説明

表面弾性波装置の製造方法及び表面弾性波装置

【課題】圧電基板の櫛歯電極及び反射器との間の空間を形成する空間形成体を簡単に形成することができる表面弾性波装置の製造方法及び表面弾性波装置を提供すること。
【解決手段】表面弾性波装置の製造方法は、圧電基板12上にて櫛歯電極13,14及び反射器19を覆うように犠牲層を形成する犠牲層形成ステップと、この犠牲層の表面に沿って反射器19の近傍に開口部8を形成しつつ空間形成体7を形成する空間形成体形成ステップと、空間形成体7の開口部8から犠牲層を取り除く犠牲層除去ステップと、空間形成体7によって櫛歯電極13,14及び反射器19との間に励振保護空間7cが形成された表面弾性波素子11を封止樹脂によって封止する樹脂封止ステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電基板の櫛歯電極及び反射器との間に空間を形成するための空間形成体を備える表面弾性波装置の製造方法及び表面弾性波装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話装置やテレビジョン受像器などの電子部品や通信部品においては、共振子や帯域フィルタなどとして表面弾性波装置(以下、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス」と呼称する。)が採用されている。
【0003】
SAWデバイスは、封止樹脂によって表面弾性波素子を覆って封止した構成となっており、この表面弾性波素子は、圧電基板の表面に櫛歯電極及び反射器などが形成されている。また、この圧電基板において櫛歯電極及び反射器が形成された表面(機能領域)には、これら櫛歯電極及び反射器との間に所定の空間を形成する空間形成体が設けられている(特許文献1参照)。この空間形成体は、圧電基板を封止樹脂で封止する際に、この圧電基板に形成済みの櫛歯電極などに封止樹脂が付着したことによって、櫛歯電極による表面弾性波の励振機能が阻害されるのを抑えるためのものである。
【0004】
従来の表面弾性波装置の製造方法では、このような空間形成体を構成するのに、4辺の枠体と蓋体とを組み合わせて構成している。具体的には、この空間形成体は、表面弾性波素子の表面にドライフィルムレジストをラミネートした後に、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることで、空間形成体を構成する4辺の枠体を形成している。さらにこの空間形成体は、この4辺の枠体に蓋体としてフィルムを貼り付けることにより、これら4辺の枠体を壁面とするとともに蓋体を底面とする箱状の部材として構成されている。
【特許文献1】特開2002−232260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の表面弾性波装置の製造方法では、このように空間形成体を構成するのに、4辺の枠体を形成する工程及び、この4辺の枠体にフィルムを貼り付けて蓋体とする工程という2つの工程を必要とすることから、製造工程が複雑となっていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、圧電基板の櫛歯電極及び反射器との間の空間を形成する空間形成体を容易に形成することができる表面弾性波装置の製造方法及び表面弾性波装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、圧電基板と、この圧電基板に生じる表面弾性波と電気信号とを相互に変換する機能を有した櫛歯電極と、表面弾性波の伝搬方向でみて櫛歯電極に隣接して配置され、圧電基板に伝搬する表面弾性波を櫛歯電極に向けて反射する反射器とを備え、圧電基板の表面のうち櫛歯電極及び反射器が形成された領域を覆う空間部を残した状態で少なくとも圧電基板の表面が封止樹脂により封止された構造を有する表面弾性波装置を製造する方法である。
【0008】
上記目的を達成するための第1の発明は、圧電基板の表面に形成された金属膜をエッチングし、完成状態で圧電基板の表面に表面弾性波を伝搬させる予定の方向(以下「伝搬予定方法」とする)に配列された櫛歯電極及び反射器を形成するエッチングステップと、圧電基板の表面上で櫛歯電極及び反射器を覆う位置に、空間部の形状に相当する外形を有した犠牲層を伝搬予定方向に沿って形成する犠牲層形成ステップと、伝搬予定方向に沿う犠牲層の外面に沿って材料を付着させることで、伝搬予定方向に沿う犠牲層の外面を取り囲み、かつ伝搬予定方向でみた端部には犠牲層を露出させる開口を有した状態で圧電基板の表面に設置された空間形成体を形成するする空間形成体形成ステップと、空間形成体の開口を通じて圧電基板の表面上から犠牲層を取り除く犠牲層除去ステップと、犠牲層を取り除いた後、空間形成体によって櫛歯電極及び反射器との間に空間部が形成された状態で圧電基板の表面を封止樹脂によって封止する樹脂封止ステップとを有する。
【0009】
第1の発明によれば、先ず圧電基板の表面上に櫛歯電極及び反射器を形成することで、表面弾性波素子が得られる(エッチングステップ)。この表面弾性波素子は、外部から入力される電気信号を櫛歯電極により圧電基板の機械的な変位(表面弾性波)に変換し、これを櫛歯電極で再び電気信号として取り出すという、表面弾性波装置(デバイス)の中心的な機能を有した素子となる。次に第1の発明では、櫛歯電極及び反射器を覆うべく形成した犠牲層に沿って空間形成体を形成した後、この空間形成体の開口から犠牲層を取り除くという簡単な製造工程によって、この空間形成体と櫛歯電極及び反射器との間に空間を形成することができる。この空間は、表面弾性波素子の良好な共振特性を確保することに寄与する。さらに第1の発明では、このような空間形成体が形成された状態で圧電基板の表面を封止樹脂によって封止することで表面弾性波装置を得ている。なお、封止樹脂はその粘性により空間形成体の外側で留まり、内側の空間にまで大きく入り込むことはない。
【0010】
