説明

衝撃吸収層、これを備えた光学フィルタ、及びこれを備えたディスプレイ並びにプラズマディスプレイパネル

【課題】透明で、耐衝撃性に優れ、高い鉛筆硬度を有し、反射防止性、電磁遮蔽性にも優れたPDP用に好適な光学フィルタを提供すること。
【解決手段】0.01〜1.0mmの厚さを有する衝撃吸収層であって、且つ該衝撃吸収層が厚さ100μmポリエチレンテレフタレート上に設けられた積層体について、JIS 060068−2−75に準拠するスプリングインパクトハンマーを用いる衝撃力0.5Jの条件下での耐衝撃試験により得られる衝撃加速度−時間曲線における、衝撃吸収層の厚さa(mm)と衝撃応力発生から第1のピークまでの時間:t(ms)との間の関係が、下記式(I):10≦5.87a/t≦40(I)を満たすことを特徴とする衝撃吸収層、及びこれを用いた光学フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(電界発光)ディスプレイ、表面電界型ディスプレイ(SED)を含む電界放出型ディスプレイ(FED)等の各種ディスプレイに対して反射防止、帯電防止、電磁波遮蔽等の各種機能を有する光学フィルタ、光学フィルタに有利に使用される衝撃吸収層、及びこの光学フィルタを備えたディスプレイ、特にPDPに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)、ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ、及びCRTディスプレイにおいては、外部からの光が表面で反射し、内部の視覚情報が見えにくいとの問題は、従来から知られており、反射防止膜等を含む光学フィルタの設置等、種々対策がなされている。
【0003】
近年、ディスプレイは大画面表示が主流となり、次世代の大画面表示デバイスとしてPDPが一般的になってきている。しかしながら、このPDPでは表示のため発光部に高周波パルス放電を行っているため、不要な電磁波の輻射や赤外線リモコン等の誤動作の原因ともなる赤外線の輻射のおそれがあり、このため、PDPに対しては、導電性を有するPDP用反射防止フィルム(電磁波シールド性光透過窓材)が種々提案されている。この電磁波シールド性光透過窓材の導電層としては、例えば、(1)金属銀を含む透明導電薄膜が設けられた透明フィルム、(2)金属線又は導電性繊維を網状にした導電メッシュを設けた透明フィルム、(3)透明フィルム上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、(4)透明フィルム上に導電性インクをメッシュ状に印刷したもの、等が知られている。
【0004】
さらに、従来のPDPを初めとした大型ディスプレイでは、反射防止フィルムや近赤外線カットフィルム等の種々のフィルムを貼り合わされているため、パネルのガラスが万一割れた場合にも飛散防止の役目は果たしていると考えられていたが、十分でなく、視認面側からの衝撃に対して緩和機能を有する等の安全規格上の要求事項に応える必要がでてきている。
【0005】
上記衝撃緩和のための粘着層を有するPDP用フィルタが、例えば、特許文献1(特開2004−311664)に記載されている。即ち、第1の透明支持体の一面側に電磁波または/および近赤外線の遮蔽層を有し、他面側に衝撃力緩和特性を持つ透明樹脂層を有し、さらにこの透明樹脂層の上に第2の透明支持体と透明粘着剤層とがこの順に積層されていることを特徴とするプラズマディスプレイ用直貼りフィルタが開示されている。衝撃力緩和特性を持つ透明樹脂層として、25℃における1,000〜10,000Hzの動的貯蔵弾性率が9×104 〜4×106 Paであり、かつ動的損失弾性率が1×105 〜6×106 Paであることが望ましいとされている。また特許文献2(特開2005−23133号公報)にも、同様な弾性率を有する衝撃緩和特性に優れた粘着層が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−311664公報
【特許文献2】特開2005−23133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等の検討によれは、上記透明樹脂層又は粘着層を用いて、反射防止フィルム、電磁波遮断層を有するPDPフィルタを作製し、PDPのガラス板の貼付して、耐衝撃試験を行ったところ、十分な性能が得られない場合があることが明らかとなった。例えば、家庭用電化製品、電気付属品(アクセサリ)、その他これらに類するものの外部から加えられる衝撃に耐えられるかどうか調べるためのJIS 060068−2−75で規定されたスプリングインパクトハンマーを用いた衝撃試験を行った際、充分な耐衝撃性を有していない場合があることが明らかとなった。即ち、上記特許文献に記載の透明樹脂層又は粘着層は、耐衝撃性については、膜厚を大きくした場合には、比較的良好な耐衝撃性を示すものであるが、膜厚を小さくした場合には、良好でない場合がある。さらに、耐衝撃性が良好であっても、この粘着層自体或いはこの粘着層を用いた光学フィルタの表面の鉛筆硬度が低く、実用上問題がある場合があることも明らかとなった。
【0008】
従って、本発明は、ディスプレイ用光学フィルタに有利に使用することができる、優れた耐衝撃性及び高い鉛筆硬度を有する衝撃吸収層を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、透明で、優れた耐衝撃性及び高い鉛筆硬度を有するディスプレイ用に好適な光学フィルタを提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、透明で、優れた耐衝撃性及び高い鉛筆硬度を有し、且つ反射防止性、電磁遮蔽性にも優れたディスプレイ用に好適な光学フィルタを提供することを目的とする。
【0011】
さらにまた、本発明は、透明で、優れた耐衝撃性及び高い鉛筆硬度を有し、且つ反射防止性、電磁遮蔽性にも優れたプラズマディスプレイパネル(PDP)用に好適な光学フィルタを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、上記優れた特性の光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされたディスプレイを提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明は、上記優れた特性の光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされたPDPを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従って、本発明は、
0.01〜1.0mmの厚さを有する衝撃吸収層であって、且つ
該衝撃吸収層が厚さ100μmポリエチレンテレフタレート上に設けられた積層体について、JIS 060068−2−75に準拠するスプリングインパクトハンマーを用いる衝撃力0.5Jの条件下での耐衝撃試験により得られる衝撃加速度−時間曲線における、衝撃吸収層の厚さa(mm)と衝撃応力発生から第1のピークまでの時間:t(ms)との間の関係が、下記式(I):
10≦5.87a/t≦40 (I)
を満たすことを特徴とする衝撃吸収層、にある。
【0015】
本発明者は、家庭用電化製品、電気付属品(アクセサリ等に外部から加えられる衝撃に耐えられるかどうか調べるためのスプリングインパクトハンマーを用いた衝撃試験において、その試験により得られる衝撃加速度−時間曲線に注目した。ある厚さを有する衝撃吸収層においては、衝撃加速度−時間曲線から得られる衝撃応力発生から第1のピークまでの時間が早いものは耐衝撃性が不十分であるが、鉛筆硬度が高く、一方衝撃応力発生から第1のピークまでの時間が遅いものは耐衝撃性が良好であるが、鉛筆硬度が低いことが明らかとなった。そして、さらに検討を重ねたところ、衝撃吸収層の厚さと、衝撃加速度−時間曲線から得られる衝撃応力発生から第1のピークまでの時間の関係が上記式(I)を満足する時に耐衝撃性、鉛筆硬度が共に良好となることが判明した。
【0016】
本発明の衝撃吸収層の好適態様は以下の通りである。
(1)衝撃吸収層の厚さa(mm)と衝撃応力発生から第1のピークまでの時間:T(ms)との間の関係が、下記の式(II):
15≦5.87a/t≦25 (II)
を満たす。特に優れた耐衝撃性、鉛筆硬度を示す。
(2)衝撃吸収層が、アクリル樹脂からなる。
アクリル樹脂を構成するモノマーとして、少なくともアルキル(メタ)アクリレート(但し、アルキル基の炭素原子数が4〜10個である)とアクリル酸とを含んでいることが好ましい。またアクリル樹脂を構成するモノマーとして、少なくとも2−エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸とを含んでいることが好ましい。
(3)上記アクリル樹脂を構成するモノマーとして、さらにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを含んでいることが好ましい。また、アクリル樹脂を構成するモノマーとして、さらにアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを含んでいることが好ましい。
(4)衝撃吸収層が、アルキルアクリレート(但し、アルキル基の炭素原子数が4〜10個である)とアクリル酸とを含むモノマー混合物が部分的に重合された部分重合体・モノマー混合物を硬化させたアクリル樹脂層である。
(5)衝撃吸収層の厚さが、0.1〜0.6mm、特に0.2〜0.5mmである。
(6)ディスプレイ用光学フィルタに用いられる衝撃吸収層である。
【0017】
さらに、本発明は、
透明基板、反射防止膜および導電層を含む光学フィルタであって、さらに上記の衝撃吸収層を有することを特徴とする光学フィルタ;
透明基板の一方の表面側に反射防止膜が、他方の表面側に導電層が設けられてなる光学フィルタであって、
導電層のいずれかの表面に上記の衝撃吸収層が設けられていることを特徴とする光学フィルタ(1);
一方の表面側に反射防止膜が設けられた透明基板と、一方の表面側に導電層が設けられ別の透明基板との、2枚の透明基板が、該反射防止膜が形成されていない表面と該導電層とで接着されてなる光学フィルタであって、
該反射防止膜が形成されていない表面と該導電層との間に透明粘着剤層が設けられ、導電層の透明粘着剤層が設けられてない表面側に上記の衝撃吸収層が設けられていることを特徴とする光学フィルタ(2);及び
一方の表面側に反射防止膜が設けられた透明基板と、一方の表面側に導電層が設けられた別の透明基板との、2枚の透明基板が、該反射防止膜が形成されていない表面と該導電層とで接着されてなる光学フィルタであって、
該反射防止膜が形成されていない透明基板表面と該導電層との間に上記の衝撃吸収層が設けられていることを特徴とする光学フィルタ(3);
にもある。
【0018】
本発明の光学フィルタ(一般に光学フィルム)の好適態様は以下の通りである。
(1)反射防止膜が、近赤外線遮蔽機能を有する。一般に、反射防止膜を構成する少なくとも1層に色素等の近赤外線を吸収する物質を導入する。
(2)近赤外線遮蔽層を別途設ける場合、衝撃吸収層のいずれかの表面に、近赤外線遮蔽層が設けられる。
(3)本発明の光学フィルタをPDP用として使用する場合、導電層が、電磁波遮蔽機能を有することが必要である。
(4)導電層が、メッシュ状の金属層又は金属含有層である。PDP用として有利である。
(5)最外層の導電層又は近赤外線遮蔽層の、外側表面には透明粘着剤層が設けられる。この透明粘着剤層を用いてディスプレイの表示表面のガラス板に貼付される。
(6)メッシュ状の金属層又は金属含有層の間隙には透明粘着剤層が埋め込まれている。衝撃吸収層を好適に調整することにより、この透明粘着剤層の代わりをすることができる。
(7)透明基板がプラスチックフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)である。長尺状フィルムを用いることにより連続製造が容易となる。
