衝撃吸収部材
【課題】車両内装部材に対する適切な取着固定を図り得るようにした衝撃吸収部材を提供する。
【解決手段】衝撃吸収部材EAの長手方向に沿って延在する第1リブ30の所要位置に、当該第1リブ30の長手方向に沿った変形を許容する変形部40を設ける。この変形部40の変形により第1リブ30の長さを調整することで、衝撃吸収部材EAの全体の長さ調節をなし得る。また、変形部40が形成された長さ調整領域42は、この長さ調整領域42以外の一般領域44と同等の衝撃吸収性能を有している。
【解決手段】衝撃吸収部材EAの長手方向に沿って延在する第1リブ30の所要位置に、当該第1リブ30の長手方向に沿った変形を許容する変形部40を設ける。この変形部40の変形により第1リブ30の長さを調整することで、衝撃吸収部材EAの全体の長さ調節をなし得る。また、変形部40が形成された長さ調整領域42は、この長さ調整領域42以外の一般領域44と同等の衝撃吸収性能を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収部材に関し、更に詳細には、長手方向に沿って延在する第1リブおよび該第1リブと交差する複数の第2リブとからなる長尺のリブ構造体を呈し、車両の乗員室に臨む部位の内側に配設される衝撃吸収部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば図9は、自動車(車両)の車体10の乗員室に臨むルーフサイド部14における運転席の側方部分を、車体構成部材を省略した状態で示した概略斜視図であり、図10は図9のX−X線断面図である。ルーフ部12の左側および右側において車体10の前後方向へ延在するルーフサイド部14には、車体10の骨格構造を形成する車体構成部材の一つであるルーフサイドレール16が延在しており、車体外面を構成するボディーパネル(図示せず)が該ルーフサイドレール16の外側に位置している。また乗員室18には、所要形状に成形された車両内装部材の一つである成形天井部材20が、前述したルーフサイドレール16を被覆した状態でルーフ部12へ装着されている。
【0003】
一方、近年生産される種々自動車では、正面衝突事故の発生時における乗員の傷害軽減は勿論、側面衝突事故の発生時における乗員の傷害軽減を図る種々の対策が施されている。すなわち、当該自動車の側面に他車が衝突する側面衝突事故が発生した場合、この衝突による反動で側方へ投げ出された乗員の頭部Hが前述したルーフサイド部14へちょうど衝突するようになるため、このルーフサイド部14の内側に衝撃吸収機能を備えた衝撃吸収部材EA1を配設し、乗員頭部Hの傷害軽減を図る技術が実用化されている。ここで、前述した衝撃吸収部材EA1としては、例えば硬質ウレタン、アルミパイプ、ハニカムボードおよび合成樹脂製のリブ構造体等が採用されており、製作コスト、軽量化および成形性等を総合すると、図9に例示したような合成樹脂製のリブ構造体が好適に採用されている。なお、ルーフサイド部に衝撃吸収部材を装着した傷害軽減対策に関しては、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
リブ状構造体を呈する衝撃吸収部材EA1は、図9および図11に例示したように、前述したルーフサイドレール16と成形天井部材20との間に画成された空間22へ収容可能な外形形状およびサイズに設定され、例えば全長Lが600mm以上の長尺となっている。この衝撃吸収部材EA1は、ルーフサイド部14における運転席の側方部分のみならず、助手席の側方部分、後部座席の左右側方部分等にも配設され、各々の部分における空間22の内側形状に合わせて外形形状およびサイズが設定されている。そして衝撃吸収部材EAは、具体的には曲げ弾性率が590MPa程度のポリプロピレンからインジェクション成形技術に基づいて成形され、長手方向に沿って延在する第1リブ30および該第1リブ30と交差する複数の第2リブ32とが一体に形成された格子状を呈しており、各リブ30,32の厚みは夫々が1mm程度に設定されている。従って、ルーフサイド部14へ乗員の頭部Hが衝突した際には、成形天井部材20を介してその衝撃力が加わるため、第1リブ30および/または第2リブ32が座屈的に変形して衝撃吸収を図るようになっている。
【0005】
このような衝撃吸収部材EA1は、従前では、前述した車体10のルーフサイドレール16へビス等で直接的に固定させる取付態様が採用されていた。このため自動車の組立ラインにおいては、ルーフサイドレール16への衝撃吸収部材EA1の取付作業およびルーフ部12への成形天井部材20の取付作業が夫々別工程となるため、組立作業工数が増えて作業効率化に支障を来たしていた。そこで近年に至っては、前述した成形天井部材20の裏面20Bへ衝撃吸収部材EA1を予め取着固定するようにして、組立ラインにおいては、成形天井部材20の取付作業を行なうだけで衝撃吸収部材EAの取付けを同時に完了するようにした方法が採用されるようになった。
【0006】
図12は、成形天井部材20の裏面20Bにおける左右両側縁に、予備成形した衝撃吸収部材EA1,EA1を取着固定するために実施される装置の概略構成を例示した説明図である。この装置50は、成形天井部材20をセットするためのセット面52Aを形成した本体52と、このセット面52Aの左右両側において本体52へ回動可能に枢設され、衝撃吸収部材EA1をセットするためのセット面54Aを形成した支持体54,54とから構成されている。すなわち、本体52のセット面52Aへ成形天井部材20をセットすると共に、各支持体54のセット面54Aへ衝撃吸収部材EA1をセットし(図13)、このもとで該支持体54,54を回動させて成形天井部材20の裏面20Bの側縁所要位置へ衝撃吸収部材EA1を当接保持させ(図14)、この状態でホットメルト等の接着剤により衝撃吸収部材EAを成形天井部材20へ取着固定するようになっている。なお図示の装置50では、図15に例示するように、支持体54のセット面54Aに合計4個の位置決め固定ピン56(56A,56B,56C,56D)が突設されており、また衝撃吸収部材EA1には、第1リブ30と第2リブ32とにより画成された矩形部分に形成した壁部に合計4個の嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)が穿設されており、各位置決め固定ピン56(56A,56B,56C,56D)を対応の嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)へ突入嵌合させることで、支持体54に対する当該衝撃吸収部材EA1の位置決めおよびセット固定が図られる。
