表面性状測定機
【課題】測定アームを交換しても、測定アームのバランスを自動的に調整し、使い勝手および作業効率の向上が期待できる表面性状測定機を提供する。
【解決手段】表面性状測定機において、測定アーム24は、ブラケット22に回転軸23を支点として円弧運動可能に支持された第1測定アーム24Aと、これの先端に着脱機構25を介して着脱可能に設けられ先端にスタイラス26A,26Bを有する第2測定アーム24Bとを含んで構成される。測定アームを円弧運動方向へ付勢しスタイラスに測定力を付与する測定力付与手段は、測定アームを回転軸を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイル62を含んで構成される。第2測定アームの交換後に、ボイルコイルに通電する電流を調整して測定アームのバランスを調整するバランス調整手段が設けられる。
【解決手段】表面性状測定機において、測定アーム24は、ブラケット22に回転軸23を支点として円弧運動可能に支持された第1測定アーム24Aと、これの先端に着脱機構25を介して着脱可能に設けられ先端にスタイラス26A,26Bを有する第2測定アーム24Bとを含んで構成される。測定アームを円弧運動方向へ付勢しスタイラスに測定力を付与する測定力付与手段は、測定アームを回転軸を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイル62を含んで構成される。第2測定アームの交換後に、ボイルコイルに通電する電流を調整して測定アームのバランスを調整するバランス調整手段が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性状測定機に関する。詳しくは、被測定物の表面に接触させるスタイラスを有する測定アームが交換可能な表面性状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面にスタイラスを接触させた状態において、スタイラスを被測定物の表面に沿って移動させ、このとき、被測定物の表面形状や表面粗さによって生じるスタイラスの変位(スタイラスの移動方向に対して直交する方向の変位)を検出し、このスタイラスの変位から被測定物の表面形状や表面粗さ等の表面性状を測定する表面性状測定機が知られている。
【0003】
表面性状測定機のなかには、被測定物の各種形状の測定部位を測定できるように、予め各種形状のスタイラス(測定アーム)を用意しておき、被測定物の測定部位形状に応じて最適なスタイラスに交換して測定できるようにしたものが提案されている。
例えば、特許文献1では、ベースに立設されたコラムと、このコラムに調整装置を介して昇降可能に設けられたホルダと、このホルダに設けられたハウジングと、このハウジング内にリニアモータを介して水平方向へ移動可能に設けられたシーソーと、ハウジングの外側において連結手段を介してシーソーに連結された測定アームと、この測定アームの先端に設けられたスタイラスとを備え、ハウジングの外側において測定アームを交換できるようにした輪郭測定機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE19617022C1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した輪郭測定機などの表面性状測定機においては、スタイラスが被測定物の表面に接触する圧力、つまり、測定力を被測定物の材質や形状などに応じて最適な測定力になるように調整する必要がある。
通常、測定アームを交換した場合、交換した測定アームの重量と元の測定アームの重量とが異なることが多く、そのため、測定アームのバランスが崩れ、測定誤差を生じさせる。そこで、測定アームの交換の都度、測定力の調整の前に、測定アームのバランス、つまり、測定アームが略水平に保たれるように、バランス調整をする必要がある。
【0006】
従来、測定アームを交換した際、まず、測定アームの先端のスタイラスを電子天秤など力を測定する測定機器に載せ、この状態で測定機器の値が0になるように、測定力調整機構を調整しなければならなかったため、使い勝手が悪く、作業効率が悪いという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題を解消し、測定アームを交換しても、測定アームのバランスを自動的に調整することにより、使い勝手および作業効率の向上が期待できる表面性状測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表面性状測定機は、本体に支持軸を支点として円弧運動可能に支持された測定アーム、この測定アームの先端に設けられたスタイラス、前記測定アームの円弧運動量を検出する変位検出器、および、前記測定アームを円弧運動方向へ付勢し前記スタイラスに測定力を付与する測定力付与手段を有する検出手段と、被測定物を載置するステージと、前記検出手段と前記ステージとを相対移動させる相対移動機構とを備え、前記スタイラスを被測定物の表面に接触させた状態において、前記相対移動機構により前記検出手段と前記ステージとを相対移動させながら前記変位検出器によって前記測定アームの円弧運動量を検出し、この円弧運動量から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機において、 前記測定アームは、前記本体に前記支持軸を支点として円弧運動可能に支持された第1測定アームと、この第1測定アームの先端に着脱機構を介して着脱可能に設けられ先端に前記スタイラスを有する第2測定アームとを含んで構成され、前記測定力付与手段は、前記測定アームを前記支持軸を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイルを含んで構成され、前記第2測定アームの交換後に、前記ボイルコイルに通電する電流を調整して前記測定アームのバランスを調整するバランス調整手段を備える、ことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、測定アームは、本体に支持軸を支点として円弧運動可能に支持された第1測定アームと、この第1測定アームの先端に着脱機構を介して着脱可能に設けられ先端にスタイラスを有する第2測定アームとを含んで構成されているから、スタイラスを有する第2測定アームを交換することができる。従って、被測定物の測定部位の形状に応じた最適なスタイラスを有する測定アームを用いて測定することができる。
この際、第2測定アームを交換した場合、新たな第2測定アームの重量が前の第2測定アームの重量と異なっていても、バランス調整手段によって、ボイルコイルに通電する電流を調整して測定アームのバランスを自動的に調整することができるので、測定アームの交換に伴う測定誤差を少なくすることができるとともに、使い勝手および作業効率の向上が期待できる
【0010】
本発明の表面性状測定機において、前記バランス調整手段は、前記変位検出器によって検出される前記測定アームの円弧運動量を監視しながら、前記ボイルコイルに通電する電流を調整し、前記測定アームの円弧運動量が予め設定した設定値になった段階でバランス調整を完了する、ことが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、バランス調整手段によって、変位検出器によって検出される測定アームの円弧運動量を監視しながら、ボイルコイルに通電する電流を調整し、測定アームの円弧運動量が予め設定した設定値になった段階で、バランス調整を完了するから、測定アームのバランス調整を正確に行うことができる。
【0012】
本発明の表面性状測定機において、前記スタイラスは、前記測定アームの先端に前記円弧運動方向に向かってそれぞれ突出する一対のスタイラスを有し、前記ボイスコイルは、前記測定アームが前記円弧運動方向の一方向へ付勢される姿勢および他方向に付勢される姿勢に切り替える測定アーム姿勢切替機構を構成している、ことが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、測定アームの先端には円弧運動方向に向かってそれぞれ突出する一対のスタイラスを有しているから、測定アーム姿勢切替機構によって、測定アームが付勢される方向を切り替えれば、つまり、測定アームが円弧運動方向の一方向へ付勢される姿勢および他方向に付勢される姿勢に切り替えれば、例えば、孔の上下面の表面性状や、板状被測定物の表裏面の表面性状を測定することができる。
【0014】
本発明の表面性状測定機において、前記測定アーム姿勢切替機構によって前記測定アームの姿勢が切替動作された際に、前記測定アームの切替動作速度を予め設定された速度に制御する速度制御機構を備える、ことが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、測定アームが円弧運動方向の一方向(例えば、上方向)から他方向(例えば、下方向)へ切替動作されると、速度制御機構によって測定アームの切替動作速度が予め設定された速度に制御されるから、測定アームの切替動作速度を一定速度以下に抑えることができる。そのため、例えば、孔の内面測定において、スタイラスが穴の内面に衝突したときの衝撃を抑えることができるから、スタイラスや被測定物の損傷を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る表面性状測定機を示す斜視図。
【図2】同上実施形態のX軸駆動機構およびスタイラス変位検出手段を示す図。
【図3】同上実施形態の測定アームおよび変位検出器の関係を示す平面図。
【図4】同上実施形態の測定アームおよび測定アーム姿勢切替機構を示す図。
【図5】同上実施形態の測定姿勢・測定力制御回路を示す図。
【図6】同上実施形態の着脱機構を示す分解斜視図。
【図7】同上実施形態の接触検知回路を示す図。
【図8】同上実施形態の制御システムを示すブロック図、
【図9】同上実施形態において、孔の内周面の上下面を測定する例を示す図、
【図10】同上実施形態において、厚みを測定する例を示す図。
【図11】同上実施形態の測定アームのバランス調整の手順を示すフロー図。
【図12】同上実施形態の測定アームのバランス調整の他の手順を示すフロー図。
【図13】同上実施形態の測定アームのバランス調整の更に他の手順を示すフロー図。
【図14】同上実施形態の測定姿勢・測定力制御回路の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<表面性状測定機の説明(図1〜図8参照)>
本実施形態に係る表面性状測定機は、図1に示すように、ベース1と、このベース1上に載置され上面に被測定物を載置するステージ10と、被測定物の表面に接触されるスタイラス26A,26Bを有するスタイラス変位検出手段20と、このスタイラス変位検出手段20とステージ10とを相対移動させる相対移動機構40とを備える。
【0018】
相対移動機構40は、ベース1とステージ10との間に設けられステージ10を水平方向の一方向(Y軸方向)へ移動させるY軸駆動機構41と、ベース1の上面に立設されたコラム42と、このコラム42に上下方向(Z軸方向)へ移動可能に設けられたZスライダ43と、このZスライダ43を上下方向へ昇降させるZ軸駆動機構44と、Zスライダ43に設けられスタイラス変位検出手段20をステージ10の移動方向(Y軸方向)およびZスライダ43の移動方向(Z軸方向)に対して直交する方向(X軸方向)へ移動させるX軸駆動機構45とを備える。従って、相対移動機構40は、ステージ10をY軸方向へ移動させるY軸駆動機構41と、スタイラス変位検出手段20をZ軸方向へ移動させるZ軸駆動機構44と、スタイラス変位検出手段20をX軸方向へ移動させるX軸駆動機構45とを含む三次元移動機構によって構成されている。
