藻類からバイオディーゼルを生産するする方法、装置およびシステム
本明細書は、藻類の培養および採取する閉鎖系バイオリアクターに関連する方法、装置、組成およびシステムに関する。ある実施形態においては、システムは、種々の層を有するバッグを備え、これら層としては、藻類の培養物を収容しおよび/または藻類の培養物の温度を熱的に調整するために使用する熱的バリヤ層を設ける。このシステムは、システム内で流体を移動させる種々の機構、例えば、ローラー形式の機構を有し、また太陽放射吸収および/または伝導熱もしくは発生熱の放熱および受熱を調整するよう、流体を隔室化して温度調整する。種々の機構を使用して、藻類の採取および処理、および/または藻のオイルをバイオディーゼルおよび他の生成物に変換する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は藻類または/及びその他の水生生物の培養及び採集の方法、組成、機械、そしてシステムに関する。特定の実施態様はバイオ燃料、バイオポリマー、科学的前駆体、または/及び人または動物の食物などの有用な藻類の産物の方法、組成、機械、そしてシステムに関する。その他の実施態様はこのシステムの用途として発電所の排出ガス等の二酸化炭素発生源から二酸化炭素を除去することに関する。
【背景技術】
【0002】
1996年、コロラド州ゴールデンのナショナル・リニューワブル・エナジー・ラボラトリー(National Renewable Energy Laoratory:NREL)は並外れた生産力を有する藻類からのバイオディーゼルの抽出に重点をおいた予算2500万ドル、10年計画の水生動物種プログラムを強制的に放棄させられた。この予算を失う以前に政府の科学者たちは大豆の栽培よりも1エーカーあたり200倍のオイルの生産高を藻類から得られることを示していた。しかしながら、3つの基本的な問題により藻類培養における商品化の可能性を限定されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
その3つの問題とは、[1]1996年当時は石油価格が低かったために競争力がなかった。[2]オイル分に富んだ藻類を外的な環境にさらされた池で培養していたため、侵入する生物による補食や置換から守るのが難しかった。[3]藻類は狭い温度域で最もよくオイルを生産するが、夜空における熱放射、低温日や高温日、過度の太陽光赤外線の照射がNRELの池実験における培養温度を大きく変化させ、妨げとなっていた。
【0004】
本分野において、これらの問題に対処する技術および方法への需要が存在する。そしてそれらの技術および方法により競争力のある価格の藻類培養に基づくバイオディーゼル生産を、 池のモデルより温度の制御が可能な 生物学的に閉じた系で行うことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
特定の実施態様で開示され、請求されている方法、組成、機械、そしてシステムは石油に基ずく製品の価格と同等もしくはより低く設定された価格の藻類の培養液からのバイオディーゼル生産を提供する。この閉じた系での培養、採集は藻類の汚染から生じる諸問題や、藻類を補食する微生物と/または他の外的な生物種から生じる諸問題を著しく軽減する。更に好ましい実施態様において機械は野外環境に設置して作動させ、 環境からの光、温度、天気にさらす。この機械、システム、方法は向上した熱調節を提供し、最適な成長およびオイル生産の温度範囲に対応した温度を維持するように設計されている。このシステムの他の利点は、限界耕作地やトウモロコシ、小麦、大豆、カノーラ、米等の標準的農作物の栽培に適さない土地において構築し、作動することができる点である。
【0006】
開示したバイオリアクターの技術は低いエネルギー消費で藻類の培養を安定化し、どのような規模(スケール)でも実用的である。温度の問題と侵入生物種の問題を安価で解決し、他の技術を付け加えることにより、多くの高品質な製品を藻類から生産することに有用なシステムを我々は作り上げた。また、この藻類は、工業、農業、地方自治体の廃棄物により多くの部分を養っている。いくつかの実施態様では、藻類の培養液は直接動物または人間の食物源となる。例えばスピルリナのような食用の藻類を培養した場合などである。その他の実施態様では、藻類の培養液はエビまたは他の藻類を餌とする二次食物源の成長を支えるために使用される。エビの養殖や他の食用種の水産養殖は従来知られており、よく同定されているクルマエビ(Penaeus japonicus)、ピンクシュリンプ(Penaeus duorarum)、ブラウンシュリンプ(Penaeus aztecus)、ホワイトシュリンプ(Penaeus setiferus)、ウェスタン・ホワイトシュリンプ(Penaeus occidentalis)、バナメイ(Penaeus vannamei)または他のクルマエビ(peneid)種のエビを用いる。当業者には、この開示が限定的なものでなく他の藻類を餌とする食用種の養殖、採集も可能であることが理解されるであろう。
【0007】
ある一つの実施態様としては、バイオディーゼル生産の方法、機械そしてシステムに関する。高オイル株の藻類を閉鎖系で培養し、採集する。藻類は部分的もしくは完全に媒体から分離することができる。この媒体は濾過、滅菌をし、再利用することができる。オイルは藻類の細胞から分離し、よく知られているコンネマン(Connemann)処理のような標準的なエステル交換方法によってディーゼルに加工する。(例:本文参照に全文記載の米国特許第5,354,878号を参照)しかしながら、藻類のオイル産物をディーゼルに変換するための知られているあらゆる方法を使用できると考えられる。
【0008】
他の実施態様では、システム、装置、方法は二酸化炭素汚染の除去、例えば発電所、工場と/または他の二酸化炭素固定発生源の作り出す排気ガスからの除去である。CO2 を例えば、水媒体の中にガスとして閉鎖系バイオリアクターに導入することができる。好ましい実施態様においては、最大ガス交換のため表面積対体積率の高い細かい泡を作り出す有孔ネオプレン膜にCO2 を通過させることができる。更に好ましい実施態様ではガスを水柱の底から導入し、そこにガスの移動方向と逆の方向から水を流し込む。この逆流の処置は又、ガスが水媒体に曝される時間を長くするため、ガス交換を最大化する。更に、CO2 の溶解をより増大させるためには水柱をより長くすることによりガスが媒体に曝される時間を長くすることができる。CO2 は水媒体に溶解しH2CO3となり、これが光合成藻類により「固定」され有機化合物の生産に役立つ。本文中で開示されたシステムと装置を約60平方マイル(半径7.245km[4.5マイル])の表面積に設置した場合、1ギガワットの発電所の放出する炭酸ガスを完全に除去するのに十分なCO2 を固定することが推定されている。同時に二酸化炭素は藻類の成長を支える重要な養分となる。このような設備は藻類脂質と副産物の糖質14,000ガロン/エーカー/年の合計燃料生産と、発電所の生成したCO2 を600万トン/年吸収する。生成されたバイオディーゼル、および藻類の糖質分画を嫌気的に分解して生成したメタン、および潜在的な炭素吸収点数の価値は典型的な石炭や天然ガスの発電所が生成する電気エネルギー価値の倍以上の純利益を生産する。
【0009】
天然の藻類で知られているものは何千種とあり、いずれもバイオディーゼル生産とその他の産物に使用することができるが、一部の態様では単位エーカー当たりのバイオディーゼルの原料生産を更に増大させるために藻類を遺伝子操作することができる。特定の産物を産出させるための藻類の遺伝子組み換えは比較的単純であり当技術分野で周知の技術を用いて行うことができる。しかしながら、ここで開示した低コストの培養、採集、産物抽出方法は遺伝組み換え藻類または非遺伝組み換え藻類に用いることができる。当業者には異なった藻類の株は異なった成長とオイル生産能を示し、異なった条件の下では系が一種類の株を含むか、異なった性質を持つ複数の株を含むか、藻類の株と共生細菌を含む場合があることを理解するであろう。地理的条件、温度感受性、光強度、pH感受性、塩分、水質、養分利用性、季節による気温、光度、藻類から得る所望の最終産物や種々の他の要素に関して最適な藻類の種を用いることができる。
【0010】
開示した閉鎖系バイオリアクターのシステム、方法はいかなるレベルの生産に関しても拡張可能であり、結果として政府のバイオディーゼル燃料のための助成金を予算に組み込まずしても現在の卸売り価格をはるかに下回る価格でのバイオディーゼル原料生産が可能となる。
【0011】
いくつかの実施態様は藻類培養の温度調節のための装置、方法、システムに関する。ある好ましい実施態様においては、閉鎖系バイオリアクターは柔軟性のあるプラスチックのチューブと熱的バリヤで構成されている。チューブと断熱材は多様な素材で構成することができる。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(エチレンナフタラート)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタラート)、ポリオレフィン、ポリブチレン、ポリアクリラート、そしてポリビニリデンクロライド等である。光合成藻類もしくは藻類を餌とする生物の培養に関する実施態様においては、断熱材は好ましくは可視光の透過率が赤と青の波長領域において最低でも50%、好ましくは60%以上、更に好ましくは75%以上、 更に好ましくは90%以上、最も好ましくは約100%を示すものである。他の好ましい実施態様においてはチューブの表面に使用する素材は可視光の透過率が最低でも90%、好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、 更に好ましくは90%以上、最も好ましくは約100%を示すものである。好ましい実施態様ではポリエチレンを使用している。ポリエチレンは超波長黒体放射および赤と青の可視光の両方を透過し、温度調節システムによる水の内熱を夜空に放射し、 媒体が熱的バリヤの上または下のいずに存在していても藻類が可視光を受けることを可能にし、光合成を支えることができる。ポリエチレンは他の種類のプラスチックに比べて室温黒体放射と関連した長波長赤外光の透過率がよい。様々な実施態様において、チューブの表面に紫外線防御素材を薄い層状に塗布し、プラスチックの紫外線による劣化を軽減することができる。その他の実施態様ではチューブの中に赤外線(IR)や紫外線(UV)を可視光線に変換する蛍光色素を組み込んで光合成生物の太陽エネルギー獲得効率を増大させることができる。その様な色素は当技術分野で知られており、例えばグリーンハウスのガラス側面もしくはプラスチック側面を覆うもの、またはUVを可視光の波長に変換する蛍光照明の中で使用されているものがある。(例として、International Conference on Sustainable Greenhouse Systems(Straten et al., eds.)2005中のHemming et al.,2006, Eur . J. Hort. Sci. 71(3); Hemming et al., 参照)
【0012】
チューブの中の熱的バリヤを用いている実施態様においては、藻類を含む含水性の媒体は熱的バリヤの上下いずれに位置していてもよい。低温下においては熱的バリヤの上に位置させることでより多くの太陽放射を受けるので温度を上昇させることができる。高温下では熱的バリヤの下に位置させることで部分的に太陽放射をから遮へいし、それと同時に下にある表面境界層との接触により熱を失わせることができる。その他の実施態様においては閉鎖系バイオリアクターの下にある地面をヒートシンクと/または熱源として使用し、日中は熱を蓄え、夜は放熱するものとして用いることができる。
【0013】
熱的バリヤがチューブの上端に存在するとき、チューブの中の液体は外界への放射熱および伝導性熱の外界への伝達からは遮断されている。しかしながら底面の地面とは密接な熱的接触を持っている。熱的バリヤがチューブ下の方に存在する時、液体は放射または伝導により容易に環境から熱を得る又は環境に対して熱を失いうる。実際には、熱的バリヤは熱的スイッチとして働き、夜、昼、雨、雲、などの適切な環境条件を巧みに利用して熱を得る又は発散することにより液体の温度を制御するために用いるこができる。装置の底部の地面は熱的バリヤが上部に位置している時、地面は熱質量を持つため、密接な熱的接触によりその温度を調節することができる。この熱質量中の熱エネルギーは更に液体の温度を制御するのに用いることができる。寒い夜が予測される時は熱的バリヤを下部に位置させ、日中は最適温度よりも若干高温まで液体が熱することを許す。熱的バリヤの上部の位置への移動はこの正の熱エネルギーを地面の熱質量に転移させる。何サイクルかの液体加熱と地面加熱が起こりうる。その後、熱的バリヤを上部の位置に維持することにより地面の熱質量に転移した熱は寒い夜間に液体に戻され、水温は最適な領域に保たれる。
【0014】
その他、日中が過度に暑いことが予測された場合、夜間は含水性の媒体が若干最適温度を下回るまで熱的バリヤを下部の位置に置き、その後上部の位置に熱的バリヤを上げることで冷却された液体が地面と熱的に接触するため地熱を下げることができる。このサイクルは夜間に何回か繰り返すことができる。次の日中の気温上昇とともに熱的バリヤは上昇し、地面と液体を熱的に接触させることで液体が容認できるような低温に保たれる時間を延長することができる。
【0015】
その他の実施態様は閉鎖系バイオリアクターの中での液体循環と酸素や他の気体の抽出のための装置と方法を含む。好ましい実施態様においては、閉じたチューブの表面を大きなローラーが転がるように配置し袋(バッグ)状のチューブ内の液体を押し進めるようにする。液体を動かすことに加え、溶解していたガスの気泡、例えば光合成生物によって生産された酸素を回収し、酸素による藻類の成長阻害軽減のために系から酸素を除去することができる。ローラーの圧迫はチューブの下端まで到達しないため、ローラーの動きは高速な逆流がローラーの下で局所的に引き起こされ、チューブ内の下側面をこすり洗うことでチューブ側面の密着と生物付着を軽減し、チューブの底に沈んだ生物を再懸濁することができる。同様にしてローラーの前に存在するチューブの上端に堆積したガスの泡とガス/液体の界面はチューブ内の上側面をこすり洗い、バイオフィルム形成を軽減し表面からの光透過を増大させる。このローラーシステムはチューブ中の液体を動かすのに好ましい方法であり、同時に水生生物の成長と分裂を阻害する流体力学的せん断を最小化する。ローラーシステムの他の利点としては、熱的バリヤの下から上に水を回しているときにローラーは浮力熱的バリヤをチューブの底まで動かす低エネルギーメカニズムを提供する。なぜならローラーはチューブ上を前進しながら熱的バリヤを半密閉状態にするからである。
【0016】
シッパー等の回収システムは濃縮されたオイル含有藻類の懸濁液を系から吸い上げるように配置することができる。更に好ましい実施態様においては、バイオリアクター中の流体力学的な流れが例えばバッグの一端のチャンバにおいて「渦巻き」効果を生む。結果的に渦巻きは藻類の濃縮と藻類の含水性媒体からの部分的な分離を起こし、更に効率的な採集、または死細胞や細菌を含む粘液など不要な代謝副産物の除去を可能にする。また、閉鎖系のバイオリアクターに養分を付け足すことと/もしくは老廃物を閉鎖系バイオリアクターから除去するほかのメカニズムも提供することができる。一つ以上のシッパーチューブを操作可能なかたちで渦巻きシステムと連結して装置からの採集および/または装置への養分投入の効率化を図ることができる。
【0017】
いくつかの態様は軸方向渦を誘導する装置に関係しており、藻類の懸濁液をバイオリアクターの最上端まで回転して持ち上げることを可能にする。なぜなら濃い含水性媒体において光合成の為に十分なレベルの光を受け取ることができるのは最上端に位置する部分だけである可能性があるからである。チューブ内の水柱の回転はチューブの上端における光の豊富な環境とチューブの底の暗い領域の間の周期的な移動をもたらす。好ましい実施態様において藻類を含む柔軟性の高いチューブは高さ約12インチである。高い藻類濃度においては、太陽光は懸濁液の上端から1インチの層までしか透過しない。水柱を回転するメカニズムの無い状態では上部1インチに存在する水生生物は太陽光に過度に暴露され、下部11インチに存在する水生生物は太陽光への暴露が不十分となる。好ましい実施態様においては軸方向渦を誘導する装置は以下で述べる内部水流の偏向器(構造化された軸方向流回転体)を含有する。
【0018】
典型的な実施態様においては偏向器はチューブの中に垂直に延びた幅6インチ、長さ12インチの短冊状の柔軟性に富んだプラスチックで中心で2インチ幅になり、一回90°のひねりが入っているものを含む。図17Bの典型的な模式図は短冊を横から見た図となっているため中心の2インチの幅は明らかでない。短冊は例えばチューブの幅に1フィート間隔で配置することができる(四角プロペラ、ピッチ=半径と定義する)。この典型的な図において液体がチューブ構造中を流れるとき、1フィートの幅のチューブ中の藻類は縦方向に3.14フィート周期で螺旋状に前進する。チューブの横幅方向に短冊が並んで列を成しているものを考えると、短冊は交互に時計回りと反時計回りを示す。チューブの縦方向に水柱が動いていく観点からは、一つの 水柱はチューブの全長を時計回りもしくは反時計回りに回転するが、隣接する水柱はそれとは逆向きに回転する。これは隣接する水柱の間に生じる摩擦による乱流を最小化する。短冊の幅、回転の度合い、間隔(短冊の列同士の間隔も含む)を調節することで 高光度領域内外に存在する藻類細胞それぞれの構造化された低摩擦、低ランダム乱流性軸回転を最適化することができる。チューブ内の熱的バリヤを用いている実施態様においては、軸方向渦を誘導する装置を熱的バリヤの片面に設置し、もう一方の面にもう一つ軸方向渦を誘導する装置を設置することができる。軸方向渦を誘導する装置を延ばすことにより乱流は最小化できるので内部の熱的バリヤが使用されているところでは、液体の転流は(好ましくは90%以上は)熱的バリヤの上または下に方向付けられることが期待される。この構成においては軸方向渦を誘導する装置の片方は熱的バリヤとチューブの上端または底の間で折り畳まれており、もう片方は完全に延ばされている。これらの軸方向渦を誘導する装置は0.01インチの厚みを持つポリエチレンが想定されているが、ヒンジのついたプラスチックの構造または方向性のつまみやフープでチューブのバッグの内側や熱的バリヤから突き出ているもので層の間を実際に連絡していない。すべての場合において方向性の要素は軸方向で 隣同士の周期がバッグの流路の高さとほぼ等しい逆回転の流れを作るように配置する。図17A,17Bに軸方向渦を誘導する装置によって誘導された水流のモデルを例示した。
【0019】
いくつかの実施態様において、熱的バリヤの放射率特性は特定の光学特性を有する他の素材との混和により調節することができる。例えば特定の産地からのケイ砂は好ましい光学的特性を有することがあり、熱的バリヤの上面に埋め込むことができる。(例として図10参照)あるいは、ドープガラスまたは特定の光学特性を有するケイ砂またはセラミックタイルも熱的バリヤの上面に埋め込むことができる可能性がある。図11において熱的バリヤの理想的な光学的透過率特性を例示した。現在使用されている熱的バリヤの素材(発砲ポリエチレン)は 光合成光の約60%を透過するが、75%以上の透過率のものを用いることもできる。
【0020】
様々な実施態様は環境条件下での藻類生産のモデリングのための装置と方法に関する。条件の最適化と藻類株選択のための遠隔センサーバイオリアクターの例を図8に示す。
【0021】
以下の図は本明細書の一部を成すものであり、本発明の特定の実施態様を更に具体的に説明するために記載したものである。実施態様は本明細書内に記した詳細な説明に関連する、これら図中の一つ以上を参照することによって、よりよく理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
具体例の説明
本明細書中で特に定義していない用語に関しては一般的な意味に従って用いている。
【0023】
本明細書中で用いられる冠詞「a」,「an」は一つ以上のものを示す場合がある。
【0024】
本明細書中で用いられる「約」は、±10%の誤差を含むことを意味する。例:「約100」とは90〜110までの数のいずれかを示す。
【0025】
オイル増産のための遺伝子組み換え藻類
いくつかの実施態様において、バイオディーゼル生産のために用いる藻類は遺伝子操作(遺伝子組み換え)を行い、1つ以上の単離された塩基配列を含むようにすることができる。この塩基配列はオイル産生の増大、または藻類の培養、成長、採集、利用に有用な他の特徴を提供する。藻類を安定的に形質転換させる方法と用いる塩基の組成は当技術分野では周知であり、本発明の実施にあたってはそのような方法や組成のいずれを用いてもよい。パーティクルガン、エレクトロポレーション、原形質融合、PEGを介した形質転換、DNAコートしたシリコンカーバイドウィスカー、またはウィルスを介した形質転換(本明細書に参考として付記する以下を参照:Sanford et al., 1993, Meth. Enzymol. 217:483-509; Dunahay et al., 1997, Meth. Molec. Biol. 62:503-9; 米国特許第5,270,175号および同第5,661,017号。)
【0026】
例えば、米国特許5,661,017号はクロロフィルCを持つ藻類の形質転換に関する。Bacillariophyceae、Chrysophyceae、Phaeophyceae、Xanthophyceae、Raphidophyceae、Prymnesiophyceae、Cryptophyceae、Cyclotella、Navicula、Cylindrotheca、Phaeodactylum、Amphora、Chaetoceros、Nitzschia 、Thalassiosira などの藻類である。アセチルCoAやカルボキシラーゼなどの用いる塩基の組成も開示している。
【0027】
様々な実施態様において、単離した塩基またはベクター中に選択マーカーを組み込み、形質転換藻類のマーカーとすることができる。用いる選択マーカーはネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、アミノグリコシドアセチルトランスフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、ブレオマイシン結合タンパク質、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ、ブロモキシルニトリラーゼ、グリホサーテ耐性5−エノールピルビルシキマーテ−3,リン酸合成酵素、クリプトプルリン耐性リボソーマルタンパク質S14、エメチン耐性リボソーマルタンパク質S14、スルフォニウレア耐性アセトラクテート合成酵素、イミダゾリオン耐性アセトラクテート合成酵素、ストレプトマイシン耐性16SリボソーマルRNA、スペクチノマイシン耐性16SリボソーマルRNA、エリトロマイシン耐性23SリボソーマルRNAまたはメチルベンジイミダゾール耐性チューブリンを含む。導入遺伝子の発現を促進する制御する制御塩基配列は知られており、C.クリプティカアセチルCoAカルボキシラーゼ5’非翻訳調節制御配列、C.クリプティカアセチルCoAカルボキシラーゼ3’非翻訳調節制御配列、これらの組み合わせ等がある。
【0028】
藻類の分離およびオイル抽出
様々な実施態様において、藻類は媒体から分離することができ、オイルなど藻類の種々の成分を当技術分野で知られているいかなる方法を用いても抽出することができる。例えば藻類は以下に述べるように起立式渦巻装置の循環、採集渦巻き装置と/またはシッパーチューブを利用して部分的に媒体から分離することができる。その他の方法として、大容量の工業用規模の業務用遠心分離器を他の分離方法を補助または代替するために用いることができる。そのような遠心分離器は周知の商業的供給源(例:ドイツのCimbria Sket やIBG Monforts、デンマークのAlfa Laval A/S)から調達することができる。遠心分離、沈殿、と/または濾過はオイルを他の藻類の成分から精製するために用いられることがある。藻類の液体培養からの分離は粘土(例:大きさ2ミクロン未満の粒子)、硫酸アルミニウム、ポリアクリルアミドなどの凝集剤の添加により容易になる。凝集剤の存在下では藻類は単純な重力による沈殿または更に容易に遠心分離によって分離することができる。凝集剤による藻類の分離は、例えば本明細書に参考として付記する米国特許出願公開第20020079270号の中で開示されている。
【0029】
藻類などの細胞を含水性媒体から分離するいかなる方法でも用いることができることが当業者には理解されるであろう。例えば、参考として本明細書に付記した米国特許出願公開第20040121447号および米国特許6,524,486号の中では含水性媒体からの藻類の部分的分離のための接線流濾過手段と装置を開示されている。媒体から藻類を分離する他の方法は、本明細書に参考として付記する米国特許第5,910,254号および米国特許6,524,486号の中で開示されている。他の出版されている藻類分離と/または抽出の方法を用いることもできる。(例:Rose et al., Water Science and Technology 1992, 25:319-327; Smith et al., Northwest Science, 1968, 42:165-171; Moulton et al., Hydrobiologia 1990, 204/205:401-408; Borowitzka et al., Bulletin of Marine Science, 1990, 47:244-252; Honeycutt, Biotechnology and Bioengineering Symp. 1983, 13:567-575参照)。
