説明

蛍光X線分析装置、蛍光X線分析方法及びプログラム

【課題】試料10の位置ずれを高い信頼性で検出可能な蛍光X線分析装置を提供する。
【解決手段】試料10を載置するステージ22と、このステージ22を収納し、開閉可能なカバーが設けられた筐体を有し、試料10にX線を照射して、試料10からの蛍光X線を検出することにより測定を行う測定装置2と、カバーを開けた状態で試料10をステージ22上に載置した後であってカバーを閉める前後に、試料10の同一箇所の画像をそれぞれ撮像し第1及び第2の画像データをそれぞれ取得する撮像装置3と、第1及び第2の画像データを用いて試料10の位置ずれを検出する位置ずれ検出部13と、位置ずれを通知する通知部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光X線分析装置、蛍光X線分析方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体やストレージの分野における局所の材料分析や不良箇所の解析、生物分野における細胞表面の化学状態の分析に適用可能な分析装置の一つとして、蛍光X線分析装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。蛍光X線分析装置は、1次X線を試料に照射し、それによって試料から放出される固有の2次X線(蛍光X線)を検出し、試料の構成元素や内部構造等を分析する。
【0003】
蛍光X線分析装置において、筐体に設けられたカバーを開けた状態で試料を筐体内のステージ上に載置し、カバーを閉じた後に測定が行われる。ここで、カバーを閉じたときの振動がステージに加わること等により、ステージ上で試料の位置ずれが生じ、正確な測定を行うことができない可能性がある。正確な測定を行うためには、試料の位置ずれを検出することが重要である。
【0004】
従来の試料の位置ずれの検出手法としては、撮像装置を用いて試料の画像を撮像した画像データを見て使用者が視覚的に判断していた。しかしながら、使用者が視覚的に位置ずれの発生を判断する手法では、使用者による誤認や判断基準の個人差があるため位置ずれ検出の信頼性が低い。
【特許文献1】特開2003−149182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、試料の位置ずれを高い信頼性で検出可能な蛍光X線分析装置、蛍光X線分析方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の一態様によれば、(イ)試料にX線を照射して、試料からの蛍光X線を検出することにより測定を行う測定装置と、(ロ)第1の時刻及びこの第1の時刻とは異なる第2の時刻における、試料の同一箇所の画像をそれぞれ第1及び第2の画像データとして取得する撮像装置と、(ハ)第1及び第2の画像データを用いて、第1と第2の時刻間における試料の位置ずれを検出する位置ずれ検出部とを備える蛍光X線分析装置が提供される。
【0007】
本願発明の他の態様によれば、(イ)筐体に設けられたカバーを開けた状態で試料を筐体内のステージ上に載置するステップと、(ロ)試料を載置した後に、試料の同一箇所の画像を撮像し第1の画像データを取得するステップと、(ハ)第1の画像データを取得した後に、カバーを閉めるステップと、(ニ)試料にX線を照射して、試料からの蛍光X線を検出することにより測定を行うステップと、(ホ)カバーを閉めた後に、試料の同一箇所の画像を撮像し第2の画像データを取得するステップと、(ヘ)第1及び第2の画像データを用いて試料の位置ずれを検出するステップと、(ト)位置ずれを通知するステップとを含む蛍光X線分析方法が提供される。
【0008】
試料にX線を照射して、試料からの蛍光X線を検出することにより測定を行う蛍光X線分析方法に関する。即ち、他の態様に係る蛍光X線分析方法は、(イ)第1の時刻において、試料の位置座標特定部を含む画像を撮像し第1の画像データを取得するステップと、(ロ)第2の時刻において、位置座標特定部を含む画像を撮像し第2の画像データを取得するステップと、(ハ)第1及び第2の画像データを用いて、第1と第2の時刻間における試料の位置ずれを検出するステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
