説明

表示装置および電子機器

【課題】駆動用トランジスタのゲートと有機EL素子のカソードとが画素内で電気的にショートしにくい配線構造を採用し、欠陥画素や線状の欠陥が発生しないようにすること。
【解決手段】本発明は、有機EL素子1D、書き込みトランジスタ1A、駆動トランジスタ1B、保持容量1C、補助容量1Jを備える画素が行列状に配置される構成において、保持容量1Cと補助容量とが隣接して配置され、保持容量1Cの駆動トランジスタ1Bのゲート電極と導通する配線と、補助容量1Jの有機EL素子1Dのカソードと導通する配線とが異なる層に設けられている表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および電子機器に関する。詳しくは、電気光学素子を含む画素が行列状(マトリクス状)に配置されてなる平面型(フラットパネル型)の表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示を行う表示装置の分野では、発光素子を含む画素(画素回路)が行列状に配置されてなる平面型の表示装置が急速に普及している。平面型の表示装置としては、例えば有機薄膜に電界をかけると発光する現象を利用した有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた有機EL表示装置が開発され、商品化が進められている。
【0003】
有機EL素子は、10V以下の印加電圧で駆動できるために低消費電力であり、また自発光素子であることから、液晶表示装置に必須の光源(バックライト)が不要であるという特徴がある。さらに、有機EL素子の応答速度が数μsec程度と非常に高速であるために動画表示時の残像が発生しない。
【0004】
有機EL表示装置では、液晶表示装置と同様、その駆動方式として単純(パッシブ)マトリクス方式とアクティブマトリクス方式を採ることができる。近年では、画素回路内に能動素子、例えば絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(一般には、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ))を設けたアクティブマトリクス方式の表示装置の開発が盛んに行われている。
【0005】
ところで、一般的に、有機EL素子のI−V特性(電流−電圧特性)は、時間が経過すると劣化(いわゆる、経時劣化)することが知られている。また、駆動トランジスタの閾値電圧Vthや、駆動トランジスタのチャネルを構成する半導体薄膜の移動度(以下、「駆動トランジスタの移動度」と記述する)μが経時的に変化したり、製造プロセスのばらつきによって画素ごとに異なったりする。
【0006】
そこで、これらの影響を受けることなく、有機EL素子の発光輝度を一定に保つようにするために、有機EL素子の特性変動に対する補償機能、さらには駆動トランジスタの閾値電圧Vthの変動に対する補正(以下、「閾値補正」と記述する)や、駆動トランジスタの移動度μの変動に対する補正(以下、「移動度補正」と記述する)の各補正機能を画素回路の各々に持たせる構成を採っている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2006−133542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の画素回路では、保持容量と補助容量とが隣接して配置され、これらの容量に接続される配線が同一層に設けられている。ここで、同一層の配線間では、製造工程中にダスト等の付着でショートする危険性がある。この配線間のショートは、これらと導通する駆動用トランジスタのゲートと有機EL素子のカソードとのショートの原因となる。駆動トランジスタのゲートと有機EL素子のカソードとのショートは、ショートが発生した欠陥画素が非発光となるだけでなく、その転送前段数画素において輝度変動エリアが線状に視認されるという問題点が生じる。視認性の観点から、非発光画素は表示エリア内の個数による規格を設けることが、輝度変動、特に輝度上昇はたとえ1画素であっても許容されない。特に表示エリアで発生した場合には線状に視認されるという問題が生じる。
【0009】
本発明は、駆動用トランジスタのゲート電極とカソード電極とが電気的にショートすることを防止し、このショートによる非発光画素と輝度変動エリアが線状の欠陥として視認されないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電気光学素子の第1電極と駆動トランジスタのソース電極とが接続され、駆動トランジスタのゲート電極と書き込みトランジスタのソース電極またはドレイン電極とが接続され、駆動トランジスタのゲート−ソース電極間に保持容量が接続され、電気光学素子の第1電極と第2電極との間に補助容量が接続される回路構成を含む画素が行列状に配置された画素アレイ部を備え、保持容量と補助容量とが隣接して配置され、保持容量の駆動トランジスタのゲート電極と導通する配線と、補助容量の電気光学素子の第2電極と導通する配線とが異なる層に設けられている表示装置である。また、この表示装置を本体筐体に設けた電子機器である。
【0011】
このような本発明では、保持容量の駆動トランジスタのゲート電極と導通する配線と、補助容量の電気光学素子の第2電極と導通する配線とが異なる層に設けられていることから、これらの配線間でのショートを効果的に回避できるようになる。
【0012】
ここで、電気光学素子は、主として有機EL素子であり、第1電極はアノード電極、第2電極はカソード電極である。また、上記異なる層に設けられる配線とは、基板上および基板上の絶縁膜上の平面に沿って設けられる主たる配線であり、層間に設けられるコンタクト等は含まない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動トランジスタのゲート電極と電気光学素子の第2電極との間の電気的なショートを効果的に回避でき、欠陥画素が非発光となるだけに止め、輝度変動エリアが線状に視認されることを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」と言う。)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.本実施形態の前提となる表示装置(システム構成、画素回路、回路動作)
2.駆動トランジスタのゲート−カソード間がショートした場合の問題点(等価回路、タイミング波形図、配線構造)
