表示素子
【課題】バリア部と光透過部とを電子制御により発生させると共に、発生したバリア部と光透過部との形状(数、幅、間隔)や、位置(位相)、濃度等を自由に可変制御できるようにした表示素子を提供する。
【解決手段】表示素子2は、エレクトロクロミック素子を用いて電子制御によりバリア部12と光透過部14とを発生させる調光部18と、バリア部12と光透過部14との発生位置から所定距離Xを隔てて表示画面20が配置され、第1画素32と、第2画素34と、が少なくとも一方向に交互に配列されており、第1画素32が表示する第1画像と第2画素34が表示する第2画像とを表示画面20に出力表示可能な表示部16と、を含む。
【解決手段】表示素子2は、エレクトロクロミック素子を用いて電子制御によりバリア部12と光透過部14とを発生させる調光部18と、バリア部12と光透過部14との発生位置から所定距離Xを隔てて表示画面20が配置され、第1画素32と、第2画素34と、が少なくとも一方向に交互に配列されており、第1画素32が表示する第1画像と第2画素34が表示する第2画像とを表示画面20に出力表示可能な表示部16と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、観察者に特殊なメガネを使用させることなく3次元画像を観察させ得る3次元画像表示装置として、パララックス・バリア(Parallax barrier)方式の画像表示装置が知られている。この方式では、バリアと称されている細かいストライプ状の遮光スリットが画像表示装置の前方、即ち観察者側に配置される。観察者が、バリアを介して観察した場合、観察者の右目に右目用画像が、左目には左目用画像が見えることになり、それによって、3次元画像の観察が可能とされる。
【0003】
図9(A)に2次元画像表示、図9(B)に3次元画像表示の原理図をそれぞれ図示した。液晶表示デバイスを用いて電子的にバリアを発生させて画像を立体視するもので、図9(A)に示すように、2次元画面表示では、液晶表示デバイス102にバリアの発生はなく2次元画像を観察している。又、図9(B)に示すように、3次元画像表示では、液晶表示デバイス102にバリアを発生させて、バリア104を介して、バリアの後方に一定の距離Xだけ離れた立体画像表示面106に表示された立体画像を、観察者Aより観察している。
【0004】
上記のようなストライプを用いた3次元画像表示装置として、図10に示すような、バリア液晶構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このバリア液晶構造は、液晶表示パネル108と、液晶表示デバイス102と、を備えている。又、図11に示すような、位相差板構造も提案されている。この位相差板構造は、液晶表示パネル108と、液晶表示デバイス110と、を備えている。又、液晶表示デバイス110は、位相差板112を備えている。
【0005】
一方、メガネ不要の3次元画像表示方式には、上記のパララックス・バリア方式の他に、レンティキュラ方式、バリフォーカルミラー方式、インテグラル・フォトグラフィー方式、ホログラフィー方式等いくつかの方式があるが、これらの方式の説明は本発明と直接関係ないので省略する。
【0006】
【特許文献1】特開平8−94968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上述べてきた従来のパララックス・バリア方式では、図9(B)に示すように、画素部からバリアまでの距離Xと適視距離Yとは相関関係があり、適視距離Yを短くするためには距離Xを小さくする必要がある。図10に示すバリア液晶構造では、ガラス基板114、偏光板116、及びガラス基板118のそれぞれの厚みの和が距離Xにあたる。ところが、1.適視距離Yを短くするために、ガラス基板114,118を研磨し距離Xを小さくする必要があるが、偏光板116の厚み分、ガラス基板114,118の研磨量が増える(コストUPにつながる)。2.研磨して薄くなったガラス基板114,118に偏光板116を貼るのは難しい。3.偏光板116の分だけ素子全体の厚みが大きくなる。4.液晶表示デバイスを使用するためON状態、OFF状態を維持するのに電圧を印加し続ける必要がある(但し、強誘電性液晶、コレステリック液晶は除く)。5.液晶表示デバイスを使用するため交流回路が必要になる。等の問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]エレクトロクロミック素子を用いて電子制御によりバリア部と光透過部とを発生させる調光部と、前記バリア部の発生位置から所定距離を隔てて表示画面が配置され、第1画素と、第2画素と、が少なくとも一方向に交互に配列されており、前記第1画素が表示する第1画像と前記第2画素が表示する第2画像とを前記表示画面に出力表示可能な表示部と、を含むことを特徴とする表示素子。
【0010】
これによれば、バリア部と光透過部とを電子制御により発生させると共に、発生したバリア部と光透過部との形状(数、幅、間隔)や、位置(位相)、濃度等を自由に可変制御できるようにしたので、2次元画像表示素子としても、又3次元画像表示素子としても使用することができ、両立性のある表示素子を実現することができる。
【0011】
又、従来の液晶を使った機構に比べ、偏光板の数が減少した分、素子全体を薄くすることができるので適視距離の調整がしやすくなる。又、透明基板の研磨量を抑えることができるのでコストを削減できる。更に、その透明基板に偏光板を貼る必要がないので作業が容易になる。又、エレクトロクロミック素子のメモリ性で消費電力を低減できる。
【0012】
[適用例2]上記表示素子であって、前記調光部は、前記エレクトロクロミック素子の光の透過率を変化させることで、前記バリア部と前記光透過部とを発生させることを特徴とする表示素子。
【0013】
これによれば、バリア部と光透過部とを電子制御により発生させることが容易になる。
【0014】
[適用例3]上記表示素子であって、前記調光部は、前記表示部が3次元画像或いは多画面画像を表示する際に、前記バリア部と前記光透過部とを発生させることを特徴とする表示素子。
【0015】
これによれば、両立性のある表示素子を実現することが更に容易になる。
【0016】
[適用例4]上記表示素子であって、前記調光部は、前記表示部が単なる2次元画像を表示する際には、前記バリア部の発生を停止してバリア発生面が前記光透過部となることを特徴とする表示素子。
【0017】
これによれば、両立性のある表示素子を実現することが更に容易になる。
【0018】
[適用例5]上記表示素子であって、前記調光部は、前記バリア部の数、幅、開口比及び間隔を含む形状や発生位置を指示入力に応じて自在に可変制御する制御部を有することを特徴とする表示素子。
【0019】
これによれば、バリア部と光透過部とを電子制御により発生させることが更に容易になる。
【0020】
[適用例6]上記表示素子であって、前記制御部は、前記調光部を直流駆動で制御することを特徴とする表示素子。
【0021】
これによれば、直流駆動制御を可能とすることで低消費電力化が容易になる。
【0022】
[適用例7]上記表示素子であって、前記表示部は、対向する2電極間に電気光学物質層を有した調光型素子であることを特徴とする表示素子。
【0023】
これによれば、表示部の構成が容易になる。
【0024】
[適用例8]上記表示素子であって、前記表示部は、対向する2電極間に電気光学物質層を有した自発光型素子であることを特徴とする表示素子。
【0025】
これによれば、偏光板を使用しない分素子全体の厚みを抑えることが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
実施形態について図面を参照して以下に説明する。
尚、説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る表示素子2を示す断面図である。図1(A)は、バリアが発生していない状態を示している。図1(B)は、バリア部12と光透過部14とが発生している状態を示している。本実施形態に係る表示素子2は、立体視を可能とする3次元画像表示装置として機能することができ、又、通常の2次元画像表示装置としても機能することができる。表示素子2は、3次元画像表示装置として機能する場合には、観察者Aの左目方向(第1の視方向)と右目方向(第2の視方向)とで異なる画像を表示する指向性表示モードで動作する。一方、表示素子2は、2次元画像表示装置として機能する場合には、第1の視方向及び第2の視方向のいずれの方向にも同一の画像を表示する非指向性表示モードで動作する。
【0028】
表示素子2は、表示部としての液晶表示パネル16と、調光部としてのエレクトロクロミック素子(EC素子)18と、後述する制御部(図示省略)と、を含んでいる。又、EC素子18のバリア面上のバリア部12と光透過部14との発生位置から所定距離Xを隔てて液晶表示パネル16の表示画面20が配置されるように、液晶表示パネル16が配置されている。又、観察者A側からEC素子18、液晶表示パネル16の順に配置されている。
【0029】
