説明

表示装置の製造装置

【課題】マスクを用いた真空蒸着法によりアレイ基板上に薄膜パターンを形成した表示装置で輝点及び/又は滅点が発生するのを抑制する。
【解決手段】本発明の表示装置の製造装置は、真空チャンバVCと、真空チャンバVC内でアレイ基板ASを保持する基板ホルダHLD2と、真空チャンバVC内でアレイ基板ASの下面と向き合うようにマスクMSKを保持するマスクホルダHLD2と、真空チャンバVCX内であってマスクMSKの下方に配置される坩堝が収容する蒸発材料を加熱して気化させるヒータと、アレイ基板AS及び/又はマスクMSKの電位を測定する電位計SNS2と、電位計SNS2の出力に基づいてアレイ基板ASとマスクMSKとの電位差を小さくする電位制御を行うコントローラCNTとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造装置に係り、特にはアレイ基板上に真空蒸着法によって薄膜パターンを形成する製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の製造では、真空蒸着法を利用することがある。例えば、特許文献1には、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置の製造において、真空蒸着法により、有機EL素子の有機物層を形成することが記載されている。
【0003】
マスクを用いた真空蒸着法によると、エッチングなどを行うことなく薄膜パターンを形成することができる。したがって、この蒸着法は、アクティブマトリクス型表示装置の製造での利用に特に適している。
【0004】
しかしながら、本発明者らは、本発明を為すに際し、以下の事実を見い出している。すなわち、アクティブマトリクス型表示装置の製造において、マスクを用いた真空蒸着法によりアレイ基板上に薄膜パターンを形成した場合、輝点及び/又は滅点が発生し易い。
【特許文献1】特開2003−157973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、マスクを用いた真空蒸着法によりアレイ基板上に薄膜パターンを形成した表示装置で輝点及び/又は滅点が発生するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によると、真空チャンバと、前記真空チャンバ内でアレイ基板を保持する基板ホルダと、前記真空チャンバ内で前記アレイ基板の下面と向き合うようにマスクを保持するマスクホルダと、前記真空チャンバ内であって前記マスクの下方に配置される坩堝が収容する蒸発材料を加熱して気化させるヒータと、前記アレイ基板及び/又は前記マスクの電位を測定する電位計と、前記電位計の出力に基づいて前記アレイ基板と前記マスクとの電位差を小さくする電位制御を行うコントローラとを具備したことを特徴とする表示装置の製造装置が提供される。
【0007】
本発明の第2側面によると、真空チャンバと、前記真空チャンバ内でアレイ基板を保持する基板ホルダと、前記真空チャンバ内で前記アレイ基板の下面と向き合うようにマスクを保持するマスクホルダと、前記真空チャンバ内であって前記マスクの下方に配置される坩堝が収容する蒸発材料を加熱して気化させるヒータと、前記アレイ基板の電位及び前記マスクの電位を第1及び第2基準電位にそれぞれ設定する電位制御を行うコントローラとを具備したことを特徴とする表示装置の製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、マスクを用いた真空蒸着法によりアレイ基板上に薄膜パターンを形成した表示装置で輝点及び/又は滅点が発生するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1及び図2は、本発明の第1態様に係る表示装置の製造装置を概略的に示す図である。図3は、図1及び図2の製造装置が含む蒸発ユニットを概略的に示す断面図である。なお、図1には、電位測定又は電位調整中の状態を描いており、図2には、位置合わせ中の状態又は蒸着を開始する直前の状態を描いている。
【0011】
図1及び図2の製造装置は、真空チャンバVCと、コントローラCNTと、図示しない移動機構とを含んでいる。
【0012】
