説明

表面改質された酸化ルテニウム導電性材料、無鉛ガラス、厚膜抵抗体ペースト、およびそれより製造されたデバイス

本発明は、厚膜抵抗体材料を製造する用途に適したペーストを製造するために配合された、表面改質されたRuO2導電体および無鉛粉末ガラス材料に関する。本発明に最も好適な抵抗範囲は、10kΩ/□〜10MΩ/□のシート抵抗を有する抵抗体である。結果として得られる抵抗体は、±100ppm/℃のTCRを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚膜抵抗体材料の製造の用途に適したペーストを製造するために配合された表面改質されたRuO2導電性材料、および実質的に無鉛の粉末ガラス材料、ならびにそれらから製造された抵抗体に関する。本発明に最も適した抵抗範囲は、10kΩ/□〜10MΩ/□のシート抵抗を有する抵抗体である。本発明は、このような表面改質されたRuO2導電性材料の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
100kΩ〜10MΩの間の抵抗範囲の無鉛の抵抗体を製造するという課題は、非常に困難である。この困難さは、抵抗だけに限定されるのではなく、抵抗温度係数(TCR)を±100ppm/℃以内に維持することにも及ぶ。抵抗体配合物の通常の実施においては、多くの添加剤は、TCRをより負方向に移動させることが知られている。抵抗体から鉛分を除去すると、TCRは、負方向に顕著に偏る傾向にある。しかし、TCRの負の値が大きすぎると、TCRを増加させることは非常に困難である。本発明はこれらの要求に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、(a)1種類以上の被覆されたルテニウム含有成分であって、ルテニウム含有成分が:酸化ルテニウムおよび酸化ルテニウム水和物からなる群から選択される1種類以上の成分を含み、被覆が1種類以上の酸性成分、1種類以上の塩基性成分、またはそれらの組み合わせを含む、被覆されたルテニウム含有成分と;(b)1種類以上のガラスフリットと;(c)有機ビヒクルとを含む組成物を提供する。本発明の一実施形態においては、1種類以上の酸性成分は、B、F、P、およびSeからなる群から選択される1種類以上の組成物を含む。本発明のさらなる一実施形態においては、1種類以上の塩基性成分は、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、およびBaからなる群から選択される1種類以上の組成物を含む。本発明の一実施形態においては、ルテニウム含有成分はRuO2である。
【0004】
本発明の実施形態においては、組成物のガラスフリットは実質的に無鉛である。本発明によるガラスフリットはアルカリ土類酸化物を含むことができる。アルカリ土類酸化物は12〜54重量%であってよい。ガラスフリットは、3〜37重量%のSiO2、3〜13重量%のAl23、および11〜38重量%のB23からなる群から選択される1種類以上の成分をさらに含むことができる。ガラスフリットは、0〜6重量%のZrO2、および0〜13重量%のP25からなる群から選択される1種類以上の成分をさらに含むことができる。本発明のさらなる一実施形態においては、酸化バリウムは0〜54重量%であってよい。酸化ストロンチウムは0〜38重量%であってよい。ガラスフリットは、18〜29重量%のSiO2、5〜9重量%のAl23、および14〜27重量%のB23からなる群から選択される1種類以上の成分をさらに含むことができる。ガラスフリットは、0〜3重量%のZrO2、0〜2重量%のK2Oからなる群から選択される1種類以上の成分をさらに含むことができる。この段落中に示されるすべての範囲の重量%の基準はガラスフリットである。
【0005】
本発明の一実施形態においては、ガラスフリットはアルカリ土類ホウケイ酸ガラスを含む。アルカリ土類ホウケイ酸ガラスは、アルカリ土類ホウアルミノケイ酸ガラスを含むことができる。ガラスフリットは、アルカリ金属およびZnOからなる群から選択される1種類または複数成分を実質的に含有しなくてもよい。ガラスフリットは表1から選択することができる。本発明の一実施形態においては、本発明の組成物は、CuO、TiO2、SiO2、ZrSiO4、Ta25、Nb25、MnO2、およびAg2Oからなる群から選択される1種類以上の組成物をさらに含むことができる。
【0006】
本発明の一実施形態は、上記組成物を含む抵抗体に関する。本発明の抵抗体のシート抵抗は10kΩ/□〜10MΩ/□の間とすることができる。本発明の抵抗体のTCRは、−100ppm/℃〜+100ppm/℃とすることができる。
【0007】