液晶表示パネル16は、一対の透明基板としてのガラス基板22,24を、所定間隔で対向させ、その間には電気光学物質としてのTN(Twisted Nematic)モードの液晶26が封入されている調光型素子である。ガラス基板22とガラス基板24との間隔は、スペーサ(図示せず)により定められている。又、液晶26に電圧を印加するために、共通電極(図示せず)がガラス基板24上に、表示電極(図示せず)がガラス基板22上に形成されている。又、アクティブマトリクス型液晶表示を行うために、上記ガラス基板22,24の外側には、それぞれ、偏光板28,30が設けられている。液晶表示パネル16は、第1画素32と、第2画素34と、が少なくとも一方向に交互に配列されている。液晶表示パネル16は、第1画素32が表示する第1画像と第2画素34が表示する第2画像とを表示画面20に出力表示可能である。そして、その表示画面20から所定距離Xを隔ててバリア部12と光透過部14とが配置されるように、EC素子18が配置されている。
【0030】
このEC素子18について図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係るEC素子18を示す断面図である。尚、図2のEC素子18には、シール部材36を追加している。EC素子18は、エレクトロクロミック物質を用いて構成されている。又、EC素子18は、一対の透明基板としてのガラス基板38,40を、所定間隔で対向させ、その間にエレクトロクロミック物質層(EC層)42と電解質層44とを挟み込んだ構成である。観察者A側から電解質層44、EC層42の順に構成されている。尚、観察者A側からEC層42、電解質層44の順に構成してもよい。又、EC層42に電圧を印加するために、第1電極46がガラス基板38上に、第2電極48がガラス基板40上に形成されている。又、電解質層44は、シール部材36によって封止されている。EC素子18は、エレクトロクロミック素子を用いて電子制御によりバリア部12と光透過部14と(図1(B)参照)を発生する。EC素子18は、任意の形状(数、幅、開口比)のバリア部12と光透過部14とをEC層42に発生させることができる。尚、電解質層44は、電解質として電解液を用いる以外に固体電解質を用いるものがあるが、バリア部12と光透過部14とを所定部に形成できるのであればどちらでも構成することができる。
【0031】
又、液晶表示パネル16は、2つのガラス基板22,24によって挟まれた液晶26において(図1参照)、第1駆動回路50が出力する駆動信号の変化(共通電極と表示電極との間の電圧の変化)に応じて液晶分子の配向が変化する。ここで、第1駆動回路50は、後述する制御部から与えられた画像信号に基づいて駆動信号FSを生成して液晶表示パネル16に出力し、これに応じて液晶表示パネル16に画像が表示される。
【0032】
図3は、表示素子2が備える制御部52の概略構成を示すブロック図である。この制御部52は、CPU54と、ユーザインタフェース(UI)処理部56と、操作パネル58と、リモコン60と、画像処理部62と、入力インタフェース(I/F)部64と、を備えている。入力I/F部64は、図示しない画像再生装置(DVDプレーヤやコンピュータ等)から入力される画像信号を所定フォーマットの画像データとして画像処理部62に渡す。入力I/F部64には、3次元画像表示用の画像信号(左目用の第1画像と右目用の第2画像との合成画像の画像信号)又は通常表示用(2次元画像表示用)の画像信号が入力される。画像処理部62は、入力した画像データについて、リサイズを行ったり明るさやコントラスト等の調整を行ったりした上で、駆動信号FSを第1駆動回路50に出力する。UI処理部56は、操作パネル58やリモコン60から入力される観察者Aからの指示をCPU54に伝える。そして、CPU54は、観察者Aからの指示に従って、画像処理部62や第2駆動回路66等を制御する。
【0033】
操作パネル58及びリモコン60には、指向性表示モードと非指向性表示モードとを切り替えるための表示モード切り替えスイッチ(図示省略)が設けられている。観察者Aは、この表示モード切り替えスイッチ(図示省略)を操作することで、入力される画像の種類(3次元画像/2次元画像)に応じて表示モードを切り替える(指定する)ことができる。観察者Aが表示モードを切り替えると、指定された表示モードの情報がUI処理部56からCPU54に通知される。そして、CPU54は、指定された表示モードを示す表示モード信号MSを第2駆動回路66に送信する。第2駆動回路66は、受信した表示モード信号MSの示す表示モードに応じて、2つのガラス基板38,40が備える第1及び第2電極46,48に駆動信号を出力する。具体的には、駆動信号が出力された時、EC層42に電圧が供給される。つまり、EC層42に常時電圧を印加しておく必要はない。
【0034】
尚、第1及び第2電極46,48に出力する駆動信号は、定期的に電圧が印加され、リフレッシュされてもよい。又、このEC素子18にバリア部12と光透過部14とを発生させるのは、3次元画像表示の場合であって、2次元画像表示の際には、制御部52はそのバリア部12の発生を停止し、画像表示領域の全域にわたって光を透過する状態にEC素子18を駆動制御する。これによって、本装置は、2次元画像表示装置としても使用することができる。
【0035】
図2に示す透明基板38,40としては、本実施形態ではガラス基板を用いたが、光学的に光透過性であれば特に限定はされないが、好適な例を挙げれば、ホスファゼン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリシクロヘキシルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン・メチルメタクリレート共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・マレイミド共重合体、ポリシクロヘキシルメタクリレート樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート樹脂、透明ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂、エチレンノルボルネン共重合体、及び日本ゼオン社製のZONOR(登録商標)やZEONEX(登録商標)に代表されるシクロオレフィン系ポリマーである。この透明基板は着色されていてもよい。着色はグレー、ブラウン等の中間色が好ましい。
【0036】
又、EC層42としては、例えば、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化鉛、酸化銅、硫化鉄、酸化ビスマス、及び硫化ニオブ等の金属酸化物や金属硫化物の他、ハイドロキノン誘導体、ベルリン酸鉄誘導体、金属フタロシアニン誘導体(Co、Fe、Zn、Ni、Cuの各フタロシアニン誘導体)、プルシアンブルー、プルシアンブルー類似化合物、窒化インジウム、窒化スズ、窒化塩化ジルコニウム、ビオロゲン系有機エレクトロクロミック材料、スチリル系有機エレクトロクロミック材料、及びポリアニリン等が使用できる。又特に、還元着色型EC層として、三酸化タングステン、三酸化モリブデン等が使用できる。
【0037】
又、電解質層44としては、液体性電解質、個体性電解質、ゲル状電解質等を使用することができる。例えば、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、及びフッ化マグネシウム等が使用される。電解質層44は、電子に対して絶縁体であるが、プロトン(H+)及びヒドロキシイオン(OH-)に対しては良導体となる。EC層42の着色・消色反応にはカチオンが必要とされ、H+やLi+をEC層42その他に含有させる必要がある。H+は初めからイオンである必要はなく、電圧が印加された時にH+が生じればよく、従ってH+の代わりに水を含有させてもよい。この水は、非常に少なくて十分であり、しばしば大気中から自然に侵入する水分でも着色・消色する。
【0038】
又、第1電極46及び第2電極48としては、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電性材料により構成されている。このような透明電極は、一般には真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の真空薄膜形成技術で形成される。
【0039】
又、シール部材36としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、変成ポリマー系等の透明材料でUV硬化樹脂が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0040】
上記構成の表示素子2による3次元画像を表示する動作について説明する。液晶表示パネル16を観察者A側から見た場合、図1に示すように、第2電極48は、隣接するガラス基板24上に形成された表示電極の上に跨り、その隣接する表示電極の一部領域をそれぞれ覆い、右目用画像は右目のみで左目用画像は左目のみで観察されるように設けられている。
【0041】
3次元画像を表示する場合には、液晶表示パネル16において、右目用画像及び左目用画像が図面上横方向に交互(或いは同時)に表示される。これは、ガラス基板24上に形成された共通電極とガラス基板22上に形成された表示電極との間に電圧を印加することにより、液晶26の液晶分子を右目用画像領域及び左目用画像領域において配向を制御することにより行うことができる。
