説明

表示装置の製造方法

【課題】基板上に形成されるトランジスタ素子と発光素子との間に、トランジスタ素子の製造工程中に発生する導電性の異物が原因となって、リークパスが形成されることを防止することができる表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る表示装置の製造方法は、基板502上にトランジスタ素子501を形成する工程と、基板502上にトランジスタ素子501を覆う状態で平坦化膜510を形成する工程と、平坦化膜510の上面を被処理面として酸化処理を施す工程と、平坦化膜510の上に発光素子を形成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタ素子と発光素子を有する表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイの一つとして、有機EL(Electro Luminescence)素子を発光素子として利用して映像を表示する表示装置(以下、「有機EL表示装置」)が注目されている。有機EL表示装置は、有機EL素子自体の発光現象を利用しているために視野角が広く、消費電力が低いなどの優れた特長を備えている。更に、高精細度の高速ビデオ信号に対しても高い応答性を示すことから、特に映像分野等において、実用化に向けた開発が進められている。
【0003】
有機EL表示装置の駆動方式のうち、薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)による駆動素子が用いられるアクティブマトリックス方式は、従来のパッシブマトリックス方式に比べて応答性や解像力の点で優れており、前述した特長を有する有機EL表示装置には、特に適した駆動方式と考えられている。
【0004】
アクティブマトリックス型の有機EL表示装置は、少なくとも有機発光材料を有する有機EL素子及び当該有機EL素子を駆動させるための駆動素子(TFT)が設けられた駆動パネルを有し、この駆動パネルと封止パネルとが、有機EL素子を挟むように接着層を介して貼り合わされた構成を有している。アクティブマトリックス型の有機EL表示装置を構成するTFTとしては、少なくとも画素ごとに二つのトランジスタ(例えば、画素の明暗を制御するスイッチングトランジスタと、有機EL素子の発光を制御する駆動トランジスタ)が必要である。
【0005】
図9はアクティブマトリックス型の有機EL表示装置に適用されるTFT素子と有機EL素子の構造を示す断面図である。TFT素子501は、基板502上に形成されたゲート電極503、ゲート絶縁膜504、チャネル層505、チャネル保護層506、コンタクト層507、ソース電極508s、ドレイン電極508d等によって構成されている。
【0006】
基板502は、例えば樹脂又はガラスなどの電気絶縁性を有する基板である。ゲート電極503は、例えばモリブデン金属膜を帯状に形成したものである。ゲート絶縁膜504は、シリコン無機物、例えばSiNx又はSiOxの単層膜、あるいはSiNxとSiOxの積層膜である。チャネル層505は、アモルファスシリコン又は微結晶シリコンからなる半導体層である。チャネル保護層506は、TFT素子の製造工程でソース・ドレイン電極と半導体層505のエッチング時に、チャネル部が腐食してしまうことを防止するエッチングストップ層となるものである。
【0007】
コンタクト層507は、リンなどを含んだオーミックコンタクト層になっている。ソース電極508s及びドレイン電極508dは、例えば、チタン又はアルミニウム、もしくはそれらを積層した金属層となっている。以上の構成からなるTFT素子501の上には、例えばSiNxなどからなるパッシベーション膜509が形成されている。
【0008】
TFT素子501の上には、これを覆う状態で平坦化膜510が形成されている。そして、この平坦化膜510の上に、発光素子となる有機EL素子511が形成されている。有機EL素子511は、大きくは、下部電極512と、有機層513と、上部電極514とによって構成されている。有機層513は、少なくとも発光層を含むものであって、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の4層構造、もしくはこれに電子注入層を加えた5層構造になっている。有機EL素子511は、絶縁膜パターン515によって画素ごとに分離(区分)されている。また、平坦化膜510には、TFT素子501と有機EL素子511とを電気的に接続するためのコンタクト部516が形成されている。有機EL素子511の上部電極14は、保護膜517によって覆われている。
【0009】
