説明

血栓症を低減するためにホスホリルコリンアクリレートポリマーの上塗層を備え、機械特性が改善された埋め込み型医療デバイス

本発明は、ホスホリルコリンアクリレートポリマー上塗層でコーティングされた埋め込み型医療デバイス、治療薬を含むアクリレートコポリマー層、及び脈管疾患の治療におけるそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、有機化学、高分子科学、材料科学、及び医療デバイスの分野に関する。詳細には、本発明は、脈管疾患を治療するためのホスホリルコリンアクリレートポリマー上塗層を備えた医療デバイスに関する。
【0002】
[発明の背景]
経皮的経管冠動脈形成術(PTCA)は、心疾患を治療するための一般的な手術である。PTCAに関連した問題には、バルーンが収縮した後に脈管を潰して閉塞させることがある内膜フラップや断裂動脈内層の発生がある。さらに、手術から数カ月経過すると、動脈の血栓症及び再狭窄が起きて、別の脈管形成術や外科バイパス手術が必要になることもある。動脈内層が潰れることによる動脈の部分的又は完全な閉塞を軽減させて、血栓症及び再狭窄が発生する可能性を低減させるために、ステントを内腔に埋め込んで脈管の開存性を維持する。
【0003】
ステントは、単に機械的介入として使用されるだけではなく、生物学的治療を行うための担体としても使用される。機械的介入として、ステントは、足場として機能し、開存を物理的に維持し、必要に応じて通路の壁部を拡張する。生物学的治療は、ステントに薬剤を含めることによって行うことができる。薬剤が含められたステントは、所望の部位に治療薬を局所投与することができる。局所投与法は、副作用が少なく、より良好な結果が得られる。
【0004】
しかし、薬物溶出ステント(DES)を使用すると、新しい問題である遅発性ステント血栓症、すなわちステントを所定の位置に埋め込んでから長期間経過した後に血栓の生成が起きる。血栓の生成は、細胞増殖抑制剤の使用による副作用とみなされる遅延治癒による可能性が最も高いと推測された。
【0005】
この状況に対処するために、ステントを、生体適合性、生体分解性、且つ所望に応じて生体吸収性である材料から形成することができる。この目的は、ステントが、ステント血栓症に対して優れた安全性を示す生体適合性コーティングを備えることである。理想的には、ステントコーティングは、好ましくは、急性及び亜急性血栓症の発症率の低いコーティングにすべきである。選択するコーティング材料は、十分な機械特性を有するだけではなく、優れたコーティング完全性を示さなければならない。上記問題は、向上した生体適合性材料及び/又は生体適合性コーティングを使用することによって少なくとも部分的に緩和された。
【0006】
ステント血栓症を低減するポリマーコーティングを備えた埋め込み型医療デバイスが必要である。これは、冠動脈ステントにおいて特に有用であるが、あらゆる様式の埋め込み型医療デバイスに相当有益である。ドラッグデリバリーシステムとして用いるこのような埋め込み型医療デバイスは、患者に埋め込まれたときに優れた機械特性も示すべきである。本発明は、このような埋め込み型医療デバイスを提供する。
【0007】
[発明の概要]
したがって、一態様では、本発明は、
デバイス本体と、
このデバイス本体の上に設けられた任意選択の下塗層と、
このデバイス本体又は下塗層(選択された場合)の上に設けられた、1つ又は複数の治療薬を含む薬物保持層と、
この薬物保持層の上に最外層として設けられた、ホスホリルコリンアクリレートポリマーを含む上塗層と
を備えた埋め込み型医療デバイスに関する。
【0008】
本発明のある態様では、埋め込み型医療デバイスはステントである。
【0009】
本発明のある態様では、ホスホリルコリンアクリレートポリマーは、ポリ(2−(メタクリロイルオキシエチル)−2−(トリメチルアンモニウムエチル)−リン酸,分子内塩)−co−(n−ドデシルメタクリレート)−co−(ヒドロキシプロピルメタクリレート)−co−(3−トリメトキシシリル)−プロピルメタクリレート)を含む。
【0010】
本発明のある態様では、(トリメチルアンモニウムエチル)−リン酸,分子内塩)と(n−ドデシルメタクリレート)と(ヒドロキシプロピルメタクリレート)と(3−トリメトキシシリル)−プロピルメタクリレート)との構成比(wt/wt)は概ね28.8:50.7:15.3:5.3からである。
【0011】
本発明のある態様では、ホスホリルコリンアクリレートポリマーは実質的に非晶質である。
【0012】
本発明のある態様では、薬物保持層は、アクリレート又はメタクリレートポリマーを含む。
【0013】
本発明のある態様では、アクリレート又はメタクリレートポリマーは、約20,000〜約600,000ダルトンの平均分子量を有する。
【0014】
本発明のある態様では、アクリレート又はメタクリレートポリマーは、ポリ(ブチルメタクリレート)を含む。
【0015】
本発明のある態様では、薬物保持層は、以下の式を有するポリ(アクリレート)又はポリ(メタクリレート)を含む。
【0016】
【化1】


(式中、mは0.005〜0.90、nは0.10〜0.995、m+n=1、xは65〜6960、R及びRは、水素及びメチルからなる群から独立に選択され、炭化水素基は、不飽和又は飽和の分枝鎖又は直鎖C〜C16脂肪族部分、脂環式部分、又は芳香族部分からなる群から選択される)
【0017】
本発明のある態様では、極性基は、アルキルエーテル及びアミドからなる群から選択される。
【0018】
本発明のある態様では、アルキルエーテルは、以下の式からなる群から選択される。
【0019】
【化2】

