薬液拭取り装置及び薬液拭取り方法
【課題】反射防止フィルムの低コントラストの欠陥を容易に検出するために、反射防止フィルムに付着した薬液を拭取る薬液拭取り装置を提供する。
【解決手段】反射防止フィルムの欠陥を検査する場合にフィルムに付着させた薬液を検査後に拭取る装置であって、土台に設けられ昇降が可能な支柱と、拭取りヘッドベースと拭取りヘッド中間部材と拭取り部材を順に重ねた構造を有し、前記支柱に支えられた拭取りヘッドと、を備え、前記拭取りヘッドを薬液が付着したフィルム面に接触させて薬液を拭取ることを特徴とする薬液拭取り装置。
【解決手段】反射防止フィルムの欠陥を検査する場合にフィルムに付着させた薬液を検査後に拭取る装置であって、土台に設けられ昇降が可能な支柱と、拭取りヘッドベースと拭取りヘッド中間部材と拭取り部材を順に重ねた構造を有し、前記支柱に支えられた拭取りヘッドと、を備え、前記拭取りヘッドを薬液が付着したフィルム面に接触させて薬液を拭取ることを特徴とする薬液拭取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムの裏面に薬液を塗布して目視検査した後、該薬液を拭取るための薬液拭取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の表示デバイスの表示画面の最表面には、表示画面をキズから保護したり、防汚、帯電防止、映り込み防止のために、透明フィルムに反射防止材料をコーティングして製造される反射防止フィルムが貼られている。
【0003】
反射防止フィルムの製造工程では、ローラ状の長尺帯状の透光性のフィルムに対し、塗工、乾燥が単数または複数回行われ、光学膜が形成される。図1は反射防止フィルムの一例を断面で示す図である。図1に示される反射防止フィルムはフィルム基材1、ハードコート層2、反射防止層3の各層で構成されている。
【0004】
反射防止フィルムの欠陥は、塗工された塗膜の膜厚の変動によるムラや色相の変化などによる光学欠陥や異物やキズやコスレなどの欠陥が存在する。また、フィルム自体のキズ、ヘコミ、等の欠陥もある。
【0005】
反射防止フィルムの製造工程内には欠陥の検査を行うために欠陥検査機が設置されている。図2は一般的に用いられている反射防止フィルム(以下、フィルム)の欠陥検査装置の一例を示す概略構成図であって、複数のローラ11〜ローラ14からなる搬送ユニット(ローラの回転による搬送)によりフィルム15を搬送し、LED、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、UVランプ等を用いた照明光源16及び17によってフィルムの全幅を照明し、フィルム15を矢印18で示す方向に搬送しながらフィルムの幅方向を全走査できるよう複数のラインCCDカメラ19(または2次元カメラ)によってフィルムを撮像する。照明光源16及び17は、その両方またはいずれか一方が適宜採用される。
【0006】
一方、フィルム15の搬送距離に応じた信号をロータリーエンコーダ21より取得し、前記信号を撮像タイミング信号として、一定の搬送距離毎に前記ラインCCDカメラ19によってフィルム表面を撮像し、撮像した画像を画像処理装置20で画像処理し、欠陥部分の抽出を行い、抽出した欠陥について、記憶機構を含む制御装置22に欠陥データ(欠陥の位置を示す座標、ラインCCDカメラの画素数、濃度値)をファイル及びデータベース(以下、DB)にデータとして保存する機構を有する欠陥検査装置である。この場合、ロータリーエンコーダ21の代わりに一定の搬送距離毎に撮像タイミング信号を発生するタイマーを用いることもある。
【0007】
一般に、欠陥の抽出処理は撮像された画像に対し、予め設定した閾値で二値化処理を行い、欠陥の抽出を行う。図3は欠陥の抽出処理を説明するための図で、図3(a−1)は欠陥部31が含まれる撮像画像30を示し、図3(a−2)は撮像画像30の線分32の画像信号33を示す。破線37で囲まれた信号31−1は欠陥部31の信号を示す。図3(a−1)に示す撮像画像30を予め設定した閾値34で二値化処理し、図3(b−1)に示す二値化画像35を得る。図3(b−2)は、図3(a−2)の画像信号33を予め設定した閾値34で二値化処理した信号36を示す。
【0008】
上記反射防止フィルムの反射防止層3では、図4に示すように、入射光のうちハードコート層2と反射防止層3の界面で反射した界面反射光4を、反射防止層3の表面で反射した表面反射光5と同振幅、逆位相の光に反射防止層3によって変え、表面反射光と干渉することで反射防止を実現している。
【0009】
一方、フィルム裏面側ではフィルムと屈折率の異なる物質とが隣接しており、下記の(1)式より求められるように反射率が高くなり、フィルム裏面と屈折率の異なる物質の境界面での反射光の強度が高くなる。ここでAはフィルムの屈折率、Bはフィルムの裏面側に接する物質の屈折率である。
反射率=(屈折率A―屈折率B)/(屈折率A+屈折率B)・・・・(1)
【0010】
即ち、フィルム裏面からの反射光に比べ反射防止層からの反射光の強度は弱いために、不良による反射光の変化そのものは、フィルム裏面からの反射光に埋もれてしまうほど小さい。例えば、塗工された塗液の膜厚変動や、異物やキズやコスレなどの欠陥が原因となって起こる上記反射光の変化を、熟練者によって目視確認して検査することは容易ではなく、従って自動検査することが望まれているが、上記欠陥は一般的にコントラストが低く、該欠陥を欠陥検査機で抽出しようとした場合に、ノイズ成分に埋もれてしまい、一般的に欠陥を抽出するために閾値を設定すると、欠陥ではない箇所を擬似欠陥として抽出してしまい、一般的に用いられている画像処理によって欠陥を検査することは難しい。
【0011】
言い換えれば、上記の図3に示すように、高コントラストの欠陥31の場合には2値化処理によって欠陥を抽出することが出来るが、低コントラストの場合には欠陥は明暗の差が低く、ノイズ成分に埋もれてしまい低コントラストの欠陥だけをある閾値によって2値化を行っても抽出することが出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−25005号公報
