説明

表面形状測定装置

【課題】被測定物の表面形状を高い精度で測定し得る表面形状測定装置を提供する。
【解決手段】表面形状測定装置500は、被測定物600を支持する被測定物台510と、力感知部100と、力感知部100と被測定物600を互いに近づけるまたは遠ざけるために力感知部100と被測定物600を相対的にZ軸に沿って移動させるZ走査機構540と、Z軸に直交するX軸に沿って力感知部100と被測定物600を相対的に移動させるX走査機構520とを備えている。力感知部100は、被測定物600に近接されて被測定物600から力を受けるプローブを含み、このプローブが被測定物600から受ける力を感知する機能を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の表面形状を測定する表面形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面形状測定装置は、被測定物に接触させたプローブを被測定物の表面上で接触を保ちつつ走査しながら、プローブの3次元位置情報を検出してマッピングすることによって、被測定物の表面形状を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7一260471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでの表面形状測定装置では、プローブは、高さ方向に直線的に移動可能に付勢された支持部材に支持され、被測定物に対する接触圧力を一定に保ちながら高さ方向に垂直な方向に走査される。接触圧力は、プローブの反対側に位置する支持部材の末端の変位を検出することによって感知される。つまり、プローブの走査は、プローブの接触圧力を一定に保ちながらおこなわれるのが理想であるが、実際にはプローブの接触圧力の高さ方向成分を一定に保ちながらおこなわれている。
【0005】
平らに近い部分すなわち被測定物の表面の法線方向が高さ方向に対してなす角度が小さい部分では、プローブの接触圧力は高さ方向成分が大きく走査方向成分は小さいので、感知される力はプローブが実際に受ける力とそれほど変わらないが、急な部分すなわち被測定物の表面の法線方向が高さ方向に対してなす角度が大きい部分では、プローブの接触圧力は高さ方向成分が小さく走査方向成分が大きいので、感知される力はプローブが実際に受ける力よりもはるかに小さい。このため、プローブが実際に受ける力は、急な部分では平らに近い部分に比べて非常に大きくなる。
【0006】
支持部材のプローブの近い部分は、被測定物の急な部分においてもプローブと測定物の接触を保つために、高さ方向に延びた細長い棒状となっている。この棒状の部分は剛性が低くしなりやすい。被測定物の急な部分では、前述したようにプローブの接触圧力は走査方向成分が大きいので、支持部材の棒状の部分が容易にしなる。これは、プローブの実際の3次元位置情報と、走査情報から得られるプローブの3次元位置情報との間に誤差を生み、測定精度を低下させる原因となっている。
【0007】
本発明は、被測定物の表面形状を高い精度で測定し得る表面形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による表面形状測定装置は、被測定物を支持する被測定物台と、前記被測定物に近接されて前記被測定物から力を受けるプローブを含み、前記プローブが前記被測定物から受ける力を感知する力感知部と、前記力感知部と前記被測定物を互いに近づけるまたは遠ざけるために前記力感知部と前記被測定物を相対的に第一の軸に沿って移動させる第一の走査機構と、前記第一の軸に直交する第二の軸に沿って前記力感知部と前記被測定物を相対的に移動させる第二の走査機構とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被測定物の表面形状を高い精度で測定し得る表面形状測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態による表面形状測定装置を概略的に示している。
【図2】図1に示される力感知部の側面図である。
【図3】図2に示される力感知部の正面図である。
【図4】図1と図2に示される力感知部の第1変形例による力感知部の側面図である。
【図5】図4に示される力感知部の正面図である。
【図6】図1と図2に示される力感知部の第2変形例による力感知部の側面図である。
【図7】図6に示される力感知部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1に示すように、表面形状測定装置500は、被測定物600を支持する被測定物台510と、力感知部100と、力感知部100と被測定物600を互いに近づけるまたは遠ざけるために力感知部100と被測定物600を相対的にZ軸に沿って移動させるZ走査機構540と、Z軸に直交するX軸に沿って力感知部100と被測定物600を相対的に移動させるX走査機構520と、Z軸とX軸に直交するY軸に沿って力感知部100と被測定物600を相対的に移動させるY走査機構530とを備えている。表面形状測定装置500は、3次元表面形状測定の用途のためにX走査機構520とY走査機構530とを備えているが、2次元表面形状いわゆる断面形状測定の用途に対してはY走査機構530を備えていなくてよい。