3.本実施形態の構成例(画素回路、システム構成、配線構造、駆動方法)
4.適用例(電子機器への各種適用例)
【0015】
<1.本実施形態の前提となる表示装置>
[システム構成]
図1は、本実施形態の前提となるアクティブマトリクス型表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。
【0016】
ここでは、一例として、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子、例えば有機EL素子(有機電界発光素子)を画素(画素回路)の発光素子として用いたアクティブマトリクス型有機EL表示装置の場合を例に挙げて説明するものとする。
【0017】
図1に示すように、有機EL表示装置100は、画素(PXLC)101が行列状(マトリクス状)に2次元配置されてなる画素アレイ部102と、当該画素アレイ部102の周辺に配置され、各画素101を駆動する駆動部とを有する構成となっている。画素101を駆動する駆動部としては、例えば、水平駆動回路103、書き込み走査回路104および電源供給走査回路105が設けられている。
【0018】
画素アレイ部102には、m行n列の画素配列に対して、画素行ごとに走査線WSL−1〜WSL−mと電源供給線DSL−1〜DSL−mとが配線され、画素列ごとに信号線DTL−1〜DTL−nが配線されている。
【0019】
画素アレイ部102は、通常、ガラス基板などの透明絶縁基板上に形成され、平面型(フラット型)のパネル構造となっている。画素アレイ部102の各画素101は、アモルファスシリコンTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)または低温ポリシリコンTFTを用いて形成することができる。低温ポリシリコンTFTを用いる場合には、水平駆動回路103、書き込み走査回路104および電源供給走査回路105についても、画素アレイ部102を形成する表示パネル(基板)上に実装することができる。
【0020】
書き込み走査回路104は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフト(転送)するシフトレジスタ等によって構成され、画素アレイ部102の各画素101への映像信号の書き込みに際して、走査線WSL−1〜WSL−mに順次書き込みパルス(走査信号)WS1〜WSmを供給することによって画素アレイ部102の各画素101を行単位で順番に走査(線順次走査)する。
【0021】
電源供給走査回路105は、クロックパルスckに同期してスタートパルスspを順にシフトするシフトレジスタ等によって構成される。電源供給走査回路105は、書き込み走査回路104による線順次走査に同期して、第1電位Vcc_Hと当該第1電位Vcc_Hよりも低い第2電位Vcc_Lで切り替わる電源供給線電位DS1〜DSmを電源供給線DSL−1〜DSL−mに選択的に供給する。これにより、画素101の発光/非発光の制御を行なう。
【0022】
水平駆動回路103は、信号供給源(図示せず)から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧(以下、単に「信号電圧」と記述する場合もある)Vsigと信号線基準電位Voのいずれか一方を適宜選択し、信号線DTL−1〜DTL−nを介して画素アレイ部102の各画素101に対して例えば行単位で書き込む。すなわち、水平駆動回路103は、映像信号の信号電圧Vinを行(ライン)単位で書き込む線順次書き込みの駆動形態を採っている。
【0023】
ここで、信号線基準電位Voは、映像信号の信号電圧Vinの基準となる電圧(例えば、黒レベルに相当する電圧)である。また、第2電位Vcc_Lは、信号線基準電位Voよりも低い電位、例えば、駆動トランジスタの閾値電圧をVthとするときVo−Vthよりも低い電位、好ましくはVo−Vthよりも十分に低い電位に設定される。
【0024】
[画素回路]
図2は、画素(画素回路)の具体的な構成例を示す回路図である。
【0025】
図2に示すように、画素101は、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子、例えば有機EL素子1Dを発光素子として有し、当該有機EL素子1Dに加えて、駆動トランジスタ1B、書き込みトランジスタ1Aおよび保持容量1Cを有する画素構成、すなわち2つのトランジスタ(Tr)と1つの容量素子(C)からなる2Tr/1Cの画素構成となっている。
【0026】
かかる構成の画素101においては、駆動トランジスタ1Bおよび書き込みトランジスタ1AとしてNチャネル型のTFTを用いている。ただし、ここでの駆動トランジスタ1Bおよび書き込みトランジスタ1Aの導電型の組み合わせは一例に過ぎず、これらの組み合わせに限られるものではない。
【0027】
有機EL素子1Dは、全ての画素101に対して共通に配線された共通電源供給線1Hにカソード電極が接続されている。駆動トランジスタ1Bは、ソース電極が有機EL素子1Dのアノード電極に接続され、ドレイン電極が電源供給線DSL(DSL−1〜DSL−m)に接続されている。
【0028】
書き込みトランジスタ1Aは、ゲート電極が走査線WSL(WSL−1〜WSL−m)に接続され、一方の電極(ソース電極/ドレイン電極)が信号線DTL(DTL−1〜DTL−n)に接続され、他方の電極(ドレイン電極/ソース電極)が駆動トランジスタ1Bのゲート電極に接続されている。
【0029】
保持容量1Cは、一方の電極が駆動トランジスタ1Bのゲート電極に接続され、他方の電極が駆動トランジスタ1Bのソース電極(有機EL素子1Dのアノード電極)に接続されている。また、補助容量1Jは、一方の電極が有機EL素子1Dのアノード電極に接続され、他方の電極が有機EL素子1Dのカソード電極に接続されている。
【0030】
2Tr/1Cの画素構成の画素101において、書き込みトランジスタ1Aは、書き込み走査回路104から走査線WSLを通してゲート電極に印加される走査信号WSに応答して導通状態となることにより、信号線DTLを通して水平駆動回路103から供給される輝度情報に応じた映像信号の信号電圧Vinまたは信号線基準電位Voをサンプリングして画素101内に書き込む。
【0031】