ところで、有機EL表示装置の表示画面を構成する多数の画素の中には、電源オンの駆動状態で常に発光し続ける画素となる輝点や、発光しない画素となる滅点が生じることがある。これらの非正常画素である輝点や滅点は、表示品質を大きく低下させるため、その発生を抑えることが必要とされている。非正常画素が生じる原因は、TFT素子を作成する工程(以下、「TFT素子作成工程」)の中で発生するものや、TFT素子作成工程後に発生するものがある。このうち、TFT素子作成工程後に発生する原因の一つとしては、下部電極の上に導電性のごみ(微細な塵)などが付着し、これによって下部電極と上部電極の間でリークパスが発生し、滅点となる場合がある。
【0010】
TFT素子作成工程後に原因がある滅点の回避方法として、例えば、下記特許文献1〜3などが提案されている。特許文献1においては、下部電極と有機層の間に絶縁膜を形成することで、上記リークパスの発生を防止している。また、特許文献2においては、下部電極と有機層の間に高抵抗の正孔注入層を緩衝層として形成することで、上記リークパスの発生を防止している。また、特許文献3においては、下部電極の表層を高抵抗化することで、上記リークパスの発生を防止している。
【0011】
【特許文献1】特開平11−224781号公報
【特許文献2】特開2001−35667号公報
【特許文献3】特開2006−338916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載されている提案は、TFT素子作成以降の工程に原因がある輝点や滅点の防止には有効であるが、TFT素子作成工程中に原因がある輝点や滅点の防止には有効ではない。すなわち、TFT素子作成工程中に発生する輝点や滅点の原因のなかには、レジスト塗布工程や成膜工程、エッチング工程中でのごみ(微小な塵)の発生などによりパターニング不良が起こる場合や、そのごみ自身が基板上に残り、輝点や滅点の非正常画素の原因となる場合がある。このため、例えば図10に示すように、TFT素子作成工程中に、TFT素子501につながる配線521に接触(電気的に接続)する状態で導電性の異物520が残り、この異物520の一部が平坦化膜510の上面から突き出した状態で、有機EL素子511の下部電極512が形成された場合は、有機EL素子511の下部電極512とTFT素子501との間にリークパスが形成され、非正常画素の一つである輝点となってしまう。
【0013】
本発明は、基板上に形成されるトランジスタ素子と発光素子との間に、トランジスタ素子の製造工程中に発生する導電性の異物が原因となって、リークパスが形成されることを防止することができる表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る表示装置の製造方法は、基板上にトランジスタ素子を形成する工程と、前記基板上に前記トランジスタ素子を覆う状態で平坦化膜を形成する工程と、前記平坦化膜の上面を被処理面として酸化処理を施す工程と、前記平坦化膜の上に発光素子を形成する工程とを有することを特徴としている。
【0015】
本発明に係る表示装置の製造方法においては、基板上に形成されたトランジスタ素子を覆うように平坦化膜を形成した段階で、当該平坦化膜の上面を被処理面として酸化処理を施すことにより、トランジスタ素子の製造工程中に付着した導電性の異物が平坦化膜の上面から突出していた場合は、その突出部分が酸化処理によって不導体化される。このため、トランジスタ素子と発光素子の間との間に、上記異物が原因となってリークパスが形成されることがない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板上に形成されるトランジスタ素子と発光素子との間に、トランジスタ素子の製造工程中に発生する導電性の異物が原因となって、リークパスが形成されることを未然に防止することができる。このため、輝点や滅点などの非正常画素の発生を抑止した高品質な有機EL表示装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明の技術的範囲は以下に記述する実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0018】
図1は有機EL表示装置の構成例を示す断面図である。図示した有機EL表示装置1は複数(多数)の有機EL素子2を用いて構成されるものである。有機EL素子2は、R(赤),G(緑),B(青)の発光色の違いで単位画素ごとに区分されている。ただし、図1では、そのうちの1つだけを示している。
【0019】
有機EL素子2は素子形成用基板3を用いて構成されている。素子形成用基板3上には、図示しないスイッチング素子となるTFT(薄膜トランジスタ)素子とともに、下部電極4、絶縁層5、有機層6及び上部電極7が順に積層されている。さらに、上部電極7は保護層8によって覆われ、この保護層8の上に接着層9を介して対向基板10が配置されている。有機EL素子2は、有機材料からなる有機層6を下部電極4と上部電極7でサンドイッチ状に挟み込んだ構造になっている。
