薬剤散布用管理作業車両
【課題】GPSセンサによって得られる機体の移動速度を散布車速として車速連動により所要の面積密度で薬剤を散布する際に、散布走行速度の検出精度について妥当性の判断を可能とする薬剤散布用管理作業車両を提供する。
【解決手段】薬剤散布用管理作業車両は、圃場走行可能に機体を支持する前輪3及び後輪4と、GPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサS2と、このGPSセンサS2によって得られた機体の移動速度であるGPS車速VGを散布車速として車速連動により散布動作する散布装置Dとを備えて単位面積当たり所定の薬液量で薬剤散布走行が可能に構成され、上記前輪3及び後輪4の走行動作を検出する車速センサS1を設け、この車速センサS1に基づいて前輪3及び後輪4の走行動作と対応する機体の計算車速Vsを算出し、この計算車速Vsと上記GPS車速VGとを区別して表示するモードを設けたものである。
【解決手段】薬剤散布用管理作業車両は、圃場走行可能に機体を支持する前輪3及び後輪4と、GPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサS2と、このGPSセンサS2によって得られた機体の移動速度であるGPS車速VGを散布車速として車速連動により散布動作する散布装置Dとを備えて単位面積当たり所定の薬液量で薬剤散布走行が可能に構成され、上記前輪3及び後輪4の走行動作を検出する車速センサS1を設け、この車速センサS1に基づいて前輪3及び後輪4の走行動作と対応する機体の計算車速Vsを算出し、この計算車速Vsと上記GPS車速VGとを区別して表示するモードを設けたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場走行可能な走行機台に車速連動式散布装置とGPS受信機を搭載した薬剤散布用管理作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、圃場走行可能な走行機台に車速連動式散布装置とGPS受信機を搭載した薬剤散布用管理作業車両が知られている。この管理作業車両は、GPS電波を受けるGPS受信機によって得られる機体位置情報に基づく機体移動速度を散布車速として走行速度連動制御を行うことにより、走行車輪のスリップを伴う車速センサによって検出される走行装置の駆動動作に基づいて得られる計算車速を用いて車速連動制御するよりも、一般的に高精度の散布走行が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−176741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、GPSセンサーによる機体移動速度は天候条件や作業条件の影響を受けて検出精度が低下することがあり、また、走行装置のスリップは圃場とその状況に応じて変動することから、いずれによっても、散布精度を確保するための決め手に欠けるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、GPSセンサによって得られる機体の移動速度を散布車速として車速連動により所要の面積密度で薬剤を散布する際に、散布走行速度の検出精度について妥当性の判断を可能とする薬剤散布用管理作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、圃場走行可能に機体を支持する前輪及び後輪と、GPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサと、このGPSセンサによって得られた機体の移動速度であるGPS車速を散布車速として車速連動により散布動作する散布装置とを備えて単位面積当たり所定の薬液量で薬剤散布走行を行う薬剤散布用管理作業車両において、上記前輪及び後輪の走行動作を検出する車速センサを設け、この車速センサに基づいて前輪及び後輪の走行動作と対応する機体の計算車速を算出し、この計算車速と上記GPS車速とを区別して表示するモードを設けたことを特徴とする。
【0007】
上記薬剤散布用管理作業車両は、機体移動に応じてGPSセンサによるGPS車速を散布車速として車速連動により散布装置が散布動作し、また、走行装置の走行動作を検出する車速センサに基づいて走行装置の走行動作と対応する機体の計算車速が算出され、この時、モード選択によりGPS車速と計算車速とが区別して対比可能に表示される。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記モードは、前記計算車速に事前設定による設定スリップ率を乗じて算出される補正車速を計算車速に代えて表示することを特徴とする。
上記薬剤散布用管理作業車両は、モード選択により計算車速に代えて設定スリップ率に基づく補正車速が対比可能に表示される。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1の構成において、前記モードは、前記GPS車速と計算車速との比から算出される計算スリップ率を表示することを特徴とする。
上記薬剤散布用管理作業車両は、GPS車速と計算車速との比による計算スリップ率が表示される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明の薬剤散布用管理作業車両は、モード選択によりGPS車速と計算車速とが区別して表示されることから、オペレータは、両者を対比することができ、走行状況と体感速度をベースにして、薬剤散布に適用するためのそれぞれの検出精度の妥当性を判断することが可能となる。
【0011】
請求項2に係る発明の薬剤散布用管理作業車両は、請求項1の効果に加え、計算車速に代えて設定スリップ率に基づく補正車速が対比可能に表示されることから、実体的な車速による対比ができるので、判断が容易になる。
【0012】
請求項3に係る発明の薬剤散布用管理作業車両は、請求項1の効果に加え、GPS車速と計算車速との比による計算スリップ率が表示されることから、圃場の状態を知ることができるとともに、走行状況をベースにして、スリップ率としての妥当性を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】乗用型防除機のブーム収納時の平面図
