説明

表示モジュール

【課題】画像表示手段の観察側とは反対側に発音振動素子を配置してスピーカを構成した表示モジュールにおいて、スピーカ音量を充分に大きくすることができる表示モジュールを提供する。
【解決手段】フラット型の画像表示手段1を、放音部23を有するハウジング18内に収容し、表示手段1の背面とハウジング18の背板部21との間の放音部23に対応する領域に発音振動素子25を配置するとともに、この振動素子25を挟んで、振動素子25の周縁部に沿った形状に形成された互いに異なる硬度を有する第1と第2のスペーサ29,30を配置し、これらのスペーサのうち、硬度の高いスペーサ29を、振動素子25の一方の面の周縁部とハウジング18の背板部21との間に介在させて前記振動素子25の周縁部を支持し、硬度の低いスペーサ30を、振動素子25の他方の面の周縁部と表示手段1の背面の他方との間に介在させて、振動素子25の発生音を放音部23に向けて放出する導音空間32を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スピーカ機能を備えた表示モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカ機能を備えた表示モジュールとして、表示モジュールを実装する電子機器の小型化及び薄型化をはかるために、液晶表示パネルやEL(エレクトロルミネッセンス)表示パネル等のフラット型の画像表示手段の観察側とは反対側に薄板状の発音振動素子を配置してスピーカを構成したものがある。
【0003】
このスピーカ機能を備えた表示モジュールは、従来、特許文献1に示されているように、フラット型の画像表示手段と、この表示手段を収納するハウジングとを備え、前記ハウジング内に収容された前記表示手段の背面(観察側とは反対側の面)と前記ハウジングとの間に、前記発音振動素子を、その両面に配置したリング状の部材により支持した構成となっている。
【特許文献1】特開2004−336293号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1に示された従来の表示モジュールは、スピーカ音量を充分に大きくすることができない。
【0005】
この発明は、画像表示手段の観察側とは反対側に発音振動素子を配置してスピーカを構成した表示モジュールにおいて、スピーカ音量を充分に大きくすることができる表示モジュールを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の表示モジュールは、
フラット型の画像表示手段と、
前記表示手段の周囲を囲む周壁部と、前記表示手段の観察側の面に対応する開口部と、前記表示手段の前記観察側とは反対側の背面に対向する背板部と、放音部とを有し、内部に前記表示手段を収容したハウジングと、
前記表示手段の背面と前記ハウジングの背板部との間の前記放音部に対応する領域に配置された薄板状の発音振動素子と、
前記振動素子の周縁部に沿った形状に形成され、前記振動素子を挟んで配置された互いに異なる硬度を有する第1と第2のスペーサとを備え、
前記第1と第2のスペーサのうち、硬度の高いスペーサは、前記振動素子の一方の面の周縁部と、前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面のいずれか一方との間に介在されて前記振動素子の周縁部を支持し、
硬度の低いスペーサは、前記振動素子の他方の面の周縁部と、前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面の他方との間に介在され、前記振動素子の他方の面と、前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面の他方との間に、前記硬度の低いスペーサにより囲まれ、前記振動素子の発生音を前記放音部に向けて放出する導音空間を形成していることを特徴とする。
【0007】