本発明のさらなる一実施形態は、a)酸化ルテニウムまたは酸化ルテニウム水和物化合物を酸性元素または塩基性元素で被覆するステップと;b)前記被覆されたルテニウム化合物を焼成するステップと;c)焼成された化合物をガラスフリットおよび有機ビヒクルと混合してペーストを形成するステップと;d)ペーストを印刷および焼成して厚膜抵抗体を形成するステップとを含む抵抗体の製造方法に関する。酸性元素は、B、F、P、Se、またはそれらの組み合わせを含むことができる。塩基性元素は、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、またはそれらの組み合わせを含むことができる。さらに、Ag、Al、Cu、Nb、Si、Ta、Ti、Zn、Zr、またはそれらの組み合わせなどの非酸性または非塩基性元素を被覆に加えることができる。一態様においては、被覆方法は、ルテニウム化合物の表面上への所望の元素の噴霧乾燥、インシピエントウェットネス(incipient wetness)、または沈殿であってよい。被覆された酸化ルテニウムの調製において、被覆する元素または複数元素の濃度は、酸化ルテニウム材料の結晶粒の成長を抑制するために、その熱処理中の温度および保持時間によって調節される。これは典型的には、焼成後の表面積測定値が、焼成前のより高い出発値から変化して5〜25m2/gで保持されることによって測定される。この被覆量は、本発明の一実施形態においては2000〜15000ppmに調節することができる。別の一実施形態においては、この被覆は3000〜10000ppmの範囲である。4000〜8000ppmの被覆範囲を本発明により使用することもできる。
【0008】
本発明の一実施形態においては、ガラスフリットは実質的に無鉛であってよい。ガラスフリットはアルカリ土類ホウケイ酸ガラスを含むことができる。ガラスフリットはアルカリ土類ホウアルミノケイ酸ガラスを含むことができる。ガラスフリットはアルカリ金属を実質的に含有しなくてよい。ガラスフリットは表1に示される一覧から選択される。
【0009】
本発明の一実施形態においては、被覆された酸化ルテニウムまたは酸化ルテニウム水和物の焼成後に得られる表面積を5〜25m2/gの間とすることができる。被覆されたルテニウム化合物は、800〜1100℃の温度において15分〜12時間の間の時間焼成することができる。本発明の一実施形態においては、酸化ルテニウム化合物はRuO2であってよい。本発明の別の一実施形態においては、RuO2は>25m2/gの表面積を有することができる。一実施形態においては、酸化ルテニウム水和物化合物は、沈殿した酸化ルテニウム水和物または水酸化ルテニウムを濾過することによって得られるウェットケーキの形態であってよい。
【0010】
本発明の一実施形態は、本明細書に記載の方法によって製造された抵抗体に関する。完成した抵抗体は、10kΩ/□〜10MΩ/□の範囲内のシート抵抗を有することができる。完成した抵抗体は、−100ppm/℃〜+100ppm/℃の範囲内のTCRを有することができる。
【0011】
本発明の一実施形態においては、抵抗体は、820〜950℃;または850℃〜900℃のピーク温度において焼成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
セラミック厚膜抵抗体システムは、10Ω/□〜1MΩ/□の間の範囲の数十の個別の要素を一般に含んでいる。現在、最も市販されている厚膜抵抗体システムは、有鉛フリット、または有鉛フリット+導電相のいずれかを含む。鉛材料を除去することによって生じるTCRの正の値が減少するため、100kΩ/□以上のシート抵抗値を有する抵抗体の実現が非常に困難となる。
【0013】
本発明は、100kΩ〜10MΩ/□の範囲内で±100ppm/℃のTCRを有する厚膜抵抗体組成物を製造するのに適した導電性酸化物/フリットの組み合わせ(無鉛)の要求に対処する。この一連の新規抵抗体は、高速製造ラインで使用される熱処理条件のばらつきに対して十分低い感度を有する必要がある。本発明は、好適な高オーム抵抗体の開発に対する要求に対処する。
【0014】
RuO2などの従来認識されている導電体を使用して高抵抗要素を実現するための困難な問題は、ガラス粉末、導電性粉末、および酸化物粉末添加剤からなる典型的な抵抗体配合物の焼成中に粒度が成長する傾向にあることである。驚くべきことに本発明者らは、高表面積RuO2粉末の表面を種々の酸性または塩基性材料で被覆し、次に、材料が850〜1100℃の範囲内の温度で焼成される場合に、粒度の成長が典型的には観察される、他の場合には材料の「焼成」と呼ばれる、好適な容器中で材料の熱処理を行うことによって、抑制できることを発見した。この導電体の成長が減少することよって、他の場合には実現できない固有の性能上の利点が、配合された抵抗体中に使用される場合に得られる。
【0015】