【図2】散布制御のシステム構成図
【図3】フローチャート例1
【図4】フローチャート例2
【図5】フローチャート例3
【図6】フローチャート例4
【図7】フローチャート例5
【図8】フローチャート例6
【図9】フローチャート例7
【図10】フローチャート例8
【図11】フローチャート例9
【図12】乗用型防除機のブーム収納時の側面図
【図13】乗用型防除機の散布動作時の正面図
【図14】散布装置の配管図
【図15】防除操作盤の平面図
【図16】散布装置の配管図
【図17】散布走行時の平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明を適用した薬剤散布用管理作業車両の一例である乗用型防除機1は、ブーム収納時の平面図を図1に示すように、左右の前輪3,3と左右の後輪4,4とからなる前後輪操舵式であり2WDと4WDの切り替え可能な走行装置によって圃場走行を行う走行機台を構成し、薬剤散布装置Dの薬液タンク5を機体後部に搭載し、薬液散布するノズル11を形成して左右に展開散布可能なブーム9a,9b,9cを機体前端位置に配置するとともに、薬液タンク5の底部の電動式流量制御弁36を散布車速に連動して開度調節することにより、運転席6に設けた防除操作盤21で設定した単位面積当たりの薬液散布量による一様な薬剤散布を可能とする散布制御システムを構成する。
【0015】
散布制御システムは、図2のシステム構成図に示すように、コントローラCに2WDと4WDの切り替え可能な走行装置3,4の駆動動作をパルス検出する車速センサS1とGPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサS2とを設け、このGPSセンサS2によって得られた機体位置情報によって算出される機体の移動速度であるGPS車速VGを散布車速として流量制御する車速連動散布装置を構成し、散布量設定値と車速等により算出される圧力になるように、ポンプ8圧を受ける薬剤の供給量を電動開閉弁36にて制御する。また、動作状況をオペレータに知らせるブザーを含む表示報知部Rを備える。
【0016】
この薬剤散布用管理作業車両においては、GPSセンサS2によって得られた機体の移動速度であるGPS車速VGを散布車速として車速連動により散布動作する散布装置により所定の面積密度で薬剤散布走行を行うとともに、走行装置3,4の走行動作をパルス検出する車速センサS2による機体走行の計算車速Vsを算出してオペレータが両者を対比することができるように、計算車速VsとGPS車速VGとをモードスイッチmにより区別して表示する点検モードを設けたものである。点検モードでなくても、計算車速VsとGPS車速VGとを同時に表示するように構成してもよい。これにより、オペレータは計算車速VsとGPS車速VGの状況を容易に把握可能となる。
【0017】
(点検モード)
点検モードの制御処理について詳細に説明すると、図3のフローチャート例1に示すように、GPS車速データ読込み処理のステップ1(以下において、「S1」の如くの略記による。)によりGPSセンサS2からの速度情報の読込を行ってGPS車速VGを算出(S1a)し、また、車速パルスの検出によって計算車速Vsを算出(S2,S2a)し、次いで、GPS車速VGを表示(S3)し、この時、後述の表示報知部Rの表示切換スイッチ28を読込んでオンであれば計算車速Vsを表示(S4〜S4b)する制御処理を構成する。
【0018】
GPS車速VGはGPSセンサS2が受けたGPS電波によって得られた機体位置の変化によって算出される機体の移動速度であり、計算車速Vsは走行装置の走行動作パルスのカウントによって算出される走行車輪の周速であり、点検モードにおいては、表示報知部RにGPS車速VGを表示するとともに、表示切換スイッチの操作に応じて計算車速Vsを表示することができることから、走行状況と体感速度をベースにして、薬剤散布に適用するためのそれぞれの検出精度の妥当性を判断することが可能となる。
【0019】
上記の場合に、過去に得られている走行車輪の設定スリップ率を用いて算出される補正車速VSを計算車速Vsの代わりに表示することにより、実体的な車速による対比判断が可能となる。詳細には、図4のフローチャート例2に示すように、GPS車速VG、計算車速Vsの算出に続き、予め設定してある設定スリップ率を計算車速Vsに乗じて補正車速VSを算出(S5,S5a)し、GPS車速VGの表示(S6)の際に、表示切換スイッチの操作に応じて補正車速VSを表示(S7〜S7b)する制御処理を構成する。
【0020】
また、走行装置のスリップ率は、GPS車速VGに基づいて算出される計算スリップ率に相当することから、この計算スリップ率を表示することによって圃場の状態を知ることができ、また、スリップ率としての妥当性を判断することができる。詳細には、図5のフローチャート例3に示すように、GPS車速VG、計算車速Vsの算出に続き、両者の比として計算スリップ率を算出(S11)し、一定時間の経過を待って計算車速Vsを表示(S13,S13a)し、この時、表示切換スイッチの操作に応じて計算スリップ率を表示(S14〜S14b)する制御処理を構成する。
【0021】
上記計算スリップ率の表示においては、停止中と走行中の表示内容を区別し、機体停止時に設定スリップ率を表示することにより、走行状態に応じたスリップ率を確認することができる。詳細には、図6のフローチャート例4に示すように、表示切換スイッチ操作に応じて、車速パルスの検出によって走行中である場合に限り計算スリップ率を表示(S15〜S15b)し、他の場合は設定スリップ率を表示(S16)する制御処理を構成する。
【0022】
(GPS異常対応)
次に、GPS車速VGによる散布制御におけるGPS異常発生の場合の取扱いとして、図7のフローチャート例5に示すように、GPSセンサの検出がある場合はGPS車速VGに基づいて散布作業(S21,S22)を行い、GPS異常の発生時は、車速パルスと設定スリップ率とによる補正車速VSに切替えて散布を継続(S24)し、GPS異常のまま所定時間が経過した場合に異常を報知(S23,S23a)する制御処理を構成することにより、散布作業を継続しつつGPS異常によるオペレータの対応を促すことができる。
