血液観察用試料台、及び血液細胞の分離定量評価方法
【課題】病態診断だけではなく、健康状態及び栄養状態の初期的検査のための赤血球の分離・凝集状態を定量的に評価するための血液細胞分離状態の定量評価方法及びこの定量評価方法に使用するための血液観察用試料台を提供する。
【解決手段】平板なガラス基板と、このガラス基板上に配設される均一な厚みのスペーサ薄膜と、その上に載置されたカバーガラスとを備え、前記スペーサ薄膜は、所定量の血液を貯蔵する凹所とこの凹所に接続する逃げ道とを有して、この凹所内に滴下された血液量を常に一定に維持するための維持手段を備える血液観察用試料台であり、前記スペーサ薄膜は、2μm〜9μmの厚み、好ましくは5μm(±10%)の厚みを備える。
【解決手段】平板なガラス基板と、このガラス基板上に配設される均一な厚みのスペーサ薄膜と、その上に載置されたカバーガラスとを備え、前記スペーサ薄膜は、所定量の血液を貯蔵する凹所とこの凹所に接続する逃げ道とを有して、この凹所内に滴下された血液量を常に一定に維持するための維持手段を備える血液観察用試料台であり、前記スペーサ薄膜は、2μm〜9μmの厚み、好ましくは5μm(±10%)の厚みを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病態診断だけではなく、健康状態及び栄養状態の初期的検査のための赤血球の分離・凝集状態を定量的に評価するための血液細胞分離状態の定量評価方法及びこの定量評価方法に使用するための血液観察用試料台に関する。
【背景技術】
【0002】
血液塗抹染色標本を用いて顕微鏡下に観察される血球像から種々の病態を診断する検査法は、早くから臨床に供されており、異常状態の発見や病名の確定に力を発揮している。この検査のための血液塗抹標本の作製は、引きガラスの引き具合などに経験を要し、作製者の個人差を避け得ないものであった。また、血液を薄層にした後、すばやく乾燥させ、固定・染色などのプロセスを要するものでもあった。
【0003】
従来の血球顕微鏡像解析に使用される血液塗抹染色標本は、ガラス基板上に血液を滴下して乾燥させ染色・固定して作られるので、血液の厚みにバラツキが生じる。また、従来の血液塗抹染色標本によれば「死んだ」血液を観察して種々の病態診断をしていることになる。さらに、血液の観察において、血球が厚く重なった状態になり、精度良く観察を行うことに適していない。
【0004】
これに対し近年、予防医学や健康科学の観点から、一滴の新鮮な血液そのものから情報を得ようとする試みがある。つまり、染色や固定などの前処理をせず、直接光学顕微鏡下に観察した血球像から、被験者の栄養状態や健康状態に関する種々の情報を得ようとするものである。しかし現在のところ、その判断基準は、ほとんどが定性的なものであり、検査者の主観によっているのが現状である。簡易な初期チェックとしてのこの方法の簡便さが注目され、再現性のある客観的定量評価を可能とする手法が研究されている。
【0005】
新鮮血の血球顕微鏡像解析において、最も特徴的で、頻繁に観察されるものが、赤血球の分離・凝集状態である。通常、赤血球表面は陰性に荷電し、互いに反発し合うことから、赤血球同士は分離している。しかし、中性荷電した軸比の大きな物質が赤血球表面に結合すると、この分子の両端が赤血球に架橋し、赤血球が結合すると言われている。また新鮮血において赤血球を結合する原因物質として、飽和脂肪や異常なタンパク質が関与すると言われている。これらより、赤血球の分離・凝集状態が、生理状態の一端を反映すると考えられる。
【0006】
赤血球の分離・凝集状態を評価するには、分離赤血球と集塊状赤血球の個数の割合を求めるのが、直接的である。しかし、解析上、複雑に重なり合った集塊状赤血球を正確に数えることは難しく、計測時間も長くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の欠点を鑑みてなされたもので、本発明の目的は、生きたままの赤血球の動的観察をすることによって個別に分離した赤血球と連鎖状や集塊状に凝集した赤血球の割合を定量化する方法、すなわち画像中に存在する分離赤血球と集塊状赤血球を数えるか、又は画像中に存在する全赤血球の面積に対する分離赤血球の総面積の比を用いて定量評価する方法、及びこの定量化方法の評価のために使用される血液観察用試料台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る血液観察用試料台は、平板なガラス基板と、このガラス基板上に配設される均一な厚みのスペーサ薄膜と、その上に載置されたカバーガラスとを備え、前記スペーサ薄膜は、所定量の血液を貯蔵する凹所とこの凹所に接続する逃げ道とを有して、この凹所内に滴下された血液量を常に一定に維持するための維持手段を備えることを特徴とする。
(2)(1)の血液観察用試料台において、
前記スペーサ薄膜は、2μm〜9μmの厚みを有することを特徴とする。
さらに、その厚みは、5μm(±10%)であることが好ましい。
【0009】
(3)(1)または(2)の血液観察用試料台において、
前記スペーサ薄膜が、基板上にメッキ技術により金属薄膜を形成してなることを特徴とする。
【0010】
(4)(1)または(2)の血液観察用試料台において、
前記スペーサ薄膜が、基板上に印刷技術により非金属薄膜を形成してなることを特徴とする。
【0011】