【0042】
EC素子18では、第1電極46と第2電極48との間に電圧が印加されることにより、配向方向が変化される。その結果、第2電極48上の領域が液晶表示パネル16から入射してきた光を遮断するストライプ状のシャッターとして機能する。即ち、第2電極48が設けられている領域が、バリア部12を構成することになる。バリア部12は、液晶表示パネル16から入射してきた光を反射或いは吸収して遮断する。
【0043】
従って、液晶表示パネル16で発生した右目用画像が、観察者Aの左目に入射しないように、且つ左目用画像が右目に入射しないように、EC素子18により遮断される。即ち、EC素子18は、右目用画像が左目に、左目用画像が右目に入射することを遮断するために設けられている。
【0044】
例えば、EC素子18において、ガラス基板38の上に第1電極(陰極)46、三酸化モリブデン(MoO3)薄膜(EC層42)、二酸化ケイ素のような絶縁膜(電解質層44)、第2電極(陽極)48を順次積層してなる場合、第1電極(陰極)46と第2電極(陽極)48との間に電圧を印加すると、EC層42の三酸化モリブデン薄膜が濃青色に着色する。その後、第1電極46と第2電極48との間に逆の電圧を印加すると、EC層42の三酸化モリブデン薄膜の濃青色が消えて無色になる。この着色・消色する機構は詳しくは解明されていないが、EC層42の三酸化モリブデン薄膜及び電解質層44の二酸化ケイ素のような絶縁膜中に含まれる少量の水分が前記着色・消色を支配していると理解されている。着色の反応式は下記のように推定されている。
【0045】
【化1】
【0046】
即ち、第1電極46と第2電極48との間の電圧において、第1電極46がマイナスのとき、EC層42で還元反応が起こり三酸化モリブデン薄膜を濃青色に着色する。又、第1電極46がプラスのとき、EC層42で酸化反応が起こり三酸化モリブデン薄膜の濃青色を消して無色にする。
【0047】
EC素子18は、第1電極46と第2電極48との間の印加電圧の絶対値に応じて光の透過率が変化し、バリア部12と光透過部14とを発生させる。その際、バリア部12の表示/非表示の切り替え速度は、通常1秒以内に切り替えることができる。例えば、エレクトロクロミック物質として酸化イリジウムを使用した場合、80ミリ秒程度である。又、EC素子18の制御は、直流駆動で行うことができるため、複雑な駆動回路を必要としない。又、EC素子18には、メモリ機能があり消費電力を低減できる。メモリ機能とは、EC素子18が必要な着色濃度になったところで、電圧印加を停止しても、その時点での着色濃度を保持できる特性である。
【0048】
上記構成のEC素子18の製造方法について図2を参照して説明する。
透明基板として300mm角の厚さ3mmのガラス基板38,40を用い、第1電極46及び第2電極48として膜厚200nmのITO膜、EC層42として膜厚500nmのMoO3膜、電解質層44として膜厚700nmの酸化タンタル膜を成膜した。各層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、及びウェットコーティング法等が挙げられる。周辺をUV硬化樹脂製のシール部材36によりガラス基板38,40を接着しEC素子18を作製する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、バリア部と光透過部とを電子制御により発生させると共に、発生したバリア部と光透過部との形状(数、幅、間隔)や、位置(位相)、濃度等を自由に可変制御できるようにしたので、2次元画像表示素子としても、又3次元画像表示素子としても使用することができ、両立性のある表示素子を実現することができる。
【0050】
又、従来の液晶を使った機構に比べ、偏光板の数が減少した分、素子全体を薄くすることができるので適視距離の調整がしやすくなる。又、透明基板の研磨量を抑えることができるのでコストを削減できる。更に、その透明基板に偏光板を貼る必要がないので作業が容易になる。又、エレクトロクロミック素子のメモリ性及び直流駆動制御を可能とすることで消費電力を低減できる。
【0051】
(第2の実施形態)
図4は、本実施形態に係る表示素子4を示す断面図である。尚、上記第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態に係る表示素子4は、表示部としての液晶表示パネル16と、調光部としてのEC素子68と、を含んでいる。
【0052】
EC素子68は、一対の透明基板としてのガラス基板24,40を、所定間隔で対向させ、その間にエレクトロクロミック物質層(EC層)42と電解質層44とを挟み込んだ構成である。又、EC層42に電圧を印加するために、第1電極46がガラス基板24上に、第2電極48がガラス基板40上に形成されている。
【0053】
これは、第1の実施形態の液晶表示パネル16のガラス基板24とEC素子18のガラス基板38との機能を一本化して、第1電極46を直接ガラス基板24に形成することにより、表示素子2で使用したガラス基板38を本実施形態では不要にした。
【0054】
これによれば、ガラス基板の数が減少した分、素子全体を薄くすることができるので適視距離の調整がしやすくなる。又、ガラス基板の研磨量を抑えることができコストの削減及び作業が容易になる。
【0055】
(第3の実施形態)
図5は、本実施形態に係る表示素子6を示す断面図である。尚、上記第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態に係る表示素子6は、表示部としての液晶表示パネル16と、調光部としてのEC素子70と、バックライト72と、を含んでいる。又、観察者A側から液晶表示パネル16、EC素子70、及びバックライト72の順に配置されている。
【0056】
EC素子70は、一対の透明基板としてのガラス基板38,22を、所定間隔で対向させ、その間にエレクトロクロミック物質層(EC層)42と電解質層44とを挟み込んだ構成となっている。又、EC層42に電圧を印加するために、第1電極46がガラス基板38上に、第2電極48がガラス基板22上に形成されている。EC層42を形成するエレクトロクロミック物質は、反射型材料である。
【0057】
バックライト72は、LED(Light Emitting Diode)等を用いて構成された面状光源であり、主に観察者A方向に向けて光を照射する。観察者Aは、バックライト72からの光のうち、EC素子70及び液晶表示パネル16を透過した光を視認することができる。その際、バックライト72から照射された光のうち、反射型材料で構成されているバリア部12で反射した光は、バックライト72に戻され、再度バックライト72から照射される。これによれば、EC素子70により、反射性バリア発生(3D)と光透過(2D)の切り替えが可能であり、反射性バリア発生(3D)時にはバックライト72からの光を効率よく利用できる。
【0058】
(第4の実施形態)
図6は、本実施形態に係る表示素子8を示す断面図である。尚、上記第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態に係る表示素子8は、表示部としての有機EL(Electro Luminescence)表示パネル74と、調光部としてのEC素子18と、を含んでいる。又、EC素子18のバリア面上のバリア部12と光透過部14との発生位置から所定距離Xを隔てて有機EL表示パネル74の表示画面76が配置されるように、有機EL表示パネル74が配置されている。又、観察者A側からEC素子18、有機EL表示パネル74の順に配置されている。
【0059】
有機EL表示パネル74は、ガラス基板78上に成膜形成されたEL素子部80を内側にして、ガラス基板82が固定されている。EL素子部80は、陽極として機能するITO膜からなる画素電極と、この画素電極からの正孔を注入/輸送する正孔注入輸送層と、有機EL材料からなる発光層と、電子を注入/輸送する電子注入輸送層と、アルミニウムやアルミニウム合金からなる陰極とを備えている(いずれも図示せず)。
【0060】
そして、第1透明電極と第2透明電極はそれぞれ複数本存在し、それらが直交することで各交点にEL素子が形成され、マトリックス表示が可能となるように構成されている。
【0061】
(第5の実施形態)
図7は、本実施形態に係る表示素子10を示す断面図である。尚、上記第4の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態に係る表示素子10は、表示部としての有機EL表示パネル74と、調光部としてのEC素子68と、を含んでいる。
【0062】
EC素子68は、一対の透明基板としてのガラス基板82,40を、所定間隔で対向させ、その間にエレクトロクロミック物質層(EC層)42と電解質層44とを挟み込んだ構成である。又、EC層42に電圧を印加するために、第1電極46がガラス基板82上に、第2電極48がガラス基板40上に形成されている。
【0063】
