説明

衝撃吸収ロープ、衝撃吸収ロープの製造方法及び防護体

【課題】軽量でありながら、機械的強度に優れると共に衝撃吸収性にも優れる衝撃吸収ロープ、衝撃吸収ロープの製造方法及び防護体を提供すること。
【解決手段】本発明は、有機繊維糸1からなる直径10〜40mmの衝撃吸収ロープ10であって、有機繊維糸1の伸度が110〜200%、タフネスが200〜400%・cN/dtex、150℃乾熱収縮率が0〜7%である衝撃吸収ロープ10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収ロープ、衝撃吸収ロープの製造方法及び防護体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、石、土砂、雪等の落下物が道路や建物に落下するのを防止するために、山腹の崖や斜面等に防護体が設置されている。
かかる防護体は、一般に防護ネットと、該防護ネットが取り付けられた支柱と、該支柱を固定する支持具とから構成される。
【0003】
このような防護体としては、金属製の防護ネットを用い、支持具としてワイヤーロープを用いたものが知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。
また、軽量である合成繊維からなる網(防護ネット)を用いた防護体が知られている(例えば、特許文献5参照)。かかる防護体においては、支持具として、控ロープが用いられている。
【特許文献1】特開昭61−109806号公報
【特許文献2】特開平7−300820号公報
【特許文献3】特開平7−197423号公報
【特許文献4】特開2000−273827号公報
【特許文献5】特開2003−261910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載の防護体においては、金属製の防護ネットの重量が大きいため、これらを支える支持具もワイヤーロープ等のように頑強なものが必要である。このため、これらの部材を用いた施工は大掛かりなものとなり、重機や専用設備が必要となる。その結果、工費は上がり、工期は長期化するといった問題がある。
また、上記防護体の施工場所が、崖や斜面等の足場が悪いところであるため、重機や大掛かりな設備の使用には制限があり、施工性や安全性にも問題がある。
【0005】
一方、上記特許文献5記載の防護体においては、軽量である合成繊維からなる網を使用しているので、重量に対しては改善が図られている。
ところが、合成繊維からなる網は、金属製の防護ネットより機械的強度が低いために、落石等の衝撃で破損しやすい欠点がある。なお、この破損を抑制するために、落石等の衝撃を吸収する緩衝部材を設ける場合があるが、かかる緩衝部材は、一般に大型の金属製であるため、結果的に、重量が大きくなり、施工等の問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、軽量でありながら、機械的強度に優れると共に衝撃吸収性にも優れる衝撃吸収ロープ、衝撃吸収ロープの製造方法及び防護体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、伸縮性のロープを用いれば防護体における落下物の衝撃を吸収できるのではないかと考えた。そして、その衝撃力を吸収するために、ロープの原糸となる有機繊維糸の物性を模索したところ、意外にも、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)有機繊維糸からなる直径10〜40mmの衝撃吸収ロープであって、有機繊維糸の伸度が110〜200%、タフネスが200〜400%・cN/dtex、150℃乾熱収縮率が0〜7%である衝撃吸収ロープに存する。
【0009】
本発明は、(2)有機繊維糸が0.5〜20dtexのフィラメントから構成されている上記(1)記載の衝撃吸収ロープに存する。
【0010】
本発明は、(3)有機繊維糸が100〜1000本のフィラメントからなるヤーンであり、該ヤーンが更に撚り合わされている上記(1)又は(2)に記載の衝撃吸収ロープに存する。
【0011】
本発明は、(4)有機繊維糸がポリエステルである上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の衝撃吸収ロープに存する。
【0012】
本発明は、(5)有機繊維糸がポリエチレンテレフタレートである上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の衝撃吸収ロープに存する。
【0013】
本発明は、(6)有機繊維糸が、延伸倍率が1〜3.5倍に延伸され、200〜240℃で熱セットされたものである上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の衝撃吸収ロープに存する。
【0014】
本発明は、(7)強度が30〜100kN、伸度が110〜300%である上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の衝撃吸収ロープに存する。
【0015】
