説明

表示装置の欠陥修正方法、表示装置およびその製造方法

【課題】表示装置において、近隣の他の配線に悪影響を与えることなく、配線の欠陥を修復することができるようにする。
【解決手段】表示装置の欠陥修正方法は、互いに隣接する2つの絵素電極31a,31bに挟まれた1つの隙間領域10において同一層内で互いに平行に延在する複数の配線11,12と、これらを覆うように設けられた上側絶縁層とを備える表示装置における、前記複数の配線のうちの第1配線の欠陥を修正する方法であって、前記欠陥としての断線箇所41を挟むように位置する第1,第2部位61,62において、前記上側絶縁層に第1,第2貫通孔63,64をそれぞれあける工程と、前記第1配線のうち第1貫通孔63内に露出した部分と前記第1配線のうち第2貫通孔64内に露出した部分とを電気的に接続するように、修復用導電膜54を形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の欠陥修正方法、表示装置およびその製造方法に関する。表示装置としては、たとえば液晶表示装置が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一種である液晶表示装置においては、ガラス基板上に多数の配線が設けられる。これらの基板上の配線に生じた欠陥としては、大きく分けて断線と短絡との2通りがあるが、これらの欠陥を修正する様々な方法が従来から研究開発されている。その一例が、国際公開WO2008/026352(特許文献1)に示されている。
【0003】
一方、液晶表示装置において、駆動速度向上、視野角改善などの表示性能改善目的で、いわゆる画素分割構造が検討されている。ここでいう「画素分割構造」とは、1つの画素を2つの副画素に分割し、それぞれ独立して駆動できる構造をいう。その一例が、特開2004−62146号公報(特許文献2)に示されている。このような構造においては、ソースラインすなわち信号線を2本用いることになる。たとえば、図25に示すように、基板上に平面的に配列された複数の絵素電極のうち互いに隣接する2つの絵素電極31a,31bに挟まれた1つの隙間領域10において1本ではなく2本の信号線1,2を配置した構造となる。図25ではTFT(Thin Film Transistor)などの構造は図示省略している。絵素電極の形状も実際には単なる長方形ではないが、説明の便宜のために長方形で示している。1つの隙間領域10にある2本の信号線1,2は、通常、同一層内で互いに平行に配置される。
【0004】
また、2本の信号線のみならず他の目的の配線も含めて、図26に示すように、1つの隙間領域に3本以上の配線が同一層内で互いに平行に配置される場合もある。図26に示した例では、1つの隙間領域10jの中に配線11,12,13,14が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2008/026352
【特許文献2】特開2004−62146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような画素分割構造などにおいては、1つの隙間領域に複数の配線が互いに平行に並ぶこととなる。表示装置を実現する上では、表示領域中に絵素電極が占める面積をできるだけ大きく確保することが望まれるので、絵素電極同士の間に生じる隙間領域の幅はできるだけ小さくすることが望まれる。その結果、1つの隙間領域の中では複数の配線が密集して並ぶこととなる。しかし、これらの複数の配線は用途がそれぞれ異なるので、互いに短絡することは避けなければならない。従来知られている修復方法の中には、1つの隙間領域の中の複数の配線のうち1本に欠陥がある場合、その修復のために近隣の他の配線との間で好ましくないリーク電流を生じるなどの悪影響を与えてしまうものもあった。
【0007】
そこで、本発明は、近隣の他の配線に悪影響を与えることなく、配線の欠陥を修復することができる、表示装置の欠陥修正方法、表示装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に基づく表示装置の欠陥修正方法は、平面的に配列された複数の絵素電極を有する基板と、上記複数の絵素電極のうち互いに隣接する2つの絵素電極に挟まれた1つの隙間領域において同一層内で互いに平行に延在する複数の配線と、上記複数の配線を覆うように設けられた上側絶縁層とを備える表示装置における、上記複数の配線のうちの第1配線の欠陥を修正する方法であって、上記第1配線の上記欠陥の箇所を挟むように位置する第1,第2部位において、上記第1配線がそれぞれ露出するように上記上側絶縁層に第1,第2貫通孔をそれぞれあける工程と、上記第1配線のうち上記第1貫通孔内に露出した部分と上記第1配線のうち上記第2貫通孔内に露出した部分とを電気的に接続するように、上記第1部位と上記第2部位とを一体的に覆う修復用導電膜を、レーザCVD加工によって形成する工程とを含む。