【0007】
【特許文献1】特開平11−268666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、リブ構造体を呈する前述の合成樹脂製の衝撃吸収部材EA1は、前述したように、全長Lが600mm以上にも及び、かつ第1リブ30および第2リブ32の厚みが1mm程度と薄肉に設定されているため、インジェクション成形技術を利用して一体成形した場合に成形歪みが発生し易く、殊に長手方向へ延在する第1リブ30の伸縮度合が大きくなる。このため、前述した各位置決め固定ピン56(56A,56B,56C,56D)の間隔S1,S2,S3が、各嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)の間隔L1,L2,L3と一致しなくなることが多く、支持体54のセット面54Aへ衝撃吸収部材EA1セットするに際し、該衝撃吸収部材EA1を強制的に変形させて各位置決め固定ピン56(56A,56B,56C,56D)に対応の嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)を嵌合させる必要があった。すなわち衝撃吸収部材EA1は、支持体54へセットした状態では全長Lが適正な寸法となっているものの、あくまで強制的に変形させてあるために内部応力が発現した状態のままとなっている。
【0009】
一方、前述した成形天井部材20は、ウレタン発泡体またはレジンフェルト等からなる芯材24と、この芯材24の表面(乗員室18へ臨む外面)に積層した不織布等の表面材26と、芯材24の裏面(ルーフサイドレール16へ臨む外面)に積層した不織布等の裏面材28とからなる3層構造となっており、これら芯材24、表面材26および裏面材28からなる3層構造の平板状素材を熱プレス等に基づいてルーフ部12の内側形状に成形したものである。従って成形天井部材20は、厚みが3〜5mm程度に設定されて軽量かつ適度の形状保持性を有してはいるものの、芯材24、表面材26および裏面材28の剛性がそれ程に高くないため、外力が加わると撓み変形や捻れ変形による歪みが発生し易くなっている。
【0010】
このため、前述した装置50において成形天井部材20に対して衝撃吸収部材EA1を取着固定した後、一体化した衝撃吸収部材EA1および成形天井部材20を装置50から取り外した際には、当該の衝撃吸収部材EA1が内部応力を解消するべく元の形状へ復帰するようになるため、成形天井部材20に撓み変形および/または捻れ変形による歪みが発生する問題を内在していた。従って、(a)成形天井部材20の表面20Aに皺等が発生して該成形天井部材20の質感低下を招来したり、(b)車体10のルーフ部12へ適切に整合しなくなるために成形天井部材20の円滑な組付作業を行ない得なくなる、等の種々不都合等も発生していた。
【0011】
そこで本発明では、長手方向に沿った長さ調節をなし得るようにして全長を容易に調整可能とすることで、車両内装部材に対する適切な取着固定を図り得るようにした衝撃吸収部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、
長手方向に沿って延在する第1リブおよび該第1リブと交差する複数の第2リブとからなる長尺のリブ構造体を呈し、車両の乗員室に臨む部位の内側に配設される衝撃吸収部材において、
前記第1リブの所要位置に、当該第1リブの長手方向に沿った変形を許容する変形部を設け、
前記変形部の変形により前記第1リブの長さを調整することで、部材全体の長さ調節をなし得るよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る衝撃吸収部材によれば、長手方向へ延在する第1リブの所要位置に変形部を設けたため、変形部の変形に基づく長さ調節によって全長を簡易に適正化することが可能となる利点がある。従って、車両内装部材である成形天井部材の裏面へ取着固定するに際して衝撃吸収部材に内部応力が発現しないため、取着固定後に該成形天井部材が変形するのを防止し得ると共に、車体に対する成形天井部材の組付作業の効率化を図り得る等の有益な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に係る衝撃吸収部材につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお本実施例では、図9及び図11に例示した従来の衝撃吸収部材EA1と同一の外形形状およびサイズの衝撃吸収部材を引用して説明する。また、ルーフサイド部14に延在する車体構成部材の一つであるルーフサイドレール16や、該ルーフサイド部14に臨むようにルーフ部12へ設置される成形天井部材20等、図9〜図15に既出の部材、部位と同一の部材、部位については、同一の符号を付して説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、好適実施例に係る衝撃吸収部材EAの全体形状を示した概略斜視図である。本実施例の衝撃吸収部材EAは、前述したルーフサイドレール16と成形天井部材20との間に画成された空間22へ収容可能な外形形状およびサイズに設定され、例えば全長Lが600mm以上の長尺となっている。そして、ルーフサイド部14に臨むよう設置される車両内装部材である成形天井部材20の裏面20Bへ予め取着固定され、該成形天井部材20の車体10への組付作業と同時に該車体10のルーフサイド部14へ配設されるものである。このような衝撃吸収部材EAは、例えば曲げ弾性率が590MPa程度のポリプロピレンからインジェクション成形技術に基づいて成形され、その長手方向に沿って延在する第1リブ30と、この第1リブ30と交差して該第1リブ30の長手方向に沿って適宜間隔毎に位置する複数の第2リブ32とが一体に形成された格子状を呈している。
【0016】
第1リブ30は、厚さが全体的に均一で1mm程度に設定されており、衝撃吸収部材EAの前端から後端に亘って連続的に延在するものと断続的に延在するものを含め、本実施例の衝撃吸収部材EAでは合計で3本の第1リブ30が略平行に延在形成されている。すなわち、上下方向の中央に位置する第1リブ30は、衝撃吸収部材EAの全長Lに亘って連続的に延在しており、これ以外の上側および下側の各第1リブ30,30は、中間部分で途切れていて断続的に延在している。そして各々の第1リブ30は、ルーフサイドレール16と成形天井部材20とにより画成された空間22が各部位毎に異なっているため、これに合わせて長手方向に沿った部位毎に幅寸法が多少変化している。