これは、第4の実施形態の有機EL表示パネル74のガラス基板82とEC素子18のガラス基板38との機能を一本化して、第1電極46を直接ガラス基板82に形成することにより、表示素子8で使用したガラス基板38を本実施形態では不要にした。
【0064】
以上説明したように、バリア部と光透過部とを電子式に発生させると共に、発生したバリア部と光透過部との形状(数、幅、間隔)、位置(位相)、及び濃度等を自由に可変制御できるようにしたので、2次元画像表示素子としても、又3次元画像表示素子としても使用することができ、両立性のある表示素子を実現することができる。又、バリア部と光透過部との形状を電子式に可変できるので、1台のディスプレイで2眼式のみならず多眼式の立体画像表示素子として使用することができる。更に、バリアを平面状ばかりでなく、曲面状にも構成することにより、CRT等の曲面状のディスプレイにも適用できる。
【0065】
尚、液晶表示パネル16に含まれる液晶26のモードは、TNモードに限らず、VA(Vertical Alignment:垂直配向)、IPS(In Plain Switching)、FFS(Fringe Field Switching)、STN(Super Twisted Nematic)等、種々のモードを採用することができる。これらのモードの中では、広視野角の得られるVA、IPS、FFSが好適である。液晶26を広視野角の得られるモードとすれば、正面から左右に傾いた視野において視認される多画面表示画像を高輝度且つ高品位に表示することができる。
【0066】
又、上記各実施形態は、EC素子を液晶表示パネル或いは有機EL表示パネルにそれぞれ適用した例であるが、これに変えて、電気的に応じて表示を行う種々の電気光学装置に適用することができる。例えば、表示部としてPDP(Plasma Display Panel)、蛍光表示管等を用いた平面型ディスプレイが好適であるが、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイやプロジェクション・スクリーンのように曲面状のディスプレイを用い、これにEC素子を重ね合わせた構成とすることもできる。
【0067】
ところで、電子式パララックス・バリア方式の表示素子では、バリア部と光透過部とをEC素子で実現できることから、バリア部と光透過部とを白黒の2値諧調表示のほかに、フルカラーの表示モードでバリア部と光透過部とを発生させることができる。具体的なエレクトロクロミック物質材料としては、マゼンタに着色するエレクトロクロミック物質材料にはテレフタル酸ジメチル(DMT)、シアンに着色するエレクトロクロミック物質材料にはヘプチルビオロゲン(HV)或いは1,4−ジアセチルベンゼン(DAB)、イエローに着色するエレクトロクロミック物質材料には4,4'−ビフェニルジカルボン酸ジエチル(PCE)を用いればよい。これにより、バリア部と光透過部とによる光量損失を軽減させることができる。この場合、左右画像の分離が十分できるだけの濃度(コントラスト)をもつバリア部と光透過部とにしておく。
【0068】
又、EC素子18,68,70は、一対の透明基板を、所定間隔で対向させ、その間に少なくとも第1電極46、EC層42、電解質層44、及び第2電極48からなる4積層構造としたが、第1電極/還元着色型EC層/電解質層(接着層を兼ねてもよい)/可逆的電解酸化層/第2電極のような5積層構造であってもよい。
【0069】
又、本各実施形態では、第2電極48と第1電極46との間に電圧を印加した際に、両者が対向している領域がバリアとして機能するように構成されていたが、逆に、第2電極48間の領域がバリアとして機能するように構成してもよい。最も、本実施形態では、第1電極46と第2電極48との間に電圧を印加しない場合には、EC素子18はバリアとしての機能を有しないため、表示部において2次元画像を表示した場合に、通常の2次元画像の表示装置として用いることもできる。
【0070】
又、本各実施形態では、バリア部12と光透過部14とを発生させることにより、3次元画像表示装置として構成したが、表示画面20とバリア部12(光透過部14)との所定距離Xを調整することにより、多画面画像を表示する装置としての2画面画像表示装置200を構成することができる。
【0071】
図8(A)に通常画像表示(同じ画像を複数の観察者が見るモード)、図8(B)に2画面画像表示の原理図をそれぞれ図示した。図8(A)に示す通常画像表示では、EC素子18にバリアの発生はなく同じ画像を複数の観察者C,Dが観察している。又、図8(B)に示す2画面画像表示では、EC素子18にバリアを発生させて、バリア部12を介して、バリアの後方に一定の距離Xだけ離れた表示画面20に表示された2画面画像を、観察者C,Dよりそれぞれ異なる画像を観察している。
【0072】
尚、この際、図3に示す入力I/F部64には、3次元画像表示用画像信号に替えて2画面画像表示用の画像信号(図8(B)に示す観察者C用の第1画像と観察者D用の第2画像との異なる画像の画像信号)又は通常画像表示用の画像信号が入力される。又、図3に示す操作パネル58及びリモコン60には、指向性表示モードと非指向性表示モードとを切り替えるための表示モード切り替えスイッチ(図示省略)が設けられているが、図8に示す観察者C,Dは、この表示モード切り替えスイッチ(図示省略)を操作することで、入力される画像の種類(多画面画像/通常画像)に応じて表示モードを切り替える(指定する)ことになる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1の実施形態に係る表示素子を示す断面図。
【図2】第1の実施形態に係るEC素子を示す断面図。
【図3】第1の実施形態に係る表示素子が備える制御部の概略構成を示すブロック図。
【図4】第2の実施形態に係る表示素子を示す断面図。
【図5】第3の実施形態に係る表示素子を示す断面図。
【図6】第4の実施形態に係る表示素子を示す断面図。
【図7】第5の実施形態に係る表示素子を示す断面図。
【図8】2画面画像表示装置を示す図。
【図9】2次元画像表示及び3次元画像表示の原理図。
【図10】従来のバリア液晶構造の表示素子を示す断面図。
【図11】従来の位相差板構造の表示素子を示す断面図。
【符号の説明】
【0074】
2,4,6,8,10…表示素子 12…バリア部 14…光透過部 16…液晶表示パネル(表示部) 18…エレクトロクロミック素子(EC素子)(調光部) 20…表示画面 22,24…ガラス基板 26…液晶 28,30…偏光板 32…第1画素 34…第2画素 36…シール部材 38,40…ガラス基板(透明基板) 42…エレクトロクロミック物質層(EC層) 44…電解質層 46…第1電極(電極) 48…第2電極(電極) 50…第1駆動回路 52…制御部 54…CPU 56…ユーザインタフェース(UI)処理部 58…操作パネル 60…リモコン 62…画像処理部 64…入力インタフェース(I/F)部 66…第2駆動回路 68,70…EC素子 72…バックライト 74…有機EL表示パネル 76…表示画面 78…ガラス基板 80…EL素子部 82…ガラス基板 102…液晶表示デバイス 104…バリア 106…立体画像表示面 108…液晶表示パネル 110…液晶表示デバイス 112…位相差板 114…ガラス基板 116…偏光板 118…ガラス基板 200…2画面画像表示装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、観察者に特殊なメガネを使用させることなく3次元画像を観察させ得る3次元画像表示装置として、パララックス・バリア(Parallax barrier)方式の画像表示装置が知られている。この方式では、バリアと称されている細かいストライプ状の遮光スリットが画像表示装置の前方、即ち観察者側に配置される。観察者が、バリアを介して観察した場合、観察者の右目に右目用画像が、左目には左目用画像が見えることになり、それによって、3次元画像の観察が可能とされる。
【0003】
図9(A)に2次元画像表示、図9(B)に3次元画像表示の原理図をそれぞれ図示した。液晶表示デバイスを用いて電子的にバリアを発生させて画像を立体視するもので、図9(A)に示すように、2次元画面表示では、液晶表示デバイス102にバリアの発生はなく2次元画像を観察している。又、図9(B)に示すように、3次元画像表示では、液晶表示デバイス102にバリアを発生させて、バリア104を介して、バリアの後方に一定の距離Xだけ離れた立体画像表示面106に表示された立体画像を、観察者Aより観察している。
【0004】
上記のようなストライプを用いた3次元画像表示装置として、図10に示すような、バリア液晶構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このバリア液晶構造は、液晶表示パネル108と、液晶表示デバイス102と、を備えている。又、図11に示すような、位相差板構造も提案されている。この位相差板構造は、液晶表示パネル108と、液晶表示デバイス110と、を備えている。又、液晶表示デバイス110は、位相差板112を備えている。
【0005】
一方、メガネ不要の3次元画像表示方式には、上記のパララックス・バリア方式の他に、レンティキュラ方式、バリフォーカルミラー方式、インテグラル・フォトグラフィー方式、ホログラフィー方式等いくつかの方式があるが、これらの方式の説明は本発明と直接関係ないので省略する。
