説明

表示装置の製造方法

【課題】製造工程の複雑化及び薄膜トランジスタの特性劣化を引き起こす、紫外線照射による、表示装置の電極表面の洗浄工程を省いた、新規な表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板1上に駆動回路と発光部を形成する表示装置の製造方法である。発光部を形成する工程は、発光層に電荷を印加する透明アノード電極8を形成する工程と、透明アノード電8上に第1の被覆層9と第2の被覆層10を形成する工程と、第2の被覆層10をマスクとして第1の被覆層9をエッチングにより除去する工程と、第1の被覆層9が除去された透明アノード電極8上に発光層を含む層を形成する工程と、を有する。透明アノード電極8は、紫外線照射による洗浄を施したものと同等に清浄な表面となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造方法、特に、発光材料を電極で挟み、電界を印加することによって光を発し、その光を利用して作製される表示装置(ディスプレイ)の製造方法に関する。このような表示装置は、例えば、有機EL素子又は無機EL素子を用いた表示装置がそれにあたる。なお、本明細書では、主に有機EL素子を用いた有機EL表示装置に関して説明しているが、これは本発明の範囲を、有機EL表示装置のみに限定するものではない。
【背景技術】
【0002】
EL表示装置は、駆動方法に基づいて、アクティブマトリクス型とパッシブマトリクス型とに分けることができる。アクティブマトリクス型EL表示装置は、電流によって駆動され、各マトリクスアレイ画素領域が、少なくとも1つの、スイッチとしての機能を果たす薄膜トランジスタを備えている。薄膜トランジスタは、前記画素領域の輝度とグレーレベルを制御するために、コンデンサ記憶電位の変化に基づいた駆動電流を調節する。
【0003】
アクティブマトリクス型EL表示装置の中で、アクティブマトリクス型有機EL表示装置は、電極層と、この電極層上に形成され有機EL材料からなる有機発光層と、さらにこの有機発光層上に形成された電極層とを基本的な構成要素として構成される。基板側に光を出すボトムエミッション型表示装置の場合は、基板及び下部電極層が光透過性を有する必要があり、下部電極には透明電極を用いる。一般に、透明電極には導電性酸化物材料を用いるが、導電性酸化物の表面は有機物による汚染を被り易い。有機物汚染された電極は、有機発光層への電流注入が困難となる。
【0004】
そこで、特許文献1に開示されているように、有機EL表示装置の有機発光層を透明電極層上に形成する直前に親水化工程として、紫外光照射と、それに伴って発生したオゾンによる表面洗浄を施し、透明電極表面の有機汚染を除去する必要がある。
【特許文献1】特開2005−123083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、透明電極表面の洗浄手法として上記手法を実施する場合、紫外光を照射する工程が増えてしまうという問題がある。さらに、前記マトリクスアレイ画素領域内の薄膜トランジスタに紫外光が照射されることによって薄膜トランジスタが劣化し、スイッチング素子としての機能を果たさなくなるという現象を防ぐために、遮光層を設ける工程が増えてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、製造工程の複雑化及び薄膜トランジスタの特性劣化を引き起こす、紫外線照射による、表示装置の電極表面の洗浄工程を省いた、新規な表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の表示装置の製造方法は、基板上に駆動回路と発光部を形成する表示装置の製造方法であって、
前記発光部を形成する工程は、
発光層に電荷を印加する電極を形成する工程と、
前記電極上に被覆層を形成する工程と、
前記被覆層の少なくとも一部を除去する工程と、
前記被覆層が除去された前記電極上に前記発光層を含む層を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表示装置の製造方法によれば、製造工程の複雑化及びトランジスタの特性劣化を引き起こす、紫外線照射による表示装置の透明電極表面の洗浄工程を省くことができる。これにより、表示装置を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