【0023】
上記の場合において、GPS異常が発生しても、車速連動制御による散布作業を継続して適切に行うためには、図8のフローチャート例6に示すように、所定時間の経過までに限って前回のGPS車速VGによって散布制御を継続(S31,S32)し、所定時間の経過後は、補正車速VSに切替えて散布を継続(S31,S33)する制御処理を構成する。
【0024】
(起動停止対応)
つぎに、走行の開始と停止の取扱として、図9のフローチャート例7に示すように、本機コントローラCで車速パルスが一定数以上になったことを検出(S41,S41a)した時に走行開始と判定してCAN通信接続による防除機コントローラC1に走行開始データを出力(S42,S42a)し、走行開始後はGPS車速による散布処理(S43)し、その間に車速パルスが一定数以下になったことを検出(S44,S44a)した時に走行停止と判定して防除機コントローラC1に走行停止データを出力(S45,S45a)する制御処理を構成することにより、遅れなく適切な判定を本機コントローラCによって行うことができる。
【0025】
(車速データ)
次に、車速パルスから算出される計算車速Vsと補正車速VSとを区別し、目的に応じて使い分けする例について説明すると、図10のフローチャート例8に示すように、走行開始後において、GPSセンサS1によるGPS車速VGの算出(S51,S51a)と車速パルスによる計算車速Vsの算出(S52,S52a)とを行い、これらGPS車速VGと計算車速Vsとによって計算スリップ率を算出するとともに、この計算スリップ率をGPS車速VGのバックアップ用にメモリに書込み保存(S53,S53b)し、また、計算車速Vsと設定スリップ率とによって補正車速VSを算出(S54,S54a)し、GPS車速VGを散布車速として車速連動散布(S55,S55a)を行う制御処理を構成する。
【0026】
この場合において、算出(S53)した計算スリップ率は、メモリアドレスを指定(S53a)し、そのメモリエリアに設定スリップ率と区別して書込(S53b)を行い、不揮発メモリに記憶することにより、GPS車速が読めないときや、作業中断後の再開時の車速計算時に区別して適切なスリップ率を使用することができる。
【0027】
また、スリップ率の算出については、図11のフローチャート例9に示すように、車速パルスから車速計算した後で車速判定(S61,S61a)を行い、変化が一定値以下になったらGPS車速との比較計算によりスリップ率の計算を行い、メモリに書込むことにより、加速時や減速時の不安定な値でなく、適切なスリップ率を得ることができる。
【0028】
(薬液噴霧作業車両)
ここで、薬液噴霧作業車両の一例である乗用型防除機について詳細に説明する。乗用型防除機は、その収納時の側面図と散布時の正面図を図12及び図13に示すように、機体の前部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケ−ス2内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を左右の前輪3,3と左右の後輪4,4とに伝えるように構成している。機体後部には薬液を収容している薬液タンク5が設置され、該薬液タンク5の前側に運転席6が、その前方にはステアリングハンドル7が装備されている。前記運転席6の両側には、薬液タンク5が張り出している構成である。17はエンジン回転数の表示や各種警告灯を設けているパネルである。
【0029】
薬液タンク5内の薬液は、ポンプ8により後述する散布ブーム9に設けられた散布ホース10の各ノズル11から噴出される構成である。ポンプ8は、エンジンEからベルトプーリ伝動系8aで駆動される構成である。
【0030】
機体の左右両側には散布ブーム9を収納支持するためのブーム収納支持枠13,13が立設され、受け具14によって係止保持されるように構成されており、収納時の於ける高速走行時の振動吸収のために受け具14には弾性体が設けられている。
【0031】
散布ブーム9について説明する。中央の散布ブーム(センタブーム)9aは機体の横幅に略一致し、その左右両側に連結される左右散布ブーム(サイドブーム)9b,9bは前記中央の散布ブ−ム(センタブーム)9aよりも長さが長く構成されている。
【0032】
サイドブーム9bは、中央のセンターブーム9aに対し回動自在に連結され、サイドブーム上下シリンダ15により上方へ回動させて収納状態に保持させたり、或いは地面と略平行となる散布作業姿勢状態に回動させて支持させたりすることができる。なお、16は散布ブーム全体を昇降させるブーム昇降シリンダである。
【0033】
次に、図14と図15に基づいて乗用型防除機のブームスプレーヤ(薬液散布装置)の散布回路12について説明する。
操作盤20及び防除操作盤21や、手動で開閉できる各ブーム9a,9bの噴霧コックC1,C2,C3等が運転席6の側部に設置されている。
【0034】
また、操作盤20を備えた防除操作盤21には、中央上部のディスプレイ22の左側に上位から散布設定23、圧力24、流量計25、流量累計26等の表示部が表示されていて、ディスプレイ22の左端部に点灯される三角マークによって、このディスプレイに表示されるデータ内容が指示される。ディスプレイ22の右側には表示切替手段である表示切替ボタン28が設けられている。また、これらの下方には、自動押しボタン(スイッチ)29が設けられ、この自動押しボタン(スイッチ)29の入り状態をパイロットランプ30で表示するようになっている。更に、散布設定ボタンスイッチ31、増減ボタンスイッチ32,33、累計リセットスイッチ34等が設けられている構成である。
【0035】
散布回路12の薬液吸込吐出経路は、薬液タンク5からポンプ8間に至る低圧吸水経路35と、ポンプ8から流量制御弁36を経て各散布ブーム9a,9b間に至る高圧吐水経路37とから構成されており、ホース等で連結されている。9cは延長ブームであり、散布ブーム9bに連結する構成としており、作業状態に合わせて着脱する構成としている。仮に、延長ブーム9cを常時連結している場合においては、延長ブーム9cを使用して噴霧場合はコック9dを開いて散布を行い、延長ブーム9cを使用しない場合はコック9dを閉じて散布を行わないようにしてもよい。
【0036】
