説明

表面プラズモンを増強するナノ光学素子及びこの製造方法

ナノ構造の光学素子は、提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する複数の開口のアレイを有する金属膜又は複数の金属アイランドを含む。金属膜又は金属アイランドは、入射放射が金属膜又は金属アイランド上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府は、海軍調査局からの認可番号00014−99−0663に準じて本発明に特定の権利を有し得る。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、包括的には光学素子を対象とし、特にナノ構造光学素子及びこの素子の製造方法を対象とする。
【0003】
[発明の背景]
従来の光学系によれば、金属膜のサブ波長(sub-wavelength)アパーチャを通る光の透過量は直径dが波長λよりもかなり小さい場合に極めて小さく、ベーテ限界(Bethe limit)T/f〜(d/λ)に従うものと予想される。但し、T/fはアパーチャが占める面積に対して正規化された透過量を示す。近年、米国特許第5,973,316号及び同6,236,033号並びにNature、Vol.391、pp.667〜669において(すべて、全体を参照により本明細書に援用する)、入射光が金属膜の表面プラズモンと共鳴する場合に、金属膜のサブ波長アパーチャ(複数可)の極めて高い透過量を得ることが可能なことが報告された。
【0004】
[発明の概要]
本発明の一つの実施の形態は、光検出器、及び提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する複数の開口を有する金属膜又は複数の金属アイランドを含む2次元波長分離素子を備えたマルチスペクトル画像形成システムに関する。金属膜又は金属アイランドは、入射放射が金属膜又は金属アイランド上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴するように構成される。金属膜又は金属アイランドの開口又は表面形体の周期は様々である。金属膜は、単一の金属膜又は複数の積層金属膜のうちの1つを含むことができる。金属アイランドは、単一の金属アイランド層又は複数の積層金属アイランドのうちの1つを含むことができる。
【0005】
[好ましい実施の形態の詳細な説明]
本発明者等は、光学素子、たとえばモノクロメータ及びスペクトル解析器を含むコンパクト波長分離素子等並びにマルチスペクトル画像形成システム及び光学検体検出システムが、放射効果のプラズモン共鳴増強に基づき得ることを認識した。金属膜又は金属アイランドの開口又は表面形体の周期は、金属膜又は金属アイランドの異なる部分又はセルで様々であり、画像形成システム及び検出システムの2次元波長分離素子部を形成する。
【0006】
波長分離素子は、膜又はアイランドに提供する入射放射の波長未満の幅を有する複数の開口の2次元アレイを有する金属膜又は複数の金属アイランドを含む。金属膜は単一の金属膜又は複数の積層金属膜のうちの1つを含むことができる。金属アイランドは、単一の金属アイランド層又は複数の積層金属アイランドのうちの1つを含むことができる。金属膜又は金属アイランドは、入射放射が金属膜又は金属アイランド上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴するように構成される。開口を透過する増強された放射は、2つの異なるピーク波長を有する少なくとも2つの通過帯域範囲を有し、好ましくは、異なるピーク波長を有する3つ以上、たとえば10以上の異なる通過帯域範囲を有する。
【0007】
図1は、ミクロンスケールモノクロメータ素子101として積層1次元(1D)スリットアレイを使用する波長分離の概略図である。図2Aは素子101の上部を示す。図1に示すように、波長範囲λ〜λを有する入射放射が、複数の開口107を有する金属膜
105に提供される。開口は、入射放射が金属膜上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴するように、入射放射の少なくとも1つの波長未満の幅を有する。異なるピーク波長λi、λ、及びλを有する複数の通過帯域に同時に分離されるように、複数の開口を通して透過された放射が提供される。入射放射は膜105のいずれの側に提供してもよい。
【0008】
好ましくは、700nm未満、たとえば400nm〜700nm(すなわち、可視光)のピーク波長を有する放射を入射放射として使用する。この場合、開口7は幅700nm以下、たとえば15〜200nm、好ましくは40〜60nmを有する。より長い波長を有する入射放射、たとえば赤外線放射等の場合、開口はそれに比例してより長い幅を有することができる。
【0009】
この素子101では、金属層又は金属膜105が放射透明基板103上に形成される。しかしこれに代えて、基板上に支持基板すなわち金属アイランドのない自立形金属メンブレン膜を使用することもできる。たとえば、図2Bは、透明領域7で隔てられた金属アイランド5を含む波長分離素子1を示す。
【0010】
金属膜105は、セルパターンに周期的に配置されたスリット形開口107を含む。スリットは好ましくは、幅よりも少なくとも10倍長い長さを有する。しかし、開口107は、他の任意の適した形状、たとえば円形、楕円形、多角形、又は不規則形等を有することができる。たとえば、図2Cは、円形開口207の群がセル208A、208B、及び208C内に配置された金属膜205を含む素子201を示す。
【0011】
金属膜105は、少なくとも2つのセル等、所望の数のセル又は領域108に分けられる。ここで、開口107の回折格子周期は各セル内で略同じである。しかし、開口107の回折格子周期はセル毎に異なる。換言すれば、各セル内の開口107はセル内の隣の開口からおよそ等間隔で離間される。しかし、この間隔はセル毎に異なる。たとえば、3つのセル108A、108B、及び108Cを図1に示す。
【0012】
各セル108内の開口107の回折格子周期は、透過スペクトル中の特定のピーク波長に通過帯域を生成するように設計される。したがって、或るピーク波長を有する放射の透過が、第1のセル108A中の開口の周期により増強される。異なるピーク波長を有する放射の透過が、第2のセル108B中の開口の異なる周期により増強される。
【0013】
好ましくは、素子101は少なくとも10個のセル、より好ましくは少なくとも30個のセル、たとえば30〜3,000個、たとえば30〜1,000個のセルを含む。各セル中の開口の周期はその他の各セルの開口の周期と異なる。各セル中の開口を通る、異なるピーク波長を有する通過帯域放射の透過は、各セル中の開口の周期により増強される。好ましくは、各セル108を透過した通過帯域放射は、その他のセル108を透過した放射のピーク波長から少なくとも1nm、たとえば少なくとも10nm、たとえば10〜100nmだけ異なるピーク波長を有する。
【0014】
表面プラズモンの伝搬長は約5〜10ミクロンであると推定される。十分なプラズモン相互作用を生み出すことから、この数字と同等又はそれよりも大きなセルサイズが好ましい。0.5μmピーク通過帯域波長を仮定する場合、たとえば、10μmセルが回折格子周期約30個分に相当する。セルサイズは5ミクロンより大きい、たとえば10ミクロン以上、たとえば10〜10,000ミクロンであってよく、セル1個当たりの回折格子数はセルサイズ及びピーク通過帯域波長により変化する。
【0015】
市販のCCD素子の通常のピクセルサイズに合致することから、約10ミクロン、たと
えば5〜20ミクロンのサイズのセル108が好ましい。アレイ密度が高い場合(すなわち、空間分解能がより高い場合)、セルサイズを可能な限り小さく留めることが望ましい。しかし、組み立てやすくするために、セルサイズは約50〜500μmに増大させることができる。この場合、Nチャネルモノクロメータアレイ101の全体サイズはおよそN×(50〜500)μmになる。Nチャネルモノクロメータアレイは、好ましくは、N個のセル108を有する。ここで、Nは10〜10,000の整数である。
【0016】
可視光入射放射の場合、好ましくは、各セル中の開口の周期は約250nm〜約700nmの範囲であり、各開口の幅は、好ましくは、約20nm〜約80nmの範囲である。赤外線入射放射の場合、開口107の幅はこれより長くてよい。
【0017】
上述した1×Nアレイパターンに対する代替の設計は、チャープ回折格子(すなわち開口)パターンを利用するものである。換言すれば、回折格子周期(すなわち、開口の周期)が距離Lにわたって連続チャープする。放射検出器が波長分離素子と併用される場合、検出器のピクセルサイズWにより波長分離素子の有効セルサイズが決まり、アレイのチャネルの総数はL/Wになる。この設計の利点は、モノクロメータアレイ全体を以下に説明するように単一のホログラフィックリソグラフィプロセスで実装できることにある。
【0018】
図2D及び図2Eは、本発明の第2の好ましい実施の形態による波長分離素子11を示す。第2の実施の形態では、金属膜又は金属アイランド15は、図2Dに示すように金属膜又は金属アイランド15の少なくとも1つの表面上に設けられた周期的又は準周期的な表面形状(surface topography:表面トポグラフィ)を有する。所望であれば、金属膜又は金属アイランドを放射透明基板13上に形成することができる。形状12は、開口17での放射の透過を増強するように構成される。周期的な形状12は、金属表面プラズモンと入射放射の強力な結合を提供する任意の金属形体を含むことができる。たとえば、形状は、金属膜又は金属アイランド15の表面上に、規則正しく繰り返す(すなわち準周期的又は周期的な)パターン、たとえば2次元格子等に配置された任意の適した隆起領域及び/又は陥没領域を含むことができる。隆起領域は、円柱形突起、半球形突起、線形リブ、湾曲リブ、矩形リブ、隆起リング、及び/又は隆起スパイラルを含むことができる。陥没領域は、円柱形陥没、半球形陥没、線形トラフ、湾曲トラフ、矩形トラフ、リング形トラフ、及び/又はスパイラル形トラフを含むことができる。隆起領域又は陥没領域の幅又は直径は、好ましくはこれら形体の周期未満であり、この周期と基板の屈折率との積は、放射の所望の最大透過波長未満であるべきである。
【0019】
金属膜又は金属アイランド15は少なくとも2個のセル18、好ましくは複数のセル、たとえば少なくとも10個のセル、より好ましくは少なくとも30個のセルを含む。各セル18A、18B、18C、18Dは、複数の開口17のうちの少なくとも1つを含む。各セルの周期的又は準周期的表面形状12の構成は、その他の各セルの周期的又は準周期的表面形状の構成と異なる。各セルは第1の好ましい実施の形態と同様に、異なるピーク波長を有する通過帯域放射を透過させるように構成される。
【0020】
図2A〜図2Cに示す線形回折格子パターンは本来の機能として偏光検出能力を有するが、フィルタの偏光依存性は用途によっては望ましくない場合がある。図2Eに示すモノクロメータパターンは透過の際の偏光に反応しない。たとえば、図2Eに示すように、各同心パターンに一定周期の起伏を形成するに当たって環状回折格子パターン12を使用する。サブ波長アパーチャ17が各パターンの中心に作られ、入射光は、回折格子周期で決まる特定の波長での表面プラズモンの共鳴励起を介してじょうごに注ぎ込まれるようにしてアパーチャに入ることになる。周期の異なる環状回折格子パターンを2次元アレイ、たとえば図2Eに示す2×2アレイ等に配置すると、偏光に反応しない4チャネルスペクトル解析器になる。
【0021】
第2の実施の形態の別の好ましい態様では、表面形状12は、金属への表面プラズモン結合を含む、金属以外の材料を含む形状を含む。一例では、金属表面に隣接する誘電層又は周囲媒質の屈折率は、金属表面の形状変調なしで(すなわち、金属表面上の起伏/窪みなしで)周期的又は準周期的に変調する。たとえば、平坦な、又は起伏のある金属表面上に形成された誘電層(複数可)の周期的な配置により、金属への表面プラズモン結合を誘発することができる。したがって、図2D中の要素12は、平坦な金属膜又は金属アイランド15の表面上に形成された、周期的又は準周期に配置された誘電材料形体を示すことができる。別法として、屈折率が変化する平坦又はテクスチャ加工された誘電層(複数可)をプラズモン結合に使用することができる。平坦な誘電層(複数可)で屈折率を変化させることは、層(複数可)の組成を金属膜又は金属アイランド上のその層の幅に沿って周期的又は準周期的に変調させることによって実現することができる。任意の適した誘電材料、たとえばシリカ、石英、アルミナ、窒化ケイ素等が使用され得る。
【0022】
第2の好ましい実施の形態では、開口又は透明領域17は、開口17の周期が放射の透過増強に実質的に寄与しないように第1の実施の形態の周期よりもはるかに大きな周期aで隔てられる。たとえば、周期aは好ましくは、表面プラズモンの有効伝搬距離に等しく、Agアイランドに可視光が照射される場合にはたとえば5ミクロン以上であり、好ましくは約5〜10ミクロンである。
【0023】
図2F、図2G、及び図2Hは、3つの異なる波長を有する光が、入射光のピーク波長よりも小さな幅を有する複数の開口を含む金属アイランド又は金属膜を備える同じ波長分離素子を透過する際の差分の時間領域有限差分(FDTD)シミュレーションを示す。具体的には、入射光のピーク波長は、図2F、図2G、及び図2Hに示すシミュレーションにおいてそれぞれ540nm、680nm、及び1500nmである。
【0024】
波長分離素子、たとえばモノクロメータ又はナノ光学フィルタアレイ等は超小型に製造することができ、波長分離は超小スペースで実現することができる。たとえば、寸法は、屈折光学系による制約を受けることなく、放射伝搬方向(すなわち、長さ)を横断する方向に沿ってミクロン規模の面積で、且つ長手(すなわち、放射伝搬)方向に沿って略ゼロの長さ(すなわち積層の厚み、たとえば0.1ミクロン未満)と小さく製造することができる。好ましくは、モノクロメータの長さ、幅、及び厚さはそれぞれ1cm未満である。より好ましくは、モノクロメータの長さは100ミクロン未満であり、その厚さは10ミクロン未満である。
【0025】
金属膜にある、又は金属アイランド間のスリット形開口の場合(すなわち、1D回折格子の場合)、サブ波長開口を通る光透過率は入射光の偏光に依存する。たとえばTE偏光(すなわち、電界が回折格子線に平行)の場合、表面プラズモンは縦波であるため、電界方向に沿って回折格子ベクトルがないことにより表面プラズモンは励起しない。したがって、TE偏光の場合の透過はTM偏光よりもはるかに低くなるものと予期される。この偏光依存性は、入射光の偏光(及びその空間分布)を検出するために利用することができる。別法として、波長分離素子は偏光フィルタとして使用することができる。
【0026】
任意の適した金属、たとえばAg、Al、Au、及びCu等を使用して金属膜又は金属アイランドを形成することができる。好ましくは、9〜10eV範囲でバルクプラズモン周波数を示すAg、Al、Au、Cu、又はそれぞれの合金を含む金属を使用する。これにより、プラズモン誘発現象を広いスペクトル範囲(可視光からIR)で観察できるようになる。Al及びCuは、集積回路チップ及び光検出器の相互接続金属被覆として使用される一般的な金属である。したがって、波長分離素子の金属膜又は金属アイランドは、チップ及び光検出器の形成に使用されるものと同じ半導体製造機器を使用して製造することができる。
【0027】
本発明の第3の好ましい実施の形態では、最初の2つの実施の形態の波長分離素子301を光検出器302と併用して、図3に示すようなスペクトル解析素子304を形成する。可視光、UV、及び/又はIR通過帯域透過放射を検出することができる任意の素子を光検出器302として使用することができる。光検出器302は、波長分離素子301を透過した放射を検出するようになっている。
【0028】
好ましくは、アレイ固体状態光検出器セル、たとえば半導体光検出器アレイ等を光検出器として使用する。最も好ましくは、電荷結合素子(CCD)、CMOSアクティブピクセルセンサアレイ、又は焦点面アレイを光検出器として使用する。図3に示す光検出器302は、基板313、たとえば半導体又は他の適した基板等、及び複数の感光ピクセル又はセル306を備える。好ましくは、各光検出器セル又はピクセル306は、波長分離素子301の各セルのそれぞれからの所与のピーク波長を有する通過帯域放射を検出するように構成される。波長分離素子301は金属膜又は金属アイランド305及び取捨選択的に放射透明基板303を備える。
【0029】
光検出器302は、金属膜又は金属アイランドを通る近距離場出力を検出するために金属膜又は金属アイランド305の出力面に光学的に結合する(すなわち、接する、又は近傍にある)ことができる。そして、各検出器セルの出力は表示及び処理のために電子的にアドレス指定される。プロセッサ、たとえばコンピュータ又は専用マイクロプロセッサ等が好ましくは設けられて、光検出器の各セルが検出した放射の強度を求める。したがって、光検出器302は、好ましくは、波長分離素子と光検出器の間に屈折光学系を利用することなく金属膜又は金属アイランド305に光学的に結合される。
【0030】
本発明の好ましい態様では、スペクトル解析器304の放射透過方向での厚さは1cm未満であり、スペクトル解析器304の、放射透過方向に直交する長さも1cm未満である。
【0031】
本発明の第4の好ましい実施の形態では、ナノフォトニクスモノクロメータ/スペクトル解析器を、モノクロメータが2次元アレイ構成に拡張される場合にマルチスペクトル画像形成システムとして使用することができる。マルチスペクトル画像形成システムとは、複数の色で構成される画像を形成できるシステムのことである。マルチスペクトル画像形成システムの一例は、被写体又は周囲のカラーデジタル動画及び/又は静止画を取り込むことができるデジタルカラーカメラである。マルチスペクトル画像形成システムの別の例は、赤外線放射を発する被写体の可視色でデジタル画像を形成する赤外線カメラ、たとえば暗視カメラ等である。このカメラは、光検出器が検出した放射に基づいてカラー画像(すなわち、視覚的に観察可能な画像に変換することができるデータとして、又は実際に視覚的に観察可能な画像として)を形成するプロセッサ、たとえばコンピュータ、専用マイクロプロセッサ、又は論理回路等を含む。マルチスペクトル画像形成システムは、カラー画像をデジタル形態で(すなわち、コンピュータ可読媒体、たとえばコンピュータメモリ又はCD/DVD ROM等にデータとして)、デジタル表示形態で(すなわち、画面に静止画又は動画として)、且つ/又は視覚的に観察可能で有形の媒体にプリントアウト、たとえば用紙にカラー写真等として記憶することができる。
【0032】
図4A、図4B、及び図4Cは、3次元波長分離素子401及び光検出器402を備えたマルチスペクトル画像形成システム404の例を示す。波長分離素子401は、空間分解偏光検出能力を有するマルチ画像作成を可能にする、金属アイランド又はサブ波長スリットが金属膜405において2Dモザイクに配置されたものを示す。システム404は、波長分離素子401において2次元に配置されたセル408のアレイを含む。好ましくは、セル408は矩形又は正方形マトリックスレイアウトに配置される。しかし、他の任意のレイアウトをこれに代えて使用することができる。各セル408は、多次元画像のマルチカラー部分を生成するようになっている。
【0033】
各セル408は少なくとも3つのサブセル418を含む。特定のセル408の各サブセル418は、特定の一色(又は狭いIR、VIS、又はUV放射帯域)を透過させるように設計される。好ましくは、各サブセル418は、所与の第1の周期を有するスリット形開口407を備えた金属アイランド又は金属膜405を含む。開口のこの第1の周期は、所与のセル408中のその他のサブセル418の少なくともいくつかの周期と異なる。この場合、特定のセル408中の各サブセル418は、特定の偏光を有する特定の一色(又は狭いIR又はUV放射帯域)を透過するように設計される。換言すれば、各サブセル418は、所与の狭帯域波長を有する放射を透過させる。たとえば、狭帯域波長は可視光放射の特定の色に対応することができる。2Dアレイ404の各セル418は、同じ配置のサブセル418を含むことから、好ましくは、アレイ中のその他のセルと同一である。
【0034】
たとえば、図4Bは、波長分離素子に32個のセル408(8×4アレイのセル408A、408B、408C等)を含むシステム404Aを示す。各セル408は6個のサブセル418を含む。各サブセルは、特定の偏光を有する特定の一色を検出器402に透過させるように設計される。3個のサブセル418A、418B、418Cは、第1の方向(たとえば、水平方向等)を向いたスリット形開口407を有する。別の3つのサブセル418D、418E、及び418Fは、第1の方向に直交する第2の方向(たとえば、垂直方向等)を向いたスリット形開口を有する。したがって、このサブセルレイアウトを有する各セル408はTM偏光及びTE偏光の両方を透過させることができる。この実施の形態の好ましい一態様では、各サブセル対(418Aと418D、418Bと418E、418Cと418F)での開口407の周期は同じである。各サブセル対のサブセルは、互いに直交する向きのスリット形開口を有して各色のTE偏光及びTM偏光を検出する。しかし、開口407の周期は各サブセル対で異なる。したがって、図4Bに示すシステム404Aは、3色画像形成システムであり、各サブセル対が一色を透過させるようになっている。
