー処理を施した面上にアプリケータを用いて厚さ30μmに塗工した。光硬化性樹脂は未硬化状態であった。
【0170】
4.微粒子積層膜が転写された成形体の作製
上記3.で作製した未硬化の光硬化性樹脂の塗膜を有する下地成形体と前記2.の薄膜転写材とを光硬化性樹脂の塗膜面と易接着層のない面上に形成された微粒子積層膜とが向かい合わせになるように配置して、貼り合わせた。貼り合わせはロールラミネータ(日立化成工業(株)製、HLM−1500)を用いて、ロール荷重3kg/cm、送り速度2m/min、温度25℃の条件で行った。この温度における、上記の光硬化性樹脂の粘度は、9,000mP・sであった(粘度は、E形粘度計(たとえば、東京計器(株)製TV−33が使用できる)により測定した、温度25℃における粘度。以下同様)。以上の工程は、紫外線が遮断された雰囲気下に行った。
【0171】
この貼り合わせ物に紫外線露光装置(大日本スクリーン製造(株)、MAP−1200)を用いて2000mJ/cmの紫外線を薄膜転写材側から照射して光硬化性樹脂層を部分硬化させた。
【0172】
次いで、仮支持体であるPETフィルムを成形体から剥離した。PETフィルムから微粒子積層膜が剥離していることを確認した。すなわち、微粒子積層膜は、成形体上の部分硬化した光硬化性樹脂層(ハードコート層)に転写されていた。光硬化性樹脂層(ハードコート層)の硬化率を高めるために、追加で3000mJ/cmの紫外線を微粒子積層膜側から照射した。
【0173】
このようにして、微粒子積層膜が転写された成形体を作製した。
【0174】
この成形体において、微粒子積層膜が転写されて形成された層(以下、「微粒子転写層」という)は、ハードコート層の最表面に位置し、微粒子積層膜はハードコート層に埋没している。この微粒子転写層を含むハードコート層全体の厚みは20μmであった。
【0175】
5.硬度、透過率、表面反射率の測定
微粒子積層膜が転写された成形体の微粒子転写層の鉛筆硬度は4Hであり、耐スチールウール性は500gの荷重では傷がつかず、600gで傷がついた。
【0176】
微粒子積層膜が転写された成形体(PMMA)の透過スペクトルを可視紫外分光光度計(日本分光(株)製、V−570)にて測定したところ、波長400〜800nmでの最大の透過率は92.5%であった。
【0177】
また、微粒子積層膜が転写された成形体(PETフィルム)のハードコート層を形成していない面に、裏面の反射を無視できるよう黒い粘着テープ(ニチバン(株)製、VT−196)を気泡が残らないように貼り付け、ハードコート層表面の表面反射率のスペクトルを瞬間測光分光光度計(フィルメトリクス(株)製、F20)にて測定した。波長400〜800nmでの最小の表面反射率は2.7%であった。
【0178】
微粒子積層膜が転写されていないハードコート層のみを形成した成形体の透過率は92.0%、表面反射率は4.3%であることから、上記微粒子転写層は反射防止膜として機能することがわかった。
【実施例2】
【0179】
片面に易接着層とよばれる極性基を付与された樹脂層があるPETフィルム(A4100、東洋紡績(株)製、150mm×150mm×125μm厚)を用いた。
【0180】
微粒子として、BET法で測定した平均一次粒子径が85nmの球状シリカ微粒子をイソプロパノール(IPA)に分散させたシリカ分散液(IPA−ST−ZL、日産化学工業(株)製、シリカゾル)を用意した。微粒子分散液としては1.0重量%の微粒子分散液を調製した。この微粒子分散液を上記PETフィルムの易接着層がない面上にアプリケータを用いて乾燥膜厚0.1μmとなるように塗工することで、シリカ微粒子積層膜を作製した。塗膜の乾燥は、乾燥機(ヤマト科学製、80℃、10分間)を用いた。次いで、BET法で測定した平均一次粒子径が20nmの球状ジルコニア微粒子をIPAに分散させたジルコニア分散液(ELCOM HK−1002ZRV、日揮触媒化成(株)、ジルコニアゾル)を用意した。微粒子分散液としては1.0重量%の微粒子分散液を調製した。前記シリカ微粒子積層膜上にアプリケータを用いて乾燥膜厚0.1μmとなるように塗工することで、薄膜転写材を作製した。塗膜の乾燥は、乾燥機(ヤマト科学製、80℃、10分間)を用いた。
【0181】
この薄膜転写材を使用すること以外は、実施例1に準じて、微粒子積層膜が転写された成形体を作製した。
