説明

薬剤包装装置

【課題】薬剤投入ホッパ52を上下動させなくても薬剤を少量から多量まで安定して分包帯8に投入しうる薬剤包装装置20を実現する。
【解決手段】分包帯供給機構30と印刷機構40と区分封入機構50とを分包帯送り経路に配設して引出可能にした薬剤包装装置20において、薬剤投入ホッパ52のホッパ上部52aを固定し、ホッパ下部52bは分包帯8の差し込み部分を内側から外側へ押し開く押開動作を行える可動部材にする。押開動作は薬剤投入時に行い分包帯の順送り時には行わない。拡幅動作にて押開動作まで行う。ホッパ上部52aは鉛直にするがホッパ下部52bは傾斜させる。一対の対向部材84,87 の上流側の離隔動作にて押開動作を行う。一対の対向部材94,97の上端93,94を薬剤通過経路81a開閉用シャッタにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、錠剤や散薬などの各種薬剤を分包するため薬剤分包機に組み込んで又は単独で用いられる薬剤包装装置に関し、詳しくは、薬剤分包に供する長尺の分包帯(分包紙)を間欠送りして区分しながらそれに薬剤を投入して密封する薬剤包装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[公知の技術]
長尺の分包帯を長手方向に順送りして薬剤を分包する薬剤包装装置は、例えば薬剤フィーダや薬剤分配分割機構などから排出された薬剤を収集して落下させる先である下部筐体や背の低い筐体に格納されていることが多いが、分包帯送り経路に沿って上流から下流へ順に配設された分包帯供給機構と印刷機構と区分封入機構とを具備している(例えば特許文献1〜2参照)。これらの各機構は薬剤落下先の基板(ベースプレート)の片面に装着され、縦型では基板が鉛直に固定されている(例えば特許文献1参照)。これに対し、横型では、基板が水平に保持されていて、その上面に各機構が取り付けられており、大抵は分包帯ロール交換等のため基板が引出可能にもなっている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
また、各機構のうち分包帯供給機構は、分包帯のロールを保持していて、その巻きを少しずつ解きながら分包帯を先端から順に送り出すものであり、分包帯に掛かるテンションを調整するためにテンション調整機構が付いている。
さらに、薬剤投入位置に送り込まれる分包帯に臨むプリントヘッドにインクリボンを送る薬剤分包帯印刷用インクリボン送り機構を備えた薬剤包装装置において、前記薬剤分包帯印刷用インクリボン送り機構を前記プリントヘッド側の本体部とそれに着脱しうるカバー部とに分割したものもある(例えば特許文献2参照)。
【0004】
また、長尺の分包帯を長手方向に順送りするために、分包帯供給機構と印刷機構と区分封入機構の各機構に分散して供給ローラや牽引ローラ等の分包帯送り機構が組み込まれている。具体的には、分包帯供給機構には自走供給ローラが組み込まれ、区分封入機構にはローラ対からなる分包帯牽引機構が組み込まれており、このローラ対は、少なくとも分包帯送り経路の最終位置に設置され、印刷機構のところなど分包帯送り経路の途中にも適宜設置されて、分包帯を両側から挟んで軸回転することにより分包帯を牽引するようになっている。この分包帯牽引機構による分包帯の間欠送りと連携して動作する区分封入機構には、投入ホッパ等の薬剤投入機構やヒータ等のシール機構が設けられている。
【0005】
[未公開の先行技術]
このような従来の薬剤包装装置について、分包帯供給機構と印刷機構と区分封入機構とが平面配置されていることを前提として、縦型と横型を比較すると、縦型は分包帯ロールを交換容易な高位置に設置し装着やすく占有面積が少ないが、複雑な折り返しが必要で通紙作業(分包紙の通し作業)がしにくいのに対し、横型は縦型より簡単な折り返しで済むので通紙作業(分包紙の通し作業)はしやすいが面積が広いばかりか分包帯ロールの装着位置が低くなりがちであった。
そこで、二つ折り分包帯のロールを使えるうえ分包帯ロールの交換が容易であり而も占有面積が少なくて済む薬剤包装装置を実現することが技術課題となっていた。
【0006】
そして(特許文献3,4参照)、かかる先行技術の技術課題を解決するために創案されたものが次の薬剤包装装置である。すなわち、分包帯ロールを解きながら長尺の分包帯を順送り供給する機構である分包帯供給機構と、分包帯に薬品名や用法などの情報を印刷する機構である印刷機構と、縦シールと横シールを行って分包帯を区分するとともに各区分室に薬剤を投入する機構である区分封入機構とを、分包帯送り経路に沿って、薬剤落下先の引出可能な基板の上面に配設した薬剤包装装置において、前記分包帯供給機構の設置側を高くして前記基板が傾斜している、というものである。
【0007】
また(特許文献5参照)、更なる小形化のため、薬剤投入ホッパの形状を工夫して、印刷機構のプリントヘッドと区分封入機構のシール機構との中間部分(すなわち分包帯送り経路のうち薬剤投入ホッパ近傍部分)における部材実装の稠密化や実装部材の少数化を可能にした薬剤包装装置も開発されている。この薬剤包装装置は、区分封入機構のうち薬剤投入を担う薬剤投入ホッパが曲がっていて上部は鉛直になっているが下部は傾斜基板(ひいては、分包帯送り経路のうち薬剤投入ホッパ近傍部分や、そこに来ている分包帯のうち薬剤投入ホッパの下部の先端部を差し込まれている部分)と直交する方へ傾斜している、というものである。
【0008】
薬剤投入ホッパは、上端に薬剤受入用の開口を有し下端に薬剤落下放出用の開口を有した漏斗状部材からなるが、真っ直ぐでなく曲がっており、例えば中心線基準で見て、太い逆さ円錐状のホッパ上部は鉛直になっているのに対し、細管状のホッパ下部は鉛直から傾いている。薬剤投入ホッパのところでは分包帯送り経路が傾斜基板と同じ傾きで傾斜しており、それに対応させてホッパ下部を分包帯送り経路に直交するよう傾斜させたのであるが、薬剤投入ホッパの上方で薬剤を収集する薬剤投入ホッパが薬剤を薬剤投入ホッパへ送り込むときに薬剤を鉛直下方へ落下させることに対応してホッパ上部は鉛直の姿勢を維持するよう、薬剤投入ホッパを曲げたのである。
【0009】
しかも、それらの薬剤包装装置にあっては(特許文献3〜5参照)、区分封入機構のシール機構について縦シール発熱体と横シールとを一体化したうえで、シール機構の発熱体を総て分包帯送り経路に関して薬剤投入ホッパの下流に配したことにより、長尺の分包帯に上辺の解放した袋状の収納室を形成する縦シールと、その上辺を閉じて収納室を密閉する横シールとが、一カ所で一度に纏めて遂行されるようになっている。また、薬剤投入ホッパは、従来は分包帯送り時に縦シール部との干渉を避けるために上下動していたが、そのような回避動作が不要なので、ホッパ全体については固定可能なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−053538号公報
