血清脂質代謝改善剤
【課題】血清脂質代謝改善作用を有する栄養組成物を提供すること。
【解決手段】タンパク質、脂質および糖質を含有する栄養組成物であって、エネルギー比率がタンパク質10〜25%、脂質10〜35%および糖質40〜60%であり、且つ、脂質のエネルギー比率中のオレイン酸が60〜90%、糖質のエネルギー比率中のパラチノースおよび/またはトレハルロースが60〜100%である、栄養組成物。
【解決手段】タンパク質、脂質および糖質を含有する栄養組成物であって、エネルギー比率がタンパク質10〜25%、脂質10〜35%および糖質40〜60%であり、且つ、脂質のエネルギー比率中のオレイン酸が60〜90%、糖質のエネルギー比率中のパラチノースおよび/またはトレハルロースが60〜100%である、栄養組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清脂質代謝改善作用を有する組成物および該組成物の有効量を添加した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動脈硬化、特に冠動脈硬化が原因で起こる狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患の発症頻度が増加の一途を辿っている。動脈硬化をもたらす要因としては、高脂血症以外にも、高血圧、喫煙、ストレス、糖尿病、遺伝性素因等の危険因子が存在することは事実であるが、しかし、これらの中で高脂血症が最大の危険因子である。高脂血症とは、血清脂質成分のうち、主として、コレステロールとトリグリセリド(中性脂肪)の何れか一方、ないしは両者が正常以上に増加した状態、として定義される。
血清コレステロール濃度、あるいはLDLコレステロール濃度が高いほど、動脈硬化のリスクが高くなり、血清コレステロール値を下げることにより、冠動脈疾患の発症率を低下させることができる、とされている。また、血清リポ蛋白の中でも、LDLがatherogenicに働き、HDLがantiatherogenicに働くという今では一般化された通念は、疫学調査によって確立されている。そして、HDLコレステロールの低いことが、脂質の高値に相関しているのに、リスクフアクターとしてのトリグリセリドの評価が低すぎる(非特許文献1)。また、家族性高コレステロール血症では、トリグリセリドの高値群で、虚血性心疾患や脳血管障害の合併率がより高率となることが示されており、境界域高コレステロール血症のレベルにある場合には、トリグリセリド濃度の改善を図ることが望ましいとされている。したがって、高脂血症を予防あるいは改善するためには、血中トリグリセリドを低下させることが必要である。また、高脂血症は糖尿病性腎症の増悪因子としても知られている。
【非特許文献1】最新内科学大系第36巻動脈硬化と脈管疾患、p20、中山書店(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、トリグリセリド低下作用を有する脂質代謝改善組成物および該組成物の有効量を添加した食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者らは、タンパク質、脂質および糖質を、特定のエネルギー比率となるよう含有する栄養組成物を調製し、正常動物の脂質代謝に及ぼす効果を調べた。その結果、当該栄養組成物は流動食「メイバランスC(FOOD Style 21, pp.58, 1991.1(Vol.3 No.1))」と比べ有意に血清中のトリグリセリド上昇抑制作用を示した。これらの結果より、本栄養組成物が、血清脂質代謝異常者のための血清脂質コントロール用、および血清脂質上昇予防用として有用であることを見出し、本発明を完成した。当該栄養組成物は、血糖値コントロール作用を有することが明らかとなっている(WO 03/022288)が、血清脂質代謝改善作用を有していることは知られていなかった。
【0005】
すなわち、本発明は、
[1] タンパク質、脂質および糖質を含有する栄養組成物であって、エネルギー比率がタンパク質10〜25%、脂質10〜35%および糖質40〜60%であり、且つ、脂質のエネルギー比率中のオレイン酸が60〜90%、糖質のエネルギー比率中のパラチノースおよび/またはトレハルロースが60〜100%である、血清脂質代謝改善用栄養組成物、
[2] 乳リン脂質、大豆レシチン、ハイオレイックヒマワリ油及びエゴマ油から選ばれる少なくとも1種を含有する前記[1]記載の栄養組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の栄養組成物は、優れた血清脂質代謝改善作用を有しているので、経口・経管栄養剤、治療食、在宅用の病者用食品あるいは保健機能食品として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の栄養組成物(以下、「栄養組成物」または「組成物」ともいう)において、タンパク質は組成物中、10〜25%のエネルギー比率、好ましくは10〜20%のエネルギー比率で含有される。
【0008】
タンパク質としては、乳タンパク、植物由来のタンパク、大豆タンパク又はその加水分解物等が挙げられるが、乳タンパクが一般的である。乳タンパクとしては、MPC(Milk Protein Concentrate)、カゼインタンパク、ホエイタンパク、マグネシウムカゼイネートおよびこれらの加水分解物、発酵乳及び発酵乳より乳清を除去した成分(フレッシュチーズ、クワルク)(特開平5-252896号)等が挙げられる。これらのうち、MPC、さらにはMPCとカゼインとを組み合わせたものが最も好ましい。
