説明

表面処理剤組成物および熱交換器

【課題】長期に亘って優れた活性酸素発生能力を発現する皮膜を形成することのできる表面処理剤組成物の提供と、このような皮膜を備えた熱交換器の提供。
【解決手段】ポリアニリン、水およびドーパントを含有し、このドーパントが、(メタ)アクリル酸と、0.1mol/L水溶液のpHが3.0以下となる単量体(a)とを必須的に含む単量体混合物を重合してなる共重合体(A)であるか、または、(メタ)アクリル酸(共)重合体(B)と、0.1mol/L水溶液のpHが3.0以下となる化合物(b)との混合物であり、上記単量体(a)または上記化合物(b)がポリアニリン1当量に対して0.2〜10当量用いられていることを特徴とする表面処理剤組成物であり、この表面処理剤組成物から形成された皮膜を金属基材表面に備えた金属部材を有することを特徴とする熱交換器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアニリンの活性酸素発生能力を長期間に亘って高いレベルで維持できる皮膜を形成するための表面処理剤組成物と、このような皮膜が形成されている熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンやカーエアコン等に用いられる熱交換器のチューブやフィンには、室内や車内の空気中に含まれる埃等が付着することがある。このような埃がたまった部分に、細菌やカビの胞子(真菌)が付着すると、これらが増殖し、カビ臭い等といった悪臭の原因になることがある。
【0003】
この悪臭を防止するために、ポリアニリンの活性酸素発生能を利用する検討が行われてきた(例えば、特許文献1〜2)。すなわち、ポリアニリンは水分の存在下で酸素に触れると、還元体であるベンゼノイドが電子を酸素に供給して、活性酸素(スーパーオキサイドアニオン、ヒドロキシラジカル、過酸化水素水)を生成し、これが細菌や真菌等を酸化分解する。このため、ポリアニリンを含有する皮膜を熱交換器の金属部材表面に設けておくことで、抗菌・防黴効果が発現するのである。なお、ベンゼノイドが電子を酸素に供給した後は酸化体であるキノイドへ転化するが、ポリアニリン塗膜に付着した細菌・真菌や有機化合物を酸化する際に電子がポリアニリンに与えられるため、キノイドは再びベンゼノイドに転化し、このサイクルを繰り返すこととなる。
【0004】
上記従来技術では、ドープしたポリアニリンの方が、ドープしない場合よりも、活性酸素の発生能力が高いとしながらも、ドーパントとして例示されているのは、硝酸、硫酸、塩酸、クロム酸等の無機酸水溶液に限られており(特許文献1)、ドーパント自体についての検討はなされていない。これらの低分子の無機酸をドーパントとして用いると、水との接触によってドーパントが流出してしまい、ドープ効果が長期間維持できない、という問題があった。
【0005】
ところで、ポリアニリン等の導電性に着目した技術ではあるが、特許文献3には、スルホン酸基および/またはリン酸基を含有する単量体を含む原料から得られるドーパント用の皮膜形成性ポリマーと、導電性ポリマー粒子とを有するエマルション型導電性ポリマー組成物が記載されている。この特許文献3では、皮膜形成性ポリマーをエマルション重合した後、ポリアニリン等の導電性ポリマーをエマルション存在下で酸化重合して組成物を製造しており、アニリンは重合しにくいため、当該組成物中には、アニリンが比較的多量に残存していると考えられる。このアニリンは毒性が高いため、当該組成物を熱交換器の表面処理に使用することは安全性の点で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−200532号公報
【特許文献2】特開2003−88748号公報
【特許文献3】特開2004−307722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者等は、脱臭や抗菌・防黴に効果的な活性酸素をより長期間に亘って高いレベルで発生させるためには、特許文献1や2に記載された無機酸や特許文献3に記載されたポリマーよりも適したドーパントが存在するのではないかと考えた。そこで、本発明では、ポリアニリンの活性酸素発生能力を高いレベルで持続することのできるドーパントを見出し、長期に亘って優れた脱臭、抗菌、防黴効果を発現する皮膜を形成することのできる表面処理剤組成物の提供と、このような皮膜を備えた熱交換器の提供を課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表面処理剤組成物は、ポリアニリン、水およびドーパントを含有し、このドーパントが、(メタ)アクリル酸と、0.1mol/L水溶液のpHが3.0以下となる単量体(a)とを必須的に含む単量体混合物を重合してなる共重合体(A)であるか、または、(メタ)アクリル酸(共)重合体(B)と、0.1mol/L水溶液のpHが3.0以下となる化合物(b)との混合物であり、上記単量体(a)または上記化合物(b)がポリアニリン1当量に対して0.2〜10当量用いられていることを特徴とする。
