説明

表示装置及びその製造方法

【課題】補助電極を設けてなる表示装置において、高精細で高歩留まりとする。
【解決手段】複数の第1電極300の周辺端部を囲む素子分離膜330を設け、素子分離膜330の上部に第2電極320と補助電極とからなる積層域を有する表示基板を備える。補助電極は、破線状に形成された第1補助電極400と、第1補助電極400が形成されていない領域を補間すべく第1補助電極400上に形成された第2補助電極410とからなる。補助電極の配線間隔を補助電極の配線長さよりも小さく設定し、第1補助電極の膜厚を5nm以上30nm以下に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を備えた表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料のエレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:以下、ELと記す)を用いた有機EL素子は、対向して設けた第1電極と第2電極との間に有機層を配設して構成されている。このような有機EL素子は、低電圧駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。
【0003】
このような有機EL素子を用いたアクティブマトリックス型の表示装置(有機ELディスプレイ)は、基板上の各画素に薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFTと記す)を備えている。そして、TFTを覆うように形成された層間絶縁膜上に有機EL素子が形成されている。この有機EL素子は、TFTに接続された状態で画素毎にパターン形成された第1電極と、この第1電極の中央部を画素開口として露出させてその周囲を覆う絶縁性を有する素子分離膜とを備えている。また、この素子分離膜で分離された画素開口内の第1電極上に設けられた有機層と、この有機層を覆う状態で設けられた第2電極とを備えている。このうち第2電極は、通常、複数の画素を覆うように形成され、複数の画素間に共通して用いられている。
【0004】
また、このようなアクティブマトリックス型の表示装置においては、有機EL素子の1画素領域における発光領域(開口率)を確保するために、基板の表面側から光を取出す、いわゆる上面光取出し構造として構成することが有効になる。このため、第2電極は、光透過性を確保するために薄膜化が要求され、これにより抵抗値が上昇して電圧降下が生じ易くなる傾向にある。
【0005】
そこで、画素開口間の素子分離膜上に導電性の良好な金属材料からなる補助電極を形成し、第2電極に補助電極を接続させることで、第2電極の電圧降下を防止する構造が提案されている。
【0006】
このような発光装置として、補助電極を第1電極と同一層に形成し、各第1電極上に有機層を独立形成した後、第2電極を形成し、補助電極とコンタクトする構成のものが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、第2電極を形成した後に、第2電極の上部にシャドーマスクを用いて補助電極を蒸着により形成する方法が提案されている(特許文献2、特許文献3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2002−318556号公報
【特許文献2】特開2003−316291号公報
【特許文献3】特開2007−92109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、アクティブマトリックス型の表示装置において有効な上面光取出し構造とした際には、光取出し側にある第2電極の光透過率を高めることが必須であり、また、光吸収損失と干渉の影響を考慮して第2電極を薄く形成する必要がある。このため、光取出し側の第2電極の画面内における抵抗により、電圧が不均一となることがあり、応答速度の低下や消費電力の増加等による表示品位を低下させる原因となる。
【0010】
このため、第2電極の抵抗値を低減すべく、第2電極に電気的に接続がなされた補助電極を形成する提案がなされている。しかし、上記特許文献1に記載された構成の場合には、第1電極と同一層に補助電極を形成するため、第1電極の面積が補助配線分だけ縮小することになる。
【0011】
また、有機層形成後に、第1電極と同一層に形成された補助電極とコンタクトする必要がある。そのため、有機層のうちの各色に共通で配される共通層に関しても、補助電極上に蒸着されないように高い精度のアライメントが必要になり、装置が複雑になることが懸念される。
【0012】