【0030】
様々な実施態様において、 オイルやその他の成分の分離を容易にするために 藻類を破砕することができる。細胞破砕のための周知のいかなる方法を用いても良く、超音波破砕、フレンチプレス、浸透圧ショック、機械的せん断力、コールドプレス、熱ショック、ローター・スタター破砕機、バルブ型プロセッサー、形状固定式プロセッサー、窒素減圧や他の周知の方法による。(例:GEA Niro Inc., Columbia, MD; Constant Systems Ltd, Daventry, England; Microfluidics, Newtn, MA.)懸濁液中で微細藻類を破裂させる方法は例えば本参照欄収録の米国特許第6,000,551号の中で開示されている。
【0031】
藻類のバイオディーゼルへの転換
光合成産物のバイオディーゼルへの転換の為の様々な方法が当技術分野では知られているが、本発明の実施にあたってはそのような方法のいずれを用いることもできる。例えば藻類を採集し、液体培養から分離し、溶解してオイル分を分離することができる。藻類産生オイルはトルグリセリドを多く含む。このようなオイルはコンネマン(Connemann)処理のような良く知られた方法によりバイオディーゼルに転換することができる。(例えば、本明細書に参考として付記する米国特許5,354,878号参照。)標準的なトランスエステル化処理はトリグリセリドとアルコール(典型的にはメタノール)の間でのアルカリを触媒としたトランスエステル化反応を含む。トリグリセリドの脂肪酸はメタノールに転移し、アルキルエステル(バイオディーゼル)となり、グリセロールを放出する。グリセロールは取り除き、他の目的に用いることができる。
【0032】
好ましい実施態様は、コンネマン(Connemann)処理の使用を伴うことがある(米国特許第5,354,878号)。バッチ反応方法(例:J. Am. Oil Soc. 61:343, 1984)に対し、コンネマン(Connemann)処理は、反応カラム中の反応液の連続的な流れを利用する。この流れはグリセリンの沈殿速度よりも遅く、結果としてバイオディーゼルからの連続的なグリセリンの分離を可能にする。反応液はトランスエステル化過程を完了させるために更に先のカラムを流れていく。残留したメタノール、グリセリン、脂肪酸、触媒は水抽出によって取り除くことができる。コンネマン(Connemann)アーム張力は確立された方法であり、ラプシードオイルのような植物性オイルからバイオディーゼルを生産するのに用いられており、2003年にはドイツで年間100万トンのバイオディーゼルを生産するのに用いられた。(Bockey,”Biodiesel production and marketing in Germany”, www.projectbiobus.com/IOPD_E_RZ.pdf)
【0033】
しかしながら、当業者にはトリグリセリド含有オイルからバイオディーゼルを生産する周知の方法のいずれを用いることもできることが理解されるであろう。例えば本明細書に参考として付記する米国特許第4,695,411号、同5,338,471号、同第5,730,029号、同第6,538,146号、同第6,960,672号の中で開示されている。トランスエステル化を伴わない他の方法も用いることができる。例えば熱分解、ガス化、熱化学的液化の方法がある。(例えば、本明細書に参考として付記する以下を参照:Dote, 1994, Fuel 73: 12; Ginzburg, 1993, Renewable Energy 3: 249-52; Benemann and Oswald, 1996, DOE/PC/93204-T5)
【0034】
他の藻類生産物
いくつかの実施態様においては、開示した方法、組成、装置を動物または人の食用藻類の培養のために用いることができる。例えばスピルリナはプランクトン性の青緑色の藻類でタンパク質、アミノ酸、ビタミンB-12、カルテノイド等の養分に富む。 藻類農園で生産されたスピルリナの人による年間消費量は1000トン以上にものぼる。当業者には、自由生活性の藻類のどの種類でも(食用の藻類のスピルリナ(Spirulina)、ドナリエラ(Dunaliella)、テトラセルミス(Tetraselmis)を含む)特許請求の範囲に記載されているシステムによって育て、採取し、利用することができることは理解できるであろう。(本明細書に参考として付記する米国特許第6,156,561号、同第6,986,323号参照。)
【0035】
特許請求の範囲に記載の方法および装置を用いて他の藻類に基ずく製品を生産することができる。例えば本参照欄収録の米国特許第5,250,427号は藻類のような有機体を生物学的に分解可能なプラスチックに光変換する方法を開示している。このような野生もしくは遺伝子組み換え藻類から有用な製品を生産するためのいかなる方法も用いることができる。
【実施例】
【0036】
具体例
本明細書で請求、開示している方法、組成、装置、およびシステムは、大規模かつ低コストの水生藻類の培養と採集に関する。本技術は様々な藻類の提供する製品の工業生産を支える為に利用することができる。本技術は大量の藻類培養および採集を経済的に支えることができる。開示した装置は本文中ではほとんどの場合「バイオリアクター」、「光バイオリアクター」、「閉鎖系バイオリアクター」、そして/または「バイオリアクター装置」と呼んでいる。他の機械、装置、そして/またはバイオリアクターと併用する技術としては滅菌技術、CO2 導入技術、そして/または抽出技術を含むことがある。
【0037】
例1.バイオリアクターシステム
図1はシステム例の概略図である。システム例はバイオリアクター技術、採集技術、滅菌技術、CO2 導入技術、抽出技術、遠隔操作バイオリアクター技術を含む。図1で示されているように、藻類の培養工程は家畜飼育工程から例えば豚の肥料のような栄養素を得ることがある。加工と滅菌後はこのような有機性栄養素は保存、そして/または藻類の成長を支えるために培養液に添加することができる。光合成藻類はCO2 を「固定」し、有機性炭素化合物への変換するため、CO2 源例えば発電所からの排気ガスを培養液に溶解CO2 を添加するのに用いることができる。藻類はCO2 や栄養素はオイルや他の生物学的産物を産生するために用いる。藻類は採集し、オイル、タンパク質、脂質、炭水化物、その他の成分は抽出することができる。バイオディーゼルの生産に用いない有機性成分は飼料、肥料、藻類の成長のための養分、メタン発生器の原料、または他の製品に利用してリサイクルすることができる。 抽出したオイルは加工することができ、例えば低分子量アルコール(メタノールを含むが限定的ではない)とのエステル交換反応によりグリセリン、脂肪酸エステルやほかの産物を生産することができる。脂肪酸はバイオディーゼルの生産に用いることができる。当業者の間で周知のように、エステル交換反応はバッチまたは連続的な過程を通じて起こるので、金属アルコラート、金属水素化物塩、金属炭酸塩、金属酢酸塩、様々な酸やアルカリ、特にナトリウムアルコキシド、ナトリウムヒドロキシドまたはカリウムヒドロキシドなどの触媒を用いることがある。
【0038】
閉鎖系バイオリアクターの産物は以下に限定的でないが、バイオディーゼル、ジェット燃料、火花点火、メタン、バイオポリマー(プラスチック)、ヒトの食料品、飼料、ビタミンや薬などの医薬品、酸素、廃棄流緩和(生成物除去)、排気ガス緩和(例:CO2 の隔離)などを含む。
【0039】
例2.バイオリアクター農場
図2においていくつか特定の実施例を示しており、藻類培養のための閉鎖系バイオリアクターシステムの上空からの図となっている。この例示的な図において藻類の作物は地面に平らに置かれた実質的に水平の透明プラスチックチューブの中で育られており、チューブ内に培養液を流しているため藻類は懸濁液の状態が保たれる。(実質的に水平とは、あるバイオリアクターの下にある地面の勾配は約2.54mm(約1インチ)に等しいので混合の行動、水流、そしてプラスチックチューブからのストレスは全体的にチューブ内で一定である、ということである。しかし当業者は段階状になった配置にすることで個別のバイオリアクターを大量に並列に並べ、系の低いところから高いところへ液体を汲み上げることができる事に気づくであろう。)好ましい実施例においては節約のためチューブの壁は薄く、水が満杯に入った状態で20.32cm〜30.48cm(8〜12インチ)を維持するように側壁によって制限されている。これが藻類を多く含んだ水が回転して、吸収や他の藻類による遮へいの影響により1インチほどしか透過しない赤や青の光合成光にすべての部分が均一に曝露されるためのチューブの厚みとしてほぼ最大値である。チューブの幅は約3.048m〜3.658m(約10〜12フィート)で、長さは約30.48m〜182.88m(約100〜600フィート)である。しかしながら、当業者はこのような寸法は限定的ではなく、他の幅や厚みも用いることができることに気づくであろう。通常、栄養素、適した塩分やミネラル成分、CO2 、太陽光が培養液中には存在している。培養液には所望の最終産物を提供し、バイオリアクター中でよく育つ藻類を選択して種付けしてあるので発育条件が十分である以上繁殖、増殖する。好ましいシステムの概略図である図1を参照すると、バイオリアクターはバイオリアクターに養分を供給し、そこから藻類を採集する全システムの一要素でしかない。
【0040】
図2を再び参照すると、図は一日あたり22710リットル(6000ガロン)のバイオディーゼルを生産可能な比較的小さな農場の見取り図である。1400個の個別のバイオリアクターがシダの葉のように中心の運搬レールと連結されている。当業者は他の配置も可能であることに気づくであろうが、しかし好ましい実施例においては育成する藻類を含むバッグの配列は多かれ少なかれ線形のものが用いられている。
【0041】
例3.閉鎖系バイオリアクター装置
図3A〜Dは、本発明を限定的するものではない閉鎖系バイオリアクター装置の実施例を示している。培養液がほぼ透明な可撓性チューブ(バッグ)に含まれており、以下にその詳細を述べる。バッグの液体内容物はバッグの表面を動く可動式のローラーによって液体を前に押し進めることにより循環させることができる。この限定的でない例において、ローラーはローラーを支持するレールに沿って進み、レール上を走るキャリッジに結合したケーブルによって動かされている。図25に示されたローラー動作システムはローラー運動の推進力を提供する。ここでは示されていない他の実施例においては、バッグの末端にローラーが到達した際、ローラーを回転もしくは上に持ち上げて開始点に戻すことを連続的に楕円を描きながら行うことができる。しかしながら、示した好ましい実施例の中では以下で述べるように2方向に進む事のできるローラーで、端から端まで一方向に進んだ後に逆向きに進み開始点に戻るものを使用している。ローラーシステムは標準的な液体流動のためのポンプと異なり、液体の循環を 共に流体力学によるせん断力の低下を提供する。
【0042】
図3Aは2バッグシステムの例を示しており、それぞれのバッグが動作可能にローラーと係合する。バッグの端部はチャンバに接続し、このチャンバはCO2 気泡発生器、渦巻き装置、各種センサー(例:pH、溶解酸素、誘電率、温度)、熱的バリヤを動かすためのアクチュエータ、水の運搬のためのパイプへの連結部、栄養素と/または藻類のような採取した水生生物を含むことができる。
【0043】
図3Bで示したように、双方向ローラーシステムにおいてチューブは地面に並べられ、ローラーは地面にほぼ平行に動く。しかし、以下に述べるように、チューブの下の地面を掘って窪みを作ることができ、「ベリーパン」状の窪みを裏打ちすることができる。この処理はローラーがチューブの末端に到達し、ベリーパンの上に位置した時にローラーの下を液体が通ることを可能にする。十分に水流が減速した後にローラーは方向を逆に変更し、開始点に戻り結果として装置内に時計回りと反時計回りの水流を交互に作り出す。
【0044】
ローラーは、ある種蠕動ポンプをなし、ただし2つの点において異なる。まず、蠕動的な充満力は液体に作用する重力の平滑化作用によるものであり多くのポンプに見られる弾性の跳ね返りとは異なる。次に、ローラーは完全にチューブを押しつぶすのではなく85%程しかつぶさない。これは以下に述べるようにローラーの前後での水圧の差が比較的高い速度の逆流を引き起こすことを意味する。いくつかの実施態様においてはローラー速度が(そしてそれに応じて水流の速度が)約30.48cm/秒(約1フィート/秒)である。
【0045】
様々な態様において、培養液は光合成藻類を培養するために用いることができる。光合成の間、藻類はCO2 を吸収し、酸素を放出する。ローラーがバッグの上面を転がり進むと共に酸素、他の気体、培養液、藻類はローラーの先に押し進められる。これは藻類をバッグの中で移動させるだけでなく、媒体の混合作用も提供する。ローラーはその前に存在するガスを押し進めることができる。このガスの泡は水の放出した気体、吸収されなかったCO2 、光合成藻類によって産生された酸素の混合物である。ローラーの前に存在するガスポケットは末端のチャンバで回収し、大気に発散するか貯蔵して酸素による光合成阻害を防止する。いくつかの実施例においては、夜の藻類の非光合成期間に藻類の代謝を支持するために酸素を装置に再注入することができる。他の方法としては回収した酸素を発電所にパイプにより運搬し、その燃焼工程の効率を上げることができる。ローラーは藻類の光学的な代謝回転を引き起こし、藻類の光入力を調節することが望まれる。なぜならそのような回転が起こらない場合、藻類は光で飽和するか光に欠乏し、オイルの産生量が低下するからである。
【0046】
図3B〜3Dに示されているように、ローラーはチューブの末端まで到達しない。これはローラー直下で高速の逆流を引き起こし、ローラーの前の液体にかかる圧力がローラーの下での逆流につながっている。この逆流にはいくつかの効果があり、チューブの底をこすり洗うことで生物付着を軽減し、媒体の底に沈殿した藻類や他の水生生物を再建濁する効果を含む。
【0047】
バッグの中に熱的バリヤを加え、熱調節のために液体を上層と下層に隔てることができる。液体の動きの調節され方によって液体は最初に熱的バリヤの上側におけるチューブの上層(図3D)または熱的バリヤの下側におけるチューブの下層(図3C)に分配される。図3Bは隔膜制御法を図示するためにローラーを2つの異なる位置に示してある。液体が上層にあるときは回収された気体ポケットは柔軟性のあるチューブの上壁に押し付けられる(図3D)。ローラーの前の空気と水の界面は柔軟性のあるチューブの上壁をこすり、生物付着を軽減し、チューブの上面からの光透過を維持するようにはたらく。このこすり運動はやや浮遊性のスクラバーディスクの添加により促進されることがある。このスクラバーディスクは直径25.4mm(1インチ)、厚さ6.35mm(1/4インチ)で意図的に液体中を循環させ、ローラーの前に押し出される性質を持つものである。当業者は液体システムの内部をこする為の似たような大きさの固形物を設計してもよい。実際は何千個というこれらのディスクまたは他の固形物がバイオリアクター中に存在することになるが、はっきりと光の透過を減少させるほどの量ではない。それらは採集前にふるいで回収し、浮遊性が十分に低いために前のローラーの起こした水流の伝搬によりローラー前方の気泡スペースに流れ込ませることができる。液体が下層にあるときは熱的バリヤの下側が同様にこすられ、光透過が維持される。
【0048】
図3A,3Bに示したように、装置の中に機械を組み込むことができ、例えばバッグの両端に藻類を採集するもの、気体、栄養素そして/または廃棄物を添加または除去するもの、または他の用途のものがある。好ましい実施態様においては以下に詳細を述べるように、バッグの端において起こる流体力学的液体運動は定在的渦巻き循環の形成を促進するように設計することができ、水生生物の採集、気体、そして/または栄養素の導入、廃棄物除去、または他の目的の為に利用することができる。図3A,3Bの右側は以下に詳細を述べるように、水生生物の採集のための渦巻き装置を示している。
【0049】
実施態様の具体例は長さ19.8m(65フィート)で個々のバイオリアクターバッグが1.32m(52インチ)幅しかない研究用モデルを示している。好ましい製品化規模(スケール)の実施態様においては、一組のバイオリアクターあたり0.15〜0.30エーカーの光合成面積を確保するために2つのバッグのそれぞれが長さ約91.44m(約300フィート0、3.05〜6.10m(10〜20フィート)幅である必要がある。このようなバイオリアクターは一日あたり26.5リットル〜52.99リットル(7〜14ガロン)のバイオディーゼルを生産できるはずである。
【0050】
いくつかの実施態様において、図4と図23の右側に示したようにチューブは上層、内部熱的バリヤ、下層を含むように形成される。図9で開示した他の実施例においては、2バッグの系で、上のバッグと下のバッグが個別に存在し、その間に熱的バリヤがある状態で利用することができる。実際はこのような系は上で述べた1バッグの系と全く同じような挙動を示す。2バッグの系の利点は、端のとじ目の必要性がない可能性があり、構造上の安定性の増大とコスト削減につながる点である。さらに、高放射率層と絶縁体が防水性である必要が無いので素材の選択肢が広がる。そして、熱的バリヤが藻類にさらされることがないのでその素材の生物付着の可能性も無い。最後に、絶縁体と高放射率層はバッグを取り替える際に同時に変える必要がないので更なるコスト削減を提供する。図9はフライアッシュ等から成るバッグと地面の間に置く任意の地ならし層を示しており、1バッグと2バッグの系の両方で用いることができる。フライアッシュは現地の発電所から得ることがでる安価な素材であり、バイオリアクターバッグの下方における植物の成長を抑制する腐食作用を有する。塩を含む他の素材をバッグの下に置くことで成長を抑制することも可能である。上のバッグにネットをかけるかどうかは任意である。
【0051】
例4.含水性媒体の温度調節
図3の例示的な実施態様において、好ましい構造のチューブは高放射率熱絶縁性隔膜(熱的バリヤ)が中心に水平に設置されている。この隔膜の端の数インチはバーで固めることができ、このバーはアクチュエータで操作して上昇させ上のチューブを密閉する、または下降させて下のチューブを密閉することができる。バーには柔軟性の高い一方向弁の密封パッキンが付いており、液体の流入を防ぐ為に熱的バリヤが固定されているときも上層や下層からの液体、気体の流出を許す。これは、隔膜の位置に関わらずローラーが残留した気体や液体をチャンバから押し出すことを可能にする。左手のローラー(図3C)チューブにおける熱的バリヤの下の底部に存在する液体を左手のチャンバに押し出している。その後、液体は右側に再循環し、隔膜が下の位置にあるので熱的バリヤの上に分配され、チューブの上層を満たす。これは隔膜の位置が上層下層間の液体の移動を少ないエネルギー消費で行うことを可能にする例である。この移動の目的は液体の温度調節である。
【0052】
図4においてバイオリアクターの限定的でない温度調節を図示しており、柔軟性の高いチューブの横断面をその長軸方向に見た図である。温度調節の目的は藻類を最適温度の媒体中に保ち、周囲が氷点下の時にチューブが凍り付かないように、また暑い夏の間に加熱してしまわないようにすることである。温度調節の中には、特定の光学的そして/または熱的透過率特性を有するバッグの組成を用いることも含まれる。例えば最も上側のシート(例:0.25mm(0.01インチ)厚の透明ポリエチレン)は光の侵入と熱の出入りを許す。内部の熱的バリヤは熱伝導性の絶縁体の上に赤外線は吸収するが光合成に必要な可視光は透過する柔軟性のあるシートを含むことがある。いくつかの実施態様においては熱的バリヤは柔軟性のある絶縁体のシートと赤外線を吸収するシートが組合わさった複合体を含むものである。絶縁体は例えば厚み12.7mm(1/2インチ<R2>)、または25.4mm(1インチ<R4>)の発泡ポリエチレンを含んでいてもよい。チューブは、上側のシートと組成が普通は同一であるが必ずしも同一でない下側のシートも含む。
【0053】
チューブは柔軟性の高いプラスチック製の2枚(上側、下側)または3枚(上側、熱的バリヤ、下側)の両端を接着することによって作製できる。しかし連続的噴出によりシームレスのチューブを作製する、円柱状のプラスチックシートを熱して吹いて作製する等の他の方法を使用することもできる。地面とチューブの間に物理的、機械的破壊に強い熱伝導性の地面用シートをチューブと地面の間に置くこともできる。地面は処理、または準備をして比較的平滑で熱伝導性があり植物が生えていないようにする。液体の満ちたチューブを物理的に支え、そして/またはチューブ側面から追加的な熱的隔離を提供し、ローラーのキャリッジを追加的に導き支えるために側壁を設けてもよい。
【0054】
図4に図示したような非隔離形式のとき水はチューブの中で熱的バリヤの上に分配され、冷たい(夜の)空気への熱放出または日中に大気性赤外線からの熱吸収を可能にする。この形式は光合成のための可視光の最大吸収を可能にする。熱転移は伝導または伝達、赤外線放出または吸収によって起こりうる。隔離形式では、液体は熱的バリヤの下に分配され、地面の熱質量との接触により液体温度を熱的に安定化している。熱的バリヤは太陽光の赤外線から液体を隔離する。可視光は熱的バリヤを透過して光合成を支えるが、透過効率は100%未満である。夜間には地面との接触は液体を加熱するのに対し、日中は地面との接触は液体を冷却する。いくつかの実施態様において、地面へまたは地面からの熱転移は地面を熱シンクとして熱を供給するか、熱源として熱を取り出すことにより日中、夜間を通じて液温の変化を緩和することに用いることができる。例えば日中に熱を地面に転移させ、夜間に再吸収することによって冬期に液体を温かく保つ、または夜間に地面から熱を転移させ、夏の日中は地面を熱シンクとして用いて液体を冷却することが考えられる。
【0055】
他の実施態様においては発電所の水を用いた能動的な温度調節を用いることができる。 バイオリアクターにおける一部のチューブの下に設置されたプラスチックのマットまで発電所の冷却棟から熱された水を運搬することができる。寒いときにはこの追加的な熱源は凍結を防止する為と/または藻類の最適温度を下回らないようにする為に用いることができる。当業者は多様な熱源、例えば発電所の排気ガス、地熱、貯蔵太陽熱、または他の熱源を用いることができることに気がつくであろう。さらに、暑い季節や高太陽束地域においては蒸発による冷却など効率的なシステムを藻類は加熱しない為に用いることができる。
【0056】
いくつかの実施態様において熱的バリヤの放射率特性は他の特定の光学特性を有する素材の導入により調節することができる。例えば特定の光学特性を有するケイ砂(例:図10参照)、ドープガラス、石英ビーズまたはタイルを熱的バリヤの上層に埋め込むことができる。
【0057】
上述した温度調節機構は藻類の最適温度領域に温度を維持するために非常に有効なメカニズムである。図16にコンピュータでモデル構築した結果の水温を示した。モデル化に当たり、コロラド州フォートコリンズでの2006年1月〜6月の環境条件の下、R4(1インチ厚フォーム)の熱的バリヤと理想的な赤外光吸収層(図11参照)を用いたことを想定した。水温の領域は熱的バリヤありの場合(黒)と無しの場合(グレー)をモデル化した。ここから、春と夏の水温は熱的バリヤありの場合では20°C〜30゜Cの領域で大きく安定化されるが、無しの場合では45゜C以上に到達することもあることがわかる。熱的バリヤは夏の最高温度を最大10゜C低下させる。熱的バリヤは最適温度の領域での効果はより薄い。冬の水生生物生産の為の方法として他にも多様な方法が存在し、例えば熱供給源からの熱の使用(例:発電所の排気ガス)、冬の気温がより温暖な地域での生産、またはヘマトコッカス(Haematococcus)種のような寒冷な気候に耐性のある藻類の使用などが考えられる。
【0058】
例5.渦巻き装置とシッパー
図3の右側に、ある設計の渦巻き装置を示しており、好ましいドゥエルチューブの設計図は図15Aと図15Bに詳細に示している。バイオリアクターの好ましい実施例はこのような渦巻き装置を含むが、装置は限定的でなく、代替の実施態様においては他の方法や培養液から藻類を採集する装置を用いることができる。この渦巻き装置の第一の目的は所望の産物を含む藻類(または他の水生生物)を含有する溶液を抽出することである。第二の目的は培養液から除去すべき成分、例えば粘液やフォームのようなもので主として有害なバクテリアから成るものを抽出することである。密度分離渦巻き装置の使用法としては数多く存在し、光バイオリアクターで育成できる製品の種類に応じた数ほどある。異なる種類または環境または藻類発生段階によって溶液より重い場合と軽い場合が存在し、それらのオイル、炭水化物、ガス胞の濃度、塩濃度や温度によって様々な密度となりうる媒体に依っている。藻類以外の水生生物も密度に応じてこのようにして分離することができる。
【0059】
