説明

血流量および血液量を測定するためのシステム、方法、および装置

被験者の器官の血流量を、器官に送出した出力高周波信号および器官から受け取った入力高周波信号を使用して算出する方法であって、出力高周波信号に対する入力高周波信号の位相偏移を決定し、前記位相偏移を使用して器官内の血流量を算出することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の身体の電気信号の測定に関し、さらに詳しくは、血液量または血流量、例えば一回拍出量、心拍出量、脳腔内血液量などを決定するための被験者の身体の電気信号の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
心疾患は、現代世界における罹患率および死亡率の主要な原因である。一般的に、心疾患は(i)中枢神経系コントロールから心筋へのインパルスが規則的な心拍数を提供することができない自律神経系の不全、および/または(ii)たとえ患者が規則的な心拍数を持っていてもその収縮力が不十分である、心筋自体の不十分な強度によって引き起こされることがある。いずれの場合も、疾患のある心臓によって供給される血液量つまり血流量は異常であり、患者の循環の状態の評価が何より重要であることは理解される。
【0003】
心拍数および血圧のような最も簡単な測定が多くの患者に適しているかもしれないが、心血管の異常がある場合には、より詳細な測定が必要である。
【0004】
心拍出量(CO)は、ある時間中に心臓によって送り出される血液の量であり、該時間は一般的に1分であるとみなされる。心拍出量は、心拍数(HR)と、一回拍出量(SV)としても知られる各心拍で送り出される血液の量との積である。例えば、立位で静止時の一回拍出量は、大部分の成人で平均して60から80mlの間の血液となる。したがって、毎分80回の安静時心拍数で、安静時心拍出量は毎分4.8から6.4Lの間で変化する。
【0005】
一般的な臨床上の問題として、低血圧(低い血圧)の問題がある。これは、心拍出量が低いため、かつ/または全身の血管抵抗の低さのために発生することがある。この問題は、広範囲の患者に、特に集中治療室または術後ハイデペンデンシーユニット(high dependency unit)にいる患者に発生し得る。これらの高リスク患者では、中心静脈カテーテルを介する中心静脈圧の測定、および末梢動脈カテーテルを介する動脈血圧の連続表示を含め、より詳細な監視が一般的に確立される。
【0006】
上記の測定に加えて、心拍出量の測定は極めて重要である。例えば動脈圧測定と組み合わせると、心拍出量は全身の血管抵抗を算出するために使用することができる。心拍出量の測定は、患者の初期心血管状態を確立するため、および輸血、変力薬の注入、(全身の血管抵抗を増大または低減する)血管作用薬の注入、または薬理学的にもしくはペーシングレート(pacing rate)を調整することによってのいずれかで心拍数を変化させることなど、様々な治療的介入に対する応答を監視するための両方に有用である。
【0007】
心拍出量を測定する幾つかの方法が現在知られている。一つのそのような方法は、1870年にアドルフ・フィックによって記載され、フィック法として知られている。この方法は、血液が肺を通過するときに血液によって捕捉される酸素の量が、呼吸中に肺によって取り込まれる酸素の量に等しいという観察に基づく。フィック法では、呼吸中に身体によって取り込まれた酸素の量、および静脈血と動脈血との間の酸素濃度の差を測定し、これらの測定値を使用して、心拍出量に等しい、肺に送り出される血液の量を算出する。より具体的にいえば、フィックの方法では、心拍出量は酸素消費量と動静脈酸素濃度差との間の比率に等しい。
【0008】
酸素消費量は一般的に口で非侵襲的に測定される一方、血中濃度は混合静脈および末梢動脈採血から測定される。酸素消費量は、特定の時間にわたる呼気ガスの量、および呼気ガスと吸気ガスとの間の酸素濃度の差を測定することによって導出される。
【0009】
フィック法は多くの欠点を免れない。第一に、患者が気管内チューブを持たない限り、フェースマスクまたはマウスピースの周りの漏れのため、ガスの正確な収集が困難である。第二に、ガスの分析は、吸気ガスが空気である場合には簡単であるが、酸素富化空気の場合には問題がある。第三に、動静脈酸素含有量差は、混合静脈(つまり肺動脈)の酸素含有量を測定しなければならず、したがって試料を得るために肺動脈カテーテルが必要であり、それは患者に合併症をもたらすおそれがあるので、さらなる問題を呈する。
【0010】
フィックの原理は、酸素消費量に比較してより容易に決定することのできるCO排出量を測定することによって、酸素の代わりにCOを用いて適用することもできる。フック法のこの変形では、心拍出量は、CO排出量の変化を短い再呼吸時間から結果的に得られた呼気終末COの変化で除算した値に比例する。これらの変化は、呼吸回路に再呼吸量を周期的に追加するセンサによって達成され、測定される。この方法はガスの正確な測定を実行する能力を改善するが、上記限界の大部分、特にフェースマスクの周りの漏れに関連する限界を依然として免れない。
【0011】
別の方法は、心臓の多種多様な構造および機能異常の診断および監視をもたらす経食道的心エコー検査法(TOE)による。TOEは、赤血球から反射される超音波のドップラ偏移を記録することによって、血流速度の測定から心拍出量を導出するために使用される。1心周期中の瞬間血流速度の積分である時間速度積分は、特定部位(例えば左心室流出路)の血流に対して得られる。時間速度積分に断面積および心拍数を乗算して心拍出量を出す。非常に不正確である以外に、該方法は次の不利点を有する。(i)該システムは熟練オペレータしか操作することができない。(ii)該システムのプローブのサイズのため、重度の鎮静または麻酔が必要である。(iii)該システムは高価である。かつ(iv)プローブは、専門家オペレータがいなければ、連続心拍出量の読みを提供するように構成することができない。
【0012】
米国特許第6485431号は、血圧計カフまたは血圧トノメータによって測定された動脈圧を使用して動脈系の拡張期の平均動脈圧および時定数を算出する、比較的単純な方法を開示している。次いで、動脈系のコンプライアンスが表から決定され、時定数で除算した平均動脈圧とコンプライアンスの積として心拍出量を算出するために使用される。しかし、この方法は非常に不正確であり、かつ心拍出量の概算しか提供することができない。
【0013】
心拍出量を測定するさらなる方法は、熱希釈法と呼ばれる。この方法は、血液とは異なる温度にある生理食塩水のボーラスの希釈から心拍出量を推定することのできる原理に基づく。熱希釈法は、細いカテーテルを静脈から心臓を通して肺動脈に挿入することを含む。該カテーテルの先端に装着されたサーミスタは、肺動脈の温度を感知する。生理食塩水のボーラス(容積約5ml)が、心臓の右心房またはその付近に配置されたカテーテルの開口を通して急速に注入される。生理食塩水は心臓で血液と混合し、右心房の温度を一時的に降下させる。二つの温度が同時に測定される。血液温度はカテーテルのサーミスタセンサによって測定され、注入される生理食塩水の温度は一般的にプラチナ温度センサによって測定される。心拍出量は、温度降下の曲線の下の面積に反比例する。
【0014】
カテーテルの肺動脈内への配置は高価であり、かつ死亡、感染症、出血、不整脈、頸動脈、胸管、大静脈、気管、右心房、右心室、僧帽弁および三尖弁、ならびに肺動脈の損傷の危険性を伴う。肺動脈カテーテルの配置が生存率を改善することを示唆する証拠はほとんど無く、罹患率および死亡率の増加を示唆する証拠は幾つかある。
【0015】
胸部電気バイオインピーダンスとして知られる非侵襲的方法は、米国特許第3340867号に初めて開示され、最近、医療および産業界の注意を引き始めた[米国特許第3340867号、第4450527号、第4852580号、第4870578号、第4953556号、第5178154号、第5309917号、第5316004号、第5505209号、第5529072号、第5503157号、第5469859号、第5423326号、第5685316号、第6485431号、第6496732号、および第6511438号、米国特許出願第20020193689号]。胸部電気バイオインピーダンス法は、患者へのリスク無しで連続心拍出量測定をもたらすという利点を有する。
【0016】
典型的なバイオインピーダンスシステムは、被験者の頸の基部および剣状突起の高さで下胸部の周囲に接続された、周状バンド電極の四極性アレイを含む。上頸部および下胸部のバンド電極に一定大きさの交流が流れるときに、胸部電気インピーダンスに比例する(またはアドミタンスに相互比例する)電圧が、内側頸部および胸部バンド電極の間で測定される。時間的に一回拍出量と調和する心同期インピーダンス変化の部分はもっぱらかつ一義的に、心周期の拡張および収縮中の大動脈の容積の変化のみに帰する。
【0017】
既存のバイオインピーダンスシステムの主な不利点は、そのようなシステムで利用されるバイオインピーダンス検出器が、幾つかの連続的レベルの増幅器回路を必要とすることである。各増幅器回路は、身体セグメントで検出された信号からの入力ノイズを望ましくないほど増幅し、それによって適正な信号対雑音比を維持するために測定回路の大きさの増大が必要になる。複数の増幅器回路はプリント回路基板上にかなりの面積を必要とし、かつ多数の回路部品を利用し、それによってシステムのコストおよび電力消費量が増大する。複数増幅器システムの複雑性は、システムの信頼性を低下し、必要な保守の頻度を増大する。
【0018】
バイオインピーダンスシステムの典型的なプリント回路基板は、一つまたはそれ以上の帯域通過フィルタ、半波整流回路、および一つまたはそれ以上の低域通過フィルタを含む。ノイズレベルは帯域通過フィルタの帯域幅に比例することを当業者は理解されるであろう。現在入手可能な帯域通過フィルタは一般的に約5%の周波数比を特徴とするので、ノイズのかなりの部分は帯域通過フィルタを通過し、したがって半波整流回路内に取り込まれる。この問題は、胸部内のインピーダンスの典型的な変化が約0.1%であるという事実によっていっそう悪化し、それによってそのようなシステムに対しかなり低い信号対雑音比をもたらす。
【0019】
バイオインピーダンス測定で認識される問題は、心血管バイオインピーダンス信号と呼吸器バイオインピーダンス信号とを分離し弁別することの難しさである。後者は一般的に前者よりずっと大きい。バイオインピーダンス測定の効率を高めるための最適方法は、米国特許第4870578号に開示されている。この方法では、呼吸によって生じる電気抵抗の変化は、心臓の電気活動と同期させたクランプ回路によって抑制される。該クランプ回路は、機械的収縮期の開始に先行する時間に、測定装置の電圧をベースライン基準電圧にクランプするように同調される。機械的収縮期中に心臓の血液送り出し動作によって生じるバイオインピーダンスの変化が測定されるように、電圧クランプは心臓の機械的収縮期中に解放される。測定の効率のある程度の改善は達成されるが、この方法は依然としてかなり低い信号対雑音比を免れない。
【0020】
さらに、従来技術は、正確な測定を提供する能力を有意に低下する実質的に高いレベルのAMノイズの制限を免れない。
【0021】
したがって、上記限界の無い、血流量を測定するためのシステム、方法、および装置の必要性が広く認識されており、それらを持つことは非常に有利であろう。
【発明の開示】
【0022】
本発明の一態様では、被験者の器官の血流量を、器官に送出した出力高周波信号および器官から受け取った入力高周波信号を使用して算出する方法であって、出力高周波信号に対する入力高周波信号の位相偏移を決定し、位相偏移を使用して器官内の血流量を算出することを含む方法が提供される。
【0023】
下述する本発明の好適な実施形態におけるさらなる特徴では、血流量を算出するための位相偏移の使用は、位相偏移と血流量との間の直線関係を使用することを含む。
【0024】