【0009】
ホエイタンパクとしては、ホエイを濃縮・乾燥したホエイパウダー、ホエイを限外濾過(Ultrafiltration:UF)で濃縮後乾燥したホエイタンパク質濃縮物(Whey Protein Concentrate:WPC)、ホエイ中の脂肪を除去した後、UF濃縮した脱脂WPC(低脂肪で高タンパク質)、ホエイからタンパク質のみを選択的に分離したWPI、ナノフィルトレーション濃縮した脱塩ホエイ、ホエイ由来のミネラル成分が濃縮されたミネラル濃縮ホエイなどが挙げられる。
【0010】
本発明の栄養組成物において、脂質は組成物中、10〜35%のエネルギー比率、好ましくは20〜30%のエネルギー比率で含有される。この比率は、第六次改定の日本人の栄養所要量に準ずるものである。脂質中の脂肪酸組成中一価不飽和脂肪酸(MUFA)の含量を高めるため、一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸は、脂質中、60〜90%のエネルギー比率、好ましくは60〜80%のエネルギー比率で含有される。オレイン酸を多く含む脂質源としては、例えば、高オレイン酸のハイオレイックヒマワリ油、ナタネ油、オリーブ油、高オレイン酸ベニバナ油、大豆油、コーン油、パーム油などが挙げられる。また、オレイン酸を含む脂質源として栄養調製油脂(日本油脂社製)が挙げられる。ヒマワリ油、ナタネ油、オリーブ油、およびオリーブ油との混合物も用いることができる。
【0011】
他の脂質としては、乳由来のリン脂質、レシチン(大豆あるいは卵黄由来)を用いるのが好ましい。
【0012】
乳リン脂質は、牛乳脂肪球皮膜(MFGM)のみに局在している。MFGMを多く含むものとして、限外濾過(ultrafiltration:UF)および精密濾過(microfiltration:MF)の組み合わせで製造されるWPIの副産物(MF保持液)の凍結乾燥物、ホエイクリームからバターオイルを除いた画分(バターゼラム)などが挙げられる。バターゼラムよりエタノールで数回抽出して濃縮した脂質画分、またはアセトン不溶性画分(α−Lipid:ニュージランドのAnchor Pruducts社)を用いてもよい。
【0013】
レシチンは、化学的にはホスファチジルコリン(PC)を意味するが、通常は、このPCの他にホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、およびホスファチジン酸(PA)の4種および他のリン脂質の混合体をレシチンといい、本発明においては、これら全てのレシチンを用いることができる。この他に、リン脂質純度の指標であるアセトン不溶性画分が62〜65%のペースト状のもの、リン脂質含量が95%以上の粉末状高純度レシチン、ホスファチジルコリンの含量を高めた分画レシチンなどが挙げられる。
【0014】
本発明の組成物はn−6系列多価不飽和脂肪酸およびn−3系列多価不飽和脂肪酸を含有できる。好ましくは、これらの多価不飽和脂肪酸は、脂肪酸組成中の10〜40%、好ましくは10〜30%含有することができる。例えば、これらの多価不飽和脂肪酸は脂肪酸組成物中約20%を含ませることができる。
【0015】
栄養組成物の脂質組成は、n−6系列多価不飽和脂肪酸とn−3系列多価不飽和脂肪酸の配合比が、約5:1〜約1:1、好ましくは約4:1とすることができる。このためには、n−3系のα−リノレン酸含有比率が高い、エゴマ油(シソ油)、またはアマニ油などを配合するのが好ましい。DHAを多く含むカツオやマグロ油を用いても良い。
【0016】
本発明においては、脂質として、乳リン脂質、大豆レシチン、ハイオレイックヒマワリ油及びエゴマ油から選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0017】
本発明の栄養組成物において、糖質は組成物中、40〜60%のエネルギー比率、好ましくは50〜60%のエネルギー比率で含有される。このエネルギー比率は、第六次改定の日本人の栄養所要量にほぼ準ずる。糖質としては、パラチノース、トレハルロースまたはこれらの混合物を用いる。パラチノース、トレハルロースまたはこれらの混合物は、糖質中、60〜100%のエネルギー比率、好ましくは60〜80%のエネルギー比率で含有される。
【0018】
他の糖質としては、例えば、糖アルコール(ソルビトール、キシリトール、マルチトールなど)、トレハロース、パラチニット、マルトデキストリン、加工デンプン、アミロースデンプン、タピオカデンプン、トウモロコシデンプン、フルクトース、ラクトース、またはこれらの混合物などが挙げられる。これらのなかで、マルトデキストリン、キシリトールまたはこれらの混合物が好ましい。マルトデキストリンはデンプンまたはコーンスターチの酸加水分解や酵素分解で得られる中間生成物の糖で、DE値が20以下である。
【0019】
本発明の栄養組成物は、さらに食物繊維を含有することができる。食物繊維としては、水溶性食物繊維、非水溶性食物繊維のいずれでも良く、水溶性食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸・アルギン酸分解物、グァーガム・グァーガム酵素分解物、ガラクトマンナンなどが挙げられる。難消化性デキストリンは食品への添加が容易で食品加工上支障を生じないので好ましい。また、非水溶性食物繊維としては、例えば、結晶セルロース、大豆食物繊維、小麦ふすま、コーンファイバー、ビートファイバーなどが挙げられる。
【0020】