【0006】
【特許文献1】特開平8−94968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上述べてきた従来のパララックス・バリア方式では、図9(B)に示すように、画素部からバリアまでの距離Xと適視距離Yとは相関関係があり、適視距離Yを短くするためには距離Xを小さくする必要がある。図10に示すバリア液晶構造では、ガラス基板114、偏光板116、及びガラス基板118のそれぞれの厚みの和が距離Xにあたる。ところが、1.適視距離Yを短くするために、ガラス基板114,118を研磨し距離Xを小さくする必要があるが、偏光板116の厚み分、ガラス基板114,118の研磨量が増える(コストUPにつながる)。2.研磨して薄くなったガラス基板114,118に偏光板116を貼るのは難しい。3.偏光板116の分だけ素子全体の厚みが大きくなる。4.液晶表示デバイスを使用するためON状態、OFF状態を維持するのに電圧を印加し続ける必要がある(但し、強誘電性液晶、コレステリック液晶は除く)。5.液晶表示デバイスを使用するため交流回路が必要になる。等の問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]エレクトロクロミック素子を用いて電子制御によりバリア部と光透過部とを発生させる調光部と、前記バリア部の発生位置から所定距離を隔てて表示画面が配置され、第1画素と、第2画素と、が少なくとも一方向に交互に配列されており、前記第1画素が表示する第1画像と前記第2画素が表示する第2画像とを前記表示画面に出力表示可能な表示部と、を含むことを特徴とする表示素子。
【0010】
これによれば、バリア部と光透過部とを電子制御により発生させると共に、発生したバリア部と光透過部との形状(数、幅、間隔)や、位置(位相)、濃度等を自由に可変制御できるようにしたので、2次元画像表示素子としても、又3次元画像表示素子としても使用することができ、両立性のある表示素子を実現することができる。
【0011】
又、従来の液晶を使った機構に比べ、偏光板の数が減少した分、素子全体を薄くすることができるので適視距離の調整がしやすくなる。又、透明基板の研磨量を抑えることができるのでコストを削減できる。更に、その透明基板に偏光板を貼る必要がないので作業が容易になる。又、エレクトロクロミック素子のメモリ性で消費電力を低減できる。
【0012】
[適用例2]上記表示素子であって、前記調光部は、前記エレクトロクロミック素子の光の透過率を変化させることで、前記バリア部と前記光透過部とを発生させることを特徴とする表示素子。
【0013】
これによれば、バリア部と光透過部とを電子制御により発生させることが容易になる。
【0014】
[適用例3]上記表示素子であって、前記調光部は、前記表示部が3次元画像或いは多画面画像を表示する際に、前記バリア部と前記光透過部とを発生させることを特徴とする表示素子。
【0015】
これによれば、両立性のある表示素子を実現することが更に容易になる。
【0016】
[適用例4]上記表示素子であって、前記調光部は、前記表示部が単なる2次元画像を表示する際には、前記バリア部の発生を停止してバリア発生面が前記光透過部となることを特徴とする表示素子。
【0017】
これによれば、両立性のある表示素子を実現することが更に容易になる。
【0018】
[適用例5]上記表示素子であって、前記調光部は、前記バリア部の数、幅、開口比及び間隔を含む形状や発生位置を指示入力に応じて自在に可変制御する制御部を有することを特徴とする表示素子。
【0019】
これによれば、バリア部と光透過部とを電子制御により発生させることが更に容易になる。
【0020】
[適用例6]上記表示素子であって、前記制御部は、前記調光部を直流駆動で制御することを特徴とする表示素子。
【0021】
これによれば、直流駆動制御を可能とすることで低消費電力化が容易になる。
【0022】
[適用例7]上記表示素子であって、前記表示部は、対向する2電極間に電気光学物質層を有した調光型素子であることを特徴とする表示素子。
【0023】
これによれば、表示部の構成が容易になる。
【0024】
[適用例8]上記表示素子であって、前記表示部は、対向する2電極間に電気光学物質層を有した自発光型素子であることを特徴とする表示素子。
【0025】
これによれば、偏光板を使用しない分素子全体の厚みを抑えることが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
実施形態について図面を参照して以下に説明する。
尚、説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る表示素子2を示す断面図である。図1(A)は、バリアが発生していない状態を示している。図1(B)は、バリア部12と光透過部14とが発生している状態を示している。本実施形態に係る表示素子2は、立体視を可能とする3次元画像表示装置として機能することができ、又、通常の2次元画像表示装置としても機能することができる。表示素子2は、3次元画像表示装置として機能する場合には、観察者Aの左目方向(第1の視方向)と右目方向(第2の視方向)とで異なる画像を表示する指向性表示モードで動作する。一方、表示素子2は、2次元画像表示装置として機能する場合には、第1の視方向及び第2の視方向のいずれの方向にも同一の画像を表示する非指向性表示モードで動作する。
【0028】
表示素子2は、表示部としての液晶表示パネル16と、調光部としてのエレクトロクロミック素子(EC素子)18と、後述する制御部(図示省略)と、を含んでいる。又、EC素子18のバリア面上のバリア部12と光透過部14との発生位置から所定距離Xを隔てて液晶表示パネル16の表示画面20が配置されるように、液晶表示パネル16が配置されている。又、観察者A側からEC素子18、液晶表示パネル16の順に配置されている。
【0029】
液晶表示パネル16は、一対の透明基板としてのガラス基板22,24を、所定間隔で対向させ、その間には電気光学物質としてのTN(Twisted Nematic)モードの液晶26が封入されている調光型素子である。ガラス基板22とガラス基板24との間隔は、スペーサ(図示せず)により定められている。又、液晶26に電圧を印加するために、共通電極(図示せず)がガラス基板24上に、表示電極(図示せず)がガラス基板22上に形成されている。又、アクティブマトリクス型液晶表示を行うために、上記ガラス基板22,24の外側には、それぞれ、偏光板28,30が設けられている。液晶表示パネル16は、第1画素32と、第2画素34と、が少なくとも一方向に交互に配列されている。液晶表示パネル16は、第1画素32が表示する第1画像と第2画素34が表示する第2画像とを表示画面20に出力表示可能である。そして、その表示画面20から所定距離Xを隔ててバリア部12と光透過部14とが配置されるように、EC素子18が配置されている。
【0030】
このEC素子18について図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態に係るEC素子18を示す断面図である。尚、図2のEC素子18には、シール部材36を追加している。EC素子18は、エレクトロクロミック物質を用いて構成されている。又、EC素子18は、一対の透明基板としてのガラス基板38,40を、所定間隔で対向させ、その間にエレクトロクロミック物質層(EC層)42と電解質層44とを挟み込んだ構成である。観察者A側から電解質層44、EC層42の順に構成されている。尚、観察者A側からEC層42、電解質層44の順に構成してもよい。又、EC層42に電圧を印加するために、第1電極46がガラス基板38上に、第2電極48がガラス基板40上に形成されている。又、電解質層44は、シール部材36によって封止されている。EC素子18は、エレクトロクロミック素子を用いて電子制御によりバリア部12と光透過部14と(図1(B)参照)を発生する。EC素子18は、任意の形状(数、幅、開口比)のバリア部12と光透過部14とをEC層42に発生させることができる。尚、電解質層44は、電解質として電解液を用いる以外に固体電解質を用いるものがあるが、バリア部12と光透過部14とを所定部に形成できるのであればどちらでも構成することができる。
【0031】
又、液晶表示パネル16は、2つのガラス基板22,24によって挟まれた液晶26において(図1参照)、第1駆動回路50が出力する駆動信号の変化(共通電極と表示電極との間の電圧の変化)に応じて液晶分子の配向が変化する。ここで、第1駆動回路50は、後述する制御部から与えられた画像信号に基づいて駆動信号FSを生成して液晶表示パネル16に出力し、これに応じて液晶表示パネル16に画像が表示される。
【0032】
