説明

表示装置、及びその駆動方法

【課題】表示部において高い開口率を有し、かつ温度による輝度の変化が少ない有機EL表示装置の駆動回路を提供する。
【解決手段】N型トランジスタ及び有機EL素子を有するモニタ部と、N型トランジスタ及び有機EL素子を有する表示部と、を具備する表示装置において、モニタ部において、黒の階調及び白の階調におけるN型トランジスタの閾値電圧を、それぞれ検出する。検出した閾値電圧を用いて、表示部のN型トランジスタに出力するビデオデータを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一形態は、駆動回路で画素へのビデオ信号の入力を制御することができる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型の表示装置は、マトリクス状に配列された数十乃至数百万個の各画素に、選択トランジスタと、駆動用トランジスタ、及び表示素子が設けられている。アクティブマトリクス型はパネルの大型化、高精細化に柔軟に対応することができ、今後の表示装置の主流となりつつある。
【0003】
アクティブマトリクス型の表示装置が有する駆動回路の代表的なものとして、走査線駆動回路と信号線駆動回路とがある。走査線駆動回路により、複数の画素が1ラインごと、もしくは複数ラインごとに選択される。そして信号線駆動回路により、選択されたラインが有する画素へのビデオ信号の入力が制御される。
【0004】
図6に2個のNMOSトランジスタを有する従来技術のアクティブマトリクス画素構造を示す。駆動用トランジスタを形成した基板に、陽極、有機発光材料、及び陰極を有する発光素子を形成する構造であり、駆動用トランジスタを導通することにより、発光素子が点灯する。
【0005】
図6の回路において、駆動用トランジスタのソース電極及びドレイン電極とゲート電極との間に流れる電流は、数(1)で表される。数(1)では、移動度をμ、ゲート絶縁膜の単位面積当たりの容量をCox、チャネル幅をW、チャネル長をL、駆動用トランジスタの電位をVg、発光素子の陽極にかかる電位をVa、閾値電圧をVthとする。
【0006】
【数1】

【0007】
また、発光素子の陽極・陰極間の電流は、数(2)で表される。数(2)では、定数をA、温度をT、電圧関数をU、発光素子の陽極・陰極間の電圧をV、発光素子の閾値電圧をVthEL、ボルツマン定数をkB、トンネル電流をItとする。
【0008】
【数2】

【0009】
トンネル電流Itは、十分小さいため無視できる。さらに陰極の電位をVcatとすると、発光素子の陽極・陰極間の電圧Vは、V=Va−Vcatで表せる。発光素子を発光させない場合、発光素子にかかる閾値電圧はVthEL=Va−Vcatとなる。このとき、駆動用トランジスタを通電するために必要とされる電位がVa=Vcat+VthELとなるようにビデオ信号を設定すると、ビデオ信号の電圧Vgは、Vg=Va+Vth=Vcat+VthEL+Vthとなる。
【0010】
また、ある階調に対応する輝度を得るのに必要な電流に対し、数(2)からVaが決定される。さらに、数(2)から求めたVaと数(1)から、ビデオ信号の電位Vgが決定される。
【0011】
数(2)は温度依存性があり、数(1)においても、駆動用トランジスタの閾値電圧Vth及びVthELが温度依存性を持つため、Vgもまた温度に依存する。そのため、駆動用トランジスタに同じビデオ信号の電位Vgを入力したとしても、そのときの周辺回路の温度の影響によりパネルの輝度もまた変化してしまう。
【0012】
図6のような回路において、駆動用トランジスタの閾値電圧Vthは、温度に依存して変化する。そのため、駆動用トランジスタの閾値電圧Vthの変動によって、黒表示でもパネルが光る、または白表示でも十分に光らないという不具合を起こす可能性があった。駆動用トランジスタの輝度の変動を補正するには、たとえば特許文献1の発明のように、1画素あたりのトランジスタの数を増加させ、容量の面積を大きくしなければならず、高精細パネルにおいて、表示部の開口率が非常に小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−219146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