【0019】
Y軸駆動機構41およびZ軸駆動機構44は、図示省略されているが、例えば、ボールねじ軸と、このボールねじ軸に螺合されたナット部材とを有する送りねじ機構によって構成されている。
X軸駆動機構45は、図2に示すように、Zスライダ43に固定された駆動機構本体46と、この駆動機構本体46にX軸方向と平行に設けられたガイドレール47と、このガイドレール47に沿ってX軸方向へ移動可能に設けられたXスライダ48と、このXスライダ48のX軸方向位置を検出するX軸位置検出器49と、Xスライダ48をガイドレール47に沿って移動させる送り機構50とを備える。
送り機構50は、駆動機構本体46にガイドレール47と平行に設けられXスライダ48に螺合された送りねじ軸51と、駆動源としてのモータ52と、このモータ52の回転を送りねじ軸51に伝達する回転伝達機構53とから構成されている。回転伝達機構53は、例えば、歯車列や、ベルトおよびプーリなどの機構によって構成されている。
【0020】
スタイラス変位検出手段20は、図2に示すように、Xスライダ48にボルト21を介して着脱可能に吊り下げ支持された本体としてのブラケット22と、このブラケット22に支持軸としての回転軸23を支点として上下方向へ揺動可能(円弧運動可能)に支持された測定アーム24と、この測定アーム24の先端に設けられた一対のスタイラス26A,26Bと、測定アーム24の円弧運動量(Z軸方向の変位量)を検出する変位検出器27と、測定アーム24に位置調整可能に設けられたバランスウエイト29と、測定アーム24が円弧運動方向の一方向(例えば、上方向)に付勢される姿勢および他方向(下方向)に付勢される姿勢に切り替える測定アーム姿勢切替機構60と、ブラケット22、測定アーム24、変位検出器27、バランスウエイト29、測定アーム姿勢切替機構60を覆うケーシング28とを含んで構成されている。
【0021】
測定アーム24は、ブラケット22に回転軸23を支点として上下方向へ円弧運動可能に支持された第1測定アーム24Aと、この第1測定アーム24Aの先端に着脱機構25を介して交換可能に取り付けられた第2測定アーム24Bとから構成されている。着脱機構25は、第1測定アーム24Aと第2測定アーム24Bとが一直線上に配置されるようにこれらを接続する。
スタイラス26A,26Bは、第2測定アーム24Bに対して円弧運動方向に突出して設けられている。つまり、第2測定アーム24Bに対して上向きのスタイラス26Aと下向きのスタイラス26Bとが上下方向に直角に突出して設けられている。
【0022】
変位検出器27は、図3に示すように、測定アーム24の円弧運動範囲に沿って設けられ、測定アーム24の円弧運動量に対応した数のパルス信号を出力する位置検出器によって構成されている。具体的には、測定アーム24に設けられ測定アーム24の円弧運動方向に湾曲したスケール27Aと、このスケール27Aに対向して本体としてのブラケット22に取り付けられた検出ヘッド27Bとを備える。スケール27Aの検出面は、測定アーム24の軸線上でかつ測定アーム24の円弧運動面上に配置されている。これにより、スケール27Aの検出面、測定アーム24、スタイラス26A,26Bの先端が同一軸上に配置されることになる。
バランスウエイト29は、回転軸23を支点として第1測定アーム24A側の重量と、第2測定アーム24B側の重量とがバランスするように、測定アーム24の軸方向へ位置調整可能に設けられている。具体的には、バランスウエイト29は、止めねじにより測定アーム24の所望位置に固定される。あるいは、測定アーム24に雄ねじを形成し、この雄ねじにバランスウエイト29を位置調整可能に螺合してもよい。
【0023】
測定アーム姿勢切替機構60は、図4に示すように、第1測定アーム24Aの途中に設けられた円筒状の磁石61と、この磁石61内を通って本体としてのブラケット22に固定され測定アーム24を回転軸23を支点として円弧運動方向の一方向(上方向)および他方向(下方向)へ付勢するボイスコイル62によって構成され、測定姿勢・測定力制御回路70からの指令で制御される。測定姿勢・測定力制御回路70からの指令により、ボイスコイル62に電流が流されると、ボイスコイル62から発生する電磁力と磁石61の磁力により、測定アーム24の磁石61がボイルコイル62に引きつけられ、測定アーム24の先端が上方向または下方向へ付勢される姿勢に切り替えられる。
ここに、測定アーム姿勢切替機構60は、測定アーム24を回転軸23を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイル62を含み、測定アーム24を円弧運動方向へ付勢しスタイラス26A,26Bに測定力を付与する測定力付与手段を兼ねている。
【0024】
測定姿勢・測定力制御回路70は、図5に示すように、後述する制御装置101から出力されるバランス指令、切替動作指令(上向きまたは下向き切替動作指令)、測定力指令に応じて予め設定した速度に対応する電圧A(指令速度信号)を発生するCPUなどからなる指令信号発生手段72と、この指令信号発生手段72からの電圧A(デジタル信号)をアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータ73と、変位検出器27からのパルス信号(周波数)を基に測定アーム24の動作速度に対応した電圧B(動作速度信号)を出力する測定アーム速度検出手段としての周波数電圧コンバータ74と、指令速度信号(電圧A)と動作速度信号(電圧B)との差電圧Cを出力する差分出力手段としての減算器75と、この減算器75からの差電圧Cを電流に変換し測定アーム姿勢切替機構60のボイスコイル62に与える定電流回路76とを含んで構成されている。これにより、測定アーム24の動作速度を予め設定した一定速度以下に抑えながら測定アーム24を円弧運動させることができる。
ここで、指令信号発生手段72から発生される電圧A(指令速度信号)は、スタイラス26A,26Bが被測定物に接触した際に、スタイラス26A,26Bや被測定物が損傷することがない速度に設定されている。
【0025】
着脱機構25は、図2に示すように、ケーシング28内に配置される。また、着脱機構25は、図6に示すように、第1測定アーム24Aの先端に設けられた矩形板状の第1プレート81と、第2測定アーム24Bの基端に設けられた矩形板状の第2プレート82と、第1プレート81に対して第2プレート82を対向させた際に第1プレート81に対して第2プレート82を所定の位置に位置決めする位置決め機構83と、第1プレート81に設けられた磁石95と、第2プレート82に設けられ磁石95に吸着される磁性体96とを含んで構成されている。
【0026】
位置決め機構83は、一対の円柱状位置決め部材84A,84Bが測定アーム24の軸方向に沿って平行にかつ所定間隔あけて配置された第1着座部85と、一対の円柱状位置決め部材84A,84Bが測定アーム24の軸方向に沿って平行にかつ所定間隔あけて配置されかつ第1着座部85に対して測定アーム24の軸方向に離間して設けられた第2着座部86と、一対の円柱状位置決め部材84A,84Bが測定アーム24の軸方向に対して直角にかつ所定間隔あけて配置された第3着座部87と、これら第1着座部85、第2着座部86および第3着座部87にそれぞれ対応して設けられこれらに係脱可能な係合球部88,89,90と、少なくとも2以上の係合孔91,92と、これら各係合孔91,92に係合する少なくとも2以上の係合ピン93,94とを備えている。
【0027】
第1着座部85、第2着座部86、第3着座部87および係合ピン93,94は、第1プレート81に配置されている。具体的には、第1プレート81において、測定アーム24の軸方向に離れた両端部に第1着座部85および第2着座部86が配置され、こられ第1着座部85および第2着座部86よりも下方で、かつ、これらの間に第3着座部87が配置されている。また、第1着座部85および第2着座部86の真下位置に係合ピン93,94が配置されているとともに、第1着座部85、第2着座部86、第3着座部87の間に磁石95が配置されている。
係合球部88,89,90および係合孔91,92は、第2プレート82に配置されている。つまり、第1プレート81に対して第2プレート82を所定位置に位置決めしたときに、第2プレート82において、第1プレート81の第1着座部85、第2着座部86、第3着座部87に対応する位置に係合球部88,89,90が、係合ピン93,94に対応した位置に係合孔91,92が、磁石95に対応した位置に磁性体96がそれぞれ配置されている。
【0028】
また、係合球部88,89,90は、第1プレート81に対して第2プレート82を所定位置に位置決めしたとき、それぞれ対応する着座部の円柱状位置決め部材84A,84Bの間に嵌り、円柱状位置決め部材84A,84Bと接触するように配置されている。これら各着座部85,86,87を構成する一対の円柱状位置決め部材84A,84Bおよび係合球部88,89,90は、導電性材料によって形成されている。そして、図7に示すように、これら各着座部85,86,87を構成する一対の円柱状位置決め部材84A,84Bとこれに係脱される係合球部88,89,90との接触、離間によって開閉される着座センサ97,98,99が形成され、これらの着座センサ97,98,99が直列に接続されて接触検知回路100に接続されている。
接触検知回路100は、着座センサ97,98,99の接触、離間を検知し、その状態をランプの点灯や消灯、表示部への表示、あるいは、ブザーなどの音などで報知する。
また、係合ピン93,94の突出量は、これら係合ピン93,94が係合孔91,92に係合し始めてから、磁石95に磁性体96が吸着されるように設定されている。
【0029】
図8は、本表面性状測定機の制御システムを示している。制御装置101には、Y軸駆動機構41、Z軸駆動機構44、X軸駆動機構45、スタイラス変位検出手段20に含まれる変位検出器27、接触検知回路100、測定アーム姿勢切替機構60(これは、測定姿勢・測定力制御回路70を介して)が接続されているとともに、入力手段102、出力手段103、記憶装置104などが接続されている。
ここで、制御装置101は、接触検知回路100においていずれかの着座センサ97,98,99が離間したことが検知されたときに、相対移動機構40(Y軸駆動機構41、Z軸駆動機構44、X軸駆動機構45)の駆動を停止させる駆動停止手段を構成している。また、制御装置101は、第2測定アーム24Bの交換後に、測定アーム姿勢切替機構60のボイルコイル62に通電する電流を調整して測定アーム24のバランスを調整するバランス調整手段を構成している。具体的には、変位検出器27によって検出される測定アーム24の円弧運動量を監視しながら、ボイルコイル62に通電する電流を調整し、測定アーム24の円弧運動量が予め設定した設定値になった段階でバランス調整を完了させるバランス調整手段を構成している。
【0030】
<測定方法の説明>
(孔の内周面の上下面を測定する場合)