【0017】
第2リブ32は、何れも厚さが略同一の1mm程度に設定されており、各第1リブ30が平行に延在している部分において、該第1リブ30の長手方向へ適宜間隔毎に形成されている。そして各々の第2リブ32は、ルーフサイドレール16と成形天井部材20とにより画成された空間22の断面形状が各部位毎に異なっているため、これ合わせて第2リブ32は個々の形状が異なっているものが多い。
【0018】
また本実施例の衝撃吸収部材EAでは、その長手方向の中間部位、前側部位および後端部位に、成形天井部材20に対する取付固定を図るための取付部36が合計4個形成されている。これら取付部36は、図11に例示した従来の衝撃吸収部材EA1と基本的には同一であって、その外面へホットメルト等の接着剤を塗布するようになっており、接着剤を塗布した後に成形天井部材20の裏面20Bへ押し付けることで該成形天井部材20へ接着され、成形天井部材20に対する衝撃吸収部材EAの取着固定が図られるようになっている。
【0019】
また本実施例の衝撃吸収部材EAでは、その長手方向の中間部位、前側部位および後端部位に、第1リブ30と第2リブ32とにより画成された矩形部分に壁部が形成されており、装置50の支持体54におけるセット面54Aに突設された前述の各位置決め固定ピン56に対応した嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)が、これら壁部に夫々穿設されている。各嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)は、図11に例示した従来の衝撃吸収部材EA1に穿設したものと基本的に同一であって、各位置決め固定ピン56(56A,56B,56C,56D)を対応的に突入嵌合させることで、支持体54に対する衝撃吸収部材EAのセットおよび位置決めが図られるようになっている。
【0020】
そして本実施例の衝撃吸収部材EAでは、図1および図2に例示するように、その長手方向へ延在する第1リブ30の所要位置に、当該第1リブ30の長手方向に沿った伸縮変形を許容する伸縮変形部(変形部)40を設けてある。従って、伸縮変形部40の形状変形により第1リブ30の長さを調整することが可能となっており、これにより衝撃吸収部材EAの部材全体の長さ調節をなし得るよう構成され、全長Lを所要の範囲内で自在に伸縮調整し得る。
【0021】
具体的には、前述した4個の嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)の夫々の間となる合計3箇所において、その部位において延在する各第1リブ30の夫々に伸縮変形部40,40,40が設けられており、更に、第1リブ30と略平行に延設され、取付部36,36を連結している連結杆38にも、伸縮変形部40を設けてある。これにより衝撃吸収部材EAは、各嵌合孔34(3A34B34C34D)の間の間隔L1,L2,L3の調整が可能となり、全長Lを自在に調整し得る。なお衝撃吸収部材EAは、伸縮変形部40が新設されたことにより、この伸縮変形部40が形成された部位である長さ調整領域42と、この長さ調整領域42以外の部位である一般領域44とに便宜上区分されている。
【0022】
前述した伸縮変形部40は、図2に例示したように、第1リブ30の延在方向(長手方向)と交差する方向へ開放した略コ字形を呈する折曲断面形状とされ、第1リブ30に対してその長手方向に沿った外力が加わった際に、角部分40Aが折曲的に変形して開放部分の開放間隔が変化することで伸縮変形を発現するようになっている。例えば中央の伸縮変形部40について説明すると、衝撃吸収部材EAを前後端から押圧した場合は、図4に例示するように、各伸縮変形部40が縮閉的に折曲変形して開放部分の開放間隔が小さくなり、これにより隣接する嵌合孔34(34B,34C)の間隔L2が縮小して第1リブ30が縮短変形し、衝撃吸収部材EAの全長Lが小さくなる。また、衝撃吸収部材EAを長手方向へ引張った場合は、図5に例示するように、各伸縮変形部40が拡開的に折曲変形して開放部分の開放間隔が大きく変化し、これにより隣接する嵌合孔34(34B,34C)の間隔L2が拡大して第1リブ30が伸長変形し、衝撃吸収部材EAの全長Lが大きくなる。また図示しないが、これ以外の前側および後側の伸縮変形部40,40でも同様に変形するようになる。
【0023】
なお各伸縮変形部40は、図3に例示したように、その角部分40Aの肉厚が小さく設定されており、適度の引張力または押圧力を加えるだけで容易に拡開的または縮閉的に折曲変形すると共に、折曲変形した際にはその形状のまま保持されて元の形状へ弾性復帰しないよう考慮されている。従って衝撃吸収部材EAは、長さ調節を行なった後には伸縮せずに保持される。
【0024】
また図2に例示したように、各々の第1リブ30に形成した伸縮変形部40の形成幅W1は、この伸縮変形部40に連設される当該の第1リブ30と幅寸法Wと略同一に設定されている。このため、伸縮変形部40は第1リブ30と同程度の剛性を有しているため、この伸縮変形部40が形成された長さ調整領域42は、これ以外の一般領域44と同等の衝撃吸収性能を有している。従って、乗員の頭部Hが長さ調整領域42へ衝突したとしても、一般領域44に衝突した場合と同等の障害軽減効果が図られる。
【0025】
前述したように本実施例の衝撃吸収部材EAは、長手方向へ延在する第1リブ30の所要位置に伸縮変形部40を設けたため、各嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)間の間隔L1,L2,L3が自由に調整可能となり、図示しないインジェクション成形機による成形時の成形歪みがあったとしても、各伸縮変形部40の変形に基づく長さ調節によって簡易に全長Lを適正化することが可能である。これにより、衝撃吸収部材EAを前述した装置50における支持体54のセット面54Aにセットするに際しては、図6に例示したように、該衝撃吸収部材EAを長手方向へ適宜に引張ったりまたは押し縮めながら、各嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)間の間隔L1,L2,L3を調整して該嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)を対応の位置決め固定ピン56(56A,56B,56C,56D)に嵌合させ得るようになり、内部応力を発現させることなく当該衝撃吸収部材EAを支持体54へセット可能となる。