また、本発明の栄養組成物は、標準流動食配合量に準じたビタミンおよびミネラルを含むことができる。ビタミンとしては、例えばビタミンB2、ニコチン酸アミド、ビタミンB6、パントテン酸カルシウム、葉酸、ビタミンB12、ビタミンA脂肪酸エステル、ビタミンD3、α-ビタミンE、ビタミンK2、L-アスコルビン酸ナトリウム、β-カロチンなどが挙げられる。ミネラルとしては、カルシウム、リン、鉄、ナトリウム、カリウム、塩素、マグネシウムまたは天然物由来の微量元素、例えば酵母ミネラルの銅、亜鉛、セレン、マンガン、クロムなどが含まれる。グルコン酸銅、グルコン酸亜鉛なども使用可能である。
【0021】
本発明の栄養組成物の浸透圧は約200〜1000mOsm/L、例えば約300〜750mOsm/Lの浸透圧を有するのが好ましい。室温で測定する場合、栄養組成物の粘度は、約5〜40mPa・s、特に5〜20mPa・sであるのが好ましい。
また、栄養組成物のカロリーは、約0.5〜3kcal/mL、特に1〜1.5kcal/mLであるのが好ましい。
【0022】
栄養組成物は、直接使用できる形態であることが望ましい。この形態で組成物は、経管で鼻−胃、空腸を経て、また、経口摂取することができる。このような栄養組成物は、各種形態、例えば、果実ジュース型飲料、ミルクシェーク型飲料などであっても良い。また、栄養組成物は、使用前に再構成できる可溶性粉末とすることもできる。
【0023】
栄養組成物は、各種フレーバー(例えばバニラなど)、甘味料および他の添加物を含むことができる。人工甘味料、例えばアスパルテームなどが使用できる。
【0024】
また、便臭低減効果のあるシャンピニオンエキスを5〜500mg(0.005〜0.5%);栄養強化の目的で、カロチノイド製剤(例えばα-カロチン、β-カロチン、リコピン、ルテインなどを含む)を10〜200μg(0.00001〜0.0002%)含有させることもできる。
さらにまた、抗酸化剤として、カテキン、ポリフェノールなどを含有させることもできる。
【0025】
栄養組成物は、例えば、タンパク質、脂質および糖質を、前記のような配合割合で混合することにより製造できる。この場合、乳化剤を混合物に配合することができる。
【0026】
本発明の栄養組成物は、当業界公知の方法で製品とすることができる。例えば、液状栄養組成物を予め加熱滅菌した後、無菌的に容器に充填する方法(例えば、UHT滅菌法とアセプティック包装法を併用した方法)、また、液状栄養組成物を容器に充填した後、容器とともに加熱滅菌する方法(例えば、オートクレーブ法)などである。
【0027】
使用形態が液状の場合、均質化物は、缶容器に充填し、レトルト殺菌を行うか、または、再度、約140〜145℃で約5〜8秒間加熱殺菌後、冷却し、無菌充填を行う。使用形態が粉末の場合、均質化物は、例えば噴霧乾燥する。また、使用形態が固形の場合には、寒天等を加えて固形化することができる。
【0028】
脳神経外科領域においては、自発的摂食行動がとれない意識障害を有する患者が多く、その上、40歳以上の中・高齢者の場合、何らかの合併症を伴っていることが多い。これらの意識障害患者の消化吸収能は阻害されていない場合が多く、より生理的な食餌摂取経路である腸管を介した栄養投与が可能である。そこで、栄養管理面で本発明の栄養組成物の果たす役割は重要である。また、腎不全を合併した多臓器障害(MODS)患者では、水・電解質異常をきたし易く、早期からの経腸栄養の妨げになっていた。そうした症例に対し、腎不全での水・電解質に留意した液状栄養組成物が望まれている。本発明の栄養組成物はこのような栄養組成物としても期待できる。
【0029】
本発明の栄養組成物は、経口・経管栄養剤、治療食、在宅用の病者用食品としての用途の他、保健機能食品(特定保健用食品および栄養機能食品)等の血清脂質代謝改善作用を表示した食品として用いることもできる。
【0030】
患者への栄養組成物の投与は、患者の状態、患者の体重、患者の年令および栄養組成物が栄養の唯一のものであるか等により異なる。そしてその投与量は、患者の担当医により決定される。栄養組成物が他の食品の補充物として使用される場合、1日に投与される栄養組成物はそれに従って減量される。
【0031】
本発明の栄養組成物は、例えば2〜5回の複数回投与で摂取して必要1日量を補い、または1回投与で摂取できる。栄養組成物は必要期間にわたって連続的に供給することもできる。
【0032】
また、液状栄養組成物に寒天を加えるか、または粉末状栄養組成物に水と寒天を加え、熱処理後に冷却して固形化した栄養組成物として摂取することもできる。固形化した栄養組成物は摂取後の満腹感が得られるため、通常の固形食の代替えとして摂取できる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例および試験例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1
下記の表1で示される原料の配合量に従って、液状栄養組成物を調製した。この組成物は100kcal/100mLであり、エネルギー比率は、タンパク質23.7%、脂質30.2%、そして糖質46.1%であった。また、脂質中のオレイン酸のエネルギー比率は70%、糖質中のパラチノースのエネルギー比率は69%であった。以下の試験例における栄養組成物として使用した。