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に基づく表示装置は、平面的に配列された複数の絵素電極を有する基板と、上記複数の絵素電極のうち互いに隣接する2つの絵素電極に挟まれた1つの隙間領域において同一層内で互いに平行に延在する複数の配線と、上記複数の配線を覆うように設けられた上側絶縁層とを備え、上記複数の配線のうちの第1配線のうちの第1,第2部位において、上記第1配線がそれぞれ露出するように上記上側絶縁層に第1,第2貫通孔があけられており、上記第1配線のうち上記第1貫通孔内に露出した部分と上記第1配線のうち上記第2貫通孔内に露出した部分とを電気的に接続するように、上記第1貫通孔と上記第2貫通孔とを一体的に覆うように、レーザCVD加工によって設けられた修復用導電膜を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に基づく表示装置の欠陥修正方法によれば、修復用導電膜によってブリッジを構成した形となるので、欠陥を修正することができる。しかも、この修正作業は、配線の層の上を覆うように上側絶縁層が形成された後に行なわれるので、欠陥に関係する配線以外の配線は上側絶縁層によって保護されている。したがって、修復用導電層との間で新たな短絡が生じることは防がれる。
【0011】
本発明に基づく表示装置によれば、配線の途中にたとえ欠陥として断線箇所があったとしても、修復用導電膜によって電気的経路が確保されているので、この欠陥による影響をなくすことができ、欠陥が少なく信頼性の高い表示装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に基づく実施の形態1における表示装置の欠陥修正方法のフローチャートである。
【図2】表示装置における配線の断線箇所の近傍の平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に関する矢視断面図である。
【図4】本発明に基づく実施の形態1における表示装置の欠陥修正方法の工程S1を行なった後の状態の断面図である。
【図5】本発明に基づく実施の形態1における表示装置の欠陥修正方法の工程S2を行なった後の状態の平面図である。
【図6】図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図である。
【図7】本発明に基づく実施の形態2における表示装置の欠陥修正方法のフローチャートである。
【図8】表示装置における配線の短絡部の近傍の平面図である。
【図9】図8におけるIX−IX線に関する矢視断面図である。
【図10】本発明に基づく実施の形態2における表示装置の欠陥修正方法の工程S2を行なった後の状態の平面図である。
【図11】図10におけるXI−XI線に関する矢視断面図である。
【図12】本発明に基づく実施の形態2における表示装置の欠陥修正方法の工程S3を行なった後の状態の平面図である。
【図13】図12におけるXIII−XIII線に関する矢視断面図である。
【図14】1つの隙間領域の中に2本より多い配線が配置されている例の平面図である。
【図15】1つの隙間領域の中に2本より多い配線が配置されている場合の工程S2を行なった後の状態の平面図である。
【図16】1つの隙間領域の中に2本より多い配線が配置されている場合の工程S3を行なった後の状態の平面図である。
【図17】図16におけるXVII−XVII線に関する矢視断面図である。
【図18】工程S3の後にさらに保護絶縁層を設けた状態の断面図である。
【図19】本発明に基づく実施の形態3における表示装置の欠陥修正方法の工程S2を行なった後の状態の平面図である。
【図20】本発明に基づく実施の形態3における表示装置の欠陥修正方法の工程S4を行なった後の状態の平面図である。
【図21】本発明に基づく実施の形態3における表示装置の欠陥修正方法を複数本の配線で同時に生じている断線に対して適用した例の第1の説明図である。
【図22】本発明に基づく実施の形態3における表示装置の欠陥修正方法を複数本の配線で同時に生じている断線に対して適用した例の第2の説明図である。
【図23】本発明に基づく実施の形態3における表示装置の欠陥修正方法を複数本の配線で同時に生じている断線に対して適用した例の第3の説明図である。
【図24】本発明に基づく実施の形態4における表示装置の製造方法のフローチャートである。