【0020】
素子形成用基板3と対向基板10は、それぞれ透明なガラス基板によって構成されるものである。素子形成用基板3と対向基板10は、それら2枚の基板の間に、下部電極4、絶縁層5、有機層6、上部電極7、保護層8、接着層9を挟み込むかたちで、互いに対向する状態に配置されている。
【0021】
下部電極4及び上部電極7は、一方がアノード電極となり、他方がカソード電極となる。下部電極4は、有機EL表示装置1が上面発光型である場合には高反射性材料で構成され、有機EL表示装置1が透過型である場合は透明材料で構成される。
【0022】
ここでは、一例として、有機EL表示装置1が上面発光型で、下部電極4がアノード電極である場合を想定している。この場合、下部電極4は、例えば銀(Ag)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、プラチナ(Pt)さらには金(Au)のように、反射率の高い導電性材料、又はその合金で構成される。
【0023】
なお、有機EL表示装置1が上面発光型で、下部電極4がカソード電極である場合は、下部電極4は、例えばアルミニウム(Al),インジウム(In),マグネシウム(Mg)−銀(Ag)合金,リチウム(Li)−フッ素(F)化合物、リチウム-酸素(O)化合物のように、仕事関数が小さく、かつ、光反射率の高い導電性材料で構成される。
【0024】
また、有機EL表示装置1が透過型で、下部電極4がアノード電極である場合は、下部電極4は、例えばITO(Indium−Tin−Oxide)やIZO(Inidium−Zinc−Oxide)のように、透過率の高い導電性材料で構成される。また、有機EL表示装置1が透過型で、下部電極4がカソード電極である場合は、下部電極4は、仕事関数が小さく、かつ、光透過率の高い導電性材料で構成される。
【0025】
絶縁層5は、下部電極4の周辺部を覆う状態で素子形成用基板3の上面に形成されている。絶縁層5には単位画素ごとに窓が形成されており、この窓の開口部分で下部電極4が露出している。絶縁層5は、例えばポリイミドやフォトレジスト等の有機絶縁材料や、酸化シリコンのような無機絶縁材料を用いて形成されるものである。
【0026】
有機層6は、例えば図2に示すように、素子形成用基板3側から順に、正孔注入層61、正孔輸送層62、発光層63(63r,63g,63b)及び電子輸送層64を積層した4層の積層構造を有するものである。
【0027】
正孔注入層61は、例えば、m−MTDATA〔4,4,4 -tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylamine〕によって形成されるものである。正孔輸送層62は、例えば、α−NPD[4,4-bis(N-1-naphthyl-N-phenylamino)biphenyl]によって形成されるものである。なお、材料はこれに限定されず、例えばベンジジン誘導体、スチリルアミン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、ヒドラゾン誘導体などの正孔輸送材料を用いることができる。また、正孔注入層61及び正孔輸送層62は、それぞれ複数層からなる積層構造であってもよい。
【0028】
発光層63は、RGBの色成分ごとに異なる有機発光材料によって形成されるものである。具体的には、赤色発光層63rは、例えば、ホスト材料となるADNに、ドーパント材料として2,6≡ビス[(4’≡メトキシジフェニルアミノ)スチリル]≡1,5≡ジシアノナフタレン(BSN)を30重量%混合したものにより構成される。緑色発光層63gは、例えば、ホスト材料となるADNに、ドーパント材料としてクマリン6を5重量%混合したものにより構成される。青色発光層63bは、例えば、ゲスト材料となるADNに、ドーパント材料として4,4’≡ビス[2≡{4≡(N,N≡ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成される。各色の発光層63r,63g,63bは、画素の色配列に応じてマトリクス状に配置される。
【0029】
電子輸送層64は、例えば、8≡ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )によって形成されるものである。なお、有機層6については、ここで例示する4層の構造に限らず、少なくとも発光層を含む層であればよい。例えば、上述した4層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層)の構造以外にも、図示しない電子注入層を加えた5層の構造であってもよいし、それよりも層数が少ない又は多い構造であってもよい。