本願発明の更に他の態様は、試料にX線を照射して、試料からの蛍光X線を検出することにより測定を行う蛍光X線分析装置を制御するプログラムに関する。即ち、更に他の態様に係るプログラムは、(イ)第1の時刻において、試料の位置座標特定部を含む画像を撮像し第1の画像データを取得させる命令と、(ロ)第2の時刻において、位置座標特定部を含む画像を撮像し第2の画像データを取得させる命令と、(ハ)第1及び第2の画像データを用いて、第1と第2の時刻間における試料の位置ずれを検出させる命令とを蛍光X線分析装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、試料の位置ずれを高い信頼性で検出可能な蛍光X線分析装置、蛍光X線分析方法及びプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
本発明の実施の形態に係る蛍光X線分析装置は、図1に示すように、蛍光X線を検出して試料を構成する元素の種類や含有量を測定する測定装置2と、試料の同一箇所の画像を第1の時刻及び第1の時刻とは異なる第2の時刻で、それぞれ第1及び第2の画像データとして取得する撮像装置3と、第1及び第2の画像データを用いて第1及び第2の時刻間における試料の位置ずれを検出する位置ずれ検出部13と、位置ずれを通知する通知部14と、ステージを駆動することにより試料の位置ずれを補正する補正部15を備える。ステージには図示を省略したステージ駆動部が接続され、ステージの駆動はステージ駆動部を補正部が制御することにより行う。
【0013】
測定装置2は、図2に示すように、ステージ22と、ステージ22に載置された試料10に対しX線(1次X線)を照射するX線源23と、試料10からの蛍光X線(2次X線)を検出する検出器24と、ステージ22、X線源23及び検出器24を収納する筐体21とを備える。筐体21の一部、例えば、筐体の上部には、試料10を出し入れし、X線の漏洩を防ぐ開閉可能なカバー25が設けられている。カバー25は、使用者が手動で開閉しても、或いは測定制御部12により制御し自動的に開閉させても良い。ステージ22は、X、Y、Z方向に駆動可能である。ステージ22には、撮像装置3により試料10の画像を撮影し、試料10にX線を照射する等の目的で開口部22aが設けられている。開口部22aの代わりに、X線を透過し且つ透明なガラス板等の部材を配置しても良い。
【0014】
「第1の時刻」とは、例えば、筐体に設けられたカバーを開けた状態で試料10をステージ22上に載置した後であってカバーを閉める前の時刻、「第2の時刻」とは、試料10をステージ22上に載置した後、更にカバーを閉めた後の時刻として定義可能である。
【0015】
位置ずれ検出部13、通知部14及び補正部15は、撮像装置3による撮像を制御する信号を撮像装置3に出力する撮像制御部11、及び測定装置2による測定を制御する信号を測定装置2に出力する測定制御部12と共に、モジュールとして中央演算処理装置(CPU)1に含まれる。CPU1には、測定装置2及び撮像装置3の他、画像記憶装置4、閾値記憶装置5、入力装置6、表示装置7、主記憶装置8及びプログラム記憶装置9等が接続されている。
【0016】
X線源23としては、例えば電子線を発射する電子銃と、電子線を所定の1次X線に変えて発射するターゲットを含むX線管等が使用可能である。X線源23は、ステージ22の開口部22aを介して試料10に1次X線を照射する。検出器24は、1次X線で励起され試料10から放出された蛍光X線等の2次X線を検出する。検出された2次X線はCPU1において分析される。測定装置2における測定は大気中或いは真空中で行われる。真空中での測定を行うために筐体21内を真空引きする真空ポンプが筐体21に接続されていても良い。その他、シャッター等必要な部品が設けられているのは勿論である。
【0017】
測定装置2における測定では、筐体21に設けられたカバー25を開けた状態で試料10を筐体21内のステージ22上に載置し、カバー25を閉じた後に測定が行われる。ここで、カバー25を閉じたときの振動がステージ22に加わること等により、ステージ22上で試料10の位置ずれが生じる場合がある。また、測定中に筐体21を真空引きしたときの真空ポンプによる機械的振動で試料10の位置ずれが生じる場合もある。
【0018】