本発明は、(8)長さを10mとし、一端を固定して長手方向の他端に25kJの衝撃力を付与した場合、一端が受ける衝撃荷重が0〜20kNである上記(1)〜(7)のいずれか一つに記載の衝撃吸収ロープに存する。
【0016】
本発明は、(9)落下物を受け止める防護体に用いられる上記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の衝撃吸収ロープに存する。
【0017】
本発明は、(10)伸度が110〜200%、タフネスが200〜400%・cN/dtex、150℃乾熱収縮率が0〜7%である有機繊維糸を撚り合わせ、直径10〜40mmとする衝撃吸収ロープの製造方法に存する。
【0018】
本発明は、(11)有機繊維糸を複数回の合糸を経て撚り合わせたものであり、該合糸の少なくとも1回は、その前に撚りを掛けた方向と逆方向に撚りを掛けるものである上記(10)記載の衝撃吸収ロープの製造方法に存する。
【0019】
本発明は、(12)有機繊維糸を撚り合わせた後に熱処理を行う上記(10)又は(11)に記載の衝撃吸収ロープの製造方法に存する。
【0020】
本発明は、(13)伸度が110〜200%、タフネスが200〜400%・cN/dtex、150℃乾熱収縮率が0〜7%である有機繊維糸を撚り合わせてリングヤーンを作製し、該リングヤーンを複数本撚り合わせてロープヤーンを作製し、該ロープヤーン複数本をロープヤーンの撚方向と逆方向に撚り合わせてストランドヤーンを作製し、ストランドヤーン複数本をストランドヤーンの撚方向と逆方向に撚り合わせて生ロープとし、生ロープを熱処理することによって直径10〜40mmとする衝撃吸収ロープの製造方法に存する。
【0021】
本発明は、(14)防護ネットと、該防護ネットを支持する支持ロープと、該支持ロープが取り付けられた支柱と、該支柱を支持する支持具とから構成される防護体であって、支持ロープが上記(1)〜(9)のいずれか一つに記載の衝撃吸収ロープである防護体に存する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の衝撃吸収ロープは、有機繊維糸を用いているので、軽量である。このため、施工が容易であり、重機や専用設備が不要である。また、崖や斜面等の足場が悪いところであっても、施工が可能である。
【0023】
上記衝撃吸収ロープは、原糸として軽量な有機繊維糸を用い、有機繊維糸が所定の物性を備えているので、衝撃吸収性に優れる。また、上記衝撃吸収ロープによれば、落石等の衝撃を吸収することができるので、破損が抑制される。
したがって、上記衝撃吸収ロープは、軽量でありながら、機械的強度に優れると共に衝撃吸収性にも優れるものである。
また、上記衝撃吸収ロープは、過剰な衝撃を受けた場合において永久変形を起すため、その交換時期の判断を容易に行うことが可能である。
これらのことにより、上記衝撃吸収ロープは、石、土砂、雪等の落下物が道路や建物に落下するのを防止する防護体の防護ネットの補強や防護ネットを支持する支持ロープ等に好適に用いられる。
【0024】
上記衝撃吸収ロープは、有機繊維糸が0.5〜20dtexのフィラメントから構成されているものであると、取扱いが容易であり、機械的強度がより向上する。
【0025】
上記衝撃吸収ロープは、有機繊維糸が100〜1000本のフィラメントからなるヤーンであり、さらには該ヤーンが撚り合わされていると、機械的強度がより一層向上する。
【0026】
上記衝撃吸収ロープは、有機繊維糸がポリエステルであると、耐候性に優れ、ポリエチレンテレフタレートであると、これに加えて汎用性に優れるので、安価で長期間使用することができる。
【0027】
上記衝撃吸収ロープは、有機繊維糸が、延伸倍率が1〜3.5倍に延伸され、200〜240℃で熱セットされたものであると、衝撃吸収性がより一層向上する。
【0028】
上記衝撃吸収ロープは、強度が30〜100kN、伸度が110〜300%であると、例えば、防護体の防護ネットの補強や防護ネットを支持する支持ロープ等に用いた場合、その破損が確実に抑制される。
【0029】
上記衝撃吸収ロープは、長さを10mとし、一端を固定して長手方向に25kJの衝撃力を付与した場合、他端が受ける衝撃荷重が0〜20kNとなるように設計されていると、あらゆる衝撃に対して、十分な機械的強度を発揮する。
【0030】
本発明の衝撃吸収ロープの製造方法によれば、軽量でありながら、機械的強度に優れると共に衝撃吸収性にも優れる衝撃吸収ロープが得られる。
【0031】
上記衝撃吸収ロープの製造方法においては、有機繊維糸を複数回の合糸を経て撚り合わせたものであり、該合糸の少なくとも1回は、その前に撚りを掛けた方向と逆方向に撚りを掛けるものであると、機械的強度が更に向上する。なお、有機繊維糸を撚り合わせた後に熱処理を行うと、ロープの寸法安定性が増すという利点がある。
【0032】
本発明の防護体によれば、防護体を軽量化でき、上述した衝撃吸収ロープを用いることで、衝撃を軽減できる。このため、施工が容易であり、重機や専用設備が不要である。また、崖や斜面等の足場が悪いところであっても、施工が可能である。