これより、本発明の基板上に駆動回路と発光部を形成する表示装置の製造方法について説明するが、実施形態1は、発光部が、基板上に薄膜トランジスタを有する駆動回路と並置して形成される例であり、実施形態2は、発光部が、基板上に形成される駆動回路上に積層形成される例である。発光部が、ボトムエミッション型アクティブマトリクス有機EL表示装置を例にとって、図を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
[実施形態1]
製造方法は12の工程から構成され、その流れは図1のフローチャートに示すとおりである。図2a〜図2lには、本発明の製造方法によって作製されたボトムエミッション型アクティブマトリクス有機EL表示装置の断面図が示されている。
【0011】
図2a〜図2lには、トランジスタとして、ボトムゲート・トップコンタクト型薄膜トランジスタを示しているが、トランジスタの構成はこれに限られるものではない。薄膜トランジスタは、基板1の上に、ゲート電極2、ゲート絶縁層3、半導体層4、ソース電極5、ドレイン電極6、保護層7が順に積層した構造をしている。また、有機EL素子は、基板1の上に、透明アノード電極8、正孔注入層11、有機発光層12、電子注入層13、カソード電極14が順に積層した構造をしている。有機発光層12に対して正孔注入層11、電子注入層13を介して、透明アノード電極8とカソード電極14により電荷が印加される。
【0012】
基板1は、絶縁性の基板である。例えば、基板1はガラス基板とすればよい。また、基板1にポリエチレンテレフタレート(PET)などの有機材料や高分子材料を用いることによりフレキシブルな基板上で薄膜トランジスタを製造することができる。
【0013】
まず、第1工程として、基板1上に、透明導電膜を堆積する。前記透明導電膜には、ITOを用いることが望ましい。または、In、SnO、ZnOのうち少なくとも1種を含む材料を透明導電膜に用いることも好ましい。透明導電膜の成膜法としては、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法及び電子ビーム蒸着法などの気相法を用いるのが好ましい。しかし、成膜法はこれらの方法に限られるものではない。そして、前記透明導電膜をパターニングすることによって、透明アノード電極8を形成する。ここまでの様子を図2aに示す。
【0014】
次に、第2の工程として、基板1上に、導電性の膜を堆積する。導電性の膜には、少なくとも1種の金属からなる膜を用いる。またこの他に、導電性の金属酸化物(MO、ただしMは金属元素)を用いても良い。また、層数は単層であっても、複数膜の積層であっても良い。前記導電性の膜の成膜法としては、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法及び電子ビーム蒸着法などの気相法を用いるのが好ましい。しかし、成膜法はこれらの方法に限られるものではない。そして、導電性の膜をパターニングすることによって、ゲート電極2を形成する。なお、ゲート電極2と透明アノード電極8を同材料とすれば、両者は同時に形成することも可能である。ここまでの様子を図2bに示す。
【0015】
次に、第3の工程として、前記ゲート電極2及び透明アノード電極8上に絶縁体膜を堆積する。絶縁体膜は、酸化物、炭化物、窒化物、弗化物、及びそれらの化合物で構成される群から選択される無機材料からなる。例えば、絶縁体膜には、少なくとも1種の金属元素を含む金属酸化物膜を用いる。金属酸化物の中でも、以下に挙げるものを少なくとも1種含むものを絶縁体膜として用いることがより好ましい。
【0016】
SiO、Al、Ga、In、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Nb、Ta、TiO、ZrO、HfO、CeO、LiO、NaO、KO、RbO、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、Dy、Er、Yb
またこの他に、金属窒化物(MN、ただしMは金属元素)を用いても良い。またこの他に、金属酸窒化物(MO、ただしMは金属元素)を用いても良い。前記絶縁体膜の成膜法としては、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法及び電子ビーム蒸着法などの気相法を用いるのが好ましい。しかし、成膜法はこれらの方法に限られるものではない。そして、前記絶縁体膜をパターニングすることによって、ゲート絶縁層3及び第1の被覆層9を形成する。すなわち、前記絶縁体膜の一部がゲート絶縁層3となり、他の一部が第1の被覆層9となる。このように、ゲート絶縁層3及び第1の被覆層9はいずれも同じ層である前記絶縁体膜から形成されるが、担う機能が異なるため、説明上、分けて記述している。ここまでの様子を図2cに示す。