高圧吐水経路37には、一定圧以上の液圧を逃がす安全弁38を有した余水戻し経路40が設けられており、薬液タンク5に還元できるようになっている。また、この薬液タンク5の底部との間には撹拌経路41が連通されて、一部の薬液をタンク内へ常時噴出還元させて、この薬液タンク5内の薬液を撹拌する構成としている。前記流量制御弁36と各ブーム9a,9bへの噴霧コックC1,C2,C3間における高圧吐水経路37には、この液圧を検出する圧力センサ42と、流量を検出する第1流量センサ43が設けられる。なお、流量制御弁36は制御モータによって開度が制御される。39はエアチャンバである。
【0037】
噴霧コックC1,C2,C3からそれぞれ左サイドブーム9b、センターブーム9a、右サイドブーム9bへの薬液の流れは、配管D1,D2,D3で接続されている構成である。
【0038】
また、前記低圧吸水経路35には、薬液タンク5とポンプ8との間においてサクションフィルタ44が設けられ、更に、このサクションフィルタ44とポンプ8との間には吸水経路内の流量を検出する第2流量センサ45が設けられる。
【0039】
前述のごとく構成した乗用型防除機において、図12に示しているように後部散布装置50を設ける構成としている。この後部散布装置50は、機体後部の支持体51に対して回動支点52を支点として、前後方向に回動可能に構成している。この前後方向に回動については、油圧シリンダ54で作動する構成としている。また、後部散布装置50の左右のノズル部53,53については、左右の後輪4,4の後方に位置する構成としている。
【0040】
左右のノズル53,53については、それぞれ支持部57,57で支持されており、さらに、支持部57,57は連結プレート58で接続されているので、油圧シリンダ54は左側のみに設けられている。もちろん、右側に設けてもよい。
【0041】
このように、左右の後部散布装置50のノズル53については、1個の油圧シリンダ54で前後移動可能に構成しているので、廉価で簡素な構成となる。
また、左右の後部散布装置50のノズル53は、後輪4,4のトレッドの延長線上に位置する構成としているので、作物とノズル53の干渉を防止できるようになる。油圧シリンダ54についても同様で、後輪4(左側)の延長線上に位置する構成としているので、油圧シリンダ54と作物との干渉を防止できるようになる。
【0042】
図14と図16に示しているように、後部散布装置50への薬液の流れは、噴霧コックC2からセンターブーム9aへの配管D2の途中に分岐金具55を設け、この分岐金具55から配管D4を経由して後部散布装置50へ接続している構成である。前記配管D4の途中には、コック56を設けている。
【0043】
前記後部散布装置50については、左右の後輪4,4(左右前輪3,3)が通過後の部分にも充分な薬液の散布を行うことを目的としており、防除効果が良好に得られるようになる。
【0044】
図12に示しているように、後部散布装置50のノズル53が後輪4に接近しているときは散布を行い、ノズル53が後輪4から離れているときは散布をしないように構成する。具体的には、図16に示しているように、前記支持部57に案内プレート59を設け、この案内プレート59はコック56に連結する構成としている。
【0045】
即ち、油圧シリンダ54が伸長してノズル53が後輪4から遠ざかると、案内プレート59はコック56を閉じるように構成している。また、油圧シリンダ54が縮小してノズル53が後輪4に近づくと、案内プレート59はコック56を開くように構成している。
【0046】
また、後部散布装置50からの散布については、後部散布装置50の前後方向の動きと連動して自動的に散布の入り切りが行われるので、操作性が向上するようになる。また、ポンプ8については作業中常時駆動する構成としているので、前記コック56の上流側は高圧(30Kg/cm2)となっている。このため、後部散布装置50が後輪4に接近してノズル53から散布するときには、高圧の薬液が一気に噴霧されるようになり、無散布域の発生を防止できるようになる。薬液散布の入り切りについては、図14に示す制御弁64で電気的に行う構成としてもよい。
【0047】
(散布走行)
乗用型防除機による薬剤散布走行は、図17の平面図に示すように、まず、圃場端に沿って畦からブーム全長の範囲を散布走行し、この時、駆動輪のスリップがあっても、GPSセンサによる実際の移動車速により所要の薬剤散布を高精度で行うことができる。また、GPSセンサが使用できない状況であっても、スリップ率による推定車速を使用することにより、それまでの走行状況の延長として所要の薬剤散布を高精度で行うことができる。
【0048】
圃場端における機体旋回においては、GPSセンサによる機体の位置情報に基づいてブーム端の位置を合わせた上で隣接領域の散布走行を開始することにより、散布済み領域との間に重なりや隙間が生じないようにして、前記同様の散布走行を行い、その繰り返しにより、単位面積当たり所定量の薬液で圃場全面を均一に薬剤散布を行うことができる。特に、ブーム端の位置を考慮して旋回後の機体中心の位置を画面等に指示することで、運転操作が容易となる。
【符号の説明】
【0049】
1 乗用型防除機
3,4 走行装置
5 薬液タンク
6 運転席
20 操作盤
21 防除操作盤
22 ディスプレイ
28 表示切替ボタン
30 パイロットランプ
31 散布設定ボタンスイッチ
C 本機コントローラ
C1 防除機コントローラ
D 薬剤散布装置
m 点検モードスイッチ
R 表示報知部
S1 車速センサ
S2 GPSセンサ
VG GPS車速
Vs 計算車速
VS 補正車速