また、上述した衝撃吸収ロープを用いているので、落石等の衝撃を吸収することができ、防護体の部材の破損が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0034】
本実施形態に係る衝撃吸収ロープは、有機繊維糸からなり、直径が10〜40mmである。
かかる衝撃吸収ロープは、直径が10〜40mmであるので、機械的強度(以下単に「強度」ともいう。)と取扱い性のバランスがよい。なお、より好ましくは、直径が15〜30mmである。
【0035】
衝撃吸収ロープは、強度が30〜100kNであることが好ましい。なお、かかる強度は、JIS L 2707(ポリエステルロープ)に準拠して測定した値である。
強度が30kN未満であると、強度が上記範囲内にある場合と比較して、衝撃を吸収することはできても衝撃に耐えられず破断する場合があり、強度が100kNを超えると、強度が上記範囲内にある場合と比較して、ロープの直径が40mm以上となるために重くなり、防護体施工時の作業性が悪くなる傾向にある。
【0036】
衝撃吸収ロープは、弾性変形及び永久変形によって衝撃を吸収するものであり、時間を掛けて衝撃を受け止める。そのため、衝撃吸収ロープの伸度は、110〜300%であることが好ましく、150〜300%であることがより好ましい。なお、かかる伸度は、JIS L 2707(ポリエステルロープ)に準拠して測定した値である。
通常の高強度繊維ロープのように伸度が110%未満であると、伸度が上記範囲内にある場合と比較して、衝撃力をロープ伸張により吸収することができない傾向にあり、伸度が300%を超えると、伸度が上記範囲内にある場合と比較して、衝撃吸収ロープが衝撃吸収性能を発現する前に防護体の他の部位に衝撃力が及ぶおそれがある。
【0037】
衝撃吸収ロープの衝撃吸収の目安として、長さを10mとし、一端を固定して長手方向の他端に25kJの衝撃力を付与した場合、固定した一端(以下「固定端」ともいう。)が受ける衝撃荷重が0〜20kNであることが好ましい。なお、かかる衝撃荷重は、固定端にひずみ計を設置して計測された値である。
衝撃荷重が20kNを超えると、衝撃荷重が上記範囲内にある場合と比較して、衝撃を十分に吸収できない傾向にある。すなわち、衝撃吸収性能が低い衝撃吸収ロープを落石等の防護体に用いた場合には、落石等による衝撃がそのまま支持体に掛かる形となり、防護体の倒壊を招くおそれがある。
【0038】
本実施形態に係る衝撃吸収ロープは、有機繊維糸からなる。
かかる有機繊維糸の材質としては、ポリエステル又はポリアミド等が挙げられる。
上記ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられ、上記ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0039】
これらの中でも、有機繊維糸は、ポリエステルであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。
衝撃吸収ロープは屋外で使用されることが大半であるため、有機繊維糸がポリエステルであると、耐候性に優れる。また、その中でもポリエチレンテレフタレートであると、これに加えて汎用性に優れるので、安価で長期間使用することが可能となる。
【0040】
有機繊維糸がポリエステルである場合、有機繊維糸を合成する際には、主原料の他、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物等の第3成分が含まれていてもよい。換言すると、ポリエステルの主原料と第3成分とを共重合させてもよい。
この場合、第3成分に基づく物性を付加することができる。
【0041】
上記有機繊維糸は、衝撃を十分に吸収させるため、高伸度且つ高タフネスになっている。
例えば、有機繊維糸の伸度は110〜200%である。
伸度が110%未満であると、衝撃力をロープ伸長により吸収することが不十分となり、伸度が200%を超えると、衝撃吸収ロープが衝撃吸収性能を発現する前に防護体の他の部位に衝撃力が及ぶおそれがある。
【0042】
有機繊維糸のタフネスは200〜400%・cN/dtexである。
ここで、タフネスとは、伸度(%)×強度(cN/dtex)で表される値である。
タフネスが200%・cN/dtex未満であると、衝撃に耐えきれず衝撃吸収ロープが破断する場合があり、タフネスが400%・cN/dtexを超えると、衝撃吸収ロープが衝撃吸収性能を発現する前に防護体の他の部位に衝撃力が及ぶおそれがある。
【0043】
有機繊維糸の150℃乾熱収縮率は0〜7%である。
ここで、150℃乾熱収縮率とは、JIS L 1013に準拠して測定した値である。
150℃における乾熱収縮率が7%を超えると、衝撃吸収ロープを使用する際に、熱により繊維が収縮し、衝撃吸収ロープ内部の繊維密度が高まるため、有効な伸度が得られなくなり、ひいては、性能変化を起こすおそれがある。なお、150℃における乾熱収縮率は小さいほど好ましいが、実用上2〜7%であることが好ましく、さらには3〜6%であることが好ましい。
【0044】
有機繊維糸の軟化点は150℃以上であることが好ましい。
