説明

薬液散布装置

【課題】薬液を圃場に散布した後に薬液タンク内に残っている残留希釈薬液の量をできる限り少なくして、無駄のないように廃棄薬液量の発生を減らすことができる薬液散布装置を提供すること。
【解決手段】清水を収納した清水専用タンク18と薬液を収納した薬液タンク19とを設け、清水専用タンク18からの清水を圧送する第一ポンプ20で圧送された清水を送り出す第一流路42と薬液タンク19内の薬液を圧送する第二ポンプ34で圧送された薬液を送り出す第二流路27bを設け、第一流路42と第二流路27bを清水と薬液を混合する混合部P1で合流させて希釈薬液を散布する散布ノズル(45a,45b,45c)に送る。また、第一ポンプ20と混合部P1間に設けられ、かつ混合部P1への余水を清水専用タンク18に戻す余水流路40を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車などに装着される薬液散布装置に関し、特にその薬液散布を容易にした構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場で生育中の作物に対して走行しながら薬液(薬剤又は清水散布用のものであるが、これらを本明細書では薬液散布という)を散布する薬液散布作業車が知られている。
【0003】
特許文献1には清水と薬液を混合して得られる希釈薬液を収納した薬液タンクを作業車の後部に積降自在にした構成が開示されている。また、特許文献2には原液と清水を別個のタンクに収納し、これらを第三の薬液タンク内に供給して得た希釈薬液を圃場に散布する作業車が記載されている。
【特許文献1】特開平9−205969号公報
【特許文献2】特開平8−196190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2の発明は共に、走行車体に、薬液と清水を混合したタンクを搭載する散布作業車である。
【0005】
しかしながら、前記従来の散布作業車では、作業後、希釈薬液が残っていると、その希釈薬液を廃棄する無駄が生じる。また圃場作業中、散布作業車がスリップして走行できない状態に陥ると、車重を軽減するべく、スリップ周辺部に希釈薬液を集中して廃棄することとなるため、作物あるいは土壌に過剰な薬液が播かれて、作物に薬害や生育不良を来たすという問題点があった。
【0006】
本発明の課題は、作業車を用いて薬液を圃場などに散布した後に薬液タンク内に残っている残留希釈薬液の量をできる限り少なくし、廃棄薬液量の発生を減らすことができる薬液散布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、清水を収納した清水専用タンク(18)と、薬液を収納した薬液タンク(19)と、前記清水専用タンク(18)からの清水を圧送する第一ポンプ(20)と、前記薬液タンク(19)内の薬液を圧送する第二ポンプ(34)と、前記第一ポンプ(20)で圧送された清水を送り出す第一流路(42)と、前記第二ポンプ(34)で圧送された薬液を送り出す第二流路(27b)と、前記第一及び第二流路を合流させて前記清水と薬液を混合する混合部(P1)と、前記第一ポンプ(20)と混合部(P1)間に設けられ、かつ前記混合部(P1)への余水を前記清水専用タンク(18)に戻す余水流路(40)と、前記混合部(P1)で混合された希釈薬液を散布する散布ノズル(45a,45b,45c)とを設けた薬液散布装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、釈薬液の所定量を圧送する第二ポンプ(34)は、単位時間当たりの希釈薬液圧送量を可変可能な駆動手段(35,37,38)を備えた請求項1記載の薬液散布装置である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記混合部(P1)では、第二流路(27b)の吐出部を流路下手側へ向けて第一流路(42)に合流させた請求項1または請求項2に記載の薬液散布装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、清水専用タンク(18)と薬液タンク(19)を別個に設けたので、前記従来の構成のように希釈薬液を余らせて無駄なコストが生じることもなく、また散布作業車が圃場内でスリップして走行できない状態に陥っても、清水だけを圃場に廃棄することができるので、廃棄薬液による薬害や生育不良を生じることがない。