説明

表示装置及び電子機器

【課題】ガラス基板の厚みを一様に薄くして表示装置を薄型化すると、機械的な強度の低下によって信頼性を損なう恐れがある。
【解決手段】表示機能層となる有機層と、この有機層を挟んで対向する状態に貼り合わせられた素子形成用基板3及び対向基板10とを備える有機EL表示装置1の構成として、2枚の貼り合わせ基板のうち、素子形成用基板3の非貼り合わせ面に凹部23を形成し、フレキシブルプリント配線基板20に実装された部品21,22を素子形成用基板3の凹部23に収容することにより、表示装置の薄型化を実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機EL(Electro Luminescence)表示装置や液晶表示装置などに適用される表示装置とこれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置等に代表される平面型表示装置(FPD;フラット・パネル・ディスプレイ)の分野で、薄型化の進展が顕著になっている。表示装置の薄型化に対応する従来の技術としては、例えば下記特許文献1,2に記載された技術が知られている。
【0003】
<特許文献1の記載技術>
特許文献1には、液晶表示素子複数個分の面積をもつ一対のガラス基板の外面に、このガラス基板の厚さを薄くするエッチング処理を施すことにより、基板全体の厚さを均一に薄くする技術が記載されている。
【0004】
<特許文献2の記載技術>
特許文献2には、一対のガラス基板間に液晶を封入してなる液晶表示素子の製造方法として、一対のガラス基板を貼り合わせた後、少なくとも一方のガラス基板を研磨して薄くする技術が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平4−116619号公報
【特許文献2】特開平5−61011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載された技術は、いずれもガラス基板の厚みをエッチングや研磨によって一様に薄くすることにより表示装置の薄型化を実現するものである。このため、薄型化の進展が機械的な強度(絶対強度)の低下を招き、表示装置の信頼性を損なう恐れがある。
【0007】
そこで、本発明においては、表示装置の強度的な信頼性を損なわずに薄型化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る表示装置は、表示機能層と、この表示機能層を挟んで対向する状態に貼り合わせられた2枚の基板とを備え、これら2枚の基板のうち、一方の基板の非貼り合わせ面に凹部を形成し、この凹部に部品を収容した構成を採用している。
【0009】
本発明に係る表示装置においては、一方の基板の非貼り合わせ面に凹部を形成し、この凹部に部品を収容することにより、表示装置の厚み方向で、部品の高さ寸法が一方の基板の板厚寸法に吸収される。このため、部品の高さが表示装置の厚みに加算されなくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一方の基板の非貼り合わせ面に形成した凹部に部品を収容することにより、部品の高さが表示装置の厚みに加算されなくなるため、基板の厚みを均一に薄くする場合に比較して、表示装置の機械的な強度を高く維持しつつ表示装置全体を薄型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
<表示装置の構成>
図1は本発明が適用される表示装置の一例として、有機EL表示装置の構成を示す断面図である。図示した有機EL表示装置1は複数(多数)の有機EL素子2を用いて構成されるものである。有機EL素子2は、有機電界発光素子となるもので、R(赤),G(緑),B(青)の発光色の違いで単位画素ごとに区分されている。ただし、図1では、そのうちの1つだけを示している。
【0013】
有機EL素子2は、素子形成用の基板(以下、「素子形成用基板」と記す)3を用いて構成されている。素子形成用基板3上には、後述する駆動回路(詳細は後述)とともに、下部電極4、絶縁層5、有機層6及び上部電極7が順に積層されている。さらに、上部電極7は保護層8によって覆われ、この保護層8の上に接着層9を介して対向基板10が配置されている。
【0014】
素子形成用基板3と対向基板10は、それぞれ透明なガラス基板によって構成されるものである。素子形成用基板3と対向基板10は、それら2枚の基板の間に、下部電極4、絶縁層5、有機層6、上部電極7、保護層8、接着層9を挟み込むかたちで、互いに対向する状態に貼り合わせて配置されている。また、下部電極4、絶縁層5、有機層6、上部電極7及び保護層8は、素子形成用基板3の貼り合わせ面上に積層状態で形成されている。