この書き込まれた信号電圧Vinまたは信号線基準電位Voは、駆動トランジスタ1Bのゲート電極に印加されるとともに保持容量1Cに保持される。駆動トランジスタ1Bは、電源供給線DSL(DSL−1〜DSL−m)の電位DSが第1電位Vcc_Hにあるときに、電源供給線DSLから電流の供給を受けて、保持容量1Cに保持された信号電圧Vinの電圧値に応じた電流値の駆動電流を有機EL素子1Dに供給し、当該有機EL素子1Dを電流駆動することによって発光させる。
【0032】
[有機EL表示装置の回路動作]
次に、上記構成の有機EL表示装置100の回路動作について、図3のタイミング波形図を基に、図4〜図6の動作説明図を用いて説明する。なお、図4〜図6の動作説明図では、図面の簡略化のために、書き込みトランジスタ1Aをスイッチのシンボルで図示している。また、有機EL素子1Dは容量成分を持っていることから、当該EL容量1Iについても図示している。
【0033】
図3のタイミング波形図においては、走査線WSL(WSL−1〜WSL−m)の電位(書き込みパルス)WSの変化、電源供給線DSL(DSL−1〜DSL−m)の電位DS(Vcc_H/Vcc_L)の変化、駆動トランジスタ1Bのゲート電位Vgおよびソース電位Vsの変化を表している。
【0034】
(発光期間)
図3のタイミング波形図において、時刻t1以前は有機EL素子1Dが発光状態にある(発光期間)。この発光期間では、電源供給線DSLの電位DSが第1電位Vcc_Hにあり、また、書き込みトランジスタ1Aが非導通状態にある。
【0035】
このとき、駆動トランジスタ1Bは飽和領域で動作するように設定されているために、図4(A)に示すように、電源供給線DSLから駆動トランジスタ1Bを通して当該駆動トランジスタ1Bのゲート−ソース間電圧Vgsに応じた駆動電流(ドレイン−ソース間電流)Idsが有機EL素子1Dに供給される。よって、有機EL素子1Dが駆動電流Idsの電流値に応じた輝度で発光する。
【0036】
(閾値補正準備期間)
そして、時刻t1になると、線順次走査の新しいフィールドに入り、図4(B)に示すように、電源供給線DSLの電位DSが第1電位(以下、「高電位」と記述する)Vcc_Hから、信号線DTLの信号線基準電位Vo−Vthよりも十分に低い第2電位(以下、「低電位」と記述する)Vcc_Lに切り替わる。
【0037】
ここで、有機EL素子1Dの閾値電圧をVel、共通電源供給線1Hの電位をVcathとするとき、低電位Vcc_LをVcc_L<Vel+Vcathとすると、駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsが低電位Vcc_Lにほぼ等しくなるために、有機EL素子1Dは逆バイアス状態となって消光する。
【0038】
次に、時刻t2で走査線WSLの電位WSが低電位側から高電位側に遷移することで、図4(C)に示すように、書き込みトランジスタ1Aが導通状態となる。このとき、水平駆動回路103から信号線DTLに対して信号線基準電位Voが供給されているために、駆動トランジスタ1Bのゲート電位Vgが信号線基準電位Voになる。また、駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsは、信号線基準電位Voよりも十分に低い電位Vcc_Lにある。
【0039】
このとき、駆動トランジスタ1Bのゲート−ソース間電圧VgsはVo−Vcc_Lとなる。ここで、Vo−Vcc_Lが駆動トランジスタ1Bの閾値電圧Vthよりも大きくないと、後述する閾値補正動作を行うことができないために、Vo−Vcc_L>Vthなる電位関係に設定する必要がある。このように、駆動トランジスタ1Bのゲート電位Vgを信号線基準電位Voに、ソース電位Vsを低電位Vcc_Lにそれぞれ固定して(確定させて)初期化する動作が閾値補正準備の動作である。
【0040】
(1回目の閾値補正期間)
次に、時刻t3で、図4(D)に示すように、電源供給線DSLの電位DSが低電位Vcc_Lから高電位Vcc_Hに切り替わると、駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsが上昇を開始し、1回目の閾値補正期間に入る。この1回目の閾値補正期間において、駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsが上昇することによって駆動トランジスタ1Bのゲート-ソース間電圧Vgsが所定の電位Vx1になり、この電位Vx1が保持容量1Cに保持される。
【0041】
続いて、この水平期間(1H)の後半に入った時刻t4で、図5(A)に示すように、水平駆動回路103から信号線DTLに対して映像信号の信号電圧Vinが供給されることにより、信号線DTLの電位が信号線基準電位Voから信号電圧Vinに遷移する。この期間では、他の行の画素に対する信号電圧Vinの書き込みが行われる。
【0042】
このとき、自行の画素に対して信号電圧Vinの書き込みが行われないようにするために、走査線WSLの電位WSを高電位側から低電位側に遷移させ、書き込みトランジスタ1Aを非導通状態とする。これにより、駆動トランジスタ1Bのゲート電極は信号線DTLから切り離されてフローティング状態になる。
【0043】
ここで、駆動トランジスタ1Bのゲート電極がフローティング状態にあるときは、駆動トランジスタ1Bのゲート−ソース間に保持容量1Cが接続されていることにより、駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsが変動すると、当該ソース電位Vsの変動に連動して(追従して)駆動トランジスタ1Bのゲート電位Vgも変動する。これが保持容量1Cによるブートストラップ動作である。
【0044】
時刻t4以降においても、駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsが上昇を続け、Va1だけ上昇する(Vs=Vo−Vx1+Va1)。このとき、ブートストラップ動作により、駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsの上昇に連動して、ゲート電位VgもVa1だけ上昇する(Vg=Vo+Va1)。
【0045】
(2回目の閾値補正期間)
時刻t5で次の水平期間に入り、図5(B)に示すように、走査線WSLの電位WSが低電位側から高電位側に遷移し、書き込みトランジスタ1Aが導通状態となると同時に、水平駆動回路103から信号線DTLに対して信号電圧Vinに代えて信号線基準電位Voが供給され、2回目の閾値補正期間に入る。
【0046】
