説明

表示パネルの製造方法、および、その装置

【課題】基板上に構造物を適切に形成可能な焼成装置の提供。
【解決手段】焼成装置100は、焼成前形状測定部110にて、焼成前の基板1の寸法としてマーク間距離P1〜P4を測定し、焼成後形状測定部150にて、焼成後の基板1の寸法としてマーク間距離P11〜P14を測定する。そして、この測定結果に基づいて、焼成炉130の冷却分割ゾーン134の設定温度を補正する。このため、基板1の製造ロットが切り替わり収縮率が変化したとしても、基板1の焼成前後の寸法変化に基づいて冷却分割ゾーン134の設定温度を補正することで、基板1の収縮の変化量を最小限に抑えることができる。したがって、設計段階で期待した寸法やピッチで構造物を基板1上に形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルの製造方法、および、その装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマディスプレイパネル(PDP)やFEDなどの表示パネルの製造時に、基板上に塗工された構造物の材料を焼成炉内にて焼成することにより、基板上に構造物を形成する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載のものは、焼成炉に設けられた複数の炉室のうち、基板の移動方向における最上流側に配置された炉室内の圧力を、炉外の圧力に対して負圧にした構成が採られている。
【0003】
このような焼成炉を用いた焼成処理は、構造物の形成ごとに施されて1枚の基板に対して複数回実施されることが多い。例えば、PDPにおいては、前面基板では電極形成や誘電体層形成の際に各焼成処理が施され、背面基板ではアドレス電極保護層形成や隔壁形成の際に各焼成処理が施される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−127587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、焼成処理において、加熱工程および冷却工程を経ると、基板が収縮してしまう。この収縮は、焼成炉の設定温度や設定搬送速度が同じであっても、基板の製造ロットごとの収縮率の違いにより大きく変化する場合がある。このような場合、設計段階で期待した寸法やピッチで構造物が形成されないおそれがある。特に、前面基板と背面基板とを重ね合わせて形成する表示パネルにおいては、前面基板の構造物と背面基板の構造物とが設計通りのピッチで形成されなかった場合、所望の状態で重なり合わない不具合が発生する。この重ねたときのずれが大きくなると、表示パネルとして各種特性が悪化してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点などに鑑みて、基板上に構造物を適切に形成可能な表示パネルの製造方法、および、その装置を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、表示パネルの基板を焼成炉内に搬送し、前記基板に対して焼成処理を施す表示パネルの製造方法であって、前記基板の前記焼成炉への投入前と、前記焼成炉からの搬出後とに前記基板の寸法を測定し、この測定結果に基づいて、前記焼成炉の設定温度および前記焼成炉内における前記基板の搬送速度のうち少なくともいずれか一方を補正することを特徴とする表示パネルの製造方法である。
【0008】
請求項5に記載の発明は、表示パネルの基板を焼成炉内に搬送し、前記基板に対して焼成処理を施す表示パネルの製造装置であって、前記基板の前記焼成炉への投入前と、前記焼成炉からの搬出後とに前記基板の寸法を測定する測定手段と、この測定結果に基づいて、前記焼成炉の設定温度および前記焼成炉内における前記基板の搬送速度のうち少なくともいずれか一方を補正する補正手段と、を具備したことを特徴とする表示パネルの製造装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態では、表示パネルとしてのPDPを構成する基板を焼成する構成を例示するが、これに限らず、本発明は液晶表示パネルや、有機ELパネル、FED、電気泳動ディスプレイパネルなどのディスプレイパネルの基板を焼成する場合などにも適用可能である。
【0010】
[PDPの構成]
まず、本実施形態において製造するPDPの概略構成について以下に説明する。
一般に、PDPにおいては、放電空間を介して前面基板と背面基板とが対向配置されている。
前面基板の内面側には、例えば、複数の透明電極、複数のバス電極、複数のブラックストライプ、誘電体層および保護膜がそれぞれ設けられている。