図15で示したように、チューブの左手側における隔膜の弁のあたり(「流入」と表示)において溶液は1/2の深さに位置する坂の上に乗せられ、結果的に約2の関数として速度が上昇する。その次に溶液は加速コーンを取り囲んで衝突し、その淵から流れ込んでドゥエルチューブ内を通過しチャンバの底間まで到達する。ドゥエルチューブへの落下は渦巻き波運動を誘導し、穴に入っていくにつれて溶液が一層早く回転するようになる。回転の速度と渦巻き装置から結果的に得られる遠心力は穴の面積とバッグの断面積の比、ローラーの速度とチューブの圧迫の比などに比例する。ドゥエルチューブの目的は、溶液が回転を止めて下のチャンバに流れる前にそこに溶液が留まっている間、できるだけ長く溶液の遠心分離力を維持することである。ドゥエルチューブ塩やミネラルを含んだ重い溶液と重いまたは凝集した藻類が回転渦巻き装置の中から外へはじき出されると同時に、ガス胞、低密度の藻類、そして他の低密度の成分は渦巻き装置の中心へと移動する。シッパーチューブは渦巻き装置の中心に位置して(可変の開口部直径でもよい)、特定の産物を多く含む渦巻き装置の中心の内容物を回収する。シッパーチューブはその混合溶液の回転をとめ、スクリュードライブ脱水フィルタまたは高速連続遠心機、またはその両方、もしくは他の抽出脱水装置に溶液を送り出す。産物除去後の栄養素を含む身時はフィルタを通して残留している菌の繁殖を促進するような生物断片を取り除き、紫外線で滅菌し、バイオリアクターに戻すことができる。脱水機は濃縮した藻類や他の産物を回収用ベルトコンベアや他の装置で列状に配置され、多くのバイオリアクターから藻類を回収し中央処理施設にオイル抽出のために大容量を輸送するようなものに移送する。藻類は固まりに分離し、宙をつたってコンベア上に落下する、またはコンベア上に落下した外来生物がバイオリアクター中に侵入して不都合が生じるまたは単一培養株への「感染」がリアクターからリアクターへと伝染することを防ぐための生物腐敗一方向弁を通じてリアクター内に入ることができる。同じく図15Bに示されたほかの構成ではシッパーはドゥエルチューブの内壁に穿孔があり、溶液中の最も密度の高い成分を回収するもから成っていてもよい。例えば藻類が溶液よりも重い部分においてその密度の高い成分はオイルと炭水化物に豊富な藻類かも知れない。
【0060】
渦巻き装置の他の目的は代替的なCO2 注入機構としてはたらくことである。これは渦巻きの装置の底で制御開口部を出た後に外向きに液体が回転しているところで起こる。純粋なCO2 のような気体もしくは発電所、工場、または他の供給源から得られたCO2 豊富な燃焼排気ガスは半径の中心または中央シッパーチューブの開口部のすぐ下に注入される。この位置ではCO2 の泡はヴォルテックスの中心に迫り出すことを妨げられている。なぜならシッパーチューブと水の下向き逆流による抵抗があるからである。しかし浮力と下降流が同時に存在するため、泡がその発生源の開口部から十分に大きく膨らむ時間がある。その大きさは泡の周囲の水流を制限し、加速するので泡は発生源の開口部からせん断され小さい泡となってより遅い水流にのって流されていく。好ましい実施態様においては多くのガスは融合してチューブの上に浮き上がるまでに溶液に吸収される。
【0061】
バイオリアクターが大気から直接CO2 を得るためにはネオプレンインジェクターで空気を水中置換により導入するか、リアクターの上膜から直接の透過により導入する方法がある。いくつかの実施態様においては、チューブの上部内壁に1インチ半径のポケットで、ナトリウムヒドロキシド混合溶液を気体透過性かつ防水性の膜(例えばCO2 透過性が高いことの示されているポリスチレンで構成されるもの)で密封したものを付着させる場合がある。これらのポケットは外気と部分的に接触しているため、空気のCO2 成分を選択的に吸収することができる。そしてポケット上をローラーが通り過ぎるとき、ポケットは物理的に押しつぶされ、上面は密閉されるのでポケット膜の下側に接している水圧よりもポケット内部のCO2 圧は高くなり、ポケット下部から溶液中への急速な膜透過が起こる。この構成においてはポケットの上のシートは気泡が上に乗っていてエアクッションのように見えており、中はナトリウムヒドロキシド混合溶液が含まれており、上下にCO2 透過性の膜を用いている。直接CO2 を得る方法の追加的な態様においては、バイオリアクターの上の膜はオープンセル素材を強化材として用いた複合物で、穴をCO2 透過性かつ吸収性の物質で満たしたものを用いた。これはポリスチレン製のナトリウムヒドロキシドミクロカプセルでもよい。実際はカプセルが大気中からCO2 を吸収し、溶液へ受動的拡散またはローラーが上を通過する時はカプセルを圧縮し加圧拡散によりCO2 を直接放出する。
【0062】
図13において渦巻き装置の例示的モデルが示されている。水はまず第一コントロールハウジングのようなチャンバに入り、加速斜面に衝突して流速が上がり、全溶液深度の途中に位置する棚板の上に移送される。水は加速コーンの上を加速し、ドゥエルチューブの中を流れ、そこで自然と渦巻き流が形成される。ドゥエルチューブの底から流出する水は中央棚板の下に位置するチャンバに流入し、コントロールハウジングから流出する前に上り坂の減速傾斜を通過する。これら傾斜の目的は中央棚板の上に流入または下から流出する際の渦巻き流による破壊的乱流を防ぐために水流の速度徐々に変化させることにある。ドゥエルチューブや加速コーンの詳細は図14に示した。上述したように、制限を受けながら上ら下へ流れる水は、トイレを流した時のように自然と渦巻きを形成する。以下で述べるドゥエルチューブ 、加速コーン、スタターフィンはドゥエルチューブ の中央で渦巻きの形成を容易にして安定化するように設計されている。ドゥエルチューブの長さは懸濁液が求心力下にある時間を増すように設計されており、軽いまたは重い産物を含む藻類や含水性媒体などの成分の密度による分離を最大化する。ドゥエルチューブを取り巻くスタターフィンはドゥエルチューブの中心に渦巻きを固定する中心化力を提供する。これはシッパーチューブを流水中の3.17mm(1/8インチ)という薄い層のみを吸うための的確な位置に配置するにあたって重要である。安定化スタターフィンは渦巻きの周りで乱流フィルタの役割を果たす。この取り付け角度によりコントロールハウジング内の横波は緩和されて渦の位置を乱さず、同時に流入する水のらせん運動は妨害されない。実験条件の下では図13〜14に示した渦巻き装置モデルは安定な渦巻きを形成した。
【0063】
図15Aにおいて渦巻き装置の流体力学を示した。チャンバに流入した水は下の位置に水が流れる穴を中心として設置された加速斜面とコーンに衝突する。これは渦巻き流形成をもたらす。渦巻きは、渦巻き中心化スタターフィンによりその位置に安定化される。液体は渦巻きの下から流出し、チャンバを出る前に減速斜面を通り、結果、チャンバへの比較的定常的な流入と流出速度がもたらされる。いくつかの態様においては(図15B)シッパーチューブやポンプは低密度成分(例:オイル含有藻類)または高密度成分(例:炭水化物含有藻類)を除去するために用いる事ができる。例示的渦巻き装置では一方向の水流が図示されているが、代替的な態様においては、加速減速斜面は水流が両方向に流れていても渦巻きを形成するように、両方向ローラーの系のように調節することができる。
【0064】
加速斜面やコーンの目的は、渦巻き装置の中に液体が加速して流入する際の乱流を最小化することにあり、渦巻き装置の内部では液体は回転しながらさらに加速して求心力を提供する。図13〜15に図示した装置は90ガロン/秒の流量を運搬することのできる実際の規模(スケール)の渦巻き装置は乱流により50ワットの力しか浪費しないことが推定される。上述のように藻類を媒体から分離するため様々な代替法が存在し、そのような方法のいずれを用いてもよい。
【0065】
例6.CO2の取り込み
特定の態様において、CO2 を豊富に含む廃棄ガスは光合成による固定に用いることができると同時に排気ガス中のCO2 成分を削減することで更なる温室効果ガスの蓄積を防ぐ事ができる。このようにして例えば発電所の排気ガスからCO2 を差し引き、残りを藻類の農場へ輸送することができる。
【0066】
図12はCO2 溶解の機構の為の例示的態様である。図は気泡発生器、例えば、多くの小孔のあけられたネオプレン膜で水柱の底に設置されたものを示している。気泡発生器は多くの非常に小さい半径の気泡を発生し、媒体へのCO2 の溶解を促進する。浮力密度に応じて気泡が上昇するのに対して、水柱はローラーや他の液体運搬機構によって形成された流れにそって下に流れる。この逆流が媒体内の気泡の滞留時間を延長し、気体溶解を最大化する。水柱の長さは気体の溶解を更に促進するためにより長くすることができる。以下に述べる例示的な両方向流システムにおいて液体は両方向に選択的に移動し、逆流の機構が両方向の水流で利用できるように中心のしきりの両側に設置された泡発生器を用いることができる(図12A、図12B)。この構成ではCO2 を含む排気ガスは発電所から何マイルも離れたバイオリアクター農場まで運送することができる。この工程の数学的モデルによると、CO2 をパイプ経由でバイオリアクターに運送し、リアクター内でCO2 を取り除くことはエネルギー効率の十分に良い処理である。
【0067】
長いチューブが用いられているところではチューブの両端において補足的な CO2注入機構を提供することが最適となる。0.25m/sで流れている水生生物は7分(105m)毎に追加的CO2 を必要とすると推定される。追加的なCO2 は多様な方法により、例えばガスの気泡、 CO2 で飽和させた水、CO2 の個体状態(例:NaHCO3, Na2CO3など)で導入することができる。
【0068】
例7.ローラー駆動部
図24はローラーの作動器の好ましい態様を示している。ローラーは薄くて軽いチューブでよく、例えばガラスファイバーの繊維状のものが考えられる。他にはローラーはステンレス金属や他の重金属であってもよい。いずれの場合においてもローラーはその下に設置する水の体積と相殺するほどの重さが必要である。ほとんどの場合においてこれは、安価での製造、運搬が可能な薄い軽い円柱を製造し、設置してからその内部に十分が水や砂や他の材料を詰めて適当な重量を与えることによって達成される。ローラーは2つのサポートローラーとの間に連続した車軸を含むことがある、好ましい実施態様においてはローラーは両側で全く独立して走るか、それらのあいだに差をつける機構が存在している場合がある。これは進行方向に対してローラーが垂直であることがバッグのからまりやシワを防止するために重要である為である。片方のローラーがもう片方よりも先に行っているということや斜めの跡がチューブに付けられたことをセンサーが感知し、作動器の周期を調節することによってローラーが滑らかにバッグの上を転がり、過剰な摩擦やダメージを与えずにすむ。 図25に示すローラーキャリッジシステムの力学的な設計は大きな脱線や温度変化をも保障することができる。
【0069】
3.05〜6.10m(10〜20フィート)の長さのローラーを、逆流、脱線、温度の違い、変動する摩擦などの条件の下で正確に作動させてローラーのゆがみやチューブの斜め方向のシワを防止しねければならない。特定の実施態様においてローラーは何千ポンドもの重量で91.44m(300フィート)もしくはそれ以上の長さのレール上を走らねばならない。図25に示した例示的な系ではスチールドライブケーブルシステムを用いており、低コストで動力伝達系路の慣性力が低い。なぜならケーブルは体積に比例する張力により力を生じているからである。この態様においては繰り込まれた高帯域幅の速度サーボ機構が滑車を作動させローラーを歪みから守っている。
【0070】
上位のマスターサーボ機構の速度コマンドはローラーのそのときの位置と、あるべき位置の差を決定することによって制御装置から得られる。速度のコマンドの最初と2つめの導関数を限定することにより不安定なバイオリアクターのバッグの励起は最小限に押さえられる。いかなる波の振動も強化されず、動力伝達系路のコンプライアンスによる位相のずれたフィードバック信号を誘導しない。なぜなら動力モーターに直接的に連結しているフィードバックセンサーはコンプライアンスの要素から隔離されているからである。一番下のサーボはdV/dtによるフィードフォーワードネットワークにより増加した速度で上のサーボと速度を合わせるようにスレーブされている。スレーブ速度コマンドは運動学的な運搬システムへのスキュー株センサーの出力により合計されオフセットされる。これがローラーを能動的に配列レールに沿った正確な角度の配列に移動させる。スキューの厳密な角度はコントローラにより制御され、ローラー方向特異的な効果の埋め合わせまたは感知されたバイオリアクター内に形成されたしわの修正を行うことができる。コントローラはフィルム(バイオリアクターチューブ)レベルのセンサーによって感知されたローラーの前後の流体静力学的な圧力差を用いてローラーの速度を調整して一定の前方圧力を保つことができる。キャリッジシステムは運動学的機械設計による。これはローラーレールの間の幅やローラーの長さを広げる方向に変化させてもキャリッジシステムを圧迫しないことが前提である。これはさらにローラーの垂直性が一台のキャリッジのみによって制限され、それ故その先で正確に測定することが出来、結果を滞積したスキューを相殺するように作動システムを微分的に制御する為に利用することができることを意味している。
【0071】
例8.チューブコーティング
藻類の付着によりプラスチックの内層への生物付着の防止または遅延のための技術は重要である。なぜならあまり頻繁にバッグを変える必要性がある場合、この工程の経済的消耗となってしまう。生物付着の防御の為の数多くの手法が世界的に発達段階にあるが、ナノスケールで見ると非常に尖っているナノ単位のざらつきのある疎水性の表面ものはひとつの選択肢である。
(www.awibremerhaven.de/TT/anitibiofouling/index-e.html参照)バイオリアクター用の生物付着耐性の内壁を作成する非常に安価な一つの方法は、フロック加工の技術を用いてポリエチレン繊維の先を静電的に表面に埋め込むもので、半径1〜2ミクロン、10〜20ミクロンの長さのポリエチレン繊維を冷める途中のポリエチレンの繊維を、プラスチックを伸ばして作ったフィルムの泡が環状のノズルから放出される時にそこに埋没させる方法である。(例として
www.bfp.co.uk/bfindustry/process_plastics_blown_film.cfmを参照してフィルム作成プロセスを、www.swicoflil.com/flock.htmlを参照してフロッキング加工の詳細を理解されたい。)フロッキングの基質が図5に図示されている。他の方法として粘着性もしくは硬化可能な接着剤のコーティングをチューブの内壁に塗付するか、チューブ作成時にプラスチックのフィルムにフロッキングやフッ素への暴露の前に塗付する方法がある。
【0072】
泡の内側のフロッキング加工された表面はフッ素を(空気ではなく)泡の内部に導入することでポリエチレンと反応を起こして疎水性のポリフルオロエチレン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFEに類似したもの)をフロックの両サイドおよび繊維の根元のプラスチックフィルム上に形成することができる。
【0073】
いくつかの態様において2バッグシステムにおいてバッグの片側は完全に黒色であってもよい。藻類は暗所に入ると酸素を消費し、明所に出ると酸素を産生する。日中でも藻類の溶液を任意に暗所と明所を往復させるサイクルを繰り返すことで藻類は溶液中の溶解酸素を吸収し、光合成におけるエネルギー転換反応が促進されるのでオイル生産に有利にはたらく。
【0074】
様々な実施態様においてチューブの上表面は冬の期間に光合成用の光を特に高い経度において光の吸収最大化するように設計されている。例示的なフレネル構造が図29に示されており、チューブの上層の断面図で東西方向にフレネル光を集めるプリズムが赤道に角が向かうかたちで設置されたものが示してある。全体の厚さは0.635mm(0.025インチ)であり、フレネル構造はフィルムを伸ばす工程もしくはローリングの後に形成される。
【0075】
バイオリアクターの中に入るもの全ては種付けする所望の微細物意外は滅菌されていなけれはならない。これを安価で工業的に行うためには連続流オートクレーブを使用する必要性がある(図6)。これは栄養素のみならずバイオリアクター内に戻す全ての液体について行う必要がある。バイオリアクター内に入れる空気のような気体はHEPAによってフィルタし、煙突流は発電所の熱により滅菌されているものとしてよい。バイオリアクター内に戻る液体で透明なものは紫外線技術により滅菌することができる。
【0076】
例9.オイル抽出
オイル抽出そして/または遠心分離の方法と装置を図7に示した。藻類を抽出し、オイル産物を複雑な化学反応なしで取り出すことができる。大きな藻類に関しては藻類をすり粉砕して成分を遠心分離によりオイル、飼料や栄養素となる粉砕藻類の断片、栄養素含有水に分ける。しかしながら藻類は滑り易いので標準的な方法によってすり潰すには困難かもしれない。図7は限定的でない藻類の粉砕法の例を示した。2つのローラーは異なる素材で作られていてもよい。印刷の為のローラーに類似した硬化させた金属の円柱であってよい。もうひとつは正確な金属円柱で0.25mm厚ほどの弾性のあるゴム製のコーティングをしたものであってよい。このコーティングはローラーの表面の小さな凹凸を平らにし、小さな砂などは通過させるが藻類の体を破裂させる程の充分な局所的圧力を提供する。他の採集の方法は様々な種類の回転や震動をするふるいを利用して大きな生物を取り除く。飼料取り扱い業界にはこのような目的のために使用される機械が多く存在し、それを小型化により経済的にして適用することでバイオリアクター一つに一台取り付けることができる。これは一つのバイオリアクターに浸けた機械を他のバイオリアクターに浸けずに済み、感染を防止するという意味において有効である。理想的には藻類が個々のリアクターにとりつけられた構造により採集されるので、藻類をフィルタで取り除いた後の水は同じリアクターに滅菌操作なしで戻すことができる。
【0077】
例10.遠隔操作
図8において条件の最適化と藻類の選択を遠隔操作で行うバイオリアクターの例を示している。この系は遠隔地の偽バイオリアクターで操作によって設置可能な地理的場所の局地的な環境条件に応答するセンサーを用いている。偽リアクターはバイオリアクターのような装置で、濃い藻類培養液と類似した赤外吸収と光吸収特性を有する不活性な液体を含有する。センサーは偽リアクターが結果的に安定化することのできる温度と光合成光を感知する。遠隔感知局は小規模なバイオテクノロジー実験室に設置したリアクターの温度や光条件を操作することができるので、遠隔地の環境を実験室で再現し、藻類の便利な選択ができる。遠隔地の環境アッセイ装置は自然の状態でのバイオリアクターの応答を再現するように設計されている。これはセンサーのみの系と比べてより正確である。なぜなら環境アッセイ装置はバイオリアクターの機能に影響を及ぼす環境的変動要因の全てに暴露されており、偽環境的バイオリアクターでは同等の光の照射と液体温度となるように入力が制限されている。
【0078】
他の例示的なセンサーのみの実施態様では一つ以上の環境モニター局を温度、地表熱伝導率、地表熱容量、湿度、沈殿、太陽光照射、風速などの環境条件をモニターするために設置する。感知した条件は実験室に設置されたバイオリアクター装置に転送され制御された設定において再現することができる。
【0079】
他の水生動物の様々な株をバイオリアクター装置に植菌することができ、その成長と生産性をモニターする。ある生産地における最適な成長そして/または生産性を有する特定の株を最小のコストと最大の効率で同定することができる。
【0080】
例11.バイオリアクターモデルシステムでの藻類培養
図18で示しているように1/5サイズの閉鎖系バイオリアクターを建設した。簡単のために柔軟性のあるバイオリアクターチューブは示していないが、2セットのガードレールの間に置かれ、同程度の高さである。左下にあるのがCO2 注入ハウジングであり右上にあるのが採集用ハウジングである。柔軟性のあるチューブは図24における頂部二つの図形に示したように構成し、0.254mm(0.01インチ)厚のポリエチレン2層と12.7mm(0.5インチ)厚の組み立てポリエチレン熱的バリヤ(Sealed Air Corp., Elmwood Park, NJ)を間に挿入した形になっている。三枚の層は短い熱した棒で機械的圧力をかけることにより熱的インパルス結合により接着した。しかしながら当業者はプラスチックシートを接着する他の方法も存在することを承知であり、例えば熱風接着などを用いることができる。収縮を防ぐために、安定化の為の繊維をプラスチックシートに埋めこむ、または付着させて熱風接着によるチューブの形状が変形しないようにすることもできる。図24には示されていないが、チューブは上述のように、熱的バリヤの上と下に軸方向渦誘導装置を設置したかたちで構成した。完成したチューブは幅4.1フィート、長さ60フィートで、12インチの深さまで水で満たした。媒体はGulliard f/2 medium (Gulliard, 1960, J. Protozool. 7:262-68; Gulliard, 1975, In Smith and Chanley, Eds. Culture of Marine Invertebrate Animals, Plenum Press, New York; Gulliard and Ryther, 1962, Can. J.Microbiol. 8:229-39) に変更を加えたもので、22g/L NaCl, 16g/L 水槽用合成塩(Instant Ocean Aquarium Salt, Aquarium Systems Inc., Mentor, OH),420mg/L NaNO3, 20mg/L NaH2PO4 H2O, 4.36mg/L Na2EDTA, 3.15mg/L FeCl3 6H2O, 180μg/L MnCl2 4H2O, 22μg/L ZnSO4 7H2O, 10μg/L CuSO4 5H2O ,10μg/L CoCl 6H2O, 6.3? 10μg/L Na2MoO4 2H2O, 100μg/L thiamine-HCl, 0.5μg/L biotin, 0.5μg/L ビタミンB12から成る。ドナリエラ・テルチオレクタ(緑藻/Dunaliella tertiolecta)の栄養培養株(テキサス大学、Jerry Brand博士提供)を媒体に植えつけ、藻類は外気と外の気温で培養した。
【0081】
図18は閉鎖系バイオリアクターの例を図示したものである。この場合においては系は2つのバッグを用い、それぞれに個々のローラーをつけた。図18の右上のチャンバがヴォルテックス装置を含有し、左下のチャンバはCO2 発生器を含有するようにした。それぞれのローラーは3層の可撓性のあるチューブ(バッグ)の上を往復し、チューブの先で転回した。よって水は周期的に閉鎖系の中で流れの方向を逆に変えた。
【0082】
図19はローラーのキャリッジとその支持システムの追加的な詳細を示している。この態様では重いゲージのプラスチックの円柱であったローラーは転がるキャリッジの間にマウントし、ローラー側壁の路線上を走らせ、(図26参照)チューブの全長にわたって地面から一定の高さを保つようにキャリッジを支持した。側壁の路線も外側に膨らむことによって伸びすぎてしまう柔軟性のあるチューブを両側から物理的に支持した。また、熱的絶縁を提供し、柔軟性のあるチューブを横から隔離した。支持体は三角型に折り曲げた金属のシートで、高さ12インチ、3×2インチの折り目をつけてバッグの下を支えて地面に食い込ませたものであった。実物大のバイオリアクターにおける他の例示的態様としてコンクリートの側壁で高さ36インチ、4インチ幅で壁の20インチ分が地面に食い込んで安定性を増し、2本のスチール製鉄筋またはケーブルが全長にわたり上方25インチの位置に走っておりローラーが通過するときに動的荷運びのを可能にするものが用いられる。
【0083】
例示的な閉鎖系バイオリアクターの更なる詳細が図20に図示されている。チューブの先端のチャンバにおける中央棚板の四角形の開口部内に入った渦巻き装置を示している。図20はチューブが以下に詳細を述べるフランジ・ガスケットシステムによってチューブが先端のチャンバに接続しているところを示している。渦巻き装置を含むチャンバは以下に詳細を述べる熱的バリヤの上または下に水を送り出す作動器も含んでいた。フラッパー弁は加速と減速斜面に含まれ、弁の端は作動器に連結され、液体運動の方向が逆になった時に斜面の位置を変化させた。(逆の構成では加速斜面は減速斜面となり、逆もまた真なりである。)
【0084】
例示的閉鎖系バイオリアクターは図21で示したようなローラーの設計を用いた。この態様はローラーの方向を許し、チューブの先端でハウジングの上までローラーを持ち上げる機構を必要としなかった。上述のようにローラーは側壁の路線により一定の高さで支持された。路線の長さのほとんど全長にわたって地面は平滑であったが、両端のチャンバのすぐ横にはちいさな路線幅のくぼみがあった。このくぼみは金属の「ベリーパン」によって裏打ちされ、くぼみの形状を画定すると共にバイパス領域にツチが入らないよう防ぐように設計されている。くぼみとベリーパンはチューブ内の含水性媒体をローラーよりも下を流れることを許すものである。流体静力学的圧力により圧力により柔軟性のあるチューブは地面ベリーパンの表面と密着した。含水性媒体はローラーの抵抗なしにローラーの下からチャンバへ流れることができた。この連続的な流れは慣性モーメントや逆向きのローラーの運動による。熱的バリヤやチューブの側壁、チャンバの内容物に対する摩擦力により液体は減速し、最終的に止まった。流速が充分に遅くなった時、ローラー作動器が作動し、ローラーを逆向きに動かせた。片方のローラーがくぼみの上の領域で止まったとき、もう一つのローラーはチューブ内の液体を再び捉えて学向きに流し、系内での藻類の流れの方向を逆流させた。
【0085】
図21は熱的バリヤの上または下に水を送る作動器を示している。示されているように、熱的バリヤの端は固い隔膜となり作動器のセットと連結していた。作動器が上の位置に存在するとき、隔膜は水を熱的バリヤの下に分配し、熱的バリヤと隔膜はチューブの上の方に上昇した。作動器が下の位置に存在していた時は液体は熱的バリヤの上に分配され、熱的バリヤはチューブの底に位置した。
【0086】
例12.渦巻き装置とインフレータブルシール