軟化点が150℃未満であると、軟化点が上記範囲内にある場合と比較して、衝撃が加わった際の衝撃吸収ロープ同士、又は、他の部材や落石等との間の摩擦により、性能変化を起こすおそれがある。
【0045】
有機繊維糸の形態はマルチフィラメントであることが好ましい。フィラメントの断面形態は丸断面であっても、楕円、三角等の異形断面であっても、中空であってもよい。
有機繊維糸は、繊度やフィラメント数に特に制限はないが、機械的強度の観点から、繊度が0.5〜20dtexのフィラメントが、100〜1000本の束(ヤーン)になっているものであることが好ましい。なお、かかる有機繊維糸には、無撚りのヤーンも含まれる。
【0046】
次に、本実施形態に係る衝撃吸収ロープの製造方法について説明する。なお、本実施形態においては、有機繊維糸としてポリエチレンテレフタレート繊維を用いた例を示す。
【0047】
まず、繊維の原料となるポリエチレンテレフタレートポリマーを重縮合反応で所望の分子量となるように合成し、ポリマーチップの形状とする。
分子量の目安となる上記ポリマーチップの固有粘度は0.6〜1.2dl/gのものが好適に用いられる。
ここで、固有粘度とは、ポリマーの特定良溶媒下での無限希釈における極限粘度を意味する。具体的には、オルソクロロフェノール100mlに対して、糸1.2gの割合で温度100℃で溶解し、オストワルド粘度計を用いて35℃の恒温槽内で測定した値で示される。
固有粘度が0.6dl/g未満であると、固有粘度が上記範囲内にある場合と比較して、分子量が小さくなり過ぎ、十分な強度の有機繊維糸が得られない傾向にあり、固有粘度が1.2dl/gを超えると、固有粘度が上記範囲内にある場合と比較して、分子量が大きくなり過ぎ、後述する紡糸がし難くなる傾向にある。
【0048】
次いで、得られたポリマーチップをエクストルーダー等で混練溶融する。このとき、溶融温度は260〜310℃である。
そして、溶融したポリマーを所定の紡糸口金から押出し、適宜温度調節された冷却ゾーンを500〜3000m/分の速度で引き取り、未延伸糸とする。なお、冷却ゾーンは数段に分けられ、室温から300℃程度の温度範囲で設定される。
【0049】
次いで、得られた未延伸糸を巻き取ることなく連続的に延伸工程に供給し、延伸倍率が1.0〜3.5倍となるように延伸した後、熱ローラーで定長熱セットして巻き取ることによりフィラメントが得られ、このフィラメントを束ねることにより有機繊維糸が得られる。なお、このとき得られる有機繊維糸は、フィラメント数が100〜1000本であり、繊度が500〜3000dtexであるヤーンであることが好ましい。また、有機繊維糸の伸度と乾熱収縮率を調整するために、延伸時の予熱温度は60〜100℃、熱セット温度は約200〜240℃に設定することが好ましい。
【0050】
上述した有機繊維糸の製造において重要な製造条件は、延伸倍率である。
通常、高強度糸を製造する場合には、延伸倍率は3.0〜5.0倍とするが、本発明の有機繊維糸に必要な物性は、伸度とタフネスであることから、1.0〜3.5倍、より好ましくは1.0〜2.0倍の延伸倍率に調整される。
【0051】
本実施形態に係る衝撃吸収ロープの製造方法においては、有機繊維糸を撚り合わせて直径10〜40mm、好ましくは15〜30mmとすることにより衝撃吸収ロープが得られる。
【0052】
有機繊維糸の撚り合わせは、複数回の合糸を経ることが好ましい。
また、かかる合糸の少なくとも1回は、その前に撚りを掛けた方向と逆方向に撚りを掛けるものであることが好ましい。
この場合、得られる衝撃吸収ロープの機械的強度が更に向上する。
【0053】
具体的には、上記撚り合わせの方法としては、最初に有機繊維糸を2〜5本撚り合せ、更に、3〜7本撚り合わせることが好ましい。このとき撚りが戻らないように逆方向に撚りを掛けることが好ましく、このような操作を何回も繰り返すことが特に好ましい。
【0054】
図1は、本実施形態に係る衝撃吸収ロープの製造方法を説明するための説明図である。
ここで、図1を用いて、本実施形態に係る衝撃吸収ロープの製造方法をより具体的に説明すると、まず、0.5〜20dtexのフィラメントが、100〜1000本の束(ヤーン)となっている有機繊維糸1を2〜5本撚り合わせてリングヤーンS1を作製し、得られたリングヤーンS1を複数本撚り合わせてロープヤーンS2を作製する。この際、ロープヤーンS2の撚方向はリングヤーンS1作製時と逆方向とする。
このとき、リングヤーンS1の繊度は、1000〜15000dtexであることが好ましく、フィラメント数としては、200〜5000本であることが好ましい。また、ロープヤーンS2は、3〜7本のリングヤーンS1からなるものであることが好ましい。
【0055】
次に、ロープヤーンS2複数本をロープヤーンS2の撚方向と逆方向に撚り合わせてストランドヤーンS3を作製し、更にストランドヤーンS3複数本をストランドヤーンS3の撚方向と逆方向に撚り合わせて生ロープS4とする。
このとき、ストランドヤーンS3は10〜50本のロープヤーンS2からなるものであることが好ましく、生ロープS4としては2〜5本のストランドヤーンS3からなるものであることが好ましい。
