説明

表面保護シート

【課題】基材層と粘着剤層が共押出しによって成膜されている表面保護シートであって、巻回体等からの巻戻し性が良好で、かつ、粘着剤層が平滑で粗面への接着性が良好で、離型成分の転写がなく汚染性の問題がない表面保護シートを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含む基材層の、一方の面に粘着剤層、他方の面にポリエチレン系樹脂を含む背面処理層を備えた表面保護シートであって、前記基材層、粘着剤層、および背面処理層が共押出成形により一体に形成されたものであり、前記粘着剤層が非晶性ポリオレフィン系エラストマーを50重量%以上含有することを特徴とする表面保護シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護シートに関するものである。本発明の表面保護シートは、たとえば、金属板、塗装板、アルミサッシ、樹脂板、化粧鋼板、塩化ビニルラミネート鋼板、ガラス板等の部材、偏光フィルムなどの液晶用光学フィルム、液晶パネル等の光学部材、電子部材等を運搬、加工または養生する際等に、それら部材表面に貼り付け保護する用途等に用いられる。
【背景技術】
【0002】
表面保護シートは、基材シートの片側に粘着層が設けられており、もう一方の片側にはシートをロール体から巻戻す際の剥離性を確保するための離型層が設けられている場合がある。かかる表面保護シートには保護性能が要求される他、表面への均一な貼りつき性、剥離性、剥離後の汚染性等が重視される。特に汚染性は、被着体が光学部材、電子部材、塗装板や鏡面金属板等の場合に重要である。
【0003】
従来、このような用途の表面保護シートの粘着層や離型層は、基材シートに有機溶剤に溶解した背面処理剤や粘着剤の溶液を塗布乾燥することにより形成されていた。すなわち、溶剤型表面保護シートが一般的であった。しかし、近年では環境保全の観点や、粘着層や離型層からのアウトガス(有機溶剤ガス)による電子部品の故障低減の観点から、有機溶剤を使用しない表面保護シートの要求が高まりつつある。
【0004】
有機溶剤を使用しない手法の一つとして、ポリオレフィン系樹脂からなる基材層と熱可塑性粘着樹脂からなる粘着層とを共押出し法により成形した表面保護シートが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、当該表面保護シートは基材層と粘着層のみからなるため、ロール体にした場合に巻戻し性が悪く、巻戻し不可能となる場合がある。そのために表面が荒れて保護材への貼りつき性が低下する可能性がある。
【0005】
そのため、共押出し法で得られる表面保護シートには、さまざまな離型処理法が提案されている。たとえば、基材層背面をロールや布などにより摩擦処理する方法が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。しかしながら、当該離型処理法では均一な摩擦処理が困難なため良好な離型性を得ることができず、巻戻し力を十分に減少させることができない等の問題があった。また、基材層の配合によっては離型効果にバラツキが生じることがある。さらには、表面が不均一になるため、偏光フィルムや光学用途フィルムに貼り付けた場合にフィルムに表面保護フィルムの凹凸が転写したり、貼りつき性が不均一になる恐れがある。
【0006】
また、たとえば、2種の直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンからなる単層のフィルムを用い、直鎖状の低密度ポリエチレンにより粘着力の改善を試みる提案がなされている(たとえば、特許文献3参照)。しかしながら、当該粘着シートは粘着層がポリエチレンであり、粘着層が固く、荒れた面への接着性が悪くなる場合がある。
【0007】
さらに、たとえば、基材の片面を平滑にすることで粘着性や密着性を向上を試みる提案がなされている(たとえば、特許文献4参照)。しかしながら、当該粘着シートは粘着層に低密度ポリエチレンを用いているため、粘着層が固く、荒れた面への接着性が悪くなる場合がある。
【0008】
また、同様に基材の片面を平滑にすることで粘着性、密着性を向上させることを試みる提案がなされている(たとえば、特許文献5参照)。しかしながら、当該粘着シートは粘着層にエチレン−α−オレフィン共重合体からなる樹脂を用いているため、粘着層が固いために荒れた面への接着性が悪くなる場合がある。接着性を向上させるために表面粗さを既定しているが、成形条件によってはこれらの材料はメルトフラクチャによる外観荒れが発生して表面が荒れる場合がある。
【0009】
【特許文献1】特開昭61−103975号公報
【特許文献2】特開平2−252777号公報
【特許文献3】特開昭60−243142号公報
【特許文献4】特許第3103190号