【0035】
図4Cは、波長分離素子に9個のセル408(3×3セルアレイ)を含むシステム404Bを示す。各セル408は12個のサブセル418を含む。この実施の形態の好ましい一態様では、各サブセル対の開口の周期は同じである。各サブセル対のサブセルは互いに直交する向きのスリット形開口を有して各色のTE偏光及びTM偏光を検出する。しかし、開口の周期は各サブセル対で異なる。したがって、図4Cに示すシステム404Bは、6色画像形成システムであり、各サブセル対が一色を透過させるようになっている。
【0036】
サブセル418は、各セル408において正方形マトリックス又は矩形マトリックスにされる。しかし、他の任意の適した配置を使用することができる。3色又は6色分離システムについて例示のみを目的として上述した。各セル中のサブセルの数を増やすことにより、システムを、7色以上の色分離及び画像形成の高解像度マルチチャネル解析器に容易にスケールアップすることができる。さらに、セル408を図4Bに示すように隣のセルに接して配置してもよく、又は図4Cに示すように隣のセルから離して配置してもよい。単一のセル408内のサブセル418のモザイク配置により、マルチカラー分離能力が可能になり、モザイクセルを2Dアレイまで繰り返すと、単一のチップ上にスペクトル解析器アレイが形成され、マルチスペクトル画像形成システム、たとえばカラーカメラ等が形成される。
【0037】
上述したシステムは、サブ波長スリット形開口を有する金属アイランド又は金属膜を含む。しかし、周期的又は準周期的表面形状を有する金属アイランド又は金属膜をこれに代
えて使用することができる。たとえば、マルチスペクトル画像形成システムは、図4A〜図4Cに示すスリット形開口を有する金属アイランド又は金属膜に代えて、図2Eに示す2次元アレイになったサブセルを備えることができる。したがって、図2Eはマルチセルアレイのうちの1個のセルを示し、このセルは4個のサブセル18A、18B、18C、及び18Dを含む。各サブセルは、異なる周期及びサブ波長開口17を有する形体12を有する。したがって、これは4色カラー画像形成システムである。これらサブセルは偏光に依存しないため、図4A〜図4Cに示すシステムのように各色の画像形成に同じ開口周期であるが直交する開口方向を有するサブセル対を形成する必要はない。
【0038】
さらに、マルチスペクトル画像形成システムは上述したように光検出器402も含む。好ましくは、光検出器402は、金属膜又は金属アイランド中の各セル408に1個のピクセル又はセル406を含む。最も好ましくは、各光検出器ピクセル406は、1個のみのセル408を透過した放射を受けるように、基板413上に各セル408と位置合わせされて配置される。
【0039】
本発明の第5の好ましい実施の形態では、上述したナノフォトニクススペクトル解析器又はマルチスペクトル画像形成システムを光学検体検出システムに使用する。検体検出システムとは、検体からの放射がスペクトル解析器又はマルチスペクトル画像形成システムによって検出されるシステムのことである。検体は有機材料、たとえば生体材料(すなわち、タンパク質、抗体、抗原等)等、高分子材料、又は無機材料、たとえば金属、ガラス、セラミック、又は半導体材料等であることができる。検体は固体状態、液体状態、又は気体状態のうちのいずれの1つ又は複数であることができる。検体からの任意の適した放射、たとえば検体からの蛍光又はルミネセンス、検体を透過した、若しくは検体から反射された入射放射の吸収若しくは透過率、又は検体による入射放射の変化、たとえば検体を透過した、若しくは検体から反射した放射のピークシフト等を検体検出システムによって検出することができる。
【0040】
図5Aは例示的な光学検体検出システム500を示す。システム500は励起源501、検体ホルダ502、及び上述した1次元スペクトル解析器304又は2次元マルチスペクトル画像形成システム404のいずれか一方を備える。
【0041】
任意の適した励起源501を使用することができる。好ましくは、光学励起源、たとえば発光ダイオード、レーザ、又はUV範囲、可視範囲、又はIR範囲で放射するランプ等を使用する。しかし、検体503から光応答504、たとえば蛍光を生成する他の任意の非光学励起源をこれに代えて使用することができる。たとえば、励起源として、熱に応答して検体に放射させる熱源、たとえばヒータ又は加熱炉を含むことができる。別法として、X線、ガンマ線、又は電子が検体に放射させる場合、X線源、ガンマ線源、又は電子ビーム源を励起源として使用することができる。
【0042】
検体ホルダ502は、光学検出中に検体503を保持することができる任意の装置を含むことができる。たとえば、図4Aに示すように、検体ホルダ502は、検体503が液体、固体、又はゲルの生体材料、たとえば血清試料等である場合、ミクロスライドを含むことができる。別法として、検体ホルダ502は、気体又は液体の検体の場合に放射透明気体容器又は放射透明液体容器、又は固体又はゲルの検体503の場合に任意の適したシェルフ、サセプタ、又は支持体を含むことができる。
【0043】
システム500は、検体の2次元分解が必要ない場合、1次元スペクトル解析器304(すなわち、上述したモノクロメータ及び光検出器の組み合わせ)を備えて検体503から放射504を検出する。システム500は、検体503の2次元分布からの放射を検出することが望ましい場合、上述した2次元マルチスペクトル画像形成システム404を備
える。たとえば、マルチスペクトル画像形成システムは、検体503の異なる領域が発した放射504の差分を検出することができ、且つ/又はマルチスペクトル画像システムを使用して検体503のより大きな部分からの放射504を検出することができる。
【0044】
図5Bは、光学検体検出システム500の好ましい実施の形態を示す。このシステム500では、励起源501は発光ダイオード又はレーザダイオードを含む。励起源501と検体ホルダ502の間に、取捨選択的なナノ光学励起フィルタ506が配置される。フィルタ506は、入射放射を偏光するために、同じ周期を有するサブ波長スリット形開口507を含む金属フィルム又は金属アイランドを備えることができる。別法として、フィルタは入射放射を偏光する別種の偏光フィルタを備えることができる。検体ホルダ502はマイクロスライドを含み、検体503は生体材料、たとえばタンパク質、抗体等、及び/又は蛍光体含有試料を含む。マルチスペクトル画像形成システム404は、上述した光検出器402及び波長分離素子401を備える。好ましくは、波長分離素子401の開口407はスリット形であり、フィルタ506の開口に直交する方向を向く。したがって、開口407は偏光した励起源501放射が光検出器402に到達するのを防ぎ、光検出器は、開口407を透過した検体503からの蛍光を検出する。換言すれば、2次元ナノ光学モノクロメータ401の回折格子線は、吸収されなかった入射(すなわち、励起放射)が検出器アレイ402に到達する前に大部分濾波されるように励起フィルタ506の回折格子線と直交するように位置合わせされる。
【0045】
ナノ光学フィルタは許容角約±5〜10度を示す。ナノ光学モノクロメータアレイ401と検体ホルダ402の間の約200〜約2000ミクロンの間隔は、波長分離素子(すなわち、ナノ光学アレイ)401の約10〜約100ミクロンのセルサイズに妥当であるものと予期される。この間隔は、検体503があるプレート形検体ホルダ502を摺動させてシステム500に出し入れするに十分なスペースを提供する。
【0046】
上述したように、ナノ光学モノクロメータアレイ401は上述したようなハイブリッド又はモノリシック様式で検出器チップ402に集積することができる。ハイブリッド構成の場合では、市販の検出器チップ(CCD又はCMOSアクティブピクセルセンサアレイ)を使用することができる。ナノ光学モノクロメータ401のセル408(すなわち、チャネル)の数は比較的少数に、たとえば10〜100個のセルに保つことができる。しかし、より多数のセル、たとえば100〜10,000個のセルを使用することもできる。各セルのサイズは約50〜約500ミクロンであることができ、これは市販の光検出器アレイのピクセルサイズ(通常、CCDでは約10ミクロン)よりも5〜10倍大きい。次いで、セル408を透過する蛍光信号の特定の波長成分が約5〜約50個のピクセルによって検出される。別法として、各セル408は1個の光検出器ピクセルに対応するように設計することができる。モノクロメータ401及び光検出器402のモノリシック集積の場合、ナノ光学モノクロメータはCMOS(又はCCDの)アクティブピクセルアレイチップの金属相互接続の一部に配置することができる。したがって、全体プロセスは標準的なCMOSプロセスに適合する。
【0047】
図6は、本発明の好ましい実施の形態による医療解析のための光学検体検出システム500を使用する方法を示す。しかし、システム500は他の検体及び/又は他の目的で使用することが可能である。
【0048】
図6に示すように、生体検体503、たとえば血液又は他の人又は動物の体液等が検体ホルダ502に提供される。検体503は各種対象成分、たとえばタンパク質、抗体等を含む。検体ホルダ502は1種又は複数種の添加部材(attachment member)508のアレイ、たとえば各種抗体、抗原、タンパク質等を含む。たとえば、添加部材508は各種疾病タンパク質、たとえばインフルエンザタンパク質、天然痘タンパク質、及び炭疽タン
パク質等に固有の抗体を含むことができる。別法として、添加部材508は各種疾病抗体に固有の抗原又はタンパク質を含むことができる。
【0049】
この実施の形態の好ましい一態様では、これら抗体は任意の適した蛍光体、たとえば有機染料分子又は半導体量子ドット等で蛍光標識される。検体503が抗体508に特に結び付く抗原又はタンパク質を含む場合、これら抗原又はタンパク質は抗体508に結合する。結合により、励起放射に応答して蛍光体が発する放射504の特性が変わる。たとえば、蛍光体が発する放射504の波長及び/又は強度が結合によって変化し得る。光検出器402は放射504を検出し、コンピュータ又は他のプロセッサ509が光検出器による検出結果の記憶、送信、及び/又は表示を行う。たとえば、炭疽固有の抗体508に付着した蛍光体からの放射504が変化する場合、コンピュータ509は、検体血液503が炭疽菌に感染した患者からのものであることを示す。
【0050】
結合は以下の方法の1つ又は複数により検出することができる。第1の方法では、異なる添加部材が検体ホルダ502の異なる領域に提供され、このレイアウト情報がコンピュータ509に提供される。添加部材508を含む検体ホルダ502は励起放射又は入射放射501で照射され、蛍光体の蛍光放射504が光検出器402により背景放射として検出される。次いで、検体503は検体ホルダ502に提供され、検体ホルダは再び励起放射501で照射される。光検出器は蛍光放射504を検出し、コンピュータ509は、検体ホルダ上の任意の領域からの蛍光放射504が検体503の配置前と配置後で変化したか否かを判断する。したがって、コンピュータは、検体ホルダ502の特定の領域で特定の添加部材508への結合があったか否かを判断し、それにより、添加部材508は検体ホルダ502の異なる領域で異なることから検体503の中身を判断することができる。所望であれば、励起放射501を検体ホルダ502に向けて、検体503のタンパク質又は抗原と添加部材508とのリアルタイム結合を常時検出することができる。
【0051】
結合を検出する別の方法では、異なる蛍光波長を有する蛍光体を各種の添加部材508に付着させ、このデータがコンピュータ509に記憶される。添加部材508を収容した試料ホルダ502が励起放射又は入射放射501で照射され、蛍光体の蛍光放射504が光検出器402により背景放射として検出される。次いで、検体503が検体ホルダ502に提供され、検体ホルダが再び励起放射501で照射される。光検出器は蛍光放射504を検出し、コンピュータ509は、特定の波長の蛍光放射504が検体503の配置前と配置後で変化したか否かを判断する。したがって、コンピュータは、検体503の導入後に変化した蛍光放射の波長に基づいて特定の添加部材508への結合があったか否かを判断することができる。所望であれば、励起放射501を検体ホルダ502に向けて、検体503のタンパク質又は抗原と添加部材508とのリアルタイム結合を常時検出することができる。この方法では、変化した放射のロケーションではなく波長が結合の検出に使用されるため、異種の蛍光体/添加部材508を検体ホルダ502の異なる領域に配置することが好ましいが、これは必ずしも必要なことではない。所望であれば、検出された放射の強度を使用して、検体の中身と添加部材508との結合の程度を測ることができることに留意されたい。
【0052】
第3の検出方法を図6に示す。この方法では、蛍光体を添加部材508に付着させない。付着に代えて、追加の蛍光標識部材510、たとえば蛍光標識された抗体、抗原、又はタンパク質等が検体503の後に検体ホルダ502に提供される。これら蛍光標識部材510は、検体503に見られるタンパク質、抗原、又は抗体に結合するように設計される。したがって、検体503を形成する抗体、抗原、又はタンパク質が添加部材508に結合する場合、蛍光標識付き部材510も検体503を形成するこれら抗体、抗原、又はタンパク質に結合する。検体503を形成する結合した抗体、抗原、又はタンパク質の有無は、検体ホルダ502に励起放射又は入射放射501を照射することにより判断され、部材510からの蛍光放射504が光検出器402によって検出される。異種の蛍光標識付き部材510に異なる波長の放射を発する蛍光体で標識することができ、且つ/又は異種の添加部材508を検体ホルダ502の異なる部分に配置して、添加部材508に結合したタンパク質、抗体、又は抗原の種類を区別することができる。
【0053】
この方法では、添加部材508を含むことが好ましいが、これら部材508を省いてもよい。添加部材508を含むことに代えて、検体ホルダ502の表面を、対象とするすべてのタンパク質、抗体、抗原、又は他の検体成分を付着させるように処理することができ、異なる波長の放射を発する蛍光体で標識した異種の蛍光標識部材510を検体503に提供する。部材510は検体の特定の成分にのみ結合するように設計される。これら検体成分が存在しない場合、部材510は検体ホルダ502に残らない。したがって、付着した標識付き部材510が発する放射の波長(複数可)を測ることにより、検体の特定成分の有無を添加部材508なしで検出することができる。
【0054】
システム500全体のパフォーマンスは以下の要因:励起源及び蛍光体両方のパワー及びスペクトル特性、検出器402の応答性、成分層の間隔、並びに励起フィルタ506及びモノクロメータアレイ401両方のフィルタ特性によって決まるものと予期される。有機染料蛍光体を使用するマルチスペクトル蛍光の場合、通常、各染料に異なる励起波長が求められる。LEDを図1〜図2Eに示すナノ光学励起フィルタと併用して、各成分波長で明確で狭いスペクトル幅を有する波長多重ビームを生成することができる。量子ドット蛍光体の場合、波長の異なる蛍光体を単一の励起波長で励起させることができる。これは有機染料蛍光体の使用と比較して励起光学系を簡易化する。
【0055】
システム500の利点は、ナノ光学モノクロメータ401の高精細分解能をスペクトル幅の狭い量子ドット又はナノチューブプローブと併せて利用して蛍光信号の多波長成分を同時に検出する能力にある。このマルチスペクトル検出により、混合波長信号からの各波長成分を抽出するにあたりデコンボリューション技法の適用が可能になる。これは、システム500のスペクトル解析能力をさらに向上させる。
【0056】
システム500の別の利点は高いスループットである。たとえば、図4B及び図4Cに示すように、4×8又は3×3アレイ構成を有する2次元モノクロメータ401をそれぞれ使用することにより、8×4又は3×3検体アレイの同時解析が可能である。2Dアレイは、個々のセルがマルチスペクトル解析能力を保有し、最高のスループットを提供する。
【0057】
1次元スペクトル解析器304及び2次元スペクトル解析器404は任意の適した方法で製造することができる。たとえば、波長分離素子301、401及び光検出器302、402を別個に製造し、次いで共に接合又は取り付けて解析器を形成することができる。たとえば、波長分離素子301、401及び光検出器302、402は、放射透明層又は接着剤により、及び/又は固定素子、たとえばブラケット等により互いに取り付けることができる。波長分離素子301、401及び光検出器302、402は外周に、又は全長に沿って互いに取り付けることができる。波長分離素子301、401は光検出器302、402に直接接してもよく、又は放射透明層、たとえば酸化ケイ素層若しくはガラス層等又は基板303を間に配置してもよい。
【0058】
第3の実施の形態の別の好ましい態様では、スペクトル解析素子はモノリシックに形成される。換言すれば、波長分離素子301、401及び光検出器302、402を別個に形成してから互いに取り付けるのではなく、波長分離素子301、401及び光検出器302、402のうちの一方の個々の構成要素又は層が他方の上に順次形成される。したがって、波長分離素子301、401の個々の構成要素又は層を光検出器302、402の上に順次形成することができ、この逆もまた同様である。
【0059】
たとえば、固体状態光検出器アレイ302、402が基板313内又はその上に設けられる。このステップは、好ましくは、CCD、CMOSアクティブピクセルアレイ、又は焦点面アレイを基板313内又はその上にフォトリソグラフィで形成することを含む。換言すれば、光検出器アレイ302、402は、標準的な微細加工技法、たとえば半導体、金属、及び/又は絶縁層塗布、イオン注入、フォトレジストマスキング、及び層のマスキングされていない部分のエッチング等で形成することができる。
【0060】
次いで、金属膜305、405を光検出器アレイ302、402上にモノリシックに塗布する(すなわち、金属膜が形成後にアレイ302、402に取り付けられるのではなく、薄膜塗布方法、たとえば蒸着、スパッタリング、又はCVD等により塗布される)。次いで、金属膜305、405をフォトリソグラフィでパターニングし、複数の開口を形成する。開口は、金属膜上又は金属膜上のハードマスク層上にフォトレジスト層を形成し、フォトレジスト層を露光してパターニングし、次いで金属膜のカバーされていない部分をエッチングして開口を形成することにより形成することができる。
【0061】
別法として、複数の金属アイランドを光検出器アレイ302、402上にモノリシックに塗布する。いくつかの適したアイランド塗布方法を使用することができ、これらについて以下に詳述する。
【0062】
金属膜又は金属アイランドが周期的又は準周期的な表面形状を含む場合、その形状は金属膜又は金属アイランド上にフォトリソグラフィで形成することができる。
【0063】
本発明の好ましい態様では、波長分離素子は光検出器の金属被覆と同時に形成される。たとえば、金属膜又は金属アイランド305、405は、光検出器302、402の金属被覆又は相互接続上に形成された層間絶縁層上に形成することができる。CCD、CMOS、又は焦点面アレイ光検出器では、金属被覆相互接続の1つ又は複数のレベルが半導体デバイス上に形成される。波長分離素子301、401は、金属被覆層上、金属被覆層の間、金属被覆層のうちの1つの一部として(すなわち、金属レベルの一部が波長分離素子として機能し、別の部分が光検出器のための相互接続として機能する)、金属被覆層の下、又は基板313の金属被膜層から反対側に形成することができる。
【0064】
たとえば、波長分離素子はAl膜又はAlアイランドを含むことができ、標準CMOSプロセスのAl相互接続パーツの一部を含むことができる。たとえば0.13μmCMOSプロセスでは、5レベル又は6レベルの金属相互接続が使用される。これら相互接続はナノ光学モノクロメータアレイとして設計することができ、同じチップ上のCMOSアクティブピクセルアレイにモノリシックに集積することができる。ナノ光学フィルタアレイは、回折格子周期250〜700nmを使用することによりスペクトル範囲およそ400〜1000nmをカバーするように設計することができる。したがって、スペクトル解析器チップ304、404は半導体製造サービスを利用して組み立てることができる。
【0065】
好ましい実施の形態の素子では、所望であれば、対称構成を用いて通過帯域幅を低減する(すなわち、副ローブ又は側波帯の数を減らす)ことができる。この構成では、波長分離素子は、同じ誘電媒体で構成される2つの放射透明基板に挟まれる。