被覆され焼成されたRuO2は、焼成および引き続く抵抗体の焼成の間にその微細な粒度および高表面積を維持する。ガラス組成物中に数パーセントを超えるアルカリ含有率が存在する場合は、その導電体はRuO2抵抗体(未被覆)に典型的な性質に事実上戻り、そのため高オーム用途には望ましくなくなる。また、抵抗体のTCRが所望の範囲外に移動する。このため、厚膜抵抗体の配合に使用される記載の導電性材料およびガラス材料を含有する本明細書に記載の組成物は、許容できる一連の抵抗体特性を実現することができる。
【0016】
通常、RuO2は、600℃を超える温度で焼成すると、表面積の減少を伴って粒子の成長が進行する。この焼結のため、RuO2系抵抗体が800℃〜900℃の温度範囲で焼成されると、RおよびTCRのばらつきが大きくなる。熱処理のばらつきが大きくなると、大規模チップ抵抗体の製造における歩留まりが低くなる。本明細書に記載の被覆されたRuO2は、これらのRuO2系抵抗体の熱処理に対する感度が大きく低下する。
【0017】
本明細書に記載されるように、高表面積のRuO2またはRu(OH)4・nH2Oが、塩基性イオン(K+またはBa2+など)または酸性イオン(BO33-またはPO43-など)のいずれかで最小限で被覆される。場合により、被覆中に追加のイオンが含まれてもよい。次に、被覆されたRuO2が800℃〜1100℃の間の温度で焼成される。被覆および焼成のプロセスは、比較的広い表面積(>5m2/g)を有する微粒子結晶質RuO2が得られるように計画される。
【0018】
この被覆されたRuO2をアルカリ土類アルミノホウケイ酸フリットと組み合わせることで、RuO2系高オーム抵抗体を製造することができる。驚くべきことに、本発明による抵抗体の電気的性能は、ルテニウム酸鉛を有鉛フリット中に使用する鉛含有抵抗体に匹敵し、100kΩ/□〜10MΩ/□である。±100ppm/℃の高温TCRおよび低温TCR(HTCR/CTCR)を有する抵抗値が、本発明の方法および/または組成物により抵抗体を製造した場合に達成可能である。
【0019】
抵抗体配合物の粉末ガラス成分として調製し試験したガラス組成物を表1に示す。ガラス前駆体を溶融させ、ローラーによって急冷し、1〜1.5ミクロンの平均粒度まで粉砕した。
【0020】
本発明において、「実質的に無鉛」は、不純物の量を超える鉛は含有しないことを意味する。不純物の量(たとえば、ガラス組成物中0.05重量%以下の含有率)は含有する場合がある。鉛は、本発明によるガラス中、あるいは抵抗体ペーストおよび抵抗体の他の組成元素中に、不可避の不純物としてごく少量含まれる場合がある。本発明によるペースト組成物および抵抗体組成物は実質的に無鉛とすることができる
【0021】
本発明において、「アルカリ金属、またはZnO、またはその両方のいずれかを実質的に含まない」は、不純物としての量を超えるアルカリ金属、またはZnOを含有しないことを意味する。アルカリ金属およびZnOは、本発明によるガラス中、あるいは抵抗体ペーストおよび抵抗体の他の組成元素中に、不可避の不純物としてごく少量含まれる場合がある。
【0022】
ガラスフリットの調製:
ガラスを、白金ロジウム合金るつぼ中1350〜1550℃の範囲内の温度で溶融させる。バッチ材料は、炭酸バリウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、および炭酸カリウム以外の酸化物材料であった。バッチ材料を秤量し、溶融させる前に十分に混合した。五酸化リンを、Ba227、BaP26、またはBPO4などのあらかじめ反応させたリン酸塩化合物の形態で加えたが、これらの例示的な化合物に選択が限定される必要はない。ホウ素は無水ホウ酸として加えた。SiO2源として非晶質シリカを使用した。ガラスを1〜4時間溶融させ、撹拌し、急冷した。ガラスを急冷した。次にガラスを、水中で1/2インチジルコニアメディアを使用して5〜7ミクロンの粉末までボールミル粉砕した。得られたガラススラリーを325メッシュスクリーンに通してふるい分けした。このスラリーを100℃で乾燥させた後、約1〜1.5ミクロンの最終d50サイズまで水中で粉砕した。乾燥させたガラス粉末を次に175℃で焼き付けすると、抵抗体の形成にすぐ使用できる状態になった。表面の水分を除去するために乾燥ステップを使用した。
【0023】
表1に列挙されるガラスの一般的な組成範囲は、3〜37重量%のSiO2、3〜13重量%のAl23、11〜38重量%のB23、12〜54重量%のアルカリ土類酸化物であり、場合により0〜6重量%のZrO2および/または0〜13重量%のP25が加えられる。表1と関連するが、アルカリ金属酸化物、酸化亜鉛、および/または酸化チタンが加えられているガラスによる抵抗体特性への影響を示すために、さらなるガラス組成物を表2に示す。場合により、これらまたはその他の改質剤を含有するガラスを使用して配合した抵抗体において特性の変化を見ることができる。他の金属酸化物、ガラス形成性酸化物、耐熱ガラス粉末、および結晶質酸化物などの追加の材料を、本発明によるガラス材料に加えることができる。さらに、抵抗体ペーストおよび抵抗体の配合物中に異なるガラス組成物の混合物を使用することも、本発明により行うことができる。