【0056】
そして、得られる生ロープS4を熱処理することによって衝撃吸収ロープ10が得られる。
この場合、衝撃吸収ロープの寸法安定性が増すという利点がある。
このとき、熱処理は、80〜100℃の温度で1〜10分行うことが好ましい。
【0057】
ここで、上記衝撃吸収ロープ10は、各ヤーンの撚数によって、物性が変化する。すなわち、撚数が高くなると、伸度が高くなり衝撃吸収性能が高くなるものの、機械的強度が低下する傾向にある。
また、撚数が高くなるとロープが締まって硬くなる傾向がある。ロープが硬くなりすぎると取扱いにくくなることから、各ヤーンの撚数には適当な範囲がある。
一般に、同じ撚数でも太いヤーンやロープの方が、細いヤーンやロープよりも撚りがきつくなる傾向がある。したがって、各ヤーンの撚数は内層ほど高く、外層ほど低く設定することが好ましい。すなわち、リングヤーンS1、ロープヤーンS2、ストランドヤーンS3、生ロープS4の順に撚数を減少させることが好ましい。
そうすると、衝撃が与えられたときに機械的強度を維持しつつ、衝撃吸収ロープ10が有効に伸張して衝撃を吸収する。
【0058】
具体的には、リングヤーンS1の撚数は70〜150T/mであることが好ましく、100〜130T/mであることがより好ましい。
撚数が70より低いと、撚数が上記範囲内にある場合と比較して、伸度が不十分となる傾向にあり、撚数が150より高いと、撚数が上記範囲内にある場合と比較して、強度が低くなってタフネスが不十分となる傾向にある。
【0059】
リングヤーンS1を撚り合わせるロープヤーンS2の撚数は60〜130T/mであることが好ましく、80〜120T/mであることがより好ましい。
撚数が60より低いと、撚数が上記範囲内にある場合と比較して、同様に伸度が不十分となる傾向にあり、撚数が130より高いと、撚数が上記範囲内にある場合と比較して、タフネスが不十分となる傾向にある。
【0060】
ロープヤーンS2を撚り合わせるストランドヤーンS3の撚数は20〜100T/mであることが好ましく、40〜90T/mであることがより好ましい。
撚数が20より低いと、撚数が上記範囲内にある場合と比較して、同様に伸度が不十分となる傾向にあり、撚数が100より高いと、撚数が上記範囲内にある場合と比較して、タフネス不十分となる傾向にある。
【0061】
ストランドヤーンS3を撚り合わせる生ロープS4の撚数は10〜40T/mであることが好ましく、15〜35T/mであることがより好ましい。
撚数が10より低いと、撚数が上記範囲内にある場合と比較して、ストランドヤーンS3の収束性が悪くなる傾向にあり、撚数が40T/mより高いと、撚数が上記範囲内にある場合と比較して、衝撃吸収ロープ10が硬くなりすぎて取り扱いにくくなる傾向にある。
【0062】
上記衝撃吸収ロープ10の製造方法において、各ヤーンの撚係数はいずれも、0.5〜3とすることが好ましい。
また、最外層の生ロープS4については、硬くなりすぎることを防止するために撚係数は0.5〜2にすることが好ましい。
【0063】
上記衝撃吸収ロープは、有機繊維糸の少なくとも一部に樹脂を含浸させることが好ましい。
この場合、撚戻りが抑制される。また、衝撃吸収ロープに適度の腰を付与でき、取り扱い性が向上する。
【0064】
樹脂含浸の方法としては、ストランドヤーンを製造する時に、一部のロープヤーンに樹脂を含浸させ、樹脂を含浸させたロープヤーンと、樹脂を含浸させていないロープヤーンとを撚り合わせてストランドヤーンを作製することが好ましい。
このとき、ストランドヤーンに占める樹脂を含浸させたロープヤーンの割合は1/3〜1/2とすることが好ましい。
【0065】
かかる樹脂含浸に用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0066】
上記衝撃吸収ロープには、耐候性、耐摩耗性、熱安定性、平滑性等の向上や機能性付与、形態安定性等の目的で、顔料、紫外線吸収剤、樹脂、難燃剤、熱安定剤、油剤、平滑剤、抗菌剤等の成分が含まれていてもよい。
特に、衝撃吸収ロープを屋外で使用する場合には、顔料や紫外線吸収剤を配合することや樹脂を被覆することが有効である。また、有機繊維糸を撚糸して衝撃吸収ロープとする場合に油剤を付与すると、摩擦による毛羽や糸切れが抑制できて効果的である。このような各種の添加剤には特に制限はなく、適宜有効と考えられるものを用いればよい。
【0067】
上記衝撃吸収ロープは、落下物を受け止める防護体の防護ネットの補強のためのロープや防護ネットを支持する支持ロープ、船舶等の係留ロープ、高所作業用安全ロープ等に好適に用いることができる。
【0068】
次に、上記衝撃吸収ロープを用いた防護体について説明する。
図2は、本発明に係る防護体の実施形態の一例を示す正面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る防護体20は、網目状の合成繊維からなる防護ネット11と、該防護ネット11の周縁に設けられた周縁ロープ12と、防護ネット11を支持する支持ロープ13と、防護ネット11の両側に配置され、支持ロープ13が取り付けられた支柱15と、該支柱15を支持する支持具17とから構成される。