ところで、このような封止の際、開口から空間形成体と櫛歯電極及び反射器との間の空間に封止樹脂が入り込んでしまうことも考えられるが、第1の発明では、この開口が櫛歯電極ではなく反射器の近傍に形成されるため、仮に封止樹脂が入り込んだとしても、反射器に部分的に接触することはあっても、櫛歯電極にまで接触することはない。
【0011】
一般的に反射器と櫛歯電極とでは、櫛歯電極の方が表面弾性波素子の共振特性に与える影響が大きいことが知られている。しかしながら第1の発明では、このような簡単な製造工程によって空間形成体を形成した場合においても、封止樹脂の入り込みによって櫛歯電極の機能に影響を与えることがない。このため第1の発明によって製造された表面弾性波装置においては、空間形成体に開口が形成されていない場合(空間形成体が閉じた構造の場合)と同様に、櫛歯電極により圧電基板の表面に良好な表面弾性波を励振させることができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明の構成において、上記の犠牲層が樹脂を材質とすることを特徴とする。
【0013】
第2の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、犠牲層が樹脂であることから、犠牲層除去ステップにおいて犠牲層のエッチングにあたり、櫛歯電極及び反射器を構成する金属、空間形成体及び圧電基板のいずれにも影響を与えないエッチングが可能である。なお、犠牲層の材質としては、樹脂そのもののみならず、このような樹脂などを含めた有機物のいずれかを採用することができる。
【0014】
第3の発明は、第1の発明の構成において、上記の犠牲層が珪素を材質とすることを特徴とする。
【0015】
第3の発明によれば、第1の発明の作用に加えてさらに、犠牲層が珪素であることから、犠牲層除去ステップにおいて犠牲層のエッチングにあたり、櫛歯電極及び反射器を構成する金属、空間形成体及び圧電基板のいずれにも影響を与えないエッチングが可能である。なお、犠牲層の材質としては、珪素そのもののみならず、このような珪素などを含めた無機物のいずれかを採用することができる。
【0016】
第4の発明は、第1の発明から第3の発明のいずれかの構成において、犠牲層形成ステップでは、犠牲層の形成にあたり、圧電基板上に形成された櫛歯電極及び反射器を覆う範囲に加え、反射器が形成された位置からさらに伝搬予定方向へ犠牲層を延長させて形成することを特徴とする。
【0017】

4の発明によれば、第1の発明から第3の発明のいずれかの作用に加えてさらに、犠牲層形成ステップにおいて形成された犠牲層は、櫛歯電極及び反射器を覆うだけでなく、反射器から空間形成体の端部の開口までを伝搬予定方向へ離間させた構成となっている。このため次の空間形成体形成ステップでは、このような犠牲層の外面に沿って空間形成体を形成すると、形成された空間形成体は、その内側に櫛歯電極及び反射器を覆う空間を形成することに加えて、その端部の開口と反射器との間にも空間(以下「樹脂受入空間」と呼称する)を構成することができる。
【0018】
本発明の表面弾性波装置の製造方法によれば、表面弾性波素子を封止した際に、空間形成体の開口部から内周面内に封止樹脂が入り込んだ場合においても、この入り込んだ封止樹脂が樹脂受入空間に充填されるだけで、反射器には至らない。この場合、開口を有した空間形成体が設けられた圧電基板(表面弾性波素子の状態)を封止樹脂により封止して表面弾性波装置を構成しても、櫛歯電極や反射器の機能が損なわれることはない。
【0019】
しかも、このような表面弾性波装置の製造方法によれば、仮に大量の封止樹脂が空間形成体の開口からその内部に入り込んだ場合であっても、入り込んだ封止樹脂の大半が樹脂受入空間で留まる。また、一部の封止樹脂が反射器の端部に到達した場合であっても、反射器の端部は表面弾性波の反射にそれほど大きく寄与していないため、反射器が本来有する機能はほとんど阻害されない。したがって、このような手法を用いて製造された表面弾性波装置は、内蔵する表面弾性波素子の共振特性を良好に確保することができる。
【0020】
第5の発明は別途独立の構成を有する。第5の発明は表面弾性波装置そのものである。本発明の表面弾性波装置は、圧電基板と、圧電基板の表面に生じる表面弾性波と電気信号とを相互に変換する機能を有した櫛歯電極と、圧電基板の表面上で表面弾性波の伝搬方向に沿って櫛歯電極に隣接して形成され、圧電基板を伝搬する表面弾性波を櫛歯電極に向けて反射する反射器と、圧電基板の表面上に設置され、櫛歯電極及び反射器を覆う空間を区画して形成する空間形成体と、空間形成体とともに圧電基板の外面を封止する封止樹脂とを備えている。特に上記の空間形成体は、圧電基板の表面から空間をおいて離間する位置で櫛歯電極及び反射器の配列方向に沿って延びる蓋部と、蓋部の外縁部と圧電基板の表面との間を延びて空間の側壁を構成する脚部と、反射器の近傍にて脚部及び蓋部に囲まれて形成された開口部とを有する。
【0021】
第5の発明によれば、櫛歯電極及び反射器が形成された表面においては空間形成体によって空間が構成されているため、櫛歯電極によって圧電基板に生じさせた表面弾性波が外部から影響を受けることがない。しかも、この空間形成体を形成する際には、圧電基板上に、これら脚部及び蓋部の形状を形成するための型(犠牲層)を形成した後、この型に沿ってこれを覆うように脚部及び蓋部を構成し、その開口部から型の部分を取り除くという簡単な手法を採用することができる。
【0022】
また、空間形成体の開口部が反射器の近傍に位置しているため、表面弾性波素子となった圧電基板を封止樹脂によって封止した際には、封止樹脂が反射器の端部に到達することはあっても、櫛歯電極にまでは到達しにくくなる。このとき開口部から入り込んだ封止樹脂が反射器に触れた場合においても、反射器は、その端部の機能がその中心部の機能に比べて低いため、封止樹脂が反射器の端部に触れた場合における共振特性に与える影響は少ない。したがって、表面弾性波装置は、内蔵する表面弾性波素子の櫛歯電極を十分に機能させることができるため、このように空間形成体に開口部が形成されている場合においても、表面弾性波素子に良好な共振特性を発揮させることができる。
【0023】