撮像装置3としては、CCD等が使用可能である。撮像装置3は、ステージ22に設けられた開口部22aを介して試料10の外形線の全体、外形線の一部、意図的に設けたマーカ部等の位置座標特定部を含む画像を撮像する。なお、撮像装置3を筐体21の外に配置し、筐体21に設けられたガラス窓を通して撮像するようにしても良い。
【0019】
本発明の実施の形態において、撮像装置3は、カバー25を開けた状態での第1の時刻において、試料10の位置座標特定部を含む画像を撮像し、図3に示すように第1の画像データD1を取得する。更に、撮像装置3は、カバー25を閉めた後の第2の時刻において、試料10の位置座標特定部を含む画像を撮像し、図4に示すように第2の画像データD2を取得する。
【0020】
画像記憶装置4は、撮像装置3により撮像した第1及び第2の画像データD1,D2等をA/D変換後、多値データ又は2値データとして記憶する。閾値記憶装置5は、試料10の第1と第2の時刻間における位置ずれを判断する基準となる閾値を予め記憶する。閾値は試料10サイズや測定目的、測定仕様等により適宜決定可能である。例えば、X線の照射部分を複数選択でき、複数の照射部分のそれぞれの照射径に対して5%のずれを閾値とする。5mmφのX線照射に対しては、250μmが閾値となる。
【0021】
位置ずれ検出部13は、画像記憶装置4から、図3及び図4に示した第1及び第2の画像データD1,D2を読み出し、図5に示すように第1及び第2の画像データD1,D2を重ね合わせた画像データD3を生成し、表示装置7に表示する。更に、位置ずれ検出部13は、カバー25を閉めたときの振動及び測定中の真空引きによる振動等により生じた試料10の位置座標特定部の変位量から位置ずれ量ΔDを算出する。位置ずれ量ΔDの算出の際には、撮像装置3からのデータをA/D変換して2値データにし、図示を省略した変位測定回路により、適当な変位測定アルゴリズムにより、パターンエッジ等の位置ずれ量ΔDを測定する。位置ずれ量ΔDから、例えばX線の複数の照射されるスポット位置の変位がそれぞれ求められる。
【0022】
更に、位置ずれ検出部13は、閾値記憶装置5から閾値を読み出して、位置ずれ量ΔDと閾値とを比較する。位置ずれ量ΔDが閾値の範囲内であれば、位置ずれが発生していない、或いは位置ずれが発生していてもその位置ずれ量ΔDが許容できると判断する。他方、位置ずれ量ΔDが閾値を越えている場合には、許容できない位置ずれが発生したと判断し位置ずれを検出する。
【0023】
図1に示した通知部14は、位置ずれ検出部13が位置ずれを検出した場合、位置ずれが発生した旨を表示装置7に表示させることにより使用者に通知する。補正部15は、位置ずれ検出部13により算出された位置ずれ量ΔDに応じて、ステージ22を駆動して、試料10の位置を補正する。
【0024】
入力装置6には、測定装置2による測定の指示、撮像装置3による撮像の指示等が入力される。入力装置6としては、例えばキーボード、マウス又はマイク等が使用可能である。
【0025】
表示装置7は、撮像装置3により撮像した第1及び第2の画像データD1,D2や、撮像した画像データを重ね合わせた画像データD3、位置ずれを検出した旨等を表示する。表示装置7としては、液晶ディスプレイ又はCRTディスプレイ等を用いることができる。
【0026】
主記憶装置8には、ROM及びRAMが組み込まれている。ROMは、CPU1において実行されるプログラムを格納しているプログラム記憶装置9等として機能する(プログラムの詳細は後述する。)。RAMは、CPU1におけるプログラム実行処理中に利用されるデータ等を一時的に格納したり、作業領域として利用される一時的なデータメモリ等として機能する。主記憶装置8としては、例えば半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクや磁気テープ等が採用可能である。
【0027】
次に、本発明の実施の形態に係る蛍光X線分析装置を用いた蛍光X線分析方法を、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0028】
(イ)ステップS10において、カバー25を開けた状態で試料10をステージ22上に載置する。
【0029】
(ロ)ステップS11において、撮像装置3が試料10の位置座標特定部を含む画像を撮像することにより、第1の時刻における第1の画像データD1を取得する。取得された第1の画像データD1はA/D変換後、多値階調データ又は2値データとして画像記憶装置4に格納される。