図23は柔軟性のあるチューブの一端にあるハウジングまたはチャンバに位置する渦巻き装置の追加的な詳細を示している。この図ではチューブをチャンバに接続するバッグシールを通過し水は右側から流入している。熱的バリヤと連結された作動器は同じく右側に示されており、簡単のために隔膜は真ん中の位置に存在している。バッグシールと隔膜作動器の左側においてチャンバに流入する水は他の作動器と連結している加速斜面と衝突する。この作動器は連結している斜面を上または下に動かすことができる。斜面が下に位置するときは右から流入したが斜面と衝突する。水は片側はチャンバの側壁から、もう片側は加速と減速斜面を分離している中央棚板によって側方方向から制限を受ける。水はローラーチューブ運動によって規定される一定の速度で流入する。のぼりの斜面に衝突した際は水柱の高さは12インチの位置から斜面の角度と流速によって決定されるより低い高さまで減少する。水柱の幅は変化せず高さが変わるので、単位時間あたりの一定の流量を維持するためには斜面をのぼる際に流速は増す必要性がある。加速した水は渦巻き装置に衝突し、それは一般的に図13〜15に示されているように構成される。渦巻き装置の中心孔から流入する水は渦を形成し、渦巻きの中心でのオイル含有藻類の濃縮と、そのほかの懸濁液のより大きな成分を渦の外側で分離する。しかしながらいくつかの藻類の成分は溶液よりの藻類を重くすることがあり、このような藻類は図15(B)に示したようにドゥエルチューブの周辺の開口部から回収される。中心孔の中を流れる水はチャンバをはさんで加速斜面の逆側にある減速斜面に衝突する。水は減速し、2つ目の可撓性のあるチューブに入りチャンバを出る。
【0087】
図24は例示的なバッグの構成とシーリングの機構を示す。バッグ(チューブ)は上と下の層が薄い、強度の高い、本質的に透明なプラスチック素材、例えば0.254mm(0.01インチ)厚のポリエチレンのようなもので構成されている。熱的バリヤは12.7mm(0.5インチ)または25.4mm(1.0インチ)厚の低密度ポリフォーム(例:発泡ポリエチレン)この例では薄い層(例:0.089mm[0.0035インチ])で熱的バリヤに藻類が付着しないようにする。熱的バリヤは熱的接着ビーズまたはプラスチック溶接により薄いサイドストリップに接着されていてよい。三層の端は熱的に結合されている。
【0088】
バッグ(チューブ)は図24に図示したようにバッグの先端に挿入した固いシーリングフレームの上に伸ばすことができる。実物大の系においてフレームは20フィート幅で12インチの高さで軸方向に6インチの深さで20フィートの幅の間に周期的に存在する縦方向の支柱によって硬化されていてもよい。硬化した複合体または侵食耐性の金属隔膜とその配列と翻訳の機構をフレームの中に組み込むことが出来る。フレームとその上に伸びているチューブの先端は円形の圧迫されたシールで、チャンバに開いた12インチ×20フィートの穴のなかを裏打ちしているものの中に挿入される。フレームとバッグがチャンバの中に挿入されると、シールは膨らみ、シーリングフレームの内部を圧迫してバッグとフレームをチャンバの中に安定的に保つ。圧力シールは多くの膨張シールチューブを有していてよく、それぞれが個別の空気圧縮機と圧力リークアラームセンサーによって維持されていてもよい。隔膜バーを隔膜に取り付け、それを作動器に連結してもよい。隔膜は上または下にシステム作動器にワイヤーで連結している2位置フィードバック電気水圧作動器により4バー駆動させることができる。他の様々な作動器システム例えば例1の例示的モデルにおいて用いられている一般的な空気圧線形作動器は隔膜を上または下に動かすことに適している。
【0089】
例13.藻類からのバイオディーゼル生産
例11で示されているように藻類は成熟しそのオイル成分の為に採集される。例12で描写された渦巻き装置が部分的に藻類を分離するために用いられる。藻類の細胞壁は高いせん動力を有する機械の中を通過させることにより粉砕することができる。オイルは他の藻類成分から市販の遠心分離機により分離される。オイルはコンネマン(Connemann)処理のアルカリ塩触媒のエステル交換反応によりバイオディーゼルに変換される。
20フィート×300フィートバイオリアクターチューブを2つ有するバイオリアクターは年に2800ガロンのバイオディーゼルを生産する。
【0090】
例14.バイオリアクター制御装置
いくつかの態様においては中央処理部局、例えばコンピュータコントローラにより全てのバイオリアクターの機能を制御することができる。コントローラはバイオリアクター中の様々なセンサーや作動器と操作可能なかたちで組み居合わせることが出来る。コンピュータはバイオリアクターの全ての機能、例えばローラーの運動と配置、水流、渦巻き操作、藻類や栄養素の採集、装置への液体入力、着たい除去、CO2 注入などを統合することができる。
【0091】
例示的な操作周期が図27に図示されている。ディスカッションでは簡単のために方向を明示しているが、実際に使用するときは現地の地理や太陽の位置、温度などにより装置を様々な方向に並べることができる。図27に図示されているようにローラーHとIは最初はベリーパンの上でチューブの先端に位置している。フラッパー弁Jは上の位置にあり、南方向に流れる水は渦巻き装置の最低棚板から流出し、北方向に流れる水が渦巻き装置の上の棚板の上へ分配されるようにフラッパー弁Kは下の位置に存在する。図28Aに示されているようにローラーHがコントローラにより1フィート/秒の一定の速度で南方向に進むように指令されるところから始まる。動くとローラーHの前方のチューブR内で圧力が高まり、藻類の含水性媒体(水)が南方向へと動き始め、西へ向かいCO2 ハウジングBを通過し、北へ向かいチューブSを通過し、停止しているローラーIのしたをくぐってベリーパンチャネルを通る。水がフラッパー弁Kを介して上に向かい棚板Aの上に至ると渦巻き装置Nの中へと回転を始め、渦をまいて最低棚板まで流れフラッパー弁Jを通って膨張し、ローラーHの後ろから再度流入を始める。
【0092】
図28はローラーHがチューブRを完全に横断しきって渦巻き装置ハウジングで停止しているところを図示している。両方のローラーがベリーパンの上に位置しているため、液体は慣性により、示した方向に動き続けることができる。遅延無くローラーIはコントローラによって北方向へ動くように命令される。これが時計回りの水流を持続し、水はCO2 ハウジングBを通過して戻り、ローラーHのしたをくぐってベリーパンチャネルを通る。ローラーIが最終的に渦巻き装置ハウジングに到達した時、貯まったモーメントの為に動き続ける水以外のすべての動きは停止し、水も摩擦によりしだいに運動が低下しほとんどゼロとなる。
【0093】
この時点では液体の循環方向は逆になっている。まずフラッパーJが下の位置に設置され、反時計回りの逆流がまず上の棚板へ流入し、フラッパーKは上の位置に設置され励起している下の棚板の水はバイオリアクターチューブの高さの限度まで膨張する。ローラーIがコンピュータの制御の下南に動き始め、反時計回りの運動を始めるために水を前に押し出す。チューブSの終わりで停止した後、ローラーHはすぐに北方向に動き始め、圧力の先端と最大流量の動きを渦巻き装置に向かわせる。チューブRの終わりでローラーHが止まると、液体はそれ自体のモーメントの為に動き続け、摩擦によりしだいに運動が低下しほとんどゼロとなる。これが達成されると、図28で示したようにコントローラは連続的な時計回りの水流を開始させ、定常的な繰り返し運動を再開させる。この運動は実行するのに安価であるばかりでなく、ローラーの方向変換の際に重いローラーを水から持ち上げる必要性がなく、水流の逆転によりバイオリアクター内に藻類が定着してしまうような水流のない箇所ができにくい。
【0094】
CO2 注入器は逆流にさらされる気泡注入器のみが延長された気泡停滞時間とCO2吸収量増大を利用するように制御することができる(図12参照)。CO2 の注入量は限定的ではなく、CO2 注入がpHや他のインジケーターによって決定されるように断続的であることが期待される。
【0095】
チューブS用の隔膜はEとFである。チューブR用の隔膜はCとDである。それぞれのチューブ用隔膜は独立に制御されうるが、それぞれの関連するローラーの動きとは調和していなければならない。
【0096】
ローラーがその停止位置を出る際にコントローラは関連している隔膜が上または下の位置に設定されるべきかと決定しなければならない。もし隔膜が上の位置に決定された場合、ローラーの前進に伴い隔膜の下に水が巻き込まれるようにローラーの開始地点の隔膜弁は上に位置せねばならない。チューブの末端の隔膜弁はローラーが進んでいる間は、隔膜のシーリング方がチューブ内からの水の流出を許している以上、上下どちらの位置にあってもよい。しかしながらローラーが止まった際は、チューブの末端の隔膜弁は上に位置せねばならない。
【0097】
隔膜が下に位置することが望ましい場合、ローラー開始地点の隔膜弁は、ローラー運動により水が隔膜の上を通るように下に位置していなければならない。チューブの末端の隔膜弁はローラーが進んでいる間は、上または下のチューブチャンバ内からの自由な水の流出を許すように設計されている以上、上下どちらの位置にあってもよい。しかしながらローラーが止まった際は、チューブの末端の隔膜弁は下に位置せねばならず、さもなければ水が隔膜の下に入りこんで隔膜が浮いて上昇してしまう。
【0098】
「O」はコンピュータと連絡している液体温度センサーであり、感知した温度を藻類のために望ましい温度のセットと比較するものである。天気と日中の時間の条件によってコンピュータが熱的隔膜を上または下の位置に置くことを決定し、ローラーの運動と隔膜弁の運動を連動させる。いくつかの場合においては大気や放射性の環境に対して液体が熱を失うのか得るのかを感知するセンサーを構成してもよい。そのようなセンサーは少量の液体(0.1ガロン/分)を3×3フィート、深さ3インチの地面に置いてあり、実質的に温度がバイオリアクターが乗っている地面と同一のプラスチック製のバッグに通すことにより構築することができる。0.02゜Fの解像度の微分温度感知センサーがセンサーのバッグへの流入時と流出時の温度を測る。液体がバッグを通過する際に温度が増加している場合はコンピュータが隔膜を動かし溶液がバッグの中で冷えすぎている場合は環境にさらし、溶液が温まり過ぎている場合は環境から隔離する。センサーバッグが環境への暴露が溶液を冷やす場合は逆の論理が適用できる。
【0099】
「P」はコンピュータと連絡しているpHセンサーである。液体のpHの値を藻類のために望ましいpHのセットと比較し、最大成長と採集のためのCO2 濃度のインジケーターとするものである。pHが高すぎる場合、コンピュータは適当なCO2 発生器の弁を開き、純粋なCO2 またはCO2 を含む排気ガスを溶液内に導入して炭酸ガスの生成により酸性に傾けpHを下げる。
【0100】
ここで開示、請求した全ての組成、装置、系、そして方法は本開示により再実験をせずに使用、作成することができる。好ましい態様において組成や方法を述べたが、当業者には発明のコンセプト、精神、領域から出ない範囲でこれら組成、装置、系、方法、ステップ、ステップの順番などに変化を付け加えることができることは明らかであろう。特に、化学的または生理学的に関連のある物質はここで示された物質と代えることができ、同一または同等の結果を得ることができる。このような当業者にとって明らかな類似した代替物や変化は添付の特許請求の範囲にて定義した発明のコンセプト、精神、領域の内にあるものと見なす。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】システムの実施形態の線図的説明図である。
【図2】水産養殖農園の実施形態の上空からの説明図である。
【図3】ローラーおよび採取用渦流装置を備えるバイオリアクターの実施例の説明図である。
【図4】熱制御システムの実施形態の説明図である。
【図5】生物付着対策の実施例(ナノコーティング)の説明図である。
【図6】連続流動式高圧加熱滅菌器(オートクレーブ)の説明図である。
【図7】抽出ローラーの実施例の説明図である。
【図8】遠隔操作によるバイオリアクター技術の実施形態を示す説明図である。
【図9】代替案であるバイオリアクターの2バッグシステムの説明図である。
【図10】カリフォルニア州ゴレタ(Goleta)海岸にて採取した砂の放射特性を示すグラフである。
【図11】熱的バリヤのための理想的な材料における透過特性の例を示すグラフである。
【図12】ガス溶解のためのCO2 気泡発生器の実施例の説明図である。
【図13】渦巻き装置の実施例のモデルを示す斜視図図である。
【図14】渦巻き装置の実施例の、ドゥエルチューブ、加速円錐体、固定子フィンを示す更なる詳細図である。
【図15A】渦巻き装置の流体力学的説明図である。
【図15B】シッパーチューブ付きの渦巻き装置の説明図である。
【図16】熱的バリヤ付きおよび熱的バリヤなしの各閉鎖系バイオリアクター内における水温のコンピュータシミュレーションを示すグラフである。
【図17】軸方向渦流誘導装置の実施例によって誘導された水流を示す説明図である。
【図18】1/5スケールの閉鎖系バイオリアクター例のモデルを示す説明図である。
【図19】ローラー、側壁、CO2 気泡発生器を有する端部チャンバの実施例を示す例示的説明図である。
【図20】ローラー、側壁、渦巻き装置を収容する端部チャンバの実施例を示す例示的説明図である。
【図21】双方向ローラーシステムのための水流バイパスの好ましい実施例の説明図である。
【図22】双方向ローラーシステムのための「ベリーパン」の実施例の説明図である。
【図23】渦巻き装置の実施形態の説明図である。
【図24】可撓性チューブの構築と取り付け機構の実施例の説明図である。
【図25】好ましいローラー駆動システムの実施例の説明図である。
【図26】反応バッグの側壁デザインの実施例を示す説明図である。
【図27】バイオリアクター装置における制御システムの実施例の説明図である。
【図28】制御サイクルの実施例の説明図である。
【図29】チューブ表面のフレネルパターンの実施例を示す説明図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は藻類または/及びその他の水生生物の培養及び採集の方法、組成、機械、そしてシステムに関する。特定の実施態様はバイオ燃料、バイオポリマー、科学的前駆体、または/及び人または動物の食物などの有用な藻類の産物の方法、組成、機械、そしてシステムに関する。その他の実施態様はこのシステムの用途として発電所の排出ガス等の二酸化炭素発生源から二酸化炭素を除去することに関する。
【背景技術】
【0002】
1996年、コロラド州ゴールデンのナショナル・リニューワブル・エナジー・ラボラトリー(National Renewable Energy Laoratory:NREL)は並外れた生産力を有する藻類からのバイオディーゼルの抽出に重点をおいた予算2500万ドル、10年計画の水生動物種プログラムを強制的に放棄させられた。この予算を失う以前に政府の科学者たちは大豆の栽培よりも1エーカーあたり200倍のオイルの生産高を藻類から得られることを示していた。しかしながら、3つの基本的な問題により藻類培養における商品化の可能性を限定されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
その3つの問題とは、[1]1996年当時は石油価格が低かったために競争力がなかった。[2]オイル分に富んだ藻類を外的な環境にさらされた池で培養していたため、侵入する生物による補食や置換から守るのが難しかった。[3]藻類は狭い温度域で最もよくオイルを生産するが、夜空における熱放射、低温日や高温日、過度の太陽光赤外線の照射がNRELの池実験における培養温度を大きく変化させ、妨げとなっていた。
【0004】
本分野において、これらの問題に対処する技術および方法への需要が存在する。そしてそれらの技術および方法により競争力のある価格の藻類培養に基づくバイオディーゼル生産を、 池のモデルより温度の制御が可能な 生物学的に閉じた系で行うことが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
特定の実施態様で開示され、請求されている方法、組成、機械、そしてシステムは石油に基ずく製品の価格と同等もしくはより低く設定された価格の藻類の培養液からのバイオディーゼル生産を提供する。この閉じた系での培養、採集は藻類の汚染から生じる諸問題や、藻類を補食する微生物と/または他の外的な生物種から生じる諸問題を著しく軽減する。更に好ましい実施態様において機械は野外環境に設置して作動させ、 環境からの光、温度、天気にさらす。この機械、システム、方法は向上した熱調節を提供し、最適な成長およびオイル生産の温度範囲に対応した温度を維持するように設計されている。このシステムの他の利点は、限界耕作地やトウモロコシ、小麦、大豆、カノーラ、米等の標準的農作物の栽培に適さない土地において構築し、作動することができる点である。
【0006】
開示したバイオリアクターの技術は低いエネルギー消費で藻類の培養を安定化し、どのような規模(スケール)でも実用的である。温度の問題と侵入生物種の問題を安価で解決し、他の技術を付け加えることにより、多くの高品質な製品を藻類から生産することに有用なシステムを我々は作り上げた。また、この藻類は、工業、農業、地方自治体の廃棄物により多くの部分を養っている。いくつかの実施態様では、藻類の培養液は直接動物または人間の食物源となる。例えばスピルリナのような食用の藻類を培養した場合などである。その他の実施態様では、藻類の培養液はエビまたは他の藻類を餌とする二次食物源の成長を支えるために使用される。エビの養殖や他の食用種の水産養殖は従来知られており、よく同定されているクルマエビ(Penaeus japonicus)、ピンクシュリンプ(Penaeus duorarum)、ブラウンシュリンプ(Penaeus aztecus)、ホワイトシュリンプ(Penaeus setiferus)、ウェスタン・ホワイトシュリンプ(Penaeus occidentalis)、バナメイ(Penaeus vannamei)または他のクルマエビ(peneid)種のエビを用いる。当業者には、この開示が限定的なものでなく他の藻類を餌とする食用種の養殖、採集も可能であることが理解されるであろう。
【0007】
ある一つの実施態様としては、バイオディーゼル生産の方法、機械そしてシステムに関する。高オイル株の藻類を閉鎖系で培養し、採集する。藻類は部分的もしくは完全に媒体から分離することができる。この媒体は濾過、滅菌をし、再利用することができる。オイルは藻類の細胞から分離し、よく知られているコンネマン(Connemann)処理のような標準的なエステル交換方法によってディーゼルに加工する。(例:本文参照に全文記載の米国特許第5,354,878号を参照)しかしながら、藻類のオイル産物をディーゼルに変換するための知られているあらゆる方法を使用できると考えられる。
【0008】
他の実施態様では、システム、装置、方法は二酸化炭素汚染の除去、例えば発電所、工場と/または他の二酸化炭素固定発生源の作り出す排気ガスからの除去である。CO2 を例えば、水媒体の中にガスとして閉鎖系バイオリアクターに導入することができる。好ましい実施態様においては、最大ガス交換のため表面積対体積率の高い細かい泡を作り出す有孔ネオプレン膜にCO2 を通過させることができる。更に好ましい実施態様ではガスを水柱の底から導入し、そこにガスの移動方向と逆の方向から水を流し込む。この逆流の処置は又、ガスが水媒体に曝される時間を長くするため、ガス交換を最大化する。更に、CO2 の溶解をより増大させるためには水柱をより長くすることによりガスが媒体に曝される時間を長くすることができる。CO2 は水媒体に溶解しH2CO3となり、これが光合成藻類により「固定」され有機化合物の生産に役立つ。本文中で開示されたシステムと装置を約60平方マイル(半径7.245km[4.5マイル])の表面積に設置した場合、1ギガワットの発電所の放出する炭酸ガスを完全に除去するのに十分なCO2 を固定することが推定されている。同時に二酸化炭素は藻類の成長を支える重要な養分となる。このような設備は藻類脂質と副産物の糖質14,000ガロン/エーカー/年の合計燃料生産と、発電所の生成したCO2 を600万トン/年吸収する。生成されたバイオディーゼル、および藻類の糖質分画を嫌気的に分解して生成したメタン、および潜在的な炭素吸収点数の価値は典型的な石炭や天然ガスの発電所が生成する電気エネルギー価値の倍以上の純利益を生産する。
【0009】
天然の藻類で知られているものは何千種とあり、いずれもバイオディーゼル生産とその他の産物に使用することができるが、一部の態様では単位エーカー当たりのバイオディーゼルの原料生産を更に増大させるために藻類を遺伝子操作することができる。特定の産物を産出させるための藻類の遺伝子組み換えは比較的単純であり当技術分野で周知の技術を用いて行うことができる。しかしながら、ここで開示した低コストの培養、採集、産物抽出方法は遺伝組み換え藻類または非遺伝組み換え藻類に用いることができる。当業者には異なった藻類の株は異なった成長とオイル生産能を示し、異なった条件の下では系が一種類の株を含むか、異なった性質を持つ複数の株を含むか、藻類の株と共生細菌を含む場合があることを理解するであろう。地理的条件、温度感受性、光強度、pH感受性、塩分、水質、養分利用性、季節による気温、光度、藻類から得る所望の最終産物や種々の他の要素に関して最適な藻類の種を用いることができる。
【0010】
開示した閉鎖系バイオリアクターのシステム、方法はいかなるレベルの生産に関しても拡張可能であり、結果として政府のバイオディーゼル燃料のための助成金を予算に組み込まずしても現在の卸売り価格をはるかに下回る価格でのバイオディーゼル原料生産が可能となる。
【0011】
いくつかの実施態様は藻類培養の温度調節のための装置、方法、システムに関する。ある好ましい実施態様においては、閉鎖系バイオリアクターは柔軟性のあるプラスチックのチューブと熱的バリヤで構成されている。チューブと断熱材は多様な素材で構成することができる。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(エチレンナフタラート)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタラート)、ポリオレフィン、ポリブチレン、ポリアクリラート、そしてポリビニリデンクロライド等である。光合成藻類もしくは藻類を餌とする生物の培養に関する実施態様においては、断熱材は好ましくは可視光の透過率が赤と青の波長領域において最低でも50%、好ましくは60%以上、更に好ましくは75%以上、 更に好ましくは90%以上、最も好ましくは約100%を示すものである。他の好ましい実施態様においてはチューブの表面に使用する素材は可視光の透過率が最低でも90%、好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、 更に好ましくは90%以上、最も好ましくは約100%を示すものである。好ましい実施態様ではポリエチレンを使用している。ポリエチレンは超波長黒体放射および赤と青の可視光の両方を透過し、温度調節システムによる水の内熱を夜空に放射し、 媒体が熱的バリヤの上または下のいずに存在していても藻類が可視光を受けることを可能にし、光合成を支えることができる。ポリエチレンは他の種類のプラスチックに比べて室温黒体放射と関連した長波長赤外光の透過率がよい。様々な実施態様において、チューブの表面に紫外線防御素材を薄い層状に塗布し、プラスチックの紫外線による劣化を軽減することができる。その他の実施態様ではチューブの中に赤外線(IR)や紫外線(UV)を可視光線に変換する蛍光色素を組み込んで光合成生物の太陽エネルギー獲得効率を増大させることができる。その様な色素は当技術分野で知られており、例えばグリーンハウスのガラス側面もしくはプラスチック側面を覆うもの、またはUVを可視光の波長に変換する蛍光照明の中で使用されているものがある。(例として、International Conference on Sustainable Greenhouse Systems(Straten et al., eds.)2005中のHemming et al.,2006, Eur . J. Hort. Sci. 71(3); Hemming et al., 参照)
【0012】
チューブの中の熱的バリヤを用いている実施態様においては、藻類を含む含水性の媒体は熱的バリヤの上下いずれに位置していてもよい。低温下においては熱的バリヤの上に位置させることでより多くの太陽放射を受けるので温度を上昇させることができる。高温下では熱的バリヤの下に位置させることで部分的に太陽放射をから遮へいし、それと同時に下にある表面境界層との接触により熱を失わせることができる。その他の実施態様においては閉鎖系バイオリアクターの下にある地面をヒートシンクと/または熱源として使用し、日中は熱を蓄え、夜は放熱するものとして用いることができる。
【0013】
熱的バリヤがチューブの上端に存在するとき、チューブの中の液体は外界への放射熱および伝導性熱の外界への伝達からは遮断されている。しかしながら底面の地面とは密接な熱的接触を持っている。熱的バリヤがチューブ下の方に存在する時、液体は放射または伝導により容易に環境から熱を得る又は環境に対して熱を失いうる。実際には、熱的バリヤは熱的スイッチとして働き、夜、昼、雨、雲、などの適切な環境条件を巧みに利用して熱を得る又は発散することにより液体の温度を制御するために用いるこができる。装置の底部の地面は熱的バリヤが上部に位置している時、地面は熱質量を持つため、密接な熱的接触によりその温度を調節することができる。この熱質量中の熱エネルギーは更に液体の温度を制御するのに用いることができる。寒い夜が予測される時は熱的バリヤを下部に位置させ、日中は最適温度よりも若干高温まで液体が熱することを許す。熱的バリヤの上部の位置への移動はこの正の熱エネルギーを地面の熱質量に転移させる。何サイクルかの液体加熱と地面加熱が起こりうる。その後、熱的バリヤを上部の位置に維持することにより地面の熱質量に転移した熱は寒い夜間に液体に戻され、水温は最適な領域に保たれる。
【0014】
その他、日中が過度に暑いことが予測された場合、夜間は含水性の媒体が若干最適温度を下回るまで熱的バリヤを下部の位置に置き、その後上部の位置に熱的バリヤを上げることで冷却された液体が地面と熱的に接触するため地熱を下げることができる。このサイクルは夜間に何回か繰り返すことができる。次の日中の気温上昇とともに熱的バリヤは上昇し、地面と液体を熱的に接触させることで液体が容認できるような低温に保たれる時間を延長することができる。