第6の発明は、第5の発明の構成において、空間形成体は、表面弾性波の伝搬方向でみて開口部から反射器までの間に、開口部を通じて封止樹脂が入り込むのを許容する樹脂受入空間を有することを特徴とする。
【0024】
第6の発明によれば、第5の発明の作用に加えて、表面弾性波素子を封止樹脂によって封止する際に、仮に空間形成体の開口部から封止樹脂が入り込んだ量が比較的多い場合でも、この入り込んだ封止樹脂が樹脂受入空間に留まり、反射器にまで到達することはない。このため表面弾性波装置は、表面弾性波素子の反射器が十分に機能を発揮することができることから、空間形成体に開口部が形成されている場合においても良好な共振特性を発揮する。
【0025】
しかも第6の発明によれば、仮に空間形成体の開口部から入り込んだ封止樹脂が極端に多量であった場合においても、その大部分の封止樹脂が樹脂受入空間に充填される一方、収まりきらなかった一部の封止樹脂は、反射器に大きく触れることなく反射器の端部に多少触れる程度に留まる。このような構成によれば、開口部からの封止樹脂の入り込む量が極端に多い場合においても、櫛歯電極が十分に機能を発揮できるばかりでなく、反射器もほぼ十分に機能を発揮することができる。このため表面弾性波装置は、封止樹脂による封止の際に空間形成体の開口部から入り込んだ封止樹脂の量が極端に多量である場合においても、表面弾性波素子の共振特性に与える影響が少ない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、圧電基板の櫛歯電極及び反射器との間の空間を形成する空間形成体を簡単に形成することができる表面弾性波装置の製造方法及び表面弾性波装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は、第1実施形態としての表面弾性波装置の構造を示す断面図である。これら図1,図2に示される表面弾性波装置は、一般的にSAW(Surface Acoustic Wave)デバイスと称される電子部品の一例であり、以下に述べる各実施形態では「SAWデバイス」と表記する。このSAWデバイス1は、携帯電話装置やテレビジョン受像器などの電子機器や通信装置において、共振子や帯域フィルタとしての機能を発揮する用途に用いられる。なお図2は、図1に示すSAWデバイス1をA−A’線に沿う断面構成例を示す断面図である。なお図2においては、説明の理解を助けるため断面に含まれない構成を適宜追加して図示している。
【0028】
SAWデバイス1は、金属バンプ5及びリードフレーム3が設けられた表面弾性波素子11を封止樹脂24によって封止した構成となっている。この封止樹脂24は、例えば酸化ケイ素(SiO)を材質とする樹脂である。リードフレーム3は、SAWデバイス1の外部との間で高周波信号を入出力するための外部電極である。金属バンプ5は、表面弾性波素子11とリードフレーム3とを電気的に接続するための突起状の電極(突起電極)である。
【0029】
表面弾性波素子11は圧電基板(SAWデバイス基板)12を有する。この圧電基板12の主面(表面弾性波を発生・伝搬させる面)には、櫛歯電極13,14及び一対の反射器19が形成されている。さらに圧電基板12の主面には、櫛歯電極13,14及び反射器19を覆うようにして空間形成体7が配置されている。この空間形成体7は、圧電基板12上に形成されたこれら櫛歯電極13,14及び反射器19との間に空間7cを形成している。この空間7cは、圧電基板12の主面に効率よく表面弾性波を伝搬させ、また櫛歯電極13,14による良好な励振状態を確保するためのものである。このため空間7c内で、圧電基板12の主面及び櫛歯電極13,14は封止樹脂11に接していない。なお本実施形態では、この空間7cを「励振保護空間」と呼称する。
【0030】
この空間形成体7は、励振保護空間7cを取り囲む位置に蓋部7a及び一対の脚部7bを備えている。蓋部7aは、櫛歯電極13,14及び反射器19の配列方向に延びる平板状の部材である。一対の脚部7bは、表面弾性波の伝搬方向に平行な蓋部7aの両縁部から圧電基板12の主面12aに延びる側壁を構成しており、蓋部7aとともに励振保護空間7cを形成している。
【0031】
表面弾性波素子11は、圧電基板12上に、反射器19、電極部(図示せず)及び配線パターン(図示せず)が形成された構成となっている。圧電基板12は、例えばLT(タンタル酸リチウム:LiTaO)又はLN(ニオブ酸リチウム:LiNbO)を材質とする基板である。
【0032】
電極部は、櫛歯電極13、櫛歯電極14及び配線パッド(図示せず)を有している。櫛歯電極13は、基部13b及び、この基部13bから圧電基板12の表面に沿って櫛歯状に延びる各櫛歯部13aを含んでいる。櫛歯電極14は、櫛歯電極13とほぼ同様の構成であり、基部14b及び、この基部14bから圧電基板12の表面に沿って櫛歯状に延びる各櫛歯部14aを含んでいる。これら櫛歯部13aと櫛歯部14aとは、一定の間隔をおいて交互に位置するように配列されている。この配列方向は、圧電基板12の主面にて表面弾性波を発生及び伝搬させる方向と一致している。
【0033】
図示しない配線パッドは、各々表面弾性波素子11を外部の回路(図示せず)と接続するための配線電極である。この外部の回路は、配線パッドに高周波信号を入力するための回路である。なお、以下の説明では、この高周波信号を「高周波入力信号」と呼称する。
【0034】
一対の反射器19は、表面弾性波の伝搬方向と垂直に細長く延びる複数の電極パターンをすだれ状に配列した構成となっている。これら反射器19は、表面弾性波の伝搬方向でみて、櫛歯電極13,14の両側に隣接して配置されている。ここでいう伝搬方向とは、櫛歯電極13,14の励振により表面弾性波を伝搬させる主要な方向を意味している。反射器19は、圧電基板12の表面を伝搬する表面弾性波を櫛歯電極13,14に向けて反射し、その表面弾性波のエネルギーを内部に閉じこめる機能を有する。
【0035】