【0017】
次に、第4の工程として、前記ゲート絶縁層3上に半導体膜を堆積する。前記半導体膜には、
ZnOを主たる構成元素とする酸化物、
Inを主たる構成元素とする酸化物、
Gaを主たる構成元素とする酸化物、
及びこれらのうち2種以上を含む複合酸化物を主たる構成元素とする酸化物が望ましい。
特にInとZnOを含み、その合計がモル比で全体の半分以上含む酸化物が望ましい。
【0018】
あるいはSnOやTiOなどの酸化物半導体を含むことも可能であり、その他の酸化物半導体を含むものを用いてもよい。前記半導体膜の成膜法としては、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法及び電子ビーム蒸着法などの気相法を用いるのが好ましい。しかし、成膜法はこれらの方法に限られるものではない。そして、前記半導体膜をパターニングすることによって、半導体層4を形成する。ここまでの様子を図2dに示す。
【0019】
次に、第5の工程として、前記半導体層4上に導電性の膜を堆積する。前記導電性の膜には、少なくとも1種の金属からなる膜を用いる。またこの他に、導電性の金属酸化物(MO、ただしMは金属元素)を用いても良い。また、層数は単層であっても、複数膜の積層であっても良い。前記導電性の膜の成膜法としては、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法及び電子ビーム蒸着法などの気相法を用いるのが好ましい。しかし、成膜法はこれらの方法に限られるものではない。そして、前記導電性の膜をパターニングすることによって、ソース電極5及びドレイン電極6を形成する。なお、ソース電極5及びドレイン電極6と透明アノード電極8を同材料とすれば、両者は同時に形成することも可能である。ここまでの様子を図2eに示す。
【0020】
次に、第6の工程として、前記ソース電極5、ドレイン電極6及び第1の被覆層9上に第2の被覆層10を堆積する。第2の被覆層10は、酸化物、炭化物、窒化物、弗化物、及びそれらの化合物で構成される群から選択される無機材料からなる。例えば、第2の被覆層としては、少なくとも1種の金属元素を含む金属酸化物膜を用いる。金属酸化物の中でも、以下に挙げるものを少なくとも1種含むものを用いることがより好ましい。
【0021】
SiO、Al、Ga、In、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Nb、Ta、TiO、ZrO、HfO、CeO、LiO、NaO、KO、RbO、Sc、Y、La、Nd、Sm、Gd、Dy、Er、Yb
またこの他に、金属窒化物(MN、ただしMは金属元素)を用いても良い。またこの他に、金属酸窒化物(MO、ただしMは金属元素)を用いても良い。第2の被覆層10の成膜法としては、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法及び電子ビーム蒸着法などの気相法を用いるのが好ましい。しかし、成膜法はこれらの方法に限られるものではない。そして、第2の被覆層10をパターニングすることによって、保護層7及び開口部を有する第2の被覆層10を形成する。すなわち、第2の被覆層10の一部が保護層7となり、他の一部が開口部を有する第2の被覆層10となる。このように、保護層7及び第2の被覆層10は、いずれも同じ層である第2の被覆層10から形成されるが、担う機能が異なるため、説明上、分けて記述している。このように被覆層は、第1の被覆層9と第2の被覆層10という2層以上の被覆層から構成され、特に、材料の異なる2種類以上の複数の層で構成される。以上の工程により、図2fに示す構造が完成する。
【0022】
次に、第7の工程として、第1の被覆層9の少なくとも一部を除去する。すなわち、開口部を有する第2の被覆層10をハードマスクとして用い、第1の被覆層9をエッチングする。透明アノード電極8上の第1の被覆層9の少なくとも一部が除去される。第1の被覆層9のエッチング法としては、ドライエッチング、あるいはウェットエッチングを用いる。ここで、第1の被覆層9をエッチングするためのエッチャントに対する透明アノード電極8のエッチングレートが、第1の被覆層9のエッチングレートよりも小さい。また、第1の被覆層9をエッチングするためのエッチャントに対する第2の被覆層10のエッチングレートが、第1の被覆層9のエッチングレートよりも小さい。以上の工程により、図2gに示す構造が完成する。