(5)本発明に係る血液細胞の分離定量評価方法は、(1)〜(4)いずれかに記載の血液観察用試料台を用いて血液の観察を行い、その画像中に存在する赤血球総数に対する分離赤血球数の割合を赤血球分離度と定義し、この値を用いて赤血球の分離・凝集状態を定量的に以下の式を用いて評価することを特徴とする。
赤血球分離度(%)=100×(分離赤血球の総数)/(分離赤血球の総数+凝集赤血球の総数)
【0012】
(6)本発明に係る血液細胞の分離定量評価方法は、(1)〜(4)いずれかに記載の血液観察用試料台を用いて血液の観察を行い、その画像中に存在する全赤血球の面積に対する分離赤血球の総面積の割合を赤血球分離度と定義し、この値を用いて赤血球の分離・凝集状態を定量的に以下の式を用いて評価する。
赤血球分離度(%)=100×(分離赤血球の総面積)/(分離赤血球の総面積+凝集赤血球の総面積)
【発明の効果】
【0013】
近年新たな方法として注目されている生きたままの血液の動的観察に対して、従来、判断基準が定性的で、検査者の主観によっていた評価法について、定量化基準を確立し、客観化することを試みた。定量化基準として赤血球分離度を定義することにより、赤血球の分離・凝集状態を定量化することができた。赤血球分離度を再現性よく計測するために、薄膜をスペーサとするスライドガラスを発明し、一定厚みの血液試料の作製を可能とした。これらにより、血球顕微鏡像の画像処理において、赤血球分離度の客観評価が可能になった。
【0014】
このように客観化された手法を用い、生理的変化検出の可能性を調べた結果、絶食・絶飲後のスポーツドリンク摂取に伴い、赤血球分離度が増加することが明らかとなった。また、糖負荷に伴い赤血球分離度が減少する傾向が見られた。純水摂取時の結果と合わせて考えると、スポーツドリンク摂取時の赤血球分離度の変化は、水分補給に伴うものと判断された。かくして、生理状態計測に対する新鮮血顕微鏡解析の信頼性および有用性の確証が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
赤血球分離度を正しく定量的に評価するためには、再現性よく一定の結果が得られる条件を確立する必要がある。そのために作製した血液観察用試料台の原理を図1に示す。図1は、血液観察用試料台の断面図を示す模式図である。該図1において、符号10は、ガラス基板を示し、これは平板形状をなして所定の均一な厚みを有する。該ガラス基板10上に一定厚みのスペーサ薄膜12を固定して配設し、その上にカバーガラス14を載せて使用する。該図1において、ガラス基板10の上に堆積されたスペーサ薄膜12は、メッキ技術により、金、銀、銅、白金、ロジウム、パラジウム、ニッケル、スズ、クロム等の金属薄膜を、または、印刷技術によりエポキシ樹脂やフッ素樹脂等の非金属を、所定のパターン及び所定の厚さに堆積することにより形成される。
【0016】
ここで、堆積させた薄膜は、カバーガラスを所定の高さに維持するスペーサの機能を有する。このスペーサ薄膜の膜厚tは、2μm〜9μm、好ましくは5μm(±10%)である。すなわちスペーサ薄膜の膜厚tが、2μm以下であると、赤血球が押しつぶされるため血球の分離状態と凝集状態の区別がつきづらくなり動的観察が出来なくなる。また、膜厚が9μm以上であると、血球が多層になり、本来は分離しているのに凝集しているかのように観察される。これに対して、スペーサ薄膜の膜厚tが、2μm〜9μm、好ましくは5μm(±10%)であると、赤血球がほぼ一層となり、血球がお互いに妨げられることなく自由に動くことができるため、分離状態と凝集状態とを区別した動的観察が可能となる。
【0017】
さらに、スペーサ薄膜は、図2に示すような所定のパターン形状を有する。すなわち、スペーサ薄膜のパターンは、ガラス基板のほぼ中央に、直径d;約10mmのほぼ円形に抜いた形状を有している。この部分は、膜厚の厚さにより、深さt=2μm〜9μm、好ましくは5μm(±10%)のほぼ円形な凹所16を形成する。そして、この凹所16には、凹所内に滴下した血液が薄膜上に溢れ出ないように、血液の逃げ道18(流路)が連結して接続されている。該図2において、この血液の逃げ道18は、凹所16の所定の位置4箇所に設けられている。4箇所の各逃げ道は、円形形状の凹所16の中心からそれぞれ90度の角度をもって、それぞれガラス基板の長手方向及び縦方向に形成されている。なお、この赤血球の逃げ道18は、上述の凹所の所定の位置の4箇所に限定されずに、血液が薄膜上に溢れ出ないように、血液を排出する種々の形状を有することもできる。かくして、該凹所16内に滴下された血液は常に一定の厚みに維持され、顕微鏡観察用の血液試料の一定化が実現される。また、ガラス基板の一端側には、手で持つ領域20に血液が流れ出るのを防止するために、基板の縦方向に延出する凸部21が設けられている。
【0018】
図3は、スペーサ薄膜のパターンの他の例を示す。該図3において、円形凹所16からの血液の逃道として、2箇所の流路が設けられている。2箇所の各逃げ道は、円形形状の凹所の中心からそれぞれ180度の角度をもって、それぞれガラス基板の長手方向に形成されている。なお、血液の逃げ道18は、上述の凹所の所定位置から、4箇所又は2箇所に限定されずに形成することができるのは、勿論である。
【0019】
