説明

血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤

【課題】摂取食品の高脂肪、高脂質などの高カロリー化が進んでおり、特に脂質の過剰摂取が、現代の文明病とも言われる高血糖または高コレステロールを引き起こしており、高血糖または高コレステロール血症は、高脂血症、動脈硬化、糖尿病等、種々の生活習慣病の原因と密接に関連しているため、健康志向の高まりから社会問題となっている。高血糖または高コレステロール血症を解決するために、摂取食品を制限したり、運動によりカロリーを消費する方法などが多く提案されているが、高血糖または高コレステロール血症を解決するのは容易でない。そこで、安全性の高い血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤およびそれらの調整方法を提供する。
【解決手段】柑橘類の粉砕物を有効成分として含む血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘類の粉砕物を有効成分として含有する血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤およびそれらの調整方法に関する。
【0002】
柑橘類に多く含まれる成分を主成分とする本発明の柑橘類の粉砕物は、それらを摂取することにより血糖値およびまたは血中コレステロール値を調整する効果を有しており、食品、健康食品、食品添加剤、医薬品などの各分野に広く利用することができる。
【背景技術】
【0003】
近年、先進諸国では摂取食品の高脂肪、高脂質などの高カロリー化が進んでおり、特に脂質の過剰摂取が、現代の文明病とも言われる高血糖または高コレステロールを引き起こしている。また、高血糖または高コレステロール血症は、高脂血症、動脈硬化、糖尿病等、種々の生活習慣病の原因と密接に関連しているため、健康志向の高まりから社会問題となっている。しかし、高血糖または高コレステロール血症を解決するために、摂取食品を制限したり、運動によりカロリーを消費する方法などが多く提案されている。しかし、これらの方法によって高血糖または高コレステロール血症を解決するのは容易でないことは周知の通りである。
【0004】
特許文献1にはみかん科柑橘属果実の全果濃縮物、外皮付生果果実の凍結乾燥粉砕物または外皮付生果果実の凍結乾燥粉砕物のアルコール抽出物からなる健康食品が開示されており、この健康食品を摂取することにより、過酸化脂質の生成が大幅に抑制され、肥満、動脈硬化、各種成人病要因を除去できることが開示されている。
【0005】
特許文献2には果汁を除去した柑橘類果実の粉末と黄緑色野菜粉末を必須成分とする抗肥満食品が開示されており、実施例には柚子果汁を除去した凍結乾燥物とパセリの凍結乾燥物の凍結乾燥物を混合した散剤を与えて、ラットおよびヒトについて体重測定、中性脂肪(TG)、コレステロール(TC)、トランスアミラーゼ(GOT,GPT)を測定した結果が開示されている。
【0006】
特許文献3の請求項1にはみかん科の植物を有効成分とする脂肪分解促進剤およびこれを含有する皮膚外用剤組成物が開示されており、請求項2にはとくにみかん科の植物を有効成分とする脂肪分解促進剤に、キサンチン誘導体、βアドレナリン作用興奮剤、αアドレナリン作用抑制剤およびビピリジン誘導体から選ばれる一種または二種以上を配合した脂肪分解促進皮膚外用剤組成物が開示されており、脂肪組織に蓄積された中性脂肪の分解を促進し、肥満の抑制、防止および改善効果が開示されている。
【0007】
特許文献4の請求項1には、脂肪分解促進剤の発明が開示されており、請求項2には、化粧料形態」が開示されており、請求項2には「食品形態」が開示されている。そして、実施例には、ラット脂肪細胞に対する脂肪分解活性データが開示されており、別の実施例には「ジェル状クリーム」、さらに別の実施例には化粧水、乳液、さらに別の実施例には食品が記載されており、さらに別の実施例にはジェル状クリームを使用したときのヒップ、ウェストの減少量が記載されており、さらに別の実施例には食品を使用したときの体重の減少量が記載されている。しかし、この特許文献は、いずれも一旦蓄積された脂肪の分解作用を開示しているに過ぎず、本件発明の同じカロリーを摂取した場合の血糖値または血中コレステロール値を調整する作用を示唆するものではない。
【特許文献1】特開昭57−203014号公報
【特許文献2】特開昭62−44145号公報
【特許文献3】特開平8−81382号公報
【特許文献4】特開2000−247880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
摂取食品の高脂肪、高脂質などの高カロリー化が進んでおり、特に脂質の過剰摂取が、現代の文明病とも言われる高血糖または高コレステロールを引き起こしており、高血糖または高コレステロール血症は、高脂血症、動脈硬化、糖尿病等、種々の生活習慣病の原因と密接に関連しているため、健康志向の高まりから社会問題となっている。高血糖または高コレステロール血症を解決するために、摂取食品を制限したり、運動によりカロリーを消費する方法などが多く提案されているが、高血糖または高コレステロール血症を解決するのは容易でない。本発明の課題と目的は、安全性の高い血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤およびそれらの調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題と目的を解決するために、柑橘類の粉砕物が、効率よく血糖値およびまたは血中コレステロール値を調整し、高血糖または高コレステロール血症を予防する作用を有することをすることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記[1]ないし[13]の具体的な内容から構成されるものである。
[1] 柑橘類の粉砕物を有効成分として含む血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
[2] 有効成分が、柑橘類の果皮、未完熟摘果物および未完熟摘果果皮の粉砕物からなる群から選ばれた少なくとも1種である上記[1]に記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
[3] 有効成分を含有する柑橘類が八朔、橘、ネーブル、はるか、清 見、紀州みかんおよび柑子からなる群から選ばれた少なくとも1種の柑橘類の粉砕物である上記[1]または[2]に記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
[4]
有効成分が柑橘類の粉砕物の抽出物である上記[1]ないし[3]のいずれかに記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
[5] 有効成分が柑橘類の粉砕物の水による抽出物である上記[1]ないし[4]のいずれかに記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
[6] 有効成分が柑橘類の粉砕物の有機溶媒による抽出物である上記[1]ないし[5]のいずれかに記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
[7] 有効成分が柑橘類の粉砕物の低級アルコールまたは酢酸エチルによる抽出物である上記[1]ないし[6]いずれかに記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
[8] 有効成分が柑橘類の粉砕物の有機溶媒による抽出物でありかつ下記化合物B、化合物C、化合物D、化合物Eおよび化合物Fからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む抽出物である上記[1]ないし[7]のいずれかに記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
【化4】

