説明

表示装置および光学装置

【課題】小型で視認性が良く、しかも安定な特性を持つ表示装置を提供すること。
【解決手段】一方の面から被写体光L1を入射し、他方の面へ透過させる基板32と、基板32内に設けられ、光源40からの光を基板32の所定位置に導く導光路34と、基板32内に設けられ、導光路34を通して導かれた光を被写体光が透過する方向に導く光路変更手段36とを有する表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、必要な情報を表示することが可能な表示装置および光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラなどの光学装置において、光学レンズなどを通して得られる被写体光に対して、必要な情報を重ねて表示させること(いわゆるスーパーインポーズ表示)が可能な表示装置が知られている。
【0003】
特許文献1では、液晶散乱の暗セグメントに側方からLED光を当て、散乱したLED光の一部を接眼部に導き明光としてスーパーインポーズ表示を行っている。
【0004】
しかしながら、従来の表示装置では、散乱光の一部を、接眼部に導いているため、観察者の目に届く光量が少なく、被写体が暗い場合に視認性が悪くなると言う課題を有している。
【特許文献1】特開2002−72333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、視認性が良い表示装置および光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る表示装置は、
一方の面から被写体光を入射し、他方の面へ透過させる基板(32)と、
前記基板(32)内に設けられ、光源からの光を前記基板(32)の所定位置に導く導光路(34)と、
前記基板内に設けられ、前記導光路(34)を通して導かれた光を前記被写体光が透過する方向に反射させる光路変更手段(36)とを有する。
【0007】
好ましくは、前記光路変更手段は、前記導光路を通して導かれた光を前記被写体光が透過する方向へ反射させる反射面(36)である。
【0008】
本発明に係る表示装置は、
前記導光路(34)の前記光路変更手段(36)と反対側の端部に前記光源からの光を入射させる投光部(40)と、
前記投光部(40)からの光を前記導光路(34)に入射させるか否かを制御する制御部(50)と、をさらに有していても良い。
【0009】
好ましくは、前記導光路と前記光路変更手段が複数組設けられ、
前記投光部は、複数の前記導光路のそれぞれに光を入射させることが可能であり、
前記制御部は、複数の前記導光路のそれぞれに対して前記投光部からの光を入射させるか否かを制御可能である。
【0010】
本発明に係る表示装置は、前記基板の前記被写体光の入射側に設けられ、前記被写体光の透過を制御可能な部分を有する第2の基板(31)を具備していてもよい。
【0011】
前記制御部(50)は液晶利用素子を用いた光シャッタであっても良い。また、前記反射面(36)は、波長選択性を有していても良い。
【0012】
本発明に係る光学装置は、
上記に記載の表示装置(30)と、
被写体からの光束を前記表示装置に導く撮像光学系(20)とを有する。
【0013】
なお、上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために、実施形態を示す図面の符号に対応つけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。更に、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る表示液晶パネルを含むカメラの概略断面図、
図2は図1に示す明光表示パネルの平面図、
図3(A)は図2に示すIIIA-IIIA線に沿う概略断面図、
図3(B)は図3(A)に示す導光路と反射面の詳細を示す斜視図、
図3(C)は図2に示すIIIC-IIIC線に沿う概略断面図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る一眼レフカメラ2は、カメラボディ4を有し、カメラボディ4のレンズマウント部6には、撮影レンズを備えるレンズ鏡筒20が交換可能に装着される。一眼レフカメラ2としては、記録媒体8として、銀塩フィルムを用いるフィルム式カメラでも、記録媒体8としてCCDやCMOS等の撮像素子が用いられる一眼レフ方式のデジタルカメラでもよい。CCDやCMOS等の撮像素子から成る記録媒体8の前面には、通常、光学ローパスフィルタ8aが装着してある。
【0016】
レンズマウント部6と記録媒体8との間には、被写体からの被写体光L1をファインダ光学系へと反射するクイックリターンミラー10が配設されている。記録媒体8とクイックリターンミラー10との間にはシャッタ9が設けられている。
【0017】
図1において、クイックリターンミラー10の下方には、AFセンサユニット7が配置してあり、ミラー10の背面に具備してある補助ミラー10aにより被写体光L1の一部を取り込み、オートフォーカス(AF)動作のためのセンシングを行うようになっている。オートフォーカス信号はAFセンサユニットからカメラの制御回路に送り込まれる。
【0018】
記録媒体8の画像結像面と光学的に共役な位置の近傍には、フォーカシングスクリーン12が配置されている。被写体からの被写体光L1はクイックリターンミラー10に反射されて、フォーカシングスクリーン12で結像し、その画像は、ペンタプリズム16およびファインダユニット18を介して、ファインダ観察者により視認される。なお、撮影の際には、クイックリターンミラー10が跳ね上がることにより被写体光L1の光路上から退避し、記録媒体8上に被写体像が結像される。
【0019】
