説明

蛍光体

【課題】温度特性の良好な蛍光体を提供する。
【解決手段】波長250nm乃至500nmの光で励起した際に波長490nm乃至580nmの間に発光ピークを示し、下記組成式(A)で表わされる組成を有する蛍光体である。CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いたX線回折において、11.81〜11.85°、15.34〜15.38°、20.40〜20.47°、23.74〜23.86°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示すことを特徴とする。
MAlSiON (A)
(上記組成式(A)中、MはSrであり、その少なくとも0.1モル%はEuで置換されている。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に使用される蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードを用いたLEDランプは、携帯機器、PC周辺機器、OA機器、各種スイッチ、バックライト用光源、および表示板などの各種表示装置に用いられている。高負荷LEDは駆動により発熱して、蛍光体の温度は100〜200℃程度上昇し、これに起因して蛍光体の発光強度が低下する。蛍光体は、温度上昇時の発光強度低下が少ないことが望まれる。
【0003】
かかるLEDランプに用いられる、青色で励起され緑色の発光を示す蛍光体としてはEu付活βサイアロン蛍光体がある。この蛍光体は450nm励起で効率がよいとされ、450nm励起では、吸収率65%、内部量子効率53%、発光効率35%である。
【0004】
また、フラットパネルディスプレイ装置に関する開発は、PDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)において精力的に行なわれている。電界放出型ディスプレイは、鮮明な画像を提供するという点でPDP、LCDを凌駕するものとして期待されている。
【0005】
電界放出型ディスプレイは、赤色、緑色、および青色の蛍光体が配列されたスクリーンと、このスクリーンに対してCRTよりも狭い間隔で対向するカソードを備えている。カソードには電子源がエミッタ素子として複数配置され、その近傍に配置されたゲート電極との電位差に応じて電子を放出する。放出された電子は蛍光体側のアノード電圧(加速電圧)により加速されて蛍光体に衝突して、これにより蛍光体が発光する。
【0006】
かかる構成の電界放出型ディスプレイに使用する蛍光体としては、十分に高い発光効率を有し、高電流密度の励起において飽和に至った際にも、十分に高い発光効率を示すことが要求される。これまでCRT用蛍光体に用いられてきた硫化物系蛍光体(ZnS:Cu、ZnS:Ag)は、この候補となり得る。しかしながら、低エネルギー陰極線ディスプレイスクリーンの励起条件下では、ZnSのような硫化物系蛍光体は分解することが報告されている。この分解物が、電子線を放出する熱フィラメントを著しく劣化させてしまう。特に、従来用いられているZnS系青色蛍光体は、赤色蛍光体および緑色蛍光体に比して輝度劣化が著しいため、カラー画面の表示色が経時変化してしまうという問題が生じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、温度特性の良好な蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様にかかる蛍光体は、波長250nm乃至500nmの光で励起した際に波長490nm乃至580nmの間に発光ピークを示し、下記組成式(A)で表わされる組成を有する蛍光体である。CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いたX線回折において、11.81〜11.85°、15.34〜15.38°、20.40〜20.47°、23.74〜23.86°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示すことを特徴とする。
【0009】
MAlSiON (A)
(上記組成式(A)中、MはSrであり、その少なくとも0.1モル%はEuで置換されている。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、温度特性の良好な蛍光体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、一実施形態にかかる蛍光体のXRDプロファイルである。
【図2】図2は、一実施形態にかかる発光装置の構成を表わす概略図である。
【図3】図3は、例1〜4の蛍光体の457nm光励起における発光スペクトルである。
【図4】図4は、例5〜8の蛍光体の457nm光励起における発光スペクトルである。
【図5】図5は、例1〜4,7,8の蛍光体のXRDプロファイルである。
【図6】図6は、例9〜11の蛍光体の457nm光励起における発光スペクトルである。
【図7】図7は、例12〜16の蛍光体の457nm光励起における発光スペクトルである。
【図8】図8は、例17〜20の蛍光体の457nm光励起における発光スペクトルである。
【図9】図9は、例21〜23の蛍光体の457nm光励起における発光スペクトルである。
【図10】図10は、例24〜26の蛍光体の457nm光励起における発光スペクトルである。
【図11】図11は、例27〜29の蛍光体の457nm光励起における発光スペクトルである。
【図12】図12は、例30の蛍光体の457nm光励起における発光スペクトルである。
【図13】図13は、実施例1〜4の蛍光体の457nm光励起における発光スペクトルである。
【図14】図14は、実施例5の蛍光体の461nm光励起における発光スペクトルである。
【図15】図15は、実施例6,7の蛍光体の461nm光励起における発光スペクトルである。
【図16】図16は、実施例8〜11の蛍光体の461nm光励起における発光スペクトルである。
【図17】図17は、実施例12〜14の蛍光体のXRDプロファイルである。
【図18】図18は、参考例31〜34の蛍光体の457nm光励起における発光スペクトルである。
【図19】図19は、参考例35〜38の蛍光体の457nm光励起における発光スペクトルである。
【図20】図20は、参考例39の蛍光体の457nm光励起における発光スペクトルである。
【図21】図21は、比較例3〜5、および例20、実施例2の蛍光体のXRDプロファイルである。
【図22】図22は、比較例3〜5、および例20、実施例2の蛍光体の390nm光励起における発光スペクトルである。
【図23】図23は、例20,参考例39、比較例1,2の蛍光体の461nm光励起における発光強度の温度特性を表わすグラフ図である。
【図24】図24は、実施例1、比較例6の蛍光体の461nm光励起における発光強度の温度特性を表わすグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0013】
本発明者らは、組成を限定したサイアロン系化合物に発光中心元素を添加することによって、温度特性の良好な蛍光体が得られることを見出した。本明細書におけるサイアロン系化合物は、下記組成式(A)で表わされる。
【0014】
MAlSiON (A)
上記組成式(A)中、Mは、SiおよびSiを除く少なくとも1種の金属元素である。具体的には、金属元素Mとしては、Mg,Ca,Sr,Ba等のアルカリ土類金属;Y,Gd,La,Lu,Sc等の希土類;Li,Na,K等のアルカリ金属などが挙げられる。また、B,Ga,In,Ge等が金属元素Mとして含有されてもよい。
【0015】
サイアロン系化合物におけるこうした金属元素Mの少なくとも一部を発光中心元素Rで置き換えるとともに、各構成元素の組成を所定範囲に規定することによって、本実施形態にかかる蛍光体が得られる。本実施形態にかかる蛍光体は、下記組成式(B)において、各構成元素の組成を所定の範囲内に規定したものであるということができる。
【0016】
(M1-xxaAlSibcd (B)
発光中心元素Rとしては、例えば、Eu,Ce,Mn,Tb,Yb,Dy,Sm,Tm,Pr,Nd,Pm,Ho,Er,Gd,Cr,Sn,Cu,Zn,Ga,Ge,As,Ag,Cd,In,Sb,Au,Hg,Tl,Pb,Bi,およびFeなどが挙げられる。発光波長の可変性等を考慮すると、EuおよびMnの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0017】
発光中心元素Rは、金属元素Mの少なくとも0.1モル%を置換することが望まれる。置換量が0.1モル%未満の場合には、十分な発光効果を得ることが困難となる。発光中心元素Rは、金属元素Mの全量を置き換えてもよいが、置換量が50モル%未満の場合には、発光確率の低下(濃度消光)を極力抑制することができる。
【0018】
一実施形態にかかる蛍光体は、波長250nm乃至500nmの光で励起した際に波長490nm乃至580nmの間に発光ピークを示し、下記一般式(2)で表わされる組成を有する。
【0019】
(M1-xxa2AlSib2c2d2 (2)
(上記一般式(2)中、MはSiおよびAlを除く少なくとも一種の金属元素であり、Rは発光中心元素である。x、a2、b2、c2、d2は、次の関係を満たす数値である。
【0020】
0<x≦1, 0.93<a2<1.3, 4.0<b2<5.8
0.6<c2<1, 6<d2≦11)
前記一般式(2)で表わされる組成を有する蛍光体は、波長250nm乃至500nmの光で励起した際、緑色から黄緑色にわたる領域の発光を示すということができる。
【0021】