図1に示されているように、上記の空間形成体7は表面弾性波の伝搬方向にみた断面がコ字形状をなしており、その内側の溝形部分に空間7cが形成されている。そして空間形成体7は、表面弾性波の伝搬方向でみて両側端に矩形の開口部8を有している。開口部8は、空間形成体7の一対の脚部7bと蓋部7a、そして圧電基板12の主面によって囲まれている。なお開口部8は、空間形成体7の両側端から蓋部7aに食い込むようにして形成されていてもよい。この開口部8は、一対の反射器19に対して、それぞれの反射方向(伝搬してきた表面弾性波を反射する方向)と逆の位置に形成されている。具体的には、本実施形態では、開口部8は、空間形成体7の表面弾性波伝搬方向における両側にそれぞれ形成されている。つまり、空間形成体7は、その内面と圧電基板12の主面12aとの間に、2つの開口部8の間をトンネル状に貫通して延びる励振保護空間7cを形成する。
【0036】
しかも本実施形態では、この開口部8と反射器19との間における励振保護空間7c内に、樹脂受入空間33が確保されている。この樹脂受入空間33は、封止樹脂24によって表面弾性波素子11をモールドした際に封止樹脂24が開口部8から空間7c内へ入り込むことを許容しつつ、このとき封止樹脂11が反射器19の位置にまで至らないようにするための予備的な空間である。なお、この樹脂受入空間33は、2つの開口部8の少なくとも一方に形成されている形態であってもよい。
【0037】
表面弾性波素子11の概要は以上のような構成であり、次に図1及び図2を参照しつつ表面弾性波素子11の動作例について簡単に説明する。 配線パッドには、外部の回路からの高周波入力信号が配線パターンを経由して供給されている。配線パッドは櫛歯電極14に接続されており、この櫛歯電極14には、この配線パッドを経由して高周波入力信号が供給されている。
【0038】
櫛歯電極14に高周波入力信号が供給されると、この櫛歯電極14を構成する櫛歯部14aは、この高周波入力信号による電界によって逆圧電効果を生じさせ、圧電基板12の表面に機械的な変位を生じさせる。すると、この圧電基板12上には表面弾性波が生じ、この表面弾性波が主として櫛歯部14aの配列方向に伝搬する。このとき一対の反射器19は、伝搬してくる弾性表面波を反射することで、弾性表面波のエネルギー損失を抑える働きをする。
【0039】
この表面弾性波は、この櫛歯部14aと対をなす櫛歯部13aに伝搬し、この櫛歯部13aは、伝搬した表面弾性波による圧電基板12の表面の変位に基づく圧電効果によって、その変位に応じた特定帯域の周波数信号(以下「特定帯域周波数信号」と呼称する)を検出することができる。この特定帯域周波数信号は、基部13bを経由して櫛歯電極13に接続された配線パッドから取り出せるようになっている。
【0040】
SAWデバイス1は以上のような構成であり、次に第1実施形態としての表面弾性波装置(SAWデバイス1)の製造方法の一例について説明する。 図3〜図12は、それぞれ第1実施形態におけるSAWデバイス1の製造方法の一例を示す断面図である。これら図3〜図12は、それぞれ図1に示す断面と同様の箇所における断面を示している。
【0041】
<エッチングステップ> まず最初に圧電基板(SAWデバイス基板)12上には、図3に示すように金属膜21が成膜される。このように圧電基板12上に金属膜21が成膜された後、この金属膜21は、形成すべき櫛歯電極13,14、反射器19及び配線パターン(図示せず)に応じてエッチングされ、その残った金属膜21が図4に示すように櫛歯電極13,14、反射器19及び配線パターン(図示せず)となっている。つまり、圧電基板12の表面には、金属膜21の残りで構成される櫛歯電極13,14、反射器19そして配線パターン(図示せず)が形成される。本実施形態では、このように圧電基板12の表面に櫛歯電極13,14などが形成された状態を「表面弾性波素子(表面弾性波素子11)」と呼称している。なお、図面の煩雑化を防止するため、図5以降では櫛歯電極13,14や反射器19等についての図示を便宜上、省略するものとする。
【0042】
<犠牲層形成ステップ> 次に犠牲層形成ステップでは、図5に示すように、圧電基板12上にて櫛歯電極13,14及び反射器19に覆い被せるようにして犠牲層6を形成する。この犠牲層形成ステップにて形成された犠牲層6は、図示されている矩形の断面形状が最終的に空間7cの断面形状に相当する。
【0043】
具体的には、まず、この犠牲層形成ステップでは、上記のエッチングステップを経た後の圧電基板12の全面に、例えばスパッタリング、CVD(Chemical Vapour Deposition)、スピンコーティング、印刷などのいずれかの手法によって、犠牲層6となる樹脂などの有機物及び珪素(Si)などの無機物のいずれかの膜を形成する。なお、この犠牲層6の材質は樹脂に限らず、櫛歯電極13、反射器19、圧電基板12及び空間形成体7に影響を与えることなくエッチング液を用いてエッチングできるものであれば、いかなる組成であってもよい。
【0044】
さらにこの犠牲層形成ステップでは、櫛歯部13a,14a及び反射器19を覆う部分以外の不要部分をエッチングすることで、櫛歯部13a,14a及び反射器19上に薄い直方体形状の犠牲層6を形成する。この結果、圧電基板12上には、例えば厚さ1〜50μm程度の犠牲層6が形成される。この犠牲層6は、例えば表面弾性波の伝搬方向に沿う各面(圧電基板12の主面に平行な面と、この面に隣り合う両側面)が、表面弾性波の伝搬方向と平行に延びるように形成されている。このとき、犠牲層形成ステップでは、好ましくは反射器19から開口部8までの間が離れるように、反射器19の位置よりも犠牲層6を延長して形成している。ここでいう、反射器19から開口部8までの間を離間させて形成した部分の犠牲層6は、後に形成される樹脂受入空間33に相当する。
【0045】
<空間形成体形成ステップ> 次に空間形成体ステップでは、まず、図6に示すように圧電基板12上に形成された犠牲層6の表面に沿うように、エポキシなどの樹脂レジストを犠牲層6よりも例えば厚く成膜する。そして空間形成体ステップでは、感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィ技術により、蓋部7a及び脚部7bによってブリッジ形状(断面橋形状)とした空間形成体7を一体で形成する。このとき、形成された空間形成体7には、各反射器19の近傍に開口部8(この段階では開口部8となる予定の部位)が形成された状態となる。つまり、この空間形成体形成ステップでは、圧電基板12上の犠牲層6の表面に沿って、反射器19の近傍に開口部8を形成しつつ空間形成体7を形成しているのである。