また、上記特許文献2に記載されたように、補助電極を素子分離膜上に形成して第2電極とコンタクトした構成においては、シャドーマスクを用いた蒸着により、補助電極が分離膜上で画像表示部の外側まで延在するようにして、画素の長辺方向に形成されている。このため、画素の長辺方向におけるシャドーマスクのよじれや撓み等により、補助電極の幅にバラツキが生じ、製造歩留まりが低下する可能性がある。この現象は、特に表示装置の大画面化が進むほど顕著になり、補助電極を非発光領域に納めることが困難になる。
【0013】
そこで、上記特許文献3に記載された技術では、マスク強度が保たれるように、シャドーマスクの配線パターンを50%の選択比となる点線形状とすることで、シャドーマスクのよじれ等を防ぎ補助電極を作製している。
【0014】
しかし、一度の補助電極形成では補助電極が点線状にしか配されないため、補助電極が形成されていない領域に対して再度同一の膜厚で蒸着を行う必要が生じる。その際、予め基板側に第1補助電極形成用のアライメントマークと、第2補助電極形成用のアライメントマークとを設けておき、第1補助電極を形成後にシャドーマスクを移動させて、第2アライメントマークを用いて再度アライメントを行うことになる。
【0015】
第1アライメント位置にて第1補助電極蒸着が完了した後には、シャドーマスクのアライメント用開口部も含めて蒸着がなされるため、第2アライメントマークは十分に離れた領域に位置している必要がある。
【0016】
例えば、第1アライメントマークと第2アライメントマークの位置が、シャドーマスクのアライメント用開口部よりも狭い領域に位置した場合には、第1補助電極を形成した後に、第2補助電極形成用のアライメントマークが蒸着膜により見えなくなってしまう。
【0017】
また、基板側に配されたアライメントマークが、例えば10mm程度離れている場合には、シャドーマスクも対応して10mm程度シフトさせる必要が生じる。
【0018】
すなわち、第1補助電極の形成時にアライメントを行った後に、シャドーマスクを第2補助電極形成用のアライメント位置に移動し、再度、第2補助電極を形成するためにアライメントを行うこととなり、補助電極形成の工程が煩雑になる。
【0019】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、補助電極を設けてなる表示装置において、高精細で高歩留まりである表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の表示装置及びその製造方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。
【0021】
すなわち、本発明の表示装置は、基板上の各画素にパターン形成された複数の第1電極と、第1電極に対応するように形成された発光性材料を含む発光媒体と、第1電極と対向して形成された第2電極とから画素を形成している。また、各第1電極の周辺端部を囲む電気絶縁性隔壁を設け、電気絶縁性隔壁の上部に第2電極と補助電極とからなる積層域を有する表示基板を備えている。そして、補助電極は、破線状に形成された第1補助電極と、第1補助電極が形成されていない領域を補間すべく第1補助電極上に形成された第2補助電極とからなる。さらに、下記条件式(1)及び(2)を満足することを特徴とするものである。
【0022】
b<c ・・・ (1)
5nm≦d≦30nm ・・・ (2)
【0023】
但し、
b:各補助電極の配線間隔
c:各補助電極の配線長さ
d:第1補助電極の膜厚
【0024】
また、本発明の表示装置の製造方法は、上述した表示装置を製造する際に、第1補助電極及び第2補助電極を、シャドーマスクを用いた蒸着工程にて形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の表示装置によれば、第1補助電極の膜厚が薄いため、シャドーマスクを用いた第1補助電極を形成した後にも、有機EL基板に設けられたシャドーマスク用のアライメントマークを確認することが可能になる。これにより、アライメントマークによるアライメント工程終了後に、補助配線と平行にシャドーマスクをシフトさせることで、同一のシャドーマスクにより補助配線を形成することが可能になる。その結果、シャドーマスクの強度を確保しつつ、複数回の蒸着工程による工程時間の増大を最小限に抑えて、途切れることのない補助配線形成を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の表示装置及びその製造方法の実施形態を説明する。なお、本発明の表示装置及びその製造方法は、以下に説明する実施形態に限られるものではない。
【0027】
<表示装置>
図3は、本発明の実施形態に係る表示装置における表示領域の概略構成を示す平面図である。また、図1は、図3におけるY方向の断面図であり、図2は、図3におけるX方向の断面図である。
【0028】