【特許文献2】特開2007−216485号公報
【特許文献3】特願2008−199280号
【特許文献4】特願2008−269353号
【特許文献5】特願2009−105731号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このようにシール機構の発熱体を総て薬剤投入ホッパの下流に配した薬剤包装装置にあっては、薬剤投入ホッパを全体移動については固定することにより、薬剤投入ホッパを上下動可能に支持する機構も駆動機構も省くことができるので、装置の小形化・簡素化が更に進むこととなる。
しかしながら、薬剤投入ホッパを完全に固定してしまうと、薬剤投入時に上下動することで随伴する衝撃や振動により薬剤落下投入機能を高めているという副次的機能が薬剤投入ホッパから失われてしまう負の側面もある。
【0012】
特に、二つ折り分包帯に先端が差し込まれている管状のホッパ下部は、錐体状のホッパ上部よりも細いうえ、少量の薬剤の安定投入等のため差し込み部分に或る程度以上の長さが確保されているので、全く動かないと、薬剤の量が多くなるに連れて薬剤落下投入の余力が減るため、一包当たり薬剤投入最大量を分包帯の区分室のサイズに応じて制限するだけでなく薬剤投入ホッパの薬剤投入能力によっても制限することが設計時考慮事項に入ってくる。特に、薬剤投入ホッパを曲げてホッパ下部を傾斜させたものでは、その傾向が強い。ホッパ下部を太くすれば、薬剤投入能力は強化されるが、分包帯の送りやシール密着能力等に支障が生じるので、ホッパ下部をむやみに太くする訳にもいかない。
そこで、薬剤投入ホッパを上下動させなくても薬剤を少量から多量まで安定して分包帯に投入しうる薬剤包装装置を実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の薬剤包装装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、分包帯ロールを解きながら長尺の分包帯を順送り供給する機構である分包帯供給機構と、分包帯に薬品名や用法などの情報を印刷する機構である印刷機構と、縦シールと横シールを行って分包帯を区分するとともに各区分室に薬剤を投入する機構である区分封入機構とを、分包帯送り経路に沿って配設するとともに引出可能に支持している薬剤包装装置において、前記区分封入機構のうち薬剤投入を担う薬剤投入ホッパが、上部は固定されているが、下部は分包帯のうち差し込まれている部分を内側から外側へ押し開く押開動作を行える可動部材になっていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の薬剤包装装置は(解決手段2)、上記解決手段1の薬剤包装装置であって、分包帯の区分室への薬剤投入時には前記薬剤投入ホッパの下部に前記押開動作を行わせるが、分包帯の順送り時には前記薬剤投入ホッパの下部に前記押開動作を行わせないことを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の薬剤包装装置は(解決手段3)、上記解決手段1,2の薬剤包装装置であって、前記可動部材が、その内側の薬剤通過経路を太くする拡幅動作にて前記押開動作まで行うものであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の薬剤包装装置は(解決手段4)、上記解決手段1〜3の薬剤包装装置であって、分包帯送り経路のうち前記薬剤投入ホッパの下部と交差する経路部分が分包帯送りの上流側を上に下流側を下にして傾斜しており、前記薬剤投入ホッパが上部は鉛直になっているが下部は前記分包帯送り経路と直交する方へ傾斜していることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の薬剤包装装置は(解決手段5)、上記解決手段4の薬剤包装装置であって、前記可動部材がその内側の薬剤通過経路を両脇から挟む一対の対向部材からなり、これらの対向部材が分包帯送り経路の両側に来るよう配置されていて、前記対向部材のうち分包帯送り経路の下流側に位置する部位は常に薬剤通過阻止可能に閉じているが、前記対向部材のうち分包帯送り経路の上流側に位置する部位は閉状態から開状態になる離隔動作を行えるようになっていて、この離隔動作により前記押開動作がなされることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の薬剤包装装置は(解決手段6)、上記解決手段1〜5の薬剤包装装置であって、前記可動部材の上端部がその内側の薬剤通過経路を開閉するシャッタ動作を前記押開動作に随伴して行うようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
このような本発明の薬剤包装装置にあっては(解決手段1)、長尺の分包帯にて薬剤を区分包装するのに必要な分包帯供給機構と印刷機構と区分封入機構とが引出可能になっているので、二つ折り分包帯のロールを交換し易いという従来機の利点が引き継がれている。また、薬剤投入ホッパの上部が固定されているので、それと上下に連なって薬剤投入ホッパを成すホッパ下部もホッパ上部の移動を惹起するような動作はできなくなり、薬剤投入ホッパの全体的な移動や上下動が無くなって、簡素化・小形化が進んでいる。
【0020】
さらに、押開動作を行う可動部材が薬剤投入ホッパの下部に採用されている。この押開動作は、薬剤投入ホッパ全体が上下動しないよう、可動部材が全体位置や中心位置を変えないまま局所動作や変形を行うものに限られるが、ホッパ下部に衝撃や振動といった刺激が与えられるので、静止状態よりも薬剤投入能力が強化される。しかも、その押開動作により、分包帯のうちホッパ下部の差し込まれている部分が内側から外側へ押し開かれて、分包帯の区分室における投入薬剤の受け入れ態勢も強化されるので、一石二鳥である。
したがって、この発明によれば、薬剤投入ホッパを上下動させなくても薬剤を少量から多量まで安定して分包帯に投入しうる薬剤包装装置を実現することができる。
【0021】
