蛍光体、蛍光体含有組成物、発光装置、照明装置、及び、画像表示装置
【課題】近紫外光による励起可能であって、従来の蛍光体よりも半値幅が広く、自然な白色光を得るのに好ましい、青色〜緑色発光の蛍光体を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表わされる化学組成を有する蛍光体。 M13-3xEu3xM21-yLnySi2O8-zNz (1)(式中、M1は、Ba、Sr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M2は、Mg及びZnからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、Lnは、La、Lu、Y、Sc及びGdからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、x、y及びzは、各々、0<x<1、0.05≦y<1、0≦z<1を満たす正の数を示す。)
【解決手段】下記式(1)で表わされる化学組成を有する蛍光体。 M13-3xEu3xM21-yLnySi2O8-zNz (1)(式中、M1は、Ba、Sr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M2は、Mg及びZnからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、Lnは、La、Lu、Y、Sc及びGdからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、x、y及びzは、各々、0<x<1、0.05≦y<1、0≦z<1を満たす正の数を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は近紫外光による励起により、青色〜緑色の発光を行う蛍光体、それを含有する蛍光体含有組成物、及び発光装置、並びにその発光装置を用いた照明装置、及び画像表示装置に関する。
より詳しくは、蛍光体の発光波長範囲が広く、より自然光に近い白色光を得るのに好ましい、蛍光体、それを含有する蛍光体含有組成物、及び発光装置、並びにその発光装置を用いた照明装置、及びに画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光装置を用いたディスプレイ用及び照明用の白色発光装置の開発が盛んに行なわれている。これらの装置に用いられる蛍光体としては、青色光を励起光源とするものと、近紫外光を励起光源とするものが知られている。現在は、前記の中でも青色光を励起光源とするものがほとんどであり、近紫外光を励起光源とするものは限られている。
【0003】
近紫外光を励起光源とし、緑色発光をする蛍光体としては、(Ba,Sr)2SiO4:Eu、BaMgAl10O17:Eu,Mn等が知られているが、より自然光に近い白色光を得るためは、より半値幅の大きい蛍光体が望まれる(特許文献1〜2参照)。
【0004】
また、近紫外光を励起光源とする蛍光体のひとつとして、Ba3MgSi2O8という組成の母体結晶組成を有する蛍光体が知られているが(特許文献3〜5参照)、これらはいずれも青色発光を又は赤色発光を行うのみであった。加えて、その発光スペクトルの半値幅も狭いため、より自然光に近い白色光を得るには至らなかった。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6982045号明細書
【特許文献2】特公昭52−22836号公報
【特許文献3】国際公開2005/112135号パンフレット
【特許文献4】特開2002−332481号公報
【特許文献5】特開2006−124644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、近紫外光による励起が可能な蛍光体によって自然光に近い白色光を得るためには、より半値幅の広い発光スペクトル形状を示す蛍光体が望まれている。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。その目的は、近紫外光による励起可能であって、従来の蛍光体よりも半値幅が広く、自然な白色光を得るのに好ましい、青色〜緑色の蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、メルウィナイト構造であって、Ba3MgSi2O8という組成である母体結晶組成を有してなる蛍光体のMgサイトの一部を、特定の希土類元素と置換することにより、その発光スペクトルの半値幅が増大するとともに、発光ピーク波長も長波長側にシフトすることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、下記式(1)で表わされる化学組成を有することを特徴とする、蛍光体に存する(請求項1)。
【化1】
(前記式(1)において、M1は、Ba、Sr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M2は、Mg及びZnからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、Lnは、La、Lu、Y、Sc及びGdからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、x、y及びzは、各々、0<x<1、0.05≦y<1、0≦z<1、を満たす正の数を示す。)
【0009】
このとき、395nmの波長の光で励起した場合に、420nm以上550nm以下の波長範囲に発光スペクトルのピーク波長を有することが好ましい(請求項2)。
【0010】
また、前記発光スペクトルのピークの半値幅が60nm以上であることも好ましい(請求項3)。
【0011】
本発明の別の要旨は、250nm以上480nm以下の波長範囲の光で励起した場合に、420nm以上550nm以下の波長範囲にピーク波長を1つ有する発光スペクトルを有し、前記発光スペクトルのピークの半値幅が145nm以上であることを特徴とする、蛍光体に存する(請求項4)。
【0012】
このとき、下記式(2)で表わされる化学組成を有することが好ましい(請求項5)。
【化2】
(前記式(2)において、M3及びM4は、それぞれ独立にアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及び2価の遷移元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M5は、B、Al、Si、Ge、P、As、及びSbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M6は、O、N、S、及びハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、L1は、Sm、Eu、Tm及びYbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、L2は、希土類元素を示す。また、M3のイオン半径はM4のイオン半径より大きく、L2のイオン半径はM4の0.7倍以上1.3倍以下の範囲である。)
【0013】
本発明の別の要旨は、上述の蛍光体と、液体媒体とを含有することを特徴とする、蛍光体含有組成物に存する(請求項6)。
【0014】
本発明の別の要旨は、第1の発光体と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、前記第2の発光体が、請求項1〜5の何れか一項に記載の蛍光体を1種以上、第1の蛍光体として含有することを特徴とする、発光装置に存する(請求項7)。
【0015】
このとき、前記第2の発光体が、前記第1の蛍光体とは発光ピーク波長の異なる蛍光体を1種以上、第2の蛍光体として含有することが好ましい(請求項8)。
【0016】
また、前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、490nmを超え570nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、570nmを超え780nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有することも好ましい(請求項9)。
【0017】
さらに、前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、420nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、570nmを超え780nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有することも好ましい(請求項10)。
【0018】
本発明の別の要旨は、上記の発光装置を有してなることを特徴とした、照明装置に存する(請求項11)。
【0019】
本発明の別の要旨は、上記の発光装置を有してなることを特徴とした、画像表示装置に存する(請求項12)。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、近紫外光による励起可能な新規な青色〜緑色の蛍光体であって、従来の蛍光体より半値幅が広く、自然な白色光を得るのに好ましい蛍光体並びに、それを用いた蛍光体含有組成物、発光装置、照明装置及び画像表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0022】
なお、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表わす。また、括弧内にカンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。また、該括弧に付した原子の数(組成比)を表わす添字は、該括弧内に列記される元素の合計の原子の数を表わす。
例えば、「(Ca,Sr,Ba)Al2O4:Eu」という組成式は、「CaAl2O4:Eu」と、「SrAl2O4:Eu」と、「BaAl2O4:Eu」と、「Ca1-xSrxAl2O4:Eu」と、「Sr1-xBaxAl2O4:Eu」と、「Ca1-xBaxAl2O4:Eu」と、「Ca1-x-ySrxBayAl2O4:Eu」とを全て包括的に示しているものとする(但し、前記式中、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)。
【0023】
また、本明細書における色名と色度座標との関係は、すべてJIS規格に基づく(JIS Z8110及びZ8701)。
【0024】
[1.蛍光体]
本発明の一態様に係る蛍光体(以下「本発明の特定特性蛍光体」或いは単に「特定特性蛍光体」という場合がある)は、特定波長の光で励起した場合の発光ピーク半値幅が後述の規定を満たすものである。
また、本発明の別の一態様に係る蛍光体(以下「本発明の特定組成蛍光体」或いは単に「特定組成蛍光体」という場合がある)は、その組成が後述の規定を満たすものである。
【0025】
本発明の蛍光体は、「特定特性蛍光体」及び「特定組成蛍光体」のうち少なくとも一方に該当するものであるが、「特定特性蛍光体」及び「特定組成蛍光体」の双方に該当することが好ましい。
【0026】
以下の記載では、必要に応じて「特定特性蛍光体」と「特定組成蛍光体」とに分けて説明を行なう。また、「特定特性蛍光体」と「特定組成蛍光体」とを特に区別しない場合には、「本発明の蛍光体」と総称する。
なお、「特定特性蛍光体」及び「特定組成蛍光体」という語は、あくまでも説明の便宜のために用いるものであり、本発明の蛍光体になんら影響を与えるものではない。
【0027】
[1−1.特定組成蛍光体]
一方、本発明の特定組成蛍光体は、以下に説明する特徴を有する。
【0028】
<組成>
特定組成蛍光体は、下記式(1)で表わされる化学組成を有することを特徴とする。その具体例としては、Ba3MgSi2O8という母体結晶組成を有する蛍光体のMgサイトの一部を特定の希土類元素と置換する構造を挙げることができる。
【0029】
【化3】
(前記式(1)において、M1は、Ba、Sr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M2は、Mg及びZnからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、Lnは、La、Lu、Y、Sc及びGdからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、x、y及びzは、各々、0<x<1、0.05≦y<1、0≦z<1を満たす正の数を示す。)
【0030】
上記式(1)中、M1は、Ba、Sr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記M1としては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。
中でも、少なくともBaを含有することが好ましい。ここで、M1全体に対するBa、Sr、及びCaのモル比をそれぞれ[Ba]、[Sr]、及び[Ca]とすると、M1全体に対する[Ba]のモル比、即ち、[Ba]/([Ba]+[Sr]+[Ca])で表わされる値が、通常0以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上、また、通常1以下である。
【0031】
上記式(1)中、Euは、付活元素であるユーロピウムである。Euは、特定組成蛍光体中において、2価のカチオン及び/又は3価のカチオンとして存在する。この際、Euは、2価のカチオンの存在割合が高い方が好ましい。
全Eu量に対するEu2+の割合は、通常20モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
なお、特定組成蛍光体に含まれる全Eu中のEu2+の割合は、例えば、X線吸収微細構造(X−ray Absorption Fine Structure)の測定によって調べることができる。すなわち、Eu原子のL3吸収端を測定すると、Eu2+とEu3+が別々の吸収ピークを示すので、その面積から比率を定量できる。また、特定組成蛍光体に含まれる全Eu中のEu2+の割合は、電子スピン共鳴(ESR)の測定によっても知ることができる。
【0032】
上記式(1)中、xは、M1サイトに対するEuの置換量を示す数値である。該数値は、通常0より大きい値であり、好ましくは0.001以上、さらに好ましくは0.01以上、また、通常1未満、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下である。この範囲を上回ると、濃度消光により発光強度が低くなる可能性がある。また、この範囲を下回ると、発光強度が低くなる可能性がある。
【0033】
上記式(1)中、M2は、Mg及びZnからなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記M2としては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。
中でも、少なくともMgを含有することが好ましい。ここで、M2全体に対するMg、及びZnのモル比をそれぞれ[Mg]及び[Zn]とすると、M2全体に対する[Mg]のモル比、即ち、[Mg]/([Mg]+[Zn])で表わされる値が、通常0以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上、また、通常1以下である。
【0034】
上記式(1)中、Lnは、La、Lu、Y、Sc及びGdからなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記Lnとしては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。
中でも、Lu、又はYを含有することが好ましい。ここで、Ln全体に対するLa、Lu、Y、Sc及びGdのモル比をそれぞれ[La]、[Lu]、[Y]、[Sc]及び[Gd]とすると、M1全体に対する[Lu]のモル比、即ち、[Lu]/([La]+[Lu]+[Y]+[Sc]+[Gd])で表わされる値が、通常0以上、好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上、また、通常1以下である。
【0035】
上記式(1)中、yは、M2サイトに対するLnの置換量を示す数値である。本発明の特徴である、発光スペクトルの半値幅が広いという効果を得るためには、該数値が、通常0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上、また、通常1未満、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.7以下である。
yの値が大きくなるほど、発光スペクトルの半値幅が増加するが、それに伴い発光ピーク波長が青〜緑色の波長範囲の間でシフトする。そのため、青色蛍光体として用いる場合には、該数値が通常0.05以上、好ましくは0.1以上、また、通常0.25以下、好ましくは0.2以下である。また、緑色蛍光体として用いる場合には、通常0.3以上、好ましくは0.35以上、また、通常0.45以下、好ましくは0.4以下である。yの値が上記範囲を外れた場合、発光色が青緑色の蛍光体となる。
【0036】
上記式(1)中、zは、NとOとの組成比を示す数値である。該数値は、通常0以上、好ましくは0.05以上、また、通常1未満、好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下である。この範囲を外れると、格子欠損の生じる可能性がある。
【0037】
特定組成蛍光体の好ましい組成の具体例を以下の表に挙げるが、本発明の蛍光体の組成は以下の例示に制限されるものではない。
【表1】
【0038】
また、特定組成蛍光体は、前記式[1]に記載された元素、即ちM1、Eu、M2、Ln、Si、O、及びN以外に、更に、1価の元素、2価の元素、3価の元素、−1価の元素及び−3価の元素からなる群から選ばれる元素(これを以下適宜「微量元素」という)を含有していてもよい。
【0039】
中でも、微量元素としては、アルカリ金属元素、リン(P)、希土類元素、及びハロゲン元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有していることが好ましい。
【0040】
上記の微量元素の含有量の合計は、通常1ppm以上、好ましくは3ppm以上、更に好ましくは5ppm以上、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下である。特定組成蛍光体が複数種の微量元素を含有する場合には、それらの合計量が上記範囲を満たすようにする。
【0041】
また、Siは、Ge等の他の元素によって一部置換されていてもよい。但し、青色〜緑色の発光強度等の面から、Siが他の元素によって置換されている割合は、できるだけ低い方が好ましい。具体的には、Ge等の他の元素をSiの20モル%以下含んでいてもよく、全てがSiからなることがより好ましい。
【0042】
また、特定組成蛍光体は、上記の元素以外に、Tb、Ag、Sm、及びPrからなる群から選ばれる1種以上の元素を含有していてもよい。
【0043】
また、特定組成蛍光体は、上記の元素以外に、Alを含有する場合がある。Alの含有量としては、通常1ppm以上、好ましくは5ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、また、通常500ppm以下、好ましくは200ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。
【0044】
また、特定組成蛍光体は、上記の元素以外に、B(ホウ素)を含有する場合がある。Bの含有量としては、通常1ppm以上、好ましくは3ppm以上、更に好ましくは5ppm以上、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下である。
【0045】
また、特定組成蛍光体は、上記の元素以外に、Feを含有する場合がある。Feの含有量としては、通常1ppm以上、好ましくは3ppm以上、更に好ましくは5ppm以上、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下である。
【0046】
<発光スペクトルに関する特徴>
特定組成蛍光体は、上述の特徴(組成)を有していれば制限はないが、更に以下の特徴を備えていることが好ましい。
【0047】
特定組成蛍光体は、波長395nmの光で励起した場合に、以下の特徴を有する発光スペクトルが測定される。
【0048】
まず、特定組成蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピーク波長λp(nm)
が、通常420nm以上、また、好ましくは440nm以上、より好ましくは450nm以上、また、通常550nm以下、好ましくは540nm以下、より好ましくは530nm以下の範囲である。発光ピーク波長λpが上記の範囲を外れると、蛍光体から青色〜緑色を外れた色味が混色する傾向にあり、いずれも蛍光体の特性が低下する場合がある。
【0049】
また、特定組成蛍光体の発光ピークの相対強度(以下「相対発光ピーク強度」という場合がある)は、通常0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上である。なお、この相対発光ピーク強度は、化成オプトニクス社製BaMgAl10O17:Eu(製品番号LP−B4)を395nmで励起した時の発光強度を100として表わしている。この相対発光ピーク強度は高い方が好ましい。
【0050】
また、特定組成蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピーク半値幅(full width at half maximum。以下適宜「FWHM」と略称する)が60nm以上であり、広いという特徴を有する。FWHMが広いということは、即ち、自然な白色光を得るのに好ましい蛍光体であることを意味し、例えば、照明等の用途において優れた蛍光体となる。
【0051】
具体的に、特定組成蛍光体のFWHMは、通常60nm以上、好ましくは80nm以上、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは120nm以上、特に好ましくは145nm以上、また、通常200nm以下の範囲である。FWHMが狭過ぎると輝度が低下する場合があり、一方、広過ぎると色純度が低下する場合がある。
【0052】
なお、蛍光体をピーク波長395nm以下の光で励起するには、例えば、GaN系発光ダイオード等を用いることができる。
【0053】
また、蛍光体の発光スペクトルの測定、並びにその発光ピーク波長、相対発光ピーク強度及びピーク半値幅の算出は、例えば、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて行なうことができる。
【0054】
<色度座標>
特定組成蛍光体の発光色は、CIE色度座標の一つ、x、y表色系(CIE 1931表色系)で表現することができる。
【0055】
具体的に、特定特性蛍光体のCIE色度座標xの値は、通常0.15以上、好ましくは0.2以上、また、通常0.35以下、好ましくは0.3以下の範囲である。
また、特定特性蛍光体のCIE色度座標yの値は、通常0.15以上、好ましくは0.2以上、また、通常0.5以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下の範囲である。
なお、蛍光体のCIE色度座標x及びyの値は、波長480nm〜800nmの範囲における発光スペクトルから、JIS Z8724に準じて計算することにより算出することができる。
【0056】
<その他>
以上説明した特徴の他、特定組成蛍光体は、後述する特定特性蛍光体の特徴のうち、任意の一つ又は二つ以上の特徴を備えていてもよい。また、特定組成蛍光体は、後述する特定特性蛍光体に該当するものであってもよい。
【0057】
[1−2.特定特性蛍光体]
本発明の特定特性蛍光体は、以下に説明する特徴を有する。
【0058】
<発光スペクトルに関する特徴>
特定特性蛍光体は、青色〜緑色の蛍光体としての用途に鑑みて、ピーク波長250nm以上480nm以下の光で励起した場合における発光スペクトルを測定した場合に、以下の特徴を有する。
【0059】
まず、特定特性蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピーク半値幅(FWHM)が145nm以上であり、広いという特徴を有する。FWHMが広いということは、即ち、自然な白色光を得るのに好ましい蛍光体であることを意味し、例えば、照明等の用途において優れた蛍光体となる。
【0060】
具体的に、特定特性蛍光体のFWHMは、通常145nm以上、好ましくは150nm以上、より好ましくは155nm以上、特に好ましくは160nm以上、また、通常200nm以下の範囲である。FWHMが狭過ぎると輝度が低下する場合があり、一方、広過ぎると色純度が低下する場合がある。
【0061】
特定特性蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピーク波長λp(nm)が、通常420nm以上、好ましくは450nm以上、より好ましくは480nm以上、また、通常550nm以下、好ましくは540nm以下、より好ましくは530nm以下の範囲である。発光ピーク波長λpが上記の範囲を外れると、蛍光体から青色〜緑色を外れた色味が混色する傾向にあり、いずれも蛍光体の特性が低下する場合がある。
【0062】
また、特定特性蛍光体の発光ピークの相対強度(以下「相対発光ピーク強度」という場合がある)は、通常0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.8以上である。なお、この相対発光ピーク強度は、化成オプトニクス社製BaMgAl10O17:Eu(製品番号LP−B4)を波長395nmの光で励起した時の発光強度を100として表わしている。この相対発光ピーク強度は高い方が好ましい。
【0063】
なお、蛍光体をピーク波長250nm以上480nm以下の光で励起するには、例えば、GaN系発光ダイオード等を用いることができる。
【0064】
また、蛍光体の発光スペクトルの測定、並びにその発光ピーク波長、ピーク相対強度及びピーク半値幅の算出は、例えば、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて行なうことができる。
【0065】
<色度座標>
特定特性蛍光体の発光色は、CIE色度座標の一つ、x、y表色系(CIE 1931表色系)で表現することができる。具体的に、好ましい範囲などは特定組成蛍光体と同様である。
【0066】
<組成>
特定特性蛍光体は、上述の特徴(発光スペクトル)を有していれば制限はないが、更に以下の式(2)の構造を有していることが好ましい。
【0067】
【化4】
(前記式(2)において、M3及びM4は、それぞれ独立にアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及び2価の遷移元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M5は、B、Al、Si、Ge、P、As、及びSbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M6は、O、N、S、及びハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、L1は、Sm、Eu、Tm及びYbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、L2は、L1以外の希土類元素を示す。また、M3のイオン半径はM4のイオン半径より大きく、L2のイオン半径はM4の0.7倍以上1.3倍以下の範囲である。)
【0068】
上記式(2)中、M3及びM4は、それそれ、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及び2価の遷移元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記M3及びM4としては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。なお、本発明において、遷移元素とは、長周期表において第3属から第12属までに属する元素をいう。
また、M3はM4よりイオン半径が大きい元素である。なお、該イオン半径については、R.D. SHANNON Acta Cryst.(1976)A32,751に記載されている。
【0069】
上記M3としては、Ba、Sr、Ca、Cs、Pb、又はKが好ましい。中でも少なくともBa、Sr又はCaを含有することが好ましく、少なくともBaを含有することがさらに好ましい。
ここで、全M3量に対するBaのモル比率としては、通常0以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上であり、また通常1以下である。
【0070】
上記M4としては、Mg、Zn、Ti、Zr、Na、又はMnが好ましい。中でも少なくともMg又はZnを含有することが好ましく、少なくともMgを含有することがさらに好ましい。
ここで、全M4量に対するMgのモル比率としては、通常0以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上であり、また通常1以下である。
【0071】
上記式(2)中、L1は、Sm、Eu、Tm及びYbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記L1としては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。中でも、Euを含有していることが好ましい。
Euを含有する場合、全L1量に対するEuのモル比率は、通常0以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上、また、通常1以下である。
【0072】
L1は付活元素であり、特定特性蛍光体中において2価のカチオン及び/又は3価のカチオンとして存在する。この際、L1は2価のカチオンの存在割合が高い方が好ましい。例えば、L1がEuの場合、全Eu量に対するEu2+の割合は、通常20モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
なお、特定特性蛍光体に含まれる全Eu中のEu2+の割合は、公知の測定方法を用いて任意に行なうことが出来るが、例えば、特定組成蛍光体の項で説明した方法で行なうことができる。
【0073】
上記式(2)中、L2は、L1以外の希土類元素を示し、かつ、L2のイオン半径はM4のイオン半径の通常0.7倍以上、好ましくは0.8倍以上、より好ましくは0.9倍以上、また、通常1.3倍以下、好ましくは1.2倍以下、より好ましくは1.1倍以下の範囲である。この範囲を上回ると、M3サイトへの置換が起こる可能性がある。また、下回ると、目的とするM4サイトへの置換が低下する可能性がある。本願発明は、M4元素のL2元素による置換によって生じる結晶構造の変化により、その効果を得られているものと推測される。
【0074】
上記L2としては、希土類元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。なお、本発明において、希土類元素とは、Sc、Y、及びランタノイド(La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)をいう。
【0075】
上記式(2)中、M5は、B、Al、Si、Ge、P、As、及びSbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記M5としては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。
中でも、B、Al、Si、Ge、又はPを含有しているのが好ましく、その中でもAl、Si、Ge、又はPを含有しているのがより好ましく、さらにはSi又はGeを含有しているのが好ましく、特にはSiが好ましい。Siを含有する場合、全M5量に対するSiのモル比率は、通常0以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上、また通常1以下である。
【0076】
上記式(2)中、M6は、O、N、S、及びハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記M6としては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。中でも、O、N、ハロゲンからなる群より選ばれる1種以上を含有していることが好ましい。特に、少なくともOを全M6量に対して、通常0以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上、また、通常1以下、好ましくは0.95以下、さらに好ましくは0.9以下含有するものである。
【0077】
<その他>
以上説明した特徴の他、特定特性蛍光体は、前述した特定組成蛍光体の特徴のうち、任意の一つ又は二つ以上の特徴を備えていてもよい。例えば、特定特性蛍光体は、特定組成蛍光体の項で説明した微量元素を、該項で説明した割合で含有してもよい。また、特定特性蛍光体は、前述する特定組成蛍光体に該当するものであってもよい。
【0078】
[1−3.本発明の蛍光体の共通の特徴]
本発明の蛍光体は、以下の特徴を有していることも好ましい。
【0079】
<励起波長に関する特性>
本発明の蛍光体の励起波長は特に限定されないが、通常200nm以上、好ましくは300nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは420nm以下、より好ましくは410nm以下の波長範囲の光で励起可能であることが好ましい。例えば、青色領域の光(波長範囲:420nm以上500nm以下)、及び/又は、近紫外領域の光(波長範囲:300nm以上420nm以下)で励起可能であれば、半導体発光素子等を第1の発光体とする発光装置に好適に使用することができる。
【0080】
なお、励起スペクトルの測定は、室温、例えば25℃において、蛍光分光光度計F−4500型(株式会社日立製作所製)を用いて測定することができる。得られた励起スペクトルから、励起ピーク波長を算出することができる。
【0081】
<重量メジアン径>
本発明の蛍光体の重量メジアン径は、通常0.01μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。なお、特定組成蛍光体の重量メジアン径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等の装置を用いて測定することができる。
【0082】
<温度特性>
本発明の蛍光体は、温度特性にも優れる。具体的には、400nmの波長の光を照射した場合の20℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値に対する150℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値の割合が、通常40%以上であり、好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である。
また、通常の蛍光体は温度上昇と共に発光強度が低下するので、該割合が100%を越えることは考えられにくいが、何らかの理由により100%を超えることがあっても良い。ただし150%を超えるようであれば、温度変化により色ずれを起こす傾向となる。
【0083】
本発明の蛍光体は、上記発光ピーク強度に関してだけでなく、輝度の点からも優れたものである。具体的には、400nmの波長の光を照射した場合の20℃での輝度に対する150℃での輝度の割合も、通常40%以上であり、好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上である。
【0084】
尚、上記温度特性を測定する場合は、例えば、発光スペクトル装置として大塚電子製MCPD7000マルチチャンネルスペクトル測定装置、輝度測定装置として色彩輝度計BM5A、ペルチェ素子による冷却機構とヒーターによる加熱機構を備えたステージ及び光源として150Wキセノンランプを備える装置を用いて、以下のように測定することができる。ステージに蛍光体サンプルを入れたセルを載せ、温度を20℃から150℃の範囲で変化させる。蛍光体の表面温度が20℃又は150℃で一定となったことを確認する。次いで、光源から回折格子で分光して取り出した波長400nmの光で蛍光体を励起して発光スペクトル測定する。測定された発光スペクトルから発光ピーク強度を求める。ここで、蛍光体の励起光照射側の表面温度の測定値は、放射温度計と熱電対による温度測定値を利用して補正した値を用いる。