かくして、厚さ9μm以上又は2μm以下のスペーサ薄膜により血液試料を作製したところ、赤血球が厚く重なり合い、解析に適さない状態が多く観察され、また、血液が円形凹所全体にうまく広がらないこともあった。しかし、スペーサ薄膜の膜厚を2μm〜9μm、好ましくは5μm(±10%)にし、指先から約0.25μlの血液を採取し、ガラス基板の中央の円形凹所に滴下したところ、赤血球が一層に近い状態で広がり、解析に適した状態で安定した血液試料の観察が可能となった。
【0020】
この方法を用いて、同じ時間帯に採血した血液試料複数枚を観察したところ、血液厚みにバラつきがなく、同じ傾向の血球像が再現性よく観察できた。以降、この2μm〜9μm、好ましくは5μm(±10%)の厚みのあるスペーサ薄膜を使用して、種々の解析を行った。
【0021】
上記のように血液厚みを一定化した血液観察用試料台を使用して、顕微鏡により赤血球の分離・凝集状態を観察する際に、次のように計測領域を分割し、赤血球の分離・凝集状態の不均一の影響を平均化するようにした。具体的には、図4に示すように血液試料中央部の2.0mm×2.5mmの範囲を0.5mm刻みに分割して合計30領域とし、各々を1000倍の倍率で観測した。1血液試料につき、これら30領域の画像について、画像解析により分離赤血球と凝集赤血球を区別した。区別した各々の血球数又は血球面積から赤血球分離度を求め、30領域の平均をもってその血液試料の赤血球分離度とした。
【0022】
このようにして得た赤血球分離度の安定性を確かめるため、各血液試料における30領域の赤血球分離度の分散の程度を調べた。25人の被験者につき各5回計測した結果、赤血球分離度の変動係数(標準偏差/平均値)は、ほぼ30%以内であり、比較的安定な計測パラメータであることが確かめられた。以降の解析では、この30領域の平均値を、その血液試料赤血球分離度の代表値とした。
【0023】
この定量化方法の正確さを調べるために、600画像について血球数比による定量化と血球面積比による定量化を行い、比較をした。その結果を図5に示す。そして、図5に見られるように、相関係数r=0.97と高い相関関係が得られた。この結果より、処理上困難の大きい赤血球個数の計数を行わずとも、面積比によって同等の定量評価が可能なことが確かめられた。
【0024】
かくして、本発明では、赤血球数の計測が可能な場合には、血球数比を赤血球分離度を用い、また計測が困難な場合には、血球面積比を赤血球分離度に用いて、赤血球の分離・凝集状態を評価する。図6は、画像中に存在する分離赤血球と凝集赤血球の区別及び面積算出の結果の概略を示す。
【0025】
赤血球分離度(%)=100×(分離赤血球の総数)/(分離赤血球の総数+集塊状赤血球の総数)
又は、
赤血球分離度(%)=100×(分離赤血球の総面積)/(分離赤血球の総面積+凝集赤血球の総面積)
【0026】
本発明に係る方法による生理的変化検出の可能性を調べるため、スポーツドリンク摂取時の赤血球分離度の変化を実験的に調べた。実験では、被験者を脱水状態に近づけておき、体内への吸収が早いと言われるスポーツドリンク摂取前後の赤血球分離度の変化を調べた。被験者には約10時間の絶食・絶飲を課し、その後、血液顕微鏡像撮影を開始した。ここでは、500mlのスポーツドリンク摂取前及び後20分おきに赤血球分離度の計測を行った。また、血液状態の変化を確かめるため、細管を用いてヘマトクリットも同時に計測した。
【0027】
計測結果の代表例を図7に示す。これは、一個人の計測結果を、前述の30領域の平均値と標準偏差の経時変化として示したものである。ヘマトクリットは各点1〜3回の平均値である。赤血球分離度の変化の大きさ、平均値変化幅と標準偏差の程度などが読み取れる。また、スポーツドリンク摂取に伴い、赤血球分離度とヘマトクリットが、ほぼ対称的な増減を示すこともわかる。これらの平均値を用いて、被験者25人分の計測値をまとめた結果を図8及び図9に示す。これらの図では、図7の一個人のデータと同様に、赤血球分離度は、スポーツドリンク摂取後20分で有意に増加し、その後その状態を保ちつつわずかに減少していく。ヘマトクリットは摂取後20分で減少し、その状態を保ちつつわずかに増加していく。
【0028】
これらの結果より、赤血球分離度が、スポーツドリンク摂取に伴う生理的変化を反映していることが、定量的に明らかとなった。
【0029】
スポーツドリンク摂取に伴う赤血球分離度の変化の原因として、水分または糖分の補給が考えられる。これを明らかにするために、血糖負荷試験と純水摂取時の赤血球の分離度変化を調べた。血糖負荷試験では、被験者に約10時間の絶食・絶飲を課し、その後、血球顕微鏡像撮影を開始した。ここでは、ブドウ糖75gを含む225mlの糖液(清水製薬、トレーランG75)摂取前及び後30分おきに指先から血液を採取し、赤血球分離度を計測した。また、市販の血糖値計測キット(テルモ、メディセーフミニGR−102)を用いて血糖値を測るとともに細管によりヘマトクリットの計測も行った。
【0030】