また、本発明の薬剤包装装置にあっては(解決手段2)、薬剤投入ホッパの下部の押開動作が、分包帯の区分室への薬剤投入時には行われるが、分包帯の順送り時には行われない。分包帯の変形が少ないほど分包帯の順送りが安定するところ、薬剤投入ホッパが分包帯を変形させる程度が分包帯の順送り時には小さく抑えられるので、ホッパ下部が押開動作するようになっても、分包帯の順送り動作は損なわれることなく安定に行われる。
したがって、この発明によれば、薬剤投入ホッパを上下動させなくても薬剤を少量から多量まで安定して分包帯に投入しうるうえ分包帯の順送りも安定している薬剤包装装置を実現することができる。
【0022】
さらに、本発明の薬剤包装装置にあっては(解決手段3)、可動部材が拡幅動作を行うと、ホッパ下部の内側の薬剤通過経路が太くなって経路の抵抗が低減されるため薬剤投入能力が更に強化されるとともに、拡幅動作に随伴して押開動作まで行われる。このように、一石二鳥の押開動作に加えて拡幅動作にまで可動部材やその駆動部材が共用されるようにしたことにより、小形化の利点を損なうことなく言わば一石三鳥の効果が得られる。
したがって、この発明によれば、薬剤投入ホッパを上下動させなくても薬剤を少量からより多量まで安定して分包帯に投入しうる薬剤包装装置を実現することができる。
【0023】
また、本発明の薬剤包装装置にあっては(解決手段4)、既述した未公開先行技術の傾斜実装方式とその特徴的態様の一つである薬剤投入ホッパの曲げと下部の傾斜まで引き継いでいるので、より小形になっている。しかも、引用する解決手段1の作用効果について上述したように、押開動作を行う可動部材が薬剤投入ホッパの下部に採用されて、ホッパ下部の薬剤投入能力が強化されているので、ホッパ下部を傾斜させたことによるホッパ下部の薬剤投入能力の低下が補償され、これによって薬剤投入ホッパの薬剤落下投入機能が十分に回復されているので、小形化の利点が何らの憂もなく享受しうることとなる。
したがって、この発明によれば、薬剤投入ホッパを上下動させなくても薬剤を少量から多量まで安定して分包帯に投入しうる小形の薬剤包装装置を実現することができる。
【0024】
また、本発明の薬剤包装装置にあっては(解決手段5)、ホッパ下部のうち分包帯送り経路の下流側に位置する部位は、ホッパ下部が分包帯送り経路に直交するよう傾斜していて、ホッパ下部においては下側の部位になるので、そこを滑り落ちるようにして投入薬剤が分包帯の区分室へ案内されるが、ホッパ下部の下側部位は、常に完全に閉じているか、例え隙間が有ったり生じたりするとしても薬剤の通過は阻止する程度の僅かな隙間であって薬剤案内の観点からは実質的に閉じているといえるので、投入薬剤は確実に分包帯の区分室に収容される。
【0025】
一方、その案内義務を傾斜によって免除された上側部位すなわちホッパ下部のうち分包帯送り経路の上流側に位置する部位は、上述した一石二鳥の押開動作のために離隔動作を行うが、その離隔動作には上述の三鳥めの拡幅動作まで随伴して行われる。このようなホッパ下部の傾斜と対向部材の離隔動作との組み合わせにより、簡便に、小形化の利点を損なわない一石三鳥の効果を得ることができる。
したがって、この発明によれば、薬剤投入ホッパを上下動させなくても薬剤を少量から多量まで安定して分包帯に投入しうる薬剤包装装置を簡便に実現することができる。
【0026】
また、本発明の薬剤包装装置にあっては(解決手段6)、ホッパ下部をなす可動部材の上端部に開閉シャッタを兼ねさせたことにより、押開動作によって分包帯が薬剤受入態勢を整えたところへ間髪を入れる間もなく分包帯に薬剤が纏まって投入されるので、迅速かつ的確に薬剤投入が遂行される。しかも、可動部材が開閉シャッタを兼ねていて、一石二鳥の押開動作に加えてシャッタ動作にまで可動部材やその駆動部材が共用されるので、小形化の利点を損なうことなく言わば一石三鳥の効果が得られる。さらに、可動部材が拡幅動作を行うものにあっては、言わば一石四鳥の効果が得られることとなる。
したがって、この発明によれば、薬剤投入ホッパを上下動させなくても薬剤を少量から多量まで安定かつ迅速に分包帯に投入しうる薬剤包装装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1について、薬剤包装装置の全体構造を示し、(a)が前扉を外した薬剤分包機の正面図、(b)が薬剤包装装置を引き出した薬剤分包機の側面図、(c)が薬剤包装装置のA矢視図、(d)及び(e)が薬剤包装装置のうち区分封入機構の部分の斜視図である。
【図2】薬剤投入ホッパの下部を横断して示した区分封入機構部分の平面図であり、(a)が押開動作を行っていない状態を示し、(b)が押開動作を行っている状態を示している。
【図3】本発明の実施例2について、薬剤投入ホッパの下部を横断して示した区分封入機構部分の平面図であり、(a)が拡幅動作・押開動作を行っていないときの状態を示し、(b)が拡幅動作・押開動作を行っているときの状態を示している。
【図4】本発明の実施例3について、薬剤投入ホッパの下部を横断して示した区分封入機構部分の平面図であり、(a)が拡幅動作・押開動作を行っていないときの状態を示し、(b)が拡幅動作・押開動作を行っているときの状態を示している。
【図5】本発明の実施例4について、(a)と(b)がホッパ下部とその駆動機構を合わせたホッパ下部機構の斜視図、(c)と(d)が薬剤投入ホッパの下部を横断して示した区分封入機構部分の平面図であり、(a)と(c)が離隔動作・拡幅動作・押開動作を行っていないときの状態を示し、(b)と(d)が離隔動作・拡幅動作・押開動作を行っているときの状態を示している。
【図6】本発明の実施例5について、(a)と(b)がホッパ下部とその駆動機構を合わせたホッパ下部機構の斜視図、(c)と(d)が薬剤投入ホッパの下部を横断して示した区分封入機構部分の平面図、(e)と(f)が薬剤投入ホッパの部分の平面図であり、(a)と(c)と(e)が離隔動作・拡幅動作・押開動作を行っていないときの状態を示し、(b)と(d)と(f)が離隔動作・拡幅動作・押開動作を行っているときの状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
このような本発明の薬剤包装装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜5により説明する。
図1〜2に示した実施例1は、上述した解決手段1,2,4(出願当初の請求項1,2,4)を具現化したものであり、図3の実施例2や,図4の実施例3は、上述した解決手段3(出願当初の請求項3)を具現化したものであり、図5に示した実施例4は、上述した解決手段5(出願当初の請求項5)を具現化したものであり、図6に示した実施例5は、上述した解決手段6(出願当初の請求項6)を具現化したものである。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,ヒンジ等の連結具,電気回路・電子回路の詳細などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0029】