【0066】
金属アイランドを波長分離素子として使用する場合、これらアイランドを任意の適した方法で製造することができる。たとえば、本発明の好ましい一態様では、放射透明領域又はスリット形開口で離間された金属アイランドを自己集合により形成する。換言すれば、金属膜を形成し、膜を金属アイランドにパターニングするのではなく、最初に、パターニ
ングされていない金属膜の一部であることなく、離間された金属アイランドを同時に又は順次形成する。金属アイランドは、互いに接続されない離散金属アイランド(すなわち、金属アイランドは互いに直接接しない)又は光素子の外周領域で互いに接続する金属アイランドを含むことができる。別の好ましい態様では、金属アイランドは、金属膜をパターニングしてアイランドにすることにより形成される離散アイランドを含む。好ましくは、アイランドはリソグラフィ法を用いてパターニングされる。
【0067】
金属アイランド5は、それら自体が放射に対して不透明であるが、開口又は領域7を通してプラズモン増強放射透過を生成するような任意の適した厚さを有することができる。好ましくは、金属アイランドの厚さは金属の表皮深さの少なくとも約2倍又は3倍であるべきである。可視波長範囲の入射放射の場合の銀アイランドでは、表皮深さはおよそ30nmであり、金属アイランドの厚さは少なくとも約60〜90nm以上であるべきである。表皮深さは波長の長い範囲ほど大きくなり、金属毎にいくらか異なる。したがって、たとえば、金属アイランド5は約50nm〜約2000nm、たとえば100nm〜400nm、好ましくは120〜180nmの厚さを有することができる。
【0068】
第1及び第2の実施の形態の好ましい態様では、金属アイランド5、15は自己集合によって形成され、透明基板3、13上の複数のリッジ21上に配置される。好ましくは、図7に示すように、複数の金属アイランド5、15のそれぞれ1つは複数のリッジ21の対応する1つに配置される。金属アイランド及びリッジは上述したように任意の適した形を有することができる。好ましくは、金属アイランド及びリッジは、アイランド間の開口7、17がスリット形になるように形作られる。したがって、各金属アイランドの長さは、好ましくは、幅の少なくとも10倍であり、各リッジの長さは、好ましくは、幅の少なくとも10倍である。図7に示すように、複数のリッジ21は、好ましくは、矩形の形を有する。リッジ21は、放射透明基板3、13の上部上の突起、放射透明基板若しくは光検出器302、402上にある放射透明層の上部上の突起、又は放射透明基板若しくは光検出器302、402上に配置される離散放射透明要素を含むことができる。したがって、基板3、13は、単一基板(すなわち、単一層放射透明材料)を含んでもよく、又は2層以上の放射透明材料を含んでもよい。リッジ21は、可変周期を有して第1の好ましい実施の形態の素子を形成することができる。
【0069】
好ましくは、各金属アイランド5、15のそれぞれは、各リッジ21の上面23及び各リッジ21のそれぞれの少なくとも片面25の少なくとも一部に延びる。最も好ましくは、金属アイランドは図8に示すように角度を付けた塗布によって形成される。この場合、金属は第1の側面25から角度を付けて塗布されるため、各金属アイランド5、15は、各リッジ21の第2の側面27よりも各リッジ21の第1の側面25に下がって延び、これについてはより詳細に以下に説明する。
【0070】
本発明の代替の態様では、基板3、13はナノ孔アレイを含む。好ましくは、基板3、13は、放射透明基板又は光検出器上に配置された陽極酸化アルミニウムナノ孔アレイを含み、これについてはより詳細に以下に説明する。
【0071】
本発明の好ましい態様の光学素子1、11は、複数の金属アイランド5、15が放射透明基板3、13に形成される任意の適した方法により製造することができる。上述したように、金属アイランド5、15は、好ましくは、金属がリッジ21の間に塗布されないように複数のリッジ21に選択的に塗布される。
【0072】
図8は、角度を付けた塗布を利用して自己集合により金属アイランド5、15を選択的に形成する好ましい方法を示す。この方法では、金属はリッジの上部に対して非直交方向でリッジ21に向けられる。たとえば、リッジが平坦な上面23を備える場合、金属はリ
ッジの平坦な上面23に対して20〜70度の角度で、たとえば30〜50度の角度で向けることができる。
【0073】
好ましくは、金属アイランド5、15は、図8に示すように蒸着(熱又は電子ビーム)によりリッジ21に塗布される。蒸着法では、金属は熱で又は電子ビームにより金属源又はターゲット31から基板3、13上に蒸着する。角度を付けた蒸着の場合、基板3、13はターゲット31に対して20〜70度、たとえば30〜50度、好ましくは45度傾けられる。リッジ21間のスペースは十分に小さいため、金属は角度を付けた塗布中、リッジ間に塗布されない。したがって、基板の角度シータは、リッジ21間に金属が塗布されないようにするに十分なものであるべきである。金属アイランド5、15はまた、他の任意の適した角度を付けた金属塗布法又は角度を付けない金属塗布法、たとえば金属有機化学気相成長(MOCVD)、分子線エピタキシ(MBE)、スパッタリング、及び他の適した方法等によって塗布することもできる。
【0074】
リッジ21は、任意の適した方法で基板3、13上に形成することができる。好ましくは、リッジはリソグラフィを利用して製造される。最も好ましくは、リッジはフォトリソグラフィを利用して製造され、これについてより詳細に以下に説明する。しかし、リッジ21はインプリント又はナノインデンテーションリソグラフィを利用して、たとえばリッジ付きスタンプで透明単一基板又は多層基板に刻印して透明基板に複数のリッジ及びグルーブを形成することにより製造することもできる。
【0075】
図9A、図9B、及び図9Cは、フォトリソグラフィを利用して透明基板(すなわち、単一基板又は多層基板)3、13に、又は光検出器203上の層にリッジを形成する好ましい一方法を示す。図9Aに示すように、フォトレジスト層41が基板3、13(又は光検出器203)の第1の表面上に形成される。「フォトレジスト層」という用語は、半導体及び他のマイクロデバイスパターニングに使用される任意の適したポジ型又はネガ型の感光層を含む。次いで、フォトレジスト層41は放射、たとえばUV又は可視光等に、又は電子ビーム等により選択的に露光される。
【0076】
選択的な露光は、狭放射又は電子ビームをフォトレジスト層41にわたって選択的に走査させることにより、又はホログラフィによりマスクを通して行うことができる。たとえば、図9B及び図9Cに示すように、フォトレジスト層は、波長分離素子の各セルに対し別個にホログラフィに露光させてもよく、又は層全体をチャープ回折格子パターンに同時に露光させてもよい。
【0077】
ホログラフィックリソグラフィを行うために、レーザビームを2つのビームにスプリットする。次いで、2つのビームは反射して、フォトレジスト層41上で収束する。2つのビームが収束する箇所に、強力な光の複数の平行線から構成される相互作用パターンが発生する。強力な光の平行線は、入射ビーム角を変更することで調整可能な特定の周期で発生する。光学系を変更する、たとえば光源の波長を変更し、且つ/又はフォトレジストに隣接する周囲誘電体の屈折率を変更することにより、周期のさらなる調整を実現することができる。したがって、フォトレジストは、2つのビームが収束する箇所で露光され、2つのビームが収束しない箇所では露光されない。図9Bに示す長さΛは、スプリットレーザビームのピーク波長を(sinθ+sinθ)で割ったものに等しい。但し、θ及びθは、図9Aに示すように、フォトレジスト表面の法線に対するレーザビームの角度である。
【0078】
選択的な露光はフォトレジスト層41に露光領域及び非露光領域を残す。ホログラフィック露光は、後に基板にスリット形リッジ及びグルーブを形成するために使用することができるスリット形露光領域及び非露光領域をフォトレジスト層41に形成するため好ましい。
【0079】
次いで、露光されたフォトレジスト層41が図9Bに示すようにパターニングされる。フォトレジスト層41が正のフォトレジスト層である場合、露光領域は適した溶剤によって除去され、非露光領域を図9Bに示すように基板3、13上にフォトレジストパターン43として残す。フォトレジスト層41が負のフォトレジスト層である場合、非露光領域が適した溶剤によって除去され、露光領域がフォトレジストパターン43として基板3、13上に残る。
【0080】
次いで、基板3、13の上面が、パターニングされたフォトレジスト層41をマスクとして使用して(すなわち、基板上に残っている露光領域又は非露光領域43をマスクとして使用して)エッチングされてリッジが形成される。基板はウェットエッチング及び/又はドライエッチングによりパターニングすることができる。望むように他の中間処理ステップ、たとえばフォトレジストベーク、クリーニング等を付け加えることもできることに留意されたい。
【0081】
さらに、所望であれば図9D〜図9Iに示すように、ハードマスク層、たとえば窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素等、又は金属層、たとえばクロム層等をフォトレジスト層41と基板3、13の間に必要に応じて加えることができる。図9D及び図9Eに示すように、ハードマスク層42、たとえばCr層が基板3、13上に形成される。次いで、図9Fに示すように、フォトレジストパターン43が任意の適した方法、たとえばホログラフィックリソグラフィ法等によりハードマスク層42上に形成される。次いで、ハードマスク層42がフォトレジストパターン43をマスクとして使用してパターニングされてハードマスクパターン44が形成され、次いでフォトレジストパターン43が図9Gに示すように除去される。次いで、図9Hに示すように、基板3、13はハードマスクパターン44をマスクとして使用してパターニングされ、リッジ21が形成される。次いで、ハードマスクパターン44は除去される。次いで、図9Iに示すように、金属アイランド5が、たとえば角度を付けた塗布による等してリッジ21上に選択的に塗布される。
【0082】
上述した方法のパラメータの好ましい例は以下である。約40nm厚のCrハードマスク層が熱蒸発により石英基板上に塗布される。この後、ハードマスク層上に約100nm厚までHMDS塗布及びフォトレジストスピンコーティングが続けられる。Microposit Photoresist1805及びMicroposit Type P Thinnerを1:1の体積比で、スピン速度5000rpmで使用する。次いで、フォトレジスト層にソフトベークを摂氏95度で30分間施した。フォトレジストをホログラフィックリソグラフィにより露光させる。UV He−Cdレーザ(波長325nm、CWパワー15mW)を露光に使用する。次いで、Microposit351及び脱イオン水を1:4の体積比で使用してフォトレジスト層を現像する。次いで、現像された(すなわち、パターニングされた)フォトレジストにハードベークを摂氏120度で30分間施す。
【0083】
次いで、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして使用してCrハードマスク層をエッチングする。2段階エッチングプロセスの反応性イオンエッチング(RIE)システム(PlasmaTherm 790 ICP/RIE)を使用してCr層をエッチングする。段階1では、10mTorr圧でCl(20sccm)+O(10sccm)、RIEパワー25W、及びICPパワー100Wを30秒間使用する。段階2では、10mTorr圧でCl(24sccm)+O(6sccm)、RIEパワー10W、及びICPパワー100Wを7分間使用する。
【0084】
次いで、パターニングされたハードマスク層をマスクとして使用して石英基板をパター
ニングする。15mTorrでCF(37sccm)+O(4sccm)、RIEパワー100W、及びICPパワー150Wを12分間使用するRIEにより石英基板をエッチングする。その後、NaOH+KFe(CN)+HO溶液での化学エッチングにより、残っているCrハードマスクを除去する。次いで、メサエッチングされた基板上に、角度を付けた塗布を利用してAgアイランドを塗布する。Agアイランドは、傾斜角45度でベースプレッシャー10−5TorrでAg源の熱蒸発を利用して様々な厚さまで塗布される。ホログラフィパターニングされメサエッチングされた基板が製造されると、これを、パターンを規定する度又は移す度に別個の光学プロセス又は電子リソグラフィプロセスがいずれも関わることなく、基板上にアレイパターンをナノインプリントする際の種型として利用することができる。
【0085】
図10A及び図10Bは、フォトリソグラフィ及びナノ孔アレイを使用して透明基板(すなわち、単一基板又は多層基板)3、13内又は光検出器203上にリッジを形成する別の好ましい方法を示す。ナノ孔アレイを形成する例示的な一方法が、Z. Sun及びH. K. Kim、Appl. Phys. Lett., 81(18)(2002)3458に記載されている。
【0086】
まず、図10Aに示すように、回折格子の形のフォトレジストパターン43を、上述し図9A及び図9Bに示すものと同様にして基板3、13上又は光検出器203上に形成する。フォトレジストパターンは、ホログラフィック又は非ホログラフィックリソグラフィにより形成することができる。フォトレジストパターン43を形成した後、基板3、13をエッチングして、回折格子パターンを基板に移して図7に示すリッジ21を形成することができ、この後、フォトレジストパターン43を除去する。別法として、基板エッチングステップ及びフォトレジストパターン除去ステップを省いてよい。
【0087】
図10Bに示すように、陽極酸化可能な金属層51を、リッジが存在する場合にはリッジ21上に、フォトレジストパターンがまだ除去されていない場合にはフォトレジストパターン43上に共形的に塗布する。共形的に塗布された金属層51は、図10Bに示すように、土台の基板の回折格子パターン又はフォトレジストパターンを呈する。換言すれば、金属層51は、基板3、13の回折格子パターンが第1の金属層51の上面に移されるように回折格子がパターニングされた透明基板(すなわち、リッジ付き基板又はパターニングされたフォトレジスト43で覆われた基板)上に形成される。
【0088】
金属層51は、陽極的に陽極酸化(anodically anodized)することができる任意の適した金属、たとえばAl、Ta、Ti、Nb、及びこれらの合金を含むことができる。金属層51は任意の適した方法、たとえばスパッタリング、MOCVD、蒸発(熱又は電子ビーム)、MBE等により塗布することができる。金属層51は任意の適した厚さ、たとえば100〜1000nm、好ましくは350〜400nmを有することができる。金属層51の上面のコルゲーション(corrugation)深さは、好ましくは、基板又はフォトレジストパターンのコルゲーション深さとおおよそ同じである。好ましくは、金属層51のコルゲーション深さは約20〜約300nm、たとえば約80〜100nmである。
【0089】
次いで、金属層51を任意の適した方法で陽極酸化する。たとえば、シリカ基板3、13上のAl層51を室温で、白金線を対向電極として使用して希釈電解液(体積比で1HPO+800HO)中で陽極酸化することができる。好ましくは、陽極酸化を一定電圧モードで約40分間行う。陽極電圧は、所期の孔距離が回折格子周期に合致するようなものが選択され、たとえば350ナノメートル回折格子周期の場合には140ボルトが選択される。自然に形成されたアルミナ孔アレイでは、孔間隔は陽極酸化電圧に比例する。すなわち、約2.5nm/Vである。電圧は、金属層の異なる部分を陽極酸化する際に可変であり、可変周期の孔を形成する。陽極酸化後、好ましくは、試料をリン酸(水で1:3の体積比に希釈)で1〜2分間処理する。図10Cは、アルミニウム層51が陽極酸化により酸化アルミニウムに変化した場合の回折格子パターニングされたアルミニウム層51で成長したナノ孔層53の電子顕微鏡写真である。得られるアルミナ孔は均一の深さ、たとえば約100〜2000nm、好ましくは約300〜400nmを示し、孔の底は窪んだ半球形を有し、バリアの厚さは約100〜300nm、たとえば150〜200nmである。好ましい孔径は約5〜100nm、たとえば5〜10nmである。ナノ孔は、酸化陽極により酸化した金属層51の上面の回折格子パターンにトラフを選択的に形成する。
【0090】
ナノ孔アレイ53、たとえば図10Cに示すアレイを形成した後、金属アイランド5、15を図10Dに示すようにナノ孔に選択的に成長させる。酸化金属層のナノ孔内に金属アイランドを選択的に成長させる好ましい一方法は、図10Eに示す電気めっき法である。ナノ孔アレイ53は導電性又は半導電性基板63上に形成される。基板63は金属層、たとえば陽極酸化されていない金属層等、又はドープ半導体層、たとえばケイ素、ガリウムヒ素、又は窒化ガリウム等を含むことができる。基板63は、素子1、11に使用される放射透明基板3、13、又は放射に対して透明若しくは非透明の一時的な基板を含むことができる。次いで、基板63及びアレイ53を、液体金属67を含む電気めっき槽65中に提供する。電位差(すなわち、電圧)を基板63とアレイ53の間に印加する。アレイ53はナノ孔57下の領域55がより薄いため、これら領域55に電圧勾配が存在する。これにより、金属67は槽65からナノ孔57に選択的に塗布する。所望であれば、電気めっき法を使用してナノ孔57を槽65からの金属67で選択的に充填することができる。金属67は、上述したプラズモン増強効果を示し、電着により酸化金属孔に塗布することができる任意の金属、たとえばNi、Au、Pt、及びこれらの合金等であることができる。したがって、ナノ孔57に電気めっき金属67を充填することによりアイランド5、15を形成する。ナノ孔を電気めっき金属で充填することにより、モノクロメータ及び画像解析器用途に適し、図2Cに示す構造と相補型の構造を有する金属アイランドアレイを形成することができる。
【0091】
本発明の代替の好ましい態様では、ナノ孔57は電気めっきステップ中に金属67で途中までしか充填されない。この場合、金属67は、選択的な金属蒸着の触媒として機能することができる任意の金属であることができる。たとえば、金属67はAuであることができる。次いで、触媒金属67がナノ孔57の底に形成されたアレイ53を金属蒸着チャンバ、たとえば化学蒸着チャンバ等に移す。次いで、選択的蒸着により金属アイランド5、15を触媒金属67上に選択的に成長させる。金属アイランド5、15は、上述したプラズモン増強効果を示し、触媒金属67上に選択的に塗布することができるがナノ孔アレイ53の酸化金属壁には塗布することができない任意の金属を含むことができる。たとえば、この金属はAl又はAgを含むことができる。
【0092】
ナノ孔アレイ53が一時的な基板63上に形成される場合、金属アイランド5、15をアレイ53に形成する前、又は形成した後に一時的な基板をアレイ63から除去することができる。一時的な基板は、基板の選択的なエッチング、研磨、又は化学機械的研磨により、一時的な基板63とアレイ53の間にあるリリース層(明確にするために図示せず)の選択的エッチング、又はアレイ53から基板63を剥離することにより除去することができる。剥離の場合、1つ又は複数の剥離層を基板63とアレイ53の間に配置することができる。剥離層(複数可)は、互いに、又はアレイ及び/又は基板から機械的に分けることができるような低接着性及び/又は強度を有する。次いで、金属アイランド5、15をアレイ上に形成する前、又は形成した後に透明基板3、13又は光検出器203をアレイ53上に、一時的な基板63があった場所からアレイ53の同じ側及び/又は反対側に取り付ける。
【0093】
本発明の代替の好ましい態様では、ナノ孔アレイのリッジ上に、角度を付けて金属を塗
布することにより複数の開口を有する金属膜、たとえば図2Cに示す金属膜を形成する。角度付けた塗布方法については上述し、図8に示した。本発明の別の代替の態様では、金属層が、金属が孔の中に延在するようにナノ孔アレイ上に塗布され、次いで金属層を化学機械的研磨又はエッチングしてナノ孔アレイの上部を再び露出させる。研磨又はエッチングにより再び露出させるステップは、酸化金属ナノ孔アレイ透明領域で隔てられた離散金属アイランドをナノ孔に残す。
【0094】
本発明の別の代替の態様では、ナノ孔アレイは、最初に基板3、13をパターニングすることなく、すなわちフォトレジストパターン43を形成することなく形成される。この態様では、金属層51、たとえばAl層、Ta層、Ti層、又はNb層等を、パターニングされていない基板又は光検出器203上に塗布する。次いで、任意の適した方法により金属層51に起伏を形成する。たとえば、金属層の選択的なレーザアブレーションにより、ナノインデンテーション又はナノインプリントにより、又はフォトリソグラフィにより(すなわち、フォトレジストパターンを金属層に形成し、次いでパターンをマスクとして使用して金属層をエッチングし、フォトレジストパターンを除去することにより)起伏を形成することができる。好ましくは、ホログラフィックフォトリソグラフィを使用して金属層51をパターニングし、一時的な窒化ケイ素、酸化ケイ素、又は酸窒化ケイ素のハードマスクをフォトレジストと金属層51の間に使用する。次いで、金属層51を上述したように陽極酸化する。