【0026】
従って、図12〜図14に例示した工程に基づいて成形天井部材20の裏面20Bへ取着固定された衝撃吸収部材EAは、内部応力が残留していないため支持体54から取り外した際に殆ど変形しない。すなわち、成形天井部材20の裏面20Bへ衝撃吸収部材を取着固定するに際して該衝撃吸収部材EAに内部応力が発現しないため、装置50の本体52から取り外した取着固定後の成形天井部材20に、撓み変形や捻れ変形等による歪みが発生することはない。これにより、成形天井部材20の表面20Aに皺等が発生して質感低下を招来する不都合が発生することがないと共に、該成形天井部材20が適正形状となっているために車体10のルーフ部12へ適切に整合するようになり、車体10に対する該成形天井部材20の組付作業の効率化を図り得る。
【0027】
なお、前述した伸縮変形部40の形態は、図1および図2に例示した略コ字形略を呈する折曲断面形状に限定されるものではなく、前記第1リブ30の長さ調整に基づいて衝撃吸収部材EAの全体の長さ調節を好適になし得るものであれば、図7および図8等に例示した形態としてもよい。例えば図7は、第1リブ30の長手方向と交差する方向へ開放した半円状の湾曲断面形状とされた伸縮変形部40を例示したもので、第1リブ30に対してその長手方向に沿った外力が加わった際に、湾曲部分(円弧部分)が変形して開放間隔が変化することで伸縮変形を発現するようになっている。また図8は、第1リブ30の長手方向と交差する方向へ開放した略V字形の折曲断面形状とされた伸縮変形部40を例示したもので、第1リブ30に対してその長手方向に沿った外力が加わった際に、折曲部分が変形して開放間隔が変化することで伸縮変形を発現するようになっている。
【0028】
また前述した実施例では、ルーフサイド部において運転席の側方部分に配設される衝撃吸収部材EAを例示したが、本願が対象とする衝撃吸収部材は、ルーフサイド部14において助手席の側方部分に配設されるもの、ルーフサイド部14において後部座席の左右側方部分に配設されるもの等も含まれる。
【0029】
更に本願が対象とする衝撃吸収部材は、前述したルーフサイド部14の内側に配設されるものに限定されず、乗員室18に臨む部位、例えばピラー部の内側に配設されるもの等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る衝撃吸収部材は、長手方向に沿って延在する第1リブおよび該第1リブと交差する複数の第2リブとからなる長尺のリブ構造体を呈し、車両の乗員室に臨む部位の内側に配設されるものであって、乗用車等の各種タイプの自動車に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】好適実施例に係る衝撃吸収部材の全体形状を示した概略斜視図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】伸縮変形部の形態および変形態様を例示した説明図である。
【図4】衝撃吸収部材を長手方向に沿って押し縮めるように力を加えることで、伸縮変形が縮閉的に変形することを示した説明図である。
【図5】衝撃吸収部材を長手方向に沿って引張るように力を加えることで、伸縮変形が拡開的に変形することを示した説明図である。
【図6】装置における支持体のセット面に、長さ調節しながら衝撃吸収部材をセットする状態を示した説明斜視図である。
【図7】別形態の伸縮変形部を例示した説明図である。
【図8】更に別形態の伸縮変形部を例示した説明図である。
【図9】車体のルーフサイド部における運転席の側方部分を、車体構成部材を省略した状態で示した概略斜視図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【図11】従来の衝撃吸収部材の全体形状を示して概略斜視図である。
【図12】成形天井部材の裏面に衝撃吸収部材を取着固定するために使用される装置の概略説明図である。
【図13】装置の本体に成形天井部材をセットすると共に、支持体に衝撃吸収部材をセットする状態を示した説明図である。
【図14】支持体を回動させて衝撃吸収部材を成形天井部材の裏面へ押し付け、ホットメルト等の接着剤により該衝撃吸収部材を取着固定する状態を示した説明図である。
【図15】装置における支持体のセット面に、図11に例示した従来の衝撃吸収部材をセットする状態を示した説明斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
14 ルーフサイド部
20 成形天井部材(車両内装部材)
30 第1リブ
32 第2リブ
40 伸縮変形部(変形部)
42 長さ調整領域
44 一般領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃吸収部材に関し、更に詳細には、長手方向に沿って延在する第1リブおよび該第1リブと交差する複数の第2リブとからなる長尺のリブ構造体を呈し、車両の乗員室に臨む部位の内側に配設される衝撃吸収部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば図9は、自動車(車両)の車体10の乗員室に臨むルーフサイド部14における運転席の側方部分を、車体構成部材を省略した状態で示した概略斜視図であり、図10は図9のX−X線断面図である。ルーフ部12の左側および右側において車体10の前後方向へ延在するルーフサイド部14には、車体10の骨格構造を形成する車体構成部材の一つであるルーフサイドレール16が延在しており、車体外面を構成するボディーパネル(図示せず)が該ルーフサイドレール16の外側に位置している。また乗員室18には、所要形状に成形された車両内装部材の一つである成形天井部材20が、前述したルーフサイドレール16を被覆した状態でルーフ部12へ装着されている。
【0003】