また前記第一ポンプ(20)から送られた余水は、同第一ポンプ(20)と混合部(P1)間に設けられた余水流路(40)を通じて清水専用タンク(18)へ戻されるので、薬液が逆流して第一タンク(18)に流入することがない。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、希釈薬液の濃度を変更することができ、作物の種類や生育状況に応じた散布作業を行うことができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の発明の効果に加えて、第二流路(27)の吐出部が流路下手側に向いているので、例えば散布終了時に第一流路(42)への清水の圧送を停止しても、薬液が第一流路(42)側、即ち清水専用タンク(18)側へ流れ込むことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1に薬液散布装置を前部に取り付けた薬液散布作業車の側面図を示し、図2には薬液散布作業車の正面図を示す。なお、本明細書では薬液散布作業車の前進方向に向かった左右方向をそれぞれ左、右という。
【0014】
薬液散布作業車の車体1は、左右一対の前輪12と後輪13をそれぞれ軸装するアクスルハウジングをローリング自在に支持し、ステアリングハンドル14の回転操作により左右前輪12,12及び左右後輪13,13を操向自在に構成され、共にボンネット15下のエンジン(図示せず)によって伝動走行される。操縦席17の後部から左右両側にわたって囲うように形成された清水タンク18は車体1に対し着脱自在に搭載される。また、清水タンク18内の清水は後述のように使用直前に純薬液と混合される。また、得られた希釈薬液を車体1の前側に設けられる散布ブーム(センタブーム43とサイドブーム44)へ圧送する防除ポンプ(第一ポンプ)20が前記操縦席17の下方に設けられている。
【0015】
また、操縦席17の左側下方に設けられたフロア54から吊り下げ式に設置されたステップ55が設けられている。ステップ55によりオペレータは、安全かつ容易に作業者が操縦席に乗降することができる。
【0016】
前記散布ブーム43,44は、センターブーム43と、このセンターブーム43の両端に折畳可能に連結されるサイドブーム44,44とから構成され、各々薬液噴霧用の噴霧ノズル45(45a、45b)が一定間隔で配置されている。
【0017】
サイドブーム44は固定サイドブーム44aとスライドサイドブーム44bからなり、スライドサイドブーム44bが固定サイドブーム44aの下方に設けられたレール(図示せずに)に沿ってスライド自在に設けられている。
【0018】
また、固定サイドブーム44a及びスライドサイドブーム44bには複数のサイドブームノズル45b、45cが所定間隔で固定して設けられている。
【0019】
次に本実施例の薬液と清水の同時混合式の作業車の薬液散布配管系統について説明する。前記薬液と清水の同時混合方式とは、薬液と清水を散布直前に混合して得られた希釈薬液を圃場に散布する方式である。
【0020】
図3には薬液と清水を同時に混合してセンタブーム43,サイドブーム44及び場合によってサイドブーム44の先端に設けられる左右のノズル45cを有するスライドサイドブーム44bに希釈薬液を供給する薬液散布配管系統の構成を示す。
【0021】
本実施例では、容量500Lの清水タンク18と薬液タンク19とは別個に設けられ、清水タンク18から吐水ホース42を経由して薬液タンク設置部側に向けて給水する。また、前記清水タンク18の出口部の吐水ホース42には給水コック23とサクションフィルタ24が設けられ、該サクションフィルタ24出口部に防除ポンプ20が設けられている。該防除ポンプ20の駆動により吐水ホース42内の清水は薬液との混合部P1に送られる。
【0022】
前記吐水ホース42には上流側から順に安全弁49とエアチャンバー50と流量制御弁51と流量センサ52が設置されている。また安全弁49の圧力設定部と清水タンク18との間に余水ホース40が接続されている。前記吐水ホース42の安全弁49を開いておくと、吐水ホース42内の余分な清水は余水ホース40を経由して清水タンク18に還流される。
【0023】