本発明の別の態様では、被験者の器官の血流量を、器官に送出した出力高周波信号および器官から受け取った入力高周波信号から算出するための装置であって、出力高周波信号に対する入力高周波信号の位相偏移を決定するための信号処理装置、および位相偏移を使用して器官内の血流量を算出するための血流量算出器を備えた装置が提供される。
【0025】
下述する本発明の好適な実施形態のさらなる特徴では、血流量算出器は、位相偏移と血流量との間の直線関係を使用して血流量を算出するように動作可能である。
【0026】
本発明のさらに別の特徴では、被験者の器官の血流量を測定するためのシステムであって、出力高周波信号を発生するための高周波発生器と、被験者の皮膚に接続できるように設計され、器官に出力高周波信号を送出し、かつ器官の入力高周波信号を感知するための複数の電極と、出力高周波信号に対する入力高周波信号の位相偏移であって、器官内の血流量を示す位相偏移を決定するための信号処理装置とを備えたシステムが提供される。
【0027】
下述する本発明の好適な実施形態のさらなる特徴では、信号処理装置は、実質的に一定のエンベロープの入力高周波信号を提供するために入力高周波信号の振幅変調を低減または除去するように設計されかつ構成されたエンベロープ除去装置を備える。
【0028】
記載された好適な実施形態のさらに別の特徴では、信号処理装置は、高周波発生器および複数の電極の少なくとも一部と電気的に導通し、出力高周波信号と入力高周波信号を混合して、血流量を示す混合高周波信号を提供するように設計されかつ構成されたミクサと、混合高周波信号の一部分を除去して、混合高周波信号の残部の信号対雑音比を実質的に増加するための電子回路とを備える。
【0029】
記載する本発明の好適な実施形態のさらに別の特徴では、システムは、混合高周波信号の残部を使用して、一回拍出量、心拍出量、脳腔内血流量、および動脈血流量から成る群から選択される少なくとも一つの量を算出するためのデータプロセッサをさらに備える。
【0030】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、システムは、データプロセッサと連絡して被験者の心拍数を制御するように動作可能なペースメーカをさらに備え、データプロセッサは少なくとも一つの量の値に従って、ペースメーカを電子的に制御するようにプログラムされる。
【0031】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、システムは、データプロセッサと連絡して被験者に薬剤を投与するように動作可能な薬剤投与装置をさらに備え、データプロセッサは少なくとも一つの量の値に従って、薬剤投与装置を電子的に制御するようにプログラムされる。
【0032】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、システムは、データプロセッサと連絡して心拍出量を増加するように動作可能な心臓補助装置をさらに備える。
【0033】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、心臓補助装置は、心組織の一部分の拡張を制約し、これによって心拍出量を増大するように設計されかつ構成された強化部材を備える。
【0034】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、複数の電極の少なくとも一部は、被験者に付ける電極の配向に関係なく、電極を通して送出された電気信号に対して実質的に一定の感度を有するように設計されかつ構成される。
【0035】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、複数の電極の少なくとも一部は、取り付け材を備える。
【0036】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、システムは、複数の電極の少なくとも一部と電気的に導通して、被験者の第一部位と第二部位との間の電圧を検出し、かつ該電圧に応答して器官のインピーダンスおよび/または血行動態リアクタンスを示す入力高周波信号を発生するための検出器をさらに備える。
【0037】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、システムは、電圧を感知するための少なくとも一つのセンサであって、器官内の、器官からの、および器官への血流量の関数である大きさを有する信号を発生するように設計されかつ構成された少なくとも一つのセンサをさらに備える。
【0038】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、電子回路は、少なくとも一回の時間微分を実行して、器官のインピーダンスおよび/または血行動態リアクタンスのそれぞれの微分を提供するための微分器をさらに備える。
【0039】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、微分器は、デジタル微分器およびアナログ微分器から成る群から選択される。
【0040】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、システムは、血流量を表示するための表示装置をさらに備える。
【0041】
本発明のさらに別の態様では、被験者の器官内の血流量を測定する方法であって、出力高周波信号を発生し、該出力高周波信号を器官へ送出して器官の入力高周波信号を感知し、出力高周波信号に対する入力高周波信号の位相偏移を決定し、該位相偏移を使用して器官内の血流量を算出することを含む方法が提供される。
【0042】
下述する本発明の好適な実施形態におけるさらなる特徴では、血流量を算出するための位相偏移の使用は、位相偏移と血流量との間の直線関係を使用することを含む。
【0043】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、該方法は、実質的に一定のエンベロープの入力高周波信号を提供するように入力高周波信号の振幅変調を低減または除去することをさらに含む。
【0044】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、振幅変調を低減または除去することは、実質的に一定のエンベロープの入力高周波信号の位相変調を維持することを含む。
【0045】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、該方法は、出力高周波信号および入力高周波信号を混合して血流量を示す混合高周波信号を提供し、混合高周波信号の一部分を除去して混合高周波信号の残部の信号対雑音比を実質的に増大することをさらに含む。
【0046】
記載する好適な実施形態のさらなる特徴では、混合は、高周波和および高周波差を提供することを含む。
【0047】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、混合高周波信号の一部分の除去は、高周波和を除去するように設計されかつ構成された低域通過フィルタによる。
【0048】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、該方法は、混合高周波信号の残部をアナログ増幅することをさらに含む。
【0049】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、該方法は、混合高周波信号の残部をデジタル化することをさらに含む。
【0050】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、該方法は、混合高周波信号の残部を使用して、一回拍出量、心拍出量および脳腔内血液量、ならびに動脈血流量から成る群から選択された少なくとも一つの量を算出することをさらに含む。
【0051】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、動脈血流量は、外頸動脈血流量、内頸動脈血流量、尺骨血流量、撓骨血流量、上腕血流量、総腸骨血流量、外腸骨血流量、後脛骨血流量、前脛骨血流量、腓骨血流量、外側足底血流量、内側足底血流量、および深足底血流量から成る群から選択される。
【0052】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、該方法は、少なくとも一つの量の値に従って被験者の心拍数を制御することをさらに含む。
【0053】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、被験者の心拍数の制御はペースメーカによる。
【0054】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、該方法は、少なくとも一つの量の値を使用して薬剤の量および種類を選択し、かつ該量および種類の薬剤を被験者に投与することをさらに含む。
【0055】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、該方法は、被験者の心臓の一部分への外科的アクセスの部位を提供し、かつ心拍出量を増加させるように、かなりの時間心臓の該一部分の心拡張の軽減を維持することをさらに含む。
【0056】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、器官への出力高周波信号への送出および器官の入力高周波信号の感知は、被験者の皮膚に複数の電極を接続することによる。
【0057】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、複数の電極の個数は、姿勢変化の影響、呼吸の影響、および運動の影響から成る群から選択された少なくとも一つの影響から入力高周波信号を実質的に切り離すように選択される。
【0058】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、複数の電極は二つの電極を含む。
【0059】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、複数の電極は三つの電極を含む。
【0060】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、複数の電極は四つの電極を含む。
【0061】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、複数の電極の接続は、被験者に付ける電極の配向に関係なく、電極を通して送出される電気信号に対し実質的に一定の感度を有するように行われる。
【0062】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、複数の電極の少なくとも一部は、被験者の外部器官に付ける電極の配向に関係なく、電極を通して送出される電気信号に対し実質的に一定の感度を有するように、被験者の外部器官の少なくとも一部分に巻き付けるように設計されかつ構成された少なくとも一つの長尺導電材を含む。
【0063】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、外部器官は胸部、臀部、大腿部、頸部、頭部、腕、前腕、腹部、臀筋、脚、および足から成る群から選択される。
【0064】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、該方法は、被験者の第一部位と第二部位との間の電圧を検出し、該電圧に応答して器官のインピーダンスおよび/または血行動態リアクタンスを示す入力高周波信号を発生することをさらに含む。
【0065】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、該方法は、少なくとも一回の時間微分を実行し、それによって器官のインピーダンスおよび/または血行動態リアクタンスのそれぞれの導関数を提供することをさらに含む。