例えば、図9に示すように、被測定物W1の穴Hの内周面のうち、下面と上面とを測定する場合、相対移動機構40を駆動させて、測定アーム24のスタイラス26A,26Bを被測定物W1の穴H内に位置させたのち、制御装置101から、下向切替動作指令および測定力指令を出力する。すると、測定姿勢・測定力制御回路70によって、測定アーム24の先端が下向きに付勢されるとともに、指令測定力に応じた電流が、測定アーム姿勢切替機構60のボイルコイル62に与えられる。
これにより、測定アーム姿勢切替機構60によって、測定アーム24の先端が例えば下方向に付勢される方向へ予め設定された速度で測定アーム24が動作され、下向きスタイラス26Bが指令測定力で穴Hの下面に接触される。この状態において、相対移動機構40によりスタイラス変位検出手段20とステージ10とを穴Hの軸方向(X軸方向)へ相対移動させると、変位検出器27によって測定アーム24の円弧運動量が検出され、この円弧運動量から穴Hの下面の表面性状が測定される。
【0031】
次に、制御装置101から、上向切替動作指令および測定力指令を出力する。すると、測定アーム姿勢切替機構60によって、測定アーム24の先端が上方向に付勢される方向へ予め設定された速度で測定アーム24が動作され、上向きのスタイラス26Aが穴Hの上面に指令測定力で接触される。
この状態において、相対移動機構40によりスタイラス変位検出手段20とステージ10とを穴の軸方向(X軸方向)へ相対移動させると、変位検出器27によって測定アーム24の円弧運動量が検出され、この円弧運動量から穴Hの上面の表面性状が測定される。
【0032】
(板状の被測定物の厚みを測定する場合)
図10に示すように、板状の被測定物W3の厚みを測定する場合、同様にして、制御装置101からの指令により、相対移動機構40を駆動させて、測定アーム24のスタイラス26A,26Bを被測定物W3の下面側に位置させたのち、測定アーム姿勢切替機構60によって測定アーム24の先端が円弧運動方向の上方向に付勢される姿勢に切り替えて、上向きスタイラス26Aを被測定物の下面に接触させる。この状態において、相対移動機構40によりスタイラス変位検出手段20とステージ10とをX軸方向へ相対移動させると、変位検出器27によって測定アーム24の円弧運動量が検出され、この円弧運動量から被測定物W3の下面の表面性状が測定される。
【0033】
次に、制御装置101からの指令により、相対移動機構40を駆動させて、測定アーム24のスタイラス26A,26Bを被測定物W3の上面側に位置させたのち、測定アーム姿勢切替機構60によって測定アーム24の先端が円弧運動方向の下方向に付勢される姿勢に切り替えて、下向きスタイラス26Bを被測定物W3の上面に接触させる。この状態において、相対移動機構40によりスタイラス変位検出手段20とステージ10とをX軸方向へ相対移動させると、変位検出器27によって測定アーム24の円弧運動量が検出され、この円弧運動量から被測定物W3の上面の表面性状が測定される。
このようにして得られた被測定物W3の下面表面性状と、被測定物W3の上面表面性状とから、被測定物W3の厚みtや段差dなどを正確に求めることができる。
【0034】
従って、測定アーム24の先端には円弧運動方向に向かってそれぞれ突出する一対のスタイラス26A,26Bが設けられているから、測定アーム姿勢切替機構60によって、測定アーム24が付勢される方向を切り替えれば、つまり、測定アーム24が円弧運動方向の一方向(上方向)へ付勢される姿勢および他方向(下方向)に付勢される姿勢に切り替えれば、例えば、穴Hの上下面の表面性状や、板状被測定物W3の表裏面の表面性状を測定することができる。
【0035】
また、上述した測定動作において、測定アーム24が動作されると、例えば、測定アーム24の先端が下方向から上方向へ切替動作されると、測定姿勢・測定力制御回路70によって測定アーム24の動作速度が予め設定された速度に制御される。
つまり、測定アーム姿勢切替機構60によって、測定アーム24の先端が、例えば下方向から上方向へ切替動作されると、変位検出器27から測定アーム24の円弧運動量に対応した数のパルス信号が出力される。すると、周波数電圧コンバータ74により、変位検出器27からのパルス信号を基に測定アーム24の動作速度に対応した電圧Bが検出される。そして、この測定アーム24の動作速度に対応した電圧Bと指令信号発生手段72から出力される指令速度信号に応じた電圧Aとの差電圧Cが求められ、この差電圧Cに基づいてボイスコイル62に流す電流が制御されるから、測定アーム24の切替動作速度を指令信号発生手段72から出力される指令速度信号に保つことができる。
【0036】
従って、測定アーム24の動作速度を一定速度以下に抑えることができるから、スタイラス26A,26Bが穴Hの内面に衝突したときの衝撃を抑えることができる。そのため、スタイラス26A,26Bや被測定物W1の損傷を少なくすることができる。
また、測定アーム24の動作速度を任意の指令速度に保つことができるから、測定アーム24の動作速度を被測定物の材質などに適した速度に設定することができる。
しかも、測定姿勢・測定力制御回路70は、測定アーム24の円弧運動量、つまり、スタイラス26A,26Bの変位を検出する変位検出器27からのパルス信号を利用しているから、測定アーム24の切替動作速度を検出する速度検出手段を特別に設けなくてもよく、安価にかつコンパクトに構成できる。
【0037】
(測定動作時の作用)
これらの測定時などにおいて、スタイラス変位検出手段20の変位検出器27は、スケール27Aと検出ヘッド27Bとを含んで構成され、スケール27Aの検出面が測定アーム24の軸線上でかつ円弧運動面に配置されているから、オフセットなどによる誤差を低減して高精度な測定が期待できる。
【0038】
また、これらの測定時において、もし、スタイラス26A,26Bや測定アーム24に磁石95の吸着力よりも大きな外力が作用すると、第1プレート81と第2プレート82との結合が外れる。すると、それ以上の外力がスタイラス26A,26Bや測定アーム24、スタイラス変位検出手段20の内部機構に作用しないから、これらの破損も未然に防ぐことができる。
このとき、第1プレート81と第2プレート82との結合が外れようとした場合でも、係合孔91,92に係合ピン93,94が引っ掛かるため、第2測定アーム24Bが落下する虞が少なく、しかも、着脱機構25がケーシング28内に配置されているから、測定アーム24やスタイラス26A,26Bに外力が作用して第2測定アーム24Bが着脱機構25から外れても、第2測定アーム24Bが落下する虞を少なくできる。従って、測定アーム24やスタイラス26A,26Bの破損を防止できる。更に、着脱機構25がケーシング28の内部にあるため、着脱機構25が被測定物に衝突する虞もないから、被測定物との衝突による着脱機構25の破損や、外部環境による汚れも低減できる。
【0039】
このとき、接触検知回路100において、いずれかの着座センサ97,98,99が離間したことが検知されると、駆動停止手段を構成する制御装置101によって相対移動機構40の駆動が停止されるから、例えば、第2測定アーム24Bが着脱機構25から外れてしまった場合でも、相対移動機構40の駆動が停止されるから、測定作業を安全に行うことができる。
【0040】
(第2測定アームの交換作業)
被測定物の測定部位に応じて、異なるスタイラスを有する第2測定アーム24Bに交換する場合、まず、磁石95の吸着力よりも大きな力で、第2測定アーム24Bの第2プレート82を第1測定アーム24Aの第1プレート81から引き離したのち、新たに使用するスタイラスを有する第2測定アーム24Bの第2プレート82を第1プレート81に対向させる。
すると、磁石95とこれに吸着される磁性体96とによって、第1プレート81と第2プレート82とが吸着される。このとき、各係合球部88,89,90が各着座部85,86,87を構成する一対の円柱状位置決め部材84A,84Bにガイドされながらこれらの間の正しい位置に嵌り込むため、目視確認できなくても、第1プレート81に対して第2プレート82を概略一致する位置に対向させるだけのワンタッチ操作で、新たな第2測定アーム24Bを装着することができる。
従って、被測定物の測定部位形状に応じた最適なスタイラスを有する第2測定アーム24Bに交換して測定することができる。
【0041】
この際、第2プレート82に形成された係合孔91,92に、第1プレート81に配置され係合ピン93,94も係合されるが、係合ピン93,94が係合孔91,92に係合し始めてから、磁石95に磁性体96が吸着されるように、係合ピン93,94の突出量が設定されているから、目視確認できなくても、第1プレート81に対して第2プレート82が正しい位置で結合されたことを、磁石95の吸着力を利用して感触として把握することができる。
また、接触検知回路100によって、着座センサ97,98,99の接触、離間を検知することができるので、第2測定アーム24Bの交換時においては、第2測定アーム24Bが適切に交換できたか否かを確認することができる。
【0042】
また、着脱機構25がケーシング28内に配置されているため、つまり、着脱機構25がケーシング28の外側に配置されている場合よりも、着脱機構25が測定アーム24の支点である回転軸23に近くなるため、第2測定アーム24Bの着脱時において、支点にかかるモーメントを低減でき、支点の軸受けの負荷低減、破損防止効果が期待できる。
【0043】
この状態、つまり、第1プレート81と第2プレート82とが吸着された状態では、第3着座部87によって測定アーム24の軸方向の位置規制が、また、第1着座部85および第2着座部86によって第1着座部85に係合する係合球部88を中心とする回転方向の規制が行われるから、第1プレート81と第2プレート82とを所定の関係に正確に位置決めできる。しかも、この状態では、第1着座部85と第2着座部86とは測定アーム24の軸方向に離間して設けられているから、比較的コンパクトな構成で、かつ、小さな力で測定アーム24を保持することができる。なお、第1着座部85と第2着座部86との間の距離は長い方がよく、本実施形態のごとく、第1着座部85と第2着座部86とを、第1プレート81において測定アーム24の軸方向に離れた両端部に配置するのが好ましい。
【0044】
また、第2測定アーム24Bが交換されたのち、制御装置101において、バランス指令を出力すると、図11に示すフロー図に従って処理が行われ、測定アーム24のバランスが自動的に調整される。
つまり、ステップ(以下、STと略す)1において、制御装置101から測定力0の設定指令を出力したのち、ST2において、変位検出器27の値監視を開始する。
ST3において、制御装置101からある測定力の設定指令を出力すると、ST4において、制御装置101は、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内であるかをチェックする。
ST4において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内でない場合には、つまり、交換した第2測定アーム24Bを含む測定アーム24のバランスが大きく崩れてしまった場合には、ST5へ進み、変位検出器27の値が変化する方向とは逆の方向に測定力の設定指令を出力し、ST4において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内になるまでST5の処理を繰り返す。