【図25】従来技術に基づく表示装置の第1の例の一部分の平面図である。
【図26】従来技術に基づく表示装置の第2の例の一部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
(表示装置の欠陥修正方法)
図1〜図6を参照して、本発明に基づく実施の形態1における表示装置の欠陥修正方法について説明する。この表示装置の欠陥修正方法のフローチャートを図1に示す。表示装置の欠陥修正方法は、平面的に配列された複数の絵素電極を有する基板と、前記複数の絵素電極のうち互いに隣接する2つの絵素電極に挟まれた1つの隙間領域において同一層内で互いに平行に延在する複数の配線と、前記複数の配線を覆うように設けられた上側絶縁層とを備える表示装置における、前記複数の配線のうちの第1配線の欠陥を修正するための方法であって、前記第1配線の前記欠陥の箇所を挟むように位置する第1,第2部位において、前記第1配線がそれぞれ露出するように前記上側絶縁層に第1,第2貫通孔をそれぞれあける工程S1と、前記第1配線のうち前記第1貫通孔内に露出した部分と前記第1配線のうち前記第2貫通孔内に露出した部分とを電気的に接続するように、前記第1部位と前記第2部位とを一体的に覆う修復用導電膜を形成する工程S2とを含む。以下に詳しく説明する。
【0014】
図2に、表示装置の基板上における絵素電極および配線の位置関係を平面図で示す。基板上には複数の絵素電極31a,31bが配列されている。互いに隣接する2つの絵素電極31a,31bに挟まれた1つの隙間領域10において、複数の配線11,12が同一層内で互いに平行に延在している。配線11,12の一部または全部は、ソース配線(「信号線」ともいう。)であってよく、他の目的の配線であってもよい。
【0015】
本実施の形態で想定する欠陥は、図2に示すような断線である。図2では実際に配線11に断線箇所41が存在するが、本発明の適用は、断線箇所が実在する場合に限らず、断線が疑われる場合であってもよい。「第1配線」とは、欠陥が現に存在するか、または、欠陥が疑われる配線のことを指し、本実施の形態では、配線11が第1配線に該当する。複数の配線のうちいずれもが第1配線になりうる。
【0016】
図2におけるIII−III線に関する矢視断面図を図3に示す。基板51の上側に下側絶縁層52が形成されている。下側絶縁層52の上側に配線11が形成されている。配線11の上側に上側絶縁層53が形成されている。上側絶縁層53は単一膜であってもよく、複数の絶縁膜の集合体であってもよい。下側絶縁層52についても同様である。上側絶縁層53は図2で表示した領域の全域を覆っている。
【0017】
この状況下で、欠陥を修正するために、本実施の形態における欠陥修正方法では、まず工程S1を行なう。工程S1としては、複数の配線のうちの第1配線としての配線11の欠陥の箇所すなわち断線箇所41を挟むように位置する第1,第2部位61,62において、図4に示すように、配線11がそれぞれ露出するように上側絶縁層53に第1,第2貫通孔63,64をそれぞれあける。第1,第2貫通孔63,64をあける作業は、レーザ光の照射によって行なうことができる。
【0018】
次に工程S2として、図5、図6に示すように、配線11のうち第1貫通孔63内に露出した部分と配線11のうち第2貫通孔64内に露出した部分とを電気的に接続するように、第1部位61と第2部位62とを一体的に覆う修復用導電膜54を、レーザCVD加工によって形成する。図6は図5におけるVI−VI線に関する矢視断面図である。修復用導電層54は、たとえばアルミニウム、タングステン、銅、クロムおよびモリブデンのうちの少なくとも1つを含む材料で形成する。修復用導電膜54はたとえば膜厚約0.4μmに形成する。たとえばタングステンを主材料としてレーザCVD加工によって修復用導電層54を形成しようとした場合、W(CO)6分子をレーザ光によって分解し、上側絶縁層53および第1,第2貫通孔63,64の中に露出した配線11の上にタングステン薄膜を形成することにより行なう。ここでは、工程S2における修復用導電膜の形成をレーザCVD加工によって行なったが、修復用導電膜は他の公知技術によって形成してもよい。レーザCVD加工は好ましい方法の一例として挙げたものである。
【0019】
また、さらに絶縁層(図示せず)を形成し、修復用導電膜を保護する構成としてもよい。
【0020】
(作用・効果)