【0024】
【表1】

【0025】
導電性被覆方法:
被覆は、噴霧乾燥、インシピエントウェットネス、回転蒸発、沈殿などの当業者に周知のあらゆる技術によって行うことができる。本明細書に記載の方法はインシピエントウェットネスである。
【0026】
使用したRuO2は、20〜60m2/gの表面積を有する微粉末であった。細孔容積を測定することによって、または粉末をちょうどぬらすまで試験サンプルに既知量の液体を加えることによってのいずれかによって、粉末をちょうどぬらす溶液の体積を確認した。たとえば、実施例に使用したRuO2は、100gの粉末をぬらすために約116mlの水を必要とした。被覆する元素または複数元素の溶液を調製し、適切な体積まで希釈した。たとえば、Kの所望の濃度が5000ppmである場合、8.84gの10重量%K2CO3溶液を116mlまで希釈した。この溶液を100gのRuO2と十分に混合した後、乾燥し、焼成した。
【0027】
他の形態の高表面積RuO2も同様に使用することができる。たとえば、Ru(OH)4・nH2Oの沈殿および濾過から得られたウェットケーキを、最初に乾燥することなくそのまま使用することができる。この場合、ウェットケーキはすでに多量の水を含有するので、被覆溶液は乾燥粉末の場合よりも濃縮すべきである。
【0028】
被覆溶液は、可溶性形態の所望の元素を好適な溶媒、好ましくは水、または水とメタノールなどの水混和性溶媒との混合物に溶解させることによって得ることができる。陽イオン元素の好適な塩は、硝酸塩類、酢酸塩類、亜硝酸塩類、硫酸塩類、炭酸塩類、または十分な溶解性を有するあらゆる他の塩である。P、B、またはFなどの陰イオン元素の場合は、それらの酸形態(たとえばH3PO4)またはそれらのアンモニウム塩類が使用される。
【0029】
被覆が2種類以上の元素からなる場合、それらが1つの溶液(両方が同時に可溶性である場合)中で混合されるか、あるいはそれらは、乾燥ステップを間に挟んでRuO2に連続して加えることもできる。元素の1つが酸性または塩基性であり、適切な濃度であれば、追加の元素を加えながら、焼成後に高表面積を維持することができる。これらの追加の元素は、たとえば、R、TCR、またはその他の抵抗体特性を調整するために使用することができる。
【0030】
液体と粉末との混合は、すべての粉末がぬれ、結果として得られる高固形分スラリーが均一となるのが保証される、高シア(high−sheer)ミキサーまたはニーダーなどのあらゆる実際的な方法で行うことができる。
【0031】
高固形分スラリーの乾燥は、あらゆる従来手段によって行うことができる。たとえば、ペーストは、室温で風乾することができるし、加熱して乾燥を促進することもできる。静的または強制空気乾燥を使用することができる。
【0032】
乾燥させた高固形分スラリーを、800℃〜1100℃の温度において15分〜12時間焼成した。時間および温度は、所望の抵抗体特性を実現するために、任意の特定の被覆およびルテニウム化合物に対して最適化した。Ruを4+酸化状態に維持するために空気を使用することができるが、蒸気、窒素、またはアルゴンなどの他の雰囲気を使用することもできる。
【0033】
得られた粉末は、乾燥および焼成のステップの後にふるい分けして、流動性微粉末を得ることができる。
【0034】
ペースト配合物
厚膜ペーストを製造することによって、粒子およびフリットの混合物から抵抗体を製造することができる。このようなペーストの製造手順は当技術分野において周知である。典型的には、ペーストは、スクリーン印刷可能なペーストを形成するための有機媒体中に分散させた導電性粒子、ガラス粉末、および場合により添加剤からなる。個々の抵抗体ペーストの抵抗は、導電相の化学的性質(すなわち、10Ω/□未満の抵抗体の場合Ag/Pd固溶体粉末、および10Ω/□以上の抵抗体の場合RuO2)を変化させることによって、フリットと導電相の重量比を変動させることによって変動させることができる。被覆されたRuO2導電相および表1のガラス組成物を使用すると、100kΩ/□〜1MΩ/□の間の抵抗を、15〜20重量%の間の厚膜ペースト(ペーストは典型的には70重量%の導電体およびフリットを含有する)導電体充填量で実現することができる。ペースト配合物のガラス粉末成分は、抵抗体ペースト特性、ならびに後に印刷および焼成された抵抗体の電気的性質に影響を与えるために、部分的に他の酸化物粉末で置き換えることができる。置き換えられる他の種類の添加剤の例は、市販のEガラス、Corning(登録商標)7740ガラス、溶融シリカ、およびCorning(登録商標)7800ガラスなどの耐熱ガラス粉末である。