【特許文献5】特許第3116109号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情に照らし、基材層と粘着剤層が共押出しによって成膜されている表面保護シートであって、巻回体等からの巻戻し性が良好で、かつ、粘着剤層が平滑で粗面への接着性が良好で、離型成分の転写がなく汚染性の問題がない表面保護シートを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、基材層と粘着剤層が共押出しによって成膜されている表面保護シートであって、巻回体等からの巻戻し性が良好で、かつ、粘着剤層が平滑で粗面への接着性が良好で、離型成分の転写がなく汚染性の問題がない表面保護シートを高効率かつ安価に得ることができる表面保護シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、以下に示す表面保護シートにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明の表面保護シートは、
熱可塑性樹脂を含む基材層の、一方の面に粘着剤層、他方の面にポリエチレン系樹脂を含む背面処理層を備えた表面保護シートであって、
前記基材層、粘着剤層、および背面処理層が共押出成形により一体に形成されたものであり、前記粘着剤層が非晶性ポリオレフィン系エラストマーを50重量%以上含有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の表面保護シートの製造方法は、
熱可塑性を含む基材層の、一方の面に粘着剤層、他方の面にポリエチレン系樹脂を含む背面処理層を備え、前記基材層、粘着剤層、および背面処理層が共押出成形により一体に形成する工程を有する表面保護シートの製造方法であって、
前記粘着剤層が非晶性ポリオレフィン系エラストマーを50重量%以上含有することを特徴とする。
【0015】
本発明においては、前記非晶性ポリオレフィン系エラストマーがポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
【0016】
また、本発明においては、前記粘着層の表面粗さRzが0.1〜2μmであることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明においては、前記共押出成形時の前記粘着剤層のせん断応力が1〜100kPaであることが好ましい。
【0018】
また、前記共押出成形時の前記粘着剤層のせん断速度は通常1〜100(1/s)であり、1〜40(1/s)であることが好ましい。
【0019】
本発明によると、実施例の結果に示すように、上述の非晶性ポリオレフィン系エラストマーを50重量%以上含有する粘着剤層を備える表面保護シートは、巻回体等からの巻戻し性が良好で、かつ、粘着剤層が平滑で粗面への接着性が良好で、離型成分の転写がなく汚染性の問題がない表面保護シートとなる。なかでも特に、上述の特定の表面粗さRzおよびせん断応力の範囲とする表面保護シートは、表面が荒れた被着体への粘着強度がより優れるとともに、良好なシール性を示し、また均一に被着体へ付着するために粘着剤表面からの転写が生じた場合においても転写物が均一に存在するために被着体への影響が小さいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明の表面保護シートは、
熱可塑性樹脂を含む基材層の、一方の面に粘着剤層、他方の面にポリエチレン系樹脂を含む背面処理層を備えた表面保護シートであって、
前記基材層、粘着剤層、および背面処理層が共押出成形により一体に形成されたものであり、前記粘着剤層が非晶性ポリオレフィン系エラストマーを50重量%以上含有することを特徴とする。
【0022】
本発明の表面保護シートは、前記基材層、前記背面処理層、および前記粘着剤層を共押出成形により積層することにより製造することができる。
【0023】
共押出成形としては、フィルム、シート等の製造などに一般に用いられる方法を採用することができ、特に限定されるものではない。具体的には、三層または四層以上の多層にして、たとえば、インフレーション法、共押出T−ダイ法などを用いることができる。これらの共押出成形を用いることは、コスト面や生産性の面で好ましい。
【0024】
また、前記各層それぞれにおいて積層する層の数は特に限定されるものではなく、前記基材層、前記背面処理層、および前記粘着剤層はそれぞれ単層であってもよいし、必要に応じて複数層の積層構造としてもよい。
【0025】
本発明の表面保護シートの基材層は、シート状やフィルム状に形成できる熱可塑性樹脂を含むものまたは前記熱可塑性樹脂からなるものであれば特に限定されるものでなく、耐熱性、および耐溶剤性を有すると共に可とう性を有するポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。基材層が可とう性を有することにより、ロール状に巻き取ることができ、各種の加工を適宜より簡便におこなうことができる。
【0026】
前記ポリオレフィン系樹脂は、たとえば、ポリエチレン系樹脂、プロピレンまたはプロピレン成分とエチレン成分からなるプロピレン系樹脂、エチレンと極性モノマーとの共重合体などがあげられる。
【0027】
より具体的には、たとえば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのポリオレフィン系樹脂などがあげられるが、これらに限定されない。