すなわち、この発明の表示モジュールは、フラット型の画像表示手段を前記ハウジング内に収容し、前記表示手段の背面と前記ハウジングの背板部との間の前記放音部に対応する領域に、薄板状の発音振動素子を配置するとともに、この振動素子を挟んで、前記振動素子の周縁部に沿った形状に形成された互いに異なる硬度を有する第1と第2のスペーサを配置し、これらのスペーサのうち、硬度の高いスペーサを、前記振動素子の一方の面の周縁部と、前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面のいずれか一方との間に介在させて前記振動素子の周縁部を支持し、硬度の低いスペーサを、前記振動素子の他方の面の周縁部と、前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面の他方との間に介在させることにより、前記振動素子の他方の面と、前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面の他方との間に、前記硬度の低いスペーサにより囲まれ、前記振動素子の発生音を前記ハウジングの放音部に向けて放出する導音空間を形成し、前記振動素子の発生音を前記放音部から外部に放音するスピーカを構成したものである。
【0008】
この表示モジュールにおいて、前記硬度の高いスペーサは、その一方の面を前記振動素子の一方の面の周縁部に固着し、他方の面を前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面の一方に固着するのが好ましい。
【0009】
さらに、前記硬度の高いスペーサは、前記振動素子と前記ハウジングの背板部との間に介在させ、前記硬度の低いスペーサは、前記振動素子と前記表示手段の背面との間に介在させるのが好ましい。
【0010】
前記硬度の高いスペーサは、ヤング率が0.4×10〜0.5×1010Pa(パスカル)の樹脂からなるものが好ましく、さらには、ヤング率が5.0×1010〜60×1010Paの金属からなるものがより好ましい。
【0011】
また、前記硬度の低いスペーサは、ヤング率が1.0×10〜10×10Paの樹脂からなるものが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明の表示モジュールは、放音部を有するハウジング内にフラット型の画像表示手段を収容し、前記表示手段の背面と前記ハウジングの背板部との間の前記放音部に対応する領域に、薄板状の発音振動素子を配置したものであるため、表示モジュール全体の面積を前記表示手段の面積と同程度に小さくするとともに、表示モジュール全体の厚さを薄くすることができ、したがって、この表示モジュールを電子機器に実装することにより、前記電子機器を小型化及び薄型化することができる。
【0013】
そして、この表示モジュールは、前記振動素子を挟んで、前記振動素子の周縁部に沿った形状に形成された互いに異なる硬度を有する第1と第2のスペーサを配置し、これらのスペーサのうち、硬度の高いスペーサを、前記振動素子の一方の面の周縁部と、前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面のいずれか一方との間に介在させて前記振動素子の周縁部を支持しているため、前記振動素子の周縁部を強固に支持し、前記振動素子を、その周縁部の前記硬度の高いスペーサにより支持された部分を振動の節として振動させることができ、したがって、前記振動素子を大きな振幅で振動させて強い音圧の音を発生させることができる。
【0014】
また、この表示モジュールは、前記第1と第2のスペーサのうち、硬度の低いスペーサを、前記振動素子の他方の面の周縁部と、前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面の他方との間に介在させることにより、前記振動素子の他方の面と、前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面の他方との間に、前記硬度の低いスペーサにより囲まれ、前記振動素子の発生音を前記ハウジングの放音部に向けて放出する導音空間を形成しているため、前記導音空間の周壁の遮音性を高くし、前記振動素子の発生音を集中的に前記ハウジングの放音部から外部に放音することができる。
【0015】
したがって、この表示モジュールは、フラット型の画像表示手段の観察側とは反対側に発音振動素子を配置して構成したスピーカの音量を充分に大きくすることができる。
【0016】