【0035】
機械的混合によって無機成分を有機媒体と混合して、スクリーン印刷に適した粘稠度およびレオロジーを有する「ペースト」と呼ばれる粘稠組成物を形成することができる。多種多様な不活性粘稠材料を有機媒体として使用することができる。この有機媒体は、適度な安定性で無機成分を分散可能な有機媒体であるべきである。媒体のレオロジー特性は、固形分の安定な分散物、スクリーン印刷に適切な粘度およびチキソトロピー、基体およびペースト固形分に対する適切なぬれ性、良好な乾燥速度、ならびに良好な焼成特性など、組成物に良好な塗布特性を付与するようなレオロジー特性であるべきである。本発明の厚膜組成物中に使用される有機媒体は、非水性不活性液体であってよい。増粘剤、安定剤、および/またはその他の一般的な添加剤を含有する場合も含有しない場合もあるあらゆる種々の有機媒体を使用することができる。有機媒体は、典型的には溶媒(1種類以上)中のポリマー(1種類以上)の溶液である。さらに、界面活性剤などの少量の添加剤量が有機媒体の一部であってよい。この目的に最も頻繁に使用されるポリマーはエチルセルロースである。ポリマーの他の例としては、エチルヒドロキシエチルセルロース、ウッドロジン、エチルセルロースおよびフェノール樹脂の混合物、低級アルコールのポリメタクリレート類、およびエチレングリコールモノアセテートのモノブチルエーテルが挙げられ、これらもまた使用することができる。厚膜組成物中に見られる最も広く使用される溶媒は、エステルアルコール類、およびα−またはβ−テルピネオールなどのテルペン類、あるいはそれらと、ケロシン、ジブチルフタレート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ヘキシレングリコール、ならびに高沸点アルコール類およびアルコールエステル類などの他の溶媒との混合物である。さらに、基体上に塗布した後の迅速な硬化を促進するための揮発性液体を媒体中に含めることができる。RuO2系抵抗体に好適な界面活性剤としては、大豆レシチンおよびアルカリホスフェート類が挙げられる。所望の粘度および揮発性の要求を満たすために、これらおよびそのたの溶媒の種々の組み合わせが配合される。
【0036】
本発明の一実施形態においては、有機媒体中に存在するポリマーは、全組成物の8重量%〜11重量%の範囲内である。本発明の厚膜抵抗体組成物は、有機媒体を使用して、あらかじめ設定されたスクリーン印刷可能な粘度に調節することができる(後述)。
【0037】
厚膜組成物中の有機媒体の、分散物中の無機成分の比は、ペーストの塗布方法、および使用される有機媒体の種類に依存し、この比は変動させることができる。通常、分散物は、良好なぬれ性を得るために、70〜95重量%の無機成分、および5〜30重量%の有機媒体を含有する。
【0038】
機械的混合によって粉末が有機媒体によってぬらされる。少量のサンプルをガラス表面上で、スパチュラを使用して手で混合することができる。多量のペーストの場合には撹拌翼が使用される。粉末粒子の最終的な混合および分散は、Ross(Hauppauge,NY)3本ロールミル(直径4インチ(10.16cm)×長さ8インチ(20.32cm)のロールを有する床置型)などの3本ロールミルを使用して行われる。150〜300Pa・secの間の最終ペースト粘度がスクリーン印刷に適している(10rpmおよび25℃において、#14スピンドルおよび6Rカップを使用したBrookfield HBF粘度計[Middleboro,MA]を使用して測定される)。スクリーン印刷は、自動スクリーン印刷機を使用して行われる(Engineering Technical Products,Sommerville,NJの印刷機など)。18ミクロンの抵抗体乾燥厚さ(0.8mmの長さおよび幅を有する抵抗体上)を実現するために、200メッシュまたは325メッシュのいずれかのステンレス鋼スクリーンが使用される。抵抗体は、96%アルミナ基体の1インチ(2.54cm)平方の上に印刷される。基体は、厚さが25ミル(0.635mm)であり、CoorsTek(Golden,CO)により製造されている。850℃であらかじめ焼成されたAg厚膜終端のパターン上に抵抗体が印刷される。10分間のピーク焼成温度を有する30分間の焼成プロファイルを使用して、DuPont 5435F終端を焼成した(DuPont MicroCircuit Materials,Wilmington,DE)。抵抗体も、10分間のピーク温度を有する30分間の温度プロファイルを使用して850℃で焼成される。すべての焼成で、ベルト長233.5インチ(593.1cm)Lindberg Model 800(Riverside,MI)10ゾーンベルト炉が使用される。