計測結果の代表例を図10に示す。これは、一個人の計測結果を、30領域の平均値と標準偏差の経時変化として示したものである。糖液摂取後30分で、赤血球分離度が顕著に減少し、その後、時間とともにもとに戻っていく様子がわかる。つぎに、同時に計測した血糖値とヘマトクリットの結果を図11に示す。血糖値が、赤血球分離度とほぼ対称的な増減を示すこと、およびヘマトクリットは特に一定した変化の傾向が見られないことが分かる。この実験を、6人の被験者に対し行った。その結果のまとめを図12及び図13に示す。測定結果のバラつきのため、差は減少したが、前述の代表例とほぼ同様の結果が得られた。これらの結果により、赤血球分離度は血糖値の変化に応じて、明らかな変化を示すことが定量的に示された。なお、糖負荷の際の赤血球の凝集については、他の計測による報告もある。
【0031】
また、糖負荷に伴い赤血球分離度が減少することから考えると、スポーツドリンク摂取に伴い赤血球分離度が増加した原因は、スポーツドリンク中の糖成分によるものではないことが判明した。この結果を受け、スポーツドリンク摂取時における赤血球分離度変化の原因を確かめるため、さらに純水摂取時の赤血球分離度を調べた。実験の手順は、摂取物が純水であることを除いては、スポーツドリンク摂取の実験と同様である。さらに血糖値の計測も同時に行った。ここで得られた純水摂取前後の赤血球分離度の変化を図14に示す。純水の摂取に伴い赤血球分離度が増加することがわかる。ヘマトクリットは、赤血球分離度と対称的変化を示し、血糖値は有益な変化を示さなかった。
【0032】
これらの結果を総合すると、スポーツドリンク摂取時の赤血球分離度の変化は、主として水分によるものと考えられる。つまり、赤血球分離度は水分補給に伴う生理的変化を顕著に反映することが明らかとなった。また、糖負荷に伴う生理的変化も、本手法で計測した赤血球分離度に反映されることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、被験者の生理状態、栄養状態や健康状態に関する情報を得るための検査や、その検査に使用するための血液観察用試料台として、容易に適用することができ、産業上の利用可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る血液観察用試料台であって、その断面を示す模式図である。
【図2】同じく、本発明による血液観察用試料台のスペーサ薄膜のパターンの一例を示す平面図である。
【図3】同じく、本発明による血液観察用試料台のスペーサ薄膜の他のパターンを示す平面図である。
【図4】本発明に係る図であり、試料中央部における赤血球分離度測定手順を示す概念図である。
【図5】同じく、血球数比による分離度と面積比による分離度との相関を示す図である。
【図6】同じく、画像中に存在する分離赤血球と凝集赤血球の区別及び面積算出の結果の概略を示す図である。
【図7】同じく、一被験者のスポーツドリンク摂取における赤血球分離度の変化を示す図である。
【図8】同じく、スポーツドリンク摂取における赤血球分離度の25人平均の変化を示す図である。
【図9】同じく、スポーツドリンク摂取におけるヘマトクリットの25人平均の変化を示す図である。
【図10】同じく、一被験者の糖液摂取における赤血球分離度の変化を示す図である。
【図11】同じく、一被験者の糖液摂取における血糖値及びヘマトクリットの変化を示す図である。
【図12】同じく、糖液摂取における赤血球分離度の6人平均の変化を示す図である。
【図13】同じく、糖液摂取における血糖値及びヘマトクリットの6人変化を示す図である。
【図14】同じく、純水摂取における赤血球分離度の3人平均の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10 ガラス基板
12 スペーサ薄膜
14 カバーガラス
16 凹所
18 逃げ道(流路)
20 把持のための領域
21 流出防止用の凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、病態診断だけではなく、健康状態及び栄養状態の初期的検査のための赤血球の分離・凝集状態を定量的に評価するための血液細胞分離状態の定量評価方法及びこの定量評価方法に使用するための血液観察用試料台に関する。
【背景技術】
【0002】
血液塗抹染色標本を用いて顕微鏡下に観察される血球像から種々の病態を診断する検査法は、早くから臨床に供されており、異常状態の発見や病名の確定に力を発揮している。この検査のための血液塗抹標本の作製は、引きガラスの引き具合などに経験を要し、作製者の個人差を避け得ないものであった。また、血液を薄層にした後、すばやく乾燥させ、固定・染色などのプロセスを要するものでもあった。
【0003】
従来の血球顕微鏡像解析に使用される血液塗抹染色標本は、ガラス基板上に血液を滴下して乾燥させ染色・固定して作られるので、血液の厚みにバラツキが生じる。また、従来の血液塗抹染色標本によれば「死んだ」血液を観察して種々の病態診断をしていることになる。さらに、血液の観察において、血球が厚く重なった状態になり、精度良く観察を行うことに適していない。
【0004】
これに対し近年、予防医学や健康科学の観点から、一滴の新鮮な血液そのものから情報を得ようとする試みがある。つまり、染色や固定などの前処理をせず、直接光学顕微鏡下に観察した血球像から、被験者の栄養状態や健康状態に関する種々の情報を得ようとするものである。しかし現在のところ、その判断基準は、ほとんどが定性的なものであり、検査者の主観によっているのが現状である。簡易な初期チェックとしてのこの方法の簡便さが注目され、再現性のある客観的定量評価を可能とする手法が研究されている。
【0005】