【0020】
本発明のある態様では、アミドは、以下の式からなる群から選択される。
【0021】
【化3】

【0022】
本発明のある態様は、脈管疾患を治療する方法であって、
治療を必要とする患者の脈管に、
デバイス本体と、
このデバイス本体の上に設けられた任意選択の下塗層と、
このデバイス本体又は下塗層(選択された場合)の上に設けられた、1つ又は複数の治療薬を含む薬物保持層と、
この薬物保持層の上に最外層として設けられた、ホスホリルコリンアクリレートポリマーを含む上塗層と
を備えた埋め込み型医療デバイスを配置するステップ
を含む方法である。
【0023】
本発明のある態様では、埋め込み型医療デバイスはステントである。
【0024】
本発明のある態様では、ホスホリルコリンアクリレートポリマーは、ポリ(2−(メタクリロイルオキシエチル)−2−(トリメチルアンモニウムエチル)−リン酸,分子内塩)−co−(n−ドデシルメタクリレート)−co−(ヒドロキシプロピルメタクリレート)−co−(3−トリメトキシシリル)−プロピルメタクリレート)を含む。
【0025】
本発明のある態様では、(トリメチルアンモニウムエチル)−リン酸,分子内塩)と(n−ドデシルメタクリレート)と(ヒドロキシプロピルメタクリレート)と(3−トリメトキシシリル)−プロピルメタクリレート)との構成比(wt/wt)は、概ね28.8:50.7:15.3:5.3からである。
【0026】
本発明のある態様では、ホスホリルコリンアクリレートポリマーは実質的に非晶質である。
【0027】
本発明のある態様では、薬物保持層は、アクリレート又はメタクリレートポリマーを含む。
【0028】
本発明のある態様では、アクリレート又はメタクリレートポリマーは、約20,000〜約600,000ダルトンの平均分子量を有する。
【0029】
本発明のある態様では、アクリレート又はメタクリレートポリマーは、ポリ(ブチルメタクリレート)を含む。
【0030】
本発明のある態様では、薬物保持層は、以下の式を有するポリ(アクリレート)又はポリ(メタクリレート)を含む。
【0031】
【化4】


(式中、mは0.005〜0.90、nは0.10〜0.995、m+n=1、xは65〜6960、R及びRは、水素及びメチルからなる群から独立に選択され、炭化水素基は、不飽和又は飽和の分枝鎖又は直鎖C〜C16脂肪族部分、脂環式部分、又は芳香族部分からなる群から選択される)
【0032】
本発明のある態様では、直上の式において、極性基は、アルキルエーテル及びアミドからなる群から選択される。
【0033】
本発明のある態様では、アルキルエーテルは、以下の式からなる群から選択される。
【0034】
【化5】