図3は、表示素子2が備える制御部52の概略構成を示すブロック図である。この制御部52は、CPU54と、ユーザインタフェース(UI)処理部56と、操作パネル58と、リモコン60と、画像処理部62と、入力インタフェース(I/F)部64と、を備えている。入力I/F部64は、図示しない画像再生装置(DVDプレーヤやコンピュータ等)から入力される画像信号を所定フォーマットの画像データとして画像処理部62に渡す。入力I/F部64には、3次元画像表示用の画像信号(左目用の第1画像と右目用の第2画像との合成画像の画像信号)又は通常表示用(2次元画像表示用)の画像信号が入力される。画像処理部62は、入力した画像データについて、リサイズを行ったり明るさやコントラスト等の調整を行ったりした上で、駆動信号FSを第1駆動回路50に出力する。UI処理部56は、操作パネル58やリモコン60から入力される観察者Aからの指示をCPU54に伝える。そして、CPU54は、観察者Aからの指示に従って、画像処理部62や第2駆動回路66等を制御する。
【0033】
操作パネル58及びリモコン60には、指向性表示モードと非指向性表示モードとを切り替えるための表示モード切り替えスイッチ(図示省略)が設けられている。観察者Aは、この表示モード切り替えスイッチ(図示省略)を操作することで、入力される画像の種類(3次元画像/2次元画像)に応じて表示モードを切り替える(指定する)ことができる。観察者Aが表示モードを切り替えると、指定された表示モードの情報がUI処理部56からCPU54に通知される。そして、CPU54は、指定された表示モードを示す表示モード信号MSを第2駆動回路66に送信する。第2駆動回路66は、受信した表示モード信号MSの示す表示モードに応じて、2つのガラス基板38,40が備える第1及び第2電極46,48に駆動信号を出力する。具体的には、駆動信号が出力された時、EC層42に電圧が供給される。つまり、EC層42に常時電圧を印加しておく必要はない。
【0034】
尚、第1及び第2電極46,48に出力する駆動信号は、定期的に電圧が印加され、リフレッシュされてもよい。又、このEC素子18にバリア部12と光透過部14とを発生させるのは、3次元画像表示の場合であって、2次元画像表示の際には、制御部52はそのバリア部12の発生を停止し、画像表示領域の全域にわたって光を透過する状態にEC素子18を駆動制御する。これによって、本装置は、2次元画像表示装置としても使用することができる。
【0035】
図2に示す透明基板38,40としては、本実施形態ではガラス基板を用いたが、光学的に光透過性であれば特に限定はされないが、好適な例を挙げれば、ホスファゼン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリシクロヘキシルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン・メチルメタクリレート共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・マレイミド共重合体、ポリシクロヘキシルメタクリレート樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート樹脂、透明ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)樹脂、エチレンノルボルネン共重合体、及び日本ゼオン社製のZONOR(登録商標)やZEONEX(登録商標)に代表されるシクロオレフィン系ポリマーである。この透明基板は着色されていてもよい。着色はグレー、ブラウン等の中間色が好ましい。
【0036】
又、EC層42としては、例えば、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化鉛、酸化銅、硫化鉄、酸化ビスマス、及び硫化ニオブ等の金属酸化物や金属硫化物の他、ハイドロキノン誘導体、ベルリン酸鉄誘導体、金属フタロシアニン誘導体(Co、Fe、Zn、Ni、Cuの各フタロシアニン誘導体)、プルシアンブルー、プルシアンブルー類似化合物、窒化インジウム、窒化スズ、窒化塩化ジルコニウム、ビオロゲン系有機エレクトロクロミック材料、スチリル系有機エレクトロクロミック材料、及びポリアニリン等が使用できる。又特に、還元着色型EC層として、三酸化タングステン、三酸化モリブデン等が使用できる。
【0037】
又、電解質層44としては、液体性電解質、個体性電解質、ゲル状電解質等を使用することができる。例えば、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン、及びフッ化マグネシウム等が使用される。電解質層44は、電子に対して絶縁体であるが、プロトン(H+)及びヒドロキシイオン(OH-)に対しては良導体となる。EC層42の着色・消色反応にはカチオンが必要とされ、H+やLi+をEC層42その他に含有させる必要がある。H+は初めからイオンである必要はなく、電圧が印加された時にH+が生じればよく、従ってH+の代わりに水を含有させてもよい。この水は、非常に少なくて十分であり、しばしば大気中から自然に侵入する水分でも着色・消色する。
【0038】
又、第1電極46及び第2電極48としては、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電性材料により構成されている。このような透明電極は、一般には真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の真空薄膜形成技術で形成される。
【0039】
又、シール部材36としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、変成ポリマー系等の透明材料でUV硬化樹脂が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0040】
上記構成の表示素子2による3次元画像を表示する動作について説明する。液晶表示パネル16を観察者A側から見た場合、図1に示すように、第2電極48は、隣接するガラス基板24上に形成された表示電極の上に跨り、その隣接する表示電極の一部領域をそれぞれ覆い、右目用画像は右目のみで左目用画像は左目のみで観察されるように設けられている。
【0041】
3次元画像を表示する場合には、液晶表示パネル16において、右目用画像及び左目用画像が図面上横方向に交互(或いは同時)に表示される。これは、ガラス基板24上に形成された共通電極とガラス基板22上に形成された表示電極との間に電圧を印加することにより、液晶26の液晶分子を右目用画像領域及び左目用画像領域において配向を制御することにより行うことができる。
【0042】
EC素子18では、第1電極46と第2電極48との間に電圧が印加されることにより、配向方向が変化される。その結果、第2電極48上の領域が液晶表示パネル16から入射してきた光を遮断するストライプ状のシャッターとして機能する。即ち、第2電極48が設けられている領域が、バリア部12を構成することになる。バリア部12は、液晶表示パネル16から入射してきた光を反射或いは吸収して遮断する。
【0043】
従って、液晶表示パネル16で発生した右目用画像が、観察者Aの左目に入射しないように、且つ左目用画像が右目に入射しないように、EC素子18により遮断される。即ち、EC素子18は、右目用画像が左目に、左目用画像が右目に入射することを遮断するために設けられている。
【0044】
例えば、EC素子18において、ガラス基板38の上に第1電極(陰極)46、三酸化モリブデン(MoO3)薄膜(EC層42)、二酸化ケイ素のような絶縁膜(電解質層44)、第2電極(陽極)48を順次積層してなる場合、第1電極(陰極)46と第2電極(陽極)48との間に電圧を印加すると、EC層42の三酸化モリブデン薄膜が濃青色に着色する。その後、第1電極46と第2電極48との間に逆の電圧を印加すると、EC層42の三酸化モリブデン薄膜の濃青色が消えて無色になる。この着色・消色する機構は詳しくは解明されていないが、EC層42の三酸化モリブデン薄膜及び電解質層44の二酸化ケイ素のような絶縁膜中に含まれる少量の水分が前記着色・消色を支配していると理解されている。着色の反応式は下記のように推定されている。
【0045】
【化1】
【0046】
即ち、第1電極46と第2電極48との間の電圧において、第1電極46がマイナスのとき、EC層42で還元反応が起こり三酸化モリブデン薄膜を濃青色に着色する。又、第1電極46がプラスのとき、EC層42で酸化反応が起こり三酸化モリブデン薄膜の濃青色を消して無色にする。
【0047】
EC素子18は、第1電極46と第2電極48との間の印加電圧の絶対値に応じて光の透過率が変化し、バリア部12と光透過部14とを発生させる。その際、バリア部12の表示/非表示の切り替え速度は、通常1秒以内に切り替えることができる。例えば、エレクトロクロミック物質として酸化イリジウムを使用した場合、80ミリ秒程度である。又、EC素子18の制御は、直流駆動で行うことができるため、複雑な駆動回路を必要としない。又、EC素子18には、メモリ機能があり消費電力を低減できる。メモリ機能とは、EC素子18が必要な着色濃度になったところで、電圧印加を停止しても、その時点での着色濃度を保持できる特性である。
【0048】
上記構成のEC素子18の製造方法について図2を参照して説明する。