この表示モジュールにおいて、前記硬度の高いスペーサは、その一方の面を前記振動素子の一方の面の周縁部に固着し、他方の面を前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面のいずれか一方に固着するのが好ましく、このようにすることにより、前記振動素子の周縁部をより強固に支持し、前記振動素子を大きな振幅で振動させることができる。
【0017】
さらに、前記硬度の高いスペーサは、前記振動素子と前記ハウジングの背板部との間に介在させ、前記硬度の低いスペーサは、前記振動素子と前記表示手段の背面との間に介在させるのが好ましく、このようにすることにより、前記振動素子の周縁部をより強固に支持し、前記振動素子を大きな振幅で振動させるとともに、前記振動素子から前記表示手段に伝わる振動を前記硬度の低いスペーサにより効果的に減衰させ、前記振動素子の振動が前記表示手段に悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0018】
前記硬度の高いスペーサは、ヤング率が0.4×10〜0.5×1010Paの樹脂からなるものが好ましく、このようなヤング率の樹脂からなるスペーサを用いることにより、前記振動素子の周縁部を充分な剛性で支持し、前記振動素子を大きな振幅で振動させて強い音圧の音を発生させることができる。
【0019】
前記硬度の高いスペーサは、ヤング率が5.0×1010〜60×1010Paの金属からなるものがより好ましく、このようなヤング率の金属からなるスペーサを用いることにより、前記振動素子の周縁部をさらに高い剛性で支持し、前記振動素子を大きな振幅で振動させることができる。
【0020】
また、前記硬度の低いスペーサは、ヤング率が1.0×10〜10×10Paの樹脂からなるものが好ましく、このようなヤング率の樹脂からなるスペーサを用いることにより、前記導音空間の周壁の遮音性を充分に高くし、前記振動素子の発生音をさらに集中的に前記ハウジングの放音部から外部に放音してスピーカ音量をさらに大きくすることができ、また、上記のように前記硬度の低いスペーサを、前記振動素子の前記表示手段の背面に対向する面の周縁部と前記表示手段の背面との間に介在させる場合は、前記振動素子から前記表示手段に伝わる振動を充分に減衰させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1及び図2はこの発明の一実施例を示しており、図1は表示モジュールの分解斜視図、図2は前記表示モジュールの拡大断面図である。
【0022】
この表示モジュールは、図1及び図2のように、フラット型の画像表示手段1と、前記表示手段1の周囲を囲む周壁部19と前記表示手段1の観察側の面に対応する開口部20と前記表示手段1の観察側とは反対側の背面に対向する背板部21と放音部23とを有し、内部に前記表示手段1を収容したハウジング18と、前記表示手段1の背面と前記ハウジング18の背板部21との間の前記放音部23に対応する領域に配置された薄板状の発音振動素子25と、前記振動素子25の周縁部に沿った形状に形成され、前記振動素子25を挟んで配置された第1と第2のスペーサ29,30とを備えている。
【0023】
前記表示手段1は、例えば液晶表示パネル2と、この液晶表示パネル2の観察側とは反対側に配置され、前記液晶表示パネル2に向けて照明光を照射する面光源12とからなっている。
【0024】
前記液晶表示パネル2は、枠状のシール材5を介して接合された一対の透明基板3,4の対向する内面それぞれに、互いに対向する領域によりマトリックス状に配列する複数の画素を形成する透明電極(図示せず)を設け、前記一対の基板3,4間のシール材5で囲まれた領域に液晶層6を封入し、前記一対の基板3,4の外面にそれぞれ偏光板7,8を配置したものであり、各画素の電極間への電圧の印加により液晶分子の配向状態を制御して画像を表示する。
【0025】
この液晶表示パネル2は、例えば、観察側とは反対側の基板4の内面に、行方向及び列方向にマトリックス状に配列させて形成された複数の画素電極と、これらの画素電極にそれぞれ接続された複数のTFT(薄膜トランジスタ)と、各行のTFTにゲート信号を供給する複数のゲート配線と、各列のTFTにデータ信号を供給する複数のデータ配線とを設け、観察側の基板3の内面に、前記複数の画素電極の配列領域の全体に対向する一枚膜状の対向電極を設けたアクティブマトリックス表示パネルであり、前記複数のゲート配線とデータ配線は、前記反対側の基板4の一側縁部に形成された張出し部に導出され、前記張出し部に搭載されたゲートドライバとデータドライバに接続されている。