(8)透明粘着剤層の上に剥離シートが設けられている。取り扱いが容易となる。
(9)反射防止膜の上に保護層(例、保護用ポリマーフィルム)が設けられている。取り扱いが容易となる。
(10)光線透過率が50%以上(好ましくは70%以上)である。ディスプレイの画像が見やすい。
(11)(4)のメッシュ状の金属層又は金属含有層は、エッチングにより、又は印刷法により形成されているか、金属繊維層である。低抵抗を得られやすい。
(12)導電層が、塗工層である。導電層の形成が容易である。
塗工導電層が、ポリマー中に無機化合物の導電性粒子が分散された塗工層であることが好ましい。導電性ポリマーの塗工層でも良い。
(13)導電層が、ITO等の金属酸化物層の透明膜である。
(14)導電層が、誘電体層と金属層との交互積層膜である。特に、誘電体層/金属層/誘電体層/金属層/誘電体層の5層以上の積層体が好ましい。透明性、低抵抗性に優れている。
(15)反射防止膜が、少なくとも1層の塗工層を含む。製造が容易である。
(16)反射防止膜が、塗工形成されたハードコート層、そしてハードコート層の屈折率が透明基板より低い場合、ハードコート層より屈折率の高い高屈折率層を含む膜、或いはハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層を含む膜であることが好ましく;ハードコート層の屈折率が透明基板より高い場合、ハードコート層より屈折率の低い屈折率層を含む膜、或いはハードコート層、低屈折率層及び高屈折率層を含む膜であることが好ましい。
【0019】
本発明の光学フィルタは、プラズマディスプレイパネル用フィルタであることが好ましい。
【0020】
上記衝撃吸収層の好適態様を、上記光学フィルタにも適用することができる。
【0021】
さらに、本発明は、上記光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされていることを特徴とするディスプレイにもある。
【0022】
さらにまた、本発明は、光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされていることを特徴とするプラズマディスプレイパネルにもある。
【発明の効果】
【0023】
本発明の衝撃吸収層は、優れた耐衝撃性及び高い鉛筆硬度を有している。従って、この層を有する本発明の光学フィルタは、耐衝撃性及び硬度が向上し且つディスプレイの反射防止、帯電防止、電磁波遮蔽等の機能を有する光学フィルタということができる。
【0024】
このような光学フィルタは、衝撃性に優れているだけでなく、鉛筆硬度も高いことから、光学フィルタに衝撃が加えられたときに、光学フィルタに設けられた各機能層に損傷が与えられることはほとんど無い。即ち、本発明の衝撃吸収層を備えた光学フィルタは、衝撃が加えられた場合に、衝撃吸収層が衝撃に対して適度な抵抗性があるため、衝撃を適度に吸収して、急な変形は起こらず且つその変形は大きすぎることがない。このため、衝撃吸収層に隣接或いは近辺の各機能層に対しても大きな衝撃がもたらされることはない。また表面の鉛筆硬度が高いことから各層に傷等が発生することもほとんどない。
【0025】
従って、本発明の本発明の衝撃吸収層、及びこれを備えた光学フィルタは、耐衝撃性、耐久性にも優れたものである。
【0026】
さらに、特に、導電層としてメッシュ状の金属層を用いた場合、金属層が設けられたフィルム表面が粗面となっているため、この粗面の凹凸を完全に埋めることが光学フィルタ全体の透明性を向上させる必要であるが、本発明の衝撃吸収層は適度な柔軟性を有するため、その透明化樹脂層の機能もかねることができる(光学フィルタ(3))。
【0027】
また、一方の表面に反射防止膜が設けられた透明基板と、一方の表面に導電層が設けられ別の透明基板との、2枚の透明基板を、衝撃吸収層を介して接着された特有の構成を有する光学フィルタとした場合、格段に優れた耐衝撃性が得ることができる。さらに、反射防止膜を有する透明フィルム及び導電層を有する透明フィルムをそれぞれ製造し、これらを衝撃吸収層を介して接着することにより得ることができるので、連続的に製造することも容易で、生産性に優れた反射防止フィルムということもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の衝撃吸収層は、優れた耐衝撃性及び高い鉛筆硬度を有し、ディスプレイ用光学フィルタに有利に使用することができる。
【0029】
本発明の衝撃吸収層は、0.01〜1.0mmの厚さを有し、且つJIS 060068−2−75に準拠するスプリングインパクトハンマーを衝撃力0.5Jの条件で使用する耐衝撃試験で得られる衝撃加速度−時間曲線において、衝撃吸収層の厚さa(mm)と衝撃応力発生から第1のピークまでの時間:t(ms)との間の関係が、下記式(I):
10≦5.87a/t≦40 (I)
を満たす層である。
【0030】
本発明では、衝撃試験を、図9に示す様な装置を用いて行う。即ち、コンクリート床上に置かれた厚さ5mmの鉄板(中央に穴を有する)そしてその上の厚さ10cm×10cm×0.3cmのアルミニウム合金板の上に、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとその上に形成された本発明の衝撃吸収層との積層体(サンプル)を、衝撃吸収層とアルミニウム合金板が接触するように貼り付ける。アルミニウム合金板の下面の中心に加速度センサ(P5SC;サンエス(株)製)が設置されており、これにより加速度から電圧に変換されたデータを、オシロスコープ(NR−350;(株)キーエンス製)を用いてパーソナルコンピュータ(PC)に読み込むことにより時間変位(衝撃加速度−時間曲線)を得る。アルミニウム合金板上のサンプルへの衝撃力0,5J(Nm)の衝撃印加は、スプリングリングインパクトハンマー(MODEL F22.50(JIS 060068−2−75適合);PTL社製)を0.5Jの設定にして用いることにより行う。
【0031】
上記の衝撃試験により得られた衝撃加速度−時間曲線から、衝撃応力発生から第1のピークまでの時間:t(ms)を得、その際の衝撃吸収層の厚さa(mm)から、上記式(I)の5.87a/tの値が求められる。
【0032】
上記式(I)は、以下のようにして見いだされた。
【0033】
即ち、本発明者は、衝撃吸収層の評価をする試験法として、家庭用電化製品、電気付属品(アクセサリ)等の外部から加えられる衝撃に耐えられるかどうか調べるためのスプリングインパクトハンマーを用いた衝撃試験において、その試験により得られる衝撃加速度−時間曲線に注目した。そして、衝撃加速度−時間曲線から得られる衝撃応力発生から第1のピークまでの時間が、特定の範囲に入った場合に、耐衝撃性、鉛筆硬度が共に優れた衝撃吸収層が得られることを見いだした。
【0034】
このため、本発明者は、衝撃吸収層の厚さが大きくなると、第1のピークまでの時間も大きくなること、種々の材料、厚さの衝撃吸収層の第1のピークまでの時間(t)のデータから、各材料について、厚さと第1のピークまでの時間(t)の間に下記の関係式(A)があると仮定することができる:
ln(第1のピークまでの時間(t))≒ 定数1+定数2×厚さ(a) (A)
定数は上記データを最小二乗することにより求める。
【0035】
即ち、上記データと対数での最小二乗近似の検討から、
[exp(定数2)]厚さ/(第1のピークまでの時間)≒exp(定数1)=定数3
exp(定数2)≒5.87を得る。
【0036】
従って、定数3≒5.87厚さ/(第1のピークまでの時間)、即ち5.87a/tが得られ、これを特定の範囲で満たすものが、耐衝撃性、鉛筆硬度が共に優れた衝撃吸収層であると言うことができる。
【0037】
各厚さ(a)と第1のピークまでの時間(t)の関係、及び本発明の特定の範囲を図1に示す。この実線で囲まれ、且つ厚さ(a)範囲を満たす層が本発明で規定された衝撃吸収層である。
【0038】
衝撃吸収層の厚さa(mm)と衝撃応力発生から第1のピークまでの時間:t(ms)との間の関係が、下記の式(II):
15≦5.87a/t≦25 (II)
を満たすことが特に好ましい。特に優れた耐衝撃性、鉛筆硬度を示す。
【0039】
この5.87a/tの値が、上限より大きい場合は、一般に、耐衝撃性が不十分であるが、鉛筆硬度は良好であり、下限より小さい場合は、耐衝撃性が良好であるが、鉛筆硬度は不十分である。
【0040】
衝撃吸収層が、アクリル樹脂からなることが好ましい。詳細は後述する。衝撃吸収層の厚さは、0.1〜0.6mmが好ましく、特に0.2〜0.5mmが好ましい。
【0041】
次に、本発明の上記衝撃吸収層を有する本発明の光学フィルタについて説明する。本発明の光学フィルタの基本構成を示す1例の概略断面図を図2に示す。図2において、透明基板11の一方の表面に反射防止膜12が設けられ、他方の表面には透明粘着剤層13を介して導電層14が設けられ、さらに導電層14の表面に衝撃吸収層15が設けられている。透明粘着剤層13は、無くても良い。衝撃吸収層15は、透明基板11と透明粘着剤層13との間、或いは透明粘着剤層13と導電層14との間に設けても良い。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に衝撃吸収層15をガラス表面に対向させて、透明粘着剤により接着される。
【0042】
反射防止膜12は、一般に、ハードコート層の屈折率が透明基板より低い場合、ハードコート層より屈折率の高い高屈折率層を含む膜、或いはハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層を含む膜であることが好ましく;ハードコート層の屈折率が透明基板より高い場合、ハードコート層より屈折率の低い屈折率層を含む膜、或いはハードコート層、低屈折率層及び高屈折率層を含む膜であることが好ましい。反射防止膜12は基板より屈折率の高い或いは低いハードコート層のみであっても、或いは低屈折率層又は高屈折率層のみであっても有効である。このような反射防止膜12を構成する層は、いずれも塗工により形成されていることが、生産性、経済性の観点から好ましい。光学フィルタがPDP用の場合は、反射防止膜は、近赤外線遮蔽機能を有することが好ましい。
【0043】
導電層13は、例えば、メッシュ状の金属層又は金属含有層、又は塗工層、或いは金属酸化物層(誘電体層)、又は金属酸化物層と金属層との交互積層膜である。メッシュ状の金属層又は金属含有層は、一般に、エッチングにより、又は印刷法により形成されているか、金属繊維層である。これにより低抵抗値を得られやすい。メッシュ状の金属層又は金属含有層のメッシュの空隙が、透明樹脂で埋められている(本発明では透明粘着剤層又は衝撃吸収層)ことが好ましい。これにより透明性が向上する。導電層が、塗工層、例えば、ポリマー中に無機化合物の導電性粒子が分散された塗工層、或いは導電性ポリマーの塗工層であることが好ましい。これにより生産性、経済性は向上する。
【0044】
本発明の衝撃吸収層15は前述の通りである。適度な層厚を有し、且つ優れた衝撃吸収能及び高い鉛筆硬度を有している。本発明の衝撃吸収層は、衝撃性に優れているだけでなく、鉛筆硬度も高いことから、この層を有する光学フィルタに衝撃が加えられたときに、光学フィルタに設けられた各機能層に損傷が与えられることはほとんど無い。即ち、本発明の衝撃吸収層を備えた光学フィルタは、衝撃が加えられた場合に、衝撃吸収層が衝撃に対して適度な抵抗性があるため、衝撃を適度に吸収して、急な変形は起こらず且つその変形は大きすぎることがない。このため、衝撃吸収層に隣接或いは近辺の各機能層に対しても大きな衝撃がもたらされることはない。また表面の鉛筆硬度が高いことから各層に傷等が発生することもほとんどない。衝撃吸収層は、前記のようにアクリル樹脂からなる層であることが好ましく、その層厚は、0.01〜1.0mmの範囲であり、0.1〜0.6mmの範囲にあることが好ましい。これにより優れた耐衝撃性が得られやすい。
【0045】