透明基板として300mm角の厚さ3mmのガラス基板38,40を用い、第1電極46及び第2電極48として膜厚200nmのITO膜、EC層42として膜厚500nmのMoO3膜、電解質層44として膜厚700nmの酸化タンタル膜を成膜した。各層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、及びウェットコーティング法等が挙げられる。周辺をUV硬化樹脂製のシール部材36によりガラス基板38,40を接着しEC素子18を作製する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、バリア部と光透過部とを電子制御により発生させると共に、発生したバリア部と光透過部との形状(数、幅、間隔)や、位置(位相)、濃度等を自由に可変制御できるようにしたので、2次元画像表示素子としても、又3次元画像表示素子としても使用することができ、両立性のある表示素子を実現することができる。
【0050】
又、従来の液晶を使った機構に比べ、偏光板の数が減少した分、素子全体を薄くすることができるので適視距離の調整がしやすくなる。又、透明基板の研磨量を抑えることができるのでコストを削減できる。更に、その透明基板に偏光板を貼る必要がないので作業が容易になる。又、エレクトロクロミック素子のメモリ性及び直流駆動制御を可能とすることで消費電力を低減できる。
【0051】
(第2の実施形態)
図4は、本実施形態に係る表示素子4を示す断面図である。尚、上記第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態に係る表示素子4は、表示部としての液晶表示パネル16と、調光部としてのEC素子68と、を含んでいる。
【0052】
EC素子68は、一対の透明基板としてのガラス基板24,40を、所定間隔で対向させ、その間にエレクトロクロミック物質層(EC層)42と電解質層44とを挟み込んだ構成である。又、EC層42に電圧を印加するために、第1電極46がガラス基板24上に、第2電極48がガラス基板40上に形成されている。
【0053】
これは、第1の実施形態の液晶表示パネル16のガラス基板24とEC素子18のガラス基板38との機能を一本化して、第1電極46を直接ガラス基板24に形成することにより、表示素子2で使用したガラス基板38を本実施形態では不要にした。
【0054】
これによれば、ガラス基板の数が減少した分、素子全体を薄くすることができるので適視距離の調整がしやすくなる。又、ガラス基板の研磨量を抑えることができコストの削減及び作業が容易になる。
【0055】
(第3の実施形態)
図5は、本実施形態に係る表示素子6を示す断面図である。尚、上記第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態に係る表示素子6は、表示部としての液晶表示パネル16と、調光部としてのEC素子70と、バックライト72と、を含んでいる。又、観察者A側から液晶表示パネル16、EC素子70、及びバックライト72の順に配置されている。
【0056】
EC素子70は、一対の透明基板としてのガラス基板38,22を、所定間隔で対向させ、その間にエレクトロクロミック物質層(EC層)42と電解質層44とを挟み込んだ構成となっている。又、EC層42に電圧を印加するために、第1電極46がガラス基板38上に、第2電極48がガラス基板22上に形成されている。EC層42を形成するエレクトロクロミック物質は、反射型材料である。
【0057】
バックライト72は、LED(Light Emitting Diode)等を用いて構成された面状光源であり、主に観察者A方向に向けて光を照射する。観察者Aは、バックライト72からの光のうち、EC素子70及び液晶表示パネル16を透過した光を視認することができる。その際、バックライト72から照射された光のうち、反射型材料で構成されているバリア部12で反射した光は、バックライト72に戻され、再度バックライト72から照射される。これによれば、EC素子70により、反射性バリア発生(3D)と光透過(2D)の切り替えが可能であり、反射性バリア発生(3D)時にはバックライト72からの光を効率よく利用できる。
【0058】
(第4の実施形態)
図6は、本実施形態に係る表示素子8を示す断面図である。尚、上記第1の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態に係る表示素子8は、表示部としての有機EL(Electro Luminescence)表示パネル74と、調光部としてのEC素子18と、を含んでいる。又、EC素子18のバリア面上のバリア部12と光透過部14との発生位置から所定距離Xを隔てて有機EL表示パネル74の表示画面76が配置されるように、有機EL表示パネル74が配置されている。又、観察者A側からEC素子18、有機EL表示パネル74の順に配置されている。
【0059】
有機EL表示パネル74は、ガラス基板78上に成膜形成されたEL素子部80を内側にして、ガラス基板82が固定されている。EL素子部80は、陽極として機能するITO膜からなる画素電極と、この画素電極からの正孔を注入/輸送する正孔注入輸送層と、有機EL材料からなる発光層と、電子を注入/輸送する電子注入輸送層と、アルミニウムやアルミニウム合金からなる陰極とを備えている(いずれも図示せず)。
【0060】
そして、第1透明電極と第2透明電極はそれぞれ複数本存在し、それらが直交することで各交点にEL素子が形成され、マトリックス表示が可能となるように構成されている。
【0061】
(第5の実施形態)
図7は、本実施形態に係る表示素子10を示す断面図である。尚、上記第4の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態に係る表示素子10は、表示部としての有機EL表示パネル74と、調光部としてのEC素子68と、を含んでいる。
【0062】
EC素子68は、一対の透明基板としてのガラス基板82,40を、所定間隔で対向させ、その間にエレクトロクロミック物質層(EC層)42と電解質層44とを挟み込んだ構成である。又、EC層42に電圧を印加するために、第1電極46がガラス基板82上に、第2電極48がガラス基板40上に形成されている。
【0063】
これは、第4の実施形態の有機EL表示パネル74のガラス基板82とEC素子18のガラス基板38との機能を一本化して、第1電極46を直接ガラス基板82に形成することにより、表示素子8で使用したガラス基板38を本実施形態では不要にした。
【0064】
以上説明したように、バリア部と光透過部とを電子式に発生させると共に、発生したバリア部と光透過部との形状(数、幅、間隔)、位置(位相)、及び濃度等を自由に可変制御できるようにしたので、2次元画像表示素子としても、又3次元画像表示素子としても使用することができ、両立性のある表示素子を実現することができる。又、バリア部と光透過部との形状を電子式に可変できるので、1台のディスプレイで2眼式のみならず多眼式の立体画像表示素子として使用することができる。更に、バリアを平面状ばかりでなく、曲面状にも構成することにより、CRT等の曲面状のディスプレイにも適用できる。
【0065】
尚、液晶表示パネル16に含まれる液晶26のモードは、TNモードに限らず、VA(Vertical Alignment:垂直配向)、IPS(In Plain Switching)、FFS(Fringe Field Switching)、STN(Super Twisted Nematic)等、種々のモードを採用することができる。これらのモードの中では、広視野角の得られるVA、IPS、FFSが好適である。液晶26を広視野角の得られるモードとすれば、正面から左右に傾いた視野において視認される多画面表示画像を高輝度且つ高品位に表示することができる。
【0066】
又、上記各実施形態は、EC素子を液晶表示パネル或いは有機EL表示パネルにそれぞれ適用した例であるが、これに変えて、電気的に応じて表示を行う種々の電気光学装置に適用することができる。例えば、表示部としてPDP(Plasma Display Panel)、蛍光表示管等を用いた平面型ディスプレイが好適であるが、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイやプロジェクション・スクリーンのように曲面状のディスプレイを用い、これにEC素子を重ね合わせた構成とすることもできる。
【0067】
ところで、電子式パララックス・バリア方式の表示素子では、バリア部と光透過部とをEC素子で実現できることから、バリア部と光透過部とを白黒の2値諧調表示のほかに、フルカラーの表示モードでバリア部と光透過部とを発生させることができる。具体的なエレクトロクロミック物質材料としては、マゼンタに着色するエレクトロクロミック物質材料にはテレフタル酸ジメチル(DMT)、シアンに着色するエレクトロクロミック物質材料にはヘプチルビオロゲン(HV)或いは1,4−ジアセチルベンゼン(DAB)、イエローに着色するエレクトロクロミック物質材料には4,4'−ビフェニルジカルボン酸ジエチル(PCE)を用いればよい。これにより、バリア部と光透過部とによる光量損失を軽減させることができる。この場合、左右画像の分離が十分できるだけの濃度(コントラスト)をもつバリア部と光透過部とにしておく。
【0068】