【0026】
また、この液晶表示パネル2は、前記複数の画素にそれぞれ対応させて設けられた赤、緑、青の3色のカラーフィルタを備えており、このカラーフィルタは、観察側基板3の内面に設けられ、その上に前記対向電極が形成されている。
【0027】
さらに、前記一対の基板3,4の内面にはそれぞれ、前記対向電極及び複数の画素電極を覆って配向膜が設けられている。
【0028】
なお、この液晶表示パネル2は、液晶層6の液晶分子をツイスト配向させたTNまたはSTN型、液晶分子を基板3,4面に対して実質的に垂直に配向させた垂直配向型、液晶分子をツイストさせることなく基板3,4面に対して実質的に平行に配向させた水平配向型、液晶分子をベンド配向させるベンド配向型のいずれでもよく、また、強誘電性または反強誘電性液晶表示パネルでもよい。
【0029】
さらに、前記液晶表示パネル2は、一対の基板3,4の内面それぞれに、互いに対向する領域により複数の画素を形成する電極を設けたものに限らず、一方の基板の内面に、複数の画素領域を形成する第1と第2の電極(例えば複数の櫛歯状部を有する櫛状の信号電極と、前記信号電極の各櫛歯状部との間に対応するコモン電極)を設け、これらの電極間に基板面に沿った横電界を印加して液晶分子の配向状態を制御する横電界制御型のものでもよい。
【0030】
また、前記液晶表示パネル2の反対側の基板4の張出し部には、前記ゲートドライバ及びデータドライバを図示しない表示駆動制御回路に接続するためのフレキシブル配線基板9が接続されている。
【0031】
そして、前記液晶表示パネル2は、その周縁部を保持する表示パネル支持枠10に支持されており、前記フレキシブル配線基板9は、前記支持枠10の側面に設けられたスリット部11から支持枠10に引出されている。
【0032】
前記面光源12は、矩形板状の透明部材からなり、その一端面に光を入射させる入射端面14が形成され、2つの板面の一方に前記入射端面14から入射した光の出射面15が形成され、他方の板面に前記入射端面14から入射した光を前記出射面15に向けて反射する反射膜16が設けられた導光板13と、前記導光板13の入射端面14に対向させて配置されたLED(発光ダイオード)等からなる複数の発光素子17とにより構成されている。
【0033】
なお、前記導光板13は、その入射端面14以外の3辺の周縁が前記表示パネル支持枠10の周縁に対応し、前記入射端面14が表示パネル支持枠10の周縁よりも僅かに内側にずれた位置に対応する平面形状を有しており、前記複数の発光素子17は、前記導光板13の入射端面14と前記表示パネル支持枠10の周縁との間に対応する領域内に配置され、前記導光板13に固定された図示しない支持部材に支持されている。
【0034】
そして、この面光源12は、前記液晶表示パネル2の観察側とは反対側に、前記導光板13の出射面15を液晶表示パネル2に対向させ、且つ導光板13の出射面15の周縁部(入射端面14を除く3辺の周縁部)を前記表示パネル支持枠10に当接させて配置されている。
【0035】
なお、この実施例では、面光源12の導光板13の出射面15から出射した光を直接液晶表示パネル2に入射させるようにしているが、前記導光板13の出射面15と液晶表示パネル2との間に、前記導光板13の出射面15から出射した光を、正面方向の出射光強度が高く、且つ均一な強度分布の光にして液晶表示パネル2に入射させるためのプリズムシートや拡散シートを配置してもよい。
【0036】
また、前記ハウジング18は、薄箱状の金属製筐体からなっており、その周壁部19の予め定めた部分に前記振動素子25の発生音をハウジング18外に放音するための放音部23が設けられ、他の部分に配線基板引出し部24が設けられている。
【0037】
このハウジング18の周壁部19は、前記放音部23及び配線基板引出し部24を設けた部分を除く全周にわたって、前記表示手段1の外周面、つまり前記表示パネル支持枠10の外周面及び面光源12の導光板13の入射端面14以外の3辺の外周面に隙間無く接する形状に形成されている。
【0038】