この2回目の閾値補正期間では、書き込みトランジスタ1Aが導通状態になることで信号線基準電位Voが書き込まれるために、駆動トランジスタ1Bのゲート電位Vgが再び信号線基準電位Voに初期化される。このときのゲート電位Vgの低下に連動してソース電位Vsも低下する。そして再び、駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsが上昇を開始する。
【0047】
そして、この2回目の閾値補正期間において、駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsが上昇することによって駆動トランジスタ1Bのゲート-ソース間電圧Vgsが所定の電位Vx2になり、この電位Vx2が保持容量1Cに保持される。
【0048】
続いて、この水平期間の後半に入った時刻t6で、図5(C)に示すように、水平駆動回路103から信号線DTLに対して映像信号の信号電圧Vinが供給されることにより、信号線DTLの電位がオフセット電圧Voから信号電圧Vinに遷移する。この期間では、他の行(前回の書込み行の次の行)の画素に対する信号電圧Vinの書き込みが行われる。
【0049】
このとき、自行の画素に対して信号電圧Vinの書き込みが行われないようにするために、走査線WSLの電位WSを高電位側から低電位側に遷移させ、書き込みトランジスタ1Aを非導通状態とする。これにより、駆動トランジスタ1Bのゲート電極は信号線DTLから切り離されてフローティング状態になる。
【0050】
時刻t6以降においても、駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsが上昇を続け、Va2だけ上昇する(Vs=Vo−Vx1+Va2)。このとき、ブートストラップ動作により、駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsの上昇に連動して、ゲート電位VgもVa2だけ上昇する(Vg=Vo+Va2)。
【0051】
(3回目の閾値補正期間)
時刻t7で次の水平期間に入り、図5(D)に示すように、走査線WSLの電位WSが低電位側から高電位側に遷移し、書き込みトランジスタ1Aが導通状態となると同時に、水平駆動回路103から信号線DTLに対して信号電圧Vinに代えて信号線基準電位Voが供給され、3回目の閾値補正期間に入る。
【0052】
この3回目の閾値補正期間では、書き込みトランジスタ1Aが導通状態になることで信号線基準電位Voが書き込まれるために、駆動トランジスタ1Bのゲート電位Vgが再び信号線基準電位Voに初期化される。このときのゲート電位Vgの低下に連動してソース電位Vsも低下する。そして再び、駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsが上昇を開始する。
【0053】
駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsが上昇し、やがて、駆動トランジスタ1Bのゲート−ソース間電圧Vgsが当該駆動トランジスタ1Bの閾値電圧Vthに収束することにより、当該閾値電圧Vthに相当する電圧が保持容量1Cに保持される。
【0054】
上述した3回の閾値補正動作により、画素個々の駆動トランジスタ1Bの閾値電圧Vthが検出されて当該閾値電圧Vthに相当する電圧が保持容量1Cに保持されることになる。なお、3回の閾値補正期間において、電流が専ら保持容量1C側に流れ、有機EL素子1D側には流れないようにするために、有機EL素子1Dがカットオフ状態となるように共通電源供給線1Hの電位Vcathを設定しておくこととする。
【0055】
(信号書き込み期間&移動度補正期間)
次に、時刻t8で走査線WSLの電位WSが低電位側に遷移することで、図6(A)に示すように、書き込みトランジスタ1Aが非導通状態となり、同時に、信号線DTLの電位がオフセット電圧Voから映像信号の信号電圧Vinに切り替わる。
【0056】
書き込みトランジスタ1Aが非導通状態になることで、駆動トランジスタ1Bのゲート電極がフローティング状態になるが、ゲート−ソース間電圧Vgsが駆動トランジスタ1Bの閾値電圧Vthに等しいため、当該駆動トランジスタ1Bはカットオフ状態にある。したがって、駆動トランジスタ1Bにドレイン−ソース間電流Idsは流れない。
【0057】
続いて、時刻t9で、走査線WSLの電位WSが高電位側に遷移することで、図6(B)に示すように、書き込みトランジスタ1Aが導通状態になって映像信号の信号電圧Vinをサンプリングして画素101内に書き込む。この書き込みトランジスタ1Aによる信号電圧Vinの書き込みにより、駆動トランジスタ1Bのゲート電位Vgが信号電圧Vinとなる。
【0058】
そして、映像信号の信号電圧Vinによる駆動トランジスタ1Bの駆動の際に、当該駆動トランジスタ1Bの閾値電圧Vthが保持容量1Cに保持された閾値電圧Vthに相当する電圧と相殺されることによって閾値補正が行われる。閾値補正の原理については後述する。
【0059】
このとき、有機EL素子1Dは始めカットオフ状態(ハイインピーダンス状態)にあるために、映像信号の信号電圧Vinに応じて電源供給線DSLから駆動トランジスタ1Bに流れる電流(ドレイン−ソース間電流Ids)は有機EL素子1DのEL容量1Iに流れ込み、よって当該EL容量1Iの充電が開始される。
【0060】
このEL容量1Iの充電により、駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsが時間の経過と共に上昇していく。このとき既に、駆動トランジスタ1Bの閾値電圧Vthのばらつきは補正(閾値補正)されており、駆動トランジスタ1Bのドレイン−ソース間電流Idsは当該駆動トランジスタ1Bの移動度μに依存したものとなる。
【0061】
やがて、駆動トランジスタ1Bのソース電位VsがVo−Vth+ΔVの電位まで上昇すると、駆動トランジスタ1Bのゲート‐ソース間電圧VgsはVin+Vth−ΔVとなる。すなわち、ソース電位Vsの上昇分ΔVは、保持容量1Cに保持された電圧(Vin+Vth−ΔV)から差し引かれるように、換言すれば、保持容量1Cの充電電荷を放電するように作用し、負帰還がかけられたことになる。したがって、ソース電位Vsの上昇分ΔVは負帰還の帰還量となる。
【0062】
このように、駆動トランジスタ1Bに流れるドレイン−ソース間電流Idsを当該駆動トランジスタ1Bのゲート入力に、即ちゲート‐ソース間電圧Vgsに負帰還することにより、駆動トランジスタ1Bのドレイン−ソース間電流Idsの移動度μに対する依存性を打ち消す、即ち移動度μの画素ごとのばらつきを補正する移動度補正が行われる。