【0085】
[2.本発明の蛍光体の製造方法]
本発明の蛍光体を得るための、原料、蛍光体製造法等についての一例を示す。本発明の蛍光体の製造方法は以下の例に制限されるものではなく、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の方法で製造することが出来る。
【0086】
本発明の蛍光体は、焼成により式(1)又は式(2)で示される化合物と付活剤とを含有する金属化合物混合物を焼成することにより製造することができる。すなわち、金属化合物を所定の組成となるように秤量し、混合した後に焼成することにより製造することができる。例えば、上記式(1)で表わされる蛍光体を製造する場合、M1の原料(以下適宜「M1源」という)、Euの原料(以下適宜「Eu源」という)、M2の原料(以下適宜「M2源」という)、Lnの原料(以下適宜「Ln源」という)、及び、Siの原料(以下適宜「Si源」という)を混合し(混合工程)、得られた混合物を焼成する(焼成工程)ことにより製造することができる。
また、例えば、上記式(2)で表わされる蛍光体を製造する場合、M3の原料(以下適宜「M3源」という)、L1の原料(以下適宜「L1源」という)、M4の原料(以下適宜「M4源」という)、L2の原料(以下適宜「L2源」という)、及びM5の原料(以下適宜「M5源」という)を混合し(混合工程)、得られた混合物を焼成する(焼成工程)ことにより製造することができる。
【0087】
[2−1.蛍光体原料]
本発明の蛍光体の製造に使用される蛍光体原料(M1源、Eu源、M2源、Ln源、Si源、M3源、L1源、M4源、L2源、及びM5源)としては、M1、Eu、M2、Ln、Si、M3、L1、M4、L2、及びM5の各元素の金属、合金、イミド化合物、酸窒化物、窒化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。これらの化合物の中から、複合酸窒化物への反応性や、焼成時におけるNOx、SOx等の発生量の低さ等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0088】
また、M6は上記式(2)で表わされる蛍光体のアニオン構成元素である。
M6の原料(以下適宜「M6源」という)としては、上述のM3源〜M5源、L1源及びL2源として記載された具体的化合物のうち、M6元素含有化合物がM6源としても用いられる他、N源やO源としては、蛍光体焼成雰囲気中に存在するガスもM6源となりうる。
【0089】
(M1源)
上記M1源の具体例をM1の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0090】
Baの原料(以下適宜「Ba源」という)の具体例としては、BaO、Ba(OH)2・8H2O、BaCO3、Ba(NO3)2、BaSO4、Ba(C2O4)、Ba(OCOCH3)2、BaCl2、Ba3N2、BaNH等が挙げられる。このうち好ましくは、炭酸塩、酸化物等が使用できるが、酸化物は空気中の水分と反応しやすいため、取扱の点から炭酸塩がより好ましい。中でも、BaCO3が好ましい。空気中の安定性が良く、また、加熱により容易に分解するため、目的外の元素が残留しにくく、さらに、高純度の原料を入手しやすいからである。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0091】
Caの原料(以下適宜「Ca源」という)の具体例としては、CaO、Ca(OH)2、CaCO3、Ca(NO3)2・4H2O、CaSO4・2H2O、Ca(C2O4)・H2O、Ca(OCOCH3)2・H2O、CaCl2、Ca3N2、CaNH等が挙げられる。中でも、CaCO3、CaCl2等が好ましい。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0092】
Srの原料(以下適宜「Sr源」という)の具体例としては、SrO、Sr(OH)2・8H2O、SrCO3、Sr(NO3)2、SrSO4、Sr(C2O4)・H2O、Sr(OCOCH3)2・0.5H2O、SrCl2、Sr3N2、SrNH等が挙げられる。中でも、SrCO3が好ましい。空気中の安定性が良く、また、加熱により容易に分解し、目的外の元素が残留しにくく、さらに、高純度の原料を入手しやすいからである。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0093】
(Eu源)
上記Eu源の具体例は、以下の通りである。
【0094】
Euの原料(以下適宜、「Eu源」という)の具体例としては、Eu2O3、Eu2(SO4)3、Eu2(C2O4)3・10H2O、EuCl2、EuCl3、Eu(NO3)3・6H2O、EuN、EuNH等が挙げられる。中でもEu2O3、EuCl2等が好ましく、特に好ましくはEu2O3である。
【0095】
(M2源)
上記M2源の具体例をM2の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0096】
Znの原料(以下適宜「Zn源」という)の具体例としては、ZnO、ZnF2、ZnCl2、Zn(OH)2、Zn3N2、ZnNH、Zn(C2O4)、ZnSO4等の亜鉛化合物(但し、水和物であってもよい)が挙げられる。中でも、粒子成長を促進させる効果が高いという観点からZnF2・4H2O(但し、無水物であってもよい)等が好ましい。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0097】
Mgの原料(以下適宜、「Mg源」という)の具体例としては、MgO、Mg(OH)2、塩基性炭酸マグネシウム(mMgCO3・Mg(OH)2・nH2O)、Mg(NO3)2・6H2O、MgSO4、Mg(C2O4)・2H2O、Mg(OCOCH3)2・4H2O、MgCl2、Mg3N2、MgNH等が挙げられる。中でも、MgOや塩基性炭酸マグネシウムが好ましい。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0098】
(Ln源)
上記Ln源の具体例をLnの種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0099】
Luの原料(以下適宜、「Lu源」という)の具体例としては、Lu2O3、LuCl3、LuF3、Lu(NO3)3、Lu2(CO3)3等が好ましい。中でもLu2O3が好ましい。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0100】
Laの原料(以下適宜、「La源」という)、Yの原料(以下適宜、「Y源」という)、Scの原料(以下適宜、「Sc源」という)、及びGdの原料(以下適宜、「Gd源」という)等のその他のLn源の具体例としては、Lu源の具体例として挙げた各化合物において、LuをそれぞれLa、Y、Sc、及びGd等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0101】
(Si源)
上記Si源の具体例は、以下の通りである。
【0102】
Siの原料(以下適宜、「Si源」という)の具体例としては、SiO2又はSi3N4を用いるのが好ましい。また、SiO2となる化合物を用いることもできる。このような化合物としては、具体的には、SiO2、H4SiO4、Si(OCOCH3)4等が挙げられる。また、Si3N4として反応性の点から、粒径が小さく、発光効率の点から純度の高いものが好ましい。さらに、発光効率の点からはα−Si3N4よりもβ−Si3N4の方が好ましく、特に不純物である炭素元素の含有割合が少ないものの方が好ましい。炭素含有の割合は、少なければ少ないほど好ましいが、通常0.01重量%以上含有され、通常0.3重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05%以下である。なお、炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0103】
(M3源及びM4源)
上記M3源及びM4源の具体例をM3びM4の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0104】
アルカリ金属元素のうち、Liの原料(以下適宜、「Li源」という)の具体例としては、Li2CO3、Li2O、LiOH、LiCl、LiF、Li2(C2O4)2、LiNO3等が好ましい。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0105】
Naの原料(以下適宜、「Na源」という)、Kの原料(以下適宜、「K源」という)、Rbの原料(以下適宜、「Rb源」という)、Csの原料(以下適宜、「Cs源」という)等のその他のアルカリ金属元素の具体例としては、Li源の具体例として挙げた各化合物において、LiをそれぞれNa、K、Rb、Cs等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0106】
Mgの原料(以下適宜、「Mg」という)、Caの原料(以下適宜、「Ca源」という)、Srの原料(以下適宜、「Sr源」という)、及びBaの原料(以下適宜、「Ba源」という)等のその他のアルカリ土類金属元素の具体例としては、M1源及びM2源の項で記載したのと同様のものが挙げられる。
【0107】
2価の遷移元素のうち、Znの原料(以下適宜、「Zn源」という)の具体例としては、ZnO、ZnCl2、ZnF2、Zn(NO3)2・6H2O、ZnS、Zn(OH)2、Zn(OCOCH3)2等が好ましい。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0108】
Crの原料(以下適宜、「Cr」という)、Mnの原料(以下適宜、「Mn源」という)、Coの原料(以下適宜、「Co源」という)、Niの原料(以下適宜、「Ni源」という)、Cuの原料(以下適宜、「Cu源」という)、Nbの原料(以下適宜、「Nb源」という)、Moの原料(以下適宜、「Mo源」という)、及びCdの原料(以下適宜、「Cd源」という)等のその他の2価の遷移元素の具体例としては、Ba源の具体例として挙げた各化合物において、MgをそれぞれCr、Mn、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、及びCd等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0109】
(L1源)
上記L1源の具体例をL1の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0110】
Eu源の具体例としては、上述のEu源の説明で例示した化合物と同様である。
【0111】
また、Smの原料(以下適宜、「Sm源」という)、Tmの原料(以下適宜、「Tm源」という)、及びYbの原料(以下適宜、「Yb源」という)等のその他の付活剤元素の原料の具体例としては、Eu源の具体例として挙げた各化合物において、EuをそれぞれSm、Tm、Yb等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0112】
(L2源)
上記L2源の具体例をL2の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0113】
希土類元素のうち、Lu源の具体例としては、上述のLu源の説明で例示した化合物と同様である。同様にして、La源、Y源、Sc源、Gd源等の具体例も、上述の説明で例示した化合物と同一である。
【0114】
Ceの原料(以下適宜、「Ce源」という)、Ndの原料(以下適宜、「Nd源」という)、Pmの原料(以下適宜、「Pm源」という)、Dyの原料(以下適宜、「Dy源」という)、Hoの原料(以下適宜、「Ho源」という)、Erの原料(以下適宜、「Er源」という)等のその他の希土類元素の具体例としては、Lu源の具体例として挙げた各化合物において、LuをそれぞれCe、Nd、Pm、Dy、Ho、及びEr等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0115】
Tbの原料(以下適宜、「Tb源」という)の具体例としては、Tb4O7、TbCl3(水和物を含む)、TbF3、Tb(NO3)3・nH2O、Tb2(SiO4)3、Tb2(C2O4)3・10H2O等が挙げられる。中でも、Tb4O7、TbCl3、TbF3が好ましく、Tb4O7がより好ましい。
【0116】
Prの原料(以下適宜、「Pr源」という)の具体例としては、Pr2O3、PrCl3、PrF3、Pr(NO3)3・6H2O、Pr2(SiO4)3、Pr2(C2O4)3・10H2O等が挙げられる。中でも、Pr2O3、PrCl3、PrF3が挙げられ、Pr2O3がより好ましい。
【0117】
(M5源)
上記M5源の具体例をM5の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0118】
Geの原料(以下適宜、「Ge源」という)の具体例としては、GeO2又はGe3N4を用いるのが好ましい。また、GeO2なる化合物を用いることもできる。このような化合物としては、具体的には、GeO2、Ge(OH)4、Ge(OCOCH3)4、GeCl4等が挙げられる。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0119】
Asの原料(以下適宜、「As源」という)、及びSbの原料(以下適宜、「Sb源」という)等のその他のM5源の具体例としては、Ge源の具体例として挙げた各化合物において、GeをそれぞれAs、及びSb等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0120】
Si源の具体例としては、上述のSi源の説明で例示した化合物と同様である。
【0121】
Pの原料(以下適宜、「P源」という)の具体例としては、P2O5、Ba3(PO4)2、Sr3(PO4)2、(NH4)3PO4等が挙げられる。
【0122】
Bの原料(以下適宜、「B源」という)の具体例としては、B2O3、H3BO3等が挙げられる。
【0123】
Alの原料(以下適宜、「Al源」という)の具体例としては、α−Al2O3、γ−Al2O3、等のAl2O3、Al(OH)3、AlOOH、Al(NO3)3・9H2O、Al2(SO4)3、AlCl3等が挙げられる。
【0124】
なお、上述したM1源、Eu源、M2源、Ln源、Si源、M3源、L1源、M4源、L2源、M5源、及びM6源は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0125】
[2−2.蛍光体の製造方法:混合工程]
目的組成が得られるように蛍光体原料を秤量し、ボールミル等を用いて十分混合したのち、ルツボに充填し、所定温度、雰囲気下で焼成し、焼成物を粉砕、洗浄することにより、本発明の蛍光体を得ることができる。
【0126】
上記混合手法としては、特に限定はされないが、具体的には、下記(A)及び(B)の手法が挙げられる。
(A)例えばハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機、又は、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕と、例えばリボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、又は、乳鉢と乳棒を用いる混合とを組み合わせ、前述の蛍光体原料を粉砕混合する乾式混合法。
(B)前述の蛍光体原料に水等の溶媒又は分散媒を加え、例えば粉砕機、乳鉢と乳棒、又は蒸発皿と撹拌棒等を用いて混合し、溶液又はスラリーの状態とした上で、噴霧乾燥、加熱乾燥、又は自然乾燥等により乾燥させる湿式混合法。
蛍光体原料の混合は、上記湿式又は乾式のいずれでも良いが、水又はエタノールを用いた湿式混合がより好ましい。
【0127】
[2−3.蛍光体の製造方法:焼成工程]
得られた混合物を、各蛍光体原料と反応性の低い材料からなるルツボ又はトレイ等の耐熱容器中に充填する。このような焼成時に用いる耐熱容器の材質としては、例えば、アルミナ、石英、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素、マグネシウム、ムライト等のセラミックス、白金、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、イリジウム、ロジウム等の金属、あるいは、それらを主成分とする合金、カーボン(グラファイト)などが挙げられる。ここで、石英製の耐熱容器は、比較的低温、すなわち、1200℃以下での熱処理に使用することができ、好ましい使用温度範囲は1000℃以下である。
このような耐熱容器の例として、好ましくは窒化ホウ素製、アルミナ製、窒化珪素製、炭化珪素製、白金製、モリブデン製、タングステン製、タンタル製の耐熱容器が挙げられる。
【0128】
焼成工程については、通常、1600℃を超える焼成温度では焼成粉が焼結してしまい、発光強度が低くなる場合があるが、1400℃前後の焼成温度では結晶性の良好な粉体が得られる。したがって、本発明の蛍光体を製造するための、焼成温度としては、通常1000℃以上、好ましくは1100℃以上、より好ましくは1200℃以上の温度であり、また、通常1600℃以下、好ましくは1500℃以下、より好ましくは1450℃以下の温度である。
【0129】
焼成雰囲気としては特に制限されないが、通常、不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気下で行われる。ここで、前述の通り、付活元素の価数としては、2価のものが多い方が好ましいため、還元雰囲気であるのが好ましい。なお、不活性ガス及び還元性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0130】
不活性ガス及び還元性ガスとしては、例えば、一酸化炭素、水素、窒素、アルゴン等が挙げられる。このうち、窒素ガス雰囲気下であることが好ましく、より好ましくは水素ガス含有窒素ガス雰囲気下である。上記窒素(N2)ガスとしては、純度99.9%以上を使用することが好ましい。水素含有窒素を用いる場合、電気炉内の酸素濃度を20ppm以下に下げることが好ましい。さらに、雰囲気中の水素含有量は1体積%以上が好ましく、2体積%以上がさらに好ましく、また、5体積%以下が好ましい。雰囲気中の水素の含有量は、高すぎると安全性が低下する可能性があり、低すぎると十分な還元雰囲気を達成できない可能性があるからである。
【0131】
また、焼成時間は、焼成時の温度や圧力等によっても異なるが、通常、0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。また、焼成時間は長い方が良いが、通常、100時間以下、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下、さらに好ましくは12時間以下である。
【0132】
焼成時の圧力は、焼成温度等によっても異なるため特に限定されないが、通常1×10-5Pa以上、好ましくは1×10-3Pa以上、より好ましくは0.01MPa以上、さらに好ましくは0.1MPa以上であり、また、上限としては、通常5GPa以下、好ましくは1Gpa以下、より好ましくは200MPa以下、さらに好ましくは100MPa以下である。このうち、工業的には大気圧〜1MPa程度がコスト及び手間の点で簡便であり好ましい。
【0133】
[2−4.フラックス]
【0134】
焼成工程においては、良好な結晶を成長させる観点から、反応系にフラックスを共存させることが好ましい。フラックスの種類は特に制限されないが、1価の元素又は原子団と−1価の元素とを含有する化合物、1価の元素又は原子団と−3価の元素又は原子団とを含有する化合物、2価の元素と−1価の元素とを含有する化合物、2価の元素と−3価の元素又は原子団とを含有する化合物、3価の元素と−1価の元素とを含有する化合物、並びに、3価の元素と−3価の元素又は原子団を含有する化合物とからなる群から選ばれる化合物をフラックスとして使用することが好ましい。
【0135】
1価の元素又は原子団は、例えば、アルカリ金属元素及びアンモニウム基(NH4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましい。
2価の元素は、例えば、アルカリ土類金属元素、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましく、ストロンチウム(Sr)又はバリウム(Ba)であることがより好ましい。
3価の元素は、例えば、ランタン(La)等の希土類元素、イットリウム(Y)、アルミニウム(Al)、及びスカンジウム(Sc)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましく、イットリウム(Y)又はアルミニウム(Al)であることがより好ましい。
−1価の元素は、例えば、ハロゲン元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましく、塩素(Cl)又はフッ素(F)であることが好ましい。
−3価の元素又は原子団は、例えば、リン酸基(PO4)であることが好ましい。
【0136】
上記の中でも、フラックスとしては、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、亜鉛ハロゲン化物、イットリウム(Y)、アルミニウム(Al)、スカンジウム(Sc)、及び希土類元素からなる群から選ばれる3価の元素のハロゲン化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩、リン酸亜鉛、イットリウム(Y)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、及びスカンジウム(Sc)からなる群から選ばれる3価の元素のリン酸塩からなる群から選ばれる化合物を使用することが好ましい。
【0137】
より具体例としては、NH4Cl、NH4F・HF等のハロゲン化アンモニウム;NaCO3、LiCO3等のアルカリ金属炭酸塩;LiCl、NaCl、KCl、CsCl、LiF、NaF、KF、CsF等のアルカリ金属ハロゲン化物;CaCl2、BaCl2、SrCl2、CaF2、BaF2、SrF2等のアルカリ土類金属ハロゲン化物;CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物;B2O3、H3BO3、NaB4O7等のホウ素酸化物、ホウ酸及びホウ酸塩化合物;Li3PO4、NH4H2PO4等のリン酸塩化合物;AlF3等のハロゲン化アルミニウム;ZnCl2、ZnF2といったハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の亜鉛化合物;Bi2O3等の周期表第15族元素化合物;Li3N、Ca3N2、Sr3N2、Ba3N2、BNなど等のアルカリ金属、アルカリ土類金属又は第13族元素の窒化物などが挙げられる。このうち好ましくはハロゲン化物であり、この中でも、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、Znのハロゲン化物が好ましい。また、これらのハロゲン化物の中でも、フッ化物、塩化物が好ましい。
【0138】
フラックスの使用量は、原料の種類やフラックスの材料等によっても異なるが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常20重量%以下、更には10重量%以下の範囲が好ましい。フラックスの使用量が少な過ぎると、フラックスの効果が現れず、フラックスの使用量が多過ぎると、フラックス効果が飽和したり、母体結晶に取り込まれて発光色を変化させたり、輝度低下を引き起こす場合がある。これらのフラックスは一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0139】
[2−5.一次焼成及び二次焼成]
なお、焼成工程を一次焼成と二次焼成とに分割し、混合工程により得られた原料混合物をまず一次焼成した後、ボールミル等で再度粉砕してから二次焼成を行ってもよい。
【0140】
一次焼成の温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常800℃以上、好ましくは1000℃以上、また、通常1600℃以下、好ましくは1400℃以下、より好ましくは1300℃以下の範囲である。
ここで、粒度の揃った蛍光体を得るためには、一次焼成温度を低く設定して粉体状態で固相反応を進めることが好ましい。一方、高輝度の蛍光体を得るためには、一次焼成温度を高く設定して溶融状態で原料が十分に混合して反応した後に二次焼成で結晶成長させることが好ましい。
一次焼成の時間は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、また、通常100時間以下、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下、さらに好ましくは12時間以下である。
【0141】
二次焼成の温度、時間等の条件は、基本的に上述の焼成工程の欄に記載した条件と同様である。
なお、フラックスは一次焼成の前に混合してもよいし、二次焼成の前に混合してもよい。また、雰囲気等の焼成条件も一次焼成と二次焼成で変更してもよい。
【0142】
[2−6.後処理]
上述の焼成工程の加熱処理後は、必要に応じて、洗浄、乾燥、粉砕、分級処理等がなされる。
粉砕処理には、例えば、原料の混合工程に使用できるとして列挙した粉砕機が使用できる。
洗浄は、例えば、脱イオン水等の水、エタノール等の有機溶剤、アンモニア水等のアルカリ性水溶液などで行うことができる。また、使用されたフラックスを除去するなどの目的のために、例えば、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸;又は、酢酸などの有機酸の水溶液を使用することもできる。この場合、酸性水溶液中で洗浄処理した後に、水で更に洗浄することが好ましい。
分級処理は、例えば、水篩を行う、あるいは、各種の気流分級機や振動篩など各種の分級機を用いることにより行うことができる。中でも、ナイロンメッシュによる乾式分級を用いると、重量メジアン径20μm程度の分散性の良い蛍光体を得ることができる。
【0143】
また、洗浄処理後に乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥処理の方法に特に制限はないが、必要に応じて、蛍光体の性質に合わせて適宜乾燥処理方法を選択することが好ましい。例えば、特定組成蛍光体は、長時間、高温高湿の雰囲気下(例えば熱水中)にさらしたりすると、蛍光体の母体表面の一部が溶解し、溶解した部分は空気中の二酸化炭素と反応して炭酸塩に変わることがある。従って、特定組成蛍光体に乾燥処理を施す際は、真空乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の低温乾燥や、スプレードライ等の短時間乾燥が好ましく、また、窒素やアルゴンガス等の二酸化炭素を含まない雰囲気中で乾燥するか、もしくは水分を低沸点溶剤に置換して風乾する方法が好ましい。
【0144】
[2−7.表面処理]
なお、上述の手順により得られた本発明の蛍光体を用いて、後述の方法で発光装置を製造する際には、耐湿性等の耐候性を一層向上させるために、又は後述する発光装置の蛍光体含有部における樹脂に対する分散性を向上させるために必要に応じて、蛍光体の表面を異なる物質で被覆する等の表面処理を行ってもよい。
【0145】
蛍光体の表面に存在させることのできる物質(以下、任意に「表面処理物質」と称する)としては、例えば、有機化合物、無機化合物、およびガラス材料などを挙げることができる。
【0146】
有機化合物としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレン等の熱溶融性ポリマー、ラテックス、ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0147】
無機化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ゲルマニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化硼素、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ビスマス等の金属酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、燐酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸ストロンチウム等のオルト燐酸塩、ポリリン酸塩が挙げられる。
【0148】
ガラス材料としては、例えばホウ珪酸塩、ホスホ珪酸塩、アルカリ珪酸塩等が挙げられる。
【0149】
これらの表面処理物質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0150】
前記の表面処理により得られる本発明の蛍光体は、表面処理物質の存在が前提であるが、その態様は、例えば下記のものが挙げられる。
(i)前記表面処理物質が連続膜を構成して蛍光体表面を被覆する態様。
(ii)前記表面処理物質が多数の微粒子となって、蛍光体の表面に付着することにより蛍光体表面を被覆する態様。
【0151】
蛍光体の表面への表面処理物質の付着量ないし被覆量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、蛍光体の重量に対して、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。蛍光体に対する表面処理物質量が多すぎると蛍光体の発光特性が損なわれることがあり、少なすぎると表面被覆が不完全となって、耐湿性、分散性の改善が見られないことがある。
【0152】
また、表面処理により形成される表面処理物質の膜厚(層厚)は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10nm以上、好ましくは50nm以上であり、通常2000nm以下、好ましくは1000nm以下である。この膜厚が厚すぎると蛍光体の発光特性が損なわれることがあり、薄すぎると表面被覆が不完全となって、耐湿性、分散性の改善が見られないことがある。
【0153】
表面処理の方法には特に限定は無いが、例えば下記のような金属酸化物(酸化珪素)による被覆処理法を挙げることができる。
【0154】
本発明の蛍光体をエタノール等のアルコール中に混合して、攪拌し、さらにアンモニア水等のアルカリ水溶液を混合して、攪拌する。次に、加水分解可能なアルキル珪酸エステル、例えばテトラエチルオルト珪酸を混合して、攪拌する。得られた溶液を3分間〜60分間静置した後、スポイト等により蛍光体表面に付着しなかった酸化珪素粒子を含む上澄みを除去する。次いで、アルコール混合、攪拌、静置、上澄み除去を数回繰り返した後、120℃〜150℃で10分〜5時間、例えば2時間の減圧乾燥工程を経て、表面処理蛍光体を得る。
【0155】
蛍光体の表面処理方法としては、この他、例えば球形の酸化珪素微粉を蛍光体に付着させる方法(特開平2−209989号公報、特開平2−233794号公報)、蛍光体に珪素系化合物の皮膜を付着させる方法(特開平3−231987号公報)、蛍光体微粒子の表面をポリマー微粒子で被覆する方法(特開平6−314593号公報)、蛍光体を有機材料、無機材料及びガラス材料等でコーティングする方法(特開2002−223008号公報)、蛍光体の表面を化学気相反応法によって被覆する方法(特開2005−82788号公報)、金属化合物の粒子を付着させる方法(特開2006−28458号公報)等の公知の方法を用いることができる。
【0156】
[3.蛍光体の用途]
本発明の蛍光体は、蛍光体を使用する任意の用途に用いることができるが、特に、青色光又は近紫外光で励起可能であるという特性を生かして、各種の発光装置(後述する「本発明の発光装置」)に好適に用いることができる。組み合わせる蛍光体の種類や使用割合を調整することで、様々な発光色の発光装置を製造することができる。
【0157】
例えば、本発明の蛍光体が緑色の蛍光を発する場合、青色光を発する励起光源と橙色ないし赤色の蛍光を発する蛍光体(橙色ないし赤色蛍光体)を組み合わせるか、又は近紫外光を発する励起光源と、青色の蛍光を発する蛍光体(青色蛍光体)及び橙色ないし赤色の蛍光を発する蛍光体とを組み合わせれば、白色発光装置を製造することができる。この場合の発光色は、本発明の蛍光体や組み合わせる橙色ないし赤色蛍光体の発光波長を調整することにより、好みの発光色にすることができるが、例えば、いわゆる擬似白色(例えば、青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた発光装置の発光色)の発光スペクトルと類似した発光スペクトルを得ることもできる。更に、この白色発光装置に赤色の蛍光を発する蛍光体(赤色蛍光体)を組み合わせれば、赤色の演色性に極めて優れた発光装置や電球色(暖かみのある白色)に発光する発光装置を実現することができる。
【0158】
また、本発明の蛍光体が青色の蛍光を発する場合、近紫外光を発する励起光源と、緑色の蛍光を発する蛍光体(緑色蛍光体)と、赤色蛍光体とを組み合わせても、白色発光装置を製造することができる。
【0159】
発光装置の発光色としては白色に制限されず、必要に応じて、黄色蛍光体(黄色の蛍光を発する蛍光体)、青色蛍光体、橙色ないし赤色蛍光体、緑色蛍光体等を組み合わせて、蛍光体の種類や使用割合を調整することにより、任意の色に発光する発光装置を製造することができる。こうして得られた発光装置を、画像表示装置の発光部(特に液晶用バックライト等)や照明装置として使用することができる。
【0160】
[4.蛍光体含有組成物]
本発明の蛍光体は、液体媒体と混合して用いることもできる。特に、本発明の蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体中に分散させた形態で用いることが好ましい。本発明の蛍光体を液体媒体中に分散させたものを、適宜「本発明の蛍光体含有組成物」と呼ぶものとする。
【0161】
[4−1.蛍光体]
本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体の種類に制限は無く、上述したものから任意に選択することができる。また、本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体は、1種のみであってもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、本発明の蛍光体以外の蛍光体を含有させてもよい。
【0162】
[4−2.液体媒体]
本発明の蛍光体含有組成物に使用される液体媒体としては、該蛍光体の性能を目的の範囲で損なわない限りにおいて特に限定されない。例えば、所望の使用条件下において液状の性質を示し、本発明の蛍光体を好適に分散させるとともに、好ましくない反応を生じないものであれば、任意の無機系材料及び/又は有機系材料が使用できる。
【0163】
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
【0164】
有機系材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0165】
これらの中で特に照明など大出力の発光装置に蛍光体を用いる場合には、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用することが好ましい。
【0166】
珪素含有化合物とは、分子中に珪素原子を有する化合物をいい、例えば、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、ハンドリングの容易さ等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
【0167】
上記シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば下記式(i)で表される化合物及び/又はそれらの混合物が挙げられる。
【化5】
【0168】
上記式(i)において、R1からR6は同じであっても異なってもよく、有機官能基、水酸基、水素原子からなる群から選択される。