【0028】
また、基材層は、単層で使用してもよく、また2層以上の複数層から構成されていてもよい。
特に、前記基材層が2層以上の複数層から構成される場合には、各々の隣接する層は、その構成成分が、溶融共押出しによって相互に強固な接着を形成できるものであれば、いずれのものからなる層でもよい。
【0029】
本発明において、上記基材層には、この種のテープやシートの基材に一般に用いられる公知の各種添加剤を適宜含有していてもよい。たとえば、各種の充填剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、滑剤などがあげられる。
【0030】
前記基材層の厚みは、通常20〜300μm程度、好ましくは20〜250μm程度、より好ましくは40〜200μm程度である。基材層が20μm未満では剥離時に基材が破れたり、裂けたりする場合があり、300μmを超える場合には基材のコシが大きくなり、貼付後に浮き等が発生しやすい。
【0031】
本発明の表面保護シートにおいて、背面処理層は、基材層の片面に形成され、本発明の表面保護シートをロール状に巻き取ったとき、粘着剤層に当接され、巻き戻し時に粘着剤層から適度な巻戻し力で容易に剥離し、良好な巻戻し性を維持する役割を有するものである。
【0032】
本発明の表面保護シートの背面処理層は、シート状やフィルム状に形成できるポリエチレン系樹脂を含むものまたは前記ポリエチレン系樹脂からなるものであれば特に限定されるものでなく、耐熱性、および耐溶剤性を有すると共に可とう性を有するポリエチレン系樹脂であることが好ましい。背面処理層が可とう性を有することにより、ロール状に巻き取ることができ、各種の加工を適宜おこなうことができる。
【0033】
背面処理層に用いられるポリエチレン系樹脂としては、種類に限定されることなく、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0034】
上記ポリエチレン系樹脂としては、たとえば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体などがあげられ、エチレンと他のモノマーとの共重合体であれば特に限定されない。これらのポリエチレン系樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
さらに、前記背面処理層には、良好な離型性を得るためには各種離型用の添加剤を添加する。たとえば、エチレン・ビニルアルコール共重合体、脂肪酸アミド系添加剤、低分子量ポリオレフィンワックス、長鎖アルキル系添加剤などがあげられる。これら添加剤はいずれも前記背面処理層と良好な混合性を有するものが適時使用できる。
【0036】
また、たとえば、エチレン・ビニルアルコール共重合体を用いるときは、エチレンと酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニルとの共重合体をケン化することによって得られるエチレン・ビニルアルコール共重合体を用いることができる。ケン化度としては、50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。良好な離型性を発現させるためにエチレン含量は20〜90モル%が好ましく、さらに好ましくは25〜80モル%、特に30〜50モル%が好ましい。
【0037】
前記脂肪酸アミド系添加剤としては、たとえば、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、芳香族系ビスアミド、および置換尿素などがあげられる。
【0038】
前記脂肪酸アミド系添加剤として、より具体的には、たとえば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイイン酸アミド、N,N−ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリル−N’−ステアリル尿素などのN−ステアリル−N’−ステアリル酸アミドなどがあげられる。これらの脂肪酸アミド系添加剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0039】
低分子量ポリオレフィンワックスとしては、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロプレンワックスなどの低分子量のものが適時使用できる。
【0040】
長鎖アルキル系添加剤としては、ピーロイル1010やピーロイル1010S(以上、いずれも一方社油脂工業社製)などのアルキル鎖を有する低分子量添加物などが適時使用できる。上記の離型用の添加剤は所定の離型性を発現できる添加量を適時添加する。
【0041】