例えば、背面基板の内面側には、この背面基板上に複数のアドレス電極がそれぞれ平行に設けられ、これらアドレス電極を覆うように背面基板の内面側に絶縁体層であるアドレス電極保護層が設けられ、さらにこのアドレス電極保護層上に例えばストライプ形状の隔壁が設けられ、これら隔壁により、複数個の放電セルが区画形成される。なお、隔壁としては、ストライプ形状に限らず、井桁形状などでもよい。
複数個の放電セルの内部には、例えば、それぞれ赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色の蛍光体層が順に形成されている。放電空間の内部、すなわちそれぞれの放電セルの内部は、ネオンガスなどの放電ガスが充填され、外気との間で密閉されている。
そして、PDPは、例えば、複数個の放電セル内で選択的に放電発光させることにより画像を表示する。
【0011】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態について説明する。この第1実施形態では、焼成前後の基板の寸法に基づいて、焼成炉の設定温度を補正する表示パネルの製造装置としての焼成装置を例示する。
図1は、第1実施形態に係る焼成装置の概略構成を示す模式図である。図2は、焼成装置の要部を上側から見たときの概略構成を示す模式図である。図3は、焼成装置の要部の概略構成を示すブロック図である。図4は、温度補正LUTの内容を示す模式図である。
【0012】
〔焼成装置の構成〕
図1および図2に示すように、表示パネルの製造装置としての焼成装置100は、PDPの前面基板に設けられるバス電極や誘電体層の形成時、あるいは背面基板に設けられるアドレス電極保護層や隔壁の形成時などに長方形状の基板1を焼成する。
ここで、図2に示すように、基板1の4隅近傍には、例えば丸形状を有し、各製造工程における位置合わせに用いられるアライメントマーク2がそれぞれ設けられている。このアライメントマーク2は、対向する2辺の距離が同じ距離となるように設けられている。つまり、基板1が収縮していない場合、4個のアライメントマーク2を結ぶと長方形が描かれる。
また、例えば1個のアライメントマーク2の近傍には、基板1ごと異なる文字列で表される識別コード3が設けられている。
さらに、基板1には、バス電極、ブラックストライプ、誘電体層、アドレス電極保護層、隔壁などの図示しない構造物が設けられている。
【0013】
焼成装置100は、測定手段としての焼成前形状測定部110と、ローダ120と、焼成炉130と、アンローダ140と、測定手段としての焼成後形状測定部150と、補正手段としての温度補正部160と、を備えている。
ローダ120は、焼成前形状測定部110を介して搬送される図示しないセッタガラスに載置された基板1を焼成炉130内へ搬送する図示しないローダコンベアを備えている。
アンローダ140は、焼成炉130から排出される基板1を焼成後形状測定部150へ搬送する図示しないアンローダコンベアを備えている。
【0014】
焼成炉130は、基板1を搬送しつつ焼成し、基板1の温度を上昇させる昇温ゾーン131と、この昇温ゾーン131で上昇させた基板1の温度を保持する温度保持ゾーン132と、基板1を冷却する冷却ゾーン133と、基板1を各ゾーン131〜133内で搬送する図示しない焼成炉コンベアと、を備えている。
昇温ゾーン131および温度保持ゾーン132内には、図示しないヒータが設けられている。
冷却ゾーン133は、図2および図3に示すように、第1〜第7の冷却分割ゾーン134を備えている。この第1〜第7の冷却分割ゾーン134には、これらの内部を加熱するヒータ部135と、温度補正部160の指示に基づいてヒータ部135を制御する温度制御部136と、がそれぞれ設けられている。ヒータ部135は、図示しない少なくとも1個のヒータを備えている。なお、冷却分割ゾーンの数は、7個以外としてもよい。
【0015】
焼成前形状測定部110は、基板1が載置される基板載置部111と、基板1のアライメントマーク2を撮影する第1〜第4の焼成前マークカメラ112〜115と、基板1の識別コード3を撮影する焼成前コードカメラ116と、焼成前演算手段117と、基板載置部111に載置された基板1をローダ120へ搬送する図示しない搬送手段と、を備えている。
【0016】
第1〜第4の焼成前マークカメラ112〜115は、例えば基板載置部111の上方に設けられている。具体的には、第1,第2,第3,第4の焼成前マークカメラ112,113,114,115は、基板1における搬送方向の前方右側、前方左側、後方左側、後方右側のアライメントマーク2の上方にそれぞれ設けられている。各焼成前マークカメラ112〜115は、アライメントマーク2の撮影データを焼成前演算手段117へ送信する。