駆動用トランジスタの閾値電圧は周囲の回路の温度に影響を受けやすい。特に発光素子の温度が高くなると、駆動用トランジスタの閾値電圧が下がり、黒表示を行なうビデオ信号の電位を入力した場合でも、通電されパネルが光るという不具合を起こす可能性がある。1画素あたりのトランジスタ数を増やす、または、容量の面積を大きくすることなく、表示部において高い開口率を有し、かつ温度による輝度の変化が少ない表示装置及びその駆動方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一形態は、第1の発光素子と、第1の発光素子の電流を制御する第1の駆動用トランジスタとでモニタ用の画素が構成されているモニタ部と、第2の発光素子と、第2の発光素子の電流を制御する第2の駆動用トランジスタとで表示用の画素が構成されている表示部と、第1の発光素子にモニタ電流が流されたときに生じる第1の駆動用トランジスタの電圧値を検出する検出部と、検出部が検出した電圧値が制御信号として入力され、第2の発光素子の発光を制御するビデオ信号を補正し、第2の駆動トランジスタのゲート端子に補正されたビデオ信号を出力する変換回路部とを有し、モニタ部と、表示部の画素構成が同じである。
【0016】
本発明の一形態は、第1の発光素子と、第1の発光素子の電流を制御する第1の駆動用トランジスタとで第1のモニタ用の画素が構成されている第1のモニタ部と、第2の発光素子と、第2の発光素子の電流を制御する第2の駆動用トランジスタとで第2のモニタ用の画素が構成されている第2のモニタ部と、第3の発光素子と、第3の発光素子の電流を制御する第3の駆動用トランジスタとで表示用の画素が構成されている表示部と、第1の発光素子に第1のモニタ電流が流されたときに生じる第1の駆動用トランジスタの第1の電圧値、及び第2の発光素子に第2のモニタ電流が流されたときに生じる第2の駆動用トランジスタの第2の電圧値をそれぞれ検出する検出部と、第1の電圧及び第2の電圧がそれぞれ制御信号として入力され、第3の発光素子の発光を制御するビデオ信号を補正し、第3の駆動トランジスタのゲート端子に補正されたビデオ信号を出力する変換回路部とを有し、第1のモニタ部と、第2のモニタ部と、表示部の画素構成が同じである。
【0017】
本発明の一形態は、第1有機EL素子に入力された第1のモニタ電流に対応する第1の駆動用トランジスタの第1の電圧を検出し、第1有機EL素子に入力された第2のモニタ電流に対応する第1の駆動用トランジスタの第2の電圧を検出し、第1の電圧及び第2の電圧を用いて、第2有機EL素子に入力されるビデオデータを補正する。
【0018】
本発明の一形態において、補正は、第1の電圧及び第2の電圧から、第1有機EL素子及び第1の駆動用トランジスタにおける電圧の閾値を求め、閾値に応じて補正する。
【0019】
本発明の一形態において、第1の電圧を検出した後、スイッチを切り替えることで、第2の電圧を検出する。
【0020】
本発明の一形態は、第1有機EL素子に入力された第1のモニタ電流に対応する第1の駆動用トランジスタの第1の電圧を検出し、第2有機EL素子に入力された第2のモニタ電流に対応する第2の駆動用トランジスタの第2の電圧を検出し、第1の電圧及び第2の電圧を用いて、第3有機EL素子に入力されるビデオデータを補正する。
【0021】
本発明の一形態において、補正は、第1の電圧から第1有機EL素子及び第1の駆動用トランジスタにおける電圧の第1の閾値と、第2の電圧から第2有機EL素子及び第2の駆動用トランジスタにおける電圧の第2の閾値とを求め、第1閾値及び第2の閾値に応じて補正する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、駆動用トランジスタ及び発光素子において、温度による閾値電圧の変化を補正することが可能となるため、使用できる温度範囲が広い表示装置を提供することができる。
【0023】
また、本発明の一形態は、表示画素に新たなトランジスタを形成する必要や、容量の面積を大きくする必要がないため、表示部の開口率を高くすることができる。そのため、鮮明で高精細な表示装置を提供することができる。
【0024】
さらに、本発明の一形態におけるモニタ部の画素は、表示部の画素とは同一の構成であり、また、同一の工程で作製することができるため、従来の作製方法を、そのまま流用することができる。また、モニタ部302の劣化の進行と表示部303の劣化の進行が同等になるため、精度の高い補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一形態の駆動方法のフローチャート図。
【図2】本発明の一形態の駆動方法のフローチャート図。
【図3】本発明の一形態の表示装置のブロック図。
【図4】本発明の一形態の表示装置の回路図。
【図5】本発明の一形態の表示装置の回路図。
【図6】従来の表示装置の回路図。
【図7】本発明の一形態の表示装置が具備された電子機器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、発明の実施の態様について、図面を参照して説明する。ただし、本発明の一形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細をさまざまに変更しうることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に示す図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0027】