また、余水ホース40の設置部より上流側の吐水ホース42から分岐して清水タンク18に接続するように攪拌ホース53が設けられている。攪拌ホース53は薬液タンク19を用いないで、清水タンク18に薬液を充填して用いる場合に利用され、防除ポンプ20の清水の吐出圧により、水圧の高い清水が清水タンク18内に還流することで、清水タンク18内の清水と薬液を攪拌することができる。
【0024】
さらにサクションフィルタ24と防除ポンプ20の間の吐水ホース42から分岐した給水ホース22が設けられ、該給水ホース22は薬液タンク19へ清水を送る洗浄用の流路としている。
【0025】
また、薬液タンク19の内部に予め入れられていた純薬液は吐水ホース42からの清水と混合部P1において混合して希釈薬液となり、得られた希釈薬液は混合部P1に接続する薬液ホース27を経由して前記センタブーム43,固定サイドブーム44a及びスライドサイドブーム44bにそれぞれ供給される構成になっている。
【0026】
さらに、前記薬液ホース27より下流側には前記各ブーム43,44a,44bへの希釈薬液の供給量を振り分け、希釈薬液の散布の入切をする噴霧コック31が各ブーム43,44a,44bに対応して並列配置されている。
【0027】
薬液タンク19の上方開口部には薬液供給口56が取り付けられており、該薬液供給口56は給水ホース22からの清水が供給される給水ホース22aに接続しており、給水ホース22aは薬液タンク19の頂部の給水入口に接続した給水ポンプ26付きの給水路22bに接続しているので薬液タンク19内に清水が導入される。
【0028】
また、薬液供給口56の下部にはフィルター56aが設けられているので、該薬液供給口56から薬液タンク19内に導入される清水は前記フィルター56aを通過して薬液タンク19内に入る時に不純物が取り除かれる。また、給水ホース22aと給水ホース22bの間には給水ポンプ26を設けることで、給水中に不純物を濾過しながら薬液タンク19に清水を圧送することができる。
【0029】
給水ホース22と給水ホース22aの接続部には三叉路状の流路を切り替えるコック30が設けられており、該コック30の下流側には薬液タンク19側の給水ホース22aと前記ブーム43,44a,44b側の薬液路27aが設けられている。前記給水ホース22aには薬液タンク19の頂部の給水入口に接続した給水ポンプ26付きの給水路22bが設けられている。
【0030】
また、前記コック30の下流側の薬液路27aは、薬液を送り出す薬液ポンプ34の駆動により薬液タンク19からの薬液を清水と薬液の混合部P1へ供給する流路の一部である。前記薬液ポンプ34は、前記薬液路27aにそれぞれ接続した一対の注射器状のシリンダ33a,33bと、該シリンダ33a,33bで薬液タンク19からの希釈薬液を清水と薬液の混合部P1に圧送する流路27bと一対の注射器状のシリンダ33a,33bにそれぞれ設けられる各ピストン34a,34bおよび該ピストン34a,34bを駆動する駆動ベルト35と、該ベルト35で連動される一対のプーリ37a,37bと、該プーリ37a,37bを駆動する電動モータ38を備えている。
【0031】
前記ピストン34a,34bは駆動ベルト35に固定されており、電動モータ38でプーリ37aが駆動されると駆動ベルト35を介して他方プーリ37bも駆動される。一対のプーリ37a,37bの駆動でピストン34a,34bが交互に作動してシリンダ33a,33b内に薬液路27aから送られてきた薬液を清水と薬液の混合部P1側に送り出すことができる。このときシリンダ33a,33b内を往復運動するピストン34a,34bのストローク量で薬液の供給量が決まり、該ピストン34a,34bのストローク量は電動モータ38の駆動量に応じて容易に調整できる。従って希釈薬液の単位時間当たりの供給量を容易に、しかも正確に調整できる。
【0032】
上記構成からなる薬液散布配管系統の構成により圃場などへの薬液散布および薬液タンク19と薬液ポンプ34の清水による洗浄は次のようにして行われる。
【0033】
まず、圃場などへの薬液散布時には適宜の噴霧コック31を開き、さらに給水ホース22から給水ホース22aと薬液路27aへの清水の流通を遮断するようにコック30を操作する。次いで電動モータ38を作動させると、ピストン34a,34bの駆動により、薬液タンク19からの薬液が矢印A方向に流れ、清水と薬液の混合部P1に向けて流れ込む。清水と薬液の混合部P1には吐水ホース42から防除ポンプ20により圧送される清水が供給されているので、該混合部P1で希釈薬液となり、ブーム43,44a,44bに向けて送られ、適宜のノズル45a〜45cから圃場に散布される。