【0039】
抵抗は、2点プローブ方法を使用して−55℃、25℃、および125℃で測定する。Keithley 2000マルチメーターおよびKeithley 224プログラマブル電流源(Cleveland,OH)を使用してこの測定を行う。S & A Engineering 4220AQ熱試験室(Scottsdale、AZ)を使用して、上記3つの測定温度を実現する。25℃におけるR/□として報告される。CTCRは、[(R25℃−R-55℃)/(ΔT×R25℃)]×1,000,000と定義される。HTCRは、[(R125℃−R25℃)/(ΔT×R25℃)]×1,000,000と定義される。HTCRおよびCTCRの両方の単位はppm/℃である。
【0040】
材料
ルテニウム化合物は、Colonial Metals,Elkton,MDより入手した。他のすべての無機化合物は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)より入手した。抵抗体配合物中に使用した非晶質SiO2は約10m2/gの表面積を有する。
【0041】
導電性加工(CP)実施例
実施例CP−1:5,000ppmのK
6.4795gの3.8554重量%KHCO3溶液を64.48gまで希釈した。この溶液を49.96gのRuO2と十分に混合した。RuO2の出発表面積は59m2/gであった。得られた高固形分スラリーを風乾した。乾燥した高固形分スラリーを微粉末に粉砕し、900℃で1時間焼成した。この結果得られた被覆されたRuO2の表面積は12.40m2/gであった。
【0042】
実施例CP−2:6,000ppmのKおよび4,753ppmのP
7.3168gの10.00重量%KH2PO4溶液を42.37gまで希釈した。この溶液を35.12gのRuO2と十分に混合した。RuO2の出発表面積は59m2/gであった。得られた高固形分スラリーを風乾した。乾燥した高固形分スラリーを微粉末に粉砕し、1050℃で1時間焼成した。この結果得られた被覆されたRuO2の表面積は10.22m2/gであった。
【0043】
実施例CP−3:10,000ppmのRb
7.7445gの6.1258重量%Rb2CO3溶液を42.37gまで希釈した。この溶液を35.11gのRuO2と十分に混合した。RuO2の出発表面積は59m2/gであった。得られた高固形分スラリーを風乾した。乾燥した高固形分スラリーを微粉末に粉砕し、900℃で1時間焼成した。この結果得られた被覆されたRuO2の表面積は10.34m2/gであった。
【0044】
実施例CP−4:2.5%のB
沈殿したRu(OH)4nH2Oのウェットケーキを濾過したが、乾燥はさせなかった。15.5417gの4.9951重量%H3BO3溶液をこのケーキと十分に混合した。得られた高固形分スラリーを風乾した。乾燥した高固形分スラリーを微粉末に粉砕し、900℃で1時間焼成した。この結果得られた被覆されたRuO2の表面積は10.08m2/gであった。
【0045】
実施例CP−5:6,000ppmのP
6.3942gの8.817重量%H3PO4溶液を43.58gまで希釈した。この溶液を34.95gのRuO2と十分に混合した。RuO2の出発表面積は59m2/gであった。得られた高固形分スラリーを風乾した。乾燥した高固形分スラリーを微粉末に粉砕し、900℃で1時間焼成した。この結果得られた被覆されたRuO2の表面積は12.70m2/gであった。
【0046】
実施例CP−6:5,000ppmのKおよび827ppmのSi
2SiO3およびKOHを水中に溶解させて、3.4586%のKおよび0.5723%のSiの溶液を調製した。4.3427gのこの溶液を36.81gまで希釈した。この溶液を30.02gのRuO2と十分に混合した。RuO2の出発表面積は59m2/gであった。得られた高固形分スラリーを風乾した。乾燥した高固形分スラリーを微粉末に粉砕し、900℃で1時間焼成した。この結果得られた被覆されたRuO2の表面積は8.96m2/gであった。
【0047】
比較例CP−7:被覆なし
出発表面積が59m2/gである純粋な未被覆のRuO2を900℃で1時間焼成した。この結果得られた未被覆RuO2の表面積は0.86m2/gであった。
【0048】
抵抗体配合物および試験例
すべての試験結果は以下の単位で報告される。R(シート抵抗)の単位は、0.8×0.8mm抵抗体の場合のΩ/□である。TCRは、ppm/℃の単位で報告される。
【0049】
比較例1:RuO2上に被覆なし
表面積が0.86m2/gである未被覆の焼成したRuO2(実施例CP−7)を、以下の比率でガラス#14(表1)、非晶質シリカ、および有機媒体と混合して、2つの抵抗体配合物を調製した。