【0030】
(ハ)ステップS12において、筐体21に設けられたカバー25を閉める。
【0031】
(ニ)ステップS13において、測定装置2が、試料10に対してX線測定を行う。
【0032】
(ホ)ステップS14において、撮像装置3が、試料10の位置座標特定部を含む画像を撮像することにより、第2の時刻における第2の画像データD2を取得する。取得された第2の画像データD2はA/D変換後、多値階調データ又は2値データとして画像記憶装置4に格納される。
【0033】
(ヘ)ステップS15において、位置ずれ検出部13は、画像記憶装置4から第1及び第2の画像データD1,D2を読み出し、変位測定回路を用いて、第1と第2の時刻間における試料10の位置座標特定部のパターンエッジの位置ずれ量ΔDを算出する。ステップS16において、位置ずれ検出部13が、閾値記憶装置5から閾値を読み出して、図示を省略した比較回路により位置ずれ量ΔDと閾値とを比較する。位置ずれ量ΔDが閾値の範囲内であれば、位置ずれ量ΔDが許容できる範囲であると判断して、処理を完了する。他方、位置ずれ量ΔDが閾値を越えていれば、ステップS17に進む。
【0034】
(ト)ステップS17において、通知部14は、位置ずれが発生した旨を表示装置7に表示させることにより使用者に通知する。
【0035】
本発明の実施の形態に係る蛍光X線分析装置及び蛍光X線分析方法によれば、ステップS12においてカバー25を閉めた振動等によるセット時に生じた試料10の位置ずれ、ステップS13における真空引きの振動等による測定中に生じた位置ずれを含めて、第1と第2の時刻間において、試料10の位置ずれが生じているかを高い信頼性で自動的に検出することができる。
【0036】
なお、図7に示すように、通知部14の通知後にステップS10に戻り、試料10を載置し直して再度測定を行っても良い。
【0037】
また、図6に示した一連の手順、即ち:筐体21に設けられたカバー25を開けた状態で試料10を筐体21内のステージ22上に載置した後に、試料10の画像を撮像し、第1の画像データD1を取得させる命令;カバー25を閉めた後に、試料10の画像を撮像し、第2の画像データD2を取得させる命令;試料10にX線を照射して、試料10からの蛍光X線を検出することにより測定を行わせる命令;第1及び第2の画像データD1,D2を用いて試料10の位置ずれを検出させる命令;位置ずれを通知させる命令;等は、図6と等価なアルゴリズムのプログラムにより、図1に示した蛍光X線分析装置を制御して実行出来る。
【0038】
このプログラムは、本発明の蛍光X線分析装置を構成するコンピュータシステムのプログラム記憶装置9に記憶させればよい。また、このプログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に保存し、この記録媒体を蛍光X線分析装置のプログラム記憶装置9に読み込ませることにより、本発明の実施の形態の一連の手順を実行することができる。
【0039】
ここで、「コンピュータ読取り可能な記録媒体」とは、例えばコンピュータの外部メモリ装置、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、磁気テープなどのプログラムを記録することができるような媒体などを意味する。具体的には、フレキシブルディスク、CD−ROM,MOディスクなどが「コンピュータ読取り可能な記録媒体」に含まれる。例えば、蛍光X線分析装置の本体は、フレキシブルディスク装置(フレキシブルディスクドライブ)および光ディスク装置(光ディスクドライブ)を内蔵若しくは外部接続するように構成できる。
【0040】
フレキシブルディスクドライブに対してはフレキシブルディスクを、また光ディスクドライブに対してはCD−ROMをその挿入口から挿入し、所定の読み出し操作を行うことにより、これらの記録媒体に格納されたプログラムをプログラム記憶装置9にインストールすることができる。また、所定のドライブ装置を接続することにより、例えばROMや、磁気テープ装置を用いることもできる。さらに、インターネット等の情報処理ネットワークを介して、このプログラムをプログラム記憶装置9に格納することが可能である。
【0041】
(第1の変形例)
本発明の実施の形態の第1の変形例として、測定前に位置ずれを検出する蛍光X線分析方法を、図8のフローチャートを参照しながら説明する。
【0042】