【特許文献2】特開2005−62119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記低コントラストの欠陥を検出するには、フィルム裏面の反射率を低減させ欠陥検出をし易くすればよい。即ち、図5に示されるように例えばスプレー40を用いて黒色塗料41をフィルム1に塗布する方法がある。この場合、対象フィルムは黒塗装されるため破壊検査となり歩留りの低下、黒塗装材料代などにかかる副資材のロス、検査作業のロス等の問題が挙げられる。
【0014】
上記理由から検査精度、作業効率の向上、コスト削減のため検査の自動化が必要となる。この場合は、検査対象となるフィルムからサンプルを切り出して目視検査する場合や、自動検査機で検出感度を上げて欠陥(擬似欠陥を含む)を検出し、その後、上記自動検査機で検出された欠陥の位置に基づいて、目視で検査する方法がある。このいずれの場合でも、図6で示すように上記切出したサンプルフィルムや自動検査機で欠陥検出した箇所に、黒プレート42を接触させて目視で検査を行う方法があるが、この場合、フィルム1と黒プレート42の間に空気が入り込むことにより、式(1)で示されるようにフィルム裏面反射率が高くなるために、目視検査時に欠陥を見ることが出来ないといった問題がある。
【0015】
上記問題を防ぐために図7に示すように、フィルム1と黒プレート42の間に、フィルムと屈折率の近い薬液43を液張りしてフィルム裏面反射を低減させることによって、目視検査時に欠陥を見やすくすることが出来る。
【0016】
しかしながら、上記フィルム1に薬液43を液張りした場合には次に示す問題点がある
。
【0017】
即ち、目視検査実施時にフィルムに薬液を付着させ、薬液が乾燥しない状態でフィルムを巻き取ると、ローラー内に薬液を巻込んだり、搬送ローラーに薬液が付着して搬送ローラー表面が汚れ、薬液がフィルムに転移してしまう恐れがある。このためフィルムに薬液を付着させた場合は、必ず薬液を乾燥、除去した後にフィルム搬送や巻取りを実施する必要がある。
【0018】
これには、フィルム上に付着させた薬液が乾燥するまでの時間を要してしまい、目視検査時間が増加して作業効率が低下してしまうといった問題点がある。
【0019】
そこで本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、反射防止フィルムの低コントラストの欠陥を容易に検出するために、反射防止フィルムに付着させた薬液を拭取る薬液拭取り装置及び薬液拭取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そこで本発明の請求項1に係る発明は、反射防止フィルムの欠陥を検査する場合にフィルムに付着させた薬液を検査後に拭取る装置であって、
土台に設けられ昇降が可能な支柱と、
拭取りヘッドベースと拭取りヘッド中間部材と拭取り部材を順に重ねた構造を有し、前記支柱に支えられた拭取りヘッドと、を備え、
前記拭取りヘッドを薬液が付着したフィルム面に接触させて薬液を拭取ることを特徴とする薬液拭取り装置である。
【0021】
本発明の請求項2に係る発明は、前記拭取りヘッドは前記支柱を昇降する手段によって、薬液を拭取る際に上昇されてフィルムを押し当て、拭取りが終了した後に下降されて押し当てを解除することを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置である。
【0022】
本発明の請求項3に係る発明は、前記拭取りヘッドのフィルムと接する面は湾曲した形状を有することを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置である。
【0023】
本発明の請求項4に係る発明は、前記拭取り部材は多数の通気口を有し、拭取り部材に存在する薬液ガスを前記拭取りヘッドベースと前記拭取りヘッド中間部材を経て、排気することを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置である。
【0024】
本発明の請求項5に係る発明は、前記拭取りヘッド中間部材はクッション性を有する部材であることを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置である。
【0025】
本発明の請求項6に係る発明は、前記拭取り部材は拭取り部材更新手段によって更新されることを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置である。
【0026】
本発明の請求項7に係る発明は、反射防止フィルムの欠陥を検査する場合にフィルムに付着させた薬液を検査後に拭取る方法であって、
土台に設けられ昇降が可能な支柱と、
拭取りヘッドベースと拭取りヘッド中間部材と拭取り部材を順に重ねた構造を有し、前記支柱に支えられた拭取りヘッドと、を備えた薬液拭取り装置を用いて、
前記拭取りヘッドを薬液が付着したフィルム面に接触させてフィルムの全面に付着した薬液を拭取ることを特徴とする薬液拭取り方法である。
【0027】
本発明の請求項8に係る発明は、前記拭取りヘッドをフィルム面に接触させながらフィ
ルムの搬送方向と垂直な方向に移動させて、フィルムの一部に付着した薬液を拭取ることを特徴とする請求項7に記載の薬液拭取り方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明による薬液拭取り装置によれば、フィルムに付着した薬液を拭取ることで、薬液残り等によるフィルム汚れや品質不良を防ぎ、更に、フィルム上に付着した薬液が乾燥するまで待機する必要がなく、生産量、作業効率低下を防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】反射防止フィルムの一例を断面で示す図。
【図2】一般的に用いられている反射防止フィルムの欠陥検査装置の一例を示す概略構成図。