【0023】
次に、第8の工程として、前記透明アノード電極8上に、正孔注入層11を形成する。前記正孔注入層11の成膜法としては、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法、電子ビーム蒸着法、スピンコート法及び真空蒸着法などの成膜法を用いるのが好ましい。しかし、成膜法はこれらの方法に限られるものではない。ここまでの様子を図2hに示す。
【0024】
次に、第9の工程として、前記正孔注入層11上に、有機発光層12を形成する。前記有機発光層12の成膜法としては、真空蒸着あるいは塗布法などの成膜法を用いる。しかし、成膜法はこれらの方法に限られるものではない。ここまでの様子を図2iに示す。
【0025】
次に、第10の工程として、前記有機発光層12上に、電子注入層13を形成する。前記電子注入層13の成膜法としては、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法、電子ビーム蒸着法、スピンコート法及び真空蒸着法などの成膜法を用いるのが好ましい。しかし、成膜法はこれらの方法に限られるものではない。ここまでの様子を図2jに示す。
【0026】
次に、第11の工程として、前記電子注入層13上に、カソード電極14を形成する。前記カソード電極14の成膜法としては、スパッタ法、パルスレーザー蒸着法、電子ビーム蒸着法、スピンコート法及び真空蒸着法などの成膜法を用いるのが好ましい。しかし、成膜法はこれらの方法に限られるものではない。ここまでの様子を図2kに示す。
【0027】
次に、第12の工程として、前記カソード電極上14に封止層18を形成する。前記封止層18は、ガラス製キャップ及び厚膜の形態のものを用いるのが好ましい。しかし、封止層18の材料はこれらに限られるものではない。ここまでの様子を図2lに示す。
【0028】
このように本発明の特徴は、透明アノード電極8表面を、第1の被覆層9で覆い、該第1の被覆層を除去する工程を経て、該透明アノード電極8表面を清浄化できることである。したがって、上記工程を経ることにより、透明アノード電極8表面は、前述の紫外線照射による洗浄工程を設けずとも、紫外線照射による洗浄を施したものと同等に清浄な表面となる。これは本発明者らの知見によれば、以下のような理由によるものと考えられる。まず、前記透明アノード電極8表面上に例えば、微粒子や油分、その他の汚染物質が付着している場合に、前記第1の被覆層9で覆うことにより、これらの汚染物質が第1の被覆層9と結合する。このとき当該汚染物質は前記透明アノード電極8表面よりも、前記第1の被覆層9と強く結合する(又は前記第1の被覆層9に取り込まれる)。次いで前記第1の被覆層9をエッチング等で除去することにより、前記第1の被覆層9と同時に汚染物質も除去され、清浄な表面となる。
【0029】
さらに本発明の特徴は、第1の被覆層9をエッチングする際に、第2の被覆層10をハードマスクとして用いることである。これによって、透明アノード電極8表面を露出させる工程において、該透明アノード電極8表面をレジストや有機溶剤による汚染を防ぐことができる。
【0030】
また、第1の被覆層9及び第2の被覆層10を形成する工程は、薄膜トランジスタを形成する工程と共通化することができる。上述の工程では、第1の被覆層9をゲート絶縁層3と、第2の被覆層10を保護層7と同時に形成する例を示した。しかし、共通化する工程はこれらに限られるものではない。ゲート電極2、半導体層4、ソース電極5、ドレイン電極6もまた、第1の被覆層9及び第2の被覆層10を形成する工程と共通化することが可能である。
【0031】
また、薄膜トランジスタを構成する層の、少なくとも1つを積層膜とすることで、薄膜トランジスタを構成する1つの層と同時に第1の被覆層9及び第2の被覆層10を形成することも可能である。
【0032】
[実施形態2]
本発明は、薄膜トランジスタと有機EL素子とを、基板上に横置きする実施形態1の形態だけでなく、両者を積層する形態にも適用することができる。この形態の例を、図3a〜図3fを用いて説明する。
【0033】
なお、薄膜トランジスタを形成する工程は、実施形態1と同じであるので説明を省略する。また、実施形態1と同符号を付した各層の材料は、実施形態1と共通である。
【0034】
図3aは、ガラス基板1上に薄膜トランジスタが形成されている様子を示している。薄膜トランジスタの構成層は、下から順に、ゲート電極2、ゲート絶縁層3、半導体層4、ソース電極5、ドレイン電極6である。