本発明の薬剤包装装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が前扉を外した薬剤分包機10の正面図、(b)が薬剤包装装置20を引き出した薬剤分包機10の側面図、(c)が薬剤包装装置20のA矢視図、(d)及び(e)が薬剤包装装置20のうち区分封入機構52の部分の斜視図である。また、図2は、ホッパ下部52bを横断して示した区分封入機構部分の平面図であり、(a)はホッパ下部52bが押開動作を行っていない状態を示し、(b)はホッパ下部52bが押開動作を行っている状態を示している。
【0030】
薬剤分包機10は(図1(a),(b)参照)、筐体15の天板部11の上面に散薬分割装置12と錠剤手撒き装置13とが設けられ、散薬分割装置12と錠剤手撒き装置13とから排出された薬剤を収集して落下させる薬剤収集機構14が天板部11の下面に設けられ、人手で薬剤を補充したり分配しやすい高さ1m程度かそれ以下のところに位置している。筐体15の内部には、引出機構16によって前方へ引き出し可能に支持された薬剤包装装置20と、分包済み分包帯8を収容する受け箱17と、フレキシブルホースやバキュームポンプ等からなる清掃機構18と、図示しないマイクロプロセッサ等からなるトローラ(電子制御装置)とが、格納されている。
【0031】
薬剤包装装置20は(図1(a)〜(c)参照)、筐体15への取り付け高さの異なる一対の引出機構16によって左右を支持されて40゜〜50゜ほど傾斜している平坦な基板21と、分包帯ロールを解きながら長尺の分包帯8を順送り供給する分包帯供給機構30と、分包帯8に処方箋由来の薬品名や用法などの情報を印刷する印刷機構40と、分包帯8に縦シール(縦の熱融着)と横シール(横の熱融着)を行って分包帯8を長手方向において区分するとともに各区分室(分包体)に薬剤を投入する区分封入機構50とを具えている。
【0032】
これらの分包帯供給機構30と印刷機構40と区分封入機構50に加え、取っ手22や固定ローラ23が、基板21の平坦な上面に搭載されており、取っ手22以外の各機構23,30,40,50は、分包帯送り経路に沿って平面配置されている(図1(c)参照)。また、分包帯供給機構30と印刷機構40と区分封入機構50とが基板21上で左から右へ横一列に並んでいる。
基板21は、筐体15に押し込んだ状態で薬剤収集機構14の下方すなわち薬剤落下先に位置するところに設けられており、その傾斜によって、分包帯供給機構30の設置側が高くなり、受け箱17に近い分包帯8の排出側が低くなっている。
【0033】
分包帯供給機構30は(図1(b),(c)参照)、予め二つ折りした長尺の分包帯8を芯管に捲回した分包帯ロールを軸回転可能に保持する分包帯軸支部31と、その分包帯ロールを軸回転させて解くことにより分包帯8を先端から順に送り出す自走供給ローラ32や回転暴走防止用ブレーキ33と、バネ34にて付勢されている揺動アームの揺動端に設けられていて分包帯8のテンション調整を行う可動ローラ36とを具えている。また、分包帯供給機構30の各部の配置状態については、分包帯軸支部31や自走供給ローラ32が後方・奥に位置し、可動ローラ36が手前側で揺動するようになっていて、分包帯供給機構30から印刷機構40に至る部分の分包帯送り経路が、曲折の少ない単純で短いもので済み、そこの分包帯送り経路を規制する固定ローラ23の個数も少ない。
【0034】
印刷機構40は(図1(c),(d)参照)、薬剤投入位置に送り込まれる分包帯8に両側から挟むかのように臨むプラテン機構41とプリントヘッド42とを主体にしたものであり、プラテン機構41にて片面を支えられた分包帯8とそれに他面から印刷を行うプリントヘッド42との間にインクリボンを送るインクリボン送り機構43がプリントヘッド42側に付設されている。分包帯8を分包帯送り経路にセットする作業を容易化するために、プリントヘッド42だけでなく、プラテンローラ41aを保持するプラテン機構41も、分包帯送り経路に向けて進退させうるようになっている。
【0035】
また、インクリボン送り機構43は、プリントヘッド42の後方でインクリボン供給部44とインクリボン巻取部45とが前後に並んでいて、横幅より奥行の大きい縦長形状になっている。プリントヘッド42にはサーマルプリンタ(感熱式印刷機)のものが多用されており、その場合、インクリボンには熱転写用に好適なものが用いられる。
さらに、プリントヘッド42の作用部とプラテン機構41のプラテンローラ41aとが印刷機構40の中で限界まで区分封入機構50に寄っている。
【0036】
区分封入機構50は(図1(c)〜(e)参照)、基板21と共に筐体15に押し込まれた動作可能状態で薬剤収集機構14の直下に位置して分包帯8の区分収納室に薬剤を投入する薬剤投入ホッパ52(薬剤投入機構)と、加熱融着用の横シール発熱体と縦シール発熱体とが一体化されて例えばΓ字状(図1(d)参照)になった奥側のヒータ53aと手前側のヒータ53bとの対を含んでいるシール機構53と、分包帯8を引っ張る分包帯牽引機構54と、シール機構53のヒータ53aを前進・後退させる往復動機構55と、薬剤投入ホッパ52と分包帯牽引機構54とを駆動して連係動作させる電子カム機構60とを具えている。分包帯牽引機構54以外の分包帯送り機構も電子カム機構60の駆動によって同期制御されるようになっている。
【0037】
薬剤投入ホッパ52とシール機構53と分包帯牽引機構54は、その順番で、分包帯送り経路に沿って上流から下流へ且つ基板21の傾斜において高位側から低位側へ並んでいる(図1(d),(e)参照)。これにより、区分封入機構50は、シール機構53のヒータ53a,53bが横シール部も縦シール部も薬剤投入ホッパ52の下流に位置していて、上辺の解放した袋状の収納室を形成するI字状の縦シールと、上辺を閉じて収納室を密閉する ̄字状の横シールとが、一カ所で一度に纏めて遂行されるものとなっている。また、プラテンローラ41a及びプリントヘッド42とシール機構53との間の距離がほぼ薬剤一包分の長さになっており、そこの二つ折り分包帯8に対して上から薬剤投入ホッパ52の下部52bの先端部が差し込まれるようになっている。
【0038】