乳タンパク濃縮物(MPC)はニュージーランドFonterra社製、カゼイネートはDMV社製、乳リン脂質はNewzealand Dairy Ingredients Limited社製、難消化性デキストリンは松谷化学工業社製、ハイオレイックヒマワリ油は日本油脂社製(オレイン酸含量 80%)、シソ油は日本油脂社製(パルミチン酸6%、ステアリン酸2%、オレイン酸19%、リノール酸12%、α-リノレン酸60%)、そしてパラチノースは新三井製糖社製を用いた。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例2
下記の表2で示される原料の配合量に従って、液状栄養組成物を調製した。この栄養組成物は100kcal/100mLであり、エネルギー比率は、タンパク質24%、脂質30%、そして糖質46%であった。また、脂質中のオレイン酸のエネルギー比率は70%、糖質中のパラチノースのエネルギー比率は69%であった。以下の試験例における栄養組成物として使用した。
【0037】
【表2】
【0038】
実施例3
下記の表3で示される原料の配合量に従って、液状栄養組成物を調製した。この栄養組成物は100 kcal/100 mLであり、エネルギー比率は、タンパク質22%、脂質30%、そして糖質48%であった。また、脂質中のオレイン酸のエネルギー比率は70%、糖質中のパラチノースのエネルギー比率は69%であった。以下の試験例における栄養組成物として使用した。
【0039】
【表3】
【0040】
実施例4(栄養組成物粉体の調製)
表3で示される原料の配合量に従って調製した液状栄養組成物53kgを、エバポレータで32kgに濃縮した。この濃縮栄養組成物をスプレードライヤー(排風温度95℃、オリフィスN0 74、コアN0 17)処理し、栄養組成物粉体10kgを得た。また、比較対照のメイバランスC(表4)、およびグルセルナ(表5)も同様に処理して粉体を得た。それぞれの固形分含有量は、栄養組成物粉体が96.7%、グルセルナが95.3%、そしてメイバランスCが96.3%であった。1g当たりのエネルギーは、栄養組成物粉体が5.6kcal、グルセルナが5.5kcalそしてメイバランスC粉体が4.6kcalである。
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
実施例5(栄養組成物固形化の製法)
実施例4で調製された栄養組成物粉体120gに2gの寒天(商品名:かんてんクック、伊那食品社製)を加え、150mLのお湯(約60℃)を入れてかき混ぜた。これを500ワット定格高周波出力の電子レンジ(RE-BM5W SAMSUNG社製)で5分間熱処理後、冷蔵室で固形化した。この栄養組成物は672kcalである。栄養組成物のカロリーは、必要とするカロリーでの調整が可能であり、寒天濃度は0.5〜2%が好ましい。
【0044】
試験例1(正常ラットの血糖値に及ぼす影響)
19週齢のSprague−Dawley系雄性ラット(日本SLC株式会社)を購入し、徳島大学動物実験施設の動物実験室(specific‐pathogen free、室温23±1℃、12時間の明暗サイクル)で同大学の動物飼育規定に従って飼育を行った。購入後1週間は市販ラット飼育用粉末飼料(MF型、オリエンタル酵母工業株式会社製)の自由摂食及び自由飲水とした。
実験開始前日に一夜絶食後、ジエチルエーテル麻酔下において左頚静脈から生化学検査用に2.0mlの採血を行い、血清Triglyceride(TG)濃度を測定した。その後、ラットを体重および血清脂質濃度を基に3群(n=10)に分け、それぞれMF群、MBC(メイバランスC)群、被験試料群とした。被験試料の組成を表6、7に示す。実験期間は8週間とし、摂餌量が70〜80kcal/dayとなるように、MF食、MBC食、被験試料食を与え、自由飲水とした。MBC及び被験試料は流動食のため、スプレードライ粉末化したものを与えた。体重は週に1度、摂餌量は毎日観察した。試験期間終了時に開始前と同様の方法で採血を行い、血清TG濃度を測定した。結果を表8に示す。
血清TG濃度は、MF群において飼育前後で変化がほとんど見られなかったが、MBC群では飼育後有意(p<0.001:Wilcoxson signed-ranks test)に上昇した。それに対し、被験試料投与群においては飼育後有意(p<0.001:Wilcoxson signed-ranks test)な減少が観察された。また、飼育後の血清TG濃度をMBC群と被験試料投与群で比較したところ、被験試料投与群は有意(p<0.05:Student's t-test)に低い値を示した。
【0045】
【表6】
【0046】
【表7】
【0047】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の栄養組成物は、血清脂質代謝改善作用を有しており、経口・経腸栄養剤として有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清脂質代謝改善作用を有する組成物および該組成物の有効量を添加した食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動脈硬化、特に冠動脈硬化が原因で起こる狭心症や心筋梗塞等の虚血性心疾患の発症頻度が増加の一途を辿っている。動脈硬化をもたらす要因としては、高脂血症以外にも、高血圧、喫煙、ストレス、糖尿病、遺伝性素因等の危険因子が存在することは事実であるが、しかし、これらの中で高脂血症が最大の危険因子である。高脂血症とは、血清脂質成分のうち、主として、コレステロールとトリグリセリド(中性脂肪)の何れか一方、ないしは両者が正常以上に増加した状態、として定義される。