【0015】
【化5】

【0016】
[9] 有効成分を含有する柑橘類の粉砕物の抽出物が八朔、橘、ネーブル、はるか、清 見、紀州みかんおよび柑子からなる群から選ばれた少なくとも1種の柑橘類の粉砕物の抽出物である上記[4]ないし[8]のいずれかに記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
[10] 上記[1]ないし[8]のいずれかに記載された血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤を含有する食品または健康食品。
[11] 上記[1]ないし[8]のいずれかに記載された血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤を含有する食品添加剤。
[12] 上記[4]ないし[8]のいずれかに記載された柑橘類の粉砕物の抽出物を血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤の有効成分として含有する医薬品。
[13] 上記[1]ないし[8]のいずれかに記載された血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤を投与することを特徴とする血糖値およびまたはコレステロールの調整方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、柑橘類の粉砕物が血糖値およびまたは血中コレステロール値を調整する作用を有し、同じ脂質およびカロリーを摂取しても効率よく血糖値およびまたは血中コレステロール値を調整することができ、さらには食品、健康食品、食品添加剤、医薬品、医薬外用剤などの各分野に広く利用することができ、安全性の高い血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤およびそれらの調整方法を提供することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明について詳しく説明する。本発明の柑橘類の粉砕物としては各種柑橘類のいずれも使用することができる。
【0019】
柑橘類としては、たとえば、表1に記載した柑橘品種リストの一般名と品種名を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
【表1】