ST4において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内になると、ST6において、測定アーム24のバランスがとれたと判断し、処理を終了する。
なお、測定時において測定力を設定するには、バランスがとれた状態の測定力を0として、それから測定時に付加する測定力を加算して測定力を設定する。
【0045】
従って、交換した新たな第2測定アーム24Bの重量が前の第2測定アーム24Bの重量と異なっていても、バランス調整手段を構成する制御装置101によって、ボイルコイル62に通電する電流を調整して測定アーム24のバランスを自動的に調整することができるので、第2測定アーム24Bの交換に伴う測定誤差を少なくすることができるとともに、使い勝手および作業効率の向上が期待できる。
とくに、バランス調整手段は、変位検出器27によって検出される測定アーム24の円弧運動量を監視しながら、ボイルコイル62に通電する電流を調整し、測定アーム24の円弧運動量が予め設定した設定値になった段階でバランス調整を完了するから、測定アーム24のバランス調整を正確に行うことができる。
【0046】
<変形例>
本発明は、前述の実施形態に限定されるものでなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
【0047】
前記実施形態では、着脱機構25を構成する第1着座部85,第2着座部86および第3着座部87を第1プレート81に、これに係脱する係合球部88,89,90を第2プレート82に設けたが、これらは逆でもよい。また、磁石95を第1プレート81に、磁性体96を第2プレート82に設けたが、これらも逆でもよい。更に、係合ピン93,94を第1プレート81に、係合孔91,92を第2プレート82に設けたが、これらも逆でもよい。
【0048】
前記実施形態では、測定アーム姿勢切替機構60を、測定アーム24を回転軸23と支点として円弧運動方向の一方向および他方向へ付勢するボイスコイル62を含んで構成したが、これに限られない。例えば、リニアモータ機構を用いた機構であってもよい。
また、円弧運動方向については、上記実施形態では上下方向であったが、水平方向であってもよく、あるいは、上下方向や水平方向以外の斜め方向へ揺動する構造でもよい。
【0049】
前記実施形態では、測定アーム24の先端に一対のスタイラス26A,26Bを有する第2測定アーム24Bについて説明したが、必ずしも一対のスタイラスを有する構造でなくてもよい。測定部位に適したスタイラスを有する測定アームに交換できれば、どのような構造であってもよい。
【0050】
前記実施形態では、測定指令・測定力制御回路70を利用して、測定アーム24のバランスを図11に示すフロー図の手順に従って調整する方法を示したが、例えば、図12に示すフロー図の手順に従って調整してもよく、あるいは、図13に示すフロー図の手順に従って調整するようにしてもよい。
【0051】
図12に示すフロー図の手順では、ST11において、制御装置101から下向き最大測定力の設定指令を出力したのち、ST12において、変位検出器27の値監視を開始する。
ST13において、制御装置101は、変位検出器27の値がある値以下かをチェック、つまり、カウンタ値が振り切れているかのチェックを行う。
ST13において、変位検出器27の値がある値以下でない場合には、ST14へ進み、最大値から最小値までの中央の測定力もしくは過去2回の測定力の中央の測定力を振り切れた方向とは逆の方向に設定指令し、ST13において、変位検出器27の値がある値以下になるまでST14の処理を繰り返す。
ST13において、変位検出器27の値がある値以下である場合には、ST15に進み、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内であるかをチェックする。
ST15において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内でない場合には、ST16へ進み、最大値から最小値までの中央の測定力もしくは過去2回の測定力を、変位検出器27の値が変化する方向とは逆の方向に設定指令し、ST13に戻る処理を繰り返す。
ST15において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内になると、ST17において、測定アーム24のバランスがとれたと判断し、処理を終了する。
【0052】
図13に示すフロー図の手順では、ST21において、制御装置101から下向き最大測定力の設定指令を出力したのち、ST22において、中間位置をホールドする。
ST23において、測定力0の設定指令を出力したのち、ST24において、下向きフリーとし、ST25において、変位検出器27の値監視を開始する。
ST26において、制御装置101は、変位検出器27の値がある値以下かをチェック、つまり、カウンタ値が振り切れているかのチェックを行う。
ST26において、変位検出器27の値がある値以下でない場合には、ST27へ進み、振り切れた方向とは逆の方向にある値の測定力を設定指令し、ST26において、変位検出器27の値がある値以下になるまでST27の処理を繰り返す
ST26において、変位検出器27の値がある値以下になると、ST28に進み、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲内であるかをチェックする。
ST28において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲内でない場合、ST29へ進み、過去2回の測定力の中央の測定力もしくは前回設定した測定力の半分の測定力を、変位検出器27の値が変化する方向とは逆の方向に設定指令し、ST26に戻る処理を繰り返す。
ST28において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲内になると、ST30において、測定アーム24のバランスがとれたと判断し、処理を終了する。
【0053】
前記実施形態では、測定姿勢・測定力制御回路70は、図5に示す構成であったが、この構成に限られない。例えば、図14に示す回路構成であってもよい。
図14に示す測定姿勢・測定力制御回路70は、変位検出器27からのパルス信号(位置情報)を基に測定アーム24の切替動作速度を演算するとともに、この演算された切替動作速度が予め設定された指令速度になるような電圧(制御信号)を発生する演算制御手段77と、この演算制御手段77からの電圧(制御信号)をアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータ73と、このデジタルアナログコンバータ73からの出力に基づいてボイスコイル62に流す電流を発生させる定電流回路76とを備えた構成である。
【0054】
このような構成によれば、測定アーム姿勢切替機構60によって、測定アーム24が揺動方向の一方向から他方向へ切替動作されると、測定アーム24の円弧運動量に対応した数のパルス信号(位置情報)が出力される。すると、演算制御手段77は、移動開始からの時間を計測するとともに、この計測時間と変位検出器27からのパルス信号(位置情報)とから現在の測定アーム24の動作速度を演算し、この演算した動作速度と制御装置101から与えられる動作指令に対応した指令速度とを比較し、動作速度が指令速度になるような電圧(制御信号)を発生する。その結果、演算制御手段77からの制御信号に基づいて、定電流回路76からボイスコイル62に流す電流が発生されるから、測定アーム24の動作速度を指令速度に保つことができる。従って、上記例の効果と同様な効果が期待できる。
【0055】
また、相対移動機構40は、ステージ10をY軸方向へ、スタイラス変位検出手段20をX軸方向およびZ軸方向へ移動可能に構成したが、これに限られない。要するに、ステージ10とスタイラス変位検出手段20とが三次元方向へ移動可能であれば、どちらが移動する構造であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば、穴内面や、板状の被測定物の厚みなどを自動測定する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
10…ステージ、
20…スタイラス変位検出手段、
22…ブラケット(本体)
23…回転軸(支持軸)、
24…測定アーム、
24A…第1測定アーム、
24B…第2測定アーム、
25…着脱機構、
26A,26B…スタイラス、
27…変位検出器、
27A…スケール、
27B…検出ヘッド、
28…ケーシング、
40…相対移動機構、
60…測定アーム姿勢切替機構(測定力付与手段)、
61…磁石、
61…ボイスコイル、
70…測定姿勢・測定力制御回路(速度制御機構)、
81…第1プレート、
82…第2プレート、
83…位置決め機構、
84A,84B…円柱状位置決め部材、
85…第1着座部、
86…第2着座部、
87…第3着座部、
88,89,90…係合球部、
91,92…係合孔、
93,94…係合ピン、
95…磁石、
96…磁性体、
97,98,99…着座センサ、
100…接触検知回路、
101…制御装置(駆動停止手段、バランス調整手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性状測定機に関する。詳しくは、被測定物の表面に接触させるスタイラスを有する測定アームが交換可能な表面性状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面にスタイラスを接触させた状態において、スタイラスを被測定物の表面に沿って移動させ、このとき、被測定物の表面形状や表面粗さによって生じるスタイラスの変位(スタイラスの移動方向に対して直交する方向の変位)を検出し、このスタイラスの変位から被測定物の表面形状や表面粗さ等の表面性状を測定する表面性状測定機が知られている。
【0003】
表面性状測定機のなかには、被測定物の各種形状の測定部位を測定できるように、予め各種形状のスタイラス(測定アーム)を用意しておき、被測定物の測定部位形状に応じて最適なスタイラスに交換して測定できるようにしたものが提案されている。
例えば、特許文献1では、ベースに立設されたコラムと、このコラムに調整装置を介して昇降可能に設けられたホルダと、このホルダに設けられたハウジングと、このハウジング内にリニアモータを介して水平方向へ移動可能に設けられたシーソーと、ハウジングの外側において連結手段を介してシーソーに連結された測定アームと、この測定アームの先端に設けられたスタイラスとを備え、ハウジングの外側において測定アームを交換できるようにした輪郭測定機が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE19617022C1公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した輪郭測定機などの表面性状測定機においては、スタイラスが被測定物の表面に接触する圧力、つまり、測定力を被測定物の材質や形状などに応じて最適な測定力になるように調整する必要がある。
通常、測定アームを交換した場合、交換した測定アームの重量と元の測定アームの重量とが異なることが多く、そのため、測定アームのバランスが崩れ、測定誤差を生じさせる。そこで、測定アームの交換の都度、測定力の調整の前に、測定アームのバランス、つまり、測定アームが略水平に保たれるように、バランス調整をする必要がある。