本発明の背面処理層の厚さは、特に制限されないが、1〜20μmが好適であり、より好ましくは2〜18μm、特に好ましいのは3〜15μmである。背面処理層の厚みを1μm以上とすることにより共押出し時に厚みムラを抑止し、背面処理層を有効に付設して加熱や加圧された環境下においてもブロッキングを防止することができる。なお、背面処理層が20μmを超える場合には、添加剤の総量が多いために、汚染や添加剤の転写による剥離不良が発生しやすくなる傾向がある。また背面処理層は1層であってもよいし、2層以上とすることもできる。
【0042】
さらに本発明の表面保護シートに用いられる背面処理層には、従来公知の各種の添加剤が任意成分として適宜添加できる。たとえば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤などの光安定剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、レベリング剤、可塑剤、低分子ポリマー、腐食防止剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機および有機の充填剤(たとえば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等)、金属粉、着色剤、顔料などの粉体、粒子状、箔状物、耐熱安定剤、顔料、目ヤニ防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤などがあげられる。
【0043】
本発明における粘着剤層は、前記基材層の一方の面に形成され、前記粘着剤層のベースポリマーとして熱可塑性樹脂である非晶性ポリオレフィン系エラストマーが用いられる。
【0044】
本発明においては、前記粘着剤層が非晶性ポリオレフィン系エラストマーを50重量%以上含有することを特徴とするが、60重量%以上含有することが好ましく、70重量%以上含有することがより好ましい。
【0045】
前記非晶性ポリオレフィン系エラストマーとしては、エチレンプロピレンゴム、エチレンとαオレフィンからなるエラストマー、または粘着性を発揮するポリプロピレン系樹脂等であれば適宜使用でき、たとえば、アタクチックポリプロピレンなどの非晶性ポリプロピレンがあげられる。
【0046】
なお、本発明における非晶性ポリオレフィン系エラストマーとは、結晶構造を有しないものをいい、その確認方法としてはn−ヘプタンへの溶解性試験による。具体的には、非晶性ポリオレフィン系エラストマーをn−ヘプタンに10wt%の濃度で溶解させ、その溶解度を測定する。その際、実質的に完全溶解した場合を100%とした場合に、溶解度90%以上となるものを非晶性とする。
【0047】
ポリプロピレン系樹脂としては、たとえば、プロピレン・α−オレフィンやプロピレン・エチレン・α−オレフィンとの共重合体からなる。
【0048】
α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ぺンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、および4−メチル−1−へキセン等があげられるが、これらの中でも1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよび4−メチル−1−ペンテンが好ましい。α−オレフィンは一種を単独でまたは二種以上を用いても構わない。
【0049】
また、上記ポリプロピレン系樹脂は使用温度領域でゴム弾性を有するものであれば適時使用でき、その硬度は要求する粘着特性により選択される。また、これらの樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上の硬度の樹脂を混合して使用してもよい。
【0050】
さらに、本発明の表面保護シートに用いられる粘着剤層には、粘着特性の制御等を目的に、従来公知の各種の軟化剤、粘着付与剤、基材層に用いたようなオレフィン系樹脂、シリコーン系ポリマー、液状アクリル系共重合体、リン酸エステル系化合物、老化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、表面潤滑剤、レベリング剤、可塑剤、低分子ポリマー、酸化防止剤、腐食防止剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機および有機の充填剤(たとえば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等)、金属粉、着色剤、顔料などの粉体、粒子状、箔状物、耐熱安定剤などの従来公知の各種の添加剤を使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0051】
また、本発明において、前記軟化剤の配合は粘着力の向上に一般的に有効である。
【0052】
軟化剤としては、たとえば、低分子量のポリイソブチレン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、およびこれらの片末端および両末端にOH基、COOH基もしくはエポキシ基等の反応基を持った誘導体、エチレンプロピレンゴム、ひまし油、アマニ油、大豆油、プロセス油、ナフテン油、フタル酸エステル系可塑剤やリン酸エステル系可塑剤、液状脂肪族系石油樹脂などがあげられる。