【0050】
【表2】

【0051】
2つの抵抗体ペーストは、高剪断ミキサーを使用して750RPMで5分間混合した。次にペーストを、以下のパスを使用して、圧力制御されたロールミルでロールミル粉砕した:1×100psi、2×150psi、3×200psi。Ag系導体パッドであらかじめ終端処理した8つの1インチ×1インチアルミナ基体チップ上に、ペーストを乾燥時18ミクロンで印刷した。各チップの8つの印刷した抵抗体からデータを収集した。サンプルは850℃で焼成した。ペーストC−1およびC−2からのすべての抵抗体は、測定できないほど高いシート抵抗を有した。
【0052】
実施例2:ガラス#3(表1)で被覆されたRuO2
この実施例で使用した抵抗体用導電体は、例CP−1に記載されるようにして被覆した。5000ppmのKが被覆されたRuO2を、以下の2つの抵抗体ペーストの配合においてガラス#3と配合した:
【0053】
【表3】

【0054】
2つの抵抗体ペーストは、高剪断ミキサーを使用して750RPMで5分間混合した。次にペーストを、以下のパスを使用して、圧力制御されたロールミルでロールミル粉砕した:2×開放、2×100psi、2×180psi、2×250psi。Ag系導体パッドであらかじめ終端処理した4つの1インチ×1インチアルミナ基体チップ上に、ペーストを乾燥時18ミクロンで印刷した。各チップの8つの印刷した抵抗体からデータを収集した。報告される値は平均されている。サンプルは850℃で焼成した。抵抗体ペースト2−1のΩ/□の単位で測定したシート抵抗は10,095,400Ω(CV%=2.81)であった。高温TCR(HTCR)は92(シグマ=2.7)であり、低温TCR(CTCR)は42(シグマ=3.0)であった。抵抗体ペースト2−2のΩ/□の単位で測定したシート抵抗は1,661,501Ω(CV%=2.36)であった。HTCRは37(シグマ=1.7)であり、CTCRは−19(シグマ=0.8)であった。これらのデータは、この抵抗体/導電体系中の1MΩ/□抵抗体が、+21/-37ppm/℃のH/CTCRを有し、膜抵抗体組成物の通常±100ppm/℃の規格限界の範囲内に十分は行っていることを示している。
【0055】
実施例3:ガラス#14(表1)および酸化物添加剤で被覆されたRuO2
この実施例で使用した抵抗体用導電体は、前述の実施例CP−1に記載されるようにして作製した。被覆されたRuO2を、2つの抵抗体ペーストの配合においてガラス#14(表1)と配合した:
【0056】
【表4】

【0057】
2つの抵抗体ペーストは、高剪断ミキサーを使用して750RPMで5分間混合した。次にペーストを、以下のパスを使用して、圧力制御されたロールミルでロールミル粉砕した:2×開放、2×100psi、2×180psi、2×250psi。Ag系導体パッドであらかじめ終端処理した4つの1インチ×1インチアルミナ基体チップ上にペーストを乾燥時18ミクロンで印刷した。各チップの8つの印刷した抵抗体からデータを収集した。報告される値は平均されている。サンプルは850℃で焼成した。抵抗体ペースト3−1Ω/□の単位で測定したシート抵抗は4,484,240Ω(CV%=3.03)であった。高温TCR(HTCR)は−84(シグマ=2.6)であり、低温TCR(CTCR)は−160(シグマ=3.4)であった。抵抗体ペースト3−2のΩ/□の単位で測定したシート抵抗は532,647Ω(CV%=2.59)であった。HTCRは−104(シグマ=0)であり、CTCRは−180(シグマ=0)であった。
【0058】
【表5】

【0059】
実施例4:ガラス#33(表2)で被覆されたRuO2
この実施例で使用した抵抗体用導電体は、同じプロセス条件を使用して前述の実施例CP−1に記載されるようにして被覆した。被覆されたRuO2を900℃で1時間焼成すると、表面積が11.93m2/gとなった。この被覆されたRuO2を、以下の2つの抵抗体ペーストの配合においてガラス#33(表2)と配合した:
【0060】
【表6】

【0061】
2つの抵抗体ペーストは、高剪断ミキサーを使用して750RPMで5分間混合した。次にペーストを、以下のパスを使用して、圧力制御されたロールミルでロールミル粉砕した:2×開放、2×100psi、2×180psi、2×250psi。Ag系導体パッドであらかじめ終端処理した4つの1インチ×1インチアルミナ基体チップ上に、ペーストを乾燥時18ミクロンで印刷した。各チップの8つの印刷した抵抗体からデータを収集した。報告される値は平均されている。報告される値は平均されている。サンプルは850℃で焼成した。抵抗体ペースト4−1のΩ/□の単位で測定したシート抵抗は47,900Ω(CV%=3.03)であった。高温TCR(HTCR)は−41(シグマ=3.1)であり、低温TCR(CTCR)は−124(シグマ=0)であった。抵抗体ペースト4−2のΩ/□の単位で測定したシート抵抗は167,532(CV%=4.4)Ωであった。HTCRは−46(シグマ=0)であり、CTCRは−135(シグマ=0)であった。