【0021】
本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤に使用される柑橘類の粉砕物は、たとえば果実、果皮、未完熟摘果果皮等に含有されるので、加工品製造の際の果皮、未完熟摘果およびまたは未完熟摘果果皮の粉砕物を有効利用することができる。果実、果皮、未完熟摘果およびまたは未完熟摘果果皮等をそのまま用いてもよいし、乾燥処理したものを用いてもよい。
【0022】
本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤の有効成分としては、八朔、橘、ネーブル、はるか、清 見、紀州みかんおよび柑子からなる群から選ばれた少なくとも1種の柑橘類の粉砕物がとくに効果が高いので、本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤として好ましい。
【0023】
本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤は、とくに食品、健康食品、食品添加剤の形態に調製して用いるのが好ましい。食品、健康食品、食品添加剤の形態としては、顆粒、錠菓、ゼリー、飴、飲料などが挙げられ、その形態に応じて有効成分以外の他の成分が選択される。
【0024】
本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤を食品、健康食品、食品添加剤の形態として使用する場合には、柑橘類の粉砕物からなる有効成分の他に、種々の食品、健康食品、食品添加剤の形態の形態に応じてそれらを調製する際に一般的に使用される各種成分を含有していてもよい。たとえば、食品、健康食品、食品添加剤に調製する際に使用される他の成分は、この分野で普通に使用される原料・材料であってよく、これら食品原料・材料の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、リンゴファイバー、大豆ファイバー、肉エキス、黒酢エキス、ゼラチン、コーンスターチ、蜂蜜、動植物油脂、多糖類などが挙げられる。本発明の食品、健康食品、食品添加剤の形態として使用する場合には、1またはそれ以上のこれら食品原料を含むことができる。
【0025】
本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤を食品、健康食品、食品添加剤の形態として使用する場合には、上記の食品材料に加えて、1またはそれ以上の潤沢剤、乳化剤、懸濁化剤、酸化防止剤、防腐剤、甘味剤および香味剤などの成分をさらに含むことができる。また、他の有効成分(水溶性ビタミン類および油溶性ビタミン類などを含む)をさらに含んでいてもよい。
【0026】
本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤は、その形態に応じて当該分野で周知の方法によって製造してよい。また、本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤は、その形態に応じて適宜に適用あるいは摂取することができる。
【0027】
また、本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤の有効成分としては、通常、柑橘類の粉砕物がそのまま使用されるが、本発明のその他の形態として柑橘類の粉砕物を常法によって抽出された抽出成分をも使用することができる。
【0028】
たとえば、本発明の柑橘類の粉砕物から抽出成分得る方法としては、水で抽出することにより水溶性成分を抽出することもできるし、低級アルコール(メチルアルコール、エチルアルコールまたはブタノールなど)、酢酸エチルなどの有機溶媒の1種または2種以上を適宜混合した混合溶媒を使用することにより有機溶媒可性溶成分を抽出物として分離することもできる。
【0029】
本発明の柑橘類の粉砕物を低級アルコールと酢酸エチルを使用して分離した有機溶媒可溶性成分抽出物には、下記化合物B、化合物C、化合物D、化合物Eおよび化合物Fからなる群からから選ばれた少なくとも1種の化合物が含まれている。
【0030】
【化1】

【0031】
【化2】

【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
各種柑橘類(紀州みかん、橘、柑子、温州みかん、ネーブル、八朔、レモン、清見、はるか)中の本発明の化合物B、化合物C、化合物D、化合物Eおよび化合物Fからなる群からから選ばれた少なくとも1種の化合物からなる有効成分の含有率の測定結果を後述の実施例の図2ないし図3に示した。
【0036】
上記化合物B、化合物C、化合物D、化合物Eおよび化合物Fからなる群からから選ばれた少なくとも1種の化合物からなる有効成分を抽出するには、低級アルコール(メチルアルコール、エチルアルコールまたはブタノールなど)、酢酸エチルなどの有機溶媒の1種または2種以上を適宜混合して使用することができる。好ましい抽出溶媒は、アルコールまたは酢酸エチルである。
【0037】
抽出の際の温度は、通常は0〜120℃、好ましくは10〜70℃の範囲である。抽出時間は、抽出温度によって変化するが、通常、室温付近で抽出する場合は1〜50日間程度であり、さらに高い温度で抽出する場合は時間を短縮できる。
【0038】
このようにして得た抽出物から、カラムクロマトグラフィーあるいは分取HPLCなどの方法によって、本発明の化合物B、化合物C、化合物D、化合物Eおよび化合物Fからなる群からから選ばれた少なくとも1種の化合物からなる有効成分を分離および精製することができる。このように分離および精製した有効成分を、本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤として使用することもできる。
【0039】
本発明の柑橘類の粉砕物の抽出物、たとえば上記水による抽出物または上記有機溶媒による抽出物を有効成分とする血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤は、食品、健康食品、食品添加剤どの形態に調製される。
【0040】
本発明の柑橘類の粉砕物の抽出物を有効成分とする血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤を食品、健康食品、食品添加剤どの形態に使用する場合には、通常、たとえば上記水による抽出物または上記有機溶媒による抽出物が使用される。
【0041】
そして、上記有機溶媒による抽出物には、上記化合物B、化合物C、化合物D、化合物Eおよび化合物Fからなる群からから選ばれた少なくとも1種の化合物からなる有効成分を含有するので、これを本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤として使用することができる。
【0042】
本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤を医薬品して使用する場合には、有効成分をこのように分離および精製した有効成分を使用することが好ましい。本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤を医薬品として使用する場合には、通常内用剤の形態に調製することができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。本発明はこれら実施例に限定されない。
実施例1 高脂肪食マウスを用いた抗肥満試験および血清マーカーに対する柑橘類成分の影響
試験方法
精製牛脂、精製コーン油、シスチン、およびスクロースは、ナカライテスク社から購入した。セルロース、コーンスターチ、Vitamin mixture (AIN-93)、Salt mixture (AIN-93G)はオリエンタル酵母社から購入した。カゼインはシグマ アルドリッチ ジャパン社から購入した。雄ICRマウス(5週齢, 初体重18〜22 g)はCharles River Japan社より購入した。これらマウスを飼育ケージに入れ(5匹/ケージ)、室温24±1℃、12時間の明暗サイクルにて飼育を行った。水および食餌は自由摂取とした。実験食を与える前の1週間は市販の食餌(MF, オリエンタル酵母社製)を与えて馴化し、その後、平均体重が等しくなるように飼育群に分けた。20%の牛脂を含む食餌を与えたHigh beef tallow (HB)群を設定して、柑橘成分として、凍結破砕した乾燥粉末を5%(餌重量に対して)になるように添加したものを食餌として28日間飼育を行った。体重測定は、毎日行った。摂餌量は、1日当たりの餌の減少量を飼育期間中の14日間測定し、その平均から算出した。飼育実験終了後、体重測定を行い、ジエチルエーテル麻酔下において、腹部大静脈より採血した後、血清成分において、血清マーカーの測定を行った。測定には、和光純薬工業製測定キットを用いて、使用法に準じて行った。
【0044】
【表2】