【0015】
その他の実施態様は閉鎖系バイオリアクターの中での液体循環と酸素や他の気体の抽出のための装置と方法を含む。好ましい実施態様においては、閉じたチューブの表面を大きなローラーが転がるように配置し袋(バッグ)状のチューブ内の液体を押し進めるようにする。液体を動かすことに加え、溶解していたガスの気泡、例えば光合成生物によって生産された酸素を回収し、酸素による藻類の成長阻害軽減のために系から酸素を除去することができる。ローラーの圧迫はチューブの下端まで到達しないため、ローラーの動きは高速な逆流がローラーの下で局所的に引き起こされ、チューブ内の下側面をこすり洗うことでチューブ側面の密着と生物付着を軽減し、チューブの底に沈んだ生物を再懸濁することができる。同様にしてローラーの前に存在するチューブの上端に堆積したガスの泡とガス/液体の界面はチューブ内の上側面をこすり洗い、バイオフィルム形成を軽減し表面からの光透過を増大させる。このローラーシステムはチューブ中の液体を動かすのに好ましい方法であり、同時に水生生物の成長と分裂を阻害する流体力学的せん断を最小化する。ローラーシステムの他の利点としては、熱的バリヤの下から上に水を回しているときにローラーは浮力熱的バリヤをチューブの底まで動かす低エネルギーメカニズムを提供する。なぜならローラーはチューブ上を前進しながら熱的バリヤを半密閉状態にするからである。
【0016】
シッパー等の回収システムは濃縮されたオイル含有藻類の懸濁液を系から吸い上げるように配置することができる。更に好ましい実施態様においては、バイオリアクター中の流体力学的な流れが例えばバッグの一端のチャンバにおいて「渦巻き」効果を生む。結果的に渦巻きは藻類の濃縮と藻類の含水性媒体からの部分的な分離を起こし、更に効率的な採集、または死細胞や細菌を含む粘液など不要な代謝副産物の除去を可能にする。また、閉鎖系のバイオリアクターに養分を付け足すことと/もしくは老廃物を閉鎖系バイオリアクターから除去するほかのメカニズムも提供することができる。一つ以上のシッパーチューブを操作可能なかたちで渦巻きシステムと連結して装置からの採集および/または装置への養分投入の効率化を図ることができる。
【0017】
いくつかの態様は軸方向渦を誘導する装置に関係しており、藻類の懸濁液をバイオリアクターの最上端まで回転して持ち上げることを可能にする。なぜなら濃い含水性媒体において光合成の為に十分なレベルの光を受け取ることができるのは最上端に位置する部分だけである可能性があるからである。チューブ内の水柱の回転はチューブの上端における光の豊富な環境とチューブの底の暗い領域の間の周期的な移動をもたらす。好ましい実施態様において藻類を含む柔軟性の高いチューブは高さ約12インチである。高い藻類濃度においては、太陽光は懸濁液の上端から1インチの層までしか透過しない。水柱を回転するメカニズムの無い状態では上部1インチに存在する水生生物は太陽光に過度に暴露され、下部11インチに存在する水生生物は太陽光への暴露が不十分となる。好ましい実施態様においては軸方向渦を誘導する装置は以下で述べる内部水流の偏向器(構造化された軸方向流回転体)を含有する。
【0018】
典型的な実施態様においては偏向器はチューブの中に垂直に延びた幅6インチ、長さ12インチの短冊状の柔軟性に富んだプラスチックで中心で2インチ幅になり、一回90°のひねりが入っているものを含む。図17Bの典型的な模式図は短冊を横から見た図となっているため中心の2インチの幅は明らかでない。短冊は例えばチューブの幅に1フィート間隔で配置することができる(四角プロペラ、ピッチ=半径と定義する)。この典型的な図において液体がチューブ構造中を流れるとき、1フィートの幅のチューブ中の藻類は縦方向に3.14フィート周期で螺旋状に前進する。チューブの横幅方向に短冊が並んで列を成しているものを考えると、短冊は交互に時計回りと反時計回りを示す。チューブの縦方向に水柱が動いていく観点からは、一つの 水柱はチューブの全長を時計回りもしくは反時計回りに回転するが、隣接する水柱はそれとは逆向きに回転する。これは隣接する水柱の間に生じる摩擦による乱流を最小化する。短冊の幅、回転の度合い、間隔(短冊の列同士の間隔も含む)を調節することで 高光度領域内外に存在する藻類細胞それぞれの構造化された低摩擦、低ランダム乱流性軸回転を最適化することができる。チューブ内の熱的バリヤを用いている実施態様においては、軸方向渦を誘導する装置を熱的バリヤの片面に設置し、もう一方の面にもう一つ軸方向渦を誘導する装置を設置することができる。軸方向渦を誘導する装置を延ばすことにより乱流は最小化できるので内部の熱的バリヤが使用されているところでは、液体の転流は(好ましくは90%以上は)熱的バリヤの上または下に方向付けられることが期待される。この構成においては軸方向渦を誘導する装置の片方は熱的バリヤとチューブの上端または底の間で折り畳まれており、もう片方は完全に延ばされている。これらの軸方向渦を誘導する装置は0.01インチの厚みを持つポリエチレンが想定されているが、ヒンジのついたプラスチックの構造または方向性のつまみやフープでチューブのバッグの内側や熱的バリヤから突き出ているもので層の間を実際に連絡していない。すべての場合において方向性の要素は軸方向で 隣同士の周期がバッグの流路の高さとほぼ等しい逆回転の流れを作るように配置する。図17A,17Bに軸方向渦を誘導する装置によって誘導された水流のモデルを例示した。
【0019】
いくつかの実施態様において、熱的バリヤの放射率特性は特定の光学特性を有する他の素材との混和により調節することができる。例えば特定の産地からのケイ砂は好ましい光学的特性を有することがあり、熱的バリヤの上面に埋め込むことができる。(例として図10参照)あるいは、ドープガラスまたは特定の光学特性を有するケイ砂またはセラミックタイルも熱的バリヤの上面に埋め込むことができる可能性がある。図11において熱的バリヤの理想的な光学的透過率特性を例示した。現在使用されている熱的バリヤの素材(発砲ポリエチレン)は 光合成光の約60%を透過するが、75%以上の透過率のものを用いることもできる。
【0020】
様々な実施態様は環境条件下での藻類生産のモデリングのための装置と方法に関する。条件の最適化と藻類株選択のための遠隔センサーバイオリアクターの例を図8に示す。
【0021】
以下の図は本明細書の一部を成すものであり、本発明の特定の実施態様を更に具体的に説明するために記載したものである。実施態様は本明細書内に記した詳細な説明に関連する、これら図中の一つ以上を参照することによって、よりよく理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
具体例の説明
本明細書中で特に定義していない用語に関しては一般的な意味に従って用いている。
【0023】
本明細書中で用いられる冠詞「a」,「an」は一つ以上のものを示す場合がある。
【0024】
本明細書中で用いられる「約」は、±10%の誤差を含むことを意味する。例:「約100」とは90〜110までの数のいずれかを示す。
【0025】
オイル増産のための遺伝子組み換え藻類
いくつかの実施態様において、バイオディーゼル生産のために用いる藻類は遺伝子操作(遺伝子組み換え)を行い、1つ以上の単離された塩基配列を含むようにすることができる。この塩基配列はオイル産生の増大、または藻類の培養、成長、採集、利用に有用な他の特徴を提供する。藻類を安定的に形質転換させる方法と用いる塩基の組成は当技術分野では周知であり、本発明の実施にあたってはそのような方法や組成のいずれを用いてもよい。パーティクルガン、エレクトロポレーション、原形質融合、PEGを介した形質転換、DNAコートしたシリコンカーバイドウィスカー、またはウィルスを介した形質転換(本明細書に参考として付記する以下を参照:Sanford et al., 1993, Meth. Enzymol. 217:483-509; Dunahay et al., 1997, Meth. Molec. Biol. 62:503-9; 米国特許第5,270,175号および同第5,661,017号。)
【0026】
例えば、米国特許5,661,017号はクロロフィルCを持つ藻類の形質転換に関する。Bacillariophyceae、Chrysophyceae、Phaeophyceae、Xanthophyceae、Raphidophyceae、Prymnesiophyceae、Cryptophyceae、Cyclotella、Navicula、Cylindrotheca、Phaeodactylum、Amphora、Chaetoceros、Nitzschia 、Thalassiosira などの藻類である。アセチルCoAやカルボキシラーゼなどの用いる塩基の組成も開示している。
【0027】
様々な実施態様において、単離した塩基またはベクター中に選択マーカーを組み込み、形質転換藻類のマーカーとすることができる。用いる選択マーカーはネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、アミノグリコシドアセチルトランスフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、ヒグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ、ブレオマイシン結合タンパク質、ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ、ブロモキシルニトリラーゼ、グリホサーテ耐性5−エノールピルビルシキマーテ−3,リン酸合成酵素、クリプトプルリン耐性リボソーマルタンパク質S14、エメチン耐性リボソーマルタンパク質S14、スルフォニウレア耐性アセトラクテート合成酵素、イミダゾリオン耐性アセトラクテート合成酵素、ストレプトマイシン耐性16SリボソーマルRNA、スペクチノマイシン耐性16SリボソーマルRNA、エリトロマイシン耐性23SリボソーマルRNAまたはメチルベンジイミダゾール耐性チューブリンを含む。導入遺伝子の発現を促進する制御する制御塩基配列は知られており、C.クリプティカアセチルCoAカルボキシラーゼ5’非翻訳調節制御配列、C.クリプティカアセチルCoAカルボキシラーゼ3’非翻訳調節制御配列、これらの組み合わせ等がある。
【0028】
藻類の分離およびオイル抽出
様々な実施態様において、藻類は媒体から分離することができ、オイルなど藻類の種々の成分を当技術分野で知られているいかなる方法を用いても抽出することができる。例えば藻類は以下に述べるように起立式渦巻装置の循環、採集渦巻き装置と/またはシッパーチューブを利用して部分的に媒体から分離することができる。その他の方法として、大容量の工業用規模の業務用遠心分離器を他の分離方法を補助または代替するために用いることができる。そのような遠心分離器は周知の商業的供給源(例:ドイツのCimbria Sket やIBG Monforts、デンマークのAlfa Laval A/S)から調達することができる。遠心分離、沈殿、と/または濾過はオイルを他の藻類の成分から精製するために用いられることがある。藻類の液体培養からの分離は粘土(例:大きさ2ミクロン未満の粒子)、硫酸アルミニウム、ポリアクリルアミドなどの凝集剤の添加により容易になる。凝集剤の存在下では藻類は単純な重力による沈殿または更に容易に遠心分離によって分離することができる。凝集剤による藻類の分離は、例えば本明細書に参考として付記する米国特許出願公開第20020079270号の中で開示されている。
【0029】
藻類などの細胞を含水性媒体から分離するいかなる方法でも用いることができることが当業者には理解されるであろう。例えば、参考として本明細書に付記した米国特許出願公開第20040121447号および米国特許6,524,486号の中では含水性媒体からの藻類の部分的分離のための接線流濾過手段と装置を開示されている。媒体から藻類を分離する他の方法は、本明細書に参考として付記する米国特許第5,910,254号および米国特許6,524,486号の中で開示されている。他の出版されている藻類分離と/または抽出の方法を用いることもできる。(例:Rose et al., Water Science and Technology 1992, 25:319-327; Smith et al., Northwest Science, 1968, 42:165-171; Moulton et al., Hydrobiologia 1990, 204/205:401-408; Borowitzka et al., Bulletin of Marine Science, 1990, 47:244-252; Honeycutt, Biotechnology and Bioengineering Symp. 1983, 13:567-575参照)。
【0030】
様々な実施態様において、 オイルやその他の成分の分離を容易にするために 藻類を破砕することができる。細胞破砕のための周知のいかなる方法を用いても良く、超音波破砕、フレンチプレス、浸透圧ショック、機械的せん断力、コールドプレス、熱ショック、ローター・スタター破砕機、バルブ型プロセッサー、形状固定式プロセッサー、窒素減圧や他の周知の方法による。(例:GEA Niro Inc., Columbia, MD; Constant Systems Ltd, Daventry, England; Microfluidics, Newtn, MA.)懸濁液中で微細藻類を破裂させる方法は例えば本参照欄収録の米国特許第6,000,551号の中で開示されている。
【0031】
藻類のバイオディーゼルへの転換
光合成産物のバイオディーゼルへの転換の為の様々な方法が当技術分野では知られているが、本発明の実施にあたってはそのような方法のいずれを用いることもできる。例えば藻類を採集し、液体培養から分離し、溶解してオイル分を分離することができる。藻類産生オイルはトルグリセリドを多く含む。このようなオイルはコンネマン(Connemann)処理のような良く知られた方法によりバイオディーゼルに転換することができる。(例えば、本明細書に参考として付記する米国特許5,354,878号参照。)標準的なトランスエステル化処理はトリグリセリドとアルコール(典型的にはメタノール)の間でのアルカリを触媒としたトランスエステル化反応を含む。トリグリセリドの脂肪酸はメタノールに転移し、アルキルエステル(バイオディーゼル)となり、グリセロールを放出する。グリセロールは取り除き、他の目的に用いることができる。
【0032】
好ましい実施態様は、コンネマン(Connemann)処理の使用を伴うことがある(米国特許第5,354,878号)。バッチ反応方法(例:J. Am. Oil Soc. 61:343, 1984)に対し、コンネマン(Connemann)処理は、反応カラム中の反応液の連続的な流れを利用する。この流れはグリセリンの沈殿速度よりも遅く、結果としてバイオディーゼルからの連続的なグリセリンの分離を可能にする。反応液はトランスエステル化過程を完了させるために更に先のカラムを流れていく。残留したメタノール、グリセリン、脂肪酸、触媒は水抽出によって取り除くことができる。コンネマン(Connemann)アーム張力は確立された方法であり、ラプシードオイルのような植物性オイルからバイオディーゼルを生産するのに用いられており、2003年にはドイツで年間100万トンのバイオディーゼルを生産するのに用いられた。(Bockey,”Biodiesel production and marketing in Germany”, www.projectbiobus.com/IOPD_E_RZ.pdf)
【0033】
しかしながら、当業者にはトリグリセリド含有オイルからバイオディーゼルを生産する周知の方法のいずれを用いることもできることが理解されるであろう。例えば本明細書に参考として付記する米国特許第4,695,411号、同5,338,471号、同第5,730,029号、同第6,538,146号、同第6,960,672号の中で開示されている。トランスエステル化を伴わない他の方法も用いることができる。例えば熱分解、ガス化、熱化学的液化の方法がある。(例えば、本明細書に参考として付記する以下を参照:Dote, 1994, Fuel 73: 12; Ginzburg, 1993, Renewable Energy 3: 249-52; Benemann and Oswald, 1996, DOE/PC/93204-T5)
【0034】
他の藻類生産物
いくつかの実施態様においては、開示した方法、組成、装置を動物または人の食用藻類の培養のために用いることができる。例えばスピルリナはプランクトン性の青緑色の藻類でタンパク質、アミノ酸、ビタミンB-12、カルテノイド等の養分に富む。 藻類農園で生産されたスピルリナの人による年間消費量は1000トン以上にものぼる。当業者には、自由生活性の藻類のどの種類でも(食用の藻類のスピルリナ(Spirulina)、ドナリエラ(Dunaliella)、テトラセルミス(Tetraselmis)を含む)特許請求の範囲に記載されているシステムによって育て、採取し、利用することができることは理解できるであろう。(本明細書に参考として付記する米国特許第6,156,561号、同第6,986,323号参照。)
【0035】
特許請求の範囲に記載の方法および装置を用いて他の藻類に基ずく製品を生産することができる。例えば本参照欄収録の米国特許第5,250,427号は藻類のような有機体を生物学的に分解可能なプラスチックに光変換する方法を開示している。このような野生もしくは遺伝子組み換え藻類から有用な製品を生産するためのいかなる方法も用いることができる。
【実施例】
【0036】
具体例
本明細書で請求、開示している方法、組成、装置、およびシステムは、大規模かつ低コストの水生藻類の培養と採集に関する。本技術は様々な藻類の提供する製品の工業生産を支える為に利用することができる。本技術は大量の藻類培養および採集を経済的に支えることができる。開示した装置は本文中ではほとんどの場合「バイオリアクター」、「光バイオリアクター」、「閉鎖系バイオリアクター」、そして/または「バイオリアクター装置」と呼んでいる。他の機械、装置、そして/またはバイオリアクターと併用する技術としては滅菌技術、CO2 導入技術、そして/または抽出技術を含むことがある。
【0037】
例1.バイオリアクターシステム
図1はシステム例の概略図である。システム例はバイオリアクター技術、採集技術、滅菌技術、CO2 導入技術、抽出技術、遠隔操作バイオリアクター技術を含む。図1で示されているように、藻類の培養工程は家畜飼育工程から例えば豚の肥料のような栄養素を得ることがある。加工と滅菌後はこのような有機性栄養素は保存、そして/または藻類の成長を支えるために培養液に添加することができる。光合成藻類はCO2 を「固定」し、有機性炭素化合物への変換するため、CO2 源例えば発電所からの排気ガスを培養液に溶解CO2 を添加するのに用いることができる。藻類はCO2 や栄養素はオイルや他の生物学的産物を産生するために用いる。藻類は採集し、オイル、タンパク質、脂質、炭水化物、その他の成分は抽出することができる。バイオディーゼルの生産に用いない有機性成分は飼料、肥料、藻類の成長のための養分、メタン発生器の原料、または他の製品に利用してリサイクルすることができる。 抽出したオイルは加工することができ、例えば低分子量アルコール(メタノールを含むが限定的ではない)とのエステル交換反応によりグリセリン、脂肪酸エステルやほかの産物を生産することができる。脂肪酸はバイオディーゼルの生産に用いることができる。当業者の間で周知のように、エステル交換反応はバッチまたは連続的な過程を通じて起こるので、金属アルコラート、金属水素化物塩、金属炭酸塩、金属酢酸塩、様々な酸やアルカリ、特にナトリウムアルコキシド、ナトリウムヒドロキシドまたはカリウムヒドロキシドなどの触媒を用いることがある。
【0038】
閉鎖系バイオリアクターの産物は以下に限定的でないが、バイオディーゼル、ジェット燃料、火花点火、メタン、バイオポリマー(プラスチック)、ヒトの食料品、飼料、ビタミンや薬などの医薬品、酸素、廃棄流緩和(生成物除去)、排気ガス緩和(例:CO2 の隔離)などを含む。
【0039】
例2.バイオリアクター農場
図2においていくつか特定の実施例を示しており、藻類培養のための閉鎖系バイオリアクターシステムの上空からの図となっている。この例示的な図において藻類の作物は地面に平らに置かれた実質的に水平の透明プラスチックチューブの中で育られており、チューブ内に培養液を流しているため藻類は懸濁液の状態が保たれる。(実質的に水平とは、あるバイオリアクターの下にある地面の勾配は約2.54mm(約1インチ)に等しいので混合の行動、水流、そしてプラスチックチューブからのストレスは全体的にチューブ内で一定である、ということである。しかし当業者は段階状になった配置にすることで個別のバイオリアクターを大量に並列に並べ、系の低いところから高いところへ液体を汲み上げることができる事に気づくであろう。)好ましい実施例においては節約のためチューブの壁は薄く、水が満杯に入った状態で20.32cm〜30.48cm(8〜12インチ)を維持するように側壁によって制限されている。これが藻類を多く含んだ水が回転して、吸収や他の藻類による遮へいの影響により1インチほどしか透過しない赤や青の光合成光にすべての部分が均一に曝露されるためのチューブの厚みとしてほぼ最大値である。チューブの幅は約3.048m〜3.658m(約10〜12フィート)で、長さは約30.48m〜182.88m(約100〜600フィート)である。しかしながら、当業者はこのような寸法は限定的ではなく、他の幅や厚みも用いることができることに気づくであろう。通常、栄養素、適した塩分やミネラル成分、CO2 、太陽光が培養液中には存在している。培養液には所望の最終産物を提供し、バイオリアクター中でよく育つ藻類を選択して種付けしてあるので発育条件が十分である以上繁殖、増殖する。好ましいシステムの概略図である図1を参照すると、バイオリアクターはバイオリアクターに養分を供給し、そこから藻類を採集する全システムの一要素でしかない。
【0040】
図2を再び参照すると、図は一日あたり22710リットル(6000ガロン)のバイオディーゼルを生産可能な比較的小さな農場の見取り図である。1400個の個別のバイオリアクターがシダの葉のように中心の運搬レールと連結されている。当業者は他の配置も可能であることに気づくであろうが、しかし好ましい実施例においては育成する藻類を含むバッグの配列は多かれ少なかれ線形のものが用いられている。
【0041】
例3.閉鎖系バイオリアクター装置
図3A〜Dは、本発明を限定的するものではない閉鎖系バイオリアクター装置の実施例を示している。培養液がほぼ透明な可撓性チューブ(バッグ)に含まれており、以下にその詳細を述べる。バッグの液体内容物はバッグの表面を動く可動式のローラーによって液体を前に押し進めることにより循環させることができる。この限定的でない例において、ローラーはローラーを支持するレールに沿って進み、レール上を走るキャリッジに結合したケーブルによって動かされている。図25に示されたローラー動作システムはローラー運動の推進力を提供する。ここでは示されていない他の実施例においては、バッグの末端にローラーが到達した際、ローラーを回転もしくは上に持ち上げて開始点に戻すことを連続的に楕円を描きながら行うことができる。しかしながら、示した好ましい実施例の中では以下で述べるように2方向に進む事のできるローラーで、端から端まで一方向に進んだ後に逆向きに進み開始点に戻るものを使用している。ローラーシステムは標準的な液体流動のためのポンプと異なり、液体の循環を 共に流体力学によるせん断力の低下を提供する。
【0042】
図3Aは2バッグシステムの例を示しており、それぞれのバッグが動作可能にローラーと係合する。バッグの端部はチャンバに接続し、このチャンバはCO2 気泡発生器、渦巻き装置、各種センサー(例:pH、溶解酸素、誘電率、温度)、熱的バリヤを動かすためのアクチュエータ、水の運搬のためのパイプへの連結部、栄養素と/または藻類のような採取した水生生物を含むことができる。
【0043】
図3Bで示したように、双方向ローラーシステムにおいてチューブは地面に並べられ、ローラーは地面にほぼ平行に動く。しかし、以下に述べるように、チューブの下の地面を掘って窪みを作ることができ、「ベリーパン」状の窪みを裏打ちすることができる。この処理はローラーがチューブの末端に到達し、ベリーパンの上に位置した時にローラーの下を液体が通ることを可能にする。十分に水流が減速した後にローラーは方向を逆に変更し、開始点に戻り結果として装置内に時計回りと反時計回りの水流を交互に作り出す。
【0044】
ローラーは、ある種蠕動ポンプをなし、ただし2つの点において異なる。まず、蠕動的な充満力は液体に作用する重力の平滑化作用によるものであり多くのポンプに見られる弾性の跳ね返りとは異なる。次に、ローラーは完全にチューブを押しつぶすのではなく85%程しかつぶさない。これは以下に述べるようにローラーの前後での水圧の差が比較的高い速度の逆流を引き起こすことを意味する。いくつかの実施態様においてはローラー速度が(そしてそれに応じて水流の速度が)約30.48cm/秒(約1フィート/秒)である。
【0045】
様々な態様において、培養液は光合成藻類を培養するために用いることができる。光合成の間、藻類はCO2 を吸収し、酸素を放出する。ローラーがバッグの上面を転がり進むと共に酸素、他の気体、培養液、藻類はローラーの先に押し進められる。これは藻類をバッグの中で移動させるだけでなく、媒体の混合作用も提供する。ローラーはその前に存在するガスを押し進めることができる。このガスの泡は水の放出した気体、吸収されなかったCO2 、光合成藻類によって産生された酸素の混合物である。ローラーの前に存在するガスポケットは末端のチャンバで回収し、大気に発散するか貯蔵して酸素による光合成阻害を防止する。いくつかの実施例においては、夜の藻類の非光合成期間に藻類の代謝を支持するために酸素を装置に再注入することができる。他の方法としては回収した酸素を発電所にパイプにより運搬し、その燃焼工程の効率を上げることができる。ローラーは藻類の光学的な代謝回転を引き起こし、藻類の光入力を調節することが望まれる。なぜならそのような回転が起こらない場合、藻類は光で飽和するか光に欠乏し、オイルの産生量が低下するからである。