又、EC素子18,68,70は、一対の透明基板を、所定間隔で対向させ、その間に少なくとも第1電極46、EC層42、電解質層44、及び第2電極48からなる4積層構造としたが、第1電極/還元着色型EC層/電解質層(接着層を兼ねてもよい)/可逆的電解酸化層/第2電極のような5積層構造であってもよい。
【0069】
又、本各実施形態では、第2電極48と第1電極46との間に電圧を印加した際に、両者が対向している領域がバリアとして機能するように構成されていたが、逆に、第2電極48間の領域がバリアとして機能するように構成してもよい。最も、本実施形態では、第1電極46と第2電極48との間に電圧を印加しない場合には、EC素子18はバリアとしての機能を有しないため、表示部において2次元画像を表示した場合に、通常の2次元画像の表示装置として用いることもできる。
【0070】
又、本各実施形態では、バリア部12と光透過部14とを発生させることにより、3次元画像表示装置として構成したが、表示画面20とバリア部12(光透過部14)との所定距離Xを調整することにより、多画面画像を表示する装置としての2画面画像表示装置200を構成することができる。
【0071】
図8(A)に通常画像表示(同じ画像を複数の観察者が見るモード)、図8(B)に2画面画像表示の原理図をそれぞれ図示した。図8(A)に示す通常画像表示では、EC素子18にバリアの発生はなく同じ画像を複数の観察者C,Dが観察している。又、図8(B)に示す2画面画像表示では、EC素子18にバリアを発生させて、バリア部12を介して、バリアの後方に一定の距離Xだけ離れた表示画面20に表示された2画面画像を、観察者C,Dよりそれぞれ異なる画像を観察している。
【0072】
尚、この際、図3に示す入力I/F部64には、3次元画像表示用画像信号に替えて2画面画像表示用の画像信号(図8(B)に示す観察者C用の第1画像と観察者D用の第2画像との異なる画像の画像信号)又は通常画像表示用の画像信号が入力される。又、図3に示す操作パネル58及びリモコン60には、指向性表示モードと非指向性表示モードとを切り替えるための表示モード切り替えスイッチ(図示省略)が設けられているが、図8に示す観察者C,Dは、この表示モード切り替えスイッチ(図示省略)を操作することで、入力される画像の種類(多画面画像/通常画像)に応じて表示モードを切り替える(指定する)ことになる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1の実施形態に係る表示素子を示す断面図。
【図2】第1の実施形態に係るEC素子を示す断面図。
【図3】第1の実施形態に係る表示素子が備える制御部の概略構成を示すブロック図。
【図4】第2の実施形態に係る表示素子を示す断面図。
【図5】第3の実施形態に係る表示素子を示す断面図。
【図6】第4の実施形態に係る表示素子を示す断面図。
【図7】第5の実施形態に係る表示素子を示す断面図。
【図8】2画面画像表示装置を示す図。
【図9】2次元画像表示及び3次元画像表示の原理図。
【図10】従来のバリア液晶構造の表示素子を示す断面図。
【図11】従来の位相差板構造の表示素子を示す断面図。
【符号の説明】
【0074】
2,4,6,8,10…表示素子 12…バリア部 14…光透過部 16…液晶表示パネル(表示部) 18…エレクトロクロミック素子(EC素子)(調光部) 20…表示画面 22,24…ガラス基板 26…液晶 28,30…偏光板 32…第1画素 34…第2画素 36…シール部材 38,40…ガラス基板(透明基板) 42…エレクトロクロミック物質層(EC層) 44…電解質層 46…第1電極(電極) 48…第2電極(電極) 50…第1駆動回路 52…制御部 54…CPU 56…ユーザインタフェース(UI)処理部 58…操作パネル 60…リモコン 62…画像処理部 64…入力インタフェース(I/F)部 66…第2駆動回路 68,70…EC素子 72…バックライト 74…有機EL表示パネル 76…表示画面 78…ガラス基板 80…EL素子部 82…ガラス基板 102…液晶表示デバイス 104…バリア 106…立体画像表示面 108…液晶表示パネル 110…液晶表示デバイス 112…位相差板 114…ガラス基板 116…偏光板 118…ガラス基板 200…2画面画像表示装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロクロミック素子を用いて電子制御によりバリア部と光透過部とを発生させる調光部と、
前記バリア部の発生位置から所定距離を隔てて表示画面が配置され、第1画素と、第2画素と、が少なくとも一方向に交互に配列されており、前記第1画素が表示する第1画像と前記第2画素が表示する第2画像とを前記表示画面に出力表示可能な表示部と、
を含むことを特徴とする表示素子。
【請求項2】
請求項1に記載の表示素子において、
前記調光部は、前記エレクトロクロミック素子の光の透過率を変化させることで、前記バリア部と前記光透過部とを発生させることを特徴とする表示素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表示素子において、
前記調光部は、前記表示部が3次元画像或いは多画面画像を表示する際に、前記バリア部と前記光透過部とを発生させることを特徴とする表示素子。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の表示素子において、
前記調光部は、前記表示部が単なる2次元画像を表示する際には、前記バリア部の発生を停止してバリア発生面が前記光透過部となることを特徴とする表示素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示素子において、
前記調光部は、前記バリア部の数、幅、開口比及び間隔を含む形状や発生位置を指示入力に応じて自在に可変制御する制御部を有することを特徴とする表示素子。
【請求項6】
請求項5に記載の表示素子において、
前記制御部は、前記調光部を直流駆動で制御することを特徴とする表示素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の表示素子において、
前記表示部は、対向する2電極間に電気光学物質層を有した調光型素子であることを特徴とする表示素子。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の表示素子において、
前記表示部は、対向する2電極間に電気光学物質層を有した自発光型素子であることを特徴とする表示素子。
【請求項1】
エレクトロクロミック素子を用いて電子制御によりバリア部と光透過部とを発生させる調光部と、
前記バリア部の発生位置から所定距離を隔てて表示画面が配置され、第1画素と、第2画素と、が少なくとも一方向に交互に配列されており、前記第1画素が表示する第1画像と前記第2画素が表示する第2画像とを前記表示画面に出力表示可能な表示部と、
を含むことを特徴とする表示素子。
【請求項2】
請求項1に記載の表示素子において、
前記調光部は、前記エレクトロクロミック素子の光の透過率を変化させることで、前記バリア部と前記光透過部とを発生させることを特徴とする表示素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表示素子において、
前記調光部は、前記表示部が3次元画像或いは多画面画像を表示する際に、前記バリア部と前記光透過部とを発生させることを特徴とする表示素子。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の表示素子において、
前記調光部は、前記表示部が単なる2次元画像を表示する際には、前記バリア部の発生を停止してバリア発生面が前記光透過部となることを特徴とする表示素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の表示素子において、
前記調光部は、前記バリア部の数、幅、開口比及び間隔を含む形状や発生位置を指示入力に応じて自在に可変制御する制御部を有することを特徴とする表示素子。
【請求項6】
請求項5に記載の表示素子において、
前記制御部は、前記調光部を直流駆動で制御することを特徴とする表示素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の表示素子において、
前記表示部は、対向する2電極間に電気光学物質層を有した調光型素子であることを特徴とする表示素子。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の表示素子において、
前記表示部は、対向する2電極間に電気光学物質層を有した自発光型素子であることを特徴とする表示素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−53391(P2009−53391A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219379(P2007−219379)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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