【0045】
凍結破砕した柑橘乾燥粉末としては、柑橘1(温州みかん・興津早生)、柑橘3(大森ネーブル)、柑橘5(八朔)、柑橘7(竹下レモン)、柑橘14(清見)、柑橘22(はるか)、柑橘16(紀州みかん)、柑橘17(橘)、柑橘18(柑子)、の各柑橘の凍結乾燥粉末を使用した。
【0046】
各柑橘凍結乾燥粉末を使用したときの血糖値(Senum glucose (mg/dl))および血中コレステロール値(Senum glucose (mg/dl))を図1に対比して示した。
【0047】
この図1の結果から、マウスに同じ脂質とカロリーの餌と各種柑橘凍結乾燥粉末を与えたときには、いずれの柑橘類においても血糖値調整効果(低減効果)および血中コレステロール値の調整効果(低減効果)のいずれもが認められ、とくにその中でも八朔、紀州みかんおよび橘の橘凍結乾燥粉末を与えたときには顕著な血糖値の調整効果(低減効果)および血中コレステロール値の調整効果(低減効果)が認められる。
実施例2 エタノール・酢酸エチルによる抽出成分
1.柑橘成分の抽出・分画[柑橘16(一般名:小みかん、品種名:紀州みかん)について示す]
柑橘の果皮1kg(生重量)を粉砕し、これに99.5%(v/v)エタノール2Lを加え、20℃で30日間抽出した。混合物をろ過し、ろ液2.2Lを得た。このろ液を40℃以下で減圧濃縮、さらに凍結乾燥し抽出物60.3gを得た。これを蒸留水に溶解し、酢酸エチルで分液した。酢酸エチル層を集め、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ついで、この酢酸エチル層を40℃以下で減圧濃縮し、油状物質3.6gを得た。この油状物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶出溶媒 酢酸エチル:メタノール=1:0(1000 ml)→ 1:1 (400 ml) → 0:1(500ml)]で粗分画した。薄層クロマトグラフィー(固定相 シリカゲル; 移動層 クロロフォルム:メタノール=98:2)によって確認しながら、さらに、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[溶出溶媒 酢酸エチル:メタノール=99:1]によって分画・精製し、化合物B 49 mg, 化合物C 285 mg,化合物D 585 mg,化合物E 96 mg,化合物F 59 mgを得た。酢酸エチル層におけるこれら化合物の存在率(%)は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)[カラム Inertsil ODS−80A(4.6 x 250 mm);溶出溶媒アセトニトリル:水=7:3)によって確認した。
2.化合物B〜Fの構造解析
マススペクトル、核磁気共鳴スペクトル等の測定によって、これらの構造を下記のように決定した。
【0048】
【化1】

【0049】
化合物B: 5−ヒドロキシ−3’,4’,6,7,8−ペンタメトキシフラボン
[2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5−ヒドロキシ−6,7,8−トリメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン]
同定データ
【0050】
【化6】

【0051】
【化2】

【0052】
化合物C: 4’,5,6,7,8−ペンタメトキシフラボン
[2−(4−メトキシフェニル)−5,6,7,8−テトラメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン]
同定データ
【0053】
【化7】

【0054】
【化3】

【0055】
化合物D: 3’,4’,5,6,7,8−ヘキサメトキシフラボン
[2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,6,7,8−テトラメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン]