【図3】欠陥の抽出処理を説明するための図。(a−1)は欠陥部が含まれる撮像画像を示す図。(a−2)は撮像画像内に示される線分の画像信号を示す図。(b−1)は(a−1)に示される撮像画像を予め設定した閾値で二値化処理した図。(b−2)は(a−2)に示される画像信号を二値化処理した図。
【図4】反射防止フィルムの反射防止層による反射防止を実現する働きを説明する図。
【図5】スプレーを用いて黒色塗料をフィルムに塗布する場合を示す図。
【図6】黒プレートを接触させて目視検査を行う方法を示す図。
【図7】フィルムと黒プレートの間に、フィルムと屈折率の近い薬液を液張りする方法を示す図。
【図8】本発明に係る薬液拭取り装置の一例を示す概要図。
【図9】薬液拭取り装置を正面から見た図。
【図10】本発明に係る拭取りヘッドの一例を詳細に示す図。
【図11】図10とは別の拭取りヘッド50cの一例を詳細に示した図。(a)は拭き取りヘッド中間部材を説明するための図。(b)は拭き取りヘッド中間部材が変形したことを示す図。
【図12】拭取り部材を更新する手段を示す図。
【図13】本発明に係る薬液拭取り装置の適用例(1)を示す図。
【図14】(a)は本発明に係る薬液拭取り装置の適用例(2)を示す図。(b)は薬液拭取り装置と黒プレートを詳細に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明に係る薬液拭取り装置を実施するための形態を説明する。
【0031】
図8は本発明に係る薬液拭取り装置の一例を示す概要図である。薬液拭取り装置50は、矢印52で示される方向に回転する巻き取りロールで巻き取られ、矢印53で示す方向に搬送されるフィルム51の全幅の拭取りが可能で、フィルム51に接触させることで薬液の拭取りを行う。51aは、薬液が拭取られた部分のフィルム、51bは、これから薬液が拭取られる部分のフィルムを示す。
【0032】
図9は薬液拭取り装置50を正面から見た図で、土台50aと、土台50aに設けられ昇降が可能な支柱50bと、支柱50bに支えられた拭取りヘッド50cと、を備えている。拭取りヘッド50cは拭取りヘッドベース50c−1と拭取りヘッド中間部材50c−2と、拭取り部材50c−3と、で構成されている。支柱50bは図示しないエアシリンダによって昇降する機構を有しており、拭取り時には上昇して拭取りヘッド50cをフィルム51に押し当てて接触させ、非拭取り時には下降して拭取りヘッド50cをフィルム51から離すことが出来る。
【0033】
図10は拭取りヘッド50cの一例を詳細に示した図である。拭取りヘッド50cはフィルム上に付着した薬液を完全に拭取るために、拭取り部の表面(拭取り部材50c−3)とフィルム51が万遍なく接触する必要がある。このため拭取りヘッド50cの先端形状は、拭取り部幅方向に対して湾曲形状となっており、拭取りヘッド50cを支柱50bで上昇させて押し当てることによって、万遍なくフィルム51と拭取りヘッド50cの表面を接触させることが出来、フィルム51上の薬液をムラなく拭取ることができる。また、拭取り部材50c−3と拭取りヘッド中間部材50c−2には拭取り部材50c−3の乾燥性を促進させるために、多数の通気口50c−3aが設けられいる。通気口50c−3aは拭取りヘッドベース50c−1内の図示しない配管に繋がれ、更に排気管60を介して排気ポンプに接続され、拭取り部材50c−3に存在する薬液ガスを排気することが出来る。
【0034】
図11は、図10とは別の拭取りヘッド50cの一例を詳細に示した図である。図11(a)に示される拭取りヘッド50cの拭取りヘッド中間部材50c−2は、クッション性を有する部材であって、図11(b)に示すように拭取りヘッド50cをフィルム51に押し当てた場合には、クッション性を有する拭取りヘッド中間部材50c−2が変形して拭取り部材50c−3が万遍なくフィルム51と接触することが出来る。また、図11に示す拭取り部材50c−3には拭取り部材50c−3の乾燥性を促進させるために、多数の通気口50c−3aが設けられている。クッション性を有した拭取りヘッド中間部材50c−2には多孔質ないしは多数の孔を空けた構造を有する材料を用い、更に、拭取りヘッドベース50c−1内の図示しない配管を設け、排気管60を介して排気ポンプに接続され、拭取り部材50c−3に存在する薬液ガスを排気することが出来る。
【0035】
図12は拭取り部材50c−3を更新する手段を示す図である。薬液の拭取りを繰り返し同じ拭取り部材50c−3で行った場合には、拭取り部材50c−3がぬれて吸水性が低下し、拭取り性が低下してしまうため、拭取り部材50c−3は常に乾燥した状態とすることが望ましい。このため図12に示す拭取り部材50c−3を更新手段である更新機構は、拭取り部材50c−3の側面に拭取り部材50c−3を巻き取るローラー61と、ローラー62で構成されている。更新機構は拭取り動作毎にローラー61もしくはローラー62を矢印63、64で示す方向に回転させて、拭取り部材50c−3を矢印65で示す方向に巻き出しと巻取りを行うことによって、常に拭取り面の拭取り部材50c−3を乾燥したものに更新することができる。
【0036】
ローラーの動作例を説明する。先ず、ローラー61に拭取り部材50c−3を巻き付け、拭取り部材50c−3を這わせてローラー62に拭取り部材50c−3を固定する。次に、ローラー62で拭取り動作毎に拭取り部材50c−3を巻き取ることによって拭取り部材50c−3を乾燥したものに更新する。ローラー62で拭取り部材50c−3の全長を巻き取った後は、上記とは逆に拭取り動作毎にローラー61で拭取り部材50c−3を巻き取る。
【0037】
薬液拭取りを行った後は、ローラー61及びローラー62に拭取り部材50c−3を巻き取りしておくことで、拭取り部材50c−3が乾燥するまでの時間を稼ぐことができる。その結果、乾燥した拭取り部材50c−3を繰返し使用することができ、かつ拭取り部材50c−3の吸水性低下を防ぐことができる。
【0038】
次に、本発明に係る薬液拭取り装置を適用して薬液を拭取る方法を説明する。
【0039】
(適用例1)
