説明

表面に化粧溝を有する床材の塗装方法

【課題】木質床材の表面に化粧溝を施した床材の化粧溝まで塗装する床材の塗装方法を提供することを課題とする。
【解決手段】表面に化粧溝2を有する床材1の塗装方法において、床材1の表面及び化粧溝2をスポンジロール4で塗装した後、乾燥し、前記スポンジロール4で塗装した塗料8と親和性のある塗料9をフローコーター10で床材1の全面に塗布する表面に化粧溝を有する床材の塗装方法。前記スポンジロール4で塗装した塗料8と親和性のある塗料9をフローコーター4で床材1の全面に塗布した後、更に、床材1を乾燥することが好ましい。表面に形成される化粧溝2はV型、U型、角型、台形型のいずれかの溝である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合板等の木質板材の表面に化粧単板等を貼着した床材に化粧溝を施した床材の塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような床材の表面は化粧単板の木目を生かすために透明性の高い塗料が使用され表面に塗装が施される。しかし化粧溝部を設けた場合は基本的に溝部の塗装等は困難であり、表面部のみが塗装されるのが一般的である。
【0003】
床材の表面部は多くの場合下塗り塗装が行われているが、下塗り塗装は素材との密着、素材の平滑化を目的とするものであり、溝部は低い部分であるために塗装が省略されるが、平滑性が悪かったり表面部との色の差が出たりして外観を損なうことがある。このために溝部にも塗装することが検討されているが種々の問題がある。
【特許文献1】特開2003−71372号公報(第31頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されているものは使用する塗布ゴムロールの表面上に複数本の切り溝が塗布ロールの回転方向に対して平行に設けられている。これはロールコーターを用いて木質フロアー等の木質基材の表面に塗布ムラのない均一かつ平滑な厚膜塗膜を形成するものでフローコーターに代わるものを提供するものである。すなわちフローコーターでは膜切れの問題があり無溶剤紫外線硬化型塗料を用いた場合はロールコーターでは塗布ムラが生じやすい。このためにロールコーターでは塗装機と乾燥機を何台も配置する必要がある。一方フローコーターでは安定した塗装作業が得られるが塗布量が多くなりコストアップになる。すなわち特許文献1ではロールコーターにより塗布量がフローコーターの1/2ないし1/3で、フローコーターと同様の塗付ムラの無い厚膜塗膜を得ようとするものである。
【0005】
この特許文献の実施例によるとゴムロールとその直下に位置する金属ロールからなるナチュラルロールコーターと紫外線照射装置とスポンジロールとその直下に位置する金属ロールからなるスポンジロールコーター、ゴムロールとその直下に位置する金属ロールからなるリバースコーターおよびゴムロールとその直下に位置する金属ロールをこの順に組み込んだ塗布機と、ゴムロールとその直下に位置する金属ロールとからなるナチュラルロールコーターとゴムロールとその直下に位置する金属ロールからなるナチュラルロールコーターが順に設置されている。
【0006】
この特許文献に記載された発明では、スポンジロールコーターを用いているがスポンジロールコーターの形状、作用、塗料との関係等は不明である。スポンジロールは紫外線照射装置の後方に設置されており、中塗り塗装ラインの中に設けられておりスポンジロールコーターとナチュナルロールコーターの順に設置されているが、床材に化粧溝が設けられていることは記載されていないし、さらに化粧溝を塗装することも記載されていないものである。そして図にあるように非常に長い工程と多数の機器が要求される。
【0007】
そこで本発明は、表面塗装をきれいに体裁よく仕上げることができ、特に、化粧溝への下塗りの塗料の塗布を確実に行うことができ、しかも、上塗りの塗料を高粘度のものを使用しても、塗料の密着性を良好に維持できる表面に化粧溝を有する床材の塗装方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る表面に化粧溝を有する床材の塗装方法の第一の特徴構成は、表面に化粧溝を有する床材の塗装方法において、床材の表面及び化粧溝をスポンジロールで塗装した後、乾燥し、前記スポンジロールで塗装した塗料と親和性のある塗料をフローコーターで床材の全面に塗布した点にある。
【0009】
本発明に係る表面に化粧溝を有する床材の塗装方法の第二の特徴構成は、前記スポンジロールで塗装した塗料と親和性のある塗料をフローコーターで床材の全面に塗布した後、乾燥した点にある。
【0010】
同第三の特徴構成は、請求項3に記載した如く、第一の特徴構成または第二の特徴構成のいずれかに加えて、表面に形成される化粧溝がV型、U型、角型、台形型のいずれかの溝である点にある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の表面に化粧溝を有する床材の塗装方法は前記構成であり、表面に化粧溝を有する床材の塗装方法において、床材の表面及び化粧溝をスポンジロールで塗装した後、乾燥し、前記スポンジロールで塗装した塗料と親和性のある塗料をフローコーターで床材の全面に塗布したから、当該下塗りの塗料がよく乾燥され、上塗りの塗料の下塗りの塗料へのしみ込みを防ぐことができ、その表面塗装をきれいに体裁よく仕上げることができる。又、特に化粧溝への下塗りの塗料の塗布を確実に行うことができる。更に、上塗りの塗料を高粘度のものを使用しても、塗料の密着性を良好に維持できる。
【0012】
請求項2記載の表面に化粧溝を有する床材の塗装方法は、前記スポンジロールで塗装した塗料と親和性のある塗料をフローコーターで床材の全面に塗布した後、乾燥するものであるから、上塗りの塗料と下塗りの塗料との密着を短時間に効率よく行うことができる。
【0013】
