説明

表面処理装置のコンベア

【課題】搬送される基板材について、第1に、巻付きが防止され、第2に、角折れも防止され、第3に、歪みや痕も防止されると共に、第4に、落下が防止され、第5に、搬送能力も向上し、第6に、反りやカール等が回避されると共に、下スプレー効率も向上する、表面処理装置のコンベアを提案する。
【解決手段】このコンベア8は、基板の製造工程中、基板材Aを搬送しつつ処理する表面処理装置6において使用される。そして搬送ローラ13が、各回転駆動軸14についてそれぞれ多数、フリーローラ15と交互に取付けられている。搬送ローラ13は、回転駆動軸14に取付け固定されており、フリーローラ15は、搬送ローラ13間の左右隙間空間を埋めると共に、回転駆動軸14にフリーに取付けられている。そして、各搬送ローラ13とフリーローラ15は、集合した全体で上下ウエーブ曲面Fを形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理装置のコンベアに関する。すなわち、基板の製造工程で使用される表面処理装置のコンベアに、関するものである。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
電子機器に用いられる回路用の基板は、小型軽量化,極薄化,フレキシブル化の進展がめざましく、形成される回路も微細化,高密度化が著しい。
そして、基板の製造工程では表面処理装置が用いられており、基板材が、薬液や洗浄液等にて表面処理されている。
【0003】
《従来技術》
この種の表面処理装置では、基板材がコンベアにて水平搬送されつつ、スプレーノズルから薬液や洗浄液等が噴射され、もって表面処理が順次施されて、回路が形成され基板が製造されている。
図6は、この種従来例の表面処理装置のコンベアの説明に供し、要部の平面説明図であり、(1)図は1例を示し、(2)図は他の例を示す。
同図にも示したように、表面処理装置1では、基板材Aのコンベア2として、図6の(1)図に示したように、ストレートローラ3を搬送ローラとして用い、前後搬送方向Bに列設したタイプや、図6の(2)図に示したように、ホイール4を搬送ローラとして用い、前後搬送方向Bに噛み合うように一定ピッチ間隔で配設したタイプが、代表的に使用されていた。図中5は、回転駆動軸である。
これに対し、本発明者および出願人は、ウエーブローラを搬送ローラとして採用し、搬送方向に列設したタイプのコンベアを発明,開発し、特願2005−135522号として特許出願した。
【0004】
《先行技術文献情報》
この特願2005−135522号は、次の特許文献1として出願公開されている。
【特許文献1】特開2006−312515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような従来例については、次の点が課題とされていた。
《第1の課題点》
第1に、ストレートローラ3を使用した従来例のコンベア2については、基板材Aの巻付き事故が発生し易い、という問題が指摘されていた。
すなわち、基板材Aは極薄化が著しく腰が弱く柔らかく、更に薬液等で濡らされているので、ストレートローラ3に巻付き易く、もって基板材Aの安定搬送に支障が生じ、搬送トラブル発生の原因となっていた。
更に基板材Aが、薬液等の圧や重量にて、ストレートローラ3間の前後隙間に入り込んでしまい、ストレートローラ3間を渡ることができなくなる、という問題も指摘されていた。
【0006】
《第2の課題点》
第2に、これに対しホイール4を使用した従来例のコンベア2については、このような巻付きや渡りの問題は発生しないが、基板材Aの角折れ事故が発生し易い、という問題が指摘されていた。
すなわち、前後左右の各ホイール4間には、構造上必須的に隙間空間が存在しており、腰が弱く柔らかい基板材Aは、その端部の角がこの隙間空間に来ると、薬液等の圧や重量に起因して垂れ下がり、角折れしてしまうことが多々あり、この面から、安定搬送上問題が指摘されていた。
【0007】
《第3の課題点》
第3に、ホイール4を使用した従来例のコンベア2については、更に、基板材Aが歪み易く、表面処理精度に悪影響を及ぼす、という問題も指摘されていた。
すなわち、各ホイール4は一定ピッチ間隔で回転駆動軸5に配設されており、腰が弱く柔らかい基板材Aが、薬液等の圧や重量に起因して大きく上下に大波状に歪んでしまい、もって基板材A表面における薬液等の流れが阻害され、エッチング精度,その他の表面処理精度が低下する、という問題が指摘されていた。