【0009】
なお、ポリアニリンに対するドープ量は、次のようにして求められる。すなわち、ベンゼノイドの分子量が182,キノイドの分子量が180であり、ベンゼノイドとキノイドが0.5:0.5(モル比)でポリアニリン1ユニットを構成しているので、ポリアニリン1ユニットの分子量を181として、ドープ量を計算する。具体的には上記単量体(a)または上記化合物(b)の1モルの分子量をMとして、下記式で求める。
ドープ量(当量)=[単量体(a){または化合物(b)}の質量(g)÷単量体(a){または化合物(b)}1モルの分子量M]/[ポリアニリンの質量(g)÷181]
【0010】
上記単量体(a)は、ホスホン酸基および/またはスルホン酸基を含有する単量体であることが好ましい。また、上記ポリアニリンは、置換基を有しないポリアニリンである態様も好ましい。
【0011】
本発明には、上記表面処理剤組成物から形成された皮膜も包含され、この皮膜は抗菌・防黴用皮膜であることが好ましい。
【0012】
本発明には、本発明の熱交換器用表面処理剤組成物から形成された皮膜を金属基材表面に備えた金属部材を有する熱交換器が含まれる。金属基材は、アルミニウム材またはアルミニウム合金材であることが好ましい。また、本発明の熱交換器は、内部を冷却媒体が循環するチューブと、冷却媒体と空気の熱交換を行うフィンとを有し、冷却媒体と空気との熱交換により空気を冷却するものであることが好ましい。蒸発器である態様、車載用である態様は、いずれも本発明の熱交換器の好ましい実施態様である。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、ドーパントとして2種以上の酸性化合物を用い、ドーパントの少なくとも一つを高分子型としたため、ポリアニリンの活性酸素発生能を長期間維持できる皮膜を形成し得る表面処理剤組成物を提供することができた。従って、上記皮膜を有する熱交換器は、長期間に亘って、脱臭作用や、抗菌・防黴効果を発揮することが可能となり、高性能なものとなった。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の表面処理剤組成物は、ポリアニリンと、水と、ドーパントを有するものである。まず、ポリアニリンについて説明する。
【0015】
<ポリアニリン>
本発明で用いられるポリアニリンは、エメラルディン型であり、ベンゼノイドとキノイドがほぼ当量のものである。ポリアニリンは置換基を有していてもよいが、下式で表される(a≒b)無置換タイプが好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
ポリアニリンの重量平均分子量は特に限定されないが、GPCのポリエチレンオキサイド換算で、5000〜10万が好ましい。
【0018】
本発明の表面処理剤組成物においては、水と、ドーパントと、ポリアニリンの合計100質量%中、ポリアニリンは0.02〜10質量%とすることが好ましい。表面処理剤組成物中のポリアニリン量が多ければ多いほど、少ない塗工液量でポリアニリンを所定量含む皮膜を形成でき、効率的であると共に、活性酸素発生能力の高い皮膜が得られるため好ましい。従って、ポリアニリン量は、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。ただし、添加量が多すぎると、ポリアニリンが水性媒体中で凝集することがある上に、ポリアニリン存在下でドーパント用重合体の重合を行う場合は、重合安定性を低下させるおそれもあるので、7質量%以下とすることが好ましい。
【0019】
<ドーパント>
本発明には、ドーパントが、(メタ)アクリル酸と、0.1mol/L水溶液のpHが3.0以下となる単量体(a)とを含む単量体混合物から得られる共重合体(A)である形態(第1の形態)と、(メタ)アクリル酸(共)重合体(B)と、0.1mol/L水溶液のpHが3.0以下となる化合物(b)(非重合体)との混合物である形態(第2の形態)が含まれる。
【0020】