そして、この実施例では、前記ハウジング18の周壁部19の1つの辺部の中央部に、外方に突出す突出壁部19aを形成し、その部分に、前記突出壁部19aにより囲まれ、前記ハウジング18の開口部20側においてハウジング18外に開放する放音部23を形成し、前記周壁部19の他の1つの辺を部分的に切欠して配線基板引出し部24を形成している。
【0039】
また、前記ハウジング18の背板部21には、前記放音部23に対応する中央部に、前記放音部23に対応する部分を含む全長にわたって、その部分を外方に突出させた溝状の凹部が形成されており、その凹部を挟む両側部の内面により表示手段支持面21aが形成され、前記凹部の内底面により振動素子支持面21bが形成されている。
【0040】
前記表示手段支持面21aと振動素子支持面21bとの段差の高さは、前記振動素子25と第1と第2のスペーサ29,30の合計厚さと実質的に同じに設定されており、また、前記振動素子支持面21bには、前記放音部23に近い領域に、前記背板部21の外面に開口する通気孔22が設けられている。
【0041】
そして、前記表示手段1は、前記ハウジング18内に、液晶表示パネル2の観察側の面をハウジング18の開口部20に対向させて収容され、前記フレキシブル配線基板9をハウジング18の配線基板引出し部24からハウジング18外に引出し、面光源12の導光板13の反射膜16を設けた面をハウジング18の背板部21の表示手段支持面21aに支持させた状態で、前記表示パネル支持枠10を前記ハウジング18の周壁部19にビス止め等の手段(図示せず)により固定されている。
【0042】
前記振動素子25は、図では1枚の薄板状に示しているが、円形の振動板の一方の面に、この振動板と略同じ径の円形圧電素子を貼付けた圧電振動素子であり、前記圧電素子の2つの電極にそれぞれ接続された2本の薄膜リード26,27を、前記振動素子25を図示しない振動素子駆動回路に接続するためのフレキシブル配線基板28にハンダ付けされている。
【0043】
この振動素子25は、前記ハウジング18内に収容された表示手段1の背面と前記ハウジング18の背板部21の振動素子支持面21bとの間の前記放音部23に近い領域に、この振動素子25の一方の面をハウジング18の背板部21に対向させ、他方の面を表示手段1の背面に対向させるとともに、振動素子25の中心部を前記振動素子支持面21bに設けられた通気孔22に対応させて配置されており、この振動素子25を接続したフレキシブル配線基板28は、前記ハウジング18の配線基板引出し部24からハウジング18外に引出されている。
【0044】
また、前記振動素子25を挟んで配置された第1と第2のスペーサ29,30のうち、第1のスペーサ29は、第2のスペーサ30よりも高い硬度を有しており、この第1のスペーサ29は、前記振動素子25の周縁部の全周に沿った形状の無端リング状に形成され、硬度の低い第2のスペーサ30は、その一部に、スペーサ30の内側と外側とを連通する欠落部31を設けたCリング状に形成されている。
【0045】
以下、前記第1のスペーサ29を無端リング状スペーサといい、前記第2のスペーサ30をCリング状スペーサという。
【0046】
前記硬度の高い無端リング状スペーサ29は、ヤング率が0.4×10〜0.5×1010Paの樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、アクリル樹脂、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、AS(アクリルニトリル・スチレン)樹脂等、或いは、ヤング率が5.0×1010〜60×1010Paの金属、例えば、アルミニウム、ステンレススチール、冷間圧延鋼、亜鉛メッキ鋼等からなっている。
【0047】
また、前記硬度の低いCリング状スペーサ30は、ヤング率が1.0×10〜10×10Paの樹脂、例えば、ポリウレタン、ブチル樹脂、シリコン樹脂等からなっている。これらの樹脂は、ゴム性樹脂であり、したがって前記硬度の低いスペーサ30は、弾性及び緩衝性を有している。
【0048】
そして、前記硬度の高い無端リング状スペーサ29は、前記振動素子25の一方の面(ハウジング18の背板部21に対向する面)の周縁部と前記ハウジング18の背板部21の振動素子支持面21bとの間に介在され、前記振動素子25の振動の節に対応する部分である周縁部を強固に支持している。
【0049】