本発明の実施形態に係る表示装置は、有機EL素子を発光素子として配列形成したアクティブマトリックス型の表示基板を備えた表示装置である。図1乃至図3において、101は基板、102はソース領域、103はドレイン領域、104はPoly−Si、105はゲート電極をそれぞれ示す。また、106は絶縁膜(ゲート絶縁膜)、107は絶縁膜(層間絶縁膜)、108はドレイン電極、109は絶縁膜(無機絶縁膜)、110は平坦化膜をそれぞれ示す。また、200はTFT、300はパターン形成された第1電極、310は発光媒体である発光性材料層、320は第1電極300と対向して設けた第2電極、330は電気絶縁性隔壁として機能する素子分離膜をそれぞれ示す。さらに、400は第1補助電極、410は第2補助電極、500は画素をそれぞれ示す。
【0029】
この表示装置は、図1乃至図3に示すように、基板101上の各画素にTFT200を備えている。TFT200が形成された基板101上には、TFT200のソース領域102、ドレイン領域103に接続されたドレイン電極108が形成され、このドレイン電極108を覆う状態で絶縁膜106、107、109、平坦化膜110が設けられている。なお、TFT200は図示したトップゲート型に限定されることはなく、ボトムゲート型であってもよい。
【0030】
そして、平坦化膜110上の素子分離膜330に囲まれた各画素開口部に、パターン形成された第1電極300、発光媒体である発光性材料層310、及び第1電極300と対向して設けた第2電極320を積層した構成となっている。
【0031】
第1電極300を陰極とし、第2電極320を陽極とする場合には、第1電極300を周期律表1属又は2属にある元素の合金又は化合物で形成する。具体的には、第1電極300として、アルミニウムや銀、アルミニウムやネオジウムとの合金、あるいはこれらの反射性電極上に酸化インジウム・スズ、酸化亜鉛、ガリウムが添加された酸化亜鉛、若しくはこれらの化合物を積層した複合層を用いることができる。
【0032】
第2電極320は、酸化インジウム・スズ、酸化亜鉛、ガリウムが添加された酸化亜鉛、若しくはこれらの化合物が適用される。この第2電極と発光媒体である発光性材料層310とを良好に接触させるためには、その界面に薄い金属層を介在させてもよい。
【0033】
第1電極300を陽極とし、第2電極320を陰極とする場合には、第1電極300を酸化インジウム・スズ、酸化亜鉛、ガリウムが添加された酸化亜鉛、若しくはこれらの化合物、又はこれらと同等の仕事関数を有する導電性材料で形成する。あるいは、第1電極300を周期律表1属又は2属にある元素の合金又は化合物で形成することが好ましい。例えば、アルミニウムや銀、アルミニウムやネオジウムとの合金で形成した反射性電極上に酸化インジウム・スズ、酸化亜鉛、ガリウムが添加された酸化亜鉛、若しくはこれらの化合物を積層した複合層を用いることができる。
【0034】
第2電極320は、周期律表1属又は2属にある元素の合金又は化合物で形成され、アルミニウムや銀との合金で形成するのが好ましいが、光透過性を持たせるために極めて薄く形成し、酸化インジウム・スズなどの透明導電膜を積層させてもよい。
【0035】
さらに、金属材料層の下部には、下地となる平坦化膜110との密着層として導電性酸化材料層を設け、金属材料層を導電性酸化材料層で挟持してなる3層構造としてもよい。
【0036】
素子分離膜330は、隣接する画素間に設けられた電気絶縁性隔壁として機能する絶縁膜であり、第1電極300の周辺端部を覆うように配置されている。素子分離膜330として、窒化珪素、酸窒化珪素や酸化珪素等からなる無機絶縁膜や、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック系樹脂等の有機絶縁膜を用いることができる。
【0037】
発光性材料層310は、陽極側にある正孔注入輸送層、陰極側にある電子注入輸送層、発光層等を適宜組み合わせた構造となっている。正孔注入輸送層又は電子注入輸送層は、電極からの正孔又は電子の注入効率と、輸送性(移動度)が優れた材料を組み合わせることができる。
【0038】
発光性材料層310は、例えば、正孔輸送層、発光層、電子輸送層の3層から構成されているが、発光層のみであってもよい。あるいは、発光性材料層310を、2層、4層など複数の層から形成してもよい。正孔輸送層には、例えばNPDを用いているが、それ以外の材料であってもよい。
【0039】
発光性材料層310は、発光色毎に設けられ、シャドーマスクにより塗り分けられている。発光性材料層310には、赤色発光層として例えば、CBPにIr(piq)3をドープしたもの、緑色発光層として例えばAlq3にクマリンをドープしたもの、青色発光層としてB−Alq3にPeryleneをドープしたものを用いている。なお、発光性材料層310として、それ以外の材料を用いてもよい。電子輸送層には、例えばBathophenantrolineを用いているが、それ以外の材料であってもよい。
【0040】