真空チャンバVCは、図示しない真空排気系に接続されている。真空チャンバVCは、典型的には、複数の真空チャンバで薄膜を順次成膜するマルチチャンバ型枚葉式装置に組み込まれる。
【0013】
真空チャンバVC内には、マスクホルダHLD1と基板ホルダHLD2と膜厚センサSNS1と電位計SNS2と蒸発ユニットEUとが配置されている。
【0014】
マスクホルダHLD1は、蒸着マスクMSKを、その主面が略水平となるように着脱可能に支持している。マスクMSKは、典型的には金属からなる。ホルダHLD1は、マスクMSKとコントローラCNTとに電気的に接続されている。なお、水平面はX1方向及びY1方向に対して略平行であり且つZ1方向に対して略垂直である。また、X1方向とY1方向とZ1方向とは互いに直交している。
【0015】
基板ホルダHLD2は、アレイ基板ASを、その被成膜面が蒸着マスクMSKの上面と略正対するように着脱可能に支持している。アレイ基板ASは、マスクMSKに対してZ1方向に相対的に移動可能である。図1及び図2に示す例では、基板ホルダHLD2がZ1方向に可動である。マスクホルダHLD1がZ1方向に可動であってもよく、マスクホルダHLD1及び基板ホルダHLD2の各々がZ1方向に可動であってもよい。
【0016】
膜厚センサSNS1は、例えば、水晶板の両面に電極を配置した構造を含んでおり、コントローラCNTと共に水晶膜厚計を構成している。膜厚センサSNS1は、アレイ基板ASとX1方向に隣り合うように配置されている。典型的には、膜厚センサSNS1は、その検出部の高さがアレイ基板ASの被成膜面の高さとほぼ等しくなるように配置される。
【0017】
電位計SNS2は、アレイ基板ASの近傍に配置されている。電位計SNS2は、アレイ基板ASの電位を測定する。電位計SNS2は、マスクMSKの近傍に配置し、これにマスクMSKの電位を測定させてもよい。
【0018】
蒸発ユニットEUは、膜厚センサSNS1及びマスクMSKの下方に配置されている。蒸発ユニットEUは、マスクMSK及びアレイ基板ASに対して、X1方向に相対的に移動可能である。図1及び図2に示す例では、蒸発ユニットEUがX1方向に可動である。マスクMSKとアレイ基板ASとがX1方向に可動であってもよく、或いは、蒸発ユニットEUとマスクMSKとアレイ基板ASとがX1方向に可動であってもよい。
【0019】
蒸発ユニットEUは、図3に示すように、リザーバ(又は坩堝)RSVと、ヒータHTと、蓋CPとを含んでいる。
【0020】
リザーバRSVは、Y1方向に細長い箱形状を有している。リザーバRSVは、蒸発材料EMを収容する。リザーバRSVは、例えば、石英、金属材料、カーボンなどからなる。
【0021】
ヒータHTは、例えば、カーボン基材CSと抵抗素子REとを含んだ抵抗加熱ヒータである。カーボン基材CSは、リザーバRSVと同様、Y方向に細長い箱形状を有している。カーボン基材CSは、リザーバRSVを取り外し可能に収容している。抵抗素子REは、カーボン基材CSの外面に取り付けられている。抵抗加熱ヒータを構成する導体とカーボン基材CSとの間には、絶縁層を介在させる。
【0022】
蓋CPは、リザーバRSVの開口を塞いでいる。蓋CPには、複数の貫通孔が設けられている。これら貫通孔はY1方向に並んでおり、各々がノズルNZLを形成している。蓋CPは、例えば、リザーバRSVと同じ材料からなる。リザーバRSVをカーボン基材CSから取り外す際には、例えば、蓋CPをリザーバRSVに対してZ1方向に相対移動させる。
【0023】
移動機構は、第1乃至第3動作を行う。
第1動作は、アレイ基板ASをマスクMSKに対してZ1方向に相対移動させる動作である。この第1動作により、アレイ基板ASの下面とマスクMSKの上面との間の距離がより長い第1状態と、この距離がより短い第2状態との間の切り替えを行う。図1及び図2に示した例では、第1動作により、基板ホルダHLD2をZ1に移動させる。第1動作により、マスクホルダHLD1をZ1に移動させてもよく、或いは、マスクホルダHLD1及び基板ホルダHLD2の各々をZ1に移動させてもよい。
【0024】