新鮮血の血球顕微鏡像解析において、最も特徴的で、頻繁に観察されるものが、赤血球の分離・凝集状態である。通常、赤血球表面は陰性に荷電し、互いに反発し合うことから、赤血球同士は分離している。しかし、中性荷電した軸比の大きな物質が赤血球表面に結合すると、この分子の両端が赤血球に架橋し、赤血球が結合すると言われている。また新鮮血において赤血球を結合する原因物質として、飽和脂肪や異常なタンパク質が関与すると言われている。これらより、赤血球の分離・凝集状態が、生理状態の一端を反映すると考えられる。
【0006】
赤血球の分離・凝集状態を評価するには、分離赤血球と集塊状赤血球の個数の割合を求めるのが、直接的である。しかし、解析上、複雑に重なり合った集塊状赤血球を正確に数えることは難しく、計測時間も長くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の欠点を鑑みてなされたもので、本発明の目的は、生きたままの赤血球の動的観察をすることによって個別に分離した赤血球と連鎖状や集塊状に凝集した赤血球の割合を定量化する方法、すなわち画像中に存在する分離赤血球と集塊状赤血球を数えるか、又は画像中に存在する全赤血球の面積に対する分離赤血球の総面積の比を用いて定量評価する方法、及びこの定量化方法の評価のために使用される血液観察用試料台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る血液観察用試料台は、平板なガラス基板と、このガラス基板上に配設される均一な厚みのスペーサ薄膜と、その上に載置されたカバーガラスとを備え、前記スペーサ薄膜は、所定量の血液を貯蔵する凹所とこの凹所に接続する逃げ道とを有して、この凹所内に滴下された血液量を常に一定に維持するための維持手段を備えることを特徴とする。
(2)(1)の血液観察用試料台において、
前記スペーサ薄膜は、2μm〜9μmの厚みを有することを特徴とする。
さらに、その厚みは、5μm(±10%)であることが好ましい。
【0009】
(3)(1)または(2)の血液観察用試料台において、
前記スペーサ薄膜が、基板上にメッキ技術により金属薄膜を形成してなることを特徴とする。
【0010】
(4)(1)または(2)の血液観察用試料台において、
前記スペーサ薄膜が、基板上に印刷技術により非金属薄膜を形成してなることを特徴とする。
【0011】
(5)本発明に係る血液細胞の分離定量評価方法は、(1)〜(4)いずれかに記載の血液観察用試料台を用いて血液の観察を行い、その画像中に存在する赤血球総数に対する分離赤血球数の割合を赤血球分離度と定義し、この値を用いて赤血球の分離・凝集状態を定量的に以下の式を用いて評価することを特徴とする。
赤血球分離度(%)=100×(分離赤血球の総数)/(分離赤血球の総数+凝集赤血球の総数)
【0012】
(6)本発明に係る血液細胞の分離定量評価方法は、(1)〜(4)いずれかに記載の血液観察用試料台を用いて血液の観察を行い、その画像中に存在する全赤血球の面積に対する分離赤血球の総面積の割合を赤血球分離度と定義し、この値を用いて赤血球の分離・凝集状態を定量的に以下の式を用いて評価する。
赤血球分離度(%)=100×(分離赤血球の総面積)/(分離赤血球の総面積+凝集赤血球の総面積)
【発明の効果】
【0013】
近年新たな方法として注目されている生きたままの血液の動的観察に対して、従来、判断基準が定性的で、検査者の主観によっていた評価法について、定量化基準を確立し、客観化することを試みた。定量化基準として赤血球分離度を定義することにより、赤血球の分離・凝集状態を定量化することができた。赤血球分離度を再現性よく計測するために、薄膜をスペーサとするスライドガラスを発明し、一定厚みの血液試料の作製を可能とした。これらにより、血球顕微鏡像の画像処理において、赤血球分離度の客観評価が可能になった。
【0014】
このように客観化された手法を用い、生理的変化検出の可能性を調べた結果、絶食・絶飲後のスポーツドリンク摂取に伴い、赤血球分離度が増加することが明らかとなった。また、糖負荷に伴い赤血球分離度が減少する傾向が見られた。純水摂取時の結果と合わせて考えると、スポーツドリンク摂取時の赤血球分離度の変化は、水分補給に伴うものと判断された。かくして、生理状態計測に対する新鮮血顕微鏡解析の信頼性および有用性の確証が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
赤血球分離度を正しく定量的に評価するためには、再現性よく一定の結果が得られる条件を確立する必要がある。そのために作製した血液観察用試料台の原理を図1に示す。図1は、血液観察用試料台の断面図を示す模式図である。該図1において、符号10は、ガラス基板を示し、これは平板形状をなして所定の均一な厚みを有する。該ガラス基板10上に一定厚みのスペーサ薄膜12を固定して配設し、その上にカバーガラス14を載せて使用する。該図1において、ガラス基板10の上に堆積されたスペーサ薄膜12は、メッキ技術により、金、銀、銅、白金、ロジウム、パラジウム、ニッケル、スズ、クロム等の金属薄膜を、または、印刷技術によりエポキシ樹脂やフッ素樹脂等の非金属を、所定のパターン及び所定の厚さに堆積することにより形成される。
【0016】