更に、基板材Aがホイール4と擦れて痕が付く、という問題も指摘されていた。
【0008】
《第4の課題点》
第4に、ウエーブローラを採用した特許文献1の技術は、ストレートローラ3やホイール4を使用したコンベア2の前記第1,第2,第3の問題点を、解消した優れたものである。
しかしながら、基板材Aが板厚25μm以下と極めて極薄化されている場合は、ウエーブローラ間の0.5mm〜1.0mm程度の前後隙間に、入り込んで落下することがあった。すなわち、基板材Aの柔軟性,薬液の圧,重量等に起因して、落下事故を完全に防止することができず、安定搬送上の課題とされていた。
【0009】
《第5の課題点》
第5に、更に特許文献1の技術については、基板材Aが極薄化されているもののまだ比較的板厚が厚い場合においては、基板材Aとウエーブローラ間の接触面積が不足気味となることがある、という指摘があった。
すなわち、ウエーブローラのウエーブピッチは75mm程度とされており、もって基板材Aが比較的硬質の場合は、基板材Aと接触回転するウエーブ凸部の頂面面積が不足気味となることがあり、もってコンベアとしての搬送能力確保が望まれることもあった。
【0010】
《本発明について》
本発明の表面処理装置のコンベアは、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、搬送される基板材について、第1に、巻付きが防止され、第2に、角折れも防止され、第3に、歪みや痕も防止されると共に、第4に、落下が防止され、第5に、搬送能力も向上し、第6に、反りやカール等が回避されると共に、下スプレー効率も向上する、表面処理装置のコンベアを提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
請求項1の表面処理装置のコンベアは、基板の製造工程中、基板材を搬送しつつ表面処理する表面処理装置において使用される。そして搬送ローラが、各回転駆動軸についてそれぞれ多数、フリーローラと交互に取付けられていること、特徴とする。
請求項2については次のとおり。請求項2のコンベアでは、請求項1において、該搬送ローラは、該回転駆動軸に取付け固定されており、該回転駆動軸にて回転駆動される。これに対し該フリーローラは、該搬送ローラ間の左右隙間空間を埋めると共に、該回転駆動軸にフリーに取付けられており、該回転駆動軸にて回転駆動されることなく姿勢保持していること、を特徴とする。
請求項3については次のとおり。請求項3のコンベアでは、請求項2において、該回転駆動軸に取付けられた各該搬送ローラと該フリーローラは、集合した全体で上下ウエーブ曲面を形成している。そして該ウエーブ曲面では、多数のテーパー状凹凸が左右方向に一定ピッチと高さで、小波状に繰り返して連続形成されていること、を特徴とする。
【0012】
請求項4については次のとおり。請求項4のコンベアでは、請求項3において、該回転駆動軸は、上下対をなすと共に、前後の搬送方向に多数列設されている。そして、該搬送ローラと該フリーローラは、上下対をなして隙間無く対向位置すると共に、前後の搬送方向に隙間無く対向位置すべく、配設されていること、を特徴とする。
請求項5については次のとおり。請求項5のコンベアでは、請求項4において、該搬送ローラは、横軸の短円柱状をなすと共に、外周面が凸曲状をなしている。該フリーローラは、上下が該搬送ローラに準じた円弧状をなし、前後が該搬送ローラに対応した切欠き円弧状をなすと共に、外周面が凹曲状をなしている。そして、該搬送ローラの上下外周面の凸曲状が、該ウエーブ曲面の凸を形成し、該フリーローラの上下外周面の凹曲状が、該ウエーブ曲面の凹を形成していること、特徴とする。
請求項6については次のとおり。請求項6のコンベアでは、請求項4において、隣接する上下の該搬送ローラ間や前後の該搬送ローラ間は、それぞれ、介在する該フリーローラの位置で、相互に食い込むようにオーバーラップしていること、を特徴とする。
【0013】
請求項7については次のとおり。請求項7のコンベアでは、請求項4において、該基板材は、上下の該搬送ローラと該フリーローラとの間に、挟み込まれると共に、前後の該搬送ローラと該フリーローラとの間で、受け渡されつつ搬送される。もって該基板材は、該ウエーブ曲面に基づき湾曲凹凸形状が小波状に波打ち形成され、その分、腰ができ強度が付与されること、を特徴とする。