(イ)ステップS20において、カバー25を開けた状態で試料10をステージ22上に載置する。
【0043】
(ロ)ステップS21において(第1の時刻において)、撮像装置3が、試料10の位置座標特定部を含む画像を撮像することにより第1の画像データD1を取得する。取得された第1の画像データD1は画像記憶装置4に格納される。
【0044】
(ハ)ステップS22において、筐体21に設けられたカバー25を閉める。
【0045】
(ニ)ステップS23において(第2の時刻において)、撮像装置3が、試料10の位置座標特定部を含む画像を撮像することにより第2の画像データD2を取得する。取得された第2の画像データD2は画像記憶装置4に格納される。
【0046】
(ホ)ステップS24において、位置ずれ検出部13が、第1及び第2の画像データD1,D2を用いて位置ずれ量ΔDを算出する。ステップS25において、位置ずれ検出部13が、位置ずれ量ΔDと閾値とを比較して、位置ずれが発生したか判断する。位置ずれ量ΔDが閾値の範囲内であれば、ステップS26において測定を行う。一方、位置ずれ量ΔDが閾値を越えた場合には位置ずれを検出し、ステップS27において位置ずれを通知した後、測定を中止する。
【0047】
本発明の実施の形態の第1の変形例によれば、ステップS26における測定をおこなう事前にセット時のずれをチェックできるので、測定前に位置ずれが発生しているにも関わらず測定することがなくなり、分析効率が向上する。
【0048】
なお、図9に示すように、ステップS27において通知した後にステップS21に戻っても良い。
【0049】
また、図10に示すように、ステップS27において通知した後に、ステップS28において補正部15がステージ22駆動部を制御してステージ22の位置を補正することも可能である。
【0050】
(第2の変形例)
本発明の実施の形態の第2の変形例として、測定前及び測定後に位置ずれを検出する蛍光X線分析方法を、図11のフローチャートを参照しながら説明する。
【0051】
(イ)ステップS30において、カバー25を開けた状態で試料10をステージ22上に載置する。
【0052】
(ロ)ステップS31において(第1の時刻において)、撮像装置3が、試料10の位置座標特定部を含む画像を撮像することにより第1の画像データD1を取得する。取得された第1の画像データD1は画像記憶装置4に格納される。
【0053】
(ハ)ステップS32において、筐体21に設けられたカバー25を閉める。
【0054】
(ニ)ステップS33において(第2の時刻において)、撮像装置3が、試料10の位置座標特定部を含む画像を撮像することにより第2の画像データD2を取得する。取得された第2の画像データD2は画像記憶装置4に格納される。
【0055】
(ニ)ステップS34において、位置ずれ検出部13が、第1及び第2の画像データD1,D2を用いて位置ずれ量ΔDを算出する。ステップS35において、位置ずれ検出部13が、位置ずれ量ΔDと閾値とを比較して、位置ずれが発生したか判断する。位置ずれ量ΔDが閾値の範囲内であれば、ステップS36に進み測定を行う。一方、位置ずれ量ΔDが閾値を越えた場合、位置ずれを検出し、ステップS40に進み位置ずれを通知して、測定を中止する。
【0056】
(ホ)ステップS37において、撮像装置3が、試料10の位置座標特定部を含む画像を撮像し第3の画像データを取得する。取得された第3の画像データは画像記憶装置4に格納される。
【0057】
(ヘ)ステップS38において、位置ずれ検出部13が、第1の画像データD1と第3の画像データを用いて位置ずれ量ΔDを算出する。ステップS39において、位置ずれ検出部13が、位置ずれ量ΔDと対応する閾値とを比較して、位置ずれが発生したか判断する。位置ずれ量ΔDが閾値の範囲内であれば、ステップS36に進み、測定を行う。一方、位置ずれ量ΔDが閾値を越えた場合、位置ずれを検出し、ステップS40に進み位置ずれを通知して、測定を中止する。
【0058】
本発明の実施の形態の第1の変形例によれば、ステップS36における測定前後にそれぞれ位置ずれを検出することで、より効率的に測定を行うことができる。
【0059】
なお、ステップS38においては、位置ずれ検出部13が、第1の画像データD1ではなく、第2の画像データD2と第3の画像データを用いて、位置ずれ量ΔDを算出することも可能である。
【0060】
(第3の変形例)