(実施の形態1)
実施の形態1では、2つのモニタ部を用いて、表示部の駆動用トランジスタのビデオ信号Vgを補正する例を示す。図1に、本発明の一形態における駆動回路を用いて駆動用トランジスタに入力するビデオ信号の補正を行なうフローチャート図を示す。
【0028】
図1において、ステップ100から始まり、ステップ101に進む。101では、第1のモニタ部及び第2のモニタ部の発光素子の陰極に電位Vcatを与える。
【0029】
ステップ102では、第1のモニタ部において、ステップ101で与えられた発光素子の陰極Vcatの電位に対応する黒の階調におけるビデオ信号の電位VLを検出する。なお、本発明において、黒の階調とは、表示装置における最も低い階調とする。ステップ103では、ステップ102で検出した電位VLを用いて、黒の階調における補正されたモニタ部の駆動用トランジスタの電位VgLを算出する。
【0030】
ステップ104では、第2のモニタ部において、ステップ101で与えられた発光素子の電極の電位Vcatに対し、白の階調におけるビデオ信号の電位VHを検出する。なお、本発明において、白の階調とは、表示装置における最も高い階調とする。ステップ105では、ステップ104で検出した電位VHを用いて、白の階調における補正されたモニタ部の駆動用トランジスタの電位VgHを算出する。
【0031】
ステップ106では、ステップ103で算出したVgLとステップ105で算出したVgHを、表示部に入力することで、表示部の駆動用トランジスタの閾値電圧の補正を行ない、ステップ107において終了する。
【0032】
上述したステップ100乃至ステップ107により、2つのモニタ部で検出された電位を用いて算出された補正値を表示部に反映することができる。なお、経時時間により発光素子の温度は変化するため、表示時間中は図1のフローチャート図に従い動作を繰り返すとよい。
【0033】
本実施の形態の構成を用いることで、表示部に新たなトランジスタを形成する必要や、容量の面積を大きくする必要がないため、開口率を下げることなく、駆動用トランジスタにおいて、温度による閾値電圧の変化を補正することができる。これにより温度適用範囲が広い表示装置を提供することができる。
【0034】
さらに、本発明の一形態におけるモニタ部は、表示部と同一の構成であり、同様の工程で作製することができるため、従来の作製方法を、そのまま流用することができる。また、モニタ部302の劣化の進行と表示部303の劣化の進行が同等になるため、精度の高い補正を行うことができる。
【0035】
(実施の形態2)
実施の形態2では、1箇所のモニタ部を用いて表示部の駆動用トランジスタのビデオ信号Vgを補正する例を示す。図2は、本発明の一形態における駆動回路を用いて駆動用トランジスタに入力するビデオ信号の補正を行なうフローチャート図である。
【0036】
図2において、ステップ200から始まり、ステップ201に進む。201では、モニタ部の発光素子の陰極に電位Vcatを与える。
【0037】
ステップ202では、モニタ部において、ステップ201で与えられた発光素子の陰極Vcatの電位に対し、黒の階調における発光素子に必要なビデオ信号の電位VLを検出する。ステップ203では、ステップ202で検出したVLを用いて、黒の階調における補正されたモニタ部の駆動用トランジスタの電位VgLを算出する。
【0038】
次に、ステップ204では、モニタ部において、黒の階調における電位VLのビデオ信号を白の階調における電位VHのビデオ信号へと切り替える。
【0039】
ステップ205では、モニタ部において、ステップ201で与えられた発光素子の陰極の電位Vcatに対し、白の階調における発光素子に必要なビデオ信号の電位VHを検出する。ステップ206では、ステップ205で検出したVHを用いて、補正された白の階調におけるモニタ部の駆動用トランジスタの電位VgHを算出する。
【0040】
ステップ207では、ステップ203で算出したVgL及びステップ206で算出したVgHを反映したビデオ信号を表示部に入力することで、黒及び白の階調における表示部の駆動用トランジスタの閾値電圧Vthの補正を行ない、ステップ208において終了する。
【0041】
このフローチャートにより、1箇所のモニタ部で検出された複数の電位により算出された補正値を表示部に反映することができる。なお、経時時間により発光素子の温度は変化するため、表示時間中は図2のフローチャート図に従い動作を繰り返すとよい。
【0042】
本構成を用いることで、モニタ部の面積を小さくすることができ、表示装置の小型化が可能となる。