また、上記式(i)において、M、D、T及びQは、各々0以上1未満の数であり、且つ、M+D+T+Q=1を満足する数である。
【0169】
該シリコーン系材料は、半導体発光素子の封止に用いる場合、液状のシリコーン系材料を用いて封止した後、熱や光によって硬化させて用いることができる。
【0170】
シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン樹脂)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン樹脂)、紫外線硬化タイプが好適である。以下、付加型シリコーン系材料、及び縮合型シリコーン系材料について説明する。
【0171】
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られるSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。これらは市販のものを使用することができ、例えば付加重合硬化タイプの具体的商品名としては信越化学工業社製「LPS−1400」「LPS−2410」「LPS−3400」等が挙げられる。
【0172】
一方、縮合型シリコーン系材料とは、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。
具体的には、下記一般式(ii)及び/又は(iii)で表わされる化合物、及び/又はそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
【0173】
Mm+XnY1m-n (ii)
(式(ii)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、mは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、nは、X基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。)
【0174】
(Ms+XtY1s-t-1)uY2 (iii)
(式(iii)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、Y2は、u価の有機基を表わし、sは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、tは、1以上、s−1以下の整数を表わし、uは、2以上の整数を表わす。)
【0175】
また、縮合型シリコーン系材料には、硬化触媒を含有させてもよい。この硬化触媒としては、例えば、金属キレート化合物などを好適なものとして用いることができる。金属キレート化合物は、Ti、Ta、Zrの何れか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものが更に好ましい。なお、硬化触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0176】
このような縮合型シリコーン系材料としては、例えば特開2007−112973号公報〜112975号公報及び特開2007−19459号公報に記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
【0177】
縮合型シリコーン系材料の中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
シリコーン系材料は、一般に半導体発光素子や素子を配置する基板、パッケージ等との接着性が弱いことが課題とされるが、密着性が高いシリコーン系材料として、特に、以下の特徴〔1〕〜〔3〕のうち1つ以上を有する縮合型シリコーン系材料が好ましい。
【0178】
〔1〕ケイ素含有率が20重量%以上である。
〔2〕後に詳述する方法によって測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
〔3〕シラノール含有率が0.1重量%以上、10重量%以下である。
【0179】
本発明においては、上記の特徴〔1〕〜〔3〕のうち、特徴〔1〕を有するシリコーン系材料が好ましく、上記の特徴〔1〕及び〔2〕を有するシリコーン系材料がより好ましく、上記の特徴〔1〕〜〔3〕を全て有するシリコーン系材料が特に好ましい。
以下、上記の特徴〔1〕〜〔3〕について説明する。
【0180】
<特徴〔1〕(ケイ素含有率)>
従来のシリコーン系材料の基本骨格は炭素−炭素及び炭素−酸素結合を基本骨格としたエポキシ樹脂等の有機樹脂であるが、これに対し本発明のシリコーン系材料の基本骨格はガラス(ケイ酸塩ガラス)などと同じ無機質のシロキサン結合である。このシロキサン結合は、下記[表2]の化学結合の比較表からも明らかなように、シリコーン系材料として優れた以下の特徴がある。
【0181】
(I)結合エネルギーが大きく、熱分解・光分解し難いため、耐光性が良好である。
(II)電気的に若干分極している。
(III)鎖状構造の自由度は大きく、フレキシブル性に富む構造が可能であり、シロキサン鎖中心に自由回転可能である。
(IV)酸化度が大きく、これ以上酸化されない。
(V)電気絶縁性に富む。
【0182】
【表2】
【0183】
これらの特徴から、シロキサン結合が3次元的に、しかも高架橋度で結合した骨格で形成されるシリコーン系のシリコーン系材料は、ガラス或いは岩石などの無機質に近く、耐熱性・耐光性に富む保護皮膜となることが理解できる。特にメチル基を置換基とするシリコーン系材料は、紫外領域に吸収を持たないため光分解が起こり難く、耐光性に優れる。
【0184】
本発明に好適なシリコーン系材料のケイ素含有率は、通常20重量%以上であるが、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiO2のみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常47重量%以下の範囲である。
【0185】
なお、シリコーン系材料のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。
【0186】
{ケイ素含有率の測定}
シリコーン系材料を白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
【0187】
<特徴〔2〕(固体Si−NMRスペクトル)>
本発明に好適なシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来する前記(a)及び/又は(b)のピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
【0188】
ケミカルシフト毎に整理すると、本発明に好適なシリコーン系材料において、(a)に記載のピークの半値幅は、分子運動の拘束が小さいために、全般に後述の(b)に記載のピークの場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
一方、(b)に記載のピークの半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
【0189】
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が大き過ぎると、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生し易く、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行ない大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなる。
【0190】
また、ピークの半値幅が小さ過ぎると、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。
【0191】
但し、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれるシリコーン系材料においては、−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得られない場合がある。
【0192】
本発明に好適なシリコーン系材料のケミカルシフトの値は、例えば以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
【0193】
{固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出}
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。また、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することによりシラノール含有率を求める。
【0194】
{装置条件}
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX−400 核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
1Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
繰り返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
基準試料:テトラメトキシシラン
【0195】
シリコーン系材料については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
【0196】
{波形分離解析法}
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
なお、ピークの同定は、AIChE Journal, 44(5), p.1141, 1998年等を参考にする。
【0197】
<特徴〔3〕(シラノール含有率)>
本発明に好適なシリコーン系材料は、シラノール含有率が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である。シラノール含有率を低くすることにより、シラノール系材料は経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
【0198】
なお、シリコーン系材料のシラノール含有率は、例えば上記<特徴〔2〕(固体Si−NMRスペクトル)>の{固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出}の項において説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行ない、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
【0199】
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、適当量のシラノールを含有しているため、通常は、デバイス表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
【0200】
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、通常、適当な触媒の存在下で加熱することにより、デバイス表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、更に強固な密着性を発現することができる。
【0201】
一方、シラノールが多過ぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する場合がある。
【0202】
[4−3.液体媒体の含有率]
液体媒体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは75重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。液体媒体の量が多い場合には特段の問題は起こらないが、半導体発光装置とした場合に所望の色度座標、演色指数、発光効率等を得るには、通常、上記のような配合比率で液体媒体を用いることが望ましい。一方、液体媒体が少な過ぎると流動性がなく取り扱い難くなる可能性がある。
【0203】
液体媒体は、本発明の蛍光体含有組成物において、主にバインダーとしての役割を有する。液体媒体は、一種を単独で用いてもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。例えば、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用する場合は、当該珪素含有化合物の耐久性を損なわない程度に、エポキシ樹脂など他の熱硬化性樹脂を含有してもよい。この場合、他の熱硬化性樹脂の含有量は、バインダーである液体媒体全量に対して通常25重量%以下、好ましくは10重量%以下とすることが望ましい。
【0204】
[4−4.その他の成分]
なお、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、蛍光体及び液体媒体以外に、その他の成分を含有させてもよい。また、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0205】
[5.発光装置]
本発明の発光装置(以下、適宜「発光装置」という)は、第1の発光体(励起光源)と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを有する発光装置であって、該第2の発光体として前述の[1.蛍光体]の項で記載した本発明の蛍光体を少なくとも1種以上第1の蛍光体として含有するものである。
【0206】
本発明の蛍光体としては、上述の特定特性蛍光体及び/又は特定組成蛍光体であって、通常は、励起光源からの光の照射下において、青色〜緑色領域の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜、本発明の蛍光体のうち緑色の蛍光を発する蛍光体を「本発明の緑色蛍光体」、本発明の蛍光体のうち青色の蛍光を発する蛍光体を「本発明の青色蛍光体」という場合がある)を使用する。具体的に、本発明の緑色蛍光体は、500nm〜540nmの範囲に発光ピークを有するものが好ましく、本発明の青色蛍光体は、420nm〜490nmの範囲に発光ピークを有するものが好ましい。本発明の蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0207】
また、本発明の発光装置に用いられる本発明の蛍光体の好ましい具体例としては、前述の[1.蛍光体]の欄に記載した本発明の蛍光体や、後述の[実施例]の欄の各実施例に用いた蛍光体が挙げられる。
【0208】
本発明の発光装置は、第1の発光体(励起光源)を有し、且つ、第2の発光体として少なくとも本発明の蛍光体を使用している他は、その構成は制限されず、公知の装置構成を任意にとることが可能である。装置構成の具体例については後述する。
【0209】
本発明の発光装置の発光スペクトルにおける緑色領域の発光ピークとしては、500nm〜540nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましい。
また、本発明の発光装置の発光スペクトルにおける青色領域の発光ピークとしては、420nm〜490nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましい。
【0210】
なお、発光装置の発光スペクトルは、気温25±1℃に保たれた室内において、オーシャン オプティクス社製の色・照度測定ソフトウェア及びUSB2000シリーズ分光器
(積分球仕様)を用いて20mA通電して測定を行なうことができる。この発光スペクトルの380nm〜780nmの波長領域のデータから、JIS Z8701で規定される
XYZ表色系における色度座標として色度値(x,y,z)を算出できる。この場合、x+y+z=1の関係式が成立する。本明細書においては、前記XYZ表色系をXY表色系と称している場合があり、通常(x,y)で表記している。
【0211】
また、発光効率は、前述のような発光装置を用いた発光スペクトル測定の結果から全光束を求め、そのルーメン(lm)値を消費電力(W)で割ることにより求められる。消費電力は、20mAを通電した状態で、Fluke社のTrue RMS Multimeters Model 187&189を用いて電圧を測定し、電流値と電圧値の積で求められる。
【0212】
本発明の発光装置のうち、特に白色発光装置として、具体的には、第1の発光体として後述するような励起光源を用い、本発明の蛍光体の他、後述するような赤色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「赤色蛍光体」という)、青色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「青色蛍光体」という)、黄色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「黄色蛍光体」という)等の公知の蛍光体を任意に組み合わせて使用し、公知の装置構成をとることにより得られる。
【0213】
ここで、該白色発光装置の白色とは、JIS Z 8701により規定された、(黄みの)白、(緑みの)白、(青みの)白、(紫みの)白及び白の全てを含む意であり、このうち好ましくは白である。
【0214】
[5−1.発光装置の構成(発光体)]
[第1の発光体]
本発明の発光装置における第1の発光体は、後述する第2の発光体を励起する光を発光するものである。
【0215】
第1の発光体の発光波長は、後述する第2の発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができる。通常は、紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用され、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体を使用することが特に好ましい。
【0216】
第1の発光体の発光波長の具体的数値としては、通常200nm以上が望ましい。このうち、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、より好ましくは360nm以上、また、通常420nm以下のピーク発光波長を有する発光体を使用することが望ましい。発光装置の色純度の観点からである。
【0217】
第1の発光体としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光LEDや半導体レーザーダイオード(semiconductor laser diode;以下、適宜「LD」と略称する。)等が使用できる。その他、第1の発光体として使用できる発光体としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス発光素子、無機エレクトロルミネッセンス発光素子等が挙げられる。但し、第1の発光体として使用できるものは本明細書に例示されるものに限られない。
【0218】
中でも、第1の発光体としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlXGaYN発光層、GaN発光層又はInXGaYN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でもInXGaYN発光層を有するものは発光強度が非常に強いので特に好ましく、GaN系LEDにおいては、InXGaYN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度は非常に強いので特に好ましい。
【0219】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0220】
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlXGaYN層、GaN層、又はInXGaYN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高くて好ましく、更にヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率が更に高いため、より好ましい。
なお、第1の発光体は、1個のみを用いてもよく、2個以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0221】
[第2の発光体]
本発明の発光装置における第2の発光体は、上述した第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する発光体であり、第1の蛍光体として前述の本発明の蛍光体(例えば、緑色蛍光体等)を含有するとともに、その用途等に応じて適宜、後述する第2の蛍光体(例えば、赤色蛍光体、青色蛍光体、橙色蛍光体等)を含有する。また、例えば、第2の発光体は、第1及び第2の蛍光体を封止材料中に分散させて構成される。
【0222】
上記第2の発光体中に用いられる、本発明の蛍光体以外の蛍光体の組成には特に制限はないが、結晶母体となる、Y2O3、YVO4、Zn2SiO4、Y3Al5O12、Sr2SiO4等に代表される金属酸化物、Sr2Si5N8等に代表される金属窒化物、Ca5(PO4)3Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物、Y2O2S、La2O2S等に代表される酸硫化物等にCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが挙げられる。
【0223】
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa2S4、SrS、ZnS等の硫化物;Y2O2S等の酸硫化物;(Y,Gd)3Al5O12、YAlO3、BaMgAl10O17、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al10O17、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al10O17、BaAl12O19、CeMgAl11O19 、(Ba,Sr,Mg)O・Al2O3、BaAl2Si2O8、SrAl2O4、Sr4Al14O25、Y3Al5O12等のアルミン酸塩;Y2SiO5、Zn2SiO4等の珪酸塩;SnO2、Y2O3等の酸化物;GdMgB5O10、(Y,Gd)BO3等の硼酸塩;Ca10(PO4)6(F,Cl)2、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2等のハロリン酸塩;Sr2P2O7、(La,Ce)PO4等のリン酸塩等を挙げることができる。
【0224】
但し、上記の結晶母体及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
【0225】
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、前述の通り、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。
【0226】
<第1の蛍光体>
本発明の発光装置における第2の発光体は、第1の蛍光体として、少なくとも上述の本発明の蛍光体を含有する。本発明の蛍光体は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体としては、本発明の蛍光体以外にも、本発明の蛍光体と同色の蛍光を発する蛍光体(同色併用蛍光体)を用いてもよい。通常、本発明の蛍光体は青色〜緑色の蛍光体であるので、第1の蛍光体として、本発明の緑色蛍光体と共に他種の緑色蛍光体を併用したり、本発明の青色蛍光体と共に他種の青色蛍光体を併用したりすることができる。
【0227】
(緑色蛍光体)
上記緑色蛍光体としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。
発光ピーク波長λp(nm)は、通常490nmより大きく、中でも500nm以上、また、通常570nm以下、中でも550nm以下、更には540nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する場合がある。
【0228】
該緑色蛍光体として具体的には、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Euで表わされるユウロ
ピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体等が挙げられる。
【0229】
また、その他の緑色蛍光体としては、Sr4Al14O25:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al2O4:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)Al2Si2O8:Eu、(Ba,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si2O7:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)9(Sc,Y,Lu,Gd)2(Si,Ge)6O24:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Y2SiO5:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr2P2O7−Sr2B2O5:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si3O8−2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、Zn2SiO4:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl11O19:Tb、Y3Al5O12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca2Y8(SiO4)6O2:Tb、La3Ga5SiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga2S4:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y3(Al,Ga)5O12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)3(Al,Ga)5O12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、Ca3Sc2Si3O12:Ce、Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si3O12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc2O4:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl10O17:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl2O4:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)2O2S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO4:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO3:Ce,Tb、Na2Gd2B2O7:Ce,Tb、(Ba,Sr)2(Ca,Mg,Zn)B2O6:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、Ca8Mg(SiO4)4Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In)2S4:Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)8(Mg,Zn)(SiO4)4Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、M3Si6O9N4:Eu、M3Si6O12N2:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
【0230】
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
以上例示した緑色蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0231】
(青色蛍光体)
上記青色蛍光体としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。
発光ピーク波長λp(nm)は、通常420nmより大きく、中でも430nm以上が好ましく、更には440nm以上が好ましく、また、通常490nm以下、中でも480nm以下が好ましく、更には470nm以下が好ましく、特には460nm以下が好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると可視光の範囲を外れる一方で、長過ぎると緑味を帯びる傾向があり、何れも青色光としての特性が低下する場合がある。
【0232】
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Euで表わされるユーロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)5(PO4)3(Cl,F):Euで表わされるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)2B5O9Cl:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al2O4:Eu又は(Sr,Ca,Ba)4Al14O25:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0233】
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr2P2O7:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光
体、(Sr,Ca,Ba)Al2O4:Eu又は(Sr,Ca,Ba)4Al14O25:Eu、BaMgAl10O17:Eu、(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu、BaMgAl10O17:Eu,Tb,Sm、BaAl8O13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa2S4:Ce、CaGa2S4:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu、(Ba,Sr,Ca)5(PO4)3(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAl2Si2O8:Eu、(Sr,Ba)3MgSi2O8:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr2P2O7:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、Y2SiO5:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO4等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO5:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO4)6・nB2O3:Eu、2SrO・0.84P2O5・0.16B2O3:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si3O8・2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、SrSi9Al19ON31:Eu、EuSi9Al19ON31等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
【0234】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラリゾン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
【0235】
以上の例示の中でも、青色蛍光体としては、(Ca、Sr,Ba)MgAl10O17:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6(Cl,F)2:Eu又は(Ba,Ca,Mg,Sr)2SiO4:Euを含むことが好ましく、(Ca、Sr,Ba)MgAl10O17:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6(Cl,F)2:Eu又は(Ba,Ca,Sr)3MgSi2O8:Euを含むことがより好ましく、BaMgAl10O17:Eu、Sr10(PO4)6(Cl,F)2:Eu又はBa3MgSi2O8:Euを含むことがより好ましい。また、このうち照明用途及びディスプレイ用途としては(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu又は(Ca、Sr,Ba)MgAl10O17:Euが特に好ましい。
【0236】
<第2の蛍光体>
本発明の発光装置における第2の発光体は、その用途に応じて、上述の第1の蛍光体以外にも蛍光体(即ち、第2の蛍光体)を含有していてもよい。この第2の蛍光体は、第1の蛍光体とは発光波長が異なる蛍光体である。通常、これらの第2の蛍光体は、第2の発光体の発光の色調を調節するために使用されるため、第2の蛍光体としては第1の蛍光体とは異なる色の蛍光を発する蛍光体を使用することが多い。例えば、第1の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合、第2の蛍光体としては、例えば橙色ないし赤色蛍光体、青色蛍光体、黄色蛍光体等の緑色蛍光体以外の蛍光体を用いる。
【0237】
本発明の発光装置に使用される第2の蛍光体の重量メジアン径は、通常10μm以上、中でも12μm以上、また、通常30μm以下、中でも25μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
【0238】
(橙色ないし赤色蛍光体)
第2の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体を使用する場合、当該橙色ないし赤色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nmを超え、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0239】
このような橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Euで表わされるユーロピウム付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)2O2S:Euで表わされるユーロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
【0240】
更に、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種類の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本発明において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0241】