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場走行可能な走行機台に車速連動式散布装置とGPS受信機を搭載した薬剤散布用管理作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、圃場走行可能な走行機台に車速連動式散布装置とGPS受信機を搭載した薬剤散布用管理作業車両が知られている。この管理作業車両は、GPS電波を受けるGPS受信機によって得られる機体位置情報に基づく機体移動速度を散布車速として走行速度連動制御を行うことにより、走行車輪のスリップを伴う車速センサによって検出される走行装置の駆動動作に基づいて得られる計算車速を用いて車速連動制御するよりも、一般的に高精度の散布走行が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−176741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、GPSセンサーによる機体移動速度は天候条件や作業条件の影響を受けて検出精度が低下することがあり、また、走行装置のスリップは圃場とその状況に応じて変動することから、いずれによっても、散布精度を確保するための決め手に欠けるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、GPSセンサによって得られる機体の移動速度を散布車速として車速連動により所要の面積密度で薬剤を散布する際に、散布走行速度の検出精度について妥当性の判断を可能とする薬剤散布用管理作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、圃場走行可能に機体を支持する前輪及び後輪と、GPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサと、このGPSセンサによって得られた機体の移動速度であるGPS車速を散布車速として車速連動により散布動作する散布装置とを備えて単位面積当たり所定の薬液量で薬剤散布走行を行う薬剤散布用管理作業車両において、上記前輪及び後輪の走行動作を検出する車速センサを設け、この車速センサに基づいて前輪及び後輪の走行動作と対応する機体の計算車速を算出し、この計算車速と上記GPS車速とを区別して表示するモードを設けたことを特徴とする。
【0007】
上記薬剤散布用管理作業車両は、機体移動に応じてGPSセンサによるGPS車速を散布車速として車速連動により散布装置が散布動作し、また、走行装置の走行動作を検出する車速センサに基づいて走行装置の走行動作と対応する機体の計算車速が算出され、この時、モード選択によりGPS車速と計算車速とが区別して対比可能に表示される。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記モードは、前記計算車速に事前設定による設定スリップ率を乗じて算出される補正車速を計算車速に代えて表示することを特徴とする。
上記薬剤散布用管理作業車両は、モード選択により計算車速に代えて設定スリップ率に基づく補正車速が対比可能に表示される。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1の構成において、前記モードは、前記GPS車速と計算車速との比から算出される計算スリップ率を表示することを特徴とする。
上記薬剤散布用管理作業車両は、GPS車速と計算車速との比による計算スリップ率が表示される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明の薬剤散布用管理作業車両は、モード選択によりGPS車速と計算車速とが区別して表示されることから、オペレータは、両者を対比することができ、走行状況と体感速度をベースにして、薬剤散布に適用するためのそれぞれの検出精度の妥当性を判断することが可能となる。
【0011】
請求項2に係る発明の薬剤散布用管理作業車両は、請求項1の効果に加え、計算車速に代えて設定スリップ率に基づく補正車速が対比可能に表示されることから、実体的な車速による対比ができるので、判断が容易になる。
【0012】
請求項3に係る発明の薬剤散布用管理作業車両は、請求項1の効果に加え、GPS車速と計算車速との比による計算スリップ率が表示されることから、圃場の状態を知ることができるとともに、走行状況をベースにして、スリップ率としての妥当性を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】乗用型防除機のブーム収納時の平面図
【図2】散布制御のシステム構成図
【図3】フローチャート例1
【図4】フローチャート例2
【図5】フローチャート例3
【図6】フローチャート例4
【図7】フローチャート例5
【図8】フローチャート例6
【図9】フローチャート例7
【図10】フローチャート例8
【図11】フローチャート例9
【図12】乗用型防除機のブーム収納時の側面図
【図13】乗用型防除機の散布動作時の正面図
【図14】散布装置の配管図
【図15】防除操作盤の平面図
【図16】散布装置の配管図
【図17】散布走行時の平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明を適用した薬剤散布用管理作業車両の一例である乗用型防除機1は、ブーム収納時の平面図を図1に示すように、左右の前輪3,3と左右の後輪4,4とからなる前後輪操舵式であり2WDと4WDの切り替え可能な走行装置によって圃場走行を行う走行機台を構成し、薬剤散布装置Dの薬液タンク5を機体後部に搭載し、薬液散布するノズル11を形成して左右に展開散布可能なブーム9a,9b,9cを機体前端位置に配置するとともに、薬液タンク5の底部の電動式流量制御弁36を散布車速に連動して開度調節することにより、運転席6に設けた防除操作盤21で設定した単位面積当たりの薬液散布量による一様な薬剤散布を可能とする散布制御システムを構成する。
【0015】
散布制御システムは、図2のシステム構成図に示すように、コントローラCに2WDと4WDの切り替え可能な走行装置3,4の駆動動作をパルス検出する車速センサS1とGPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサS2とを設け、このGPSセンサS2によって得られた機体位置情報によって算出される機体の移動速度であるGPS車速VGを散布車速として流量制御する車速連動散布装置を構成し、散布量設定値と車速等により算出される圧力になるように、ポンプ8圧を受ける薬剤の供給量を電動開閉弁36にて制御する。また、動作状況をオペレータに知らせるブザーを含む表示報知部Rを備える。
【0016】