請求項8については次のとおり。請求項8のコンベアでは、請求項4において、該搬送ローラと該フリーローラとは、左右方向の肉厚が同一に設定されると共に、それぞれ外周の最大径と最小径の差が、0.5mm以上〜5mm以下に設定されている。又、各該搬送ローラ間の左右ピッチと、各該回転駆動軸間の前後ピッチとが、ほぼ同一寸法に設定されていること、を特徴とする。
請求項9については次のとおり。請求項9のコンベアでは、請求項4において、該表面処理装置は、基板の製造工程の現像工程,エッチング工程,剥離工程,洗浄工程,又は乾燥工程で使用される。そして該表面処理装置では、現像液,エッチング液,剥離液,洗浄液,又は乾燥用エアーが、上下からスプレー噴射される。又、該基板材は、フレレキシブル基板材,その他の極薄で柔軟な基板材よりなること、を特徴とする。
【0014】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)この表面処理装置は、基板の製造工程で使用される。
(2)そして、そのコンベアは、回転駆動軸に交互に取付けられた搬送ローラとフリーローラにて、ウエーブ曲面が形成されると共に、隙間なく対向位置している。
(3)そこで基板材は、上下の搬送ローラとフリーローラ間に挟み込まれつつ、前後の搬送ローラとフリーローラ間で受け渡される。
(4)もって基板材は、湾曲凹凸形状が波打ち形成され、もって腰ができ強度が付与される。
(5)そこで、腰が弱く柔軟であった基板材が、薬液等の圧や重量に耐える強度を備えるようになる。
【0015】
(6)さてそこで、このコンベアでは、第1に、基板材への強度付与と、フリーローラの剥がし機能と、下段のフリーローラ上の薬液等の貯め形成とにより、基板材の搬送ローラへの巻付きが防止される。
第2に、基板材への強度付与と、フリーローラにて搬送ローラ間の前後隙間や左右隙間が無くなることにより、基板材の角折れが防止される。
第3に、基板材への強度付与と、フリーローラにて搬送ローラ間の左右隙間が無くなり、基板材下面がサポートされることにより、基板材の歪みが防止される。又、下段の薬液等の貯め形成も加わり、基板材の擦れも回避される。
第4に、基板材への強度付与と、前後の搬送ローラとフリーローラ間に前後隙間がないことと、前後の搬送ローラのオーバーラップとにより、基板材がスムーズに搬送される。
第5に、搬送ローラとフリーローラが交互に配されているので、搬送ローラと基板材との接触面積が大きくなる。
第6に、基板材への強度付与により、反り,カール,その他が防止され、下側スプレーゾーンも適宜設定可能となる。
(7)さてそこで、本発明の表面処理装置のコンベアは、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0016】
《第1の効果》
第1に、基板材の巻付き事故が防止される。すなわち、本発明のコンベアでは、まず、基板材は、湾曲凹凸形状の波打ち形成により腰ができ強度が付与され、更に、フリーローラが剥がし機能を発揮し、下段のフリーローラ上付近に薬液等の貯めが形成されて基板材を浮かばせる。
これらにより、前述したこの種従来例のように、基板材が搬送ローラに巻付く事故が防止され、もって基板材の安定搬送が実現され、搬送トラブルが回避される。
【0017】
《第2の効果》
第2に、基板材の角折れも防止される。すなわち、本発明のコンベアでは、まず、基板材は腰ができ強度が付与されており、更に、フリーローラで搬送ローラ間の前後隙間や左右隙間が埋められている。
もって、前述したこの種従来例のように、基板材の端部が隙間空間で角折れする事故が防止され、この面からも、安定搬送が実現され搬送トラブル発生が回避される。
【0018】
《第3の効果》
第3に、基板材の歪みや痕も防止される。すなわち、本発明のコンベアでは、基板材は腰ができ強度が付与されると共に、搬送ローラ間の左右隙間がフリーローラにて埋められており、下面がフリーローラでサポートされている。
これらにより、前述したこの種従来例のように、基板材が大きく上下に歪むことはなく、もって基板材外表面における薬液等のスムーズな流れが確保されるようになり、エッチング精度,その他の表面処理精度が向上する。又、下段のフリーローラ上付近に薬液等の貯めが形成されることも加わり、基板材との擦れ、そして痕等の発生も回避される。
【0019】
《第4の効果》
第4に、基板材の落下は確実に防止される。すなわち、本発明のコンベアでは、基板材は腰ができ強度が付与されると共に、前後の搬送ローラとフリーローラ間が前後隙間無く対向位置しており、前後の搬送ローラ間はオーバーラップしている。