ここで、堆積させた薄膜は、カバーガラスを所定の高さに維持するスペーサの機能を有する。このスペーサ薄膜の膜厚tは、2μm〜9μm、好ましくは5μm(±10%)である。すなわちスペーサ薄膜の膜厚tが、2μm以下であると、赤血球が押しつぶされるため血球の分離状態と凝集状態の区別がつきづらくなり動的観察が出来なくなる。また、膜厚が9μm以上であると、血球が多層になり、本来は分離しているのに凝集しているかのように観察される。これに対して、スペーサ薄膜の膜厚tが、2μm〜9μm、好ましくは5μm(±10%)であると、赤血球がほぼ一層となり、血球がお互いに妨げられることなく自由に動くことができるため、分離状態と凝集状態とを区別した動的観察が可能となる。
【0017】
さらに、スペーサ薄膜は、図2に示すような所定のパターン形状を有する。すなわち、スペーサ薄膜のパターンは、ガラス基板のほぼ中央に、直径d;約10mmのほぼ円形に抜いた形状を有している。この部分は、膜厚の厚さにより、深さt=2μm〜9μm、好ましくは5μm(±10%)のほぼ円形な凹所16を形成する。そして、この凹所16には、凹所内に滴下した血液が薄膜上に溢れ出ないように、血液の逃げ道18(流路)が連結して接続されている。該図2において、この血液の逃げ道18は、凹所16の所定の位置4箇所に設けられている。4箇所の各逃げ道は、円形形状の凹所16の中心からそれぞれ90度の角度をもって、それぞれガラス基板の長手方向及び縦方向に形成されている。なお、この赤血球の逃げ道18は、上述の凹所の所定の位置の4箇所に限定されずに、血液が薄膜上に溢れ出ないように、血液を排出する種々の形状を有することもできる。かくして、該凹所16内に滴下された血液は常に一定の厚みに維持され、顕微鏡観察用の血液試料の一定化が実現される。また、ガラス基板の一端側には、手で持つ領域20に血液が流れ出るのを防止するために、基板の縦方向に延出する凸部21が設けられている。
【0018】
図3は、スペーサ薄膜のパターンの他の例を示す。該図3において、円形凹所16からの血液の逃道として、2箇所の流路が設けられている。2箇所の各逃げ道は、円形形状の凹所の中心からそれぞれ180度の角度をもって、それぞれガラス基板の長手方向に形成されている。なお、血液の逃げ道18は、上述の凹所の所定位置から、4箇所又は2箇所に限定されずに形成することができるのは、勿論である。
【0019】
かくして、厚さ9μm以上又は2μm以下のスペーサ薄膜により血液試料を作製したところ、赤血球が厚く重なり合い、解析に適さない状態が多く観察され、また、血液が円形凹所全体にうまく広がらないこともあった。しかし、スペーサ薄膜の膜厚を2μm〜9μm、好ましくは5μm(±10%)にし、指先から約0.25μlの血液を採取し、ガラス基板の中央の円形凹所に滴下したところ、赤血球が一層に近い状態で広がり、解析に適した状態で安定した血液試料の観察が可能となった。
【0020】
この方法を用いて、同じ時間帯に採血した血液試料複数枚を観察したところ、血液厚みにバラつきがなく、同じ傾向の血球像が再現性よく観察できた。以降、この2μm〜9μm、好ましくは5μm(±10%)の厚みのあるスペーサ薄膜を使用して、種々の解析を行った。
【0021】
上記のように血液厚みを一定化した血液観察用試料台を使用して、顕微鏡により赤血球の分離・凝集状態を観察する際に、次のように計測領域を分割し、赤血球の分離・凝集状態の不均一の影響を平均化するようにした。具体的には、図4に示すように血液試料中央部の2.0mm×2.5mmの範囲を0.5mm刻みに分割して合計30領域とし、各々を1000倍の倍率で観測した。1血液試料につき、これら30領域の画像について、画像解析により分離赤血球と凝集赤血球を区別した。区別した各々の血球数又は血球面積から赤血球分離度を求め、30領域の平均をもってその血液試料の赤血球分離度とした。
【0022】
このようにして得た赤血球分離度の安定性を確かめるため、各血液試料における30領域の赤血球分離度の分散の程度を調べた。25人の被験者につき各5回計測した結果、赤血球分離度の変動係数(標準偏差/平均値)は、ほぼ30%以内であり、比較的安定な計測パラメータであることが確かめられた。以降の解析では、この30領域の平均値を、その血液試料赤血球分離度の代表値とした。
【0023】
この定量化方法の正確さを調べるために、600画像について血球数比による定量化と血球面積比による定量化を行い、比較をした。その結果を図5に示す。そして、図5に見られるように、相関係数r=0.97と高い相関関係が得られた。この結果より、処理上困難の大きい赤血球個数の計数を行わずとも、面積比によって同等の定量評価が可能なことが確かめられた。
【0024】
かくして、本発明では、赤血球数の計測が可能な場合には、血球数比を赤血球分離度を用い、また計測が困難な場合には、血球面積比を赤血球分離度に用いて、赤血球の分離・凝集状態を評価する。図6は、画像中に存在する分離赤血球と凝集赤血球の区別及び面積算出の結果の概略を示す。
【0025】
赤血球分離度(%)=100×(分離赤血球の総数)/(分離赤血球の総数+集塊状赤血球の総数)
又は、
赤血球分離度(%)=100×(分離赤血球の総面積)/(分離赤血球の総面積+凝集赤血球の総面積)
【0026】