前記一般式(2)における金属元素Mとしてアルカリ土類金属元素が含有された場合、得られる蛍光体は、CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いたX線回折において、例えば図1に模式的に示されるようなX線回折プロファイルを有する。図1に示すように、前記一般式(2)で表わされる組成を有する蛍光体は、11.81〜11.85°、15.34〜15.38°、20.40〜20.47°、23.74〜23.86°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示す一成分を含有する。
【0022】
この蛍光体は、各元素の組成が所定の範囲内に規定されていることによって、良好な温度特性を示す。
【0023】
実施形態にかかる蛍光体は、例えば、金属元素Mの炭酸塩、窒化物、酸化物、またはその他シアナミド等の炭化物、AlやSiの窒化物、酸化物、または炭化物、および発光中心元素Rの酸化物、窒化物、または炭酸塩を出発原料として用いて、合成することができる。より具体的には、金属元素MとしてSrを含有し、発光中心元素RとしてEuを含有する蛍光体を目的とする場合には、SrCO3,AlN,Si34およびEu23を出発原料として用いることができる。これらを所望の組成になるように秤量混合し、得られた混合粉末を焼成することによって、目的の蛍光体が得られる。混合に当たっては、例えば、脱水イソプロパノール(IPA)中で2〜72時間ボールミル混合するといった手法が挙げられる。IPA以外に、エタノール等他の有機溶媒や水溶液を用いることも可能である。あるいは、乳鉢中の乾式混合や他の湿式混合法により混合を行なってもよい。
【0024】
室温あるいはマントルヒーターによる加熱乾燥を行なって、IPAを揮発・除去させる。これを、大気中0〜40℃で一晩乾燥させた後、乳鉢で解砕後にカーボンるつぼに充填する。乾燥には、適宜ホットプレート等を用いることもできる。また、るつぼの材質は、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、サイアロン、酸化アルミ、モリブデンあるいはタングステン等としてもよい。
【0025】
これらを所定時間焼成して、目的の組成を有する蛍光体が得られる。焼成は、大気圧以上の圧力で行なうことが望ましい。窒化ケイ素の高温での分解を抑制するためには、5気圧以上がより好ましい。焼成温度は1500〜2000℃の範囲が好ましく、より好ましくは1800〜2000℃である。焼成温度が1500℃未満の場合には、サイアロンの形成が困難となる。一方、2000℃を越えると、材料あるいは生成物の昇華のおそれがある。また、原料のAlNが酸化されやすいことから、N雰囲気中で焼成することが望まれるが、窒素・水素混合雰囲気でもよい。
【0026】
焼成後の粉体に洗浄等の後処理を適宜施して、実施形態にかかる蛍光体が得られる。洗浄は、例えば純水洗浄、酸洗浄により行なうことができる。なお、従来の窒化物の蛍光体としてはCaAlSiN3:Eu等が知られており、Ca32等を原料として用いて合成される。こうした原料粉末は嫌気性であるため、合成の際には、秤量・混合にグローブボックス等の大気を遮断した環境が要求される。これに対して、実施形態にかかる蛍光体を合成する際には、原料粉末は大気中で秤量・混合が可能である。実施形態にかかる蛍光体の原料は、上述したCa32等に比べて大気中での反応性が低いためである。したがって、実施形態にかかる蛍光体は、極めて簡便なプロセスで製造することができ、製造コストを著しく削減することが可能である。
【0027】
実施形態にかかる蛍光体は、白色LEDに適用することができる。具体的には、複数種の蛍光体を組み合わせて用いることにより、白色光が得られる。例えば、紫外光によりそれぞれ赤色、黄色(または緑色)、青色に発光する複数種の蛍光体を組み合わせて用いることができる。あるいは、青色光により黄色、赤色(必要に応じて赤色は省略可能。)にそれぞれ発光する複数種の蛍光体を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
図2に示す発光装置においては、樹脂ステム200はリードフレームを成形してなるリード201およびリード202と、これに一体成形されてなる樹脂部203とを有する。樹脂部203は、上部開口部が底面部より広い凹部205を有しており、この凹部の側面には反射面204が設けられる。
【0029】
凹部205の略円形底面中央部には、発光チップ206がAgペースト等によりマウントされている。発光チップ206としては、例えば発光ダイオード、レーザダイオード等を用いることができる。さらには、紫外発光を行なうものを用いることができ、特に限定されるものではない。紫外光以外にも、青色や青紫、近紫外光などの波長を発光可能なチップも使用可能である。例えば、GaN系等の半導体発光素子等を用いることができる。発光チップ206の電極(図示せず)は、Auなどからなるボンディングワイヤー207および208によって、リード201およびリード202にそれぞれ接続されている。なお、リード201および202の配置は、適宜変更することができる。
【0030】
樹脂部203の凹部205内には、蛍光層209が配置される。この蛍光層209は、実施形態にかかる蛍光体210を、例えばシリコーン樹脂からなる樹脂層211中に5重量%から50重量%の割合で分散、もしくは沈降させることによって形成することができる。実施形態にかかる蛍光体には、共有結合性の高い窒化物が母体として用いられる。このため、蛍光体は疎水性であり、樹脂との馴染みが極めて良好である。したがって、樹脂と蛍光体との界面での散乱が著しく抑制されて、光取出し効率が向上する。
【0031】
発光チップ206としては、n型電極とp型電極とを同一面上に有するフリップチップ型のものを用いることも可能である。この場合には、ワイヤーの断線や剥離、ワイヤーによる光吸収等のワイヤーに起因した問題を解消して、信頼性の高い高輝度な半導体発光装置が得られる。また、発光チップ206にn型基板を用いて、次のような構成とすることもできる。具体的には、n型基板の裏面にn型電極を形成し、基板上の半導体層上面にはp型電極を形成して、n型電極またはp型電極をリードにマウントする。p型電極またはn型電極は、ワイヤーにより他方のリードに接続することができる。発光チップ206のサイズ、凹部205の寸法および形状は、適宜変更することができる。
【0032】
なお、発光装置の種類は適宜変更することができる。具体的には、砲弾型LEDや表面実装型LEDの場合も、実施形態の蛍光体を適用して同様の効果を得ることができる。
【0033】
以下、実施例および比較例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
(例1)
出発原料としてSrCO3,AlN,Si34およびEu23を準備した。これらを各々25.687g、8.198g、46.770gおよび4.575g秤量し、脱水イソプロパノール(IPA)中で24hボールミル混合した。室温で乾燥することによって、IPAを揮発・除去させた。大気中120℃で一晩乾燥させた後、乳鉢で解砕して、カーボンるつぼに充填した。これを7.5気圧のN雰囲気中、1900℃で8時間焼成して蛍光体を合成した。
【0035】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0036】
(例2)
SrCO3の配合量を25.097gに変更し、Eu23の配合量を5.279gに変更した以外は、例1と同様の手法により蛍光体を合成した。
【0037】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0038】
(例3)
SrCO3の配合量を24.506gに変更し、Eu23の配合量を5.983gに変更した以外は、例1と同様の手法により蛍光体を合成した。
【0039】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0040】
(例4)
SrCO3の配合量を7.012gに変更し、Eu23の配合量を0.440gに変更した以外は、例1と同様の手法により蛍光体を合成した。
【0041】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0042】
例1の赤色粉体をるつぼから分取し、乳鉢で解砕した。これを、457nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起して、発光スペクトルを観察した。例2乃至4の赤色粉体についても、同様に分取して解砕した後、457nmの光で励起して発光スペクトルを観察した。
【0043】
得られた結果を図3に示す。図3において、各々457nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。いずれの赤色粉体からも、620〜640nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。単一バンドとは、発光強度が極大値を取るピーク波長が一つのみであるような発光をさす。
【0044】
(例5)
焼成温度を1950℃に変更した以外は例1と同様の条件で蛍光体を合成した。
【0045】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0046】
(例6)
焼成温度を1950℃に変更した以外は例2と同様の条件で蛍光体を合成した。
【0047】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0048】
(例7)
焼成温度を1950℃に変更した以外は例3と同様の条件で蛍光体を合成した。