血清コレステロール濃度、あるいはLDLコレステロール濃度が高いほど、動脈硬化のリスクが高くなり、血清コレステロール値を下げることにより、冠動脈疾患の発症率を低下させることができる、とされている。また、血清リポ蛋白の中でも、LDLがatherogenicに働き、HDLがantiatherogenicに働くという今では一般化された通念は、疫学調査によって確立されている。そして、HDLコレステロールの低いことが、脂質の高値に相関しているのに、リスクフアクターとしてのトリグリセリドの評価が低すぎる(非特許文献1)。また、家族性高コレステロール血症では、トリグリセリドの高値群で、虚血性心疾患や脳血管障害の合併率がより高率となることが示されており、境界域高コレステロール血症のレベルにある場合には、トリグリセリド濃度の改善を図ることが望ましいとされている。したがって、高脂血症を予防あるいは改善するためには、血中トリグリセリドを低下させることが必要である。また、高脂血症は糖尿病性腎症の増悪因子としても知られている。
【非特許文献1】最新内科学大系第36巻動脈硬化と脈管疾患、p20、中山書店(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、トリグリセリド低下作用を有する脂質代謝改善組成物および該組成物の有効量を添加した食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者らは、タンパク質、脂質および糖質を、特定のエネルギー比率となるよう含有する栄養組成物を調製し、正常動物の脂質代謝に及ぼす効果を調べた。その結果、当該栄養組成物は流動食「メイバランスC(FOOD Style 21, pp.58, 1991.1(Vol.3 No.1))」と比べ有意に血清中のトリグリセリド上昇抑制作用を示した。これらの結果より、本栄養組成物が、血清脂質代謝異常者のための血清脂質コントロール用、および血清脂質上昇予防用として有用であることを見出し、本発明を完成した。当該栄養組成物は、血糖値コントロール作用を有することが明らかとなっている(WO 03/022288)が、血清脂質代謝改善作用を有していることは知られていなかった。
【0005】
すなわち、本発明は、
[1] タンパク質、脂質および糖質を含有する栄養組成物であって、エネルギー比率がタンパク質10〜25%、脂質10〜35%および糖質40〜60%であり、且つ、脂質のエネルギー比率中のオレイン酸が60〜90%、糖質のエネルギー比率中のパラチノースおよび/またはトレハルロースが60〜100%である、血清脂質代謝改善用栄養組成物、
[2] 乳リン脂質、大豆レシチン、ハイオレイックヒマワリ油及びエゴマ油から選ばれる少なくとも1種を含有する前記[1]記載の栄養組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の栄養組成物は、優れた血清脂質代謝改善作用を有しているので、経口・経管栄養剤、治療食、在宅用の病者用食品あるいは保健機能食品として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の栄養組成物(以下、「栄養組成物」または「組成物」ともいう)において、タンパク質は組成物中、10〜25%のエネルギー比率、好ましくは10〜20%のエネルギー比率で含有される。
【0008】
タンパク質としては、乳タンパク、植物由来のタンパク、大豆タンパク又はその加水分解物等が挙げられるが、乳タンパクが一般的である。乳タンパクとしては、MPC(Milk Protein Concentrate)、カゼインタンパク、ホエイタンパク、マグネシウムカゼイネートおよびこれらの加水分解物、発酵乳及び発酵乳より乳清を除去した成分(フレッシュチーズ、クワルク)(特開平5-252896号)等が挙げられる。これらのうち、MPC、さらにはMPCとカゼインとを組み合わせたものが最も好ましい。
【0009】
ホエイタンパクとしては、ホエイを濃縮・乾燥したホエイパウダー、ホエイを限外濾過(Ultrafiltration:UF)で濃縮後乾燥したホエイタンパク質濃縮物(Whey Protein Concentrate:WPC)、ホエイ中の脂肪を除去した後、UF濃縮した脱脂WPC(低脂肪で高タンパク質)、ホエイからタンパク質のみを選択的に分離したWPI、ナノフィルトレーション濃縮した脱塩ホエイ、ホエイ由来のミネラル成分が濃縮されたミネラル濃縮ホエイなどが挙げられる。
【0010】
本発明の栄養組成物において、脂質は組成物中、10〜35%のエネルギー比率、好ましくは20〜30%のエネルギー比率で含有される。この比率は、第六次改定の日本人の栄養所要量に準ずるものである。脂質中の脂肪酸組成中一価不飽和脂肪酸(MUFA)の含量を高めるため、一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸は、脂質中、60〜90%のエネルギー比率、好ましくは60〜80%のエネルギー比率で含有される。オレイン酸を多く含む脂質源としては、例えば、高オレイン酸のハイオレイックヒマワリ油、ナタネ油、オリーブ油、高オレイン酸ベニバナ油、大豆油、コーン油、パーム油などが挙げられる。また、オレイン酸を含む脂質源として栄養調製油脂(日本油脂社製)が挙げられる。ヒマワリ油、ナタネ油、オリーブ油、およびオリーブ油との混合物も用いることができる。
【0011】
他の脂質としては、乳由来のリン脂質、レシチン(大豆あるいは卵黄由来)を用いるのが好ましい。
【0012】