図13は本発明に係る薬液拭取り装置の適用例を示す。図13に示す薬液拭取り装置はフィルム51の全面に薬液が塗布された場合に適用されるもので、薬液(フィルムと屈折率の近い薬液)が付着された被検査対象であるフィルム51を矢印52で示される方向に回転する巻き取りロール54で巻き取りながら矢印53で示す方向に搬送し、薬液が付着された部分51bを目視で検査するものである。薬液拭取り装置50は、図9に示す本発明に係る薬液拭取り装置の支柱50bをエアーシリンダで上昇させ、支柱50の先端に設けられた拭取りヘッド50cをフィルム51に押し当て、フィルム51が矢印51で示す方向に搬送されることによって塗布された薬液を拭取るもので、薬液が拭取られたフィルム51aは巻き取りロール54で巻き取られる。
【0040】
(適用例2)
図14は本発明に係る薬液拭取り装置の図13とは別の適用例を示す図である。図14(a)は薬液拭取り装置を適用した場合の外観図を示し、図14(b)は薬液拭取り装置と黒プレートを含む装置56を詳細に示す図である。図14に示す薬液拭取り装置50は、フィルム51上の特定の目視検査対象箇所55a、55b、55cに薬液を付着した場合に適用されるものである。
【0041】
図14(b)に示される薬液拭取り装置50には黒プレート70を移動させるため、矢印57で示すフィルム51の幅方向に対して移動可能な電動アクチュエータ71が設けられている。上記黒テーブルの側面に薬液拭取り装置50を固定して設け、目視検査終了後に、薬液拭取り装置50の支柱50bを矢印58で示す方向に上昇して拭取りヘッド50cをフィルム51に押し当て、その状態で電動アクチュエータ71を用いて薬液拭取り装置50を移動させ、フィルム51上に付着した薬液を拭取る。
【0042】
電動アクチュエータを拭取り動作に用いることで、ある特定の箇所に薬液を付着した場合、薬液付着付近だけをピンポイントで拭取ることができ、薬液が付着していない箇所には拭取り部が接触することはない。
【0043】
以上のように、本発明による薬液拭取り装置によれば、フィルムに付着した薬液を拭取ることで薬液残り等によるフィルム汚れや、品質不良を防ぎ、更に、フィルム上に付着した薬液が乾燥するまで待機する必要がなく、その結果、生産量、作業効率低下を防ぐことが出来る。
【符号の説明】
【0044】
1・・・フィルム(基材)
2・・・ハードコート層
3・・・反射防止層
4・・・界面反射光
5・・・表面反射光
11〜14・・・ローラ
15・・・フィルム
16、17・・・照明光源
18・・・フィルムを搬送する方向を示す矢印
19・・・ラインCCDカメラ
20・・・画像処理装置
21・・・ロータリーエンコーダ
22・・・制御装置
30・・・欠陥部31を含む撮像画像
31・・・欠陥部
31−1・・・欠陥部31の信号
32・・・撮像画像30内の線分
33・・・撮像画像30の線分の画像信号
34・・・閾値
35・・・撮像画像30の二値化画像
36・・・画像信号33二値化処理した信号
37・・・欠陥部31をの信号を示す破線で囲まれた部分
40・・・スプレー
41・・・黒色塗料
42・・・黒プレート
43・・・フィルムと屈折率の近い薬液
50・・・薬液拭取り装置
50a・・・土台
50b・・・支柱
50c・・・拭取りヘッド
50c−1・・・拭取りヘッドベース
50c−2・・・拭取りヘッド中間部材
50c−3・・・拭取り部材
50c−3a・・・通気口
51・・・フィルム
51a・・・薬液が拭取られた部分のフィルム
51b・・・これから薬液が拭取られる部分のフィルム
52・・・巻き取りロールが回転する方向を示す矢印
53・・・フィルムの搬送方向を示す矢印
57・・・黒プレートを移動させる方向を示す矢印
60・・・排気管
61・・・ローラー
62・・・ローラー
63,64・・・ローラー61、ローラー62を回転させる方向を示す矢印
65・・・拭取り部材を巻き出しと巻取りを行う方向を示す矢印
70・・・黒プレート
71・・・電動アクチュエータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムの裏面に薬液を塗布して目視検査した後、該薬液を拭取るための薬液拭取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の表示デバイスの表示画面の最表面には、表示画面をキズから保護したり、防汚、帯電防止、映り込み防止のために、透明フィルムに反射防止材料をコーティングして製造される反射防止フィルムが貼られている。
【0003】
反射防止フィルムの製造工程では、ローラ状の長尺帯状の透光性のフィルムに対し、塗工、乾燥が単数または複数回行われ、光学膜が形成される。図1は反射防止フィルムの一例を断面で示す図である。図1に示される反射防止フィルムはフィルム基材1、ハードコート層2、反射防止層3の各層で構成されている。
【0004】
反射防止フィルムの欠陥は、塗工された塗膜の膜厚の変動によるムラや色相の変化などによる光学欠陥や異物やキズやコスレなどの欠陥が存在する。また、フィルム自体のキズ、ヘコミ、等の欠陥もある。
【0005】
反射防止フィルムの製造工程内には欠陥の検査を行うために欠陥検査機が設置されている。図2は一般的に用いられている反射防止フィルム(以下、フィルム)の欠陥検査装置の一例を示す概略構成図であって、複数のローラ11〜ローラ14からなる搬送ユニット(ローラの回転による搬送)によりフィルム15を搬送し、LED、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ、UVランプ等を用いた照明光源16及び17によってフィルムの全幅を照明し、フィルム15を矢印18で示す方向に搬送しながらフィルムの幅方向を全走査できるよう複数のラインCCDカメラ19(または2次元カメラ)によってフィルムを撮像する。照明光源16及び17は、その両方またはいずれか一方が適宜採用される。
【0006】