【0063】
より具体的には、映像信号の信号電圧Vinが高いほどドレイン−ソース間電流Idsが大きくなるために、負帰還の帰還量(補正量)ΔVの絶対値も大きくなる。したがって、発光輝度レベルに応じた移動度補正が行われる。また、映像信号の信号電圧Vinを一定とした場合、駆動トランジスタ1Bの移動度μが大きいほど負帰還の帰還量ΔVの絶対値も大きくなるために、画素ごとの移動度μのばらつきを取り除くことができる。移動度補正の原理については後述する。
【0064】
(発光期間)
次に、時刻t10で走査線WSLの電位WSが低電位側に遷移することで、図6(C)に示すように、書き込みトランジスタ1Aが非導通状態となる。これにより、駆動トランジスタ1Bのゲート電極は信号線DTLから切り離されてフローティング状態になる。
【0065】
駆動トランジスタ1Bのゲート電極がフローティング状態になり、それと同時に、駆動トランジスタ1Bのドレイン−ソース間電流Idsが有機EL素子1Dに流れ始めることにより、有機EL素子1Dのアノード電位は、駆動トランジスタ1Bのドレイン−ソース間電流Idsに応じて上昇する。
【0066】
有機EL素子1Dのアノード電位の上昇は、即ち駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsの上昇に他ならない。駆動トランジスタ1Bのソース電位Vsが上昇すると、保持容量1Cのブートストラップ動作により、駆動トランジスタ1Bのゲート電位Vgも連動して上昇する。
【0067】
このとき、ブートストラップゲインが1(理想値)であると仮定した場合、ゲート電位Vgの上昇量はソース電位Vsの上昇量に等しくなる。故に、発光期間中駆動トランジスタ1Bのゲート‐ソース間電圧VgsはVin+Vth−ΔVで一定に保持される。そして、時刻t11で信号線DTLの電位が映像信号の信号電圧Vinから信号線基準電位Voに切り替わる。
【0068】
以上の動作説明から明らかなように、本例では、信号書き込みおよび移動度補正が行われる1H期間と、当該1H期間に先行する2H期間の、計3H期間に亘って閾値補正期間を設けている。これにより、閾値補正期間として十分な時間を確保することができるために、駆動トランジスタ1Bの閾値電圧Vthを確実に検出して保持容量1Cに保持し、閾値補正動作を確実に行うことができる。
【0069】
なお、閾値補正期間を3H期間に亘って設けるとしたが、これは一例に過ぎず、信号書き込みおよび移動度補正が行われる1H期間で閾値補正期間として十分な時間を確保できるのであれば、先行する水平期間に亘って閾値補正期間を設定する必要はないし、また、高精細化に伴って1H期間が短くなり、閾値補正期間を3H期間に亘って設けても十分な時間を確保できないのであれば、4H期間以上に亘って閾値補正期間を設定することも可能である。
【0070】
<2.駆動トランジスタのゲート−カソード間がショートした場合の問題点>
[等価回路]
図7(A)は、図2に示した画素回路において駆動トランジスタ1Bのゲートgとカソード1Hとが電気的にショートした場合の等価回路を示すものである。また、動作タイミングとしては、図4(D)、図5(B)、図5(D)のように映像信号基準電位Voが書込まれている状態を例としている。
【0071】
このように駆動トランジスタ1Bのゲートgが低インピーダンスに配線されたカソード1Hと電気的にショートしていると、書き込みトランジスタ1Aがオン状態の際に、映像信号線DTLと駆動トランジスタ1Bのゲートgとカソード1Hが同通状態となる。したがって、映像信号線DTLに供給されている映像信号基準電位Voはカソード電位Vcathに引き込まれる。
【0072】
図7(B)は、図7(A)の欠陥が生じた際の表示状態を示す模式図である。欠陥画素、すなわち図7(A)に示すように駆動トランジスタ1Bのゲートgとカソード1Hとが電気的にショートしている画素は非発光となる。さらに、転送前段の数画素が輝度変動エリアとなる。輝度変動エリアは転送方向に依存し、必ず転送前段側に発生する。
【0073】
[タイミング波形図]
図8は、図7(A)の欠陥が生じた際のタイミング波形図である。また、図7においては、Vo>Vcathの関係にあることを例としている。このタイミング波形図では、Vn−6〜Vn+2が走査ライン番号における走査線のタイミングを示しており、欠陥画素がVnに相当している。また、DTLに映像信号電位の切り替わりを示している。図8(A)〜(L)の各期間は1水平期間(1H)に対応している。
【0074】
図7(A)に示すように、駆動トランジスタ1Bのゲートgとカソード1Hとが電気的にショートしていると、図8(F)〜(J)の期間で問題が生じる。すなわち、この期間で欠陥画素Vnの走査線WSLが高電位側に遷移すると、そのタイミングにおいて映像信号線DTLに供給されている電位がカソード電位Vcathに引き込まれる。
【0075】
その結果、画素Vn−4〜Vn−1においては、映像信号電位サンプリング直前の映像信号基準電位VoがVcathに引き込まれる。これにより、駆動トランジスタ1Bのゲートgへの入力振幅はVin=Vsig−VoではなくVin’=Vsig−Vcathとなる。
【0076】
図8においては、Vo>Vcathとしているため、画素Vn−4〜Vn−1には等価的に映像信号基準電位Voを基準とした場合に比べて高振幅が書込まれることになる。したがって、Vn−4〜Vn−1の期間は輝度上昇が発生する。その結果、欠陥画素より前段の数画素分に輝度上昇が発生して線状の輝度上昇エリアとして視認される。欠陥画素Vnについては映像信号電位Vsigもカソード電位Vcathに引き込まれるため非発光となる。
【0077】
[配線構造]
図9は、画素の配線構造を説明する図で、(A)は平面図、(B)(C)は(A)における破線部断面図である。図9(A)に示すパターンレイアウトのように、保持容量1Cと補助容量1Jとは、占有する面積とパターンレイアウト効率の観点から少なくとも互いのある一辺が隣接して配置されることが一般的である。
【0078】
図9(B)の断面図に示すように、保持容量1Cと補助容量1Jとは、一方の電極D1が各々ガラス基板上に隣接して配置され、ゲート絶縁膜M1を介して他方の電極がポリシリコンp−Siで一体となって設けられている。ポリシリコンp−Siとして低温ポリシリコンプロセスで形成される場合、保持容量1Cおよび補助容量1Jは、一方の電極D1を第1金属配線、他方の電極をポリシリコンp−Siとして平行平板で形成される。