また、上記防護体20においては、支柱15に支持され、防護ネット11の裏面に直線状に取り付けられた3本の補助ロープ18を備える。
【0069】
上記防護体20においては、周縁ロープ12、支持ロープ13及び補助ロープ18に上述した衝撃吸収ロープが用いられている。なお、上記衝撃吸収ロープは、施工される場所で予想される落石等の規模に応じて、機械的強度や伸度、場合によっては本数を調整すればよい。
【0070】
周縁ロープ12、支持ロープ13及び補助ロープ18に用いられるそれぞれの衝撃吸収ロープは互いに同一の物性でなくてもよい。また、周縁ロープ12としての衝撃吸収ロープと、支持ロープ13としての衝撃吸収ロープとが一体化された同一のものであってもよい。
【0071】
上記防護体20は、石、土砂、雪等の落下物を防護ネット11で受け止める構造になっている。すなわち、上記防護体20は、落下物があると、周縁ロープ12及び支持ロープ13が伸びることで、防護ネット11が撓み、落下物の落下時の衝撃力が吸収される。
また、上記防護体20においては、補助ロープ18が取り付けられているので、落下物により局所的に防護ネット11が伸びて破断するのが抑制され、落下物による衝撃は補助ロープ18によっても吸収される。なお、かかる補助ロープ18は、防護ネット11の網目に交互に通してもよく、網目を通さず、防護ネット11の下面に接するように防護ネット11と平行に配置してもよい。
【0072】
このように、上記防護体20によれば、合成繊維からなる防護ネット11と有機繊維糸からなる衝撃吸収ロープが用いられるので、防護体20を軽量化でき、衝撃も十分に軽減できる。
したがって、落石等の衝撃を吸収することができるので、防護体20の部材の破損が抑制される。
また、上記防護体20は、施工が容易であり、重機や専用設備が不要である。また、崖や斜面等の足場が悪いところであっても、施工が可能である。
【0073】
上記防護ネット11は、軽量な合成繊維製のネットが用いられる。
この場合、従来技術に記載したように、金属製部材と比較して、施工性や安全性に優れる。
上記合成繊維は、機械的強度及び取扱い性の観点から、繊度が500〜3000dtexであることが好ましい。
【0074】
上記合成繊維としては、特に限定はないが、落石等を受け止めるためには高強度で高弾性な素材が適しており、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66等のポリアミド、ポリパラテレフタルアミド、ポリメタテレフタルアミド等のアラミド、ポリベンゾオキサゾール、炭素繊維等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0075】
防護ネット11は、編み構成にも特に限定はなく、結節タイプ、無結節タイプのいずれであってもよい。
防護ネット11の形状、網目の大きさ(目合い)、太さには限定はなく、設置される場所で予想される落石等の規模に応じて、適宜決定してよい。
【0076】
上記支柱15は、施工される場所で予想される落石の規模に応じて強度や構造等が適宜設計される。
例えば、コンクリート製支柱、コンクリートと鋼管で構成される構造体を基礎コンクリートや地中に埋設したもの等が挙げられる。また、落石の規模が比較的低いと予想される場合には、自然の立木を支柱として利用してもよい。
【0077】
上記支持具17としては、従来のものが適宜用いられる。
防護体20は、軽量であるために、支持具17を必ずしも頑強なものにする必要はないが、安全性向上の観点から、ワイヤーロープ等のように頑強なものとしてもよい。
【0078】
上記防護体20は、図示しない緩衝具を備えていてもよい。
かかる緩衝具としては、繊維製のロープを用いることが好ましい。
ロープ用の繊維としてはポリアミド繊維、ポリエステル繊維、塩化ビニル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維や麻等の天然繊維等が挙げられる。
【0079】
本実施形態に係る防護体20によれば、上述したように、防護体20を軽量化でき、衝撃吸収ロープを用いることで、衝撃を軽減できる。このため、施工が容易であり、重機や専用設備が不要である。また、崖や斜面等の足場が悪いところであっても、施工が可能である。
また、上述した衝撃吸収ロープを用いているので、落石等の衝撃を吸収することができ、防護体20の部材の破損が抑制される。
さらに、上述した衝撃吸収ロープが軽く作業性に優れているため、落石等で損傷したロープを交換することが容易であり、損傷しているかどうかも永久変形がどの程度生じているかにより容易に確認可能であるため、適宜のメンテナンスと早めの部材交換が可能である。よって、高いレベルで防護体20の性能を維持することができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
(実施例1)