焼成前コードカメラ116は、例えば基板載置部111に載置された基板1の識別コード3の上方に設けられ、識別コード3の撮影データを焼成前演算手段117へ送信する。
【0017】
焼成前演算手段117は、各焼成前マークカメラ112〜115からのアライメントマーク2の撮影データに基づいて、アライメントマーク2の基板載置部111上における座標値を算出する。そして、基板1の外縁に沿って隣り合う2個のアライメントマーク2の距離(以下、マーク間距離と称す)P1〜P4を算出して、そのデータを焼成前測定データとして温度補正部160へ送信する。
また、焼成前演算手段117は、焼成前コードカメラ116からの識別コード3の撮影データに基づいて、識別コード3の内容に関する識別コードデータを温度補正部160へ送信する。
【0018】
焼成後形状測定部150は、基板載置部151と、第1〜第4の焼成後マークカメラ152〜155と、焼成後コードカメラ156と、焼成後演算手段157と、基板載置部151上の基板1を搬出する図示しない搬出手段と、を備えている。
【0019】
第1,第2,第3,第4の焼成後マークカメラ152,153,154,155は、基板1における搬送方向の前方右側、前方左側、後方左側、後方右側のアライメントマーク2の上方にそれぞれ設けられ、アライメントマーク2の撮影データを焼成後演算手段157へ送信する。
ここで、焼成炉130で焼成された基板1が収縮せずにアライメントマーク2の相対的な位置が変化していない場合、第1〜第4の焼成後マークカメラ152〜155の撮影データに基づく座標値と、第1〜第4の焼成後マークカメラ152〜155に対応する位置の第1〜第4の焼成前マークカメラ112〜115の撮影データに基づく座標値と、が同一値となる位置に、第1〜第4の焼成後マークカメラ152〜155が設けられている。
焼成後コードカメラ156は、基板1の識別コード3の上方に設けられ、識別コード3の撮影データを焼成後演算手段157へ送信する。
【0020】
焼成後演算手段157は、各焼成後マークカメラ152〜155からの撮影データに基づいて、マーク間距離P11〜P14に関する焼成後測定データを温度補正部160へ送信する。
また、焼成後演算手段157は、焼成後コードカメラ156からの識別コード3の撮影データに基づいて、識別コードデータを温度補正部160へ送信する。
【0021】
温度補正部160は、図3に示すように、メモリ161と、補正制御部165と、を備えている。
メモリ161には、第1〜第7の冷却分割ゾーン134ごとに設定された、例えば7個の図4に示すような温度補正LUT(Lookup Table)が記憶されている。この温度補正LUTは、熱収縮差と、温度補正値との関係を示す。
補正制御部165は、各種プログラムにより構成され、熱収縮率算出手段166と、温度決定手段167と、を備えている。
【0022】
熱収縮率算出手段166は、焼成前測定データと、焼成後測定データと、これらとともに送信される識別コードデータと、に基づいて、各基板1の焼成前後の熱収縮率(ppm:parts per million)を算出する。
具体的には、熱収縮率算出手段166は、識別コードデータに基づいて、所定の基板に関する焼成前測定データと、焼成後測定データとを特定する。そして、対応する同じ位置における焼成前のマーク間距離から焼成後のマーク間距離を減算した値、つまり、マーク間距離P1,P2,P3,P4からマーク間距離P11,P12,P13,P14を減算した値を算出する。そして、この減算した値の平均値を焼成前後の熱収縮率として算出する。なお、平均値は、単純平均の値でもよいし加重平均の値でもよい。
【0023】
温度決定手段167は、熱収縮率算出手段166における熱収縮率の算出結果に基づいて、各冷却分割ゾーン134の温度補正値を決定する。
具体的には、温度決定手段167は、熱収縮率が上限閾値と下限閾値との間の値の場合、温度補正をしない旨の指示を冷却分割ゾーン134の温度制御部136へ送信する。
また、熱収縮率が上限閾値よりも大きい場合、あるいは、下限閾値よりも小さい場合、この熱収縮率に対応する温度補正値の温度補正データと、温度補正値を設定温度に加算する旨の指示とを温度制御部136へ送信する。
例えば、温度決定手段167は、図4に示すような温度補正LUTに基づいて、熱収縮率が閾値である「−B」と「+B」との間の値の場合、温度補正しない旨の指示を、この温度補正LUTに対応する冷却分割ゾーン134の温度制御部136へ送信する。
また、熱収縮率が「+B」よりも大きい「+A」の場合に温度補正値の「+C℃」に関する温度補正データと加算指示とを温度制御部136へ送信し、「−B」よりも小さい「−A」の場合に温度補正値の「−C℃」に関する温度補正データと加算指示とを温度制御部136へ送信する。