【0053】
前記誘導体としては、より具体的には、たとえば、水添ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンモノオール、水添ポリイソプレンジオール、水添ポリイソプレンモノオールなどがあげられる。なかでも、被着体に対する接着性の向上を抑制する目的からは、水添ポリブタジエンや水添ポリイソプレン等のジエン系ポリマーの水添物やオレフィン系軟化剤等が特に好ましい。
【0054】
前記軟化剤の数平均分子量は特に制限されず適宣に設定できるが、5000〜10万程度、特に1万〜5万であることが好ましい。分子量が小さくなると、粘着剤層からの被着体への物質移行や重剥離化等の原因となるおそれがあり、一方、分子量が大きくなると、接着力の向上効果に乏しくなる傾向がある。
【0055】
また、前記軟化剤を使用する場合、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。また、前記軟化剤の配合量は特に制限されないが、熱可塑性粘着樹脂および軟化剤を含む粘着剤組成物100重量部に対して、60重量部以下、好ましくは50重量部以下であり、特に30重量部以下とするのが好ましい。配合量が60重量部より多くなると、高温や屋外暴露時での糊残りが増加する傾向にあり、一方、5重量部より少なくなると、軟化剤添加の効果が十分には得られない。
【0056】
また、本発明において、粘着付与剤の配合は粘着剤層の接着力の向上に一般的に有効である。
【0057】
粘着付与剤としては、たとえば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体系や脂環式系等の石油系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、アルキル)フェノール系樹脂、重合ロジン系樹脂などのロジン系樹脂、キシレン系樹脂、さらにはこれらの水素化物などの、粘着剤で用いられている公知のものを1種および2種以上適宜に選択して用いることができる。また、オレフィン樹脂とのブレンド物として市販されているものを使用することもできる。なかでも、剥離性や耐候性などの点から、水添系の粘着付与剤が好ましい。
【0058】
粘着付与剤を使用する場合、その配合量は特に制限されないが、凝集力の低下による糊残り問題の発生を回避した接着力の向上などの点より、熱可塑性粘着樹脂100重量部に対して、80重量部以下、好ましくは60重量部以下であり、特に50重量部以下とするのが好ましい。配合量が100重量部を超えると、高温や屋外暴露時での糊残りが顕著となる。
【0059】
また、本発明においては、前記粘着層の表面粗さRzが0.1〜2μmであることが好ましく、0.1〜1.5μmであることがより好ましく、0.1〜1.2μmであることがさらに好ましい。
【0060】
また、ポリマーの好ましい成形状態を示す指標として、せん断応力がある。せん断応力の具体的な測定方法は実施例に記載しているが、押し出し成形などにおける樹脂が押し出し装置壁面に及ぼす応力のことで、溶融ポリマーの外観安定性の指標となる。この値が大きいと、溶融ポリマーは押し出し時に大きく圧力変動を生じたり、不均一に表面が荒れる現象が発生することがある。その結果、製品の表面平滑性が低下することになる。
【0061】
本発明においては、非晶性ポリオレフィン系エラストマーを含む粘着剤層の成形時のせん断応力が1kPa〜100kPaの範囲であることが好ましく、20k〜70kPaであることがより好ましい。上記範囲で成形を行うことで、押し出し成形時の外観が平滑となり、その結果粘着剤層の荒れた面への接着性が向上できる。せん断応力が100kPaを超える場合、溶融ポリマーと押し出し装置壁面との応力が高くなり、装置から吐出するダイなどの先端部で応力が法線方向に開放されることで、厚みにムラが生じたり、樹脂の吐出の脈動を生じて表面が大きく荒れることがある。
【0062】
せん断応力の調整は、たとえば、使用する樹脂の分子構造や各種添加剤との配合比率により調整される。
【0063】
また、せん断応力はせん断速度の関数であるために、成形条件によっても調整できうる。たとえば、樹脂の吐出量、成形温度、シート成形用金型の開度などにより調整できる。
【0064】
また、せん断応力を1〜100kPaの範囲とする際の溶融押し出し成形装置のシート成形部(たとえば、Tダイ、インフレーション用リングダイ)での粘着剤層のせん断速度が1〜40(1/s)の範囲で行うような条件が好ましい。これ以上のせん断速度の場合、実質的に成形シートの成形速度が高くなるために、シート搬送が難しくなることがある。
【0065】
本発明の表面保護シートにおいて、粘着剤層の厚さは、通常1〜50μm程度であり、好ましくは2〜40μm、さらに好ましくは5〜20μmである。
【0066】
また、本発明の表面保護シートの全体の厚さは、通常25〜300μmであり、好ましくは30〜200μm、より好ましくは40〜150μm、とりわけ好ましくは40〜130μmである。
【0067】