薬剤投入ホッパ52は(図1(d)〜(e)参照)、上端に薬剤受入用の開口を有し下端に薬剤落下放出用の開口を有した漏斗状部材からなりホッパ上部52aが鉛直の姿勢を保っている点で、従来の薬剤投入ホッパを踏襲しているが、ホッパ下部52bが傾斜している点で従来品と相違している。すなわち、薬剤投入ホッパ52は真っ直ぐでなく曲がっており、例えば中心線基準で見て、ホッパ上部52aは鉛直になっているが、ホッパ下部52bは鉛直から傾いている。その傾斜は、基板21の水平からの傾斜に対応しており、ホッパ下部52bを延長すればそれが基板21及び該当箇所の分包帯送り経路と直交するようになっている。
【0039】
また、薬剤投入ホッパ52は一体物でなく、ホッパ上部52aとホッパ下部52bとが別部材からなり、ホッパ上部52aは固定されているが、ホッパ下部52bは押開動作を行える可動部材になっている。その押開動作は、ホッパ上部52aとホッパ下部52bとに亘る薬剤通過経路を断たないよう、上下動やその他の全体的な移動を含まず、薬剤通過経路の断面形状を変える程度の局所的な動作にとどまり、分包帯8のうちホッパ下部52bの先端部を差し込まれている部分、即ちプラテン機構41及びプリントヘッド42とシール機構53との間に来ている部分を、内側から外側へ押し開くようになっている。
【0040】
この例では(図2参照)、ホッパ下部52bが楕円形断面の管状の可動部材からなり、可動部材駆動モータ52cによって概ね90゜ほど双方向に軸回転することで、長径が分包帯8の長手方向に一致して短径が分包帯8の広がり幅を規定している押開動作非実行状態(図2(a)参照)と、短径が分包帯8の長手方向に一致して長径が分包帯8の広がり幅を規定している押開動作実行状態(図2(b)参照)とのうち、何れか一方の状態を任意に採りうるようになっている。そして、コントローラの順次制御や電子カム機構60の同期制御によって、分包帯8の順送り時にはホッパ下部52bに押開動作を行わせないで(図1(d),図2(a)参照)、分包帯8の区分室に薬剤を投入する時だけホッパ下部52bに押開動作を行わせるようになっている(図1(e),図2(b)参照)。
【0041】
この実施例1の薬剤包装装置10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が前扉を外した薬剤分包機10の正面図、(b)が薬剤包装装置20を引き出した薬剤分包機10の側面図、(c)が薬剤包装装置20のA矢視図、(d)及び(e)が薬剤包装装置20のうち区分封入機構52の部分の斜視図である。また、図2は、ホッパ下部52bを横断して示した区分封入機構部分の平面図であり、(a)はホッパ下部52bが押開動作を行っていない状態を示し、(b)はホッパ下部52bが押開動作を行っている状態を示している。
【0042】
散薬を分包する場合は予め計測した定量の散薬を手作業で散薬分割装置12に分配しておき、錠剤を分包する場合は所要数の錠剤を錠剤手撒き装置13に予め手撒きしておき、混合分包する場合はそれらの散薬分配と錠剤手撒きとを済ませておく。
これにより(図1(a)参照)、薬剤収集機構14から薬剤包装装置20へ薬剤を一包分ずつ逐次落下させる準備が調う。
【0043】
また、薬剤包装装置20については、分包帯8の状態を確認して、それが無かったり足りないときには補充・交換を行う。分包帯8の補充・交換は、前扉を開け薬剤包装装置20を引き出して行う(図1(b)参照)。使い終わった分包帯ロールの芯管などが残っていればそれを取り外して、新しい分包帯ロールを分包帯軸支部31に装着する(図1(c)参照)。分包帯8は予め長手方向に二つ折りされてから捲回されて分包帯ロールになっているので、その折り目が下側・基板21側に来る向きで、分包帯ロールを分包帯軸支部31に装着する。基板21に傾斜をつけたことによって分包帯軸支部31が従来より高い位置に来ているので、分包帯ロールの装着作業は楽な姿勢で行うことができる。
【0044】
こうして薬剤包装装置20に分包帯8を補充したら、薬剤包装装置20の包装態勢も調うので、基板21を押し戻して薬剤包装装置20を筐体15内に納め、前扉も閉めて、薬剤分包機10に薬剤分包の自動動作を行わせる。
自動分包が始まると、薬剤が一包分ずつ散薬分割装置12や錠剤手撒き装置13から薬剤収集機構14経由で薬剤包装装置20の薬剤投入ホッパ52に引き渡されるとともに、薬剤包装装置20によって薬剤が分包帯8に区分包装される。
その区分包装の動作を具体的に述べると、薬剤包装装置20では、分包帯8が分包帯ロールから分包帯供給機構30によって繰り出されるとともに、分包帯牽引機構54や固定ローラ23によって分包帯送り経路を順送りされる。
【0045】
その際、分包帯8が区分収納室の長さ単位で即ち一包分ずつ長手方向に間欠送りされ、その度に、印刷機構40では分包帯8のうち区分収納予定部分に患者名や用法等が印字され、区分封入機構50では、分包帯8のうち印刷機構40とシール機構53との間の部分に薬剤投入ホッパ52から一包分の薬剤が投入され、それから分包帯8が間欠送りされるとシール機構53によって縦と横に例えば熱融着密封にてシールされて薬剤収納済み区分収納室(分包)ができあがる。
このような間欠送りと印刷と薬剤投入とシール(熱融着)と、詳細は割愛するがミシン目形成やカッティングとが、コントローラや電子カム機構60の制御下で繰り返されて一連の薬剤分包処理が遂行される。
【0046】
そのうち、薬剤投入ホッパ52による薬剤投入動作について更に詳述すると(図1(d),(e),図2参照)、分包帯8のうち薬剤投入ホッパ52の下に来ている部分すなわちホッパ下部52bの先端部を差し込まれている部分は、基板21と同じ傾斜角度で上流側が高く下流側が低くなっているうえ、上流側はプラテンローラ41aとプリントヘッド42とで挟まれているので、投入薬剤が上流の次室へ入り込むおそれはない。下流側はシール機構53による前室のシール時に区切られているので、こちらも薬剤混入のおそれはない。そのため、シール機構53が横シールも縦シールも纏まって薬剤投入ホッパ52の下流に来ていても、シール性能には何ら不都合なく、適切なシールがなされる。
【0047】
そして、分包帯8の順送り時には(図1(d),図2(a)参照)、ホッパ下部52bが押開動作を行わず、ホッパ下部52bの長径が分包帯8の長手方向に一致し、分包帯8の広がり幅がホッパ下部52bの短径で規定されて狭いので、分包帯8は円滑に順送りされる。分包帯8が一包分だけの順送りされて、分包帯8が停止すると、薬剤投入ホッパ52利用の薬剤投入が行われるが、そのときにはホッパ下部52bが押開動作を行う(図1(e),図2(b)参照)。
【0048】
