説明

表面処理方法及びそのための装置

【課題】 省力化され且つ新規の塗装と遜色のない美観的に美しい再塗装が可能な、そのための表面処理方法及び該方法を実施するための装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 ウォータージェット装置Aの高圧噴射ノズル19から鋼構造物に対して高圧液を噴射してその表面の塗装を剥離させ且つ錆を除去する表面処理方法において、前記高圧液中に方解石又はシラスを混入させて噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、金属、特に表面に錆が発生する鋼製の物(鋼構造物という。この明細書及び特許請求の範囲において同じ)の再塗装のための、表面処理方法及び該方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鋼構造物、例えば、ガードレールや橋の欄干あるいは橋脚の鋼製の部分は、所定期間毎に、既設の塗装をケレンやワイヤブラシ等を用いて剥がし、また、錆が発生している部分は前記用具を用いて念入りに錆を除去して後、再塗装を施していた。
【0003】
このような再塗装のための表面処理方法を採用すると、多くの作業者(工数)と多くの時間とを要する。
【0004】
従って、道路の使用を制限するようなガードレール等の再塗装のための表面処理を実施する場合には、比較的長期間にわたって車線を減少させる規制をした大がかりな工事を余儀なくされていた。
また、前記再塗装を施した部分は、既設の塗料等を完全に且つ表面が平滑になるように剥離させることが難しいことから、再塗装した部分は最初に塗装したものと比べると、明らかに美観的に劣るものであった。
【0005】
また、別の既設の塗装の剥離の手法として、ビルの外壁等の塗装の剥離に使用される、研磨材を混入した高圧液を高圧噴射ノズルから噴射することができる「ウォータージェット装置」を用いて、塗装や錆等を剥離することも考えられる(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許2000−27454号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記ウォータージェット装置を用いて鋼構造物表面の塗装を剥離する場合には、高圧液で濡れた鋼表面を乾燥させている間に表面に錆が発生し、かかる錆が発生した表面に再塗装をおこなっても、錆が発生し易くなる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みておこなわれたもので、省力化され且つ新規の塗装と遜色のない美観的に美しい再塗装が可能な、そのための表面処理方法及び該方法を実施するための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1の発明にかかる表面処理方法は、ウォータージェット装置の高圧噴射ノズルから鋼構造物に対して高圧液を噴射してその表面の塗装を剥離させ且つ錆を除去する表面処理方法において、
前記高圧液中に方解石又はシラスを混入させて噴射すること特徴とする。
【0009】
しかして、かかる表面処理方法によれば、高圧液に混入されて噴射された方解石又はシラスが、鋼構造物表面の塗装や錆に衝突してこれらを剥離させる。しかも、かかる方解石やシラスは前記高圧液にその極く一部が溶解することから、該高圧液は極く弱いアルカリ性の性状を呈し、且つ弱アルカリ性の方解石が表面に衝突することによって、コーティング状態が形成され、このため鋼構造物の表面は乾燥しても、所定期間(具体的には、剥離してから1〜7日間程度)は錆(所謂「追い錆」)が発生しない。
【0010】
しかも、その表面処理後にその表面に再塗装する際には、そのままの状態で表面を完全に乾燥させて後、ジンクプライマーを下塗りし、その上に変形エポキシ塗料を中塗りし、次に、ウレタン塗料を上塗りすれば、新たに塗装したと同様の塗装処理を施すことができる。
また、前記方解石やシラスは、殆どそのままの固形状態(結晶状態)を維持したまま前記高圧噴射ノズルから鋼構造物の表面に噴射されることから、且つ、方解石のモース硬度が約3であることから、また、シラスに含まれている火山ガラスや石英等の硬度が同様にモース硬度で3以上であることから、効果的に表面の塗膜を剥離し錆を除去することができる。