【0024】
〔焼成装置の動作〕
次に、焼成装置100の動作について、図面を参照して説明する。
図5は、焼成温度補正処理を示すフローチャートである。
【0025】
まず、焼成装置100は、基板1が載置されたセッタガラスが焼成前形状測定部110の基板載置部111に載置されると、図5に示すように、焼成前形状測定部110は、焼成前の基板1のマーク間距離P1〜P4を測定するとともに(ステップS1)、識別コード3を撮影して(ステップS2)、焼成前測定データおよび識別コードデータを温度補正部160へ送信する(ステップS3)。
この後、焼成装置100は、焼成炉130により基板1を焼成する(ステップS4)。そして、焼成後形状測定部150は、焼成後の基板1のマーク間距離P11〜P14を測定するとともに(ステップS5)、識別コード3を撮影して(ステップS6)、焼成後測定データおよび識別コードデータを温度補正部160へ送信する(ステップS7)。
【0026】
そして、焼成装置100の温度補正部160は、所定の識別コードで表される基板1の熱収縮率を算出する(ステップS8)。この後、温度補正部160は、この熱収縮率と、温度補正LUTで設定された閾値とを比較して(ステップS9)、温度補正が必要か否かを判断する(ステップS10)。
このステップS10において、熱収縮率が上限閾値と下限閾値との間の値であり、温度補正が不要であると判断した場合、温度制御部136へ温度補正をしない旨の指示を送信して、各冷却分割ゾーン134の設定温度を調整せずに焼成を継続する(ステップS11)。この後、温度補正部160は、焼成工程を終了するか否かを判断し(ステップS12)、終了すると判断した場合に焼成温度補正処理を終了して、継続すると判断した場合にステップS1に戻る。
【0027】
一方、ステップS10において、温度補正部160は、熱収縮率が上限閾値よりも大きい、あるいは、下限閾値よりも小さく、温度補正が必要であると判断した場合、温度補正LUTに基づいて、各冷却分割ゾーン134の温度補正値を決定して(ステップS13)、温度補正データを加算指示とともに温度制御部136へ送信する(ステップS14)。そして、各冷却分割ゾーン134は、温度補正データの温度補正値を設定温度に加算することで設定温度を調整して(ステップS15)、ステップS12の処理を実施する。
【0028】
〔第1実施形態の作用効果〕
以上の第1実施形態の焼成装置100によれば、以下の作用効果が期待できる。
【0029】
(1)焼成装置100は、焼成前形状測定部110にて、焼成前の基板1の寸法としてマーク間距離P1〜P4を測定し、焼成後形状測定部150にて、焼成後の基板1の寸法としてマーク間距離P11〜P14を測定する。そして、温度補正部160は、この測定結果に基づいて、焼成炉130の設定温度を補正する。
このため、基板1の製造ロットが切り替わり収縮率が変化したとしても、基板1の焼成前後の寸法変化に基づいて焼成炉130の設定温度を補正することで、基板1の収縮の変化量を最小限に抑えることができる。したがって、設計段階で期待した寸法やピッチで構造物を基板1上に形成することができる。よって、後工程における位置あわせのアライメントのずれ、つまり前面基板と背面基板の重ね合わせ時のずれを小さくでき、PDPとしての各種特性の悪化を防止できる。
【0030】
(2)焼成装置100は、マーク間距離P1〜P4,P11〜P14に基づいて基板1の熱収縮率を算出し、この熱収縮率が上限閾値よりも大きい場合、または、下限閾値よりも小さい場合に、焼成炉130の設定温度を補正する。
このため、基板1の熱収縮率が上限閾値と下限閾値との間の値であり基板1の収縮が小さい状況の場合、設定温度を補正せずに、上限閾値よりも大きくまたは下限閾値よりも小さく基板1の収縮が大きい状況の場合、設定温度を補正するので、温度補正制御を簡略にかつ効率的に実施できる。
【0031】
(3)各形状測定部110,150は、マーク間距離P1〜P4,P11〜P14として、基板1の4隅近傍に従来設けられているアライメントマーク2間の距離を測定している。
このため、マーク間距離P1〜P4,P11〜P14を測定するためだけに利用されるマークなどの測定対象物を新たに設ける必要がなく、工程の増加を最小限に抑えることができる。
【0032】
(4)温度補正部160は、焼成炉130の冷却ゾーン133のみの設定温度を補正している。
ここで、一般的に、基板1の収縮は、焼成炉130の冷却ゾーン133における温度設定に左右されるところが大きい。
このため、基板1の収縮を最も左右する冷却ゾーン133における設定温度を補正するので、収縮のばらつきを抑制できる。
【0033】