アクリル酸とメタクリル酸の0.1mol/Lの水溶液のpHは、いずれも3.0よりも大きい。よって、本発明では、0.1mol/Lの水溶液のpHが3.0以下であることを、(メタ)アクリル酸よりも強酸であることの代替特定事項として、単量体(a)および化合物(b)を特定している。単量体(a)や化合物(b)が(メタ)アクリル酸より強酸であることは、(メタ)アクリル酸よりもドープ作用が強いことを意味するが、(メタ)アクリル酸と単量体(a)を共重合体(A)として併用したり(第1の形態)、(メタ)アクリル酸(共)重合体(B)と化合物(b)とを混合して使用(第2の形態)することで、活性酸素発生能力が高いレベルで持続できるようになった理由は明確ではないが、アクリル酸やメタクリル酸等と比較して強酸のドーパントを併用することにより、ポリアニリンとドーパントの作用距離が一定範囲内で制限されるため、再ドープの確率が向上したものと考えられる。
【0021】
また、ドープ率を向上させることでポリアニリン鎖構造に直線性を持たせている。これにより、皮膜形成後にポリアニリン鎖が規則正しく整列して、表面の平滑性を保つことができるので、細菌やカビが皮膜表面に付着しにくくなり、より好ましい。
【0022】
<第1の形態のドーパント>
第1の形態のドーパントは、(メタ)アクリル酸と上記単量体(a)とを必須的に含む単量体混合物から得られる共重合体(A)である。単量体混合物100質量%中、(メタ)アクリル酸は0.1〜80質量%の使用が好ましい。(メタ)アクリル酸が0.1質量%未満では、ポリアニリンへのドープ効率が低いため、目的とする活性酸素発生能力が得られない。しかし、(メタ)アクリル酸が80質量%を超えると、得られる皮膜の耐水性の点から、単量体(a)を少なくせざるを得ないため、強酸基のドープ効果が充分発現しないおそれがある。より好ましい(メタ)アクリル酸の使用量は1〜60質量%である。
【0023】
上記単量体(a)としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−3−クロロアシッドホスフェート、アシッドホスホキシポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルアシッドホスフェート等のホスホン酸基含有単量体等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。これらの中でも、ビニルスルホン酸と、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェートが好ましいものとして挙げられる。なお、ビニルホスホン酸の0.1mol/L水溶液のpHは1.9であり、2−アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェートでは、pHは1.5となる。
【0024】
これらの単量体(a)はポリアニリンにドープさせるために用いるという目的からすれば塩になっていないことが好ましいが、一部を塩にして重合しても良い。
【0025】
上記単量体(a)は、単量体混合物100質量%中、0.1〜20質量%の使用が好ましい。単量体(a)が0.1質量%未満では、ポリアニリンドープ効率が低いため、目的とする活性酸素発生能力が得られないおそれがある。一方、20質量%を超えると、得られる共重合体(A)の耐水性が低下するおそれがある。より好ましい単量体(a)の量は0.3〜15質量%であり、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
【0026】
<その他の単量体>
上記(メタ)アクリル酸および単量体(a)と共重合させることのできるその他の単量体としては、ケイ皮酸およびクロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびシトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸、およびこれら不飽和ジカルボン酸のモノエステル等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等の芳香族系単量体;N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−(1,1’−ジメチル−2−フェニル)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(1−メチルブチル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の水溶性の窒素含有単量体等が挙げられる。
【0027】