なお、粘着剤層の表面には、たとえば、コロナ放電処理、紫外線照射処理、火炎処理、プラズマ処理やスパッタエッチング処理などの、粘着性の制御や貼付作業性等を目的とした表面処理を必要に応じて施すこともできる。
【0068】
さらに、粘着剤層には必要に応じて、実用に供されるまでの間、セパレー夕などを仮着して保護することもできる。
【0069】
また、表面保護シートの背面処理層側には、手切れ性や耐スリップ性付与のために、エンボス加工や凹凸加工等を適宜施すことができる。
【0070】
本発明における表面保護シートの製造方法としては、基材層、当該基材層の片面に形成された背面処理層、および熱可塑性樹脂からなる前記粘着剤層を構成する素材を、それぞれ溶融加熱して共押出し成形し、基材層の片面に背面処理層を、もう一方の片面に粘着剤層を一体に形成し、所定の厚さを有する3層構造(もしくは前記3層構造を含む4層以上の多層)のテープを製造する方法が、高効率かつ安価に本発明の表面保護シートを製造できる点で好ましい。
【0071】
また、本発明の表面保護シートの製造方法を用いることにより、前記背面処理層と前記粘着剤層が溶融加熱状態で接することがないため、前記背面処理剤の熱劣化による副生成物の生成、および前記粘着剤層への移行がなく、優れた巻戻し性を示し、粘着剤層表面の汚染を抑制した、粘着強度に優れる表面保護シートを製造することができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。
【0073】
〔実施例1〕
低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、LC680、MFR:10、密度:0.936g/cm)およびエチレン・酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン社製、LV430、MFR:1、VAコンテント:15%)、長鎖アルキル添加剤(一方社油脂工業社製、ピーロイル1010S)を重量比率89.5/5.5/5からなる背面処理層形成材と、低密度ポリエチレン(東ソー社製、ペトロセン0M05B、MFR:2.0、密度:0.924g/cm)からなる基材層形成材と、ポリプロピレン系エラストマー(住友化学社製,タフセレンH5002、MFR:10、密度:0.860g/cm)からなる粘着剤層形成材を、インフレーション法にてダイス温度180度にて共押出しして成膜し、背面処理層5μm/基材層50μm/粘着剤層7μmの表面保護シートを得た。この製膜条件での粘着剤層のせん断速度は27.0(1/s)であり、粘着剤層のせん断応力は50(kPa)であった。
【0074】
〔実施例2〕
低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、LC680、MFR:10、密度:0.936g/cm)およびエチレン・酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン社製、LV430、MFR:1、VAコンテント:15%)、長鎖アルキル添加剤(一方社油脂工業社製、ピーロイル1010S)を重量比率89.5/5.5/5からなる背面処理層形成材と、低密度ポリエチレン(東ソー社製,ペトロセン0M05B、MFR:2.0、密度:0.924g/cm)からなる基材層形成材と、ポリプロピレン系エラストマー(住友化学社製、タフセレンH5002、MFR:10、密度:0.860g/cm)からなる粘着剤層形成材を、インフレーション法にてダイス温度180度にて共押出しして成膜した。背面処理層5μm/基材層50μm/粘着剤層7μmの表面保護シートを得た。このときのせん断速度は9.4(1/s)であり、せん断応力は39(kPa)であった。
【0075】
〔比較例1〕
低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、LC680、MFR:10、密度:0.936g/cm)およびエチレン・酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン社製、LV430、MFR:1、VAコンテント:15%)、長鎖アルキル添加剤(一方社油脂工業社製、ピーロイル1010S)を重量比率89.5/5.5/5からなる背面処理層形成材と、低密度ポリエチレン(東ソー社製、ペトロセン0M05B、MFR:2.0、密度0.924g/cm)からなる基材層形成材と、ポリプロピレン系エラストマー(住友化学社製、タフセレンH3002、MFR:3、密度:0.860g/cm)からなる粘着剤層形成材を、インフレーション法にてダイス温度180度にて共押出しして成膜し、背面処理層5μm/基材層50μm/粘着剤層7μmの表面保護シートを得た。このときの粘着剤層のせん断速度は51(1/s)であり、粘着剤層のせん断応力は171(kPa)であった。
【0076】
〔比較例2〕