【0015】
ここで、素子形成用基板3の「貼り合わせ面」とは、表示機能層となる有機層6を介して対向基板10と対向する側の面をいい、その反対側(裏側)の面を素子形成用基板3の「非貼り合わせ面」という。同様に、対向基板10の「貼り合わせ面」とは、有機層6を介して素子形成用基板3と対向する側の面をいい、その反対側(裏側)の面を対向基板10の「非貼り合わせ面」という。
【0016】
下部電極4及び上部電極7は、一方がアノード電極となり、他方がカソード電極となる。下部電極4は、有機EL表示装置1が上面発光型である場合には高反射性材料で構成され、有機EL表示装置1が透過型である場合は透明材料で構成される。
【0017】
ここでは、一例として、有機EL表示装置1が上面発光型(トップエミッション方式)で、下部電極4がアノード電極である場合を想定している。この場合、下部電極4は、例えば銀(Ag)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、プラチナ(Pt)さらには金(Au)のように、反射率の高い導電性材料、又はその合金で構成される。
【0018】
なお、有機EL表示装置1が上面発光型で、下部電極4がカソード電極である場合は、下部電極4は、例えばアルミニウム(Al),インジウム(In),マグネシウム(Mg)−銀(Ag)合金,リチウム(Li)−フッ素(F)化合物、リチウム-酸素(O)化合物のように、仕事関数が小さく、かつ、光反射率の高い導電性材料で構成される。
【0019】
また、有機EL表示装置1が透過型(ボトムエミッション方式)で、下部電極4がアノード電極である場合は、下部電極4は、例えばITO(Indium−Tin−Oxide)やIZO(Inidium−Zinc−Oxide)のように、透過率の高い導電性材料で構成される。また、有機EL表示装置1が透過型で、下部電極4がカソード電極である場合は、下部電極4は、仕事関数が小さく、かつ、光透過率の高い導電性材料で構成される。
【0020】
絶縁層5は、下部電極4の周辺部を覆う状態で素子形成用基板3の上面に形成されている。絶縁層5には単位画素ごとに窓が形成されており、この窓の開口部分で下部電極4が露出している。絶縁層5は、例えばポリイミドやフォトレジスト等の有機絶縁材料や、酸化シリコンのような無機絶縁材料を用いて形成されるものである。
【0021】
有機層6は、例えば図2に示すように、素子形成用基板3側から順に、正孔注入層61、正孔輸送層62、発光層63(63r,63g,63b)及び電子輸送層64を積層した4層の積層構造を有するものである。
【0022】
正孔注入層61は、例えば、m−MTDATA〔4,4,4 -tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylamine〕によって形成されるものである。正孔輸送層62は、例えば、α−NPD[4,4-bis(N-1-naphthyl-N-phenylamino)biphenyl]によって形成されるものである。なお、材料はこれに限定されず、例えばベンジジン誘導体、スチリルアミン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、ヒドラゾン誘導体などの正孔輸送材料を用いることができる。また、正孔注入層61及び正孔輸送層62は、それぞれ複数層からなる積層構造であってもよい。
【0023】
発光層63は、RGBの色成分ごとに異なる有機発光材料によって形成されるものである。具体的には、赤色発光層63rは、例えば、ホスト材料となるADNに、ドーパント材料として2,6≡ビス[(4’≡メトキシジフェニルアミノ)スチリル]≡1,5≡ジシアノナフタレン(BSN)を30重量%混合したものにより構成される。緑色発光層63gは、例えば、ホスト材料となるADNに、ドーパント材料としてクマリン6を5重量%混合したものにより構成される。青色発光層63bは、例えば、ゲスト材料となるADNに、ドーパント材料として4,4’≡ビス[2≡{4≡(N,N≡ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成される。各色の発光層63r,63g,63bは、画素の色配列に応じてマトリクス状に配置される。
【0024】
電子輸送層64は、例えば、8≡ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )によって形成されるものである。
【0025】