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)2O2S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O4:Eu、Y2O3:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Mg)2SiO4:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW2O8:Eu、LiW2O8:Eu,Sm、Eu2W2O9、Eu2W2O9:Nb、Eu2W2O9:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO3:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、Ca2Y8(SiO4)6O2:Eu、LiY9(SiO4)6O2:Eu、(Sr,Ba,Ca)3SiO5:Eu、Sr2BaSiO5:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)3Al5O12:Ce、(Tb,Gd)3Al5O12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu等のEu付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Ce等のCe付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、Ba3MgSi2O8:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)3(Zn,Mg)Si2O8:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)2O3:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)2O2S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO4:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY2S4:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa2S4:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP2O7:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)2P2O7:Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)2WO6:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)xSiyNz:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数を表わす。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO4)6(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1-x-yScxCey)2(Ca,Mg)1-r(Mg,Zn)2+rSiz-qGeqO12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0242】
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
【0243】
以上の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Ce、(Sr,Ba)3SiO5:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)2O2S:Eu又はEu錯体を含むことが好ましく、より好ましくは(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Ce、(Sr,Ba)3SiO5:Eu、(Ca,Sr)S:Eu又は(La,Y)2O2S:Eu、もしくはEu(ジベンゾイルメタン)3・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体又はカルボン酸系Eu錯体を含むことが好ましく、(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu又は(La,Y)2O2S:Euが特に好ましい。
【0244】
また、以上例示の中でも、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)3SiO5:Euが好ましい。
【0245】
(黄色蛍光体)
第2の蛍光体として黄色蛍光体を使用する場合、当該黄色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0246】
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
特に、RE3M5O12:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)やMa3Mb2Mc3O12:Ce(ここで、Maは2価の金属元素、Mbは3価の金属元素、Mcは4価の金属元素を表わす。)等で表わされるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE2MdO4:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mdは、Si、及び/又はGeを表わす。)等で表わされるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN3:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)等のCaAlSiN3構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
【0247】
また、その他、黄色蛍光体としては、CaGa2S4:Eu、(Ca,Sr)Ga2S4:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al)2S4:Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu(0≦x<1)等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体を用いることも可能である。
【0248】
また、黄色蛍光体としては、例えば、brilliant sulfoflavine FF (Colour Index Number 56205)、basic yellow HG (Colour Index Number 46040)、eosine (Colour Index Number 45380)、rhodamine 6G (Colour Index Number 45160)等の蛍光染料等を用いることも可能である。
【0249】
(青色蛍光体)
第2の蛍光体として青色蛍光体を使用する場合、当該青色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、中でも430nm以上が好ましく、更には440nm以上が好ましく、また、通常490nm以下、中でも480nm以下が好ましく、更には470nm以下が好ましく、特には460nm以下が好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると可視光の範囲を外れる一方で、長過ぎると緑味を帯びる傾向があり、何れも青色光としての特性が低下する場合がある。このような青色蛍光体は、第1の蛍光体の項で説明した青色蛍光体を用いることが出来る。
【0250】
(緑色蛍光体)
第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合、当該緑色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常490nmを超え、中でも500nm以上、また、通常570nm以下、中でも550nm以下、更には540nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する場合がある。このような青色蛍光体は、第1の蛍光体の項で説明した緑色蛍光体を用いることができる。
【0251】
(第2の蛍光体の組み合わせ)
上記第2の蛍光体としては、1種類の蛍光体を単独で使用してもよく、2種以上の蛍光体を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体と第2の蛍光体との比率も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。従って、第2の蛍光体の使用量、並びに、第2の蛍光体として用いる蛍光体の組み合わせ及びその比率等は、発光装置の用途等に応じて任意に設定すればよい。
【0252】
本発明の発光装置において、以上説明した第2の蛍光体(橙色ないし赤色蛍光体、青色蛍光体等)の使用の有無及びその種類は、発光装置の用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、本発明の発光装置を緑色発光の発光装置として構成する場合には、第1の蛍光体として、本発明の緑色蛍光体のみを使用すればよく、第2の蛍光体の使用は通常は不要である。
【0253】
一方、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合には、所望の白色光が得られるように、第1の発光体と、第2の発光体(第1の蛍光体及び第2の蛍光体)とを適切に組み合わせればよい。具体的に、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合における、第1の発光体と、第1の蛍光体と、第2の蛍光体との好ましい組み合わせの例としては、以下の(i)〜(iii)の組み合わせが挙げられる。
【0254】
(i)第1の発光体として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、第1の蛍光体として本発明の緑色蛍光体を使用し、第2の蛍光体として青色蛍光体及び赤色蛍光体を併用する。この場合、青色蛍光体としては、(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu及び(Mg,Ca,Sr,Ba)5(PO4)3(Cl,F):Euからなる群より選ばれる一種又は二種以上の青色蛍光体が好ましい。また、赤色蛍光体としては、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu及びLa2O2S:Euからなる群より選ばれる一種又は二種以上の赤色蛍光体が好ましい。中でも、近紫外LEDと、本発明の蛍光体と、青色蛍光体としてBaMgAl10O17:Euと、赤色蛍光体として(Sr,Ca)AlSiN3:Euとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0255】
(ii)第1の発光体として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、第1の蛍光体として青色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体、及び緑色蛍光体を使用する。
各色の蛍光体としては、上述した蛍光体が好ましく使用できる。中でも、(ii)の組み合わせの場合、赤色蛍光体としては、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu及びLa2O2S:Euからなる群より選ばれる一種又は二種以上の赤色蛍光体が特に好ましく、また、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)3SiO5:Euが好ましい。特に、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu及びLa2O2S:Euからなる群より選ばれる一種又は二種以上の赤色蛍光体がより好ましい。
また、緑色蛍光体としては、BaMgAl10O17:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca)2SiO4:Eu、Eu付活βサイアロン、及び、(Ba,Sr,Ca)3Si6O12N2:Euからなる群より選ばれる一種又は二種以上の緑色蛍光体が特に好ましい。
【0256】
(iii)第1の発光体として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、第1の蛍光体として青色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として黄色蛍光体を使用する。
各色の蛍光体としては、上述した蛍光体が好ましく使用できる。中でも、(iii)の組み合わせの場合、黄色蛍光体としては、(Y,Gd,Tb)3(Al,Ga)5O12:Ce、(Ba,Sr,Ca)2SiO4:Eu,Eu付活αサイアロン、及び(Ba,Sr,Ca)Si2O2N2:Euからなる群より選ばれる一種又は二種以上の緑色蛍光体が特に好ましい
【0257】
また、本発明の蛍光体は、他の蛍光体と混合(ここで、混合とは、必ずしも蛍光体同士が混ざり合っている必要はなく、異種の蛍光体が組み合わされていることを意味する。)して用いることができる。特に、上記に記載の組み合わせで蛍光体を混合すると、好ましい蛍光体混合物が得られる。なお、混合する蛍光体の種類やその割合に特に制限はない。
【0258】
(封止材料)
本発明の発光装置において、上記第1及び/又は第2の蛍光体は、通常、封止材料である液体媒体に分散させて用いられる。
該液体媒体としては、前述の[4.蛍光体含有組成物]の項で記載したのと同様のものが挙げられる。
【0259】
また、該液体媒体は、封止部材の屈折率を調整するために、高い屈折率を有する金属酸化物となり得る金属元素を含有させることができる。高い屈折率を有する金属酸化物を与える金属元素の例としては、Si、Al、Zr、Ti、Y、Nb、B等が挙げられる。これらの金属元素は単独で使用されてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で併用されてもよい。
【0260】
このような金属元素の存在形態は、封止部材の透明度を損なわなければ特に限定されず、例えば、メタロキサン結合として均一なガラス層を形成していても、封止部材中に粒子状で存在していてもよい。粒子状で存在している場合、その粒子内部の構造はアモルファス状であっても結晶構造であってもよいが、高屈折率を与えるためには結晶構造であることが好ましい。また、その粒子径は、封止部材の透明度を損なわないために、通常は、半導体発光素子の発光波長以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。例えばシリコーン系材料に、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ニオブ等の粒子を混合することにより、上記の金属元素を封止部材中に粒子状で存在させることができる。
また、上記液体媒体としては、更に、拡散剤、フィラー、粘度調整剤、紫外線吸収剤等公知の添加剤を含有していてもよい。
【0261】
[5−2.発光装置の構成(その他)]
本発明の発光装置は、上述の第1の発光体及び第2の発光体を備えていれば、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の第1の発光体及び第2の発光体を配置してなる。この際、第1の発光体の発光によって第2の発光体が励起されて(即ち、第1及び第2の蛍光体が励起されて)発光を生じ、且つ、この第1の発光体の発光及び/又は第2の発光体の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。この場合、第1の蛍光体と第2の蛍光体とは必ずしも同一の層中に混合されなくてもよく、例えば、第1の蛍光体を含有する層の上に第2の蛍光体を含有する層が積層する等、蛍光体の発色毎に別々の層に蛍光体を含有するようにしてもよい。
【0262】
また、本発明の発光装置では、上述の励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム以外の部材を用いてもよい。その例としては、前述の封止材料が挙げられる。該封止材料は、発光装置において、蛍光体(第2の発光体)を分散させる目的以外にも、励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム間を接着する目的で用いたりすることができる。
【0263】
[5−3.発光装置の実施形態]
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0264】
本発明の発光装置の一例における、励起光源となる第1の発光体と、蛍光体を有する蛍光体含有部として構成された第2の発光体との位置関係を示す模式的斜視図を図1に示す。図1中の符号1は蛍光体含有部(第2の発光体)、符号2は励起光源(第1の発光体)としての面発光型GaN系LD、符号3は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とそれぞれ別個に作製し、それらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させてもよいし、LD(2)の発光面上に蛍光体含有部(第2の発光体)を製膜(成型)させてもよい。これらの結果、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とを接触した状態とすることができる。
【0265】
このような装置構成をとった場合には、励起光源(第1の発光体)からの光が蛍光体含有部(第2の発光体)の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
【0266】
図2(a)は、一般的に砲弾型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。該発光装置(4)において、符号5はマウントリード、符号6はインナーリード、符号7は励起光源(第1の発光体)、符号8は蛍光体含有樹脂部、符号9は導電性ワイヤ、符号10はモールド部材をそれぞれ指す。
【0267】
また、図2(b)は、表面実装型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。図中、符号22は励起光源(第1の発光体)、符号23は蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部、符号24はフレーム、符号25は導電性ワイヤ、符号26及び符号27は電極をそれぞれ指す。
【0268】
[5−4.発光装置の用途]
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、色再現範囲が広く、且つ、演色性も高いことから、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いられる。
【0269】
[5−4−1.照明装置]
本発明の発光装置を照明装置に適用する場合には、前述のような発光装置を公知の照明装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、図3に示されるような、前述の発光装置(4)を組み込んだ面発光照明装置(11)を挙げることができる。
【0270】
図3は、本発明の照明装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。この図3に示すように、該面発光照明装置は、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース(12)の底面に、多数の発光装置(13)(前述の発光装置(4)に相当)を、その外側に発光装置(13)の駆動のための電源及び回路等(図示せず)を設けて配置し、保持ケース(12)の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板(14)を発光の均一化のために固定してなる。
【0271】
そして、面発光照明装置(11)を駆動して、発光装置(13)の励起光源(第1の発光体)に電圧を印加することにより光を発光させ、その発光の一部を、蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部における前記蛍光体が吸収し、可視光を発光し、一方、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により演色性の高い発光が得られ、この光が拡散板(14)を透過して、図面上方に出射され、保持ケース(12)の拡散板(14)面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【0272】
[5−4−2.画像表示装置]
本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、その画像表示装置の具体的構成に制限はないが、カラーフィルターと共に用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより、画像表示装置を形成することができる。
【実施例】
【0273】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下の記載中「部」という記載は全て「重量部」を表わす。
【0274】
[測定・評価方法]
<粉末X線回折測定方法>
粉末X線回折は、PANalytical製粉末X線回折装置X'Pertにて精密測定した。測定条件は以下の通りである。
CuKα管球使用
X線出力=45KV、40mA
発散スリット=1/4°、X線ミラー
検出器=半導体アレイ検出器X'Celerator使用、Niフィルター使用
走査範囲 2θ=10〜65度
読み込み幅=0.05度
計数時間=33秒
【0275】
<発光スペクトルの測定方法>
発光スペクトルは、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)用いて測定した。励起光源からの光を焦点距離が10cmである回折格子分光器に通し、波長395nmの励起光のみを光ファイバーを通じて蛍光体に照射した。励起光の照射により蛍光体から発生した光を焦点距離が25cmである回折格子分光器により分光し、300nm以上800nm以下の波長範囲においてスペクトル測定装置により各波長の発光強度を測定し、パーソナルコンピュータによる感度補正等の信号処理を経て発光スペクトルを得た。なお、測定時には、受光側分光器のスリット幅を1nmに設定して測定を行った。
【0276】
<発光ピーク波長・半値幅>
発光ピーク波長と半値幅は、上述の方法で得られた発光スペクトルから読み取った。
【0277】
<色度座標の測定方法>
発光スペクトルの380nm〜800nm(励起波長340nmの場合)、430nm〜800nm(励起波長400nmの場合)、又は480nm〜800nm(励起波長455nmの場合)の波長領域のデータから、JIS Z8724に準じた方法で、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標CIExとCIEyを算出した。
【0278】
<Raの測定方法>
JIS Z8726に記載の方法に従って、発光スペクトルから求められる表色系XYZ値を使って算出した。
【0279】
[実施例1]
炭酸バリウム(レアメタリック(株)製、BaCO3)、炭酸マグネシウム(白辰化学(株)製、MgCO3)、酸化珪素(龍森(株)、SiO2)、窒化珪素(宇部(株)製、Si3N4)、酸化ユーロピウム(信越化学(株)製、Eu2O3)、及び酸化ルテチウム(信越化学(株)製、Lu2O3)の各原料を、BaCO3:MgCO3:SiO2:Si3N4:Eu2O3:Lu2O3のモル比が2.97:0.9:2:0.05:0.015:0.1となるように秤量し、混合した。
【0280】
次に、0.92MPaの窒素中で、1200℃で2時間保持し、続けて1400℃で2時間保持して焼成した。得られた焼成粉をアルミナ乳鉢上でアルミナ乳棒を用いて粉砕を行い、(Ba,Eu)3(Mg,Lu)Si2(O,N)8(仕込み組成Ba2.97Eu0.03Mg0.82Lu0.18Si2O7.82N0.18)で示される化合物を有してなる蛍光体を得た。
【0281】
得られた蛍光体の粉末X線回折測定を行った。回折パターンを[図4]に示す。また、得られた蛍光体について395nmの光で励起した場合の発光スペクトル測定を行った。その発光スペクトルを[図5]に示し、特性を評価した結果を[表4]に示す。
【0282】
[実施例2〜4]
原料のモル混合比を、下記[表3]に記載した割合とした以外は、実施例1と同様にして、(Ba,Eu)3(Mg,Lu)Si2(O,N)8で示される化合物を有してなる蛍光体を得た。
得られた蛍光体の粉末X線回折測定、及び発光スペクトル測定を行った。結果を[図4]、[図5]及び[表4]に示す。
【0283】
また、粉末X線回折測定の結果から求められる格子定数を六方晶の単位格子に当てはめ、各実施例の単位格子当たり体積の比較も行った。結果を[図6]に示す。
なお、類似の結晶構造を有し、Mgが全てLuに置換されたものに相当する、Ba9Lu2Si6O24の単位格子当たり体積は211Å3であった。各実施例との比較のため、[図6]に211Å3を明示する。
【0284】
[比較例1]
原料のモル混合比を、下記[表3]に記載した割合とした以外は、[実施例1]と同様にして、(Ba,Eu)3MgSi2O8で示される化合物を有してなる蛍光体を得た。
得られた蛍光体の粉末X線回折測定、及び発光スペクトル測定を行った。結果を[図4]、[図5]及び[表4]に示す。
【0285】
【表3】
【0286】
【表4】
【0287】
[結果と考察]
これらの結果より、本発明の蛍光体は、Ba3MgSi2O8を結晶母体とする比較例の蛍光体と同様の回折ピークパターンを示すものの、Luの添加量が増えるに従いその回折ピークは低角度側にシフトしており、Mgの一部がLuに置換されることによりその格子定数が増加していることがわかった。
【0288】
また、単位格子の体積比較の結果から、[実施例4]はBa9Lu2Si6O24の単位格子当たりの体積に比べその値が小さいことから、Mgが全てLuに置換されてはいないことが確認された。
【0289】
ここで、[実施例3]と[実施例4]とでは、その原料の仕込み組成が同一であるが、出来上がった蛍光体中のLu含有量は異なった。これは、焼成雰囲気の僅かな違いがLuの置換量に影響を及ぼしたものと推察される。
【0290】
[実施例5]
[図2(b)]に示す構成の表面実装型白色発光装置を以下の手順により作製し、その色度をCIE色度座標値(CIEx、CIEy)により評価した。なお、[実施例5]の各構成要素のうち、[図2(b)]に対応する構成要素が描かれているものについては、適宜その符号をカッコ書きにて示す。
【0291】
第1の発光体(22)としては、波長390nm〜400nmに発光ピークを有する近紫外線発光ダイオード(以下適宜「近紫外LED」と略する)であるC395EZ290(Cree製)BR0428−03Aを用いた。この近紫外LED(22)を、フレーム(24)の凹部の底の電極(27)に、接着剤として銀ペーストを用いてダイボンディングした。この際、近紫外LED(22)で発生する熱の放熱性を考慮して、接着剤である銀ペーストは薄く均一に塗布した。150℃で2時間加熱し、銀ペーストを硬化させた後、近紫外LED(22)とフレーム(24)の電極(26)とをワイヤボンディングした。ワイヤ(25)は、直径25μmの金線を用いた。
【0292】
また、蛍光体含有樹脂部(23)において、蛍光体含有部(23)の発光物質(緑色蛍光体である上記[実施例3]の蛍光体)と、シリコーン樹脂(信越化学社製6101UP)と、アエロジル(登録商標)(RY−200S)とを混合し、70℃で1時間さらに150℃で2時間の加熱による硬化条件で硬化させ、蛍光体含有部(23)を形成し、表面実装型発光装置を作製した。
【0293】
室温(25±1℃)において、得られた表面実装型発光装置の近紫外LED(22)に、20mAの電流を通電して駆動し発光させた。
発光装置からの全ての発光を積分球で受け、さらに光ファイバーによって分光器に導き入れ、発光スペクトルを測定した。発光スペクトルを[図7]に示す。
【0294】
[実施例6]
蛍光体含有樹脂部(23)において、蛍光体含有部(23)の発光物質を緑色蛍光体である上記[実施例4]の蛍光体、及び波長520nm〜760nmの光を発光する赤色蛍光体であるSr0.792Ca0.2AlSiN3:Eu0.008(以下、「SCASN」と略称することがある。)とし、シリコーン樹脂(信越化学社製6101UP)のみを使用した以外は、[実施例5]と同様にして、表面実装型白色発光装置を作製した。
なお、発光物質の組成比は[表5]に示す。
【0295】
室温(25±1℃)において、得られた表面実装型白色発光装置の近紫外LED(22)に、20mAの電流を通電して駆動し発光させた。
白色発光装置からの全ての発光を積分球で受け、さらに光ファイバーによって分光器に導き入れ、発光スペクトルを測定し、さらに白色色度座標及びRaを測定した。
発光スペクトルを[図8]に、その他の結果を[表6]に示す。
【0296】
[比較例2]
[実施例4]の本発明の蛍光体の代わりに、青色蛍光体Ba0.7MgAl10O17:Eu0.3(以下、「BAM」と略称することがある。)と、緑色蛍光体Ba1.39Sr0.46SiO4:Eu0.15(以下、「BSS」と略称することがある。)とを使用した以外は、[実施例5]と同様に表面実装型白色発光装置を作製した。
なお、発光物質の組成比は[表5]に示す。
【0297】
得られた表面実装型白色発光装置に対して、[実施例6]と同様の条件で発光スペクトルを測定し、さらに白色色度座標及びRaを測定した。
発光スペクトルを[図8]に、その他の結果を[表6]に示す。
【0298】
【表5】
【0299】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0300】
本発明は光を用いる任意の分野において用いることができ、例えば屋内及び屋外用の照明などのほか、携帯電話、家庭用電化製品、屋外設置用ディスプレイ等の各種電子機器の画像表示装置などに用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0301】
【図1】本発明の発光装置の一例における、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)との位置関係を示す模式的斜視図である。
【図2】(a)及び(b)は、いずれも、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の照明装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施例1〜実施例4、及び比較例1について測定した、粉末X線回折測定の結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例1〜実施例4、及び比較例1について測定した、発光スペクトル測定の結果を示す図である。実施例1を実線(太線)、実施例2を一点鎖線、実施例3を二点鎖線、実施例4を実線(細線)、比較例1を破線で表わしている。
【図6】本発明の実施例1〜実施例4について、粉末X線回折測定の結果から求められる格子定数を六方晶の単位格子に当てはめて算出した、格子当たり体積を表わす図である。なお、Ba9Lu2Si6O24の単位格子当たり体積である、211Å3を図中に直線で明示する。
【図7】本発明の実施例5で製造した表面実装型発光装置の発光スペクトルを表わす図である。
【図8】本発明の実施例6、及び比較例2で製造した表面実装型白色発光装置の発光スペクトルを表わす図である。
【符号の説明】
【0302】
1:第2の発光体
2:面発光型GaN系LD
3:基板
4:発光装置
5:マウントリード
6:インナーリード
7:第1の発光体
8:蛍光体含有樹脂部
9:導電性ワイヤー
10:モールド部材
11:面発光照明装置
12:保持ケース
13:発光装置
14:拡散板
22:第1の発光体
23:蛍光体含有樹脂部
24:フレーム
25:導電性ワイヤー
26:電極
27:電極
【技術分野】
【0001】
本発明は近紫外光による励起により、青色〜緑色の発光を行う蛍光体、それを含有する蛍光体含有組成物、及び発光装置、並びにその発光装置を用いた照明装置、及び画像表示装置に関する。
より詳しくは、蛍光体の発光波長範囲が広く、より自然光に近い白色光を得るのに好ましい、蛍光体、それを含有する蛍光体含有組成物、及び発光装置、並びにその発光装置を用いた照明装置、及びに画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光装置を用いたディスプレイ用及び照明用の白色発光装置の開発が盛んに行なわれている。これらの装置に用いられる蛍光体としては、青色光を励起光源とするものと、近紫外光を励起光源とするものが知られている。現在は、前記の中でも青色光を励起光源とするものがほとんどであり、近紫外光を励起光源とするものは限られている。
【0003】
近紫外光を励起光源とし、緑色発光をする蛍光体としては、(Ba,Sr)2SiO4:Eu、BaMgAl10O17:Eu,Mn等が知られているが、より自然光に近い白色光を得るためは、より半値幅の大きい蛍光体が望まれる(特許文献1〜2参照)。
【0004】
また、近紫外光を励起光源とする蛍光体のひとつとして、Ba3MgSi2O8という組成の母体結晶組成を有する蛍光体が知られているが(特許文献3〜5参照)、これらはいずれも青色発光を又は赤色発光を行うのみであった。加えて、その発光スペクトルの半値幅も狭いため、より自然光に近い白色光を得るには至らなかった。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6982045号明細書
【特許文献2】特公昭52−22836号公報
【特許文献3】国際公開2005/112135号パンフレット
【特許文献4】特開2002−332481号公報
【特許文献5】特開2006−124644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、近紫外光による励起が可能な蛍光体によって自然光に近い白色光を得るためには、より半値幅の広い発光スペクトル形状を示す蛍光体が望まれている。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。その目的は、近紫外光による励起可能であって、従来の蛍光体よりも半値幅が広く、自然な白色光を得るのに好ましい、青色〜緑色の蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、メルウィナイト構造であって、Ba3MgSi2O8という組成である母体結晶組成を有してなる蛍光体のMgサイトの一部を、特定の希土類元素と置換することにより、その発光スペクトルの半値幅が増大するとともに、発光ピーク波長も長波長側にシフトすることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、下記式(1)で表わされる化学組成を有することを特徴とする、蛍光体に存する(請求項1)。
【化1】
(前記式(1)において、M1は、Ba、Sr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M2は、Mg及びZnからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、Lnは、La、Lu、Y、Sc及びGdからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、x、y及びzは、各々、0<x<1、0.05≦y<1、0≦z<1、を満たす正の数を示す。)
【0009】
このとき、395nmの波長の光で励起した場合に、420nm以上550nm以下の波長範囲に発光スペクトルのピーク波長を有することが好ましい(請求項2)。
【0010】
また、前記発光スペクトルのピークの半値幅が60nm以上であることも好ましい(請求項3)。
【0011】
本発明の別の要旨は、250nm以上480nm以下の波長範囲の光で励起した場合に、420nm以上550nm以下の波長範囲にピーク波長を1つ有する発光スペクトルを有し、前記発光スペクトルのピークの半値幅が145nm以上であることを特徴とする、蛍光体に存する(請求項4)。
【0012】
このとき、下記式(2)で表わされる化学組成を有することが好ましい(請求項5)。
【化2】