これらの中でもポリアニリンの分散性が向上することから、ブチルアクリレート、スチレン、(メタ)アクリロイルモルホリンが好ましく使用できる。(メタ)アクリロイルモルホリンはポリアニリンを溶解させることもできるため、単量体混合物100質量%中、1〜50質量%使用することが好ましい。また、ブチルアクリレートやスチレンは、ドーパント用共重合体(A)に疎水性を付与するために用いられる。親水性の高い接触角の小さい皮膜を熱交換器に形成して、汚れ成分が熱交換器に付着しないようにする技術が知られているが、本発明では、ある程度の疎水性を皮膜に付与して、汚れ成分が少しは付着できるようにしている。汚れ成分の中にも還元性物質が含まれるので、この還元性汚れ成分を酸化すればベンゼノイドとキノイドとの転化サイクルを廻すことができ、活性酸素発生能力の早期回復に役立つからである。従って、ブチルアクリレートやスチレンのみに限定されず、これらと同程度の疎水性である単量体を用いても構わない。なお、疎水性単量体とは、20℃の水に溶ける質量が10g/100ml未満である単量体を指すものとする。これらの疎水性単量体は、単量体混合物100質量%中、10〜90質量%の範囲で使用することが好ましい。皮膜の疎水性の目安としては、本発明の表面処理剤組成物から形成される皮膜に対する水の接触角が50゜〜130°程度になるようにすることが好ましい。
【0028】
<重合方法>
第1の形態のドーパント用共重合体(A)を合成する方法としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられる。これらの重合方法のうち、乳化重合は水を主要媒体としているため環境に優しく、また皮膜の耐水性に優れた疎水性の重合体を得ることができるため、好ましい。
【0029】
乳化重合方法としては、一般に乳化重合で用いられる方法が適用でき、例えば、単量体一括添加法、単量体滴下法、プレエマルション法、パワーフィード法、シード法、単量体多段添加法等が挙げられる。乳化重合の媒体としては水単独が好ましいが、水にアルコールやケトン等の親水性溶媒を添加したものでも構わない。
【0030】
上記重合反応の際の反応温度や反応時間等の反応条件は適宜設定すればよい。また、上記重合反応は、窒素雰囲気下で行うことが好ましく、さらに、平均分子量を調整するために、連鎖移動剤を添加して行うこともできる。
【0031】
本発明の乳化重合の際に用いる乳化剤としては、ミセルが安定に保て、ドープを阻害することのないノニオン系の乳化剤が好ましい。カチオン系乳化剤では共重合体(A)または単量体(a)の酸基を中和するためドープを阻害するおそれがあり、アニオン系乳化剤ではドーパントの代わりに、自らがドープするおそれがある。
【0032】
ノニオン系乳化剤としては、特に限定されず使用可能である。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合生成物;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリアミド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合生成物等が挙げられる。市販品としては、例えば「ノイゲン(登録商標)」シリーズ(第一工業製薬社製;EA−157,EA−167,EA−177等)、「ノニポール(登録商標)」シリーズ(三洋化成工業社製)、「エレミノール(登録商標)」シリーズ(三洋化成工業社製;STN−6,STN−8,STN−13,STN−20,STN−45等)、「エマルゲン(登録商標)」シリーズ(花王社製;A−60,A−66,A−90等)、「アクアロン(登録商標)」シリーズ(第一工業製薬社製;RN−10,RN−20,RN−30,RN−50等)等が挙げられる。
【0033】
上記乳化剤のHLB(Hydrophile−Lipophile Balanceの略)は12〜18の範囲内が、ミセルの安定性が保てるため好ましい。上記乳化剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、1〜15質量部の範囲内が好ましい。乳化剤の使用量が1質量部未満では、乳化重合中の安定性が不足するおそれがあり、15質量部を超えると、表面処理剤組成物から得られる皮膜の耐水性が低下するおそれがある。乳化剤の使用量は3〜12質量部がより好ましく、5〜10質量部がさらに好ましい。
【0034】
本発明の乳化重合の際に用いる重合開始剤としては、アゾ系の重合開始剤が好ましく、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕等が挙げられる。