この押開動作によって、ホッパ下部52bの短径が分包帯8の長手方向に一致し、分包帯8の広がり幅がホッパ下部52bの長径で規定されて広がるので、分包帯8の区分室に投入薬剤が滞りなく受け入れられる。
また、その押開動作に伴って、ホッパ下部52bに衝撃や振動といった刺激が与えられるので、ホッパ下部52bが傾斜していても、薬剤は、傾斜面などにとどまることなく、確実に分包帯8の区分室へ送り込まれる。
【実施例2】
【0049】
本発明の薬剤包装装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図3は、ホッパ下部73の下部を横断して示した区分封入機構部分の平面図であり、(a)はホッパ下部73が拡幅動作(押開動作)を行っていないときの状態を示し、(b)はホッパ下部73が拡幅動作(押開動作)を行っているときの状態を示している。
【0050】
この薬剤包装装置が上述した実施例1のものと相違するのはホッパ下部52bがホッパ下部73になった点であり、ホッパ下部73が上述のホッパ下部52bと相違するのは、一体物でなくなり三部材の組み合わせになった点である。
すなわち、ホッパ下部73は、断面コの字状の可動部材73aと、やはり断面コの字状の可動部材73bと、断面において上流側が幅狭で下流側が幅広の固定部材73cとを具えたものであり、可動部材73a,73bは向かい合わせになって断面四角形状の薬剤通過経路を囲み、それらの上流に固定部材73cが位置している。
【0051】
この場合、分包帯8の順送り時には(図3(a)参照)、ホッパ下部73が拡幅動作を行わず、可動部材73aの両翼部と可動部材73bの両翼部とが重なるよう可動部材73a,73bの対向面同士が近づいていて、可動部材73a,73bが固定部材73cの下流で後に隠れるかのように細くなっており、それによって分包帯8の広がり幅も狭いので、分包帯8は円滑に順送りされる。
そして、分包帯8が一包分だけ順送りされて、分包帯8が停止すると、薬剤投入ホッパ利用の薬剤投入が行われるが、そのときにはホッパ下部73が拡幅動作を行う。
【0052】
この拡幅動作では(図3(b)参照)、可動部材73a,73bの両翼部同士の重なりが無くなる直前まで可動部材73a,73bの対向面同士が遠ざかって、可動部材73a,73bの幅が固定部材73cよりも広がり、それによって薬剤通過経路が太くなると同時に分包帯8の広がり幅も広がる。そのため、上述した押開動作の作用効果に加えて、ホッパ下部73の内側の薬剤通過経路が太くなって経路の抵抗が低減されるという更なる作用効果も発揮されるので、分包帯8の区分室に投入薬剤が滞りなく受け入れられる。
【実施例3】
【0053】
本発明の薬剤包装装置の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図4は、ホッパ下部74を横断して示した区分封入機構部分の平面図であり、(a)はホッパ下部74が拡幅動作(押開動作)を行っていないときの状態を示し、(b)はホッパ下部74が拡幅動作(押開動作)を行っているときの状態を示している。
【0054】
この薬剤包装装置が上述した実施例1,2のものと相違するのはホッパ下部52b,73がホッパ下部74になった点であり、ホッパ下部74が上述のものと相違するのは、二個の部材の組み合わせになった点である。
すなわち、ホッパ下部74は、何れも断面くの字状の可動部材74a,74bを具えたものであり、可動部材74a,74bは向かい合わせになって断面菱形状の薬剤通過経路を囲んでいる。
【0055】
この場合、分包帯8の順送り時には(図4(a)参照)、ホッパ下部74が拡幅動作を行わず、可動部材74aの両翼部のうち一方の翼部の先端が可動部材74bの両翼部のうち一方の翼部の内面に当接するとともに、可動部材74bの他方の翼部の先端が可動部材74aの他方の翼部の内面に当接していて、可動部材74a,74bの囲む薬剤通過経路が細くなっており、それによって分包帯8の広がり幅も狭いので、分包帯8は円滑に順送りされる。
そして、分包帯8が一包分だけ順送りされて、分包帯8が停止すると、薬剤投入ホッパ利用の薬剤投入が行われるが、そのときにはホッパ下部74が拡幅動作を行う。
【0056】
この拡幅動作では(図4(b)参照)、可動部材74a,74bの両翼部が先端同士で重なるところまで可動部材74a,74bが動いて、可動部材74a,74bの囲む薬剤通過経路が太くなり、それと同時に分包帯8の広がり幅も広がる。そのため、この場合も、上述した押開動作の作用効果に加えて、ホッパ下部73の内側の薬剤通過経路が太くなって経路の抵抗が低減されるという更なる作用効果も発揮されるので、分包帯8の区分室に投入薬剤が滞りなく受け入れられる。
【実施例4】
【0057】
本発明の薬剤包装装置の実施例4について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図5は、(a)と(b)がホッパ下部(82〜87)とその駆動機構(88+52c)を合わせたホッパ下部機構80の斜視図、(c)と(d)がホッパ下部の対向部材84,87を横断して示した区分封入機構部分の平面図であり、(a)と(c)は対向部材84,87が離隔動作(拡幅動作・押開動作)を行っていないときの状態を示し、(b)と(d)は対向部材84,87が離隔動作(拡幅動作・押開動作)を行っているときの状態を示している。
【0058】
この薬剤包装装置が上述した実施例1〜3のものと相違するのは、ホッパ下部52b,73,74とその駆動機構52cを合わせたホッパ下部機構がホッパ下部機構80になった点であり、ホッパ下部機構80が上述のものと相違するのは、その可動部材(83+84+86+87)が離隔動作を行う一対の対向部材84,87を主体に構成されている点である(図5(a),(b)参照)。
ホッパ下部機構80は、上面にホッパ上部52aを取り付けられた固定の斜板からなる支持基板81と、この支持基板81の下面に取り付けられておりリンク機構88を介して可動部材駆動モータ52cにて駆動される可動部材82〜87とを具えている。
【0059】
支持基板81には連通用開口81aが貫通して形成されており(図5(b)参照)、この連通用開口81aはホッパ上部52aの中を上下に貫く薬剤通過経路に連通しており、連通用開口81aから下方へ延びた薬剤通過経路を一対の対向部材84,87が両脇から挟んで内側に収めるようになっている。対向部材84,87の断面が何れもくの字状で、接触対向した対向部材84,87に囲われた薬剤通過経路は、断面が平たく潰れた菱形状になる(図5(c)参照)。対向部材84,87が支持基板81に対して垂直に設けられているので(図5(a),(b)参照)、そこの薬剤通過経路も支持基板81と直交し、支持基板81の傾斜がその下方の分包帯送り経路の傾斜に対応しているので、対向部材84,87も、それに囲われた薬剤通過経路も、その下方の分包帯8や分包帯送り経路と直交するものとなっている(図5(c),(d)参照)。