【0049】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0050】
(例8)
焼成温度を1950℃に変更した以外は例4と同様の条件で蛍光体を合成した。
【0051】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0052】
例5乃至8の赤色粉体について、前述と同様の手法により分取して解砕した後、457nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを、図4に示す。図4において、457nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。いずれの赤色粉体からも、620〜640nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0053】
例1乃至4および7および8の赤色粉体について、CuKα特性X線(波長1.54056Å)によるX線回折測定を行なった。得られたプロファイルを図5に示す。図5に示されるようにピークの多いプロファイルが示されたことから、これらの赤色粉体は、比較的複雑な構造を有しているものと推測される。
【0054】
いずれも、8.60〜8.64°、11.16〜11.20°、18.26〜18.30°の回折角度(2θ)に同時にピークを有することがわかる。低角側でのピークは、単位格子が比較的大きいことを示唆している。
【0055】
このプロファイルをJPCDSカードと照合したところ、既存物質のJPCDSカードデータとは一致しなかった。なお、JCPDSカードとは、各種物質のX線回折法によるピークプロファイルをまとめたデータ集である。
【0056】
例1の赤色粉体についてのプロファイルのピークを指数付けした結果、格子サイズが11.7×4.96×21.4Åの空間群Pnma、Pnc2(斜方晶)などと良く一致した。また、例2の赤色粉体についてのプロファイルのピークを指数付けした結果、格子サイズが11.7×4.97×21.4Åの空間群Pnma(斜方晶)P21/c(単斜晶)などと良く一致した。このことから、少なくともこれらの蛍光体が斜方晶であり、格子サイズが12×5×21Å程度であることがわかる。
【0057】
(例9)
焼成温度を1850℃に変更した以外は例2と同様の条件で蛍光体を合成した。
【0058】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色粉体と赤色粉体と黄緑色粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および黄緑色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および黄緑色発光が観察された。
【0059】
(例10)
焼成温度を1850℃に変更した以外は例3と同様の条件で蛍光体を合成した。
【0060】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色粉体と赤色粉体と黄緑色粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および黄緑色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および黄緑色発光が観察された。
【0061】
(例11)
焼成温度を1850℃に変更した以外は例4と同様の条件で蛍光体を合成した。
【0062】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色粉体と赤色粉体と黄緑色粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および黄緑色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および黄緑色発光が観察された。
【0063】
例9乃至11の赤色粉体について、前述と同様の手法により分取して解砕した後、457nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを、図6に示す。図6において、457nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。いずれの赤色粉体からも、610〜620nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0064】
(例12)
SrCO3の配合量を13.287gに変更し、Eu23の配合量を1.760gに変更した以外は、例1と同様の条件で蛍光体を合成した。
【0065】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0066】
(例13)
焼成温度を1800℃に変更した以外は例12と同様の条件で蛍光体を合成した。
【0067】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色粉体と赤色粉体と黄緑色粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および黄緑色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および黄緑色発光が観察された。
【0068】
(例14)
焼成温度を1800℃に変更した以外は例2と同様の条件で蛍光体を合成した。
【0069】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色粉体と赤色粉体と黄緑色粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および黄緑色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および黄緑色発光が観察された。
【0070】
(例15)
焼成温度を1800℃に変更した以外は例4と同様の条件で蛍光体を合成した。
【0071】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色粉体と赤色粉体と黄緑色粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および黄緑色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および黄緑色発光が観察された。
【0072】
(例16)
るつぼを窒化ホウ素るつぼに変更した以外は例14と同様の条件で蛍光体を合成した。
【0073】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、赤色の焼結粉体と黄緑色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、赤色粉体からは赤色発光が観察され、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察された。
【0074】
例12乃至16の赤色粉体について、前述と同様の手法により分取して解砕した後、457nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを、図7に示す。図7において、457nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。いずれの赤色粉体からも、600〜630nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0075】
(例17)
焼成時間を16時間に変更した以外は例2と同様の条件で蛍光体を合成した。
【0076】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、ブラックライト励起で白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0077】
(例18)
出発原料として31.371gのSrCO3,12.296gのAlN,46.770gのSi34および6.599gのEu23を用意した。これらを用い、焼成条件を1750℃で20時間に変更した以外は例1と同様にして、蛍光体を合成した。
【0078】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、赤色の焼結粉体と黄緑色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、赤色粉体からは赤色発光が観察され、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察された。
【0079】
(例19)
焼成条件を1850℃で16時間に変更した以外は例1と同様にして、蛍光体を合成した。
【0080】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、赤色の焼結粉体と黄緑色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、赤色粉体からは赤色発光が観察され、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察された。
【0081】
(例20)
焼成条件を1850℃で16時間に変更した以外は例2と同様にして、蛍光体を合成した。
【0082】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色粉体と赤色粉体と黄緑色粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および黄緑色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および黄緑色発光が観察された。