【0043】
なお、本発明の一形態におけるモニタ部は、表示部と同一の構成であり、同様の工程で作製することができるため、従来の作製方法を、そのまま流用することができる。また、モニタ部302の劣化の進行と表示部303の劣化の進行が同等になるため、精度の高い補正を行うことができる。
【実施例1】
【0044】
本実施例では、本発明の一形態における表示装置の構成について説明する。図3に、表示装置のブロック図を一例として示す。
【0045】
図3に示す表示装置は、モニタ部1001及び表示部1002を有するパネル1000、及び検出部1101と変換回路部1102部とを有する駆動回路部1100を有する。検出部1101と変換回路部1102とは、別個の基板に形成されていても、同一基板に形成されていてもよい。
【0046】
パネル1000は外部から入力されるモニタ電流と電気的に接続する。また、モニタ部1001と検出部とは接続端子を介して電気的に接続する。検出部1101と変換回路部1102とは電気的に接続されている。また、変換回路部1102と表示部1002とも接続端子を介して電気的に接続する。
【0047】
図3のブロック図を用いて説明する。まず、外部から入力されるモニタ電流から電位がモニタ部に与えられ、モニタ部における発光素子と駆動用トランジスタの駆動電位を検出部1101により検出する。検出された駆動電位は変換回路部1102に制御信号として入力され、その値を用いて表示部に入力するビデオ信号を補正する。補正されたビデオ信号は表示部1002の発光素子に接続された駆動用トランジスタのゲート端子へと入力される。
【0048】
パネル1000が、温度によって変化するに伴い、必要とされる電位も変化する。すなわち、モニタ部1001で検出した電位を用いて、表示部1002に出力されるビデオ信号の補正を行う。駆動期間中、ビデオ信号を補正し続けることで、常に最適な電位の値が反映されたビデオ信号を表示部に入力することができる。
【実施例2】
【0049】
本実施例では、本発明の一形態における表示装置が有する駆動回路のより具体的な構成について説明する。図4に、駆動回路の回路図を一例として示す。図4に示す駆動回路は、モニタ部301、モニタ部302、及び表示部303を有するパネル300に、電気的に接続されている。また、駆動回路は少なくともスイッチ311乃至スイッチ314、容量325、バッファ327、及び変換回路315を有する。
【0050】
表示部303には、N型の駆動用トランジスタ、N型の選択用トランジスタ、及び発光素子を有するアクティブマトリクス画素構造を用いる。モニタ部301、モニタ部302には、少なくともN型の駆動用トランジスタと発光素子が形成されていれば良く、選択用トランジスタは必ずしも設ける必要はない。また、最終製品において、モニタ部は表示部として機能しない。そのため、モニタ部には全面に遮光膜が形成されている。
【0051】
スイッチ311乃至スイッチ314にもトランジスタを用いる。なお、トランジスタとしては、単結晶半導体層や、非晶質シリコン、多結晶シリコン、微結晶(マイクロクリスタル、セミアモルファスとも言う)シリコンなどに代表される非単結晶半導体層を有する薄膜トランジスタなどを用いることが出来る。また、IZOなどの酸化物半導体層を用いてもよい。
【0052】
また、トランジスタの構造としては、トップゲート型又はボトムゲート型などを用いることができる。なお、ボトムゲート型のトランジスタとしては、チャネルエッチ型又はチャネル保護型などを用いることができる。
【0053】
外部から入力されるモニタ電流とモニタ部301の駆動用トランジスタのソース電極又はドレイン電極とは、スイッチ311及びパネルと駆動回路との接続端子を介して、電気的に接続する。なお、外部から入力されるモニタ電流から与えられる電位は、駆動用トランジスタの閾値よりも高い電位とする。容量325及びモニタ部301の駆動用トランジスタのゲート電極は、スイッチ312を介して電気的に接続する。容量325はバッファ327に接続され、容量325に蓄電された電位は変換回路315に入力される。
【0054】
また、モニタ部302の駆動用トランジスタのソース電極又はドレイン電極と白の階調の電位を与える外部から入力されるモニタ電流とは、スイッチ313を介して電気的に接続する。容量326及びモニタ部302の駆動用トランジスタのゲート電極は、スイッチ314を介して電気的に接続する。容量326はバッファ328に接続され、容量326に蓄電された電位は制御信号として変換回路315に入力される。
【0055】
本実施例では、検出する電位を蓄電し出力する構成として、容量とバッファを用いたが、この構成に限らず、同等の機能を有する構成を適宜用いればよい。また、白の階調を与える電位は外部から入力されるモニタ電流から常に与えられており、電位をためる必要がないため、容量326及びバッファ328は必ずしも必要ではない。しかし、モニタ部302の劣化の進行と表示部303の劣化の進行が同等になるようにするためにも、容量及びバッファを設けた方が好ましい。