上部電極7は、有機EL表示装置1が上面発光型である場合は、透明又は半透明の導電性材料で構成され、有機EL表示装置1が透過型である場合は、高反射性材料で構成される。
【0026】
以上の素子形成用基板3、下部電極4、絶縁層5、有機層6、上部電極7により、有機EL素子2(赤色有機EL素子2r、緑色有機EL素子2g、青色有機EL素子2b)が構成されている。
【0027】
保護層8は、上部電極7や有機層6への水分の到達を防止するなどの目的で形成されるものである。このため、保護層8は、透水性及び吸水性の低い材料を用いて十分な膜厚で形成される。また、保護層8は、有機EL表示装置1が上面発光型である場合には、有機層6で発光させた光を透過させる必要があるため、例えば80%程度の光透過率を有する材料で構成される。
【0028】
また、上部電極7を金属薄膜で形成し、この金属薄膜の上に直接、絶縁性の保護層8を形成するものとすると、保護層8の形成材料として、無機アモルファス性の絶縁性材料、例えばアモルファスシリコン(α−Si)、アモルファス炭化シリコン(α−SiC)、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-x Nx )、さらにはアモルファスカーボン(α−C)等を好適に用いることができる。このような無機アモルファス性の絶縁性材料は、グレインを構成しないため透水性が低く、良好な保護層8となる。
【0029】
接着層9は、例えばUV(紫外線)硬化型樹脂によって形成されるものである。接着層9は、対向基板10を固着させるためのものである。
【0030】
なお、ここでの図示は省略したが、このような構成の有機EL表示装置1にカラーフィルタを組み合わせて設ける場合には、RGBの各色に対応する有機EL素子2r,2g,2bから発せられる発光のスペクトルのピーク波長近傍の光のみを透過するカラーフィルタを、各色の有機EL素子2r,2g,2bの光取り出し面側に設けることになる。
【0031】
<駆動回路の構成>
図3は有機EL表示装置の駆動回路の構成例を示す図である。有機EL表示装置1の駆動回路は、素子形成用基板3の貼り合わせ面と同一面上に形成されるものである。素子形成用基板3上には、表示領域11とその周辺領域12とが設定されている。表示領域11には、複数の走査線13と複数の信号線14とが縦横にマトリクス状に配線されている。走査線13と信号線14の各交差部には画素15が一つずつ設けられている。各々の画素15には、上述した有機EL素子2を含む画素回路(詳細は後述)が設けられている。また周辺領域11には、走査線13を走査駆動する走査線駆動回路16と、輝度情報に応じた映像信号(すなわち入力信号)を信号線14に供給する信号線駆動回路17とが配置されている。
【0032】
<画素回路の構成>
図4は画素回路の構成例を示す図である。画素回路は、有機EL発光素子2、駆動トランジスタTr1、書き込みトランジスタTr2、及び保持容量Csによって構成されている。駆動トランジスタTr1及び書き込みトランジスタTr2は、それぞれ薄膜トランジスタ(TFT)によって構成されるものである。この画素回路では、走査線駆動回路16の駆動により、書き込みトランジスタTr2を介して信号線14から書き込まれた映像信号が保持容量Csに保持され、保持された信号量に応じた電流が駆動トランジスタTr1から有機EL発光素子2に供給され、この電流値に応じた輝度で有機EL発光素子2が発光する仕組みになっている。
【0033】
なお、上述した画素回路の構成は、あくまで一例であり、必要に応じて画素回路内に容量素子を設けたり、さらに複数の薄膜トランジスタを設けたりして画素回路を構成してもよい。また、周辺領域12には、画素回路の変更に応じて必要な駆動回路を追加してもよい。
【0034】
<第1実施形態>
図5は本発明の第1実施形態に係る有機EL表示装置の構成を示す概略図である。図示のように、素子形成用基板3と対向基板10を貼り合わせた構造の表示パネルには、フレキシブルプリント配線基板20が接続されている。フレキシブルプリント配線基板20は、例えばポリイミドフィルムからなる基材を用いて構成される、可撓性を有するプリント配線基板である。フレキシブルプリント配線基板20には複数(図例では2つ)の部品21,22が実装されている。各々の部品21,22は、表示パネルの駆動を制御するうえで必要な表面実装型の電子部品(例えば、チップコンデンサやチップ抵抗、発振子、電源生成IC、メモリIC、ドライバーICなど)であって、例えばはんだリフロー方式やACF(Anisotropic Conductive Film)を用いた異方導電性接続方式、他の実装方式によりフレキシブルプリント配線基板20の表面に実装されている。