【0034】
また、薬液タンク19と薬液ポンプ34の清水による洗浄時には噴霧コック31を全て閉じ、給水ポンプ26を作動させておく。また給水ホース22から給水ホース22aと薬液路27aへ清水を流すようにコック30を動かし、防除ポンプ20により圧送される清水を薬液タンク19と薬液ポンプ34に送る。このとき電動モータ38は駆動状態にしておき、薬液タンク19に送られた清水をシリンダ33a,33bにも供給する。そのために清水はシリンダ33a,33b及びその近傍の流路22a,27a,27bにも流れる。こうして前記薬液タンク19と薬液ポンプ34及びその近傍の配管系統内の残留薬液が清水と共に余水ホース40を通って清水タンク18に戻る。この洗浄操作後の清水タンク18内の薬液が若干混じった洗浄清水は廃棄する。
【0035】
このように本実施例は、清水と純薬液の混合を清水のリターン配管である余水ホース40の設置部より下流側で行う配管系統を備えているので、清水タンク18内は常に清水だけの状態を保持することができる。また清水タンク18と薬液タンク19とを別個に作業車に装着しているので、圃場で作業車がスリップして動かなくなったときなどに、清水だけを捨てた後、作業車重量を減らして圃場から脱出することができるなどのメリットがある。
【0036】
また流量制御弁51、流量センサ52などの精密機械の中に純薬液(薬剤)で腐食しやすい部品が含まれていても、流量制御弁51、流量センサ52などの設置部より下流部に清水と薬液との混合部P1があるので薬液に接触することが防止され、前記精密機械の保護ができる。
【0037】
また、薬液散布配管系統を図4に示すような構成にしても良い。
図4によると、清水タンク18と薬液タンク19を別個に設け、該清水タンク18からの給水路(ホース)22に給水コック23を設け、該給水コック23より下流の給水路(ホース)22のサクションフィルタ24の出口部に防除ポンプ20を設ける。該防除ポンプ20の出口部には吐水ホース42を接続し、該吐水ホース42の先端は希釈薬液路27を介して、噴霧コック31の設置部に接続している。前記吐水ホース42と希釈薬液路27の間に上流側から順に安全弁49とエアチャンバー50と流量制御弁51と流量センサ52が設置されている。また安全弁49の圧力設定部の吐水ホース42と清水タンク18との間に余水ホース40が接続されている。前記安全弁49を開いておくと、吐水ホース42内の余分な清水を清水タンク18に還流させることができる。この安全弁49とエアチャンバー50と流量制御弁51が設置された吐水ホース42の部分であって、薬液タンク19から吐水ホース42へ薬液を供給する薬液ホース25の終端部分に第二ポンプ34’が設けられ、第二ポンプ34’は前記安全弁49,エアチャンバー50,流量制御弁51の設置ベース(清水と薬液の混合部P1)に接続している。また、余水ホース40の設置部より上流側の吐水ホース42から分岐して清水タンク18に接続した攪拌ホース53も設けられている。
【0038】
前記混合部P1で清水と混合された希釈薬液は噴霧コック31を経由して前記センタブーム43,固定サイドブーム44a及び左右のスライドサイドブーム44bに希釈薬液を供給する構成になっている。各ブーム43,44a,44bへの希釈薬液の単位時間当たりの供給量は流量制御弁51で調整できる。
【0039】
こうして清水タンク18と薬液タンク19とを別個に設けたので、作業車が圃場内でスリップして走行できなくなっても清水だけを圃場内に廃棄することができる。
【0040】
次の図5,図6に薬液散布作業車のサイドブーム取付構成について説明する。本実施例にはサイドブーム44として長さ約15mのブーム44を作業車の両側面に設置することがあるが、該サイドブーム44を作業車本体から着脱自在とし、さらにサイドブーム44の先端にキャスター61を設ける構成としている。
【0041】