【0083】
例17乃至20の赤色粉体について、前述と同様の手法により分取して解砕した後、457nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを、図8に示す。図8において、各々457nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。いずれの赤色粉体からも、616〜618nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0084】
例1乃至4、7乃至8、17の赤色粉体を選り分けて、化学分析を行なった結果を、下記表1にまとめて示す。下記表1には、前記一般式(B)におけるa,b,cおよびdの値を示した。
【表1】

【0085】
(例21)
焼成条件を1800℃で16時間に変更した以外は例12と同様にして、蛍光体を合成した。
【0086】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、赤色の焼結粉体と黄緑色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、赤色粉体からは赤色発光が観察され、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察された。
【0087】
(例22)
焼成条件を1800℃で16時間に変更した以外は例1と同様にして、蛍光体を合成した。
【0088】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、赤色の焼結粉体と黄緑色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、赤色粉体からは赤色発光が観察され、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察された。
【0089】
(例23)
焼成条件を1800℃で16時間に変更した以外は例3と同様にして、蛍光体を合成した。
【0090】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、赤色の焼結粉体と黄緑色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、赤色粉体からは赤色発光が観察され、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察された。
【0091】
例21乃至23の赤色粉体について、前述と同様の手法により分取して解砕した後、457nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを、図9に示す。図9において、各々457nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。いずれの赤色粉体からも、615〜645nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0092】
(例24)
例1と同様に混合、乾燥、解砕を行なった原料粉末を、窒化ホウ素るつぼに充填した。これを、7.5気圧のN雰囲気中、1900℃で24時間焼成、引き続き1800℃で64時間焼成して蛍光体を合成した。
【0093】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、赤色の焼結粉体と黄緑色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、赤色粉体からは赤色発光が観察され、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察された。
【0094】
(例25)
例2と同様に混合、乾燥、解砕を行なった原料粉末を、窒化ホウ素るつぼに充填した。これを、7.5気圧のN雰囲気中、1900℃で24時間焼成、引き続き1800℃で64時間焼成して蛍光体を合成した。
【0095】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色粉体と赤色粉体と黄緑色粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および黄緑色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および黄緑色発光が観察された。
【0096】
(例26)
例3と同様に混合、乾燥、解砕を行なった原料粉末を、窒化ホウ素るつぼに充填した。これを、7.5気圧のN雰囲気中、1900℃で24時間焼成、引き続き1800℃で64時間焼成して蛍光体を合成した。
【0097】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色粉体と赤色粉体と黄緑色粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および黄緑色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および黄緑色発光が観察された。
【0098】
例24乃至26の赤色粉体について、前述と同様の手法により分取して解砕した後、457nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを、図10に示す。図10において、各々457nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。いずれの赤色粉体も、580〜610nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0099】
(例27)
出発原料としてSrCO3,AlN,Si34およびEu23を用い、これらを各々0.664g、0.410g、0.702gおよび0.088g秤量し、乳鉢で十分に混合し、カーボンるつぼに充填した。これらを7.5気圧のN2雰囲気中、1800℃で4時間焼成して本例の蛍光体を合成した。焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色粉体と赤色粉体と橙色粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および橙色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および橙色発光が観察された。
【0100】
(例28)
出発原料としてSrCO3,AlN,Si34およびEu23を準備した。これらを各々1.417g、0.820g、1.403gおよび0.070g秤量し、乳鉢で十分に混合し、カーボンるつぼに充填した。これを、7.5気圧のN2雰囲気中、1800℃で10時間焼成して本例の蛍光体を合成した。
【0101】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色粉体と赤色粉体と橙色粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および橙色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および橙色発光が観察された。
【0102】
(例29)
出発原料としてSrCO3,AlN,Si34およびEu23を準備した。これらを各々1.402g、0.820g、1.403gおよび0.088g秤量し、乳鉢で十分に混合し、カーボンるつぼに充填した。これを、7.5気圧のN2雰囲気中、1800℃で10時間焼成して本例の蛍光体を合成した。
【0103】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色粉体と赤色粉体と橙色粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および橙色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および橙色発光が観察された。
【0104】
例27乃至29の橙色粉体について、前述と同様の手法により分取して解砕した後、457nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを、図11に示す。図11において、457nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。いずれの橙色粉体からも、587〜606nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0105】
(例30)
焼成条件を1800℃で16時間に変更した以外は例18と同様にして、本例の蛍光体を合成した。
【0106】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色粉体と赤色粉体と橙色粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および橙色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および橙色発光が観察された。
【0107】