【0035】
素子形成用基板3の一部は、対向基板10の端部からはみ出している。素子形成用基板3のはみ出し部分には、図示しない基板接続用の電極が形成され、この電極形成領域にフレキシブルプリント配線基板20の一端部が電気的かつ機械的に接続されている。素子形成用基板3とフレキシブルプリント配線基板20は、例えば前述のACF接続方式により接続されている。基板接続用の電極は、素子形成用基板3のはみ出し部分で上記駆動回路と同じ面に形成されるものである。
【0036】
素子形成用基板3の非貼り合わせ面には凹部23が形成されている。凹部23は、素子形成用基板3の非貼り合わせ面を部分的に凹ませた状態で形成されている。このため、素子形成用基板3の板厚(凹部23が形成されていない部分の厚み)を“T1”とし、凹部23が形成された部分の厚みを“Ta”とすると、これらの寸法関係はT1>Taの条件で設定されている。
【0037】
これに対して、フレキシブルプリント配線基板20は、上記基板接続用の電極との接続部分を起点として、素子形成用基板3のはみ出し部を迂回するように横U字形に折り曲げられ、さらに当該はみ出し部と反対側で逆向きの横U字形に折り曲げられている。このため、フレキシブルプリント配線基板20全体で見ると、略S字形の折り曲げ形状となっている。
【0038】
このように折り曲げられたフレキシブルプリント配線基板20の部品実装面は、素子形成用基板3の非貼り合わせ面に対向する状態で配置されている。このため、フレキシブルプリント配線基板20に実装された各々の部品21,22は、素子形成用基板3側を向いて配置されている。また、各々の部品21,22は、素子形成用基板3の非貼り合わせ面に形成された凹部23に収容されている。ここで、各々の部品21,22の高さを“H”とし、素子形成用基板3の非貼り合わせ面(外側面)を基準とした凹部23の深さを“D”とすると、これらの寸法関係はH≦Dの条件で設定されている。
【0039】
上記構成からなる有機EL表示装置1を製造する場合は、複数の表示装置単位が集合体として一括形成される大型基板同士を貼り合わせた状態、又は当該大型基板から個々の表示装置単位をスクライブ・ブレイク等によって分離した状態で、素子形成用基板3の非貼り合わせ面に上記部品21,22の寸法や実装位置に応じた形状・深さで掘り込み加工を行なうことにより、凹部23を形成する。
【0040】
具体的な加工方法としては、凹部23を形成すべき部位だけを開口する状態で素子形成用基板3の非貼り合わせ面を図示しない加工マスクで覆い、この状態で例えばエッチング液としてHF溶液等を用いたウェットエッチング法により、非貼り合わせ面の所定部位に凹部23を形成する方法を採用することが可能である。また、これ以外にも、例えば、上述のように素子形成用基板3の非貼り合わせ面を開口付きの加工マスクで覆った状態で、当該非貼り合わせ面に向けてノズルから微細な研磨粒を高速に衝突させる、マイクロブラスト法により、非貼り合わせ面の所定部位に凹部23を形成する方法を採用することも可能である。
【0041】
特に、マイクロブラスト法によって加工する場合は、素子形成用基板3の非貼り合わせ面を一様にエッチングする場合に比較して、加工時間を短縮することが可能である。このため、コストメリットが大きくなる。
【0042】
また、凹部23の深さDに関しては、例えば、素子形成用基板3がアルカリガラスからなり、その板厚T1が0.7mmであると仮定した場合、駆動回路の維持に必要な最低限のガラス厚み、加工精度を考慮すると、D=0.65mm程度に設定することが可能である。
【0043】
また、素子形成用基板3の非貼り合わせ面に凹部23を形成するにあたっては、表示パネルを完成した後(凹部23を形成した後)に行なうフレキシブルプリント配線基板20の接続工程で、上記基板接続用の電極形成領域の平坦性や強度が特に重要になる。このため、素子形成用基板3の非貼り合わせ面内においては、図6に示すように、素子形成用基板3を貼り合わせ面から見たときに(素子形成用基板3を平面視したときに)、フレキシブルプリント配線基板20が接続される領域(電極形成領域)24とは重なり合わない位置に凹部23を形成することが望ましい。
【0044】
一方、素子形成用基板3に凹部23を形成した後は、個々に分離された表示装置の表示パネルに対して、予め表示パネルの制御に必要な部品21,22を実装済みのフレキシブルプリント配線基板20を、AFC接続等の手段で素子形成用基板3の電極に接続する。さらに、そのフレキシブルプリント配線基板20を上記図5のように折り曲げて、当該フレキシブルプリント配線基板20に実装された部品21,22を凹部23に収容し、両面テープなどを用いてフレキシブルプリント配線基板20を素子形成用基板3の非貼り合わせ面に貼り付ける。これにより、フレキシブルプリント配線基板20付きの表示パネルが、表示装置として完成する。