【0011】
前記表面処理方法において、前記方解石又はシラスの粒の大きさが約0.1mm〜約3.0mm程度であって、高圧液の噴射圧力が、約5Mpa〜約600Mpaであれば、良好な表面処理をおこなうことができる。また、前記噴射圧力が、約10Mpa〜約300Mpaであること、特に約20Mpa〜約80Mpaであることが、実際の作業において良好な剥離能力と鋼構造物の表面を無用に傷つけることが無い点で好ましい。
【0012】
また、前記表面処理方法において、前記ウォータージェット装置がアブレシブインジェクション型のウォータージェット装置であると、大きな剥離能力が得られる点で、また、表面に凹凸(アンカーパターン)を形成できる点で好ましく、そして、アブレシブインジェクション型のウォータージェット装置である場合には、前記粒の大きさとして、約1.0mm〜約3.0mm程度が好ましい。また、研磨材として、ガーネットや、アルミナ、珪砂等をさらに添加することも好ましい構成となる。
【0013】
また、前記ウォータージェット装置がアブレシブサスペンション型のウォータージェット装置であると、鋼構造物の表面がより平滑になるよう表面処理できる点で好ましく、かかるアブレシブサスペンション型のウォータージェット装置を使用する場合には、前記粒の大きさとして、約0.1mm〜約1.0mm程度が好ましい。
【0014】
本第2の発明にかかるウォータージェット装置は、前記第1の発明等にかかる表面処理方法を実施するための装置で、該装置が、液中にスラリーを混入して高圧噴射ノズルから噴射するウォータージェット装置であって、
前記スラリーとして、方解石又はシラスを、貯溜したスラリータンクと、
噴射する液を供給する液源と、
液源から供給される液を加圧する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプに接続されて高圧液を供給する供給管路と、
前記スラリータンク内の方解石又はシラスを強制的に供給するスラリー供給装置と、
前記供給管路側に接続され高圧液が供給される高圧液供給口、前記スラリー供給装置側に接続され該方解石又はシラスが供給されるスラリー供給口、および方解石又はシラスが混入した状態の高圧の液を排出する排出口とを有するとともに、内部で高圧液中に方解石又はシラスをミキシングするミキシングチャンバーと、
前記ミキシングチャンバーからの排出口がタンク内に挿入されることによって形成されるミキシング物供給口、およびスラリーが液中に完全にミキシングされた状態のものを高圧噴射ノズル側に供給する吐出口、前記供給口と吐出口に連接され前記ミキシングチャンバーより大きい容積の空間とを有し、該空間内において前記ミキシング物供給口から供給された方解石又はシラスの混入した高圧液をさらに均等にミキシングするとともにこれらを一時的に収容する高圧タンクと、
を具備したことを特徴とする。
【0015】
しかして、かかるウォータージェット装置によれば、噴射する高圧液中に均等に方解石又はシラス等を均等にミキシングすることができ、前記第1の発明等にかかる表面処理方法を円滑に実施することができる。
【発明の効果】
【0016】
前述のように構成された表面処理方法によると、従来の手法に比べて大幅に省力化を可能とし、且つ、再塗装時においても全く錆のない状態で良好に塗装を施すことができ、しかも、美観的に最初の塗装時と同様に塗装することを可能とする。そして、さらに、再塗装後においても、最初の塗装と同じだけ長期間にわたって錆の発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例にかかる表面処理方法を実施する際使用されるウォータージェット装置の全体の概略の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例にかかる表面処理方法を図面を参照しながら本発明をより具体的に説明する。
【0019】
図1は本発明の実施例かかる表面処理方法を実施する際使用されるウォータージェット装置の全体の概略の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1において、Aはウォータージェット装置、1は下部が漏斗状に形成された前記ウォータージェット装置Aのミキシングチャンバーである。