【0056】
図4の回路を用いて駆動方法を説明する。最初に、パネルの発光素子の陰極に電位Vcatを与える。
【0057】
まず、黒の階調における電位VLを取得する説明をする。スイッチ311とスイッチ312をオンにすると、モニタ部301において、発光素子の陽極にかかる電位は、陰極の電位Vcatと発光素子の閾値電圧VthELの和に近い値となる。その後、スイッチ312をオフにすることにより、発光素子の陰極の電位Vcatに対し、容量325には、発光素子に黒の階調を与える電位VLが蓄電する。
【0058】
容量326に蓄電する電位VLはバッファ327を介して、制御信号として変換回路315に入力される。変換回路315において、電位VLを用いて補正したビデオ信号を表示部303の発光素子に接続された駆動用トランジスタのゲート端子に出力する。
【0059】
発光素子の閾値電圧VthELが、温度によって変化するに伴い、必要とされる黒の階調の電位VLも変化する。本実施例では、発光素子の陰極の電位Vcatを固定しているため、黒の階調の電位VLを適宜補正する必要がある。
【0060】
すなわち、モニタ部301で検出した電位VLを用いて、表示部303に出力されるビデオ信号の補正を行う。駆動期間中、黒の階調における電位VLを補正し続けることで、常に最適な電位VLの値が反映されたビデオ信号を表示部に入力することができる。
【0061】
次に、白の階調における電位VHを取得する説明をする。スイッチ313とスイッチ314をオンにし、白の階調に対応する電流をモニタ部302に与える。一定時間が経過すると、モニタ部302において、発光素子の陽極にかかる電位VHが、白の階調に対応する電流に対して一定の値となる。その後、スイッチ314をオフにすることにより、発光素子の陰極の電位Vcatに対し、発光素子に白の階調を与える電位VHが決定される。
【0062】
電位VHも温度に依存しているため、温度変化に従い表示部303に入力するビデオ信号を適宜補正する必要がある。そこで、駆動期間中、モニタ部302において検出されたVHの値を用いて、表示部303に入力されるビデオ信号を補正することにより、常に表示部において適切な電位を与えることができる。
【実施例3】
【0063】
本実施例では、本発明の一形態における表示装置が有する駆動回路のより具体的な構成について説明する。図5に、駆動回路の回路図を一例として示す。図5に示す駆動回路は、モニタ部401、及び表示部403を有するパネル400に、電気的に接続されている。また、駆動回路は少なくとも、スイッチ410乃至スイッチ418及び変換回路430を有する。
【0064】
実施例2と同様に、表示部403は、N型の駆動用トランジスタ、N型の駆動用トランジスタ、及び発光素子を有するアクティブマトリクス画素構造を用いる。また、モニタ部401には、少なくともN型の駆動用トランジスタと発光素子が形成されていればよく、選択用トランジスタは必ずしも設けなくて良い。また、最終製品において、モニタ部は表示部として機能しない。そのため、モニタ部には全面に遮光膜が形成されている。
【0065】
スイッチ410は、白の階調の電位を与える外部から入力されるモニタ電流と、モニタ部401の駆動用トランジスタのソース電極又はドレイン電極とを、パネルと駆動回路との接続端子を介して電気的に接続する。
【0066】
モニタ部401の駆動用トランジスタのゲート電極と容量421乃至容量424とは、それぞれスイッチ411乃至スイッチ414を介して電気的に接続する。容量421乃至容量424は、それぞれバッファ425乃至バッファ428に接続され、それぞれの容量に蓄電された電位は変換回路430に入力される。
【0067】
本実施例では、検出する電位を蓄電し出力する構成として、容量とバッファを用いたが、この構成に限らず、同等の機能を有する構成を適宜用いればよい。
【0068】
図5の回路を用いた駆動方法を説明する。最初に、パネルの発光素子の陰極に電位Vcatを与える。
【0069】
容量423及び424は、黒の階調の電位VLを検出する際に用いる。また、容量421及び422は、白の階調の電位VHを検出する際に用いる。
【0070】
まず、黒の階調の電位VL1を取得する方法を説明する。スイッチ413とスイッチ418をオンにする。モニタ部401において、発光素子の陽極にかかる電位は、陰極の電位Vcatと発光素子の閾値電圧VthELの和に近い値となる。このとき、白の階調の電位VHの検出に用いる容量421、422に接続されたスイッチ411、スイッチ412、スイッチ415はオフ、スイッチ416はオンの状態である。
【0071】