【0045】
上記構成からなる有機EL表示装置1においては、素子形成用基板3の非貼り合わせ面に凹部23を形成し、この凹部23に部品21,22を収容した構成となっているため、素子形成用基板3の強度を極力低下させることなく、部品実装済みのフレキシブルプリント配線基板20を含めた表示装置全体の厚みを薄くすることができる。
【0046】
特に、素子形成用基板3に関しては、凹部23の形成によって基板の一部が肉薄となっても、その周囲が基板厚相当の厚肉部分で囲まれるため、従来のように基板全体を一様に薄くする場合に比較して、基板全体の強度を高く維持することができる。また、フレキシブルプリント配線基板20に実装された部品21,22を素子形成用基板3の凹部23に収容することで、素子形成用基板3の非貼り合わせ面に近接してフレキシブルプリント配線基板20を配置することができる。したがって、表示装置の強度的な信頼性を損なうことなく薄型化を実現することが可能となる。
【0047】
<第1の比較例>
第1の比較例として、図7に示すように、素子形成用基板3の板厚を“T1”とし、対向基板10の板厚を“T2”として、これら2枚の基板を貼り合わせるとともに、高さ“H”の部品21,22を実装済みのフレキシブルプリント配線基板20を素子形成用基板3に接続して略S字形に折り曲げた構成の有機EL表示装置1を比較対象とする。そうした場合、第1の比較例では、部品21,22の高さHが表示装置の厚みに加算されるが、上記第1実施形態では、部品21,22の高さHに相当する寸法が、素子形成用基板3の板厚T1に相当する寸法に吸収されるため、部品21,22の高さHが表示装置の厚みに加算されなくなる。このため、第1実施形態では、各々の基板3,10の強度を低下させることなく、第1の比較例よりも部品21,22の高さ寸法分だけ表示装置を薄型化することができる。
【0048】
<第2の比較例>
第2の比較例として、図8に示すように、素子形成用基板3の板厚を上記T1よりも薄い“T3”とし、対向基板10の板厚を上記T2よりも薄い“T4”として、これら2枚の基板を貼り合わせるとともに、高さ“H”の部品21,22を実装済みのフレキシブルプリント配線基板20を素子形成用基板3に接続して略S字形に折り曲げた構成の有機EL表示装置1を比較対象とする。そうした場合、第2の比較例では、部品21,22の高さHが表示装置の厚みに加算されるが、上記第1実施形態では、上記同様の理由により、部品21,22の高さHが表示装置の厚みに加算されなくなる。このため、例えば、T1=T2=0.7mm、T3=T4=0.2mm、H=0.5mmと仮定すると、上記第1実施形態では、フレキシブルプリント配線基板20の部品実装面を基準とした表示装置の厚みが1.4mm(0.7mm×2)となり、第2の比較例では、フレキシブルプリント配線基板20の部品実装面を基準とした表示装置の厚みが0.9mm(0.2mm×2+0.5mm)となる。したがって、第2の比較例では、上記第1実施形態よりも表示装置の厚みが0.5mm薄くなる。ただし、第2の比較例では、各々の基板3,10の板厚T3,T4が0.2mmと非常に薄くなっているため、絶対強度の低下によって信頼性を損なう恐れがある。
【0049】
これに対して、上記第1実施形態では、各々の基板3,10の板厚T1,T2が0.7mmと厚くなっているため、表示パネルの機械的な強度を十分に確保することができる。このため、強度的な信頼性を損なう恐れがない。また、上記第1実施形態の変形例として、図9に示すように、素子形成用基板3の板厚をT1=0.7mmとしたままで、対向基板10の板厚を第2の比較例と同じT4=0.2mmと仮定すると、フレキシブルプリント配線基板20の部品実装面を基準とした表示装置の厚みは第2の比較例と同じ0.9mm(0.7mm+0.2mm)となる。このため、表示装置の強度的な信頼性を損なうことなく、第2の比較例と同等のレベルまで表示装置を薄型化することが可能となる。このように、素子形成用基板3の板厚T1を対向基板10の板厚T4よりも大とすることで、素子形成用基板3の機械的な強度を維持した状態で、素子形成用基板3に部品収容用の凹部23を形成することができる。また、素子形成用基板3の板厚T1に比較して、対向基板10の板厚T4を小とすることで、2枚の基板3,10を貼り合わせた状態(表示パネル全体)の厚みを薄くすることができる。
【0050】