乳リン脂質は、牛乳脂肪球皮膜(MFGM)のみに局在している。MFGMを多く含むものとして、限外濾過(ultrafiltration:UF)および精密濾過(microfiltration:MF)の組み合わせで製造されるWPIの副産物(MF保持液)の凍結乾燥物、ホエイクリームからバターオイルを除いた画分(バターゼラム)などが挙げられる。バターゼラムよりエタノールで数回抽出して濃縮した脂質画分、またはアセトン不溶性画分(α−Lipid:ニュージランドのAnchor Pruducts社)を用いてもよい。
【0013】
レシチンは、化学的にはホスファチジルコリン(PC)を意味するが、通常は、このPCの他にホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、およびホスファチジン酸(PA)の4種および他のリン脂質の混合体をレシチンといい、本発明においては、これら全てのレシチンを用いることができる。この他に、リン脂質純度の指標であるアセトン不溶性画分が62〜65%のペースト状のもの、リン脂質含量が95%以上の粉末状高純度レシチン、ホスファチジルコリンの含量を高めた分画レシチンなどが挙げられる。
【0014】
本発明の組成物はn−6系列多価不飽和脂肪酸およびn−3系列多価不飽和脂肪酸を含有できる。好ましくは、これらの多価不飽和脂肪酸は、脂肪酸組成中の10〜40%、好ましくは10〜30%含有することができる。例えば、これらの多価不飽和脂肪酸は脂肪酸組成物中約20%を含ませることができる。
【0015】
栄養組成物の脂質組成は、n−6系列多価不飽和脂肪酸とn−3系列多価不飽和脂肪酸の配合比が、約5:1〜約1:1、好ましくは約4:1とすることができる。このためには、n−3系のα−リノレン酸含有比率が高い、エゴマ油(シソ油)、またはアマニ油などを配合するのが好ましい。DHAを多く含むカツオやマグロ油を用いても良い。
【0016】
本発明においては、脂質として、乳リン脂質、大豆レシチン、ハイオレイックヒマワリ油及びエゴマ油から選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0017】
本発明の栄養組成物において、糖質は組成物中、40〜60%のエネルギー比率、好ましくは50〜60%のエネルギー比率で含有される。このエネルギー比率は、第六次改定の日本人の栄養所要量にほぼ準ずる。糖質としては、パラチノース、トレハルロースまたはこれらの混合物を用いる。パラチノース、トレハルロースまたはこれらの混合物は、糖質中、60〜100%のエネルギー比率、好ましくは60〜80%のエネルギー比率で含有される。
【0018】
他の糖質としては、例えば、糖アルコール(ソルビトール、キシリトール、マルチトールなど)、トレハロース、パラチニット、マルトデキストリン、加工デンプン、アミロースデンプン、タピオカデンプン、トウモロコシデンプン、フルクトース、ラクトース、またはこれらの混合物などが挙げられる。これらのなかで、マルトデキストリン、キシリトールまたはこれらの混合物が好ましい。マルトデキストリンはデンプンまたはコーンスターチの酸加水分解や酵素分解で得られる中間生成物の糖で、DE値が20以下である。
【0019】
本発明の栄養組成物は、さらに食物繊維を含有することができる。食物繊維としては、水溶性食物繊維、非水溶性食物繊維のいずれでも良く、水溶性食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸・アルギン酸分解物、グァーガム・グァーガム酵素分解物、ガラクトマンナンなどが挙げられる。難消化性デキストリンは食品への添加が容易で食品加工上支障を生じないので好ましい。また、非水溶性食物繊維としては、例えば、結晶セルロース、大豆食物繊維、小麦ふすま、コーンファイバー、ビートファイバーなどが挙げられる。
【0020】
また、本発明の栄養組成物は、標準流動食配合量に準じたビタミンおよびミネラルを含むことができる。ビタミンとしては、例えばビタミンB2、ニコチン酸アミド、ビタミンB6、パントテン酸カルシウム、葉酸、ビタミンB12、ビタミンA脂肪酸エステル、ビタミンD3、α-ビタミンE、ビタミンK2、L-アスコルビン酸ナトリウム、β-カロチンなどが挙げられる。ミネラルとしては、カルシウム、リン、鉄、ナトリウム、カリウム、塩素、マグネシウムまたは天然物由来の微量元素、例えば酵母ミネラルの銅、亜鉛、セレン、マンガン、クロムなどが含まれる。グルコン酸銅、グルコン酸亜鉛なども使用可能である。
【0021】
本発明の栄養組成物の浸透圧は約200〜1000mOsm/L、例えば約300〜750mOsm/Lの浸透圧を有するのが好ましい。室温で測定する場合、栄養組成物の粘度は、約5〜40mPa・s、特に5〜20mPa・sであるのが好ましい。
また、栄養組成物のカロリーは、約0.5〜3kcal/mL、特に1〜1.5kcal/mLであるのが好ましい。
【0022】
栄養組成物は、直接使用できる形態であることが望ましい。この形態で組成物は、経管で鼻−胃、空腸を経て、また、経口摂取することができる。このような栄養組成物は、各種形態、例えば、果実ジュース型飲料、ミルクシェーク型飲料などであっても良い。また、栄養組成物は、使用前に再構成できる可溶性粉末とすることもできる。
【0023】
栄養組成物は、各種フレーバー(例えばバニラなど)、甘味料および他の添加物を含むことができる。人工甘味料、例えばアスパルテームなどが使用できる。
【0024】
また、便臭低減効果のあるシャンピニオンエキスを5〜500mg(0.005〜0.5%);栄養強化の目的で、カロチノイド製剤(例えばα-カロチン、β-カロチン、リコピン、ルテインなどを含む)を10〜200μg(0.00001〜0.0002%)含有させることもできる。