かかるミキシングチャンバー1の上面1Aには開口(高圧液供給口)1aが形成され、この開口1aは供給管路11を介して、高圧ポンプPhの吐出口に接続されている。また、この高圧ポンプPhの吸入口は、圧力ポンプP1の吐出口に接続されている。さらに、この圧力ポンプP1の吸入口は、接続管路12を介して、この実施例において液源である清水タンクT1に接続されている。
【0021】
また、前記ミキシングチャンバー1の側壁部1Bには、開口(スラリー供給口)1bが形成され、該開口1bには、斜め上方に延設された接続管13の先端が接続され、かかる接続管13を介して、エアポンプ(スラリー供給装置)P2の吐出口に接続されている。また、前記エアポンプP2の吸入口は接続管路14を介して、スラリータンクT2に接続されている。そして、前記スラリータンクT2には、スラリーである、方解石又は該方解石とシラス等が貯蔵されている。また、前記スラリータンクT2と前記エアポンプP2との間には、供給するスラリーの量を調整する調整バルブV2が配置されている。
【0022】
また、前記ミキシングチャンバー1の側壁部1Bには、さらに別の開口(強化スラリー供給口)1cが形成され、該開口1cには、斜め上方に屈曲した接続管23の先端が接続され、かかる接続管23を介して、エアポンプ(スラリー供給装置)P3の吐出口に接続されている。また、前記エアポンプP3の吸入口は接続管路24を介して、第2のスラリータンクT3に接続されている。このスラリータンクT3には、強化スラリーである、ガーネット又はアルミナ又は珪砂等が貯蔵されている。また、前記スラリータンクT3と前記エアポンプP3との間には、供給する強化スラリーの量を調整する調整バルブV3が配置されている。
【0023】
前記ミキシングチャンバー1の下端、つまり漏斗状になった中央の部位には、排出口1Cが形成されている。この実施例では、前記排出口1Cは、先端(下端)が拡径状(ラッパ状)になったパイプによって構成されている。
【0024】
そして、前記ミキシングチャンバー1のラッパ状の排出口(ミキシング物供給口)1Cは、高圧タンク2の上面2Aの中心CLよりやや側方部位に、該排出口1Cの開口部分が高圧タンク2内部に開口するような状態で、配置されている。また、この高圧タンク2の上面2Aには、図示しない高圧噴射ノズル側にスラリーが均等に混入した高圧の液を供給する吐出口2Bが形成され、この吐出口2Bは管路15によって、高圧噴射ノズル19に接続されている。そして、このように上面2Aに、排出口1Cからなるミキシング物供給口と、吐出口2Bを具備したこの高圧タンク2は、この実施例の場合、容積的には、前記ミキシングチャンバー1の10〜40倍程度の容積を有する。そして、前記ミキシングチャンバー1の容積は、この実施例の場合、10リットル〜15リットル程度の容積となっている。
【0025】
また、この実施例の場合、前記エアポンプP2の吐出圧力は制御装置Cによって調整可能に構成され、方解石又はシラス(以下、スラリーという)をミキシングチャンバー1内に強制的に供給できるように、前記ミキシングチャンバー1内の圧力(負圧力)よりやや高い圧力になるよう、つまり、前記高圧ポンプPhの圧力に合わせて自動的に調整可能に構成されている。
また、前記調整バルブV2は、制御装置の図示しないスラリー量調整ダイヤルを操作することによって、該調整バルブV2の開度を変化させて、スラリーの供給量が適宜用途に応じて調整できるように構成されている。
【0026】
また、この実施例の場合には、前記エアポンプP3の吐出圧力は前記制御装置Cによって調整可能に構成され、ガーネット又はアルミナ又は珪砂等(以下、強化スラリーという)をミキシングチャンバー1内に強制的に供給できるように、前記ミキシングチャンバー1内の圧力(負圧力)よりやや高い圧力になるよう、つまり、前記高圧ポンプPhの圧力に合わせて自動的に調整可能に構成されている。
また、前記調整バルブV3は、制御装置Cの図示しない第2スラリー量調整ダイヤルを操作することによって、該調整バルブV3の開度を変化させて、強化スラリーの供給量が適宜用途(処理状態)に応じて必要な場合に必要な量が供給できるように構成されている。
【0027】