【0066】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、導関数は一階導関数および二階導関数から成る群から選択される。
【0067】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、時間微分の実行は、デジタル微分およびアナログ微分からなる群から選択される手順によって達成される。
【0068】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、該方法は、表示装置を使用して血流量を表示することをさらに含む。
【0069】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、表示装置は血流量を時間の関数として表示することができる。
【0070】
本発明の追加の態様では、被験者の器官内の血流量を、器官に送出した出力高周波信号および器官から受け取った入力高周波信号から決定するための装置であって、入力高周波信号の振幅変調を低減または除去し、それによって実質的に一定のエンベロープの入力高周波信号を提供するように設計されかつ構成されたエンベロープ除去装置を有する電子回路と、実質的に一定のエンベロープの入力高周波信号を使用して器官内の血流量を決定する信号処理装置とを備えた装置が提供される。
【0071】
下述する本発明の好適な実施形態のさらなる特徴では、信号処理装置は、実質的に一定のエンベロープの出力高周波信号に対する入力高周波信号の位相偏移であって、器官内の血流量を示す位相偏移を決定するように設計されかつ構成される。
【0072】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、エンベロープ除去装置は、入力高周波信号の位相偏移を維持するように設計されかつ構成される。
【0073】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、エンベロープ除去装置は、リミッタ増幅器を備える。
【0074】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、該装置は、実質的に一定のエンベロープの入力高周波信号および出力高周波信号を混合し、それによって混合高周波信号を提供するためのミクサをさらに含む。
【0075】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、電子回路は、混合高周波信号の一部分を除去して混合高周波信号の残部の信号対雑音比を実質的に高めるように設計されかつ構成される。
【0076】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、ミクサは、高周波和および高周波差を提供するように動作可能である。
【0077】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、電子回路は、高周波和を除去するための低域通過フィルタを備える。
【0078】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、電子回路は、混合高周波信号の残部を増幅するためのアナログ増幅回路を備える。
【0079】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、電子回路は、混合高周波信号の残部をデジタル化するためのデジタイザを備える。記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、電子回路は、複数の電極と被験者の器官との間のインピーダンス差に対する入力高周波信号の感度を最小化するように設計されかつ構成される。
【0080】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、電子回路は、複数の電極と被験者の器官との間のインピーダンス差より実質的に大きいインピーダンスによって特徴付けられる少なくとも一つの差動増幅器を備える。
【0081】
記載する好適な実施形態のさらに別の特徴では、信号対雑音比は少なくとも10dB、より好ましくは少なくとも20dB、最も好ましくは少なくとも30dB増大される。
【0082】
本発明は、先行技術をはるかに超える、血流量を測定および/または算出するためのシステム、方法、および装置を提供することによって、現在公知の構成の欠点に対処することに成功している。
【0083】
特に定義しない限り、本書で使用するすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の通常の熟練者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本書に記載するものと同様または同等の方法および材料を、本発明の実施および試験に使用することができるが、適切な方法および材料を下述する。競合する場合、定義を含め、特許明細書が支配する。さらに、材料、方法、および実施例は単なる例示であって、限定の意図は無い。
【0084】
本発明の方法およびシステムの実現は、選択されたタスクまたはステップをを手動的に、自動的に、またはそれらを組み合わせて、実行または完遂することを含む。さらに、本発明の方法およびシステムの好適な実施形態の実際の計装および装備に応じて、幾つかの選択されたステップはハードウェアによって、もしくはいずれかのファームウェアのいずれかのオペレーティングシステム上のソフトウェアによって、またはそれらの組合せによって、実現することができる。例えば、ハードウェアとして、本発明の選択されたステップは、チップまたは回路として実現することができる。ソフトウェアとして、本発明の選択されたステップは、いずれかの適切なオペレーティングシステムを使用するコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実現することができる。いずれの場合でも、本発明の方法およびシステムの選択されたステップは、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームのような、データプロセッサによって実行されると記述することができる。
【0085】
本発明をここで、単なる例として、添付の図面を参照しながら説明する。今、図面に関連して特に言及するに当たり、図示する細部は例示として、単に本発明の好適な実施形態のわかり易い考察を目的としており、本発明の原理および概念的態様を最も有用かつ容易に理解できる説明であると信じられるものを提供するために提示するものであることを強調しておく。これに関し、本発明の構造上の細部を、本発明の基本的な理解に必要である以上に詳しく示そうとはしない。図面に即した説明は、本発明の幾つかの形態を以下に具現することができるかを当業者に明らかにするものである。
【0086】
図1は先行技術の教示に係る従来のバイオインピーダンスシステムの概略図である。
【0087】
図2は本発明の好適な実施形態に係る、被験者の器官内の血流量を測定するためのシステムの概略図である。
【0088】
図3は信号の残部が実質的に増大する信号対雑音比によって特徴付けられるように、信号の一部分を除去するための電子回路の概略図である。
【0089】
図4a〜hは本発明の好適な実施形態に係る電極(c、d、g、およびh)および電極が取り付けられるそれぞれの位置(a、b、e、およびf)の概略図である。
【0090】
図4i−Lは本発明の好適な実施形態に係る電極ステッカーの概略図である。
【0091】
図5は本発明の好適な実施形態に係る、被験者の器官内の血流量を測定するための装置の概略図である。
【0092】
図6は本発明の好適な実施形態に係る、血流量を算出するための装置の概略図である。
【0093】
図7は本発明の好適な実施形態に係る、血流量を算出する方法のフローチャート図である。
【0094】
図8は本発明の好適な実施形態に係る、被験者の器官内の血流量を測定する方法のフローチャート図である。
【0095】
図9aは三つの電極を使用して血流量を測定するためのプリント回路板のブロック図である。
【0096】
図9bは二つの電極を使用して血流量を測定するためのプリント回路板のブロック図である。
【0097】
図9cは四つの電極を使用して血流量を測定するためのプリント回路板のブロック図である。
【0098】
図9dは高周波信号を増幅するための増幅回路のブロック図である。
【0099】
図10a〜bは一回拍出量および心拍出量を決定するために、本発明の好適な実施形態に従って作製された三つの電極を持つプロトタイプシステムを使用して得られた、血行動態リアクタンスの変化およびその測定導関数の監視結果を示す。
【0100】
図10cは従来(先行技術)のシステムを使用して得られたECG信号、バイオインピーダンスの変化、その一階導関数、およびその二階導関数の監視結果を示す。
【0101】
図11a〜bは脳腔内血液量の変化および流量を測定するために作製された二つの電極を持つプロトタイプシステムを使用して得られた、血行動態リアクタンスの変化およびその測定導関数の監視結果を示す。
【0102】
図12aは一回拍出量および心拍出量を決定するために本発明の好適な実施形態に従って作製された四つの電極を持つプロトタイプシステムを使用して得られた、血行動態リアクタンスの変化およびその測定導関数の監視結果を示す。
【0103】
図12bは本発明の好適な実施形態に係る、ECG(二つのリード)、血液波面(左および右)およびCO信号(その一階導関数および二階導関数を含む)から取得されたデータ間の比較を示す。
【0104】
図13は脳腔内血液量の変化および流量を測定するための四つの電極を持つプロトタイプシステムを使用して得られた、血行動態リアクタンスの変化およびその測定導関数の監視結果を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0105】
本発明は、医療診断および/または治療の目的のために多くの血流関連パラメータを決定するために使用できる、被験者の器官の血流量を測定するためのシステム、方法、および装置である。特に本発明は、一回拍出量、心拍出量、脳腔内血液量、および限定されないが、胸部、臀部、大腿部、頸部、頭部、腕、前腕、腹部、臀筋、脚、および足の動脈などの体内の他の動脈における血流量を決定するために使用することができる。
【0106】
図2〜9bに示す本発明をより良く理解するために、最初に、図1に示す血流量を決定するための従来(つまり先行技術)のシステムの構成および動作に言及する。
【0107】
本発明の少なくとも一つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明はその適用が、以下の説明に記載しあるいは図面に示す構成および配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは様々な仕方で実施または実行することができる。また、本書で用いる語法および用語は説明を目的とするものであって、限定とみなすべきではないことを理解されたい。
【0108】
今、図面を参照すると、図1は、周期的制御入力信号に応答して周期的高周波電流出力を発生するための高周波発生器12を含む従来のシステムであり、本書では一般的にシステム10と呼ぶ。システム10は、高周波発生器12から電流出力を運ぶための出力スポット電極14をさらに含む。電極14は人体13の心臓の上および下の部位に接続される。図1に示されているのは、第一対Aおよび第二対Dの二対の部位に接続され、したがって電極の四極性アレイを形成する、二つのスポット電極である。高周波発生器12によって発生する電流は部位対AおよびDの間に流れ、身体13のインピーダンスのため、セグメントA〜Dの電圧降下を引き起こす。
【0109】
システム10はさらに、電気バイオインピーダンス検出器15と、対AおよびDにそれぞれ近接して配置され、BおよびCと指定され、電極14と同様に電極の四極性アレイを形成する、二つの追加部位対間の電圧信号を検出するための四つの追加電極を含む。バイオインピーダンス検出器15は、二つの入力スポット電極17を通して身体13に接続される。検出器15は、電極17によって受け取られる電圧信号に応答して、セグメントB〜Cのインピーダンスを表わす出力信号を発生する。