本発明の光学フィルタは、通常の反射防止フィルムにおいては、表面抵抗値が108Ω/□以下、好ましくは102〜108Ω/□の範囲、特に102〜105Ω/□の範囲であることが好ましく、特に金属メッシュを用いた電磁波遮蔽用フィルムにおいては、一般に10Ω/□以下、好ましくは0.01〜5Ω/□の範囲、特に0.005〜5Ω/□の範囲が好ましい。それぞれの範囲において、帯電防止或いは電磁波の遮断の効果が得られやすい。
【0046】
本発明の光学フィルタは、ディスプレイの反射防止、帯電防止、所望により電磁波遮蔽に優れたフィルムであって、且つ耐衝撃性、鉛筆硬度に優れたものである。本発明の光学フィルタは図2に示すように、この衝撃吸収層を備えており、これにより大きな衝撃に対してもディスプレイの表示画面であるガラス板を損傷することがほとんど無い。
【0047】
さらに、特に、導電層としてメッシュ状の金属層を用いた場合、金属層が設けられたフィルム表面が粗面となっているため、この粗面の凹凸を完全に埋めることが光学フィルタ全体の透明性を向上させる必要であるが、本発明の衝撃吸収層は適度な柔軟性を有するため、その透明化樹脂層の機能もかねることができる。
【0048】
また、一方の表面に反射防止膜が設けられた透明基板と、一方の表面に導電層が設けられ別の透明基板との、2枚の透明基板を、衝撃吸収層を介して接着された特有の構成を有する光学フィルタとした場合、格段に優れた耐衝撃性が得ることができる。さらに、反射防止膜を有する透明フィルム及び導電層を有する透明フィルムをそれぞれ製造し、これらを衝撃吸収層を介して接着することにより得ることができるので、連続的に製造することも容易で、生産性に優れた反射防止フィルムということもできる。
【0049】
本発明の光学フィルタにおける、好ましい態様の1例の概略断面図を図3に示す。図2における導電層が、PDP用に好適な光学フィルタとするには、メッシュ状の金属層又は金属含有層であることが好ましい。図3にPDP用の光学フィルタとして好ましい態様が示されている。図3において、透明基板21Aの一方の表面に反射防止膜22が設けられ、別の透明基板21Bの一方の表面には導電層24が設けられ、これら2枚の透明基板は、この反射防止膜が形成されていない基板表面と導電層とを対向させて、透明粘着剤層23を介して圧着され、さらに透明基板21Bの他方の表面に衝撃吸収層25が設けられている。導電層24は、ここではメッシュ状で、その間隙は透明粘着剤層23により埋められている。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に衝撃吸収層25をガラス表面に対向させて、透明粘着剤により接着される。衝撃吸収層25の粘着性が充分である場合は、透明粘着剤の使用を省略することができる。
【0050】
光学フィルタがPDP用の場合は、反射防止膜は、近赤外線遮蔽機能を有することが好ましい。
【0051】
図2又は図3において、近赤外線遮蔽層又はフィルムを別に設ける場合、図4又図5に示す態様をとることが好ましい。図4において、透明基板31Aの一方の表面に反射防止膜32が設けられ、別の透明基板31Bの一方の表面には導電層34が設けられ、これら2枚の透明基板は、この反射防止膜が形成されていない基板表面と導電層34とを対向させて、透明粘着剤層33を介して圧着され、透明基板31Bの他方の表面に衝撃吸収層35及び近赤外線遮蔽フィルム36が設けられている。導電層34はここではメッシュ状で、その間隙は透明粘着剤層33により埋められている。近赤外線遮蔽フィルム36は、衝撃吸収層35により接着されているが、別途接着層(透明粘着剤層)を設けても良い。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に近赤外線遮蔽フィルム36をガラス表面に対向させて、透明粘着剤により接着される。
【0052】
図5において、透明基板41Aの一方の表面に反射防止膜42が設けられ、別の透明基板41Bの一方の表面には導電層44が設けられ、これら2枚の透明基板は、この反射防止膜が形成されていない表面と導電層44とを対向させて、透明粘着剤層43Aを介して圧着され、さらに透明基板41Bの他方の表面には、透明粘着剤層43Bを介して近赤外線遮蔽フィルム46が設けられ、その上に衝撃吸収層45が積層されている。導電層44はここではメッシュ状で、その間隙は透明粘着剤層43Aにより埋められている。近赤外線遮蔽フィルム46は、透明粘着剤層43Bにより透明基板41Bに接着され、近赤外線遮蔽フィルム46上には衝撃吸収層45が接着されている。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に衝撃吸収層45をガラス表面に対向させて、透明粘着剤により接着される。近赤外線遮蔽フィルム46は透明基板41Aと透明粘着剤層43Bとの間に透明粘着剤層を介して設けても良い。
【0053】
次に、本発明の光学フィルタの別の基本構成を示す1例の概略断面図を図6に示す。図6において、透明基板51の一方の表面に反射防止膜52が設けられ、他方の表面には衝撃吸収層55を介して導電層54が設けられている。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に導電層54をガラス表面に対向させて、透明粘着剤により貼付される。
【0054】
図6における導電層が、PDP用に好適な光学フィルタとするには、メッシュ状の金属層又は金属含有層であることが好ましい。図7にPDP用の光学フィルタとして好ましい態様が示されている。図7において、透明基板61Aの一方の表面に反射防止膜62が設けられ、別の透明基板61Bの一方の表面には導電層64が設けられ、これら2枚の透明基板は、この反射防止膜が形成されていない基板表面と導電層64とを対向させて、衝撃吸収層65を介して圧着されている。導電層64はここではメッシュ状で、その間隙は衝撃吸収層65により埋められている。衝撃吸収層が、充分に可撓性があり、且つ膜厚が厚い場合にこの態様が可能となる。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に透明基板61Bをガラス表面に対向させて、透明粘着剤により接着される。光学フィルタがPDP用の場合は、反射防止膜は、近赤外線遮蔽機能を有することが好ましい。
【0055】
図7において、近赤外線遮蔽層又はフィルムを別に設ける場合、図8に示す態様をとることが好ましい。図8にPDP用の光学フィルタとして好ましい態様が示されている。図8において、透明基板71Aの一方の表面に反射防止膜72が設けられ、別の透明基板71Bの一方の表面には導電層74が設けられ、これら2枚の透明基板を、この反射防止膜が形成されていない表面と導電層74とを対向させて、衝撃吸収層75を介して圧着されている。透明基板71Bの他方の表面に透明粘着剤層73を介して近赤外線遮蔽フィルム76が設けられている。導電層74はここではメッシュ状で、その間隙は衝撃吸収層75により埋められている。ディスプレイ本体の表示ガラス表面にこの光学フィルタを貼付する場合は、一般に近赤外線遮蔽フィルム76をガラス表面に対向させて、透明粘着剤により接着される。近赤外線遮蔽フィルム76は透明基板71Aと衝撃吸収層75との間に透明粘着剤層を介して設けても良い。
【0056】
本発明の反射防止膜、導電層等は、塗工により形成されることが、生産性の観点からは有利である。特に、両者とも、紫外線硬化性樹脂を用いて、塗工、硬化を連続して行って形成することにより、高い生産性で反射防止フィルムを製造することができる。但し、導電層は、要求される性能に応じて、特にPDF用はメッシュ状の金属層等が用いられる場合が多い。上記塗工膜、塗工層は、一般に、矩形の透明基板(一般にフィルム又はシート)上、或いは連続フィルム上に形成することができる。矩形の透明基板の場合、各層はバッチ式で形成され、連続フィルム上に形成する場合は、各層を連続式、一般にロールトゥロール方式で形成される。本発明では、特に後者が好ましい。
【0057】
本発明のディスプレイ用に好適な光学フィルタに使用される材料について以下に説明する。
【0058】
透明基板は、その材料としては、透明(「可視光に対して透明」を意味する。)であれば特に制限はないが、一般にプラスチックフィルムが使用される。例えば、ポリエステル{例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート}、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等を挙げることができる。これらの中でも、加工時の負荷(熱、溶剤、折り曲げ等)に対する耐性が高く、透明性が特に高い等の点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が好ましい。特に、PETが、加工性が優れているので好ましい。
【0059】
透明基板の厚さとしては、光学フィルタの用途等によっても異なるが、一般に1μm〜5mm程度が好ましい。
【0060】
本発明の導電層は、得られる光学フィルタの表面抵抗値が、一般に108Ω/□以下、好ましくは102〜108Ω/□の範囲、特に102〜105Ω/□の範囲、或いは一般に10Ω/□以下、好ましくは0.01〜5Ω/□の範囲、特に0.005〜5Ω/□の範囲となるように設定される。導電層は、塗工層であることが好ましいが、メッシュ(格子)状の導電層も好ましい。或いは、気相成膜法により得られる層(金属酸化物(ITO等)の透明導電薄膜)でも良い。さらに、ITO等の金属酸化物の誘電体膜とAg等の金属層との交互積層体(例、ITO/銀/ITO/銀/ITOの積層体)であっても良い。
【0061】
メッシュ状の導電層としては金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属を網状にしたもの、透明フィルム上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、透明フィルム上に導電性インクをメッシュ状に印刷したもの、等を挙げることができる。透明フィルム上の銅箔等の層を網状にエッチング加工し、開口部を設けたもの、透明フィルム上に導電性インクをメッシュ状に印刷したものが好ましい。
【0062】
メッシュ状の導電層の場合、メッシュとしては、金属繊維及び/又は金属被覆有機繊維、メッシュ状金属箔等よりなる線径1μm〜1mm、開口率50〜95%のものが好ましい。より好ましい線径は10〜500μm、開口率は60〜95%である。なお、導電性メッシュの開口率とは、当該導電性メッシュの投影面積における開口部分が占める面積割合を言う。
【0063】
導電性メッシュを構成する金属繊維及び金属被覆有機繊維の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステン、錫、鉛、鉄、銀、炭素或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、アルミニウムが用いられる。
【0064】
金属被覆有機繊維の有機材料としては、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニリデン、アラミド、ビニロン、セルロース等が用いられる。
【0065】
金属箔等の導電性の箔をパターンエッチングしたもの場合、金属箔の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、真鍮、或いはこれらの合金、好ましくは銅、ステンレス、ニッケルが用いられる。
【0066】
金属箔の厚さは、薄過ぎると取り扱い性やパターンエッチングの作業性等の面で好ましくなく、厚過ぎると得られるガラスの厚さに影響を及ぼしたり、エッチング工程の所要時間が長くなることから、1〜200μm程度とするのが好ましい。
【0067】
エッチングパターンの形状には特に制限はなく、例えば四角形の孔が形成された格子状の金属箔や、円形、六角形、三角形又は楕円形の孔が形成されたパンチングメタル状の金属箔等が挙げられる。また、孔は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。この金属箔の投影面における開口部分の面積割合は、20〜95%であることが好ましい。