一方、フィルム15の搬送距離に応じた信号をロータリーエンコーダ21より取得し、前記信号を撮像タイミング信号として、一定の搬送距離毎に前記ラインCCDカメラ19によってフィルム表面を撮像し、撮像した画像を画像処理装置20で画像処理し、欠陥部分の抽出を行い、抽出した欠陥について、記憶機構を含む制御装置22に欠陥データ(欠陥の位置を示す座標、ラインCCDカメラの画素数、濃度値)をファイル及びデータベース(以下、DB)にデータとして保存する機構を有する欠陥検査装置である。この場合、ロータリーエンコーダ21の代わりに一定の搬送距離毎に撮像タイミング信号を発生するタイマーを用いることもある。
【0007】
一般に、欠陥の抽出処理は撮像された画像に対し、予め設定した閾値で二値化処理を行い、欠陥の抽出を行う。図3は欠陥の抽出処理を説明するための図で、図3(a−1)は欠陥部31が含まれる撮像画像30を示し、図3(a−2)は撮像画像30の線分32の画像信号33を示す。破線37で囲まれた信号31−1は欠陥部31の信号を示す。図3(a−1)に示す撮像画像30を予め設定した閾値34で二値化処理し、図3(b−1)に示す二値化画像35を得る。図3(b−2)は、図3(a−2)の画像信号33を予め設定した閾値34で二値化処理した信号36を示す。
【0008】
上記反射防止フィルムの反射防止層3では、図4に示すように、入射光のうちハードコート層2と反射防止層3の界面で反射した界面反射光4を、反射防止層3の表面で反射した表面反射光5と同振幅、逆位相の光に反射防止層3によって変え、表面反射光と干渉することで反射防止を実現している。
【0009】
一方、フィルム裏面側ではフィルムと屈折率の異なる物質とが隣接しており、下記の(1)式より求められるように反射率が高くなり、フィルム裏面と屈折率の異なる物質の境界面での反射光の強度が高くなる。ここでAはフィルムの屈折率、Bはフィルムの裏面側に接する物質の屈折率である。
反射率=(屈折率A―屈折率B)/(屈折率A+屈折率B)・・・・(1)
【0010】
即ち、フィルム裏面からの反射光に比べ反射防止層からの反射光の強度は弱いために、不良による反射光の変化そのものは、フィルム裏面からの反射光に埋もれてしまうほど小さい。例えば、塗工された塗液の膜厚変動や、異物やキズやコスレなどの欠陥が原因となって起こる上記反射光の変化を、熟練者によって目視確認して検査することは容易ではなく、従って自動検査することが望まれているが、上記欠陥は一般的にコントラストが低く、該欠陥を欠陥検査機で抽出しようとした場合に、ノイズ成分に埋もれてしまい、一般的に欠陥を抽出するために閾値を設定すると、欠陥ではない箇所を擬似欠陥として抽出してしまい、一般的に用いられている画像処理によって欠陥を検査することは難しい。
【0011】
言い換えれば、上記の図3に示すように、高コントラストの欠陥31の場合には2値化処理によって欠陥を抽出することが出来るが、低コントラストの場合には欠陥は明暗の差が低く、ノイズ成分に埋もれてしまい低コントラストの欠陥だけをある閾値によって2値化を行っても抽出することが出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−25005号公報
【特許文献2】特開2005−62119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記低コントラストの欠陥を検出するには、フィルム裏面の反射率を低減させ欠陥検出をし易くすればよい。即ち、図5に示されるように例えばスプレー40を用いて黒色塗料41をフィルム1に塗布する方法がある。この場合、対象フィルムは黒塗装されるため破壊検査となり歩留りの低下、黒塗装材料代などにかかる副資材のロス、検査作業のロス等の問題が挙げられる。
【0014】
上記理由から検査精度、作業効率の向上、コスト削減のため検査の自動化が必要となる。この場合は、検査対象となるフィルムからサンプルを切り出して目視検査する場合や、自動検査機で検出感度を上げて欠陥(擬似欠陥を含む)を検出し、その後、上記自動検査機で検出された欠陥の位置に基づいて、目視で検査する方法がある。このいずれの場合でも、図6で示すように上記切出したサンプルフィルムや自動検査機で欠陥検出した箇所に、黒プレート42を接触させて目視で検査を行う方法があるが、この場合、フィルム1と黒プレート42の間に空気が入り込むことにより、式(1)で示されるようにフィルム裏面反射率が高くなるために、目視検査時に欠陥を見ることが出来ないといった問題がある。
【0015】
上記問題を防ぐために図7に示すように、フィルム1と黒プレート42の間に、フィルムと屈折率の近い薬液43を液張りしてフィルム裏面反射を低減させることによって、目視検査時に欠陥を見やすくすることが出来る。
【0016】
しかしながら、上記フィルム1に薬液43を液張りした場合には次に示す問題点がある
。
【0017】
即ち、目視検査実施時にフィルムに薬液を付着させ、薬液が乾燥しない状態でフィルムを巻き取ると、ローラー内に薬液を巻込んだり、搬送ローラーに薬液が付着して搬送ローラー表面が汚れ、薬液がフィルムに転移してしまう恐れがある。このためフィルムに薬液を付着させた場合は、必ず薬液を乾燥、除去した後にフィルム搬送や巻取りを実施する必要がある。
【0018】
これには、フィルム上に付着させた薬液が乾燥するまでの時間を要してしまい、目視検査時間が増加して作業効率が低下してしまうといった問題点がある。
【0019】
そこで本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、反射防止フィルムの低コントラストの欠陥を容易に検出するために、反射防止フィルムに付着させた薬液を拭取る薬液拭取り装置及び薬液拭取り方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そこで本発明の請求項1に係る発明は、反射防止フィルムの欠陥を検査する場合にフィルムに付着させた薬液を検査後に拭取る装置であって、
土台に設けられ昇降が可能な支柱と、
拭取りヘッドベースと拭取りヘッド中間部材と拭取り部材を順に重ねた構造を有し、前記支柱に支えられた拭取りヘッドと、を備え、