この硬度の高い無端リング状スペーサ29は、その一方の面を前記振動素子25の一方の面の周縁部に接着剤または両面粘着テープにより固着され、他方の面を前記ハウジング18の背板部21の振動素子支持面21bに接着剤または両面粘着テープにより固着されており、前記振動素子25の周縁部を、前記ハウジング18の背板部21に対して強固に固定している。
【0050】
また、硬度の低いCリング状スペーサ30は、その欠落部31を前記ハウジング18の放音部23に対向させて配置され、振動素子25の他方の面(表示手段1の背面に対向する面)と表示手段1の背面(面光源12の導光板13の反射膜16を設けた面)との間に介在されて、前記振動素子25の他方の面と、前記表示手段1の背面との間に、前記スペーサ30により囲まれ、前記振動素子25の発生音を前記スペーサ30の欠落部31から前記ハウジング18内に前記放音部23に向けて放出する導音空間32を形成している。
【0051】
この硬度の低いCリング状スペーサ30は、その一方の面を振動素子25の他方の面の周縁部に接着剤または両面粘着テープにより固着されており、このスペーサ29他方の面は表示手段1の背面に密接している。
【0052】
なお、この硬度の低いCリング状スペーサ30は、弾性を有しているため、その両方の面を振動素子25の他方の面の周縁部と表示手段1の背面にそれぞれ密接させて配置してもよく、その場合も、このスペーサ30がみだりにずれ動くことはない。
【0053】
すなわち、この表示モジュールは、フラット型の画像表示手段1を、前記表示手段1の周囲を囲む周壁部19の予め定めた部分に放音部23を設けたハウジング18内に収容し、前記表示手段1の背面と前記ハウジング18の背板部21との間の前記放音部23に対応する領域に、薄板状の発音振動素子25を配置するとともに、この振動素子25を挟んで、互いに異なる硬度を有する無端リング状スペーサ29とCリング状スペーサ30とを配置し、これらのスペーサ29,30のうち、硬度の高い無端リング状スペーサ29を、前記振動素子25の一方の面の周縁部と前記ハウジング18の背板部21との間に介在させて前記振動素子25の周縁部を支持し、硬度の低いCリング状スペーサ30を、その欠落部31を前記ハウジング18の放音部23に対向させて前記振動素子25の他方の面の周縁部と前記表示手段1の背面との間に介在させることにより、前記振動素子25の他方の面と前記表示手段1の背面との間に、前記硬度の低いCリング状スペーサ30により囲まれ、前記振動素子25の発生音を前記Cリング状スペーサ30の欠落部31から前記ハウジング18の放音部23に向けて放出する導音空間32を形成し、前記振動素子25の発生音を前記放音部23から外部に放音するスピーカを構成したものである。
【0054】
この表示モジュールは、放音部23を有するハウジング18内にフラット型の画像表示手段1を収容し、前記表示手段1の背面と前記ハウジング18の背板部21との間の前記放音部23に対応する領域に、薄板状の発音振動素子25を配置したものであるため、表示モジュール全体の面積を前記表示手段1の面積と同程度に小さくするとともに、表示モジュール全体の厚さを薄くすることができ、したがって、この表示モジュールを、デジタルカメラ、携帯電話機、PDA(Personal Data Assistants)、ビデオカメラ等の電子機器に実装することにより、前記電子機器を小型化及び薄型化することができる。
【0055】
そして、この表示モジュールは、前記振動素子25を挟んで、前記振動素子25の周縁部に沿った形状に形成された互いに異なる硬度を有する第1と第2のスペーサ29,30を配置し、これらのスペーサ29,30のうち、硬度の高い無端リング状スペーサ29を、前記振動素子15の一方の面の周縁部と、前記ハウジング18の背板部21との間に介在させて前記振動素子25の周縁部を支持しているため、前記振動素子25の周縁部を強固に支持し、前記振動素子25を、その周縁部の前記硬度の高い無端リング状スペーサ29により支持された部分を振動の節として振動させることができ、したがって、前記振動素子25を大きな振幅で振動させて強い音圧の音を発生させることができる。
【0056】