さらにまた、抗酸化剤として、カテキン、ポリフェノールなどを含有させることもできる。
【0025】
栄養組成物は、例えば、タンパク質、脂質および糖質を、前記のような配合割合で混合することにより製造できる。この場合、乳化剤を混合物に配合することができる。
【0026】
本発明の栄養組成物は、当業界公知の方法で製品とすることができる。例えば、液状栄養組成物を予め加熱滅菌した後、無菌的に容器に充填する方法(例えば、UHT滅菌法とアセプティック包装法を併用した方法)、また、液状栄養組成物を容器に充填した後、容器とともに加熱滅菌する方法(例えば、オートクレーブ法)などである。
【0027】
使用形態が液状の場合、均質化物は、缶容器に充填し、レトルト殺菌を行うか、または、再度、約140〜145℃で約5〜8秒間加熱殺菌後、冷却し、無菌充填を行う。使用形態が粉末の場合、均質化物は、例えば噴霧乾燥する。また、使用形態が固形の場合には、寒天等を加えて固形化することができる。
【0028】
脳神経外科領域においては、自発的摂食行動がとれない意識障害を有する患者が多く、その上、40歳以上の中・高齢者の場合、何らかの合併症を伴っていることが多い。これらの意識障害患者の消化吸収能は阻害されていない場合が多く、より生理的な食餌摂取経路である腸管を介した栄養投与が可能である。そこで、栄養管理面で本発明の栄養組成物の果たす役割は重要である。また、腎不全を合併した多臓器障害(MODS)患者では、水・電解質異常をきたし易く、早期からの経腸栄養の妨げになっていた。そうした症例に対し、腎不全での水・電解質に留意した液状栄養組成物が望まれている。本発明の栄養組成物はこのような栄養組成物としても期待できる。
【0029】
本発明の栄養組成物は、経口・経管栄養剤、治療食、在宅用の病者用食品としての用途の他、保健機能食品(特定保健用食品および栄養機能食品)等の血清脂質代謝改善作用を表示した食品として用いることもできる。
【0030】
患者への栄養組成物の投与は、患者の状態、患者の体重、患者の年令および栄養組成物が栄養の唯一のものであるか等により異なる。そしてその投与量は、患者の担当医により決定される。栄養組成物が他の食品の補充物として使用される場合、1日に投与される栄養組成物はそれに従って減量される。
【0031】
本発明の栄養組成物は、例えば2〜5回の複数回投与で摂取して必要1日量を補い、または1回投与で摂取できる。栄養組成物は必要期間にわたって連続的に供給することもできる。
【0032】
また、液状栄養組成物に寒天を加えるか、または粉末状栄養組成物に水と寒天を加え、熱処理後に冷却して固形化した栄養組成物として摂取することもできる。固形化した栄養組成物は摂取後の満腹感が得られるため、通常の固形食の代替えとして摂取できる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例および試験例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1
下記の表1で示される原料の配合量に従って、液状栄養組成物を調製した。この組成物は100kcal/100mLであり、エネルギー比率は、タンパク質23.7%、脂質30.2%、そして糖質46.1%であった。また、脂質中のオレイン酸のエネルギー比率は70%、糖質中のパラチノースのエネルギー比率は69%であった。以下の試験例における栄養組成物として使用した。
乳タンパク濃縮物(MPC)はニュージーランドFonterra社製、カゼイネートはDMV社製、乳リン脂質はNewzealand Dairy Ingredients Limited社製、難消化性デキストリンは松谷化学工業社製、ハイオレイックヒマワリ油は日本油脂社製(オレイン酸含量 80%)、シソ油は日本油脂社製(パルミチン酸6%、ステアリン酸2%、オレイン酸19%、リノール酸12%、α-リノレン酸60%)、そしてパラチノースは新三井製糖社製を用いた。
【0035】
【表1】
【0036】
実施例2
下記の表2で示される原料の配合量に従って、液状栄養組成物を調製した。この栄養組成物は100kcal/100mLであり、エネルギー比率は、タンパク質24%、脂質30%、そして糖質46%であった。また、脂質中のオレイン酸のエネルギー比率は70%、糖質中のパラチノースのエネルギー比率は69%であった。以下の試験例における栄養組成物として使用した。
【0037】
【表2】
【0038】
実施例3
下記の表3で示される原料の配合量に従って、液状栄養組成物を調製した。この栄養組成物は100 kcal/100 mLであり、エネルギー比率は、タンパク質22%、脂質30%、そして糖質48%であった。また、脂質中のオレイン酸のエネルギー比率は70%、糖質中のパラチノースのエネルギー比率は69%であった。以下の試験例における栄養組成物として使用した。
【0039】
【表3】
【0040】
実施例4(栄養組成物粉体の調製)
表3で示される原料の配合量に従って調製した液状栄養組成物53kgを、エバポレータで32kgに濃縮した。この濃縮栄養組成物をスプレードライヤー(排風温度95℃、オリフィスN0 74、コアN0 17)処理し、栄養組成物粉体10kgを得た。また、比較対照のメイバランスC(表4)、およびグルセルナ(表5)も同様に処理して粉体を得た。それぞれの固形分含有量は、栄養組成物粉体が96.7%、グルセルナが95.3%、そしてメイバランスCが96.3%であった。1g当たりのエネルギーは、栄養組成物粉体が5.6kcal、グルセルナが5.5kcalそしてメイバランスC粉体が4.6kcalである。