一方、近年生産される種々自動車では、正面衝突事故の発生時における乗員の傷害軽減は勿論、側面衝突事故の発生時における乗員の傷害軽減を図る種々の対策が施されている。すなわち、当該自動車の側面に他車が衝突する側面衝突事故が発生した場合、この衝突による反動で側方へ投げ出された乗員の頭部Hが前述したルーフサイド部14へちょうど衝突するようになるため、このルーフサイド部14の内側に衝撃吸収機能を備えた衝撃吸収部材EA1を配設し、乗員頭部Hの傷害軽減を図る技術が実用化されている。ここで、前述した衝撃吸収部材EA1としては、例えば硬質ウレタン、アルミパイプ、ハニカムボードおよび合成樹脂製のリブ構造体等が採用されており、製作コスト、軽量化および成形性等を総合すると、図9に例示したような合成樹脂製のリブ構造体が好適に採用されている。なお、ルーフサイド部に衝撃吸収部材を装着した傷害軽減対策に関しては、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
リブ状構造体を呈する衝撃吸収部材EA1は、図9および図11に例示したように、前述したルーフサイドレール16と成形天井部材20との間に画成された空間22へ収容可能な外形形状およびサイズに設定され、例えば全長Lが600mm以上の長尺となっている。この衝撃吸収部材EA1は、ルーフサイド部14における運転席の側方部分のみならず、助手席の側方部分、後部座席の左右側方部分等にも配設され、各々の部分における空間22の内側形状に合わせて外形形状およびサイズが設定されている。そして衝撃吸収部材EAは、具体的には曲げ弾性率が590MPa程度のポリプロピレンからインジェクション成形技術に基づいて成形され、長手方向に沿って延在する第1リブ30および該第1リブ30と交差する複数の第2リブ32とが一体に形成された格子状を呈しており、各リブ30,32の厚みは夫々が1mm程度に設定されている。従って、ルーフサイド部14へ乗員の頭部Hが衝突した際には、成形天井部材20を介してその衝撃力が加わるため、第1リブ30および/または第2リブ32が座屈的に変形して衝撃吸収を図るようになっている。
【0005】
このような衝撃吸収部材EA1は、従前では、前述した車体10のルーフサイドレール16へビス等で直接的に固定させる取付態様が採用されていた。このため自動車の組立ラインにおいては、ルーフサイドレール16への衝撃吸収部材EA1の取付作業およびルーフ部12への成形天井部材20の取付作業が夫々別工程となるため、組立作業工数が増えて作業効率化に支障を来たしていた。そこで近年に至っては、前述した成形天井部材20の裏面20Bへ衝撃吸収部材EA1を予め取着固定するようにして、組立ラインにおいては、成形天井部材20の取付作業を行なうだけで衝撃吸収部材EAの取付けを同時に完了するようにした方法が採用されるようになった。
【0006】
図12は、成形天井部材20の裏面20Bにおける左右両側縁に、予備成形した衝撃吸収部材EA1,EA1を取着固定するために実施される装置の概略構成を例示した説明図である。この装置50は、成形天井部材20をセットするためのセット面52Aを形成した本体52と、このセット面52Aの左右両側において本体52へ回動可能に枢設され、衝撃吸収部材EA1をセットするためのセット面54Aを形成した支持体54,54とから構成されている。すなわち、本体52のセット面52Aへ成形天井部材20をセットすると共に、各支持体54のセット面54Aへ衝撃吸収部材EA1をセットし(図13)、このもとで該支持体54,54を回動させて成形天井部材20の裏面20Bの側縁所要位置へ衝撃吸収部材EA1を当接保持させ(図14)、この状態でホットメルト等の接着剤により衝撃吸収部材EAを成形天井部材20へ取着固定するようになっている。なお図示の装置50では、図15に例示するように、支持体54のセット面54Aに合計4個の位置決め固定ピン56(56A,56B,56C,56D)が突設されており、また衝撃吸収部材EA1には、第1リブ30と第2リブ32とにより画成された矩形部分に形成した壁部に合計4個の嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)が穿設されており、各位置決め固定ピン56(56A,56B,56C,56D)を対応の嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)へ突入嵌合させることで、支持体54に対する当該衝撃吸収部材EA1の位置決めおよびセット固定が図られる。
【0007】
【特許文献1】特開平11−268666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、リブ構造体を呈する前述の合成樹脂製の衝撃吸収部材EA1は、前述したように、全長Lが600mm以上にも及び、かつ第1リブ30および第2リブ32の厚みが1mm程度と薄肉に設定されているため、インジェクション成形技術を利用して一体成形した場合に成形歪みが発生し易く、殊に長手方向へ延在する第1リブ30の伸縮度合が大きくなる。このため、前述した各位置決め固定ピン56(56A,56B,56C,56D)の間隔S1,S2,S3が、各嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)の間隔L1,L2,L3と一致しなくなることが多く、支持体54のセット面54Aへ衝撃吸収部材EA1セットするに際し、該衝撃吸収部材EA1を強制的に変形させて各位置決め固定ピン56(56A,56B,56C,56D)に対応の嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)を嵌合させる必要があった。すなわち衝撃吸収部材EA1は、支持体54へセットした状態では全長Lが適正な寸法となっているものの、あくまで強制的に変形させてあるために内部応力が発現した状態のままとなっている。
【0009】
一方、前述した成形天井部材20は、ウレタン発泡体またはレジンフェルト等からなる芯材24と、この芯材24の表面(乗員室18へ臨む外面)に積層した不織布等の表面材26と、芯材24の裏面(ルーフサイドレール16へ臨む外面)に積層した不織布等の裏面材28とからなる3層構造となっており、これら芯材24、表面材26および裏面材28からなる3層構造の平板状素材を熱プレス等に基づいてルーフ部12の内側形状に成形したものである。従って成形天井部材20は、厚みが3〜5mm程度に設定されて軽量かつ適度の形状保持性を有してはいるものの、芯材24、表面材26および裏面材28の剛性がそれ程に高くないため、外力が加わると撓み変形や捻れ変形による歪みが発生し易くなっている。