前記拭取りヘッドを薬液が付着したフィルム面に接触させて薬液を拭取ることを特徴とする薬液拭取り装置である。
【0021】
本発明の請求項2に係る発明は、前記拭取りヘッドは前記支柱を昇降する手段によって、薬液を拭取る際に上昇されてフィルムを押し当て、拭取りが終了した後に下降されて押し当てを解除することを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置である。
【0022】
本発明の請求項3に係る発明は、前記拭取りヘッドのフィルムと接する面は湾曲した形状を有することを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置である。
【0023】
本発明の請求項4に係る発明は、前記拭取り部材は多数の通気口を有し、拭取り部材に存在する薬液ガスを前記拭取りヘッドベースと前記拭取りヘッド中間部材を経て、排気することを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置である。
【0024】
本発明の請求項5に係る発明は、前記拭取りヘッド中間部材はクッション性を有する部材であることを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置である。
【0025】
本発明の請求項6に係る発明は、前記拭取り部材は拭取り部材更新手段によって更新されることを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置である。
【0026】
本発明の請求項7に係る発明は、反射防止フィルムの欠陥を検査する場合にフィルムに付着させた薬液を検査後に拭取る方法であって、
土台に設けられ昇降が可能な支柱と、
拭取りヘッドベースと拭取りヘッド中間部材と拭取り部材を順に重ねた構造を有し、前記支柱に支えられた拭取りヘッドと、を備えた薬液拭取り装置を用いて、
前記拭取りヘッドを薬液が付着したフィルム面に接触させてフィルムの全面に付着した薬液を拭取ることを特徴とする薬液拭取り方法である。
【0027】
本発明の請求項8に係る発明は、前記拭取りヘッドをフィルム面に接触させながらフィ
ルムの搬送方向と垂直な方向に移動させて、フィルムの一部に付着した薬液を拭取ることを特徴とする請求項7に記載の薬液拭取り方法である。
【発明の効果】
【0028】
本発明による薬液拭取り装置によれば、フィルムに付着した薬液を拭取ることで、薬液残り等によるフィルム汚れや品質不良を防ぎ、更に、フィルム上に付着した薬液が乾燥するまで待機する必要がなく、生産量、作業効率低下を防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】反射防止フィルムの一例を断面で示す図。
【図2】一般的に用いられている反射防止フィルムの欠陥検査装置の一例を示す概略構成図。
【図3】欠陥の抽出処理を説明するための図。(a−1)は欠陥部が含まれる撮像画像を示す図。(a−2)は撮像画像内に示される線分の画像信号を示す図。(b−1)は(a−1)に示される撮像画像を予め設定した閾値で二値化処理した図。(b−2)は(a−2)に示される画像信号を二値化処理した図。
【図4】反射防止フィルムの反射防止層による反射防止を実現する働きを説明する図。
【図5】スプレーを用いて黒色塗料をフィルムに塗布する場合を示す図。
【図6】黒プレートを接触させて目視検査を行う方法を示す図。
【図7】フィルムと黒プレートの間に、フィルムと屈折率の近い薬液を液張りする方法を示す図。
【図8】本発明に係る薬液拭取り装置の一例を示す概要図。
【図9】薬液拭取り装置を正面から見た図。
【図10】本発明に係る拭取りヘッドの一例を詳細に示す図。
【図11】図10とは別の拭取りヘッド50cの一例を詳細に示した図。(a)は拭き取りヘッド中間部材を説明するための図。(b)は拭き取りヘッド中間部材が変形したことを示す図。
【図12】拭取り部材を更新する手段を示す図。
【図13】本発明に係る薬液拭取り装置の適用例(1)を示す図。
【図14】(a)は本発明に係る薬液拭取り装置の適用例(2)を示す図。(b)は薬液拭取り装置と黒プレートを詳細に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明に係る薬液拭取り装置を実施するための形態を説明する。
【0031】
図8は本発明に係る薬液拭取り装置の一例を示す概要図である。薬液拭取り装置50は、矢印52で示される方向に回転する巻き取りロールで巻き取られ、矢印53で示す方向に搬送されるフィルム51の全幅の拭取りが可能で、フィルム51に接触させることで薬液の拭取りを行う。51aは、薬液が拭取られた部分のフィルム、51bは、これから薬液が拭取られる部分のフィルムを示す。
【0032】
図9は薬液拭取り装置50を正面から見た図で、土台50aと、土台50aに設けられ昇降が可能な支柱50bと、支柱50bに支えられた拭取りヘッド50cと、を備えている。拭取りヘッド50cは拭取りヘッドベース50c−1と拭取りヘッド中間部材50c−2と、拭取り部材50c−3と、で構成されている。支柱50bは図示しないエアシリンダによって昇降する機構を有しており、拭取り時には上昇して拭取りヘッド50cをフィルム51に押し当てて接触させ、非拭取り時には下降して拭取りヘッド50cをフィルム51から離すことが出来る。
【0033】
図10は拭取りヘッド50cの一例を詳細に示した図である。拭取りヘッド50cはフィルム上に付着した薬液を完全に拭取るために、拭取り部の表面(拭取り部材50c−3)とフィルム51が万遍なく接触する必要がある。このため拭取りヘッド50cの先端形状は、拭取り部幅方向に対して湾曲形状となっており、拭取りヘッド50cを支柱50bで上昇させて押し当てることによって、万遍なくフィルム51と拭取りヘッド50cの表面を接触させることが出来、フィルム51上の薬液をムラなく拭取ることができる。また、拭取り部材50c−3と拭取りヘッド中間部材50c−2には拭取り部材50c−3の乾燥性を促進させるために、多数の通気口50c−3aが設けられいる。通気口50c−3aは拭取りヘッドベース50c−1内の図示しない配管に繋がれ、更に排気管60を介して排気ポンプに接続され、拭取り部材50c−3に存在する薬液ガスを排気することが出来る。