カメラボディ4内には、ファインダ装置14が内蔵してある。ファインダ装置14は、フォーカシングスクリーン12、セグメント表示パネル31、明光表示ユニット30、ペンタプリズム16およびファインダユニット18を有する。
【0020】
本実施形態では、スーパーインポーズ表示を行うために、フォーカシングスクリーン12と、ペンタプリズム16との間に、明光表示ユニット30およびセグメント表示パネル31が配置してある。明光表示ユニット30は、セグメント表示パネル31に対してペンタプリズム16側に位置する。
【0021】
セグメント表示パネル31は、特に限定されないが、たとえばPN型液晶(Polymer Network型液晶)パネルで構成される。PN型液晶パネルでは、透明基板間にネットワーク状(立体的網目状)の高分子と液晶物質が封入してある。一対の透明基板の表面にそれぞれ形成してある透明電極間に電界を発生させたり、発生を止めたりすることにより、所望の表示セグメントに対応する液晶部分を選択的に光散乱部分とすることができる。
【0022】
表示セグメントに対応する液晶部分が光散乱部分となることにより、その部分では、図1に示す被写体光L1が透過せず、図2に示すように、ペンタプリズム16側から見て、表示セグメント31aが暗表示として表示される。表示セグメント31aのパターン形状としては、特に限定されないが、本実施形態では、オートフォーカス制御を行う際に選択されるフォーカスエリアを示すパターン形状にしてある。なお、暗表示とは、被写体光L1が部分的に遮られることにより、ファインダ観察者の目には暗い暗部として視認される表示である。
【0023】
複数の表示セグメント31aのうちの選択的な暗表示は、図1に示すサブミラー10aによりAFセンサユニット7に導かれた被写体光L1の一部を利用して行われるオートフォーカス(AF)制御に連動して行われる。なお、図2では、セグメント表示パネル31は、明光表示ユニットにおける透明基板32の背後に隠れている。また、図3(A)〜図3(C)では、セグメント表示パネルの図示を省略している。
【0024】
図2および図3(A)〜図3(C)に示すように、明光表示ユニット30は、セグメント表示パネル31とほぼ同じサイズの透明基板32を有する。透明基板32の表面には、複数の導光路(導波路でも良い)34が形成してある。
【0025】
導光路34は、たとえば透明基板の表面に、所定パターンで不純物などをドープし、導光路34における屈折率を透明基板32に対してわずかに高くすることにより形成される。たとえば、導光路34の屈折率は、透明基板32の屈折率よりも高く設定してあり、導光路34に入射した照明光L2は、導光路と周囲との間で全反射を繰り返しながら導光路内部を伝搬する。なお、導光路34は、不純物ドープ以外の他の方法で形成しても良い。また、透明基板32としては、特に限定されないが、ガラス基板などが用いられる。
【0026】
各導光路34の始点端34aは、矩形状の透明基板32の一辺位置に、当該一辺に沿って略等間隔に配置される。各導光路34の終点端34bは、図2に示すように、表示セグメント31aに対応する位置に設けられる。すなわち、導光路34の数と、表示セグメント31aの数は一致する。
【0027】
図3(A)および図3(B)に示すように、導光路34の終点端34bでは、透明基板32の表面に、断面台形の凹部35が形成してあり、凹部35における一方の側壁が各導光路34の終点端34bとなっており、他方の側壁が反射面36となっている。反射面36に波長選択性を持たせるために、反射面36には特殊コーティングが施してあっても良い。好ましくは、反射面36は、被写体光L1における可視域波長の光の大部分は通し、導光路34の終点端34bから出射する照明光L2のみを反射することが好ましい。
【0028】
各導光路34の始点端34aには、図2および図3(A)に示すように、光スイッチ機構50を介して、導光板44が装着してある。導光板44の前面には、円筒型レンズ42および単数または複数の光源40が配置してある。光源40としては、特に限定されず、たとえば赤い光を発するLEDなどが用いられるが、その他の色を発するLEDであっても良い。また、光源40としては、LED以外のその他の光源であっても良い。
【0029】
なお、反射面36に波長選択性を持たせる場合には、光源40から発する照明光L2は、人間の目が認識することができる可視域光の波長の上限近傍の光であることが好ましい。このような照明光L2のみを反射面36で反射させ、透明基板32を通過する被写体光L1における可視域光の大部分を反射面36で透過させることができるからである。
【0030】
円筒型レンズ42は、光源40からの光を集光して導光板44の内部に均一に導くためのものである。また、導光板44は、円筒型レンズ42により内部に導かれた照明光L2を光スイッチ機構50の方向に平面状に均一に導くためのものである。
【0031】
光スイッチ機構50は、たとえば円筒型レンズ42と同様に細長いPN型液晶パネル(高分子分散型液晶パネルでも良い)で構成され、導光路34の各始点端34a毎に光透過のオン・オフ制御が可能になっている。
【0032】
たとえば図2に示すように、光シャッタ機構50における所定の始点端34aの位置50aで光透過許可となった場合には、その光透過許可位置50aでは、導光板44からの照明光L2が該当する導光路34のみに入り込み、導光路34を通り、終点端34bから出射され、反射面36で反射し、図1に示すペンタプリズム16へと入射する。
【0033】
その結果、ファインダ観察者の目には、図2に示すように、特定の表示セグメント31bにおいて、反射面36からの照明光L2が強く光って見えることになり、明光表示として、選択された表示セグメント31bを認識することができる。明光表示を行う表示セグメント31bの選択は、カメラの制御部からの信号に基づき、光シャッタ機構50の光透過許可位置50aを選択することで行われる。選択される表示セグメント31bは、単一の表示セグメント31aであっても良いし、全ての表示セグメント31aであっても良い。