低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、LC680、MFR:10、密度:0.936g/cm)およびエチレン・酢酸ビニル共重合体(日本ポリエチレン社製、LV430、MFR:1、VAコンテント:15%)、長鎖アルキル添加剤(一方社油脂工業社製、ピーロイル1010S)を重量比率89.5/5.5/5からなる背面処理層形成材と、低密度ポリエチレン(東ソー社製、ペトロセン0M05B、MFR:2.0、密度0.924g/cm)からなる基材層形成材と、ポリプロピレン系エラストマー(住友化学社製、タフセレンH3002、MFR:3、密度:0.860g/cm)からなる粘着剤層形成材を、インフレーション法にてダイス温度180度にて共押出しして成膜し、背面処理層5μm/基材層50μm/粘着剤層7μmの表面保護シートを得た。このときのせん断速度は52(1/s)であり、粘着剤層のせん断応力は174(kPa)であった。
【0077】
上記の実施例および比較例で得られた粘着シートについて、以下の要領でせん断速度、せん断応力、接着性、および表面粗さRzの測定および評価を行った。
【0078】
<せん断速度およびせん断応力>
樹脂のせん断応力は、ロザンド製ツインキャピラリー式伸長粘度計RH7−2にて、測定キャピラリー径2mm、樹脂温度180度にて押し出しを行い、各せん断速度におけるせん断応力を測定した。測定値はバーグリー補正、ラビノビッチ補正を行った。
【0079】
共押体のせん断速度は、製膜時の処理量を用いて二重円管のせん断速度式からせん断速度を算出した。
【0080】
さらに吐出量から算出したせん断速度を元に、キャピラリー式伸長粘度計で測定したせん断応力とせん断粘度の関係式からせん断応力を算出した。
【0081】
<接着性>
アクリル板(厚み2mm)に表面保護シートの粘着剤層を加重3kgの加重でゴムロールをもちいて貼り合わせた。貼り合わせたときのアクリル板とシート間にはいった気泡状態を顕微鏡にて100倍にて観察し、気泡が存在していた場合を×、気泡が存在していなかった場合を○とした。その画像を図1〜4に示した。黒く見えるのが気泡である。なお、図の横方向は65μmである。
【0082】
<表面粗さRz>
10点平均山谷表面粗さRzは、接触式表面形状測定器P−15(KLA Tencor社製)にて測定長さ1mmで測定した。測定速度は100μm/sec。測定値はカットオフ2.5mmでノイズを除去した。
【0083】
上記結果を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
上記表1および図1〜4の結果より、本発明によって作製された表面保護シートを用いた場合(実施例1〜2)、いずれの実施例においても、良好な外観を有し、密着性が優れることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施例におけるアクリル板に貼り合わせた表面保護シートの顕微鏡写真(100倍)。
【図2】実施例におけるアクリル板に貼り合わせた表面保護シートの顕微鏡写真(100倍)。
【図3】実施例におけるアクリル板に貼り合わせた表面保護シートの顕微鏡写真(100倍)。
【図4】実施例におけるアクリル板に貼り合わせた表面保護シートの顕微鏡写真(100倍)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む基材層の、一方の面に粘着剤層、他方の面にポリエチレン系樹脂を含む背面処理層を備えた表面保護シートであって、
前記基材層、粘着剤層、および背面処理層が共押出成形により一体に形成されたものであり、前記粘着剤層が非晶性ポリオレフィン系エラストマーを50重量%以上含有することを特徴とする表面保護シート。
【請求項2】
前記非晶性ポリオレフィン系エラストマーがポリプロピレン系樹脂である請求項1に記載の表面保護シート。
【請求項3】
前記粘着層の表面粗さRzが0.1〜2μmである請求項1または2に記載の表面保護シート。
【請求項4】
熱可塑性樹脂を含む基材層の、一方の面に粘着剤層、他方の面にポリエチレン系樹脂を含む背面処理層を備え、前記基材層、粘着剤層、および背面処理層が共押出成形により一体に形成する工程を有する表面保護シートの製造方法であって、
前記粘着剤層が非晶性ポリオレフィン系エラストマーを50重量%以上含有することを特徴とする表面保護シートの製造方法。
【請求項5】
前記非晶性ポリオレフィン系エラストマーがポリプロピレン系樹脂である請求項4に記載の表面保護シートの製造方法。
【請求項6】
前記粘着層の表面粗さRzが0.1〜2μmである請求項4または5に記載の表面保護シートの製造方法。
【請求項7】
前記共押出成形時の前記粘着剤層のせん断応力が1〜100kPaである請求項4〜6のいずれかに記載の表面保護シートの製造方法。
【請求項8】
前記共押出成形時の前記粘着剤層のせん断速度が1〜40(1/s)である請求項4〜7のいずれかに記載の表面保護シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−208173(P2008−208173A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44264(P2007−44264)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】