補助電極は、第1層目に形成される第1補助電極400と、第2層目に形成される第2補助電極410とからなる。また、電気絶縁性隔壁である素子分離膜330の上部に第2電極320と補助電極(第1補助電極400及び第2補助電極410)とからなる積層域を有している。
【0041】
補助電極は、破線状に形成された第1補助電極400と、第1補助電極400が形成されていない領域を補間すべく第1補助電極400上に形成された第2補助電極410とからなる。なお、以下の説明において、単に補助電極と表現する場合には、第1補助電極400及び第2補助電極410の双方を意味する。
【0042】
図4は、本発明の実施形態に係る表示装置における補助電極形成用シャドーマスクの概略構成を示す平面図である。図4(a)には、第1層目に形成される補助電極(第1補助電極400)及び第2層目に形成される補助電極(第2補助電極410)を形成する際に用いるシャドーマスク(一部)の平面図を模式的に示す。また、図4(b)には、シャドーマスクの周辺部に配されたシャドーマスクのアライメントマーク部を模式的に示す。さらに、図4(c)には、有機EL基板側のアライメントマークを模式的に示す。
【0043】
第1層目に形成される第1補助電極400は、図4(b)及び図4(c)に示すアライメントマークを用いてシャドーマスクのアライメントを行った後、蒸着工程にて破線状に形成される。電極材料は、導電性材料であって、かつ電気抵抗率が低い材料が選択される。例えば、電極材料として、アルミニウム、銅又は銀等を用いることができる。
【0044】
第1補助電極400は、凹凸のある有機EL基板上に配した際に配線として機能する必要があるため、5nm以上の配線膜厚であることが好ましい。
【0045】
また、第2補助電極410を形成する際に、図4(d)に示すように、再度アライメントを行う必要がある。そのため、図4(c)に示す有機EL基板側のアライメントマークが、図4(b)に示すシャドーマスクのアライメントマーク部の開口越しに確認できる状態を確保する必要がある。そのため、第1補助電極400の形成膜厚は30nm以下であることが好ましい。
【0046】
これにより、第1補助電極300の形成後にも、基板101上に配された第1補助電極400のアライメントマークを用いて再度アライメントを行うことが可能となる。
【0047】
後述する第2補助電極410の形成時には、まず、第1補助電極400の形成時に用いたアライメントマークを基にアライメントを実施し、破線状に形成された第1補助電極400の配線間を埋めるべく、自動制御により数十μm程度平行移動させればよい。
【0048】
第2補助電極410は、第1補助電極400を形成する導電性材料とオーミック接触性のよい材料であり、かつ抵抗率の小さい導電性材料が選択される。具体的には、アルミニウム、アルミニウムとチタン、銅又は銀等で形成することができる。
【0049】
本発明の実施形態に係る表示装置によれば、破線状に形成された第1補助電極400の配線間を埋めるべく、図4(b)、図4(c)に示すアライメントマークを用いてアライメントを行う。その後に、シャドーマスクを補助電極(配線)方向と平行にシフトさせた後に再度成膜を開始する。そのため、第2補助電極410の配線材料は、第1補助電極400と同様の材料を用いることが好ましい。
【0050】
また、シャドーマスクの平行シフト量は、第1補助電極400により形成された配線間隔を埋める際に必要な量であって、第1補助電極400と第2補助電極410により積層構造となる領域が形成されるようにシフトさせることが好ましい。そのため、第1補助電極400と第2補助電極410を同一のシャドーマスクを用いて形成することが好ましい。
【0051】
ここで、図8を参照して、補助電極の配線幅、補助電極の配線間隔、補助電極の配線長さ、及び第1補助電極の膜厚の関係を説明する。図8は、本発明の実施形態に係る表示装置における表示領域の概略構成を示す平面図であり、図中、aは各補助電極の配線幅、bは各補助電極の配線間隔、cは各補助電極の配線長さをそれぞれ示す。
【0052】
本発明の実施形態に係る表示装置では、シャドーマスクにより破線状に形成される補助電極について、配線間隔b、配線長さc、第1補助電極の膜厚dは、下記条件式(1)及び条件式(2)の関係を満たしている必要がある。
【0053】
b<c ・・・ (1)
5nm≦d≦30nm ・・・ (2)
【0054】
さらに、配線幅a、配線間隔bは、下記条件式(3)を満たすことが好ましい。
【0055】
10a≧b ・・・ (3)
【0056】
各補助電極の配線間隔bが広くなり過ぎると、薄膜である第1補助電極400と第2電極320のみの領域の配線抵抗が拡大し、各補助電極による効果が低下することになる。
【0057】