【0182】
微粒子積層膜が転写された成形体の微粒子転写層の鉛筆硬度は4Hであり、耐スチールウール性は500gの荷重では傷がつかず、600gで傷がついた。
【0183】
微粒子積層膜が転写された成形体の透過スペクトルを実施例1と同様に測定したところ、波長400〜800nmでの最大の透過率は92.7%であった。実施例1と同様にハードコート層表面の表面反射スペクトルを測定したところ、最小の表面反射率は2.4%であることから、上記微粒子転写層は反射防止膜として機能することがわかった。
【実施例3】
【0184】
1.2種類の微粒子積層膜を有する仮支持体の作製
片面に易接着層とよばれる極性基を付与された樹脂層があるPETフィルム(A4100、東洋紡績(株)製、150mm×150mm×125μm厚)を用いた。
【0185】
実施例1の薄膜転写材の作製法に準じて、上記PETフィルムの易接着層がない面上に、シリカ微粒子の積層膜及びアンチモン酸化亜鉛微粒子の積層膜の、2種類の微粒子積層膜を有する仮支持体を得た。
【0186】
2.シリコーンオリゴマーの作製
攪拌装置、温度計を備えたガラスフラスコに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503、信越化学工業(株)製)30g及びメタノール30gを配合した溶液を入れ、次いで、酢酸0.23g及び純水6.5gを添加し、室温(25℃)で1時間攪拌した。得られたシリコーンオリゴマーは、シロキサン単位の重合度が3(GPCによる重量平均分子量から換算、以下同じ)であり、水酸基と反応する末端官能基としてシラノール基を有するものである。得られたシリコーンオリゴマー溶液にメチルイソブチルケトンを加えて、固形分1重量%に希釈して、シリコーンオリゴマー処理液を作製した。
【0187】
3.薄膜転写材の作製
上記シリコーンオリゴマー処理液に前記で得た微粒子積層膜を有する仮支持体を30秒浸漬し、2mm/秒で引き上げ、100℃で30分乾燥して薄膜転写材を得た。
【0188】
4.微粒子積層膜が転写された成形体の作製〔成形体(硬化性樹脂層)への微粒子積層膜の転写〕及び物性測定
前記薄膜転写材を使用すること以外は、実施例1に準じて、微粒子積層膜が転写された成形体を作製した。
【0189】
微粒子積層膜が転写された成形体の微粒子転写層の鉛筆硬度は4Hであり、耐スチールウール性は700gの荷重では傷がつかず、800gで傷がついた。
【0190】
微粒子積層膜が転写された成形体の透過スペクトルを実施例1と同様に測定したところ、波長400〜800nmでの最大の透過率は93.9%であった。実施例1と同様にハードコート層表面の表面反射スペクトルを測定したところ、最小の表面反射率は1.2%であることから、上記微粒子転写層は反射防止膜として機能することがわかった。
【実施例4】
【0191】
実施例3と同様の装置を用い、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)30g及びメタノール30gを配合した溶液に、酢酸0.23g及び純水6.9gを添加し、室温(25℃)で1時間攪拌した。得られたシリコーンオリゴマーは、シロキサン単位の重合度が4であり、水酸基と反応する末端官能基としてシラノール基を有するものである。得られたシリコーンオリゴマー溶液にメチルイソブチルケトンを加えて、固形分1重量%に希釈してシリコーンオリゴマー処理液を作製した。
【0192】
このシリコーンオリゴマー処理液を使用すること以外は、実施例3に準じて、薄膜転写材を作製し、さらに、この薄膜転写材を用いたこと以外は、実施例1に準じて、微粒子積層膜が転写された成形体を作製した。
【0193】
微粒子積層膜が転写された成形体の微粒子転写層の鉛筆硬度は4Hであり、耐スチールウール性は700gの荷重では傷がつかず、800gで傷がついた。
【0194】
微粒子積層膜が転写された成形体の透過スペクトルを実施例1と同様に測定したところ、波長400〜800nmでの最大の透過率は94.2%であった。実施例1と同様にハードコート層表面の表面反射スペクトルを測定したところ、最小の表面反射率は1.2%であることから、上記微粒子転写層は反射防止膜として機能することがわかった。
【0195】
(比較例1)