【0006】
従来、測定アームを交換した際、まず、測定アームの先端のスタイラスを電子天秤など力を測定する測定機器に載せ、この状態で測定機器の値が0になるように、測定力調整機構を調整しなければならなかったため、使い勝手が悪く、作業効率が悪いという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題を解消し、測定アームを交換しても、測定アームのバランスを自動的に調整することにより、使い勝手および作業効率の向上が期待できる表面性状測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表面性状測定機は、本体に支持軸を支点として円弧運動可能に支持された測定アーム、この測定アームの先端に設けられたスタイラス、前記測定アームの円弧運動量を検出する変位検出器、および、前記測定アームを円弧運動方向へ付勢し前記スタイラスに測定力を付与する測定力付与手段を有する検出手段と、被測定物を載置するステージと、前記検出手段と前記ステージとを相対移動させる相対移動機構とを備え、前記スタイラスを被測定物の表面に接触させた状態において、前記相対移動機構により前記検出手段と前記ステージとを相対移動させながら前記変位検出器によって前記測定アームの円弧運動量を検出し、この円弧運動量から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機において、 前記測定アームは、前記本体に前記支持軸を支点として円弧運動可能に支持された第1測定アームと、この第1測定アームの先端に着脱機構を介して着脱可能に設けられ先端に前記スタイラスを有する第2測定アームとを含んで構成され、前記測定力付与手段は、前記測定アームを前記支持軸を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイルを含んで構成され、前記第2測定アームの交換後に、前記ボイルコイルに通電する電流を調整して前記測定アームのバランスを調整するバランス調整手段を備える、ことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、測定アームは、本体に支持軸を支点として円弧運動可能に支持された第1測定アームと、この第1測定アームの先端に着脱機構を介して着脱可能に設けられ先端にスタイラスを有する第2測定アームとを含んで構成されているから、スタイラスを有する第2測定アームを交換することができる。従って、被測定物の測定部位の形状に応じた最適なスタイラスを有する測定アームを用いて測定することができる。
この際、第2測定アームを交換した場合、新たな第2測定アームの重量が前の第2測定アームの重量と異なっていても、バランス調整手段によって、ボイルコイルに通電する電流を調整して測定アームのバランスを自動的に調整することができるので、測定アームの交換に伴う測定誤差を少なくすることができるとともに、使い勝手および作業効率の向上が期待できる
【0010】
本発明の表面性状測定機において、前記バランス調整手段は、前記変位検出器によって検出される前記測定アームの円弧運動量を監視しながら、前記ボイルコイルに通電する電流を調整し、前記測定アームの円弧運動量が予め設定した設定値になった段階でバランス調整を完了する、ことが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、バランス調整手段によって、変位検出器によって検出される測定アームの円弧運動量を監視しながら、ボイルコイルに通電する電流を調整し、測定アームの円弧運動量が予め設定した設定値になった段階で、バランス調整を完了するから、測定アームのバランス調整を正確に行うことができる。
【0012】
本発明の表面性状測定機において、前記スタイラスは、前記測定アームの先端に前記円弧運動方向に向かってそれぞれ突出する一対のスタイラスを有し、前記ボイスコイルは、前記測定アームが前記円弧運動方向の一方向へ付勢される姿勢および他方向に付勢される姿勢に切り替える測定アーム姿勢切替機構を構成している、ことが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、測定アームの先端には円弧運動方向に向かってそれぞれ突出する一対のスタイラスを有しているから、測定アーム姿勢切替機構によって、測定アームが付勢される方向を切り替えれば、つまり、測定アームが円弧運動方向の一方向へ付勢される姿勢および他方向に付勢される姿勢に切り替えれば、例えば、孔の上下面の表面性状や、板状被測定物の表裏面の表面性状を測定することができる。
【0014】
本発明の表面性状測定機において、前記測定アーム姿勢切替機構によって前記測定アームの姿勢が切替動作された際に、前記測定アームの切替動作速度を予め設定された速度に制御する速度制御機構を備える、ことが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、測定アームが円弧運動方向の一方向(例えば、上方向)から他方向(例えば、下方向)へ切替動作されると、速度制御機構によって測定アームの切替動作速度が予め設定された速度に制御されるから、測定アームの切替動作速度を一定速度以下に抑えることができる。そのため、例えば、孔の内面測定において、スタイラスが穴の内面に衝突したときの衝撃を抑えることができるから、スタイラスや被測定物の損傷を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る表面性状測定機を示す斜視図。
【図2】同上実施形態のX軸駆動機構およびスタイラス変位検出手段を示す図。
【図3】同上実施形態の測定アームおよび変位検出器の関係を示す平面図。
【図4】同上実施形態の測定アームおよび測定アーム姿勢切替機構を示す図。
【図5】同上実施形態の測定姿勢・測定力制御回路を示す図。
【図6】同上実施形態の着脱機構を示す分解斜視図。
【図7】同上実施形態の接触検知回路を示す図。
【図8】同上実施形態の制御システムを示すブロック図、
【図9】同上実施形態において、孔の内周面の上下面を測定する例を示す図、
【図10】同上実施形態において、厚みを測定する例を示す図。
【図11】同上実施形態の測定アームのバランス調整の手順を示すフロー図。
【図12】同上実施形態の測定アームのバランス調整の他の手順を示すフロー図。
【図13】同上実施形態の測定アームのバランス調整の更に他の手順を示すフロー図。
【図14】同上実施形態の測定姿勢・測定力制御回路の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<表面性状測定機の説明(図1〜図8参照)>
本実施形態に係る表面性状測定機は、図1に示すように、ベース1と、このベース1上に載置され上面に被測定物を載置するステージ10と、被測定物の表面に接触されるスタイラス26A,26Bを有するスタイラス変位検出手段20と、このスタイラス変位検出手段20とステージ10とを相対移動させる相対移動機構40とを備える。
【0018】
相対移動機構40は、ベース1とステージ10との間に設けられステージ10を水平方向の一方向(Y軸方向)へ移動させるY軸駆動機構41と、ベース1の上面に立設されたコラム42と、このコラム42に上下方向(Z軸方向)へ移動可能に設けられたZスライダ43と、このZスライダ43を上下方向へ昇降させるZ軸駆動機構44と、Zスライダ43に設けられスタイラス変位検出手段20をステージ10の移動方向(Y軸方向)およびZスライダ43の移動方向(Z軸方向)に対して直交する方向(X軸方向)へ移動させるX軸駆動機構45とを備える。従って、相対移動機構40は、ステージ10をY軸方向へ移動させるY軸駆動機構41と、スタイラス変位検出手段20をZ軸方向へ移動させるZ軸駆動機構44と、スタイラス変位検出手段20をX軸方向へ移動させるX軸駆動機構45とを含む三次元移動機構によって構成されている。
【0019】
Y軸駆動機構41およびZ軸駆動機構44は、図示省略されているが、例えば、ボールねじ軸と、このボールねじ軸に螺合されたナット部材とを有する送りねじ機構によって構成されている。
X軸駆動機構45は、図2に示すように、Zスライダ43に固定された駆動機構本体46と、この駆動機構本体46にX軸方向と平行に設けられたガイドレール47と、このガイドレール47に沿ってX軸方向へ移動可能に設けられたXスライダ48と、このXスライダ48のX軸方向位置を検出するX軸位置検出器49と、Xスライダ48をガイドレール47に沿って移動させる送り機構50とを備える。
送り機構50は、駆動機構本体46にガイドレール47と平行に設けられXスライダ48に螺合された送りねじ軸51と、駆動源としてのモータ52と、このモータ52の回転を送りねじ軸51に伝達する回転伝達機構53とから構成されている。回転伝達機構53は、例えば、歯車列や、ベルトおよびプーリなどの機構によって構成されている。
【0020】
スタイラス変位検出手段20は、図2に示すように、Xスライダ48にボルト21を介して着脱可能に吊り下げ支持された本体としてのブラケット22と、このブラケット22に支持軸としての回転軸23を支点として上下方向へ揺動可能(円弧運動可能)に支持された測定アーム24と、この測定アーム24の先端に設けられた一対のスタイラス26A,26Bと、測定アーム24の円弧運動量(Z軸方向の変位量)を検出する変位検出器27と、測定アーム24に位置調整可能に設けられたバランスウエイト29と、測定アーム24が円弧運動方向の一方向(例えば、上方向)に付勢される姿勢および他方向(下方向)に付勢される姿勢に切り替える測定アーム姿勢切替機構60と、ブラケット22、測定アーム24、変位検出器27、バランスウエイト29、測定アーム姿勢切替機構60を覆うケーシング28とを含んで構成されている。
【0021】
測定アーム24は、ブラケット22に回転軸23を支点として上下方向へ円弧運動可能に支持された第1測定アーム24Aと、この第1測定アーム24Aの先端に着脱機構25を介して交換可能に取り付けられた第2測定アーム24Bとから構成されている。着脱機構25は、第1測定アーム24Aと第2測定アーム24Bとが一直線上に配置されるようにこれらを接続する。
スタイラス26A,26Bは、第2測定アーム24Bに対して円弧運動方向に突出して設けられている。つまり、第2測定アーム24Bに対して上向きのスタイラス26Aと下向きのスタイラス26Bとが上下方向に直角に突出して設けられている。
【0022】
変位検出器27は、図3に示すように、測定アーム24の円弧運動範囲に沿って設けられ、測定アーム24の円弧運動量に対応した数のパルス信号を出力する位置検出器によって構成されている。具体的には、測定アーム24に設けられ測定アーム24の円弧運動方向に湾曲したスケール27Aと、このスケール27Aに対向して本体としてのブラケット22に取り付けられた検出ヘッド27Bとを備える。スケール27Aの検出面は、測定アーム24の軸線上でかつ測定アーム24の円弧運動面上に配置されている。これにより、スケール27Aの検出面、測定アーム24、スタイラス26A,26Bの先端が同一軸上に配置されることになる。