【0030】
上部電極7は、有機EL表示装置1が上面発光型である場合は、透明又は半透明の導電性材料で構成され、有機EL表示装置1が透過型である場合は、高反射性材料で構成される。
【0031】
以上の素子形成用基板3、下部電極4、絶縁層5、有機層6、上部電極7により、有機EL素子2(赤色有機EL素子2r、緑色有機EL素子2g、青色有機EL素子2b)が構成されている。
【0032】
保護層8は、上部電極7や有機層6への水分の到達を防止するなどの目的で形成されるものである。このため、保護層8は、透水性及び吸水性の低い材料を用いて十分な膜厚で形成される。また、保護層8は、有機EL表示装置1が上面発光型である場合には、有機層6で発光させた光を透過させる必要があるため、例えば80%程度の光透過率を有する材料で構成される。
【0033】
また、上部電極7を金属薄膜で形成し、この金属薄膜の上に直接、絶縁性の保護層8を形成するものとすると、保護層8の形成材料として、無機アモルファス性の絶縁性材料、例えばアモルファスシリコン(α−Si)、アモルファス炭化シリコン(α−SiC)、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-x Nx )、さらにはアモルファスカーボン(α−C)等を好適に用いることができる。このような無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを構成しないため透水性が低く、良好な保護層8となる。
【0034】
接着層9は、例えばUV(紫外線)硬化型樹脂によって形成されるものである。接着層9は、対向基板10を固着させるためのものである。
【0035】
なお、ここでの図示は省略したが、このような構成の有機EL表示装置1にカラーフィルタを組み合わせて設ける場合には、RGBの各色に対応する有機EL素子2r,2g,2bから発せられる発光のスペクトルのピーク波長近傍の光のみを透過するカラーフィルタを、各色の有機EL素子2r,2g,2bの光取り出し面側に設けることになる。
【0036】
<駆動回路の構成>
図3は有機EL表示装置の駆動回路の構成例を示す図である。有機EL表示装置1の駆動回路は、素子形成用基板3上に形成されている。さらに詳述すると、素子形成用基板3上には、表示領域11とその周辺領域12とが設定されている。表示領域11には、複数の走査線13と複数の信号線14とが縦横にマトリクス状に配線されている。走査線13と信号線14の各交差部には画素15が一つずつ設けられている。各々の画素15には、上述した有機EL素子2を含む画素回路が設けられている。また周辺領域11には、走査線13を走査駆動する走査線駆動回路16と、輝度情報に応じた映像信号(すなわち入力信号)を信号線14に供給する信号線駆動回路17とが配置されている。
【0037】
<画素回路の構成>
図4は画素回路の構成例を示す図である。画素回路は、例えば有機EL素子2、駆動トランジスタTr1、書き込みトランジスタ(サンプリングトランジスタ)Tr2、及び保持容量Csによって構成されている。トランジスタTr1,TR2は、いずれもTFT素子によって構成されている。この画素回路では、走査線駆動回路16の駆動により、書き込みトランジスタTr2を介して信号線14から書き込まれた映像信号が保持容量Csに保持され、保持された信号量に応じた電流が駆動トランジスタTr1から有機EL素子2に供給され、この電流値に応じた輝度で有機EL素子2が発光する。
【0038】
なお、上記のような画素回路の構成は、あくまでも一例であり、必要に応じて画素回路内に容量素子を設けたり、さらに複数のトランジスタを設けたりして画素回路を構成してもよい。また、周辺領域12には、画素回路の変更に応じて必要な駆動回路を追加してもよい。
【0039】
図5〜図8は本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する工程図である。なお、以下の製造方法の説明では、上記「背景技術」で挙げた構成要素と同様に部分に同じ符号を付すものとする。まず、図5(A)に示すように、絶縁性基板からなる基板502上に、例えばスパッタリング法によって、例えばモリブデン膜を100nmの膜厚で成膜した後、公知のフォトリソグラフィーとエッチングを行なうことにより、ゲート電極503を帯状にパターン形成する。その後、ゲート電極503を覆う状態で、例えばシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜あるいはそれらの積層膜からなるゲート絶縁膜504を、例えばプラズマCVD法により、基板502上に200nm〜400nm、例えば300nmの膜厚で形成する。
【0040】