【0110】
電圧信号は周期的電流の大きさに比例し、かつ対AおよびD(または対BおよびC)間の組織の電気バイオインピーダンスにも比例する。
【0111】
高周波発生器は一般的に、数ミリアンペア二乗平均平方根の大きさ、および数十kHzの周波数の高周波電流を発生する。
【0112】
電圧信号の振幅は、身体セグメントの導電率の変化によって変調される。胸部では、そのような変化は、胸部内の血液量の変化、および主要動脈の血流速度の関数として赤血球の配向による。電圧信号の変調エンベロープは、姿勢、呼吸、心周期、運動アーチファクト、および電気的雑音の変化によって引き起こされる導電率の変化の重畳和である。
【0113】
したがって、血流量の決定は、インピーダンス変化ΔZを測定し、そこから血流量を算出することによる。システム10および血流量を測定するための同様の先行技術システムは、インピーダンスZに対する血流量の依存をモデルとする幾つかの仮定に依存する。より具体的には、胸部インピーダンスの変化は血流の拍動性に起因し、換気(胸部サイズの変化)の影響は無視しうることが仮定されている。
【0114】
さらに、全てのインピーダンス変化は大動脈血液量の変化に起因するが、肺循環は無視され、静脈還流は一定として考えることが仮定されている。従って、全インピーダンスZは一般的に、Z=ρL/Aに近似され、式中、ρは血液の抵抗率であり、Lは電極間の距離であり、Aはその横断面積である。大動脈は円筒形状であり、血液の抵抗率の変化が小さいことを仮定すると、大動脈容積Vの時間依存はV(t)=ρL/Z(t)と書かれることができ、式中、Z(t)=ρL/A(t)である。しかしながら、Z(t)の明白な時間依存の非侵襲性の測定は達成できないこと、そして我々は静的な胸部インピーダンスZのみを測定できることが認識される。
【0115】
(i)血液の抵抗率が胸部組織の抵抗率と同様であり、そして(ii)胸部が大動脈と平行に単一の室を有する円筒形状を持つという仮定の下では、Zは1/Z=1/Z+1/Zを満足し、式中、ZおよびZはそれぞれ胸部および大動脈のインピーダンスである。さらに、|Z−Z|<1%を仮定すると、大動脈容積の拍動性変化ΔVはΔV=ρL/ZΔZに近似されることができる。ΔVと一回拍出量の間の関係としてSVは血液の正味の流量に依存し(SV=V+入ってくる流量−出ていく流量)、追加のモデル化はSVを外挿するために作られなければならない。これらのモデルは大動脈弁閉鎖の独立した評価、および大動脈インピーダンスの最大時間導関数(dZ/dt)maxと心収縮拍出時間TのΔVの導関数への代入:
SV=d(ΔV)/dt=ρL/ZT(dZ/dt)max
を含むことができる。
【0116】
インピーダンスの時間導関数はインピーダンス変化ΔZに比例する。しかし、一般的に、インピーダンス変化ΔZの値はインピーダンスZの値より2〜4桁小さく、したがって信号対雑音比によるΔZの測定の質に影響を及ぼす。受け取る信号のノイズ成分は、一つまたはそれ以上の帯域通過フィルタを使用して、低閾値未満および高閾値超過の周波数を除去することにより低減されることができる。それでもなお、公知の帯域通過フィルタの効率は不十分であり、結果的に得られる信号は依然として、そこに取り込まれるかなりの量のノイズ成分を有する。
【0117】
さらに、SVを算出するための上記式は測定全体の集計された誤差に寄与する多くの測定依存係数を含む。特に、静的インピーダンスZ、電極間の距離Lおよび/または心収縮拍出時間Tの測定の誤差は一回拍出量の不確定性を有意に増大する。
【0118】
さらに、システム10および他の先行技術システムによって実施されたインピーダンス測定は、一回拍出量の不確実性をさらに増大するかなりのAMノイズを免れない。
【0119】
本発明の実施形態はここでは一般的にシステム20と呼ばれる被験者の器官の血流量を測定するためのシステムを提供することによって上記欠点を成功裏に克服する。
【0120】
今、図2を参照すると、それは本発明の好ましい実施形態によるシステム20の概略図である。システム20は好ましくは、出力高周波信号を発生するための高周波発生器22を備える。発生器22は、システム10の高周波発生器12のような、しかしそれに限定されない、任意の高周波発生器として具現することができる。システム20はさらに、被験者21の皮膚に接続される複数の電極25を備える。電極25は発生器22によって発生された出力高周波信号24を送出し、被験者21の器官に由来する入力高周波信号26を感知する。
【0121】
システム20は、信号24に対する信号26の位相偏移Δφを決定するための信号処理装置23を備えることが好ましい。本発明の発明者によって、発生器22によって発生される出力信号に対する器官から受け取った入力信号の位相偏移は器官内の血流量を示すことが発見された。従って、本発明の好適な実施形態によれば、血流量は位相偏移を使用して決定される。
【0122】
血流量を決定するためにΔφを使用する利点は、血流量とΔφの間の関係が、インピーダンスが使用される先行技術の測定技術(例えば上のシステム10)と比較して、依存する測定依存量が少ないことである。特に、本発明の発明者によって、心収縮拍出時間Tからなる比例係数を伴って、Δφと血流量の間に直線関係があることが見出された。例えば、一回拍出量SVは関係式SV=const.×T×Δφを使用して算出されることができ、心拍出量COは関係式CO=const.×T×Δφ×HRを使用して算出されることができ、式中、HRは被験者の心拍数(例えば1分あたりの拍動の単位)であり、「const.」は例えば校正曲線を使用して見出されることができる定数である。当業者によって認識されているように、SVおよびCOについての式からLおよびZをなくすことは、得られた値とLおよびZの測定に関連した誤差の間の絡み合いが全くないので、得られた値の不確実性を有意に減少する。
【0123】
本発明の好適な実施形態によれば、信号処理装置23は信号26の振幅変調を減少またはより好ましくは除去するエンベロープ除去装置35を備える。所望によりおよび好ましくは、装置35は信号26の位相変調を維持する。装置23によって発生した信号は図2において26′の数字によって示される。エンベロープ除去装置35に対する入力(信号26)は一般的に、かなりの量のAMノイズを持ち、それは、位相および振幅変調の両方を含む信号ν26=ν(t)cos(ωt+φ(t))として制限されずに記載されることができる。本発明の好適な実施形態では、装置35は実質的に一定のエンベロープを有する信号(信号26′)を発生する(例えばν26′=νcos(ωt+φ(t))、式中νは実質的に一定である)。したがって、信号26′は信号26の位相(または周波数)変調を表す。信号26′は例えばリミッタ増幅器を使用して作られてもよく、リミッタ増幅器は信号26を増幅し、振幅変調が除去されるようにそれらの振幅を制限する。振幅変調の除去の利点は入力と出力信号の間の位相偏移Δφのより良好な決定を可能にすることである。
【0124】
位相偏移は器官から受け取った高周波信号のスペクトルのいかなる周波数成分に対しても決定されることができる。例えば、一つの実施形態では、位相偏移は基本周波数成分から決定されることが好ましく、別の実施形態では、位相偏移は第二周波数成分などから決定されることが好ましい。あるいは、位相偏移は例えば適切な平均化アルゴリズムを使用して複数の周波数成分を使用して決定されることができる。
【0125】
処理装置23は、発生器22および電極25の少なくとも一部と電気的に導通し、血流量を示す混合高周波信号30を提供するために、信号24および信号26′を混合するためのミクサ28を備えることが好ましい。信号24および26′は、混合の前に実行することのできる任意選択的なアナログ処理手順(例えば増幅)に応じて、一つより多いチャネルを通してミクサ28に入力することができる。
【0126】
例えば、一つの実施形態では、信号24および26は両方とも、信号を電極25との間で伝達するために使用される端子から直接ミクサ28に入力することができる。別の実施形態では、信号26は、信号26を処理するように設計された追加装置27を介して入力することができる。追加の実施形態では、信号24は発生器22から入力することができ、その場合、混合の前に特定のアナログ処理手順が実行される。
【0127】
ミクサ28は、二重平衡高周波ミクサおよび不平衡高周波ミクサのような、しかしそれらに限定されない、任意の公知の高周波ミクサとすることができる。本発明の好適な実施形態では、混合高周波信号30は複数の高周波信号から構成され、それは一つの実施形態では、高周波和および高周波差とすることができる。和および差は、例えば信号24および信号26がそれらによって乗算されるようにミクサ28を選択することによって達成することができる。二つの周波数間の乗算は周波数和および周波数差と同等であるので、ミクサ28は、所望の高周波和および高周波差から構成される信号を出力する。
【0128】
高周波和および高周波差の生成の利点は、高周波和が血流量を示す信号およびかなりの量の電気ノイズの両方を含む一方、高周波差は概してノイズを含まないことであることを、当業者は理解するであろう。
【0129】
したがって、本発明は、問題としている結果が測定数量より約2〜4桁小さい、関連測定に伴う電気ノイズを最小化するための効率的な技術を提供する。
【0130】
本発明の好適な実施形態によれば、システム20は、信号30の残部31が実質的に増大された信号対雑音比を持つように信号30の一部分を除去する電子回路32をさらに備える。
【0131】
今、図3を参照すると、それは回路機構32の概略図である。本発明の好適な実施形態では、回路機構32は、信号の高周波成分を除去する低域通過フィルタ34を含む。低域通過フィルタ34は、ミクサ38が和および差を出力する実施形態では特に有用であり、その場合低域通過フィルタは高周波和を除去し、上述の通りほぼノイズを含まない高周波差を残す。
【0132】
低域通過フィルタ34は、システム20を採用する特定のシステムの高周波差に従って、設計されかつ構成されることができる。フィルタ34の賢明な設計は、残部31のノイズ成分を実質的に低減する。例えば、従来のバイオインピーダンスシステムでは、受け取る信号のかなりの量のノイズは残部信号内に取り込まれ、したがってそれは約2kHzの帯域幅によって特徴付けられる。出力高周波信号24を含めることにより、かつそれを入力高周波信号26と混合することにより、結果的に得られる信号のノイズは、従来システムのノイズ帯域幅より少なくとも1桁低い帯域幅によって特徴付けられることが、本発明の発明者によって明らかにされた。
【0133】
本発明の好適な実施形態では、ミクサ28および回路機構32は、信号対雑音比を少なくとも20dB、より好ましくは25dB、最も好ましくは30dB増大するように設計されかつ構成される。
【0134】
回路機構32は、信号30の残部31を増幅するためのアナログ増幅回路36を備えることが好ましい。回路36が信号31を増幅することができることを前提として、アナログ増幅回路36の構成および設計は限定されない。増幅回路36の非限定例については、本書で後出する実施例の部でさらに詳述する。
【0135】
本発明の好適な実施形態では、回路機構32は、信号31をデジタル化するためのデジタイザ38をさらに備える。信号31のデジタル化は、デジタル化された信号の例えばマイクロプロセッサによるさらなるデジタル処理のために有用である。
【0136】
加えて、かつ好ましくは、回路機構は、測定されたインピーダンスの時間微分を少なくとも一回実行してインピーダンスおよび/または血行動態リアクタンスのそれぞれの導関数(例えば一階導関数、二階導関数等)を得るための微分器40(デジタル微分器またはアナログ微分器のいずれか)を備える。微分器40は、アナログまたはデジタル微分を実行することのできる任意の公知の電子機能(例えばチップ)を含むことができる。インピーダンスの時間導関数は、以下でさらに詳述するように、例えば一回拍出量または心拍出量を測定するために有用である。