本発明に係る方法による生理的変化検出の可能性を調べるため、スポーツドリンク摂取時の赤血球分離度の変化を実験的に調べた。実験では、被験者を脱水状態に近づけておき、体内への吸収が早いと言われるスポーツドリンク摂取前後の赤血球分離度の変化を調べた。被験者には約10時間の絶食・絶飲を課し、その後、血液顕微鏡像撮影を開始した。ここでは、500mlのスポーツドリンク摂取前及び後20分おきに赤血球分離度の計測を行った。また、血液状態の変化を確かめるため、細管を用いてヘマトクリットも同時に計測した。
【0027】
計測結果の代表例を図7に示す。これは、一個人の計測結果を、前述の30領域の平均値と標準偏差の経時変化として示したものである。ヘマトクリットは各点1〜3回の平均値である。赤血球分離度の変化の大きさ、平均値変化幅と標準偏差の程度などが読み取れる。また、スポーツドリンク摂取に伴い、赤血球分離度とヘマトクリットが、ほぼ対称的な増減を示すこともわかる。これらの平均値を用いて、被験者25人分の計測値をまとめた結果を図8及び図9に示す。これらの図では、図7の一個人のデータと同様に、赤血球分離度は、スポーツドリンク摂取後20分で有意に増加し、その後その状態を保ちつつわずかに減少していく。ヘマトクリットは摂取後20分で減少し、その状態を保ちつつわずかに増加していく。
【0028】
これらの結果より、赤血球分離度が、スポーツドリンク摂取に伴う生理的変化を反映していることが、定量的に明らかとなった。
【0029】
スポーツドリンク摂取に伴う赤血球分離度の変化の原因として、水分または糖分の補給が考えられる。これを明らかにするために、血糖負荷試験と純水摂取時の赤血球の分離度変化を調べた。血糖負荷試験では、被験者に約10時間の絶食・絶飲を課し、その後、血球顕微鏡像撮影を開始した。ここでは、ブドウ糖75gを含む225mlの糖液(清水製薬、トレーランG75)摂取前及び後30分おきに指先から血液を採取し、赤血球分離度を計測した。また、市販の血糖値計測キット(テルモ、メディセーフミニGR−102)を用いて血糖値を測るとともに細管によりヘマトクリットの計測も行った。
【0030】
計測結果の代表例を図10に示す。これは、一個人の計測結果を、30領域の平均値と標準偏差の経時変化として示したものである。糖液摂取後30分で、赤血球分離度が顕著に減少し、その後、時間とともにもとに戻っていく様子がわかる。つぎに、同時に計測した血糖値とヘマトクリットの結果を図11に示す。血糖値が、赤血球分離度とほぼ対称的な増減を示すこと、およびヘマトクリットは特に一定した変化の傾向が見られないことが分かる。この実験を、6人の被験者に対し行った。その結果のまとめを図12及び図13に示す。測定結果のバラつきのため、差は減少したが、前述の代表例とほぼ同様の結果が得られた。これらの結果により、赤血球分離度は血糖値の変化に応じて、明らかな変化を示すことが定量的に示された。なお、糖負荷の際の赤血球の凝集については、他の計測による報告もある。
【0031】
また、糖負荷に伴い赤血球分離度が減少することから考えると、スポーツドリンク摂取に伴い赤血球分離度が増加した原因は、スポーツドリンク中の糖成分によるものではないことが判明した。この結果を受け、スポーツドリンク摂取時における赤血球分離度変化の原因を確かめるため、さらに純水摂取時の赤血球分離度を調べた。実験の手順は、摂取物が純水であることを除いては、スポーツドリンク摂取の実験と同様である。さらに血糖値の計測も同時に行った。ここで得られた純水摂取前後の赤血球分離度の変化を図14に示す。純水の摂取に伴い赤血球分離度が増加することがわかる。ヘマトクリットは、赤血球分離度と対称的変化を示し、血糖値は有益な変化を示さなかった。
【0032】
これらの結果を総合すると、スポーツドリンク摂取時の赤血球分離度の変化は、主として水分によるものと考えられる。つまり、赤血球分離度は水分補給に伴う生理的変化を顕著に反映することが明らかとなった。また、糖負荷に伴う生理的変化も、本手法で計測した赤血球分離度に反映されることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、被験者の生理状態、栄養状態や健康状態に関する情報を得るための検査や、その検査に使用するための血液観察用試料台として、容易に適用することができ、産業上の利用可能性は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る血液観察用試料台であって、その断面を示す模式図である。
【図2】同じく、本発明による血液観察用試料台のスペーサ薄膜のパターンの一例を示す平面図である。
【図3】同じく、本発明による血液観察用試料台のスペーサ薄膜の他のパターンを示す平面図である。
【図4】本発明に係る図であり、試料中央部における赤血球分離度測定手順を示す概念図である。
【図5】同じく、血球数比による分離度と面積比による分離度との相関を示す図である。
【図6】同じく、画像中に存在する分離赤血球と凝集赤血球の区別及び面積算出の結果の概略を示す図である。
【図7】同じく、一被験者のスポーツドリンク摂取における赤血球分離度の変化を示す図である。
【図8】同じく、スポーツドリンク摂取における赤血球分離度の25人平均の変化を示す図である。
【図9】同じく、スポーツドリンク摂取におけるヘマトクリットの25人平均の変化を示す図である。
【図10】同じく、一被験者の糖液摂取における赤血球分離度の変化を示す図である。
【図11】同じく、一被験者の糖液摂取における血糖値及びヘマトクリットの変化を示す図である。