【0095】
図11は、テンプレートナノ孔アレイを使用して金属アイランドを形成する代替の方法を示す。図11Aに示すように、上述し図10A〜図10Cに示した方法を使用して基板63上の酸化金属ナノ孔アレイ53を形成する。次いで、図11Bに示すように共形テンプレート材料71をアレイ63上に塗布する。共形テンプレート材料71は、アレイ53のナノ孔57を共形的に充填することができる任意の材料を含むことができる。たとえば、共形テンプレート材料71は酸化ケイ素、窒化ケイ素、ガラス遷移温度を超えて加熱されたガラス、CVDリン珪酸ガラス又はホウ素燐ケイ酸ガラス(それぞれPSG又はBPSG)、スピンオンガラス、又は高分子材料を含むことができる。所望であれば、共形テンプレート材料は透明基板3、13のすべて又は一部を含むことができる。
【0096】
次いで、図11Cに示すように、共形テンプレート材料71をナノ孔アレイ53から除去する。共形テンプレート材料71は、アレイのナノ孔57中にそれまで延在していたリッジ73を含む。次いで、金属アイランド5、15を、電気めっき法を使用して共形テンプレート材料71のリッジ73間の孔75の中に、又は上述した角度付けた塗布方法を使用してリッジ73上に選択的に塗布する。共形テンプレート材料71が透明基板3、13材料である場合、プロセスはこのポイントで終わる。共形テンプレート材料71が透明基板3、13ではない場合、共形テンプレート材料71を任意の適した方法、たとえば選択的エッチング、研磨、又は化学機械研磨等により金属アイランド5、15から分ける。材料71を除去する前又は除去した後に、金属アイランド5、15を透明基板3、13に取り付ける。
【0097】
図12A及び図12Bは、基板又は光検出器203上にリッジを使用することなく、またナノ孔アレイを使用することなく金属アイランド5、15を形成する代替の方法を示す。この方法では、金属層81を図12Aに示すように基板3、13上に形成する。基板3、13は上面に形体又は平坦な上面を含むことができる。次いで、金属層81を図12Bに示すように複数の金属アイランド5、15中にパターニングする。金属層81は上述したようにリソグラフィでパターニングすることができる。したがって、フォトレジスト層41が金属層81の第1の面上に形成される。フォトレジスト層を選択的に露光して露光領域及び非露光領域を形成する。露光されたフォトレジスト層をパターン43にパターニングし、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして金属層をエッチングして複数のアイランド5、15にする。
【0098】
フォトレジスト層はホログラフィ的に、又は非ホログラフィ的に露光することができる。所望であれば、取捨選択的に、上述した一時的なハードマスク層を金属層81とフォトレジストの間に形成することができる。別法として、フォトリソグラフィに代えて選択的なレーザアブレーション又は他の非フォトリソグラフィ方法により金属層をパターニングすることができる。
【0099】
図13A、図13B、及び図13Cは金属アイランド5、15を形成する代替の剥離方法を示す。この方法でも基板上又はナノ孔アレイ上にリッジを使用する必要がない。この方法では、図13Aに示すようにフォトレジスト層41を基板3、13又は光検出器203上に形成する。基板3、13は上面に形体を含んでもよく、又は平坦な上面を含んでもよい。フォトレジスト層を選択的に露光して露光領域及び非露光領域を形成する。フォトレジスト層への露光はホログラフィであってもよく、又はホログラフィでなくてもよい。
【0100】
次いで、露光されたフォトレジスト層41をパターニングしてフォトレジストパターン43、基板3、13の上面の露出部分を形成する。図13Bに示すように、金属層81をフォトレジストパターン43上及び基板3、13の上面の露出部分上に形成する。
【0101】
次いで、図13Cに示すように、選択的エッチング又は他の適した剥離技法等によりフォトレジストパターン43を剥離する。フォトレジストパターン43上にある金属層81の部分はパターン43と共に剥離され、複数の金属アイランド5、15が基板3、13の上面に残る。
【0102】
光学素子1、11の通過帯域特性をさらに向上させるために、図14に示すように、金属膜又は金属アイランド層91、93の3次元積層構造を使用することができる。2個の単層1D光学素子91、93を回折格子線(すなわち、スリット形透明領域)97が互いに略平行し、且つ遠距離場領域(far-field regime)において面間にスペースがある状態で対面させて垂直に重ねる。但し、遠距離場領域は、入射光又は入射放射の波長の約3〜5倍大きいスペースを含む。透明領域97を、それでもなお両方の層を通して放射を透過させる量だけ互いにわずかにずらすことができる。次いで、2つの金属膜又はアイランド層が遠距離場領域で相互作用するものと予期され、したがって全体透過は基本的に2つの透過プロファイルの積になる。これにより、低強度側のピーク及び背景透過が抑圧されるとともに、主ピークの幅が狭まる。全体的に、3次元積層構造の金属膜又は金属アイランド層の使用により、光学フィルタアレイの帯域通過特性が向上する。
【0103】
本発明者等は、局在表面プラズモン(SP)共鳴が、金属アイランド又は金属膜の間で一方向に位置合わせされたスリット形透明領域のアレイ中の金属アイランド又は金属膜で発生し得るが、金属膜の非スリット形アパーチャのアレイでは発生し得ないことも発見した。放射の透過は、金属膜中の非スリット形アパーチャアレイを通してよりも金属アイランド間又は金属膜中のスリット形透明領域アレイを通してのほうが高い。
【0104】
さらに、本発明者等は、金属アイランド間のスリット形透明領域アレイにおいて、スリット形透明領域の幅及び金属アイランドの高さ(すなわち、厚さ)によりこれらアレイの透過特性が決まることを発見した。特定の理論に縛られることを望まずに、本発明者等は、局在SP共鳴がこの効果の要因であるものと信じる。透明領域の幅が好ましい範囲内である場合、主通過帯域波長での高い透過及び長波長範囲での低い透過を実現することができる。好ましい範囲は、金属アイランドのSP場の侵入深さの約1〜約3倍である。最も好ましくは、幅は30nmよりも大きく、且つ100nm未満である。この範囲は可視スペクトル光に好ましく、より長い波長領域の場合、好ましいスリット幅はそれに比例して広くなる。1D金属アイランド/スリット形透明領域アレイのこの特性は、波長分離素子のスペクトル特性を設計し、且つ/又は創り出すに当たって使用することができる。これとは対照的に、透明領域の幅がこの好ましい範囲を超える場合、主通過帯域波長及び長波長範囲での透過は高い。透明領域の幅がこの好ましい範囲を下回る場合、主通過帯域波長及び長波長範囲での透過量は極めて低くなる。
【0105】
特定の理論に縛られることを望まずに、本発明者等は、2種の表面プラズモン励起が、金属アイランド間又は金属膜中のスリット形透明領域を透過する放射の特性の要因であるものと信じる。すなわち、1)金属/空気界面又は金属/基板界面のいずれかを含む平面に沿ったSP共鳴、及び2)スリット形透明領域によって隔てられた各金属アイランドを囲む表面(すなわち、金属アイランドの側壁又は金属膜中の透明領域の側壁)に沿って局在するSP共鳴。
【0106】
本発明者等はまた、ピーク透過が、素子の、局在SP共鳴が金属/基板表面でのプラズモン共鳴からわずかにずれている箇所で発生するものと信じる。この場合、かかる素子では、長波長透過量が低いが、その一方で主通過帯域透過量が高いままであるものと予期される。さらに、金属アイランド又は金属膜の高さ(すなわち、厚さ)は主通過帯域ピークの幅に影響する。一般に、主通過帯域ピークの幅は、金属アイランド又は金属膜の厚さが低減するにつれて狭まる。素子は理想的には1つのピーク波長に1つの通過帯域を含むことに留意されたい。しかし、素子は2つ以上のピーク波長を有する2つ以上の通過帯域を含み得る。
【0107】
本発明のいくつかの態様では、金属膜中のサブ波長アパーチャ(複数可)に代えて、サブ波長放射透明領域により隔てられた金属アイランドを放射のプラズモン増強透過に使用することができる。好ましくは、金属アイランドはリソグラフィ及び/又は自己集合を使用して形成され、光学素子の処理を簡易化するとともに、精度を高める。
【0108】
本発明の好ましい一態様では、放射透明領域により離間された金属アイランドは自己集合により形成される。換言すれば、金属膜を形成して膜をパターニングして金属アイランドにするのではなく、離間された金属アイランドは、最初に、パターニングされていない金属膜の一部であることなく同時に又は順次形成される。金属アイランドは、互いに結び付いていない離散金属アイランド(すなわち、金属アイランドは互いに直接接しない)又は光学素子の外周領域で互いに結び付いた金属アイランドを含むことができる。
【0109】
別の好ましい態様では、金属アイランドは、金属膜をパターニングしてアイランドにすることにより形成される離散アイランドを含む。好ましくは、アイランドはリソグラフィ法を使用してパターニングされる。
【0110】
図19Aは、放射透明基板3及び基板3上に複数の金属アイランド5を備えた表面プラズモン共鳴光学素子1を示す。金属アイランド5は複数の放射透明領域7により隔てられる。図19Bは、線A−A’に沿った素子1の側面断面図を示す。
【0111】
任意の適した材料を基板3及び金属アイランド5に使用することができる。たとえば、任意の放射透明材料(すなわち、可視光、UV、及びIR透明材料)を基板材料として使用することができる。たとえば、基板3はガラス、石英、セラミック、プラスチック、又は半導体材料を含むことができる。基板3は複数の膜若しくは層、又は単一体を含むことができる。
【0112】
表面プラズモン共鳴効果を示す任意の材料(すなわち、イプシロンが負の材料)を金属アイランド5の材料として使用することができる。たとえば、バルクプラズモン周波数約
9〜10eVを示す、銀、金、銅、アルミニウム、及びこれらの合金等の金属が金属アイランド材料として好ましい。
【0113】
隣の金属アイランド5とは、素子1に提供する入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の間隔9で隔てられる。好ましくは、この間隔は100nm未満であり、たとえば40〜60nmである。この範囲は可視スペクトル光に好ましく、波長領域が長くなるほど、好ましい間隔はそれに比例して広くなる。金属アイランド5は、入射放射が金属アイランド上の表面プラズモンモードと共鳴し、それによって複数の金属アイランド間での放射の透過が増強するように構成される。好ましくは、透過される放射は、表面プラズモン共鳴により透過が増強される少なくとも1つのピーク波長を有する。
【0114】
任意の適した放射を入射放射として使用することができる。たとえば、入射放射は可視光放射、UV放射、又はIR放射を含むことができる。入射放射は、波長分布の狭い放射、たとえばピーク波長を有しピーク波長の前後に狭い帯域幅を有する放射等、及び波長分布の広い放射、たとえば白色光等を含むことができる。たとえば、金属アイランドのプラズモン波長よりも大きな波長を有する放射を使用することができる。たとえば、銀アイランドの場合、プラズモン波長は約350nmである。したがって、約350nm〜マイクロ波波長を範囲とする波長を有する放射を使用することができる。ケイ素光検出器を使用して放射を検出する場合、好ましい入射放射波長の範囲は約350nm〜約1100nmである。
【0115】
好ましくは、ピーク波長が700nm未満、たとえば400nm〜700nm(すなわち、可視光)の放射を入射放射として使用する。この場合、金属アイランド5の離間間隔9は700nm以下、たとえば15〜200nmであり、好ましくは40〜60nmである。
【0116】
金属アイランド5は、アイランド5自体が放射に対して不透明であるが、領域7を通してプラズモン増強放射透過を生成するような任意の適した厚さを有することができる。好ましくは、金属アイランドの厚さは金属の表皮深さの少なくとも2倍又は3倍であるべきである。入射放射が可視波長範囲の場合の銀アイランドでは、表皮深さはおよそ30nmであり、金属アイランドの厚さは少なくとも約60〜90nm以上であるべきである。より長い波長範囲の場合、表皮深さは厚くなり、金属毎にいくらか異なる。したがって、たとえば、金属アイランド5は約50nm〜約2000nmの厚さ、たとえば100nm〜400nmの厚さを有することができ、好ましくは120〜180nmの厚さを有することができる。
【0117】
本発明の一つの実施の形態では、透過放射のプラズモン増強は、金属アイランド間の透明領域7の周期又は間隔により発生する。たとえば、図19Aに示すように、複数の金属アイランドは幅10を有し、それにより、アイランド5の幅10に透明領域の幅9を加えたものに等しい周期aを有する透明領域アレイを複数の金属アイランド間に形成する。透明領域7の周期aは、プラズモン共鳴による放射透過増強のために素子1の照射に使用する入射放射の波長(複数可)に基づいて選択される。好ましくは、透明領域の周期aは、透明領域7の幅の約3〜10倍、たとえば5〜6倍である。したがって、透明領域7の幅9が、可視光入射に好ましい約30〜100nmである場合、周期aは約200nm〜約780nm、たとえば200nm〜700nmであり、たとえば約370nm〜約700nmである。しかし、周期aは約60nm〜約2ミクロン、たとえば0.1〜1.8ミクロンの範囲であることができる。
【0118】
図19Aに示すように、透明領域7はスリット形である。これらスリットは幅9よりもかなり長い長さを有する。好ましくは、長さは幅9の少なくとも10倍である。しかし、
透明領域7はスリット形に代えて、放射のプラズモン増強透過をもたらす他の任意の適した形を有することができる。
【0119】
特定の理論に縛られることを望まずに、本発明者等は、2種の表面プラズモン励起が、金属アイランド間のスリット形透明領域を透過する放射の特性の要因であるものと信じる。すなわち、1)金属/空気界面又は金属/基板界面のいずれかを含む平面に沿ったSP共鳴、及び2)スリット形透明領域によって隔てられた各金属アイランドを囲む表面(すなわち、金属アイランドの側壁)に沿って局在するSP共鳴。
【0120】
図20Aは、より詳細に以下に説明する例1及び例2により製造された素子の透過スペクトルを示す。素子は、回折格子周期370nmを有する金属アイランドを備える。例1の素子は、透明領域7の最小(すなわち、最も狭いポイントでの幅)幅が約50〜100nmである120nm厚Agアイランドを含む。例2の素子は、透明領域7の最小幅が約30nmである120nm厚Agアイランドを含む。素子の光学透過はスペクトル範囲350〜1750nmで測定される。非偏光白色光源に接続されたマルチモードファイバ(コア径62.5μm及び開口数0.20)からのビームを通常通り基板側から金属アイランドアレイに入射させる。アレイを通る零次透過を、Ag層表面近傍に配置された別のマルチモードファイバで収集し(3〜5μmギャップを有する)、次いで光学スペクトル解析器で特徴付ける。透過測定を、同じメサエッチング処理された石英構造を有するが、Ag層のないダミー試料を用いて繰り返す。次いで、実試料から得られたスペクトルをダミーからのスペクトルで割るという、測定透過スペクトルに対する、メサエッチング処理された石英基板構造及び光ファイバに伴う影響を除去(又は軽減)するように設計されたプロセスにより、アレイを通る透過を計算する。
【0121】
図20Aに示すように、120nm厚及び200nm厚の金属アイランドアレイからそれぞれおよそ30%及び15%のピーク透過率が観察される。入射ビームが偏光されておらず、TE偏光成分がスリット形透明領域を有するアレイを透過しないことを考慮して、TM偏光の場合の最大透過率はおよそ60%であると推定される。これは約500%透過効率に相当し、スリットを透過した光学パワーをスリットエリア上に衝突した入射パワーで割ったものとして定義される。
【0122】
図20Aに示すように、Agアイランドの厚さが120nmから200nmに増大すると、主ピーク(すなわち、主通過帯域波長範囲に対応するピーク)が660nmから690nmにシフトする。Agの厚さが増大することに伴ってピーク幅も顕著に増大する。透過スペクトルのこれら特性、すなわち主ピークの赤方偏移及びピーク幅の増大は、主ピークがまず青方偏移するとともにピーク幅が狭まり、次いで金属厚がさらに増大するとピーク位置及び幅が一定になる金属膜中の2Dアパーチャアレイでの透過スペクトルの特性の逆である。
【0123】
2Dアパーチャアレイを通る光透過の分析研究では、青方偏移を示す初期領域は、金属層の上面及び底面での2つの表面プラズモンのエバネッセント結合によりモデリングされ、第2の領域は切り離されたSPによりモデリングされる。
【0124】
これとは対照的に、スリット形透明領域中の伝搬モードは、スリット形透明領域アレイを通る光透過に少なくとも部分的に寄与するものと信じられる。1Dアレイ光透過特性と2Dアレイ光透過特性の明確な相違は、スリット形透明領域を通しての光透過に関わるメカニズムは、膜中のアパーチャを通しての光透過に関わるものと異なることを強く示唆している。
【0125】
図20A中の透過スペクトルは3つの大きな降下を示す。およそ580nmでの最小透
過ポイントは、金属アイランドの厚さが異なっても略同じ位置に留まる傾向があるが、厳密な位置は近傍ピークとの重複により分解することができない。この金属厚への鈍感性は、この最小透過ポイントで発生する現象が、主に金属の上面又は底面との光の相互作用を含むが、金属アイランドの側壁との光の相互作用を含まないことを示唆する。各金属アイランドの金属/基板界面を含む平面に沿ったSP共鳴は、式:
【0126】
【数1】

【0127】
を使用する計算に基づいて600nm波長の光で発生するものと予期される。
【0128】
式中、Lは回折格子周期であり、mはSP結合に関わる回折格子ベクトルの次元であり、ε及びεは金属及び隣接する誘電体(すなわち、この場合では石英基板)の誘電率である。m=1で計算されたこの数は、図20Aにおいて観察される最小に程よく合致する。同様に、およそ430nmでの透過最小も、上記式により430nmで発生すると予期される空気/金属界面でのSP共鳴によく対応するが、厳密な位置は、金属アイランドがかなり透明であるバルクプラズモン波長(約360nm)と重複するためはっきりと分解することができない。
【0129】
120nm厚Ag金属アイランドを有する試料はおよそ800nmで大きくはっきり明確な降下を示し、これは金属/基板界面に関連する透過最小のものよりもはるかに長い波長に対応することにも留意されたい。スリット形透明領域構造は伝搬モード(すなわち、金属アイランド側壁に沿った垂直SP)を可能にすることを考慮すると、これらアイランドの側壁を介して金属アイランドの上面及び底面上のSP波を互いに結合することが可能である。この場合、以下の条件を閉ループに沿って満たす場合、
【0130】
【数2】

【0131】
SPはアイランドの表面、すなわち金属断面の外周に沿って共鳴するものと予期される。
【0132】
式中、mは整数であり、KSPはSP波ベクトルであり、
【0133】
【数3】

【0134】
として表すことができる。式中、λは入射光の自由空間波長である。金属断面の外周に沿って、SP波ベクトルKSPの大きさは金属と相互作用する誘電材料に応じて、すなわちこの場合では空気であるかそれとも石英であるかに応じて変化する。金属断面の不規則な幾何学的形状により、近似を用いて金属アイランドの外周に沿った総相変化を計算することができる。均質な誘電体に囲まれた、半径rを有する円形断面という単純な幾何学的形状を仮定すると、式2での共鳴条件はKSP=mに減る。r=110nm及び金属外周の30%がシリカとの界面であり、残りが空気との界面であるという近似の場合、共鳴波長は双極共鳴の場合、すなわちm=1の場合に820nmと計算される。この数は、図20Aに示す120nm厚Agアイランドを有する試料の透過率降下(800nm)の位置にぴったりと合致する。最小透過ポイントは、金属アイランドの厚さが増大するにつれてより長い波長に向かってシフトする。この挙動もまた上述した共鳴条件に一致する。この表面プラズモン共鳴は各金属アイランドにおいて高度に局在化された現象であり、金属アイランドアレイの上面又は底面のいずれかを含む平面に沿って発生するSP共鳴と異なることに留意することが重要である。
【0135】