【0137】
今、再び図2を参照すると、本発明の好適な実施形態では、システム20は、信号31を使用して少なくとも一つの数量を算出するためのデータプロセッサ42をさらに備える。一回拍出量、心拍出量、および脳腔内血液量のような、しかしそれらに限定されない、多くの血液量関連数量を、算出することができる。システム20は、血流量および他の情報を好ましくは時間の関数として表示するための表示装置49をさらに備えることができる。
【0138】
本発明の好適な実施形態では、システム20は、電極25の位置によって規定される被験者の身体の一部分の電圧降下を検出するための検出器29をさらに備える。検出された電圧に応答して、検出器29は身体のそれぞれの部分のインピーダンスを示す信号を発生することが好ましい。この実施形態では、一回拍出量は上でさらに詳述したように(dZ/dt)maxを使用して算出されることができる。一回拍出量を知ると、心拍出量は一回拍出量を被験者の心拍数で乗算することによって算出される。より好ましくは、検出器29は血行動態リアクタンスXを示す信号を発生する。
【0139】
本書で使用される「血行動態リアクタンス(hemodynamic reactance)」は、インピーダンスの虚部である。全インピーダンスから虚部を抽出するための技術は公知である。一般的には、かかる抽出はハードウェアレベルで実施されるが、ソフトウェアレベルでのアルゴリズムの使用は本発明の範囲から除外されない。当業者によって認識されているように、血行動態リアクタンスは上述の位相偏移Δφを決定するために使用されることができる。
【0140】
システム20によってもたらされる血流量の決定は、診断および治療の両方に使用することができる。したがって、本発明の好適な実施形態では、システム20は、データプロセッサ42と導通するペースメーカ44をさらに備えることができる。この実施形態では、データプロセッサ42は、算出された数量に従ってペースメーカ44を電子的に制御するようにプログラムされることが好ましい。例えば一つの実施形態では、データプロセッサ42は心拍出量を算出し、心拍出量を改善するように、被験者21の心拍数を実質的に実時間で制御するペースメーカ44に信号を送る。
【0141】
加えて、または代替的に、システム20は、好ましくは心拍出量を増大するために構成されかつ設計された心臓補助装置48をも備えることができる。心臓補助装置は当業界で公知であり、一般的に、心拍出量が増加するように心臓組織の一部分の拡張を制約する強化部材を備える。この実施形態では、心拍出量の決定および改善がシステム20によって自動的に実行されるように、データプロセッサ42は、算出された心拍出量に従って装置48を電子的に制御するようにプログラムされることが好ましい。
【0142】
本発明の好適な実施形態では、システム20はデータプロセッサ42と連絡する薬剤投与装置46を備えることができる。装置46は、被験者21に薬剤を投与するために働く。この実施形態では、データプロセッサ42は、算出数量の値に従って、装置46を電子的に制御するようにプログラムされることが好ましい。例えば、算出数量が脳腔内血液量である場合には、血液量の値に応じて、データプロセッサ42は信号を装置46に送り、それによって被験者21に投与される薬剤の量および/または種類を制御する。
【0143】
被験者21に接続される電極の数は、入力高周波信号を、姿勢変化の影響、呼吸の影響、運動の影響、および類似物のような、しかしそれらに限定されない、望ましくない影響から実質的に切り離すように選択されることが好ましい。
【0144】
使用される電極が何個でも、本発明の好適な実施形態では、電極の少なくとも一部は、被験者に付けた電極の配向に関係なく、電極を通して送出される電気信号に対し実質的に一定の感度を有するように設計されかつ構成される。
【0145】
今、図4a〜hを参照すると、それらは、本発明の好適な実施形態に係る電極25(図4c、4d、4g、および4h)および電極25が取り付けられるそれぞれの位置(図4a、4b、4e、および4f)の概略図である。図4cおよび4gは電極25の内側を示し、図4dおよび4hは電極25の外側を示す。
【0146】
したがって、電極25は、被験者の外部器官の少なくとも一部分に巻きつけるように設計されかつ構成された少なくとも一つの長尺導電材50を含むことが好ましく、外部器官は例えば胸部、臀部、大腿部、頸部、頭部、腕、前腕、腹部、臀筋、脚、足などとすることができる。任意選択的に、電極25は、被験者21への電極25の取付けを容易にするために、取付け材52(例えばベルクロ、接着剤など)をも含むことができる。
【0147】
例えばバイオインピーダンスシステム(例えば図1参照)に使用される従来のスポット電極は、電極が取り付けられる特定の位置に敏感であることが認識されている。この感受性は、信号対雑音比が本質的に小さく、そのようなアーチファクトによって生じる変動が、測定しようとする効果全体に匹敵することがあるバイオインピーダンスシステムでは特に不利である。さらに、小さい変位に対する感受性に関連する問題は、スポット電極の数が増えるときに悪化することが認識されている。特に、図1の四極性アレイの場合、八個の電極があり、それらの各々が小さい変位に対する感受性に寄与し、したがって最終測定の不確実性を高める。
【0148】
本発明の現在の好適な実施形態では、電極25の使用の利点は、被験者21の身体から受け取る信号が電極の小さい変位に依存しないことである。加えて、本書において下でさらに詳述するように、使用される電極の数は、従来のシステムで使用される個数よりかなり少ない。電極の数が少なければ少ないほど、(i)不確実性因子が減少し、(ii)取り付け易くなり、かつ(iii)患者によってより快適であることは、理解されるであろう。
【0149】
図4aを参照すると、一つの実施形態では、一つの電極が被験者21の頸部に取り付けられ、二つの電極が心臓の下に取り付けられている。この実施形態は、例えば一回拍出量および心拍出量を測定し、決定するために使用されることができる。しかし、一回拍出量および心拍出量を決定する目的に、他の構成が除外されないことを理解されたい。特に、二つの電極を使用することができる。それでもなお、三つの電極を使用する場合の運動の影響は二つの電極を使用する場合より顕著ではないことが、本発明の発明者によって明らかになった。この実施形態で使用される好適な電極を、図4c(内側)および4d(外側)に示す。
【0150】
図4bを参照すると、別の実施形態では、二つの電極が被験者21の頸部に取り付けられ、二つの電極が心臓の下に取り付けられている。この実施形態は、例えば一回拍出量および心拍出量を測定し、決定するために使用されることができる。後出する実施例の部で実証するように、結果の品質は四つの電極の使用により著しく向上した。この実施形態で使用される好適な電極を図4c(内側)および4d(外側)に示す。
【0151】
図4e〜hを参照すると、追加の実施形態では、単一の長尺ストリップ上に形成された二つの電極を、脳腔内血液量を決定する目的に使用することができる。特に、図4eに示すように、単一のストリップ(したがって二つの電極)を被験者21の前額部に巻き付けることができ、あるいは代替的に、かつ好ましくは、二つのストリップ(したがって四つの電極)を隣接して被験者21の前額部に巻き付けることができる。
【0152】
何個の電極またはいずれの接続構成でも本発明から除外されないことを理解されたい。例えば、外頸動脈、内頸動脈、尺骨動脈、撓骨動脈、上腕動脈、総腸骨動脈、外腸骨動脈、後脛骨動脈、前脛骨動脈、腓骨動脈、外側足底動脈、内側足底動脈、および深足底動脈のような、しかしそれらに限定されない、身体のいずれかの動脈の血流を測定するために、図4c〜dに示す電極、図4g〜hに示す電極、または任意の他の電極を任意の組合せで使用することができる。
【0153】
システム20が他のシステムとともに使用されるとき、他のシステムの操作を干渉しないように電極25によって占有される面積を最小にすることが望ましい。例えば、集中治療装置では、被験者はECGリード、動脈ライン、中央静脈ライン、脳幹喚起応答装置、胸部管、GI管、静脈などに接続されることが多い。このようなまたは同様の状況では、システム20はより小さな電極を含むことが好ましく、それらは図4i−Lに示されている。
【0154】
図4i−jは、本発明の好適な実施形態による、高周波信号を送出および感知するために使用されることができるステッカの後側(図4i)および前側(図4j)を示す。ステッカは互いの間に固定されかつ予め決められた距離として存在する電気接点45を含み、従って測定に対する変動可能な電極間距離の影響を減少する。
【0155】
図4K−Lは、ステッカ上の電気接点が内部線4によって相互接続されているので、図4K−Lのステッカが単一線を使用してシステム20に接続されることができることを除いて、図4i−jに示されたステッカと同様の別のステッカの前側(図4K)および後側(図4L)を示す。
【0156】
本発明の別の態様では、ここで一般的に装置60と呼ぶ、被験者の器官における血流量を決定するための装置が提供される。装置60は増大した信号対雑音比の特性を享受し、そういうものとして装置60は、任意の血流量測定システム、例えばシステム20と組み合わせて使用されることができる。
【0157】
今、図5を参照すると、それは装置60の概略図である。装置60は、本書で上でさらに詳述したように、入力高周波信号の振幅変調を低減または除去するためのエンベロープ除去装置(例えば装置35)を有する電子回路機構を含むことが好ましい。本発明の好適な実施形態では、信号処理装置は、本書で上でさらに詳述したように、出力信号に対する入力信号の位相偏移を決定する。
【0158】
装置60は、上でさらに詳述したように、信号24および信号26′を混合して混合高周波信号を提供するためのミクサ28をさらに備える。図5に示すように、信号24および26は、信号を器官との間で伝達するために使用される端子から直接的に、またはユニット22を介するかのいずれかで、ミクサ28に入力されることができる。装置60の電子回路機構は、信号の残部が上で詳述したように実質的に増大した信号対雑音比によって特徴付けられるように、混合高周波信号の一部を除去することが好ましい。
【0159】
本発明の追加の態様では、出力および入力高周波信号から被験者の血流量を算出するための装置90が提供される。
【0160】
今、図6を参照すると、それは装置90の簡略図である。装置90は、出力高周波信号に対する入力高周波信号の位相偏移を決定するための信号処理装置(例えば装置23)、および位相偏移を使用して血流量を算出する血流量計算器92を含むことが好ましい。計算器92は、上でさらに詳述したように、血流量と位相偏移の間の直線関係を使用して血流量を算出することが好ましい。
【0161】
本発明のさらに別の態様では、血流量を算出する方法が提供される。該方法は、以下のステップを含み、それらは図7のフローチャートに示される。ブロック94によって示される該方法の第一ステップでは、出力信号に対する入力信号の位相偏移が決定され、ブロック96によって示される第二ステップでは、位相偏移は例えば位相偏移と血流量の間の直線関係を使用して血流量を算出するために使用される。
【0162】
本発明のさらに別の態様では、被験者の器官における血流量を測定する方法であって、図8のフローチャートに示す、以下のステップを含む方法が提供される。したがって、ブロック72によって示される第一ステップでは、出力高周波信号が例えば高周波発生器によって発生される。ブロック74によって示される第二ステップでは、出力高周波信号は器官へ送出し、例えば電極のアレイによって器官からの入力高周波信号は感知される。
【0163】