(5)各形状測定部110,150は、基板1の識別コード3を撮影して、識別コードデータを焼成前測定データや焼成後測定データとともに、温度補正部160へ送信する。そして、温度補正部160は、識別コードデータに基づいて所定の基板1の焼成前測定データおよび焼成後測定データを特定して、この基板1の熱収縮率を算出する。
このため、所定の基板1における各測定データを正確に特定することができ、正確に算出された熱収縮率に基づいて、設定温度を適切に補正することができる。
【0034】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、焼成前後の基板の寸法に基づいて、基板の搬送速度を補正する表示パネルの製造装置としての焼成装置を例示する。
図6は、第2実施形態に係る焼成装置の概略構成を示す模式図である。図7は、焼成装置の要部を上側から見たときの概略構成を示す模式図である。図8は、焼成装置の要部の概略構成を示すブロック図である。図9は、搬送速度補正LUTの内容を示す模式図である。
なお、第1実施形態と同一の構成ついては、同一名称および同一符号を付し、説明を適宜省略する。
【0035】
〔焼成装置の構成〕
図6および図7に示すように、表示パネルの製造装置としての焼成装置200は、アライメントマーク2および識別コード3が設けられた基板1を焼成する。
そして、焼成装置200は、焼成前形状測定部110と、ローダ220と、焼成炉230と、アンローダ240と、焼成後形状測定部150と、補正手段としての搬送速度補正部260と、を備えている。
【0036】
ローダ220は、図7および図8に示すように、基板1を搬送するローダコンベア221と、搬送速度補正部260の指示に基づいてローダコンベア221を制御するローダ搬送制御部222と、を備えている。
焼成炉230は、基板1を焼成する図示しないヒータと、基板1を焼成炉230内で搬送する焼成炉コンベア231と、搬送速度補正部260の指示に基づいて焼成炉コンベア231を制御する焼成炉搬送制御部232と、を備えている。
アンローダ240は、基板1を搬送するアンローダコンベア241と、搬送速度補正部260の指示に基づいてアンローダコンベア241を制御するアンローダ搬送制御部242と、を備えている。
【0037】
搬送速度補正部260は、図8に示すように、メモリ261と、補正制御部265と、を備えている。
メモリ261には、例えば1個の図9に示すような搬送速度補正LUTが記憶されている。この搬送速度補正LUTは、熱収縮差と、搬送速度補正値との関係を示す。
補正制御部265は、各種プログラムにより構成され、熱収縮率算出手段166と、搬送速度決定手段267と、を備えている。
【0038】
搬送速度決定手段267は、熱収縮率算出手段166における熱収縮率の算出結果に基づいて、ローダ220、焼成炉230、アンローダ240における搬送速度補正値を決定する。
具体的には、搬送速度決定手段267は、熱収縮率が上限閾値と下限閾値との間の値の場合、搬送速度補正をしない旨の指示を各搬送制御部222,232,242へ送信する。
また、熱収縮率が上限閾値よりも大きい場合、あるいは、下限閾値よりも小さい場合、この熱収縮率に対応する搬送速度補正値の搬送速度補正データと、搬送速度補正値を設定速度に加算する旨の指示とを各搬送制御部222,232,242へ送信する。
例えば、搬送速度決定手段267は、図9に示すような搬送速度補正LUTに基づいて、熱収縮率が閾値である「−B」と「+B」との間の値の場合、搬送速度補正しない旨の指示を各搬送制御部222,232,242へ送信する。
また、熱収縮率が「+B」よりも大きい「+A」の場合に搬送速度補正値の「+Cmm/min」に関する搬送速度補正データと加算指示とを各搬送制御部222,232,242へ送信し、「−B」よりも小さい「−A」の場合に搬送速度補正値の「−Cmm/min」に関する搬送速度補正データと加算指示とを各搬送制御部222,232,242へ送信する。
【0039】
〔焼成装置の動作〕
次に、焼成装置200の動作について、図面を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一の動作については同一の符号を付し説明を省略する。
図10は、焼成温度補正処理を示すフローチャートである。
【0040】
まず、焼成装置200は、図10に示すように、ステップS1〜S6の処理を実施して、焼成後測定データおよび識別コードデータを搬送速度補正部260へ送信する(ステップS21)。そして、焼成装置200の搬送速度補正部260は、ステップS8,S9の処理を実施して、搬送速度補正が必要か否かを判断する(ステップS22)。