【0046】
<金属バンプ形成ステップ> 次に金属バンプ形成ステップでは、図7に示すように空間形成体7の両側(櫛歯電極13,14及び反射器19の両側)に、圧電基板12上に形成済みの配線パターン(図示せず)に導通させるように金属バンプ5を形成する。
【0047】
<犠牲層除去ステップ> 犠牲層除去ステップでは、空間形成体7内に充填されている犠牲層6を、例えばエッチング液を用いた等方性エッチングによって、図8に示すように開口部8から取り除き、櫛歯部13a,14a及び反射器19と空間形成体7との間に励振保護空間7cを形成する。このとき空間形成体7の内側(励振保護空間7cとなる部分)では、両方の開口部8を通じて等方性エッチングが良好に進行するため、容易に犠牲層6を取り除くことができる。
【0048】
<フ
リップチップボンディング> フリップチップボンディングステップでは、図9に示すように金属バンプ5をリードフレーム3に押し当てながら超音波を照射し、金属バンプ5をリードフレーム3に接合してチップ実装を行う。
【0049】
<樹脂封止ステップ> 樹脂封止ステップでは、まず、このようにチップ実装した表面弾性波素子11について、例えば図10に示すようにリードフレーム3を一括成型用テープ18に貼り付けておく。次に樹脂封止ステップでは、図11に示すように、励振保護空間7cが形成された状態の表面弾性波素子11を封止樹脂24によってモールド(封止)する。このとき空間形成体7の両端(表面弾性波の伝搬方向でみた両端)では、開口部8を通じて励振保護空間7c内に封止樹脂11が入り込むことがある。ただし、このような封止樹脂11の入り込みは毛細管現象に準ずるものであり、その粘性によって過度に進行することなく、概ね反射器19に到達する手前で止まる。したがって、励振保護空間7cが封止樹脂11により浸食されることはなく、完成後に櫛歯部13a,14aの励振状態を良好に保護することができる。
【0050】
<ダイシングステップ〜テープ剥離ステップ> 次に封止樹脂24でモールドされた表面弾性波素子11は、表面弾性波素子11ごとに分けるべくダイシングされるとともに、一括成型用テープ18が剥離され、図12に示すように個々のSAWデバイス1とされる。
【0051】
第1実施形態によれば、櫛歯電極13,14及び反射器19を覆うべく形成した犠牲層6に沿って空間形成体7を形成した後、この空間形成体7の開口部8から犠牲層6を取り除くという簡単な製造工程によって、この空間形成体7と櫛歯電極13,14及び反射器19との間に励振保護空間7cを形成することができる。さらに第1実施形態によれば、このような空間形成体7が形成された表面弾性波素子11を封止樹脂24によって封止することでSAWデバイス1を構成している。
【0052】
また上述のように、封止の際(樹脂封止ステップ)に開口部8から励振保護空間7cに封止樹脂24が入り込んでしまうことも考えられるが、第1実施形態では、この開口部8が櫛歯電極13,14ではなく反射器19の近傍に形成されているため、仮に封止樹脂24が入り込んでも、反射器19には接触する可能性があるものの櫛歯電極13,14に接触することはない。
【0053】
一般的に反射器19と櫛歯電極13,14とでは、櫛歯電極13,14の方が表面弾性波素子11の共振特性に与える影響が大きいことが知られている。しかしながら第1実施形態では、このような簡単な製造工程によって空間形成体7を形成した場合においても、封止樹脂24の入り込みによって櫛歯電極13,14の機能に影響を与えることがない。このため第1実施形態では、空間形成体7に開口部8を形成していない場合と同様に、櫛歯電極13,14により良好な状態で表面弾性波を励振させることができる。
【0054】
また第1実施形態では、犠牲層6の材質として樹脂を採用した場合、犠牲層除去ステップにおいて犠牲層6のエッチングにあたり、櫛歯電極13,14及び反射器19を構成する金属、空間形成体7及び圧電基板12のいずれにも影響を与えないエッチング液を採用することができる。なお、犠牲層6の材質としては、樹脂単独のものに限らず、樹脂を含有する有機物を採用することもできる。
【0055】
また第1実施形態では、犠牲層6の材質として珪素を採用した場合、犠牲層除去ステップにおいて犠牲層6のエッチングにあたり、櫛歯電極13,14及び反射器19を構成する金属、空間形成体7及び圧電基板12のいずれにも影響を与えないエッチング液を採用することができる。なお、犠牲層6の材質としては、珪素そのもののだけでなく、珪素を含有する無機物を採用することができる。
【0056】
第1実施形態におけるSAWデバイス1は、表面弾性波素子11における櫛歯電極13,14及び反射器19が形成された表面に励振保護空間7cが形成されているため、櫛歯電極13,14によって生じた表面弾性波が外部から影響を受けることがない。しかも、この空間形成体7を形成する際には、圧電基板12上に、これら脚部7b及び蓋部7aの形状を形成するための型(犠牲層6に相当)を形成した後、この型の外面を覆うように脚部7b及び蓋部7aを構成し、開口部8からその型の部分を取り除くという簡単な手法を採用することができる。
【0057】
また第1実施形態におけるSAWデバイス1は、上述のように空間形成体7の開口部8が反射器19の近傍に位置しているため、表面弾性波素子11を封止樹脂24によって封止した際でも、封止樹脂24が反射器19の端部に到達することはあっても、櫛歯電極13,14にまでは到達せず、櫛歯電極13,14に触れることがない。なお、開口部8から入り込んだ封止樹脂24が反射器19の端部に接触した場合においても、反射器19は、その端部の機能がその中心の機能に比べて低いため、封止樹脂24が反射器19の端部に触れた場合における共振特性に与える影響を少なくすることができる。したがって、SAWデバイス1は、内蔵する表面弾性波素子11の櫛歯電極13,14を十分に機能させることができるため、空間形成体7に開口部8が形成されている場合においても、表面弾性波素子11に良好な共振特性を発揮させることができる。