次に、図5(B)に示すように、ゲート絶縁膜504上に、例えば非晶質シリコンからなるチャネル層505を10nm〜30nm、例えば15nmの膜厚で形成する。なお、チャネル層505として、微結晶シリコン層を用いる場合には、非晶質シリコン層を形成した後、例えばレーザーアニール等の方法により微結晶化してもよい。
【0041】
次いで、図5(C)に示すように、チャネル層505を覆う状態で、ゲート絶縁膜504上に、シリコン窒化膜を200nmの膜厚で形成した後、公知のフォトリソグラフィーとエッチングを行なうことにより、チャネル層505上にこれを覆う状態でチャネル保護層506をパターン形成する。エッチングとしては、例えば弗化水素酸からなる溶液を用いたウェットエッチングを適用することができる。次いで、チャネル保護層506を覆う状態で、チャネル層505の上に、リンからなるn型不純物を含有するシリコン層を、コンタクト層507として形成する。この場合、例えば成膜ガスとしてモノシランと水素を用い、n型の不純物としてホスフィンを用いたプラズマCVD法により、成膜することができる。なお、ガス流量以外の圧力、放電パワー等の成膜パラメーターは適宜設定されることとする。ここで、上記n型シリコン層の厚さは100nmであればよい。
【0042】
その後、図5(D)に示すように、フォトリソグラフィーとエッチング工程を経て、コンタクト層507とその下のチャネル層505を島状にパターニングする。この際、ゲート電極503へのコンタクトホール(図示省略)を形成する。
【0043】
次に、図6(A)に示すように、パターニングされた上記コンタクト層507とチャネル層505を覆う状態で、例えばチタン/アルミニウム/チタンからなる3層の金属層508を、例えば50nm/100nm/50nmの膜厚で成膜する。
【0044】
次に、図6(B)に示すように、フォトリソグラフィーとエッチング工程を経て、上記3層の金属層508をその下のコンタクト層507とともに、ゲート電極503中央部上方のチャネル層505上で分離することにより、チャネル層505の上にソース電極508sとドレイン電極508dを形成する。ソース電極508s−ドレイン電極508d間のエッチングでは、上記チャネル保護層506がエッチングストップ層として機能する。
【0045】
その後、図6(C)に示すように、基板502上の全域を覆う状態で、例えばシリコン窒化膜からなるパッシベーション膜509を200nmの膜厚で形成する。続いて、ドレイン電極508dへのコンタクトホール(図示省略)を形成する。以上で、基板502上にTFT素子501が形成される。
【0046】
次に、図7(A)に示すように、基板502上にTFT素子501を覆う状態で平坦化膜510を形成する。この平坦化膜510は、例えばポリイミドやアクリル剤などの材料を塗布法によって形成すればよい。このとき、TFT素子501の製造工程の中で導電性の異物が基板502の上(TFT素子501上)に付着すると、平坦化膜501を形成した段階で、平坦化膜510の上面から異物の一部が突き出した状態となる場合がある。TFT素子501の製造工程中に生じる導電性の異物としては、例えばソース電極508S及びドレイン電極508Dを構成する3層(チタン/アルミニウム/チタン)の金属膜をスパッタ法で成膜する際に生じる金属粒子や、配線のパターニング不良によって生じるもの、あるいは配線のドライエッチング加工時に生じるゴミなどが考えられる。こうした導電性の異物が平坦化膜510から突き出した状態で有機EL素子511の形成が行なわれると、本来は平坦化膜510で絶縁されるべき素子の部位同士、例えばTFT素子501の配線(特に、ソース電極508s、ドレイン電極508dなど)と有機EL素子511の下部電極512との間でショートが発生し、これが原因となって、非正常画素である輝点不良が発生する。
【0047】
このため、本実施の形態においては、平坦化膜510を形成した後でかつ有機EL素子511を形成する前に、図7(B)に示すように、平坦化膜510の上面を被処理面として酸化処理を施すようにしている。酸化処理としては、例えばオゾン酸化処理(オゾン水洗浄処理)、酸素プラズマ処理などを適用することが可能である。このとき、例えば図8(A)に示すように、平坦化膜510の上面から導電性の異物(金属粒子等)520が突出し、この異物520の端部がTFT素子501につながる配線521に接触(電気的に接続)していた場合には、上記酸化処理によって異物520の表面が酸化される。このため、図8(B)に示すように、平坦化膜510の上面から突出している異物520の表面には酸化処理によって酸化膜522が生成され、この酸化膜522によって異物520の表面が被覆された状態となる。
【0048】