図5には本実施例のサイドブーム44の正面図の一部を示し、キャスター61の設置位置はブーム44の下げ時にノズル45bが地面に接触しない位置に配置する。また、図6(a)にはキャスター61の側面図を示し、図6(b)に図6(a)の矢印A方向からの矢視図を示し、キャスター61はスプリングダンパ60を用いて上下方向に伸縮可能である。センターブーム43に接続する支柱21に設けられたサイドブーム昇降用電動シリンダ29のピストンを伸張することにより、サイドブーム44の先端のキャスター61が地面に接してサイドブーム44の荷重を支えるため、ユーザは1人でサイドブーム44の根元側にある上下シリンダ支点ピン63を抜き、サイドブーム支点44c(図5)を外す操作を行うことができる。また、キャスター61にダンパ60を設けているので前記ピン63を抜くときのサイドブーム44への衝撃荷重を軽減し、更にサイドブーム44の取り外し後の運搬もキャスター61を使用して容易に行うことができる。
【0042】
次に図7に基づいて清水タンク19の着脱方法を示す。
作業車にはバンパー62が車体1に回動可能に設置されている。また前記バンパー62の両側面には平面視で「コ」字状のキャリアー64が設けられていて、該キャリアー64は後バンパー62に対して図示しない固定ピンを差し替えて図7(a)の位置と図7(c)の位置にそれぞれ固定することができる。
【0043】
図7(a)に示すように後バンパー62の後端部を下げるように傾斜させ、清水タンク18を後バンパー62上にもたれ掛けるように斜めに設置する。このとき後バンパー62の後端部とキャリアー64が接地している。
【0044】
次いで図7(b)に示すようにキャリアー64を矢印A方向に持ち上げて、後バンパー62を水平位置にする。このとき図8(a)と図8(b)に後バンパー62と本体の接続部の拡大図を示すが、後バンパー62の前端部両側に設けられたバー65が本体の車のフック1aに係止され、後バンパー62は水平位置に保持される。
【0045】
後バンパーは水平位置に保持されると図7(c)に示すようにキャリアー64の固定ピンを外してキャリアー64を矢印B方向に回動させた後、固定ピンを差し替えて、後バンパーと共に清水タンク18が前方向にスライドするので、作業車の所定位置に清水タンク18を設置することができる。
図7,図8に示す構成により、作業車に清水タンク18を1人で着脱できるようになった。
【0046】
清水タンク18が作業車の所定位置に装着されたら、図9(a)に示すように清水タンク18は車体1へ固定する。車体1に折れ曲がり形状のレバー66と長さ調節可能なターンバックル式フック67を設けておき、清水タンク18の後下端部に設けたキャスター68の回転軸68aに前記フック67を係止可能にしている。
【0047】
図9(b)に示すようにターンバックル式フック67を適切な長さにした後、キャスター68の回転軸68aに前記フック67を係止させ、レバー66を押し下げて、レバー66を後バンパー62に設けられたロックピン62aに係止させることにより、清水タンク18を車体1に対してロックさせることができる。このときターンバックル式フック67のキャスター回転軸68aの係止位置とレバー66の後バンパー62に設けられたロックピン62aへの係止位置が清水タンク18の荷重が車体1の前方および下方向に掛かるようにロックする構成とすると、清水タンク18を安定して車体1上に装着できる。さらに図9に示す構成により清水タンク18を車体1に対して簡単に、短時間で装着することができる効果もある。
【0048】
また、図10(a)の作業車の側面図と図10(b)の作業車の平面図に示すように、シート17の両端(左右)に容量の大きい清水タンク18と清水と薬液の混合用の容量の小さいタンク19を配置した構成を採用しても良い。
【0049】
作業車のシート17の両脇に清水タンク18と清水と薬液の混合液タンク19を配置することにより、土壌の軟弱な場所で作業車本体が沈んだとき清水タンク1の清水を抜けば軟弱な場所から脱出が可能である。
【0050】
従来技術の約500L容量の薬液タンクには、清水と薬液の混合液が入っていたため、作業車本体が軟弱な場所で沈んでも、薬液をその場で廃棄すると作物が枯れるため、薬液を抜くことは不可能であった。しかし、図10に示す構成を採用すると、作業車本体が沈んでも、清水をその場で廃棄することができ、さらに車体上に余裕のスペースができるので、ロータリーカルチを共着することができるようになり、薬液散布と培土作業の両方を交互に行うことができるので作業能率が飛躍的に向上する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、薬液散布用の作業車であり、清水タンクと薬液と清水の混合タンクを別個に備えているので、純薬液を無駄にすることなく、また軟弱な圃場内などで作業車がスリップして走行できなくなっても、清水タンク内の清水を圃場に捨てて脱出できるので、作業性の良い作業車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例の薬液散布用の作業車の側面図である。