【0058】
さらに第1実施形態におけるSAWデバイス1は、空間形成体7の内側にて開口部8から反射器19までの間に封止樹脂24の入り込みを許容する樹脂受入空間33を備えている。このため、表面弾性波素子11を封止樹脂24によって封止する際に、仮に空間形成体7の開口部8から封止樹脂24が入り込んだ量が平均より多くなった場合でも、この入り込んだ封止樹脂24が樹脂受入空間33に留まり、この開口部8近傍の反射器19にまで到達することがない。このためSAWデバイス1は、表面弾性波素子11の反射器19による機能を十分に発揮させることができることから、空間形成体7に開口部8が形成されている場合においても良好な共振特性を得ることができる。
【0059】
しかも、仮に空間形成体7の開口部8から入り込んだ封止樹脂24が極端に多量であった場合においても、その大部分の封止樹脂24が樹脂受入空間33に充填される一方、ここに収まりきらなかった封止樹脂24の一部は反射器19の端部に僅かに接触する程度に留まる。このため、依然として櫛歯電極13,14に十分な機能を発揮させることができる。また、反射器19については多少の影響を受けるものの、その端部では反射機能に与える影響が少ないことから、実用上は十分に機能を発揮することができる。このためSAWデバイス1は、封止樹脂24による封止の際に空間形成体7の開口部8から入り込んだ封止樹脂24の量が多量である場合においても、表面弾性波素子11の共振特性に与える影響を少なくすることができる。
【0060】
<第2実施形態>
図13は、本発明の第2実施形態としてのSAWデバイス1aの構成例を示す断面図である。
第2実施形態としてのSAWデバイス1aは、第1実施形態のSAWデバイス1とほぼ同様の構成であって、これとほぼ同様の動作を行うため、同様の構成および動作についてはその説明を省略し、以下異なる点を中心として説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態と同様の構成および動作について説明が及ぶ場合は、第1実施形態と同一の符号を用いる。
【0061】
第2実施形態におけるSAWデバイス1aは、いわゆるウェハレベルのSAWパッケージである点において、第1実施形態におけるSAWデバイス1とはその構成が異なっている。このSAWデバイス1aは、空間形成体7が形成されていない面(櫛歯電極13などが形成されていない面)が、封止樹脂24によって封止されておらず外部に露出した構成となっている。
【0062】
さらにSAWデバイス1aは、表面弾性波素子11と封止樹脂24の外部との間で信号を交換する構成として、第1実施形態におけるSAWデバイス1とは異なり、表面弾性波素子11の圧電基板12上の配線パターン(図示せず)上にポスト26が形成されているとともに、その外部においてこのポスト26に外部電極としての半田ボール28が接続された構成となっている。このポスト26は、例えば銅(Cu)を材質とする導電体である。
【0063】
第2実施形態としてのSAWデバイス1aは以上のような構成であり、次に図13を参照しつつSAWデバイス1aの製造方法の手順例について説明する。 図14〜図22は、それぞれ第2実施形態におけるSAWデバイス1aの製造方法の一例を示す断面図である。これら図14〜図22は、それぞれ図1に示す断面図と同様の箇所における断面構成例を表している。なお、図14〜図17における各手順は、第1実施形態における図3〜図6における各手順と同一であるので、その説明を省略する。
【0064】
<ポスト形成ステップ> ポスト形成ステップでは、図18に示すように空間形成体7の両側に(櫛歯電極13,14及び反射器19の両側)に、圧電基板12上に形成済みの配線パターン(図示せず)に導通させるようにポスト26を形成する。
【0065】
<犠牲層除去ステップ> 犠牲層除去ステップでは、第1実施形態と同様に、空間形成体7内に充填されている犠牲層6を、例えばエッチング液を用いた等方性エッチングによって、図19に示すように開口部8から取り除き、櫛歯電極13,14及び反射器19と空間形成体7との間に励振保護空間7cを形成する。
【0066】
<樹脂封止ステップ及びグラインドステップ> 次に第2実施形態では、第1実施形態とは異なり、フリップチップボンディングステップを実行せずに樹脂封止ステップを実行する。この樹脂封止ステップでは、第1実施形態と異なり、図20に示すようにポスト26が形成された表面弾性波素子11を覆うように封止樹脂24によりモールドする。すると、表面弾性波素子11は、圧電基板12の主面12a(櫛歯電極13,14等が形成されている面)側が封止樹脂24によって封止されているが、その裏面12b(櫛歯電極13,14等が形成されていない面)側が封止樹脂24によって封止されず露出した状態となっている。この樹脂封止ステップでは、圧電基板12の主面12aに配置するポスト26も覆うように封止樹脂24によって封止されている。さらに樹脂封止ステップでは、圧電基板12の主面12aに形成された封止樹脂24を、図21に示すようにポスト26が露出するまで削り取る(グラインドステップ)。
【0067】
<バンプ形成ステップ〜ダイシングステップ> 次にバンプ形成ステップでは、図13に示すように封止樹脂24の外面に露出しているポスト26上に半田ボール28を形成する。このように半田ボール28を形成すると、図示しないウェハ上には、このようなプロセスによって形成された複数のSAWデバイス1aが配列した状態となる(便宜上、図ではデバイス単位で示されている。)。そして、このウェハをダイシングすることで、個々のSAWデバイス1aが得られる。
【0068】
第2実施形態では、第1実施形態の有用性に加えてさらに、ウェハ単位でSAWデバイス1aをまとめて多数製造する場合においても、簡単な手法によって空間形成体7を形成することができる。
【0069】
<第3実施形態>