第2動作は、第1状態において、アレイ基板ASをマスクMSKに対してX1方向及び/又はY1方向に相対移動させる動作である。この第2動作により、アレイ基板ASとマスクMSKとの位置合わせを行う。図1及び図2に示した例では、第2動作により、基板ホルダHLD2をX1方向及びY1方向に移動させる。第2動作により、マスクホルダHLD1をX1方向及びY1方向に移動させてもよく、或いは、マスクホルダHLD1及び基板ホルダHLD2の各々をX1方向及びY1方向に移動させてもよい。また、マスクホルダHLD1をX1方向に移動させ且つ基板ホルダHLD2をY1方向に移動させてもよく、或いは、マスクホルダHLD1をY1方向に移動させ且つ基板ホルダHLD2をX1方向に移動させてもよい。
【0025】
第3動作は、蒸発ユニットEUをマスクMSK及びアレイ基板ASに対してX1方向に相対移動させる動作である。この第3動作により、アレイ基板ASの被成膜面に、気化した蒸発材料EMを堆積させる。図1及び図2に示した例では、第3動作により、蒸発ユニットEUをX1方向に移動させる。第3動作により、マスクホルダHLD1及び基板ホルダHLD2をX1方向に移動させてもよく、或いは、マスクホルダHLD1及び基板ホルダHLD2と蒸発ユニットEUとをX1方向に移動させてもよい。
【0026】
コントローラCNTには、膜厚センサSNS1と抵抗素子REとが接続されている。上記の通り、コントローラCNTは、膜厚センサSNS1と共に水晶膜厚計を構成している。コントローラCNTは、膜厚センサSNS1の出力に基づいて抵抗素子REに供給する電力の大きさを制御する。
【0027】
コントローラCNTには、電位計SNS2とマスクホルダHLD1とがさらに接続されている。コントローラCNTは、第1状態において、マスクMSKの電位を電位計SNS2の出力に対応した値に設定する。これにより、アレイ基板ASとマスクMSKとの電位差を小さくする。典型的には、アレイ基板ASの電位とマスクMSKの電位とを等しくする。
【0028】
コントローラCNTには、移動機構がさらに接続されている。コントローラCNTは、移動機構の第1乃至第3動作を制御する。
【0029】
図4は、図1及び図2の装置を用いて製造可能な表示装置の一例を概略的に示す平面図である。図5は、図4の表示装置で使用可能な表示パネルの一例を概略的に示す断面図である。
【0030】
この表示装置は、アクティブマトリクス型駆動方式を採用した下面発光型の有機EL表示装置である。この有機EL表示装置は、図4に示すように、表示パネルDPと、映像信号線ドライバXDRと、走査信号線ドライバYDRとを含んでいる。
【0031】
表示パネルDPは、図4及び図5に示すように、例えば、ガラス基板などの絶縁基板SUBを含んでいる。
【0032】
基板SUB上には、図5に示すように、アンダーコート層UCが形成されている。アンダーコート層UCは、例えば、基板SUB上にSiNx層とSiOx層とをこの順に積層してなる。
【0033】
アンダーコート層UC上では、半導体層SCが配列している。各半導体層SCは、例えば、p型領域とn型領域とを含んだポリシリコン層である。
【0034】
アンダーコート層UC上では、図示しない下部電極がさらに配列している。これら下部電極は、例えば、n+型ポリシリコン層である。
【0035】
半導体層SC及び下部電極は、ゲート絶縁膜GIで被覆されている。ゲート絶縁膜GIは、例えばTEOS(tetraethyl orthosilicate)などを用いて形成することができる。
【0036】
ゲート絶縁膜GI上には、図4に示す走査信号線SL1及びSL2が形成されている。走査信号線SL1及びSL2は、図4に示すように、各々が後述する画素PXの行方向(X2方向)に延びており、画素PXの列方向(Y2方向)に配列している。走査信号線SL1及びSL2は、例えばMoWなどからなる。
【0037】
ゲート絶縁膜GI上では、図示しない上部電極がさらに配列している。これら上部電極は、例えばMoWなどからなる。上部電極は、走査信号線SL1及びSL2と同一の工程で形成することができる。
【0038】
走査信号線SL1及びSL2のそれぞれは半導体層SCと交差しており、これら交差部は薄膜トランジスタを構成している。また、上部電極は半導体層SCと交差しており、これら交差部も薄膜トランジスタを構成している。具体的には、走査信号線SL1と半導体層SCとの交差部が形成している薄膜トランジスタは、図4及び図5に示す出力制御スイッチSWaである。走査信号線SL2と半導体層SCとの交差部が形成している薄膜トランジスタは、図3に示すダイオード接続スイッチSWc及び選択用スイッチSWbである。上部電極と半導体層SCとの交差部が形成している薄膜トランジスタは、図4に示す駆動制御素子DRである。