【0035】
重合開始剤の使用量は、単量体混合物100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲内が好ましい。使用量が0.05質量部未満では、乳化重合が進まず、単量体が残存して、皮膜の強度・柔軟性が低下するおそれがあり、5質量部を超えると乳化重合中の安定性が不足するおそれがある。重合開始剤量は、0.1〜3質量部がより好ましく、0.15〜2質量部がさらに好ましい。
【0036】
ドーパント用共重合体(A)の重量平均分子量は、GPCのポリアクリル酸換算で、5000〜100万程度が好ましい。
【0037】
表面処理剤組成物中における水性媒体とドーパント用共重合体(A)の質量比率は、両者の合計を100質量%として、ドーパント用共重合体(A)が2〜50質量%であることが好ましい。
【0038】
<第2の形態のドーパント>
第2の形態のドーパントは、(メタ)アクリル酸(共)重合体(B)と、強酸化合物(b)との混合物である。
【0039】
(メタ)アクリル酸(共)重合体(B)は、単量体(a)を含まない単量体混合物から得られるものであって、(メタ)アクリル酸と、必要に応じて、第1の形態のドーパントで例示したその他の単量体とから、第1の形態のドーパントと同様の合成方法で得ることができる。好適なその他の単量体も第1の形態のドーパントと同様である。
【0040】
第2の形態のドーパントにおいても第1の形態と同様に、単量体混合物100質量%中、(メタ)アクリル酸は0.1〜80質量%の使用が好ましく、1〜60質量%がより好ましい。
【0041】
化合物(b)として好適なものは、硫酸、リン酸、塩酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンホスホン酸、アルキルスルホン酸、アルキルホスホン酸、アルキルエーテルスルホン酸、アルキルエーテルホスホン酸等であり、これらの中でも、スルホン酸基またはホスホン酸基を有する化合物が好ましい。
【0042】
<本発明の表面処理剤組成物の製造方法>
本発明の表面処理剤組成物は、上記したとおり、ポリアニリンと、第1または第2の形態のドーパントと、水を含むものである。水に触れたときに皮膜から離脱しにくい第1の形態のドーパントの方が好ましい。
【0043】
第1の形態のドーパントにおける共重合体(A)または第2の形態のドーパントにおける(メタ)アクリル酸(共)重合体(B)の乳化重合工程と、ポリアニリンの水への分散工程は、どちらを先に行ってもよい。すなわち、乳化重合液にポリアニリンを分散させてもよいし、ポリアニリンの存在下で乳化重合を行ってもよい。本発明では、既に重合体となっているポリアニリンを用いるので、特許文献3のように未反応のアニリンが組成物中に残存することはない。
【0044】
本発明の表面処理剤組成物の好適な製造方法としては、乳化重合に用いる単量体混合物の一部にポリアニリンを溶解させ、この溶液を残りの単量体混合物と混合して、ポリアニリンが分散した単量体混合物を得た後、乳化重合する方法である。ポリアニリンは(メタ)アクリロイルモルホリンに溶解するので、ポリアニリンを単量体混合物に溶解させるときは、(メタ)アクリロイルモルホリンを50質量%以上含む単量体混合物で溶解させることが好ましい。
【0045】
また、第2の形態のドーパントでは、化合物(b)の添加時期は、乳化重合前でも途中でも後でも構わない。第2の形態のドーパントにおいては、化合物(b)は、ポリアニリン1当量に対して、0.2〜10当量となるように添加する。0.2当量より少ないと、ポリアニリンドープ効率が低いため、目的とする活性酸素発生能力が得られない。一方、10当量を超えると、表面処理剤組成物から得られる皮膜の耐水性が低下するおそれがある。また、第1の形態のドーパントの共重合体(A)であれば、共重合体(A)を合成する際に用いた単量体(a)の量が、ポリアニリン1当量に対して、0.2〜10当量となるようにする。なお、既に皮膜となっている製品から、単量体(a)の量を把握する場合には、単量体(a)の有する酸基、例えば、ホスホン酸基やスルホン酸基の定量をNMRやIR等で行い、用いられた単量体(a)の量を算出すればよい。
【0046】