例30の赤色粉体について、前述と同様の手法により分取して解砕した後、457nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを、図12に示す。図12において、457nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。611nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られることが、明確に示されている。
【0108】
例1乃至26の赤色粉体、例27乃至29の橙色粉体、および例30の赤色粉体の吸収率、量子効率、および発光効率の値を、下記表2にまとめて示す。
【表2】

【0109】
上記表2に示されるように、例1乃至26の赤色粉体、例27乃至29の橙色粉体、および例30の赤色粉体は、いずれも波長250nm乃至500nmの光で励起した際、580nm乃至700nmの間に発光波長を有する蛍光体である。これらの蛍光体の吸収率、量子効率、および発光効率は、例えば、Sr2Si58:Eu等の従来の赤色系蛍光体と比較して、何等遜色ないものである。
【0110】
なお、励起波長を254nm、365nm、390nm、および460nmに変更した場合も、同様の波長範囲にピークを有する発光が確認された。励起波長が短すぎるとストークスシフトによる損失が大きくなり、励気波長が長過ぎると励起効率が低下することから、励起波長は380nm以上460nm以下であることが好ましい。また、発光のピーク波長は、670nm以下であることが望まれる。
【0111】
例1乃至4、7、8および17の赤色粉体の組成は、表1にすでに示したとおりである。残りの例の赤色粉体および橙色粉体についても化学分析を行なって、組成式(B)におけるa,b,cおよびdの値を調べた。
【0112】
その結果、例1乃至26の赤色粉体、例27乃至29の橙色粉体、および例30の赤色粉体においては、aの値の上限は0.948であり、下限は0.605であった。bの値の上限および下限は、それぞれ3.88および2.10であり、cの値の上限および下限は、それぞれ0.446および0.253であった。また、dの値の上限および下限は、それぞれ5.68および4.05であった。
【0113】
こうした結果に基づいて、例1乃至26の赤色粉体、例27乃至29の橙色粉体、および例30の赤色粉体の組成を、下記一般式(1)で規定した。
【0114】
(M1-xxa1AlSib1c1d1 (1)
(上記一般式(1)中、MはSiおよびAlを除く少なくとも1種の金属元素であり、Rは発光中心元素である。x、a1、b1、c1、d1は、次の関係を満たす数値である。
【0115】
0<x≦1, 0.6<a1<0.95, 2<b1<3.9
0.25<c1<0.45, 4<d1<5.7)
また、例1乃至26の赤色粉体、例27乃至29の橙色粉体、および例30の赤色粉体のいずれも、CuKα特性X線(波長1.54056Å)によるX線回折測定の結果、少なくとも8.60〜8.64°、11.16〜11.20°、18.26〜18.30°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示した。
【0116】
(実施例1)
焼成条件を1800℃で72時間に変更した以外は例21と同様にして、本実施例の蛍光体を合成した。
【0117】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、黄緑色の焼結粉体と橙色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察され、橙色粉体からは橙色発光が観察された。
【0118】
(実施例2)
焼成条件を1800℃で72時間に変更した以外は例22と同様にして、本実施例の蛍光体を合成した。
【0119】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、黄緑色の焼結粉体と橙色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察され、橙色粉体からは橙色発光が観察された。
【0120】
(実施例3)
焼成条件を1800℃で72時間に変更した以外は例23と同様にして、本実施例の蛍光体を合成した。
【0121】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、黄緑色の焼結粉体と橙色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察され、橙色粉体からは橙色発光が観察された。
【0122】
この黄緑色粉体について、CuKα特性X線(波長1.54056Å)によるX線回折を行なった。その結果、11.831°、15.361°、20.451°および23.840°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示した。
【0123】
(実施例4)
焼成条件を1800℃で72時間に変更した以外は例24と同様にして、本実施例の蛍光体を合成した。
【0124】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、黄緑色の焼結粉体と橙色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察され、橙色粉体からは橙色発光が観察された。
【0125】
実施例1乃至4の黄緑色粉体について、前述と同様の手法により分取して解砕した後、457nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを、図13に示す。図13において、457nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。いずれの黄緑色粉体からも、522乃至524nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0126】
実施例3の黄緑色粉体を坩堝より選り分け、化学分析を行なった結果を、下記表3に示す。下記表3には、前記一般式(B)におけるa,b,cおよびdの値を示した。
【表3】

【0127】
実施例1乃至4の黄緑色粉体の457nm励起における吸収率、量子効率、および発光効率の値を、下記表4にまとめて示す。
【表4】

【0128】
上記表4に示されるように、実施例1乃至4の黄緑色粉体は、いずれも波長250nm乃至500nmの光で励起した際、490nm乃至580nmの間に発光波長を有する蛍光体である。これらの蛍光体の吸収率、量子効率、および発光効率は、例えば(Ba,Sr)2SiO4:Eu等の従来の黄緑色蛍光体と比較して、何等遜色ないものである。
【0129】
また、実施例2の蛍光体を450nmで励起した際の発光特性は、吸収率87%、内部量子効率48%、発光効率42%とさらに高い効率が得られた。この結果は、本実施形態の黄緑色蛍光体においては、460nm励起より450nm励起の方が高い発光効率を示す特性を有することを示唆する。
【0130】
なお、N. Hirosaki et.al.; Extended Abstracts (The 53th Spring Meeting); The Japan Society of Applied Physics and Related Societies, 25p-ZR-11(2006)には、Eu付活βサイアロンの発光効率は、450nm励起で吸収率65%、内部量子効率53%、発光効率35%であることが記載されている。特開2005−255895号公報は、上記Eu付活βサイアロンに係わる特許公報である。こうした従来の蛍光体の発光効率と本実施形態の蛍光体の発光効率とを同一条件の励起波長で比較すると、本実施形態の黄緑色蛍光体の方が優れた特性を示すことがわかる。
【0131】
励起波長を254nm、365nm、および390nm、および460nmに変更した場合も、同様の波長範囲にピークを有する発光が確認された。励起波長が短すぎるとストークスシフトによる損失が大きくなり、励気波長が長過ぎると励起効率が低下することから、励起波長は、380nm以上460nm以下であることが好ましい。また、発光のピーク波長は560nm以下であることが望まれる。さらに、発光のピーク波長は500nm以上であることが望まれる。
【0132】
(実施例5)
出発原料としてSrCO3,AlN,Si34およびEu23を準備した。これらを各々16.027g、4.837g、27.594gおよび1.661g秤量し、脱水イソプロパノール(IPA)中で2hボールミル混合した。マントルヒーターで乾燥を行なうことにより、IPAを揮発・除去させた。その後、目開き300μmの篩を通して、原料粉を作製した。得られた原料粉を、目開き500〜1000μmの篩より自然落下させて、窒化ホウ素るつぼに充填した。るつぼに充填された原料粉は、7気圧のN2雰囲気中、1800℃で12時間焼成して本実施例の蛍光体を合成した。
【0133】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と黄緑色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察された。
【0134】
(実施例6)
SrCO3,AlN,Si34およびEu23の配合量を16.298g,4.919g,25.256gおよび1.689gに変更した以外は、実施例5と同様の手法により、原料粉を作製した。得られた原料粉を1850℃で6時間焼成して、本実施例の蛍光体を合成した。
【0135】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体、赤色の焼結粉体、および黄緑色の焼結粉体が観察された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および黄緑色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および黄緑色発光が観察された。