(アンチモン酸亜鉛微粒子が転写された成形体の作製)
微粒子水分散液として、BET法で測定した平均一次粒子径が15nmの導電性アンチモン酸亜鉛微粒子が分散したアンチモン酸亜鉛水分散液1重量%(セルナックスCXZ330H−F2、日産化学工業(株)製、酸化亜鉛ゾル)を用意した。この微粒子分散液のpHは未調整とした。高分子電解質として、PDDA水溶液0.3重量%を用意し、pHは9に調製した。
【0196】
まず、前記したアンチモン酸亜鉛水分散液とPDDA水溶液を用い、実施例1の薄膜転写材の作製法に準じて、交互積層回数を5回としてPETフィルム(仮支持体)上にアンチモン酸亜鉛微粒子積層膜を作製した。
【0197】
このアンチモン酸亜鉛微粒子積層膜を形成した仮支持体を使用すること以外は、実施例1に準じて、微粒子積層膜が転写された成形体を作製した。
【0198】
微粒子積層膜が転写された成形体の微粒子転写層の鉛筆硬度は4Hであり、耐スチールウール性は200gの荷重では傷がつかず、300gで傷がついた。
【0199】
(比較例2)
微粒子水分散液として、BET法で測定した平均一次粒子径が50nmの球状シリカ微粒子が分散したシリカ水分散液0.5重量%(スノーテックス(ST)XL、日産化学工業(株)製、シリカゾル)及び、BET法で測定した平均一次粒子径が15nmの導電性アンチモン酸亜鉛微粒子が分散したアンチモン酸亜鉛水分散液1重量%(セルナックスCXZ330H−F2、日産化学工業(株)製、酸化亜鉛ゾル)を用意した。これらの微粒子分散液のpHは未調整とした。高分子電解質として、PDDA水溶液0.3重量%を用意し、pHは9に調製した。
【0200】
まず、前記したシリカ水分散液とPDDA水溶液を用い、実施例1の薄膜転写材の作製法に準じて、交互積層回数を3回としてPETフィルム(仮支持体)上にシリカ微粒子積層膜を作製した。引き続き、上記アンチモン酸亜鉛水分散液とPDDA水溶液を用い、前記シリカ微粒子積層膜の作製方法に準じて、交互積層回数を5回としてシリカ微粒子積層膜上にアンチモン酸化亜鉛微粒子積層膜を形成し、2種類の微粒子積層膜を有する仮支持体(薄膜転写材)を得た。
【0201】
この薄膜転写材を使用すること以外は、実施例1に準じて、微粒子積層膜が転写された成形体を作製した。
【0202】
微粒子積層膜が転写された成形体の微粒子転写層の鉛筆硬度は4Hであり、耐スチールウール性は100gの荷重では傷がつかず、200gで傷がついた。
【0203】
(比較例3)
微粒子水分散液として、BET法で測定した平均一次粒子径が15nmの球状シリカ微粒子が分散したシリカ水分散液0.5重量%(スノーテックス(ST)20、日産化学工業(株)製、シリカゾル)及び、BET法で測定した平均一次粒子径が15nmの導電性アンチモン酸亜鉛微粒子が分散したアンチモン酸亜鉛水分散液1重量%(セルナックスCXZ330H−F2、日産化学工業(株)製、酸化亜鉛ゾル)を用意した。これらの微粒子分散液のpHは未調整とした。高分子電解質として、PDDA水溶液0.3重量%を用意し、pHは9に調製した。
【0204】
まず、前記したシリカ水分散液とPDDA水溶液を用い、実施例1の薄膜転写材の作製法に準じて、交互積層回数を3回としてPETフィルム(仮支持体)上にシリカ微粒子積層膜を作製した。引き続き、上記アンチモン酸亜鉛水分散液とPDDA水溶液を用い、前記シリカ微粒子積層膜の作製方法に準じて、交互積層回数を5回としてシリカ微粒子積層膜上にアンチモン酸化亜鉛微粒子積層膜を形成し、2種類の微粒子積層膜を有する仮支持体(薄膜転写材)を得た。
【0205】
この薄膜転写材を使用すること以外は、実施例1に準じて、微粒子積層膜が転写された成形体を作製した。微粒子積層膜が転写された成形体の微粒子転写層の鉛筆硬度は4Hであり、耐スチールウール性は100gで傷がついた。
【0206】
実施例および比較例の組成及び評価を表1にまとめて示す。
【表1】

【0207】
実施例1で前記した透過率と表面反射率以外の測定法及び評価法を次に示す。
【0208】
(鉛筆硬度の測定)
鉛筆硬度は、JIS規格(JIS−K−5400−1990)に準拠して次のように測定した。
【0209】