バランスウエイト29は、回転軸23を支点として第1測定アーム24A側の重量と、第2測定アーム24B側の重量とがバランスするように、測定アーム24の軸方向へ位置調整可能に設けられている。具体的には、バランスウエイト29は、止めねじにより測定アーム24の所望位置に固定される。あるいは、測定アーム24に雄ねじを形成し、この雄ねじにバランスウエイト29を位置調整可能に螺合してもよい。
【0023】
測定アーム姿勢切替機構60は、図4に示すように、第1測定アーム24Aの途中に設けられた円筒状の磁石61と、この磁石61内を通って本体としてのブラケット22に固定され測定アーム24を回転軸23を支点として円弧運動方向の一方向(上方向)および他方向(下方向)へ付勢するボイスコイル62によって構成され、測定姿勢・測定力制御回路70からの指令で制御される。測定姿勢・測定力制御回路70からの指令により、ボイスコイル62に電流が流されると、ボイスコイル62から発生する電磁力と磁石61の磁力により、測定アーム24の磁石61がボイルコイル62に引きつけられ、測定アーム24の先端が上方向または下方向へ付勢される姿勢に切り替えられる。
ここに、測定アーム姿勢切替機構60は、測定アーム24を回転軸23を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイル62を含み、測定アーム24を円弧運動方向へ付勢しスタイラス26A,26Bに測定力を付与する測定力付与手段を兼ねている。
【0024】
測定姿勢・測定力制御回路70は、図5に示すように、後述する制御装置101から出力されるバランス指令、切替動作指令(上向きまたは下向き切替動作指令)、測定力指令に応じて予め設定した速度に対応する電圧A(指令速度信号)を発生するCPUなどからなる指令信号発生手段72と、この指令信号発生手段72からの電圧A(デジタル信号)をアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータ73と、変位検出器27からのパルス信号(周波数)を基に測定アーム24の動作速度に対応した電圧B(動作速度信号)を出力する測定アーム速度検出手段としての周波数電圧コンバータ74と、指令速度信号(電圧A)と動作速度信号(電圧B)との差電圧Cを出力する差分出力手段としての減算器75と、この減算器75からの差電圧Cを電流に変換し測定アーム姿勢切替機構60のボイスコイル62に与える定電流回路76とを含んで構成されている。これにより、測定アーム24の動作速度を予め設定した一定速度以下に抑えながら測定アーム24を円弧運動させることができる。
ここで、指令信号発生手段72から発生される電圧A(指令速度信号)は、スタイラス26A,26Bが被測定物に接触した際に、スタイラス26A,26Bや被測定物が損傷することがない速度に設定されている。
【0025】
着脱機構25は、図2に示すように、ケーシング28内に配置される。また、着脱機構25は、図6に示すように、第1測定アーム24Aの先端に設けられた矩形板状の第1プレート81と、第2測定アーム24Bの基端に設けられた矩形板状の第2プレート82と、第1プレート81に対して第2プレート82を対向させた際に第1プレート81に対して第2プレート82を所定の位置に位置決めする位置決め機構83と、第1プレート81に設けられた磁石95と、第2プレート82に設けられ磁石95に吸着される磁性体96とを含んで構成されている。
【0026】
位置決め機構83は、一対の円柱状位置決め部材84A,84Bが測定アーム24の軸方向に沿って平行にかつ所定間隔あけて配置された第1着座部85と、一対の円柱状位置決め部材84A,84Bが測定アーム24の軸方向に沿って平行にかつ所定間隔あけて配置されかつ第1着座部85に対して測定アーム24の軸方向に離間して設けられた第2着座部86と、一対の円柱状位置決め部材84A,84Bが測定アーム24の軸方向に対して直角にかつ所定間隔あけて配置された第3着座部87と、これら第1着座部85、第2着座部86および第3着座部87にそれぞれ対応して設けられこれらに係脱可能な係合球部88,89,90と、少なくとも2以上の係合孔91,92と、これら各係合孔91,92に係合する少なくとも2以上の係合ピン93,94とを備えている。
【0027】
第1着座部85、第2着座部86、第3着座部87および係合ピン93,94は、第1プレート81に配置されている。具体的には、第1プレート81において、測定アーム24の軸方向に離れた両端部に第1着座部85および第2着座部86が配置され、こられ第1着座部85および第2着座部86よりも下方で、かつ、これらの間に第3着座部87が配置されている。また、第1着座部85および第2着座部86の真下位置に係合ピン93,94が配置されているとともに、第1着座部85、第2着座部86、第3着座部87の間に磁石95が配置されている。
係合球部88,89,90および係合孔91,92は、第2プレート82に配置されている。つまり、第1プレート81に対して第2プレート82を所定位置に位置決めしたときに、第2プレート82において、第1プレート81の第1着座部85、第2着座部86、第3着座部87に対応する位置に係合球部88,89,90が、係合ピン93,94に対応した位置に係合孔91,92が、磁石95に対応した位置に磁性体96がそれぞれ配置されている。
【0028】
また、係合球部88,89,90は、第1プレート81に対して第2プレート82を所定位置に位置決めしたとき、それぞれ対応する着座部の円柱状位置決め部材84A,84Bの間に嵌り、円柱状位置決め部材84A,84Bと接触するように配置されている。これら各着座部85,86,87を構成する一対の円柱状位置決め部材84A,84Bおよび係合球部88,89,90は、導電性材料によって形成されている。そして、図7に示すように、これら各着座部85,86,87を構成する一対の円柱状位置決め部材84A,84Bとこれに係脱される係合球部88,89,90との接触、離間によって開閉される着座センサ97,98,99が形成され、これらの着座センサ97,98,99が直列に接続されて接触検知回路100に接続されている。
接触検知回路100は、着座センサ97,98,99の接触、離間を検知し、その状態をランプの点灯や消灯、表示部への表示、あるいは、ブザーなどの音などで報知する。
また、係合ピン93,94の突出量は、これら係合ピン93,94が係合孔91,92に係合し始めてから、磁石95に磁性体96が吸着されるように設定されている。
【0029】
図8は、本表面性状測定機の制御システムを示している。制御装置101には、Y軸駆動機構41、Z軸駆動機構44、X軸駆動機構45、スタイラス変位検出手段20に含まれる変位検出器27、接触検知回路100、測定アーム姿勢切替機構60(これは、測定姿勢・測定力制御回路70を介して)が接続されているとともに、入力手段102、出力手段103、記憶装置104などが接続されている。
ここで、制御装置101は、接触検知回路100においていずれかの着座センサ97,98,99が離間したことが検知されたときに、相対移動機構40(Y軸駆動機構41、Z軸駆動機構44、X軸駆動機構45)の駆動を停止させる駆動停止手段を構成している。また、制御装置101は、第2測定アーム24Bの交換後に、測定アーム姿勢切替機構60のボイルコイル62に通電する電流を調整して測定アーム24のバランスを調整するバランス調整手段を構成している。具体的には、変位検出器27によって検出される測定アーム24の円弧運動量を監視しながら、ボイルコイル62に通電する電流を調整し、測定アーム24の円弧運動量が予め設定した設定値になった段階でバランス調整を完了させるバランス調整手段を構成している。
【0030】
<測定方法の説明>
(孔の内周面の上下面を測定する場合)
例えば、図9に示すように、被測定物W1の穴Hの内周面のうち、下面と上面とを測定する場合、相対移動機構40を駆動させて、測定アーム24のスタイラス26A,26Bを被測定物W1の穴H内に位置させたのち、制御装置101から、下向切替動作指令および測定力指令を出力する。すると、測定姿勢・測定力制御回路70によって、測定アーム24の先端が下向きに付勢されるとともに、指令測定力に応じた電流が、測定アーム姿勢切替機構60のボイルコイル62に与えられる。
これにより、測定アーム姿勢切替機構60によって、測定アーム24の先端が例えば下方向に付勢される方向へ予め設定された速度で測定アーム24が動作され、下向きスタイラス26Bが指令測定力で穴Hの下面に接触される。この状態において、相対移動機構40によりスタイラス変位検出手段20とステージ10とを穴Hの軸方向(X軸方向)へ相対移動させると、変位検出器27によって測定アーム24の円弧運動量が検出され、この円弧運動量から穴Hの下面の表面性状が測定される。
【0031】
次に、制御装置101から、上向切替動作指令および測定力指令を出力する。すると、測定アーム姿勢切替機構60によって、測定アーム24の先端が上方向に付勢される方向へ予め設定された速度で測定アーム24が動作され、上向きのスタイラス26Aが穴Hの上面に指令測定力で接触される。
この状態において、相対移動機構40によりスタイラス変位検出手段20とステージ10とを穴の軸方向(X軸方向)へ相対移動させると、変位検出器27によって測定アーム24の円弧運動量が検出され、この円弧運動量から穴Hの上面の表面性状が測定される。
【0032】
(板状の被測定物の厚みを測定する場合)
図10に示すように、板状の被測定物W3の厚みを測定する場合、同様にして、制御装置101からの指令により、相対移動機構40を駆動させて、測定アーム24のスタイラス26A,26Bを被測定物W3の下面側に位置させたのち、測定アーム姿勢切替機構60によって測定アーム24の先端が円弧運動方向の上方向に付勢される姿勢に切り替えて、上向きスタイラス26Aを被測定物の下面に接触させる。この状態において、相対移動機構40によりスタイラス変位検出手段20とステージ10とをX軸方向へ相対移動させると、変位検出器27によって測定アーム24の円弧運動量が検出され、この円弧運動量から被測定物W3の下面の表面性状が測定される。
【0033】
次に、制御装置101からの指令により、相対移動機構40を駆動させて、測定アーム24のスタイラス26A,26Bを被測定物W3の上面側に位置させたのち、測定アーム姿勢切替機構60によって測定アーム24の先端が円弧運動方向の下方向に付勢される姿勢に切り替えて、下向きスタイラス26Bを被測定物W3の上面に接触させる。この状態において、相対移動機構40によりスタイラス変位検出手段20とステージ10とをX軸方向へ相対移動させると、変位検出器27によって測定アーム24の円弧運動量が検出され、この円弧運動量から被測定物W3の上面の表面性状が測定される。
このようにして得られた被測定物W3の下面表面性状と、被測定物W3の上面表面性状とから、被測定物W3の厚みtや段差dなどを正確に求めることができる。
【0034】
従って、測定アーム24の先端には円弧運動方向に向かってそれぞれ突出する一対のスタイラス26A,26Bが設けられているから、測定アーム姿勢切替機構60によって、測定アーム24が付勢される方向を切り替えれば、つまり、測定アーム24が円弧運動方向の一方向(上方向)へ付勢される姿勢および他方向(下方向)に付勢される姿勢に切り替えれば、例えば、穴Hの上下面の表面性状や、板状被測定物W3の表裏面の表面性状を測定することができる。
【0035】
また、上述した測定動作において、測定アーム24が動作されると、例えば、測定アーム24の先端が下方向から上方向へ切替動作されると、測定姿勢・測定力制御回路70によって測定アーム24の動作速度が予め設定された速度に制御される。