次に図22は、本発明の第3実施形態としてのSAWデバイス1bの構成例を示す断面図である。
第3実施形態としてのSAWデバイス1bは、第2実施形態としてのSAWデバイス1aとほぼ同様の構成であって、これとほぼ同様の動作を行うため、同様の構成および動作についてはその説明を省略し、以下異なる点を中心として説明する。なお、第3実施形態において第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成および動作について説明が及ぶ場合は、第1実施形態及び第2実施形態と同一の符号を用いる。
【0070】
第3実施形態におけるSAWデバイス1bは、いわゆるウェハレベルのSAWパッケージである点において、第2実施形態におけるSAWデバイス1aと同一であるが、圧電基板12の裏面12bに保護膜30が成膜されている点が異なっている。この保護膜30は、例えば樹脂を材質としている。
【0071】
この第3実施形態によれば、第2実施形態の有用性に加えて、SAWデバイス1bは、保護膜30の存在によって外部からの衝撃や接触から圧電基板12を保護できるという利点を有する。
【0072】
<第4実施形態>
図23は、本発明の第4実施形態としての表面弾性波装置の製造方法により製造されたSAWデバイス1cの構成例を示す断面図である。
第4実施形態としてのSAWデバイス1cは、第2実施形態としてのSAWデバイス1aとほぼ同様の構成であるとともにほぼ同様の動作を行うため、同様の構成および動作についてはその説明を省略し、以下異なる点を中心として説明する。なお、第4実施形態において第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成および動作について説明が及ぶ場合は、第1実施形態及び第2実施形態と同一の符号を用いる。
【0073】
第4実施形態におけるSAWデバイス1cは、いわゆるウェハレベルのSAWパッケージである点において、第2実施形態におけるSAWデバイス1aと同一であるが、圧電基板12の主面から延びるポスト26aの高さが異なっている。具体的には、第3実施形態では、第2実施形態と異なり、ポスト26aが封止樹脂24の表面よりも突出しており、半田ボール28の内部にまで到達している。なお、このポスト26aは、例えば銅(Cu)を材質とする導電体である。
【0074】
第4実施形態によれば、第1実施形態及び第2実施形態の有用性に加えてさらに、図20のようにモールドされた封止樹脂24をグラインド工程(グラインドステップ)において削り取ってポスト26aを露出させなくても、封止樹脂24から元々露出しているポスト26aに対し、そのまま半田ボール28を形成することができる。このため第4実施形態によれば、グラインド工程を省略することができるため、SAWデバイス1cの製造に掛かる工程を簡略化することができる。
【0075】
<第5実施形態>
図24は、本発明の第5実施形態としての表面弾性波装置の製造方法により製造されたSAWデバイス1dの構成例を示す断面図である。
第5実施形態としてのSAWデバイス1dは、第3実施形態としてのSAWデバイス1b及び第4実施形態としてのSAWデバイス1dとほぼ同様の構成であるとともにほぼ同様の動作を行うため、同様の構成および動作についてはその説明を省略し、以下異なる点を中心として説明する。なお、第5実施形態において第3実施形態及び第4実施形態などと同様の構成および動作について説明が及ぶ場合は、第3実施形態及び第4実施形態などと同一の符号を用いる。
【0076】
第5実施形態におけるSAWデバイス1dは、いわゆるウェハレベルのSAWパッケージである点において、第3実施形態におけるSAWデバイス1b及び第4実施形態におけるSAWデバイス1cと同一であり、また、圧電基板12の主面から延びるポスト26aの高さは第4実施形態と同様である。具体的には、第5実施形態では、第3実施形態と異なり、ポスト26aが封止樹脂24の表面よりも突出しており、半田ボール28の内部にまで到達している。さらに、第5実施形態では、圧電基板12の裏面12bに保護膜30が成膜されている。この保護膜30は、第3実施形態と同様に、例えば樹脂を材質としている。
【0077】
この第5実施形態によれば、第3実施形態による有用性を発揮することができるとともに、併せて第4実施形態による有用性をも発揮することができる。
【0078】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。例えば上記実施形態の各構成は、その一部を省略したり、上記とは異なるように任意に組み合わせることができる。また第1実施形態における樹脂封止ステップでは、チップ実装した表面弾性波素子11について、図10に示すようにリードフレーム3を一括成型用テープ18に貼り付けているが、これに限られず、このようなテープ部材に固定しない手法を採用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】第1実施形態としての表面弾性波装置の構成例を示す断面図である。
【図2】図1に示すSAWデバイスをA−A’線で切断した場合における断面構成例を示す断面図である。
【図3】圧電基板上に金属膜が成膜された様子を示す断面図である。
【図4】エッチングで残された金属膜により圧電基板上に櫛歯電極、反射器を形成した様子を示す断面図である。
【図5】圧電基板上に励振保護空間の形状と同一の外形を有する犠牲層を形成した様子を示す断面図である。
【図6】圧電基板上の犠牲層の表面に沿って空間形成体を形成した様子を示す断面図である。
【図7】空間形成体の両側で櫛歯電極の基部に金属バンプを形成した様子を示す断面図である。
【図8】空間形成体内に充填されている犠牲層を取り除き、励振保護空間を形成した様子を示す断面図である。
【図9】金属バンプをリードフレームに接合してチップ実装を行った様子を示す断面図である。
【図10】チップ実装した表面弾性波素子のリードフレームを一括成型用テープに貼り付けた様子を示す断面図である。
【図11】励振保護空間を形成した表面弾性波素子を、封止樹脂によってモールドした様子を示す断面図である。