この薬剤散布用管理作業車両においては、GPSセンサS2によって得られた機体の移動速度であるGPS車速VGを散布車速として車速連動により散布動作する散布装置により所定の面積密度で薬剤散布走行を行うとともに、走行装置3,4の走行動作をパルス検出する車速センサS2による機体走行の計算車速Vsを算出してオペレータが両者を対比することができるように、計算車速VsとGPS車速VGとをモードスイッチmにより区別して表示する点検モードを設けたものである。点検モードでなくても、計算車速VsとGPS車速VGとを同時に表示するように構成してもよい。これにより、オペレータは計算車速VsとGPS車速VGの状況を容易に把握可能となる。
【0017】
(点検モード)
点検モードの制御処理について詳細に説明すると、図3のフローチャート例1に示すように、GPS車速データ読込み処理のステップ1(以下において、「S1」の如くの略記による。)によりGPSセンサS2からの速度情報の読込を行ってGPS車速VGを算出(S1a)し、また、車速パルスの検出によって計算車速Vsを算出(S2,S2a)し、次いで、GPS車速VGを表示(S3)し、この時、後述の表示報知部Rの表示切換スイッチ28を読込んでオンであれば計算車速Vsを表示(S4〜S4b)する制御処理を構成する。
【0018】
GPS車速VGはGPSセンサS2が受けたGPS電波によって得られた機体位置の変化によって算出される機体の移動速度であり、計算車速Vsは走行装置の走行動作パルスのカウントによって算出される走行車輪の周速であり、点検モードにおいては、表示報知部RにGPS車速VGを表示するとともに、表示切換スイッチの操作に応じて計算車速Vsを表示することができることから、走行状況と体感速度をベースにして、薬剤散布に適用するためのそれぞれの検出精度の妥当性を判断することが可能となる。
【0019】
上記の場合に、過去に得られている走行車輪の設定スリップ率を用いて算出される補正車速VSを計算車速Vsの代わりに表示することにより、実体的な車速による対比判断が可能となる。詳細には、図4のフローチャート例2に示すように、GPS車速VG、計算車速Vsの算出に続き、予め設定してある設定スリップ率を計算車速Vsに乗じて補正車速VSを算出(S5,S5a)し、GPS車速VGの表示(S6)の際に、表示切換スイッチの操作に応じて補正車速VSを表示(S7〜S7b)する制御処理を構成する。
【0020】
また、走行装置のスリップ率は、GPS車速VGに基づいて算出される計算スリップ率に相当することから、この計算スリップ率を表示することによって圃場の状態を知ることができ、また、スリップ率としての妥当性を判断することができる。詳細には、図5のフローチャート例3に示すように、GPS車速VG、計算車速Vsの算出に続き、両者の比として計算スリップ率を算出(S11)し、一定時間の経過を待って計算車速Vsを表示(S13,S13a)し、この時、表示切換スイッチの操作に応じて計算スリップ率を表示(S14〜S14b)する制御処理を構成する。
【0021】
上記計算スリップ率の表示においては、停止中と走行中の表示内容を区別し、機体停止時に設定スリップ率を表示することにより、走行状態に応じたスリップ率を確認することができる。詳細には、図6のフローチャート例4に示すように、表示切換スイッチ操作に応じて、車速パルスの検出によって走行中である場合に限り計算スリップ率を表示(S15〜S15b)し、他の場合は設定スリップ率を表示(S16)する制御処理を構成する。
【0022】
(GPS異常対応)
次に、GPS車速VGによる散布制御におけるGPS異常発生の場合の取扱いとして、図7のフローチャート例5に示すように、GPSセンサの検出がある場合はGPS車速VGに基づいて散布作業(S21,S22)を行い、GPS異常の発生時は、車速パルスと設定スリップ率とによる補正車速VSに切替えて散布を継続(S24)し、GPS異常のまま所定時間が経過した場合に異常を報知(S23,S23a)する制御処理を構成することにより、散布作業を継続しつつGPS異常によるオペレータの対応を促すことができる。
【0023】
上記の場合において、GPS異常が発生しても、車速連動制御による散布作業を継続して適切に行うためには、図8のフローチャート例6に示すように、所定時間の経過までに限って前回のGPS車速VGによって散布制御を継続(S31,S32)し、所定時間の経過後は、補正車速VSに切替えて散布を継続(S31,S33)する制御処理を構成する。
【0024】
(起動停止対応)
つぎに、走行の開始と停止の取扱として、図9のフローチャート例7に示すように、本機コントローラCで車速パルスが一定数以上になったことを検出(S41,S41a)した時に走行開始と判定してCAN通信接続による防除機コントローラC1に走行開始データを出力(S42,S42a)し、走行開始後はGPS車速による散布処理(S43)し、その間に車速パルスが一定数以下になったことを検出(S44,S44a)した時に走行停止と判定して防除機コントローラC1に走行停止データを出力(S45,S45a)する制御処理を構成することにより、遅れなく適切な判定を本機コントローラCによって行うことができる。
【0025】
(車速データ)
次に、車速パルスから算出される計算車速Vsと補正車速VSとを区別し、目的に応じて使い分けする例について説明すると、図10のフローチャート例8に示すように、走行開始後において、GPSセンサS1によるGPS車速VGの算出(S51,S51a)と車速パルスによる計算車速Vsの算出(S52,S52a)とを行い、これらGPS車速VGと計算車速Vsとによって計算スリップ率を算出するとともに、この計算スリップ率をGPS車速VGのバックアップ用にメモリに書込み保存(S53,S53b)し、また、計算車速Vsと設定スリップ率とによって補正車速VSを算出(S54,S54a)し、GPS車速VGを散布車速として車速連動散布(S55,S55a)を行う制御処理を構成する。
【0026】
この場合において、算出(S53)した計算スリップ率は、メモリアドレスを指定(S53a)し、そのメモリエリアに設定スリップ率と区別して書込(S53b)を行い、不揮発メモリに記憶することにより、GPS車速が読めないときや、作業中断後の再開時の車速計算時に区別して適切なスリップ率を使用することができる。
【0027】