そして、前記高圧ポンプPhは、制御装置Cの図示しない圧力調整ダイヤルを操作することによって、圧力を適宜用途(処理状態)に合わせて調整することが可能に構成されている。
【0028】
また、前記制御装置Cは、前記高圧噴射ノズル側の管路15に配置された流量センサー(図示せず)からの流れ停止信号によって、高圧噴射ノズル19からの高圧の液の噴射が停止された場合には、一時的に前記各ポンプを停止させるよう構成されている。なお、図1において、制御装置Cからのあるいは制御装置Cへの一点鎖線は、制御信号線を表す。
【0029】
しかして、このように構成されたこのウォータージェット装置Aは、鋼構造物(この実施例の場合はガードレール)の表面に塗られている既設の塗料の剥離や錆の除去等の表面処理作業において、以下のように作用する。以下、本発明の表面処理方法の実施例の説明とともに説明する。
【0030】
即ち、表面処理の作業開始に先立ち、まず、前記清水タンクT1内に清水を供給するとともに、前記スラリータンクT2内に、粒の大きさ(粒の最も大きいところの寸法:以下同じ)が約0.1mm〜約3.0mm程度、好ましくは約0.1mm〜約1.0mmの方解石を、スラリーとして供給する。この方解石に代えて、粒の大きさが約0.1mm〜約1.0mm程度のシラスを供給してもよく、あるいはこれらを混合したものを供給してもよい。
【0031】
さらに、アンカーパターンを形成したい等の場合には、前記第2スラリータンクT3内に、ガーネット、アルミナ、珪砂等のいずれか、あるいはこれらを混合したものを、強化スラリーとして供給する。かかる粒の大きさとしては、約0.3mm〜約1.9mm程度のもの、好ましくは約0.3mm〜約1.0mm程度が用いられる。
【0032】
前記準備が完了した状態で、このウォータージェット装置AのメインスイッチをONにすると、制御装置Cは各ポンプ(P1〜P3,Ph)を可動させ、清水タンクT1から接続管路12を介して清水が供給される。この供給量は、前記圧力ポンプP1の回転数に応じて供給され、この回転数は、前記制御装置Cの調整ダイヤルにより、おこなわれる。つまり、かかる調整ダイヤルの設定は、高圧噴射ノズル19から噴射しようとする所望の噴射量によって、予めあるいは作業中に調整される。
【0033】
より詳細に説明すると、前記圧力ポンプP1からの清水(液)は高圧ポンプPhに供給され、この高圧ポンプPhで、所望の圧力に加圧(昇圧)される。具体的には、この実施例では、約5Mpa〜約600Mpaの範囲で、作業内容に合わせて調整可能で、つまり対象となる鋼構造物の表面処理の内容に合わせて、適宜調整する。
例えば、道路のガードレールの既設の塗料を剥がし且つ発生している錆を除去する場合には、約10Mpa〜約300Mpa程度、一般的には、約20Mpa〜約100Mpa程度、特に多くの場合には50Mpa〜約80Mpa程度に調整する。また、表面処理の対象が燃料貯蔵用のタンク等のように、表面に凹凸(アンカーパターン)を形成しなければならない場合には、約300Mpa〜約500Mpa程度に調整して使用する。
【0034】
そして、前記高圧ポンプPhで加圧された液は、供給管路11を介して、該高圧ポンプPhの吐出口から、ミキシングチャンバー1の開口1aに供給され、該ミキシングチャンバー1内をその排出口1Cに向かって通過する。この高圧の液の通過によって、ミキシングチャンバー1内には負圧が発生する。
【0035】
一方、前記エアポンプP2の回転により、スラリータンクT2からスラリーが、接続管路14、調整バルブV2、エアポンプP2を介して、前記接続管13に供給される。この調整バルブV2も、予めあるいは作業中に前記制御装置Cのスラリー用の調整ダイヤルを操作することによって、高圧噴射ノズルから噴射する液中にどの程度の割合でスラリーを混入するか調整することができる。
【0036】
また、必要に応じて、つまり、前述のようにアンカーパターンを形成したいようなときや錆の程度が「ひどい」場合には、前記エアポンプP3を所望の回転数で作動させて、スラリータンクT3から強化スラリーが、接続管路24、調整バルブV3、エアポンプP3を介して、前記接続管23に供給される。前記調整バルブV3も、予めあるいは作業中に前記制御装置Cの調整ダイヤルを操作することによって、高圧噴射ノズル19から噴射する液中にどの程度の割合で強化スラリーを混入するかの調整することができる。