ブロック75によって示される第三ステップでは、前記出力信号に対する入力信号の位相偏移は、上でさらに詳述したように、血流量を算出するために決定されかつ使用される。ブロック76および78によって図8に示される任意選択的ステップでは、上でさらに詳述したように、出力高周波信号および入力高周波信号が混合されて(ブロック76)、混合信号を提供し、混合信号の一部分は除去されて(ブロック78)、その残部の信号対雑音比を実質的に増大する。
【0164】
本発明の好適な実施形態では、該方法は、以下の任意選択的ステップをさらに含むことができ、各任意選択的ステップは任意の組合せまたは順序で他の任意選択的ステップとは独立して実行することができる。したがって、上でさらに詳述したように、一つの任意選択的ステップでは、混合高周波信号の残部はアナログ増幅され、別の任意選択的ステップでは、混合高周波信号はデジタル化され、追加の任意選択的ステップでは、少なくとも一つの数量(例えば一回拍出量、心拍出量、および脳腔内血液量)が算出され、さらなる追加ステップでは、少なくとも一回の時間微分が実行される。
【0165】
以下は、上述した実施形態の選択的ステップおよび部分で使用することのできる技術的好適値である。
【0166】
本書で使用する場合、用語「約」とは±10%を指す。
【0167】
出力高周波信号は、周波数が約10KHzないし約200KHz、大きさが約10mVないし約50mVであることが好ましい。入力高周波信号は、周波数が約70KHz、大きさが約20mVであることが好ましい。本実施形態によって測定できる典型的なインピーダンスは約25オームないし約35オームであり、結果的に得られる本実施形態の信号対雑音比は少なくとも40dBであり、低域通過フィルタ34は約35Hzのカットオフ周波数を特徴とすることが好ましく、デジタイザ38は毎秒約1000サンプルの率で信号をサンプリングすることが好ましい。
【0168】
本発明の追加の目的、利点、および新規な特徴は、限定を意図するものではない以下の実施例を精査することにより、通常の当業熟練者には明白になるであろう。さらに、本書で上述し特許請求の範囲に記載する本発明の様々な実施形態および態様の各々の実験による裏付けが、以下の実施例に見出される。
【実施例】
【0169】
今、以下の実施例について言及すると、それらは上記の説明と共に、本発明を非限定的に例証するものである。
【0170】
上記説明に従って、被験者の器官における血流量を測定するためのシステムのプロトタイプを構築した。
【0171】
プロトタイプシステムは、
(a)周波数70Khzおよび大きさ20mVの出力高周波信号を発生する自作の高周波発生器と、
(b)図4b、4c、4e、および4fに示した複数の電極と、
(c)上述の通り高周波和および高周波差を提供するために使用する、Mini−Circuitsから購入した二重平衡ミクサと、
を含む。
【0172】
プロトタイプシステムは、プリント回路基板に形成された電子回路機構をさらに含む。結果の品質、電子回路の設計、および電極の個数の間の相関を調べるために、幾つかの電子回路機構を設計し、製造した。様々な電子回路機構を図7a〜dに概略的に示す。
【0173】
図9aは、三つの電極と共に使用される電子回路機構のブロック図を示す(下の実施例1の心拍出量測定の結果を参照されたい)。図9aで電極のリードはE、E、およびIによって示され、高周波発生器(OSCと指定される)によって発生された出力高周波信号は、EおよびEを通して出力され、測定される身体の入力高周波信号はIを通して入力される。
【0174】
入力信号は差動増幅器G、帯域通過フィルタBPF、および差動増幅器Gを通して運ばれる。入力信号は差動増幅器G、帯域通過フィルタBPF、およびエンベロープ除去装置EEUを通して運ばれる。EEUは入力信号から振幅変調を除去する。入力および出力信号の両方がミクサDMBによって混合され、記述したように周波数和および周波数差が形成される。低域通過フィルタLPFは周波数和を除去し、結果的に得られた信号(周波数差を担持する)は追加の差動増幅器G、G、およびGによってさらに増幅される。増幅された後、信号はアナログデジタル変換デジタイザによってデジタル化され、USB通信インタフェースを介して処理および表示ユニットへ送られる。
【0175】
図9bは、下の実施例2の脳腔内血液量測定の二つの電極と共に使用される電子回路機構のブロック図を示す。二つの電極しか無いので、EおよびIは単一のリードIに結合される。
【0176】
したがって、出力信号は差動増幅器G、帯域通過フィルタBPF、および差動増幅器Gを通して運ばれる。入力信号は差動増幅器G、帯域通過フィルタBPF、および入力信号から振幅変調を除去するエンベロープ除去装置EEUを通して運ばれる。入力および出力信号の両方がミクサDMBによって混合され、周波数和および差が形成される。低域通過フィルタLPFは周波数和を除去し、結果的に得られた信号は追加の差動増幅器G、G、およびGによってさらに増幅される。三つの電極の場合と同様に、信号はアナログデジタル変換デジタイザによってデジタル化され、USB通信インタフェースを介して処理および表示ユニットへ送られる。
【0177】
図9cは、四つの電極と共に使用される電子回路機構のブロック図を示す(下の実施例3の心拍出量測定および実施例4の脳腔内血液量測定の結果を参照されたい)。四つのリードはE、E、IおよびIと指定され、電極のリードでは高周波発生器OSCによって発生された出力高周波信号は、EおよびEを通して出力され、測定される身体の入力高周波信号はIおよびIを通して入力される。さらに、四つのリードE、E、IおよびIは、C、C、CおよびCと指定されたコンデンサを通して身体に接続される。
【0178】
図9cの回路機構の原理は、三つの電極を持つ図9aの回路機構の原理と同様である。図9cの回路機構の利点は、(図9aの一つの入力リードIとは対照的に)両方の入力リードIおよびIを使用することによって、電極と身体との間のインピーダンス差の影響を最小化することができることである。特に、電圧降下IおよびIの影響は、差動増幅器G3の特性インピーダンスによって制御され、該特性インピーダンスは、身体と電極との間の接触によるインピーダンス変化がG3のインピーダンスに比較して無視できるように、十分に大きくなるように選択される。
【0179】
図9dは、低域通過フィルタリングで高周波和が除去された後、高周波信号を増幅するために使用されたアナログ増幅回路のブロック図を示す。
【0180】
実施例1
三つの電極を使用した一回拍出量および心拍出量の測定
三つの電極を、図4aに示すように、人間の被験者に接続した。血行動態リアクタンスを測定し、(i)一回拍出量、および(ii)心拍出量を決定しかつ監視するために使用した。
【0181】
図10a〜bは、プロトタイプシステム(図9aの回路機構を使用)を使用して得られた監視結果を250ms/divのタイムスケールで示す。図10a〜bの各々に、血行動態リアクタンスの変化およびその測定時間導関数の二つの波形が表示されている。図10bに示された波形は、図10aに示された波形に比較して逆倍率である。
【0182】
比較のため、図10cは、従来のシステム(GE/Cardiodynamic)を使用して得られた監視結果を示す。図10cに表示された波形は上から下の順に、ECG信号、バイオインピーダンスの変化ΔZ、その一階導関数dZ/dt、およびその二階導関数dZ/dtである。
【0183】
従来のシステム(図10c)に対する本発明(図10a〜b)の信号対雑音比の改善は明らかである。プロトタイプシステムでは、信号対雑音比は50dBであったが、従来のシステムでは、信号対雑音比は20dBであった。
【0184】
実施例2
二つの電極を使用した脳腔内血液量の変化および流量の測定
二つの電極を、図4eに示すように、人間の被験者に接続した。血行動態リアクタンスを測定し、脳腔内血液量の変化および流量を決定しかつ監視するために使用した。
【0185】
図11a〜bは、プロトタイプシステム(図9bの回路機構を使用)を使用して得られた監視結果を250ms/divのタイムスケールで示す。図11a〜bの各々に、血行動態リアクタンスの変化およびその測定導関数の二つの波形が表示されている。図11bでは、血行動態リアクタンスの変化の曲線の縦のスケールが図11aのそれぞれの曲線より二倍大きい。
【0186】
図11a〜bに示すように、両方の数量に対して50dBの優れた信号対雑音比が得られた。本実施例の曲線は、実施例1に比較して、より尖鋭なピークを獲得している。この現象は、脳内の血流に対する抵抗が胸部の抵抗より実質的に低いという生理学的所見と矛盾しない。したがって、脳では、胸部に比較して、血流の変化に対する応答に小さい遅延があるだけである。血流に対する迅速な応答は、測定された数量によって、したがって図11a〜bの尖鋭なピークによって示される。
【0187】
実施例3
四つの電極を使用した一回拍出量および心拍出量の測定
四つの電極を、図4bに示すように、人間の被験者に接続した。血行動態リアクタンスを測定し、(i)一回拍出量、および(ii)心拍出量を決定しかつ監視するために使用した。
【0188】
図12aは、プロトタイプシステム(図9cの回路機構を使用)を使用して得られた監視結果を500ms/divのタイムスケールで示す。図12に、血行動態リアクタンスの変化、およびその測定時間導関数の二つの波形が表示されている。
【0189】
図12bは、本発明の実施形態による位相偏移Δφから算出されたCO信号と、他のチャネルから得られたデータとの比較を示す。上から下の順に、図12bは、時間の関数として、ECGリードI(図12bでIで示される)、ECGリードII(IIで示される)、左血液波面(L)、右血液波面(R)、CO信号(N)、CO信号の一階導関数(dN)およびCO信号の二階導関数(ddN)を示す。図12bに示すように、本発明の実施形態は、高い信号対雑音比を有しかつ血流量を示す高品質信号を提供する。
【0190】
図12a〜bおよび図10a〜bを比較すると、四つの電極(および図9cの電子回路機構)の使用は結果の品質を著しく改善する。
【0191】
実施例4
四つの電極を使用した脳腔内血液量の変化および流量の測定
二つの電極を、図4fに示すように、人間の被験者に接続した。血行動態リアクタンスを測定し、脳腔内血液量の変化および流量を決定しかつ監視するために使用した。
【0192】
図13は、プロトタイプシステム(図9cの回路機構を使用)を使用して得られた監視結果を500ms/divのタイムスケールで示す。図13には、血行動態リアクタンスの変化およびその測定導関数の二つの波形が表示されている。
【0193】
図13に示すように、両方の数量に対して50dBの優れた信号対雑音比が得られた。上の実施例3の場合と同様に、図13および9a〜bを比較すると、実施例2(二つの電極および図9bの回路機構)に対する本実施例(四つの電極および図9cの回路機構)の著しい改善が明らかである。
【0194】
分かりやすくするため別個の実施態様で説明されている本発明のいくつもの特徴は、組み合わせて単一の実施態様にして提供することもできることは分かるであろう。逆に簡略化するため単一の実施態様で説明されている本発明の各種特徴は、別個に又は適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0195】
本発明を、その具体的実施態様とともに説明してきたが、多くの変形と変更が当業技術者には明らかであることは明白である。したがって、本発明は、本願の特許請求の範囲の精神と広い範囲内に入っているこのような変形と変更をすべて含むものである。本明細書に記載のすべての刊行物、特許及び特許願は、あたかも、個々の刊行物、特許又は特許願各々が、本願に具体的にかつ個々に参照して示されているように、本願に援用するものである。さらに、本願における任意の文献の引用もしくは確認は、このような文献が本発明に対する従来技術として利用できるという自白とみなすべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0196】
【図1】先行技術の教示に係る従来のバイオインピーダンスシステムの概略図である。
【図2】本発明の好適な実施形態に係る、被験者の器官内の血流量を測定するためのシステムの概略図である。