【0060】
一対の対向部材のうち一方の対向部材84は上端が揺動板83に連結されており(図5(a),(b)参照)、揺動板83が支軸82を中心にして支持基板81の下面に沿って揺動可能になっているので、揺動板83がリンク機構88を介して可動部材駆動モータ52cにて揺動させられると、対向部材84も随伴して揺動するようになっている。
他方の対向部材87は上端が揺動板86に連結されており(図5(a),(b)参照)、揺動板86が支軸84を中心にして支持基板81の下面に沿って揺動可能になっているので、揺動板86がリンク機構88を介して可動部材駆動モータ52cにて揺動させられると、対向部材87も随伴して揺動するようになっている。
なお、図示の例でリンク機構88の直線運動を揺動板83,86の円弧運動に変換するのに用いている滑り対偶における接触維持は図示しないバネ付勢等にてなされる。
【0061】
支軸82,85が支持基板81の傾斜に関して下の方に位置し、リンク機構88が支持基板81の傾斜に関して上の方に位置し(図5(a),(b)参照)、揺動板83及び対向部材84の結合体と揺動板86及び対向部材87の結合体とが分包帯送り経路の両側に来るよう配置されていて(図5(c),(d)参照)、可動部材駆動モータ52cが所定の回転角度以内で双方向回転動作すると、それがリンク機構88によって一対の逆向き直線往復動作に変換され、それによって揺動板83,86が逆向きに揺動して、鋏のように開いたり閉じたりするようになっている(図5(a),(b)参照)。
【0062】
また、揺動板83,86に随伴して対向部材84,87も揺動するが(図5(a),(b)参照)、対向部材84,87のうち分包帯送り経路の下流側に位置する部位すなわちシール機構53寄りの部位は、揺動中心の支軸82,85に近いので、揺動状態にかかわらず常に薬剤通過阻止可能に閉じている(図5(c),(d)参照)。これに対し、対向部材84,87のうち分包帯送り経路の上流側に位置する部位すなわちプラテンローラ41aやプリントヘッド42寄りの部位は、揺動中心の支軸82,85から遠いため、揺動に伴って離接し、離れて開状態になり、近づいて閉状態になるので、閉状態から開状態になる離隔動作を行えるものとなっている。
【0063】
この場合、分包帯8の順送り時には(図5(a),(c)参照)、ホッパ下部(82〜87)が離隔動作を行わないで閉じていて断面が扁平になっているので、可動部材(83+84+86+87)の主要部である対向部材84,87の囲む薬剤通過経路が細くなっており、それによって分包帯8の広がり幅も狭いので、分包帯8は円滑に順送りされる。
そして、分包帯8が一包分だけ順送りされて、分包帯8が停止すると、薬剤投入ホッパ利用の薬剤投入が行われるが、そのときにはホッパ下部(82〜87)が離隔動作を行う。
【0064】
この離隔動作では(図5(b),(d)参照)、対向部材84,87のうち分包帯送り経路の上流側に位置する部位は、互いに離れて開くが、対向部材84,87のうち分包帯送り経路の下流側に位置する部位は、ほとんど離れずに閉じている。そして、この離隔動作によって、対向部材84,87の上流側が開くと、対向部材84,87の挟む薬剤通過経路が太くなり、それと同時に分包帯8の広がり幅も広がる。そのため、この場合も、上述した押開動作の作用効果に加えて、ホッパ下部(82〜87)の内側の薬剤通過経路が太くなって経路の抵抗が低減されるという更なる作用効果も発揮されるので、分包帯8の区分室に投入薬剤が滞りなく受け入れられる。
【0065】
なお、対向部材84,87のうち離隔動作で開くのは傾斜に関して上側になっている部位であり、対向部材84,87のうち傾斜に関して下側になっている部位は常に閉じているので、落下薬剤が薬剤通過経路や分包帯8から不所望に飛び出すおそれはない。
【実施例5】
【0066】
本発明の薬剤包装装置の実施例5について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図6は、(a)と(b)がホッパ下部(82+93+94+85+96+97)とその駆動機構(88+52c)を合わせたホッパ下部機構90の斜視図、(c)と(d)がホッパ下部の対向部材94,97を横断して示した区分封入機構部分の平面図、(e)と(f)が薬剤投入ホッパ(52b+90)の部分の平面図であり、(a)と(c)と(e)は対向部材94,97が離隔動作(拡幅動作・押開動作)を行っていないときの状態を示し、(b)と(d)と(f)は対向部材94,97が離隔動作(拡幅動作・押開動作)を行っているときの状態を示している。
【0067】
この薬剤包装装置が上述した実施例4のものと相違するのは、ホッパ下部機構80がホッパ下部機構90になった点であり、ホッパ下部機構90が上述のホッパ下部機構80と相違するのは、曲板状だった対向部材84,87がそれぞれ平板状の対向部材94,97になった点と、シャッタ機能の無かった揺動板83,86がそれぞれシャッタ機能付きの揺動板93,96になった点である。
揺動板93と揺動板96とが逆向きに揺動して鋏のように開いたり閉じたりするが、それで連通用開口81aを開閉することにより、一対の対向部材94,97の内側の薬剤通過経路を開閉するシャッタ動作が実行されるようになっている。
【0068】
この場合、分包帯8の順送り時には(図6(a),(c),(e)参照)、ホッパ下部(82+93+94+85+96+97)のうちの可動部材(93+94+96+97)のうちの対向部材94,97が離隔動作を行わないで閉じていて断面が扁平になっているので、対向部材94,97の囲む薬剤通過経路が平たく潰れており、それによって分包帯8の広がり幅が極めて狭いので、分包帯8は円滑に順送りされる。また、対向部材94,97の上端部に位置する揺動板93,96が連通用開口81aを閉めているので、薬剤収集機構14からホッパ上部52aへの薬剤落下は分包帯8の順送り完了を待つ必要がなく先行して随時行われ、一包分の投入予定薬剤がホッパ上部52aに一時貯留される。
【0069】
そして、分包帯8が一包分だけ順送りされて、分包帯8が停止すると、薬剤投入ホッパ利用の薬剤投入が行われるが、そのときにはホッパ下部(82+93+94+85+96+97)が離隔動作を行う。