ポリアニリンの分散工程と、ドーパント用(共)重合体(A)または(B)の重合工程と、第2の形態のドーパントにおいては化合物(b)の添加工程が終了すれば、本発明の表面処理剤組成物が得られる。本発明の表面処理剤組成物では、ドーパントである(共)重合体(A)または(B)とポリアニリンとが複合化した微粒子が水媒体中に分散した形態を取っているものと考えられる。重合後は、得られた水分散体を冷却してから、凝集物を取り除くために300メッシュ程度の濾材で濾過を行うことが好ましい。また、300メッシュ以上の濾材で濾過することにより、ポリアニリンとドーパントの粒子径が小さくなり、皮膜形成後の表面の平滑性を保つことができるため、細菌やカビが皮膜表面に付着しにくくなるので、より好ましい。
【0047】
本発明で得られる表面処理剤組成物には、必要に応じて、他のドーパント、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、可塑剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、耐水化剤、架橋剤、成膜助剤、熱可融性物質、pH調整剤、酸化剤、還元剤、防腐剤等を添加してもよい。
【0048】
<熱交換器>
本発明には、本発明の表面処理剤組成物から形成された皮膜を金属基材表面に備えた金属部材を有する熱交換器が包含される。金属基材としては、アルミニウム材またはAl−Mn系合金等のアルミニウム合金材が挙げられる。金属部材は、この金属基材の表面の全部または一部に、本発明の表面処理剤組成物から形成された皮膜を備えたものである。
【0049】
金属部材の製造に当たっては、金属基材の所望部位に、本発明の表面処理剤組成物を公知の塗工方法で塗工するか、本発明の表面処理剤組成物中に金属基材をディッピングする方法等が採用可能である。皮膜厚さとしては、乾燥後に0.1〜10μm程度となることが好ましい。1μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましい。なお、表面処理剤組成物で金属基材を表面処理した後は、50〜150℃で10分間〜1時間程度、加熱乾燥することが好ましい。
【0050】
本発明の熱交換器は、内部を冷却媒体が循環するチューブと、冷却媒体と空気の熱交換を行うフィンとを有し、冷却媒体と空気との熱交換により空気を冷却するものであることが好ましい。チューブおよび/またはフィンが、上記金属部材から形成されていることが好ましい。このフィンにはプレートも含まれ、通常、フィンはチューブに付設される。フィンおよびチューブは、いずれもその形態やサイズ等は特に限定されず、熱交換器としての性能を考慮した公知の形態およびサイズにすることができる。
【0051】
本発明の熱交換器の製造に当たっては、金属基材をチューブやフィン等に加工した後に表面処理剤組成物からなる皮膜を形成してもよく、また、加工前の金属基材に表面処理剤組成物からなる皮膜を形成して金属部材を製造した後、この金属部材をチューブやフィン等に加工してもよい。
【0052】
具体的には、本発明の熱交換器は、エアコン、カーエアコン等で使用される蒸発器であることが好ましい。特に、車載用(カーエアコン用)の蒸発器として有用である。
【実施例】
【0053】
以下実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、特にことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。
【0054】
[0.1mol/L水溶液のpHの測定方法]
メスフラスコを用いて正確に0.1mol/L水溶液を調製し、23℃に調温した後、pHメーターでpHを測定した。2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートはpH1.5、ビニルホスホン酸はpH1.9であった。
【0055】
実施例1
容器に、ポリアニリン(「PANIPOL PA」;エメラルジンベースポリアニリン;Panipol社製)2.0部を、アクリロイルモルホリン20部とスチレン5.0部の混合物に均一に溶解させて、青紫色のポリアニリン溶液を得た。この溶液を、スチレン20部、ブチルアクリレート15部、アクリル酸5.0部(6.3当量:対ポリアニリン:以下同様)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート0.8部(0.37当量)の混合液中に、ホモジナイザで撹拌しながら滴下して、ポリアニリンが均一に分散した濃緑色の単量体混合物を得た。
【0056】
