説明

血中CoQ10量を増加させる医薬組成物

【課題】血中CoQ10量を増加させる医薬組成物を提供すること。
【解決手段】トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上を含有する、血中CoQ10量を増加させるための医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10からなる群より選ばれる3種以上を含有する医薬組成物(特に、CoQ10量を増加させる医薬組成物)に関する。
【背景技術】
【0002】
CoQ10は、ミトコンドリアでのATP産生、すなわちエネルギー産生に不可欠な物質であるとともに、ミトコンドリア以外の細胞内や血液中にも存在し、抗酸化物質としても機能している。CoQ10は生体として重要かつ不可欠な成分であるため、生体はみずから合成しているが、20代でピークを示し、加齢とともにCoQ10のレベルは低下してくる。(以上、非特許文献1参照)
加齢以外にCoQ10欠乏傾向を示すという報告がある疾患として、糖尿病、腎不全、肝硬変や肝癌等の肝疾患、甲状腺機能亢進症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ミトコンドリア異常などが知られている。このような疾患以外にも、スタチン剤投与を受けている患者、低血圧症の人、激しい運動をする人などで血中CoQ10濃度が低下することが知られている。(以上、非特許文献2)
上記のような場合においてCoQ10を投与することの意義が示唆されてきており、これら以外でも、脂肪の燃焼を活発にさせることによる体脂肪減量目的、鬱血性心不全症状の改善、動悸・息切れ・むくみ・冷え症の改善、免疫システムを刺激した抗癌補助目的、歯周病治療の補助目的、男性不妊症の治療、スキンケアなどへの利用が実施又は提案されている。(以上、非特許文献3)
本邦では、基礎治療施行中の軽度及び中度の鬱血性心不全症状にCoQ10の1日30mg投与が認められている(非特許文献4)。
一方で、鬱血性心不全症例における1日50〜300mg投与の推奨や癌の治療を目的とした免疫システムの刺激に1日390mgの投与が有効との報告がある(非特許文献3)。さらに、パーキンソン病の治療において1日1200mg投与群で44%の病態の進行抑制がみられ統計的に有意な効果が得られた(非特許文献5)。このような高用量の投与で有効な症例報告は今後さらに増加するものと予想される。
【0003】
これまでに、トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10からなる群より選ばれる3種以上を含有する医薬組成物又はそのような医薬組成物の可能性を示唆したものとして以下の報告がある。
1)CoQ10、カテキン、L−カルニチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、DHA、EPA、ビタミンE、ビタミンB1及びビタミンB2の10種類を配合したサプリメントが市販されている(非特許文献6参照)。
2)軽度な心疾患により、日常生活の身体活動を少し超えたときに起こる、動悸、息切れ及びむくみの緩和を効能にもつ、CoQ10、トコフェロール、ニコチン酸アミド及びリボフラビンの合剤が市販されている(非特許文献7参照)。
3)CoQ10に、ビタミンEを始めとしたビタミン群、アミノ酸類、DHA、EPA又はポリフェノール等の他の素材、を配合したCoQ10含有商品の開発が示唆されている(非特許文献8参照)。
4)有効成分として、ビタミンB2、ビタミンC及びビタミンEを含有する血中脂質改善剤が知られている(特許文献1参照)。
5)ユージノール、フラボノイド、植物性エストロゲン、プロアントロシアニジン、セレン、ユビキノン(CoQ10)、カトチノイド又は植物性フェノール化合物の内の1つ以上と伴に1つ以上の抗酸化ビタミンを有してなる、呼吸器疾患の予防又は治療を補助するための栄養補助食品が知られている(特許文献2参照)
しかし、これまでに、トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10からなる群より選ばれる3種以上を含有する医薬組成物が、血中CoQ10量を顕著に増加させたという報告は存在せず、又、そのような示唆もされてもいない。
【特許文献1】特開昭60−41611号公報
【特許文献2】特表2004−530407号公報
【非特許文献1】「アニムス(Animus)」、第36巻、2004年、p.37−40
【非特許文献2】“CoQ10”、「online」、三菱化学ビーシーエル、[平成18年1月11日検索]、インターネット 〈http://www.mbcl.co.jp/topics/topic02.html〉
【非特許文献3】“コエンザイムQ10”、「online」、丸美屋和漢薬研究所、[平成18年1月6日検索]、インターネット 〈URL :http://www.naoru.com/CoQ10.htm〉
【非特許文献4】「医療薬 日本医薬品集」、第28版、じほう、2005年、p.2378
【非特許文献5】“特集1 女性に優しい医療”、「online」、予防医療普及推進委員会、[平成18年1月11日検索]、インターネット 〈http://yobou.com/contents/tokushu/report/t35_03.html〉
【非特許文献6】「健康産業流通新聞」、2004年12月9日号
【非特許文献7】「大衆薬辞典」、第9版、じほう、2004−2005年、p.118
【非特許文献8】「ニューフードインダストリー(New Food Industry)」、第45巻、第7号、2003年、p.23−28