(前記式(2)において、M3及びM4は、それぞれ独立にアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及び2価の遷移元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M5は、B、Al、Si、Ge、P、As、及びSbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M6は、O、N、S、及びハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、L1は、Sm、Eu、Tm及びYbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、L2は、希土類元素を示す。また、M3のイオン半径はM4のイオン半径より大きく、L2のイオン半径はM4の0.7倍以上1.3倍以下の範囲である。)
【0013】
本発明の別の要旨は、上述の蛍光体と、液体媒体とを含有することを特徴とする、蛍光体含有組成物に存する(請求項6)。
【0014】
本発明の別の要旨は、第1の発光体と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、前記第2の発光体が、請求項1〜5の何れか一項に記載の蛍光体を1種以上、第1の蛍光体として含有することを特徴とする、発光装置に存する(請求項7)。
【0015】
このとき、前記第2の発光体が、前記第1の蛍光体とは発光ピーク波長の異なる蛍光体を1種以上、第2の蛍光体として含有することが好ましい(請求項8)。
【0016】
また、前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、490nmを超え570nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、570nmを超え780nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有することも好ましい(請求項9)。
【0017】
さらに、前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、420nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、570nmを超え780nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有することも好ましい(請求項10)。
【0018】
本発明の別の要旨は、上記の発光装置を有してなることを特徴とした、照明装置に存する(請求項11)。
【0019】
本発明の別の要旨は、上記の発光装置を有してなることを特徴とした、画像表示装置に存する(請求項12)。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、近紫外光による励起可能な新規な青色〜緑色の蛍光体であって、従来の蛍光体より半値幅が広く、自然な白色光を得るのに好ましい蛍光体並びに、それを用いた蛍光体含有組成物、発光装置、照明装置及び画像表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0022】
なお、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表わす。また、括弧内にカンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。また、該括弧に付した原子の数(組成比)を表わす添字は、該括弧内に列記される元素の合計の原子の数を表わす。
例えば、「(Ca,Sr,Ba)Al2O4:Eu」という組成式は、「CaAl2O4:Eu」と、「SrAl2O4:Eu」と、「BaAl2O4:Eu」と、「Ca1-xSrxAl2O4:Eu」と、「Sr1-xBaxAl2O4:Eu」と、「Ca1-xBaxAl2O4:Eu」と、「Ca1-x-ySrxBayAl2O4:Eu」とを全て包括的に示しているものとする(但し、前記式中、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)。
【0023】
また、本明細書における色名と色度座標との関係は、すべてJIS規格に基づく(JIS Z8110及びZ8701)。
【0024】
[1.蛍光体]
本発明の一態様に係る蛍光体(以下「本発明の特定特性蛍光体」或いは単に「特定特性蛍光体」という場合がある)は、特定波長の光で励起した場合の発光ピーク半値幅が後述の規定を満たすものである。
また、本発明の別の一態様に係る蛍光体(以下「本発明の特定組成蛍光体」或いは単に「特定組成蛍光体」という場合がある)は、その組成が後述の規定を満たすものである。
【0025】
本発明の蛍光体は、「特定特性蛍光体」及び「特定組成蛍光体」のうち少なくとも一方に該当するものであるが、「特定特性蛍光体」及び「特定組成蛍光体」の双方に該当することが好ましい。
【0026】
以下の記載では、必要に応じて「特定特性蛍光体」と「特定組成蛍光体」とに分けて説明を行なう。また、「特定特性蛍光体」と「特定組成蛍光体」とを特に区別しない場合には、「本発明の蛍光体」と総称する。
なお、「特定特性蛍光体」及び「特定組成蛍光体」という語は、あくまでも説明の便宜のために用いるものであり、本発明の蛍光体になんら影響を与えるものではない。
【0027】
[1−1.特定組成蛍光体]
一方、本発明の特定組成蛍光体は、以下に説明する特徴を有する。
【0028】
<組成>
特定組成蛍光体は、下記式(1)で表わされる化学組成を有することを特徴とする。その具体例としては、Ba3MgSi2O8という母体結晶組成を有する蛍光体のMgサイトの一部を特定の希土類元素と置換する構造を挙げることができる。
【0029】
【化3】
(前記式(1)において、M1は、Ba、Sr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M2は、Mg及びZnからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、Lnは、La、Lu、Y、Sc及びGdからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、x、y及びzは、各々、0<x<1、0.05≦y<1、0≦z<1を満たす正の数を示す。)
【0030】
上記式(1)中、M1は、Ba、Sr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記M1としては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。
中でも、少なくともBaを含有することが好ましい。ここで、M1全体に対するBa、Sr、及びCaのモル比をそれぞれ[Ba]、[Sr]、及び[Ca]とすると、M1全体に対する[Ba]のモル比、即ち、[Ba]/([Ba]+[Sr]+[Ca])で表わされる値が、通常0以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上、また、通常1以下である。
【0031】
上記式(1)中、Euは、付活元素であるユーロピウムである。Euは、特定組成蛍光体中において、2価のカチオン及び/又は3価のカチオンとして存在する。この際、Euは、2価のカチオンの存在割合が高い方が好ましい。
全Eu量に対するEu2+の割合は、通常20モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
なお、特定組成蛍光体に含まれる全Eu中のEu2+の割合は、例えば、X線吸収微細構造(X−ray Absorption Fine Structure)の測定によって調べることができる。すなわち、Eu原子のL3吸収端を測定すると、Eu2+とEu3+が別々の吸収ピークを示すので、その面積から比率を定量できる。また、特定組成蛍光体に含まれる全Eu中のEu2+の割合は、電子スピン共鳴(ESR)の測定によっても知ることができる。
【0032】
上記式(1)中、xは、M1サイトに対するEuの置換量を示す数値である。該数値は、通常0より大きい値であり、好ましくは0.001以上、さらに好ましくは0.01以上、また、通常1未満、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下、さらに好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下である。この範囲を上回ると、濃度消光により発光強度が低くなる可能性がある。また、この範囲を下回ると、発光強度が低くなる可能性がある。
【0033】
上記式(1)中、M2は、Mg及びZnからなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記M2としては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。
中でも、少なくともMgを含有することが好ましい。ここで、M2全体に対するMg、及びZnのモル比をそれぞれ[Mg]及び[Zn]とすると、M2全体に対する[Mg]のモル比、即ち、[Mg]/([Mg]+[Zn])で表わされる値が、通常0以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上、また、通常1以下である。
【0034】
上記式(1)中、Lnは、La、Lu、Y、Sc及びGdからなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記Lnとしては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。
中でも、Lu、又はYを含有することが好ましい。ここで、Ln全体に対するLa、Lu、Y、Sc及びGdのモル比をそれぞれ[La]、[Lu]、[Y]、[Sc]及び[Gd]とすると、M1全体に対する[Lu]のモル比、即ち、[Lu]/([La]+[Lu]+[Y]+[Sc]+[Gd])で表わされる値が、通常0以上、好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上、また、通常1以下である。
【0035】
上記式(1)中、yは、M2サイトに対するLnの置換量を示す数値である。本発明の特徴である、発光スペクトルの半値幅が広いという効果を得るためには、該数値が、通常0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上、また、通常1未満、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.7以下である。
yの値が大きくなるほど、発光スペクトルの半値幅が増加するが、それに伴い発光ピーク波長が青〜緑色の波長範囲の間でシフトする。そのため、青色蛍光体として用いる場合には、該数値が通常0.05以上、好ましくは0.1以上、また、通常0.25以下、好ましくは0.2以下である。また、緑色蛍光体として用いる場合には、通常0.3以上、好ましくは0.35以上、また、通常0.45以下、好ましくは0.4以下である。yの値が上記範囲を外れた場合、発光色が青緑色の蛍光体となる。
【0036】
上記式(1)中、zは、NとOとの組成比を示す数値である。該数値は、通常0以上、好ましくは0.05以上、また、通常1未満、好ましくは0.9以下、さらに好ましくは0.8以下である。この範囲を外れると、格子欠損の生じる可能性がある。
【0037】
特定組成蛍光体の好ましい組成の具体例を以下の表に挙げるが、本発明の蛍光体の組成は以下の例示に制限されるものではない。
【表1】
【0038】
また、特定組成蛍光体は、前記式[1]に記載された元素、即ちM1、Eu、M2、Ln、Si、O、及びN以外に、更に、1価の元素、2価の元素、3価の元素、−1価の元素及び−3価の元素からなる群から選ばれる元素(これを以下適宜「微量元素」という)を含有していてもよい。
【0039】
中でも、微量元素としては、アルカリ金属元素、リン(P)、希土類元素、及びハロゲン元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有していることが好ましい。
【0040】
上記の微量元素の含有量の合計は、通常1ppm以上、好ましくは3ppm以上、更に好ましくは5ppm以上、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下である。特定組成蛍光体が複数種の微量元素を含有する場合には、それらの合計量が上記範囲を満たすようにする。
【0041】
また、Siは、Ge等の他の元素によって一部置換されていてもよい。但し、青色〜緑色の発光強度等の面から、Siが他の元素によって置換されている割合は、できるだけ低い方が好ましい。具体的には、Ge等の他の元素をSiの20モル%以下含んでいてもよく、全てがSiからなることがより好ましい。
【0042】
また、特定組成蛍光体は、上記の元素以外に、Tb、Ag、Sm、及びPrからなる群から選ばれる1種以上の元素を含有していてもよい。
【0043】
また、特定組成蛍光体は、上記の元素以外に、Alを含有する場合がある。Alの含有量としては、通常1ppm以上、好ましくは5ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、また、通常500ppm以下、好ましくは200ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。
【0044】
また、特定組成蛍光体は、上記の元素以外に、B(ホウ素)を含有する場合がある。Bの含有量としては、通常1ppm以上、好ましくは3ppm以上、更に好ましくは5ppm以上、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下である。
【0045】
また、特定組成蛍光体は、上記の元素以外に、Feを含有する場合がある。Feの含有量としては、通常1ppm以上、好ましくは3ppm以上、更に好ましくは5ppm以上、また、通常100ppm以下、好ましくは50ppm以下、更に好ましくは30ppm以下である。
【0046】
<発光スペクトルに関する特徴>
特定組成蛍光体は、上述の特徴(組成)を有していれば制限はないが、更に以下の特徴を備えていることが好ましい。
【0047】
特定組成蛍光体は、波長395nmの光で励起した場合に、以下の特徴を有する発光スペクトルが測定される。
【0048】
まず、特定組成蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピーク波長λp(nm)
が、通常420nm以上、また、好ましくは440nm以上、より好ましくは450nm以上、また、通常550nm以下、好ましくは540nm以下、より好ましくは530nm以下の範囲である。発光ピーク波長λpが上記の範囲を外れると、蛍光体から青色〜緑色を外れた色味が混色する傾向にあり、いずれも蛍光体の特性が低下する場合がある。
【0049】
また、特定組成蛍光体の発光ピークの相対強度(以下「相対発光ピーク強度」という場合がある)は、通常0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上である。なお、この相対発光ピーク強度は、化成オプトニクス社製BaMgAl10O17:Eu(製品番号LP−B4)を395nmで励起した時の発光強度を100として表わしている。この相対発光ピーク強度は高い方が好ましい。
【0050】
また、特定組成蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピーク半値幅(full width at half maximum。以下適宜「FWHM」と略称する)が60nm以上であり、広いという特徴を有する。FWHMが広いということは、即ち、自然な白色光を得るのに好ましい蛍光体であることを意味し、例えば、照明等の用途において優れた蛍光体となる。
【0051】
具体的に、特定組成蛍光体のFWHMは、通常60nm以上、好ましくは80nm以上、より好ましくは100nm以上、さらに好ましくは120nm以上、特に好ましくは145nm以上、また、通常200nm以下の範囲である。FWHMが狭過ぎると輝度が低下する場合があり、一方、広過ぎると色純度が低下する場合がある。
【0052】
なお、蛍光体をピーク波長395nm以下の光で励起するには、例えば、GaN系発光ダイオード等を用いることができる。
【0053】
また、蛍光体の発光スペクトルの測定、並びにその発光ピーク波長、相対発光ピーク強度及びピーク半値幅の算出は、例えば、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて行なうことができる。
【0054】
<色度座標>
特定組成蛍光体の発光色は、CIE色度座標の一つ、x、y表色系(CIE 1931表色系)で表現することができる。
【0055】
具体的に、特定特性蛍光体のCIE色度座標xの値は、通常0.15以上、好ましくは0.2以上、また、通常0.35以下、好ましくは0.3以下の範囲である。
また、特定特性蛍光体のCIE色度座標yの値は、通常0.15以上、好ましくは0.2以上、また、通常0.5以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下の範囲である。
なお、蛍光体のCIE色度座標x及びyの値は、波長480nm〜800nmの範囲における発光スペクトルから、JIS Z8724に準じて計算することにより算出することができる。
【0056】
<その他>
以上説明した特徴の他、特定組成蛍光体は、後述する特定特性蛍光体の特徴のうち、任意の一つ又は二つ以上の特徴を備えていてもよい。また、特定組成蛍光体は、後述する特定特性蛍光体に該当するものであってもよい。
【0057】
[1−2.特定特性蛍光体]
本発明の特定特性蛍光体は、以下に説明する特徴を有する。
【0058】
<発光スペクトルに関する特徴>
特定特性蛍光体は、青色〜緑色の蛍光体としての用途に鑑みて、ピーク波長250nm以上480nm以下の光で励起した場合における発光スペクトルを測定した場合に、以下の特徴を有する。
【0059】
まず、特定特性蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピーク半値幅(FWHM)が145nm以上であり、広いという特徴を有する。FWHMが広いということは、即ち、自然な白色光を得るのに好ましい蛍光体であることを意味し、例えば、照明等の用途において優れた蛍光体となる。
【0060】
具体的に、特定特性蛍光体のFWHMは、通常145nm以上、好ましくは150nm以上、より好ましくは155nm以上、特に好ましくは160nm以上、また、通常200nm以下の範囲である。FWHMが狭過ぎると輝度が低下する場合があり、一方、広過ぎると色純度が低下する場合がある。
【0061】
特定特性蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピーク波長λp(nm)が、通常420nm以上、好ましくは450nm以上、より好ましくは480nm以上、また、通常550nm以下、好ましくは540nm以下、より好ましくは530nm以下の範囲である。発光ピーク波長λpが上記の範囲を外れると、蛍光体から青色〜緑色を外れた色味が混色する傾向にあり、いずれも蛍光体の特性が低下する場合がある。
【0062】
また、特定特性蛍光体の発光ピークの相対強度(以下「相対発光ピーク強度」という場合がある)は、通常0.1以上、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.8以上である。なお、この相対発光ピーク強度は、化成オプトニクス社製BaMgAl10O17:Eu(製品番号LP−B4)を波長395nmの光で励起した時の発光強度を100として表わしている。この相対発光ピーク強度は高い方が好ましい。
【0063】
なお、蛍光体をピーク波長250nm以上480nm以下の光で励起するには、例えば、GaN系発光ダイオード等を用いることができる。
【0064】
また、蛍光体の発光スペクトルの測定、並びにその発光ピーク波長、ピーク相対強度及びピーク半値幅の算出は、例えば、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いて行なうことができる。
【0065】
<色度座標>
特定特性蛍光体の発光色は、CIE色度座標の一つ、x、y表色系(CIE 1931表色系)で表現することができる。具体的に、好ましい範囲などは特定組成蛍光体と同様である。
【0066】
<組成>
特定特性蛍光体は、上述の特徴(発光スペクトル)を有していれば制限はないが、更に以下の式(2)の構造を有していることが好ましい。
【0067】
【化4】
(前記式(2)において、M3及びM4は、それぞれ独立にアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及び2価の遷移元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M5は、B、Al、Si、Ge、P、As、及びSbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、M6は、O、N、S、及びハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、L1は、Sm、Eu、Tm及びYbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、L2は、L1以外の希土類元素を示す。また、M3のイオン半径はM4のイオン半径より大きく、L2のイオン半径はM4の0.7倍以上1.3倍以下の範囲である。)
【0068】
上記式(2)中、M3及びM4は、それそれ、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及び2価の遷移元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記M3及びM4としては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。なお、本発明において、遷移元素とは、長周期表において第3属から第12属までに属する元素をいう。
また、M3はM4よりイオン半径が大きい元素である。なお、該イオン半径については、R.D. SHANNON Acta Cryst.(1976)A32,751に記載されている。
【0069】
上記M3としては、Ba、Sr、Ca、Cs、Pb、又はKが好ましい。中でも少なくともBa、Sr又はCaを含有することが好ましく、少なくともBaを含有することがさらに好ましい。
ここで、全M3量に対するBaのモル比率としては、通常0以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上であり、また通常1以下である。
【0070】
上記M4としては、Mg、Zn、Ti、Zr、Na、又はMnが好ましい。中でも少なくともMg又はZnを含有することが好ましく、少なくともMgを含有することがさらに好ましい。
ここで、全M4量に対するMgのモル比率としては、通常0以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上であり、また通常1以下である。
【0071】
上記式(2)中、L1は、Sm、Eu、Tm及びYbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記L1としては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。中でも、Euを含有していることが好ましい。
Euを含有する場合、全L1量に対するEuのモル比率は、通常0以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上、また、通常1以下である。
【0072】
L1は付活元素であり、特定特性蛍光体中において2価のカチオン及び/又は3価のカチオンとして存在する。この際、L1は2価のカチオンの存在割合が高い方が好ましい。例えば、L1がEuの場合、全Eu量に対するEu2+の割合は、通常20モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
なお、特定特性蛍光体に含まれる全Eu中のEu2+の割合は、公知の測定方法を用いて任意に行なうことが出来るが、例えば、特定組成蛍光体の項で説明した方法で行なうことができる。
【0073】
上記式(2)中、L2は、L1以外の希土類元素を示し、かつ、L2のイオン半径はM4のイオン半径の通常0.7倍以上、好ましくは0.8倍以上、より好ましくは0.9倍以上、また、通常1.3倍以下、好ましくは1.2倍以下、より好ましくは1.1倍以下の範囲である。この範囲を上回ると、M3サイトへの置換が起こる可能性がある。また、下回ると、目的とするM4サイトへの置換が低下する可能性がある。本願発明は、M4元素のL2元素による置換によって生じる結晶構造の変化により、その効果を得られているものと推測される。
【0074】
上記L2としては、希土類元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。なお、本発明において、希土類元素とは、Sc、Y、及びランタノイド(La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)をいう。
【0075】
上記式(2)中、M5は、B、Al、Si、Ge、P、As、及びSbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記M5としては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。
中でも、B、Al、Si、Ge、又はPを含有しているのが好ましく、その中でもAl、Si、Ge、又はPを含有しているのがより好ましく、さらにはSi又はGeを含有しているのが好ましく、特にはSiが好ましい。Siを含有する場合、全M5量に対するSiのモル比率は、通常0以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上、また通常1以下である。
【0076】
上記式(2)中、M6は、O、N、S、及びハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。上記M6としては、これらの元素のうち何れか一種を単独で含有していてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有していてもよい。中でも、O、N、ハロゲンからなる群より選ばれる1種以上を含有していることが好ましい。特に、少なくともOを全M6量に対して、通常0以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上、また、通常1以下、好ましくは0.95以下、さらに好ましくは0.9以下含有するものである。
【0077】
<その他>
以上説明した特徴の他、特定特性蛍光体は、前述した特定組成蛍光体の特徴のうち、任意の一つ又は二つ以上の特徴を備えていてもよい。例えば、特定特性蛍光体は、特定組成蛍光体の項で説明した微量元素を、該項で説明した割合で含有してもよい。また、特定特性蛍光体は、前述する特定組成蛍光体に該当するものであってもよい。
【0078】
[1−3.本発明の蛍光体の共通の特徴]
本発明の蛍光体は、以下の特徴を有していることも好ましい。
【0079】
<励起波長に関する特性>
本発明の蛍光体の励起波長は特に限定されないが、通常200nm以上、好ましくは300nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは420nm以下、より好ましくは410nm以下の波長範囲の光で励起可能であることが好ましい。例えば、青色領域の光(波長範囲:420nm以上500nm以下)、及び/又は、近紫外領域の光(波長範囲:300nm以上420nm以下)で励起可能であれば、半導体発光素子等を第1の発光体とする発光装置に好適に使用することができる。
【0080】
なお、励起スペクトルの測定は、室温、例えば25℃において、蛍光分光光度計F−4500型(株式会社日立製作所製)を用いて測定することができる。得られた励起スペクトルから、励起ピーク波長を算出することができる。
【0081】
<重量メジアン径>
本発明の蛍光体の重量メジアン径は、通常0.01μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。なお、特定組成蛍光体の重量メジアン径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等の装置を用いて測定することができる。
【0082】
<温度特性>
本発明の蛍光体は、温度特性にも優れる。具体的には、400nmの波長の光を照射した場合の20℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値に対する150℃での発光スペクトル図中の発光ピーク強度値の割合が、通常40%以上であり、好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である。
また、通常の蛍光体は温度上昇と共に発光強度が低下するので、該割合が100%を越えることは考えられにくいが、何らかの理由により100%を超えることがあっても良い。ただし150%を超えるようであれば、温度変化により色ずれを起こす傾向となる。
【0083】
本発明の蛍光体は、上記発光ピーク強度に関してだけでなく、輝度の点からも優れたものである。具体的には、400nmの波長の光を照射した場合の20℃での輝度に対する150℃での輝度の割合も、通常40%以上であり、好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上である。
【0084】
尚、上記温度特性を測定する場合は、例えば、発光スペクトル装置として大塚電子製MCPD7000マルチチャンネルスペクトル測定装置、輝度測定装置として色彩輝度計BM5A、ペルチェ素子による冷却機構とヒーターによる加熱機構を備えたステージ及び光源として150Wキセノンランプを備える装置を用いて、以下のように測定することができる。ステージに蛍光体サンプルを入れたセルを載せ、温度を20℃から150℃の範囲で変化させる。蛍光体の表面温度が20℃又は150℃で一定となったことを確認する。次いで、光源から回折格子で分光して取り出した波長400nmの光で蛍光体を励起して発光スペクトル測定する。測定された発光スペクトルから発光ピーク強度を求める。ここで、蛍光体の励起光照射側の表面温度の測定値は、放射温度計と熱電対による温度測定値を利用して補正した値を用いる。
【0085】
[2.本発明の蛍光体の製造方法]
本発明の蛍光体を得るための、原料、蛍光体製造法等についての一例を示す。本発明の蛍光体の製造方法は以下の例に制限されるものではなく、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の方法で製造することが出来る。
【0086】
本発明の蛍光体は、焼成により式(1)又は式(2)で示される化合物と付活剤とを含有する金属化合物混合物を焼成することにより製造することができる。すなわち、金属化合物を所定の組成となるように秤量し、混合した後に焼成することにより製造することができる。例えば、上記式(1)で表わされる蛍光体を製造する場合、M1の原料(以下適宜「M1源」という)、Euの原料(以下適宜「Eu源」という)、M2の原料(以下適宜「M2源」という)、Lnの原料(以下適宜「Ln源」という)、及び、Siの原料(以下適宜「Si源」という)を混合し(混合工程)、得られた混合物を焼成する(焼成工程)ことにより製造することができる。
また、例えば、上記式(2)で表わされる蛍光体を製造する場合、M3の原料(以下適宜「M3源」という)、L1の原料(以下適宜「L1源」という)、M4の原料(以下適宜「M4源」という)、L2の原料(以下適宜「L2源」という)、及びM5の原料(以下適宜「M5源」という)を混合し(混合工程)、得られた混合物を焼成する(焼成工程)ことにより製造することができる。
【0087】
[2−1.蛍光体原料]
本発明の蛍光体の製造に使用される蛍光体原料(M1源、Eu源、M2源、Ln源、Si源、M3源、L1源、M4源、L2源、及びM5源)としては、M1、Eu、M2、Ln、Si、M3、L1、M4、L2、及びM5の各元素の金属、合金、イミド化合物、酸窒化物、窒化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物等が挙げられる。これらの化合物の中から、複合酸窒化物への反応性や、焼成時におけるNOx、SOx等の発生量の低さ等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0088】
また、M6は上記式(2)で表わされる蛍光体のアニオン構成元素である。
M6の原料(以下適宜「M6源」という)としては、上述のM3源〜M5源、L1源及びL2源として記載された具体的化合物のうち、M6元素含有化合物がM6源としても用いられる他、N源やO源としては、蛍光体焼成雰囲気中に存在するガスもM6源となりうる。
【0089】
(M1源)
上記M1源の具体例をM1の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0090】
Baの原料(以下適宜「Ba源」という)の具体例としては、BaO、Ba(OH)2・8H2O、BaCO3、Ba(NO3)2、BaSO4、Ba(C2O4)、Ba(OCOCH3)2、BaCl2、Ba3N2、BaNH等が挙げられる。このうち好ましくは、炭酸塩、酸化物等が使用できるが、酸化物は空気中の水分と反応しやすいため、取扱の点から炭酸塩がより好ましい。中でも、BaCO3が好ましい。空気中の安定性が良く、また、加熱により容易に分解するため、目的外の元素が残留しにくく、さらに、高純度の原料を入手しやすいからである。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0091】
Caの原料(以下適宜「Ca源」という)の具体例としては、CaO、Ca(OH)2、CaCO3、Ca(NO3)2・4H2O、CaSO4・2H2O、Ca(C2O4)・H2O、Ca(OCOCH3)2・H2O、CaCl2、Ca3N2、CaNH等が挙げられる。中でも、CaCO3、CaCl2等が好ましい。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0092】
Srの原料(以下適宜「Sr源」という)の具体例としては、SrO、Sr(OH)2・8H2O、SrCO3、Sr(NO3)2、SrSO4、Sr(C2O4)・H2O、Sr(OCOCH3)2・0.5H2O、SrCl2、Sr3N2、SrNH等が挙げられる。中でも、SrCO3が好ましい。空気中の安定性が良く、また、加熱により容易に分解し、目的外の元素が残留しにくく、さらに、高純度の原料を入手しやすいからである。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0093】
(Eu源)
上記Eu源の具体例は、以下の通りである。
【0094】
Euの原料(以下適宜、「Eu源」という)の具体例としては、Eu2O3、Eu2(SO4)3、Eu2(C2O4)3・10H2O、EuCl2、EuCl3、Eu(NO3)3・6H2O、EuN、EuNH等が挙げられる。中でもEu2O3、EuCl2等が好ましく、特に好ましくはEu2O3である。
【0095】
(M2源)
上記M2源の具体例をM2の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0096】
Znの原料(以下適宜「Zn源」という)の具体例としては、ZnO、ZnF2、ZnCl2、Zn(OH)2、Zn3N2、ZnNH、Zn(C2O4)、ZnSO4等の亜鉛化合物(但し、水和物であってもよい)が挙げられる。中でも、粒子成長を促進させる効果が高いという観点からZnF2・4H2O(但し、無水物であってもよい)等が好ましい。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0097】
Mgの原料(以下適宜、「Mg源」という)の具体例としては、MgO、Mg(OH)2、塩基性炭酸マグネシウム(mMgCO3・Mg(OH)2・nH2O)、Mg(NO3)2・6H2O、MgSO4、Mg(C2O4)・2H2O、Mg(OCOCH3)2・4H2O、MgCl2、Mg3N2、MgNH等が挙げられる。中でも、MgOや塩基性炭酸マグネシウムが好ましい。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0098】