続いて、温度計、冷却管、窒素導入管、滴下ロートおよび撹拌機を備えた反応容器に、イオン交換水140部と、乳化剤として「ノイゲン(登録商標)EA−167」(ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル;HLB14.8;第一工業製薬社製)3.0部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら撹拌し、乳化剤を溶解させた。上記単量体混合物を滴下ロートに入れ、全量のうちの1/10を反応容器に滴下した。続いて、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩の10%水溶液6.0部を反応容器内に添加し、70℃で30分間、乳化重合を行った。その後、残りの単量体混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、70℃で1時間撹拌を続けた。
【0057】
不揮発分32.9%、ポリアニリン含有量0.9%のポリアニリン含有表面処理剤組成物(1)を得た。
【0058】
実施例2
実施例1において、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートの使用量を2.5部(1.15当量)に変更した以外は実施例1と同様にして乳化重合を行い、不揮発分33.4%、ポリアニリン含有量が0.9%のポリアニリン含有表面処理剤組成物(2)を得た。
【0059】
実施例3
実施例1で使用した2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートをビニルホスホン酸2.4部(2.0当量)に変更した以外は実施例1と同様にして乳化重合を行い、不揮発分33.4%、ポリアニリン含有量0.9%のポリアニリン含有表面処理剤組成物(3)を得た。
【0060】
比較例1
2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートを用いなかった以外は実施例1と同様にして乳化重合を行い、不揮発分32.6%、ポリアニリン含有量0.9%のポリアニリン含有表面処理剤組成物(4)を得た。
【0061】
<活性酸素発生能力評価実験>
実施例1〜3および比較例1で得られた各表面処理剤組成物(1)〜(4)を、ポリアニリン量が0.2mgとなるように1cm2のガラス板に塗布し、80℃で5分間、120℃で15分間ベークして、試験片を作製した。続いて、上記試験片のそれぞれを、精製水1mLに7時間浸漬し、その浸漬水を0.5mL分取した。
【0062】
電子スピン共鳴(Electron Spin Resonance)装置(「JES−FE2XG」;日本電子社製)を用いて、活性酸素を検出した。具体的には、浸漬水0.5mLに、活性酸素トラップ剤(高純度DMPO*(5,5-ジメチル−1−ピロリン−N−オキサイド);ラボテック社製)5μLと、フェントン反応試薬として0.2mol/L硫酸鉄(II)水溶液を50μL加え、200rpmで振盪した。混合溶液のうち200μLを水溶液用セルに注入し、混合してから2分後に、ESRを測定した。予め、各種濃度の過酸化水素水溶液を同様にESR測定して作成しておいた検量線から、それぞれの表面処理剤組成物の活性酸素発生量を算出した(過酸化水素量換算)。なお、活性酸素発生能力は、発生した活性酸素に由来して生成する過酸化水素量を、抗菌・防黴に必要な活性酸素量(過酸化水素量換算)で除した値で表した。活性酸素発生能力が1.0以上であれば、抗菌・防黴効果が充分発揮される。
【0063】
活性酸素発生能力の耐久性の評価は、精製水1mLに120時間浸漬した試験片を、新しい精製水1mLに7時間浸漬した後の活性酸素発生能力を評価することで行った。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
<防黴評価実験>
実施例1〜3および比較例1で得られた各表面処理剤組成物(1)〜(4)を、ポリアニリン量が0.2mgとなるように1cm2のアルミニウム板に塗布し、80℃で5分間、120℃で15分間ベークして、試験片を作製した。作製した試験片と未処理のアルミニウム板を無機塩グルコース寒天平板培地の中央に置き、熱交換器表面を模擬してシャーレを30°傾けた状態にし、混合胞子懸濁液を均一に培地と供試量に1ml巻きかけて、蓋をして28℃±2℃、湿度90%以上に調整した恒温槽に入れて培養した。この傾きにより、表面粗さの違いによる胞子の付着率も加味して防黴効果を評価していることになる。初期と4週間後のカビの生育状態から防黴効果を判定した。
【0067】
ここで、無機塩グルコース寒天平板培地とは、硝酸ナトリウム0.2g、リン酸一カリウム0.7g、リン酸二水素カリウム0.3g、硫酸マグネシウム7水和物0.5g、塩化カリウム0.5g、硫酸第一鉄7水和物0.01g、グルコース30.0g、寒天20.0gを1000mlの蒸留水に溶かし、121℃、15分オートクレーブにて滅菌したものを滅菌シャーレに流し込み、平らな場所で静置したものを指す。