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、CoQ10は生体にとって必要不可欠な物質であり、とりわけ上述のような疾患等におけるCoQ10の補充は有意義なものである。しかし、CoQ10は他のビタミン類等に較べて大量に入手することが困難であり、価格も高価であることから、特に、長期にわたり服用する場合や、高用量投与が必要であるような場合には、患者の金銭的負担は非常に重くなり、十分な治療を行うことができないこと、ひいては服用を断念せざるを得ない事態を招いてしまうという課題があった。
そこで、本発明者は、
1)より少ないCoQ10の投与で、高用量のCoQ10の投与に匹敵するような血中CoQ10量を実現することができる安全な併用物質の探索及び
2)CoQ10以外の血中CoQ10量を増加させる作用のある物質の探索
を目的として鋭意研究を重ねてきた。
その結果、CoQ10に、トコフェロール類、アスコルビン酸類及びリボフラビン類からなる群より選ばれる2種以上を併用することにより、CoQ10単剤では予測できないほどの顕著な血中CoQ10量の増加作用が発現することを見出した。
さらに、トコフェロール類、アスコルビン酸類及びリボフラビン類を併用した場合において、優れた血中CoQ10量の増加作用が発現することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(1)トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上を含有する、血中CoQ10量を増加させるための医薬組成物であり、好適には、
(2)トコフェロール類、アスコルビン酸類及びリボフラビン類を含有する、血中CoQ10量を増加させるための医薬組成物、
(3)トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10を含有する、血中CoQ10量を増加させるための医薬組成物、
(4)トコフェロール類がコハク酸d−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、酢酸d−α−トコフェロール及び酢酸dl−α−トコフェロールからなる群より選ばれる1種又は2種以上である、(1)乃至(3)のいずれか1項に記載された医薬組成物、
(5)トコフェロール類が酢酸d−α−トコフェロールである、(1)乃至(3)のいずれか1項に記載された医薬組成物、
(6)アスコルビン酸類がアスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム及びアスコルビン酸ナトリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上である、(1)乃至(5)のいずれか1項に記載された医薬組成物、
(7)アスコルビン酸類がアスコルビン酸である、(1)乃至(5)のいずれか1項に記載された医薬組成物、
(8)リボフラビン類がリボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド及びフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上である、(1)乃至(7)のいずれか1項に記載された医薬組成物及び
(9)リボフラビン類が酪酸リボフラビンである、(1)乃至(7)のいずれか1項に記載された医薬組成物である。
また、本発明は、
(10)CoQ10の欠乏を治療又は予防するための、トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上を含有する医薬組成物、
(11)CoQ10の欠乏の治療又は予防における、CoQ10の使用量を低減させるための、トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上を含有する医薬組成物、
(12)CoQ10を大量に投与する必要のある疾患等を治療又は予防するための、トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上を含有する医薬組成物、
(13)CoQ10を大量に投与する必要のある疾患等の治療又は予防における、CoQ10の使用量を低減するための、トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上を含有する医薬組成物、
(14)トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上が同一の医薬組成物中に含有する配合剤である(1)に記載の医薬組成物及び
(15)トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上がキットである(1)に記載の医薬組成物である。
【0006】
更に、本発明は、
(16)トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上を同時に、順次又は別個に投与する方法、
(17)哺乳動物に(1)乃至(9)のいずれか1項に記載された医薬組成物の有効量を投与する、CoQ10の欠乏の治療方法又は予防方法及び
(18)哺乳動物に(1)乃至(9)のいずれか1項に記載された医薬組成物の有効量を投与する、血中CoQ10量を増加させる方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の医薬組成物は、低コストで顕著な血中CoQ10量の増加作用を実現するため、体内のCoQ10欠乏傾向を示すような疾病等、例えば、糖尿病、腎不全、肝硬変や肝癌等の肝疾患、甲状腺機能亢進症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ミトコンドリア異常、スタチン剤服用者、低血圧者、激しい運動をする人、重労働者等に有用である。