【0046】
図3B〜3Dに示されているように、ローラーはチューブの末端まで到達しない。これはローラー直下で高速の逆流を引き起こし、ローラーの前の液体にかかる圧力がローラーの下での逆流につながっている。この逆流にはいくつかの効果があり、チューブの底をこすり洗うことで生物付着を軽減し、媒体の底に沈殿した藻類や他の水生生物を再建濁する効果を含む。
【0047】
バッグの中に熱的バリヤを加え、熱調節のために液体を上層と下層に隔てることができる。液体の動きの調節され方によって液体は最初に熱的バリヤの上側におけるチューブの上層(図3D)または熱的バリヤの下側におけるチューブの下層(図3C)に分配される。図3Bは隔膜制御法を図示するためにローラーを2つの異なる位置に示してある。液体が上層にあるときは回収された気体ポケットは柔軟性のあるチューブの上壁に押し付けられる(図3D)。ローラーの前の空気と水の界面は柔軟性のあるチューブの上壁をこすり、生物付着を軽減し、チューブの上面からの光透過を維持するようにはたらく。このこすり運動はやや浮遊性のスクラバーディスクの添加により促進されることがある。このスクラバーディスクは直径25.4mm(1インチ)、厚さ6.35mm(1/4インチ)で意図的に液体中を循環させ、ローラーの前に押し出される性質を持つものである。当業者は液体システムの内部をこする為の似たような大きさの固形物を設計してもよい。実際は何千個というこれらのディスクまたは他の固形物がバイオリアクター中に存在することになるが、はっきりと光の透過を減少させるほどの量ではない。それらは採集前にふるいで回収し、浮遊性が十分に低いために前のローラーの起こした水流の伝搬によりローラー前方の気泡スペースに流れ込ませることができる。液体が下層にあるときは熱的バリヤの下側が同様にこすられ、光透過が維持される。
【0048】
図3A,3Bに示したように、装置の中に機械を組み込むことができ、例えばバッグの両端に藻類を採集するもの、気体、栄養素そして/または廃棄物を添加または除去するもの、または他の用途のものがある。好ましい実施態様においては以下に詳細を述べるように、バッグの端において起こる流体力学的液体運動は定在的渦巻き循環の形成を促進するように設計することができ、水生生物の採集、気体、そして/または栄養素の導入、廃棄物除去、または他の目的の為に利用することができる。図3A,3Bの右側は以下に詳細を述べるように、水生生物の採集のための渦巻き装置を示している。
【0049】
実施態様の具体例は長さ19.8m(65フィート)で個々のバイオリアクターバッグが1.32m(52インチ)幅しかない研究用モデルを示している。好ましい製品化規模(スケール)の実施態様においては、一組のバイオリアクターあたり0.15〜0.30エーカーの光合成面積を確保するために2つのバッグのそれぞれが長さ約91.44m(約300フィート0、3.05〜6.10m(10〜20フィート)幅である必要がある。このようなバイオリアクターは一日あたり26.5リットル〜52.99リットル(7〜14ガロン)のバイオディーゼルを生産できるはずである。
【0050】
いくつかの実施態様において、図4と図23の右側に示したようにチューブは上層、内部熱的バリヤ、下層を含むように形成される。図9で開示した他の実施例においては、2バッグの系で、上のバッグと下のバッグが個別に存在し、その間に熱的バリヤがある状態で利用することができる。実際はこのような系は上で述べた1バッグの系と全く同じような挙動を示す。2バッグの系の利点は、端のとじ目の必要性がない可能性があり、構造上の安定性の増大とコスト削減につながる点である。さらに、高放射率層と絶縁体が防水性である必要が無いので素材の選択肢が広がる。そして、熱的バリヤが藻類にさらされることがないのでその素材の生物付着の可能性も無い。最後に、絶縁体と高放射率層はバッグを取り替える際に同時に変える必要がないので更なるコスト削減を提供する。図9はフライアッシュ等から成るバッグと地面の間に置く任意の地ならし層を示しており、1バッグと2バッグの系の両方で用いることができる。フライアッシュは現地の発電所から得ることがでる安価な素材であり、バイオリアクターバッグの下方における植物の成長を抑制する腐食作用を有する。塩を含む他の素材をバッグの下に置くことで成長を抑制することも可能である。上のバッグにネットをかけるかどうかは任意である。
【0051】
例4.含水性媒体の温度調節
図3の例示的な実施態様において、好ましい構造のチューブは高放射率熱絶縁性隔膜(熱的バリヤ)が中心に水平に設置されている。この隔膜の端の数インチはバーで固めることができ、このバーはアクチュエータで操作して上昇させ上のチューブを密閉する、または下降させて下のチューブを密閉することができる。バーには柔軟性の高い一方向弁の密封パッキンが付いており、液体の流入を防ぐ為に熱的バリヤが固定されているときも上層や下層からの液体、気体の流出を許す。これは、隔膜の位置に関わらずローラーが残留した気体や液体をチャンバから押し出すことを可能にする。左手のローラー(図3C)チューブにおける熱的バリヤの下の底部に存在する液体を左手のチャンバに押し出している。その後、液体は右側に再循環し、隔膜が下の位置にあるので熱的バリヤの上に分配され、チューブの上層を満たす。これは隔膜の位置が上層下層間の液体の移動を少ないエネルギー消費で行うことを可能にする例である。この移動の目的は液体の温度調節である。
【0052】
図4においてバイオリアクターの限定的でない温度調節を図示しており、柔軟性の高いチューブの横断面をその長軸方向に見た図である。温度調節の目的は藻類を最適温度の媒体中に保ち、周囲が氷点下の時にチューブが凍り付かないように、また暑い夏の間に加熱してしまわないようにすることである。温度調節の中には、特定の光学的そして/または熱的透過率特性を有するバッグの組成を用いることも含まれる。例えば最も上側のシート(例:0.25mm(0.01インチ)厚の透明ポリエチレン)は光の侵入と熱の出入りを許す。内部の熱的バリヤは熱伝導性の絶縁体の上に赤外線は吸収するが光合成に必要な可視光は透過する柔軟性のあるシートを含むことがある。いくつかの実施態様においては熱的バリヤは柔軟性のある絶縁体のシートと赤外線を吸収するシートが組合わさった複合体を含むものである。絶縁体は例えば厚み12.7mm(1/2インチ<R2>)、または25.4mm(1インチ<R4>)の発泡ポリエチレンを含んでいてもよい。チューブは、上側のシートと組成が普通は同一であるが必ずしも同一でない下側のシートも含む。
【0053】
チューブは柔軟性の高いプラスチック製の2枚(上側、下側)または3枚(上側、熱的バリヤ、下側)の両端を接着することによって作製できる。しかし連続的噴出によりシームレスのチューブを作製する、円柱状のプラスチックシートを熱して吹いて作製する等の他の方法を使用することもできる。地面とチューブの間に物理的、機械的破壊に強い熱伝導性の地面用シートをチューブと地面の間に置くこともできる。地面は処理、または準備をして比較的平滑で熱伝導性があり植物が生えていないようにする。液体の満ちたチューブを物理的に支え、そして/またはチューブ側面から追加的な熱的隔離を提供し、ローラーのキャリッジを追加的に導き支えるために側壁を設けてもよい。
【0054】
図4に図示したような非隔離形式のとき水はチューブの中で熱的バリヤの上に分配され、冷たい(夜の)空気への熱放出または日中に大気性赤外線からの熱吸収を可能にする。この形式は光合成のための可視光の最大吸収を可能にする。熱転移は伝導または伝達、赤外線放出または吸収によって起こりうる。隔離形式では、液体は熱的バリヤの下に分配され、地面の熱質量との接触により液体温度を熱的に安定化している。熱的バリヤは太陽光の赤外線から液体を隔離する。可視光は熱的バリヤを透過して光合成を支えるが、透過効率は100%未満である。夜間には地面との接触は液体を加熱するのに対し、日中は地面との接触は液体を冷却する。いくつかの実施態様において、地面へまたは地面からの熱転移は地面を熱シンクとして熱を供給するか、熱源として熱を取り出すことにより日中、夜間を通じて液温の変化を緩和することに用いることができる。例えば日中に熱を地面に転移させ、夜間に再吸収することによって冬期に液体を温かく保つ、または夜間に地面から熱を転移させ、夏の日中は地面を熱シンクとして用いて液体を冷却することが考えられる。
【0055】
他の実施態様においては発電所の水を用いた能動的な温度調節を用いることができる。 バイオリアクターにおける一部のチューブの下に設置されたプラスチックのマットまで発電所の冷却棟から熱された水を運搬することができる。寒いときにはこの追加的な熱源は凍結を防止する為と/または藻類の最適温度を下回らないようにする為に用いることができる。当業者は多様な熱源、例えば発電所の排気ガス、地熱、貯蔵太陽熱、または他の熱源を用いることができることに気がつくであろう。さらに、暑い季節や高太陽束地域においては蒸発による冷却など効率的なシステムを藻類は加熱しない為に用いることができる。
【0056】
いくつかの実施態様において熱的バリヤの放射率特性は他の特定の光学特性を有する素材の導入により調節することができる。例えば特定の光学特性を有するケイ砂(例:図10参照)、ドープガラス、石英ビーズまたはタイルを熱的バリヤの上層に埋め込むことができる。
【0057】
上述した温度調節機構は藻類の最適温度領域に温度を維持するために非常に有効なメカニズムである。図16にコンピュータでモデル構築した結果の水温を示した。モデル化に当たり、コロラド州フォートコリンズでの2006年1月〜6月の環境条件の下、R4(1インチ厚フォーム)の熱的バリヤと理想的な赤外光吸収層(図11参照)を用いたことを想定した。水温の領域は熱的バリヤありの場合(黒)と無しの場合(グレー)をモデル化した。ここから、春と夏の水温は熱的バリヤありの場合では20°C〜30゜Cの領域で大きく安定化されるが、無しの場合では45゜C以上に到達することもあることがわかる。熱的バリヤは夏の最高温度を最大10゜C低下させる。熱的バリヤは最適温度の領域での効果はより薄い。冬の水生生物生産の為の方法として他にも多様な方法が存在し、例えば熱供給源からの熱の使用(例:発電所の排気ガス)、冬の気温がより温暖な地域での生産、またはヘマトコッカス(Haematococcus)種のような寒冷な気候に耐性のある藻類の使用などが考えられる。
【0058】
例5.渦巻き装置とシッパー
図3の右側に、ある設計の渦巻き装置を示しており、好ましいドゥエルチューブの設計図は図15Aと図15Bに詳細に示している。バイオリアクターの好ましい実施例はこのような渦巻き装置を含むが、装置は限定的でなく、代替の実施態様においては他の方法や培養液から藻類を採集する装置を用いることができる。この渦巻き装置の第一の目的は所望の産物を含む藻類(または他の水生生物)を含有する溶液を抽出することである。第二の目的は培養液から除去すべき成分、例えば粘液やフォームのようなもので主として有害なバクテリアから成るものを抽出することである。密度分離渦巻き装置の使用法としては数多く存在し、光バイオリアクターで育成できる製品の種類に応じた数ほどある。異なる種類または環境または藻類発生段階によって溶液より重い場合と軽い場合が存在し、それらのオイル、炭水化物、ガス胞の濃度、塩濃度や温度によって様々な密度となりうる媒体に依っている。藻類以外の水生生物も密度に応じてこのようにして分離することができる。
【0059】
図15で示したように、チューブの左手側における隔膜の弁のあたり(「流入」と表示)において溶液は1/2の深さに位置する坂の上に乗せられ、結果的に約2の関数として速度が上昇する。その次に溶液は加速コーンを取り囲んで衝突し、その淵から流れ込んでドゥエルチューブ内を通過しチャンバの底間まで到達する。ドゥエルチューブへの落下は渦巻き波運動を誘導し、穴に入っていくにつれて溶液が一層早く回転するようになる。回転の速度と渦巻き装置から結果的に得られる遠心力は穴の面積とバッグの断面積の比、ローラーの速度とチューブの圧迫の比などに比例する。ドゥエルチューブの目的は、溶液が回転を止めて下のチャンバに流れる前にそこに溶液が留まっている間、できるだけ長く溶液の遠心分離力を維持することである。ドゥエルチューブ塩やミネラルを含んだ重い溶液と重いまたは凝集した藻類が回転渦巻き装置の中から外へはじき出されると同時に、ガス胞、低密度の藻類、そして他の低密度の成分は渦巻き装置の中心へと移動する。シッパーチューブは渦巻き装置の中心に位置して(可変の開口部直径でもよい)、特定の産物を多く含む渦巻き装置の中心の内容物を回収する。シッパーチューブはその混合溶液の回転をとめ、スクリュードライブ脱水フィルタまたは高速連続遠心機、またはその両方、もしくは他の抽出脱水装置に溶液を送り出す。産物除去後の栄養素を含む身時はフィルタを通して残留している菌の繁殖を促進するような生物断片を取り除き、紫外線で滅菌し、バイオリアクターに戻すことができる。脱水機は濃縮した藻類や他の産物を回収用ベルトコンベアや他の装置で列状に配置され、多くのバイオリアクターから藻類を回収し中央処理施設にオイル抽出のために大容量を輸送するようなものに移送する。藻類は固まりに分離し、宙をつたってコンベア上に落下する、またはコンベア上に落下した外来生物がバイオリアクター中に侵入して不都合が生じるまたは単一培養株への「感染」がリアクターからリアクターへと伝染することを防ぐための生物腐敗一方向弁を通じてリアクター内に入ることができる。同じく図15Bに示されたほかの構成ではシッパーはドゥエルチューブの内壁に穿孔があり、溶液中の最も密度の高い成分を回収するもから成っていてもよい。例えば藻類が溶液よりも重い部分においてその密度の高い成分はオイルと炭水化物に豊富な藻類かも知れない。
【0060】
渦巻き装置の他の目的は代替的なCO2 注入機構としてはたらくことである。これは渦巻きの装置の底で制御開口部を出た後に外向きに液体が回転しているところで起こる。純粋なCO2 のような気体もしくは発電所、工場、または他の供給源から得られたCO2 豊富な燃焼排気ガスは半径の中心または中央シッパーチューブの開口部のすぐ下に注入される。この位置ではCO2 の泡はヴォルテックスの中心に迫り出すことを妨げられている。なぜならシッパーチューブと水の下向き逆流による抵抗があるからである。しかし浮力と下降流が同時に存在するため、泡がその発生源の開口部から十分に大きく膨らむ時間がある。その大きさは泡の周囲の水流を制限し、加速するので泡は発生源の開口部からせん断され小さい泡となってより遅い水流にのって流されていく。好ましい実施態様においては多くのガスは融合してチューブの上に浮き上がるまでに溶液に吸収される。
【0061】
バイオリアクターが大気から直接CO2 を得るためにはネオプレンインジェクターで空気を水中置換により導入するか、リアクターの上膜から直接の透過により導入する方法がある。いくつかの実施態様においては、チューブの上部内壁に1インチ半径のポケットで、ナトリウムヒドロキシド混合溶液を気体透過性かつ防水性の膜(例えばCO2 透過性が高いことの示されているポリスチレンで構成されるもの)で密封したものを付着させる場合がある。これらのポケットは外気と部分的に接触しているため、空気のCO2 成分を選択的に吸収することができる。そしてポケット上をローラーが通り過ぎるとき、ポケットは物理的に押しつぶされ、上面は密閉されるのでポケット膜の下側に接している水圧よりもポケット内部のCO2 圧は高くなり、ポケット下部から溶液中への急速な膜透過が起こる。この構成においてはポケットの上のシートは気泡が上に乗っていてエアクッションのように見えており、中はナトリウムヒドロキシド混合溶液が含まれており、上下にCO2 透過性の膜を用いている。直接CO2 を得る方法の追加的な態様においては、バイオリアクターの上の膜はオープンセル素材を強化材として用いた複合物で、穴をCO2 透過性かつ吸収性の物質で満たしたものを用いた。これはポリスチレン製のナトリウムヒドロキシドミクロカプセルでもよい。実際はカプセルが大気中からCO2 を吸収し、溶液へ受動的拡散またはローラーが上を通過する時はカプセルを圧縮し加圧拡散によりCO2 を直接放出する。
【0062】
図13において渦巻き装置の例示的モデルが示されている。水はまず第一コントロールハウジングのようなチャンバに入り、加速斜面に衝突して流速が上がり、全溶液深度の途中に位置する棚板の上に移送される。水は加速コーンの上を加速し、ドゥエルチューブの中を流れ、そこで自然と渦巻き流が形成される。ドゥエルチューブの底から流出する水は中央棚板の下に位置するチャンバに流入し、コントロールハウジングから流出する前に上り坂の減速傾斜を通過する。これら傾斜の目的は中央棚板の上に流入または下から流出する際の渦巻き流による破壊的乱流を防ぐために水流の速度徐々に変化させることにある。ドゥエルチューブや加速コーンの詳細は図14に示した。上述したように、制限を受けながら上ら下へ流れる水は、トイレを流した時のように自然と渦巻きを形成する。以下で述べるドゥエルチューブ 、加速コーン、スタターフィンはドゥエルチューブ の中央で渦巻きの形成を容易にして安定化するように設計されている。ドゥエルチューブの長さは懸濁液が求心力下にある時間を増すように設計されており、軽いまたは重い産物を含む藻類や含水性媒体などの成分の密度による分離を最大化する。ドゥエルチューブを取り巻くスタターフィンはドゥエルチューブの中心に渦巻きを固定する中心化力を提供する。これはシッパーチューブを流水中の3.17mm(1/8インチ)という薄い層のみを吸うための的確な位置に配置するにあたって重要である。安定化スタターフィンは渦巻きの周りで乱流フィルタの役割を果たす。この取り付け角度によりコントロールハウジング内の横波は緩和されて渦の位置を乱さず、同時に流入する水のらせん運動は妨害されない。実験条件の下では図13〜14に示した渦巻き装置モデルは安定な渦巻きを形成した。
【0063】
図15Aにおいて渦巻き装置の流体力学を示した。チャンバに流入した水は下の位置に水が流れる穴を中心として設置された加速斜面とコーンに衝突する。これは渦巻き流形成をもたらす。渦巻きは、渦巻き中心化スタターフィンによりその位置に安定化される。液体は渦巻きの下から流出し、チャンバを出る前に減速斜面を通り、結果、チャンバへの比較的定常的な流入と流出速度がもたらされる。いくつかの態様においては(図15B)シッパーチューブやポンプは低密度成分(例:オイル含有藻類)または高密度成分(例:炭水化物含有藻類)を除去するために用いる事ができる。例示的渦巻き装置では一方向の水流が図示されているが、代替的な態様においては、加速減速斜面は水流が両方向に流れていても渦巻きを形成するように、両方向ローラーの系のように調節することができる。
【0064】
加速斜面やコーンの目的は、渦巻き装置の中に液体が加速して流入する際の乱流を最小化することにあり、渦巻き装置の内部では液体は回転しながらさらに加速して求心力を提供する。図13〜15に図示した装置は90ガロン/秒の流量を運搬することのできる実際の規模(スケール)の渦巻き装置は乱流により50ワットの力しか浪費しないことが推定される。上述のように藻類を媒体から分離するため様々な代替法が存在し、そのような方法のいずれを用いてもよい。
【0065】
例6.CO2の取り込み
特定の態様において、CO2 を豊富に含む廃棄ガスは光合成による固定に用いることができると同時に排気ガス中のCO2 成分を削減することで更なる温室効果ガスの蓄積を防ぐ事ができる。このようにして例えば発電所の排気ガスからCO2 を差し引き、残りを藻類の農場へ輸送することができる。
【0066】
図12はCO2 溶解の機構の為の例示的態様である。図は気泡発生器、例えば、多くの小孔のあけられたネオプレン膜で水柱の底に設置されたものを示している。気泡発生器は多くの非常に小さい半径の気泡を発生し、媒体へのCO2 の溶解を促進する。浮力密度に応じて気泡が上昇するのに対して、水柱はローラーや他の液体運搬機構によって形成された流れにそって下に流れる。この逆流が媒体内の気泡の滞留時間を延長し、気体溶解を最大化する。水柱の長さは気体の溶解を更に促進するためにより長くすることができる。以下に述べる例示的な両方向流システムにおいて液体は両方向に選択的に移動し、逆流の機構が両方向の水流で利用できるように中心のしきりの両側に設置された泡発生器を用いることができる(図12A、図12B)。この構成ではCO2 を含む排気ガスは発電所から何マイルも離れたバイオリアクター農場まで運送することができる。この工程の数学的モデルによると、CO2 をパイプ経由でバイオリアクターに運送し、リアクター内でCO2 を取り除くことはエネルギー効率の十分に良い処理である。
【0067】
長いチューブが用いられているところではチューブの両端において補足的な CO2注入機構を提供することが最適となる。0.25m/sで流れている水生生物は7分(105m)毎に追加的CO2 を必要とすると推定される。追加的なCO2 は多様な方法により、例えばガスの気泡、 CO2 で飽和させた水、CO2 の個体状態(例:NaHCO3, Na2CO3など)で導入することができる。
【0068】
例7.ローラー駆動部
図24はローラーの作動器の好ましい態様を示している。ローラーは薄くて軽いチューブでよく、例えばガラスファイバーの繊維状のものが考えられる。他にはローラーはステンレス金属や他の重金属であってもよい。いずれの場合においてもローラーはその下に設置する水の体積と相殺するほどの重さが必要である。ほとんどの場合においてこれは、安価での製造、運搬が可能な薄い軽い円柱を製造し、設置してからその内部に十分が水や砂や他の材料を詰めて適当な重量を与えることによって達成される。ローラーは2つのサポートローラーとの間に連続した車軸を含むことがある、好ましい実施態様においてはローラーは両側で全く独立して走るか、それらのあいだに差をつける機構が存在している場合がある。これは進行方向に対してローラーが垂直であることがバッグのからまりやシワを防止するために重要である為である。片方のローラーがもう片方よりも先に行っているということや斜めの跡がチューブに付けられたことをセンサーが感知し、作動器の周期を調節することによってローラーが滑らかにバッグの上を転がり、過剰な摩擦やダメージを与えずにすむ。 図25に示すローラーキャリッジシステムの力学的な設計は大きな脱線や温度変化をも保障することができる。
【0069】
3.05〜6.10m(10〜20フィート)の長さのローラーを、逆流、脱線、温度の違い、変動する摩擦などの条件の下で正確に作動させてローラーのゆがみやチューブの斜め方向のシワを防止しねければならない。特定の実施態様においてローラーは何千ポンドもの重量で91.44m(300フィート)もしくはそれ以上の長さのレール上を走らねばならない。図25に示した例示的な系ではスチールドライブケーブルシステムを用いており、低コストで動力伝達系路の慣性力が低い。なぜならケーブルは体積に比例する張力により力を生じているからである。この態様においては繰り込まれた高帯域幅の速度サーボ機構が滑車を作動させローラーを歪みから守っている。
【0070】
上位のマスターサーボ機構の速度コマンドはローラーのそのときの位置と、あるべき位置の差を決定することによって制御装置から得られる。速度のコマンドの最初と2つめの導関数を限定することにより不安定なバイオリアクターのバッグの励起は最小限に押さえられる。いかなる波の振動も強化されず、動力伝達系路のコンプライアンスによる位相のずれたフィードバック信号を誘導しない。なぜなら動力モーターに直接的に連結しているフィードバックセンサーはコンプライアンスの要素から隔離されているからである。一番下のサーボはdV/dtによるフィードフォーワードネットワークにより増加した速度で上のサーボと速度を合わせるようにスレーブされている。スレーブ速度コマンドは運動学的な運搬システムへのスキュー株センサーの出力により合計されオフセットされる。これがローラーを能動的に配列レールに沿った正確な角度の配列に移動させる。スキューの厳密な角度はコントローラにより制御され、ローラー方向特異的な効果の埋め合わせまたは感知されたバイオリアクター内に形成されたしわの修正を行うことができる。コントローラはフィルム(バイオリアクターチューブ)レベルのセンサーによって感知されたローラーの前後の流体静力学的な圧力差を用いてローラーの速度を調整して一定の前方圧力を保つことができる。キャリッジシステムは運動学的機械設計による。これはローラーレールの間の幅やローラーの長さを広げる方向に変化させてもキャリッジシステムを圧迫しないことが前提である。これはさらにローラーの垂直性が一台のキャリッジのみによって制限され、それ故その先で正確に測定することが出来、結果を滞積したスキューを相殺するように作動システムを微分的に制御する為に利用することができることを意味している。
【0071】
例8.チューブコーティング
藻類の付着によりプラスチックの内層への生物付着の防止または遅延のための技術は重要である。なぜならあまり頻繁にバッグを変える必要性がある場合、この工程の経済的消耗となってしまう。生物付着の防御の為の数多くの手法が世界的に発達段階にあるが、ナノスケールで見ると非常に尖っているナノ単位のざらつきのある疎水性の表面ものはひとつの選択肢である。
(www.awibremerhaven.de/TT/anitibiofouling/index-e.html参照)バイオリアクター用の生物付着耐性の内壁を作成する非常に安価な一つの方法は、フロック加工の技術を用いてポリエチレン繊維の先を静電的に表面に埋め込むもので、半径1〜2ミクロン、10〜20ミクロンの長さのポリエチレン繊維を冷める途中のポリエチレンの繊維を、プラスチックを伸ばして作ったフィルムの泡が環状のノズルから放出される時にそこに埋没させる方法である。(例として