(Ln源)
上記Ln源の具体例をLnの種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0099】
Luの原料(以下適宜、「Lu源」という)の具体例としては、Lu2O3、LuCl3、LuF3、Lu(NO3)3、Lu2(CO3)3等が好ましい。中でもLu2O3が好ましい。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0100】
Laの原料(以下適宜、「La源」という)、Yの原料(以下適宜、「Y源」という)、Scの原料(以下適宜、「Sc源」という)、及びGdの原料(以下適宜、「Gd源」という)等のその他のLn源の具体例としては、Lu源の具体例として挙げた各化合物において、LuをそれぞれLa、Y、Sc、及びGd等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0101】
(Si源)
上記Si源の具体例は、以下の通りである。
【0102】
Siの原料(以下適宜、「Si源」という)の具体例としては、SiO2又はSi3N4を用いるのが好ましい。また、SiO2となる化合物を用いることもできる。このような化合物としては、具体的には、SiO2、H4SiO4、Si(OCOCH3)4等が挙げられる。また、Si3N4として反応性の点から、粒径が小さく、発光効率の点から純度の高いものが好ましい。さらに、発光効率の点からはα−Si3N4よりもβ−Si3N4の方が好ましく、特に不純物である炭素元素の含有割合が少ないものの方が好ましい。炭素含有の割合は、少なければ少ないほど好ましいが、通常0.01重量%以上含有され、通常0.3重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05%以下である。なお、炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0103】
(M3源及びM4源)
上記M3源及びM4源の具体例をM3びM4の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0104】
アルカリ金属元素のうち、Liの原料(以下適宜、「Li源」という)の具体例としては、Li2CO3、Li2O、LiOH、LiCl、LiF、Li2(C2O4)2、LiNO3等が好ましい。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0105】
Naの原料(以下適宜、「Na源」という)、Kの原料(以下適宜、「K源」という)、Rbの原料(以下適宜、「Rb源」という)、Csの原料(以下適宜、「Cs源」という)等のその他のアルカリ金属元素の具体例としては、Li源の具体例として挙げた各化合物において、LiをそれぞれNa、K、Rb、Cs等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0106】
Mgの原料(以下適宜、「Mg」という)、Caの原料(以下適宜、「Ca源」という)、Srの原料(以下適宜、「Sr源」という)、及びBaの原料(以下適宜、「Ba源」という)等のその他のアルカリ土類金属元素の具体例としては、M1源及びM2源の項で記載したのと同様のものが挙げられる。
【0107】
2価の遷移元素のうち、Znの原料(以下適宜、「Zn源」という)の具体例としては、ZnO、ZnCl2、ZnF2、Zn(NO3)2・6H2O、ZnS、Zn(OH)2、Zn(OCOCH3)2等が好ましい。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0108】
Crの原料(以下適宜、「Cr」という)、Mnの原料(以下適宜、「Mn源」という)、Coの原料(以下適宜、「Co源」という)、Niの原料(以下適宜、「Ni源」という)、Cuの原料(以下適宜、「Cu源」という)、Nbの原料(以下適宜、「Nb源」という)、Moの原料(以下適宜、「Mo源」という)、及びCdの原料(以下適宜、「Cd源」という)等のその他の2価の遷移元素の具体例としては、Ba源の具体例として挙げた各化合物において、MgをそれぞれCr、Mn、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、及びCd等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0109】
(L1源)
上記L1源の具体例をL1の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0110】
Eu源の具体例としては、上述のEu源の説明で例示した化合物と同様である。
【0111】
また、Smの原料(以下適宜、「Sm源」という)、Tmの原料(以下適宜、「Tm源」という)、及びYbの原料(以下適宜、「Yb源」という)等のその他の付活剤元素の原料の具体例としては、Eu源の具体例として挙げた各化合物において、EuをそれぞれSm、Tm、Yb等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0112】
(L2源)
上記L2源の具体例をL2の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0113】
希土類元素のうち、Lu源の具体例としては、上述のLu源の説明で例示した化合物と同様である。同様にして、La源、Y源、Sc源、Gd源等の具体例も、上述の説明で例示した化合物と同一である。
【0114】
Ceの原料(以下適宜、「Ce源」という)、Ndの原料(以下適宜、「Nd源」という)、Pmの原料(以下適宜、「Pm源」という)、Dyの原料(以下適宜、「Dy源」という)、Hoの原料(以下適宜、「Ho源」という)、Erの原料(以下適宜、「Er源」という)等のその他の希土類元素の具体例としては、Lu源の具体例として挙げた各化合物において、LuをそれぞれCe、Nd、Pm、Dy、Ho、及びEr等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0115】
Tbの原料(以下適宜、「Tb源」という)の具体例としては、Tb4O7、TbCl3(水和物を含む)、TbF3、Tb(NO3)3・nH2O、Tb2(SiO4)3、Tb2(C2O4)3・10H2O等が挙げられる。中でも、Tb4O7、TbCl3、TbF3が好ましく、Tb4O7がより好ましい。
【0116】
Prの原料(以下適宜、「Pr源」という)の具体例としては、Pr2O3、PrCl3、PrF3、Pr(NO3)3・6H2O、Pr2(SiO4)3、Pr2(C2O4)3・10H2O等が挙げられる。中でも、Pr2O3、PrCl3、PrF3が挙げられ、Pr2O3がより好ましい。
【0117】
(M5源)
上記M5源の具体例をM5の種類毎に分けて列挙すると、以下の通りである。
【0118】
Geの原料(以下適宜、「Ge源」という)の具体例としては、GeO2又はGe3N4を用いるのが好ましい。また、GeO2なる化合物を用いることもできる。このような化合物としては、具体的には、GeO2、Ge(OH)4、Ge(OCOCH3)4、GeCl4等が挙げられる。炭酸塩を原料とする場合は、予め炭酸塩を仮焼成して原料として使用することが好ましい。
【0119】
Asの原料(以下適宜、「As源」という)、及びSbの原料(以下適宜、「Sb源」という)等のその他のM5源の具体例としては、Ge源の具体例として挙げた各化合物において、GeをそれぞれAs、及びSb等に置き換えた化合物が挙げられる。
【0120】
Si源の具体例としては、上述のSi源の説明で例示した化合物と同様である。
【0121】
Pの原料(以下適宜、「P源」という)の具体例としては、P2O5、Ba3(PO4)2、Sr3(PO4)2、(NH4)3PO4等が挙げられる。
【0122】
Bの原料(以下適宜、「B源」という)の具体例としては、B2O3、H3BO3等が挙げられる。
【0123】
Alの原料(以下適宜、「Al源」という)の具体例としては、α−Al2O3、γ−Al2O3、等のAl2O3、Al(OH)3、AlOOH、Al(NO3)3・9H2O、Al2(SO4)3、AlCl3等が挙げられる。
【0124】
なお、上述したM1源、Eu源、M2源、Ln源、Si源、M3源、L1源、M4源、L2源、M5源、及びM6源は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0125】
[2−2.蛍光体の製造方法:混合工程]
目的組成が得られるように蛍光体原料を秤量し、ボールミル等を用いて十分混合したのち、ルツボに充填し、所定温度、雰囲気下で焼成し、焼成物を粉砕、洗浄することにより、本発明の蛍光体を得ることができる。
【0126】
上記混合手法としては、特に限定はされないが、具体的には、下記(A)及び(B)の手法が挙げられる。
(A)例えばハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機、又は、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕と、例えばリボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、又は、乳鉢と乳棒を用いる混合とを組み合わせ、前述の蛍光体原料を粉砕混合する乾式混合法。
(B)前述の蛍光体原料に水等の溶媒又は分散媒を加え、例えば粉砕機、乳鉢と乳棒、又は蒸発皿と撹拌棒等を用いて混合し、溶液又はスラリーの状態とした上で、噴霧乾燥、加熱乾燥、又は自然乾燥等により乾燥させる湿式混合法。
蛍光体原料の混合は、上記湿式又は乾式のいずれでも良いが、水又はエタノールを用いた湿式混合がより好ましい。
【0127】
[2−3.蛍光体の製造方法:焼成工程]
得られた混合物を、各蛍光体原料と反応性の低い材料からなるルツボ又はトレイ等の耐熱容器中に充填する。このような焼成時に用いる耐熱容器の材質としては、例えば、アルミナ、石英、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素、マグネシウム、ムライト等のセラミックス、白金、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、イリジウム、ロジウム等の金属、あるいは、それらを主成分とする合金、カーボン(グラファイト)などが挙げられる。ここで、石英製の耐熱容器は、比較的低温、すなわち、1200℃以下での熱処理に使用することができ、好ましい使用温度範囲は1000℃以下である。
このような耐熱容器の例として、好ましくは窒化ホウ素製、アルミナ製、窒化珪素製、炭化珪素製、白金製、モリブデン製、タングステン製、タンタル製の耐熱容器が挙げられる。
【0128】
焼成工程については、通常、1600℃を超える焼成温度では焼成粉が焼結してしまい、発光強度が低くなる場合があるが、1400℃前後の焼成温度では結晶性の良好な粉体が得られる。したがって、本発明の蛍光体を製造するための、焼成温度としては、通常1000℃以上、好ましくは1100℃以上、より好ましくは1200℃以上の温度であり、また、通常1600℃以下、好ましくは1500℃以下、より好ましくは1450℃以下の温度である。
【0129】
焼成雰囲気としては特に制限されないが、通常、不活性ガス雰囲気又は還元雰囲気下で行われる。ここで、前述の通り、付活元素の価数としては、2価のものが多い方が好ましいため、還元雰囲気であるのが好ましい。なお、不活性ガス及び還元性ガスは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0130】
不活性ガス及び還元性ガスとしては、例えば、一酸化炭素、水素、窒素、アルゴン等が挙げられる。このうち、窒素ガス雰囲気下であることが好ましく、より好ましくは水素ガス含有窒素ガス雰囲気下である。上記窒素(N2)ガスとしては、純度99.9%以上を使用することが好ましい。水素含有窒素を用いる場合、電気炉内の酸素濃度を20ppm以下に下げることが好ましい。さらに、雰囲気中の水素含有量は1体積%以上が好ましく、2体積%以上がさらに好ましく、また、5体積%以下が好ましい。雰囲気中の水素の含有量は、高すぎると安全性が低下する可能性があり、低すぎると十分な還元雰囲気を達成できない可能性があるからである。
【0131】
また、焼成時間は、焼成時の温度や圧力等によっても異なるが、通常、0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。また、焼成時間は長い方が良いが、通常、100時間以下、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下、さらに好ましくは12時間以下である。
【0132】
焼成時の圧力は、焼成温度等によっても異なるため特に限定されないが、通常1×10-5Pa以上、好ましくは1×10-3Pa以上、より好ましくは0.01MPa以上、さらに好ましくは0.1MPa以上であり、また、上限としては、通常5GPa以下、好ましくは1Gpa以下、より好ましくは200MPa以下、さらに好ましくは100MPa以下である。このうち、工業的には大気圧〜1MPa程度がコスト及び手間の点で簡便であり好ましい。
【0133】
[2−4.フラックス]
【0134】
焼成工程においては、良好な結晶を成長させる観点から、反応系にフラックスを共存させることが好ましい。フラックスの種類は特に制限されないが、1価の元素又は原子団と−1価の元素とを含有する化合物、1価の元素又は原子団と−3価の元素又は原子団とを含有する化合物、2価の元素と−1価の元素とを含有する化合物、2価の元素と−3価の元素又は原子団とを含有する化合物、3価の元素と−1価の元素とを含有する化合物、並びに、3価の元素と−3価の元素又は原子団を含有する化合物とからなる群から選ばれる化合物をフラックスとして使用することが好ましい。
【0135】
1価の元素又は原子団は、例えば、アルカリ金属元素及びアンモニウム基(NH4)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましい。
2価の元素は、例えば、アルカリ土類金属元素、及び亜鉛(Zn)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましく、ストロンチウム(Sr)又はバリウム(Ba)であることがより好ましい。
3価の元素は、例えば、ランタン(La)等の希土類元素、イットリウム(Y)、アルミニウム(Al)、及びスカンジウム(Sc)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましく、イットリウム(Y)又はアルミニウム(Al)であることがより好ましい。
−1価の元素は、例えば、ハロゲン元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましく、塩素(Cl)又はフッ素(F)であることが好ましい。
−3価の元素又は原子団は、例えば、リン酸基(PO4)であることが好ましい。
【0136】
上記の中でも、フラックスとしては、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、亜鉛ハロゲン化物、イットリウム(Y)、アルミニウム(Al)、スカンジウム(Sc)、及び希土類元素からなる群から選ばれる3価の元素のハロゲン化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩、リン酸亜鉛、イットリウム(Y)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、及びスカンジウム(Sc)からなる群から選ばれる3価の元素のリン酸塩からなる群から選ばれる化合物を使用することが好ましい。
【0137】
より具体例としては、NH4Cl、NH4F・HF等のハロゲン化アンモニウム;NaCO3、LiCO3等のアルカリ金属炭酸塩;LiCl、NaCl、KCl、CsCl、LiF、NaF、KF、CsF等のアルカリ金属ハロゲン化物;CaCl2、BaCl2、SrCl2、CaF2、BaF2、SrF2等のアルカリ土類金属ハロゲン化物;CaO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物;B2O3、H3BO3、NaB4O7等のホウ素酸化物、ホウ酸及びホウ酸塩化合物;Li3PO4、NH4H2PO4等のリン酸塩化合物;AlF3等のハロゲン化アルミニウム;ZnCl2、ZnF2といったハロゲン化亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛等の亜鉛化合物;Bi2O3等の周期表第15族元素化合物;Li3N、Ca3N2、Sr3N2、Ba3N2、BNなど等のアルカリ金属、アルカリ土類金属又は第13族元素の窒化物などが挙げられる。このうち好ましくはハロゲン化物であり、この中でも、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、Znのハロゲン化物が好ましい。また、これらのハロゲン化物の中でも、フッ化物、塩化物が好ましい。
【0138】
フラックスの使用量は、原料の種類やフラックスの材料等によっても異なるが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常20重量%以下、更には10重量%以下の範囲が好ましい。フラックスの使用量が少な過ぎると、フラックスの効果が現れず、フラックスの使用量が多過ぎると、フラックス効果が飽和したり、母体結晶に取り込まれて発光色を変化させたり、輝度低下を引き起こす場合がある。これらのフラックスは一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0139】
[2−5.一次焼成及び二次焼成]
なお、焼成工程を一次焼成と二次焼成とに分割し、混合工程により得られた原料混合物をまず一次焼成した後、ボールミル等で再度粉砕してから二次焼成を行ってもよい。
【0140】
一次焼成の温度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常800℃以上、好ましくは1000℃以上、また、通常1600℃以下、好ましくは1400℃以下、より好ましくは1300℃以下の範囲である。
ここで、粒度の揃った蛍光体を得るためには、一次焼成温度を低く設定して粉体状態で固相反応を進めることが好ましい。一方、高輝度の蛍光体を得るためには、一次焼成温度を高く設定して溶融状態で原料が十分に混合して反応した後に二次焼成で結晶成長させることが好ましい。
一次焼成の時間は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、また、通常100時間以下、好ましくは50時間以下、より好ましくは24時間以下、さらに好ましくは12時間以下である。
【0141】
二次焼成の温度、時間等の条件は、基本的に上述の焼成工程の欄に記載した条件と同様である。
なお、フラックスは一次焼成の前に混合してもよいし、二次焼成の前に混合してもよい。また、雰囲気等の焼成条件も一次焼成と二次焼成で変更してもよい。
【0142】
[2−6.後処理]
上述の焼成工程の加熱処理後は、必要に応じて、洗浄、乾燥、粉砕、分級処理等がなされる。
粉砕処理には、例えば、原料の混合工程に使用できるとして列挙した粉砕機が使用できる。
洗浄は、例えば、脱イオン水等の水、エタノール等の有機溶剤、アンモニア水等のアルカリ性水溶液などで行うことができる。また、使用されたフラックスを除去するなどの目的のために、例えば、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸;又は、酢酸などの有機酸の水溶液を使用することもできる。この場合、酸性水溶液中で洗浄処理した後に、水で更に洗浄することが好ましい。
分級処理は、例えば、水篩を行う、あるいは、各種の気流分級機や振動篩など各種の分級機を用いることにより行うことができる。中でも、ナイロンメッシュによる乾式分級を用いると、重量メジアン径20μm程度の分散性の良い蛍光体を得ることができる。
【0143】
また、洗浄処理後に乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥処理の方法に特に制限はないが、必要に応じて、蛍光体の性質に合わせて適宜乾燥処理方法を選択することが好ましい。例えば、特定組成蛍光体は、長時間、高温高湿の雰囲気下(例えば熱水中)にさらしたりすると、蛍光体の母体表面の一部が溶解し、溶解した部分は空気中の二酸化炭素と反応して炭酸塩に変わることがある。従って、特定組成蛍光体に乾燥処理を施す際は、真空乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥等の低温乾燥や、スプレードライ等の短時間乾燥が好ましく、また、窒素やアルゴンガス等の二酸化炭素を含まない雰囲気中で乾燥するか、もしくは水分を低沸点溶剤に置換して風乾する方法が好ましい。
【0144】
[2−7.表面処理]
なお、上述の手順により得られた本発明の蛍光体を用いて、後述の方法で発光装置を製造する際には、耐湿性等の耐候性を一層向上させるために、又は後述する発光装置の蛍光体含有部における樹脂に対する分散性を向上させるために必要に応じて、蛍光体の表面を異なる物質で被覆する等の表面処理を行ってもよい。
【0145】
蛍光体の表面に存在させることのできる物質(以下、任意に「表面処理物質」と称する)としては、例えば、有機化合物、無機化合物、およびガラス材料などを挙げることができる。
【0146】
有機化合物としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレン等の熱溶融性ポリマー、ラテックス、ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
【0147】
無機化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ゲルマニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化バナジウム、酸化硼素、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ビスマス等の金属酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム等の金属窒化物、燐酸カルシウム、燐酸バリウム、燐酸ストロンチウム等のオルト燐酸塩、ポリリン酸塩が挙げられる。
【0148】
ガラス材料としては、例えばホウ珪酸塩、ホスホ珪酸塩、アルカリ珪酸塩等が挙げられる。
【0149】
これらの表面処理物質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0150】
前記の表面処理により得られる本発明の蛍光体は、表面処理物質の存在が前提であるが、その態様は、例えば下記のものが挙げられる。
(i)前記表面処理物質が連続膜を構成して蛍光体表面を被覆する態様。
(ii)前記表面処理物質が多数の微粒子となって、蛍光体の表面に付着することにより蛍光体表面を被覆する態様。
【0151】
蛍光体の表面への表面処理物質の付着量ないし被覆量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、蛍光体の重量に対して、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。蛍光体に対する表面処理物質量が多すぎると蛍光体の発光特性が損なわれることがあり、少なすぎると表面被覆が不完全となって、耐湿性、分散性の改善が見られないことがある。
【0152】
また、表面処理により形成される表面処理物質の膜厚(層厚)は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10nm以上、好ましくは50nm以上であり、通常2000nm以下、好ましくは1000nm以下である。この膜厚が厚すぎると蛍光体の発光特性が損なわれることがあり、薄すぎると表面被覆が不完全となって、耐湿性、分散性の改善が見られないことがある。
【0153】
表面処理の方法には特に限定は無いが、例えば下記のような金属酸化物(酸化珪素)による被覆処理法を挙げることができる。
【0154】
本発明の蛍光体をエタノール等のアルコール中に混合して、攪拌し、さらにアンモニア水等のアルカリ水溶液を混合して、攪拌する。次に、加水分解可能なアルキル珪酸エステル、例えばテトラエチルオルト珪酸を混合して、攪拌する。得られた溶液を3分間〜60分間静置した後、スポイト等により蛍光体表面に付着しなかった酸化珪素粒子を含む上澄みを除去する。次いで、アルコール混合、攪拌、静置、上澄み除去を数回繰り返した後、120℃〜150℃で10分〜5時間、例えば2時間の減圧乾燥工程を経て、表面処理蛍光体を得る。
【0155】
蛍光体の表面処理方法としては、この他、例えば球形の酸化珪素微粉を蛍光体に付着させる方法(特開平2−209989号公報、特開平2−233794号公報)、蛍光体に珪素系化合物の皮膜を付着させる方法(特開平3−231987号公報)、蛍光体微粒子の表面をポリマー微粒子で被覆する方法(特開平6−314593号公報)、蛍光体を有機材料、無機材料及びガラス材料等でコーティングする方法(特開2002−223008号公報)、蛍光体の表面を化学気相反応法によって被覆する方法(特開2005−82788号公報)、金属化合物の粒子を付着させる方法(特開2006−28458号公報)等の公知の方法を用いることができる。
【0156】
[3.蛍光体の用途]
本発明の蛍光体は、蛍光体を使用する任意の用途に用いることができるが、特に、青色光又は近紫外光で励起可能であるという特性を生かして、各種の発光装置(後述する「本発明の発光装置」)に好適に用いることができる。組み合わせる蛍光体の種類や使用割合を調整することで、様々な発光色の発光装置を製造することができる。
【0157】
例えば、本発明の蛍光体が緑色の蛍光を発する場合、青色光を発する励起光源と橙色ないし赤色の蛍光を発する蛍光体(橙色ないし赤色蛍光体)を組み合わせるか、又は近紫外光を発する励起光源と、青色の蛍光を発する蛍光体(青色蛍光体)及び橙色ないし赤色の蛍光を発する蛍光体とを組み合わせれば、白色発光装置を製造することができる。この場合の発光色は、本発明の蛍光体や組み合わせる橙色ないし赤色蛍光体の発光波長を調整することにより、好みの発光色にすることができるが、例えば、いわゆる擬似白色(例えば、青色LEDと黄色蛍光体を組み合わせた発光装置の発光色)の発光スペクトルと類似した発光スペクトルを得ることもできる。更に、この白色発光装置に赤色の蛍光を発する蛍光体(赤色蛍光体)を組み合わせれば、赤色の演色性に極めて優れた発光装置や電球色(暖かみのある白色)に発光する発光装置を実現することができる。
【0158】
また、本発明の蛍光体が青色の蛍光を発する場合、近紫外光を発する励起光源と、緑色の蛍光を発する蛍光体(緑色蛍光体)と、赤色蛍光体とを組み合わせても、白色発光装置を製造することができる。
【0159】
発光装置の発光色としては白色に制限されず、必要に応じて、黄色蛍光体(黄色の蛍光を発する蛍光体)、青色蛍光体、橙色ないし赤色蛍光体、緑色蛍光体等を組み合わせて、蛍光体の種類や使用割合を調整することにより、任意の色に発光する発光装置を製造することができる。こうして得られた発光装置を、画像表示装置の発光部(特に液晶用バックライト等)や照明装置として使用することができる。
【0160】
[4.蛍光体含有組成物]
本発明の蛍光体は、液体媒体と混合して用いることもできる。特に、本発明の蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体中に分散させた形態で用いることが好ましい。本発明の蛍光体を液体媒体中に分散させたものを、適宜「本発明の蛍光体含有組成物」と呼ぶものとする。
【0161】
[4−1.蛍光体]
本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体の種類に制限は無く、上述したものから任意に選択することができる。また、本発明の蛍光体含有組成物に含有させる本発明の蛍光体は、1種のみであってもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。更に、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、本発明の蛍光体以外の蛍光体を含有させてもよい。
【0162】
[4−2.液体媒体]
本発明の蛍光体含有組成物に使用される液体媒体としては、該蛍光体の性能を目的の範囲で損なわない限りにおいて特に限定されない。例えば、所望の使用条件下において液状の性質を示し、本発明の蛍光体を好適に分散させるとともに、好ましくない反応を生じないものであれば、任意の無機系材料及び/又は有機系材料が使用できる。
【0163】
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
【0164】
有機系材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0165】
これらの中で特に照明など大出力の発光装置に蛍光体を用いる場合には、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用することが好ましい。
【0166】
珪素含有化合物とは、分子中に珪素原子を有する化合物をいい、例えば、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、ハンドリングの容易さ等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
【0167】
上記シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば下記式(i)で表される化合物及び/又はそれらの混合物が挙げられる。
【化5】
【0168】
上記式(i)において、R1からR6は同じであっても異なってもよく、有機官能基、水酸基、水素原子からなる群から選択される。
また、上記式(i)において、M、D、T及びQは、各々0以上1未満の数であり、且つ、M+D+T+Q=1を満足する数である。
【0169】
該シリコーン系材料は、半導体発光素子の封止に用いる場合、液状のシリコーン系材料を用いて封止した後、熱や光によって硬化させて用いることができる。
【0170】
シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン樹脂)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン樹脂)、紫外線硬化タイプが好適である。以下、付加型シリコーン系材料、及び縮合型シリコーン系材料について説明する。
【0171】
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られるSi−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。これらは市販のものを使用することができ、例えば付加重合硬化タイプの具体的商品名としては信越化学工業社製「LPS−1400」「LPS−2410」「LPS−3400」等が挙げられる。
【0172】
一方、縮合型シリコーン系材料とは、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。
具体的には、下記一般式(ii)及び/又は(iii)で表わされる化合物、及び/又はそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
【0173】
Mm+XnY1m-n (ii)
(式(ii)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、mは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、nは、X基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。)
【0174】
(Ms+XtY1s-t-1)uY2 (iii)
(式(iii)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンより選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、Y2は、u価の有機基を表わし、sは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、tは、1以上、s−1以下の整数を表わし、uは、2以上の整数を表わす。)
【0175】
また、縮合型シリコーン系材料には、硬化触媒を含有させてもよい。この硬化触媒としては、例えば、金属キレート化合物などを好適なものとして用いることができる。金属キレート化合物は、Ti、Ta、Zrの何れか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものが更に好ましい。なお、硬化触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0176】
このような縮合型シリコーン系材料としては、例えば特開2007−112973号公報〜112975号公報及び特開2007−19459号公報に記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
【0177】
縮合型シリコーン系材料の中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
シリコーン系材料は、一般に半導体発光素子や素子を配置する基板、パッケージ等との接着性が弱いことが課題とされるが、密着性が高いシリコーン系材料として、特に、以下の特徴〔1〕〜〔3〕のうち1つ以上を有する縮合型シリコーン系材料が好ましい。
【0178】
〔1〕ケイ素含有率が20重量%以上である。
〔2〕後に詳述する方法によって測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
〔3〕シラノール含有率が0.1重量%以上、10重量%以下である。
【0179】
本発明においては、上記の特徴〔1〕〜〔3〕のうち、特徴〔1〕を有するシリコーン系材料が好ましく、上記の特徴〔1〕及び〔2〕を有するシリコーン系材料がより好ましく、上記の特徴〔1〕〜〔3〕を全て有するシリコーン系材料が特に好ましい。
以下、上記の特徴〔1〕〜〔3〕について説明する。
【0180】
<特徴〔1〕(ケイ素含有率)>
従来のシリコーン系材料の基本骨格は炭素−炭素及び炭素−酸素結合を基本骨格としたエポキシ樹脂等の有機樹脂であるが、これに対し本発明のシリコーン系材料の基本骨格はガラス(ケイ酸塩ガラス)などと同じ無機質のシロキサン結合である。このシロキサン結合は、下記[表2]の化学結合の比較表からも明らかなように、シリコーン系材料として優れた以下の特徴がある。
【0181】
(I)結合エネルギーが大きく、熱分解・光分解し難いため、耐光性が良好である。
(II)電気的に若干分極している。
(III)鎖状構造の自由度は大きく、フレキシブル性に富む構造が可能であり、シロキサン鎖中心に自由回転可能である。
(IV)酸化度が大きく、これ以上酸化されない。
(V)電気絶縁性に富む。
【0182】
【表2】
【0183】
これらの特徴から、シロキサン結合が3次元的に、しかも高架橋度で結合した骨格で形成されるシリコーン系のシリコーン系材料は、ガラス或いは岩石などの無機質に近く、耐熱性・耐光性に富む保護皮膜となることが理解できる。特にメチル基を置換基とするシリコーン系材料は、紫外領域に吸収を持たないため光分解が起こり難く、耐光性に優れる。
【0184】
本発明に好適なシリコーン系材料のケイ素含有率は、通常20重量%以上であるが、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiO2のみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であるという理由から、通常47重量%以下の範囲である。
【0185】
なお、シリコーン系材料のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。
【0186】
{ケイ素含有率の測定}
シリコーン系材料を白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
【0187】
<特徴〔2〕(固体Si−NMRスペクトル)>