【0013】
力感知部100は、その詳細は後述するが、被測定物600に近接されて被測定物600から力を受けるプローブを含んでおり、このプローブが被測定物600から受ける力を感知する機能を有している。
【0014】
被測定物台510は、被測定物600を一定の位置に保つために、被測定物600を保持する機構を備えていてもよい。この場合、被測定物台510は必ずしも図1に示すように下方に配置される必要はなく、表面形状測定装置500はどのような向きに配置されてもよい。
【0015】
Z走査機構540は、力感知部100をZ軸に沿って移動可能に支持している。Z走査機構540は、力感知部100と被測定物600を相対的にZ軸に沿って移動させることができればよく、力感知部100を移動させる代わりに、被測定物600を移動させるように変更されてもよい。
【0016】
X走査機構520は、力感知部100を支持するZ走査機構540をX軸に沿って移動可能に支持している。X走査機構520は、力感知部100と被測定物600を相対的にX軸に沿って移動させることができればよく、力感知部100を移動させる代わりに、被測定物600を移動させるように変更されてもよい。
【0017】
Y走査機構530は、被測定物600を支持する被測定物台510をY軸に沿って移動可能に支持している。Y走査機構530は、力感知部100と被測定物600を相対的にY軸に沿って移動させることができればよく、被測定物600を移動させる代わりに、力感知部100を移動させるように変更されてもよい。
【0018】
表面形状測定装置500はまた、X,Y,Z走査機構520,530,540を制御する制御部550と、制御部550に対する情報の入出力のための入出力部560とを備えている。たとえば、制御部550は、入出力部560を介して入力される指示や設定値などにしたがって、また力感知部100によって感知される情報にしたがって、X,Y,Z走査機構520,530,540を制御する。制御部550はまた、X,Y,Z走査機構520,530,540の制御情報に基づいてプローブの3次元位置情報すなわちX,Y,Z座標を取得し、それらをマッピングして被測定物600の表面形状を算出する。
【0019】
力感知部100は、図2と図3に示すように、ベース110と、ベース110に片持ち支持されたカンチレバー130とを備えている。
【0020】
ベース110は、図2に示すように、側面から見て、全体として数宇の7に似た形状をしており、Z走査機構530に固定される固定部112と、固定部112の端部から固定部112の側へ傾斜して延出している傾斜延出部114とを備えている。傾斜延出部114は、図3に示すように、正面から見て、等角台形形状をしている。
【0021】
等角台形とは、底の両側の角が等しい台形を言う。つまり等角台形は、一組の対辺が平行であり、別の一組の対辺の長さが等しく、対角の和が180度である四辺形である。等角台形はたとえば、ニ等辺三角形の頂角を底辺に平行な直線で切り落とした形状である。なお等角台形は長方形を含み得る。
【0022】
カンチレバー130は、図2に示すように、側面から見て、ベース110と同様に全体として数宇の7に似た形状をしており、ベース110の固定部112に固定される固定部132と、固定部132の端部から固定部132の側へ傾斜して延出している傾斜延出部134とを備えている。傾斜延出部134は、実質的に、ベース110の傾斜延出部114に対して平行に一定の間隔を置いて延びている。傾斜延出部134は、図3に示すように、正面から見て、ベース110の傾斜延出部114と相似な等角台形形状の台形延出部136と、台形延出部136の短い側の底から延出している長方形形状の方形延出部138と、方形延出部138の先端に位置する二等辺三角形形状のプローブ140とを有している。プローブ140の先端は、図2に示すように、ベース110の傾斜延出部114の先端面116を含む平面よりも前方に突出している。
【0023】
カンチレバー130の傾斜延出部134およびベース110の傾斜延出部114の先端面116のZ軸に対する傾斜角度は、たとえば、予想される被測定物600のZ軸に対する傾斜角度よりも小さく設定される。
【0024】
プローブ140は、前述したように、被測定物600に近接されて被測定物600から力を受ける。カンチレバー130は、プローブ140が被測定物600から受ける力に応じて弾性的にたわみ変形する。カンチレバー130は、原子間力レベルの力でたわみ変形を生じる。
【0025】