He−Neレーザを使用しての固定波長(633nm)での透過率及び反射率の両方の角度依存性を図20Bに示す。透過率及び反射率は、120nm厚Agアイランドを有する1Dアレイ試料の場合に633nm波長(TM偏光)での入射角の関数として測定される。図20A及び図20Bに示す結果は、図20A中の3つの大きな透過最小が、金属表面の異なるセクションに関わるSP共鳴によるものであり得ることを示唆する。この波長でのTM偏光された光の場合、透過スペクトルは、入射角が45度のときに最小を示す(図20B中の破線曲線)。この角度位置は、金属/基板界面を含む平面でのSP励起の場合の条件、すなわち、KSP=Ksinθ±mKから計算される値(43度)によく合致する。式中、kは入射ビームの波ベクトルであり、θは基板の法線から測定される入射角であり、Kは回折格子ベクトルである。反射スペクトル(実線曲線)は、同じ入射角で鋭いピークプロファイル(半値全幅2〜3度)を有する最大を示す。入射パワーと透過され反射されたパワーとの差として計算される電力損失は、SP共鳴ポイントにおいて最小である。この結果は、SP共鳴ポイントの近傍で発生する、回折に関連するウッドの異常回折(Wood's anomaly)によるものであり得る可能性があるが、SP共鳴がこの透過/反射異常において主要な役割を果たしている可能性のほうが高い。
【0136】
したがって、特定の理論に縛られることを望まずに、本発明者等は、表面プラズモン共鳴が、金属アイランドアレイとの2つの異なる相互作用モードを含む、観察された透過最小の要因であるものと信じる。すなわち、1)金属/空気界面又は金属/基板界面のいずれかを含む平面に沿ったSP共鳴、及び2)スリット形透明領域によって隔てられた各金属アイランドを囲む表面(すなわち、金属アイランドの側壁)に沿って局在するSP共鳴。これら共鳴ポイントでは、金属表面に沿った正味電力流はほとんど又はまったくなく、したがってスリット形透明領域への入射パワーのじょうご現象はほとんど又はまったくない。そして、入射パワーは、パワーを大きく失うことなく金属表面から強く反射して戻る。比較的薄い金属アイランドの場合、アレイを通るピーク(すなわち、通過帯域)透過は、金属表面に沿った正味電力流がスリット領域にじょうごに注ぎ込まれるようにして入り、次いで伝搬透過ビームを形成する放射モードに分かれるようにSP励起が共鳴ポイントからずれていることによるものであると信じられる。したがって、金属アイランドに局在するSPの共鳴ポイントは、金属アイランドの厚さ及び/又は透明領域の幅を選択することにより回折格子周期から独立して調整することができ、以下に説明するようにアレイの透過特性を調整するために使用することができる。
【0137】
金属アイランドアレイを通る放射の透過特性に対する透明領域7の幅9の影響についてこれより説明する。本発明者等は、高い選択性を有する帯域通過フィルタの場合、透明領域の幅は、入射放射が空気/金属アイランド界面から金属アイランド上に向けられる場合に、金属アイランドのSP場の侵入深さ又は表皮深さの約1〜3倍で変化すべきであるものと判断した。
【0138】
本発明者等は、ピーク透過が、SP共鳴が金属/基板表面でのSP共鳴からわずかにずれている状況に対応するものと信じる。そして、各金属アイランドに局在する表面プラズ
モンは、透明領域の幅が減じられるとトンネルプロセスを介して互いに結合するものと予期される。近傍アイランドでの表面プラズモン間の結合は、スリット形透明領域にわたるSP場の重複の程度に応じるものと予期され、これは、透明領域の幅と比較したSP場の空間広がり(すなわち、ギャップサイズ)により決まる。
【0139】
SP場の表皮深さ又は侵入深さは、H. Raether, Surface Plasmons (Springer-Verlag,
New York, NY, 1988) page 6から以下のように表される。
【0140】
【数4】

【0141】
式中、λは光の自由空間波長であり、ε’は金属の誘電率の実数部であり、εは金属に隣接する媒質の誘電率である。場の強さは表面でのピーク値から1/eだけ減衰する。したがって、侵入深さは波長及び放射が透過する材料の両方に依存する。
【0142】
強結合が金属アイランド間で発生すると、金属アイランドは表面プラズモン振動の観点から仮想的に結び付く(ギャップに関わらず)。透明領域を通るSPの伝搬は最終的にブロックされ、透過スペクトルは、透明領域を有さない金属のものと同様のプロファイルを示す。したがって、金属アイランドアレイは、透明領域の幅が金属アイランドのSP場の侵入深さの約1〜約3倍の範囲内にある場合、長波長透過を抑圧しながら主(通過帯域)透過を高く保つことにより狭帯域通過フィルタとして機能するものと予期される。
【0143】
金属アイランドアレイを通る放射の透過特性に対する金属アイランドの厚さの影響についてこれより説明する。主通過帯域ピークの幅は、金属アイランドの厚さの低減に伴って狭まる。
【0144】
主通過帯域ピーク幅は基本的に、ピーク前後の2つの透過降下、すなわち金属/誘電体界面でのSPの共鳴波長と金属アイランドに局在するSPの共鳴波長の隔たりによって決まる。前者の波長は大方、回折格子自体によって決まるが、後者は、基本的に金属アイランドの断面の外周を含む他のメカニズムにより左右される。金属アイランドの横寸法を回折格子周期近くに保ちながら(良好な帯域通過特性を実現するために、回折格子周期よりも表皮深さの長さ約1〜3つ分短い)、金属アイランドの縦寸法(すなわち、厚さ)は総外周を調整するために可変である。アイランドの厚さの変化により、局在SPの共鳴波長、ひいては通過帯域幅が変化する。したがって、厚みの薄い金属アイランドを使用すると、通過帯域幅が狭くなる。
【0145】
この実施の形態の金属アイランドアレイの通過帯域特性の例を図20A及び図20Cに示す。図20Cは、厚さが180nm(すなわち、スペクトルを図20Aに示す120nm厚Agアイランドと200nm厚Agアイランドの中間)の銀金属アイランドの透過スペクトルを示す。この素子の最小の透明領域の幅は約50nmと測定される。これとは対照的に、200nm及び120nm厚のアイランドを有する素子の透明領域の最小幅はそ
れぞれ約30nm及び50〜100nmである。例1〜例3の素子では、金属アイランドは角度付けた塗布によりリッジ付き基板上に塗布される。したがって、金属アイランドの厚みを増せば、透明領域の幅が狭くなる。しかし、他の方法で製造された金属アイランドアレイの場合、透明領域の幅は必ずしも金属アイランドの厚さの増大に伴って狭くなるわけではない。
【0146】
図20Cに示すように、長波長透過をおよそ20%と低く維持しながら、120nm厚アイランドを有する素子のものよりもさらに高い70%を超えるピーク透過(TM偏光の場合)が観察される。したがって、(Ilonger−wavelength/Imain)<0.4であり、好ましくは0.3以下である。但し、Imainは主通過帯域ピークの強度であり、Ilonger wavelengthは主通過帯域ピークよりも長い波長での透過放射の強度である。図20Aに示すように、長波長範囲(950nmを超える)での非常に高い透過率(およそ650nmでの主通過帯域のピーク透過率と略同じレベル)が、120nm厚アイランド及び約30nm幅の透明領域を有する素子の場合に見られる。しかし、長波長領域での透過率は、200nm厚アイランド及び50〜100nm幅の透明領域を有する素子では劇的に下がる(TM偏光に関して透過率60%レベルから10%に)。しかし、この素子のピーク(通過帯域)透過率も大幅に下がる。
【0147】
λ=600nmでのAg/空気界面の場合、侵入深さは空気中では390nm、又は金属中では25nmと計算される。λ=600nmでのAu/空気界面の場合、侵入深さは空気中では280nm、又は金属中では30nmと計算される。図20A及び図20Cは、主ピークの高い透過率を維持しながら狭帯域通過特性を実現するために好ましい透明領域の幅が40〜50nmであることを示す。これとは対照的に、30nm幅の透明領域を有する素子は、狭帯域通過特性を示したが、より低い主ピーク透過強度を示した。最大で100nm幅の透明領域を有する素子は、より長い波長での透過の強度が高いことに鑑みて狭通過帯域特性を示さなかった。
【0148】
したがって、図20A及び図20Cに提供される最小の透明領域の幅の好ましい範囲(望ましい帯域通過特性の場合におよそ40〜50nm)は、金属のSP場の侵入深さとのぴったりした合致(又は空気側侵入深さのおよそ1/10)を示す。狭帯域通過フィルタの透明領域の幅の好ましい範囲は、金属側のSP場の侵入深さ約1〜3つ分(又は空気中の侵入深さのおよそ1/10〜3/10)であることが分かっている。
【0149】
偏光されていない光のピーク放射透過は最大で約50%であると推定され、これは偏光されていない光の理論上の最大である。これはTM偏光の光の略100%の透過に相当する。透明領域充填率を考慮すると、各透明領域を通る透過効率は100%よりも大きく、たとえば100%〜500%である。上限もまた、逆充填率(すなわち、周期/スリット幅)によって決まるため500%よりも大きくなり得る。
【0150】
別の好ましい実施の形態では、光学素子11の金属アイランド15はまた放射透明基板13上にも配置される。この代替の実施の形態の好ましい一態様では、金属アイランド15は、図21に示すように、金属アイランド15の少なくとも1つの表面上に設けられた周期的な表面形状12を有する。形状12は、複数の金属アイランド間の放射透過を増強するように構成される。周期的な形状12は、金属表面プラズモンと入射放射との強結合を提供する任意の金属形体を含むことができる。たとえば、形状は、規則正しく繰り返す(すなわち、周期的な)パターン、たとえば2次元格子等に配置された、金属アイランド15の表面上の任意の適した隆起領域及び/又は陥没領域を含むことができる。隆起領域は、円柱形突起、半球形突起、線形リブ、湾曲リブ、矩形リブ、隆起リング、及び/又は隆起スパイラルを含むことができる。陥没領域は、円柱形陥没、半球形陥没、線形トラフ、湾曲トラフ、矩形トラフ、リング形トラフ、及び/又はスパイラル形トラフを含むことができる。隆起領域又は陥没領域の幅又は直径は、好ましくはこれら形体の周期未満であり、この周期と基板の屈折率との積は、放射の所望の最大透過波長未満であるべきである。
【0151】
この実施の形態の別の好ましい態様では、表面形状12は、金属への表面プラズモン結合を含む、金属以外の材料を含む形状を含む。一例では、金属表面に隣接する誘電層又は周囲媒質の屈折率は、金属表面の形状変調なしで(すなわち、金属表面上の起伏/窪みなしで)周期的又は準周期的に変調する。たとえば、平坦な、又は起伏のある金属表面上に形成された誘電層(複数可)の周期的な配置により、金属への表面プラズモン結合を誘発することができる。したがって、図21中の要素12は、平坦な金属アイランド15の表面上に形成された、周期的又は準周期に配置された誘電材料形体を示すことができる。別法として、屈折率が変化する平坦又はテクスチャ加工された誘電層(複数可)をプラズモン結合に使用することができる。平坦な誘電層(複数可)で屈折率を変化させることは、層(複数可)の組成を金属アイランド上のその層の幅に沿って周期的又は準周期的に変調させることによって実現することができる。任意の適した誘電材料、たとえばシリカ、石英、アルミナ、窒化ケイ素、高分子材料等が使用され得る。誘電率変調(金属表面起伏に代えて、又はこれに加えて)を波長調整可能構造に使用することができる。非金属形状も、1つ又は複数のアパーチャを有する金属膜上に使用することができる。
【0152】
この実施の形態では、透明領域17は、透明領域17の周期が放射の透過増強に実質的に寄与しないように前の実施の形態の周期よりもはるかに大きな周期aで隔てられる。したがって、この実施の形態の金属アイランド15の幅は、前の実施の形態のアイランド5の幅よりもはるかに大きい。たとえば、周期aひいてはアイランド15のおおよその幅は、好ましくは、SPの有効伝搬距離に等しく、Agアイランドに可視光が照射される場合にはたとえば5ミクロン以上、好ましくは約5〜10ミクロンである。
【0153】
図21に示すように、透明領域17はスリット形である。これらスリットは幅よりもはるかに大きな長さを有する。好ましくは、長さは幅の少なくとも10倍長い。しかし、透明領域17はスリット形に代えて、放射のプラズモン増強透過をもたらす他の任意の適した形を有することができる。
【0154】
素子1、11では、所望であれば、対称構成を用いて通過帯域幅を低減する(すなわち、副ローブ又は側波帯の数を減らす)ことができる。この構成では、図22に示すように金属アイランド5、15が両側で同じ誘電媒質との界面を有するように、第1の基板3、13と同じ誘電媒質から構成される第2の基板が金属アイランド5、15上に取り付けられる。
【0155】
上述したように、金属アイランド5、15は、互いに接続されない離散金属アイランド(すなわち、金属アイランドは互いに直接接しない)又は光素子の外周領域で互いに接続する金属アイランドを含むことができる。たとえば、図23に示すように、金属アイランド5、15は離散金属アイランドである。これとは対照的に、図24に示すように、金属アイランド5、15は素子1、11の外周で互いに接続する。
【0156】
図14の3次元Ag金属アイランドアレイ中の透明領域を通る透過スペクトルを図15に示す。縦軸は透過率POUT/PINに対応する。図15に示す測定結果は、サイドピークがよく抑圧されることを裏付ける。主ピークもまたFWHM値が170nmから140nmに狭められる。3次元構造は2層のみに限定されず、3以上の任意の適した数の層、並びに各種の異なる層パターン及び層間隔を有することができる。
【0157】
所望であれば、本明細書において説明する光学素子は、入射放射を発するようになって
いる一体型の放射源、たとえばレーザ、LED、又はランプ等、及び/又は基板を透過する、又は複数の金属アイランド間を透過する放射を検出するようになっている一体型の放射検出器、たとえば電荷結合素子(CCD)アレイ又はCMOSアクティブピクセルアレイ等を備えることができる。別法として、放射源及び/又は放射検出器を素子と併用することができる。
【0158】
光学素子は任意の適した用途に使用することができる。したがって、素子は、狭通過帯域幅を有するナノ光ファイバとして、又は偏光子として使用することができる。素子はまた、入射放射の波長分離に使用することもできる。素子は他の用途、たとえば集光器、光ファイバのコリメータ又はカプラ、近視野走査型光学顕微鏡内の光選択素子、及びフォトリソグラフィマスク等として使用することもできる。
【0159】
具体例
以下の具体例に本発明の好ましい実施の形態を示すが、これを本発明の範囲に対する限定とみなすべきではない。
【0160】
例1、例2、及び例3の素子は、金属アイランドの厚さが例1では200nm、例2では120nm、及び例3では180nmであることを除き、同じプロセスで製造される。金属アイランドは角度付けた塗布により塗布されるため、透明領域の幅は、金属アイランドの厚さの低減に伴って増大した。したがって、例1での透明領域の最小幅は約50〜100nmであり(金属アイランドのわずかな非均一性による幅がばらつく)、例2での透明領域の最小幅は約30nmであり、例3での透明領域の最小幅は約50nmである。120nm厚及び200nm厚の金属アイランドを有する例1及び例2それぞれの素子の透過スペクトルを図20Aに示し、180nmアイランドを有する例3の素子の透過スペクトルを図20Cに示す。図16A、図16B、及び図16Cは、例1〜例3と同様の金属アイランドの厚さを有する金属アイランドアレイのSEM顕微鏡写真を示す。金属アイランドの厚さは、図16Aでは400nmであり、図16Bでは250nmであり、図16Cでは180nmである。例1、例2、及び例3の素子は図9D〜図9Iに示す方法により製造される。
【0161】
図17は、狭スリット形透明領域を有する例4の1次元(1D)銀金属アイランドアレイ素子の顕微鏡写真を示す。素子は200nm厚Agを1D回折格子エッチングされた石英基板上に塗布することによって形成される。回折格子パターンはホログラフィックプロセスで生成され、回折格子周期は750nmに設計される。スリット幅は最も狭い部分でおよそ150nmと測定される。これは、通常の入射波の場合に透明領域/金属アイランド表面面積比の約20%に相当する。
【0162】
図18は、Ag金属アイランドアレイでの透明領域を通る透過スペクトルを示す。縦軸は、偏光されていない光の場合、POUT/PINである透過率に対応する。TM偏光の場合、ピーク透過率は90%を超える。入射放射の入射角に対する透過スペクトルの依存性も図18に示される。入射角がばらつくと、透過ピークはシフトし分離する。主通過帯域ピークは半値全幅約170nmを示す。伝達行列及び準解析モデルに基づく透過スペクトルの数値解析を利用して、異なる透明領域設計及び均一性の向上により、また最適化された金属アイランドの厚さ及びスリット幅を用いて、はるかに狭い通過帯域幅約10nm〜約160nm及び長波長においてよく抑圧された透過が可能である。
【0163】
図25は例5〜例12の実験準備の上面図を示す。図25に示すように、金属アイランド又は複数の開口を含む金属膜を備える単一層又は二重層の波長分離素子301が、複数のピクセル306を含むラインカメラ302上に配置される。入射光315の一部は波長分離素子を透過することなくカメラ302のピクセル306により検出されるように、入
射光ビーム又は入力光ビーム315の面積は波長分離素子301の面積よりも大きい。
【0164】
図26は例5、例6、及び例7の透過スペクトルを示す。図26は、入射放射の透過率と放射の波長との関係のプロットである。例5では、白色光を、約2100オングストローム厚の銀アイランドを有する金属アイランドアレイに透過させた。アイランド間の開口は回折格子周期(d)約401nmを有する。本明細書では、回折格子周期を透明領域の周期aとも呼ぶ。図26の左側のピーク(a)で示すように、このアレイを通る透過放射はピーク波長約676.2nmを有する。例6では、白色光を約2100オングストローム厚の銀アイランドを有する金属アイランドアレイに透過させた。アイランド間の開口は回折格子周期(d)約478nmを有する。図26の中間のピーク(b)で示すように、このアレイを通る透過放射はピーク波長約789.6nmを有する。例7では、白色光を約2100オングストローム厚の銀アイランドを有する金属アイランドアレイに透過させた。アイランド間の開口は回折格子周期(d)約552nmを有する。図26の右側のピーク(c)で示すように、このアレイを通る透過放射はピーク波長約912.8nmを有する。したがって、図26に示すように、アレイの開口の回折格子周期に応じてピーク波長の異なる放射がアレイを透過した。
【0165】
図27は、従来技術による450nm、650nm、及び880nmのフィルタを通る白色光の透過スペクトルを示す。図28は例8の結果を示す。例8では、例5の波長分離素子を例7の波長分離素子の隣に配置した。換言すれば、回折格子周期(d)約401nmを有する金属アイランドアレイを、カメラ302上の第1の任意の位置に(すなわち、基準点から8000〜10,000ミクロンの位置に)配置し、回折格子周期(d)約552nmを有する金属アイランドアレイを、カメラ302上の第2の任意の位置に(すなわち、基準点から10,000〜12,000ミクロンの位置に)配置する。次いで、白色光を図27に示す従来技術による450mmフィルタに通し、次いで例5及び例7のアレイを通す。次いで、カメラ302により透過光を検出する。図28に示すように、約7,000ミクロン及び約13,000ミクロンでの大きなピークは、アレイを透過しなかった光に対応する。さらに、図28に示すように、例5及び例7のアレイは、450nmピーク波長光のフィルタリングに有効であった。例5及び例7のアレイのピーク透過はそれぞれ676.2nm及び912.8nmであるため、これは予期されることである。
【0166】
図29は例9の結果を示す。例9の条件は、白色光を従来技術による450nmフィルタではなく図27の従来技術による650nmフィルタに通したことを除き例8の条件と同一である。図29に示すように、アレイ例7のピーク透過は912.8nmであるため、このアレイは650nmピーク波長光のフィルタリングに有効であった。これとは対照的に、例5のアレイのピーク透過は676.2nmであるため、このアレイは650nm光の一部を透過した。
【0167】
図30は例10の結果を示す。例10の条件は、白色光を従来技術による450nmフィルタではなく図27の従来技術による880nmフィルタに通したことを除き例8の条件と同一である。図30に示すように、アレイ例5は、ピーク透過が676.2nmであるため、880nmピーク波長光のフィルタリングに有効であった。これとは対照的に、例7のアレイは、ピーク透過が912.8nmであるため、880nm光の一部を透過した。
【0168】
上述したように、波長分離素子101、301は、各セルで一定の回折格子周期(d)又は素子の長さに沿ってチャープ回折格子周期を有することができる。図31Aは、各セルが異なる回折格子周期d1、d2、d3、及びd4を含む波長分離素子の例を示す。図31Bはかかる素子の顕微鏡写真である。図32Aは、回折格子周期がチャープする波長分離素子の例を示す。図32Bは、回折格子周期と波長分離素子上の位置(x)との関係の例示的なプロットを示す。