【0068】
或いは、メッシュ状の導電層を、透明基板に導電性インキをパターン印刷して形成しても良い。次のような導電性インキを用い、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法等により透明基板の表面に印刷することができる。
【0069】
一般に、粒径100μm以下のカーボンブラック粒子、或いは銅、アルミニウム、ニッケル等の金属又は合金の粒子等の導電性材料の粒子を50〜90重量%濃度にPMMA、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂等のバインダ樹脂に分散させたものである。このインクは、トルエン、キシレン、塩化メチレン、水等の溶媒に適当な濃度に希釈または分散させて透明基板の板面に印刷により塗布し、その後必要に応じ室温〜120℃で乾燥させ基板上に塗着させる。上記と同様の導電性材料の粒子をバインダ樹脂で覆った粒子を静電印刷法により直接塗布し熱等で固着させる。
【0070】
このようにして形成される印刷膜の厚さは、薄過ぎると電磁波シールド性が不足するので好ましくなく、厚過ぎると得られるガラスの厚さに影響を及ぼすことから、0.5〜100μm程度とするのが好ましい。
【0071】
このようなパターン印刷によれば、パターンの自由度が大きく、任意の線径、間隔及び開口形状の導電層を形成することができ、従って、所望の電磁波遮断性と光透過性を有するガラス板(又はプラスチックフィルム)を容易に形成することができる。
【0072】
導電層のパターン印刷の形状には特に制限はなく、例えば四角形の開口部が形成された格子状の印刷膜や、円形、六角形、三角形又は楕円形の開口部が形成されたパンチングメタル状の印刷膜等が挙げられる。また、開口部は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしても良い。この印刷膜の投影面における開口部分の面積割合は、20〜95%であることが好ましい。
【0073】
塗工による導電層としては、ポリマー中に無機化合物の導電性粒子が分散された塗工層を挙げることができる。
【0074】
導電性粒子を構成する無機化合物としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属、合金;或いはITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム−酸化スズ(ITO、いわゆるインジウムドープ酸化スズ)、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO、いわゆるアンチモンドープ酸化スズ)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO;いわゆるアルミニウムドープ酸化亜鉛)等の導電性酸化物等を挙げることができる。特に、ITOが好ましい。平均粒径は10〜10000nm、特に10〜50nmが好ましい。
【0075】
ポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、含ケイ素樹脂等を挙げることができる。さらに、これらの樹脂のうち熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0076】
或いは、ポリマーは後述するハードコート層に使用される紫外線硬化性樹脂を用いることが特に好ましい。
【0077】
上記塗工による導電層の形成は、ポリマー(必要により溶剤を用いて)中に上記導電性微粒子を混合等により分散させて塗工液を作製し、この塗工液を、透明基板上に塗工し、適宜乾燥、硬化させる。熱可塑性樹脂を用いた場合は、塗工後乾燥することにより、熱硬化型の場合は、乾燥、熱硬化することにより得られる。紫外線硬化性樹脂を用いた場合は、塗工後、必要に応じて乾燥し、紫外線照射することにより得られる。
【0078】
上記塗工形成された導電層の厚さとしては、0.01〜5μm、特に0.05〜3μmが好ましい。前記厚さが、0.01μm未満であると電磁波シールド性又は帯電防止性が充分でないことがあり、一方5μmを超えると、得られるフィルムの透明性を低下させる場合がある。
【0079】
本発明の導電層は、塗工により形成される導電性ポリマーの層であることも好ましい。例えば、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリナフタレン等の炭化水素系ポリマー;ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリエチレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン等のヘテロ原子含有ポリマーを挙げることができる。ポリピロール、ポリチオフェンが好ましい。上記導電性ポリマーの明導電層の厚さとしては、0.01〜5μm、特に0.05〜3μmが好ましい。前記厚さが、0.01μm未満であると、電磁波シールド性又は帯電防止性が充分でないことがあり、一方5μmを超えると、得られるフィルムの透明性を低下させる場合がある。
【0080】
導電層を気相成膜法により形成する場合(金属酸化物層)、その形成方法としては、特に制限はないが、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着等の気相製膜法や、印刷、塗工等が挙げることができるが、気相製膜法(スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着)が好ましい。前記の無機化合物を用いて導電層を形成することができる。導電層を気相成膜法で形成した場合は、その層厚は、30〜50000nm、特に50nm程度が好ましい。
【0081】
導電層、特にメッシュ状の金属導電層の表面には黒化処理を行っても良い。
【0082】
黒化処理は、導電層の金属に応じた公知の黒化処理をすることができ、これに応じた公知の黒化処理液を使用することができる。黒化処理としては、一般に酸化処理、硫化処理、クロムメッキ処理、及びスズ−ニッケル等の合金メッキ処理を挙げることができる。電気メッキ槽でのメッキ金属が銅である場合には、酸化処理、硫化処理、クロムメッキ処理、及びスズ−ニッケル等の合金メッキ処理をあげることができ、特に廃液処理の簡易性及び環境安全性の点から、酸化処理が好ましい。
【0083】
上記黒化処理として酸化処理を行う場合には、黒化処理液として、一般には次亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液、ペルオキソ二硫酸と水酸化ナトリウムの混合水溶液等を使用することが可能であり、特に経済性の点から、次亜塩素酸塩と水酸化ナトリウムの混合水溶液を使用することが好ましい。
【0084】
上記黒化処理として硫化処理を行う場合には、黒化処理液として、一般には硫化カリウム、硫化バリウム及び硫化アンモニウム等の水溶液を使用することが可能であり、好ましくは、硫化カリウム及び硫化アンモニウムであり、特に低温で使用可能である点から、硫化アンモニウムを使用することが好ましい。
【0085】
上記黒化処理として、クロムメッキ処理を行う場合には、黒化処理液として、一般にはクロム酸と酢酸の水溶液、及びクロム酸とケイフッ化水素酸の水溶液等を使用することが可能であり、特に経済性の点から、クロム酸と酢酸の水溶液を使用することが好ましい。
【0086】
上記のようにして得られる黒化層の厚さは、一般に0.5〜5μm、特に1〜2μmが好ましい。本発明では、黒化層の厚さは、本発明の金属導電層の厚さに含まれる。
【0087】
導電層上に、さらに金属メッキ層を、導電性を向上させるためは設けても良い。金属メッキ層は、公知の電解メッキ法、無電解メッキ法により形成することができる。メッキに使用される金属としては、一般に銅、銅合金、ニッケル、アルミ、銀、金、亜鉛又はスズ等を使用することが可能であり、好ましくは銅、銅合金、銀、又はニッケルであり、特に経済性、導電性の点から、銅又は銅合金を使用することが好ましい。また、金属メッキ層上に前記黒化処理を行っても良い。
【0088】
また導電層は、誘電体層(金属酸化物)と金属層との交互積層膜でも良い。特に、誘電体層/金属層/誘電体層/金属層/誘電体層の5層以上の積層体が好ましい。例えば、ITO等の金属酸化物の誘電体層とAg等の金属層との交互積層体(例、ITO/銀/ITO/銀/ITOの積層体)を挙げることができる。
【0089】
上記透明導電膜は、物理蒸着法または化学蒸着法により成膜することができる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法が挙げられるが、一般的にはスパッタリング法で成膜するのが好ましい。化学蒸着法としては、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法が挙げられる。
【0090】
本発明の反射防止膜は、一般に透明基板より屈折率の高いハードコート層とその上に設けられた低屈折層との複合膜であるか、好ましくは低屈折率層上にさらに高屈折率層が設けられた複合膜である。反射防止膜は基板より屈折率の高いハードコート層のみであっても、或いは低屈折率層のみであっても有効である。但し、透明基板の屈折率が低い場合、透明基板より屈折率の低いハードコート層とその上に設けられた高屈折層との複合膜、或いは高屈折率層上にさらに低屈折率層が設けられた複合膜としても良い。本発明の反射防止膜に近赤外線遮蔽機能を付与する場合は、上記ハードコート層等に近赤外線を吸収する後述する材料(例、色素)を混合及び/又は混練して導入する場良い。或いは反射防止膜を形成するための透明基板に導入してもよい。
【0091】
ハードコート層としては、アクリル樹脂層、エポキシ樹脂層、ウレタン樹脂層、シリコン樹脂層等からなる層を挙げることができ、通常その層厚は1〜50μm、好ましくは1〜10μmである。熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂のいずれでもよいが、紫外線硬化性樹脂が好ましい。
【0092】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。
【0093】
紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー類;ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸又はこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4′−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2′−4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら化合物は1種又は2種以上、混合して使用することができる。これらの紫外線硬化性樹脂を、熱重合開始剤とともに用いて熱硬化性樹脂として使用してもよい。
【0094】
ハードコート層とするには、上記の紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)の内、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0095】
紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤として、紫外線硬化性樹脂の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、2,2−ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系叉は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。特に1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)が好ましい。