【0039】
なお、この例では、駆動制御素子DR及びスイッチSWa乃至SWcには、トップゲート型のpチャネル薄膜トランジスタを使用している。また、図5において参照符号Gで示す部分は、走査信号線SL1に接続された、スイッチSWaのゲートである。
【0040】
上部電極は、下部電極と向き合っている。上部電極と下部電極とそれらの間に介在している絶縁膜GIとは、図4に示すキャパシタCを構成している。
【0041】
ゲート絶縁膜GI、走査信号線SL1及びSL2、並びに上部電極は、図5に示す層間絶縁膜IIで被覆されている。層間絶縁膜IIは、例えばプラズマCVD法などにより成膜されたSiOxなどからなる。
【0042】
層間絶縁膜II上には、図4に示す映像信号線DLと電源線PSLとが形成されている。層間絶縁膜II上には、図5に示すソース電極SE及びドレイン電極DEがさらに形成されている。
【0043】
映像信号線DLは、図4に示すように、各々がY2方向に延びており、X2方向に配列している。映像信号線DLは、画素PXが含む選択用スイッチSWbのドレインに接続されている。
【0044】
電源線PSLは、この例では、各々がY2方向に延びており、X2方向に配列している。電源線PSLは、駆動制御素子DRのソースに接続されている。
【0045】
ソース電極SE及びドレイン電極DEは、層間絶縁膜II及びゲート絶縁膜GIに設けられたコンタクトホールを介して薄膜トランジスタのソース及びドレインにそれぞれ接続されている。ソース電極SE及びドレイン電極DEは、画素PXが含む素子間の接続に利用している。
【0046】
映像信号線DLと電源線PSLとソース電極SEとドレイン電極DEとは、例えば、Mo/Al/Moの三層構造を有している。これらは、同一工程で形成可能である。
【0047】
映像信号線DLと電源線PSLとソース電極SEとドレイン電極DEとは、図5に示すパッシベーション膜PSで被覆されている。パッシベーション膜PSは、例えばSiNxなどからなる。
【0048】
パッシベーション膜PS上では、画素電極PEが配列している。各画素電極PEは、パッシベーション膜PSに設けたコンタクトホールを介して、図5のドレイン電極DEに接続されている。
【0049】
画素電極PEは、この例では光透過性の前面電極である。また、画素電極PEは、この例では陽極である。画素電極PEの材料としては、例えば、ITO(indium tin oxide)などの透明導電性酸化物を使用することができる。
【0050】
パッシベーション膜PS上には、さらに、隔壁絶縁層PIが形成されている。隔壁絶縁層PIには、画素電極PEに対応した位置に貫通孔が設けられているか、或いは、画素電極PEが形成する列又は行に対応した位置にスリットが設けられている。ここでは、一例として、隔壁絶縁層PIには、画素電極PEに対応した位置に貫通孔が設けられていることとする。
【0051】
隔壁絶縁層PIは、例えば、有機絶縁層である。隔壁絶縁層PIは、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いて形成することができる。
【0052】
画素電極PE上には、活性層として、発光層を含んだ有機物層ORGが形成されている。発光層は、例えば、発光色が赤色、緑色、又は青色のルミネセンス性有機化合物を含んだ薄膜である。この有機物層ORGは、発光層に加え、正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロッキング層、電子輸送層、及び電子注入層などもさらに含むことができる。
【0053】
隔壁絶縁層PI及び有機物層ORGは、図5に示す対向電極CEで被覆されている。この例では、対向電極CEは、全ての画素PXで共用している電極,すなわち共通電極,である。また、この例では、対向電極CEは、陰極であり且つ光反射性の背面電極である。対向電極CEは、例えば、パッシベーション膜PSと隔壁絶縁層PIとに設けられたコンタクトホールを介して、映像信号線DLと同一の層上に形成された電極配線(図示せず)に電気的に接続されている。各々の有機EL素子OLEDは、画素電極PEと、有機物層ORGと、対向電極CEとを含んでいる。
【0054】