原料となるジメチルテレフタレートとエチレングリコールとの重縮合反応により得られた固有粘度0.6のポリエステルチップを、235℃で固相重合し、固有粘度1.0のポリエステルチップを得た。なお、ここで固有粘度とは、オルソクロロフェノール100mlに対して、糸1.2gの割合で、温度100℃で溶解し、オストワルド粘度計を用いて35℃の恒温槽内で測定したものである。
このチップをエクストルーダーで混練溶融し、直径0.6mmの細孔を250個有する紡糸口金から押出して紡糸した。
吐出されたポリマーは、口金直下100mm、300℃の遅延冷却ゾーンを通過した後、25℃に調整された冷却風を吹き当てて冷却し、紡糸油剤を付与して2500m/分の速度で引き取った。
引き取った未延伸糸は、一旦巻き取ることなく連続的に延伸工程に供給し、延伸糸の繊度が2110dtexとなるように吐出量を調整した。実質的な延伸倍率を1.0倍とし、220℃に加熱したローラーを用いて定長熱セットして巻き取り、フィラメントを得、それを250本束ねて有機繊維糸からなる原糸を得た。
【0082】
得られた原糸(ポリエチレンテレフタレート原糸)3本をS撚方向に120T/mで撚り合わせてリングヤーンとし、このリングヤーン4本をZ撚方向に110T/mで撚り合わせてロープヤーンを作製した。
さらに得られたロープヤーン27本をS撚方向に50T/mで撚り合わせてストランドヤーンを作製した。この時、10本のロープヤーンは、あらかじめ乾燥後重量で1重量%となるようにポリエステル系樹脂を含浸させたものを用いた。
そして、ストランドヤーン3本をZ撚方向に20T/mで撚り合わせて生ロープとした。
この生ロープを80℃で予熱し、100℃で熱処理して直径22mmの衝撃吸収ロープであるロープAを得た。
得られたロープAは、軽量であるばかりではなく柔軟で扱い易く作業性に優れたものであった。
【0083】
(実施例2)
未延伸糸の引き取り速度を1700m/分、延伸倍率を1.5倍としたこと以外は実施例1と同様にして有機繊維糸からなる原糸を作製した。得られた原糸(ポリエチレンテレフタレート原糸)を実施例1と同様にして、直径20mmの衝撃吸収ロープであるロープBを得た。
得られた衝撃吸収ロープは、軽量であるばかりではなく柔軟で扱い易く作業性に優れたものであった。
【0084】
(比較例1)
未延伸糸の引き取り速度を630m/分、延伸倍率を4.0倍としたこと以外は実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート繊維の延伸糸からなる原糸を作製した。得られた原糸を実施例1と同様にして、直径20mmのロープCを得た。
【0085】
(比較例2)
未延伸糸の引き取り速度を560m/分、延伸倍率を4.5倍としたこと以外は実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレート繊維の延伸糸からなる原糸を作製した。得られた原糸を実施例1と同様にして、直径20mmのロープDを得た。
【0086】
(評価方法)
実施例1,2及び比較例1,2で得られたロープA〜Dの物性を次の測定方法に基づいて測定した。
【0087】
(1)ロープ強伸度
A&D社製のテンシロン試験機を用いて、JIS L 2707(ポリエステルロープ)に準拠して測定した。
(2)衝撃荷重テスト
安定した場所に水平に固定した架台の下部にひずみ計を設置する。ひずみ計にさつま結び等を用いてロープA〜Dの一方の端部をしっかり固定する。ロープA〜Dの他方の端部に2.5tの重錘を同様に固定する。ロープA〜Dの試験長は10mに調整する。ロープA〜Dがひずみ計から自然に垂れ下がった高さから、クレーン等を用いて重錘を1m持ち上げて落下させる(エネルギー量25kJ)。その際にひずみ計で計測された値を衝撃荷重とした。
(3)衝撃テスト
図3の(a)及び(b)は、衝撃テストの概要を示す図である。
図3に示すように、3m×2mサイズのポリエステル製ネット21を地面と水平になるように配置し、最外部の網目にロープA〜Dを周縁ロープ22として通した。
そして、ポリエステル製ネット21の四隅にあたる部位の周縁ロープ22をひずみ計23を通じて架台25に固定した。
このポリエステル製ネット21の中心部に上方3mの高さより1tの重錘26を落下させた(エネルギー量30kJ)。このときのロープA〜Dの状態を観察し、ひずみ計23にかかる荷重を計測した。また、同時にネットの状態を目視にて観察した。
(4)固有粘度
オルソクロロフェノール100mlに対して、糸1.2gの割合で温度100℃で溶解し、オストワルド粘度計を用いて35℃の恒温槽内で測定した。
【0088】
上記評価方法により、得られた結果を表1に示す。なお、表1中、ロープ構成糸物性とは、加工後のロープA〜Dを分解し、構成する糸の物性を測定したものである。
【0089】
【表1】

【0090】
表1より、実施例1,2のロープA,Bは、優れた強度と伸度を有し、衝撃荷重も20kN以下であった。このことから、本発明の衝撃吸収ロープによれば、軽量でありながら、機械的強度に優れると共に衝撃吸収性にも優れることが確認された。
【0091】
また、衝撃荷重テストや衝撃テストを行った後のロープAは、長さが11〜16%の永久変形を伴うものであったが切断もなく、耐衝撃性に優れたものであり、ロープBは、長さが6〜9%の永久変形を伴うものであったが切断もなく、耐衝撃性に優れたものであった。