これらにより、基板材は搬送方向にスムーズに受け渡され,乗り移って行くようになり、前述したこの種従来例に比し、落下事故が一掃され安定搬送が実現される。
【0020】
《第5の効果》
第5に、基板材の搬送能力も向上する。すなわち、本発明のコンベアでは、搬送ローラとフリーローラとが交互に配されており、もって基板材との接触回転面積が、前述したこの種従来例に比し大きく増加するので、搬送能力に優れており搬送力が向上する。
【0021】
《第6の効果》
第6に、基板材の反りやカール等が回避されると共に、下スプレー効率も向上する。すなわち、本発明のコンベアでは、基板材は腰ができ強度が付与されており、もって反り,カール,しわ,めくれ,撓み,湾曲等々の発生が防止され、この面からも安定搬送が実現される。又、基板材下面への薬液や洗浄液等のスプレーを、効率的かつ迅速に実現可能となる。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
《図面について》
以下、本発明の表面処理装置のコンベアを、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。
図1〜図4は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供する。そして、図1の(1)図は、搬送ローラ等の正断面図であり、(2)図は、コンベアの要部の正断面図である。図2は、コンベアの要部の平面図である。
図3の(1)図は、コンベアの要部の分解側面図、(2)図は、搬送ローラの側面図、(3)図は、フリーローラの側面図、(4)図は、コンベアの要部の拡大側面図である。図4は、表面処理装置の正断面説明図である。
図5は、表面処理装置の側面説明図である。
【0023】
《基板について》
本発明の表面処理装置6は、基板の製造工程で使用される。そこで、まず基板について説明しておく。
電子機器に使用されるプリント配線基板等の回路基板は、小型軽量化,極薄化,微細回路化,高密度回路化,多層化等の進展がめざましい。回路基板の硬軟についても、従来よりのリジット基板等の硬性基板に比し、フレキシブル基板その他極薄で柔軟な軟性基板の進展,増加が著しく、半導体部品が回路と一体的に組み込まれた半導体パッケージ基板の普及も急速である。
そこで、最近の基板要求度としては、板厚が、50μm〜25μm程度更には25μm以下のレベルまで、又、回路幅や回路間スペースが、30μm〜20μm程度更には15μmまで、それぞれ極薄化,微細化されてきている。
そして、このような基板は、例えば、次の製造工程を辿って製造される。すなわち、銅張り積層板よりなる基板材Aの外表面に、→感光性レジストを塗布又は張り付けてから、→回路のネガフィルムを当てて露光した後、→回路形成部分以外のレジストを、現像により溶解除去し、→回路形成部分以外の銅箔を、エッチングにより溶解除去してから、→回路形成部分のレジストを、剥膜除去することにより、→基板材Aの外表面に、銅箔にて回路が形成され、→もって、基板が製造される。
基板は、このようになっている。
【0024】
《表面処理装置6について》
表面処理装置6は、このような基板の製造工程で使用され、基板材Aを薬液C等にて表面処理する。そこでまず、表面処理装置6(1)について、図4,図5等を参照して一般的に説明しておく。
表面処理装置6(1)は、基板の製造工程中、例えば現像工程,エッチング工程,剥離工程,洗浄工程,又は乾燥工程において、現像装置,エッチング装置,剥離装置,洗浄装置,又は乾燥工程として使用される。
そして、その各処理室7内においては、コンベア8(2)で搬送される基板材Aに対し、スプレーノズル9等から、例えば現像液,エッチング液,剥離液等の薬液Cや、洗浄液,乾燥エアー等(以下、単に薬液C等という)が、スプレー噴射され、もって基板材Aが、薬液処理,洗浄処理,乾燥処理等、表面処理される。
【0025】
そして表面処理装置6(1)は、その処理室7内に、コンベア8(2),スプレーノズル9,液槽10等を備えている例が、代表的である。
スプレーノズル9は、コンベア8(2)にて水平搬送される基板材Aの真上や真下に、多数配設され、もって基板材Aの回路形成面に、上下間隔を存しつつ対向位置しており、前後搬送方向Bと左右幅方向Dとにわたって、所定ピッチ間隔で多数列設されている。なお、スプレーノズル9が配設されたスプレーゾーンEにおいては、そこだけ、コンベア8(2)の配設が欠如せしめられている。