本発明に好適なシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来する前記(a)及び/又は(b)のピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
【0188】
ケミカルシフト毎に整理すると、本発明に好適なシリコーン系材料において、(a)に記載のピークの半値幅は、分子運動の拘束が小さいために、全般に後述の(b)に記載のピークの場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
一方、(b)に記載のピークの半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
【0189】
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が大き過ぎると、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生し易く、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行ない大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなる。
【0190】
また、ピークの半値幅が小さ過ぎると、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。
【0191】
但し、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれるシリコーン系材料においては、−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得られない場合がある。
【0192】
本発明に好適なシリコーン系材料のケミカルシフトの値は、例えば以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
【0193】
{固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出}
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。また、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することによりシラノール含有率を求める。
【0194】
{装置条件}
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX−400 核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
1Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
繰り返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
基準試料:テトラメトキシシラン
【0195】
シリコーン系材料については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
【0196】
{波形分離解析法}
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
なお、ピークの同定は、AIChE Journal, 44(5), p.1141, 1998年等を参考にする。
【0197】
<特徴〔3〕(シラノール含有率)>
本発明に好適なシリコーン系材料は、シラノール含有率が、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である。シラノール含有率を低くすることにより、シラノール系材料は経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
【0198】
なお、シリコーン系材料のシラノール含有率は、例えば上記<特徴〔2〕(固体Si−NMRスペクトル)>の{固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出}の項において説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行ない、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
【0199】
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、適当量のシラノールを含有しているため、通常は、デバイス表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
【0200】
また、本発明に好適なシリコーン系材料は、通常、適当な触媒の存在下で加熱することにより、デバイス表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、更に強固な密着性を発現することができる。
【0201】
一方、シラノールが多過ぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する場合がある。
【0202】
[4−3.液体媒体の含有率]
液体媒体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の蛍光体含有組成物全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは75重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。液体媒体の量が多い場合には特段の問題は起こらないが、半導体発光装置とした場合に所望の色度座標、演色指数、発光効率等を得るには、通常、上記のような配合比率で液体媒体を用いることが望ましい。一方、液体媒体が少な過ぎると流動性がなく取り扱い難くなる可能性がある。
【0203】
液体媒体は、本発明の蛍光体含有組成物において、主にバインダーとしての役割を有する。液体媒体は、一種を単独で用いてもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。例えば、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用する場合は、当該珪素含有化合物の耐久性を損なわない程度に、エポキシ樹脂など他の熱硬化性樹脂を含有してもよい。この場合、他の熱硬化性樹脂の含有量は、バインダーである液体媒体全量に対して通常25重量%以下、好ましくは10重量%以下とすることが望ましい。
【0204】
[4−4.その他の成分]
なお、本発明の蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、蛍光体及び液体媒体以外に、その他の成分を含有させてもよい。また、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0205】
[5.発光装置]
本発明の発光装置(以下、適宜「発光装置」という)は、第1の発光体(励起光源)と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを有する発光装置であって、該第2の発光体として前述の[1.蛍光体]の項で記載した本発明の蛍光体を少なくとも1種以上第1の蛍光体として含有するものである。
【0206】
本発明の蛍光体としては、上述の特定特性蛍光体及び/又は特定組成蛍光体であって、通常は、励起光源からの光の照射下において、青色〜緑色領域の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜、本発明の蛍光体のうち緑色の蛍光を発する蛍光体を「本発明の緑色蛍光体」、本発明の蛍光体のうち青色の蛍光を発する蛍光体を「本発明の青色蛍光体」という場合がある)を使用する。具体的に、本発明の緑色蛍光体は、500nm〜540nmの範囲に発光ピークを有するものが好ましく、本発明の青色蛍光体は、420nm〜490nmの範囲に発光ピークを有するものが好ましい。本発明の蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0207】
また、本発明の発光装置に用いられる本発明の蛍光体の好ましい具体例としては、前述の[1.蛍光体]の欄に記載した本発明の蛍光体や、後述の[実施例]の欄の各実施例に用いた蛍光体が挙げられる。
【0208】
本発明の発光装置は、第1の発光体(励起光源)を有し、且つ、第2の発光体として少なくとも本発明の蛍光体を使用している他は、その構成は制限されず、公知の装置構成を任意にとることが可能である。装置構成の具体例については後述する。
【0209】
本発明の発光装置の発光スペクトルにおける緑色領域の発光ピークとしては、500nm〜540nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましい。
また、本発明の発光装置の発光スペクトルにおける青色領域の発光ピークとしては、420nm〜490nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましい。
【0210】
なお、発光装置の発光スペクトルは、気温25±1℃に保たれた室内において、オーシャン オプティクス社製の色・照度測定ソフトウェア及びUSB2000シリーズ分光器
(積分球仕様)を用いて20mA通電して測定を行なうことができる。この発光スペクトルの380nm〜780nmの波長領域のデータから、JIS Z8701で規定される
XYZ表色系における色度座標として色度値(x,y,z)を算出できる。この場合、x+y+z=1の関係式が成立する。本明細書においては、前記XYZ表色系をXY表色系と称している場合があり、通常(x,y)で表記している。
【0211】
また、発光効率は、前述のような発光装置を用いた発光スペクトル測定の結果から全光束を求め、そのルーメン(lm)値を消費電力(W)で割ることにより求められる。消費電力は、20mAを通電した状態で、Fluke社のTrue RMS Multimeters Model 187&189を用いて電圧を測定し、電流値と電圧値の積で求められる。
【0212】
本発明の発光装置のうち、特に白色発光装置として、具体的には、第1の発光体として後述するような励起光源を用い、本発明の蛍光体の他、後述するような赤色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「赤色蛍光体」という)、青色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「青色蛍光体」という)、黄色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「黄色蛍光体」という)等の公知の蛍光体を任意に組み合わせて使用し、公知の装置構成をとることにより得られる。
【0213】
ここで、該白色発光装置の白色とは、JIS Z 8701により規定された、(黄みの)白、(緑みの)白、(青みの)白、(紫みの)白及び白の全てを含む意であり、このうち好ましくは白である。
【0214】
[5−1.発光装置の構成(発光体)]
[第1の発光体]
本発明の発光装置における第1の発光体は、後述する第2の発光体を励起する光を発光するものである。
【0215】
第1の発光体の発光波長は、後述する第2の発光体の吸収波長と重複するものであれば、特に制限されず、幅広い発光波長領域の発光体を使用することができる。通常は、紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用され、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体を使用することが特に好ましい。
【0216】
第1の発光体の発光波長の具体的数値としては、通常200nm以上が望ましい。このうち、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、より好ましくは360nm以上、また、通常420nm以下のピーク発光波長を有する発光体を使用することが望ましい。発光装置の色純度の観点からである。
【0217】
第1の発光体としては、一般的には半導体発光素子が用いられ、具体的には発光LEDや半導体レーザーダイオード(semiconductor laser diode;以下、適宜「LD」と略称する。)等が使用できる。その他、第1の発光体として使用できる発光体としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス発光素子、無機エレクトロルミネッセンス発光素子等が挙げられる。但し、第1の発光体として使用できるものは本明細書に例示されるものに限られない。
【0218】
中でも、第1の発光体としては、GaN系化合物半導体を使用したGaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、前記蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlXGaYN発光層、GaN発光層又はInXGaYN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でもInXGaYN発光層を有するものは発光強度が非常に強いので特に好ましく、GaN系LEDにおいては、InXGaYN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度は非常に強いので特に好ましい。
【0219】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
【0220】
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlXGaYN層、GaN層、又はInXGaYN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが、発光効率が高くて好ましく、更にヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが、発光効率が更に高いため、より好ましい。
なお、第1の発光体は、1個のみを用いてもよく、2個以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0221】
[第2の発光体]
本発明の発光装置における第2の発光体は、上述した第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する発光体であり、第1の蛍光体として前述の本発明の蛍光体(例えば、緑色蛍光体等)を含有するとともに、その用途等に応じて適宜、後述する第2の蛍光体(例えば、赤色蛍光体、青色蛍光体、橙色蛍光体等)を含有する。また、例えば、第2の発光体は、第1及び第2の蛍光体を封止材料中に分散させて構成される。
【0222】
上記第2の発光体中に用いられる、本発明の蛍光体以外の蛍光体の組成には特に制限はないが、結晶母体となる、Y2O3、YVO4、Zn2SiO4、Y3Al5O12、Sr2SiO4等に代表される金属酸化物、Sr2Si5N8等に代表される金属窒化物、Ca5(PO4)3Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物、Y2O2S、La2O2S等に代表される酸硫化物等にCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活元素又は共付活元素として組み合わせたものが挙げられる。
【0223】
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa2S4、SrS、ZnS等の硫化物;Y2O2S等の酸硫化物;(Y,Gd)3Al5O12、YAlO3、BaMgAl10O17、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al10O17、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al10O17、BaAl12O19、CeMgAl11O19 、(Ba,Sr,Mg)O・Al2O3、BaAl2Si2O8、SrAl2O4、Sr4Al14O25、Y3Al5O12等のアルミン酸塩;Y2SiO5、Zn2SiO4等の珪酸塩;SnO2、Y2O3等の酸化物;GdMgB5O10、(Y,Gd)BO3等の硼酸塩;Ca10(PO4)6(F,Cl)2、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2等のハロリン酸塩;Sr2P2O7、(La,Ce)PO4等のリン酸塩等を挙げることができる。
【0224】
但し、上記の結晶母体及び付活元素又は共付活元素は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
【0225】
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、以下の例示では、前述の通り、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。
【0226】
<第1の蛍光体>
本発明の発光装置における第2の発光体は、第1の蛍光体として、少なくとも上述の本発明の蛍光体を含有する。本発明の蛍光体は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体としては、本発明の蛍光体以外にも、本発明の蛍光体と同色の蛍光を発する蛍光体(同色併用蛍光体)を用いてもよい。通常、本発明の蛍光体は青色〜緑色の蛍光体であるので、第1の蛍光体として、本発明の緑色蛍光体と共に他種の緑色蛍光体を併用したり、本発明の青色蛍光体と共に他種の青色蛍光体を併用したりすることができる。
【0227】
(緑色蛍光体)
上記緑色蛍光体としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。
発光ピーク波長λp(nm)は、通常490nmより大きく、中でも500nm以上、また、通常570nm以下、中でも550nm以下、更には540nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する場合がある。
【0228】
該緑色蛍光体として具体的には、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Euで表わされるユウロ
ピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体等が挙げられる。
【0229】
また、その他の緑色蛍光体としては、Sr4Al14O25:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al2O4:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)Al2Si2O8:Eu、(Ba,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si2O7:Eu、(Ba,Ca,Sr,Mg)9(Sc,Y,Lu,Gd)2(Si,Ge)6O24:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Y2SiO5:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr2P2O7−Sr2B2O5:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si3O8−2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、Zn2SiO4:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl11O19:Tb、Y3Al5O12:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca2Y8(SiO4)6O2:Tb、La3Ga5SiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga2S4:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y3(Al,Ga)5O12:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)3(Al,Ga)5O12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、Ca3Sc2Si3O12:Ce、Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si3O12:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc2O4:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl10O17:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl2O4:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)2O2S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO4:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO3:Ce,Tb、Na2Gd2B2O7:Ce,Tb、(Ba,Sr)2(Ca,Mg,Zn)B2O6:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、Ca8Mg(SiO4)4Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In)2S4:Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)8(Mg,Zn)(SiO4)4Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、M3Si6O9N4:Eu、M3Si6O12N2:Eu(但し、Mはアルカリ土類金属元素を表わす。)等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
【0230】
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、テルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
以上例示した緑色蛍光体は、何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0231】
(青色蛍光体)
上記青色蛍光体としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。
発光ピーク波長λp(nm)は、通常420nmより大きく、中でも430nm以上が好ましく、更には440nm以上が好ましく、また、通常490nm以下、中でも480nm以下が好ましく、更には470nm以下が好ましく、特には460nm以下が好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると可視光の範囲を外れる一方で、長過ぎると緑味を帯びる傾向があり、何れも青色光としての特性が低下する場合がある。
【0232】
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Euで表わされるユーロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)5(PO4)3(Cl,F):Euで表わされるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)2B5O9Cl:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al2O4:Eu又は(Sr,Ca,Ba)4Al14O25:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0233】
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr2P2O7:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光
体、(Sr,Ca,Ba)Al2O4:Eu又は(Sr,Ca,Ba)4Al14O25:Eu、BaMgAl10O17:Eu、(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu、BaMgAl10O17:Eu,Tb,Sm、BaAl8O13:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa2S4:Ce、CaGa2S4:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu、(Ba,Sr,Ca)5(PO4)3(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAl2Si2O8:Eu、(Sr,Ba)3MgSi2O8:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr2P2O7:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、Y2SiO5:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO4等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO5:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO4)6・nB2O3:Eu、2SrO・0.84P2O5・0.16B2O3:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si3O8・2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、SrSi9Al19ON31:Eu、EuSi9Al19ON31等のEu付活酸窒化物蛍光体等を用いることも可能である。
【0234】
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラリゾン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
【0235】
以上の例示の中でも、青色蛍光体としては、(Ca、Sr,Ba)MgAl10O17:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6(Cl,F)2:Eu又は(Ba,Ca,Mg,Sr)2SiO4:Euを含むことが好ましく、(Ca、Sr,Ba)MgAl10O17:Eu、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6(Cl,F)2:Eu又は(Ba,Ca,Sr)3MgSi2O8:Euを含むことがより好ましく、BaMgAl10O17:Eu、Sr10(PO4)6(Cl,F)2:Eu又はBa3MgSi2O8:Euを含むことがより好ましい。また、このうち照明用途及びディスプレイ用途としては(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu又は(Ca、Sr,Ba)MgAl10O17:Euが特に好ましい。
【0236】
<第2の蛍光体>
本発明の発光装置における第2の発光体は、その用途に応じて、上述の第1の蛍光体以外にも蛍光体(即ち、第2の蛍光体)を含有していてもよい。この第2の蛍光体は、第1の蛍光体とは発光波長が異なる蛍光体である。通常、これらの第2の蛍光体は、第2の発光体の発光の色調を調節するために使用されるため、第2の蛍光体としては第1の蛍光体とは異なる色の蛍光を発する蛍光体を使用することが多い。例えば、第1の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合、第2の蛍光体としては、例えば橙色ないし赤色蛍光体、青色蛍光体、黄色蛍光体等の緑色蛍光体以外の蛍光体を用いる。
【0237】
本発明の発光装置に使用される第2の蛍光体の重量メジアン径は、通常10μm以上、中でも12μm以上、また、通常30μm以下、中でも25μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径が小さ過ぎると、輝度が低下し、蛍光体粒子が凝集してしまう傾向がある。一方、重量メジアン径が大き過ぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
【0238】
(橙色ないし赤色蛍光体)
第2の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体を使用する場合、当該橙色ないし赤色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、橙色ないし赤色蛍光体の発光ピーク波長は、通常570nmを超え、好ましくは580nm以上、より好ましくは585nm以上、また、通常780nm以下、好ましくは700nm以下、より好ましくは680nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0239】
このような橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si5N8:Euで表わされるユーロピウム付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)2O2S:Euで表わされるユーロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
【0240】
更に、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種類の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も、本発明において用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0241】
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)2O2S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O4:Eu、Y2O3:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Mg)2SiO4:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、LiW2O8:Eu、LiW2O8:Eu,Sm、Eu2W2O9、Eu2W2O9:Nb、Eu2W2O9:Sm等のEu付活タングステン酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO3:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、Ca2Y8(SiO4)6O2:Eu、LiY9(SiO4)6O2:Eu、(Sr,Ba,Ca)3SiO5:Eu、Sr2BaSiO5:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)3Al5O12:Ce、(Tb,Gd)3Al5O12:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu等のEu付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Ce等のCe付活酸化物、窒化物又は酸窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、Ba3MgSi2O8:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)3(Zn,Mg)Si2O8:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)2O3:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)2O2S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO4:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY2S4:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa2S4:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP2O7:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)2P2O7:Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)2WO6:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)xSiyNz:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数を表わす。)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO4)6(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1-x-yScxCey)2(Ca,Mg)1-r(Mg,Zn)2+rSiz-qGeqO12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0242】
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
【0243】
以上の中でも、赤色蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Ce、(Sr,Ba)3SiO5:Eu、(Ca,Sr)S:Eu、(La,Y)2O2S:Eu又はEu錯体を含むことが好ましく、より好ましくは(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O)2:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Eu、(Ca,Sr,Ba)AlSi(N,O)3:Ce、(Sr,Ba)3SiO5:Eu、(Ca,Sr)S:Eu又は(La,Y)2O2S:Eu、もしくはEu(ジベンゾイルメタン)3・1,10−フェナントロリン錯体等のβ−ジケトン系Eu錯体又はカルボン酸系Eu錯体を含むことが好ましく、(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu又は(La,Y)2O2S:Euが特に好ましい。
【0244】
また、以上例示の中でも、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)3SiO5:Euが好ましい。
【0245】
(黄色蛍光体)
第2の蛍光体として黄色蛍光体を使用する場合、当該黄色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、黄色蛍光体の発光ピーク波長は、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。
【0246】
このような黄色蛍光体としては、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。