【0092】
一方、ロープCは、ロープA又はBよりも強度が高いにもかかわらず、衝撃テストを行った結果、衝撃を吸収できずに切断されていた。
また、ロープDは、ロープA又はBよりも強度は高いが、衝撃吸収性能はほとんどなく、衝撃テストを行った結果、ネットが破断した。
さらに、ロープDは、最終工程の100℃の熱処理により収縮し硬いロープとなり、作業性に劣るものであった。
【0093】
なお、実施例1及び2における衝撃吸収ロープは、各ヤーンの撚数が内層ほど高く、外層ほど低く設定されている。本発明者は、こうすることにより、衝撃が与えられたときに機械的強度を維持しつつ、衝撃吸収ロープ10が有効に伸張して衝撃を吸収できることを事前に確認している。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】図1は、本実施形態に係る衝撃吸収ロープの製造方法を説明するための説明図である。
【図2】図2は、本発明に係る防護体の実施形態の一例を示す正面図である。
【図3】図3の(a)は、実施例における衝撃テストの概要を示す平面図であり、(b)はその側面図である。
【符号の説明】
【0095】
1・・・有機繊維糸
10・・・衝撃吸収ロープ
11・・・防護ネット
12,22・・・周縁ロープ
13・・・支持ロープ
15・・・支柱
17・・・支持具
18・・・補助ロープ
20・・・防護体
21・・・ポリエステル製ネット
23・・・ひずみ計
25・・・架台
26・・・重錘
S1・・・リングヤーン
S2・・・ロープヤーン
S3・・・ストランドヤーン
S4・・・生ロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機繊維糸からなる直径10〜40mmの衝撃吸収ロープであって、
前記有機繊維糸の伸度が110〜200%、タフネスが200〜400%・cN/dtex、150℃乾熱収縮率が0〜7%である衝撃吸収ロープ。
【請求項2】
前記有機繊維糸が0.5〜20dtexのフィラメントから構成されている請求項1記載の衝撃吸収ロープ。
【請求項3】
前記有機繊維糸が100〜1000本のフィラメントからなるヤーンであり、
該ヤーンが更に撚り合わされている請求項1又は2に記載の衝撃吸収ロープ。
【請求項4】
前記有機繊維糸がポリエステルである請求項1〜3のいずれか一項に記載の衝撃吸収ロープ。
【請求項5】
前記有機繊維糸がポリエチレンテレフタレートである請求項1〜3のいずれか一項に記載の衝撃吸収ロープ。
【請求項6】
有機繊維糸が、延伸倍率が1〜3.5倍に延伸され、200〜240℃で熱セットされたものである請求項1〜5のいずれか一項に記載の衝撃吸収ロープ。
【請求項7】
強度が30〜100kN、伸度が110〜300%である請求項1〜6のいずれか一項に記載の衝撃吸収ロープ。
【請求項8】
長さを10mとし、一端を固定して長手方向の他端に25kJの衝撃力を付与した場合、一端が受ける衝撃荷重が0〜20kNである請求項1〜7のいずれか一項に記載の衝撃吸収ロープ。
【請求項9】
落下物を受け止める防護体に用いられる請求項1〜8のいずれか一項に記載の衝撃吸収ロープ。
【請求項10】
伸度が110〜200%、タフネスが200〜400%・cN/dtex、150℃乾熱収縮率が0〜7%である有機繊維糸を撚り合わせ、直径10〜40mmとする衝撃吸収ロープの製造方法。
【請求項11】
前記有機繊維糸を複数回の合糸を経て撚り合わせたものであり、
該合糸の少なくとも1回は、その前に撚りを掛けた方向と逆方向に撚りを掛けるものである請求項10記載の衝撃吸収ロープの製造方法。
【請求項12】
有機繊維糸を撚り合わせた後に熱処理を行う請求項10又は11に記載の衝撃吸収ロープの製造方法。
【請求項13】
前記伸度が110〜200%、タフネスが200〜400%・cN/dtex、150℃乾熱収縮率が0〜7%である有機繊維糸を撚り合わせてリングヤーンを作製し、該リングヤーンを複数本撚り合わせてロープヤーンを作製し、該ロープヤーン複数本をロープヤーンの撚方向と逆方向に撚り合わせてストランドヤーンを作製し、ストランドヤーン複数本をストランドヤーンの撚方向と逆方向に撚り合わせて生ロープとし、生ロープを熱処理することによって直径10〜40mmとする衝撃吸収ロープの製造方法。
【請求項14】
防護ネットと、該防護ネットを支持する支持ロープと、該支持ロープが取り付けられた支柱と、該支柱を支持する支持具とから構成される防護体であって、
前記支持ロープが請求項1〜9のいずれか一項に記載の衝撃吸収ロープである防護体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−249782(P2009−249782A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101067(P2008−101067)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【Fターム(参考)】