【0096】
光重合開始剤の量は、樹脂組成物に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0097】
ハードコート層は、透明基板より屈折率が高くても、低くても良いが、高いことが好ましく、上記紫外線硬化性樹脂を用いることにより一般に基板より低い屈折率を得られやすく、このため、下記の導電性金属酸化物微粒子を添加して屈折率を高めることが好ましい。膜厚は前記の通りである。
【0098】
高屈折率層は、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に、ITO,ATO,Sb23,SbO2,In23,SnO2,ZnO、AlをドープしたZnO、TiO2等の導電性金属酸化物微粒子(無機化合物)が分散した層とすることが好ましい。金属酸化物微粒子としては、平均粒径10〜10000nm、好ましくは10〜50nmのものが好ましい。特にITO(特に平均粒径10〜50nmのもの)が好ましい。屈折率を1.64以上としたものが好適である。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0099】
なお、高屈折率層が導電層である場合、この高屈折率層2の屈折率を1.64以上とすることにより反射防止フィルムの表面反射率の最小反射率を1.5%以内にすることができ、1.69以上、好ましくは1.69〜1.82とすることにより反射防止フィルムの表面反射率の最小反射率を1.0%以内にすることができる。
【0100】
ハードコート層は、可視光線透過率が85%以上であることが好ましい。高屈折率層及び低屈折率層の可視光線透過率も、いずれも85%以上であることが好ましい。
【0101】
低屈折率層は、シリカ、フッ素樹脂等の微粒子、好ましくは中空シリカを10〜40重量%(好ましくは10〜30質量%)がポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)中に分散した層(硬化層)であることが好ましい。この低屈折率層の屈折率は、1.45〜1.51が好ましい。この屈折率が1.51超であると、反射防止フィルムの反射防止特性が低下する。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。
【0102】
中空シリカとしては、平均粒径10〜100nm、好ましくは10〜50nm、比重0.5〜1.0、好ましくは0.8〜0.9のものが好ましい。
【0103】
反射防止膜が上記3層より構成される場合、例えば、ハードコート層の厚さは2〜20μm、高屈折率層の厚さは75〜90nm、低屈折率層の厚さは85〜110nmであることが好ましい。
【0104】
反射防止膜の、各層を形成するには、前記の通り、ポリマー(好ましくは紫外線硬化性樹脂)に必要に応じ上記の微粒子を配合し、得られた塗工液を塗工し、次いで乾燥、必要により熱硬化させるか、或いは塗工後、必要により乾燥し、紫外線を照射する。この場合、各層を1層ずつ塗工し硬化させてもよく、全層を塗工した後、まとめて硬化させてもよい。
【0105】
塗工の具体的な方法としては、アクリル系モノマー等を含む紫外線硬化性樹脂をトルエン等の溶媒で溶液にした塗工液をグラビアコータ等によりコーティングし、その後乾燥し、次いで紫外線により硬化する方法を挙げることができる。このウェットコーティング法であれば、高速で均一に且つ安価に成膜できるという利点がある。このコーティング後に例えば紫外線を照射して硬化することにより密着性の向上、膜の硬度の上昇という効果が得られる。前記導電層も同様に形成することができる。
【0106】
紫外線硬化の場合は、光源として紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば超高圧、高圧、低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等を挙げることができる。照射時間は、ランプの種類、光源の強さによって一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、予め積層体を40〜120℃に加熱し、これに紫外線を照射してもよい。
【0107】
本発明の反射防止層は、上記のように塗工により形成することが好ましいが、気相成膜法により形成しても良い。通常、高屈折率層及び低屈折率層を、物理蒸着法または化学蒸着法により成膜することができる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法が挙げられるが、一般的にはスパッタリング法で成膜するのが好ましい。化学蒸着法としては、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法が挙げられる。
【0108】
高屈折率層及び低屈折率層等の組合せの例としては、下記のものを挙げることができる。
【0109】
(a) 高屈折率層/低屈折率層の順で各1層ずつ、合計2層に積層したもの、(b) 高屈折率層/低屈折率層を2層ずつ交互に、合計4層に積層したもの、(c) 中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順で各1層ずつ、合計3層に積層したもの、(d) 高屈折率層/低屈折率層の順で各層を交互に3層ずつ、合計6層に積層したもの。高屈折率層としては、ITO(スズインジウム酸化物)又はZnO、AlをドープしたZnO、TiO2、SnO2、ZrO等の薄膜を採用することができる。また、低屈折折率層としては、SiO2、MgF2、Al23等の屈折率が1.6以下の薄膜を用いることができる。
【0110】
上記透明導電膜は、物理蒸着法または化学蒸着法により成膜することができる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法が挙げられるが、一般的にはスパッタリング法で成膜するのが好ましい。化学蒸着法としては、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法が挙げられる。
【0111】
本発明の衝撃吸収層は、通常、本発明の反射防止フィルムを装着したディスプレイに反射防止フィルム側から衝撃が加えられた場合に、ディスプレイのガラスを破損したり、反射防止フィルム自体が破損しないように設けられている。
【0112】
本発明の衝撃吸収層は、厚さが0.01〜1mmで、前記式(I)(好ましくは式(II))を満足する層である。
【0113】
上記衝撃吸収層を構成する樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、アクリル樹脂(例、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、金属イオン架橋エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン系共重合体を挙げることができる(なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を示す。)。その他、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等も用いることができるが、良好な衝撃吸収性が得られやすいのはエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリル樹脂である。
【0114】
アクリル樹脂は、紫外線又は熱硬化性(メタ)アクリレート組成物の重合層又は硬化層であることが好ましい。
【0115】
上記(メタ)アクリレート組成物は、一般に、炭素原子数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とする(50質量%以上)モノマー材料、又はこのモノマー材料を部分的に重合してなる部分重合体・モノマー混合物からなり、さらにこの部分重合体・モノマー混合物100質量部及び(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートを0.1〜1.0質量部含有するものが好ましい。本発明において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸アルキルエステル及び/又はメタクリル酸アルキルエステルをいう。
【0116】
上記(メタ)アクリレート組成物の主成分である炭素原子数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート,デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いられる。また、前記アルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれでもよいが、t−アルキル基でないことが好ましい。
【0117】
上記(メタ)アクリレート組成物の製造(好ましくは部分重合体・モノマー混合物の製造)には前記モノマーと共重合可能なモノビニルモノマーを光学特性や耐熱性等の物性の向上を目的として必要に応じて併用することが好ましい。このモノビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等のヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、及び(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;モノ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、モノ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びアルコキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メタクリル酸及びアクリル酸等を挙げることができる。特に、アクリル酸及びメタアクリル酸(アクリル酸が好ましい);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等のヒドロキシル基含有モノマー;及びアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、アルコキシル基が炭素原子数1〜5個(特にメトキシ、エトキシ)を有する基であり、アルキレンオキシが、エチレンオキシ又はプロピレンオキシであり、ポリ(アルキレンオキシの繰り返し数)が2〜15(特に2〜12;とりわけ2〜5)であることが好ましい。
【0118】
上記モノビニルモノマーのなかで、ヒドロキシル基含有モノマー、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートは、耐湿熱性の向上に有効であるので好ましい。さらに、アクリル酸が、良好な相溶性を示す点で好ましい。また上記モノビニルモノマーとして、上記アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとを含んでいることも好ましい。
【0119】
部分重合体・モノマー混合物の製造は、適宜の重合開始剤を用いて溶液重合、塊状重合、乳化重合等の公知のラジカル重合法を適宜選択して用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。例えば、塊状重合では、重合開始剤をモノマー100質量部に対し0.01〜0.2質量部程度使用し、これに紫外線などの放射線を少量照射して部分的に重合させ、反応系を増粘させることにより得られる。モノマーの重合率は3〜50質量%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜20質量%である。
【0120】