なお、前記振動素子25の一方の面とハウジング18の背板部21との間の無端リング状スペーサ29で囲まれた空間は、前記ハウジング18の背板部21に設けられた通気孔22においてハウジング18外に連通し、前記振動素子25の他方の面と表示手段1の背面との間のCリング状スペーサ30で囲まれた導音空間32は、前記第2のスペーサ30の欠落部31において前記ハウジング18の放音部23に連通しているため、前記振動素子25を自由振動させることができる。
【0057】
また、この表示モジュールは、前記硬度の低いCリング状スペーサ30を、その欠落部31をハウジング18の放音部23に対向させて前記振動素子25の他方の面の周縁部と表示手段1の背面との間に介在させることにより、前記振動素子25の他方の面と表示手段1の背面の他方との間に、前記硬度の低いCリング状スペーサ30により囲まれ、前記振動素子25の発生音を前記放音部23に向けて放出する導音空間32を形成しているため、前記導音空間32の周壁の遮音性を高くし、前記振動素子25の発生音を集中的に前記ハウジング18の放音部23から外部に放音することができる。
【0058】
したがって、この表示モジュールは、フラット型の画像表示手段1の観察側とは反対側に発音振動素子25を配置して構成されたスピーカの音量を充分に大きくすることができる。
【0059】
なお、前記振動素子25の振動によって前記無端リング状スペーサ29で囲まれた空間側に発生する音は、前記ハウジング18の背板部21に設けられた通気孔22からハウジング18外に放出され、前記電子機器内の前記通気孔22の周辺に配置された部材により吸収される。
【0060】
また、この表示モジュールは、前記硬度の高い無端リング状スペーサ29を、その一方の面を前記振動素子25の一方の面の周縁部に固着し、他方の面を前記ハウジング18の背板部21に固着しているため、振動素子25の周縁部をより強固に支持し、前記振動素子25を大きな振幅で振動させることができる。
【0061】
さらに、この表示モジュールは、前記硬度の高い無端リング状スペーサ29を、前記振動素子25と前記ハウジング18の背板部21との間に介在させているため、振動素子25の周縁部をより強固に支持し、前記振動素子25を大きな振幅で振動させることができる。
【0062】
前記硬度の高い無端リング状スペーサ29は、上述したように、ヤング率が0.4×10〜0.5×1010Paの樹脂からなるものが好ましく、このようなヤング率の樹脂からなるスペーサ29を用いることにより、振動素子25の周縁部を充分な剛性で支持し、前記振動素子25を大きな振幅で振動させて強い音圧の音を発生させることができる。
【0063】
前記硬度の高いスペーサ29は、上述したように、ヤング率が5.0×1010〜60×1010Paの金属からなるものがより好ましく、このようなヤング率の金属からなるスペーサ29を用いることにより、振動素子25の周縁部をさらに高い剛性で支持し、前記振動素子25を大きな振幅で振動させることができる。
【0064】
しかも、この表示モジュールは、前記硬度の低いCリング状スペーサ30を、前記振動素子25と前記表示手段1の背面との間に介在させているため、前記振動素子25から表示手段1に伝わる振動を前記硬度の低いCリング状スペーサ30により効果的に減衰させ、振動素子25の振動が表示手段1に悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0065】
前記硬度の低いCリング状スペーサ30は、上述したように、ヤング率が1.0×10〜10×10Paの樹脂からなるものが好ましく、このようなヤング率の樹脂からなるスペーサ30を用いることにより、前記導音空間32の周壁の遮音性を充分に高くし、前記振動素子25の発生音をさらに集中的に前記ハウジング18の放音部23から外部に放音してスピーカ音量をさらに大きくするとともに、前記振動素子25から表示手段1に伝わる振動を充分に減衰させることができる。
【0066】
なお、上記実施例では、前記第1と第2のスペーサ29,30のうち、硬度の高いスペーサ29を振動素子25とハウジング18の背板部21と間に介在させ、硬度の低いスペーサ30を前記振動素子25と表示手段1の背面との間に介在させているが、それと逆に、硬度の高いスペーサ29を振動素子25と表示手段1の背面の他方との間に介在させて前記振動素子25の周縁部を支持し、硬度の低いスペーサ30を前記振動素子25とハウジング18の背板部21と間に介在させて導音空間32を形成してもよく、このようにしてもスピーカ音量を充分に大きくすることができる。