本発明の実施の形態の第2の変形例として、測定中に位置ずれを検出する蛍光X線分析方法を、図12のフローチャートを参照しながら説明する。
【0061】
(イ)ステップS50において、カバー25を開けた状態で試料10をステージ22上に載置する。
【0062】
(ロ)ステップS51において(第1の時刻において)、撮像装置3が、試料10の位置座標特定部を含む画像を撮像することにより第1の画像データD1を取得する。取得された第1の画像データD1は画像記憶装置4に格納される。
【0063】
(ハ)ステップS52において、筐体21に設けられたカバー25を閉める。
【0064】
(ニ)ステップS53において、測定を開始する。測定中に、ステップS54において(第2の時刻において)、撮像装置3が試料10の位置座標特定部を含む画像を撮像し第2の画像データD2を取得する。取得された第2の画像データD2は画像記憶装置4に格納される。
【0065】
(ホ)ステップS55において、位置ずれ検出部13が、第1及び第2の画像データD1,D2を用いて位置ずれ量ΔDを算出する。ステップS55において、位置ずれ検出部13が、位置ずれ量ΔDと閾値とを比較して、位置ずれが発生したか判断する。位置ずれ量ΔDが閾値の範囲内であればステップS58に進む。一方、位置ずれ量ΔDが閾値を越えた場合には位置ずれを検出し、ステップS57に進み位置ずれを通知して、測定を中止する。
【0066】
(ヘ)ステップS58において、測定制御部12が、測定が終了したか判断する。測定中と判断した場合はステップS54に戻り測定を続行する。他方、測定が終了したと判断した場合は処理を完了する。
【0067】
本発明の実施の形態の第1の変形例によれば、測定中にリアルタイムで試料10の位置ずれを検出可能となる。
【0068】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、蛍光X線分析法の方式には、分光結晶を用いた波長分散型と半導体検出器を用いたエネルギー分散型があるが、本発明はいずれの方式にも適用可能である。
【0069】
更に、実施の形態では、蛍光X線分析装置について例示したが、試料10をステージ22に載置して測定を行う種々の測定装置(分析装置)に適用できることは、上記説明から容易に理解できるであろう。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態に係る蛍光X線分析装置の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る蛍光X線分析装置の測定装置の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る撮像装置により撮像した第1の画像データを示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る撮像装置により撮像した第2の画像データを示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る第1及び第2の画像データを重ね合わせた画像データを示す概略図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る蛍光X線分析方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る蛍光X線分析方法の他の一例を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態の第1の変形例に係る蛍光X線分析方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態に第1の変形例に係る蛍光X線分析方法の他の一例を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態の第1の変形例に係る蛍光X線分析方法の更に他の一例を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態の第2の変形例に係る蛍光X線分析方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態の第3の変形例に係る蛍光X線分析方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0071】