また、アクリル樹脂の製造は、紫外線又は熱硬化性(メタ)アクリレート組成物に、適宜の熱(ラジカル)重合開始剤を用いて溶液重合、塊状重合、乳化重合等の公知のラジカル重合法を適宜選択して用いて行うことも可能である。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。例えば、塊状重合では、重合開始剤をモノマー100質量部に対し0.01〜0.2質量部程度使用する。得られたアクリル樹脂(重合反応液)にさらに適宜下記の多官能(メタ)アクリレート、ポリイソシアネート等を加えて、適宜熱硬化(好ましくは80〜120℃)させて本発明の衝撃吸収層を得ることが好ましい。この場合、熱硬化性(メタ)アクリレート組成物は、重合したアクリル樹脂と、所望によりポリイソシアネート等の硬化剤からなることが一般的である。
【0121】
(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートやポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げることができる。
【0122】
上記硬化性(メタ)アクリレート組成物の好ましいものとしては、炭素原子数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主体とする(50質量%以上)モノマー材料を部分的に重合してなる部分重合体・モノマー混合物100質量部、及び(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレートを0.1〜1.0質量部含有するものである。
【0123】
この硬化性(メタ)アクリレート組成物を構成する部分重合体・モノマー混合物としては、特に、少なくともアルキルアクリレート(但し、アルキル基の炭素原子数が4〜10個である;特に2−エチルヘキシルアクリレート)とアクリル酸を含む混合物であることが好ましい。上記アクリル酸は、上記アルキルアクリレートに対して、0.1〜20質量%、特に0.5〜10質量%使用することが好ましい。
【0124】
硬化性(メタ)アクリレート組成物を構成するモノマーとして、部分重合体・モノマー混合物に加えて、さらに(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能アクリレートモノマー(特にトリメチロールプロパントリアクリレート)を含んでいることが、特に好ましい。多官能アクリレートモノマーは、一般に、上記部分重合体・モノマー混合物100質量部に対して0.1〜1.0質量部使用される。
【0125】
さらに硬化性(メタ)アクリレート組成物(通常、部分重合体・モノマー混合物、又はアクリル樹脂に対して)中に、さらにポリイソシアネート(好ましくはジイソシアネート)を含んでいることが好ましい。その例としては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4′−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2′−4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。硬化性(メタ)アクリレート組成物に対して、0.1〜10質量%、特に0.1〜5質量%の量で使用することが好ましい。
【0126】
このような硬化性(メタ)アクリレート組成物を使用することにより、前記式(I)を満足する樹脂を設計しやすい。また、これにより衝撃を吸収し、且つ衝撃による変形から容易に変形前の形に戻りやすい層が得られ易い。得られる層のゲル分率は70〜100質量%であることが好ましく、さらに好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは80〜99質量%である。その重量平均分子量が10000〜700000、特に400000〜700000であることが好ましい。衝撃吸収層の層厚が、0.1〜1.0mmの範囲、さらに0.2〜0.6mmの範囲が好ましい。
【0127】
上記紫外線又は熱硬化性(メタ)アクリレート組成物に、前述のハードコート層の材料として記載した光重合開始剤(紫外線)又は熱重合開始剤(熱)、そして所望により各種添加剤を含んでいる。例えば、組成物の接着特性を調整するため、公知の粘着付与樹脂(例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂など)を添加してもよい。また、粘着付与樹脂以外の添加剤としては、可塑剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、又は微粉末シリカなどの充てん剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、老化防止剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。また、微粒子を含有させて光拡散性を有する粘着剤層とすることもできる。
【0128】
本発明の衝撃吸収層の形成方法は、特に制限されず種々な方法を利用することができる。例えば、透明基板の片面又は両面或いは所望の層の表面に、前記硬化性(メタ)アクリレート組成物を塗布、乾燥し、必要により硬化させて(好ましくは塊状重合により)、衝撃吸収層を形成する方法を挙げることができる。また、表面が剥離性の転写シート上に前記硬化性(メタ)アクリレート組成物を塗布、乾燥して必要により硬化させて衝撃吸収層を形成した後、衝撃吸収層を基板の片面又は両面に貼り付け、前記転写シートを剥離除去することにより衝撃吸収層を形成してもよい。
【0129】
本発明の衝撃吸収層を紫外線照射により形成する場合は、例えば、上記紫外線硬化性(メタ)アクリレート組成物を、表面が剥離性の転写シートに塗布した後、必要により塗布膜の表面にも表面が剥離性の転写シートを載置し(サンドイッチ状態で)、紫外線照射により硬化させることにより得たのち、転写シートを除去することにより得ることができる。或いは、光学フィルタの衝撃吸収層を設けるべき表面に、直接上記紫外線硬化性(メタ)アクリレート組成物を、塗布した後、紫外線照射により硬化させることにより衝撃吸収層を形成することができる。また、比較的厚めの衝撃吸収層を形成する必要があることから、光重合反応させることにより衝撃吸収層を形成することが好ましい。熱硬化させる場合は、紫外線照射の代わりに加熱すればよい。
【0130】
上記紫外線硬化方式の好ましい態様では、まずモノマー材料及び光重合開始剤を混合し、少量の光照射により一部のモノマーを重合させて反応系を増粘させる(部分重合体・モノマー混合物の作製)。この部分重合体・モノマー混合物に多官能(メタ)アクリレート、及び光重合開始剤等を適宜添加混合して、これを適当な厚みで上記基板等に塗布する。その後、光照射により重合、架橋させて衝撃吸収層を形成する。光重合開始剤の量は、紫外線又は熱硬化性(メタ)アクリレート組成物に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0131】
或いは衝撃吸収層は、後述するEVA等の熱可塑性樹脂を用いて、前記塗布以外の方法でも形成可能であり、例えばEVAと上述の添加剤とを混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状にシート成形することにより製造される。成膜に際してはブロッキング防止、ガラス基板との圧着時の脱気を容易にするためエンボスが付与される。
【0132】
本発明の透明粘着剤層は、層間又はフィルム間を接着するか、或いはディスプレイに接着するための層であり。その接着機能を有するものであればどのような樹脂でも使用することができる。例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、アクリル樹脂(例、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、金属イオン架橋エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)、部分鹸化エチレン−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル化エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン系共重合体を挙げることができる(なお、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を示す。)。その他、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等も用いることができるが、良好な接着性が得られやすいのはアクリル樹脂系粘着剤、エポキシ樹脂である。
【0133】
その層厚は、一般に10〜50μm、好ましくは、20〜30μmの範囲が好ましい。光学フィルタは、一般に上記粘着剤層をディスプレイのガラス板に加熱圧着することによる装備することができる。
【0134】
導電層をメッシュ状で形成する場合、メッシュの空隙部を埋めるために上記透明粘着剤層を用いることが好ましい。
【0135】
上記透明粘着剤層の材料として、EVAも使用することができる。EVAとしては酢酸ビニル含有量が5〜50重量%、好ましくは15〜40重量%のものが使用される。酢酸ビニル含有量が5重量%より少ないと透明性に問題があり、また40重量%を超すと機械的性質が著しく低下する上に、成膜が困難となり、フィルム相互のブロッキングが生じ易い。
【0136】
架橋剤としては加熱架橋する場合は、有機過酸化物が適当であり、シート加工温度、架橋温度、貯蔵安定性等を考慮して選ばれる。使用可能な過酸化物としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3;ジーt−ブチルパーオキサイド;t−ブチルクミルパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;ジクミルパーオキサイド;α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;t−ブチルパーオキシベンゾエート;ベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシアセテート;2,5−ジメチル−2,5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;メチルエチルケトンパーオキサイド;2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート;第3ブチルハイドロパーオキサイド;p−メンタンハイドロパーオキサイド;p−クロルベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシイソブチレート;ヒドロキシヘプチルパーオキサイド;クロルヘキサノンパーオキサイド等を挙げることができる。これらの過酸化物は1種を単独で又は2種以上を混合して、通常EVA100重量部に対して、5質量部以下、好ましくは0.5〜5.0質量部の割合で使用される。
【0137】
有機過酸化物は通常EVAに対し押出機、ロールミル等で混練されるが、有機溶媒、可塑剤、ビニルモノマー等に溶解し、EVAのフィルムに含浸法により添加しても良い。
【0138】
なお、EVAの物性(機械的強度、光学的特性、接着性、耐候性、耐白化性、架橋速度など)改良のために、各種アクリロキシ基又はメタクリロキシ基及びアリル基含有化合物を添加することができる。この目的で用いられる化合物としてはアクリル酸又はメタクリル酸誘導体、例えばそのエステル及びアミドが最も一般的であり、エステル残基としてはメチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等のアルキル基の他、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルを用いることもできる。アミドとしてはダイアセトンアクリルアミドが代表的である。
【0139】