【0008】
さらに、体脂肪減量目的、鬱血性心不全症状の改善、動悸・息切れ・むくみ・冷え症の改善、免疫システムを刺激した抗癌補助目的、歯周病治療の補助、男性不妊症の治療、スキンケア目的などにも有用である。さらにまた、高用量の投与を必要とするような症例、例えば、鬱血性心不全、免疫システムの刺激、パーキンソン病等にも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(定義)
本発明における、「CoQ10」とは、ユビデカレノン、補酵素(コエンザイム)Q10、ユビキノン、ビタミンQ、コエンザイムQ(50)、ユビキノン50等と呼ばれる脂溶性ビタミン様物質であり、体内でも合成される。ミトコンドリア内でのATP産生に関わる回路における補酵素としての機能が知られている。コエンザイムQ10の「10」という数字は、構造中のイソプレンという化学構造の繰り返し単位の数を表している。また、ユビキノンの「ユビ」とは、ラテン語由来の「where」であり、従って「ユビキノン」とは、どこにでも存在するキノンとなる。実際、その名の通り、ユビキノンは体内のあらゆる組織に分布している。
【0010】
本発明における、「トコフェロール類」とは、d−α−トコフェロール、dl−α−トコフェロール及びその薬理上許容される塩からなる群より選ばれる1種であり、好適には、コハク酸d−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、酢酸d−α−トコフェロール又は酢酸dl−α−トコフェロールであり、更に好適には、酢酸d−α−トコフェロールである。
【0011】
本発明における、「アスコルビン酸類」とは、アスコルビン酸及びその薬理上許容される塩からなる群より選ばれる1種であり、好適には、アスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸ナトリウムであり、更に好適には、アスコルビン酸である。
【0012】
本発明における、「リボフラビン類」とは、リボフラビン及びその薬理上許容される塩からなる群より選ばれる1種であり、好適には、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド又はフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウムであり、更に好適には、酪酸リボフラビンである。
【0013】
本発明における、「薬理上許容される塩」とは、本発明の有効成分が、酸性基または塩基性基を有する場合に、塩基又は酸と反応させることにより、塩基性塩又は酸性塩にすることができるので、その塩を示す。
【0014】
「塩基性塩」としては、好適には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;N−メチルモルホリン塩、トリエチルアミン塩、トリブチルアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチルピペリジン塩、ピリジン塩、4−ピロリジノピリジン塩、ピコリン塩のような有機塩基塩類又はグリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩である。
【0015】
「酸性塩」としては、好適には、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリ−ルスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマ−ル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及び、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩である。
【0016】
本発明の有効成分は、大気中に放置したり又は再結晶をすることにより、水分を吸収し、吸着水が付いたり、水和物となったりする場合があるが、そのような水和物も本発明に使用される。
【0017】
本発明における、「治療する」とは、病気又は症状を治癒させること又は改善させること或いは症状を抑制させることを意味する。
【0018】
本発明における、「CoQ10量を増加させる」とは、血中CoQ10量を臨床上意義のある程度までに増加させることを意味する。
【0019】
本発明における、「CoQ10の欠乏を治療又は予防する」とは、疾患等に起因する血中補酵素Q10量の減少を抑制すること、又は血中CoQ10量を正常な値まで上昇させることを意味する。
【0020】
本発明における、「CoQ10を大量に投与する必要のある疾患等」とは、CoQ10を現在の常用量(1日30mg)以上に投与した場合、さらに良好な結果が期待できるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、糖尿病、腎不全、肝硬変や肝癌等の肝疾患、甲状腺機能亢進症、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、ミトコンドリア異常、鬱血性心不全、動悸、息切れ、むくみ、冷え症、肥満、癌、歯周病、男性不妊症等の疾患以外にも、スタチン剤服用者、低血圧者、激しい運動をする人、重労働者及び紫外線暴露者、等を挙げることができる。
【0021】
本発明の有効成分は、同時に、順次又は別個に投与することができるが、一般に、臨床上は同時に投与するのが便利であり、それゆえ、配合剤として投与することが好ましい。また、製剤技術上、当該両化合物を物理的に混合することが好ましくない場合は、それぞれの単剤を同時に、順次又は別個に投与することもできる。
【0022】