本実施の形態では、配線の欠陥に対して、配線のうち欠陥を挟む部位同士を上側導電膜の上側に形成される修復用導電膜で電気的に接続することとなるので、欠陥の箇所を迂回して修復用導電膜によってブリッジを構成した形となる。したがって、欠陥の種類が断線である場合には、この欠陥を修正することができる。この修正作業は、配線の層の上を覆うように上側絶縁層が形成された後に行なわれるので、欠陥に関係する第1配線以外の配線は上側絶縁層によって保護されている。したがって、たとえ修復用導電層が第1配線以外の配線の上側に達するように形成されても、第1配線以外の配線と修復用導電層との間で短絡が生じることは防がれる。
【0021】
なお、前記第1配線は、第1部位61と第2部位62との間に少なくとも1つの断線箇所を有することが好ましい。実際に断線箇所があれば、この欠陥修正方法の効果を実際に享受することができる。「少なくとも1つの断線箇所」とあるように、第1部位61と第2部位62との間には2以上の断線箇所があってもよい。その場合は、2以上の断線箇所を一括して迂回するように修復用導電層54のブリッジが形成された形となる。その場合、1つの修復用導電層54によって複数の断線箇所の修正を一括して済ませることができる。
【0022】
第1,第2貫通孔63,64をそれぞれあける工程S1は、第1,第2部位61,62に向けてレーザ光を照射することによって行なわれることが好ましい。レーザ光であれば精密に位置を制御しつつ貫通孔をあけることができるからである。
【0023】
修復用導電膜54は前記第1配線に沿って第1貫通孔63と第2貫通孔64とを結ぶ長手形状で設けられることが好ましい。図5では修復用導電膜54は第1貫通孔63と第2貫通孔64とを直接結ぶ線分状に形成されているが、必ずしもこのような線分状でなくてもよい。修復用導電膜54はより広い範囲を覆うように形成されてもよい。しかし、前記第1配線に沿って第1貫通孔63と第2貫通孔64とを結ぶ長手形状で設けられていれば、修復用導電膜54の無駄な部分が少なく、他の配線に悪影響を及ぼす程度を最小限にすることができる。
【0024】
(実施の形態2)
(表示装置の欠陥修正方法)
図7〜図13を参照して、本発明に基づく実施の形態2における表示装置の欠陥修正方法について説明する。この表示装置の欠陥修正方法のフローチャートを図7に示す。本実施の形態における表示装置の欠陥修正方法は、基本的には、実施の形態1で説明したような工程S1,S2を含む。ただし、本実施の形態における表示装置の欠陥修正方法では、工程S2における修復用導電膜の配置の仕方に条件があり、さらに工程S2より後に工程S3を含む。
【0025】
本実施の形態における表示装置の欠陥修正方法では、前記第1配線は、前記第1,第2部位の間に、他の導電部と電気的に連通する短絡部を有し、前記修復用導電膜を形成する工程S2においては、前記修復用導電膜は前記短絡部を迂回するように形成され、前記修復用導電膜を形成する工程S2より後に、前記第1部位と前記短絡部との間および前記第2部位と前記短絡部との間においてそれぞれ前記第1配線を断線させる工程S3を含む。「前記第1配線」の定義は実施の形態1で説明したものと同じである。短絡は欠陥の一種である。「短絡部」とは、第1配線が他のいずれかの導電層との間で不所望に導通された状態の部分をいう。図8は、表示装置の中で任意の4つの絵素電極31a,31b,31c,31dのコーナ部同士が集まっている部分を表示している。図8におけるIX−IX線に関する矢視断面図を図9に示す。図8、図9に示すように、この例では第1配線としての配線11が他の配線21と交差する部位において、多層構造内に異物43が混入していることによって、本来互いに電気的に別個であるはずの配線11と配線21とが電気的に接続された状態となっている。この部分を「短絡部」42と呼ぶものとする。たとえば配線11はソース配線であって、配線21はゲート配線であってよい。この欠陥修正方法について、より詳しく以下に述べる。
【0026】
工程S2として修復用導電膜を形成すること自体は実施の形態1で説明したことと同じである。ただし、本実施の形態における修復用導電膜は、実施の形態1で示した修復用導電膜54ではなく、図10、図11に示すように修復用導電膜54iとなっている。修復用導電膜54iは、図9に示したように短絡部42を迂回するように形成される。図11は図10におけるXI−XI線に関する矢視断面図である。図11では、第1,第2貫通孔63,64においては、修復用導電膜54iの断面が見えているが、第1貫通孔63と第2貫通孔64とを結ぶ中間部においては、修復用導電膜54iは紙面手前側に迂回しているので見えていない。修復用導電膜54iはできるだけ絵素電極や他の配線の上側を避けて配置されることが好ましいが、やむを得ない場合、図10に示すようにたとえば絵素電極31a,31cの上側を通過してもよい。絵素電極の上側はすべて上側絶縁層53によって覆われており、修復用導電膜54iは上側絶縁層53の上側に形成されるので、たとえ上下方向に重なっていても絵素電極31a,31cと修復用導電膜54iとが短絡することはない。