【0169】
図33Aは、2層波長分離素子を有する例11を概略的に示す。素子は、一定回折格子周期93を有するアレイ上に重ねられる、チャープ回折格子周期91を有するアレイを含む。これに代えて、所望であればアレイ93をアレイ91上に積層してもよいことに留意されたい。任意の適した回折格子周期を選択することができる。好ましくは、アレイ91のチャープ回折格子周期は、波長分離素子の少なくとも1つの位置x1においてアレイ93の一定回折格子周期d1に重なる。これを、回折格子周期と素子上の位置xの関係のプロットである図33Bに示す。検出器ピクセル306の1つをカメラ302の位置x1に配置する。アレイ91及び93(図34Cに示す)の両方を通る白色光の総透過率Tは、第1のアレイ91(図34Bに示す)を通る透過率T1と第2のアレイ93(図34Aに示す)を通る透過率T2の積である。図34A〜図34Cから見て取ることができるように、両方のアレイを透過する放射(すなわち、T)は、アレイ91、93のそれぞれ1つのみを透過する放射(すなわち、T1又はT2)よりも狭いピーク幅を有する。したがって、2つのアレイを重ねることにより、透過する放射のピーク幅が低減するとともに、主ピークの強度に対してサイドバンド又はサイドピークの強度が低減する。
【0170】
図35Aは、チャープ回折格子周期を有する2つのアレイ91、93が互いに重なった例12を概略的に示す。検出器ピクセル306はカメラ302上の異なる位置に沿って配置される。したがって、各ピクセル306のウィンドウ(たとえば、7ミクロンウィンドウ)は、チャープ回折格子周期の異なる回折格子周期を有する波長分離素子の異なる部分を通過した異なるピーク波長の放射を取り込む。たとえば、図35Aは、アレイ91及び93が同じチャープ回折格子周期を有する場合を示す。アレイ91、93は、各アレイの透明領域が隣接するアレイの透明領域と位置合わせされるように重ねることができ、又は一方のアレイの透明領域が他方のアレイの透明領域から、ピクセル306の方向に沿った水平(すなわち、x)方向に所定量だけずれるように重ねることができる。図35Bはチャープアレイを各種配置した場合の透過スペクトルを示す。「オフセットなし」と記されたピークは、チャープアレイ91、93の透明領域間のずれがない、検出器上の所定位置(x=290ミクロン)においてアレイ91、93の両方を通る白色光の透過率に相当する。アレイの回折格子周期はこの位置(x=290ミクロン)において340nmである。「40ミクロンオフセット」と記されたピークは、チャープアレイ91、93の透明領域の間のオフセットが40ミクロンである、検出器上の所定位置(x=330ミクロン)においてアレイ91、93の両方を通る白色光の透過率に相当する。回折格子周期はこの位置において400nmである。これら2つのピークから見て取ることができるように、アレイ間にずれを導入することにより、ピーク幅は狭まるが、全体のピーク強度は下がる。
【0171】
図36Aは、素子の長さに沿ってチャープ回折格子周期を有する例13の単一層波長分離素子の透過スペクトルを示す(図32A参照)。素子は800ミクロン幅(長さ方向に沿って)であり、9個のセル又はフィルタを備える。各フィルタは98ミクロン幅であり、隣のセル同士間のステップで30nmの390nm〜630nmに線形チャープする、異なる(が一定の)回折格子周期を有する。各セルで測定された透過スペクトルは、およそ750nmからおよそ1100nmへの主通過帯域位置の漸進的線形シフトを示す。図36Aの凡例に列挙したピークは、図の右から左に示されている(すなわち、dg=630nm「黒」ピークは右端のピークであり、dg=390nm「紫」ピークは左端のピークである)。
【0172】
図36Bは、図36Aに示す2個の同じ素子を含む例14の2層積層波長分離素子の透過スペクトルを示す。積層構成の帯域通過特性の増強がはっきりと観察される。図36は
、図36Aと比較して、短波長領域での低強度サイドピークの抑圧、長波長領域での透過の低減、及び約150〜200nmから約100〜150nmまでの主通過帯域幅の狭まりを示す。金属厚ひいては金属スリット幅の最適制御により帯域通過特性のさらなる向上、特に長波長透過の抑圧が予期される。図36Aに示す例では、メサエッチング処理された石英基板はスリット幅120nmを有するように設計される。150nm厚Ag層を角度を付けて塗布した後、スリット幅は50〜80nmに低減する。金属厚の制御によりスリット幅を調整することができる。
【0173】
図36Cは、線形アレイCCD検出器(実験構成については図25参照)を使用して測定した、例15の2層積層素子を使用しての波長分離を示す。波長分離素子は、それぞれが14ミクロン幅を有する28個のセル(フィルタ)を含む390ミクロン幅アレイである。回折格子周期はアレイ方向に沿って10nmのステップで360nmから630nmにチャープする。980nm波長光が波長分離素子に入射する(2層積層)。光は、CCDアレイのおよそ10850ミクロンの位置でピクセルに記録される。700nm光が同じ素子に入射する場合、光はCCDアレイの10600ミクロンの位置で記録される。CCD上のこの空間分離は2つの入力光のスペクトル分離に合致する。換言すれば、波長の異なる光は、その特定の波長の光を透過するように設計された波長分離素子の部分下にある、CCDアレイの異なる部分によって検出される。
【0174】
本発明の各種実施の形態及び好ましい態様について別個に上述した。しかし、好ましい一つの実施の形態又は一態様からの各ステップ又は各特徴を別の実施の形態又は別の態様で任意の適した様式で使用することができる。
【0175】
本発明の上記説明は、例示及び説明を目的として提示された。網羅的、すなわち本発明を開示した厳密な形態に限定する意図はなく、変更及び変形が上記教示に鑑みて可能であり、又は本発明の実施から得ることができる。図面及び説明は、本発明の原理及びその実際の適用を説明するために選ばれたものである。本発明の範囲は本明細書に添付の特許請求の範囲及びその均等物によって規定されることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】本発明の好ましい実施の形態による素子の側面断面図である。
【図2A】本発明の好ましい実施の形態による素子の上面図である。
【図2B】本発明の好ましい実施の形態による素子の上面図である。
【図2C】本発明の好ましい実施の形態による素子の上面図である。
【図2D】本発明の好ましい実施の形態による素子の側面断面図である。
【図2E】本発明の好ましい実施の形態による素子の上面図である。
【図2F】3つの異なるピーク波長を有する光の透過量差分の時間領域有限差分(FDTD)シミュレーションを示す。
【図2G】3つの異なるピーク波長を有する光の透過量差分の時間領域有限差分(FDTD)シミュレーションを示す。
【図2H】3つの異なるピーク波長を有する光の透過量差分の時間領域有限差分(FDTD)シミュレーションを示す。
【図3】本発明の好ましい実施の形態による素子の側面断面図である。
【図4A】本発明の好ましい実施の形態のマルチスペクトル画像形成システムの斜視図である。
【図4B】本発明の好ましい実施の形態のマルチスペクトル画像形成システムの上面図である。
【図4C】本発明の好ましい実施の形態のマルチスペクトル画像形成システムの上面図である。
【図5A】本発明の好ましい実施の形態の光学検体検出システムの斜視図である。
【図5B】本発明の好ましい実施の形態の光学検体検出システムの斜視図である。
【図6】本発明の好ましい実施の形態の光学検体検出システムを使用する方法の概略図である。
【図7】本発明の好ましい実施の形態による素子の概略側面断面図である。
【図8】図7の素子の製造に使用される素子の概略側面断面図である。
【図9A】本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略側面断面図である。
【図9B】本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略側面断面図である。
【図9C】ホログラフィックリソグラフィシステムの概略上面図である。
【図9D】本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略3次元図である。
【図9E】本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略3次元図である。
【図9F】本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略3次元図である。
【図9G】本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略3次元図である。
【図9H】本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略3次元図である。
【図9I】本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略3次元図である。
【図10A】本発明の好ましい実施の形態によるナノ孔アレイを製造する方法の顕微鏡写真である。
【図10B】本発明の好ましい実施の形態によるナノ孔アレイを製造する方法の顕微鏡写真である。
【図10C】本発明の好ましい実施の形態によるナノ孔アレイを製造する方法の顕微鏡写真である。
【図10D】本発明の好ましい実施の形態による素子の概略側面断面図である。
【図10E】図10Dの素子を製造するために使用される電気めっき槽の概略側面断面図である。
【図11】図11A、図11B、図11C、及び図11Dは、本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略側面断面図である。
【図12A】本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略側面断面図である。
【図12B】本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略側面断面図である。
【図13A】本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略側面断面図である。
【図13B】本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略側面断面図である。
【図13C】本発明の好ましい実施の形態による素子を製造する方法の概略側面断面図である。
【図14】本発明の好ましい実施の形態による素子の3次元図である。
【図15】本発明の好ましい実施の形態の素子の透過スペクトルのプロットである。
【図16A】本発明の実施の形態による素子の顕微鏡写真である。
【図16B】本発明の実施の形態による素子の顕微鏡写真である。
【図16C】本発明の実施の形態による素子の顕微鏡写真である。
【図17】本発明の実施の形態による素子の顕微鏡写真である。
【図18】本発明の好ましい実施の形態の素子の透過スペクトルのプロットである。
【図19A】本発明の実施の形態による素子の概略上面図である。
【図19B】図19Aの線A−A’に沿った側面断面図である。
【図20A】本発明の例による素子の透過スペクトルのグラフである。
【図20B】本発明の例による素子の透過/反射スペクトルのグラフである。
【図20C】本発明の例による素子の透過スペクトルのグラフである。
【図21】本発明の好ましい実施の形態による素子の概略側面断面図である。
【図22】本発明の好ましい実施の形態による素子の概略側面断面図である。
【図23】本発明の好ましい実施の形態による素子の概略上面図である。
【図24】本発明の好ましい実施の形態による素子の概略上面図である。
【図25】例5〜例12の実験準備の概略上面図である。
【図26】例5、例6、及び例7の透過スペクトルのプロットである。
【図27】従来技術による3つのフィルタの透過スペクトルのプロットである。
【図28】例8の場合の透過量と検出器上の位置の関係のプロットである。
【図29】例9の場合の透過量と検出器上の位置の関係のプロットである。
【図30】例10の場合の透過量と検出器上の位置の関係のプロットである。
【図31A】本発明の実施の形態による波長分離素子の概略上面図である。
【図31B】図31Aの素子の顕微鏡写真である。
【図32A】本発明の実施の形態による波長分離素子の概略上面図である。
【図32B】回折格子周期と図32Aの素子の検出器上の位置との関係の概略プロットである。
【図33A】例11の素子の概略図である。
【図33B】図33Aの素子の回折格子周期と検出器上の位置との関係の概略プロットである。
【図34A】例11の素子の透過スペクトルのプロットである。
【図34B】例11の素子の透過スペクトルのプロットである。
【図34C】例11の素子の透過スペクトルのプロットである。
【図35A】例12の素子の回折格子周期と検出器上の位置との関係の概略プロットである。
【図35B】例12の素子の透過スペクトルのプロットである。
【図36A】例13及び14の素子の透過スペクトルのプロットである。
【図36B】例13及び14の素子の透過スペクトルのプロットである。
【図36C】例15の素子の透過力と検出器上の位置との関係のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出器と、
金属膜又は複数の金属アイランドを含む波長分離素子であって、前記金属膜又は前記複数の金属アイランドは、該膜又は該アイランド上に提供する入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する複数の開口の2次元アレイを有する、波長分離素子と、
を備えるマルチスペクトル画像形成システムであって、
前記金属膜又は前記金属アイランドは、前記入射放射が該金属膜又は該金属アイランド上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴するように構成され、
少なくとも第2のピーク波長及び該第2のピーク波長と異なる第3のピーク波長を有する放射の透過は、前記少なくとも1つのプラズモンモードとの前記共鳴により、前記金属膜又は前記複数の金属アイランドの前記複数の開口を通して増強される、マルチスペクトル画像形成システム。
【請求項2】
前記金属膜又は前記金属アイランドは、単一の膜又は層の金属アイランド、又は複数の積層金属膜又は層の金属アイランドのうちの1つを含み、
前記金属膜又は前記金属アイランドは2次元セルアレイを含み、
各セルは複数のサブセルを含み、
第1のセルの第1のサブセル中の第1の開口の第1の周期は、前記第1のセルの第2のサブセル中の第2の開口の第2の周期と異なり、
前記第1のサブセル中の前記第1の開口を通る、前記第2のピーク波長を有する前記放射の透過は、前記第1の周期により増強され、
前記第2のサブセル中の前記第2の開口を通る、前記第3のピーク波長を有する前記放射の透過は、前記第2の周期により増強される、請求項1に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項3】
前記金属膜又は前記金属アイランドは少なくとも10個のセルを含み、
前記セルのそれぞれの各サブセル中の開口の周期は、前記セルのそれぞれの少なくともいくつかの他のサブセル中の開口の周期と異なり、
各サブセル中の開口を通る、異なるピーク波長を有する前記放射の透過は、前記各サブセル中の前記開口の前記周期により増強される、請求項2に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項4】
各サブセル中の前記開口は同じ方向を向いたスリット形開口を含む、請求項3に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項5】
各セルは少なくとも3対のサブセルを含み、
各サブセル対の各サブセル中の開口の周期は同じであり、
所与のセルの各サブセル対中の開口の周期は、同じセルの他のサブセル対中の開口の周期と異なり、
各サブセル対の各サブセル中の前記開口は互いに直交する向きを有する、請求項4に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項6】
各サブセルは、前記光検出器に異なる色の可視光を透過させるようになっている、請求項5に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項7】
各サブセルは、前記光検出器に異なる狭帯域のUV又はIR放射を透過するようになっている、請求項5に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項8】
前記波長分離素子は、放射透明基板上に配置される複数の自己集合金属アイランドを備える、請求項1に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項9】
前記基板は複数のリッジを備え、前記金属アイランドは前記複数のリッジ上に非対称に形成される、請求項8に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項10】
前記光検出器は、回折光学系を利用することなく前記金属膜又は前記金属アイランドに光学的に結合するCCDアレイ、CMOSアクティブピクセルアレイ、又は焦点面アレイを含む、請求項1に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項11】
前記光検出器は前記波長分離素子に光学的に結合され、前記波長分離素子を透過した放射を検出するようになっている、前記透過した放射は、前記波長分離素子の前記金属膜又は前記金属アイランド上のプラズモンモードとの共鳴により増強する複数の異なるピーク波長を有する、請求項1に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項12】
前記光検出器の各ピクセルは前記波長分離素子のセルに対応する、請求項11に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項13】
前記光検出器の各セルにより検出される放射の強度を求めるようになっているプロセッサをさらに備える、請求項12に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項14】
デジタルカラーカメラを備える、請求項1に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項15】
光検出器と、
波長分離素子であって、
提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する複数の開口を有する金属膜又は複数の金属アイランド
を備え、
前記金属膜又は前記金属アイランドは、前記入射放射が該金属膜又は該金属アイランド上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴するように構成され、少なくとも第2のピーク波長及び該第2のピーク波長と異なる第3のピーク波長を有する放射の透過は、前記少なくとも1つのプラズモンモードとの前記共鳴により、前記金属膜又は前記複数の金属アイランドの前記複数の開口を通して増強される、波長分離素子と、
検体に放射を発せさせるようになっている励起源と、
検体が発し、前記画像形成システムにより検出される放射から、前記検体についての情報を求めるようになっているプロセッサと、
を備える、光学検体検出システム。
【請求項16】
前記励起源は光学励起源を含む、請求項17に記載の光学検体検出システム。
【請求項17】
前記光学励起源と前記波長分離素子の間に偏光フィルタをさらに備える、請求項16に記載の光学検体検出システム。
【請求項18】
前記波長分離素子は、提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する複数の開口の2次元アレイを有する金属膜又は複数の金属アイランドを備える、請求項15に記載の光学検体検出システム。
【請求項19】
第1の手段であって、入射放射を、該第1の手段上のプラズモンモードとの共鳴により増強される複数のピーク波長を有する透過放射に分離する第1の手段と、
前記透過放射を検出する第2の手段と、
前記入射放射のカラー画像を形成する第3の手段と、
を備える、マルチスペクトル画像形成システム。
【請求項20】
前記透過放射は色で分けられた可視光を含み、
前記第3の手段は、前記カラー画像をコンピュータ可読媒体中、ディスプレイ上、又は視覚的に観察可能な有形媒体上に形成する手段を備える、請求項19に記載のマルチスペクトル画像形成システム。
【請求項21】
検体に第1の放射を発せさせる第1の手段と、
第2の手段であって、第1の放射を、該第2の手段上のプラズモンモードとの共鳴により増強される複数の異なるピーク波長を有する透過放射に分離する第2の手段と、
前記透過放射を検出する第3の手段と、
前記検出された透過放射から、前記検体についての情報を求める第4の手段と、