【0035】
本発明のある態様では、アミドは、以下の式からなる群から選択される。
【0036】
【化6】

【0037】
本発明のある態様では、薬物保持層は、さらに1つ又は複数の治療薬を含む。
【0038】
本発明のある態様では、脈管疾患はアテローム性動脈硬化症である。
【0039】
本発明のある態様では、脈管疾患は再狭窄である。
【0040】
本発明のある態様では、脈管疾患は不安定プラークである。
【0041】
本発明のある態様では、脈管疾患は末梢脈管疾患である。
【0042】
本発明のある態様では、脈管疾患は遅発性ステント血栓症である。
【0043】
各図面は、本発明の理解を助けるために本発明の特定の実施形態の例として添付したものであり、いかなる方法によっても本発明の範囲が制限されることを意図するものでも、制限されると解釈されるべきものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、ステントのストラット部分を断面で示している本発明の実施形態の図である。このステントコーティング構造は、ステント本体、任意選択の下塗層、薬物保持層、及び上塗層を備えている。
【図2】図2は、上塗層を含むことができる例示的なホスホリルコリンアクリレートポリマーの化学構造を示している本発明の実施形態の図である。
【0045】
[発明の詳細な説明]
本明細書における単数形の使用は、特段の記載がない限り複数形を含み、逆もまた同様である。すなわち、「ある(a)」及び「その(the)」は、これらの語が修飾するあらゆる1つ又は複数の語を指す。例えば、「ある治療薬」は、1つの治療薬及び2つの治療薬なども含む。同様に、「その層」は、1つの層、2つの層又はそれ以上の層を指すことができ、「そのポリマー」は、1つのポリマー又は複数のポリマーを指すことができる。さらに、限定するものではないが、「層」及び「ポリマー」などの語は、特段の記載がある場合又は意図しないことが文脈から明らかな場合を除き、複数の層又はポリマーはもちろん、1つの層又はポリマーも指す。
【0046】
本明細書で用いる「炭化水素」は、すべてが炭素原子と水素原子からなる化学物質を指す。本発明の目的に有用な炭化水素として、限定するものではないが、飽和又は不飽和の分枝鎖又は直鎖の脂肪族部分、飽和又は不飽和脂環式部分、及び芳香族部分を挙げることができる。本発明の脂肪族部分は、直鎖又は分枝鎖中に合計1個〜16個の炭素原子(本明細書ではC〜C16として表す)を含むことができる。飽和脂肪鎖は、炭素原子間に一重の共有結合を含むだけであるが、不飽和脂肪鎖は、炭素原子間に1つ又は複数の二重及び/又は三重の共有結合を含む。アルキル基の例として、限定するものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アミル、tert−アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、及びドデシルを挙げることができる。脂環式部分は、炭素鎖のすべて又は一部が、それぞれが3個〜8個の炭素原子を有する1つ又は複数の環を構成している飽和又は不飽和脂肪族部分である。脂環式基の例として、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘプチルを挙げることができる。本明細書で用いる「アリール」は、炭素環(すべて炭素)や、完全に非局在化したπ電子系を有し、且つ環(複数可)に6個〜14個の炭素原子を有する2つ以上の縮合環(近接する2つの炭素原子を共有する環)を指す。アリール基の例として、限定するものではないが、ベンゼン、ナフタレン、及びアズレンを挙げることができる。
【0047】
本明細書で用いるポリマーの図解を以下に示す。
[[−Y−]/[−Z−]
この式は、規則的な交互コポリマー、ランダムコポリマー、又はブロックコポリマーを指し、現在は、ランダムコポリマーが好ましい。本明細書で用いる英字「n」及び「m」は、構成単位YとZのモル比を意味し、n+m=1である。英字「x」は、配列の重複数、すなわちポリマーのカッコ外の範囲における上記式の反復数を意味する。
【0048】
本明細書で用いる「埋め込み型医療デバイス」は、患者の体内に外科的又は医学的に、又は自然の開口部への医学的介入によって、完全又は部分的に導入され、処置の後も体内に維持されることを意図したあらゆるタイプの器具を指す。埋め込み期間は、本質的に永久である、すなわち患者の残りの人生の間、デバイスが生分解するまで、又は物理的に除去されるまで体内の所定の位置に維持されることを意図したものとする。埋め込み型医療デバイスの例として、限定するものではないが、埋め込み型心ペースメーカ及び除細動器;これらの器具のリード線及び電極;神経、膀胱、括約筋及び横隔膜刺激装置、蝸牛インプラントなどの埋め込み型器官刺激装置;プロテーゼ、人工脈管、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステントグラフト、グラフト、人工心臓弁、及び脳脊髄液シャントを挙げることができる。
【0049】
治療薬の局所送達のために特別に設計された専用の埋め込み型医療デバイスは、本発明の範囲内である。
【0050】
本明細書で用いる「デバイス本体」は、デバイス自体を製造した材料とは異なる材料のコーティングまたは層が外面に設けられていない、完全に形成された埋め込み型医療デバイスを指す。「外面」は、空間的に体組織又は体液に接触する方向を向いたあらゆる表面を指す。「デバイス本体」の一般的な例は、BMS、すなわちベアメタルステント(bare metal stent)であり、この名称から分かるように、体組織又は体液に接触するあらゆる表面を形成する金属とは異なる任意の材料の層でコーティングされていない完全に形成された使用可能なステントである。もちろん、デバイス本体は、BMSを指すだけではなく、何から形成されているかに関係なく、あらゆるコーティングされていないデバイスも指す。
【0051】
実質的にあらゆる材料、すなわち埋め込み型医療デバイスの製造に有用であることが現在知られている材料及び将来有用となり得る材料から形成された埋め込み型医療デバイスは、本発明のコーティングと共に用いることができる。例えば、限定するものではないが、本発明に有用な埋め込み型医療デバイスは、コバルトクロム合金(ELGILOY、L−605)、コバルトニッケル合金(MP−35N)、316Lステンレス鋼、高窒素ステンレス鋼、例えば、BIODUR108、ニッケルチタン合金(NITINOL)、タンタル、プラチナ、プラチナイリジウム合金、金、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、1つ又は複数の生体適合性金属又はこれらの合金から形成することができる。
【0052】
埋め込み型医療デバイスは、生体適合性且つ生体安定性又は生体分解性であるポリマーから形成することもできる。生体分解性は、生体吸収性及び/又は生体侵食性(bioerodable)を含む。
【0053】
本明細書で用いる「生体適合性」は、合成された状態でも、分解された状態、すなわち分解産物になっても変化しない、生組織に対して毒性でないか又は少なくとも毒性が最小限度であり、生組織を傷害しないか又は少なくとも傷害が最小限度であって回復可能、並びに/或いは生組織中で免疫反応を引き起こさないか又は少なくとも免疫反応が最小限度及び/若しくは制御可能であるポリマーを指す。
【0054】
有用な生体適合性の比較的安定したポリマーの例として、限定するものではないが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレア、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリビニルハライド、ポリビニリデンハライド、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族、ポリビニルエステル、ポリアクリロニトリル、アルキド樹脂、ポリシロキサン、及びエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0055】