本発明における、「同時に」投与するとは、全く同時に投与することの他、薬理学上許される程度に相前後した時間に投与することも含むものである。その投与形態は、ほぼ同じ時間に投与できる投与形態であれば特に限定はないが、単一の組成物であることが好ましい。
【0023】
本発明における、「順次又は別個に」投与するとは、異なった時間に別々に投与できる投与形態であれば特に限定はないが、例えば、1の成分を投与し、次いで、決められた時間後に、他の成分を投与する方法がある。
【0024】
(有効成分の入手方法及び含有量等)
dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、アスコルビン酸、リボフラビン、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム及びユビデカレノン(CoQ10)は第14改正日本薬局方に収載されている。
上記以外の成分についても、広く市販されており容易に入手できる。
【0025】
本発明の医薬組成物が固形製剤の場合において、1日量(6錠)中に含有する各有効成分の量は以下の通りである。
トコフェロール類の含有量は、0.5mg乃至2000mgであり、好適には、5mg乃至600mgである。
アスコルビン酸類の含有量は、1mg乃至6000mgであり、好適には、20mg乃至3000mgである。
リボフラビン類の含有量は、0.1mg乃至200mgであり、好適には、1mg乃至60mgである。
CoQ10の含有量は、0.1mg乃至200mgであり、好適には、1mg乃至70mgである。
【0026】
本発明の医薬組成物が液剤の場合において、各有効成分の含有量は以下の通りである。
トコフェロール類の含有量は、0.05mg/mL乃至200mg/mLであり、好適には、0.5mg/mL乃至60mg/mLである。
アスコルビン酸類の含有量は、0.1mg/mL乃至600mg/mLであり、好適には、2mg/mL乃至300mg/mLである。
リボフラビン類の含有量は、0.01mg/mL乃至20mg/mLであり、好適には、0.1mg/mL乃至10mg/mLである。
CoQ10の含有量は、0.01mg/mL乃至20mg/mLであり、好適には、0.1mg/mL乃至7mg/mLである。
本発明の医薬組成物において、各有効成分の投与量は、その有効成分の種類、剤形等により異なるが、通常以下の通りである。
トコフェロール類の投与量は、0.01mg/kg/day乃至40mg/kg/dayであり、好適には、0.1mg/kg/day乃至12mg/kg/dayである。
アスコルビン酸類の投与量は、0.02mg/kg/day乃至120mg/kg/dayであり、好適には、0.4mg/kg/day乃至60mg/kg/dayである。
リボフラビン類の投与量は、0.002mg/kg/day乃至4mg/kg/dayであり、好適には、0.02mg/kg/day乃至1.2mg/kg/dayである。
CoQ10の投与量は、0.002mg/kg/day乃至4mg/kg/dayであり、好適には、0.02mg/kg/day乃至1.4mg/kg/dayである。
【0027】
本発明の医薬組成物は、所望により、製剤化のための添加物を含有していてもよく、更に、併用作用に悪影響を与えない範囲で他の成分を含有していてもよい。
【0028】
本発明の医薬組成物の具体的な剤形としては、例えば、錠剤、細粒剤(散剤を含む)、カプセル、液剤(シロップ剤を含む)等をあげることができ、各剤形に適した添加剤や基材を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。
【0029】
上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される各種添加剤を使用することもできる。
【0030】
例えば、錠剤の場合、乳糖、結晶セルロース等を賦形剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は酸化マグネシウム等を安定化剤として、ヒドロキシプロピルセルロース等をコーテイング剤として、ステアリン酸マグネシウム等を滑沢剤として使用することができ、
細粒剤及びカプセル剤の場合、乳糖又は精製白糖等を賦形剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又は酸化マグネシウム等を安定化剤として、トウモロコシデンプン等を吸着剤として、ヒドロキシプロピルセルロース等を結合剤として、使用することができる。
【0031】
上記各剤形において、必要に応じ、クロスポビドン等の崩壊剤;ポリソルベート等の界面活性剤;ケイ酸カルシウム等の吸着剤;三二酸化鉄、カラメル等の着色剤;安息香酸ナトリウム等の安定剤;pH調節剤;香料;等を添加することもできる。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例等を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)咀嚼錠
(1)1日投与量中の構成成分
(表1) 6錠中重量(mg)
構成成分 (1a) (1b) (1c)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
コハク酸d−α−トコフェロール 300 300 250
アスコルビン酸 1000 1000 800
酪酸リボフラビン 12 12 −
CoQ10 − 10 30
蔗糖脂肪酸エステル 180 180 180
ケイ酸カルシウム 300 300 300
メチルセルロース 75 75 75
ヒドロキシプロピルセルロース 270 250 300
エチルセルロース 12 12 12
結晶セルロース 25 25 25
白糖 2000 2000 2000