【0068】
また、混合胞子懸濁液とは次の方法により得られるものである。まず、硝酸ナトリウム0.2g、リン酸一カリウム0.7g、リン酸二水素カリウム0.3g、硫酸マグネシウム7水和物0.5g、塩化カリウム0.5g、硫酸第一鉄7水和物0.01g、グルコース30.0g、蒸留水1000mlからなる組成液を用いて、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムの0.005%溶液を三角フラスコに100ml作製し、121℃で15分、オートクレーブで滅菌する。次に試験菌の胞子を一白金耳ずつ採り、前記三角フラスコに加えて胞子を十分に分散させ、内容物を乾熱滅菌した濾紙で濾過し、別のフラスコで受け、混合胞子懸濁液とした。
【0069】
なお、防黴効果は、試験片上のカビ生育範囲を目視により確認し、試験片に対する占有面積率で表した。判定基準は、◎:0%以上10%未満、○:10%以上20%未満、△:20%以上30%未満、×:30%以上である。
【0070】
【表3】

【0071】
<表面粗度評価実験>
実施例1〜3および比較例1で得られた各表面処理剤組成物(1)〜(4)を、ポリアニリン量が0.2mgとなるように1cm2のアルミニウム板に塗布し、80℃で5分間、120℃で15分間ベークして、試験片を作製し、各皮膜の十点平均表面粗さ(Rz)を測定した。結果を表4に示した。表4から、本発明例の皮膜は、比較例1の皮膜に比べて表面の平滑性が高いことがわかる。
【0072】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明では、活性酸素発生能力が長期間高いレベルで持続するポリアニリン含有表面処理剤組成物を見出したので、熱交換器のフィンやチューブ等を表面処理する際に有用である。また、本発明の熱交換器には上記表面処理剤組成物から得られる皮膜が形成されているので、優れた脱臭、抗菌、防黴効果等を長期間に亘って発揮することができ、菌やカビに起因する悪臭が発生するのを抑制することができる。従って、本発明の熱交換器は、エアコン、特にカーエアコン、ラジエータ等に使用可能な高性能な熱交換器である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアニリン、水およびドーパントを含有し、このドーパントが、(メタ)アクリル酸と、0.1mol/L水溶液のpHが3.0以下となる単量体(a)とを必須的に含む単量体混合物を重合してなる共重合体(A)であるか、または、(メタ)アクリル酸(共)重合体(B)と、0.1mol/L水溶液のpHが3.0以下となる化合物(b)との混合物であり、上記単量体(a)または上記化合物(b)がポリアニリン1当量に対して0.2〜10当量用いられていることを特徴とする表面処理剤組成物。
【請求項2】
上記単量体(a)がホスホン酸基および/またはスルホン酸基を含有する単量体である請求項1に記載の表面処理剤組成物。
【請求項3】
上記ポリアニリンは、置換基を有しないポリアニリンである請求項1または2に記載の表面処理剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理剤組成物から形成されたことを特徴とする皮膜。
【請求項5】
抗菌・防黴用皮膜である請求項4に記載の皮膜。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理剤組成物から形成された皮膜を金属基材表面に備えた金属部材を有することを特徴とする熱交換器。
【請求項7】
上記金属基材が、アルミニウム材またはアルミニウム合金材である請求項6に記載の熱交換器。
【請求項8】
内部を冷却媒体が循環するチューブと、冷却媒体と空気の熱交換を行うフィンとを有し、冷却媒体と空気との熱交換により空気を冷却するものである請求項6または7に記載の熱交換器。
【請求項9】
蒸発器である請求項6〜8のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項10】
車載用である請求項6〜8のいずれかに記載の熱交換器。

【公開番号】特開2011−21065(P2011−21065A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165020(P2009−165020)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】