生体適合性且つ生分解性ポリマーとして、天然ポリマー、例えば、限定するものではないが、コラーゲン、キトサン、アルギン酸塩、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース誘導体、デンプン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸、ヘパリン、グリコサミノグリカン、多糖、及びエラスチンを挙げることができる。
【0056】
1つ又は複数の合成又は半合成の生体適合性且つ生分解性ポリマーも、本発明に有用な埋め込み型医療デバイスの製造に用いることができる。本明細書で用いる合成ポリマーは、研究室で完全に作製されたポリマーを指すが、半合成ポリマーは、研究室で化学修飾を施した天然ポリマーを指す。合成ポリマーの例として、限定するものではないが、ポリホスファジン、ポリホスホエステル、ポリホスホエステルウレタン、ポリヒドロキシ酸(polyhydroxyacid)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ無水物、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリアミノ酸、ポリオキシメチレン、ポリ(エステルアミド)、及びポリイミドを挙げることができる。
【0057】
上記ポリマーのブレンド及び上記ポリマーのコポリマーも、本発明に用いることができ、本発明の範囲内である。本明細書の開示から、当業者であれば、このような埋め込み型医療デバイス及びそれらが製作され得る材料には、本発明のコーティングが有用であることを理解できよう。
【0058】
現状では、本発明のコーティングと共に使用するのに適した埋め込み型医療デバイスはステントである。
【0059】
ステントは、一般に、患者の体内の所定の位置に組織を保持するために使用されるあらゆるデバイスを指す。しかしながら、特に有用なステントは、限定するものではないが、腫瘍(例えば、胆管、食道、気管/気管支の腫瘍など)、良性膵疾患、冠動脈疾患、頚動脈疾患及び末梢動脈疾患、例えば、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、及び不安定プラークなどの、疾患や障害によって脈管が狭窄又は閉塞した際に患者の体内の脈管の開存性を維持するために使用されるデバイスである。不安定プラーク(VP)は、炎症によって引き起こされると考えられる動脈壁の脂肪の蓄積を指す。VPは、破裂すると血栓を形成し得る薄い線維性被膜に覆われている。ステントは、VP近傍の脈管壁を補強するために用いることができ、このような破裂のシールドとして機能する。ステントは、限定するものではないが、神経、頚動脈、冠動脈、肺動脈、大動脈、腎動脈、胆管、腸骨動脈、大腿動脈及び膝窩動脈、並びに他の末梢脈管系に用いることができる。ステントは、限定するものではないが、血栓症、再狭窄、出血、血管解離又は穿孔、血管動脈瘤、慢性完全閉塞、跛行、吻合部増殖、胆管閉塞、及び尿管閉塞などの障害の治療や予防に用いることができる。
【0060】
上記の使用に加えて、ステントは、患者の体内の特定の治療部位に治療薬を局所送達するために用いることもできる。実際、治療薬の送達が、ステントの唯一の目的とすることもできるし、ステントは、薬物送達が副次的な利益である上記のような別の使用を主目的とすることもできる。
【0061】
開存維持のために使用されるステントは、通常、圧縮された状態で標的部位に送られ、次いでステントが挿入された脈管に適合するように拡張する。標的部位に到達したら、ステントは、自己拡張か又はバルーン拡張することができる。いずれの場合も、ステントの拡張のため、ステント上のあらゆるコーティングは、可撓性且つ伸長可能でなければならない。
【0062】
図1は、ステント本体、任意選択の下塗層、薬物保持層、及び上塗層を含むステントコーティング構造を示している本発明の実施形態を示す。
【0063】
本明細書で用いる「任意選択の」は、この語によって修飾される要素が存在することもあり、存在しないこともあることを意味する。例えば、限定するものではないが、「任意選択の」下塗層(pl)、薬物保持層(dr)、及び上塗層(tc)(本明細書では任意としていないことに留意)がコーティングされたデバイス本体(db)は、限定するものではないが、db+pl+dr+tc及びdb+dr+tcのいずれのデバイスも指す。
【0064】
本明細書で用いる「下塗層」は、デバイス本体を製造する材料に対する良好な接着性並びにデバイス本体にコーティングするあらゆる材料に対する良好な接着性を有するポリマー又はポリマーブレンドからなるコーティングを指す。したがって、下塗層は、デバイス本体とそのデバイス本体に設けられる材料との間の中間層として機能するため、デバイス本体に直接設けられる。下塗層の例として、限定するものではないが、現在好ましい下塗層であるポリ(n−ブチルメタクリレート)を有するメタクリレートポリマー及びアクリレートポリマーを挙げることができる。下塗層のさらなる例として、限定するものではないが、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート−co−ビニルアルコール)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(アクリレート)、ポリエチレンアミン、ポリアリルアミン、キトサン、ポリ(エチレン−co−ビニルアセテート)、及びパリレンCを挙げることができる。
【0065】
本明細書において、例えば、限定するものではないが、デバイス本体又は別の層などの指定の下地の「上に配置される」層として述べる材料は、本質的に指定下地のすべての露出面に現在は直接設けるのが好ましい比較的薄いコーティング材料を指す。「露出面」は、使用の際に体組織又は体液と接触する下地の表面を意味する。しかしながら、「上に配置される」は、下地に設けられた介在層に薄い材料層を設けることを指すこともある。この材料層は、介在層が存在しないときは、実質的に下地のすべての露出面を覆うように設けられる。
【0066】
本明細書で用いる「薬物保持層」は、整然と設けられた1つ又は複数の治療薬の層か、或いは1つ又は複数の治療薬が3次元構造内に分散されたポリマー又はポリマーブレンドの層を指す。ポリマー薬物保持層は、あるメカニズム又は別のメカニズム、例えば、限定するものではないが、溶出によって又はポリマーの生分解の結果として治療物質が層から周囲環境に放出されるように設計されている。本発明の目的として、薬物保持層は、放出制御層としても機能する。本明細書で用いる「放出制御層」は、治療薬すなわち薬物の周囲環境への放出を制御するポリマー層を指す。あらゆる熱可塑性アクリレート又はメタクリレートポリマーを、本発明の薬物保持層を形成するために用いることができるが、特に有用なポリマーとして、限定するものではないが、ポリ(n−ブチルメタクリレート)(PBMA)を挙げることができる。しかしながら、PBMAには、薬物透過性が低い可能性があるという制限がある。薬物透過性は、極性基を導入することによって向上させることができる。
【0067】
本明細書で用いる「極性基」は、基を構成する原子の電気陰性度の違いにより、負の電荷の中心が正の電荷の中心と一致しない基を指す。本発明の目的のためには、極性基は、ポリマーの全体の極性を増大させて、平衡吸水率を増大させ、これにより薬物透過性を向上させることを意図している。
【0068】
埋め込み型医療デバイスのコーティングとして用いられるポリマーに必要な物理特性又は化学特性に悪影響を与えないあらゆる極性部分を、本発明の薬物保持層を形成するために用いることができ、現在好ましい極性基はアルキルエーテルである。本明細書で用いる「アルキルエーテル」は、鎖の1つ又は複数の炭素原子が酸素原子によって置換された不飽和又は飽和の分枝鎖又は直鎖の脂肪族基を指す。本発明のために有用なアルキルエーテルの例として、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる。
【0069】
【化7】