その例としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等のアクリル又はメタクリル酸エステル等の多官能エステルや、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等のアリル基含有化合物が挙げられ、これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して、通常EVA100質量部に対して0.1〜2質量部、好ましくは0.5〜5質量部用いられる。
【0140】
EVAを光により架橋する場合、上記過酸化物の代りに光増感剤が通常EVA100質量部に対して5質量部以下、好ましくは0.1〜3.0質量部使用される。
【0141】
この場合、使用可能な光増感剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンジル、5−ニトロアセナフテン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、p−ニトロジフェニル、p−ニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロンなどが挙げられ、これらは1種を単独で或いは2種以上を混合して用いることができる。
【0142】
また、接着促進剤としてシランカップリング剤が併用される。このシランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0143】
シランカップリング剤は、一般にEVA100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.001〜5質量部の割合で1種又は2種以上が混合使用される。
【0144】
なお、本発明に係るEVA接着層には、その他、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含んでいてもよく、また、場合によってはカーボンブラック、疎水性シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤を少量含んでも良い。
【0145】
近赤外線遮蔽層又はフィルムとしては、一般に近赤外線カットフィルムであり、例えば、ベースフィルムの表面に、色素等を含む近赤外線カット層が形成されたものであるか、或いは色素等を含有するフィルムである。色素の例としては、シアニン系色素、スクアリリウム系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ポリアゾ系色素を挙げることができ、特にシアニン系色素又はスクアリリウム系色素が好ましい。これらの色素は、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0146】
特に好ましい近赤外線カットフィルムは、ベースフィルムの表面に、ジイモニウム系化合物と特定の銅錯体及び/又は銅化合物とを含む近赤外線カット層が形成されたものであり、この近赤外線カット層はベースポリマーにジイモニウム系化合物と銅錯体及び/又は銅化合物とを分散させ、適当な溶剤で希釈して濃度調整したコーティング液を透明基板の表面にコーティングし、コーティング膜を乾燥させることにより形成することができる。
【0147】
上記近赤外線カットフィルムは、ベースフィルムに、2層以上の近赤外線カット層、好ましくは2種以上の近赤外線吸収剤の層で構成した層を設けても良く、この場合には、近赤外の幅広い波長域において著しく良好な近赤外線カット性能を得ることができ、有利である。
【0148】
2層以上の近赤外線カットフィルムは、次のような構成をとることができる。
【0149】
ベースフィルム上に近赤外線カット層を形成した近赤外線カットフィルムと、ベースフィルム上に近赤外線カット層を形成した近赤外線カットフィルムとの併用;
ベースフィルムの一方の面に近赤外線カット層を形成し、他方の面にも近赤外線カット層を形成した近赤外線カットフィルム;
ベースフィルム上に近赤外線カット層と近赤外線カット層とを積層形成した近赤外線カットフィルム;
ベースフィルム上に近赤外線カット層を形成した近赤外線カットフィルム;
上記のいずれか2以上の組み合わせ。
【0150】
上記の構成において、近赤外線カット層のうちの一方をジイモニウム系化合物と銅錯体及び/又は銅化合物とを含む層とし、他方をこれとは異なる層とするのが好ましい。
【0151】
また、上記の構成において、近赤外線カット層をジイモニウム系化合物と銅錯体及び/又は銅化合物とを含む層とし、必要に応じて更に異なる近赤外線吸収剤を配合するのが好ましい。
【0152】
なお、本発明において、ジイモニウム系化合物と銅錯体及び/又は銅化合物とを含む層以外の近赤外線カット層として、次のようなものを1種又は2種以上を組み合わせて用いるのが、透明性を損なうことなく、良好な近赤外線カット性能(例えば850〜1250nmなど近赤外の幅広い波長域において、近赤外線を十分に吸収する性能)を得られるので好ましい。
【0153】
(a) 厚さ100〜5000ÅのITOのコーティング層、(b) 厚さ100〜10000ÅのITOと銀の交互積層体によるコーティング層、(c) 厚さ0.5〜50μmのニッケル錯体系とイモニウム系の混合材料を適当な透明のベースポリマーを用いて膜としたコーティング層、(d) 厚さ10〜10000μmの2価の銅イオンを含む銅化合物を適当な透明のベースポリマーを用いて膜としたコーティング層、(e) 厚さ0.5〜50μmの有機色素系コーティング層。
【0154】
保護層は、前記ハードコート層と同様にして形成することが好ましい。
【0155】
剥離シートの材料としては、ガラス転移温度が50℃以上の透明のポリマーが好ましく、このような材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等のポリマーを主成分とする樹脂を用いることができる。これら中で、ポリカーボネート、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレートが好適に用いることができる。厚さは10〜200μmが好ましく、特に30〜100μmが好ましい。
【0156】
本発明の光学フィルタは、例えば、反射防止膜が形成された透明フィルムと、導電層が形成された透明フィルムを、その層又は膜を持たない面を対向させて、或いは膜を持たない面と導電層(メッシュ状金属層)を対向させて、その一方の面に衝撃吸収層のシートを配置して、重ね合わさせ、減圧、加温下に脱気して予備圧着した後、加熱又は光照射により衝撃吸収層を加熱(必要により硬化)して一体化することにより容易に製造することができる。あるいは、上記3枚のシートを、連続的に搬送して重ね合わせ、加熱圧着して、連続的に製造することも可能である。或いは、衝撃吸収層の代わりに透明粘着剤層を適宜使用して製造することができる。その際衝撃吸収層は他の位置に同時に又は別途設けられる。
【0157】
このようにして得られる本発明の光学フィルタは、PDP等のディスプレイの画像表示ガラス板の表面に貼り合わされて使用される。
【0158】
本発明のPDP表示装置は、透明基板としてプラスチックフィルムを使用することにより、本発明の光学フィルタをその表面であるガラス板表面に直接貼り合わせることができるため、PDP自体の軽量化、薄型化、低コスト化に寄与できる。また、PDPの前面側に透明成形体からなる前面板を設置する場合に比べると、PDPとPDP用フィルタとの間に屈折率の低い空気層をなくすことができるため、界面反射による可視光反射率の増加、二重反射などの問題を解決でき、PDPの視認性をより向上させることができる。また、本発明では特定の衝撃吸収層が設けられているので、高い衝撃力に対して緩和性を有するため、外部からの大きな衝撃に対してPDPを保護する機能を有するものである。
【0159】
従って、本発明の光学フィルタは、反射防止効果、帯電防止性に優れ、危険な電磁波の放射もほとんどなく、衝撃に対して保護機能が大きいことから、見やすく、ホコリ等が付きにくく、安全なディスプレイということができる。
【実施例】
【0160】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0161】
[実施例1]
(1)衝撃吸収層形成用組成物(紫外線硬化性(メタ)アクリレート組成物)の調製
97.5質量部の2−エチルヘキシルアクリレート及び2.5質量部のアクリル酸を重合率30%(質量)まで重合させた部分重合体・モノマー混合物を作製した。
【0162】
この部分重合体・モノマー混合物100質量部に、光重合開始剤(2,2−ジエトキシアセトフェノン)0.2質量部、多官能モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート)0.1質量部を添加し、充分に撹拌して衝撃吸収層形成用組成物(紫外線硬化性(メタ)アクリレート組成物塗布液)を調製した。
【0163】
(2)衝撃吸収層の形成
得られた衝撃吸収層形成用組成物(塗布液)を、剥離ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)上に塗布し、その上からさらに別の剥離ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)を載置し、この剥離フィルムの上から紫外線ランプで紫外線を合計積算光量3000mJ/cm2になるまで照射した。これにより衝撃吸収層形成用組成物が光重合し、厚さ0.2mmの衝撃吸収層を得た。
【0164】
[実施例2]
実施例1において、(2)衝撃吸収層の形成において、厚さが0.4mmの衝撃吸収層を形成した以外同様にして衝撃吸収層を得た。
【0165】
[実施例3]
実施例1において、(1)衝撃吸収層形成用組成物の調製における部分重合体・モノマー混合物100質量部に対してさらにエトキシジエチレングリコールアクリレート10質量部添加した以外同様にして衝撃吸収層形成用組成物を調製した。
【0166】
他の手順は実施例1と同様にして行い衝撃吸収層を得た。
【0167】
[比較例1]
実施例1において、(2)衝撃吸収層の形成において、厚さが0.005mm(5μm)の衝撃吸収層を形成した以外同様にして衝撃吸収層を得た。
【0168】
[比較例2]
実施例3において、(1)衝撃吸収層形成用組成物の調製におけるエトキシジエチレングリコールアクリレートの添加量を30質量部に変更した以外同様にして衝撃吸収層形成用組成物を調製した。
【0169】
[比較例3]
実施例3において、(2)衝撃吸収層の形成において、厚さが1.2mmの衝撃吸収層を形成した以外同様にして衝撃吸収層を得た。
【0170】
[実施例4〜6]
厚さ125μmのPETフィルムの一方の表面に、シリカ微粒子分散紫外線硬化性樹脂(商品名Z7501;JSR(株)製)を分散させた紫外線硬化性樹脂(アクリロイル基を有する樹脂組成物)からなるハードコート層形成用塗工液(シリカ含有量:51質量%(固形分))を、グラビアコータで塗工、乾燥後、紫外線照射して硬化させ、厚さ6μmのハードコート層を形成した。
【0171】
次いで、このハードコート層の上に、ITO微粒子(平均粒径40nm)を分散させた紫外線硬化性樹脂(ITO含有量:35質量%(固形分))を、前記と同様に塗工、硬化させて厚さ0.1μmの高屈折率層を形成した。
【0172】
さらに、高屈折率層の上にポーラスシリカ(中空シリカ、平均粒径40μm、比表面積 m3/g)を分散させた紫外線硬化性樹脂(シリカ含有量:20.5質量%(固形分))を、前記と同様に塗工、硬化させて厚さ0.1μmの低屈折率層を形成した。上記工程を連続的に実施して、ロール状の積層体1を作製した。
【0173】
表面に銅箔が形成された厚さ188μmのPETフィルムの、銅箔の上にフォトレジストを塗布し、乾燥後、メッシュパターン状のマスクを介してレジスト層を露光し、現像し、次いでエッチング処理を行った。これにより導電層(メッシュパターン金属層:厚さ10μm、線幅10μm、線のピッチ:300μm、開口率:90%)を有するPETフィルム(導電層を有する透明基板;積層体2)を得た。
【0174】