つまり、測定アーム姿勢切替機構60によって、測定アーム24の先端が、例えば下方向から上方向へ切替動作されると、変位検出器27から測定アーム24の円弧運動量に対応した数のパルス信号が出力される。すると、周波数電圧コンバータ74により、変位検出器27からのパルス信号を基に測定アーム24の動作速度に対応した電圧Bが検出される。そして、この測定アーム24の動作速度に対応した電圧Bと指令信号発生手段72から出力される指令速度信号に応じた電圧Aとの差電圧Cが求められ、この差電圧Cに基づいてボイスコイル62に流す電流が制御されるから、測定アーム24の切替動作速度を指令信号発生手段72から出力される指令速度信号に保つことができる。
【0036】
従って、測定アーム24の動作速度を一定速度以下に抑えることができるから、スタイラス26A,26Bが穴Hの内面に衝突したときの衝撃を抑えることができる。そのため、スタイラス26A,26Bや被測定物W1の損傷を少なくすることができる。
また、測定アーム24の動作速度を任意の指令速度に保つことができるから、測定アーム24の動作速度を被測定物の材質などに適した速度に設定することができる。
しかも、測定姿勢・測定力制御回路70は、測定アーム24の円弧運動量、つまり、スタイラス26A,26Bの変位を検出する変位検出器27からのパルス信号を利用しているから、測定アーム24の切替動作速度を検出する速度検出手段を特別に設けなくてもよく、安価にかつコンパクトに構成できる。
【0037】
(測定動作時の作用)
これらの測定時などにおいて、スタイラス変位検出手段20の変位検出器27は、スケール27Aと検出ヘッド27Bとを含んで構成され、スケール27Aの検出面が測定アーム24の軸線上でかつ円弧運動面に配置されているから、オフセットなどによる誤差を低減して高精度な測定が期待できる。
【0038】
また、これらの測定時において、もし、スタイラス26A,26Bや測定アーム24に磁石95の吸着力よりも大きな外力が作用すると、第1プレート81と第2プレート82との結合が外れる。すると、それ以上の外力がスタイラス26A,26Bや測定アーム24、スタイラス変位検出手段20の内部機構に作用しないから、これらの破損も未然に防ぐことができる。
このとき、第1プレート81と第2プレート82との結合が外れようとした場合でも、係合孔91,92に係合ピン93,94が引っ掛かるため、第2測定アーム24Bが落下する虞が少なく、しかも、着脱機構25がケーシング28内に配置されているから、測定アーム24やスタイラス26A,26Bに外力が作用して第2測定アーム24Bが着脱機構25から外れても、第2測定アーム24Bが落下する虞を少なくできる。従って、測定アーム24やスタイラス26A,26Bの破損を防止できる。更に、着脱機構25がケーシング28の内部にあるため、着脱機構25が被測定物に衝突する虞もないから、被測定物との衝突による着脱機構25の破損や、外部環境による汚れも低減できる。
【0039】
このとき、接触検知回路100において、いずれかの着座センサ97,98,99が離間したことが検知されると、駆動停止手段を構成する制御装置101によって相対移動機構40の駆動が停止されるから、例えば、第2測定アーム24Bが着脱機構25から外れてしまった場合でも、相対移動機構40の駆動が停止されるから、測定作業を安全に行うことができる。
【0040】
(第2測定アームの交換作業)
被測定物の測定部位に応じて、異なるスタイラスを有する第2測定アーム24Bに交換する場合、まず、磁石95の吸着力よりも大きな力で、第2測定アーム24Bの第2プレート82を第1測定アーム24Aの第1プレート81から引き離したのち、新たに使用するスタイラスを有する第2測定アーム24Bの第2プレート82を第1プレート81に対向させる。
すると、磁石95とこれに吸着される磁性体96とによって、第1プレート81と第2プレート82とが吸着される。このとき、各係合球部88,89,90が各着座部85,86,87を構成する一対の円柱状位置決め部材84A,84Bにガイドされながらこれらの間の正しい位置に嵌り込むため、目視確認できなくても、第1プレート81に対して第2プレート82を概略一致する位置に対向させるだけのワンタッチ操作で、新たな第2測定アーム24Bを装着することができる。
従って、被測定物の測定部位形状に応じた最適なスタイラスを有する第2測定アーム24Bに交換して測定することができる。
【0041】
この際、第2プレート82に形成された係合孔91,92に、第1プレート81に配置され係合ピン93,94も係合されるが、係合ピン93,94が係合孔91,92に係合し始めてから、磁石95に磁性体96が吸着されるように、係合ピン93,94の突出量が設定されているから、目視確認できなくても、第1プレート81に対して第2プレート82が正しい位置で結合されたことを、磁石95の吸着力を利用して感触として把握することができる。
また、接触検知回路100によって、着座センサ97,98,99の接触、離間を検知することができるので、第2測定アーム24Bの交換時においては、第2測定アーム24Bが適切に交換できたか否かを確認することができる。
【0042】
また、着脱機構25がケーシング28内に配置されているため、つまり、着脱機構25がケーシング28の外側に配置されている場合よりも、着脱機構25が測定アーム24の支点である回転軸23に近くなるため、第2測定アーム24Bの着脱時において、支点にかかるモーメントを低減でき、支点の軸受けの負荷低減、破損防止効果が期待できる。
【0043】
この状態、つまり、第1プレート81と第2プレート82とが吸着された状態では、第3着座部87によって測定アーム24の軸方向の位置規制が、また、第1着座部85および第2着座部86によって第1着座部85に係合する係合球部88を中心とする回転方向の規制が行われるから、第1プレート81と第2プレート82とを所定の関係に正確に位置決めできる。しかも、この状態では、第1着座部85と第2着座部86とは測定アーム24の軸方向に離間して設けられているから、比較的コンパクトな構成で、かつ、小さな力で測定アーム24を保持することができる。なお、第1着座部85と第2着座部86との間の距離は長い方がよく、本実施形態のごとく、第1着座部85と第2着座部86とを、第1プレート81において測定アーム24の軸方向に離れた両端部に配置するのが好ましい。
【0044】
また、第2測定アーム24Bが交換されたのち、制御装置101において、バランス指令を出力すると、図11に示すフロー図に従って処理が行われ、測定アーム24のバランスが自動的に調整される。
つまり、ステップ(以下、STと略す)1において、制御装置101から測定力0の設定指令を出力したのち、ST2において、変位検出器27の値監視を開始する。
ST3において、制御装置101からある測定力の設定指令を出力すると、ST4において、制御装置101は、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内であるかをチェックする。
ST4において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内でない場合には、つまり、交換した第2測定アーム24Bを含む測定アーム24のバランスが大きく崩れてしまった場合には、ST5へ進み、変位検出器27の値が変化する方向とは逆の方向に測定力の設定指令を出力し、ST4において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内になるまでST5の処理を繰り返す。
ST4において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内になると、ST6において、測定アーム24のバランスがとれたと判断し、処理を終了する。
なお、測定時において測定力を設定するには、バランスがとれた状態の測定力を0として、それから測定時に付加する測定力を加算して測定力を設定する。
【0045】
従って、交換した新たな第2測定アーム24Bの重量が前の第2測定アーム24Bの重量と異なっていても、バランス調整手段を構成する制御装置101によって、ボイルコイル62に通電する電流を調整して測定アーム24のバランスを自動的に調整することができるので、第2測定アーム24Bの交換に伴う測定誤差を少なくすることができるとともに、使い勝手および作業効率の向上が期待できる。
とくに、バランス調整手段は、変位検出器27によって検出される測定アーム24の円弧運動量を監視しながら、ボイルコイル62に通電する電流を調整し、測定アーム24の円弧運動量が予め設定した設定値になった段階でバランス調整を完了するから、測定アーム24のバランス調整を正確に行うことができる。
【0046】
<変形例>
本発明は、前述の実施形態に限定されるものでなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
【0047】
前記実施形態では、着脱機構25を構成する第1着座部85,第2着座部86および第3着座部87を第1プレート81に、これに係脱する係合球部88,89,90を第2プレート82に設けたが、これらは逆でもよい。また、磁石95を第1プレート81に、磁性体96を第2プレート82に設けたが、これらも逆でもよい。更に、係合ピン93,94を第1プレート81に、係合孔91,92を第2プレート82に設けたが、これらも逆でもよい。
【0048】
前記実施形態では、測定アーム姿勢切替機構60を、測定アーム24を回転軸23と支点として円弧運動方向の一方向および他方向へ付勢するボイスコイル62を含んで構成したが、これに限られない。例えば、リニアモータ機構を用いた機構であってもよい。
また、円弧運動方向については、上記実施形態では上下方向であったが、水平方向であってもよく、あるいは、上下方向や水平方向以外の斜め方向へ揺動する構造でもよい。
【0049】
前記実施形態では、測定アーム24の先端に一対のスタイラス26A,26Bを有する第2測定アーム24Bについて説明したが、必ずしも一対のスタイラスを有する構造でなくてもよい。測定部位に適したスタイラスを有する測定アームに交換できれば、どのような構造であってもよい。
【0050】
前記実施形態では、測定指令・測定力制御回路70を利用して、測定アーム24のバランスを図11に示すフロー図の手順に従って調整する方法を示したが、例えば、図12に示すフロー図の手順に従って調整してもよく、あるいは、図13に示すフロー図の手順に従って調整するようにしてもよい。
【0051】
図12に示すフロー図の手順では、ST11において、制御装置101から下向き最大測定力の設定指令を出力したのち、ST12において、変位検出器27の値監視を開始する。
ST13において、制御装置101は、変位検出器27の値がある値以下かをチェック、つまり、カウンタ値が振り切れているかのチェックを行う。
ST13において、変位検出器27の値がある値以下でない場合には、ST14へ進み、最大値から最小値までの中央の測定力もしくは過去2回の測定力の中央の測定力を振り切れた方向とは逆の方向に設定指令し、ST13において、変位検出器27の値がある値以下になるまでST14の処理を繰り返す。
ST13において、変位検出器27の値がある値以下である場合には、ST15に進み、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内であるかをチェックする。