【0070】
ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)は周知であり、非汚染ポリマーとして血液酸素付加装置に用いられている。極性基1−メチル−2−メトキシエチルオキシ−は、アクリレートに導入されるとモノマーになり、生体内でアクリレートエステルに加水分解が起こると極めて良性の化合物、1−メトキシ−2−プロパノールを放出する。これらのアルキルエーテルを有するポリアクリレートは、かなりの極性であるが、室温に近いTgを有するため脆くない。
【0071】
別の現在好ましい極性基はアミド部分である。アミド基は、ヒドロキシル基を含む極性部分ほど(ポリマーを脆くする)乾燥Tgを上昇させない。アミド基は、アミド基を含むアミノ酸であるグルタミン及びアスパラギンのR−基を模倣することもできる。したがって、それらは、ペプチド模倣物とみなすことができる。これらの化合物の2つの例として、共に生体適合性であるラクタミド(lactamide)及びグリシンアミドを挙げることができる。本発明の目的のために有用なアミドの例として、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる。
【0072】
【化8】

【0073】
薬物保持層のアクリレート/メタクリレートコポリマーは、上塗層のホスホリルコリンアクリレートポリマーに対するこの薬物保持層の接着を促進し、且つ薬物放出速度を効果的に制御する極性基を選択することによって生成することができる。モノマーの比率は、乾燥時のTgが0℃〜70℃の範囲となるように選択する。水和されると、このTgは、−30℃〜37℃の範囲になるはずである。極性アクリレートと共重合する非極性モノマーの代表例の一部として、限定するものではないが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、2−エチル−ヘキシルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0074】
本明細書で用いる「治療薬」は、ある疾患に罹患している患者に治療有効量を投与すると、その患者の健康及び福利に有益な治療効果を与えるあらゆる物質を指す。患者の健康及び福利に対する有益な治療効果として、限定するものではないが、(1)疾患を治癒すること、(2)疾患の進行を遅らせること、(3)疾患を退行させること、又は(4)疾患の1つ又は複数の症状を緩和することを挙げることができる。本明細書で用いる治療薬は、特に疾患に罹りやすいことが分かっている又は疑われる患者に予防有効量を投与すると、患者の健康及び福利に有益な予防効果を与えるあらゆる物質も含む。患者の健康及び福利に対する有益な予防効果として、限定するものではないが、(1)第1に疾患の発症を予防又は遅延させること、(2)ある物質の治療有効量(予防有効量で使用される物質と同じことも異なることもある)によって疾患が退行レベルに達したら、疾患をこのようなレベルに維持すること、又は(3)ある物質の治療有効量(予防有効量で使用される物質と同じことも異なることもある)による治療過程の後に疾患の再発を予防又は遅延させることが挙げられる。
【0075】
本明細書で用いる用語、「薬物」と「治療薬」は、置き換え可能に使用している。
【0076】
本明細書で用いる「治療」は、脈管疾患に罹患していることが分かっている又は疑われる患者に治療有効量の治療薬の投与を指す。「治療有効量」は、脈管疾患に罹患していることが分かっている又は疑われる患者の健康及び福利に対して、治癒又は緩和であり得る有益な効果を有する治療薬の量を指す。治療有効量は、1回のボーラスとして、間欠的ボーラス投与として、短期、中期、又は長期の持続放出製剤として、又はこれらの任意の組み合わせとして投与することができる。本明細書で用いる短期持続放出は、約数時間〜約3日の期間に亘って治療薬を治療有効量投与することを指す。中期持続放出は、約3日〜約14日の期間に亘って治療薬を治療有効量投与することを指し、長期持続放出は、約14日を超える任意の期間に亘って治療有効量を送達することを指す。
【0077】
本明細書で用いる「脈管疾患」は、心臓、脳、及び末梢器官、例えば、限定するものではないが、腕、脚、腎臓、及び肝臓の間で血液を輸送する脈管、主に動脈及び静脈の疾患を指す。特に、「脈管疾患」は、冠動脈系、頚動脈系及び末梢動脈系を指す。治療できる疾患は、単独の治療プロトコルとして、又は他の処置、例えば外科的介入などの補助として治療薬での治療が有効な疾患である。このような疾患は、限定するものではないが、アテローム性動脈硬化症、不安定プラーク、再狭窄、又は末梢動脈疾患を挙げることができる。
【0078】
「アテローム性動脈硬化症」は、動脈の内層すなわち内膜における脂肪物質、コレステロール、細胞廃棄産物、カルシウム、及びフィブリンの堆積を指す。この堆積プロセスには、平滑筋細胞の増殖及び脂質蓄積が伴う。加えて、動脈のアテローム領域に遊走する傾向がある炎症物質が症状を悪化させると考えられている。内膜における物質の蓄積の結果として、動脈の内腔を閉塞させる線維性(アテローム性)プラークが形成され、この過程が狭窄と呼ばれる。狭窄が重症化すると、特定の動脈による器官への血液供給がストップし、罹患動脈が頚動脈の場合は脳卒中になり、罹患動脈が冠動脈の場合は心発作になり、また罹患動脈が末梢動脈の場合は器官の機能喪失になる。
【0079】
「再狭窄」は、狭窄部を除去するために脈管形成又は別の外科処置を以前に行った部位又はその近傍の動脈が再び狭くなること又は閉塞を指す。再狭窄は、一般的には平滑筋細胞の増殖によって起き、時には血栓症を伴う。脈管形成術によって開いた脈管の開存を維持する埋め込み型ステントが登場する前は、処置を受けた患者の40%〜50%が3カ月〜6カ月以内に再狭窄を発症していた。ステント登場前の脈管形成術後の再狭窄は、主に平滑筋細胞の増殖によるものであった。また、処置部位における血管痙攣、解離、及び血栓症による急性再閉鎖の問題もあった。ステントは、血管痙攣による急性閉鎖を解消し、解離による合併症が大幅に軽減した。抗血栓薬であるアブシキシマブ(abciximab)及びエピファバチド(epifabatide)などのIIb−IIIa抗血小板薬の使用により、処置後の凝固の発生が低減した(ただし、ステントの配置だけが原因で血栓症が起こることがある)。また、ステント配置部位は、埋め込み部位での異常な組織の成長によって再狭窄が起こりやすい。この形の再狭窄も、ステント配置後3カ月〜6カ月で起こりやすいが、抗凝固薬の使用による影響ではない。したがって、代替の治療法が、このタイプの再狭窄を緩和、好ましくは解消するために引き続き模索されている。ステント配置部位に様々な治療薬を放出する薬物溶出ステント(DES)は、ここしばらくの間使用されている。これまで、このようなステントは、長さが40mm未満の送達面(長手方向)からなり、いずれの場合も、罹患領域周辺の非罹患領域における脈管の内腔面に接触しないようになっていて、大抵は接触しない送達面を有する。
【0080】
「不安定プラーク」は、血栓症を引き起こし得るアテローム性プラークを指し、このアテローム性プラークを動脈の内腔から分離させている超薄壁によって通常は特徴付けられる。この超薄壁の薄さが、プラークを断裂しやすくしている。プラークが断裂すると、通常は高脂質のプラークの内側コアが血液にさらされ、露出したプラーク成分に血小板タンパク質及び血漿タンパク質が付着して活性化することにより、潜在的に致命的な血栓症が起きる可能性がある。
【0081】
近年、「不安定プラーク」の現象は、心疾患の治療に新たな課題をもたらした。血流を阻害する閉塞プラークとは異なり、不安定プラークは、動脈壁内で成長するが、兆候が現れる動脈内腔の独特の実質的な狭窄を伴わずに形成される場合が多い。したがって、血管造影などの心疾患を検出するための従来の方法は、動脈壁内での不安定プラークの成長を検出することができない。
【0082】
不安定プラークを特徴付けできる固有の組織的特徴として、脂質含量の増大、マクロファージ、泡沫細胞、及びTリンパ球の含量の増大、及びコラーゲン及び平滑筋細胞(SMC)の含量の減少を挙げることができる。不安定プラークのこの線維性アテロームタイプは、「ソフト(soft)」と呼ばれる場合が多く、線維性被膜に取り囲まれたリポタンパク質の大きな脂質プールを有する。線維性被膜は、大部分がコラーゲンであり、このコラーゲンの濃度の低下とマクロファージ由来酵素の分解とが組み合わさると、このような病変の線維性被膜が、予測不可能な状況下で破裂することがある。破裂すると、組織因子を含むと考えられる脂質コア成分が動脈の血流に接触して血栓を形成し、これにより動脈が完全に閉塞されて急性冠動脈症候群(ACS)が起きることがある。このタイプのアテローム性動脈硬化症は、プラークの破裂を予測しにくいため、「不安定」と命名されている。周囲応力、ずれ応力、及び屈曲応力を生じさせる血行力学及び心臓の力が、線維性アテロームタイプの不安定プラークの破壊を引き起こすことがあると考えられている。これらの力は、血流及び心臓の拍動に関連した生体内の力に加えて、朝ベッドから出るなどの単純な運動の結果として生じることがある。線維性アテロームタイプのプラークの不安定性は主として、(1)脂質コアの大きさ及び硬さ、(2)脂質コアを覆っている線維性被膜の厚み、並びに(3)線維性被膜内の炎症及び修復を含む因子によって決まると考えられている。
【0083】
「血栓症」は、血管又は心室内における血栓(blood clot)(血栓(thrombus))の形成又は存在を指す。分離して体内の別の部位に移動する血栓は塞栓と呼ばれる。血栓が心臓に血液を供給する血管を塞いだ場合、心発作が起こる。血栓が脳に血液を供給する血管を塞いだ場合、脳卒中が起こる。
【0084】
末梢脈管疾患は、一般に、炎症や組織損傷などの状態によって生じる血管の構造変化によって引き起こされる。末梢脈管疾患の一部が、末梢動脈疾患(PAD)である。PADは、動脈壁の内層または内膜における脂肪性沈着物の集積によって生じるという点で、頚動脈疾患及び冠動脈疾患に類似した状態である。頚動脈の閉塞が脳への血流を制限すること、及び冠動脈の閉塞が心臓への血流を制限することと同様に、末梢動脈の閉塞は、腎臓、胃、腕、脚、及び足への血流の制限につながることがある。
【0085】