【0037】
また、前記エアポンプP2(及びエアポンプP3)と調整バルブV2(及び調整バルブV3)は、前記制御装置Cの制御によって、前記圧力ポンプP1の吐出量の変化に自動的に追随して、噴射される液の量に対して常に所望割合のスラリー(及び強化スラリー)が供給できるようになっており、従って、前記圧力ポンプP1の回転数を増加させる側に調整した場合には、その増加割合に合致してスラリー(及び強化スラリー)の供給量も増加するように前記エアポンプP2(及びエアポンプP3)の回転数と調整バルブV2(及び調整バルブV3)の開度も増加するべく、前記制御装置Cが自動的に制御をおこなう。従って、このスラリー(及び強化スラリー)の供給に対しておこなうべき操作は、予め液に対してスラリー(及び強化スラリー)の混入量(混入割合)を、前記調整バルブV2(及び調整バルブV3)の各調整ダイヤルを調整しておくだけである。
【0038】
そして、前記エアポンプP2によって、強制的に供給管13にスラリーが供給され、また必要な場合には、前記エアポンプP3によって、強制的に供給管23に強化スラリーが供給されるが、前記ミキシングチャンバー1内へは、これらエアポンプP2及びエアポンプP3の吐出圧力と前記負圧によって、常に正確に前記調整によって設定された所定量のスラリー及び強化スラリーが供給される。そして、このミキシングチャンバー1内では、高圧液中に、スラリー(及び必要な場合には強化スラリー)が混入され、漏斗状になった底部を経て、ラッパ状の排出口(ミキシング物供給口)1Cから、高圧タンク2内に供給される。供給されたスラリー(及び必要な場合には強化スラリー)を含む高圧の液は、このラッパ状の形状に起因して、高圧タンク2の大きな空間内でその底部方に向かって拡散し、この高圧タンク2内で、完全にスラリー(及び必要な場合には強化スラリー)が液中に均等に混入された状態になる。
【0039】
そして、前記高圧噴射ノズル19を把持した作業者が、ガードレール30に向けて噴射を開始すると、高圧タンク2の吐出口2Bから管路15を経て、スラリー(及び必要な場合には強化スラリー)が均等に分布した状態で混入した、高圧の液(高圧液)は、高圧噴射ノズル19側に供給され、該高圧噴射ノズル19から噴射される。
【0040】
そして、本発明にかかる表面処理方法の場合、前記高圧液の噴射によって、また、該高圧液中に存在するスラリーたる「モース硬度が約3の方解石」がガードレール表面の塗膜に衝突することによって、塗膜は有効に且つ効率良く剥離されるとともに、高圧液に混入された方解石によって噴射される液が極く弱いアルカリ性の性状となっており弱アルカリ性の方解石が衝突するため、かかる噴射した高圧液が付着したガードレールの表面が乾燥するまでの期間及び該乾燥してから所定期間(具体的には、剥離してから1〜7日間程度)、該剥離した後の表面に錆(所謂「追い錆」)が発生することはない。
【0041】
この結果、乾燥したガードレールの表面に、何ら前処理を施すことなく、作業者が、そのままプライマーを塗装し、その上に下塗り塗装、及び上塗り塗装処理を施すことができる。
つまり、本発明にかかる表面処理方法の場合には、前記「追い錆」を防止するために防錆液を使用する必要がなく、且つ、防錆液によってガードレールの表面がアルカリ性状になっているのを、中性あるいはこれに近い状態にするような後処置をする必要もない。
【0042】
また、前述のように、ウォータージェット装置Aによって噴射された液(清水)及び方解石は、環境を汚染するものでないため、これらの液及び方解石等を特段回収するような必要もない。
【0043】
ところで、前記表面処理作業において、作業者が該高圧噴射ノズル19に配置されているトリガーを操作することによって、高圧噴射ノズル19からの噴射を一時的に止めた場合には、前記管路15に配設した流量センサー(図示せず)がこの状態(流れの停止状態)を検出し、前記制御装置Cは、高圧タンク2内の圧力が所定以上にならないように、各ポンプ(P1〜P3,Ph)を一時的に停止させる。
【0044】
本実施例にかかるウォータージェット装置Aによれば、上述のように本発明にかかる表面処理方法が実行される結果、スラリーを連続して且つ常に所望の割合を維持して液中に混入することができる。しかも、この実施例の装置の場合には、このスラリーの混入割合を、高圧の液の供給量の変化に合わせて自動的に調整して、常に一定のスラリーを混入することができる。