さらに、上記第1実施形態に係る有機EL表示装置1においては、素子形成用基板3を貼り合わせ面から見たときに、フレキシブルプリント配線基板20が接続される領域(電極形成領域)24とは重なり合わない位置に凹部23を形成しているため、素子形成用基板3にフレキシブルプリント配線基板20を接続する場合に、ACF接続等の加圧に伴う基板の変形を抑えて接続部位の平坦性や強度を良好に維持することができる。このため、素子形成用基板3とフレキシブルプリント配線基板20の接続品質を維持しつつ表示装置を薄型化することが可能となる。
【0051】
また、これと同様の理由により、上記第1実施形態の第2変形例として、図10に示すように、素子形成用基板3上にCOG(chip on glass)方式で半導体チップ(LSIチップ)25を実装する場合は、素子形成用基板3を貼り合わせ面から見たときに、半導体チップ25が実装される領域と重なり合わない位置に凹部23を形成することが望ましい。この場合は、フレキシブルプリント配線基板20が接続される領域(電極形成領域)24と半導体チップ25が実装される領域のいずれにも重なり合わない位置に凹部23を形成することで、素子形成用基板3とフレキシブルプリント配線基板20の接続品質及び素子形成用基板3と半導体チップ25の接続品質を共に良好に維持しつつ表示装置を薄型化することが可能となる。
【0052】
<第2実施形態>
図11は本発明の第2実施形態に係る有機EL表示装置の構成を示す概略図である。この第2実施形態においては、上記第1実施形態に比較して、特に、素子形成用基板3の非貼り合わせ面に形成した凹部23の表面を導電性のシールド材26で被覆した点が異なる。
【0053】
シールド材26は、例えばアルミニウム、ステンレス等からなる薄い金属板を用いて構成されるものである。この金属板は、素子形成用基板3の非貼り合わせ面おける凹凸形状にならって折り曲げられている。また、金属板の一方の面は接着剤等を用いて素子形成用基板3に固定され、金属板の他方の面(部品21,22と向かい合う面)には樹脂等のコーティングによって絶縁処理が施されている。
【0054】
このように凹部23の表面をシールド材26で被覆することにより、素子形成用基板3の貼り合わせ面側に形成された駆動回路と、素子形成用基板3の凹部23に収容された部品21,22との間に、導電性のシールド材26が介在した状態となる。このため、フレキシブルプリント配線基板20やこれに実装された部品21,22と、素子形成用基板3に形成された駆動回路との間で、容量性、誘導性結合による干渉の影響を低減することができる。このため、表示装置の動作信頼性を維持しながら薄型化を図ることが可能となる。
【0055】
また、素子形成用基板3の凹部23の内壁部分を含めて、素子形成用基板3の非貼り合わせ面に、金属板を用いたシールド材26を接着固定することにより、素子形成用基板3の機械的な強度を高めることができる。特に、金属板に折り曲げ部を設けることにより、素子形成用基板3の機械的な強度を更に高めることができる。
【0056】
<第3実施形態>
図12は本発明の第3実施形態に係る有機EL表示装置の構成を示す概略図である。この第3実施形態においては、上記第1実施形態に比較して、特に、素子形成用基板3の凹部23に収容した部品21,22を、当該凹部23に充填した樹脂27で封止した点が異なる。
【0057】
樹脂27は、例えば熱硬化型の絶縁性樹脂材料によって構成されるものである。封止用の樹脂27としては、これを熱硬化させる際に、上記有機層6(図1参照)や素子形成用基板3の駆動回路などに熱的なダメージを与えないように、比較的低温で熱硬化するウレタン系の熱硬化型樹脂を用いることが望ましい。
【0058】
凹部23への樹脂27の充填は、例えば、フレキシブルプリント配線基板20の所定の位置に予め樹脂注入口を設けておき、凹部23に部品21,22を収容した状態で、上記樹脂注入口から未硬化状態の樹脂27をディスペンサ等で注入することにより行なう。そして、樹脂27を充填した後は、これを熱処理によって硬化させることにより、凹部23内の部品21,22を樹脂27で封止する。
【0059】
このように凹部23に収容した部品21,22を樹脂27で封止することにより、フレキシブルプリント配線基板20やこれに実装された部品21,22を素子形成用基板3に固定することができる。このため、表示装置を取り扱う上でハンドリング性が向上する。また、凹部23内に充填した樹脂27により、素子形成用基板3の機械的な強度を高めることができる。
【0060】