1…中央演算処理装置(CPU)
2…測定装置
3…撮像装置
4…画像記憶装置
5…閾値記憶装置
6…入力装置
7…表示装置
8…主記憶装置
9…プログラム記憶装置
10…試料
11…撮像制御部
12…測定制御部
13…位置ずれ検出部
14…通知部
15…補正部
21…筐体
22…ステージ
22a…開口部
23…X線源
24…検出器
25…カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料にX線を照射して、前記試料からの蛍光X線を検出することにより測定を行う測定装置と、
第1の時刻及び該第1の時刻とは異なる第2の時刻における、前記試料の同一箇所の画像をそれぞれ第1及び第2の画像データとして取得する撮像装置と、
前記第1及び第2の画像データを用いて、第1と第2の時刻間における前記試料の位置ずれを検出する位置ずれ検出部
とを備えることを特徴とする蛍光X線分析装置。
【請求項2】
前記第1の時刻が、前記試料を前記測定装置の筐体内のステージ上に載置した後であって、前記筐体のカバーを閉める前の時刻であり、
前記第2の時刻が、前記カバーを閉めた後であって、前記測定前、測定中、測定後のいずれかの時刻であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項3】
前記位置ずれ検出部が、
前記第1及び第2の画像データを用いて前記試料の位置ずれ量を算出し、
前記位置ずれ量と対応する閾値とを比較し、前記位置ずれ量が前記閾値を超えている場合に前記位置ずれが発生したと判断する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項4】
前記位置ずれ量に応じて、前記ステージの位置を補正する補正部を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の蛍光X線分析装置。
【請求項5】
試料にX線を照射して、前記試料からの蛍光X線を検出することにより測定を行う蛍光X線分析方法において、
第1の時刻において、前記試料の位置座標特定部を含む画像を撮像し第1の画像データを取得するステップと、
前記第1の時刻とは異なる第2の時刻において、前記位置座標特定部を含む画像を撮像し第2の画像データを取得するステップと、
前記第1及び第2の画像データを用いて、前記第1と第2の時刻間における前記試料の位置ずれを検出するステップ
とを含むことを特徴とする蛍光X線分析方法。
【請求項6】
前記第1の時刻が、前記試料を前記測定装置の筐体内のステージ上に載置した後であって、前記筐体のカバーを閉める前の時刻であり、
前記第2の時刻が、前記カバーを閉めた後の、前記測定前、測定中、測定後のいずれかの時刻であることを特徴とする請求項5に記載の蛍光X線分析方法。
【請求項7】
前記位置ずれを検出するステップは、
前記第1及び第2の画像データを用いて前記試料の位置ずれ量を算出し、
前記位置ずれ量と対応する閾値とを比較し、前記位置ずれ量が前記閾値を超えている場合に前記位置ずれが発生したと判断する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の蛍光X線分析方法。
【請求項8】
前記位置ずれ量に応じて、前記ステージの位置を補正するステップを更に含むことを特徴とする請求項7に記載の蛍光X線分析方法。
【請求項9】
試料にX線を照射して、前記試料からの蛍光X線を検出することにより測定を行う蛍光X線分析装置を制御するプログラムであって、
第1の時刻において、前記試料の位置座標特定部を含む画像を撮像させ、第1の画像データを取得させる命令と、
前記第1の時刻とは異なる第2の時刻において、前記位置座標特定部を含む画像を撮像させ、第2の画像データを取得させる命令と、
前記第1及び第2の画像データを用いて、前記第1と第2の時刻間における前記試料の位置ずれを検出させる命令
とを蛍光X線分析装置に実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−286554(P2008−286554A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129722(P2007−129722)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】