乳糖 1226 1216 1428
――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
【0034】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製する
(実施例2)細粒剤
(1)1日投与量中の構成成分
(表2) 3包中重量(mg)
構成成分 (2a) (2b) (2c)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
酢酸d−α−トコフェロール 300 300 250
アスコルビン酸 1000 1000 800
酪酸リボフラビン 12 12 −
CoQ10 − 10 30
トウモロコシデンプン 600 600 850
結晶セルロース 24 25 30
精製白糖 3000 2500 2500
ポリソルベート80 8 10 15
ヒドロキシプロピルセルロース 17 17 30
デキストリン 89 89 89
香料(オレンジ油) 6 6 6
乳糖 944 1431 1400
――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
【0035】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製する。
【0036】
(実施例3)カプセル剤
(1)1日投与量中の構成成分
(表3) 6カプセル中重量(mg)
構成成分 (3a) (3b) (3c)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
酢酸d−α−トコフェロール 300 300 250
アスコルビン酸 1000 1000 800
酪酸リボフラビン 12 12 −
CoQ10 − 10 30
酸化マグネシウム 150 150 130
トウモロコシデンプン 200 200 350
ポリソルベート80 60 60 60
ステアリン酸マグネシウム 15 15 15
乳糖 263 253 365
――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
【0037】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製した後、カプセルに充填して硬カプセル剤を製する。
【0038】
(実施例4)液剤
(1)1日投与量中の構成成分
(表4) 60mL中重量(mg)
構成成分 (4a) (4b) (4c)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
酢酸d−α−トコフェロール 50 50 35
アスコルビン酸 100 100 −
酪酸リボフラビン 10 10 10
CoQ10 − 10 30
安息香酸ナトリウム 180 180 180
クエン酸 20 20 60
白糖 1500 1500 1500
濃グリセリン 90 130 210
ポリビニルアルコール 80 100 130
エタノール(95%) 50 160 220
精製水 残部 残部 残部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
【0039】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「シロップ剤」の項に準じて液剤を製した後、褐色ガラス瓶に充填して液剤を製する。
【0040】
(試験例)
(1)被験物質
酢酸d−α−トコフェロールは理研ビタミン(株)製造のものを、アスコルビン酸は日本ロッシュ(株)製造のものを、酪酸リボフラビンは三菱ウエルファーマ(株)製造のものを、ユビデカレノン(CoQ10)は日清ファルマ(株)製造のものを使用した。
【0041】
(2)動物
試験動物としては、Covance Research Products Inc.からビーグル犬雄を5箇月齢で購入し、約1箇月間の検疫および馴化飼育後に使用した。
【0042】
(3)投与剤形、製剤の調整方法および製剤の保存方法
試験動物毎の体重をもとに算出した必要量の被験物質を、TORPAC社のゼラチンカプセル(1/2オンス)に充填した。充填後、カプセルは動物毎に区分されたケースに入れ、投与時まで冷蔵保存した。
【0043】
(4)投与経路および投与期間
被験物質を充填したカプセルは、1日1回9:00〜12:30の間に、試験動物に強制経口投与した。なお、試験動物は投与前2乃至3時間絶食させた。
【0044】
投与期間は11日間とした。
【0045】
(5)被験試料の調製
カプセル投与前14および7日(投与開始前第2週および第1週)、投与後4日、8日、12日に、橈側皮静脈から約10mL採血した。なお、採血前約18時間、試験動物は絶食させた。
【0046】
得られた血液を試験管にとり、室温で30分から1時間放置後、遠心分離(約1600×g、10分間)して得られた血清を用いた。
【0047】
(6)試験方法
血清総CoQ10量はHPLC−ECD法を用いて求めた。
【0048】
(7)試験結果
投与における血中総CoQ10量を、投与2週間前および1週間前の血中総CoQ10量の平均を100として換算して求めた。
【0049】
得られた結果を表5に示す。なお、各値とも1群5匹の平均値である。
【0050】
(表5)
被験物質 血清総CoQ10の変動率(%)
(mg/Kg) 投与後4日 投与後8日 投与後12日
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例2a(500) 106.6 115.8 117.7*
CoQ10(10) 145.0* 173.6* 138.5
実施例2a(500) 170.6* 194.0# 189.9#