このステップS22において、搬送速度補正が不要であると判断した場合、各搬送制御部222,232,242へ搬送速度補正をしない旨の指示を送信して、ローダ220、焼成炉230、アンローダ240の設定搬送速度を調整せずに焼成を継続する(ステップS23)。この後、搬送速度補正部260は、ステップS12の処理を実施する。
【0041】
一方、ステップS22において、搬送速度補正部260は、搬送速度補正が必要であると判断した場合、搬送速度補正LUTに基づいて、焼成炉230における搬送速度補正値を決定して(ステップS24)、搬送速度補正データを加算指示とともに各搬送制御部222,232,242へ送信する(ステップS25)。そして、各搬送制御部222,232,242は、搬送速度補正データの搬送速度補正値を各コンベア221,231,241の設定搬送速度に加算することで、ローダ220、焼成炉230、アンローダ240における設定搬送速度を調整して(ステップS26)、ステップS12の処理を実施する。
【0042】
〔第2実施形態の作用効果〕
以上の第2実施形態の焼成装置200によれば、第1実施形態の(2)、(3)、(5)と同様の作用効果に加えて、以下の作用効果が期待できる。
【0043】
(6)焼成装置200の搬送速度補正部260は、各形状測定部110,150におけるマーク間距離P1〜P4,P11〜P14の測定結果に基づいて、焼成炉230内における基板1の搬送速度を補正する。
ここで、一般的に、基板1の収縮は、焼成炉230における加熱時間、つまり焼成炉230内における搬送速度により左右される。
このため、基板1の製造ロットが切り替わり収縮率が変化したとしても、基板1の焼成前後の寸法変化に基づいて焼成炉230内での搬送速度を補正することで、基板1の収縮の変化量を最小限に抑えることができる。
【0044】
[他の実施形態]
なお、本発明は前述の第1,第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0045】
すなわち、熱収縮率がわずかでも変化した場合に、この変化量に対応する分だけ冷却ゾーン133の設定温度を補正したり、焼成炉230内での搬送速度を補正したりしてもよい。
また、焼成前後における1箇所のマーク間距離のみを測定し、これらを減算した値を熱収縮率として用いてもよい。
さらに、基板1における対角線上に位置するアライメントマーク2間の距離に基づいて、あるいは、各アライメントマーク2の基準位置からのずれ量に基づいて、熱収縮率を算出してもよい。
【0046】
また、マーク間距離P1〜P4,P11〜P14を測定するためだけに利用される測定対象物を基板1上に設けてもよい。
そして、PDPの構造物であるバス電極、ブラックストライプ、誘電体層、アドレス電極保護層、隔壁、放電セルなどを、マーク間距離P1〜P4,P11〜P14を測定するための測定対象物として利用してもよい。
さらには、基板1自体の4隅を検出して、基板1の焼成前後の寸法を測定してもよい。
【0047】
また、1個や2個のマークカメラを設け、このマークカメラを基板1の上方において移動させることにより、4個のアライメントマーク2を1個あるいは2個ずつ順次撮影する構成としてもよい。
さらに、1個のマークカメラを設け、このマークカメラで4個のアライメントマーク2を1個の画像として撮影し、この画像に基づいてマーク間距離P1〜P4,P11〜P14を測定してもよい。
【0048】
そして、昇温ゾーン131、温度保持ゾーン132、冷却ゾーン133のうち少なくともいずれか1個における設定温度を補正してもよい。
さらに、7個の冷却分割ゾーン134にそれぞれ対応する7個の温度補正LUTを設定したが、7個の冷却分割ゾーン134に対して1個の温度補正LUTを設定してもよい。
また、識別コードデータに基づいて所定の基板1の各測定データを特定せずに、例えば温度補正部160や搬送速度補正部260に入力される順序に基づいて、所定の基板1の各測定データを特定してもよい。
そして、セッタガラスに識別コードを設け、この識別コードの識別コードデータに基づいて所定の基板1の各測定データを特定してもよい。
また、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせた構成、つまり基板1の熱収縮率に基づいて、焼成炉の設定温度を補正するとともに、焼成炉内での基板の搬送速度を補正する構成としてもよい。
【0049】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【0050】
[実施形態の作用効果]
上述したように、上記実施形態では、焼成装置100は、焼成前後の基板1の寸法としてマーク間距離P1〜P4,P11〜P14を測定して、この測定結果に基づいて、焼成炉130の設定温度を補正する。