また、スリップ率の算出については、図11のフローチャート例9に示すように、車速パルスから車速計算した後で車速判定(S61,S61a)を行い、変化が一定値以下になったらGPS車速との比較計算によりスリップ率の計算を行い、メモリに書込むことにより、加速時や減速時の不安定な値でなく、適切なスリップ率を得ることができる。
【0028】
(薬液噴霧作業車両)
ここで、薬液噴霧作業車両の一例である乗用型防除機について詳細に説明する。乗用型防除機は、その収納時の側面図と散布時の正面図を図12及び図13に示すように、機体の前部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケ−ス2内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を左右の前輪3,3と左右の後輪4,4とに伝えるように構成している。機体後部には薬液を収容している薬液タンク5が設置され、該薬液タンク5の前側に運転席6が、その前方にはステアリングハンドル7が装備されている。前記運転席6の両側には、薬液タンク5が張り出している構成である。17はエンジン回転数の表示や各種警告灯を設けているパネルである。
【0029】
薬液タンク5内の薬液は、ポンプ8により後述する散布ブーム9に設けられた散布ホース10の各ノズル11から噴出される構成である。ポンプ8は、エンジンEからベルトプーリ伝動系8aで駆動される構成である。
【0030】
機体の左右両側には散布ブーム9を収納支持するためのブーム収納支持枠13,13が立設され、受け具14によって係止保持されるように構成されており、収納時の於ける高速走行時の振動吸収のために受け具14には弾性体が設けられている。
【0031】
散布ブーム9について説明する。中央の散布ブーム(センタブーム)9aは機体の横幅に略一致し、その左右両側に連結される左右散布ブーム(サイドブーム)9b,9bは前記中央の散布ブ−ム(センタブーム)9aよりも長さが長く構成されている。
【0032】
サイドブーム9bは、中央のセンターブーム9aに対し回動自在に連結され、サイドブーム上下シリンダ15により上方へ回動させて収納状態に保持させたり、或いは地面と略平行となる散布作業姿勢状態に回動させて支持させたりすることができる。なお、16は散布ブーム全体を昇降させるブーム昇降シリンダである。
【0033】
次に、図14と図15に基づいて乗用型防除機のブームスプレーヤ(薬液散布装置)の散布回路12について説明する。
操作盤20及び防除操作盤21や、手動で開閉できる各ブーム9a,9bの噴霧コックC1,C2,C3等が運転席6の側部に設置されている。
【0034】
また、操作盤20を備えた防除操作盤21には、中央上部のディスプレイ22の左側に上位から散布設定23、圧力24、流量計25、流量累計26等の表示部が表示されていて、ディスプレイ22の左端部に点灯される三角マークによって、このディスプレイに表示されるデータ内容が指示される。ディスプレイ22の右側には表示切替手段である表示切替ボタン28が設けられている。また、これらの下方には、自動押しボタン(スイッチ)29が設けられ、この自動押しボタン(スイッチ)29の入り状態をパイロットランプ30で表示するようになっている。更に、散布設定ボタンスイッチ31、増減ボタンスイッチ32,33、累計リセットスイッチ34等が設けられている構成である。
【0035】
散布回路12の薬液吸込吐出経路は、薬液タンク5からポンプ8間に至る低圧吸水経路35と、ポンプ8から流量制御弁36を経て各散布ブーム9a,9b間に至る高圧吐水経路37とから構成されており、ホース等で連結されている。9cは延長ブームであり、散布ブーム9bに連結する構成としており、作業状態に合わせて着脱する構成としている。仮に、延長ブーム9cを常時連結している場合においては、延長ブーム9cを使用して噴霧場合はコック9dを開いて散布を行い、延長ブーム9cを使用しない場合はコック9dを閉じて散布を行わないようにしてもよい。
【0036】
高圧吐水経路37には、一定圧以上の液圧を逃がす安全弁38を有した余水戻し経路40が設けられており、薬液タンク5に還元できるようになっている。また、この薬液タンク5の底部との間には撹拌経路41が連通されて、一部の薬液をタンク内へ常時噴出還元させて、この薬液タンク5内の薬液を撹拌する構成としている。前記流量制御弁36と各ブーム9a,9bへの噴霧コックC1,C2,C3間における高圧吐水経路37には、この液圧を検出する圧力センサ42と、流量を検出する第1流量センサ43が設けられる。なお、流量制御弁36は制御モータによって開度が制御される。39はエアチャンバである。
【0037】
噴霧コックC1,C2,C3からそれぞれ左サイドブーム9b、センターブーム9a、右サイドブーム9bへの薬液の流れは、配管D1,D2,D3で接続されている構成である。
【0038】
また、前記低圧吸水経路35には、薬液タンク5とポンプ8との間においてサクションフィルタ44が設けられ、更に、このサクションフィルタ44とポンプ8との間には吸水経路内の流量を検出する第2流量センサ45が設けられる。
【0039】
前述のごとく構成した乗用型防除機において、図12に示しているように後部散布装置50を設ける構成としている。この後部散布装置50は、機体後部の支持体51に対して回動支点52を支点として、前後方向に回動可能に構成している。この前後方向に回動については、油圧シリンダ54で作動する構成としている。また、後部散布装置50の左右のノズル部53,53については、左右の後輪4,4の後方に位置する構成としている。
【0040】
左右のノズル53,53については、それぞれ支持部57,57で支持されており、さらに、支持部57,57は連結プレート58で接続されているので、油圧シリンダ54は左側のみに設けられている。もちろん、右側に設けてもよい。
【0041】
このように、左右の後部散布装置50のノズル53については、1個の油圧シリンダ54で前後移動可能に構成しているので、廉価で簡素な構成となる。
また、左右の後部散布装置50のノズル53は、後輪4,4のトレッドの延長線上に位置する構成としているので、作物とノズル53の干渉を防止できるようになる。油圧シリンダ54についても同様で、後輪4(左側)の延長線上に位置する構成としているので、油圧シリンダ54と作物との干渉を防止できるようになる。
【0042】