その後、スイッチ418をオンの状態で、スイッチ413をオフにし、同時にスイッチ410及びスイッチ411をオンにする。すると、発光素子の陰極の電位Vcatに対し、容量423には、発光素子に黒の階調を与える電位VL1が取得されると同時に、容量421に白の階調の電位VH1が蓄電される。
【0072】
スイッチ411をオフにし、スイッチ415及びスイッチ417がオンにすることで、容量421及び容量423に蓄電された電位VH1及び電位VL1は、それぞれバッファ425及び427を介して、変換回路430に入力される。
【0073】
変換回路430において、電位VL1及び電位VH1を用いて補正したビデオ信号を表示部403に出力し、表示部の温度変化による黒及び白の階調の変化の補正を行う。
【0074】
さらに、スイッチ417をオンの状態で、スイッチ410及びスイッチ418をオフにし、スイッチ414をオンにする。このとき、白の階調の電位VHの検出に用いる容量421、422に接続されたスイッチ411、スイッチ412はオフ、スイッチ415はオンのままにし、スイッチ416はオフにする。
【0075】
その後、スイッチ417をオンの状態で、スイッチ414をオフにすることで、温度の影響により変化した閾値電圧VthELに対応した、黒の階調の電位VL2が、容量424に蓄電する。また、同時にスイッチ410及びスイッチ412をオンにすることで、容量422に白の階調の電位VH2が蓄電される。
【0076】
スイッチ412をオフにし、スイッチ416及びスイッチ418をオンにすることで、容量422及び容量424に蓄電された電位VH2及び電位VL2は、それぞれバッファ426及び428を介して、制御信号として変換回路430に入力される。
【0077】
変換回路430において、電位VL2及び電位VH2を用いて補正したビデオ信号を表示部403の発光素子に接続された駆動用トランジスタのゲート端子に出力し、表示部の温度変化による黒及び白の階調の変化の補正を行う。
【0078】
発光素子の閾値電圧VthELが、温度によって変化するに伴い、必要とされる黒の階調の電位VLも変化する。本実施例では、発光素子の陰極の電位Vcatを固定しているため、黒の階調の電位VLを適宜補正する必要がある。
【0079】
駆動期間中、上記駆動方法を繰り返すことで、白及び黒の階調における電位VH及び電位VLを補正し続けることが可能となる。そのため、常に最適な電位VL及び電位VHの値を反映したビデオ信号を表示部に与えることができる。
【実施例4】
【0080】
本発明の一形態における表示装置は自発光型であるため、液晶ディスプレイに比べ、明るい場所での視認性に優れ、視野角が広い。従って、様々な電子機器の表示部に用いることができる。なお、本発明を電子機器の表示部に用いる場合、モニタ部は外部から認識できないように遮光される。
【0081】
本発明の一形態における表示装置を用いた電子機器として、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、ノート型パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはデジタルビデオディスク(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。特に、斜め方向から画面を見る機会が多い携帯情報端末は、視野角の広さが重要視されるため、発光装置を用いることが望ましい。それら電子機器の具体例を図7に示す。
【0082】
図7(A)は発光装置であり、筐体3001、支持台3002、表示部3003、スピーカー部3004、ビデオ入力端子3005等を含む。本発明の一形態における表示装置は表示部3003に用いることができる。発光装置は自発光型であるためバックライトが必要なく、液晶ディスプレイよりも薄い表示部とすることができる。なお、本発明の一形態における表示装置は、パーソナルコンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用などの全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0083】
図7(B)はデジタルスチルカメラであり、本体3101、表示部3102、受像部3103、操作キー3104、外部接続ポート3105、シャッターボタン3106等を含む。本発明の一形態における表示装置は表示部3102に用いることができる。
【0084】
図7(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、本体3201、筐体3202、表示部3203、キーボード3204、外部接続ポート3205、ポインティングデバイス3206等を含む。本発明の一形態における表示装置は表示部3203に用いることができる。