画素PXは、図4に示すように、駆動制御素子DRと、スイッチSWa乃至SWcと、有機EL素子OLEDと、キャパシタCとを含んでいる。上記の通り、この例では、駆動制御素子DR及びスイッチSWa乃至SWcにはpチャネル薄膜トランジスタを使用している。
【0055】
駆動制御素子DRと出力制御スイッチSWaと有機EL素子OLEDとは、第1電源端子ND1と第2電源端子ND2との間で、この順に直列に接続されている。この例では、電源端子ND1は高電位電源端子であり、電源端子ND2は低電位電源端子である。
【0056】
具体的には、駆動制御素子DRのソースは電源端子ND1に接続されており、有機EL素子OLEDの対向電極CEは電源端子ND2に接続されている。出力制御スイッチSWaは、駆動制御素子DRのドレインと有機EL素子OLEDの画素電極PEとの間に接続されており、そのゲートは走査信号線SL1に接続されている。
【0057】
キャパシタCは、定電位端子ND1’と駆動制御素子DRのゲートとの間に接続されている。この例では、キャパシタCは、下部電極が電源線PSLに接続されており、上部電極が駆動制御素子DRのゲートに接続されている。
【0058】
選択用スイッチSWbは、映像信号線DLと駆動制御素子DRのドレインとの間に接続されている。選択用スイッチSWbのゲートは、走査信号線SL2に接続されている。
【0059】
ダイオード接続スイッチSWcは、駆動制御素子DRのドレインとゲートとの間に接続されている。ダイオード接続スイッチSWcのゲートは、走査信号線SL2に接続されている。
【0060】
なお、この表示パネルDPから有機物層ORGと対向電極CEとを省略したものがアレイ基板ASに相当している。
【0061】
映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは、この例では、表示パネルDPにCOG(chip on glass)実装している。映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRは、COG実装する代わりに、TCP(tape carrier package)実装してもよい。
【0062】
映像信号線ドライバXDRには、映像信号線DLが接続されている。この例では、映像信号線ドライバXDRには、電源線PSLがさらに接続されている。映像信号線ドライバXDRは、映像信号線DLに映像信号として電流信号を出力すると共に、電源線PSLに電源電圧を供給する。
【0063】
走査信号線ドライバYDRには、走査信号線SL1及びSL2が接続されている。この例では、走査信号線ドライバYDRは、走査信号線SL1及びSL2にそれぞれ走査信号として電圧信号を出力する。
【0064】
この有機EL表示装置は、例えば、以下の方法で製造することができる。
まず、アレイ基板ASを準備し、その画素電極PE上に有機物層ORG及び対向電極CEを順次形成する。有機物層ORGが含む少なくとも1つの層は、後で詳述するように、図1及び図2の装置を用いて形成する。次いで、このようにして得られた有機EL素子OLEDを封止し、表示パネルDPを完成する。さらに、表示パネルDPに映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRを実装する。以上のようにして、有機EL表示装置を完成する。
【0065】
有機物層ORGが含む少なくとも1つの層は、例えば、以下の方法で形成する。
まず、真空チャンバVC内を真空とする。このとき、リザーバRSVは蒸発材料EMとして形成すべき層の材料を収容している。
【0066】
次に、ヒータHTに電力を供給し、リザーバRSVを十分に昇温させる。これにより、リザーバRSV内の蒸発材料EMを気化させる。
【0067】
リザーバRSV内で気化した蒸発材料EMは、ノズルNZLから噴き出す。ノズルNZLから噴き出た蒸発材料は、膜厚センサSNS1の検出部に堆積する。コントローラCNTは、膜厚センサSNS1の出力に基づいて、ヒータHTに供給する電力の大きさを制御する。このフィードバック制御により、蒸発材料EMの蒸着レートを目標値とほぼ等しくする。
【0068】
その後、真空を維持したまま、アレイ基板ASを真空チャンバVC内に搬送する。真空チャンバVCでは、アレイ基板ASは、隔壁絶縁層PIが下方を向くように基板ホルダHLD2に支持させる。すなわち、アレイ基板ASは、図1のZ1方向と図4のZ2方向とが一致するように、基板ホルダHLD2に支持させる。また、この時点では、図1に示すように、アレイ基板ASは、マスクMSKから十分に離間させると共に、電位計SNS2の近傍に位置させておく。