【0034】
なお、各導光路34は、前述したように透明基板32をベースとして作られており、透明基板32に対する屈折率の変化は僅かであり、透明基板32を透過する被写体光L1のファインダ視認への影響はほとんど無視できる。また、導光路34へ入射した照明光L2は、導光路34の内部に閉じこめられた状態で伝搬するためにファインダユニット18の観察者の目に視認されることはない。さらに、上述したように、照明光L2のみを反射面36で反射させ、透明基板32を通過する被写体光L1における可視域光の大部分を反射面36で透過させるため、反射面36の部分で、被写体光L1の視認が遮られることはほとんど無い。
【0035】
本実施形態では、被写体光L1が暗い場合でも、図2に示すように、特定の表示セグメント31bにおいて、明光表示として、選択された表示セグメント31bを認識することができる。すなわち、本実施形態では、暗光表示としての表示セグメント31aの視認性低下を防止することができる。
【0036】
しかも本実施形態では、明光表示ユニット30は、コンパクトであり、ファインダ装置14の全体形状が大型化することを避けることができる。さらに本実施形態では、光源40からの照明光L2を、選択された導光路34を通して反射面36で反射させ、ペンタプリズム16方向に導くために、選択された表示セグメント31bの明光表示が十分な光量で安定しており、視認性などの特性も安定している。
【0037】
なお、本実施形態は、種々に改変することができる。たとえば導光路34の横断面形状は四角形に限らず、その他の形状であっても良い。また、導光路34は、透明基板32の表面近傍の内部に埋め込むように形成しても良い。また、上述した実施形態において、フォーカシングスクリーンとペンタプリズム16との間には、明光表示ユニットのみを配置し、セグメント表示パネル31を省略しても良い。
【0038】
さらに、明光表示ユニット30における長方形状の透明基板32の一辺位置にのみ導光路34の始点端34aを集めたが、その他の辺位置に、導光路34の始点端34aを分散させて配置しても良い。ただし、その場合には、光源40などを、導光路34の始点端34aの位置に合わせて複数配置する必要がある。
【0039】
さらにまた上述した実施形態では、反射面36は、透明基板32の表面に形成された凹部35の側面により形成したが、別の実施形態では、凹部35を透明体で埋めて、その透明体と透明基板との境界面に反射面36を形成しても良い。
【0040】
また、上述した実施形態では、表示装置をカメラに適用したが、カメラに限らず、その他のファインダ機能を持つ光学装置にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係る表示液晶パネルを含むカメラの概略断面図である。
【図2】図2は図1に示す明光表示パネルの平面図である。
【図3】図3(A)は図2に示すIIIA-IIIA線に沿う概略断面図、図3(B)は図3(A)に示す導光路と反射面の詳細を示す斜視図、図3(C)は図2に示すIIIC-IIIC線に沿う概略断面図である。
【符号の説明】
【0042】
2… カメラ
14… ファインダ装置
30… 明光表示ユニット
31… セグメント表示パネル
32… 透明基板
34… 導光路
36… 反射面
40… 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面から被写体光を入射し、他方の面へ透過させる基板と、
前記基板内に設けられ、光源からの光を前記基板の所定位置に導く導光路と、
前記基板内に設けられ、前記導光路を通して導かれた光を前記被写体光が透過する方向に導く光路変更手段と、
を有する表示装置。
【請求項2】
前記光路変更手段は、前記導光路を通して導かれた光を前記被写体光が透過する方向へ反射させる反射面である請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記導光路の前記光路変更手段と反対側の端部に前記光源からの光を入射させる投光部と、
前記投光部からの光を前記導光路に入射させるか否かを制御する制御部と、
を有する請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記導光路と前記光路変更手段が複数組設けられ、
前記投光部は、複数の前記導光路のそれぞれに光を入射させることが可能であり、
前記制御部は、複数の前記導光路のそれぞれに対して前記投光部からの光を入射させるか否かを制御可能である請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記基板の前記被写体光の入射側に設けられ、前記被写体光の透過を制御可能な部分を有する第2の基板を具備した請求項1〜4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項6】
前記制御部は液晶利用素子を用いた光シャッタであることを請求項3または4に記載の表示装置。
【請求項7】
前記光路変更手段は、波長選択性を有する請求項1〜6のいずれかに記載の表示装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の表示装置と、
被写体からの光束を前記表示装置に導く撮像光学系と
を備えた光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−233691(P2008−233691A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75491(P2007−75491)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】