【図3】信号の残部が実質的に増大する信号対雑音比によって特徴付けられるように、信号の一部分を除去するための電子回路の概略図である。
【図4a−d】本発明の好適な実施形態に係る電極(c、d)および電極が取り付けられるそれぞれの位置(a、b)の概略図である。
【図4e−h】本発明の好適な実施形態に係る電極(g、h)および電極が取り付けられるそれぞれの位置(e、f)の概略図である。
【図4i−j】本発明の好適な実施形態に係る電極ステッカーの概略図である。
【図4K−L】本発明の好適な実施形態に係る電極ステッカーの概略図である。
【図5】本発明の好適な実施形態に係る、被験者の器官内の血流量を測定するための装置の概略図である。
【図6】本発明の好適な実施形態に係る、血流量を算出するための装置の概略図である。
【図7】本発明の好適な実施形態に係る、血流量を算出する方法のフローチャート図である。
【図8】本発明の好適な実施形態に係る、被験者の器官内の血流量を測定する方法のフローチャート図である。
【図9a】三つの電極を使用して血流量を測定するためのプリント回路板のブロック図である。
【図9b】二つの電極を使用して血流量を測定するためのプリント回路板のブロック図である。
【図9c】四つの電極を使用して血流量を測定するためのプリント回路板のブロック図である。
【図9d】高周波信号を増幅するための増幅回路のブロック図である。
【図10a−b】一回拍出量および心拍出量を決定するために、本発明の好適な実施形態に従って作製された三つの電極を持つプロトタイプシステムを使用して得られた、血行動態リアクタンスの変化およびその測定導関数の監視結果を示す。
【図10c】従来(先行技術)のシステムを使用して得られたECG信号、バイオインピーダンスの変化、その一階導関数、およびその二階導関数の監視結果を示す。
【図11】脳腔内血液量の変化および流量を測定するために作製された二つの電極を持つ、プロトタイプシステムを使用して得られた、血行動態リアクタンスの変化およびその測定導関数の監視結果を示す。
【図12】図12aは一回拍出量および心拍出量を決定するために本発明の好適な実施形態に従って作製された四つの電極を持つプロトタイプシステムを使用して得られた、血行動態リアクタンスの変化およびその測定導関数の監視結果を示す。図12bは本発明の好適な実施形態に係る、ECG(二つのリード)、血液波面(左および右)およびCO信号(その一階導関数および二階導関数を含む)から取得されたデータ間の比較を示す。
【図13】脳腔内血液量の変化および流量を測定するための四つの電極を持つプロトタイプシステムを使用して得られた、血行動態リアクタンスの変化およびその測定導関数の監視結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の器官の血流量を、器官に送出した出力高周波信号および器官から受け取った入力高周波信号を使用して算出する方法であって、出力高周波信号に対する入力高周波信号の位相偏移を決定し、前記位相偏移を使用して器官内の血流量を算出することを含む方法。
【請求項2】
血流量を算出するための前記位相偏移の使用は、前記位相偏移と血流量との間の直線関係を使用することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記直線関係の比例係数が被験者の心臓の収縮期拍出時間からなる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
被験者の器官の血流量を、器官に送出した出力高周波信号および器官から受け取った入力高周波信号から算出するための装置であって、出力高周波信号に対する入力高周波信号の位相偏移を決定するための信号処理装置、および前記位相偏移を使用して器官内の血流量を算出するための血流量算出器を備えた装置。
【請求項5】
前記血流量算出器は、前記位相偏移と血流量との間の直線関係を使用して血流量を算出するように動作可能である請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記直線関係の比例係数が被験者の心臓の収縮期拍出時間からなる請求項5に記載の装置。
【請求項7】
被験者の器官の血流量を測定するためのシステムであって、
出力高周波信号を発生するための高周波発生器と、
被験者の皮膚に接続できるように設計され、器官に前記出力高周波信号を送出し、かつ器官の入力高周波信号を感知するための複数の電極と、
前記出力高周波信号に対する前記入力高周波信号の位相偏移であって、器官内の血流量を示す位相偏移を決定するための信号処理装置と
を備えたシステム。
【請求項8】
前記信号処理装置は、実質的に一定のエンベロープの入力高周波信号を提供するために前記入力高周波信号の振幅変調を低減または除去するように設計されかつ構成されたエンベロープ除去装置を備える請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記エンベロープ除去装置は、前記入力高周波信号の位相偏移を維持するように設計されかつ構成される請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記エンベロープ除去装置は、リミッタ増幅器を備える請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記信号処理装置は、前記高周波発生器および前記複数の電極の少なくとも一部と電気的に導通し、前記出力高周波信号と前記入力高周波信号を混合して、血流量を示す混合高周波信号を提供するように設計されかつ構成されたミクサと、前記混合高周波信号の一部分を除去して、前記混合高周波信号の残部の信号対雑音比を実質的に増加するための電子回路とを備える請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記ミクサは、高周波和および高周波差を提供するように動作可能である請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記電子回路は、前記高周波和を除去するための低域通過フィルタを備える請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記電子回路は、前記混合高周波信号の前記残部を増幅するためのアナログ増幅回路を備える請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記電子回路は、前記混合高周波信号の前記残部をデジタル化するためのデジタイザを備える請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記電子回路は、前記複数の電極と被験者の器官との間のインピーダンス差に対する前記入力高周波信号の感度を最小化するように設計されかつ構成される請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記電子回路は、前記複数の電極と被験者の器官との間の前記インピーダンス差より実質的に大きいインピーダンスを特徴とする少なくとも一つの差動増幅器を備える請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記混合高周波信号の前記残部を使用して、一回拍出量、心拍出量、脳腔内血流量、および動脈血流量から成る群から選択される少なくとも一つの量を算出するためのデータプロセッサをさらに備える請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記動脈血流量は、外頸動脈血流量、内頸動脈血流量、尺骨血流量、撓骨血流量、上腕血流量、総腸骨血流量、外腸骨血流量、後脛骨血流量、前脛骨血流量、腓骨血流量、外側足底血流量、内側足底血流量、および深足底血流量から成る群から選択される請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記データプロセッサと連絡して被験者の心拍数を制御するように動作可能なペースメーカをさらに備え、前記データプロセッサは前記少なくとも一つの量の値に従って、前記ペースメーカを電子的に制御するようにプログラムされる請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記データプロセッサと連絡して被験者に薬剤を投与するように動作可能な薬剤投与装置をさらに備え、前記データプロセッサは前記少なくとも一つの量の値に従って、前記薬剤投与装置を電子的に制御するようにプログラムされる請求項18に記載のシステム。
【請求項22】
前記データプロセッサと連絡して前記心拍出量を増加するように動作可能な心臓補助装置をさらに備える請求項18に記載のシステム。
【請求項23】
前記心臓補助装置は、心組織の一部分の拡張を制約し、それによって前記心拍出量を増大するように設計されかつ構成された強化部材を備える請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記複数の電極の個数は、姿勢変化の影響、呼吸の影響、および運動の影響から成る群から選択された少なくとも一つの影響から前記入力高周波信号を実質的に切り離すように選択される請求項11に記載のシステム。
【請求項25】
前記複数の電極は二つの電極を含む請求項11に記載のシステム。
【請求項26】
前記複数の電極は三つの電極を含む請求項11に記載のシステム。
【請求項27】
前記複数の電極は四つの電極を含む請求項11に記載のシステム。
【請求項28】
前記複数の電極の少なくとも一部は、被験者に付ける前記電極の配向に関係なく、前記電極を通して送出された電気信号に対して実質的に一定の感度を有するように設計されかつ構成される請求項11に記載のシステム。
【請求項29】
前記複数の電極の少なくとも一部は、被験者の外部器官に付ける前記電極の配向に関係なく、前記電極を通して送出される電気信号に対し実質的に一定の感度を有するように、被験者の外部器官の少なくとも一部分に巻き付けるように設計されかつ構成された少なくとも一つの長尺導電材を含む請求項11に記載のシステム。
【請求項30】
前記複数の電極の少なくとも一部は、取り付け材を備える請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記外部器官は胸部、臀部、大腿部、頸部、頭部、腕、前腕、腹部、臀筋、脚、および足から成る群から選択される請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記複数の電極の少なくとも一部と電気的に導通して、被験者の第一部位と第二部位との間の電圧を検出し、かつ前記電圧に応答して器官のインピーダンスおよび/または血行動態リアクタンスを示す前記入力高周波信号を発生するための検出器をさらに備える請求項11に記載のシステム。
【請求項33】
前記電圧を感知するための少なくとも一つのセンサであって、器官内の、器官からの、および器官への血流量の関数である大きさを有する信号を発生するように設計されかつ構成された少なくとも一つのセンサをさらに備える請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記電子回路は、少なくとも一回の時間微分を実行して、器官の前記インピーダンスおよび/または血行動態リアクタンスのそれぞれの導関数を提供するための微分器をさらに備える請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
前記導関数は一階導関数および二階導関数から成る群から選択される請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記微分器は、デジタル微分器およびアナログ微分器から成る群から選択される請求項34に記載のシステム。
【請求項37】
血流量を表示するための表示装置をさらに備える請求項11に記載のシステム。
【請求項38】