【0027】
工程S2の後に工程S3を行なう。工程S3とは、図12に示すように、第1部位61と短絡部42との間および第2部位62と短絡部42との間においてそれぞれ前記第1配線としての配線11を断線させる工程である。たとえばレーザ照射により断線部65,66が形成される。図12におけるXIII−XIII線に関する矢視断面図を図13に示す。図13に示すように、断線部65,66では、配線11の下面より深い位置にまで至るように凹部が形成されている。
【0028】
(作用・効果)
本実施の形態では、配線の欠陥としての短絡部に対して、配線のうち欠陥を挟む第1,第2部位の間を上側導電膜の上側に形成される修復用導電膜で電気的に接続し、なおかつ、第1,第2部位の内側において欠陥の箇所を挟み込むように配線を断線させるので、この欠陥を含む限られた区間の配線を電気的に孤立させることができ、なおかつ、その両側に延在する配線同士をつなぐように修復用導電膜によってブリッジを構成した形となる。したがって、欠陥の種類が短絡である場合であっても、短絡の影響をなくしつつ、配線としての導通を確保することができる。すなわち、この欠陥を修正することができる。この修正作業は、配線の層の上を覆うように上側絶縁層が形成された後に行なわれるので、欠陥に関係する第1配線以外の配線は上側絶縁層によって保護されている。したがって、たとえ修復用導電層が第1配線以外の配線の上側に達するように形成されても、第1配線以外の配線と修復用導電層との間で短絡が生じることは防がれる。
【0029】
本実施の形態では、1つの隙間領域10の中に配置された配線が合計2本である例について説明したが、1つの隙間領域10の中に配置された配線の数は2本より多くてもよい。たとえば図14に示すように、1つの隙間領域10jの中に4本の配線11,12,13,14が配置されていてもよい。その場合、欠陥を有する配線は、端のものとは限らず、図14に示すように端以外の配線であってもよい。図14においては配線12に異物43が混入していることによって短絡部42が生じている。この例では配線12が第1配線に相当する。
【0030】
この場合、工程S2として図15に示すように修復用導電層54jを形成すればよい。その後、工程S3として図16に示すように断線部65,66を形成すればよい。図16におけるXVII−XVII線に関する矢視断面図を図17に示す。図17では、修復用導電層54jが第2部位62に設けられた第2貫通孔64を通じて配線12に電気的に接続されている様子が示されている。
【0031】
この修正作業は、配線の層の上を覆うように上側絶縁層が形成された後に行なわれるので、欠陥に関係する配線以外の配線は上側絶縁層によって保護されている。したがって、たとえ修復用導電層が第1配線以外の配線の上側に達するように形成されても、第1配線以外の配線と修復用導電層との間で短絡が生じることは防がれる。ただし、寄生容量、クロストーク、短絡などの問題をより確実に回避するためには、修復用導電層は第1配線から見て配線の数が少ない側に迂回するように形成することが好ましい。図14〜図17で示した例では、第1配線としての配線12から見れば、図中右側には配線13,14の合計2本の配線があり、図中左側には配線11の合計1本の配線が存在する。したがって、修復用導電層は、より配線の数が少ない図中左側に迂回するように形成されている。
【0032】
なお、工程S2と工程S3との順序は逆になっていてもよい。その場合も所望の修復用導電層を形成することができる。ただし、先に工程S3で形成された断線部が工程S2において修復用導電層を形成する際の導電材料の飛散によって再び電気的に接続されてしまうことは避けるべきであり、そのためには工程S3より工程S2を先に行なうことが好ましい。
【0033】
図17に示した状態からさらに上面を覆うように絶縁層を形成してもよい。たとえば図18に示すように、保護絶縁層55を形成する。このようにすれば、修復用導電層54jが保護絶縁層55によって覆われるので、修復用導電層54jが他の配線と短絡することを防止でき、好ましい。
【0034】
(実施の形態3)
(表示装置の欠陥修正方法)
図19、図20を参照して、本発明に基づく実施の形態3における表示装置の欠陥修正方法について説明する。本実施の形態における表示装置の欠陥修正方法は、実施の形態1で説明したとおりの工程S1,S2を含み、さらに以下に述べる工程を含む。
【0035】
本実施の形態における表示装置の欠陥修正方法は、修復用導電膜を形成する工程S2より後に、レーザ光の照射によって前記修復用導電膜の不要部を除去することによって前記修復用導電膜の平面的外形を整える工程S4を含む。
【0036】