適当な治療薬として、限定するものではないが、増殖抑制剤、抗炎症剤、抗新生物薬及び/又は抗有糸分裂剤、抗血小板剤、抗凝固剤、抗フィブリン剤、及び抗トロンビン薬、細胞増殖抑制剤又は増殖抑制剤、抗生物質、抗アレルギー剤、酸化防止剤、及び当業者に周知の他の生理活性剤を挙げることができる。
【0086】
適当な増殖抑制剤として、限定するものではないが、アクチノマイシンD又はその誘導体や類似体を挙げることができる。アクチノマイシンDは、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI、アクチノマイシンX、及びアクチノマイシンCとしても知られている。増殖抑制剤は、天然タンパク剤(natural proteineous agent)、例えば、細胞毒又は合成分子、例えば、タキソール、ドセタキセル、及びパクリタキセル、パクリタキセル誘導体などのすべてのタキソイド(taxoid)、すべてのオリムス薬、例えば、マクロライド系抗生物質、ラパマイシン、エベロリムス、ラパマイシンの構造誘導体及び機能類似体、エベロリムスの構造誘導体及び機能類似体、FKBP−12仲介mTOR阻害剤、バイオリムス、ペルフェニドン、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、及びこれらの組み合わせとすることができる。代表的なラパマイシン誘導体及び類似体として、40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(エベロリムス(EVEROLIMUS)(登録商標))、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾリルラパマイシン、又は40−epi−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0087】
適当な抗炎症剤として、限定するものではないが、ステロイド性抗炎症剤、非ステロイド性抗炎症剤、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。一部の実施形態では、抗炎症剤として、クロベタゾール、アルクロフェナック、アルクロメタソンジプロピオナート、アルゲストンアセトニド、αアミラーゼ、アンシナファル(amcinafal)、アンシナフィド(amcinafide)、アンフェナクナトリウム、塩酸アミプリロース、アナキンラ、アニロラック、アニトラザフェン、アパゾン、バルサラジドジナトリウム(balsalazide disodium)、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カープロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、クロピラック、プロピオン酸クロチカゾン(cloticasone propionate)、酢酸コルメタゾン(cormethasone acetate)、コルトドキソン、デフラザコート、デソニド、デソキシメタゾン、ジプロピオン酸デキサメタゾン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、酢酸ジフロラゾン、ジフルミドンナトリウム(diflumidone sodium)、ジフルニサル、ジフルプレドナート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリゾン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム(enolicam sodium)、エピリゾール、エトドラク)、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラク、フェンドサール、フェンピパロン、フェンチアザク、フラザロン、フルアザコート、フルフェナム酸、フルミゾール、酢酸フルニソリド、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、酢酸フルオロメトロン、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、プロピオン酸フルチカゾン、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、酢酸ハロプレドン、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、酢酸イソフルプレドン、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール(lofemizole hydrochloride)、ロモキシカム、エタボン酸ロテプレドノール、メクロフェナム酸ナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリゾンジブチレート、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニゾロンスレプタナート、モミフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、グリセリン酸フェンブタゾンナトリウム、ピルフェニドン、ピロキシカム、ケイ皮酸ピロキシカム、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドリック酸、プロカゾン、プロキサゾール、クエン酸プロキサゾール、リメキソロン、ロマザリット、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、塩化サングイナリウム、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナック、チキソコルトールピバレート、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラックナトリウム、アスピリン(アセチルサリチル酸)、サリチル酸、コルチコステロイド、糖質コルチコイド、タクロリムス、ピメコルリムス、これらのプロドラッグ、これらのコドラッグ、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。抗炎症剤は、生物学的炎症シグナル伝達分子に対する抗体を含め、炎症誘発性シグナル伝達分子の生物学的阻害剤とすることもできる。
【0088】
適当な抗新生物薬及び/又は抗有糸分裂剤として、限定するものではないが、パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン、及びマイトマイシンを挙げることができる。
【0089】
適当な抗血小板剤、抗凝固剤、抗フィブリン剤、及び抗トロンビン薬として、限定するものではないが、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリン類似物質、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン、プロスタサイクリンデキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換えヒルジン及びトロンビン、トロンビン抑制物質、例えば、Angiomax a(Biogen,Inc.、Cambridge、Mass.)、カルシウムチャネル遮断薬(ニフェジピンなど)、コルヒチン、魚油(ω−3脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン(HMG−CoAレダクターゼの阻害剤、すなわちコレステロールを低下させる薬物である、商品名メバコール(Mevacor)(登録商標)、Merck & Co., Inc.、Whitehouse Station、NJ)、モノクローナル抗体(例えば、血小板由来成長因子(PDGF)受容体に対して特異的なモノクローナル抗体など)、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、酸化窒素又は酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣薬、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、エストラジオール、抗癌剤、栄養補助食品、例えば、様々なビタミン類、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。このような細胞増殖抑制物質の例として、アンギオペプチン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えば、カプトプリル(例えば、カポテン(Capoten)(登録商標)及びカポジド(Capozide)(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Co.、Stamford、Conn.)、シラザプリル、又はリシノプリル(例えば、プリニビル(Prinivil)(登録商標)及びプリンジド(Prinzide)(登録商標)、Merck & Co., Inc.、Whitehouse Station、NJ)を挙げることができる。抗アレルギー剤の例として、ペルミロラストカリウムを挙げることができる。適当と思われる他の生理活性物質又は生理活性剤の例として、α−インターフェロン、及び遺伝子組み換え上皮細胞を挙げることができる。
【0090】
適当な細胞増殖抑制剤又は増殖抑制剤として、限定するものではないが、アンギオペプチン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えば、カプトプリル、シラザプリル又はリシノプリル、カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ニフェジピン;コルヒチン、線維芽細胞成長因子(FGF)アンタゴニスト;魚油(ω−3脂肪酸);ヒスタミンアンタゴニスト;ロバスタチン、モノクローナル抗体、例えば、限定するものではないが、血小板由来成長因子(PDGF)受容体に対して特異的なモノクローナル抗体など;ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、及び酸化窒素を挙げることができる。