薬液C等は、処理室7下部の液槽10から、ポンプ11や配管12を介し各スプレーノズル9に圧送されて、基板材Aにスプレー噴射される。そして、基板材Aの外表面を、左右幅方向Dに向け流れつつ表面処理した後、基板材Aの左右両サイドから流下して、液槽10に回収され、事後も循環使用される。
なお、図示したスプレーノズル9は、基板材Aの表裏両面に向け対向配設されているが、基板材Aが回路形成面が片面のみの片面基板の場合は、その片面に向けてのみ対向配設されるケースも考えられる。
表面処理装置6は、このようになっている。
【0026】
《コンベア8の概要について》
以下、本発明の表面処理装置6のコンベア8について、図1,図2,図3等を参照して説明する。
このコンベア8は、基板の製造工程中、基板材Aを水平搬送しつつ表面処理する表面処理装置6において使用され、搬送ローラ13が、各回転駆動軸14についてそれぞれ多数、左右幅方向Dに、フリーローラ15と交互に取付けられている。
【0027】
これらについて、更に詳述する。まず回転駆動軸14は、左右幅方向Dにその軸方向を向けて配設されており、スプレーゾーンE(図5を参照)を除き上下対をなすと共に、前後搬送方向Bに多数列設されている。そして、それぞれギヤやシャフト等の駆動機構16を介し、モータ等の駆動源に接続されている。
次に、搬送ローラ13は、各回転駆動軸14にそれぞれ多数、取付け固定されており、回転駆動軸14にて回転駆動される。そして、横軸短円柱状,円板状をなすと共に、全外周面が凸曲状17に突出しており、全体は略ドーナッツ状をなしている。
搬送ローラ13の寸法関係は、直径が10mm〜30mm程度、例えば大径が25mmで小径が23mmとされ、同肉厚のフリーローラ15を介した左右幅方向Dの1ピッチが、例えば25mm(つまりその肉厚が12.5mm)程度とされる。なお、基板材Aの左右幅方向Dのサイズは、例えば800mm程度であり、これに見合った左右サイズ間に搬送ローラ13等は配設される。
そして搬送ローラ13は、外周面が凸曲状17をなすことに鑑み、その大径と小径との差が、0.5mm〜5mm程度となっている。又、搬送ローラ13の左右幅方向Dの1ピッチは、回転駆動軸14間の前後搬送方向Bの1ピッチと、寸法的にほぼ一致している。
これらの数値設定により、基板材Aの安定搬送に最適な環境設定となる。
【0028】
次に、各フリーローラ15は、搬送ローラ13間の左右隙間空間を埋めると共に、回転駆動軸14にフリーに取付けられており、回転駆動軸14にて回転駆動されることなく姿勢保持している。又、フリーローラ15は、上下が搬送ローラ13に準じた円弧状をなし、前後が搬送ローラ13に対応した切欠き円弧状をなすと共に、外周面が凹曲状18をなしている。
すなわち、フリーローラ15の代表例は、搬送ローラ13と同一寸法の横軸短円柱状のもの、そして左右幅方向Dの肉厚も搬送ローラ13と同一寸法のものについて、その外周面を、凸曲状17に加工するのではなく凹曲状18に加工すると共に、前後部を搬送ローラ13の円弧に対応して逆円弧状に切欠いた形状よりなる。
そして、このようなフリーローラ15は、横貫通中心穴に回転駆動軸14が遊挿されると共に、前後に搬送ローラ13が対向位置しており、もってその姿勢を常時不動に保持している。図中19は、回転駆動軸14を保持するコンベアフレームである。
コンベア8は、概略このようになっている。
【0029】
《コンベア8のウエーブ曲面F等について》
そしてコンベア8は、このような回転駆動軸14,搬送ローラ13,フリーローラ15等を備えてなると共に、次のように配設され、もってウエーブ曲面Fが形成されている。
まず、搬送ローラ13とフリーローラ15とは、上下対をなして隙間無く対向位置する関係にあると共に、前後搬送方向Bに隙間無く対向位置すべく関係に、配設されている。つまり、搬送ローラ13の外周面の凸曲状17と、フリーローラ15の外周面の凹曲状18とが、隙間無く対向位置している。
そして、1本の回転駆動軸14について、1本の搬送ローラを取付けるのではなく、多数の搬送ローラ13やフリーローラ15を取付けたことにより、このように前後隙間のない対向位置関係への道が開けた次第である。
さてそこで、隣接する上下の搬送ローラ13間や、隣接する前後の搬送ローラ13間は、それぞれ、介在するフリーローラ15の位置で、相互に上下や前後に少し食い込むように若干オーバーラップしている。つまり、隣接する各搬送ローラ13は、その凸曲状17の分だけ相互間でオーバーラップしている。