上記積層体1と積層体2とを、実施例1〜3で得られた衝撃吸収層を介在させて加熱圧着して本発明の光学フィルタを作製した。
【0175】
[衝撃吸収層の評価]
(1)前記式(I)の5.87a/tの値の測定
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた衝撃吸収層の積層体を、一方の剥離シートを除去し、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとその上に形成された本発明の衝撃吸収層との積層体を用意する。図9に示すように、コンクリート床上に置かれた厚さ5mmの鉄板(中央に穴を有する)そしてその上の厚さ10cm×10cm×0.3cmのアルミニウム合金板の上に、上記積層体を、衝撃吸収層とアルミニウム合金板が接触するように貼り付ける。アルミニウム合金板の下面の中心に加速度センサ(P5SC;サンエス(株)製)が設置されており、これにより加速度から電圧に変換されたデータをオシロスコープ(NR−350;(株)キーエンス製)を用いてパーソナルコンピュータに読み込むことにより時間変位(衝撃加速度−時間曲線)を得る。アルミニウム合金板上のサンプルへの衝撃力0,5J(Nm)の衝撃印加は、スプリングリングインパクトハンマー(MODEL F22.50(JIS 060068−2−75適合);PTL社製)を0.5Jの設定にして用いることにより行う。
【0176】
上記の衝撃試験により得られた衝撃加速度−時間曲線から、衝撃応力発生から第1のピークまでの時間:T(ms)を得、その際の衝撃吸収層の厚さa(mm)から、上記式(I)の5.87a/tの値が求める。
【0177】
(2)耐衝撃性
サンプルの作製
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた衝撃吸収層の積層体を、一方の剥離シートを除去し、10cm角に裁断する。10cm角の厚さ2.5mmのガラス板上に、10cm角の積層体を、衝撃吸収層がガラスと接触するように重ねて押圧し、3層の積層体を得た。
【0178】
前記図9と同様に、コンクリート床上に置かれた厚さ5mmの鉄板そしてその上の厚さ10cm×10cm×0.3cmのアルミニウム合金板の上に、サンプルを固定できるように紙ヤスリ(#150)を置き、その上に上記サンプルをガラスが下になるように載置し、そのPETフィルム上からスプリングインパクトハンマーを所定の衝撃力で衝撃を加えて、ガラス板の損傷を観察した。
【0179】
所定の衝撃力として、0.20J、0.35J、0.5J、0.70J、1.00Jで行った。各実施例に付き、各衝撃力に対してサンプルを5枚用意し、5枚のサンプル全てのガラスに割れが見られなかった場合の最大の衝撃力を示した。
【0180】
(3)表面鉛筆硬度
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた衝撃吸収層の積層体を、一方の剥離シートを除去し、実施例4〜6に示すようにハードコート層が設けられたPETフィルムの裏面に衝撃吸収層を設け、得られた積層体を5cm×10cm角に裁断する。5cm×10cm角の厚さ2.5mmのガラス板上に、5cm×10cm角の積層体を、衝撃吸収層がガラスと接触するように重ねて押圧し、4層の積層体を得た。
【0181】
得られた4層の積層体について、表面物性試験機(TYPE:14FW;新東科学(株)製)を用いて、JIS−K−5400に準拠する方法で、ハードコート層表面の鉛筆硬度を測定した。尚、ハードコート層を有するPETの鉛筆硬度は2Hであった。
【0182】
上記結果を表1に示す。
【0183】
【表1】

【0184】
上記測定結果から分かるように、本発明の式(I)の関係を満足する実施例1〜3の衝撃吸収層は、優れた耐衝撃性と高い表面鉛筆硬度が両立している。
【0185】
また、実施例4〜6で得られたPDPフィルタは、実際にPDPに貼付しても透明性、電磁波遮蔽性等、従来のものと遜色はなかった。従って、本発明の衝撃吸収層を設けても、PDP用光学フィルタに必要な特性を損なうことがないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】衝撃吸収層の厚さ(a)と第1のピークまでの時間(t)の関係、及び本発明の特定の範囲を示すグラフを図1に示すである。
【図2】本発明の光学フィルタの基本構成の1例の概略断面図である。
【図3】本発明の光学フィルタにおける好ましい態様の1例の概略断面図である。
【図4】上記図3の本発明の光学フィルタにおける、別の態様の1例の概略断面図である。
【図5】上記図3の本発明の光学フィルタにおける、別の態様の1例の概略断面図である。
【図6】本発明の光学フィルタにおける別の基本構成の1例の概略断面図である。
【図7】上記図6の本発明の光学フィルタにおける、別の態様の1例の概略断面図である。
【図8】上記図6の本発明の光学フィルタにおける、別の態様の1例の概略断面図である。
【図9】本発明の衝撃試験を説明するための概略断面図である。
【符号の説明】
【0187】
11、21A、21B、31A、31B、41A、41B、51、61A、61B、71A、71B 透明基板
12、22、32,42、52、62、72 反射防止膜
13、23、33、43A、43B、73 透明粘着剤層
14、24、34、44、54、64、74 導電層
15、25、35、45、55、65、75 衝撃吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01〜1.0mmの厚さを有する衝撃吸収層であって、且つ
該衝撃吸収層が厚さ100μmポリエチレンテレフタレート上に設けられた積層体について、JIS 060068−2−75に準拠するスプリングインパクトハンマーを用いる衝撃力0.5Jの条件下での耐衝撃試験により得られる衝撃加速度−時間曲線における、衝撃吸収層の厚さa(mm)と衝撃応力発生から第1のピークまでの時間:t(ms)との間の関係が、下記式(I):
10≦5.87a/t≦40 (I)
を満たすことを特徴とする衝撃吸収層。
【請求項2】
衝撃吸収層の厚さa(mm)と衝撃応力発生から第1のピークまでの時間:T(ms)との間の関係が、下記の式(II):
15≦5.87a/t≦25 (II)
を満たす請求項1に記載の衝撃吸収層。
【請求項3】
衝撃吸収層が、アクリル樹脂からなる請求項1又は2に記載の衝撃吸収層。
【請求項4】
アクリル樹脂を構成するモノマーとして、少なくともアルキル(メタ)アクリレート(但し、アルキル基の炭素原子数が4〜10個である)とアクリル酸とを含んでいる請求項3に記載の衝撃吸収層。
【請求項5】
アクリル樹脂を構成するモノマーとして、少なくとも2−エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸とを含んでいる請求項3又は4に記載の衝撃吸収層。
【請求項6】
アクリル樹脂を構成するモノマーとして、さらにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを含んでいる請求項3〜5のいずれか1項に記載の衝撃吸収層。
【請求項7】
アクリル樹脂を構成するモノマーとして、さらにアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートを含んでいる請求項3〜6のいずれか1項に記載の衝撃吸収層。
【請求項8】
衝撃吸収層が、アルキル(メタ)アクリレート(但し、アルキル基の炭素原子数が4〜10個である)とアクリル酸とを含むモノマー混合物が部分的に重合された部分重合体・モノマー混合物を硬化させたアクリル樹脂層である請求項1〜7のいずれか1項に記載の衝撃吸収層。
【請求項9】
衝撃吸収層の厚さが、0.1〜0.6mmである請求項1〜8のいずれか1項に記載の衝撃吸収層。
【請求項10】
ディスプレイ用光学フィルタに用いられる衝撃吸収層である請求項1〜9のいずれか1項に記載の衝撃吸収層。
【請求項11】
透明基板、反射防止膜および導電層を含む光学フィルタであって、さらに請求項1〜9のいずれか1項に記載の衝撃吸収層を有することを特徴とする光学フィルタ。
【請求項12】
透明基板の一方の表面側に反射防止膜が、他方の表面側に導電層が設けられてなる光学フィルタであって、
導電層のいずれかの表面に請求項1〜9のいずれか1項に記載の衝撃吸収層が設けられていることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項13】
一方の表面側に反射防止膜が設けられた透明基板と、一方の表面側に導電層が設けられ別の透明基板との、2枚の透明基板が、該反射防止膜が形成されていない表面と該導電層とで接着されてなる光学フィルタであって、
該反射防止膜が形成されていない表面と該導電層との間に透明粘着剤層が設けられ、導電層の透明粘着剤層が設けられてない表面側に請求項1〜9のいずれか1項に記載の衝撃吸収層が設けられていることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項14】
一方の表面側に反射防止膜が設けられた透明基板と、一方の表面側に導電層が設けられた別の透明基板との、2枚の透明基板が、該反射防止膜が形成されていない表面と該導電層とで接着されてなる光学フィルタであって、
該反射防止膜が形成されていない透明基板表面と該導電層との間に請求項1〜9のいずれか1項に記載の衝撃吸収層が設けられていることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項15】
反射防止膜が、近赤外線遮蔽機能を有する請求項11〜14のいずれかに1項に記載の光学フィルタ。
【請求項16】
衝撃吸収層のいずれかの表面に、近赤外線遮蔽層が設けられている請求項11〜15のいずれかに1項に記載の光学フィルタ。
【請求項17】
導電層が、電磁波遮蔽機能を有する請求項11〜16のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項18】
導電層が、メッシュ状の金属層又は金属含有層である請求項11〜17のいずれかに1項に記載の光学フィルタ。
【請求項19】
最外層の導電層又は近赤外線遮蔽層の外側表面に透明粘着剤層が設けられる請求項11〜18のいずれかに1項に記載の光学フィルタ。
【請求項20】
メッシュ状の金属層又は金属含有層の間隙には透明粘着剤層が埋め込まれている請求項18に記載の光学フィルタ。
【請求項21】
透明基板がプラスチックフィルムである請求項11〜20のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項22】
透明粘着剤層上に剥離シートが設けられている請求項13又は15〜21のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項23】
反射防止膜上に、保護層が設けられている請求項11〜22のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項24】
プラズマディスプレイパネル用フィルタである請求項1〜23のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項25】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされていることを特徴とするディスプレイ。
【請求項26】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の光学フィルタが画像表示ガラス板の表面に貼り合わされていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−119943(P2008−119943A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306327(P2006−306327)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】