前記表示装置は血流量を時間の関数として表示することができる請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記信号対雑音比は少なくとも10dB増大される請求項11に記載のシステム。
【請求項40】
前記信号対雑音比は少なくとも20dB増大される請求項11に記載のシステム。
【請求項41】
被験者の器官内の血流量を測定する方法であって、出力高周波信号を発生し、前記出力高周波信号を器官へ送出して器官の入力高周波信号を感知し、前記出力高周波信号に対する前記入力高周波信号の位相偏移を決定し、前記位相偏移を使用して器官内の血流量を算出することを含む方法。
【請求項42】
血流量を算出するための前記位相偏移の使用は、前記位相偏移と血流量との間の直線関係を使用することを含む請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記直線関係の比例係数が被験者の心臓の収縮期拍出時間からなる請求項42に記載の方法。
【請求項44】
実質的に一定のエンベロープの入力高周波信号を提供するように前記入力高周波信号の振幅変調を低減または除去することをさらに含む請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記振幅変調を低減または除去することは、実質的に一定のエンベロープの前記入力高周波信号の位相変調を維持することを含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記振幅変調の低減または除去はリミッタ増幅器による請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記出力高周波信号および前記入力高周波信号を混合して血流量を示す混合高周波信号を提供し、前記混合高周波信号の一部分を除去して前記混合高周波信号の残部の信号対雑音比を実質的に増大することをさらに含む請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記混合は、高周波和および高周波差を提供することを含む請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記混合高周波信号の一部分の除去は、前記高周波和を除去するように設計されかつ構成された低域通過フィルタによる請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記混合高周波信号の残部をアナログ増幅することをさらに含む請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記混合高周波信号の残部をデジタル化することをさらに含む請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記出力高周波信号の送出および前記入力高周波信号の感知が複数の電極によってなされ、方法が前記複数の電極と被験者の器官の間のインピーダンス差に対する前記入力高周波信号の感度を最小化することをさらに含む請求項47に記載の方法。
【請求項53】
前記インピーダンス差に対する前記入力高周波信号の前記感度の前記最小化が、前記インピーダンス差より実質的に大きいインピーダンスによって特徴付けられる少なくとも一つの差動増幅器によってなされる請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記混合高周波信号の前記残部を使用して、一回拍出量、心拍出量および脳腔内血液量、ならびに動脈血流量から成る群から選択された少なくとも一つの量を算出することをさらに含む請求項47に記載の方法。
【請求項55】
前記動脈血流量は、外頸動脈血流量、内頸動脈血流量、尺骨血流量、撓骨血流量、上腕血流量、総腸骨血流量、外腸骨血流量、後脛骨血流量、前脛骨血流量、腓骨血流量、外側足底血流量、内側足底血流量、および深足底血流量から成る群から選択される請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記少なくとも一つの量の値に従って被験者の心拍数を制御することをさらに含む請求項54に記載の方法。
【請求項57】
被験者の心拍数の前記制御はペースメーカによる請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記少なくとも一つの量の値を使用して薬剤の量および種類を選択し、かつ前記量および前記種類の薬剤を被験者に投与することをさらに含む請求項54に記載の方法。
【請求項59】
被験者の心臓の一部分への外科的アクセスの部位を提供し、かつ前記心拍出量を増加させるように、かなりの時間前記心臓の前記一部分の心拡張の軽減を維持することをさらに含む請求項54に記載の方法。
【請求項60】
器官への前記出力高周波信号への前記送出および器官の前記入力高周波信号の前記感知は、被験者の皮膚に複数の電極を接続することによる請求項47に記載の方法。
【請求項61】
前記複数の電極の個数は、姿勢変化の影響、呼吸の影響、および運動の影響から成る群から選択された少なくとも一つの影響から前記入力高周波信号を実質的に切り離すように選択される請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記複数の電極は二つの電極を含む請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記複数の電極は三つの電極を含む請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記複数の電極は四つの電極を含む請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記複数の電極の前記接続は、被験者に付ける前記電極の配向に関係なく、前記電極を通して送出される電気信号に対し実質的に一定の感度を有するように行われる請求項60に記載の方法。
【請求項66】
前記複数の電極の少なくとも一部は、被験者の外部器官に付ける前記電極の配向に関係なく、前記電極を通して送出される電気信号に対し実質的に一定の感度を有するように、被験者の外部器官の少なくとも一部分に巻き付けるように設計されかつ構成された少なくとも一つの長尺導電材を含む請求項60に記載の方法。
【請求項67】
前記外部器官は胸部、臀部、大腿部、頸部、頭部、腕、前腕、腹部、臀筋、脚、および足から成る群から選択される請求項66に記載の方法。
【請求項68】
被験者の第一部位と第二部位との間の電圧を検出し、前記電圧に応答して器官のインピーダンスおよび/または血行動態リアクタンスを示す前記入力高周波信号を発生することをさらに含む請求項47に記載の方法。
【請求項69】
少なくとも一回の時間微分を実行し、それによって器官の前記インピーダンスおよび/または血行動態リアクタンスのそれぞれの導関数を提供することをさらに含む請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記導関数は一階導関数および二階導関数から成る群から選択される請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記時間微分の実行は、デジタル微分およびアナログ微分からなる群から選択される手順によって達成される請求項69に記載の方法。
【請求項72】
表示装置を使用して血流量を表示することをさらに含む請求項47に記載の方法。
【請求項73】
前記表示装置は血流量を時間の関数として表示することができる請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記信号対雑音比は少なくとも10dB増大される請求項47に記載の方法。
【請求項75】
前記信号対雑音比は少なくとも20dB増大される請求項47に記載の方法。
【請求項76】
被験者の器官内の血流量を、器官に送出した出力高周波信号および器官から受け取った入力高周波信号から決定するための装置であって、前記入力高周波信号の振幅変調を低減または除去し、それによって実質的に一定のエンベロープの入力高周波信号を提供するように設計されかつ構成されたエンベロープ除去装置を有する電子回路と、実質的に一定のエンベロープの前記入力高周波信号を使用して器官内の血流量を決定する信号処理装置とを備えた装置。
【請求項77】
前記信号処理装置は、実質的に一定のエンベロープの出力高周波信号に対する入力高周波信号の位相偏移であって、器官内の血流量を示す位相偏移を決定するように設計されかつ構成される請求項76に記載の装置。
【請求項78】
前記エンベロープ除去装置は、前記入力高周波信号の位相偏移を維持するように設計されかつ構成される請求項76に記載の装置。
【請求項79】
前記エンベロープ除去装置は、リミッタ増幅器を備える請求項76に記載の装置。
【請求項80】
実質的に一定のエンベロープの前記入力高周波信号および出力高周波信号を混合し、それによって混合高周波信号を提供するためのミクサをさらに含む請求項76に記載の装置。
【請求項81】
前記電子回路は、前記混合高周波信号の一部分を除去して前記混合高周波信号の残部の信号対雑音比を実質的に高めるように設計されかつ構成される請求項80に記載の装置。
【請求項82】
前記ミクサは、高周波和および高周波差を提供するように動作可能である請求項80に記載の装置。
【請求項83】
前記電子回路は、前記高周波和を除去するための低域通過フィルタを備える請求項82に記載の装置。
【請求項84】
前記電子回路は、前記混合高周波信号の前記残部を増幅するためのアナログ増幅回路を備える請求項81に記載の装置。
【請求項85】
前記電子回路は、前記混合高周波信号の前記残部をデジタル化するためのデジタイザを備える請求項81に記載の装置。
【請求項86】
出力および入力高周波信号は複数の電極を介して送出され、さらに前記電子回路は、前記複数の電極と被験者の器官の間のインピーダンス差に対する前記入力高周波信号の感度を最小化するように設計されかつ構成される請求項77に記載の装置。
【請求項87】
前記電子回路は、前記複数の電極と被験者の器官との間の前記インピーダンス差より実質的に大きいインピーダンスによって特徴付けられる少なくとも一つの差動増幅器を備える請求項86に記載の装置。
【請求項88】
前記信号対雑音比は少なくとも10dB増大される請求項81に記載の装置。
【請求項89】
前記信号対雑音比は少なくとも20dB増大される請求項81に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a−d】
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【図4e−h】
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【図4i−j】
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【図4K−L】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図10a−b】
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【図10c】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−529708(P2008−529708A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555770(P2007−555770)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000075
【国際公開番号】WO2006/087696
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(507275936)チータ メディカル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】