【0030】
このようにして、各回転駆動軸14に取付けられた各搬送ローラ13とフリーローラ15は、それぞれ、集合した全体で上下ウエーブ曲面Fを形成している。
すなわち、1本の回転駆動軸14について観察すると、各搬送ローラ13の上下外周面の凸曲状17が、ウエーブ曲面Fの凸を形成し、各フリーローラ15の上下外周面の凹曲状18が、ウエーブ曲面Fの凹を形成し、もってこれらの集合により全体で、上下にウエーブ曲面Fが形成されている。
形成されたウエーブ曲面Fでは、多数のテーパー状凹凸が、左右幅方向Dに一定ピッチと高さで、小波状に上下に反転繰り返しつつ連続的に形成されている。
コンベア8のウエーブ曲面F等は、このようになっている。
【0031】
《作用等》
本発明の表面処理装置6のコンベア8は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)この表面処理装置6は、基板の製造工程で使用され、基板材Aを薬液C等にて表面処理する。
すなわち、フレキシブル基板,その他極薄の軟性基板の製造工程で使用され、極薄で柔軟な基板材Aを、コンベア8にて搬送しつつ、スプレーノズル9から薬液C等を噴射して、回路形成用に表面処理する。
【0032】
(2)そして、このコンベア8は、搬送ローラ13が各回転駆動軸14にそれぞれ多数、フリーローラ15を介しつつ左右幅方向Dに交互に取付けられている。
そして、各搬送ローラ13とフリーローラ15にて、回転駆動軸14毎に上下ウエーブ曲面Fが形成されると共に、上下方向および前後搬送方向Bの各搬送ローラ13とフリーローラ15とが、隙間なく対向位置する関係にある。隣接する搬送ローラ13相互間は、フリーローラ15の位置で、相互に若干オーバーラップする位置関係にある。
【0033】
(3)そこで基板材Aは、このようなコンベア8の上下の搬送ローラ13とフリーローラ15との間に、挟み込まれると共に、前後の搬送ローラ13とフリーローラ15との間で、受け渡されつつ搬送される。
【0034】
(4)もって基板材Aは、ウエーブ曲面Fに基づき、湾曲凹凸形状が多数、小波状に波打ち形成され(図1の(2)図,図4を参照)、その分、腰ができ強度が付与される。なお、搬送ローラ13のピッチが25mm程度と小さく、搬送ローラ13の大径と小径の差も5mm以下程度なので、ウエーブの曲面Fそして基板材Aの波も、高低差の小さいなだらかな小さなカーブを描きつつ多数形成される。
さて、そこで基板材Aは、このように左右幅方向Dに一定周期で小さく多数形成される湾曲凹凸形状(いわば略トタン形状)により、フラットな平面形状のままの場合に比し、耐荷重性が大きく増強される。
【0035】
(5)基板材Aは、極薄化傾向が著しく腰が弱く柔軟でフレキシブルであると共に、薬液C等が噴射圧や重量を伴って噴射されるが(例えば噴射圧31kg)、このような湾曲凹凸形状の波打ち形成により、これらに十分耐え得る強度を備えるようになる。
特に、エッチング工程以降は、回路形成部分以外の銅箔が除去されてしまうので、基板材Aの極薄化,柔軟化が一段と顕著化するが、これに十分耐えることが可能となる。
【0036】
(6)さてそこで、この表面処理装置6で採用されたコンベア8によると、次の第1,第2,第3,第4,第5,第6のようになる。
第1に、まず搬送される基板材Aは、細かい湾曲凹凸形状の波打ち形成により、腰ができ強度が付与される(図1の(2)図,図4を参照)。
そして更に、回転駆動されないフリーローラ15が、巻付き剥がし機能を発揮する。又、下段のフリーローラ15上付近を中心に、薬液C等の貯めGが形成され(図3の(4)図を参照)、もって、基板材Aを浮かばせるように搬送する。
このような腰と剥がしと貯めG等により、基板材Aが搬送ローラ13に巻付くことは、確実に防止される(図6の(1)図の従来例と比較対照)。
【0037】
第2に、搬送される基板材Aは、上述したように腰ができ強度が付与されている。そして更に、フリーローラ15で各搬送ローラ13間の左右幅方向Dの左右隙間が埋められると共に、前後搬送方向Bの搬送ローラ13とフリーローラ15間も、前後隙間無く対向位置している(図2を参照)。
このような腰と隙間無し等により、基板材Aの端部が角折れするようなことは、確実に防止される(図6の(2)図の従来例と比較対照)。
【0038】
第3に、搬送される基板材Aは、前述したように腰ができ強度が付与されている。そして更に、各搬送ローラ13間の左右隙間が、フリーローラ15でそれぞれ埋められており、基板材Aの下面は、このような各フリーローラ15でサポートされている(図1の(2)図,図2等を参照)。