工程S2を終えた状態の一例を図19に示す。ここでは工程S2によって形成された修復用導電膜54kが他の配線12や絵素電極31aの上側にまで達するような広い範囲に形成されている。レーザCVD加工の精度が十分でない場合や、配線のピッチがきわめて小さい場合にはこのような状態になりうる。
【0037】
工程S4として、レーザ光を照射することによって図20に示すようになる。すなわち、修復用導電膜54kのうち配線11の上側の領域から左右にはみ出していた部分が除去される。こうして、修復用導電膜54kの平面的外形が整えられる。
【0038】
(作用・効果)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した効果が得られ、さらに、レーザCVD加工の精度が十分でない場合や、配線のピッチがきわめて小さい場合であっても、修復用導電膜の不要部が除去されるので、修復用導電膜を所望の領域内のみに形成することができる。これにより、修復用導電膜と他の導電膜との間での寄生容量、クロストーク、短絡などの問題をより確実に回避することができる。
【0039】
本実施の形態では、修復用導電膜の不要部を除去することしたが、修復用導電膜の不要部を除去する前の状態であっても、修復自体は既に成立している。なぜなら、修復用導電膜は上側絶縁層を介して載っている状態であって、接続すべき配線以外の配線からは電気的に隔離されているからである。修復用導電膜を形成した後に修復用導電膜の不要部を除去することは好ましいことであるが必須ではない。
【0040】
なお、図21に示すように、互いに隣接する2本の配線11,12の両方が断線している場合であっても、本実施の形態では対処可能である。図21に示される例では、断線箇所41a,41bをそれぞれ挟むように位置する第1部位61a,61bと第2部位62a,62bとの間でそれぞれ貫通孔をあけることとなる。その後、レーザCVD加工によって、図22に示すように修復用導電膜54nを形成する。この状態では2本の配線11,12に一体的にまたがって被覆するように修復用導電膜54nが形成されている。これに対して、工程S4におけるレーザ光の照射によって、修復用導電膜54nの不要部を除去し、平面的外形を整える。その結果、図23に示すようになる。このように、修復用導電膜を形成する時点で1本1本の配線ごとに区別してそれぞれ電気的に独立するように修復用導電膜を形成することができないような場合であっても、まず広い範囲でおおまかに修復用導電膜を形成した後で工程S4で不要部を除去することによって隣接する配線に属する修復用導電膜同士を分離させることができる。したがって、配線の配列ピッチが狭い場合であっても正確な修復を行なうことができる。
【0041】
(実施の形態4)
(表示装置の製造方法)
図24を参照して、本発明に基づく実施の形態4における表示装置の製造方法について説明する。この表示装置の製造方法のフローチャートを図24に示す。本実施の形態における表示装置の製造方法は、基板上に平面的に配列された複数の絵素電極を形成する工程S11と、前記複数の絵素電極のうち互いに隣接する2つの絵素電極に挟まれた1つの隙間領域において同一層内で互いに平行に延在する複数の配線を形成する工程S12と、前記複数の配線を覆うように上側絶縁層を形成する工程S13と、上述のいずれかの表示装置の欠陥修正方法を行なう工程S14とを含む。工程S11と工程S12とはいずれが先に行なわれてもよい。絵素電極と複数の配線とが同一層内に同一の材料で形成される場合、工程S11と工程S12とは同時に並行して行なわれるものであってもよい。工程S14で行なわれる表示装置の欠陥修正方法は、実施の形態1〜3のいずれで説明したものであってもよい。
【0042】
(作用・効果)
本実施の形態では、互いに隣接する2つの絵素電極に挟まれた1つの隙間領域において同一層内で互いに平行に延在する複数の配線が形成されているが、これらの複数の配線のうちのいずれかに欠陥が生じたとしても、工程S14を行なうことによって欠陥を円滑に修復することができるので、表示装置の生産作業の効率を上げることができ、さらに不良品として無駄になる製品を減らすことができる。
【0043】
(実施の形態5)
(表示装置)
本発明に基づく実施の形態5における表示装置について説明する。
【0044】