ベース110とカンチレバー130は互いに電気的に絶縁され、ベース110の傾斜延出部114とカンチレバー130の傾斜延出部134は、たとえば互いに対向する面に電極を備え、またはそれら自体が導電物質で構成されており、静電容量センサを構成している。この静電容量センサは、プローブ140が被測定物600から受ける力に応じて生じるカンチレバー130のたわみ変形に依存して静電容量が変化する。したがって、ベース110とカンチレバー130が構成する静電容量センサの静電容量変化を測定することによってカンチレバー130のたわみ変形すなわちプローブ140が被測定物600から受ける力が感知される。つまり、力感知部100は、カンチレバー130のたわみ変形を感知する静電容量センサを有している。
【0026】
次に、表面形状測定における制御部550の動作について説明する。
【0027】
1.Z走査機構530を制御して力感知部100のプローブ140を被測定物台510に設置された被測定物600に近接たとえば接触させる。
【0028】
2.被測定物600へのプローブ140の近接または接触によって生じたカンチレバー130のたわみ変形すなわちプローブ140が被測定物600から受ける力を力感知部100の静電容量センサで感知し、それ以降、力感知部100で感知された信号すなわち静電容量値を一定に維持するようにZ走査機構530を制御する。
【0029】
3.続いて、被測定物600の表面上で力感知部100のプローブ140をX,Y軸に沿って走査たとえばラスター走査するようにX,Y走査機構520,530を制御する。
【0030】
4.X,Y,Z走査機構520,530,540の制御情報に基づいてプローブ140の3次元位置情報すなわちX,Y,Z座標を取得し、それらをマッピングして被測定物600の表面形状を算出する。算出結果は、入出力部560へ出力する。
【0031】
表面形状測定装置500では、被測定物600の近くに配置される力感知部100が、被測定物600から力を受けるプローブ140を含み、プローブ140が被測定物600から受ける力を感知する機能を有している。力感知部100は、プローブ140が被測定物600から受ける力を、Z軸に非平行な方向のプローブ140の移動として感知する。このため、力感知部100が感知する力は、プローブ140が被測定物600から実際に受ける力からのずれが少ない。つまり、プローブ140の実際のX,Y,Z座標と、X,Y,Z走査機構520,530,540の制御情報に基づいて算出されるプローブ140のX,Y,Z座標との間の誤差が少ない。
【0032】
特に、力感知部100は、プローブ140が被測定物600から受ける力を、プローブ140を先端に有するカンチレバー130のたわみ変形として感知する。カンチレバー130のたわみ変形は、プローブ140が受ける力の方向にほとんど関係なく、プローブ140が受ける力の大きさを反映する。これは、プローブ140の実際のX,Y,Z座標と算出されるX,Y,Z座標との間の誤差を効果的に低減する。
【0033】
さらに、カンチレバー130は、原子間力レベルの力でたわみ変形を生じる。つまり、カンチレバー130は、プローブ140が受ける力の非常に小さい変化に対しても敏感に反応してたわみ変形する。
【0034】
したがって、表面形状測定装置500は、被測定物600の表面形状を高い精度で測定し得る。
【0035】
この実施形態では、力感知部100は、カンチレバー130のたわみ変形を感知するために、ベース110とカンチレバー130とによって構成された静電容量センサを有しているが、これに代えて、ベース110とカンチレバー130のいずれか一方に設けられた他のセンサを有していてもよい。カンチレバー130に設けられたセンサは、たとえば、カンチレバー130のたわみ変形に応じた電気抵抗変化を示す歪みゲージであってよい。また、ベース110に設けられたセンサは、たとえば、カンチレバー130のたわみ変形を検出する装置、たとえば光源とPSDを組み合わせた装置であってよい。
【0036】
また、プローブ140が被測定物600から受ける力をカンチレバー130のたわみ変形として感知しているが、カンチレバー130を振動させてプローブ140を被測定物600に近接させカンチレバー130の振動振幅の変化として感知してもよい。
【0037】
力感知部100の変形例を以下に示す。
【0038】
(第1変形例)
第1変形例による力感知部200は、図4と図5に示すように、ベース210と、ベース210に片持ち支持されたカンチレバー230とを備えている。
【0039】
ベース210は、図4に示すように、側面から見て、Z走査機構530に固定される固定部212と、固定部212の端部から固定部212の反対側へ傾斜して延出している傾斜延出部214とを備えている。傾斜延出部214は、図5に示すように、正面から見て、等角台形形状をしている。
【0040】