このような腰とサポート等により、基板材Aが上下に大きく歪むようなことはなく、基板材A外表面では、噴射された薬液C等の左右幅方向Dへのスムーズな流れが、確保される(図6の(2)図の従来例と比較対照)。
又、下段の各フリーローラ15付近を中心に、それぞれ、薬液Cの貯めGが形成されること(図3の(4)図を参照)も加わるので、不動姿勢を保つフリーローラ15と基板材A間の擦れも回避される。
【0039】
第4に、搬送される基板材Aは、前述したように腰ができ強度が付与されている。そして更に、前後搬送方向Bの搬送ローラ13とフリーローラ15間は、前後隙間無く対向位置しており、左右幅方向Dの隣接する搬送ローラ13間は、相互に食い込むようにオーバーラップしている(図2等を参照)。
このような腰と隙間無しとオーバーラップ等により、基板材Aは、前後の搬送ローラ13とフリーローラ15間において、前後搬送方向Bにスムーズに受け渡され、乗り移って行く。
【0040】
第5に、搬送ローラ13とフリーローラ15とは、回転駆動軸14に、例えば同肉厚寸法で交互に取付けられている(図1の(1)図,(2)図,図2等を参照)。もって、搬送ローラ13と搬送対象の基板材Aとの接触面積が、確実に大きく確保されるようになり、搬送能力が向上する。
【0041】
第6に、搬送される基板材Aは、前述したように腰ができ強度が付与されている。そこで基板材Aは、反り,カール,しわ,めくれ,撓み,湾曲等がなく、搬送されるようになる。カールし易い片面基板であっても、カール発生が確実に防止される。
又、下側の回転駆動軸14を1〜2本外し、もって搬送ローラ13やフリーローラ15を設けないようにしても、基板材Aが確実に搬送されるようになる。
つまり、下側にスプレーゾーンE(図5を参照)を適宜設けても、基板材Aを次へと確実にパス可能となるので、スプレーゾーンEを広く数多く設定することができるようになり、スプレーノズル9による薬液C等のスプレー効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る表面処理装置のコンベアについて、発明を実施するための最良の形態の説明に供し、(1)図は、搬送ローラ等の正断面図であり、(2)図は、コンベアの要部の正断面図である。
【図2】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、コンベアの要部の平面図である。
【図3】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、(1)図は、コンベアの要部の分解側面図、(2)図は、搬送ローラの側面図、(3)図は、フリーローラの側面図、(4)図は、コンベアの要部の拡大側面図である。
【図4】同発明を実施するための最良の形態の説明に供し、表面処理装置の正断面説明図である。
【図5】表面処理装置の側面説明図である。
【図6】この種従来例の説明に供し、要部の平面説明図であり、(1)図は、その1例を示し、(2)図は、他の例を示す。
【符号の説明】
【0043】
1 表面処理装置(従来例)
2 コンベア(従来例)
3 ストレートローラ
4 ホイール
5 回転駆動軸(従来例)
6 表面処理装置(本発明)
7 処理室
8 コンベア(本発明)
9 スプレーノズル
10 液槽
11 ポンプ
12 配管
13 搬送ローラ
14 回転駆動軸(本発明)
15 フリーローラ
16 駆動機構
17 凸曲状
18 凹曲状
19 コンベアフレーム
A 基板材
B 前後搬送方向
C 薬液
D 左右幅方向
E スプレーゾーン
F ウエーブ曲面
G 貯め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の製造工程中、基板材を搬送しつつ表面処理する表面処理装置において使用されるコンベアであって、
搬送ローラが、各回転駆動軸についてそれぞれ多数、フリーローラと交互に取付けられていること、特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項2】
請求項1に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、該搬送ローラは、該回転駆動軸に取付け固定されており、該回転駆動軸にて回転駆動され、