【0085】
図7(D)はモバイルコンピュータであり、本体3301、表示部3302、スイッチ3303、操作キー3304、赤外線ポート3305等を含む。本発明の一形態における表示装置は表示部3302に用いることができる。
【0086】
図7(E)は記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(具体的にはDVD再生装置)であり、本体3401、筐体3402、表示部3403、表示部3404、記録媒体(DVD等)読み込み部3405、操作キー3406、スピーカー部3407等を含む。表示部3403は主として画像情報を表示し、表示部3404は主として文字情報を表示するが、本発明の一形態における表示装置はこれら表示部3403、表示部3404に用いることができる。なお、記録媒体を備えた画像再生装置には家庭用ゲーム機器なども含まれる。
【0087】
図7(F)はゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)であり、本体3501、表示部3502、アーム部3503を含む。本発明の一形態における表示装置は表示部3502に用いることができる。
【0088】
図7(G)はビデオカメラであり、本体3601、表示部3602、筐体3603、外部接続ポート3604、リモコン受信部3605、受像部3606、バッテリー3607、音声入力部3608、操作キー3609等を含む。本発明の一形態における表示装置は表示部3602に用いることができる。
【0089】
ここで図7(H)は携帯電話であり、本体3701、筐体3702、表示部3703、音声入力部3704、音声出力部3705、操作キー3706、外部接続ポート3707、アンテナ3708等を含む。本発明の一形態における表示装置は表示部3703に用いることができる。なお、表示部3703は黒色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
【0090】
なお、有機発光材料の発光輝度が高くなれば、出力した画像情報を含む光をレンズ等で拡大投影してフロント型若しくはリア型のプロジェクターに用いることも可能となる。
【0091】
また、上記電子機器はインターネットやCATV(ケーブルテレビ)などの電子通信回線を通じて配信された情報を表示することが多くなり、特に動画情報を表示する機会が増してきている。有機発光材料の応答速度は非常に高いため、発光装置は動画表示に好ましい。
【0092】
また、発光装置は発光している部分が電力を消費するため、発光部分の面積が極力少なくなるように情報を表示することが望ましい。従って、携帯情報端末、特に携帯電話や音響再生装置のような文字情報を主とする表示部に発光装置を用いる場合には、非発光部分を背景として文字情報を発光部分で形成するように駆動することが望ましい。
【0093】
以上の様に、本発明の一形態における適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
100 ステップ
101 ステップ
102 ステップ
103 ステップ
104 ステップ
105 ステップ
106 ステップ
107 ステップ
200 ステップ
201 ステップ
202 ステップ
203 ステップ
204 ステップ
205 ステップ
206 ステップ
207 ステップ
208 ステップ
300 パネル
301 モニタ部
302 モニタ部
303 表示部
311 スイッチ
312 スイッチ
313 スイッチ
314 スイッチ
315 変換回路
325 容量
326 容量
327 バッファ
328 バッファ
400 パネル
401 モニタ部
403 表示部
410 スイッチ
411 スイッチ
412 スイッチ
413 スイッチ
414 スイッチ
415 スイッチ
416 スイッチ
417 スイッチ
418 スイッチ
421 容量
422 容量
423 容量
424 容量
425 バッファ
426 バッファ
427 バッファ
428 バッファ
430 変換回路
1000 パネル
1001 モニタ部
1002 表示部
1100 駆動回路部
1101 検出部
1102 変換回路部
3001 筐体
3002 支持台
3003 表示部
3004 スピーカー部
3005 ビデオ入力端子
3101 本体
3102 表示部
3103 受像部
3104 操作キー
3105 外部接続ポート
3106 シャッターボタン
3201 本体
3202 筐体
3203 表示部
3204 キーボード
3205 外部接続ポート
3206 ポインティングデバイス
3301 本体
3302 表示部
3303 スイッチ
3304 操作キー
3305 赤外線ポート
3401 本体
3402 筐体
3403 表示部
3404 表示部
3405 記録媒体(DVD等)読み込み部