なお、上記第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態の各特徴事項は、適宜組み合わせることが可能である。例えば、第3実施形態に係る有機EL表示装置1に対して、第2実施形態で記述したシールド材26を設けることが可能である。また、第2実施形態及び第3実施形態に係る有機EL表示装置1に、それぞれCOG方式で半導体チップ25を実装することも可能である。
【0061】
また、上記各実施形態においては、有機EL表示装置1が上面発光型である場合を想定して、素子形成用基板3の非貼り合わせ面に凹部23を形成するものとしたが、有機EL表示装置1が透過型である場合は、有機層6の発光層63で発光させた光を素子形成用基板3側から取り出す必要があるため、素子形成用基板3に代えて、対向基板10の非貼り合わせ面に凹部23を形成し、この凹部23に部品21,22を収容する構成を採用すればよい。また、一つの凹部23に対して、一つずつ部品を収容してもよいし、複数個の部品をまとめて収容してもよい。また、素子形成用基板3又は対向基板10の非貼り合わせ面内に、複数の箇所にわたって凹部23を形成してもよい。また、基板の凹部23に収容される部品は、フレキシブルプリント配線基板20に実装された部品21,22に限らず、他の部品であってもよい。
【0062】
<適用例>
上記構成からなる有機EL表示装置1は、図13〜図17に示す様々な電子機器、例えば、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置、ビデオカメラなど、電子機器に入力された映像信号、若しくは、電子機器内で生成した映像信号を、画像若しくは映像として表示するあらゆる分野の電子機器に適用可能である。
【0063】
図13は第1適用例となるテレビを示す斜視図である。本適用例に係るテレビは、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される映像表示画面部101を含み、その映像表示画面部101に上記の有機EL表示装置1を適用可能である。
【0064】
図14は第2適用例となるデジタルカメラを示す図であり、(A)は表側から見た斜視図、(B)は裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラは、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112に上記の有機EL表示装置1を適用可能である。
【0065】
図15は第3適用例となるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータは、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123に上記の有機EL表示装置1を適用可能である。
【0066】
図16は第4適用例となるビデオカメラを示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラは、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134に上記の有機EL表示装置1を適用可能である。
【0067】
図17は第5適用例となる携帯端末装置、例えば携帯電話機を示す図であり、(A)は開いた状態での正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態での正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。本適用例に係る携帯電話機は、上側筐体141、下側筐体142、連結部(ここではヒンジ部)143、ディスプレイ144、サブディスプレイ145、ピクチャーライト146、カメラ147等を含み、そのディスプレイ144やサブディスプレイ145に上記の有機EL表示装置1を適用可能である。
【0068】
なお、本発明に係る表示装置は、有機EL表示装置に限らず、表示機能層となる液晶層を、一方を駆動基板(例えば、TFTアレイ基板)、他方を対向基板(例えば、カラーフィルタ基板)とした2枚の基板(ガラス基板等)で挟み込んだ構造の液晶表示装置にも適用可能である。反射型の液晶表示装置の場合は、光を透過させる必要のない基板の非貼り合わせ面に凹部を形成すればよい。透過型の液晶表示装置の場合は、2枚の基板とも光を透過させる必要があるため、光の透過領域を避けて凹部を形成する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明が適用される表示装置の一例として、有機EL表示装置の構成を示す断面図である。
【図2】有機EL素子の積層構造の一例を示す断面図である。
【図3】有機EL表示装置の駆動回路の構成例を示す図である。