まず、試料に対して45°の角度で固定された鉛筆に、試料を押し付けた。鉛筆が試料に加える荷重は1.00±0.05kgとした。試料に付着した鉛筆の粉をエアーブローし、残った鉛筆の粉はプラスチック消しゴム(PE01、トンボ鉛筆製)を押し付けて取り除いた。膜表面にわずかに食い込むような傷が見えたときに、「擦り傷が付いた」と判別した。5回の試験で2回以上膜に擦り傷が認められた時の鉛筆の濃度記号を、その試料の鉛筆硬度とした。例えば、2Hの鉛筆で擦り傷が2回つき、Hの鉛筆で擦り傷が1回つく試料の鉛筆硬度はHである。
【0210】
(耐スチールウール性の評価)
微粒子積層膜が転写された成形体(PETフィルム)のハードコート層表面をスチールウール(日本スチールウール社製、#0000)に荷重をかけて、ストローク幅25mm、速度25mm/secで10回往復摩擦したあとの表面を目視で傷の有無を評価した。なお、スチールウールは約10mmφにまとめ、表面が均一になるように切断、摩擦して表面状態が均一になったものを使用し、荷重は100〜800gの範囲で100g単位に荷重を変更して行った。なお、表中では傷がつかなかった荷重で示す。
【符号の説明】
【0211】
1:薄膜転写材
2:仮支持体
3:微粒子積層膜
4:薄膜付き成形体
5:プラスチック
6:微粒子転写層
7:成形体前駆体
8:樹脂成形体
9:硬化性樹脂層
401:連続的に成形された樹脂製シート
402:硬化性樹脂層
403:薄膜付き成形体
411、412:コーティングヘッド
421、422:薄膜転写材
431、432、461、462:プレスロール
441、442、471、472:活性光線照射装置
451、452:剥離した仮支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体と、前記仮支持体の少なくとも一つの表面に形成されている微粒子積層膜とを備える薄膜転写材であって、
(1)前記積層膜は、微粒子を含む微粒子層の1層又は2層以上の積層であり、各微粒子層の少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有し、
(2)前記積層膜は、屈折率及び微粒子の平均一次粒子径の少なくともいずれかが異なる二種類以上の微粒子層の積層であるか、または一種類の微粒子層の1層又は2層以上であり、
(3)前記積層膜の前記仮支持体側から一種類目の1層以上の微粒子層を構成する微粒子の平均一次粒子径が、70〜500nmの範囲内であることを特徴とする薄膜転写材。
【請求項2】
前記微粒子が、無機酸化物である請求項1に記載の薄膜転写材。
【請求項3】
前記無機酸化物が、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ニオブ、亜鉛、錫、セリウム及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含む酸化物からなるものである請求項2記載の薄膜転写材。
【請求項4】
前記微粒子が、表面または内部に中空または多孔質構造を有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜転写材。
【請求項5】
前記微粒子層が、微粒子と高分子電解質との積層であるか、または微粒子に高分子電解質を混合した層である請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜転写材。
【請求項6】
前記微粒子積層膜が反射防止膜である請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜転写材。
【請求項7】
前記微粒子積層膜に、重合性不飽和二重結合を有するシリコーンオリゴマーが付着している請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜転写材。
【請求項8】
仮支持体を、(1)イオン性の表面電荷を有する微粒子の分散液と、前記微粒子の表面電荷と反対符号の電荷を有する高分子電解質溶液とに交互に一度以上浸漬する工程、または(2)高分子電解質溶液と、前記高分子電解質の電荷と反対符号の表面電荷を有する微粒子の分散液に交互に一度以上浸漬する工程、のいずれか一方を
行う微粒子積層膜形成工程を含み、
前記微粒子積層膜形成工程において、少なくとも最初に浸漬する微粒子の分散液の微粒子は、平均一次粒子径が、70〜500nmの範囲内であり、