特に、RE3M5O12:Ce(ここで、REは、Y、Tb、Gd、Lu、及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Al、Ga、及びScからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)やMa3Mb2Mc3O12:Ce(ここで、Maは2価の金属元素、Mbは3価の金属元素、Mcは4価の金属元素を表わす。)等で表わされるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE2MdO4:Eu(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg、及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わし、Mdは、Si、及び/又はGeを表わす。)等で表わされるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN3:Ce(ここで、AEは、Ba、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素を表わす。)等のCaAlSiN3構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体が挙げられる。
【0247】
また、その他、黄色蛍光体としては、CaGa2S4:Eu、(Ca,Sr)Ga2S4:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al)2S4:Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu(0≦x<1)等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体を用いることも可能である。
【0248】
また、黄色蛍光体としては、例えば、brilliant sulfoflavine FF (Colour Index Number 56205)、basic yellow HG (Colour Index Number 46040)、eosine (Colour Index Number 45380)、rhodamine 6G (Colour Index Number 45160)等の蛍光染料等を用いることも可能である。
【0249】
(青色蛍光体)
第2の蛍光体として青色蛍光体を使用する場合、当該青色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、青色蛍光体の発光ピーク波長は、通常420nm以上、中でも430nm以上が好ましく、更には440nm以上が好ましく、また、通常490nm以下、中でも480nm以下が好ましく、更には470nm以下が好ましく、特には460nm以下が好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると可視光の範囲を外れる一方で、長過ぎると緑味を帯びる傾向があり、何れも青色光としての特性が低下する場合がある。このような青色蛍光体は、第1の蛍光体の項で説明した青色蛍光体を用いることが出来る。
【0250】
(緑色蛍光体)
第2の蛍光体として緑色蛍光体を使用する場合、当該緑色蛍光体は本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを使用することができる。この際、緑色蛍光体の発光ピーク波長は、通常490nmを超え、中でも500nm以上、また、通常570nm以下、中でも550nm以下、更には540nm以下の範囲であることが好ましい。この発光ピーク波長λpが短過ぎると青味を帯びる傾向がある一方で、長過ぎると黄味を帯びる傾向があり、何れも緑色光としての特性が低下する場合がある。このような青色蛍光体は、第1の蛍光体の項で説明した緑色蛍光体を用いることができる。
【0251】
(第2の蛍光体の組み合わせ)
上記第2の蛍光体としては、1種類の蛍光体を単独で使用してもよく、2種以上の蛍光体を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、第1の蛍光体と第2の蛍光体との比率も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。従って、第2の蛍光体の使用量、並びに、第2の蛍光体として用いる蛍光体の組み合わせ及びその比率等は、発光装置の用途等に応じて任意に設定すればよい。
【0252】
本発明の発光装置において、以上説明した第2の蛍光体(橙色ないし赤色蛍光体、青色蛍光体等)の使用の有無及びその種類は、発光装置の用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、本発明の発光装置を緑色発光の発光装置として構成する場合には、第1の蛍光体として、本発明の緑色蛍光体のみを使用すればよく、第2の蛍光体の使用は通常は不要である。
【0253】
一方、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合には、所望の白色光が得られるように、第1の発光体と、第2の発光体(第1の蛍光体及び第2の蛍光体)とを適切に組み合わせればよい。具体的に、本発明の発光装置を白色発光の発光装置として構成する場合における、第1の発光体と、第1の蛍光体と、第2の蛍光体との好ましい組み合わせの例としては、以下の(i)〜(iii)の組み合わせが挙げられる。
【0254】
(i)第1の発光体として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、第1の蛍光体として本発明の緑色蛍光体を使用し、第2の蛍光体として青色蛍光体及び赤色蛍光体を併用する。この場合、青色蛍光体としては、(Ba,Sr,Ca)MgAl10O17:Eu及び(Mg,Ca,Sr,Ba)5(PO4)3(Cl,F):Euからなる群より選ばれる一種又は二種以上の青色蛍光体が好ましい。また、赤色蛍光体としては、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu及びLa2O2S:Euからなる群より選ばれる一種又は二種以上の赤色蛍光体が好ましい。中でも、近紫外LEDと、本発明の蛍光体と、青色蛍光体としてBaMgAl10O17:Euと、赤色蛍光体として(Sr,Ca)AlSiN3:Euとを組み合わせて用いることが好ましい。
【0255】
(ii)第1の発光体として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、第1の蛍光体として青色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として橙色ないし赤色蛍光体、及び緑色蛍光体を使用する。
各色の蛍光体としては、上述した蛍光体が好ましく使用できる。中でも、(ii)の組み合わせの場合、赤色蛍光体としては、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu及びLa2O2S:Euからなる群より選ばれる一種又は二種以上の赤色蛍光体が特に好ましく、また、橙色蛍光体としては(Sr,Ba)3SiO5:Euが好ましい。特に、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu及びLa2O2S:Euからなる群より選ばれる一種又は二種以上の赤色蛍光体がより好ましい。
また、緑色蛍光体としては、BaMgAl10O17:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca)2SiO4:Eu、Eu付活βサイアロン、及び、(Ba,Sr,Ca)3Si6O12N2:Euからなる群より選ばれる一種又は二種以上の緑色蛍光体が特に好ましい。
【0256】
(iii)第1の発光体として近紫外発光体(近紫外LED等)を使用し、第1の蛍光体として青色蛍光体(本発明の蛍光体等)を使用し、第2の蛍光体として黄色蛍光体を使用する。
各色の蛍光体としては、上述した蛍光体が好ましく使用できる。中でも、(iii)の組み合わせの場合、黄色蛍光体としては、(Y,Gd,Tb)3(Al,Ga)5O12:Ce、(Ba,Sr,Ca)2SiO4:Eu,Eu付活αサイアロン、及び(Ba,Sr,Ca)Si2O2N2:Euからなる群より選ばれる一種又は二種以上の緑色蛍光体が特に好ましい
【0257】
また、本発明の蛍光体は、他の蛍光体と混合(ここで、混合とは、必ずしも蛍光体同士が混ざり合っている必要はなく、異種の蛍光体が組み合わされていることを意味する。)して用いることができる。特に、上記に記載の組み合わせで蛍光体を混合すると、好ましい蛍光体混合物が得られる。なお、混合する蛍光体の種類やその割合に特に制限はない。
【0258】
(封止材料)
本発明の発光装置において、上記第1及び/又は第2の蛍光体は、通常、封止材料である液体媒体に分散させて用いられる。
該液体媒体としては、前述の[4.蛍光体含有組成物]の項で記載したのと同様のものが挙げられる。
【0259】
また、該液体媒体は、封止部材の屈折率を調整するために、高い屈折率を有する金属酸化物となり得る金属元素を含有させることができる。高い屈折率を有する金属酸化物を与える金属元素の例としては、Si、Al、Zr、Ti、Y、Nb、B等が挙げられる。これらの金属元素は単独で使用されてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で併用されてもよい。
【0260】
このような金属元素の存在形態は、封止部材の透明度を損なわなければ特に限定されず、例えば、メタロキサン結合として均一なガラス層を形成していても、封止部材中に粒子状で存在していてもよい。粒子状で存在している場合、その粒子内部の構造はアモルファス状であっても結晶構造であってもよいが、高屈折率を与えるためには結晶構造であることが好ましい。また、その粒子径は、封止部材の透明度を損なわないために、通常は、半導体発光素子の発光波長以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。例えばシリコーン系材料に、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ニオブ等の粒子を混合することにより、上記の金属元素を封止部材中に粒子状で存在させることができる。
また、上記液体媒体としては、更に、拡散剤、フィラー、粘度調整剤、紫外線吸収剤等公知の添加剤を含有していてもよい。
【0261】
[5−2.発光装置の構成(その他)]
本発明の発光装置は、上述の第1の発光体及び第2の発光体を備えていれば、そのほかの構成は特に制限されないが、通常は、適当なフレーム上に上述の第1の発光体及び第2の発光体を配置してなる。この際、第1の発光体の発光によって第2の発光体が励起されて(即ち、第1及び第2の蛍光体が励起されて)発光を生じ、且つ、この第1の発光体の発光及び/又は第2の発光体の発光が、外部に取り出されるように配置されることになる。この場合、第1の蛍光体と第2の蛍光体とは必ずしも同一の層中に混合されなくてもよく、例えば、第1の蛍光体を含有する層の上に第2の蛍光体を含有する層が積層する等、蛍光体の発色毎に別々の層に蛍光体を含有するようにしてもよい。
【0262】
また、本発明の発光装置では、上述の励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム以外の部材を用いてもよい。その例としては、前述の封止材料が挙げられる。該封止材料は、発光装置において、蛍光体(第2の発光体)を分散させる目的以外にも、励起光源(第1の発光体)、蛍光体(第2の発光体)及びフレーム間を接着する目的で用いたりすることができる。
【0263】
[5−3.発光装置の実施形態]
以下、本発明の発光装置について、具体的な実施の形態を挙げて、より詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0264】
本発明の発光装置の一例における、励起光源となる第1の発光体と、蛍光体を有する蛍光体含有部として構成された第2の発光体との位置関係を示す模式的斜視図を図1に示す。図1中の符号1は蛍光体含有部(第2の発光体)、符号2は励起光源(第1の発光体)としての面発光型GaN系LD、符号3は基板を表す。相互に接触した状態をつくるために、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とそれぞれ別個に作製し、それらの面同士を接着剤やその他の手段によって接触させてもよいし、LD(2)の発光面上に蛍光体含有部(第2の発光体)を製膜(成型)させてもよい。これらの結果、LD(2)と蛍光体含有部(第2の発光体)(1)とを接触した状態とすることができる。
【0265】
このような装置構成をとった場合には、励起光源(第1の発光体)からの光が蛍光体含有部(第2の発光体)の膜面で反射されて外にしみ出るという光量損失を避けることができるので、装置全体の発光効率を良くすることができる。
【0266】
図2(a)は、一般的に砲弾型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。該発光装置(4)において、符号5はマウントリード、符号6はインナーリード、符号7は励起光源(第1の発光体)、符号8は蛍光体含有樹脂部、符号9は導電性ワイヤ、符号10はモールド部材をそれぞれ指す。
【0267】
また、図2(b)は、表面実装型と言われる形態の発光装置の代表例であり、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。図中、符号22は励起光源(第1の発光体)、符号23は蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部、符号24はフレーム、符号25は導電性ワイヤ、符号26及び符号27は電極をそれぞれ指す。
【0268】
[5−4.発光装置の用途]
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、色再現範囲が広く、且つ、演色性も高いことから、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いられる。
【0269】
[5−4−1.照明装置]
本発明の発光装置を照明装置に適用する場合には、前述のような発光装置を公知の照明装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、図3に示されるような、前述の発光装置(4)を組み込んだ面発光照明装置(11)を挙げることができる。
【0270】
図3は、本発明の照明装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。この図3に示すように、該面発光照明装置は、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース(12)の底面に、多数の発光装置(13)(前述の発光装置(4)に相当)を、その外側に発光装置(13)の駆動のための電源及び回路等(図示せず)を設けて配置し、保持ケース(12)の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板(14)を発光の均一化のために固定してなる。
【0271】
そして、面発光照明装置(11)を駆動して、発光装置(13)の励起光源(第1の発光体)に電圧を印加することにより光を発光させ、その発光の一部を、蛍光体含有部(第2の発光体)としての蛍光体含有樹脂部における前記蛍光体が吸収し、可視光を発光し、一方、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により演色性の高い発光が得られ、この光が拡散板(14)を透過して、図面上方に出射され、保持ケース(12)の拡散板(14)面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【0272】
[5−4−2.画像表示装置]
本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、その画像表示装置の具体的構成に制限はないが、カラーフィルターと共に用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより、画像表示装置を形成することができる。
【実施例】
【0273】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下の記載中「部」という記載は全て「重量部」を表わす。
【0274】
[測定・評価方法]
<粉末X線回折測定方法>
粉末X線回折は、PANalytical製粉末X線回折装置X'Pertにて精密測定した。測定条件は以下の通りである。
CuKα管球使用
X線出力=45KV、40mA
発散スリット=1/4°、X線ミラー
検出器=半導体アレイ検出器X'Celerator使用、Niフィルター使用
走査範囲 2θ=10〜65度
読み込み幅=0.05度
計数時間=33秒
【0275】
<発光スペクトルの測定方法>
発光スペクトルは、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)用いて測定した。励起光源からの光を焦点距離が10cmである回折格子分光器に通し、波長395nmの励起光のみを光ファイバーを通じて蛍光体に照射した。励起光の照射により蛍光体から発生した光を焦点距離が25cmである回折格子分光器により分光し、300nm以上800nm以下の波長範囲においてスペクトル測定装置により各波長の発光強度を測定し、パーソナルコンピュータによる感度補正等の信号処理を経て発光スペクトルを得た。なお、測定時には、受光側分光器のスリット幅を1nmに設定して測定を行った。
【0276】
<発光ピーク波長・半値幅>
発光ピーク波長と半値幅は、上述の方法で得られた発光スペクトルから読み取った。
【0277】
<色度座標の測定方法>
発光スペクトルの380nm〜800nm(励起波長340nmの場合)、430nm〜800nm(励起波長400nmの場合)、又は480nm〜800nm(励起波長455nmの場合)の波長領域のデータから、JIS Z8724に準じた方法で、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系における色度座標CIExとCIEyを算出した。
【0278】
<Raの測定方法>
JIS Z8726に記載の方法に従って、発光スペクトルから求められる表色系XYZ値を使って算出した。
【0279】
[実施例1]
炭酸バリウム(レアメタリック(株)製、BaCO3)、炭酸マグネシウム(白辰化学(株)製、MgCO3)、酸化珪素(龍森(株)、SiO2)、窒化珪素(宇部(株)製、Si3N4)、酸化ユーロピウム(信越化学(株)製、Eu2O3)、及び酸化ルテチウム(信越化学(株)製、Lu2O3)の各原料を、BaCO3:MgCO3:SiO2:Si3N4:Eu2O3:Lu2O3のモル比が2.97:0.9:2:0.05:0.015:0.1となるように秤量し、混合した。
【0280】
次に、0.92MPaの窒素中で、1200℃で2時間保持し、続けて1400℃で2時間保持して焼成した。得られた焼成粉をアルミナ乳鉢上でアルミナ乳棒を用いて粉砕を行い、(Ba,Eu)3(Mg,Lu)Si2(O,N)8(仕込み組成Ba2.97Eu0.03Mg0.82Lu0.18Si2O7.82N0.18)で示される化合物を有してなる蛍光体を得た。
【0281】
得られた蛍光体の粉末X線回折測定を行った。回折パターンを[図4]に示す。また、得られた蛍光体について395nmの光で励起した場合の発光スペクトル測定を行った。その発光スペクトルを[図5]に示し、特性を評価した結果を[表4]に示す。
【0282】
[実施例2〜4]
原料のモル混合比を、下記[表3]に記載した割合とした以外は、実施例1と同様にして、(Ba,Eu)3(Mg,Lu)Si2(O,N)8で示される化合物を有してなる蛍光体を得た。
得られた蛍光体の粉末X線回折測定、及び発光スペクトル測定を行った。結果を[図4]、[図5]及び[表4]に示す。
【0283】
また、粉末X線回折測定の結果から求められる格子定数を六方晶の単位格子に当てはめ、各実施例の単位格子当たり体積の比較も行った。結果を[図6]に示す。
なお、類似の結晶構造を有し、Mgが全てLuに置換されたものに相当する、Ba9Lu2Si6O24の単位格子当たり体積は211Å3であった。各実施例との比較のため、[図6]に211Å3を明示する。
【0284】
[比較例1]
原料のモル混合比を、下記[表3]に記載した割合とした以外は、[実施例1]と同様にして、(Ba,Eu)3MgSi2O8で示される化合物を有してなる蛍光体を得た。
得られた蛍光体の粉末X線回折測定、及び発光スペクトル測定を行った。結果を[図4]、[図5]及び[表4]に示す。
【0285】
【表3】
【0286】
【表4】
【0287】
[結果と考察]
これらの結果より、本発明の蛍光体は、Ba3MgSi2O8を結晶母体とする比較例の蛍光体と同様の回折ピークパターンを示すものの、Luの添加量が増えるに従いその回折ピークは低角度側にシフトしており、Mgの一部がLuに置換されることによりその格子定数が増加していることがわかった。
【0288】
また、単位格子の体積比較の結果から、[実施例4]はBa9Lu2Si6O24の単位格子当たりの体積に比べその値が小さいことから、Mgが全てLuに置換されてはいないことが確認された。
【0289】
ここで、[実施例3]と[実施例4]とでは、その原料の仕込み組成が同一であるが、出来上がった蛍光体中のLu含有量は異なった。これは、焼成雰囲気の僅かな違いがLuの置換量に影響を及ぼしたものと推察される。
【0290】
[実施例5]
[図2(b)]に示す構成の表面実装型白色発光装置を以下の手順により作製し、その色度をCIE色度座標値(CIEx、CIEy)により評価した。なお、[実施例5]の各構成要素のうち、[図2(b)]に対応する構成要素が描かれているものについては、適宜その符号をカッコ書きにて示す。
【0291】
第1の発光体(22)としては、波長390nm〜400nmに発光ピークを有する近紫外線発光ダイオード(以下適宜「近紫外LED」と略する)であるC395EZ290(Cree製)BR0428−03Aを用いた。この近紫外LED(22)を、フレーム(24)の凹部の底の電極(27)に、接着剤として銀ペーストを用いてダイボンディングした。この際、近紫外LED(22)で発生する熱の放熱性を考慮して、接着剤である銀ペーストは薄く均一に塗布した。150℃で2時間加熱し、銀ペーストを硬化させた後、近紫外LED(22)とフレーム(24)の電極(26)とをワイヤボンディングした。ワイヤ(25)は、直径25μmの金線を用いた。
【0292】
また、蛍光体含有樹脂部(23)において、蛍光体含有部(23)の発光物質(緑色蛍光体である上記[実施例3]の蛍光体)と、シリコーン樹脂(信越化学社製6101UP)と、アエロジル(登録商標)(RY−200S)とを混合し、70℃で1時間さらに150℃で2時間の加熱による硬化条件で硬化させ、蛍光体含有部(23)を形成し、表面実装型発光装置を作製した。
【0293】
室温(25±1℃)において、得られた表面実装型発光装置の近紫外LED(22)に、20mAの電流を通電して駆動し発光させた。
発光装置からの全ての発光を積分球で受け、さらに光ファイバーによって分光器に導き入れ、発光スペクトルを測定した。発光スペクトルを[図7]に示す。
【0294】
[実施例6]
蛍光体含有樹脂部(23)において、蛍光体含有部(23)の発光物質を緑色蛍光体である上記[実施例4]の蛍光体、及び波長520nm〜760nmの光を発光する赤色蛍光体であるSr0.792Ca0.2AlSiN3:Eu0.008(以下、「SCASN」と略称することがある。)とし、シリコーン樹脂(信越化学社製6101UP)のみを使用した以外は、[実施例5]と同様にして、表面実装型白色発光装置を作製した。
なお、発光物質の組成比は[表5]に示す。
【0295】
室温(25±1℃)において、得られた表面実装型白色発光装置の近紫外LED(22)に、20mAの電流を通電して駆動し発光させた。
白色発光装置からの全ての発光を積分球で受け、さらに光ファイバーによって分光器に導き入れ、発光スペクトルを測定し、さらに白色色度座標及びRaを測定した。
発光スペクトルを[図8]に、その他の結果を[表6]に示す。
【0296】
[比較例2]
[実施例4]の本発明の蛍光体の代わりに、青色蛍光体Ba0.7MgAl10O17:Eu0.3(以下、「BAM」と略称することがある。)と、緑色蛍光体Ba1.39Sr0.46SiO4:Eu0.15(以下、「BSS」と略称することがある。)とを使用した以外は、[実施例5]と同様に表面実装型白色発光装置を作製した。
なお、発光物質の組成比は[表5]に示す。
【0297】
得られた表面実装型白色発光装置に対して、[実施例6]と同様の条件で発光スペクトルを測定し、さらに白色色度座標及びRaを測定した。
発光スペクトルを[図8]に、その他の結果を[表6]に示す。
【0298】
【表5】
【0299】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0300】
本発明は光を用いる任意の分野において用いることができ、例えば屋内及び屋外用の照明などのほか、携帯電話、家庭用電化製品、屋外設置用ディスプレイ等の各種電子機器の画像表示装置などに用いて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0301】
【図1】本発明の発光装置の一例における、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)との位置関係を示す模式的斜視図である。
【図2】(a)及び(b)は、いずれも、励起光源(第1の発光体)と蛍光体含有部(第2の発光体)とを有する発光装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の照明装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施例1〜実施例4、及び比較例1について測定した、粉末X線回折測定の結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例1〜実施例4、及び比較例1について測定した、発光スペクトル測定の結果を示す図である。実施例1を実線(太線)、実施例2を一点鎖線、実施例3を二点鎖線、実施例4を実線(細線)、比較例1を破線で表わしている。
【図6】本発明の実施例1〜実施例4について、粉末X線回折測定の結果から求められる格子定数を六方晶の単位格子に当てはめて算出した、格子当たり体積を表わす図である。なお、Ba9Lu2Si6O24の単位格子当たり体積である、211Å3を図中に直線で明示する。
【図7】本発明の実施例5で製造した表面実装型発光装置の発光スペクトルを表わす図である。
【図8】本発明の実施例6、及び比較例2で製造した表面実装型白色発光装置の発光スペクトルを表わす図である。
【符号の説明】
【0302】
1:第2の発光体
2:面発光型GaN系LD
3:基板
4:発光装置
5:マウントリード
6:インナーリード
7:第1の発光体
8:蛍光体含有樹脂部
9:導電性ワイヤー
10:モールド部材
11:面発光照明装置
12:保持ケース
13:発光装置
14:拡散板
22:第1の発光体
23:蛍光体含有樹脂部
24:フレーム
25:導電性ワイヤー
26:電極
27:電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされる化学組成を有する
ことを特徴とする、蛍光体。
【化1】
(前記式(1)において、
M1は、Ba、Sr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
M2は、Mg及びZnからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
Lnは、La、Lu、Y、Sc及びGdからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
x、y及びzは、各々、
0<x<1、
0.05≦y<1、
0≦z<1
を満たす正の数を示す。)
【請求項2】
395nmの波長の光で励起した場合に、420nm以上550nm以下の波長範囲に発光スペクトルのピーク波長を有する
ことを特徴とする、請求項1記載の蛍光体。
【請求項3】
前記発光スペクトルのピークの半値幅が60nm以上である
ことを特徴とする請求項2に記載の蛍光体。
【請求項4】
250nm以上480nm以下の波長範囲の光で励起した場合に、420nm以上550nm以下の波長範囲にピーク波長を1つ有する発光スペクトルを有し、
前記発光スペクトルのピークの半値幅が145nm以上である
ことを特徴とする、蛍光体。
【請求項5】
下記式(2)で表わされる化学組成を有する
ことを特徴とする、請求項4に記載の蛍光体。
【化2】
(前記式(2)において、
M3及びM4は、それぞれ独立にアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及び2価の遷移元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
M5は、B、Al、Si、Ge、P、As、及びSbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
M6は、O、N、S、及びハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
L1は、Sm、Eu、Tm及びYbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
L2は、L1以外の希土類元素を示す。
また、M3のイオン半径はM4のイオン半径より大きく、L2のイオン半径はM4のイオン半径の0.7倍以上1.3倍以下の範囲である。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛍光体と、液体媒体とを含有する
ことを特徴とする、蛍光体含有組成物。
【請求項7】
第1の発光体と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、
前記第2の発光体が、請求項1〜5の何れか一項に記載の蛍光体を1種以上、第1の蛍光体として含有する
ことを特徴とする、発光装置。
【請求項8】
前記第2の発光体が、前記第1の蛍光体とは発光ピーク波長の異なる蛍光体を1種以上、第2の蛍光体として含有する
ことを特徴とする、請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、
前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、490nmを超え570nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、570nmを超え780nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有する
ことを特徴とする、請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、
前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、420nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、570nmを超え780nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有する
ことを特徴とする、請求項8に記載の発光装置。
【請求項11】
請求項7〜10の何れか一項に記載の発光装置を有してなる
ことを特徴とした、照明装置。
【請求項12】
請求項7〜10の何れか一項に記載の発光装置を有してなる
ことを特徴とした、画像表示装置。
【請求項1】
下記式(1)で表わされる化学組成を有する
ことを特徴とする、蛍光体。
【化1】
(前記式(1)において、
M1は、Ba、Sr及びCaからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
M2は、Mg及びZnからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
Lnは、La、Lu、Y、Sc及びGdからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
x、y及びzは、各々、
0<x<1、
0.05≦y<1、
0≦z<1
を満たす正の数を示す。)
【請求項2】
395nmの波長の光で励起した場合に、420nm以上550nm以下の波長範囲に発光スペクトルのピーク波長を有する
ことを特徴とする、請求項1記載の蛍光体。
【請求項3】
前記発光スペクトルのピークの半値幅が60nm以上である
ことを特徴とする請求項2に記載の蛍光体。
【請求項4】
250nm以上480nm以下の波長範囲の光で励起した場合に、420nm以上550nm以下の波長範囲にピーク波長を1つ有する発光スペクトルを有し、
前記発光スペクトルのピークの半値幅が145nm以上である
ことを特徴とする、蛍光体。
【請求項5】
下記式(2)で表わされる化学組成を有する
ことを特徴とする、請求項4に記載の蛍光体。
【化2】
(前記式(2)において、
M3及びM4は、それぞれ独立にアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、及び2価の遷移元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
M5は、B、Al、Si、Ge、P、As、及びSbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
M6は、O、N、S、及びハロゲンからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
L1は、Sm、Eu、Tm及びYbからなる群より選ばれる1種以上の元素を示し、
L2は、L1以外の希土類元素を示す。
また、M3のイオン半径はM4のイオン半径より大きく、L2のイオン半径はM4のイオン半径の0.7倍以上1.3倍以下の範囲である。)
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の蛍光体と、液体媒体とを含有する
ことを特徴とする、蛍光体含有組成物。
【請求項7】
第1の発光体と、当該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、
前記第2の発光体が、請求項1〜5の何れか一項に記載の蛍光体を1種以上、第1の蛍光体として含有する
ことを特徴とする、発光装置。
【請求項8】
前記第2の発光体が、前記第1の蛍光体とは発光ピーク波長の異なる蛍光体を1種以上、第2の蛍光体として含有する
ことを特徴とする、請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、
前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、490nmを超え570nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、570nmを超え780nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有する
ことを特徴とする、請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第1の発光体が、300nm以上420nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、
前記第2の発光体が、前記第2の蛍光体として、420nm以上490nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体と、570nmを超え780nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体とを含有する
ことを特徴とする、請求項8に記載の発光装置。
【請求項11】
請求項7〜10の何れか一項に記載の発光装置を有してなる
ことを特徴とした、照明装置。
【請求項12】
請求項7〜10の何れか一項に記載の発光装置を有してなる
ことを特徴とした、画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−40944(P2009−40944A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209364(P2007−209364)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】
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