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
実施例5(栄養組成物固形化の製法)
実施例4で調製された栄養組成物粉体120gに2gの寒天(商品名:かんてんクック、伊那食品社製)を加え、150mLのお湯(約60℃)を入れてかき混ぜた。これを500ワット定格高周波出力の電子レンジ(RE-BM5W SAMSUNG社製)で5分間熱処理後、冷蔵室で固形化した。この栄養組成物は672kcalである。栄養組成物のカロリーは、必要とするカロリーでの調整が可能であり、寒天濃度は0.5〜2%が好ましい。
【0044】
試験例1(正常ラットの血糖値に及ぼす影響)
19週齢のSprague−Dawley系雄性ラット(日本SLC株式会社)を購入し、徳島大学動物実験施設の動物実験室(specific‐pathogen free、室温23±1℃、12時間の明暗サイクル)で同大学の動物飼育規定に従って飼育を行った。購入後1週間は市販ラット飼育用粉末飼料(MF型、オリエンタル酵母工業株式会社製)の自由摂食及び自由飲水とした。
実験開始前日に一夜絶食後、ジエチルエーテル麻酔下において左頚静脈から生化学検査用に2.0mlの採血を行い、血清Triglyceride(TG)濃度を測定した。その後、ラットを体重および血清脂質濃度を基に3群(n=10)に分け、それぞれMF群、MBC(メイバランスC)群、被験試料群とした。被験試料の組成を表6、7に示す。実験期間は8週間とし、摂餌量が70〜80kcal/dayとなるように、MF食、MBC食、被験試料食を与え、自由飲水とした。MBC及び被験試料は流動食のため、スプレードライ粉末化したものを与えた。体重は週に1度、摂餌量は毎日観察した。試験期間終了時に開始前と同様の方法で採血を行い、血清TG濃度を測定した。結果を表8に示す。
血清TG濃度は、MF群において飼育前後で変化がほとんど見られなかったが、MBC群では飼育後有意(p<0.001:Wilcoxson signed-ranks test)に上昇した。それに対し、被験試料投与群においては飼育後有意(p<0.001:Wilcoxson signed-ranks test)な減少が観察された。また、飼育後の血清TG濃度をMBC群と被験試料投与群で比較したところ、被験試料投与群は有意(p<0.05:Student's t-test)に低い値を示した。
【0045】
【表6】
【0046】
【表7】
【0047】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の栄養組成物は、血清脂質代謝改善作用を有しており、経口・経腸栄養剤として有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質、脂質および糖質を含有する栄養組成物であって、エネルギー比率がタンパク質10〜25%、脂質10〜35%および糖質40〜60%であり、且つ、脂質のエネルギー比率中のオレイン酸が60〜90%、糖質のエネルギー比率中のパラチノースおよび/またはトレハルロースが60〜100%である、血清脂質代謝改善用栄養組成物。
【請求項2】
乳リン脂質、大豆レシチン、ハイオレイックヒマワリ油及びエゴマ油から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1記載の栄養組成物。
【請求項1】
タンパク質、脂質および糖質を含有する栄養組成物であって、エネルギー比率がタンパク質10〜25%、脂質10〜35%および糖質40〜60%であり、且つ、脂質のエネルギー比率中のオレイン酸が60〜90%、糖質のエネルギー比率中のパラチノースおよび/またはトレハルロースが60〜100%である、血清脂質代謝改善用栄養組成物。
【請求項2】
乳リン脂質、大豆レシチン、ハイオレイックヒマワリ油及びエゴマ油から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1記載の栄養組成物。
【公開番号】特開2006−22068(P2006−22068A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203284(P2004−203284)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年4月1日 日本栄養・食糧学会発行の「第58回 日本栄養・食糧学会大会 講演要旨集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年4月26日 社団法人日本糖尿病学会発行の「糖尿病 Vol.47 Supplement 1」に発表
【出願人】(000006138)明治乳業株式会社 (265)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年4月1日 日本栄養・食糧学会発行の「第58回 日本栄養・食糧学会大会 講演要旨集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年4月26日 社団法人日本糖尿病学会発行の「糖尿病 Vol.47 Supplement 1」に発表
【出願人】(000006138)明治乳業株式会社 (265)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]