【0069】
次に、電位計SNS2によりアレイ基板ASの電位を測定する。そして、この電位に基づいて、アレイ基板ASとマスクMSKとの電位差が小さくなるように、マスクMSKの電位を調整する。例えば、マスクMSKの電位をアレイ基板ASの電位と等しくする。
【0070】
次いで、図2に示すように、アレイ基板ASをマスクMSKに近づける。続いて、アレイ基板ASとマスクMSKとの位置合わせを行う。なお、アレイ基板AS及びマスクMSKには、アライメントマークを形成しておく。
【0071】
その後、ノズルNZLから蒸発材料EMを噴き出させたまま、蒸発ユニットEUをX1方向に一定の速度で移動させる。ノズルNZLから噴き出た蒸発材料EMは、マスクMSKに設けた貫通孔を通って画素電極PE上に堆積する。このようにして、有機物層ORGが含む層が得られる。
【0072】
次に、真空を維持したまま、成膜後のアレイ基板ASを真空チャンバVCから搬出し、蒸発ユニットEUを膜厚センサSNSの下方に移動させる。次いで、2枚目のアレイ基板ASを真空チャンバVCに搬入し、1枚目のアレイ基板ASに対して行ったのと同様の処理を行う。3枚目以降のアレイ基板ASは、これと同様の方法により処理する。
【0073】
さて、図1及び図2の装置を使用すると、表示装置に輝点及び/又は滅点が発生するのを抑制することができる。これについて、以下に説明する。
【0074】
通常、真空チャンバVCに搬入した直後のアレイ基板ASの電位は、マスクMSKの電位とは異なっている。そのため、マスクMSKの電位調整を行わない場合、例えば、アレイ基板ASとマスクMSKとを位置合わせしているときにそれらが接触すると、画素回路に大きな電流が流れることがある。その結果、画素回路内のトランジスタが破壊され、輝点及び/又は滅点が発生する。
【0075】
図1及び図2の装置は、上記の通り、アレイ基板ASとマスクMSKとの電位差が小さくなるように、マスクMSKの電位を調整する。したがって、例え、アレイ基板ASとマスクMSKとが接触したとしても、画素回路に大きな電流が流れる可能性は低い。したがって、図1及び図2の装置を使用すると、表示装置に輝点及び/又は滅点が発生するのを抑制することができる。
【0076】
実際に、図4の表示装置を製造し、輝点及び/又は滅点の発生率を調べた。その結果、マスクMSKの電位調整を行わずに6つの表示装置を製造したところ、これら表示装置における輝点及び/又は滅点の発生率は、22%、25%、25%、28%、31%、33%であった。これに対し、マスクMSKの電位調整を行って6つの表示装置を製造したところ、これら表示装置における輝点及び/又は滅点の発生率は、2%、3%、5%、7%、8%、10%であった。
【0077】
次に、本発明の第2態様について説明する。
図6及び図7は、本発明の第2態様に係る表示装置の製造装置を概略的に示す図である。なお、図6には、電位測定又は電位調整中の状態を描いており、図7には、位置合わせ中の状態又は蒸着を開始する直前の状態を描いている。
【0078】
図6及び図7の製造装置は、以下の構成を採用したこと以外は、図1乃至図3を参照しながら説明した製造装置と同様の構造を有している。
【0079】
すなわち、この装置は、電位計SNS2を含んでいない。そして、基板ホルダHLD2はコントローラCNTに電気的に接続されている。基板ホルダHLD2は、アレイ基板ASの上面をコントローラCNTに電気的に接続する。コントローラCNTは、上記の第1状態において、アレイ基板ASの電位及びマスクMSKの電位を第1及び第2基準電位にそれぞれ設定する。典型的には、コントローラCNTは、第1状態において、アレイ基板ASの電位とマスクMSKの電位とを等しくする。
【0080】
図8は、図6及び図7の装置を用いて製造可能な表示装置が含む表示パネルの一例を概略的に示す断面図である。
【0081】
図8の表示パネルDPは、アクティブマトリクス型駆動方式を採用した上面発光型の有機EL表示パネルである。この表示パネルDPは、以下の構成を採用したこと以外は、図5の表示パネルDPと同様の構造を有している。
【0082】