【0035】
次に、前記薄膜トランジスタ上に、層間絶縁膜15を形成し、その層間絶縁膜の一部をエッチングにより除去し、コンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールを導電性材料で埋め、プラグ16を形成する。ここまでの様子を図3bに示す。
【0036】
次に、層間絶縁膜15上に透明アノード電極8、及び第1の被覆層9を順に堆積し、エッチングによりパターニングを行う。ここまでの様子を図3cに示す。
【0037】
次に、前記透明アノード8及び第1の被覆層9の上に、隔壁17を形成する。ここまでの様子を図3dに示す。
【0038】
次に、隔壁17をハードマスクに用いて、第1の被覆層9をエッチングし、透明アノード電極8表面を露出させる。ここまでの様子を図3eに示す。このとき、透明アノード電極8上に、第1の被覆層を堆積し、前記第1の被覆層を除去することにより、該透明アノード電極表面は清浄化される。
【0039】
次に、露出させた透明アノード電極8上に、有機EL層を形成する。有機EL層は、正孔注入層11、有機発光層12、電子注入層13をこの順に積層して形成する。上記のように形成された有機EL層上に、カソード電極14を形成する。ここまでの様子を図3fに示す。最後に、ガラスキャップを用いて素子を封止する。
【0040】
上記のように作製されたボトムエミッション型アクティブマトリクス有機EL表示装置における発光素子の特性は、紫外線照射による透明アノード電極表面の清浄化処理を行った場合と比較して、差異は見られない。また、紫外線照射による画素内の薄膜トランジスタの劣化はなく、アクティブマトリクス有機EL表示装置として設計どおりの性能と信頼性を示す。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施形態1について実施例によりさらに詳細に説明する。しかし、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0042】
本実施例は、図2lに示す、ボトムエミッション型アクティブマトリクス有機EL表示装置を作製する例である。図2lの薄膜トランジスタは、ボトムゲート・トップコンタクト型であり、基板1上に形成されている。さらに詳しくは、基板1上には、ゲート電極2、ゲート絶縁層3、半導体層4、ソース電極5・ドレイン電極6、保護層7が形成されている。図2lの有機EL素子は、ボトムエミッション型であり、基板1上に形成されている。さらに詳しくは、基板1上には、透明アノード電極8、第1の被覆層9、第2の被覆層10、正孔注入層11、有機発光層12、電子注入層13、カソード電極14が形成されている。
【0043】
基板1には、ガラス基板(Corning社製1737)を用いる。ガラス基板の厚さは0.5mmである。
【0044】
まず、基板1上に、多結晶ITO薄膜を作製する。本実施例では、アルゴンガスと酸素ガスの混合雰囲気中でRFマグネトロンスパッタ法により、多結晶ITO薄膜を形成する。次に、堆積した多結晶ITO薄膜を、フォトリソグラフィ法とウェットエッチング法により微細加工して、ゲート電極2及び透明アノード電極8を形成する。
【0045】
次に、ゲート電極2及び透明アノード電極8上に、RFマグネトロンスパッタ法により、厚さ200nmのSiO薄膜を作製する。成膜条件は、基板温度を室温、投入RFパワーを400W、アルゴンガス供給流量を10sccm、チャンバー圧力を0.1Paとする。次に、堆積したSiO薄膜を、フォトリソグラフィ法と、緩衝フッ酸溶液を用いたウェットエッチング法によりパターニングし、ゲート絶縁層3及び第1の被覆層9を形成する。
【0046】
次に、ゲート絶縁層3上に、RFマグネトロンスパッタ法により、厚さ40nmの酸化物半導体In−Ga−Zn−O薄膜を作製する。成膜条件は、基板温度を室温、投入RFパワーを200W、酸素5%含有アルゴンガス供給流量を25sccm、チャンバー圧力を0.5Paとする。こうして作製したIn−Ga−Zn−O薄膜は非晶質であり、In:Ga:Zn:Oの組成比は1:1:1:4である。次に、堆積したIn−Ga−Zn−O薄膜を、フォトリソグラフィ法と、塩酸を用いたウェットエッチング法によりパターニングし、半導体層4を形成する。
【0047】