www.bfp.co.uk/bfindustry/process_plastics_blown_film.cfmを参照してフィルム作成プロセスを、www.swicoflil.com/flock.htmlを参照してフロッキング加工の詳細を理解されたい。)フロッキングの基質が図5に図示されている。他の方法として粘着性もしくは硬化可能な接着剤のコーティングをチューブの内壁に塗付するか、チューブ作成時にプラスチックのフィルムにフロッキングやフッ素への暴露の前に塗付する方法がある。
【0072】
泡の内側のフロッキング加工された表面はフッ素を(空気ではなく)泡の内部に導入することでポリエチレンと反応を起こして疎水性のポリフルオロエチレン(ポリテトラフルオロエチレン、PTFEに類似したもの)をフロックの両サイドおよび繊維の根元のプラスチックフィルム上に形成することができる。
【0073】
いくつかの態様において2バッグシステムにおいてバッグの片側は完全に黒色であってもよい。藻類は暗所に入ると酸素を消費し、明所に出ると酸素を産生する。日中でも藻類の溶液を任意に暗所と明所を往復させるサイクルを繰り返すことで藻類は溶液中の溶解酸素を吸収し、光合成におけるエネルギー転換反応が促進されるのでオイル生産に有利にはたらく。
【0074】
様々な実施態様においてチューブの上表面は冬の期間に光合成用の光を特に高い経度において光の吸収最大化するように設計されている。例示的なフレネル構造が図29に示されており、チューブの上層の断面図で東西方向にフレネル光を集めるプリズムが赤道に角が向かうかたちで設置されたものが示してある。全体の厚さは0.635mm(0.025インチ)であり、フレネル構造はフィルムを伸ばす工程もしくはローリングの後に形成される。
【0075】
バイオリアクターの中に入るもの全ては種付けする所望の微細物意外は滅菌されていなけれはならない。これを安価で工業的に行うためには連続流オートクレーブを使用する必要性がある(図6)。これは栄養素のみならずバイオリアクター内に戻す全ての液体について行う必要がある。バイオリアクター内に入れる空気のような気体はHEPAによってフィルタし、煙突流は発電所の熱により滅菌されているものとしてよい。バイオリアクター内に戻る液体で透明なものは紫外線技術により滅菌することができる。
【0076】
例9.オイル抽出
オイル抽出そして/または遠心分離の方法と装置を図7に示した。藻類を抽出し、オイル産物を複雑な化学反応なしで取り出すことができる。大きな藻類に関しては藻類をすり粉砕して成分を遠心分離によりオイル、飼料や栄養素となる粉砕藻類の断片、栄養素含有水に分ける。しかしながら藻類は滑り易いので標準的な方法によってすり潰すには困難かもしれない。図7は限定的でない藻類の粉砕法の例を示した。2つのローラーは異なる素材で作られていてもよい。印刷の為のローラーに類似した硬化させた金属の円柱であってよい。もうひとつは正確な金属円柱で0.25mm厚ほどの弾性のあるゴム製のコーティングをしたものであってよい。このコーティングはローラーの表面の小さな凹凸を平らにし、小さな砂などは通過させるが藻類の体を破裂させる程の充分な局所的圧力を提供する。他の採集の方法は様々な種類の回転や震動をするふるいを利用して大きな生物を取り除く。飼料取り扱い業界にはこのような目的のために使用される機械が多く存在し、それを小型化により経済的にして適用することでバイオリアクター一つに一台取り付けることができる。これは一つのバイオリアクターに浸けた機械を他のバイオリアクターに浸けずに済み、感染を防止するという意味において有効である。理想的には藻類が個々のリアクターにとりつけられた構造により採集されるので、藻類をフィルタで取り除いた後の水は同じリアクターに滅菌操作なしで戻すことができる。
【0077】
例10.遠隔操作
図8において条件の最適化と藻類の選択を遠隔操作で行うバイオリアクターの例を示している。この系は遠隔地の偽バイオリアクターで操作によって設置可能な地理的場所の局地的な環境条件に応答するセンサーを用いている。偽リアクターはバイオリアクターのような装置で、濃い藻類培養液と類似した赤外吸収と光吸収特性を有する不活性な液体を含有する。センサーは偽リアクターが結果的に安定化することのできる温度と光合成光を感知する。遠隔感知局は小規模なバイオテクノロジー実験室に設置したリアクターの温度や光条件を操作することができるので、遠隔地の環境を実験室で再現し、藻類の便利な選択ができる。遠隔地の環境アッセイ装置は自然の状態でのバイオリアクターの応答を再現するように設計されている。これはセンサーのみの系と比べてより正確である。なぜなら環境アッセイ装置はバイオリアクターの機能に影響を及ぼす環境的変動要因の全てに暴露されており、偽環境的バイオリアクターでは同等の光の照射と液体温度となるように入力が制限されている。
【0078】
他の例示的なセンサーのみの実施態様では一つ以上の環境モニター局を温度、地表熱伝導率、地表熱容量、湿度、沈殿、太陽光照射、風速などの環境条件をモニターするために設置する。感知した条件は実験室に設置されたバイオリアクター装置に転送され制御された設定において再現することができる。
【0079】
他の水生動物の様々な株をバイオリアクター装置に植菌することができ、その成長と生産性をモニターする。ある生産地における最適な成長そして/または生産性を有する特定の株を最小のコストと最大の効率で同定することができる。
【0080】
例11.バイオリアクターモデルシステムでの藻類培養
図18で示しているように1/5サイズの閉鎖系バイオリアクターを建設した。簡単のために柔軟性のあるバイオリアクターチューブは示していないが、2セットのガードレールの間に置かれ、同程度の高さである。左下にあるのがCO2 注入ハウジングであり右上にあるのが採集用ハウジングである。柔軟性のあるチューブは図24における頂部二つの図形に示したように構成し、0.254mm(0.01インチ)厚のポリエチレン2層と12.7mm(0.5インチ)厚の組み立てポリエチレン熱的バリヤ(Sealed Air Corp., Elmwood Park, NJ)を間に挿入した形になっている。三枚の層は短い熱した棒で機械的圧力をかけることにより熱的インパルス結合により接着した。しかしながら当業者はプラスチックシートを接着する他の方法も存在することを承知であり、例えば熱風接着などを用いることができる。収縮を防ぐために、安定化の為の繊維をプラスチックシートに埋めこむ、または付着させて熱風接着によるチューブの形状が変形しないようにすることもできる。図24には示されていないが、チューブは上述のように、熱的バリヤの上と下に軸方向渦誘導装置を設置したかたちで構成した。完成したチューブは幅4.1フィート、長さ60フィートで、12インチの深さまで水で満たした。媒体はGulliard f/2 medium (Gulliard, 1960, J. Protozool. 7:262-68; Gulliard, 1975, In Smith and Chanley, Eds. Culture of Marine Invertebrate Animals, Plenum Press, New York; Gulliard and Ryther, 1962, Can. J.Microbiol. 8:229-39) に変更を加えたもので、22g/L NaCl, 16g/L 水槽用合成塩(Instant Ocean Aquarium Salt, Aquarium Systems Inc., Mentor, OH),420mg/L NaNO3, 20mg/L NaH2PO4 H2O, 4.36mg/L Na2EDTA, 3.15mg/L FeCl3 6H2O, 180μg/L MnCl2 4H2O, 22μg/L ZnSO4 7H2O, 10μg/L CuSO4 5H2O ,10μg/L CoCl 6H2O, 6.3? 10μg/L Na2MoO4 2H2O, 100μg/L thiamine-HCl, 0.5μg/L biotin, 0.5μg/L ビタミンB12から成る。ドナリエラ・テルチオレクタ(緑藻/Dunaliella tertiolecta)の栄養培養株(テキサス大学、Jerry Brand博士提供)を媒体に植えつけ、藻類は外気と外の気温で培養した。
【0081】
図18は閉鎖系バイオリアクターの例を図示したものである。この場合においては系は2つのバッグを用い、それぞれに個々のローラーをつけた。図18の右上のチャンバがヴォルテックス装置を含有し、左下のチャンバはCO2 発生器を含有するようにした。それぞれのローラーは3層の可撓性のあるチューブ(バッグ)の上を往復し、チューブの先で転回した。よって水は周期的に閉鎖系の中で流れの方向を逆に変えた。
【0082】
図19はローラーのキャリッジとその支持システムの追加的な詳細を示している。この態様では重いゲージのプラスチックの円柱であったローラーは転がるキャリッジの間にマウントし、ローラー側壁の路線上を走らせ、(図26参照)チューブの全長にわたって地面から一定の高さを保つようにキャリッジを支持した。側壁の路線も外側に膨らむことによって伸びすぎてしまう柔軟性のあるチューブを両側から物理的に支持した。また、熱的絶縁を提供し、柔軟性のあるチューブを横から隔離した。支持体は三角型に折り曲げた金属のシートで、高さ12インチ、3×2インチの折り目をつけてバッグの下を支えて地面に食い込ませたものであった。実物大のバイオリアクターにおける他の例示的態様としてコンクリートの側壁で高さ36インチ、4インチ幅で壁の20インチ分が地面に食い込んで安定性を増し、2本のスチール製鉄筋またはケーブルが全長にわたり上方25インチの位置に走っておりローラーが通過するときに動的荷運びのを可能にするものが用いられる。
【0083】
例示的な閉鎖系バイオリアクターの更なる詳細が図20に図示されている。チューブの先端のチャンバにおける中央棚板の四角形の開口部内に入った渦巻き装置を示している。図20はチューブが以下に詳細を述べるフランジ・ガスケットシステムによってチューブが先端のチャンバに接続しているところを示している。渦巻き装置を含むチャンバは以下に詳細を述べる熱的バリヤの上または下に水を送り出す作動器も含んでいた。フラッパー弁は加速と減速斜面に含まれ、弁の端は作動器に連結され、液体運動の方向が逆になった時に斜面の位置を変化させた。(逆の構成では加速斜面は減速斜面となり、逆もまた真なりである。)
【0084】
例示的閉鎖系バイオリアクターは図21で示したようなローラーの設計を用いた。この態様はローラーの方向を許し、チューブの先端でハウジングの上までローラーを持ち上げる機構を必要としなかった。上述のようにローラーは側壁の路線により一定の高さで支持された。路線の長さのほとんど全長にわたって地面は平滑であったが、両端のチャンバのすぐ横にはちいさな路線幅のくぼみがあった。このくぼみは金属の「ベリーパン」によって裏打ちされ、くぼみの形状を画定すると共にバイパス領域にツチが入らないよう防ぐように設計されている。くぼみとベリーパンはチューブ内の含水性媒体をローラーよりも下を流れることを許すものである。流体静力学的圧力により圧力により柔軟性のあるチューブは地面ベリーパンの表面と密着した。含水性媒体はローラーの抵抗なしにローラーの下からチャンバへ流れることができた。この連続的な流れは慣性モーメントや逆向きのローラーの運動による。熱的バリヤやチューブの側壁、チャンバの内容物に対する摩擦力により液体は減速し、最終的に止まった。流速が充分に遅くなった時、ローラー作動器が作動し、ローラーを逆向きに動かせた。片方のローラーがくぼみの上の領域で止まったとき、もう一つのローラーはチューブ内の液体を再び捉えて学向きに流し、系内での藻類の流れの方向を逆流させた。
【0085】
図21は熱的バリヤの上または下に水を送る作動器を示している。示されているように、熱的バリヤの端は固い隔膜となり作動器のセットと連結していた。作動器が上の位置に存在するとき、隔膜は水を熱的バリヤの下に分配し、熱的バリヤと隔膜はチューブの上の方に上昇した。作動器が下の位置に存在していた時は液体は熱的バリヤの上に分配され、熱的バリヤはチューブの底に位置した。
【0086】
例12.渦巻き装置とインフレータブルシール
図23は柔軟性のあるチューブの一端にあるハウジングまたはチャンバに位置する渦巻き装置の追加的な詳細を示している。この図ではチューブをチャンバに接続するバッグシールを通過し水は右側から流入している。熱的バリヤと連結された作動器は同じく右側に示されており、簡単のために隔膜は真ん中の位置に存在している。バッグシールと隔膜作動器の左側においてチャンバに流入する水は他の作動器と連結している加速斜面と衝突する。この作動器は連結している斜面を上または下に動かすことができる。斜面が下に位置するときは右から流入したが斜面と衝突する。水は片側はチャンバの側壁から、もう片側は加速と減速斜面を分離している中央棚板によって側方方向から制限を受ける。水はローラーチューブ運動によって規定される一定の速度で流入する。のぼりの斜面に衝突した際は水柱の高さは12インチの位置から斜面の角度と流速によって決定されるより低い高さまで減少する。水柱の幅は変化せず高さが変わるので、単位時間あたりの一定の流量を維持するためには斜面をのぼる際に流速は増す必要性がある。加速した水は渦巻き装置に衝突し、それは一般的に図13〜15に示されているように構成される。渦巻き装置の中心孔から流入する水は渦を形成し、渦巻きの中心でのオイル含有藻類の濃縮と、そのほかの懸濁液のより大きな成分を渦の外側で分離する。しかしながらいくつかの藻類の成分は溶液よりの藻類を重くすることがあり、このような藻類は図15(B)に示したようにドゥエルチューブの周辺の開口部から回収される。中心孔の中を流れる水はチャンバをはさんで加速斜面の逆側にある減速斜面に衝突する。水は減速し、2つ目の可撓性のあるチューブに入りチャンバを出る。
【0087】
図24は例示的なバッグの構成とシーリングの機構を示す。バッグ(チューブ)は上と下の層が薄い、強度の高い、本質的に透明なプラスチック素材、例えば0.254mm(0.01インチ)厚のポリエチレンのようなもので構成されている。熱的バリヤは12.7mm(0.5インチ)または25.4mm(1.0インチ)厚の低密度ポリフォーム(例:発泡ポリエチレン)この例では薄い層(例:0.089mm[0.0035インチ])で熱的バリヤに藻類が付着しないようにする。熱的バリヤは熱的接着ビーズまたはプラスチック溶接により薄いサイドストリップに接着されていてよい。三層の端は熱的に結合されている。
【0088】
バッグ(チューブ)は図24に図示したようにバッグの先端に挿入した固いシーリングフレームの上に伸ばすことができる。実物大の系においてフレームは20フィート幅で12インチの高さで軸方向に6インチの深さで20フィートの幅の間に周期的に存在する縦方向の支柱によって硬化されていてもよい。硬化した複合体または侵食耐性の金属隔膜とその配列と翻訳の機構をフレームの中に組み込むことが出来る。フレームとその上に伸びているチューブの先端は円形の圧迫されたシールで、チャンバに開いた12インチ×20フィートの穴のなかを裏打ちしているものの中に挿入される。フレームとバッグがチャンバの中に挿入されると、シールは膨らみ、シーリングフレームの内部を圧迫してバッグとフレームをチャンバの中に安定的に保つ。圧力シールは多くの膨張シールチューブを有していてよく、それぞれが個別の空気圧縮機と圧力リークアラームセンサーによって維持されていてもよい。隔膜バーを隔膜に取り付け、それを作動器に連結してもよい。隔膜は上または下にシステム作動器にワイヤーで連結している2位置フィードバック電気水圧作動器により4バー駆動させることができる。他の様々な作動器システム例えば例1の例示的モデルにおいて用いられている一般的な空気圧線形作動器は隔膜を上または下に動かすことに適している。
【0089】
例13.藻類からのバイオディーゼル生産
例11で示されているように藻類は成熟しそのオイル成分の為に採集される。例12で描写された渦巻き装置が部分的に藻類を分離するために用いられる。藻類の細胞壁は高いせん動力を有する機械の中を通過させることにより粉砕することができる。オイルは他の藻類成分から市販の遠心分離機により分離される。オイルはコンネマン(Connemann)処理のアルカリ塩触媒のエステル交換反応によりバイオディーゼルに変換される。
20フィート×300フィートバイオリアクターチューブを2つ有するバイオリアクターは年に2800ガロンのバイオディーゼルを生産する。
【0090】
例14.バイオリアクター制御装置
いくつかの態様においては中央処理部局、例えばコンピュータコントローラにより全てのバイオリアクターの機能を制御することができる。コントローラはバイオリアクター中の様々なセンサーや作動器と操作可能なかたちで組み居合わせることが出来る。コンピュータはバイオリアクターの全ての機能、例えばローラーの運動と配置、水流、渦巻き操作、藻類や栄養素の採集、装置への液体入力、着たい除去、CO2 注入などを統合することができる。
【0091】
例示的な操作周期が図27に図示されている。ディスカッションでは簡単のために方向を明示しているが、実際に使用するときは現地の地理や太陽の位置、温度などにより装置を様々な方向に並べることができる。図27に図示されているようにローラーHとIは最初はベリーパンの上でチューブの先端に位置している。フラッパー弁Jは上の位置にあり、南方向に流れる水は渦巻き装置の最低棚板から流出し、北方向に流れる水が渦巻き装置の上の棚板の上へ分配されるようにフラッパー弁Kは下の位置に存在する。図28Aに示されているようにローラーHがコントローラにより1フィート/秒の一定の速度で南方向に進むように指令されるところから始まる。動くとローラーHの前方のチューブR内で圧力が高まり、藻類の含水性媒体(水)が南方向へと動き始め、西へ向かいCO2 ハウジングBを通過し、北へ向かいチューブSを通過し、停止しているローラーIのしたをくぐってベリーパンチャネルを通る。水がフラッパー弁Kを介して上に向かい棚板Aの上に至ると渦巻き装置Nの中へと回転を始め、渦をまいて最低棚板まで流れフラッパー弁Jを通って膨張し、ローラーHの後ろから再度流入を始める。
【0092】
図28はローラーHがチューブRを完全に横断しきって渦巻き装置ハウジングで停止しているところを図示している。両方のローラーがベリーパンの上に位置しているため、液体は慣性により、示した方向に動き続けることができる。遅延無くローラーIはコントローラによって北方向へ動くように命令される。これが時計回りの水流を持続し、水はCO2 ハウジングBを通過して戻り、ローラーHのしたをくぐってベリーパンチャネルを通る。ローラーIが最終的に渦巻き装置ハウジングに到達した時、貯まったモーメントの為に動き続ける水以外のすべての動きは停止し、水も摩擦によりしだいに運動が低下しほとんどゼロとなる。
【0093】
この時点では液体の循環方向は逆になっている。まずフラッパーJが下の位置に設置され、反時計回りの逆流がまず上の棚板へ流入し、フラッパーKは上の位置に設置され励起している下の棚板の水はバイオリアクターチューブの高さの限度まで膨張する。ローラーIがコンピュータの制御の下南に動き始め、反時計回りの運動を始めるために水を前に押し出す。チューブSの終わりで停止した後、ローラーHはすぐに北方向に動き始め、圧力の先端と最大流量の動きを渦巻き装置に向かわせる。チューブRの終わりでローラーHが止まると、液体はそれ自体のモーメントの為に動き続け、摩擦によりしだいに運動が低下しほとんどゼロとなる。これが達成されると、図28で示したようにコントローラは連続的な時計回りの水流を開始させ、定常的な繰り返し運動を再開させる。この運動は実行するのに安価であるばかりでなく、ローラーの方向変換の際に重いローラーを水から持ち上げる必要性がなく、水流の逆転によりバイオリアクター内に藻類が定着してしまうような水流のない箇所ができにくい。
【0094】
CO2 注入器は逆流にさらされる気泡注入器のみが延長された気泡停滞時間とCO2吸収量増大を利用するように制御することができる(図12参照)。CO2 の注入量は限定的ではなく、CO2 注入がpHや他のインジケーターによって決定されるように断続的であることが期待される。
【0095】
チューブS用の隔膜はEとFである。チューブR用の隔膜はCとDである。それぞれのチューブ用隔膜は独立に制御されうるが、それぞれの関連するローラーの動きとは調和していなければならない。
【0096】
ローラーがその停止位置を出る際にコントローラは関連している隔膜が上または下の位置に設定されるべきかと決定しなければならない。もし隔膜が上の位置に決定された場合、ローラーの前進に伴い隔膜の下に水が巻き込まれるようにローラーの開始地点の隔膜弁は上に位置せねばならない。チューブの末端の隔膜弁はローラーが進んでいる間は、隔膜のシーリング方がチューブ内からの水の流出を許している以上、上下どちらの位置にあってもよい。しかしながらローラーが止まった際は、チューブの末端の隔膜弁は上に位置せねばならない。
【0097】
隔膜が下に位置することが望ましい場合、ローラー開始地点の隔膜弁は、ローラー運動により水が隔膜の上を通るように下に位置していなければならない。チューブの末端の隔膜弁はローラーが進んでいる間は、上または下のチューブチャンバ内からの自由な水の流出を許すように設計されている以上、上下どちらの位置にあってもよい。しかしながらローラーが止まった際は、チューブの末端の隔膜弁は下に位置せねばならず、さもなければ水が隔膜の下に入りこんで隔膜が浮いて上昇してしまう。
【0098】
「O」はコンピュータと連絡している液体温度センサーであり、感知した温度を藻類のために望ましい温度のセットと比較するものである。天気と日中の時間の条件によってコンピュータが熱的隔膜を上または下の位置に置くことを決定し、ローラーの運動と隔膜弁の運動を連動させる。いくつかの場合においては大気や放射性の環境に対して液体が熱を失うのか得るのかを感知するセンサーを構成してもよい。そのようなセンサーは少量の液体(0.1ガロン/分)を3×3フィート、深さ3インチの地面に置いてあり、実質的に温度がバイオリアクターが乗っている地面と同一のプラスチック製のバッグに通すことにより構築することができる。0.02゜Fの解像度の微分温度感知センサーがセンサーのバッグへの流入時と流出時の温度を測る。液体がバッグを通過する際に温度が増加している場合はコンピュータが隔膜を動かし溶液がバッグの中で冷えすぎている場合は環境にさらし、溶液が温まり過ぎている場合は環境から隔離する。センサーバッグが環境への暴露が溶液を冷やす場合は逆の論理が適用できる。
【0099】
「P」はコンピュータと連絡しているpHセンサーである。液体のpHの値を藻類のために望ましいpHのセットと比較し、最大成長と採集のためのCO2 濃度のインジケーターとするものである。pHが高すぎる場合、コンピュータは適当なCO2 発生器の弁を開き、純粋なCO2 またはCO2 を含む排気ガスを溶液内に導入して炭酸ガスの生成により酸性に傾けpHを下げる。
【0100】
ここで開示、請求した全ての組成、装置、系、そして方法は本開示により再実験をせずに使用、作成することができる。好ましい態様において組成や方法を述べたが、当業者には発明のコンセプト、精神、領域から出ない範囲でこれら組成、装置、系、方法、ステップ、ステップの順番などに変化を付け加えることができることは明らかであろう。特に、化学的または生理学的に関連のある物質はここで示された物質と代えることができ、同一または同等の結果を得ることができる。このような当業者にとって明らかな類似した代替物や変化は添付の特許請求の範囲にて定義した発明のコンセプト、精神、領域の内にあるものと見なす。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】システムの実施形態の線図的説明図である。
【図2】水産養殖農園の実施形態の上空からの説明図である。
【図3】ローラーおよび採取用渦流装置を備えるバイオリアクターの実施例の説明図である。
【図4】熱制御システムの実施形態の説明図である。
【図5】生物付着対策の実施例(ナノコーティング)の説明図である。
【図6】連続流動式高圧加熱滅菌器(オートクレーブ)の説明図である。
【図7】抽出ローラーの実施例の説明図である。
【図8】遠隔操作によるバイオリアクター技術の実施形態を示す説明図である。
【図9】代替案であるバイオリアクターの2バッグシステムの説明図である。
【図10】カリフォルニア州ゴレタ(Goleta)海岸にて採取した砂の放射特性を示すグラフである。
【図11】熱的バリヤのための理想的な材料における透過特性の例を示すグラフである。
【図12】ガス溶解のためのCO2 気泡発生器の実施例の説明図である。
【図13】渦巻き装置の実施例のモデルを示す斜視図図である。
【図14】渦巻き装置の実施例の、ドゥエルチューブ、加速円錐体、固定子フィンを示す更なる詳細図である。
【図15A】渦巻き装置の流体力学的説明図である。
【図15B】シッパーチューブ付きの渦巻き装置の説明図である。
【図16】熱的バリヤ付きおよび熱的バリヤなしの各閉鎖系バイオリアクター内における水温のコンピュータシミュレーションを示すグラフである。
【図17】軸方向渦流誘導装置の実施例によって誘導された水流を示す説明図である。
【図18】1/5スケールの閉鎖系バイオリアクター例のモデルを示す説明図である。
【図19】ローラー、側壁、CO2 気泡発生器を有する端部チャンバの実施例を示す例示的説明図である。
【図20】ローラー、側壁、渦巻き装置を収容する端部チャンバの実施例を示す例示的説明図である。
【図21】双方向ローラーシステムのための水流バイパスの好ましい実施例の説明図である。
【図22】双方向ローラーシステムのための「ベリーパン」の実施例の説明図である。
【図23】渦巻き装置の実施形態の説明図である。
【図24】可撓性チューブの構築と取り付け機構の実施例の説明図である。
【図25】好ましいローラー駆動システムの実施例の説明図である。
【図26】反応バッグの側壁デザインの実施例を示す説明図である。