を備える、光学検体検出システム。
【請求項22】
検体ホルダをさらに備える、請求項21に記載の光学検体検出システム。
【請求項23】
前記第4の手段は、前記第1の放射を発する前記検体の前記検体ホルダ上の位置に基づいて、前記検体ホルダ上に配置される前記検体についての医学的又は生物学的な情報を求める手段である、請求項22に記載の光学検体検出システム。
【請求項24】
基板中又は基板上に固体状態光検出器アレイを設けること、
前記光検出器アレイ上に金属膜をモノリシックに塗布すること、
前記金属膜をフォトリソグラフィによりパターニングすることであって、それにより、複数の開口を通る透過放射が前記金属膜上のプラズモンモードとの共鳴により増強される複数の異なるピーク波長を有するように、前記金属膜上に提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する前記複数の開口の2次元アレイを形成する、パターニングすること、
とを含む、マルチスペクトル画像形成システムを製造する方法。
【請求項25】
基板中又は基板上に固体状態光検出器アレイを設けること、
前記光検出器アレイ上に複数の金属アイランドをモノリシックに塗布すること、
とを含む、マルチスペクトル画像形成システムを製造する方法であって、
前記複数の金属アイランドは、複数の開口を通る透過放射が、前記金属膜上のプラズモンモードとの共鳴により増強される複数の異なるピーク波長を有するように、前記金属アイランド上に提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する前記開口の2次元アレイにより隔てられる、マルチスペクトル画像形成システムを製造する方法。
【請求項26】
或る範囲の波長を有する入射放射が金属膜又は複数の金属アイランド上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴するように、入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する複数の開口の2次元アレイを有する前記金属膜又は前記金属アイランド上に前記入射放射を提供すること、
透過放射が、異なるピーク波長を有する複数の通過帯域に同時に分離されるように、前記複数の開口に前記透過放射を提供すること、
前記透過放射を検出すること、
前記検出された透過放射に基づいてカラー画像を形成すること、
とを含む、カラー画像を形成する方法。
【請求項27】
検体に第1の放射を発せさせること、
前記第1の放射を、波長分離素子上のプラズモンモードとの共鳴により増強される複数の異なる波長を有する透過放射に分離すること、
前記透過放射を検出すること、
前記検出された透過放射から前記検体についての情報を求めること、
とを含む、検体についての情報を求める方法。
【請求項28】
前記検体は蛍光体に取り付けられた生体材料を含み、
前記第1の放射は前記蛍光体が発する放射を含む、請求項27に記載の検体についての情報を求める方法。
【請求項29】
前記情報を求めるステップは、前記第1の放射を発する前記検体の位置に基づいて、前記検体についての医学的又は生物学的情報を求めることを含む、請求項28に記載の検体についての情報を求める方法。
【請求項30】
金属膜を設けること、
該金属膜をフォトリソグラフィによりパターニングすることであって、それにより前記金属膜に、提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有し、放射の透過が前記金属膜上の少なくとも1つのプラズモンモードとの共鳴により増強されるような複数の開口を形成する、パターニングすること、
とを含む、ナノ構造素子を製造する方法。
【請求項31】
前記金属膜をフォトリソグラフィによりパターニングするステップは、
前記金属膜上にフォトレジストを形成すること、
前記フォトレジストをホログラフィ露光すること、
前記フォトレジストをパターニングすること、
前記パターニングされたフォトレジストを使用して前記金属膜をパターニングすることであって、それにより前記金属膜中に複数のサブ波長スリット形開口を形成する、パターニングすること、
とを含む、請求項30に記載のナノ構造素子を製造する方法。
【請求項32】
提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する複数の開口を有する金属膜又は複数の金属アイランドを備える波長分離素子であって、
前記金属膜又は前記金属アイランドは、前記入射放射が該金属膜又は該金属アイランド上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴するように構成され、
少なくとも第2のピーク波長及び該第2のピーク波長と異なる第3のピーク波長を有する放射の透過は、前記少なくとも1つのプラズモンモードとの共鳴により、前記金属膜又は前記複数の金属アイランドの前記複数の開口を通して増強される、波長分離素子。
【請求項33】
前記金属膜又は前記金属アイランドは少なくとも2個のセルを含み、
第1のセル中の第1の開口の第1の周期は、第2のセル中の第2の開口の第2の周期と異なり、
前記第1のセル中の前記第1の開口を通る前記第2のピーク波長を有する前記放射の透過は、前記第1の周期により増強され、
前記第2のセル中の前記第2の開口を通る前記第3のピーク波長を有する前記放射の透過は、前記第2の周期により増強される、請求項32に記載の波長分離素子。
【請求項34】
前記金属膜又は前記金属アイランドは少なくとも10個のセルを含み、
前記各セル中の開口の周期はその他の各セル中の開口の周期と異なり、
各セル中の開口を通る異なるピーク波長を有する前記放射の透過は、前記各セル中の前
記開口の前記周期により増強される、請求項33に記載の波長分離素子。
【請求項35】
前記金属膜又は前記金属アイランドは少なくとも30個のセルを含み、
前記各セル中の開口の周期はその他の各セル中の開口の周期と異なり、
各セル中の開口を通るピーク波長を有する前記放射の透過は、前記各セル中の前記開口の前記周期により増強され、
各セルを通して透過される放射は、その他のセルを通して透過される放射のピーク波長から少なくとも10nmだけ異なるピーク波長を有する、請求項34に記載の波長分離素子。
【請求項36】
前記金属膜又は前記金属アイランドにわたる開口の前記周期はチャープする、請求項33に記載の波長分離素子。
【請求項37】
各セル中の開口の周期は約250nm〜約700nmの範囲を有し、各開口の幅は約20nm〜約80nmの範囲を有する、請求項35に記載の波長分離素子。
【請求項38】
前記金属膜又は前記金属アイランドは少なくとも2個のセルを含み、
各セルは複数の開口のうちの少なくとも1つを含み、
第1のセル中の前記金属膜又は前記金属アイランドの少なくとも1つの表面は、前記第2のピーク波長を有する前記放射の前記透過が増強されるような構成の、前記第1のセル中の開口に隣接して設けられる第1の周期的又は準周期的な表面形状を含み、
第2のセル中の前記金属膜又は前記金属アイランドの少なくとも1つの表面は、前記第3のピーク波長を有する前記放射の前記透過が増強されるような構成の、前記第2のセル中の開口に隣接して設けられる、前記第1の周期的な表面形状と異なる第2の周期的又は準周期的な表面形状を含む、請求項32に記載の波長分離素子。
【請求項39】
前記金属膜又は前記金属アイランドは少なくとも10個のセルを含み、
前記セルのそれぞれの中の周期的又は準周期的な表面形状の構成は、その他の各セル中の周期的又は準周期的な表面形状の構成と異なり、
各セル中の開口を通る異なるピーク波長を有する前記放射の透過は、前記各セル中の前記周期的又は準周期的な表面形状の前記構成により増強される、請求項38に記載の波長分離素子。
【請求項40】
前記金属膜又は前記金属アイランドは少なくとも30個のセルを含み、
前記セルのそれぞれの中の周期的又は準周期的な表面形状の構成は、その他の各セル中の周期的又は準周期的な表面形状の構成と異なり、
各セル中の開口を通る、異なるピーク波長を有する前記放射の透過は、前記各セル中の前記周期的又は準周期的な表面形状の表面形体(features)の周期により増強され、
各セルを通して透過される放射は、その他のセルを通して透過される放射のピーク波長から少なくとも1nmだけ異なるピーク波長を有する、請求項39に記載の波長分離素子。
【請求項41】
前記開口は前記金属膜に配置されるスリットを備え、該スリットは前記幅よりも少なくとも10倍長い長さを有する、請求項32に記載の波長分離素子。
【請求項42】
前記開口は前記金属膜中の円形開口、楕円形開口、又は多角形開口を含む、請求項32に記載の波長分離素子。
【請求項43】
放射透明基板上に配置される複数の自己集合金属アイランドを備える、請求項32に記載の波長分離素子。
【請求項44】
前記基板は複数のリッジを備え、前記金属アイランドは前記複数のリッジ上に非対称に形成される、請求項43に記載の波長分離素子。
【請求項45】
前記金属膜又は前記金属アイランドはナノ孔アレイ基板のナノ孔内に配置され、前記開口は前記ナノ孔アレイのリッジの上に配置される、請求項32に記載の波長分離素子。
【請求項46】
N個のセルを有するNチャネルモノクロメータを備え、Nは10〜10,000の整数であり、
各セルサイズは約50〜約500ミクロンであり、
各セルは、前記金属膜又は前記金属アイランドに少なくとも1つの開口を含み、
各セルは、その他のセルを通して透過される放射のピーク波長と異なるピーク波長を有する放射の透過を増強するようになっている、請求項36に記載の波長分離素子。
【請求項47】
前記モノクロメータの長さ、幅、及び厚さはそれぞれ1cm未満である、請求項46に記載の波長分離素子。
【請求項48】
請求項32に記載の波長分離素子と、
光検出器と、
を備える、スペクトル解析器。
【請求項49】
前記光検出器は、回折光学系を利用することなく前記金属膜又は前記金属アイランドに光学的に結合するCCDアレイ、CMOSアクティブピクセルアレイ、又は焦点面アレイを含む、請求項48に記載のスペクトル解析器。
【請求項50】
提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する複数の開口を有する金属膜又は金属アイランドを備える波長分離素子と、
該波長分離素子に光学的に結合され、該波長分離素子を通して透過される放射を検出するようになっている光検出器であって、前記透過放射は、前記波長分離素子の前記金属膜又は前記金属アイランド上のプラズモンモードとの共鳴により増強される或る範囲のピーク波長を有する、光検出器と、
を備える、スペクトル解析素子。
【請求項51】
前記波長分離素子は少なくとも30個のセルを含み、
前記各セル中の開口の周期は、その他の各セル中の開口の周期と異なり、
各セル中の開口を通るピーク波長を有する前記放射の透過は、前記各セル中の前記開口の前記周期により増強され、
各セルを通って透過する放射は、その他のセルを通って透過する放射のピーク波長から少なくとも1nmだけ異なるピーク波長を有し、
前記光検出器は固体状態光検出器セルアレイを含み、
各光検出器セルは、前記波長分離素子の各セルのそれぞれから所定のピーク波長を有する放射を検出するように構成される、請求項50に記載のスペクトル解析素子。
【請求項52】
前記光検出器はCCDアレイを含む、請求項51に記載のスペクトル解析素子。
【請求項53】
前記光検出器はCMOSアクティブピクセルアレイを含む、請求項51に記載のスペクトル解析素子。
【請求項54】
前記波長分離素子は少なくとも30個のセルを含み、
前記各セル中の周期的又は準周期的な表面形状の構成は、その他の各セル中の周期的又
は準周期的な表面形状の構成と異なり、
各セル中の開口を通る異なるピーク波長を有する前記放射の透過は、前記各セル中の前記周期的又は準周期的な表面形状の表面形体の周期により増強され、
各セルを通して透過される放射は、その他のセルを通して透過される放射のピーク波長から少なくとも1nmだけ異なるピーク波長を有し、
前記光検出器は固体状態光検出器セルアレイを含み、
各光検出器セルは、前記波長分離素子の各セルのそれぞれから所定のピーク波長を有する放射を検出するように構成される、請求項50に記載のスペクトル解析素子。
【請求項55】
前記解析器は、前記波長分離素子と前記光検出器の間に回折光学系を含まない、請求項50に記載のスペクトル解析素子。
【請求項56】
前記金属膜又は前記金属アイランドにわたる開口の周期はチャープする、請求項50に記載のスペクトル解析素子。
【請求項57】
前記光検出器の各セルにより検出される放射の強度を求めるようになっているプロセッサをさらに備える、請求項50に記載のスペクトル解析素子。
【請求項58】
前記スペクトル解析器の放射透過方向での厚さは1cm未満であり、前記スペクトル解析器の前記放射透過方向に直交する長さは1cm未満である、請求項50に記載のスペクトル解析素子。
【請求項59】
第1の手段であって、入射放射を、該第1の手段上のプラズモンモードとの共鳴により増強される或る範囲のピーク波長を有する透過放射に分離する第1の手段と、
前記透過放射を検出する第2の手段と、
を備える、スペクトル解析素子。
【請求項60】
支持体と、
第1の手段であって、入射放射が該第1の手段上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴するように該入射放射を受け、透過放射が前記少なくとも1つのプラズモンモードとの前記共鳴により増強されるように、少なくとも第2のピーク波長及び該第2のピーク波長と異なる第3のピーク波長を有する放射を透過する第1の手段と、
を備える、波長分離素子。
【請求項61】
基板中又は基板上に固体状態光検出器アレイを設けること、
前記光検出器アレイ上に金属膜をモノリシックに塗布すること、
前記金属膜をフォトリソグラフィによりパターニングして、複数の開口を通る透過放射が前記金属膜上のプラズモンモードとの共鳴により増強される或る範囲のピーク波長を有するように、前記金属膜上に提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する前記複数の開口を形成すること、
とを含む、スペクトル解析素子を製造する方法。
【請求項62】
前記金属膜は少なくとも30個のセルを含み、
前記各セル中の開口の周期は、その他の各セル中の開口の周期と異なり、
各セル中の開口を通るピーク波長を有する前記放射の透過は、前記各セル中の前記開口の前記周期により増強され、
各セルを通して透過される放射は、その他のセルを通して透過される放射のピーク波長から少なくとも1nmだけ異なるピーク波長を有し、
前記光検出器アレイは固体状態光検出器セルアレイを含み、
各光検出器セルは、前記金属膜の各セルのそれぞれから所定のピーク波長を有する放射
を検出するように構成される、請求項61に記載のスペクトル解析素子を製造する方法。
【請求項63】
固定状態光検出器アレイを設けることは、前記基板中又は前記基板上にCCDアレイをフォトリソグラフィにより形成することを含む、請求項62に記載のスペクトル解析素子を製造する方法。
【請求項64】
固定状態光検出器アレイを設けることは、CMOSアクティブピクセルアレイをフォトリソグラフィにより形成することを含む、請求項62に記載のスペクトル解析素子を製造する方法。
【請求項65】
前記金属膜上に周期的又は準周期的な表面形状の構成をフォトリソグラフィにより形成することをさらに含む、請求項61に記載のスペクトル解析素子を製造する方法。
【請求項66】
前記金属膜は少なくとも30個のセルを含み、
前記各セルの周期的又は準周期的な表面形状の構成は、その他の各セルの周期的又は準周期的な表面形状の構成と異なり、
各セル中の開口を通る、異なるピーク波長を有する前記放射の透過は、前記各セル中の前記周期的又は準周期的な表面形状の表面形体の周期により増強され、
各セルを通して透過される放射は、その他のセルを通して透過される放射のピーク波長から少なくとも1nmだけ異なるピーク波長を有し、
前記光検出器は固体状態光検出器セルアレイを含み、
各光検出器セルは、前記波長分離素子の各セルのそれぞれから所定のピーク波長を有する放射を検出するように構成される、請求項61に記載のスペクトル解析素子を製造する方法。
【請求項67】
基板中又は基板上に固体状態光検出器アレイを設けること、
前記光検出器アレイ上に複数の金属アイランドをモノリシックに塗布すること、
とを含む、スペクトル解析素子を製造する方法であって、
前記複数の金属アイランドは、複数の開口を通る透過放射が前記金属膜上のプラズモンモードとの共鳴により増強される或る範囲のピーク波長を有するように、前記金属アイランド上に提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する前記開口により隔てられる、スペクトル解析素子を製造する方法。
【請求項68】
前記金属アイランドは少なくとも30個のセルを含み、
前記各セル中の開口の周期は、その他の各セル中の開口の周期と異なり、
各セル中の開口を通るピーク波長を有する前記放射の透過は、前記各セル中の前記開口の前記周期により増強され、
各セルを通して透過される放射は、その他のセルを通して透過される放射のピーク波長から少なくとも1nmだけ異なるピーク波長を有し、
前記光検出器アレイは固体状態光検出器セルアレイを含み、
各光検出器セルは、前記金属膜の各セルのそれぞれから所定のピーク波長を有する放射を検出するように構成される、請求項67に記載のスペクトル解析素子を製造する方法。
【請求項69】
固定状態光検出器アレイを設けることは、前記基板中又は前記基板上にCCDアレイをフォトリソグラフィにより形成することを含む、請求項68に記載のスペクトル解析素子を製造する方法。
【請求項70】
固定状態光検出器アレイを設けることは、CMOSアクティブピクセルアレイをフォトリソグラフィにより形成することを含む、請求項68に記載のスペクトル解析素子を製造する方法。
【請求項71】
前記金属アイランド上に周期的又は準周期的な表面形状の構成をフォトリソグラフィにより形成することをさらに含み、
前記金属アイランドは少なくとも30個のセルを含み、
前記各セルの周期的又は準周期的な表面形状の構成は、その他の各セルの周期的又は準周期的な表面形状の構成と異なり、
各セル中の開口を通る、異なるピーク波長を有する前記放射の透過は、前記各セル中の前記周期的又は準周期的な表面形状の表面形体の周期により増強され、
各セルを通して透過される放射は、その他のセルを通して透過される放射のピーク波長から少なくとも1nmだけ異なるピーク波長を有し、
前記光検出器は固体状態光検出器セルアレイを含み、
各光検出器セルは、前記波長分離素子の各セルのそれぞれから所定のピーク波長を有する放射を検出するように構成される、請求項67に記載のスペクトル解析素子を製造する方法。
【請求項72】
或る範囲の波長を有する入射放射が金属膜又は複数の金属アイランド上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴するように、入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する複数の開口を有する前記金属膜又は前記金属アイランド上に前記入射放射を提供すること、
透過放射が、異なるピーク波長を有する複数の通過帯域に同時に分離されるように、前記複数の開口に前記透過放射を提供すること、
とを含む、波長分離方法。
【請求項73】
透過放射の各通過帯域を別個に検出することをさらに含む、請求項72に記載の波長分離方法。
【請求項74】
放射透明基板と、
前記基板上の複数の金属アイランドと、
を備える表面プラズモン共鳴光学素子であって、
隣同士の金属アイランドは、該素子上に提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の距離だけ隔てられ、
前記金属アイランドは、前記入射放射が前記金属アイランド上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴し、それにより前記複数の金属アイランド間で少なくとも1つの第2のピーク波長を有する放射の透過を増強するように構成される、表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項75】
前記第1の波長及び前記第2の波長は700nm以下であり、前記隣同士のアイランドは100nm未満で隔てられる、請求項74に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項76】
前記複数の金属アイランド間の透明領域アレイは、前記複数の金属アイランド間の前記放射の前記透過が前記透明領域アレイの周期により増強されるような周期aを有する、請求項74に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項77】
前記透明領域は幅の少なくとも10倍長い長さを有するスリットを含む、請求項76に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項78】