【0010】
このため、前述した装置50において成形天井部材20に対して衝撃吸収部材EA1を取着固定した後、一体化した衝撃吸収部材EA1および成形天井部材20を装置50から取り外した際には、当該の衝撃吸収部材EA1が内部応力を解消するべく元の形状へ復帰するようになるため、成形天井部材20に撓み変形および/または捻れ変形による歪みが発生する問題を内在していた。従って、(a)成形天井部材20の表面20Aに皺等が発生して該成形天井部材20の質感低下を招来したり、(b)車体10のルーフ部12へ適切に整合しなくなるために成形天井部材20の円滑な組付作業を行ない得なくなる、等の種々不都合等も発生していた。
【0011】
そこで本発明では、長手方向に沿った長さ調節をなし得るようにして全長を容易に調整可能とすることで、車両内装部材に対する適切な取着固定を図り得るようにした衝撃吸収部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、
長手方向に沿って延在する第1リブおよび該第1リブと交差する複数の第2リブとからなる長尺のリブ構造体を呈し、車両の乗員室に臨む部位の内側に配設される衝撃吸収部材において、
前記第1リブの所要位置に、当該第1リブの長手方向に沿った変形を許容する変形部を設け、
前記変形部の変形により前記第1リブの長さを調整することで、部材全体の長さ調節をなし得るよう構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る衝撃吸収部材によれば、長手方向へ延在する第1リブの所要位置に変形部を設けたため、変形部の変形に基づく長さ調節によって全長を簡易に適正化することが可能となる利点がある。従って、車両内装部材である成形天井部材の裏面へ取着固定するに際して衝撃吸収部材に内部応力が発現しないため、取着固定後に該成形天井部材が変形するのを防止し得ると共に、車体に対する成形天井部材の組付作業の効率化を図り得る等の有益な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に係る衝撃吸収部材につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。なお本実施例では、図9及び図11に例示した従来の衝撃吸収部材EA1と同一の外形形状およびサイズの衝撃吸収部材を引用して説明する。また、ルーフサイド部14に延在する車体構成部材の一つであるルーフサイドレール16や、該ルーフサイド部14に臨むようにルーフ部12へ設置される成形天井部材20等、図9〜図15に既出の部材、部位と同一の部材、部位については、同一の符号を付して説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、好適実施例に係る衝撃吸収部材EAの全体形状を示した概略斜視図である。本実施例の衝撃吸収部材EAは、前述したルーフサイドレール16と成形天井部材20との間に画成された空間22へ収容可能な外形形状およびサイズに設定され、例えば全長Lが600mm以上の長尺となっている。そして、ルーフサイド部14に臨むよう設置される車両内装部材である成形天井部材20の裏面20Bへ予め取着固定され、該成形天井部材20の車体10への組付作業と同時に該車体10のルーフサイド部14へ配設されるものである。このような衝撃吸収部材EAは、例えば曲げ弾性率が590MPa程度のポリプロピレンからインジェクション成形技術に基づいて成形され、その長手方向に沿って延在する第1リブ30と、この第1リブ30と交差して該第1リブ30の長手方向に沿って適宜間隔毎に位置する複数の第2リブ32とが一体に形成された格子状を呈している。
【0016】
第1リブ30は、厚さが全体的に均一で1mm程度に設定されており、衝撃吸収部材EAの前端から後端に亘って連続的に延在するものと断続的に延在するものを含め、本実施例の衝撃吸収部材EAでは合計で3本の第1リブ30が略平行に延在形成されている。すなわち、上下方向の中央に位置する第1リブ30は、衝撃吸収部材EAの全長Lに亘って連続的に延在しており、これ以外の上側および下側の各第1リブ30,30は、中間部分で途切れていて断続的に延在している。そして各々の第1リブ30は、ルーフサイドレール16と成形天井部材20とにより画成された空間22が各部位毎に異なっているため、これに合わせて長手方向に沿った部位毎に幅寸法が多少変化している。
【0017】
第2リブ32は、何れも厚さが略同一の1mm程度に設定されており、各第1リブ30が平行に延在している部分において、該第1リブ30の長手方向へ適宜間隔毎に形成されている。そして各々の第2リブ32は、ルーフサイドレール16と成形天井部材20とにより画成された空間22の断面形状が各部位毎に異なっているため、これ合わせて第2リブ32は個々の形状が異なっているものが多い。
【0018】
また本実施例の衝撃吸収部材EAでは、その長手方向の中間部位、前側部位および後端部位に、成形天井部材20に対する取付固定を図るための取付部36が合計4個形成されている。これら取付部36は、図11に例示した従来の衝撃吸収部材EA1と基本的には同一であって、その外面へホットメルト等の接着剤を塗布するようになっており、接着剤を塗布した後に成形天井部材20の裏面20Bへ押し付けることで該成形天井部材20へ接着され、成形天井部材20に対する衝撃吸収部材EAの取着固定が図られるようになっている。
【0019】
また本実施例の衝撃吸収部材EAでは、その長手方向の中間部位、前側部位および後端部位に、第1リブ30と第2リブ32とにより画成された矩形部分に壁部が形成されており、装置50の支持体54におけるセット面54Aに突設された前述の各位置決め固定ピン56に対応した嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)が、これら壁部に夫々穿設されている。各嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)は、図11に例示した従来の衝撃吸収部材EA1に穿設したものと基本的に同一であって、各位置決め固定ピン56(56A,56B,56C,56D)を対応的に突入嵌合させることで、支持体54に対する衝撃吸収部材EAのセットおよび位置決めが図られるようになっている。
【0020】