【0034】
図11は、図10とは別の拭取りヘッド50cの一例を詳細に示した図である。図11(a)に示される拭取りヘッド50cの拭取りヘッド中間部材50c−2は、クッション性を有する部材であって、図11(b)に示すように拭取りヘッド50cをフィルム51に押し当てた場合には、クッション性を有する拭取りヘッド中間部材50c−2が変形して拭取り部材50c−3が万遍なくフィルム51と接触することが出来る。また、図11に示す拭取り部材50c−3には拭取り部材50c−3の乾燥性を促進させるために、多数の通気口50c−3aが設けられている。クッション性を有した拭取りヘッド中間部材50c−2には多孔質ないしは多数の孔を空けた構造を有する材料を用い、更に、拭取りヘッドベース50c−1内の図示しない配管を設け、排気管60を介して排気ポンプに接続され、拭取り部材50c−3に存在する薬液ガスを排気することが出来る。
【0035】
図12は拭取り部材50c−3を更新する手段を示す図である。薬液の拭取りを繰り返し同じ拭取り部材50c−3で行った場合には、拭取り部材50c−3がぬれて吸水性が低下し、拭取り性が低下してしまうため、拭取り部材50c−3は常に乾燥した状態とすることが望ましい。このため図12に示す拭取り部材50c−3を更新手段である更新機構は、拭取り部材50c−3の側面に拭取り部材50c−3を巻き取るローラー61と、ローラー62で構成されている。更新機構は拭取り動作毎にローラー61もしくはローラー62を矢印63、64で示す方向に回転させて、拭取り部材50c−3を矢印65で示す方向に巻き出しと巻取りを行うことによって、常に拭取り面の拭取り部材50c−3を乾燥したものに更新することができる。
【0036】
ローラーの動作例を説明する。先ず、ローラー61に拭取り部材50c−3を巻き付け、拭取り部材50c−3を這わせてローラー62に拭取り部材50c−3を固定する。次に、ローラー62で拭取り動作毎に拭取り部材50c−3を巻き取ることによって拭取り部材50c−3を乾燥したものに更新する。ローラー62で拭取り部材50c−3の全長を巻き取った後は、上記とは逆に拭取り動作毎にローラー61で拭取り部材50c−3を巻き取る。
【0037】
薬液拭取りを行った後は、ローラー61及びローラー62に拭取り部材50c−3を巻き取りしておくことで、拭取り部材50c−3が乾燥するまでの時間を稼ぐことができる。その結果、乾燥した拭取り部材50c−3を繰返し使用することができ、かつ拭取り部材50c−3の吸水性低下を防ぐことができる。
【0038】
次に、本発明に係る薬液拭取り装置を適用して薬液を拭取る方法を説明する。
【0039】
(適用例1)
図13は本発明に係る薬液拭取り装置の適用例を示す。図13に示す薬液拭取り装置はフィルム51の全面に薬液が塗布された場合に適用されるもので、薬液(フィルムと屈折率の近い薬液)が付着された被検査対象であるフィルム51を矢印52で示される方向に回転する巻き取りロール54で巻き取りながら矢印53で示す方向に搬送し、薬液が付着された部分51bを目視で検査するものである。薬液拭取り装置50は、図9に示す本発明に係る薬液拭取り装置の支柱50bをエアーシリンダで上昇させ、支柱50の先端に設けられた拭取りヘッド50cをフィルム51に押し当て、フィルム51が矢印51で示す方向に搬送されることによって塗布された薬液を拭取るもので、薬液が拭取られたフィルム51aは巻き取りロール54で巻き取られる。
【0040】
(適用例2)
図14は本発明に係る薬液拭取り装置の図13とは別の適用例を示す図である。図14(a)は薬液拭取り装置を適用した場合の外観図を示し、図14(b)は薬液拭取り装置と黒プレートを含む装置56を詳細に示す図である。図14に示す薬液拭取り装置50は、フィルム51上の特定の目視検査対象箇所55a、55b、55cに薬液を付着した場合に適用されるものである。
【0041】
図14(b)に示される薬液拭取り装置50には黒プレート70を移動させるため、矢印57で示すフィルム51の幅方向に対して移動可能な電動アクチュエータ71が設けられている。上記黒テーブルの側面に薬液拭取り装置50を固定して設け、目視検査終了後に、薬液拭取り装置50の支柱50bを矢印58で示す方向に上昇して拭取りヘッド50cをフィルム51に押し当て、その状態で電動アクチュエータ71を用いて薬液拭取り装置50を移動させ、フィルム51上に付着した薬液を拭取る。
【0042】
電動アクチュエータを拭取り動作に用いることで、ある特定の箇所に薬液を付着した場合、薬液付着付近だけをピンポイントで拭取ることができ、薬液が付着していない箇所には拭取り部が接触することはない。
【0043】
以上のように、本発明による薬液拭取り装置によれば、フィルムに付着した薬液を拭取ることで薬液残り等によるフィルム汚れや、品質不良を防ぎ、更に、フィルム上に付着した薬液が乾燥するまで待機する必要がなく、その結果、生産量、作業効率低下を防ぐことが出来る。
【符号の説明】
【0044】
1・・・フィルム(基材)
2・・・ハードコート層
3・・・反射防止層
4・・・界面反射光
5・・・表面反射光
11〜14・・・ローラ
15・・・フィルム
16、17・・・照明光源
18・・・フィルムを搬送する方向を示す矢印
19・・・ラインCCDカメラ
20・・・画像処理装置
21・・・ロータリーエンコーダ
22・・・制御装置
30・・・欠陥部31を含む撮像画像
31・・・欠陥部
31−1・・・欠陥部31の信号
32・・・撮像画像30内の線分
33・・・撮像画像30の線分の画像信号
34・・・閾値
35・・・撮像画像30の二値化画像
36・・・画像信号33二値化処理した信号
37・・・欠陥部31をの信号を示す破線で囲まれた部分
40・・・スプレー
41・・・黒色塗料
42・・・黒プレート
43・・・フィルムと屈折率の近い薬液
50・・・薬液拭取り装置
50a・・・土台