【0079】
図9(C)では、図9(B)において、配線レイアウトと図7(A)の保持容量1Cおよび補助容量1Jの上下電極との関係を説明するため、図中括弧内に図7(A)の電極の符号を示している。保持容量1Cの一方の電極D1(g)である第1金属配線は駆動トランジスタ1Bのゲートgと接続され、他方の電極であるポリシリコンp−Si(s)は駆動トランジスタ1Bのソースsと接続される。また、補助容量1Jの一方の電極D1(1H)である第1金属配線は有機EL素子1Dのカソード1Hに接続され、他方の電極であるポリシリコンp−Si(s)は駆動トランジスタ1Bのソースsと接続される。
【0080】
しかしながら、低温ポリシリコンプロセスにおいては、製造時のダストなどによるパタン欠陥を完全に避けることは極めて困難であるため、TFT製造工程におけるレーザリペア技術も取り入れられている。その中でも、同層配線間でのパタン欠陥によるショートは層間配線間でのショートに比べて比率が非常に高い。
【0081】
つまり、図9において、保持容量1Cおよび補助容量1Jの一方の電極D1は同一層(第1金属配線)で隣接して設けられているため、製造プロセス中にダスト等が配線間に付着しやすく、ショートする可能性がある。この配線間のショートは、図7(A)に示す駆動トランジスタ1Bのゲートgと有機EL素子1Dのカソード(駆動トランジスタ1Bのソースs)との間でのショートとなり、欠陥画素および転送方向前段での起動変動を起こす原因となる。
【0082】
<3.本実施形態の構成例>
[画素回路]
図10は、本実施形態の一例を示す画素電位設定を説明するための回路図である。画素回路は、有機EL素子1D、駆動トランジスタ1B、書き込みトランジスタ1Aおよび保持容量1Cを有する。
【0083】
具体的には、有機EL素子1Dのアノード電極と駆動トランジスタ1Bのソース電極とが接続され、駆動トランジスタ1Bのゲート電極と書き込みトランジスタ1Aのソース電極またはドレイン電極とが接続されている。また、駆動トランジスタ1Bのゲート−ソース電極間に保持容量1Cが接続される。さらに、有機EL素子1Dのアノード(第1電極)−カソード(第2電極)間に補助容量1Jが接続されている。
【0084】
信号線DTLは、書き込みトランジスタ1Aのドレイン電極またはソース電極に接続されている。また、書き込みトランジスタ1Aのゲート電極には、図示しない走査線が接続され、所定のタイミングが与えられる。電源供給線DSLは、駆動トランジスタ1Bのドレイン電極に接続されている。
【0085】
このような画素回路の構成において、本実施形態では、保持容量1Cと補助容量1Jとが隣接して配置され、保持容量1Cの駆動トランジスタ1Bのゲート電極と導通する配線と、補助容量1Jの有機EL素子1Dのカソード電極と導通する配線とが異なる層に設けられている点に特徴がある。
【0086】
また、本実施形態では、上記の画素回路の構成において、保持容量1Cの駆動トランジスタ1Bのソース電極と導通する配線と、補助容量1Jの有機EL素子1Dのアノード電極と導通する配線とが異なる層に設けられているものでもある。
【0087】
これにより、保持容量1Cの駆動トランジスタ1Bのゲート電極と導通する配線と、補助容量1Jの有機EL素子1Dのカソード電極と導通する配線とが異なる層となるため、同一層に設けられる場合に比べて配線間でのショートを効果的に回避できるようになる。
【0088】
ここで、これらの配線とは、基板上および基板上の絶縁膜上の平面に沿って設けられる主たる配線であり、層間に設けられるコンタクト等は含まない。本実施形態では、これらの配線のうち一方は第1金属配線で構成され、他方は第1金属配線にゲート絶縁膜を介して形成されたポリシリコンによって構成されている。
【0089】
[システム構成]
図11は、本実施形態の一例を示すシステム構成図である。図11に示すように、有機EL表示装置100は、画素(PXLC)101が行列状(マトリクス状)に2次元配置されてなる画素アレイ部102と、当該画素アレイ部102の周辺に配置され、各画素101を駆動する駆動部とを有する構成となっている。画素101を駆動する駆動部としては、例えば、水平駆動回路103、書き込み走査回路104および電源供給走査回路105が設けられている。
【0090】
画素アレイ部102には、m行n列の画素配列に対して、画素行ごとに走査線WSL−1〜WSL−mと電源供給線DSL−1〜DSL−mとが配線され、画素列ごとに信号線DTL−1〜DTL−nが配線されている。これらの構成は図1に示すシステム構成と同じである。
【0091】
[配線構造]
図12、図13は、本実施形態の一例における配線構造を説明する図で、(A)は平面図、(B)(C)は(A)におけるa−a破線部断面図である。また、図13は、図12(A)におけるb−b破線部断面図である。図12(A)に示すパターンレイアウトのように、保持容量1Cと補助容量1Jとは、占有する面積とパターンレイアウト効率の観点から少なくとも互いのある一辺が隣接して配置される。
【0092】
ここで、保持容量1Cは、一方の電極D1と他方の電極であるポリシリコンp−Siとによる平行平板で形成され、補助容量1Jは、一方の電極D1と他方の電極であるポリシリコンp−Si’とによる平行平板で形成される。つまり、本実施形態では、保持容量1Cおよび補助容量1Jの他方の電極を構成するポリシリコンが一体ではなく分割されている。
【0093】
さらに、保持容量1Cの駆動トランジスタ1Bのゲートgと導通する電極と、補助容量1Jの有機EL素子1Dのカソード1Hと導通する電極とが異なる配線層に設けられている。すなわち、保持容量1Cの駆動トランジスタ1Bのゲートgと導通する電極か補助容量1Jの有機EL素子1Dのカソード1Hと導通する電極の一方を第1金属配線の層、他方をポリシリコンp−Siの層で構成している。
【0094】
図12(B)および(C)は、各々具体的な配線例を示している。なお、図中括弧内に示される符号は図10に示す電極の符号と対応している。
【0095】
先ず、図12(B)に示す具体例では、保持容量1Cは、第1金属配線である一方の電極D1(g)に駆動トランジスタ1Bのゲートgが接続され、他方の電極であるポリシリコンp−Si(s)に駆動トランジスタ1Bのソースsが接続されている。また、補助容量1Jは、第1金属配線である一方の電極D1(s)に駆動トランジスタ1Bのソースsが接続され、他方の電極であるポリシリコンp−Si’(1H)に有機EL素子1Dのカソード1Hを接続している。