【図27】バイオリアクター装置における制御システムの実施例の説明図である。
【図28】制御サイクルの実施例の説明図である。
【図29】チューブ表面のフレネルパターンの実施例を示す説明図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)含水性の媒体を収容可能な1個またはそれ以上の可撓性のあるチューブと、
b)媒体を前記チューブに循環させ、また光合成によって生成された酸素を除去するよう前記チューブに対して動作可能に係合させた1個またはそれ以上の蠕動ローラーと、
c)前記媒体の温度を調節するよう前記1個またはそれ以上のチューブ内に設けた熱的バリヤであって、この熱的バリヤの上方または下方に前記媒体を選択的に導入させ、前記媒体の温度を加熱または冷却させるようにした該熱的バリヤと
を備えたことを特徴とする閉鎖系バイオリアクター装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、さらに、チューブ内に縦方向に配置し、前記含水性の媒体を回転混合させる複数個の軸方向渦流誘導器を設けた装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、隣接する軸方向渦流誘導器は、互いに逆向きの時計回りおよび反時計回りのねじれを起こす構成とした装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、前記チューブを、地面に沿って水平方向に配置した装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、さらに、2個の可撓性チューブおよび2個の蠕動ローラーを備え、各チューブに対して動作可能に1個のローラーに係合させた装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、さらに、第1制御ハウジングおよび第2制御ハウジングを備え、これら制御ハウジングを前記2個のチューブの端部に対して動作可能に接続し、生物学的閉鎖系を形成した装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、さらに、前記第1制御ハウジング内に、藻類もしくは他の生物を濃縮する、または粘液もしくは泡を除去する渦巻き装置を設けた装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、さらに、前記渦巻き装置に対して動作可能に接続した1個またはそれ以上のシッパーチューブを設け、このシッパーチューブにより、濃縮した藻類もしくは他の生物を装置から除去する装置。
【請求項9】
請求項6に記載の装置において、さらに、第2制御ハウジング内に、含水性の媒体にCO2 を供給するガス気泡発生器を設けた装置。
【請求項10】
請求項5に記載の装置において、チューブに沿って蠕動ローラーを移動させることにより、酸素または他の溶解ガスを媒体から除去する装置。
【請求項11】
a)含水性の媒体を収容可能な2個の可撓性のあるチューブと、
b)前記チューブに対して動作可能に係合して前記媒体をチューブに循環させ、前記チューブからガスの泡を除去する2個の蠕動ローラーと、
c)前記チューブ内に縦方向に配置し、含水性の媒体を太陽光に回転曝露させる複数個の軸方向渦流誘導器と、
d)閉鎖系を形成するように前記チューブの端部に対して動作可能に接続した第1制御ハウジングおよび第2制御ハウジングと
を備えたことを特徴とする閉鎖系バイオリアクター装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、さらに、1個またはそれ以上のチューブ内に媒体の温度を調節する熱的バリヤを設け、媒体を選択的に熱的バリヤの上方または下方に導入させることにより熱的環境に対して曝露または隔離させる装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置において、さらに、第1制御ハウジング内に媒体を熱的バリヤの上方または下方に導入させる機構を設けた装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置において、前記機構は、アクチュエータにリンク連結した少なくとも1個の固い隔膜を有し、前記アクチュエータは、前記隔膜を熱的バリヤの上方または下方に位置決めするものとした装置。
【請求項15】
請求項11に記載の装置において、さらに、第1制御ハウジング内に藻類を濃縮する渦巻き装置を設けた装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置において、さらに、渦巻き装置に対して動作可能に連結した1個またはそれ以上のシッパーチューブを設け、このシッパーチューブにより、濃縮された藻類を装置から除去する装置。
【請求項17】
請求項11に記載の装置において、さらに、第2制御ハウジング内にガス気泡発生器を設け、このガス気泡発生器により含水性の媒体にCO2 を供給する装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置において、前記ガス気泡発生器は、ネオプレン製の有孔薄膜を有し、この有孔薄膜からガスを放出する装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置において、水柱の底部からガスの泡を導入し、水を下向き流動させ、ガスの泡を上向きに流動させる装置。
【請求項20】
藻類を培養する方法において、a) 請求項1〜18のうちいずれか一項記載の閉鎖系バイオリアクターに藻類を導入するステップと、
b)藻類を太陽光に曝露させるステップと、
c)熱的バリヤの上方または下方への媒体の分配を制御することにより媒体の温度を調整するステップと、
d)藻類の増殖と成長を可能にする条件の下で藻類を培養するステップと
を有することを特徴とする藻類培養方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法において、さらに、媒体から藻類を分離するステップを有する方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、さらに、オイルを藻類から抽出するステップを有する方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、さらに、前記オイルからバイオディーゼルを生成するステップを有する方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法において、エステル交換によりバイオディーゼルを生成する方法。
【請求項25】
請求項20記載の方法において、さらに、蠕動ローラーを用いて藻類をバイオリアクターに循環させるステップを有する方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法において、チューブ内の軸方向渦流誘導器によりチューブ内の藻類を回転循環させる方法。
【請求項27】
請求項20記載の方法において、さらに、1個以上のCO2 泡発生器を用いてCO2 を前記媒体に導入する方法。
【請求項28】
請求項21記載の方法において、渦巻き装置を用いて藻類を前記媒体から部分的に分離する方法。
【請求項29】
請求項22記載の方法において、さらに、藻類から非オイル生成物を分離するステップを有する方法。
【請求項30】
請求項29記載の方法において、非オイル生成物は、炭水化物を含むものとした方法。
【請求項31】
請求項30記載の方法において、炭水化物を、水素ガス、メタンガスおよび/またはエタノールに変換する方法。
【請求項32】
請求項20記載の方法において、さらに、藻類を、動物またはヒトの食料として藻類を採取するステップを有する方法。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、前記藻類は、スピルリナ、ドナリエラまたはテトラセルミスとした方法。
【請求項34】
請求項20記載の方法において、さらに、藻類摂食水生生物の飼料として前記藻類を用いるステップを有する方法。
【請求項35】
請求項34記載の方法において、前記水生生物は、クルマエビとした方法。
【請求項36】
藻類からバイオディーゼルを生産するシステムにおいて、
a)請求項1〜18いずれか一項に記載の閉鎖系バイオリアクターであって、含水性の媒体は藻類が懸濁するものとした該閉鎖系バイオリアクターと、
b)前記媒体から藻類を採取する機構と、
c)前記藻類からオイルを分離する装置と、
d)前記オイルをバイオディーゼルに変換する装置と
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項37】
請求項36記載のシステムにおいて、前記藻類を採取する機構は、渦巻き装置および1個またはそれ以上のシッパーチューブを有するものとして構成したシステム。
【請求項38】
請求項37記載のシステムにおいて、前記藻類を採取する機構は、少なくとも1個の遠心分離機を有するものとして構成したシステム。
【請求項39】
請求項36記載のシステムにおいて、前記オイルをバイオディーゼルに変換する装置は、エステル変換処理を用いるものとしたシステム。
【請求項40】
請求項36記載のシステムにおいて、前記閉鎖系バイオリアクターは、1個またはそれ以上のトラック上に沿う1個またはそれ以上のローラーを有し、ローラーを可撓性のあるチューブの長さに沿って前進してチューブ内の懸濁液を移動させるものとしたシステム。
【請求項41】
請求項40記載のシステムにおいて、前記チューブは、非圧縮状態におけるチューブ高さの約85%となるまでチューブを圧縮するよう、前記チューブに接触する前記ローラーを配置するシステム。
【請求項42】
請求項41記載のシステムにおいて、チューブ内の懸濁液の運動がチューブの一方の端部において渦巻き流を生ずる構成としたシステム。
【請求項43】
請求項42記載のシステムにおいて、渦巻き流がオイル含有藻類を含水性媒体からの部分的に分離するものとしたシステム。
【請求項44】
請求項36記載のシステムにおいて、チューブは、このチューブ内に地面とほぼ平行となるよう配置した熱的バリヤを有し、この熱的バリヤは、チューブ内の懸濁液の温度を調節するものとしたシステム。
【請求項45】
請求項44記載のシステムにおいて、地面からの熱的バリヤの高さは、含水性媒体の温度制御のために調整可能とした。
【請求項46】
請求項45記載のシステムにおいて、日中は懸濁液を熱的バリヤの下方に流して温度を地表温度に維持し、熱的バリヤの上方では懸濁液を暖めるシステム。
【請求項47】
請求項45記載のシステムにおいて、夜間は懸濁液を熱的バリヤの上方に流すことによって暖め、熱的バリヤの下方では懸濁液を地表温度に維持するもの。
【請求項48】
請求項36記載のシステムにおいて、チューブの外面をプラスチックで構成したシステム。
【請求項49】
請求項48記載のシステムにおいて、前記プラスチックは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(エチレンナフタラート)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタラート)、ポリオレフィン、ポリブチレン、ポリアクリラート、そしてポリビニリデンクロライドから成るグループから選択したシステム。
【請求項50】
請求項48記載のシステムにおいて、チューブの外面を、0.01インチ(0.254mm)厚のポリエチレンで構成したシステム。
【請求項51】
請求項42記載のシステムにおいて、熱的バリヤを、1.0インチ(25.4mm)厚の発泡ポリエチレンまたは他の気泡入り構造で構成したシステム。
【請求項52】
請求項51記載のシステムにおいて、熱的バリヤの上面は、砂または、半透明セラミックもしくはプラクチック、またはケイ酸塩、またはガラスの層を有するものとしたシステム。
【請求項53】
請求項52記載のシステムにおいて、熱的バリヤの上面は、1.0に近い赤外線放射率を示すものとしたシステム。
【請求項54】
請求項40記載のシステムにおいて、前記ローラーの運動は、酸素および他のガスをシステムから除去して前記媒体から回収するものとしたシステム。
【請求項55】
請求項48記載のシステムにおいて、プラスチックの外層には、線形フレネル模様の窪みを設け、スネルの法則の下方角から太陽光を回収し、藻類の媒体に向けて指向させるシステム。
【請求項56】
請求項55記載のシステムにおいて、チューブは、温暖な気候の冬期中、南からの低角度太陽光に直交するよう配置したシステム。
【請求項1】
a)含水性の媒体を収容可能な1個またはそれ以上の可撓性のあるチューブと、
b)媒体を前記チューブに循環させ、また光合成によって生成された酸素を除去するよう前記チューブに対して動作可能に係合させた1個またはそれ以上の蠕動ローラーと、
c)前記媒体の温度を調節するよう前記1個またはそれ以上のチューブ内に設けた熱的バリヤであって、この熱的バリヤの上方または下方に前記媒体を選択的に導入させ、前記媒体の温度を加熱または冷却させるようにした該熱的バリヤと
を備えたことを特徴とする閉鎖系バイオリアクター装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、さらに、チューブ内に縦方向に配置し、前記含水性の媒体を回転混合させる複数個の軸方向渦流誘導器を設けた装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、隣接する軸方向渦流誘導器は、互いに逆向きの時計回りおよび反時計回りのねじれを起こす構成とした装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、前記チューブを、地面に沿って水平方向に配置した装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、さらに、2個の可撓性チューブおよび2個の蠕動ローラーを備え、各チューブに対して動作可能に1個のローラーに係合させた装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、さらに、第1制御ハウジングおよび第2制御ハウジングを備え、これら制御ハウジングを前記2個のチューブの端部に対して動作可能に接続し、生物学的閉鎖系を形成した装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置において、さらに、前記第1制御ハウジング内に、藻類もしくは他の生物を濃縮する、または粘液もしくは泡を除去する渦巻き装置を設けた装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、さらに、前記渦巻き装置に対して動作可能に接続した1個またはそれ以上のシッパーチューブを設け、このシッパーチューブにより、濃縮した藻類もしくは他の生物を装置から除去する装置。
【請求項9】
請求項6に記載の装置において、さらに、第2制御ハウジング内に、含水性の媒体にCO2 を供給するガス気泡発生器を設けた装置。
【請求項10】
請求項5に記載の装置において、チューブに沿って蠕動ローラーを移動させることにより、酸素または他の溶解ガスを媒体から除去する装置。
【請求項11】
a)含水性の媒体を収容可能な2個の可撓性のあるチューブと、
b)前記チューブに対して動作可能に係合して前記媒体をチューブに循環させ、前記チューブからガスの泡を除去する2個の蠕動ローラーと、
c)前記チューブ内に縦方向に配置し、含水性の媒体を太陽光に回転曝露させる複数個の軸方向渦流誘導器と、
d)閉鎖系を形成するように前記チューブの端部に対して動作可能に接続した第1制御ハウジングおよび第2制御ハウジングと
を備えたことを特徴とする閉鎖系バイオリアクター装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置において、さらに、1個またはそれ以上のチューブ内に媒体の温度を調節する熱的バリヤを設け、媒体を選択的に熱的バリヤの上方または下方に導入させることにより熱的環境に対して曝露または隔離させる装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置において、さらに、第1制御ハウジング内に媒体を熱的バリヤの上方または下方に導入させる機構を設けた装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置において、前記機構は、アクチュエータにリンク連結した少なくとも1個の固い隔膜を有し、前記アクチュエータは、前記隔膜を熱的バリヤの上方または下方に位置決めするものとした装置。
【請求項15】
請求項11に記載の装置において、さらに、第1制御ハウジング内に藻類を濃縮する渦巻き装置を設けた装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置において、さらに、渦巻き装置に対して動作可能に連結した1個またはそれ以上のシッパーチューブを設け、このシッパーチューブにより、濃縮された藻類を装置から除去する装置。
【請求項17】
請求項11に記載の装置において、さらに、第2制御ハウジング内にガス気泡発生器を設け、このガス気泡発生器により含水性の媒体にCO2 を供給する装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置において、前記ガス気泡発生器は、ネオプレン製の有孔薄膜を有し、この有孔薄膜からガスを放出する装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置において、水柱の底部からガスの泡を導入し、水を下向き流動させ、ガスの泡を上向きに流動させる装置。
【請求項20】
藻類を培養する方法において、a) 請求項1〜18のうちいずれか一項記載の閉鎖系バイオリアクターに藻類を導入するステップと、
b)藻類を太陽光に曝露させるステップと、
c)熱的バリヤの上方または下方への媒体の分配を制御することにより媒体の温度を調整するステップと、
d)藻類の増殖と成長を可能にする条件の下で藻類を培養するステップと
を有することを特徴とする藻類培養方法。
【請求項21】
請求項20記載の方法において、さらに、媒体から藻類を分離するステップを有する方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、さらに、オイルを藻類から抽出するステップを有する方法。
【請求項23】
請求項22記載の方法において、さらに、前記オイルからバイオディーゼルを生成するステップを有する方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法において、エステル交換によりバイオディーゼルを生成する方法。
【請求項25】
請求項20記載の方法において、さらに、蠕動ローラーを用いて藻類をバイオリアクターに循環させるステップを有する方法。
【請求項26】
請求項25記載の方法において、チューブ内の軸方向渦流誘導器によりチューブ内の藻類を回転循環させる方法。
【請求項27】
請求項20記載の方法において、さらに、1個以上のCO2 泡発生器を用いてCO2 を前記媒体に導入する方法。
【請求項28】
請求項21記載の方法において、渦巻き装置を用いて藻類を前記媒体から部分的に分離する方法。
【請求項29】
請求項22記載の方法において、さらに、藻類から非オイル生成物を分離するステップを有する方法。
【請求項30】
請求項29記載の方法において、非オイル生成物は、炭水化物を含むものとした方法。
【請求項31】
請求項30記載の方法において、炭水化物を、水素ガス、メタンガスおよび/またはエタノールに変換する方法。
【請求項32】
請求項20記載の方法において、さらに、藻類を、動物またはヒトの食料として藻類を採取するステップを有する方法。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、前記藻類は、スピルリナ、ドナリエラまたはテトラセルミスとした方法。
【請求項34】
請求項20記載の方法において、さらに、藻類摂食水生生物の飼料として前記藻類を用いるステップを有する方法。
【請求項35】
請求項34記載の方法において、前記水生生物は、クルマエビとした方法。
【請求項36】
藻類からバイオディーゼルを生産するシステムにおいて、
a)請求項1〜18いずれか一項に記載の閉鎖系バイオリアクターであって、含水性の媒体は藻類が懸濁するものとした該閉鎖系バイオリアクターと、
b)前記媒体から藻類を採取する機構と、
c)前記藻類からオイルを分離する装置と、
d)前記オイルをバイオディーゼルに変換する装置と
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項37】
請求項36記載のシステムにおいて、前記藻類を採取する機構は、渦巻き装置および1個またはそれ以上のシッパーチューブを有するものとして構成したシステム。
【請求項38】
請求項37記載のシステムにおいて、前記藻類を採取する機構は、少なくとも1個の遠心分離機を有するものとして構成したシステム。
【請求項39】
請求項36記載のシステムにおいて、前記オイルをバイオディーゼルに変換する装置は、エステル変換処理を用いるものとしたシステム。
【請求項40】
請求項36記載のシステムにおいて、前記閉鎖系バイオリアクターは、1個またはそれ以上のトラック上に沿う1個またはそれ以上のローラーを有し、ローラーを可撓性のあるチューブの長さに沿って前進してチューブ内の懸濁液を移動させるものとしたシステム。
【請求項41】
請求項40記載のシステムにおいて、前記チューブは、非圧縮状態におけるチューブ高さの約85%となるまでチューブを圧縮するよう、前記チューブに接触する前記ローラーを配置するシステム。
【請求項42】
請求項41記載のシステムにおいて、チューブ内の懸濁液の運動がチューブの一方の端部において渦巻き流を生ずる構成としたシステム。
【請求項43】
請求項42記載のシステムにおいて、渦巻き流がオイル含有藻類を含水性媒体からの部分的に分離するものとしたシステム。
【請求項44】
請求項36記載のシステムにおいて、チューブは、このチューブ内に地面とほぼ平行となるよう配置した熱的バリヤを有し、この熱的バリヤは、チューブ内の懸濁液の温度を調節するものとしたシステム。
【請求項45】
請求項44記載のシステムにおいて、地面からの熱的バリヤの高さは、含水性媒体の温度制御のために調整可能とした。
【請求項46】
請求項45記載のシステムにおいて、日中は懸濁液を熱的バリヤの下方に流して温度を地表温度に維持し、熱的バリヤの上方では懸濁液を暖めるシステム。
【請求項47】
請求項45記載のシステムにおいて、夜間は懸濁液を熱的バリヤの上方に流すことによって暖め、熱的バリヤの下方では懸濁液を地表温度に維持するもの。
【請求項48】
請求項36記載のシステムにおいて、チューブの外面をプラスチックで構成したシステム。
【請求項49】
請求項48記載のシステムにおいて、前記プラスチックは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(エチレンナフタラート)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタラート)、ポリオレフィン、ポリブチレン、ポリアクリラート、そしてポリビニリデンクロライドから成るグループから選択したシステム。
【請求項50】
請求項48記載のシステムにおいて、チューブの外面を、0.01インチ(0.254mm)厚のポリエチレンで構成したシステム。
【請求項51】
請求項42記載のシステムにおいて、熱的バリヤを、1.0インチ(25.4mm)厚の発泡ポリエチレンまたは他の気泡入り構造で構成したシステム。
【請求項52】
請求項51記載のシステムにおいて、熱的バリヤの上面は、砂または、半透明セラミックもしくはプラクチック、またはケイ酸塩、またはガラスの層を有するものとしたシステム。
【請求項53】
請求項52記載のシステムにおいて、熱的バリヤの上面は、1.0に近い赤外線放射率を示すものとしたシステム。
【請求項54】
請求項40記載のシステムにおいて、前記ローラーの運動は、酸素および他のガスをシステムから除去して前記媒体から回収するものとしたシステム。
【請求項55】
請求項48記載のシステムにおいて、プラスチックの外層には、線形フレネル模様の窪みを設け、スネルの法則の下方角から太陽光を回収し、藻類の媒体に向けて指向させるシステム。
【請求項56】
請求項55記載のシステムにおいて、チューブは、温暖な気候の冬期中、南からの低角度太陽光に直交するよう配置したシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公表番号】特表2009−505660(P2009−505660A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528198(P2008−528198)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/033252
【国際公開番号】WO2007/025145
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508203976)エイ2ビーイー カーボン キャプチャー エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/033252
【国際公開番号】WO2007/025145
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508203976)エイ2ビーイー カーボン キャプチャー エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】
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