すなわち、この表示パネルDPでは、画素電極PEは光反射性の背面電極であり、対向電極CEは光透過性の前面電極である。そして、絶縁基板SUBの主面は、例えば金属又は導電性酸化物からなる導体層CLで被覆されている。なお、この表示パネルDPから有機物層ORGと対向電極CEとを除いた構造がアレイ基板ASに相当する。
【0083】
この表示パネルDPを含んだ有機EL表示装置は、例えば、以下の方法で製造することができる。
まず、アレイ基板ASを準備し、その画素電極PE上に有機物層ORG及び対向電極CEを順次形成する。有機物層ORGが含む少なくとも1つの層は、後で詳述するように、図6及び図7の装置を用いて形成する。次いで、このようにして得られた有機EL素子OLEDを封止し、表示パネルDPを完成する。さらに、表示パネルDPに映像信号線ドライバXDR及び走査信号線ドライバYDRを実装する。以上のようにして、有機EL表示装置を完成する。
【0084】
有機物層ORGが含む少なくとも1つの層は、例えば、以下の方法で形成する。
まず、真空チャンバVC内を真空とする。このとき、リザーバRSVは蒸発材料EMとして形成すべき層の材料を収容している。
【0085】
次に、ヒータHTに電力を供給し、リザーバRSVを十分に昇温させる。これにより、リザーバRSV内の蒸発材料EMを気化させる。
【0086】
リザーバRSV内で気化した蒸発材料EMは、ノズルNZLから噴き出す。ノズルNZLから噴き出た蒸発材料は、膜厚センサSNS1の検出部に堆積する。コントローラCNTは、膜厚センサSNS1の出力に基づいて、ヒータHTに供給する電力の大きさを制御する。このフィードバック制御により、蒸発材料EMの蒸着レートを目標値とほぼ等しくする。
【0087】
その後、真空を維持したまま、アレイ基板ASを真空チャンバVC内に搬送する。真空チャンバVCでは、アレイ基板ASは、隔壁絶縁層PIが下方を向くように基板ホルダHLD2に支持させる。すなわち、アレイ基板ASは、図6のZ1方向と図4のZ2方向とが一致するように、基板ホルダHLD2に支持させる。また、この時点では、図6に示すように、アレイ基板ASは、マスクMSKから十分に離間させると共に、電位計SNS2の近傍に位置させておく。
【0088】
次に、アレイ基板ASの電位及びマスクMSKの電位を、コントローラCNTが記憶している第1及び第2基準電位にそれぞれ設定する。第1基準電位と第2基準電位との差は、アレイ基板ASとマスクMSKとが接触してもトランジスタの破壊が殆ど生じないように十分に小さくする。例えば、第1基準電位と第2基準電位とを等しくする。
【0089】
次いで、図7に示すように、アレイ基板ASをマスクMSKに近づける。続いて、アレイ基板ASとマスクMSKとの位置合わせを行う。なお、アレイ基板AS及びマスクMSKには、アライメントマークを形成しておく。
【0090】
その後、ノズルNZLから蒸発材料EMを噴き出させたまま、蒸発ユニットEUをX1方向に一定の速度で移動させる。ノズルNZLから噴き出た蒸発材料EMは、マスクMSKに設けた貫通孔を通って画素電極PE上に堆積する。このようにして、有機物層ORGが含む層が得られる。
【0091】
次に、真空を維持したまま、成膜後のアレイ基板ASを真空チャンバVCから搬出し、蒸発ユニットEUを膜厚センサSNSの下方に移動させる。次いで、2枚目のアレイ基板ASを真空チャンバVCに搬入し、1枚目のアレイ基板ASに対して行ったのと同様の処理を行う。3枚目以降のアレイ基板ASは、これと同様の方法により処理する。
【0092】
この装置を使用すると、図1乃至図3を参照しながら説明した装置を使用した場合と同様、表示装置に輝点及び/又は滅点が発生するのを抑制することができる。実際に、図8に示す表示パネルDPを含んだ表示装置を製造し、輝点及び/又は滅点の発生率を調べた。その結果、アレイ基板AS及びマスクMSKの電位調整を行って6つの表示装置を製造したところ、これら表示装置における輝点及び/又は滅点の発生率は、1%、3%、4%、5%、7%、10%であった。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1態様に係る表示装置の製造装置を概略的に示す図。
【図2】本発明の第1態様に係る表示装置の製造装置を概略的に示す図。
【図3】図1及び図2の製造装置が含む蒸発ユニットを概略的に示す断面図。
【図4】図1及び図2の装置を用いて製造可能な表示装置の一例を概略的に示す平面図。