【0096】
これにより、駆動トランジスタ1Bのゲートgと導通する保持容量1Cの電極D1(g)と、有機EL素子1Dのカソード1Hと導通する補助容量1Jの電極(ポリシリコンp−Si’(1H))とが異なる配線層に設けられることになる。つまり、これらの配線が同層にないことから、製造プロセスでダスト等によるショートが発生しにくい構造となる。
【0097】
また、上記の配線構造は、保持容量1Cおよび補助容量1Jの他方の電極間についても同様に異なる配線層に設けられることになる。したがって、互いのレイヤ位置関係が斜め方向に絶縁層を介した層間方向となるので、同層レイヤと比較してパタンショートを引き起こす可能性は極めて低くなる。
【0098】
次に、図12(C)に示す具体例では、保持容量1Cは、第1金属配線に一方の電極D1(s)に駆動トランジスタ1Bのソースsが接続され、他方の電極であるポリシリコンp−Si(g)に駆動トランジスタ1Bのゲートgが接続されている。また、補助容量1Jは、第1金属配線である一方の電極D1(1H)に有機EL素子1Dのカソード1Hが接続され、他方の電極であるポリシリコンp−Si’(s)に駆動トランジスタ1Bのソースsが接続されている。つまり、この配線構造は、上記図12(B)に示す各容量の電極の配線の接続関係が反対となったものである。
【0099】
これにより、駆動トランジスタ1Bのゲートgと導通する保持容量1Cの電極D1(g)と、有機EL素子1Dのカソード1Hと導通する補助容量1Jの電極(ポリシリコンp−Si’(1H))とが異なる配線層に設けられることになる。つまり、これらの配線が同層にないことから、製造プロセスでダスト等によるショートが発生しにくい構造となる。
【0100】
また、上記の配線構造は、保持容量1Cおよび補助容量1Jの他方の電極間についても同様に異なる配線層に設けられることになる。したがって、互いのレイヤ位置関係が斜め方向に絶縁層を介した層間方向となるので、同層レイヤと比較してパタンショートを引き起こす可能性は極めて低くなる。
【0101】
図13は、図12(A)におけるb−b破線部断面図である。図13では、図12(B)に示す電極の配線関係となっている。先に説明したように、保持容量1Cの駆動トランジスタ1Bのソースsと導通する電極(ポリシリコンp−Si(s))と、補助容量1Jの有機EL素子1Dのアノード(すなわち、駆動トランジスタ1Bのソースs)と導通する電極D1(s)とは異なる配線層に設けられている。しかし、これらの電極は同一ノードであることから、各々の電極間を導通させる必要がある。
【0102】
したがって、図13に示すように、補助容量1Jの電極D1(s)には層間絶縁膜M1、M2を貫通するコンタクトホールCH1を接続し、保持容量1Cの電極(ポリシリコンp−Si(s))には層間絶縁膜M2を貫通するコンタクトホールCH2を接続し、これらを第2金属配線D2で導通させている。
【0103】
なお、図12(C)に示す電極の配線関係では、図13に示す保持容量1Cおよび補助容量1Jの各々の電極の接続関係を反対にすれば同様である。
【0104】
[駆動方法]
図14は、本実施形態に係る表示装置の駆動方法を説明するタイミング波形図である。図14に示すタイミング波形図は、図3に示すタイミング波形図と同様、発光期間、閾値補正期間、サンプリング期間&移動度補正期間を繰り返している。
【0105】
上記説明した本実施形態の画素レイアウト(配線構造)によれば、保持容量1Cおよび補助容量1Jとが隣接されていても、駆動トランジスタ1Bのゲートgと有機EL素子1Dのカソード1Hとのショートが発生しにくいため、欠陥画素の発生を低減できることになる。このため、上記のような駆動方法によって、図8に示す非発光の欠陥画素が発生せず、図8(F)〜(J)の期間で生じる映像信号線DTLの電位のカソード電位Vcathへの引き込みも発生せず、輝度上昇画素も発生しないことになる。
【0106】
なお、上記実施形態では、画素101の電気光学素子として、有機EL素子を用いた有機EL表示装置に適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明はこの適用例に限られるものではなく、デバイスに流れる電流値に応じて発光輝度が変化する電流駆動型の電気光学素子(発光素子)を用いた表示装置全般に対して適用可能である。
【0107】
また、画素101の構成として、2つのトランジスタ(Tr)と1つの容量素子(C)からなる2Tr/1Cの画素構成の場合を例としてが、本発明はこれに限定されず、例えば4つのトランジスタ(Tr)と1つの容量素子(C)からなる4Tr/1Cの画素構成など、他の画素構成であっても適用可能である。
【0108】
<4.適用例>
以上説明した本実施形態に係る表示装置は、一例として、図15〜図19に示す様々な電子機器に適用される。例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなど、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0109】
このように、あらゆる分野の電子機器の表示装置として本実施形態に係る表示装置を用いることにより、表示画像の画質向上を図ることができるために、各種の電子機器において、良質な画像表示を行うことができる利点がある。
【0110】
なお、本実施形態に係る表示装置は、封止された構成のモジュール形状のものをも含む。例えば、画素アレイ部102に透明なガラス等の対向部に貼り付けられて形成された表示モジュールが該当する。この透明な対向部には、カラーフィルタ、保護膜等、更には、上記した遮光膜が設けられてもよい。尚、表示モジュールには、外部から画素アレイ部への信号等を入出力するための回路部やFPC(フレキシブルプリントサーキット)等が設けられていてもよい。
【0111】
以下に、本実施形態の表示装置が適用される電子機器の具体例について説明する。
【0112】
図15は、本実施形態が適用されるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。本適用例に係るテレビテレビジョンセットは、フロントパネル108やフィルターガラス109等から構成される映像表示画面部107を含み、その映像表示画面部107として本実施形態による表示装置を用いることにより作成される。
【0113】
図16は、本実施形態が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112として本実施形態による表示装置を用いることにより作製される。