本実施の形態における表示装置は、図5、図6に示したように、平面的に配列された複数の絵素電極を有する基板51と、前記複数の絵素電極のうち互いに隣接する2つの絵素電極31a,31bに挟まれた1つの隙間領域10において同一層内で互いに平行に延在する複数の配線11,12と、前記複数の配線を覆うように設けられた上側絶縁層53とを備え、前記複数の配線のうちの第1配線としての配線11のうちの第1,第2部位61,62において、前記第1配線がそれぞれ露出するように上側絶縁層53に第1,第2貫通孔63,64があけられており、前記第1配線のうち第1貫通孔63内に露出した部分と前記第1配線のうち第2貫通孔64内に露出した部分とを電気的に接続するように、第1貫通孔63と第2貫通孔64とを一体的に覆うように設けられた修復用導電膜54を備える。
【0045】
(作用・効果)
本実施の形態における表示装置は、このような構成を備えているので、配線の途中にたとえ欠陥として断線箇所41があったとしても、修復用導電膜54によって第1配線の電気的経路が確保されているので、この欠陥による影響をなくすことができる。本実施の形態によれば、このようにして欠陥が少なく信頼性の高い表示装置とすることができる。
【0046】
修復用導電膜54はどのような方法で形成されたものであってもよいが、レーザCVD加工によって形成されたものであることが好ましい。
【0047】
なお、上記表示装置においては、前記第1配線は、第1部位61と第2部位62との間に少なくとも1つの断線箇所を有することが好ましい。このように断線箇所がある場合には、修復用導電膜54によって実際に修復処置が功を奏しているといえ、欠陥が少なく信頼性の高い表示装置とすることができる。
【0048】
なお、第1,第2貫通孔63,64はそれぞれレーザ光の照射によってあけられた貫通孔であることが好ましい。このような構成の表示装置であれば、貫通孔をあける作業をレーザ光の照射によって行なうことができるので、容易に高精度に貫通孔をあけることができ、その結果、信頼性の高い表示装置とすることができる。
【0049】
本実施の形態における表示装置の第1の局面としては、図5に示したように、修復用導電膜54は第1配線としての配線11に沿って第1,第2部位61,62を結ぶ長手形状で設けられていることが好ましい。このように設けられていれば、他の配線において近い位置にもうひとつの修復用導電膜を形成したとしても、他の配線の修復用導電膜と干渉することを避けることができるので、好ましい。
【0050】
本実施の形態における表示装置の第2の局面としては、図12に示すように、第1配線としての配線11は、第1,第2部位61,62の間に、他の導電部と電気的に連通する短絡部42を有し、修復用導電膜54iは短絡部42を迂回するように形成されており、第1部位61と短絡部42との間および第2部位62と短絡部42との間においてそれぞれ前記第1配線が断線していることが好ましい。図12に示した例ではこれらの断線は断線部65,66によって実現されている。この構成であれば、短絡部が両側で断線されることによって電気的に隔離された状態となっているので、短絡部による影響をなくすことができる。また、修復用導電膜が短絡部を迂回するようにして形成されていることによって電気的経路が確保されているので、第1配線の機能は維持することができる。
【0051】
なお、上記各実施の形態では、1つの隙間領域において同一層内で互いに平行に延在するように設けられる複数の配線の少なくとも一部がソース配線である例を想定して説明したが、これらの「複数の配線」はソース配線の方向に延在するものとは限らない。ゲート配線の方向に延在する「複数の配線」に関しても本発明は適用可能である。その場合、「複数の配線」の一部または全部がゲート配線であってもよい。ただし、ゲート配線の方向に延在する複数の配線に対して本発明を適用する場合は、絶縁層および修正用導電膜の層を新たに追加する必要がある。これに対して、ソース配線の方向に延在する複数の配線に対して本発明を適用する場合は、絶縁層および修正用導電膜の層を新たに追加する必要がないので、工程数の増加、コストの増大を回避することができる。したがって、本発明を適用するに当たっては、ソース配線の方向に延在する複数の配線に対して適用することが最適である。
【0052】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0053】
10,10j 隙間領域、11,12,13,14,21 配線、31a,31b,31c,31d 絵素電極、41,41a,41b 断線箇所、42 短絡部、43 異物、51 基板、52 下側絶縁層、53 上側絶縁層、54,54i,54j,54k,54n 修復用導電膜、55 保護絶縁層、61,61a,61b 第1部位、62,62a,62b 第2部位、63 第1貫通孔、64 第2貫通孔、65,66 断線部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面的に配列された複数の絵素電極を有する基板と、