そして本実施例の衝撃吸収部材EAでは、図1および図2に例示するように、その長手方向へ延在する第1リブ30の所要位置に、当該第1リブ30の長手方向に沿った伸縮変形を許容する伸縮変形部(変形部)40を設けてある。従って、伸縮変形部40の形状変形により第1リブ30の長さを調整することが可能となっており、これにより衝撃吸収部材EAの部材全体の長さ調節をなし得るよう構成され、全長Lを所要の範囲内で自在に伸縮調整し得る。
【0021】
具体的には、前述した4個の嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)の夫々の間となる合計3箇所において、その部位において延在する各第1リブ30の夫々に伸縮変形部40,40,40が設けられており、更に、第1リブ30と略平行に延設され、取付部36,36を連結している連結杆38にも、伸縮変形部40を設けてある。これにより衝撃吸収部材EAは、各嵌合孔34(3A34B34C34D)の間の間隔L1,L2,L3の調整が可能となり、全長Lを自在に調整し得る。なお衝撃吸収部材EAは、伸縮変形部40が新設されたことにより、この伸縮変形部40が形成された部位である長さ調整領域42と、この長さ調整領域42以外の部位である一般領域44とに便宜上区分されている。
【0022】
前述した伸縮変形部40は、図2に例示したように、第1リブ30の延在方向(長手方向)と交差する方向へ開放した略コ字形を呈する折曲断面形状とされ、第1リブ30に対してその長手方向に沿った外力が加わった際に、角部分40Aが折曲的に変形して開放部分の開放間隔が変化することで伸縮変形を発現するようになっている。例えば中央の伸縮変形部40について説明すると、衝撃吸収部材EAを前後端から押圧した場合は、図4に例示するように、各伸縮変形部40が縮閉的に折曲変形して開放部分の開放間隔が小さくなり、これにより隣接する嵌合孔34(34B,34C)の間隔L2が縮小して第1リブ30が縮短変形し、衝撃吸収部材EAの全長Lが小さくなる。また、衝撃吸収部材EAを長手方向へ引張った場合は、図5に例示するように、各伸縮変形部40が拡開的に折曲変形して開放部分の開放間隔が大きく変化し、これにより隣接する嵌合孔34(34B,34C)の間隔L2が拡大して第1リブ30が伸長変形し、衝撃吸収部材EAの全長Lが大きくなる。また図示しないが、これ以外の前側および後側の伸縮変形部40,40でも同様に変形するようになる。
【0023】
なお各伸縮変形部40は、図3に例示したように、その角部分40Aの肉厚が小さく設定されており、適度の引張力または押圧力を加えるだけで容易に拡開的または縮閉的に折曲変形すると共に、折曲変形した際にはその形状のまま保持されて元の形状へ弾性復帰しないよう考慮されている。従って衝撃吸収部材EAは、長さ調節を行なった後には伸縮せずに保持される。
【0024】
また図2に例示したように、各々の第1リブ30に形成した伸縮変形部40の形成幅W1は、この伸縮変形部40に連設される当該の第1リブ30と幅寸法Wと略同一に設定されている。このため、伸縮変形部40は第1リブ30と同程度の剛性を有しているため、この伸縮変形部40が形成された長さ調整領域42は、これ以外の一般領域44と同等の衝撃吸収性能を有している。従って、乗員の頭部Hが長さ調整領域42へ衝突したとしても、一般領域44に衝突した場合と同等の障害軽減効果が図られる。
【0025】
前述したように本実施例の衝撃吸収部材EAは、長手方向へ延在する第1リブ30の所要位置に伸縮変形部40を設けたため、各嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)間の間隔L1,L2,L3が自由に調整可能となり、図示しないインジェクション成形機による成形時の成形歪みがあったとしても、各伸縮変形部40の変形に基づく長さ調節によって簡易に全長Lを適正化することが可能である。これにより、衝撃吸収部材EAを前述した装置50における支持体54のセット面54Aにセットするに際しては、図6に例示したように、該衝撃吸収部材EAを長手方向へ適宜に引張ったりまたは押し縮めながら、各嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)間の間隔L1,L2,L3を調整して該嵌合孔34(34A,34B,34C,34D)を対応の位置決め固定ピン56(56A,56B,56C,56D)に嵌合させ得るようになり、内部応力を発現させることなく当該衝撃吸収部材EAを支持体54へセット可能となる。
【0026】
従って、図12〜図14に例示した工程に基づいて成形天井部材20の裏面20Bへ取着固定された衝撃吸収部材EAは、内部応力が残留していないため支持体54から取り外した際に殆ど変形しない。すなわち、成形天井部材20の裏面20Bへ衝撃吸収部材を取着固定するに際して該衝撃吸収部材EAに内部応力が発現しないため、装置50の本体52から取り外した取着固定後の成形天井部材20に、撓み変形や捻れ変形等による歪みが発生することはない。これにより、成形天井部材20の表面20Aに皺等が発生して質感低下を招来する不都合が発生することがないと共に、該成形天井部材20が適正形状となっているために車体10のルーフ部12へ適切に整合するようになり、車体10に対する該成形天井部材20の組付作業の効率化を図り得る。
【0027】
なお、前述した伸縮変形部40の形態は、図1および図2に例示した略コ字形略を呈する折曲断面形状に限定されるものではなく、前記第1リブ30の長さ調整に基づいて衝撃吸収部材EAの全体の長さ調節を好適になし得るものであれば、図7および図8等に例示した形態としてもよい。例えば図7は、第1リブ30の長手方向と交差する方向へ開放した半円状の湾曲断面形状とされた伸縮変形部40を例示したもので、第1リブ30に対してその長手方向に沿った外力が加わった際に、湾曲部分(円弧部分)が変形して開放間隔が変化することで伸縮変形を発現するようになっている。また図8は、第1リブ30の長手方向と交差する方向へ開放した略V字形の折曲断面形状とされた伸縮変形部40を例示したもので、第1リブ30に対してその長手方向に沿った外力が加わった際に、折曲部分が変形して開放間隔が変化することで伸縮変形を発現するようになっている。
【0028】
また前述した実施例では、ルーフサイド部において運転席の側方部分に配設される衝撃吸収部材EAを例示したが、本願が対象とする衝撃吸収部材は、ルーフサイド部14において助手席の側方部分に配設されるもの、ルーフサイド部14において後部座席の左右側方部分に配設されるもの等も含まれる。