【図4】画素回路の構成例を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る有機EL表示装置の構成を示す概略図である。
【図6】本発明の第1実施形態に有機EL表示装置の基板平面レイアウト図である。
【図7】第1の比較例となる有機EL表示装置の構成を示す概略図である。
【図8】第2の比較例となる有機EL表示装置の構成を示す概略図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る有機EL表示装置の第1変形例を示す概略図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る有機EL表示装置の第2変形例を示す概略図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る有機EL表示装置の構成を示す概略図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る有機EL表示装置の構成を示す概略図である。
【図13】第1適用例となるテレビを示す斜視図である。
【図14】第2適用例となるデジタルカメラを示す図である。
【図15】第3適用例となるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。
【図16】第4適用例となるビデオカメラを示す斜視図である。
【図17】第5適用例となる携帯端末装置を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1…有機EL表示装置、3…素子形成用基板、6…有機層、10…対向基板、20…フレキシブルプリント配線基板、21,22…部品、23…凹部、25…半導体チップ、26…シールド材、27…樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示機能層と、
前記表示機能層を挟んで対向する状態に貼り合わせられた2枚の基板とを備え、
前記2枚の基板のうち、一方の基板の非貼り合わせ面に凹部を形成し、当該凹部に部品を収容してなる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記一方の基板は、貼り合わせ面と同一面上に駆動回路が形成された駆動基板であって、
前記駆動基板に電気的かつ機械的に接続されるフレキシブルプリント配線基板を有し、
前記凹部は、前記駆動基板を前記貼り合わせ面から見たときに、前記フレキシブルプリント配線基板が接続される領域と重なり合わない位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記一方の基板は、貼り合わせ面と同一面上に半導体チップが実装された駆動基板であって、
前記凹部は、前記駆動基板を前記貼り合わせ面から見たときに、前記半導体チップが実装される領域と重なり合わない位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記凹部の表面を導電性のシールド材で被覆してなる
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
前記凹部に収容した部品を、当該凹部に充填した樹脂で封止してなる
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項6】
前記一方の基板の板厚は、他方の基板の板厚よりも大である
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項7】
前記部品は、前記フレキシブルプリント配線基板に実装された部品である
ことを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項8】
前記シールド材を金属板を用いて構成するとともに、前記金属板に折り曲げ部を設けてなる
ことを特徴とする請求項4記載の表示装置。
【請求項9】
表示機能層と、
前記表示機能層を挟んで対向する状態に貼り合わせられた2枚の基板とを備え、
前記2枚の基板のうち、一方の基板の非貼り合わせ面に凹部を形成し、当該凹部に部品を収容してなる表示装置を用いた
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−8810(P2009−8810A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169027(P2007−169027)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】