前記複数の絵素電極のうち互いに隣接する2つの絵素電極に挟まれた1つの隙間領域において同一層内で互いに平行に延在する複数の配線と、
前記複数の配線を覆うように設けられた上側絶縁層とを備える表示装置における、前記複数の配線のうちの第1配線の欠陥を修正する方法であって、
前記第1配線の前記欠陥の箇所を挟むように位置する第1,第2部位において、前記第1配線がそれぞれ露出するように前記上側絶縁層に第1,第2貫通孔をそれぞれあける工程と、
前記第1配線のうち前記第1貫通孔内に露出した部分と前記第1配線のうち前記第2貫通孔内に露出した部分とを電気的に接続するように、前記第1部位と前記第2部位とを一体的に覆う修復用導電膜を形成する工程とを含む、表示装置の欠陥修正方法。
【請求項2】
前記第1配線は、前記第1部位と前記第2部位との間に少なくとも1つの断線箇所を有する、請求項1に記載の表示装置の欠陥修正方法。
【請求項3】
前記第1,第2貫通孔をそれぞれあける工程は、前記第1,第2部位に向けてレーザ光を照射することによって行なわれる、請求項1または2に記載の表示装置の欠陥修正方法。
【請求項4】
前記修復用導電膜は前記第1配線に沿って前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とを結ぶ長手形状で設けられる、請求項1から3のいずれかに記載の表示装置の欠陥修正方法。
【請求項5】
前記第1配線は、前記第1,第2部位の間に、他の導電部と電気的に連通する短絡部を有し、
前記修復用導電膜を形成する工程においては、前記修復用導電膜は前記短絡部を迂回するように形成され、
前記修復用導電膜を形成する工程より後に、前記第1部位と前記短絡部との間および前記第2部位と前記短絡部との間においてそれぞれ前記第1配線を断線させる工程を含む、請求項1から3のいずれかに記載の表示装置の欠陥修正方法。
【請求項6】
前記修復用導電膜を形成する工程より後に、レーザ光の照射によって前記修復用導電膜の不要部を除去することによって前記修復用導電膜の平面的外形を整える工程を含む、請求項1から5のいずれかに記載の表示装置の欠陥修正方法。
【請求項7】
基板上に平面的に配列された複数の絵素電極を形成する工程と、
前記複数の絵素電極のうち互いに隣接する2つの絵素電極に挟まれた1つの隙間領域において同一層内で互いに平行に延在する複数の配線を形成する工程と、
前記複数の配線を覆うように上側絶縁層を形成する工程と、
請求項1から6のいずれかに記載の表示装置の欠陥修正方法を行なう工程とを含む、表示装置の製造方法。
【請求項8】
平面的に配列された複数の絵素電極を有する基板と、
前記複数の絵素電極のうち互いに隣接する2つの絵素電極に挟まれた1つの隙間領域において同一層内で互いに平行に延在する複数の配線と、
前記複数の配線を覆うように設けられた上側絶縁層とを備え、
前記複数の配線のうちの第1配線のうちの第1,第2部位において、前記第1配線がそれぞれ露出するように前記上側絶縁層に第1,第2貫通孔があけられており、
前記第1配線のうち前記第1貫通孔内に露出した部分と前記第1配線のうち前記第2貫通孔内に露出した部分とを電気的に接続するように、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とを一体的に覆うように設けられた修復用導電膜を備える、表示装置。
【請求項9】
前記第1配線は、前記第1部位と前記第2部位との間に少なくとも1つの断線箇所を有する、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1,第2貫通孔はそれぞれレーザ光の照射によってあけられた貫通孔である、請求項8または9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記修復用導電膜は前記第1配線に沿って前記第1,第2部位を結ぶ長手形状で設けられている、請求項8から10のいずれかに記載の表示装置。
【請求項12】
前記第1配線は、前記第1,第2部位の間に、他の導電部と電気的に連通する短絡部を有し、
前記修復用導電膜は前記短絡部を迂回するように形成されており、
前記第1部位と前記短絡部との間および前記第2部位と前記短絡部との間においてそれぞれ前記第1配線が断線している、請求項8から11のいずれかに記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2013−68645(P2013−68645A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16592(P2010−16592)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】