+CoQ10(10)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――。
*:p<0.05 #:p<0.01
ここで、実施例2aは、実施例2−2aの細粒剤(表2)を指し、実施例2a(500mg/Kg)の有効成分の分量は、酢酸d−α−トコフェロール(25mg/Kg)+アスコルビン酸(83mg/Kg)+酪酸リボフラビン(1mg/Kg)に相当する。
また、pはpaired−t−testによる投与前値との有意差検定結果を示す。
【0051】
表5より、トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類を含有する医薬組成物に優れた血中総CoQ10量の増加作用が発現することが判る。
さらに、トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10を含有する医薬組成物は、CoQ10単剤から予測できないよりいっそう優れた血中総CoQ10量の増加作用が発現することが判る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上を含有する、血中CoQ10量を増加させるための医薬組成物。
【請求項2】
トコフェロール類、アスコルビン酸類及びリボフラビン類を含有する、血中CoQ10量を増加させるための医薬組成物。
【請求項3】
トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10を含有する、血中CoQ10量を増加させるための医薬組成物。
【請求項4】
トコフェロール類がコハク酸d−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、酢酸d−α−トコフェロール及び酢酸dl−α−トコフェロールからなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された医薬組成物。
【請求項5】
トコフェロール類が酢酸d−α−トコフェロールである、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された医薬組成物。
【請求項6】
アスコルビン酸類がアスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム及びアスコルビン酸ナトリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された医薬組成物。
【請求項7】
アスコルビン酸類がアスコルビン酸である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された医薬組成物。
【請求項8】
リボフラビン類がリボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド及びフラビンアデニンジヌクレオチドナトリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載された医薬組成物。
【請求項9】
リボフラビン類が酪酸リボフラビンである、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載された医薬組成物。
【請求項10】
CoQ10の欠乏を治療又は予防するための、トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上を含有する医薬組成物。
【請求項11】
CoQ10の欠乏の治療又は予防における、CoQ10の使用量を低減させるための、トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上を含有する医薬組成物。
【請求項12】
CoQ10を大量に投与する必要のある疾患等を治療又は予防するための、トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上を含有する医薬組成物。
【請求項13】
CoQ10を大量に投与する必要のある疾患等の治療又は予防における、CoQ10の使用量を低減するための、トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上を含有する医薬組成物。
【請求項14】
トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上が同一の医薬組成物中に含有する配合剤である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上がキットである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
トコフェロール類、アスコルビン酸類、リボフラビン類及びCoQ10から選ばれる3種以上を同時に、順次又は別個に投与する方法。
【請求項17】
哺乳動物に請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載された医薬組成物の有効量を投与する、CoQ10の欠乏の治療方法又は予防方法。
【請求項18】
哺乳動物に請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載された医薬組成物の有効量を投与する、血中CoQ10量を増加させる方法。

【公開番号】特開2006−232815(P2006−232815A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14687(P2006−14687)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】