【0136】
(実施例7)
Si34の配合量を26.659gに変更した以外は、実施例6と同様の手法により本実施例の蛍光体を合成した。
【0137】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体、赤色の焼結粉体、および黄緑色の焼結粉体が観察された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および黄緑色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および黄緑色発光が観察された。
【0138】
(実施例8)
焼成条件を1800℃16時間に変更した以外は実施例7と同様の手法により、本実施例の蛍光体を合成した。
【0139】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体、赤色の焼結粉体、および黄緑色の焼結粉体が確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および黄緑色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および黄緑色発光が観察された。
【0140】
(実施例9)
焼成時間を16時間に変更した以外は実施例5と同様の手法により、本実施例の蛍光体を合成した。
【0141】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる3種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体、赤色の焼結粉体、および黄緑色の焼結粉体が確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体、赤色粉体、および黄緑色粉体からは、それぞれ青色発光、赤色発光、および黄緑色発光が観察された。
【0142】
(実施例10)
Si34の配合量を29.465gに変更した以外は実施例9と同様の手法により、本実施例の蛍光体を合成した。
【0143】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と黄緑色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察された。
【0144】
この黄緑色粉体について、CuKα特性X線(波長1.54056Å)によるX線回折を行なった。その結果、11.870°、15.39°、20.47°および23.79°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示した。
【0145】
(実施例11)
Si34の配合量を30.868gに変更した以外は実施例9と同様の手法により、本実施例の蛍光体を合成した。
【0146】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と黄緑色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、黄緑色粉体からは黄緑色発光が観察された。
【0147】
(実施例12)
Si34の配合量を29.465gに変更し、焼成時間を10時間に変更した以外は実施例6と同様の手法により、本実施例の蛍光体を合成した。焼成後の蛍光体は、体色が黄緑色の焼結粉体であり、ブラックライトでの励起によって黄緑色発光が観察された。
【0148】
(実施例13)
SrCO3の配合量を16.550gに変更し、Eu23の配合量を1.038gに変更した以外は実施例5と同様の手法により、本実施例の蛍光体を合成した。焼成後の蛍光体は体色が黄緑色の焼結粉体であり、ブラックライトでの励起によって黄緑色発光が観察された。
【0149】
(実施例14)
実施例12と同様の手法により、本実施例の蛍光体を合成した。焼成後の蛍光体は体色が黄緑色の焼結粉体であり、ブラックライトでの励起によって黄緑色発光が観察された。
【0150】
この黄緑色粉体について、CuKα特性X線(波長1.54056Å)によるX線回折を行なった。その結果、11.87°、15.39°、20.47°および23.85°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示した。
【0151】
実施例5の黄緑色粉体を、461nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを、図14に示す。図14において、461nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。514〜518nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0152】
実施例6,7の黄緑色粉体を、461nmのピーク波長を有する発光ダイオードによりそれぞれ励起した。得られた発光スペクトルを図15に示す。図15において、各々461nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。517nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0153】
実施例8〜11の黄緑色粉体を、461nmのピーク波長を有する発光ダイオードによりそれぞれ励起した。得られた発光スペクトルを図16に示す。図16において、各々461nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。517〜520nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0154】
実施例12〜14の黄緑色粉体を、461nmのピーク波長を有する発光ダイオードによりそれぞれ励起した。得られた発光スペクトルを図17に示す。図17において、各々461nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。517〜520nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0155】
実施例5、7、10〜14の黄緑色蛍光体を坩堝より選り分け、化学分析を行なった。その結果を表5にまとめて示す。下記表5には、前記一般式(B)におけるa,b,c,およびdの値を示した。
【表5】

【0156】
実施例5乃至14の黄緑色粉体の吸収率、量子効率、および発光効率の値を表6にまとめて示す。
【表6】

【0157】
上記表6に示されるように、実施例5乃至14の黄緑色粉体は、いずれも波長250nm乃至500nmの光で励起した際、490nm乃至580nmの間に発光波長を有する蛍光体である。これらの蛍光体の吸収率、量子効率、および発光効率は、例えば(Ba,Sr)2SiO4:Eu等の従来の黄緑色蛍光体と比較して、何等遜色ないものである。
【0158】
実施例3,5,7,10〜14の黄緑色粉体の組成は、すでに示したとおりである。残りの実施例における黄緑色粉体についても化学分析を行なって、組成式(B)におけるa,b,cおよびdの値を調べた。その結果、実施例1乃至14の黄緑色粉体においては、aの値の上限は1.30であり、下限は0.940であった。bの値の上限および下限は、それぞれ5.73および4.12であり、cの値の上限および下限は、それぞれ0.85および0.63であった。また、dの値の上限および下限は、それぞれ11および6.3であった。
【0159】
こうした結果に基づいて、実施例1乃至14の黄緑色粉体の組成を、下記一般式(2)で規定した。
【0160】
(M1-xxa2AlSib2c2d2 (2)
(上記一般式(2)中、MはSiおよびAlを除く少なくとも一種の金属元素であり、Rは発光中心元素である。x、a2、b2、c2、d2は、次の関係を満たす数値である。
【0161】
0<x≦1, 0.93<a2<1.3, 4.0<b2<5.8
0.6<c2<1, 6<d2≦11)
実施例は5〜8、14の黄緑色蛍光体は、発光効率が45%以上であり、発光効率に特に優れる。実施例1乃至14の黄緑色粉体の組成を一般式(2)で規定すると、a2、b2、c2、d2は、次の関係を満たす数値となる。
【0162】
0.94<a2<1.1, 4.1<b2<4.7
0.7<c2<0.85, 7<d2<9
また、実施例1乃至14の全ての黄緑色粉体は、CuKα特性X線(波長1.54056Å)によるX線回折測定の結果、少なくとも11.81〜11.85°、15.34〜15.38°、20.40〜20.47°、23.74〜23.86°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示した。
【0163】
(参考例31)
出発原料としてSrCO3,AlN,Si34およびEu23を準備した。これらを各々29.378g、16.395g、28.062gおよび0.176g秤量し、脱水イソプロパノール(IPA)中で24hボールミル混合した。室温乾燥によりIPAを揮発・除去させた後、大気中120℃で一晩乾燥させた。これを乳鉢で解砕した後、うち15gをカーボンるつぼに充填した。最後に、7.5気圧のN2雰囲気中、1800℃で60時間焼成を2回行なって蛍光体を合成した。
【0164】
焼成後の蛍光体は、体色が白色の焼結粉体、微量の橙色の焼結粉体および赤色の焼結粉体の混合物であった。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、微量の橙色粉体および微量の赤色粉体からは、それぞれ橙色発光および赤色発光が観察された。
【0165】