【0067】
また、上記実施例では、前記ハウジング18の周壁部19に突出壁部19aを形成し、その部分に放音部23を形成しているが、前記放音部23は、例えば前記周壁部19に放音孔を設けて形成してもよい。
【0068】
さらに、上記実施例では、前記ハウジング18の背板部21の前記放音部23に対応する部分に、前記放音部23に対応する部分を含む全長にわたって溝状の凹部を形成しているが、この凹部は、前記放音部23に対応する部分から振動素子25の配置部にわたる領域だけに形成してもよい。
【0069】
また、上記実施例の表示モジュールは、液晶表示パネル2と面光源12とからなる表示手段1を備えたものであるが、表示手段1は、EL表示パネル等の自発光型表示パネルからなるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明の一実施例を示す表示モジュールの分解斜視図。
【図2】前記表示モジュールの拡大断面図。
【符号の説明】
【0071】
1…液晶手段、2…液晶表示パネル、12…面光源、18…ハウジング、19…周壁部、20…開口部、21…背板部、22…通気孔、23…放音部、25…振動素子、29…硬度の高い無端リング状スペーサ、30…硬度の低いCリング状スペーサ、31…欠落部、32…導音空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラット型の画像表示手段と、
前記表示手段の周囲を囲む周壁部と、前記表示手段の観察側の面に対応する開口部と、前記表示手段の前記観察側とは反対側の背面に対向する背板部と、放音部とを有し、内部に前記表示手段を収容したハウジングと、
前記表示手段の背面と前記ハウジングの背板部との間の前記放音部に対応する領域に配置された薄板状の発音振動素子と、
前記振動素子の周縁部に沿った形状に形成され、前記振動素子を挟んで配置された互いに異なる硬度を有する第1と第2のスペーサとを備え、
前記第1と第2のスペーサのうち、硬度の高いスペーサは、前記振動素子の一方の面の周縁部と、前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面のいずれか一方との間に介在されて前記振動素子の周縁部を支持し、
硬度の低いスペーサは、前記振動素子の他方の面の周縁部と、前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面の他方との間に介在され、前記振動素子の他方の面と、前記ハウジングの背板部と前記表示手段の背面の他方との間に、前記硬度の低いスペーサにより囲まれ、前記振動素子の発生音を前記放音部に向けて放出する導音空間を形成していることを特徴とする表示モジュール。
【請求項2】
硬度の高いスペーサは、その一方の面を振動素子の一方の面の周縁部に固着され、他方の面をハウジングの背板部と表示手段の背面の一方に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の表示モジュール。
【請求項3】
硬度の高いスペーサは、振動素子と前記ハウジングの背板部との間に介在され、硬度の低いスペーサは、前記振動素子と前記表示手段の背面との間に介在されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示モジュール。
【請求項4】
硬度の高いスペーサは、ヤング率が0.4×10〜0.5×1010Paの樹脂からなっていることを特徴とする請求項1に記載の表示モジュール。
【請求項5】
硬度の高いスペーサは、ヤング率が5.0×1010〜60×1010Paの金属からなっていることを特徴とする請求項1に記載の表示モジュール。
【請求項6】
硬度の低いスペーサは、ヤング率が1.0×10〜10×10Paの樹脂からなっていることを特徴とする請求項1に記載の表示モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−166008(P2007−166008A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−356383(P2005−356383)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】