【図2】図1の薬液散布用の作業車の正面図である。
【図3】図1の作業車の薬液散布用の配管系を説明する図である。
【図4】本発明の他の実施例の薬液散布用の配管系を説明する図である。
【図5】図1の作業車のサイドブームの本体から取り外した状態を示す正面図である。
【図6】図5のサイドブームの先端部のキャスターの正面図(図6(a))と(図6(a))の矢印A方向から見た矢視図(図6(b))である。
【図7】図1の作業車の清水タンクの本体への装着手順を説明する図である。
【図8】図7の清水タンクの本体への装着手順を示す拡大図である((図8(a))と図8(b))。
【図9】図7の清水タンクの本体への装着手順を示す拡大図である((図9(a))と図9(b))。
【図10】本発明の実施例の薬液散布用の作業車の側面図(図10(a))と平面図(図10(b))である。
【符号の説明】
【0053】
1 車体 1a フック
12 前輪 13 後輪
14 ステアリングハンドル 15 ボンネット
17 操縦席 18 清水タンク
19 薬液タンク 20 防除ポンプ
21 支柱 22 給水路(ホース)
22a 給水路(ホース) 22b 給水路
23 給水コック 24 サクションフィルタ
25 薬液ホース 26 給水ポンプ
27 薬液路(ホース) 27a 薬液路
27b 流路
29 サイドブーム昇降用電動シリンダ
30 コック 31 噴霧コック
33a、33b シリンダ 34、34’ ポンプ
34a、34b ピストン 35 ベルト
37a、37b プーリ 38 電動モータ
40 余水ホース 40a ブーム受け部
41 防除ポンプ 42 吐水ホース
43 センターブーム 44 サイドブーム
44a 固定サイドブーム 44b スライドサイドブーム
44c ブーム支点
45a、45b、45c 噴霧ノズル
49 安全弁 50 エアチャンバー
51 流量制御弁 52 流量センサ
53 攪拌ホース 54 フロア
55 ステップ 56 薬液供給口
60 スプリングダンパ 61 キャスター
62 後バンパー 62a ロックピン
63 ピン 64 キャリアー
65 バー 66 レバー
67 フック 68 キャスター
68a キャスターの回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清水を収納した清水専用タンク(18)と、薬液を収納した薬液タンク(19)と、前記清水専用タンク(18)からの清水を圧送する第一ポンプ(20)と、前記薬液タンク(19)内の薬液を圧送する第二ポンプ(34)と、前記第一ポンプ(20)で圧送された清水を送り出す第一流路(42)と、前記第二ポンプ(34)で圧送された薬液を送り出す第二流路(27b)と、前記第一及び第二流路を合流させて前記清水と薬液を混合する混合部(P1)と、前記第一ポンプ(20)と混合部(P1)間に設けられ、かつ前記混合部(P1)への余水を前記清水専用タンク(18)に戻す余水流路(40)と、前記混合部(P1)で混合された希釈薬液を散布する散布ノズル(45a,45b,45c)とを設けたことを特徴とする薬液散布装置。
【請求項2】
希釈薬液の所定量を圧送する第二ポンプ(34)は、単位時間当たりの希釈薬液圧送量を可変可能な駆動手段(35,37,38)を備えたことを特徴とする請求項1記載の薬液散布装置。
【請求項3】
前記混合部(P1)では、第二流路(27b)の吐出部を流路下手側へ向けて第一流路(42)に合流させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薬液散布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−109775(P2006−109775A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301863(P2004−301863)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】