【0114】
図17は、本実施形態が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123として本実施形態による表示装置を用いることにより作製される。
【0115】
図18は、本実施形態が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134として本実施形態による表示装置を用いることにより作製される。
【0116】
図19は、本実施形態が適用される携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含み、そのディスプレイ144やサブディスプレイ145として本実施形態による表示装置を用いることにより作製される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の前提となるアクティブマトリクス型有機EL表示装置の構成の概略を示すシステム構成図である。
【図2】画素(画素回路)の具体的な構成例を示す回路図である。
【図3】本発明の前提となるアクティブマトリクス型有機EL表示装置の動作説明に供するタイミング波形図である。
【図4】本発明の前提となるアクティブマトリクス型有機EL表示装置の回路動作の説明図(その1)である。
【図5】本発明の前提となるアクティブマトリクス型有機EL表示装置の回路動作の説明図(その2)である。
【図6】本発明の前提となるアクティブマトリクス型有機EL表示装置の回路動作の説明図(その3)である。
【図7】駆動トランジスタのショートによる影響を説明する図である。
【図8】欠陥が生じた際のタイミング波形図である。
【図9】画素の配線構造を説明する図で、(A)は平面図、(B)(C)は(A)における破線部断面図である。本実施形態の一例を示す画素電位設定を説明するための回路図である。
【図10】本実施形態の一例を示す画素電位設定を説明するための回路図である。
【図11】本実施形態の一例を示すシステム構成図である。
【図12】本実施形態の一例における配線構造を説明する図(その1)である。
【図13】本実施形態の一例における配線構造を説明する図(その2)である。
【図14】本実施形態に係る表示装置の駆動方法を説明するタイミング波形図である。
【図15】本実施形態が適用されるテレビジョンセットの外観を示す斜視図である。
【図16】本実施形態が適用されるデジタルカメラの外観を示す斜視図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。
【図17】本実施形態が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。
【図18】本実施形態が適用されるビデオカメラの外観を示す斜視図である。
【図19】本実施形態が適用される携帯電話機を示す外観図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【符号の説明】
【0118】
100…有機EL表示装置、101…画素(画素回路)、102…画素アレイ部、103…水平駆動回路、104…書き込み走査回路、105…電源供給走査回路、1A…書き込みトランジスタ、1B…駆動トランジスタ、1C…保持容量、1D…有機EL素子、1J…補助容量、DSL−1〜DSL−m…電源供給線、DTL−1〜DTL−n…信号線、WSL−1〜WSL−m…走査線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学素子の第1電極と駆動トランジスタのソース電極とが接続され、前記駆動トランジスタのゲート電極と書き込みトランジスタのソース電極またはドレイン電極とが接続され、前記駆動トランジスタのゲート−ソース電極間に保持容量が接続され、前記電気光学素子の第1電極と第2電極との間に補助容量が接続される回路構成を含む画素が行列状に配置された画素アレイ部を備え、
前記保持容量と前記補助容量とが隣接して配置され、前記保持容量の前記駆動トランジスタのゲート電極と導通する配線と、前記補助容量の前記電気光学素子の第2電極と導通する配線とが異なる層に設けられている
表示装置。
【請求項2】
電気光学素子の第1電極と駆動トランジスタのソース電極とが接続され、前記駆動トランジスタのゲート電極と書き込みトランジスタのソース電極またはドレイン電極とが接続され、前記駆動トランジスタのゲート−ソース電極間に保持容量が接続され、前記電気光学素子の第1電極と第2電極との間に補助容量が接続される回路構成を含む画素が行列状に配置された画素アレイ部を備え、
前記保持容量と前記補助容量とが隣接して配置され、前記保持容量の前記駆動トランジスタのソース電極と導通する配線と、前記補助容量の前記電気光学素子の第1電極と導通する配線とが異なる層に設けられている
表示装置。
【請求項3】
前記異なる層のうち一方の層は第1配線層、他方の層はポリシリコン層である
請求項1または2記載の表示装置。
【請求項4】
前記電気光学素子は、有機EL(Electro Luminescence)素子であり、
前記第1電極はアノード電極であり、
前記第2電極はカソード電極である
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
本体筐体に表示装置を備えており、
前記表示装置が、
電気光学素子の第1電極と駆動トランジスタのソース電極とが接続され、前記駆動トランジスタのゲート電極と書き込みトランジスタのソース電極またはドレイン電極とが接続され、前記駆動トランジスタのゲート−ソース電極間に保持容量が接続され、前記電気光学素子の第1電極と第2電極との間に補助容量が接続される回路構成を含む画素が行列状に配置された画素アレイ部を備え、
前記保持容量と前記補助容量とが隣接して配置され、前記保持容量の前記駆動トランジスタのゲート電極と導通する配線と、前記補助容量の前記電気光学素子の第2電極と導通する配線とが異なる層に設けられている
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−139809(P2010−139809A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316551(P2008−316551)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】