【図12】同じく、糖液摂取における赤血球分離度の6人平均の変化を示す図である。
【図13】同じく、糖液摂取における血糖値及びヘマトクリットの6人変化を示す図である。
【図14】同じく、純水摂取における赤血球分離度の3人平均の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10 ガラス基板
12 スペーサ薄膜
14 カバーガラス
16 凹所
18 逃げ道(流路)
20 把持のための領域
21 流出防止用の凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板なガラス基板と、このガラス基板上に配設される均一な厚みのスペーサ薄膜と、その上に載置されたカバーガラスとを備え、
前記スペーサ薄膜は、所定量の血液を貯蔵する凹所とこの凹所に接続する逃げ道とを有して、この凹所内に滴下された血液量を常に一定に維持するための維持手段を備えることを特徴とする血液観察用試料台。
【請求項2】
前記スペーサ薄膜は、2μm〜9μmの厚みを有することを特徴とする請求項1記載の血液観察用試料台。
【請求項3】
前記スペーサ薄膜は、基板上に、メッキ技術により、金、銀、銅、白金、ロジウム、パラジウム、ニッケル、スズ、クロムの群から選択された1つの金属からなる金属薄膜を形成してなることを特徴とする請求項1または2に記載の血液観察用試料台。
【請求項4】
前記スペーサ薄膜は、基板上に印刷技術によりエポキシ樹脂やフッ素樹脂からなる群から選ばれた1つの非金属からなる非金属薄膜を形成してなることを特徴とする請求項1または2に記載の血液観察用試料台。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の血液観察用試料台を用いて血液の観察を行い、その画像中に存在する赤血球総数に対する分離赤血球数の割合を赤血球分離度と定義し、この値を用いて赤血球の分離・凝集状態を次の式により定量的に評価することを特徴とする血液細胞の分離定量評価方法。
赤血球分離度(%)=100×(分離赤血球の総数)/(分離赤血球の総数+凝集赤血球の総数)
【請求項6】
請求項1〜4いずれかに記載の血液観察用試料台を用いて血液の観察を行い、その画像中に存在する全赤血球の面積に対する分離赤血球の総面積の割合を赤血球分離度と定義し、この値を用いて赤血球の分離・凝集状態を次の式により定量的に評価することを特徴とする血液細胞の分離定量評価方法。
赤血球分離度(%)=100×(分離赤血球の総面積)/(分離赤血球の総面積+凝集赤血球の総面積)
【請求項1】
平板なガラス基板と、このガラス基板上に配設される均一な厚みのスペーサ薄膜と、その上に載置されたカバーガラスとを備え、
前記スペーサ薄膜は、所定量の血液を貯蔵する凹所とこの凹所に接続する逃げ道とを有して、この凹所内に滴下された血液量を常に一定に維持するための維持手段を備えることを特徴とする血液観察用試料台。
【請求項2】
前記スペーサ薄膜は、2μm〜9μmの厚みを有することを特徴とする請求項1記載の血液観察用試料台。
【請求項3】
前記スペーサ薄膜は、基板上に、メッキ技術により、金、銀、銅、白金、ロジウム、パラジウム、ニッケル、スズ、クロムの群から選択された1つの金属からなる金属薄膜を形成してなることを特徴とする請求項1または2に記載の血液観察用試料台。
【請求項4】
前記スペーサ薄膜は、基板上に印刷技術によりエポキシ樹脂やフッ素樹脂からなる群から選ばれた1つの非金属からなる非金属薄膜を形成してなることを特徴とする請求項1または2に記載の血液観察用試料台。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載の血液観察用試料台を用いて血液の観察を行い、その画像中に存在する赤血球総数に対する分離赤血球数の割合を赤血球分離度と定義し、この値を用いて赤血球の分離・凝集状態を次の式により定量的に評価することを特徴とする血液細胞の分離定量評価方法。
赤血球分離度(%)=100×(分離赤血球の総数)/(分離赤血球の総数+凝集赤血球の総数)
【請求項6】
請求項1〜4いずれかに記載の血液観察用試料台を用いて血液の観察を行い、その画像中に存在する全赤血球の面積に対する分離赤血球の総面積の割合を赤血球分離度と定義し、この値を用いて赤血球の分離・凝集状態を次の式により定量的に評価することを特徴とする血液細胞の分離定量評価方法。
赤血球分離度(%)=100×(分離赤血球の総面積)/(分離赤血球の総面積+凝集赤血球の総面積)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−71475(P2006−71475A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255602(P2004−255602)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(598162562)株式会社白寿生科学研究所 (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(598162562)株式会社白寿生科学研究所 (15)
【Fターム(参考)】
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