また、他の実施形態では、焼成装置200は、マーク間距離P1〜P4,P11〜P14の測定結果に基づいて、焼成炉230内における基板1の搬送速度を補正する。
このため、基板1の製造ロットが切り替わり収縮率が変化したとしても、基板1の焼成前後の寸法変化に基づいて焼成炉130の設定温度を補正したり、基板1の焼成炉230内における搬送速度を補正したりすることで、基板1の収縮の変化量を最小限に抑えることができる。したがって、設計段階で期待した寸法やピッチで構造物を基板1上に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係る焼成装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】前記第1実施形態における焼成装置の要部を上側から見たときの概略構成を示す模式図である。
【図3】前記第1実施形態における焼成装置の要部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】前記第1実施形態における温度補正LUTの内容を示す模式図である。
【図5】前記第1実施形態における焼成温度補正処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る焼成装置の概略構成を示す模式図である。
【図7】前記第2実施形態における焼成装置の要部を上側から見たときの概略構成を示す模式図である。
【図8】前記第2実施形態における焼成装置の要部の概略構成を示すブロック図である。
【図9】前記第2実施形態における搬送速度補正LUTの内容を示す模式図である。
【図10】前記第2実施形態における焼成温度補正処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1…基板
2…アライメントマーク
100,200…表示パネルの製造装置としての焼成装置
110…測定手段としての焼成前形状測定部
130,230…焼成炉
131…昇温ゾーン
132…温度保持ゾーン
133…冷却ゾーン
150…測定手段としての焼成後形状測定部
160…補正手段としての温度補正部
260…補正手段としての搬送速度補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルの基板を焼成炉内に搬送し、前記基板に対して焼成処理を施す表示パネルの製造方法であって、
前記基板の前記焼成炉への投入前と、前記焼成炉からの搬出後とに前記基板の寸法を測定し、
この測定結果に基づいて、前記焼成炉の設定温度および前記焼成炉内における前記基板の搬送速度のうち少なくともいずれか一方を補正する
ことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表示パネルの製造方法において、
前記投入前の前記基板の寸法と、前記排出後の前記基板の寸法との差分値から前記基板の前記焼成処理における熱収縮量を算出し、
この熱収縮量が所定の範囲よりも大きい場合、前記設定温度および前記搬送速度のうち少なくともいずれか一方を補正する
ことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表示パネルの製造方法において、
前記基板には、前記表示パネルの製造工程において位置合わせに用いるアライメントマークが複数設けられ、
前記アライメントマーク間の距離を測定することにより前記基板の寸法を求める
ことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の表示パネルの製造方法において、
前記焼成炉は、昇温ゾーンと、温度保持ゾーンと、冷却ゾーンと、を備え、
前記設定温度を補正する場合、前記冷却ゾーンの設定温度を補正する
ことを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項5】
表示パネルの基板を焼成炉内に搬送し、前記基板に対して焼成処理を施す表示パネルの製造装置であって、
前記基板の前記焼成炉への投入前と、前記焼成炉からの搬出後とに前記基板の寸法を測定する測定手段と、
この測定結果に基づいて、前記焼成炉の設定温度および前記焼成炉内における前記基板の搬送速度のうち少なくともいずれか一方を補正する補正手段と、
を具備したことを特徴とする表示パネルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−181706(P2009−181706A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17374(P2008−17374)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】