その後、図8(C)に示すように、TFT素子501と有機EL素子511を電気的に接続するためのコンタクトホール516を平坦化膜501に形成した後、そのコンタクトホール516を電極材料で埋め込むかたちで平坦化膜501の上に下部電極512を所定のパターンで形成する。次に、画素単位で下部電極512の周囲を絶縁膜パターン515で覆った後、絶縁膜パターン515から露出する下部電極512上に少なくとも発光層を含む有機層513を積層形成する。次に、有機層513と絶縁膜パターン515とを覆う状態で上部電極514を形成し、さらにこの上部電極514を覆う状態で保護膜517を形成する。これにより、基板502上でTFT素子501よりも上層に有機EL素子511が形成される。この有機EL素子511を構成する下部電極512、有機層513及び上部電極514は、それぞれ上記図1において有機EL素子2を構成する下部電極4、有機層6及び上部電極7に相当するものである。
【0049】
以上述べた有機EL表示装置の製造方法においては、仮に、TFT素子501の製造工程中に導電性の異物520が付着し、この異物520の一部が突出する状態で平坦化膜510が形成された場合でも、酸化処理によって生成される酸化膜522で異物520の表面を覆うことにより、その突出部分を不導体化することができる。このため、有機EL素子511の下部電極512とその下のTFT素子501につながる配線521との間にリークパスが形成されることがない。したがって、当該リークパスに起因した輝点の発生を未然に防止することができる。このため、輝点や滅点などの非正常画素の発生を抑止した高品質な有機EL表示装置を製造することができる。
【0050】
なお、上記製造方法で挙げた各工程のなかで、基板502上に平坦化膜510を形成した後に行なう酸化処理は、すべての基板502を対象に実施してもよいし、一部の基板502を対象に実施してもよい。具体的には、基板502上に平坦化膜510を形成した後で、かつ有機EL素子511の下部電極512を形成する前の段階で、例えば顕微鏡を用いた外観検査などにより、平坦化膜510の上面(表面)に導電性の異物520が存在するかどうかを確認する工程を設け、この工程で異物520の存在が確認された基板502だけを対象に酸化処理を施すようにしてもよい。その場合は、リペアが必要な基板502だけを対象に酸化処理を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】有機EL表示装置の構成例を示す断面図である。
【図2】有機EL素子の積層構造の一例を示す断面図である。
【図3】有機EL表示装置の駆動回路の構成例を示す図である。
【図4】画素回路の構成例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する工程図(その1)である。
【図6】本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する工程図(その2)である。
【図7】本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する工程図(その3)である。
【図8】本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する工程図(その4)である。
【図9】アクティブマトリックス型の有機EL表示装置に適用されるTFT素子と有機EL素子の構造を示す断面図である。
【図10】課題を説明する図である。
【符号の説明】
【0052】
1…有機EL表示装置、2…有機EL素子、4…下部電極、6…有機層、7…上部電極、501…TFT素子、502…基板、510…平坦化膜、511…有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にトランジスタ素子を形成する工程と、
前記基板上に前記トランジスタ素子を覆う状態で平坦化膜を形成する工程と、
前記平坦化膜の上面を被処理面として酸化処理を施す工程と、
前記平坦化膜の上に発光素子を形成する工程と
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記平坦化膜の上面に導電性の異物が存在するかどうかを確認する工程を含み、
前記導電性の異物の存在が確認された前記基板を対象に前記酸化処理を施す
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記酸化処理を、オゾン酸化処理又は酸素プラズマ処理によって行なう
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−211896(P2009−211896A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52812(P2008−52812)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】