【0091】
適当な抗アレルギー剤として、限定するものではないが、ペルミロラストカリウムを挙げることができる。他の適当な生理活性剤として、限定するものではないが、α−インターフェロン、遺伝子組み換え上皮細胞、デキサメタゾン及びその誘導体、ラパマイシン誘導体及び類似体、例えば、40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(エベロリムス(登録商標))、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)]エチル−ラパマイシン、及び40−O−テトラゾリルラパマイシン、合成無機及び有機化合物、タンパク質及びペプチド、多糖及び他の糖、脂質、及び治療活性、予防活性、又は診断活性を有するDNA及びRNA核酸配列、遺伝子を含む核酸配列、転写を阻害するために相補的なDNAに結合するアンチセンス分子、及びリボザイムを挙げることができる。適当な生理活性剤の一部の他の例として、抗体、受容体リガンド、酵素、接着ペプチド、血液凝固因子、阻害剤又は血栓溶解剤、例えば、ストレプトキナーゼ及び組織プラスミノーゲンアクチベーター、免疫化に対する抗原、ホルモン及び成長因子、オリゴヌクレオチド、例えば、遺伝子治療に使用するためのアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、及びレトロウイルスベクター;抗ウイルス剤;鎮痛薬及び鎮痛配合剤;摂食障害薬(anorexics);抗蠕虫薬;抗関節炎薬、抗喘息薬;抗痙攣薬;抗うつ薬;抗利尿剤;下痢止め;抗ヒスタミン薬;偏頭痛製剤;制嘔吐剤;抗パーキンソン薬;鎮痒薬;抗精神病薬;下熱剤;鎮痙薬;抗コリン薬;交感神経模倣薬;キサンチン誘導体;ピンドロール及び抗不整脈薬などのカルシウムチャネル遮断薬及びβ−遮断薬を含む心血管製剤;降圧剤;利尿薬;大冠動脈(general coronary)、末梢動脈、及び大脳動脈を含む血管の拡張剤;中枢神経系興奮薬;うっ血除去薬を含む咳及び感冒用製剤;催眠薬;免疫抑制薬;筋弛緩剤;副交感神経遮断薬;精神刺激薬;鎮静薬;トランキライザー;天然由来又は遺伝子組み換えリポタンパク質;及び再狭窄緩和剤を挙げることができる。
【0092】
好適な治療薬として、コルチコステロイド、エベロリムス、ゾタロリムス、シロリムス、シロリムス誘導体、パクリタキセル、ビスホスホネート、ApoA1、変異ApoA1、ApoA1ミラノ(ApoA1 milano)、ApoA1模倣ペプチド、ABC A1アゴニスト、抗炎症剤、増殖抑制剤、血管形成抑制剤、基質メタロプロテイナーゼ阻害剤、及びメタロプロテイナーゼの組織阻害剤を挙げることができる。
【0093】
本明細書で用いる「上塗層」は、最外層、すなわち外部環境に接触し、且つすべての他の層の上にコーティングされた層を指す。上塗層は、デバイスに優れた親水性を付与するため、デバイスを円滑にするため、又は単に下側の層の物理的な保護層として設けることができる。上塗層は、ホスホリルコリンアクリレートポリマーを含む。上塗層のホスホリルコリンアクリレートポリマー部分は、具体的には、ポリ(2−(メタクリロイルオキシエチル)−2−(トリメチルアンモニウムエチル)−リン酸,分子内塩)−co−(n−ドデシルメタクリレート)−co−(ヒドロキシプロピルメタクリレート)−co−(3−トリメトキシシリル)−プロピルメタクリレート)(PC1036(登録商標)、Biocompatibles UK Ltd.)を含む。
【0094】
本明細書で用いる「構成単位」は、ポリマー部分のモノマー成分単位を指す。ホスホリルコリンアクリレートポリマーは、強度のためにさらなる架橋を有することができるモノマーを含むホスホリルコリンを28.8wt%含むように特別に設計されている。(トリメチルアンモニウムエチル)−リン酸,分子内塩)と(n−ドデシルメタクリレート)と(ヒドロキシプロピルメタクリレート)と(3−トリメトキシシリル)−プロピルメタクリレート)との構成単位の比(wt/wt)は、概ね28.8:50.7:15.3:5.3からである。
【0095】
本明細書で用いる「実質的な」又は「実質的に」は、ある状態が、語「実質的に」によって修飾されると、その状態が確かに存在していることを意味するのに必ずしも絶対又は完全ではないが、当業者によって十分に近いとみなされる状態を指す。したがって、本発明の目的のために、特定の特徴の少なくとも80%、好ましくは、すべての特徴の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは、現在は少なくとも99%を有する構成物が、特徴を「実質的に」有する。したがって、上塗層のホスホリルコリンアクリレートポリマーは、少なくとも80%が非晶質である場合、実質的に非晶質である。
【0096】
図2は、ホスホリルコリンアクリレートポリマー上塗層の化学構造を示す本発明の実施形態を示している。ホスホリルコリンアクリレートポリマー上塗層は、ホスホリルコリン、ラウリル、イソプロピル、及びシラン部分を含む固有の構造を有する。生体適合性ホスホリルコリンアクリレートポリマー上塗層の大きな利点は、その表面の化学的性質である。ホスホリルコリン(PC)は、血球における脂質二重層構造の外側の血液接触面を模した双性イオン機能を有する。PCは、血液適合性、非血栓形成性、動脈組織許容性、及び生体内での長期安定性などの様々な有利な特性を有する。PCは、ポリマーの生体適合性、特にアクリルコポリマーの生体適合性を向上させるために用いられてきた。ラウリル基は、上塗層の薬物保持層との接着を改善し、ポリマーに対する疎水性の程度を微調節する。ヒドロキシプロピル基は、コーティングの完全性及び機械特性を改善する。シラン部分は、架橋剤としての役割を果たす。
【0097】
薬物溶出ステントの開発全体に亘って、ベアメタルステントに比べて安全性に十分な注意を払ってきた。すべての無作為化臨床試験では、1年でステント血栓症の発症率は、ベアメタルステント対照での発症率に等しかった。しかし、近年の分析により、1年を超える時間枠では、より遅発性の血栓症の傾向が示された。したがって、遅発性又は超遅発性血栓症の問題に対してより注意を払っている。上塗層のホスホリルコリンアクリレートポリマーは、架橋して隣接コーティングを形成する全アクリレート骨格の合成ポリマーを有する。PCは、赤血球及び内皮細胞の細胞膜に見られるリン脂質を有するホスホリルコリン頭基の生体模倣性によって、生体適合性ポリマーとして長い間提案されてきた。2つの異なるタイプのステント、すなわちホスホリルコリンアクリレートポリマーの上塗層を有するステントと上塗層を有していないステントの間に、亜急性血栓症の発症率における予想外の差異が確認された。2年で確認されたステント血栓症の発症率は、PCを含むポリマーの上塗層を有するステントの方が、上塗層を備えていないステントよりも統計的に低い。これら両方の装置は、同じステントが基であり、無作為化臨床試験の一部であったため、この予想外の結果が、薬物か、又は上塗層におけるホスホリルコリンアクリレートポリマーの存在か、或いは両方の存在によると結論することができる。薬物ABT−578は、亜急性ステント血栓症の発症率を低下させないことが知られているため、上塗層コーティングのホスホリルコリンアクリレートポリマーがステント血栓症の発症率を低下させる有望な候補であることを示唆している。これにもかかわらず、ホスホリルコリンアクリレートポリマーの上塗層を備えたステントは、ステント血栓症に対して高い安全性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス本体と、
前記デバイス本体の上に設けられた任意選択の下塗層と、
前記デバイス本体又は前記下塗層(選択された場合)の上に設けられた、1つ又は複数の治療薬を含む薬物保持層と、
前記薬物保持層の上に最外層として設けられた、ホスホリルコリンアクリレートポリマーを含む上塗層と
を備えた埋め込み型医療デバイス。
【請求項2】
ステントである請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項3】
前記ホスホリルコリンアクリレートポリマーは、ポリ(2−(メタクリロイルオキシエチル)−2−(トリメチルアンモニウムエチル)−リン酸,分子内塩)−co−(n−ドデシルメタクリレート)−co−(ヒドロキシプロピルメタクリレート)−co−(3−トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)を含む請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項4】
(トリメチルアンモニウムエチル)−リン酸,分子内塩)と(n−ドデシルメタクリレート)と(ヒドロキシプロピルメタクリレート)と(3−トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)との構成単位の比(wt/wt)は概ね28.8:50.7:15.3:5.3からである請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項5】
前記ホスホリルコリンアクリレートポリマーは実質的に非晶質である請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項6】
前記薬物保持層は、アクリレート又はメタクリレートポリマーを含む請求項1に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項7】
前記アクリレート又はメタクリレートポリマーは、約20,000〜約600,000ダルトンの平均分子量を有する請求項6に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項8】
前記アクリレート又はメタクリレートポリマーは、ポリ(ブチルメタクリレート)を含む請求項6に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項9】
前記薬物保持層は、以下の式を有するポリ(アクリレート)又はポリ(メタクリレート)を含む請求項6に記載の埋め込み型医療デバイス。
【化1】