【0045】
前記実施例において、スラリーとして「方解石」が使用されていたが、同じような性状を有する「シラス」やこれに均等なものを用いても良い。
また、前記強化スラリーとしては、「ケイ砂」や「ガーネット」や「アルミナ」やこれに均等なものを用いることができる。
【0046】
前記実施例では、主として、ガードレールの既設の塗装や錆等を剥離する表面処理を例に挙げて説明したが、他の物、例えば、鋼製の橋脚や燃料タンクその他の鋼構造物等に利用することができる。
また、前記実施例では、アブレシブサスペンション型のウォータージェット装置を例に挙げて説明したが、アブレシブインジェクション型のウォータージェット装置を用いても同様に実施することができる。
【0047】
また、本発明は、前記実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的思想に基づく範囲において種々の形態で実施することが可能となることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明にかかる表面処理方法およびその方法を実施する装置は、ガードレールや橋脚等の鋼構造物の再塗装等のための表面処理等に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
A…ウォータージェット装置
1…ミキシングチャンバー
Ph…高圧ポンプ
T1…清水タンク
P1…圧力ポンプ
P2…圧力ポンプ
T2…スラリータンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォータージェット装置の高圧噴射ノズルから鋼構造物に対して高圧液を噴射してその表面の塗装を剥離させ且つ錆を除去する表面処理方法において、
前記高圧液中に方解石又はシラスを混入させて噴射すること特徴とする表面処理方法。
【請求項2】
前記方解石又はシラスの粒の大きさが約0.1mm〜約3.0mm程度であって、高圧液の噴射圧力が、約5Mpa〜約600Mpaであることを特徴とする請求項1記載の表面処理方法。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の表面処理方法を実施するための装置で、該装置が、液中にスラリーを混入して高圧噴射ノズルから噴射するウォータージェット装置であって、
前記スラリーとして、方解石又はシラスを、貯溜したスラリータンクと、
噴射する液を供給する液源と、
液源から供給される液を加圧する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプに接続されて高圧液を供給する供給管路と、
前記スラリータンク内の方解石又はシラスを強制的に供給するスラリー供給装置と、
前記供給管路側に接続され高圧液が供給される高圧液供給口、前記スラリー供給装置側に接続され該方解石又はシラスが供給されるスラリー供給口、および方解石又はシラスが混入した状態の高圧の液を排出する排出口とを有するとともに、内部で高圧液中に方解石又はシラスをミキシングするミキシングチャンバーと、
前記ミキシングチャンバーからの排出口がタンク内に挿入されることによって形成されるミキシング物供給口、およびスラリーが液中に完全にミキシングされた状態のものを高圧噴射ノズル側に供給する吐出口、前記供給口と吐出口に連接され前記ミキシングチャンバーより大きい容積の空間とを有し、該空間内において前記ミキシング物供給口から供給された方解石又はシラスの混入した高圧液をさらに均等にミキシングするとともにこれらを一時的に収容する高圧タンクと、
を具備したことを特徴とするウォータージェット装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−24860(P2012−24860A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162784(P2010−162784)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(506111402)株式会社エコボンド (6)
【Fターム(参考)】