この離隔動作では(図6(b),(d),(f)参照)、対向部材94,97のうち分包帯送り経路の上流側に位置する部位は、互いに離れて開くが、対向部材94,97のうち分包帯送り経路の下流側に位置する部位は、ほとんど離れずに閉じている。そして、この離隔動作によって、対向部材94,97の上流側が開くと、対向部材94,97の挟む薬剤通過経路が太くなり、それと同時に分包帯8の広がり幅も広がる。
【0070】
そのため、この場合も、上述した押開動作の作用効果に加えて、ホッパ下部(82+93+94+85+96+97)の内側の薬剤通過経路が太くなって経路の抵抗が低減されるという更なる作用効果も発揮される。このようにして、ホッパ下部(82+93+94+85+96+97)の薬剤投入能力が強化され、分包帯8の薬剤受入態勢が整えられるが、それと並行して開閉シャッタ兼用の揺動板93,96が連通用開口81aを開けるので、ホッパ上部52aに一時貯留されていた薬剤が纏めてホッパ下部の対向部材94,97経由で分包帯8の区分室に投入される。
こうして、分包帯8の区分室への薬剤投入が迅速かつ的確に遂行される。
【0071】
なお、この場合も、対向部材94,97のうち離隔動作で開くのは傾斜に関して上側になっている部位であり、対向部材94,97のうち傾斜に関して下側になっている部位は常に閉じているので、落下薬剤が薬剤通過経路や分包帯8から不所望に飛び出すおそれはない。
【0072】
[その他]
上記の実施例では、シール機構53のヒータ53a,53bとしてΓ字状のものを図示したが(図1(d),(e))、ヒータ53a,53bの形状はT字状であっても良く、横シール発熱体と縦シール発熱体とが分離していても良い。
上記の実施例4,5では、対向部材84,87や対向部材94,97のうち分包帯送り経路の上流側に位置する部位が離隔動作を行っていない閉状態のときには接触している態様のものを示したが、接触状態は必須でなく、分包帯8の順送りが円滑になされる程度まで接近していれば、閉状態と言える。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の薬剤包装装置は、上述した薬剤分包機10への組み込みに限らず、多数の錠剤フィーダを装備した錠剤分包機に組み込んでも良く、いわゆるV升型の散薬分包機に組み込んでも良く、単独のユニットにしても良い。
【符号の説明】
【0074】
8…分包帯(分包紙)、10…薬剤分包機、11…天板部、
12…散薬分割装置、13…錠剤手撒き装置、14…薬剤収集機構、
15…筐体、16…引出機構、17…受け箱、18…清掃機構、
20…薬剤包装装置、21…基板、22…取っ手、23…固定ローラ、
30…分包帯供給機構、31…分包帯軸支部、
32…自走供給ローラ、33…ブレーキ、34…バネ、36…可動ローラ、
40…印刷機構、41…プラテン機構、41a…プラテンローラ、
42…プリントヘッド、43…インクリボン送り機構、
44…インクリボン供給部、45…インクリボン巻取部45、
50…区分封入機構、52…薬剤投入ホッパ、
52a…ホッパ上部、52b…ホッパ下部、52c…可動部材駆動モータ、
53…シール機構、53a,53b…ヒータ、
54…分包帯牽引機構、55…往復動機構、60…電子カム機構、
73…ホッパ下部、73a,73b…可動部材、73c…固定部材、
74…ホッパ下部、74a,74b…可動部材、
80…ホッパ下部機構、81…支持基板、81a…開口(薬剤通過経路)、
82…支軸、83…揺動板、84…対向部材、85…支軸、
86…揺動板、87…対向部材、88…リンク機構、
90…ホッパ下部機構、93…揺動板(シャッタ)、
94…対向部材、96…揺動板(シャッタ)、97…対向部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分包帯ロールを解きながら長尺の分包帯を順送り供給する機構である分包帯供給機構と、分包帯に薬品名や用法などの情報を印刷する機構である印刷機構と、縦シールと横シールを行って分包帯を区分するとともに各区分室に薬剤を投入する機構である区分封入機構とを、分包帯送り経路に沿って配設するとともに引出可能に支持している薬剤包装装置において、前記区分封入機構のうち薬剤投入を担う薬剤投入ホッパが、上部は固定されているが、下部は分包帯のうち差し込まれている部分を内側から外側へ押し開く押開動作を行える可動部材になっていることを特徴とする薬剤包装装置。
【請求項2】
分包帯の区分室への薬剤投入時には前記薬剤投入ホッパの下部に前記押開動作を行わせるが、分包帯の順送り時には前記薬剤投入ホッパの下部に前記押開動作を行わせないことを特徴とする請求項1記載の薬剤包装装置。
【請求項3】
前記可動部材が、その内側の薬剤通過経路を太くする拡幅動作にて前記押開動作まで行うものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された薬剤包装装置。
【請求項4】
分包帯送り経路のうち前記薬剤投入ホッパの下部と交差する経路部分が分包帯送りの上流側を上に下流側を下にして傾斜しており、前記薬剤投入ホッパが上部は鉛直になっているが下部は前記分包帯送り経路と直交する方へ傾斜していることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載された薬剤包装装置。
【請求項5】
前記可動部材がその内側の薬剤通過経路を両脇から挟む一対の対向部材からなり、これらの対向部材が分包帯送り経路の両側に来るよう配置されていて、前記対向部材のうち分包帯送り経路の下流側に位置する部位は常に薬剤通過阻止可能に閉じているが、前記対向部材のうち分包帯送り経路の上流側に位置する部位は閉状態から開状態になる離隔動作を行えるようになっていて、この離隔動作により前記押開動作がなされることを特徴とする請求項4記載の薬剤包装装置。
【請求項6】
前記可動部材の上端部がその内側の薬剤通過経路を開閉するシャッタ動作を前記押開動作に随伴して行うようになっていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載された薬剤包装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−265023(P2010−265023A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119924(P2009−119924)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000151472)株式会社トーショー (156)
【Fターム(参考)】