請求項3記載の表面に化粧溝を有する床材の塗装方法は、表面に形成される化粧溝がV型、U型、角型、台形型のいずれかの溝であるから、デザインのよい床材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して、詳細に説明する。図1および図2は本発明における一実施例を示すスポンジロールを用いた塗装機の概要図である。1は塗装される床材であり表面に長手方向の化粧溝2あるいはデザインにより床材1の横方向の化粧溝3が設けられている。図中の4から7はスポンジロールコーターの各部材の概要を示しており、4はスポンジロール、5はスポンジロールの直下に設けられた金属ロール、6はドクターロール、7は塗料供給装置である。
【0015】
スポンジロール4とドクターロール6は密着しており、該スポンジロール4とドクターロール6との密着度によりスポンジロール4の表面に供給される下塗りの塗料8の量が制御される。従って、スポンジロール4とドクターロール6との間の塗料供給装置7へは、スポンジロール4とドクターロール6の間の密着度によりスポンジロール4に供給される塗料8と同量の塗料8が供給される。
【0016】
床材1上にスポンジロール4上の塗料8が適量塗布されるが、床材1上の余分な塗料8はスポンジロール4が床材1より離れるときに、スポンジロール4に吸収され一定量の塗料8が床材1に供給される。スポンジロール4は床材1に圧接されスポンジロール4の弾力性により化粧溝2、3内にもスポンジロール4が密着され化粧溝2、3にも塗料8が塗布される。塗料8の粘度は低粘度のものが好ましいが粘度が高くても化粧溝2、3内部にも塗装が可能である。
【0017】
スポンジロール4と金属ロール5との間隔は床材1の厚さより小でありかつスポンジロール4が化粧溝2、3の底部に達するように設定されている。スポンジロール4から供給された塗料8は床材1上に一定圧力のもとに供給され塗布される。スポンジロール4は化粧溝2および3内にその弾力で入り込み化粧溝2および3を塗装する。それと同時に床材1の表面は塗料8によって塗装される。塗装時には低粘度の塗料8を使用すると、化粧溝2等を含む床材1全体を塗装し易くなる。塗布された塗料8は図2における前半の乾燥機11により乾燥される。
【0018】
化粧溝2、3や床材1表面に塗料8を塗布して乾燥した後、塗料8と親和性のある上塗りの塗料9がフローコーター10で床材1の全面に塗布される。フローコーター10からは膜状の塗料9が強制圧力がかからない状態で流下されるが、前もって塗料9と親和性のある塗料8が床材1の前面に塗装されているので、塗料9の塗布ムラが生じにくいものである。フローコーター10で用いられる該親和性のある塗料9には圧力がかからないが上記と同様の理由により、下塗りの塗料8との密着性がよく、従って、該塗料9をある程度高粘度で耐摩耗性のある塗料を選択することができる。
【0019】
床材1に塗布する塗料としては下塗りの塗料8と上塗りの塗料9とは親和性が良く、かつ、上塗りの塗料9は耐摩耗性のよい塗料が選択される。一般にはアクリレート樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料等が選択される。下塗りの塗料8はスポンジロール4で塗布される為に化粧溝2、3に生じた毛羽立ちがあってもスポンジロール4で押え付けられ全面に容易に塗布され塗料8により毛羽が押さえられる。
【0020】
化粧溝2、3内には前もって塗料9と親和性のある塗料8が塗装されている結果、上塗りの塗料9を化粧溝2、3内に塗布しても色むらができず、従って、上塗りの塗料9が通常の塗装に用いられる塗料より高粘度であっても下塗りの塗料8の塗膜との密着性が良く表面部との色の差が出ないものとなる。上塗りの塗料9が床材1の塗布された後に、図2における後半の乾燥機11により乾燥される。この後半の乾燥機11の乾燥によって、上塗りの塗料9と下塗りの塗料8との密着を短時間に効率よく行うことができる。
【0021】
本発明の変形例として、図示したスポンジロールコーターと同様のスポンジロールコーターをその前工程に取り付け、上記下塗りの塗料8を塗布する工程よりも前工程で、第一次下塗り塗装をすると(図示せず)、床材1の塗装仕上げが一層よくなる。
【0022】
以上に説明したように、化粧溝2、3を有する床材1における塗装方法として本発明を用いることで、今まで塗装されにくかった化粧溝2、3内にも表面部と同様の塗装ができるものである。化粧溝2、3が塗装されることで化粧溝2、3部分の質感が向上し高級感が得られる。又化粧溝2、3に塗膜が形成されているために化粧溝2、3部分の耐水性が良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例に係るスポンジロールコーターの概要斜視図である。
【図2】本工程の一部を横から見た場合の断面を示す概要図である。
【符号の説明】
【0024】
1 床材
2 化粧溝
3 床材の横方向に設けた化粧溝
4 スポンジロール
5 金属ロール
6 ドクターロール
7 塗料供給装置
8 上塗りの塗料
9 下塗りの塗料
10 フローコーター
11 乾燥機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に化粧溝を有する床材の塗装方法において、床材の表面及び化粧溝をスポンジロールで塗装した後、乾燥し、前記スポンジロールで塗装した塗料と親和性のある塗料をフローコーターで床材の全面に塗布する表面に化粧溝を有する床材の塗装方法。
【請求項2】
前記スポンジロールで塗装した塗料と親和性のある塗料をフローコーターで床材の全面に塗布した後、乾燥する請求項1記載の表面に化粧溝を有する床材の塗装方法。
【請求項3】
表面に形成される化粧溝がV型、U型、角型、台形型のいずれかの溝である請求項1ないし2いずれか記載の表面に化粧溝を有する床材の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−280807(P2008−280807A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127871(P2007−127871)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】