【0029】
更に本願が対象とする衝撃吸収部材は、前述したルーフサイド部14の内側に配設されるものに限定されず、乗員室18に臨む部位、例えばピラー部の内側に配設されるもの等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明に係る衝撃吸収部材は、長手方向に沿って延在する第1リブおよび該第1リブと交差する複数の第2リブとからなる長尺のリブ構造体を呈し、車両の乗員室に臨む部位の内側に配設されるものであって、乗用車等の各種タイプの自動車に実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】好適実施例に係る衝撃吸収部材の全体形状を示した概略斜視図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】伸縮変形部の形態および変形態様を例示した説明図である。
【図4】衝撃吸収部材を長手方向に沿って押し縮めるように力を加えることで、伸縮変形が縮閉的に変形することを示した説明図である。
【図5】衝撃吸収部材を長手方向に沿って引張るように力を加えることで、伸縮変形が拡開的に変形することを示した説明図である。
【図6】装置における支持体のセット面に、長さ調節しながら衝撃吸収部材をセットする状態を示した説明斜視図である。
【図7】別形態の伸縮変形部を例示した説明図である。
【図8】更に別形態の伸縮変形部を例示した説明図である。
【図9】車体のルーフサイド部における運転席の側方部分を、車体構成部材を省略した状態で示した概略斜視図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【図11】従来の衝撃吸収部材の全体形状を示して概略斜視図である。
【図12】成形天井部材の裏面に衝撃吸収部材を取着固定するために使用される装置の概略説明図である。
【図13】装置の本体に成形天井部材をセットすると共に、支持体に衝撃吸収部材をセットする状態を示した説明図である。
【図14】支持体を回動させて衝撃吸収部材を成形天井部材の裏面へ押し付け、ホットメルト等の接着剤により該衝撃吸収部材を取着固定する状態を示した説明図である。
【図15】装置における支持体のセット面に、図11に例示した従来の衝撃吸収部材をセットする状態を示した説明斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
14 ルーフサイド部
20 成形天井部材(車両内装部材)
30 第1リブ
32 第2リブ
40 伸縮変形部(変形部)
42 長さ調整領域
44 一般領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って延在する第1リブ(30)および該第1リブ(30)と交差する複数の第2リブ(32)とからなる長尺のリブ構造体を呈し、車両の乗員室に臨む部位の内側に配設される衝撃吸収部材において、
前記第1リブ(30)の所要位置に、当該第1リブ(30)の長手方向に沿った変形を許容する変形部(40)を設け、
前記変形部(40)の変形により前記第1リブ(30)の長さを調整することで、部材全体の長さ調節をなし得るよう構成した
ことを特徴とする衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記変形部(40)は、前記第1リブ(30)の長手方向と交差する方向へ開放した折曲または湾曲断面形状とされ、前記第1リブ(30)に対してその長手方向に沿った外力が加わった際に、折曲部分または湾曲部分が変形して開放間隔が変化することで変形を発現するようになっている請求項1記載の衝撃吸収部材。
【請求項3】
前記変形部(40)が形成された長さ調整領域(42)は、この長さ調整領域(42)以外の一般領域(44)と同等の衝撃吸収性能を有している請求項1または2記載の衝撃吸収部材。
【請求項4】
前記乗員室のルーフサイド部(14)に臨むよう設置される車両内装部材(20)の裏側へ予め取付固定され、該車両内装部材(20)と同時に該ルーフサイド部(14)の内側へ配設される請求項1〜3の何れかに記載の衝撃吸収部材。
【請求項5】
前記車両内装部材(20)は成形天井部材である請求項4記載の衝撃吸収部材。
【請求項1】
長手方向に沿って延在する第1リブ(30)および該第1リブ(30)と交差する複数の第2リブ(32)とからなる長尺のリブ構造体を呈し、車両の乗員室に臨む部位の内側に配設される衝撃吸収部材において、
前記第1リブ(30)の所要位置に、当該第1リブ(30)の長手方向に沿った変形を許容する変形部(40)を設け、
前記変形部(40)の変形により前記第1リブ(30)の長さを調整することで、部材全体の長さ調節をなし得るよう構成した
ことを特徴とする衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記変形部(40)は、前記第1リブ(30)の長手方向と交差する方向へ開放した折曲または湾曲断面形状とされ、前記第1リブ(30)に対してその長手方向に沿った外力が加わった際に、折曲部分または湾曲部分が変形して開放間隔が変化することで変形を発現するようになっている請求項1記載の衝撃吸収部材。
【請求項3】
前記変形部(40)が形成された長さ調整領域(42)は、この長さ調整領域(42)以外の一般領域(44)と同等の衝撃吸収性能を有している請求項1または2記載の衝撃吸収部材。
【請求項4】
前記乗員室のルーフサイド部(14)に臨むよう設置される車両内装部材(20)の裏側へ予め取付固定され、該車両内装部材(20)と同時に該ルーフサイド部(14)の内側へ配設される請求項1〜3の何れかに記載の衝撃吸収部材。
【請求項5】
前記車両内装部材(20)は成形天井部材である請求項4記載の衝撃吸収部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−1478(P2006−1478A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181788(P2004−181788)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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