前記微粒子積層膜形成工程により、仮支持体上に少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有する微粒子積層膜を形成することを特徴とする薄膜転写材の製造方法。
【請求項9】
浸漬する各工程の後、かつ次の工程の前に、リンスする工程を含む請求項8記載の薄膜転写材の製造方法。
【請求項10】
仮支持体に、微粒子の分散液を一度以上塗布する微粒子積層膜形成工程を含み、少なくとも最初に塗布する微粒子の分散液の微粒子は、平均一次粒子径が、70〜500nmの範囲内であり、前記形成工程により仮支持体上に少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有する微粒子積層膜を形成することを特徴とする薄膜転写材の製造方法。
【請求項11】
仮支持体に、微粒子の分散液と、高分子電解質溶液とに交互に一度以上塗布する微粒子積層膜形成工程を含み、
微粒子積層膜形成工程において、少なくとも最初に塗布する微粒子の分散液の微粒子は、平均一次粒子径が、70〜500nmの範囲内であり、
前記微粒子積層膜形成工程により仮支持体上に少なくとも一箇所の微粒子間に空隙を有する微粒子積層膜が形成されることを特徴とする薄膜転写材の製造方法。
【請求項12】
さらに、ロール状に巻き取られたシート状の仮支持体を引き出す工程を含み、
前記微粒子積層膜形成工程を連続的に行う請求項8〜11のいずれかに記載の薄膜転写材の製造方法。
【請求項13】
仮支持体上に形成された微粒子積層膜の微粒子に、分子内に水酸基と反応する官能基一つ以上と重合性不飽和二重結合一つ以上を有するシリコーンオリゴマーを付着させる工程を含む請求項8〜12のいずれかに記載の薄膜転写材の製造方法。
【請求項14】
成形体の表面に請求項1〜7のいずれかに記載の薄膜転写材の微粒子積層膜が、転写により埋没固定化されている薄膜付き成形体。
【請求項15】
成形体が、その表面に永久支持層を有するものである請求項14記載の薄膜付き成形体。
【請求項16】
前記永久支持層が、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂または活性エネルギー線硬化樹脂のいずれかを少なくとも含むものである請求項15記載の薄膜付き成形体。
【請求項17】
成形体の未硬化のまたは軟化した表面に請求項1〜7のいずれかに記載の薄膜転写材の微粒子積層膜を転写することにより、前記成形体表面に前記微粒子積層膜を埋没させることを特徴とする薄膜付き成形体の製造方法。
【請求項18】
成形体が、その表面に永久支持層を有するものである請求項17記載の薄膜付き成形体の製造方法。
【請求項19】
永久支持層が、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂または活性エネルギー線硬化樹脂のいずれかを少なくとも含むものである請求項18記載の薄膜付き成形体の製造方法。
【請求項20】
薄膜転写材を射出成形金型内に挟み込む工程、前記薄膜転写材の微粒子積層膜側に溶融材料を射出することにより成形体を形成すると同時に、前記成形体の表面に前記薄膜転写材の微粒子積層膜を埋没させる工程、その後、仮支持体を剥離する工程を含む請求項17記載の薄膜付き成形体の製造方法。
【請求項21】
薄膜転写材の微粒子積層膜側を成形体に重ねて熱圧着することにより、未硬化のまたは軟化した成形体の表面に前記薄膜転写材の微粒子積層膜を埋没させる工程、その後、仮支持体を剥離する工程を含む請求項17記載の薄膜付き成形体の製造方法。
【請求項22】
永久支持層が表面に形成された成形体を用い、薄膜転写材の微粒子積層膜側を前記永久支持層に重ねて、熱圧着又は活性光線の照射を行う工程により、前記永久支持層の未硬化のまたは軟化した表面に前記薄膜転写材の微粒子積層膜を埋没させる請求項19に記載の薄膜付き成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−86475(P2012−86475A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235820(P2010−235820)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】