次に、半導体層4上に、RFマグネトロンスパッタ法により、厚さ100nmの導電性酸化物In−Zn−O薄膜を作製する。成膜条件は、基板温度を室温、投入RFパワーを100W、アルゴンガス供給流量を50sccm、チャンバー圧力を0.3Paとする。次に、堆積したIn−Zn−O薄膜を、フォトリソグラフィ法とウェットエッチング法により微細加工して、ソース電極5及びドレイン電極6を形成する。
【0048】
次に、ソース電極5、ドレイン電極6、第1の被覆層9上に、RFマグネトロンスパッタ法により、厚さ200nmのSiN薄膜を作製する。成膜条件は、基板温度を室温、投入RFパワーを400W、アルゴンガス供給流量を5sccm、窒素ガス供給流量を5sccm、チャンバー圧力を0.1Paとする。次に、堆積したSiN薄膜を、フォトリソグラフィ法とウェットエッチング法によりパターニングし、保護層7及び開口部を有する第2の被覆層10を形成する。
【0049】
次に、第2の被覆層10をハードマスクとして用い、第1の被覆層を、緩衝フッ酸溶液を用いたウェットエッチング法により除去し、透明アノード電極8表面を露出させる。この際、透明アノード電極8表面は、緩衝フッ酸溶液、及び水洗用純水以外には触れておらず、レジストや有機溶剤などによる汚染はない。
【0050】
ここで、得られた透明アノード表面の清浄度を確認するために、正孔注入層材料である、導電性高分子PEDOT:PSS
[poly (3, 4-ethylenedioxythiophene)-poly-(styrenesulfonate)]を滴下した様子を図4aに示す。比較のため、紫外線照射によって清浄化処理を施したITO薄膜上、及び未処理ITO薄膜上に、同様にPEDOT:PSSを滴下した様子を、図4b及び図4cにそれぞれ示す。本実施例の手法で清浄化したITO薄膜上においては、従来手法である、紫外線照射によって清浄化したITO薄膜と同様な濡れ性が確認できた。一方、未処理ITO薄膜上においては、PEDOT:PSSは接触角の大きな液滴状であった。これは、ITO薄膜表面の有機汚染の影響であると考えられる。以上の結果から、本実施例の手法を用いれば、紫外線照射による清浄化処理工程を設けなくても、紫外線照射処理を施した場合と同様の清浄な表面を有するITO薄膜を得られることが分かる。
【0051】
次に、露出させた透明アノード電極8上に、有機EL層を形成する。有機EL層は、正孔注入層11、有機発光層12、電子注入層13をこの順に積層して形成する。上記のように形成された有機EL層上に、カソード電極14を形成する。最後に、ガラスキャップを用いて素子を封止する。
【0052】
上記のように作製されたボトムエミッション型アクティブマトリクス有機EL表示装置における発光素子の特性は、紫外線照射によるITO表面の清浄化処理を行った場合と比較して、差異は見られない。また、紫外線照射による画素内の薄膜トランジスタの劣化はなく、アクティブマトリクス有機EL表示装置として設計どおりの性能と信頼性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態1による表示装置の製造工程を示すフローチャート
【図2a】本発明の実施形態1による表示装置の製造工程のうち、透明アノード電極の形成を示す図
【図2b】同じく透明ゲート電極の形成を示す図
【図2c】同じくゲート絶縁層、第1の被覆層の形成を示す図
【図2d】同じく半導体層の形成を示す図
【図2e】同じくソース電極、ドレイン電極の形成を示す図
【図2f】同じく保護層、第2の被覆層の形成を示す図
【図2g】同じく第1の被覆層のエッチングを示す図
【図2h】同じく正孔注入層の形成を示す図
【図2i】同じく有機発光層の形成を示す図
【図2j】同じく電子注入層の形成を示す図
【図2k】同じくカソード電極の形成を示す図
【図2l】同じく封止層の形成を示す図
【図3a】本発明の実施形態2による表示装置の製造工程のうち、薄膜トランジスタの形成を示す図
【図3b】同じく層間絶縁膜、コンタクトホール、プラグの形成を示す図
【図3c】同じく透明アノード電極、第1の被覆層の形成を示す図
【図3d】同じく隔壁の形成を示す図
【図3e】同じく第1の被覆層のエッチングを示す図
【図3f】同じく有機EL層の形成を示す図
【図4a】本発明による手法で清浄化したITO膜表面にPEDOT:PSSを滴下したものの写真
【図4b】紫外線照射によって清浄化したITO膜表面にPEDOT:PSSを滴下したものの写真
【図4c】未処理ITO膜表面にPEDOT:PSSを滴下したものの写真
【符号の説明】
【0054】
1…基板
2…ゲート電極
3…ゲート絶縁層
4…半導体層
5…ソース電極
6…ドレイン電極
7…保護層
8…透明アノード電極
9…第1の被覆層
10…第2の被覆層
11…正孔注入層