50b・・・支柱
50c・・・拭取りヘッド
50c−1・・・拭取りヘッドベース
50c−2・・・拭取りヘッド中間部材
50c−3・・・拭取り部材
50c−3a・・・通気口
51・・・フィルム
51a・・・薬液が拭取られた部分のフィルム
51b・・・これから薬液が拭取られる部分のフィルム
52・・・巻き取りロールが回転する方向を示す矢印
53・・・フィルムの搬送方向を示す矢印
57・・・黒プレートを移動させる方向を示す矢印
60・・・排気管
61・・・ローラー
62・・・ローラー
63,64・・・ローラー61、ローラー62を回転させる方向を示す矢印
65・・・拭取り部材を巻き出しと巻取りを行う方向を示す矢印
70・・・黒プレート
71・・・電動アクチュエータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射防止フィルムの欠陥を検査する場合にフィルムに付着させた薬液を検査後に拭取る装置であって、
土台に設けられ昇降が可能な支柱と、
拭取りヘッドベースと拭取りヘッド中間部材と拭取り部材を順に重ねた構造を有し、前記支柱に支えられた拭取りヘッドと、を備え、
前記拭取りヘッドを薬液が付着したフィルム面に接触させて薬液を拭取ることを特徴とする薬液拭取り装置。
【請求項2】
前記拭取りヘッドは前記支柱を昇降する手段によって、薬液を拭取る際に上昇されてフィルムを押し当て、拭取りが終了した後に下降されて押し当てを解除することを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置。
【請求項3】
前記拭取りヘッドのフィルムと接する面は湾曲した形状を有することを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置。
【請求項4】
前記拭取り部材は多数の通気口を有し、拭取り部材に存在する薬液ガスを前記拭取りヘッドベースと前記拭取りヘッド中間部材を経て、排気することを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置。
【請求項5】
前記拭取りヘッド中間部材はクッション性を有する部材であることを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置。
【請求項6】
前記拭取り部材は拭取り部材更新手段によって更新されることを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置。
【請求項7】
反射防止フィルムの欠陥を検査する場合にフィルムに付着させた薬液を検査後に拭取る方法であって、
土台に設けられ昇降が可能な支柱と、
拭取りヘッドベースと拭取りヘッド中間部材と拭取り部材を順に重ねた構造を有し、前記支柱に支えられた拭取りヘッドと、を備えた薬液拭取り装置を用いて、
前記拭取りヘッドを薬液が付着したフィルム面に接触させてフィルムの全面に付着した薬液を拭取ることを特徴とする薬液拭取り方法。
【請求項8】
前記拭取りヘッドをフィルム面に接触させながらフィルムの搬送方向と垂直な方向に移動させて、フィルムの一部に付着した薬液を拭取ることを特徴とする請求項7に記載の薬液拭取り方法。
【請求項1】
反射防止フィルムの欠陥を検査する場合にフィルムに付着させた薬液を検査後に拭取る装置であって、
土台に設けられ昇降が可能な支柱と、
拭取りヘッドベースと拭取りヘッド中間部材と拭取り部材を順に重ねた構造を有し、前記支柱に支えられた拭取りヘッドと、を備え、
前記拭取りヘッドを薬液が付着したフィルム面に接触させて薬液を拭取ることを特徴とする薬液拭取り装置。
【請求項2】
前記拭取りヘッドは前記支柱を昇降する手段によって、薬液を拭取る際に上昇されてフィルムを押し当て、拭取りが終了した後に下降されて押し当てを解除することを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置。
【請求項3】
前記拭取りヘッドのフィルムと接する面は湾曲した形状を有することを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置。
【請求項4】
前記拭取り部材は多数の通気口を有し、拭取り部材に存在する薬液ガスを前記拭取りヘッドベースと前記拭取りヘッド中間部材を経て、排気することを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置。
【請求項5】
前記拭取りヘッド中間部材はクッション性を有する部材であることを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置。
【請求項6】
前記拭取り部材は拭取り部材更新手段によって更新されることを特徴とする請求項1に記載の薬液拭取り装置。
【請求項7】
反射防止フィルムの欠陥を検査する場合にフィルムに付着させた薬液を検査後に拭取る方法であって、
土台に設けられ昇降が可能な支柱と、
拭取りヘッドベースと拭取りヘッド中間部材と拭取り部材を順に重ねた構造を有し、前記支柱に支えられた拭取りヘッドと、を備えた薬液拭取り装置を用いて、
前記拭取りヘッドを薬液が付着したフィルム面に接触させてフィルムの全面に付着した薬液を拭取ることを特徴とする薬液拭取り方法。
【請求項8】
前記拭取りヘッドをフィルム面に接触させながらフィルムの搬送方向と垂直な方向に移動させて、フィルムの一部に付着した薬液を拭取ることを特徴とする請求項7に記載の薬液拭取り方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−225745(P2012−225745A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93030(P2011−93030)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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