(式中、mは0.005〜0.90、nは0.10〜0.995、m+n=1、xは65〜6960、R及びRは、水素及びメチルからなる群から独立に選択され、炭化水素基は、不飽和又は飽和の分枝鎖又は直鎖C〜C16脂肪族部分、脂環式部分、又は芳香族部分からなる群から選択される)
【請求項10】
前記極性基は、アルキルエーテル及びアミドからなる群から選択される請求項9に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項11】
前記アルキルエーテルは、以下の式からなる群から選択される請求項10に記載の埋め込み型医療デバイス。
【化2】

【請求項12】
前記アミドは、以下の式からなる群から選択される請求項10に記載の埋め込み型医療デバイス。
【化3】

【請求項13】
脈管疾患を治療する方法であって、
治療を必要とする患者の脈管に、
デバイス本体と、
前記デバイス本体の上に設けられた任意選択の下塗層と、
前記デバイス本体又は前記下塗層(選択された場合)の上に設けられた、1つ又は複数の治療薬を含む薬物保持層と、
前記薬物保持層の上に最外層として設けられた、ホスホリルコリンアクリレートポリマーを含む上塗層と
を備えた埋め込み型医療デバイスを配置するステップ
を含む方法。
【請求項14】
前記デバイスはステントである請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ホスホリルコリンアクリレートポリマーは、ポリ(2−(メタクリロイルオキシエチル)−2−(トリメチルアンモニウムエチル)−リン酸,分子内塩)−co−(n−ドデシルメタクリレート)−co−(ヒドロキシプロピルメタクリレート)−co−(3−トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)を含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
(トリメチルアンモニウムエチル)−リン酸,分子内塩)と(n−ドデシルメタクリレート)と(ヒドロキシプロピルメタクリレート)と(3−トリメトキシシリル)−プロピルメタクリレート)との構成単位の比(wt/wt)は概ね28.8:50.7:15.3:5.3からである請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ホスホリルコリンアクリレートポリマーは実質的に非晶質である請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記薬物保持層は、アクリレート又はメタクリレートポリマーを含む請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記アクリレート又はメタクリレートポリマーは、約20,000〜約600,000ダルトンの平均分子量を有する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アクリレート又はメタクリレートポリマーは、ポリ(ブチルメタクリレート)を含む請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記薬物保持層は、以下の式を有するポリ(アクリレート)又はポリ(メタクリレート)を含む請求項18に記載の方法。
【化4】


(式中、mは0.005〜0.90、nは0.10〜0.995、m+n=1、xは65〜6960、R及びRは、水素及びメチルからなる群から独立に選択され、炭化水素基は、不飽和又は飽和の分枝鎖又は直鎖C〜C16脂肪族部分、脂環式部分、又は芳香族部分からなる群から選択される)
【請求項22】
前記極性基は、アルキルエーテル及びアミドからなる群から選択される請求項21に記載の埋め込み型医療デバイス。
【請求項23】
前記アルキルエーテルは、以下の式からなる群から選択される請求項22に記載の埋め込み型医療デバイス。
【化5】

【請求項24】
前記アミドは、以下の式からなる群から選択される請求項22に記載の埋め込み型医療デバイス。
【化6】

【請求項25】
前記脈管疾患はアテローム性動脈硬化症である請求項13に記載の方法。
【請求項26】
前記脈管疾患は再狭窄である請求項13に記載の方法。
【請求項27】
前記脈管疾患は不安定プラークである請求項13に記載の方法。
【請求項28】
前記脈管疾患は末梢脈管疾患である請求項13に記載の方法。
【請求項29】
前記脈管疾患は遅発性ステント血栓症である請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−527262(P2010−527262A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508476(P2010−508476)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/060110
【国際公開番号】WO2008/144130
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】