本発明の実施形態に係る表示装置では、各補助電極の配線幅aと、各補助電極の配線間隔bとの関係を規定した条件式(3)を満たすことにより、第2補助電極410の形成時にシャドーマスクを移動させる量を、1画素サイズ程度に抑えることが可能になる。その結果、第2補助電極410の形成時にシャドーマスクをアライメントした後に、シャドーマスクを平行移動させる量を抑えることができ、第2補助電極410を所望の位置に簡便に形成することができる。
【0058】
なお、各補助電極の配線幅aが1画素あたりに占める割合は、各画素の周辺部に配される素子分離膜の幅であり、画素サイズが拡大すれば各補助電極の配線幅aも拡大する。画素サイズが拡大した場合は、各補助電極の形成時に求められるアライメント精度も低下する傾向になるのが一般的であり、各補助電極の配線幅aと各補助電極の配線間隔bとの関係を規定した条件式(3)を満たすことで、本発明の効果を得ることができる。
【0059】
また、前述した通り、第1補助電極400の膜厚dは、第2補助電極410の形成時に、基板上に配されたアライメントマークを再度用いる必要があるため、条件式(2)に規定したように、30nm以下であることが好ましい。さらに、第1補助電極400の膜厚dは、凹凸のある有機EL基板上に配した際に配線として機能させるために、5nm以上であることが好ましい。
【0060】
一方で、第2補助電極410の膜厚は、補助電極を含む第2電極320の抵抗値が所望の値となるように、必要な膜厚を形成すればよい。本発明の実施形態に係る表示装置では、第1補助電極400の厚みは、第2補助電極410の厚みよりも薄いことが好ましい。
【0061】
なお、補助電極の材料種並びに第2電極320の材料種によるが、第2電極320に透明導電膜を用いればよい。この場合に上記関係を満たすことで、薄膜である第1補助電極400と第2電極320の積層部の抵抗は、第2電極320が単層である領域の抵抗の約1/10となる。
【0062】
また、外部からの水分による劣化を防ぐために、露点−60℃以下の窒素雰囲気において封止基板をUV硬化エポキシ樹脂を用いて基板101に貼り付ける。封止基板の有機EL素子側には、酸化ストロンチウムや酸化カルシウムのような吸湿膜が成膜されていることがさらに好ましい。また、本構成ではガラス基板によって封止しているが、窒化珪素、酸窒化珪素や、酸化珪素等からなる無機絶縁膜で封止されていてもよい。
【実施例】
【0063】
次に、図5乃至図7を参照して、上述した構成の表示装置における製造方法の一例及び表示装置のさらに詳しい構成のトップエミッション型有機EL表示装置の具体例を、その製造手順に沿って説明する。図5乃至図7は、本発明の実施例に係る表示装置における有機EL素子の作製工程の概略を示す断面図である。
【0064】
まず、図5(a)に示すように、例えばガラス基板からなる基板101上にTFT200及びそのソース、ドレイン電極を形成した。その後、TFT200及び電極の形成により、基板101の表面に生じた凹凸を埋め込むため、基板101上に平坦化膜110を形成した。この場合、例えば、基板101上にポジ型感光性ポリイミドをスピンコート法により塗布し、露光装置にてパターン露光を行い、次いで現像装置にて現像を行った後、ポストベークを行う。
【0065】
次に、平坦化膜110上に、第1電極300を形成した。ここでは平坦化膜110上に、反射層としてAlを100nm、導電性酸化材料(例えばITO)を、スパッタリング法により20nm程度の膜厚で成膜した。
【0066】
その後、図5(b)、(c)に示すように、素子分離膜330を形成するため、例えばCVD法によって、SiO2(酸化珪素)膜を300nm程度の膜厚で成膜した。その後、リソグラフィ技術を用いて形成したレジストパターンをマスクにしたエッチングにより、SiO2(酸化珪素)膜をパターニングした。この際、エッチング側壁がテーパ形状となるような条件でエッチングを行うこととする。
【0067】
次に、図6(a)、(b)に示すように、シャドーマスクを用いた蒸着工程により、発光性材料を蒸着した後、導電性材料のシャドーマスクを用いた蒸着工程により、第2電極320を形成した。
【0068】
次に、図7(a)、(b)に示すように、シャドーマスクにより、第1補助電極400としてAlを10nmの膜厚で蒸着した。なお、蒸着形成された第1補助電極400の配線幅は15μmであり、配線間隔は30μmであった。また、各配線長さは、200μmであった。
【0069】
続いて、シャドーマスクのアライメントマークを用いて、アライメントを行った後、第1補助電極400により形成された配線方向と平行にシャドーマスクを100μmシフトさせ、第2補助電極410を100nmの膜厚で蒸着した。このように、第2補助電極410は、第1補助電極400と同一開口を有するシャドーマスクにより形成される。
【0070】
最後に、露点−60℃以下の窒素雰囲気において、図示しない封止基板の掘り込み領域であって表示を阻害しない領域に、酸化ストロンチウムを主材料とした吸湿材料を貼り付け、封止基板をUV硬化エポキシ樹脂を用いて基板101に貼り付けた。