カンチレバー230は、図4に示すように、側面から見て、ベース210の固定部212に固定される固定部232と、固定部232の端部から固定部232の反対側へ傾斜して延出している傾斜延出部234とを備えている。傾斜延出部234は、実質的に、ベース210の傾斜延出部214に対して平行に一定の間隔を置いて延びている。傾斜延出部234は、図5に示すように、正面から見て、ベース210の傾斜延出部214と相似な等角台形形状の台形延出部236と、台形延出部236の短い側の底から延出している長方形形状の方形延出部238と、方形延出部238の先端に位置する二等辺三角形形状のプローブ240とを有している。プローブ240の先端は、図4に示すように、ベース210の傾斜延出部214の先端面216を含む平面よりも前方に突出している。
【0041】
ベース210とカンチレバー230は互いに電気的に絶縁され、ベース210の傾斜延出部214とカンチレバー230の傾斜延出部234は、たとえば互いに対向する面に電極を備え、またはそれら自体が導電物質で構成されており、カンチレバー230のたわみ変形を感知する静電容量センサを構成している。
【0042】
(第2変形例)
第2変形例による力感知部300は、図6と図7に示すように、ベース310と、ベース310に片持ち支持されたカンチレバー330とを備えている。
【0043】
ベース310は、図6に示すように、側面から見て、直角三角形形状をしており、図7に示すように、正面から見て、等角台形形状をしている。
【0044】
カンチレバー330は、図6に示すように、側面から見て、ベース310の上面312に固定される固定部332と、固定部332の端部から固定部332に垂直に下方へ延出している垂直延出部334とを備えている。垂直延出部334は、実質的に、ベース310の垂直側面314に対して平行に一定の間隔を置いて延びている。垂直延出部334は、図7に示すように、正面から見て、ベース310の垂直側面314と相似な等角台形形状の台形延出部336と、台形延出部336の短い側の底から延出している長方形形状の方形延出部338と、方形延出部338の先端に位置する二等辺三角形形状のプローブ340とを有している。プローブ340の先端は、図6に示すように、ベース310の傾斜側面316を含む平面よりも前方に突出している。
【0045】
ベース310とカンチレバー330は互いに電気的に絶縁され、ベース310とカンチレバー330の垂直延出部334は、たとえば互いに対向する面に電極を備え、またはそれら自体が導電物質で構成されており、カンチレバー330のたわみ変形を感知する静電容量センサを構成している。
【0046】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
100…力感知部、110…ベース、112…固定部、114…傾斜延出部、116…先端面、130…カンチレバー、132…固定部、134…傾斜延出部、136…台形延出部、138…方形延出部、140…プローブ、200…力感知部、210…ベース、212…固定部、214…傾斜延出部、216…先端面、230…カンチレバー、232…固定部、234…傾斜延出部、236…台形延出部、238…方形延出部、240…プローブ、300…力感知部、310…ベース、312…上面、314…垂直側面、316…傾斜側面、330…カンチレバー、332…固定部、334…垂直延出部、336…台形延出部、338…方形延出部、340…プローブ、500…表面形状測定装置、510…被測定物台、520…X走査機構、530…Y走査機構、540…Z走査機構、550…制御部、560…入出力部、600…被測定物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の表面形状を測定する表面形状測定装置であり、
前記被測定物を支持する被測定物台と、
前記被測定物に近接されて前記被測定物から力を受けるプローブを含み、前記プローブが前記被測定物から受ける力を感知する力感知部と、
前記力感知部と前記被測定物を互いに近づけるまたは遠ざけるために前記力感知部と前記被測定物を相対的に第一の軸に沿って移動させる第一の走査機構と、
前記第一の軸に直交する第二の軸に沿って前記力感知部と前記被測定物を相対的に移動させる第二の走査機構とを備えている表面形状測定装置。
【請求項2】
前記力感知部は、ベースと、前記ベースに片持ち支持されたカンチレバーとを備え、前記カンチレバーは、前記プローブを先端に有し、前記力に応じて弾性的にたわみ変形する請求項1に記載の表面形状測定装置。
【請求項3】
前記圧力感知部は、前記カンチレバーと前記ベースとによって構成された、前記カンチレバーのたわみ変形を感知する静電容量センサを有している請求項2に記載の表面形状測定装置。
【請求項4】
前記圧力感知部は、前記カンチレバーと前記ベースのいずれか一方に設けられた、前記カンチレバーのたわみ変形を感知するセンサを有している請求項2に記載の表面形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−164023(P2011−164023A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29182(P2010−29182)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】