3406 操作キー
3407 スピーカー部
3501 本体
3502 表示部
3503 アーム部
3601 本体
3602 表示部
3603 筐体
3604 外部接続ポート
3605 リモコン受信部
3606 受像部
3607 バッテリー
3608 音声入力部
3609 操作キー
3701 本体
3702 筐体
3703 表示部
3704 音声入力部
3705 音声出力部
3706 操作キー
3707 外部接続ポート
3708 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発光素子と、前記第1の発光素子の電流を制御する第1の駆動用トランジスタとでモニタ用の画素が構成されているモニタ部と、
第2の発光素子と、前記第2の発光素子の電流を制御する第2の駆動用トランジスタとで表示用の画素が構成されている表示部と、
前記第1の発光素子にモニタ電流が流されたときに生じる前記第1の駆動用トランジスタの電圧値を検出する検出部と、
前記検出部が検出した電圧値が制御信号として入力され、前記第2の発光素子の発光を制御するビデオ信号を補正し、前記第2の駆動トランジスタのゲート端子に補正されたビデオ信号を出力する変換回路部とを有し、
前記モニタ部と、前記表示部の画素構成が同じであることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
第1の発光素子と、前記第1の発光素子の電流を制御する第1の駆動用トランジスタとで第1のモニタ用の画素が構成されている第1のモニタ部と、
第2の発光素子と、前記第2の発光素子の電流を制御する第2の駆動用トランジスタとで第2のモニタ用の画素が構成されている第2のモニタ部と、
第3の発光素子と、前記第3の発光素子の電流を制御する第3の駆動用トランジスタとで表示用の画素が構成されている表示部と、
前記第1の発光素子に第1のモニタ電流が流されたときに生じる前記第1の駆動用トランジスタの第1の電圧値、及び前記第2の発光素子に第2のモニタ電流が流されたときに生じる前記第2の駆動用トランジスタの第2の電圧値をそれぞれ検出する検出部と、
前記第1の電圧及び前記第2の電圧がそれぞれ制御信号として入力され、前記第3の発光素子の発光を制御するビデオ信号を補正し、前記第3の駆動トランジスタのゲート端子に補正されたビデオ信号を出力する変換回路部とを有し、
前記第1のモニタ部と、前記第2のモニタ部と、前記表示部の画素構成が同じであることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
第1有機EL素子に入力された第1のモニタ電流に対応する第1の駆動用トランジスタの第1の電圧を検出し、
前記第1有機EL素子に入力された第2のモニタ電流に対応する前記第1の駆動用トランジスタの第2の電圧を検出し、
前記第1の電圧及び前記第2の電圧を用いて、第2有機EL素子に入力されるビデオデータを補正することを特徴とする表示装置の駆動用方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記補正は、前記第1の電圧及び前記第2の電圧から、前記第1有機EL素子及び第1の駆動用トランジスタにおける電圧の閾値を求め、前記閾値に応じて補正することを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記第1の電圧を検出した後、スイッチを切り替えることで、前記第2の電圧を検出することを特徴とする表示装置の駆動用方法。
【請求項6】
第1有機EL素子に入力された第1のモニタ電流に対応する第1の駆動用トランジスタの第1の電圧を検出し、
第2有機EL素子に入力された第2のモニタ電流に対応する第2の駆動用トランジスタの第2の電圧を検出し、
前記第1の電圧及び前記第2の電圧を用いて、第3有機EL素子に入力されるビデオデータを補正することを特徴とする表示装置の駆動用方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記補正は、前記第1の電圧から前記第1有機EL素子及び第1の駆動用トランジスタにおける電圧の第1の閾値と、前記第2の電圧から前記第2有機EL素子及び第2の駆動用トランジスタにおける電圧の第2の閾値とを求め、前記第1閾値及び前記第2の閾値に応じて補正することを特徴とする表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−221127(P2011−221127A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87650(P2010−87650)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】