【0071】
以上の工程により、図1及び図2を用いて説明した構成の表示装置を得ることができる。この表示装置は、上記条件式(1)乃至(3)のすべてを満足している。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置における表示領域の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る表示装置における表示領域の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る表示装置における表示領域の概略構成を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る表示装置における補助電極形成用シャドーマスクの概略構成を示す平面図である。
【図5】本発明の実施例に係る表示装置における有機EL素子の作製工程の概略を示す断面図である。
【図6】本発明の実施例に係る表示装置における有機EL素子の作製工程の概略を示す断面図である。
【図7】本発明の実施例に係る表示装置における有機EL素子の作製工程の概略を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る表示装置における表示領域の概略構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0073】
101 基板
102 ソース領域
103 ドレイン領域
104 Poly−Si
105 ゲート電極
106 絶縁膜(ゲート絶縁膜)
107 絶縁膜(層間絶縁膜)
108 ドレイン電極
109 絶縁膜(無機絶縁膜)
110 平坦化膜
200 TFT
300 第1電極
310 発光性材料層
320 第2電極
330 素子分離膜
400 第1補助電極
410 第2補助電極
500 画素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の各画素にパターン形成された複数の第1電極と、前記第1電極に対応するように形成された発光性材料を含む発光媒体と、前記第1電極と対向して形成された第2電極とから画素を形成すると共に、前記各第1電極の周辺端部を囲む電気絶縁性隔壁を設け、前記電気絶縁性隔壁の上部に前記第2電極と補助電極とからなる積層域を有する表示基板を備えた表示装置において、
前記補助電極は、破線状に形成された第1補助電極と、前記第1補助電極が形成されていない領域を補間すべく前記第1補助電極の上に形成された第2補助電極とからなり、
下記条件式(1)及び(2)を満足することを特徴とする表示装置。
b<c ・・・ (1)
5nm≦d≦30nm ・・・ (2)
但し、
b:各補助電極の配線間隔
c:各補助電極の配線長さ
d:第1補助電極の膜厚
【請求項2】
下記条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
10a≧b ・・・ (3)
但し、
a:各補助電極の配線幅
b:各補助電極の配線間隔
【請求項3】
前記第1補助電極の厚みは、前記第2補助電極の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
基板上の各画素にパターン形成された複数の第1電極と、前記第1電極に対応するように形成された発光性材料を含む発光媒体と、前記第1電極と対向して形成された第2電極とから画素を形成すると共に、前記各第1電極の周辺端部を囲む電気絶縁性隔壁を設け、前記電気絶縁性隔壁の上部に前記第2電極と補助電極とからなる積層域を有する表示基板を備え、
前記補助電極は、破線状に形成された第1補助電極と、前記第1補助電極が形成されていない領域を補間すべく前記第1補助電極の上に形成された第2補助電極とからなると共に、下記条件式(1)及び(2)を満足する表示装置の製造方法であって、
前記第1補助電極及び前記第2補助電極は、シャドーマスクを用いた蒸着工程にて形成することを特徴とする表示装置の製造方法。
b<c ・・・ (1)
5nm≦d≦30nm ・・・ (2)
但し、
b:各補助電極の配線間隔
c:各補助電極の配線長さ
d:第1補助電極の膜厚
【請求項5】
前記第2補助電極は、前記第1補助電極と同一開口を有するシャドーマスクにより形成することを特徴とする請求項4に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−92908(P2009−92908A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263016(P2007−263016)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】