ST15において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内でない場合には、ST16へ進み、最大値から最小値までの中央の測定力もしくは過去2回の測定力を、変位検出器27の値が変化する方向とは逆の方向に設定指令し、ST13に戻る処理を繰り返す。
ST15において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内になると、ST17において、測定アーム24のバランスがとれたと判断し、処理を終了する。
【0052】
図13に示すフロー図の手順では、ST21において、制御装置101から下向き最大測定力の設定指令を出力したのち、ST22において、中間位置をホールドする。
ST23において、測定力0の設定指令を出力したのち、ST24において、下向きフリーとし、ST25において、変位検出器27の値監視を開始する。
ST26において、制御装置101は、変位検出器27の値がある値以下かをチェック、つまり、カウンタ値が振り切れているかのチェックを行う。
ST26において、変位検出器27の値がある値以下でない場合には、ST27へ進み、振り切れた方向とは逆の方向にある値の測定力を設定指令し、ST26において、変位検出器27の値がある値以下になるまでST27の処理を繰り返す
ST26において、変位検出器27の値がある値以下になると、ST28に進み、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲内であるかをチェックする。
ST28において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲内でない場合、ST29へ進み、過去2回の測定力の中央の測定力もしくは前回設定した測定力の半分の測定力を、変位検出器27の値が変化する方向とは逆の方向に設定指令し、ST26に戻る処理を繰り返す。
ST28において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲内になると、ST30において、測定アーム24のバランスがとれたと判断し、処理を終了する。
【0053】
前記実施形態では、測定姿勢・測定力制御回路70は、図5に示す構成であったが、この構成に限られない。例えば、図14に示す回路構成であってもよい。
図14に示す測定姿勢・測定力制御回路70は、変位検出器27からのパルス信号(位置情報)を基に測定アーム24の切替動作速度を演算するとともに、この演算された切替動作速度が予め設定された指令速度になるような電圧(制御信号)を発生する演算制御手段77と、この演算制御手段77からの電圧(制御信号)をアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータ73と、このデジタルアナログコンバータ73からの出力に基づいてボイスコイル62に流す電流を発生させる定電流回路76とを備えた構成である。
【0054】
このような構成によれば、測定アーム姿勢切替機構60によって、測定アーム24が揺動方向の一方向から他方向へ切替動作されると、測定アーム24の円弧運動量に対応した数のパルス信号(位置情報)が出力される。すると、演算制御手段77は、移動開始からの時間を計測するとともに、この計測時間と変位検出器27からのパルス信号(位置情報)とから現在の測定アーム24の動作速度を演算し、この演算した動作速度と制御装置101から与えられる動作指令に対応した指令速度とを比較し、動作速度が指令速度になるような電圧(制御信号)を発生する。その結果、演算制御手段77からの制御信号に基づいて、定電流回路76からボイスコイル62に流す電流が発生されるから、測定アーム24の動作速度を指令速度に保つことができる。従って、上記例の効果と同様な効果が期待できる。
【0055】
また、相対移動機構40は、ステージ10をY軸方向へ、スタイラス変位検出手段20をX軸方向およびZ軸方向へ移動可能に構成したが、これに限られない。要するに、ステージ10とスタイラス変位検出手段20とが三次元方向へ移動可能であれば、どちらが移動する構造であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、例えば、穴内面や、板状の被測定物の厚みなどを自動測定する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0057】
10…ステージ、
20…スタイラス変位検出手段、
22…ブラケット(本体)
23…回転軸(支持軸)、
24…測定アーム、
24A…第1測定アーム、
24B…第2測定アーム、
25…着脱機構、
26A,26B…スタイラス、
27…変位検出器、
27A…スケール、
27B…検出ヘッド、
28…ケーシング、
40…相対移動機構、
60…測定アーム姿勢切替機構(測定力付与手段)、
61…磁石、
61…ボイスコイル、
70…測定姿勢・測定力制御回路(速度制御機構)、
81…第1プレート、
82…第2プレート、
83…位置決め機構、
84A,84B…円柱状位置決め部材、
85…第1着座部、
86…第2着座部、
87…第3着座部、
88,89,90…係合球部、
91,92…係合孔、
93,94…係合ピン、
95…磁石、
96…磁性体、
97,98,99…着座センサ、
100…接触検知回路、
101…制御装置(駆動停止手段、バランス調整手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に支持軸を支点として円弧運動可能に支持された測定アーム、この測定アームの先端に設けられたスタイラス、前記測定アームの円弧運動量を検出する変位検出器、および、前記測定アームを円弧運動方向へ付勢し前記スタイラスに測定力を付与する測定力付与手段を有する検出手段と、被測定物を載置するステージと、前記検出手段と前記ステージとを相対移動させる相対移動機構とを備え、前記スタイラスを被測定物の表面に接触させた状態において、前記相対移動機構により前記検出手段と前記ステージとを相対移動させながら前記変位検出器によって前記測定アームの円弧運動量を検出し、この円弧運動量から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機において、
前記測定アームは、前記本体に前記支持軸を支点として円弧運動可能に支持された第1測定アームと、この第1測定アームの先端に着脱機構を介して着脱可能に設けられ先端に前記スタイラスを有する第2測定アームとを含んで構成され、
前記測定力付与手段は、前記測定アームを前記支持軸を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイルを含んで構成され、
前記第2測定アームの交換後に、前記ボイルコイルに通電する電流を調整して前記測定アームのバランスを調整するバランス調整手段を備える、
ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項2】
請求項1に記載の表面性状測定機において、
前記バランス調整手段は、前記変位検出器によって検出される前記測定アームの円弧運動量を監視しながら、前記ボイルコイルに通電する電流を調整し、前記測定アームの円弧運動量が予め設定した設定値になった段階でバランス調整を完了する、
ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表面性状測定機において、
前記スタイラスは、前記測定アームの先端に前記円弧運動方向に向かってそれぞれ突出する一対のスタイラスを有し、
前記ボイスコイルは、前記測定アームが前記円弧運動方向の一方向へ付勢される姿勢および他方向に付勢される姿勢に切り替える測定アーム姿勢切替機構を構成している、
ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項4】
請求項3に記載の表面性状測定機において、
前記測定アーム姿勢切替機構によって前記測定アームの姿勢が切替動作された際に、前記測定アームの切替動作速度を予め設定された速度に制御する速度制御機構を備える、
ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項1】
本体に支持軸を支点として円弧運動可能に支持された測定アーム、この測定アームの先端に設けられたスタイラス、前記測定アームの円弧運動量を検出する変位検出器、および、前記測定アームを円弧運動方向へ付勢し前記スタイラスに測定力を付与する測定力付与手段を有する検出手段と、被測定物を載置するステージと、前記検出手段と前記ステージとを相対移動させる相対移動機構とを備え、前記スタイラスを被測定物の表面に接触させた状態において、前記相対移動機構により前記検出手段と前記ステージとを相対移動させながら前記変位検出器によって前記測定アームの円弧運動量を検出し、この円弧運動量から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機において、
前記測定アームは、前記本体に前記支持軸を支点として円弧運動可能に支持された第1測定アームと、この第1測定アームの先端に着脱機構を介して着脱可能に設けられ先端に前記スタイラスを有する第2測定アームとを含んで構成され、
前記測定力付与手段は、前記測定アームを前記支持軸を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイルを含んで構成され、
前記第2測定アームの交換後に、前記ボイルコイルに通電する電流を調整して前記測定アームのバランスを調整するバランス調整手段を備える、
ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項2】
請求項1に記載の表面性状測定機において、
前記バランス調整手段は、前記変位検出器によって検出される前記測定アームの円弧運動量を監視しながら、前記ボイルコイルに通電する電流を調整し、前記測定アームの円弧運動量が予め設定した設定値になった段階でバランス調整を完了する、
ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表面性状測定機において、
前記スタイラスは、前記測定アームの先端に前記円弧運動方向に向かってそれぞれ突出する一対のスタイラスを有し、
前記ボイスコイルは、前記測定アームが前記円弧運動方向の一方向へ付勢される姿勢および他方向に付勢される姿勢に切り替える測定アーム姿勢切替機構を構成している、
ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項4】
請求項3に記載の表面性状測定機において、
前記測定アーム姿勢切替機構によって前記測定アームの姿勢が切替動作された際に、前記測定アームの切替動作速度を予め設定された速度に制御する速度制御機構を備える、
ことを特徴とする表面性状測定機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−225743(P2012−225743A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92981(P2011−92981)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]