図14と図16に示しているように、後部散布装置50への薬液の流れは、噴霧コックC2からセンターブーム9aへの配管D2の途中に分岐金具55を設け、この分岐金具55から配管D4を経由して後部散布装置50へ接続している構成である。前記配管D4の途中には、コック56を設けている。
【0043】
前記後部散布装置50については、左右の後輪4,4(左右前輪3,3)が通過後の部分にも充分な薬液の散布を行うことを目的としており、防除効果が良好に得られるようになる。
【0044】
図12に示しているように、後部散布装置50のノズル53が後輪4に接近しているときは散布を行い、ノズル53が後輪4から離れているときは散布をしないように構成する。具体的には、図16に示しているように、前記支持部57に案内プレート59を設け、この案内プレート59はコック56に連結する構成としている。
【0045】
即ち、油圧シリンダ54が伸長してノズル53が後輪4から遠ざかると、案内プレート59はコック56を閉じるように構成している。また、油圧シリンダ54が縮小してノズル53が後輪4に近づくと、案内プレート59はコック56を開くように構成している。
【0046】
また、後部散布装置50からの散布については、後部散布装置50の前後方向の動きと連動して自動的に散布の入り切りが行われるので、操作性が向上するようになる。また、ポンプ8については作業中常時駆動する構成としているので、前記コック56の上流側は高圧(30Kg/cm2)となっている。このため、後部散布装置50が後輪4に接近してノズル53から散布するときには、高圧の薬液が一気に噴霧されるようになり、無散布域の発生を防止できるようになる。薬液散布の入り切りについては、図14に示す制御弁64で電気的に行う構成としてもよい。
【0047】
(散布走行)
乗用型防除機による薬剤散布走行は、図17の平面図に示すように、まず、圃場端に沿って畦からブーム全長の範囲を散布走行し、この時、駆動輪のスリップがあっても、GPSセンサによる実際の移動車速により所要の薬剤散布を高精度で行うことができる。また、GPSセンサが使用できない状況であっても、スリップ率による推定車速を使用することにより、それまでの走行状況の延長として所要の薬剤散布を高精度で行うことができる。
【0048】
圃場端における機体旋回においては、GPSセンサによる機体の位置情報に基づいてブーム端の位置を合わせた上で隣接領域の散布走行を開始することにより、散布済み領域との間に重なりや隙間が生じないようにして、前記同様の散布走行を行い、その繰り返しにより、単位面積当たり所定量の薬液で圃場全面を均一に薬剤散布を行うことができる。特に、ブーム端の位置を考慮して旋回後の機体中心の位置を画面等に指示することで、運転操作が容易となる。
【符号の説明】
【0049】
1 乗用型防除機
3,4 走行装置
5 薬液タンク
6 運転席
20 操作盤
21 防除操作盤
22 ディスプレイ
28 表示切替ボタン
30 パイロットランプ
31 散布設定ボタンスイッチ
C 本機コントローラ
C1 防除機コントローラ
D 薬剤散布装置
m 点検モードスイッチ
R 表示報知部
S1 車速センサ
S2 GPSセンサ
VG GPS車速
Vs 計算車速
VS 補正車速
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場走行可能に機体を支持する前輪(3)及び後輪(4)と、GPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサ(S2)と、このGPSセンサ(S2)によって得られた機体の移動速度であるGPS車速(VG)を散布車速として車速連動により散布動作する散布装置(D)とを備えて単位面積当たり所定の薬液量で薬剤散布走行を行う薬剤散布用管理作業車両において、
上記前輪(3)及び後輪(4)の走行動作を検出する車速センサ(S1)を設け、この車速センサ(S1)に基づいて前輪(3)及び後輪(4)の走行動作と対応する機体の計算車速(Vs)を算出し、この計算車速(Vs)と上記GPS車速(VG)とを区別して表示するモードを設けたことを特徴とする薬剤散布用管理作業車両。
【請求項2】
前記モードは、前記計算車速(Vs)に事前設定による設定スリップ率を乗じて算出される補正車速(VS)を計算車速(Vs)に代えて表示することを特徴とする請求項1記載の薬剤散布用管理作業車両。
【請求項3】
前記モードは、前記GPS車速(VG)と計算車速(Vs)との比から算出される計算スリップ率を表示することを特徴とする請求項1記載の薬剤散布用管理作業車両。
【請求項1】
圃場走行可能に機体を支持する前輪(3)及び後輪(4)と、GPS電波を受けて機体位置を検出するGPSセンサ(S2)と、このGPSセンサ(S2)によって得られた機体の移動速度であるGPS車速(VG)を散布車速として車速連動により散布動作する散布装置(D)とを備えて単位面積当たり所定の薬液量で薬剤散布走行を行う薬剤散布用管理作業車両において、
上記前輪(3)及び後輪(4)の走行動作を検出する車速センサ(S1)を設け、この車速センサ(S1)に基づいて前輪(3)及び後輪(4)の走行動作と対応する機体の計算車速(Vs)を算出し、この計算車速(Vs)と上記GPS車速(VG)とを区別して表示するモードを設けたことを特徴とする薬剤散布用管理作業車両。
【請求項2】
前記モードは、前記計算車速(Vs)に事前設定による設定スリップ率を乗じて算出される補正車速(VS)を計算車速(Vs)に代えて表示することを特徴とする請求項1記載の薬剤散布用管理作業車両。
【請求項3】
前記モードは、前記GPS車速(VG)と計算車速(Vs)との比から算出される計算スリップ率を表示することを特徴とする請求項1記載の薬剤散布用管理作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−244695(P2011−244695A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117668(P2010−117668)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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