赤色粉体を分取して、CuKα特性X線(波長1.54056Å)によるX線回折を行なった。その結果、13.10°、18.62°、20.22°、26.40°、および28.04°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示した。
【0166】
この赤色粉体を化学分析に供したところ、(Sr0.991Eu0.0092.23AlSi4.750.807.88で表わされる組成を有することが確認された。本参考例の赤色粉体は、前記一般式(B)におけるa,b,c,dの値を用いると、(1+b)/aの値が2.58となり、(c+d)/aの値が3.93となる。
【0167】
(参考例32)
SrCO3の配合量を29.231gに変更し、Eu23の配合量を0.352gに変更した以外は参考例31と同様の条件で、本参考例の蛍光体を合成した。
【0168】
焼成後の蛍光体は、体色が白色の焼結粉体、微量の橙色の焼結粉体および赤色の焼結粉体の混合物であった、ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、微量の橙色粉体および微量の赤色粉体からは、それぞれ橙色発光および赤色発光が観察された。
【0169】
(参考例33)
SrCO3の配合量を28.935gに変更し、Eu23の配合量を0.704gに変更した以外は参考例31と同様の条件で、本参考例の蛍光体を合成した。
【0170】
焼成後の蛍光体は、体色が白色の焼結粉体、微量の橙色の焼結粉体および赤色の焼結粉体の混合物であった、ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、微量の橙色粉体および微量の赤色粉体からは、それぞれ橙色発光および赤色発光が観察された。
【0171】
赤色粉体を分取して、CuKα特性X線(波長1.54056Å)によるX線回折を行なった。その結果、13.08°、18.62°、20.18°、26.38°、および28.02°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示した。
【0172】
(参考例34)
SrCO3の配合量を28.640gに変更し、Eu23の配合量を1.056gに変更した以外は参考例31と同様の条件で、本参考例の蛍光体を合成した。
【0173】
焼成後の蛍光体は、体色が白色の焼結粉体、微量の橙色の焼結粉体および赤色の焼結粉体の混合物であった、ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、微量の橙色粉体および微量の赤色粉体からは、それぞれ橙色発光および赤色発光が観察された。
【0174】
赤色粉体を分取して、CuKα特性X線(波長1.54056Å)によるX線回折を行なった。その結果、13.10°、18.60°、20.20°、26.38°および28.03°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示した。
【0175】
参考例31乃至34の赤色粉体について、前述と同様の手法により分取して解砕した後、457nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを、図18に示す。図18において、457nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。いずれの赤色粉体からも、620〜640nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0176】
(参考例35)
参考例31と同様の出発原料をカーボンるつぼに充填し、7.5気圧のN2雰囲気中、1800℃で60時間焼成して本参考例の蛍光体を合成した。
【0177】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0178】
この赤色粉体について、CuKα特性X線(波長1.54056Å)によりX線回折を行なった。その結果、13.12°、18.64°、20.22°、26.40°、および28.04°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示した。
【0179】
(参考例36)
参考例32と同様の出発原料をカーボンるつぼに充填し、7.5気圧のN2雰囲気中、1800℃で60時間焼成して本参考例の蛍光体を合成した。
【0180】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0181】
(参考例37)
参考例33と同様の出発原料をカーボンるつぼに充填し、7.5気圧のN2雰囲気中、1800℃で60時間焼成して本参考例の蛍光体を合成した。
【0182】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0183】
(参考例38)
参考例34と同様の出発原料をカーボンるつぼに充填し、7.5気圧のN2雰囲気中、1800℃で60時間焼成して本参考例の蛍光体を合成した。
【0184】
焼成後の蛍光体は、体色の異なる2種類の焼結粉体の混合物であり、白色の焼結粉体と赤色の焼結粉体とが確認された。ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、赤色粉体からは赤色発光が観察された。
【0185】
参考例35乃至38の赤色粉体について、前述と同様の手法により分取して解砕した後、457nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを、図19に示す。図19において、457nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。いずれの赤色粉体からも、610〜640nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0186】
(参考例39)
出発原料としてSrCO3,AlN,Si34およびEu23を準備した。これらを各々2.923g、1.640g、2.806gおよび0.035g秤量し、20分乳鉢混合した後に、カーボンるつぼに充填した。これを7.5気圧のN2雰囲気中、1800℃で4時間焼成した。さらに、1800℃で20時間焼成して、本参考例の蛍光体を合成した。
【0187】
焼成後の蛍光体は、体色が白色の焼結粉体、微量の橙色の焼結粉体および赤色の焼結粉体の混合物であった、ブラックライトで励起した結果、白色粉体からは青色発光が観察され、微量の橙色粉体および微量の赤色粉体からは、それぞれ橙色発光および赤色発光が観察された。
【0188】
参考例39の赤色粉体を、前述と同様の手法により分取して解砕した後、457nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを、図20に示す。図20において、457nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。610〜640nmにピーク波長を有する単一バンドの発光が得られた。
【0189】
参考例31乃至39の赤色粉体の吸収率、量子効率、および発光効率の値を、下記表7にまとめて示す。
【表7】

【0190】
上記表7に示されるように、参考例31乃至39の赤色粉体は、いずれも波長250nm乃至500nmの光で励起した際、580nm乃至700nmの間に発光波長を有する蛍光体である。これらの蛍光体の吸収率、量子効率、および発光効率は、例えばSr2Si58:Eu等の従来の赤色蛍光体と比較して、何等遜色ないものである。
【0191】
なお、励起波長を254nm、365nm、390nm、および460nmに変更した場合も、同様の波長範囲にピークを有する発光が確認された。励起波長が短すぎるとストークスシフトによる損失が大きくなり、励気波長が長過ぎると励起効率が低下することから、励起波長は、380nm以上460nm以下であることが好ましい。また、発光のピーク波長は670nm以下であることが望まれる。
【0192】
参考例31の赤色粉体の組成はすでに説明したとおりである。残りの参考例の赤色粉体についても、化学分析を行なって組成式(B)におけるa,b,cおよびdの値を調べた。その結果、参考例31乃至39の赤色粉体においては、(1+b)/aの値の下限および上限は、それぞれ2.41および2.58であった。また、(c+d)/aの値の下限および上限は、それぞれ3.48および4.17であった。
【0193】
こうした結果に基づいて、参考例31乃至39の黄緑色粉体の組成を、下記一般式(3)で規定した。
【0194】
(M1-xxa3AlSib3c3d3 (3)
(上記一般式(3)中、MはAlおよびSiを除く少なくとも一種の金属元素であり、Rは発光中心元素である。x、a3、b3、c3、d3は、次の関係を満たす数値である。
【0195】
0<x≦1, 2.4<(1+b3)/a3<2.6
3.4<(c3+d3)/a3<4.2)
また、参考例31乃至39の全ての赤色粉体は、CuKα特性X線(波長1.54056Å)によるX線回折測定の結果、少なくとも13.06〜13.16°、18.58〜18.68°、20.14〜20.24°、26.32〜26.46°、27.98〜28.10°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示した。
【0196】
(比較例1)
出発原料として、26.573gのSrCO3,23.385gのSi34,および3.519gのEu23を秤量し、ボールミルで混合した。得られた混合粉末をカーボンるつぼに充填し、7気圧のN2雰囲気中、1650℃で8時間焼成して本比較例の蛍光体を合成した。
【0197】