前記複数の金属アイランドは、前記複数の金属アイランド間の前記放射の前記透過が増強されるような、前記金属アイランドの少なくとも1つの表面上に設けられた周期的な表面形状を有する、請求項74に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項79】
前記金属アイランド間の透明領域は、幅の少なくとも10倍長い長さを有するスリットを含む、請求項78に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項80】
前記周期aは、可視光入射放射の場合、約200nm〜約700nmである、請求項76に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項81】
前記複数の金属アイランドは前記透明基盤上の複数のリッジ上に配置される、請求項74に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項82】
前記複数の金属アイランドのそれぞれ1つは、前記複数のリッジの対応する1つの上に配置される、請求項81に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項83】
各金属アイランドのそれぞれは、各リッジの上面上、及び各リッジのそれぞれの少なくとも1つの側面の少なくとも一部上に延在する、請求項82に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項84】
各金属アイランドの長さは幅の少なくとも10倍長く、
各リッジの長さは幅の少なくとも10倍長く、
各金属アイランドは、各リッジの第2の側面上よりも前記各リッジの第1の側面上でより低く延在する、請求項83に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項85】
前記複数のリッジは複数の矩形リッジを含み、
前記基板は放射透明材料の1つ又は複数の層を含む、請求項84に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項86】
前記基板はナノ孔アレイを含む、請求項74に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項87】
前記基板は、放射透明基板材料上に配置される陽極酸化アルミニウムナノ孔アレイを含む、請求項86に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項88】
前記複数の金属アイランドは、互いに接続されない複数の離散金属アイランドを含む、請求項74に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項89】
前記少なくとも1つの所定の第1の波長を有する前記入射放射を発するようになっている放射源と、
前記基板及び前記複数の金属アイランド間を透過する前記放射を検出するようになっている放射検出器と、
をさらに備える、請求項74に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項90】
放射透明基板を設けること、
該透明基板上に複数の金属アイランドを形成すること、
とを含む、表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法であって、
隣同士の金属アイランドは該素子上に提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の距離だけ隔てられ、
前記金属アイランドは、前記入射放射が前記金属アイランド上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴し、それにより前記複数の金属アイランド間で少なくとも1つの第2のピーク波長を有する放射の透過を増強するように構成される、表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項91】
前記基板は第1の表面上に複数のリッジを含み、
前記複数の金属アイランドを形成するステップは、金属が前記リッジ間に塗布されないように、前記複数のリッジ上に前記金属アイランドを選択的に塗布することを含む、請求項90に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項92】
前記選択的に塗布するステップは、金属を前記リッジ上に、該リッジの上面に対して非直交方向に向けることにより前記金属アイランドを角度付きで塗布することを含む、請求項91に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項93】
前記リッジは平坦な上面を含み、前記金属は前記平坦な上面に対して20〜70度の角度に向けられる、請求項92に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項94】
前記選択的に塗布するステップは、前記基板がターゲットに対して20〜70度だけ傾けられるように前記ターゲットから前記基板上に金属を提供することを含む、請求項19に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項95】
リソグラフィを利用して前記複数のリッジを形成することをさらに含む、請求項91に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項96】
前記複数のリッジを形成するステップは、
前記基板の前記第1の表面上にフォトレジスト層を形成すること、
前記フォトレジスト層を選択的に露光すること、
前記露光されたフォトレジスト層をパターニングすること、
前記パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして使用して、前記基板の前記第1の表面をエッチングして、前記リッジを形成すること、
とを含む、請求項95に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項97】
前記フォトレジスト層を選択的に露光するステップは、前記フォトレジスト層をホログラフィックに露光することを含み、
前記選択的に塗布することは、金属を前記リッジ上に、該リッジの上面に対して非直交方向に向けることにより前記金属アイランドを角度付きで塗布することを含む、請求項96に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項98】
前記複数の金属アイランドを形成するステップは、
透明基板の回折格子パターンが第1の金属層の上面に移るように該回折格子パターンの該基板上に該第1の金属層を形成すること、
ナノ孔が前記第1の金属層の前記上面の前記回折格子パターンのトラフに選択的に形成されるように前記第1の金属層を陽極酸化すること、
前記ナノ孔に前記金属アイランドを選択的に成長させること、
とを含む、請求項95に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項99】
前記複数の金属アイランドを形成するステップは、
材料の回折格子パターンが第1の金属層の上面に移るように該回折格子パターンの該材料上に該第1の金属層を形成すること、
ナノ孔が前記第1の金属層の前記上面の前記回折格子パターンのトラフに選択的に形成されるように前記第1の金属層を陽極酸化すること、
テンプレート材料のリッジが前記ナノ孔中に延在するように、前記陽極酸化された第1の金属層上に前記テンプレート材料を塗布すること、
前記陽極酸化された第1の金属層から前記テンプレート材料を分離すること、
前記テンプレート材料上に前記金属アイランドを選択的に形成すること、
とを含む、請求項95に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項100】
前記複数の金属アイランドを形成するステップは、
前記基板上に金属層を形成すること、
前記金属層をパターニングして前記複数の金属アイランドにすること、
とを含む、請求項90に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項101】
前記パターニングするステップは、
前記金属層の第1の面にフォトレジスト層を形成すること、
前記フォトレジスト層を選択的に露光すること、
前記露光されたフォトレジスト層をパターニングすること、
前記パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして使用して、前記金属層をエッチングして前記複数のアイランドにすること、
とを含む、請求項100に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項102】
前記フォトレジスト層を選択的に露光するステップは、前記フォトレジスト層をホログラフィックに露光することを含む、請求項101に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項103】
前記複数の金属アイランドを形成するステップは、
前記基板の前記第1の表面上にフォトレジスト層を形成すること、
前記フォトレジスト層を選択的に露光すること、
前記露光されたフォトレジスト層をパターニングすることであって、それにより前記基板の前記第1の表面の部分を露出する、パターニングすること、
前記パターニングされたフォトレジスト層上及び前記基板の前記第1の表面の露出部分上に金属層を形成すること、
前記パターニングされたフォトレジスト層及び該パターニングされたフォトレジスト層上にある前記金属層の部分を剥離することであって、それにより前記基板の前記第1の表面上に複数の金属アイランドを残す、剥離すること、
とを含む、請求項90に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項104】
前記フォトレジスト層を選択的に露光するステップは、前記フォトレジスト層をホログラフィックに露光することを含む、請求項103に記載の表面プラズモン共鳴光学素子を製造する方法。
【請求項105】
放射透明基板及び該基板の少なくとも1つの表面上に配置される複数の金属アイランドを備える波長分離素子を設けること、
前記波長分離素子上に入射放射を提供すること、
前記波長分離素子を通して少なくとも1つの第1のピーク波長を有する放射を透過させること、
とを含む放射透過であって、
前記入射放射は前記金属アイランド上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴して、前記波長分離素子を通して透過された前記放射を増強する、放射透過方法。
【請求項106】
前記入射放射及び前記透過放射は可視光を含む、請求項105に記載の放射透過方法。
【請求項107】
隣同士の金属アイランドは100nm未満だけ隔てられ、前記可視光は前記金属アイランド間で透過される、請求項106に記載の放射透過方法。
【請求項108】
前記少なくとも1つのプラズモンモードは、金属アイランド/隣接誘電体界面を含む平面に沿って表面プラズモン共鳴を含み、表面プラズモン共鳴は前記金属アイランドの側壁
に沿って局在する、請求項107に記載の放射透過方法。
【請求項109】
前記金属アイランド間の透明領域は、幅よりも少なくとも10倍長い長さを有するスリットを備え、
前記スリット幅は、表面プラズモン励起が共鳴ポイントからずれ、それによって前記金属表面に沿った正味電力流が前記透明領域中にじょうごに注ぎ込まれるようにして入り、次いで伝搬透過ビームを形成する放射モードに分かれるように選択される、請求項108に記載の放射透過方法。
【請求項110】
前記スリット幅は、前記金属アイランドへの前記入射放射の侵入深さ約1〜約3つ分である、請求項109に記載の放射透過方法。
【請求項111】
高波長での透過放射の強度と主通過帯域放射のピーク透過の強度の比は0.4以下である、請求項109に記載の放射透過方法。
【請求項112】
前記複数の金属アイランド間の透明領域アレイは、前記複数の金属アイランド間の前記放射の前記透過が前記透明領域アレイの周期により増強されるような周期aを有する、請求項105に記載の放射透過方法。
【請求項113】
前記透明領域は、幅の少なくとも10倍長い長さを有するスリットを含む、請求項112に記載の放射透過方法。
【請求項114】
前記複数の金属アイランドは、前記複数の金属アイランド間の前記放射の前記透過が増強されるような、前記金属アイランドの少なくとも1つの表面上に設けられた前記周期的な表面形状を有する、請求項105に記載の放射透過方法。
【請求項115】
前記周期aは、約200nm〜約700nmである、請求項113に記載の放射透過方法。
【請求項116】
前記複数の金属アイランドは、前記透明基板上の複数のリッジ上に配置され、
前記複数の金属アイランドのそれぞれ1つは、前記複数のリッジの対応する1つの上に配置される、請求項105に記載の放射透過方法。
【請求項117】
前記複数の金属アイランドは、互いに接続されない複数の離散金属アイランドを含む、請求項105に記載の放射透過方法。
【請求項118】
前記透過放射を検出することをさらに含む、請求項105に記載の放射透過方法。
【請求項119】
放射透明基板と、
第1の手段であって、入射放射が該第1の手段上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴して、該第1の手段を通して透過される少なくとも1つの第1のピーク波長を有する放射を増強するように該入射放射を受け、前記少なくとも1つの第1のピーク波長を有する前記放射を透過する第1の手段と、
を備える、表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項120】
放射透明基板と、
該基板上の複数の金属アイランドと、
該金属アイランドを隔てる複数のスリット形透明領域と、
を備える表面プラズモン共鳴光学素子であって、
入射放射が前記金属アイランドに提供されるとき、前記透明領域の最も狭いポイントで
の幅は、前記金属アイランドの表面プラズモン場の侵入深さの約1〜約3つ分の範囲を有する、表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項121】
前記アイランドは100nm未満だけ隔てられる、請求項120に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項122】
前記アイランドは約40nm〜約60nmだけ隔てられる、請求項121に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項123】
間に少なくとも1つの透明領域を有し、上に非金属形状を有する複数の金属アイランドを備える表面プラズモン共鳴光学素子であって、該金属アイランドは、入射放射が前記金属アイランド上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴し、それにより前記複数の金属アイランド間で少なくとも1つのピーク波長を有する放射の透過を増強するように構成される、表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項124】
前記非金属形状は、前記金属アイランド上に周期的又は準周期的に配置された誘電体形体を含む、請求項123に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項125】
前記非金属形状は、可変屈折率を有する、前記金属アイランド上の少なくとも1つの誘電層を含む、請求項123に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項126】
少なくとも1つのアパーチャ及び上に非金属形状を有する金属膜を備える金属プラズモン共鳴光学素子であって、該金属膜は、入射放射が該金属膜上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴し、それにより前記少なくとも1つのアパーチャを通る少なくとも1つのピーク波長を有する放射の透過を増強するように構成される、金属プラズモン共鳴光学素子。
【請求項127】
前記非金属形状は、前記金属膜上に周期的又は準周期的に配置される誘電体形体を含む、請求項126に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項128】
前記非金属形状は、可変屈折率を有する、前記金属膜上の少なくとも1つの誘電層を含む、請求項126に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項129】
2つ以上の積層金属膜又は2つ以上の金属アイランド層を備える表面プラズモン共鳴光学素子であって、各金属膜又は各金属アイランド層は、提供される入射放射の少なくとも1つの所定の第1の波長未満の幅を有する複数の開口の2次元アレイを含み、前記金属膜又は前記金属アイランドは、前記入射放射が該金属膜又は該金属アイランド上の少なくとも1つのプラズモンモードと共鳴するように構成される、表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項130】
前記金属膜又は前記金属アイランド層は、前記素子に提供される前記入射放射に略直交するように積層される、請求項129に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項131】
前記素子を透過する放射は、単一金属膜又は単一金属アイランド層のみを備える素子を通して透過される放射と比較して、より低い強度を有するサイドピーク、より低い背景透過、及び狭い主通過帯域幅を有するように構成される、請求項129に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項132】
第1の金属膜又は第1の金属アイランド層の開口は、第2の金属膜又は第2の金属アイランド層の対応する開口からずれる、請求項129に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。
【請求項133】
前記ずれは、前記第1の膜又は層及び前記第2の膜又は層のスペクトルプロファイルの重複を調整することによって前記素子の帯域通過特性を向上させるように選択される、請求項132に記載の表面プラズモン共鳴光学素子。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図9G】
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【図9H】
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【図9I】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32A】
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【図32B】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34A】
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【図34B】
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【図34C】
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【図35A】
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【図35B】
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【図36A】
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【図36B】
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【図36C】
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【公表番号】特表2007−501391(P2007−501391A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522587(P2006−522587)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/023499
【国際公開番号】WO2005/017570
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(504279968)ユニバーシティー オブ ピッツバーグ (24)
【Fターム(参考)】