該フリーローラは、該搬送ローラ間の左右隙間空間を埋めると共に、該回転駆動軸にフリーに取付けられており、該回転駆動軸にて回転駆動されることなく姿勢保持していること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項3】
請求項2に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、該回転駆動軸に取付けられた各該搬送ローラと該フリーローラは、集合した全体で上下ウエーブ曲面を形成しており、
該ウエーブ曲面では、多数のテーパー状凹凸が左右方向に一定ピッチと高さで、小波状に繰り返して連続形成されていること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項4】
請求項3に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、該回転駆動軸は、上下対をなすと共に、前後の搬送方向に多数列設されており、
該搬送ローラと該フリーローラは、上下対をなして隙間無く対向位置すると共に、前後の搬送方向に隙間無く対向位置すべく、配設されていること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項5】
請求項4に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、該搬送ローラは、横軸の短円柱状をなすと共に、外周面が凸曲状をなしており、
該フリーローラは、上下が該搬送ローラに準じた円弧状をなし、前後が該搬送ローラに対応した切欠き円弧状をなすと共に、外周面が凹曲状をなしており、
該搬送ローラの上下外周面の凸曲状が、該ウエーブ曲面の凸を形成し、該フリーローラの上下外周面の凹曲状が、該ウエーブ曲面の凹を形成していること、特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項6】
請求項4に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、隣接する上下の該搬送ローラ間や前後の該搬送ローラ間は、それぞれ、介在する該フリーローラの位置で、相互に食い込むようにオーバーラップしていること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項7】
請求項4に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、該基板材は、上下の該搬送ローラと該フリーローラとの間に、挟み込まれると共に、前後の該搬送ローラと該フリーローラとの間で、受け渡されつつ搬送され、
もって該基板材は、該ウェーブ曲面に基づき湾曲凹凸形状が小波状に波打ち形成され、その分、腰ができ強度が付与されること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項8】
請求項4に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、該搬送ローラと該フリーローラとは、左右方向の肉厚が同一に設定されると共に、それぞれ外周の最大径と最小径の差が、0.5mm以上〜5mm以下に設定されており、
かつ、各該搬送ローラ間の左右ピッチと、各該回転駆動軸間の前後ピッチとが、ほぼ同一寸法に設定されていること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。
【請求項9】
請求項4に記載した表面処理装置のコンベアにおいて、該表面処理装置は、基板の製造工程の現像工程,エッチング工程,剥離工程,洗浄工程,又は乾燥工程で使用され、
該表面処理装置では、現像液,エッチング液,剥離液,洗浄液,又は乾燥用エアーが、上下からスプレー噴射され、該基板材は、フレレキシブル基板材,その他の極薄で柔軟な基板材よりなること、を特徴とする表面処理装置のコンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−156068(P2008−156068A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347561(P2006−347561)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000220240)東京化工機株式会社 (22)
【Fターム(参考)】