化学分析の結果、本比較例の蛍光体は、(Sr0.9Eu0.12Si58で表わされる組成を有することが確認された。得られた蛍光体は朱色の焼結体であり、ブラックライトで励起した結果、赤色発光が観察された。
【0198】
(比較例2)
出発原料として、148gのSrCO3,および0.176gのEu23を秤量し、乳鉢中で混合した。得られた混合粉末を石英るつぼ中に充填し、1気圧のH2S雰囲気中1100℃で1時間焼成した。さらに粉砕して、2gのNH4Clを加えて乳鉢混合した。これを、石英管中に封じ1気圧のN雰囲気中1100℃で1時間焼成して、本比較例の蛍光体を合成した。
【0199】
化学分析の結果、本比較例の蛍光体は、(Sr0.999Eu0.0012Sで表わされる組成を有することが確認された。得られた蛍光体は桃色の焼結体であり、ブラックライトで励起した結果、620nmピークの赤色発光が観察された。
【0200】
(比較例3)
出発原料として、17.066gSrCO3,8.198gのAlN,23.759gSi34および3.590gのEu23を用意した。これを、実施例1と同様に混合、乾燥および解砕を行なってカーボンるつぼに充填した後、3.5気圧のN2雰囲気中、プレス圧350MPaで1800℃2時間のホットプレス焼成を行なった。焼成後の試料は体色が灰黄緑色の焼結体であり、ブラックライトで励起した結果、微弱な黄緑色発光が観察された。
【0201】
(比較例4)
出発原料として、17.693gのSrCO3,6.148gのAlN,29.114gのSi34および3.722gEu23を用いた以外は比較例3と同様にして、本比較例の蛍光体を合成した。焼成後の試料は体色が灰黄緑色の焼結体であり、ブラックライトで励起した結果、微弱な黄緑色発光が観察された。
【0202】
(比較例5)
例1と同様に秤量・混合を行なった原料をカーボンるつぼに充填し、比較例3と同様に焼成して本比較例の蛍光体を合成した。焼成後の試料は体色が灰黄緑色の焼結体であり、ブラックライト励起で微弱な黄緑色発光が観察された。
【0203】
(比較例6)
(SrCO3)粉末94.27g、(BaCO3)粉末7.12g、(SiO2)粉末22.835g、および(Eu23)粉末4.460gを用意した。さらに、結晶成長剤として、1.8gのNH4Clを添加して、ボールミルで均一に混合した。
【0204】
得られた混合原料を焼成容器に仕込み、以下の焼成条件で焼成した。まず、N2/2の還元性雰囲気において、1000〜1600℃の温度で3〜7時間焼成して、本比較例の蛍光体Sr1.9Ba0.1SiO4:Eu蛍光体を調製した。得られた蛍光体は黄色の焼結体であり、ブラックライトで励起した結果、黄色発光が観察された。
【0205】
比較例3乃至5の蛍光体に関し、化学分析を行なった結果を、下記表8にまとめて示す。下記表6には、前記一般式(B)におけるa,b,cおよびdの値を示した。
【表8】

【0206】
比較例3乃至5の蛍光体は、サイアロン系化合物を母体とするものであるものの、一般式(1)、(2)、および(3)のいずれの条件も満たさない。したがって、実施形態にかかる蛍光体の組成の範囲外であることがわかる。なお、比較例1、2および6の蛍光体は、いずれもサイアロン系化合物を母体とするものではない。
【0207】
比較例3乃至5の蛍光体について、CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いてX線回折を行ない、その結果を図21に示す。図21には、例20および実施例2の蛍光体についてのX線回折の結果も併せて示した。図21に示されるように、組成が所定の範囲から外れているので、比較例3乃至5の蛍光体は、例20もしくは実施例2とは異なるXRDプロファイルを示す。このことから、比較例の蛍光体においては、実施例の蛍光体とは異なる構造が生成していることが推測される。比較例3乃至5の蛍光体の構造は、図21中に示すS phase(JCPDSカード#53−0636)のパターンと概ね一致した。
【0208】
比較例3乃至5の蛍光体を、390nmのピーク波長を有する発光ダイオードにより励起した。得られた発光スペクトルを図22に示す。図22には、例20の赤色粉体および実施例2の黄緑色粉体についての結果も併せて示した。図22において、各々390nmにピークを示すバンドは、励起光の反射によるものである。比較例の蛍光体は、いずれも発光強度が著しく低かった。
【0209】
以上の結果に示されるように、実施形態にかかる蛍光体組成範囲外の組成においては、実施形態にかかる蛍光体と構造が異なって、所望の発光特性が得られないことがわかる。
【0210】
例20および参考例39の赤色粉体を、室温から200℃までヒーターにより試料温度を上昇させながら励起して、発光スペクトル変化を測定した。励起には、458nmのピーク波長を有する発光ダイオードを用いた。各温度における発光スペクトルのピーク強度の温度依存性を図23に示す。
【0211】
比較のため、比較例1にかかるSr2Si58:Euおよび比較例2にかかるCaS:Euのピーク発光強度の温度依存性も、図23に併せて示した。図23のy軸は、各蛍光体の室温における発光強度を1として規格化した値である。
【0212】
例20および参考例39の蛍光体は、200℃の高温条件下でも、発光強度の低下が小さいことが図23のグラフに示されている。この結果から、実施形態にかかる蛍光体は、CaS:Euおよび同じ窒化物母体であるSr2Si58:Euに比べて、温度特性が良好なことがわかる。図23のグラフには、例20および参考例39の蛍光体についての結果を示したが、他の実施例にかかる蛍光体においても、同様に比較例を上回る良好な温度特性が得られた。
【0213】
比較例3乃至5の蛍光体も、前述と同様に試料温度を上昇させながら励起して、発光スペクトル変化を測定した。その結果、200℃の高温条件下では、いずれの蛍光体も発光強度が低下し、比較例1もしくは2と同様の傾向がみられた。
【0214】
また、実施例1の黄緑色粉体を、室温から200℃までヒーターにより試料温度を上昇させながら励起して、発光スペクトル変化を測定した。励起には、458nmのピーク波長を有する発光ダイオードを用いた。各温度における発光スペクトルのピーク強度の温度依存性を図24に示す。
【0215】
比較のため、比較例6にかかるSr1.9Ba0.1SiO4:Euのピーク発光強度の温度依存性も、図24に併せて示した。図24のy軸は、各蛍光体の室温における発光強度を1として規格化した値である。
【0216】
実施例1の蛍光体は、200℃の高温条件下でも、発光強度の低下が小さいことが図24のグラフに示されている。この結果から、実施形態にかかる蛍光体は、Sr1.9Ba0.1SiO:Euに比べて、温度特性が良好なことがわかる。
【0217】
また、実施例1の蛍光体を用いて、図2に示した発光装置を製造した。得られた発光装置を、室温から150℃の温度範囲で動作させ、効率の温度変化を測定したところ、この温度範囲で効率の低下が殆ど起こらなかった。このことから、実施形態にかかる発光装置は、良好な温度特性を有することが確認された。
【0218】
比較例3の蛍光体を用いて同様の発光装置を製造し、同様に試験したところ、この温度範囲で顕著な効率低下が見られた。比較例4,5の蛍光体を用いた場合も同様の結果であった。発光中心元素を含有するサイアロン系化合物であっても、所定の組成範囲でなければ、良好な温度特性が得られないことが確認された。
【0219】
本発明によれば、温度特性の良好な蛍光体が提供される。
【符号の説明】
【0220】
200…樹脂ステム; 201,202…リード; 203…樹脂部
204…反射面; 205…凹部; 206…発光チップ
207,208…ボンディングワイヤー; 209…蛍光層; 210…蛍光体
211…樹脂層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長250nm乃至500nmの光で励起した際に波長490nm乃至580nmの間に発光ピークを示し、下記組成式(A)で表わされる組成を有する蛍光体であって、CuKα特性X線(波長1.54056Å)を用いたX線回折において、11.81〜11.85°、15.34〜15.38°、20.40〜20.47°、23.74〜23.86°の回折角度(2θ)に同時に回折ピークを示すことを特徴とする蛍光体。
MAlSiON (A)
(上記組成式(A)中、MはSrであり、その少なくとも0.1モル%はEuで置換されている。)
【請求項2】
波長457nmの光で励起した際、0.64以上の吸収率を有することを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項3】
波長457nmの光で励起した際、0.45以上の量子効率を有することを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項4】
波長457nmの光で励起した際、0.36以上の発光効率を有することを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
【請求項5】
前記蛍光体の結晶構造が斜方晶であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−1731(P2012−1731A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176115(P2011−176115)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【分割の表示】特願2011−28594(P2011−28594)の分割
【原出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】