【図5】図4の表示装置で使用可能な表示パネルの一例を概略的に示す断面図。
【図6】本発明の第2態様に係る表示装置の製造装置を概略的に示す図。
【図7】本発明の第2態様に係る表示装置の製造装置を概略的に示す図。
【図8】図6及び図7の装置を用いて製造可能な表示装置が含む表示パネルの一例を概略的に示す断面図。
【符号の説明】
【0094】
AS…アレイ基板、C…キャパシタ、CE…対向電極、CL…導体層、CP…蓋、CNT…コントローラ、CS…カーボン基材、DE…ドレイン電極、DL…映像信号線、DP…表示パネル、DR…駆動制御素子、EM…蒸発材料、EU…蒸発ユニット、GI…ゲート絶縁膜、HLD1…マスクホルダ、HLD2…基板ホルダ、HT…ヒータ、II…層間絶縁膜、MSK…蒸着マスク、ND1…電源端子、ND1’…定電位端子、ND2…電源端子、NZL…ノズル、OLED…有機EL素子、ORG…有機物層、PE…画素電極、PI…隔壁絶縁層、PS…パッシベーション膜、PSL…電源線、PX…画素、RE…抵抗素子、RSV…リザーバ、SC…半導体層、SE…ソース電極、SL1…走査信号線、SL2…走査信号線、SNS1…膜厚センサ、SNS2…電位計、SUB…絶縁基板、SWa…出力制御スイッチ、SWb…選択用スイッチ、SWc…ダイオード接続スイッチ、UC…アンダーコート層、VC…真空チャンバ、XDR…映像信号線ドライバ、YDR…走査信号線ドライバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内でアレイ基板を保持する基板ホルダと、
前記真空チャンバ内で前記アレイ基板の下面と向き合うようにマスクを保持するマスクホルダと、
前記真空チャンバ内であって前記マスクの下方に配置される坩堝が収容する蒸発材料を加熱して気化させるヒータと、
前記アレイ基板及び/又は前記マスクの電位を測定する電位計と、
前記電位計の出力に基づいて前記アレイ基板と前記マスクとの電位差を小さくする電位制御を行うコントローラとを具備したことを特徴とする表示装置の製造装置。
【請求項2】
前記電位計は前記アレイ基板の電位を測定し、前記コントローラは前記電位計の出力に基づいて前記マスクの電位を前記アレイ基板の電位に近づけることを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記電位計の出力に基づいて前記アレイ基板の電位と前記マスクの電位とを等しくすることを特徴とする請求項1に記載の製造装置。
【請求項4】
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内でアレイ基板を保持する基板ホルダと、
前記真空チャンバ内で前記アレイ基板の下面と向き合うようにマスクを保持するマスクホルダと、
前記真空チャンバ内であって前記マスクの下方に配置される坩堝が収容する蒸発材料を加熱して気化させるヒータと、
前記アレイ基板の電位及び前記マスクの電位を第1及び第2基準電位にそれぞれ設定する電位制御を行うコントローラとを具備したことを特徴とする表示装置の製造装置。
【請求項5】
前記第1及び第2基準電位は互いに等しいことを特徴とする請求項4に記載の製造装置。
【請求項6】
前記アレイ基板を前記マスクに対して相対的に移動させる移動機構をさらに具備したことを特徴とする請求項1又は4に記載の製造装置。
【請求項7】
前記移動機構は、前記アレイ基板の下面と前記マスクの上面との間の距離がより長い第1状態から前記距離がより短い第2状態へと変化するように、前記アレイ基板を前記マスクに対して相対的に移動させ、
前記コントローラは、前記第1状態において前記電位制御を行うことを特徴とする請求項6に記載の製造装置。
【請求項8】
前記移動機構は、前記第2状態において、前記坩堝を前記アレイ基板及び前記マスクに対して相対的に移動させることを特徴とする請求項7に記載の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−317530(P2007−317530A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146449(P2006−146449)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】