【図12】封止樹脂でモールドされた表面弾性波素子から、一括成型用テープが剥離された様子を示す断面図である。
【図13】第2実施形態としての表面弾性波装置の構成例を示す断面図である。
【図14】圧電基板上に金属膜が成膜された様子を示す断面図である。
【図15】圧電基板上で、エッチングにより残された金属膜により櫛歯電極及び反射器を形成した様子を示す断面図である。
【図16】圧電基板上に励振保護空間の形状と同一の外形を有する犠牲層を形成した様子を示す断面図である。
【図17】圧電基板上の犠牲層の表面に沿って空間形成体を形成した様子を示す断面図である。
【図18】空間形成体の両側にポストを形成した様子を示す断面図である。
【図19】空間形成体内に充填されている犠牲層を取り除き、励振保護空間を形成した様子を示す断面図である。
【図20】ポストが形成された表面弾性波素子を覆うように、封止樹脂でモールドした様子を示す断面図である。
【図21】圧電基板の表面に形成された封止樹脂を、ポストが露出するまで削り取った様子を示す断面図である。
【図22】第3実施形態における表面弾性波装置の構成例を示す断面図である。
【図23】第4実施形態における表面弾性波装置の構成例を示す断面図である。
【図24】第5実施形態における表面弾性波装置の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 SAWデバイス(表面弾性波装置) 1a SAWデバイス(表面弾性波装置) 1b SAWデバイス(表面弾性波装置) 6 犠牲層 7 空間形成体 7a 蓋部 7b 脚部 7c 励振保護空間 8 開口部 11 表面弾性波素子 13 櫛歯電極 14 櫛歯電極 19 反射器 24 封止樹脂 33 樹脂受入空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、この圧電基板に生じる表面弾性波と電気信号とを相互に変換する機能を有した櫛歯電極と、表面弾性波の伝搬方向でみて前記櫛歯電極に隣接して配置され、前記圧電基板に伝搬する表面弾性波を前記櫛歯電極に向けて反射する反射器とを備え、前記圧電基板の表面のうち前記櫛歯電極及び前記反射器が形成された領域を覆う空間部を残した状態で少なくとも前記圧電基板の表面が封止樹脂により封止された構造を有する表面弾性波装置の製造方法において、 前記圧電基板の表面に形成された金属膜をエッチングし、完成状態で前記圧電基板の表面に表面弾性波を伝搬させる予定の方向に配列された前記櫛歯電極及び前記反射器を形成するエッチングステップと、 前記圧電基板の表面上で前記櫛歯電極及び前記反射器を覆う位置に、前記空間部の形状に相当する外形を有した犠牲層を前記予定の方向に沿って形成する犠牲層形成ステップと、 前記予定の方向に沿う前記犠牲層の外面に沿って材料を付着させることで、前記予定の方向に沿う前記犠牲層の外面を取り囲み、かつ前記予定の方向でみた端部には前記犠牲層を露出させる開口を有した状態で前記圧電基板の表面に設置された空間形成体を形成するする空間形成体形成ステップと、 前記空間形成体の開口を通じて前記圧電基板の表面上から前記犠牲層を取り除く犠牲層除去ステップと、 前記犠牲層を取り除いた後、前記空間形成体によって前記櫛歯電極及び前記反射器との間に前記空間部が形成された状態で前記圧電基板の表面を封止樹脂によって封止する樹脂封止ステップとを有することを特徴とする表面弾性波装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の表面弾性波装置の製造方法において、 前記犠牲層は、樹脂を材質とすることを特徴とする表面弾性波装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の表面弾性波装置の製造方法において、 前記犠牲層は、珪素を材質とすることを特徴とする表面弾性波装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の表面弾性波装置の製造方法において、 前記犠牲層形成ステップでは、前記犠牲層の形成にあたり、前記圧電基板上に形成された前記櫛歯電極及び前記反射器を覆う範囲に加え、前記反射器が形成された位置からさらに前記予定の方向へ前記犠牲層を延長させて形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の表面弾性波装置の製造方法。
【請求項5】
圧電基板と、 前記圧電基板の表面に生じる表面弾性波と電気信号とを相互に変換する機能を有した櫛歯電極と、 前記圧電基板の表面上で表面弾性波の伝搬方向に沿って前記櫛歯電極に隣接して形成され、前記圧電基板を伝搬する表面弾性波を前記櫛歯電極に向けて反射する反射器と、 前記圧電基板の表面上に設置され、前記櫛歯電極及び前記反射器を覆う空間を区画して形成する空間形成体と、 前記空間形成体とともに前記圧電基板の外面を封止する封止樹脂とを備え、 前記空間形成体は、 前記圧電基板の表面から前記空間をおいて離間する位置で前記櫛歯電極及び前記反射器の配列方向に沿って延びる蓋部と、 前記蓋部の外縁部と前記圧電基板の表面との間を延びて前記空間の側壁を構成する脚部と、 前記反射器の近傍にて前記脚部及び前記脚部に囲まれて形成された開口部とを有することを特徴とする表面弾性波装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表面弾性波装置において、 前記空間形成体は、表面弾性波の伝搬方向でみて前記開口部から前記反射器までの間に、前記開口部を通じて前記封止樹脂が入り込むのを許容する樹脂受入空間を有することを特徴とする表面弾性波装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2007−325013(P2007−325013A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153776(P2006−153776)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】