同定データ
【0056】
【化8】

【0057】
【化4】

【0058】
化合物E: 3’,4’,5,6,7−ペンタメトキシフラボン
[2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,6,7−トリメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン]
同定データ
【0059】
【化9】

【0060】
【化5】

【0061】
化合物F: 3’,4’,5,7,8−ペンタメトキシフラボン
[2−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,7,8−トリメトキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン]
同定データ
【0062】
【化10】

【0063】
実施例3 エタノール・酢酸エチルによる抽出成分
実施例2において、柑橘16(一般名:小みかん、品種名:紀州みかん)の代わりに柑橘17(橘)、柑橘18(柑子)、柑橘1(温州みかん)、柑橘5(八朔)、柑橘7(レモン)、柑橘14(清見)および柑橘22(はるか)を用いて、実施例2と同様に実施し、各柑橘類中の化合物B、化合物C、化合物D、化合物Eおよび化合物Fからなる各有効成分の含有量を測定し、結果を図2に示した。
実施例4
実施例2において、柑橘16(一般名:小みかん、品種名:紀州みかん)の代わりに柑橘17(橘)、柑橘18(柑子)、柑橘1(温州みかん)、柑橘4(ネーブル)、柑橘5(八朔)、柑橘7(レモン)、柑橘14(清見)および柑橘22(はるか)の未完熟摘果果皮を用いて、実施例1と同様に実施し、各柑橘類中の化合物B、化合物C、化合物D、化合物Eおよび化合物Fからなる各有効成分の含有量を測定し、結果を図3に示した。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明の柑橘類の粉砕物からなる血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤は、同じ脂質およびカロリーを摂取しても効率よく血糖値およびまたは血中コレステロール値を調整することをすることができ、高血糖および高コレステロールを予防することができる。それゆえ、本発明の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤は、食品、健康食品、食品添加剤、医薬品、医薬外用剤などの各分野に広く利用することができ、安全性の高い血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤およびそれらの調整方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】マウスに同じ脂質とカロリーの餌と各種柑橘凍結乾燥粉末を与えたときの、血糖値の調整効果および血中コレステロール値の調整効果を示した図である。
【図2】各種柑橘類果皮の酢酸エチル抽出物中に含まれる各有効成分化合物の含有量を対比して示した図である。
【図3】各種柑橘類の未完熟摘果果皮の酢酸エチル抽出物中に含まれる各有効成分化合物の含有量を対比して示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘類の粉砕物を有効成分として含む血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
【請求項2】
有効成分が柑橘類の果皮、未完熟摘果物および未完熟摘果果皮の粉砕物からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
【請求項3】
有効成分を含有する柑橘類が八朔、橘、ネーブル、はるか、清 見、紀州みかんおよび柑子からなる群から選ばれた少なくとも1種の柑橘類の粉砕物である請求項1または2に記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
【請求項4】
有効成分が柑橘類の粉砕物の抽出物である請求項1ないし3のいずれかに記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
【請求項5】
有効成分が柑橘類の粉砕物の水による抽出物である請求項1ないし4のいずれかに記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
【請求項6】
有効成分が柑橘類の粉砕物の有機溶媒による抽出物である請求項1ないし5のいずれかに記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
【請求項7】
有効成分が柑橘類の粉砕物の低級アルコールまたは酢酸エチルによる抽出物である請求項1ないし6いずれかに記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
【請求項8】
有効成分が柑橘類の粉砕物の有機溶媒による抽出物であり、かつ下記化合物B、化合物C、化合物D、化合物Eおよび化合物Fからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む抽出物である請求項1ないし7のいずれかに記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


【化5】

【請求項9】
有効成分を含有する柑橘類の粉砕物の抽出物が八朔、橘、ネーブル、はるか、清 見、紀州みかんおよび柑子からなる群から選ばれた少なくとも1種の柑橘類の粉砕物の抽出物である請求項4ないし8のいずれかに記載の血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤。
【請求項10】
請求項1ないし8のいずれかに記載された血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤を含有する食品または健康食品。
【請求項11】
請求項1ないし8のいずれかに記載された血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤を含有する食品添加剤。
【請求項12】
請求項4ないし8のいずれかに記載された柑橘類の粉砕物の抽出物を血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤の有効成分として含有する医薬品。
【請求項13】
請求項1ないし8のいずれかに記載された血糖値調整剤およびまたは血中コレステロール値調整剤を投与することを特徴とする血糖値およびまたはコレステロールの調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−247826(P2008−247826A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91839(P2007−91839)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】