12…有機発光層
13…電子注入層
14…カソード電極
15…層間絶縁膜
16…プラグ
17…隔壁
18…封止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に駆動回路と発光部を形成する表示装置の製造方法であって、
前記発光部を形成する工程は、
発光層に電荷を印加する電極を形成する工程と、
前記電極上に被覆層を形成する工程と、
前記被覆層の少なくとも一部を除去する工程と、
前記被覆層が除去された前記電極上に前記発光層を含む層を形成する工程と、を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記被覆層は、スパッタ法により作製されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記被覆層の少なくとも一部を除去する工程は、ウェットエッチング、又はドライエッチングを含むことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記被覆層をエッチングするためのエッチャントに対する前記電極のエッチングレートが、前記被覆層のエッチングレートよりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記被覆層は、前記駆動回路を構成する薄膜トランジスタのゲート電極、ゲート絶縁層、半導体層、ソース電極、ドレイン電極、又は保護層のいずれかの層と同時に形成されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記被覆層は、酸化物、炭化物、窒化物、弗化物、及びそれらの化合物で構成される群から選択される無機材料からなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記被覆層は、2層以上の被覆層から構成されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記被覆層は、材料の異なる2種類以上の複数の層で構成され、
前記被覆層の少なくとも一部を除去する工程は、前記被覆層を構成する第1の被覆層の少なくとも一部を、前記第1の被覆層の上に形成された第2の被覆層をマスクとして用いて除去する工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1の被覆層をエッチングするためのエッチャントに対する前記第2の被覆層のエッチングレートが、前記第1の被覆層のエッチングレートよりも小さいことを特徴とする請求項8に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記発光部は、前記基板上に前記駆動回路と並置して形成されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記発光部は、前記基板上に形成される前記駆動回路上に積層形成されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記発光部は、有機EL素子であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図2g】
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【図2h】
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【図2i】
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【図2j】
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【図2k】
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【図2l】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図3f】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【公開番号】特開2009−99502(P2009−99502A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272540(P2007−272540)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】