【0062】
実施例5:非晶質SiO2添加剤を有するガラス#3、#12、#2、#4、および#5(表1)とで被覆されたRuO2
この一連の試験で使用した抵抗体用導電体は、同じプロセス条件を使用して前述の実施例CP−1に記載されるようにして被覆した。被覆されたRuO2を900℃で1時間焼成すると、表面積が12.40m2/gとなった。5000ppmのKが被覆されたRuO2をガラス#3、#12、#2、#4、および#5(表1)と、以下の同一の体積%充填量(12%)の被覆されたRuO2、ならびに以下の抵抗体ペーストの配合に含まれる各ガラス材料および一定体積%の添加剤の非晶質SiO2(17.6%)において配合した:
【0063】
【表7】

【0064】
これらの固体は、70重量%の固体を30重量%の有機媒体と配合することよってペーストに加工される。これらの抵抗体ペーストは、高剪断ミキサーを使用して750RPMで5分間混合した。次にペーストを、以下のパスを使用して、圧力制御されたロールミルでロールミル粉砕した:2×開放、2×100psi、2×180psi、2×250psi。Ag系導体パッドであらかじめ終端処理した4つの1インチ×1インチアルミナ基体チップ上に、ペーストを乾燥時18ミクロンで印刷した。各チップの8つの印刷した抵抗体からデータを収集した。報告される値は平均されている。サンプルは850℃で焼成した。
【0065】
【表8】

【0066】
実施例6:非晶質SiO2添加剤を有するガラス#32(表2)で被覆されたRuO2
実施例5に記載のものと同じ抵抗体用導電体およびプロセス条件を使用して、表2のガラス#32を同じ条件下で試験した。抵抗体配合物の固体は:22.04重量%のKで被覆されたRuO2、67.80重量%の表2のガラス#32、および10.16重量%の非晶質SiO2であった。
【0067】
850℃焼成サンプルから得られたデータは以下の通りであった:
【0068】
【表9】

【0069】
実施例7:ガラス#23(表2)被覆されたRuO2
この実施例で使用した抵抗体用導電体は、前述の実施例CP−1に記載されるように被覆した。被覆されたRuO2を、以下の抵抗体ペーストの配合においてガラス#23(表2)と配合した:
【0070】
【表10】

【0071】
抵抗体ペーストは、高剪断ミキサーを使用して750RPMで5分間混合した。次にペーストを、以下のパスを使用して、圧力制御されたロールミルでロールミル粉砕した:2×開放、2×100psi、2×180psi、2×250psi。Ag系導体パッドであらかじめ終端処理した4つの1インチ×1インチアルミナ基体チップ上に、ペーストを乾燥時18ミクロンで印刷した。各チップの8つの印刷した抵抗体からデータを収集した。報告される値は平均されている。サンプルは850℃で焼成した。焼成した抵抗体ペースト7−1のΩ/□の単位で測定したシート抵抗は10,531,550Ω(CV%=4.22)であった。高温TCR(HTCR)は53(シグマ=2.1)であり、低温TCR(CTCR)は−3(シグマ=0)であった。この抵抗体実施例は実施例2(抵抗体ペースト2−1)に匹敵するが、2つの点が異なる。実施例7は非晶質SiO2添加剤およびガラスを有する。抵抗体ペースト2−1においては、ガラス#3(表1)が非常に類似しているがアルカリ酸化物K2Oは加えられていない。
【0072】
実施例8:添加剤の非晶質SiO2を有するガラス#33(表2)で被覆されたRuO2
この実施例で使用した抵抗体用導電体は、前述の実施例CP−1に記載されるように被覆した。被覆されたRuO2を900℃で1時間焼成すると、表面積が12.40m2/gになった。被覆されたRuO2を、以下の抵抗体ペーストの配合においてガラス#33(表2)と配合した:
【0073】
【表11】

【0074】
抵抗体ペーストは、高剪断ミキサーを使用して750RPMで5分間混合した。次にペーストを、以下のパスを使用して、圧力制御されたロールミルでロールミル粉砕した:2×開放、2×100psi、2×180psi、2×250psi。Ag系導体パッドであらかじめ終端処理した4つの1インチ×1インチアルミナ基体チップ上に、ペーストを乾燥時18ミクロンで印刷した。各チップの8つの印刷した抵抗体からデータを収集した。報告される値は平均されている。サンプルは850℃で焼成した。焼成した抵抗体ペースト8−1Ω/□の単位で測定したシート抵抗は29,530Ω(CV%=1.64)であった。高温TCR(HTCR)は−5(シグマ=0.4)であり低温TCR(CTCR)は−90(シグマ=0)であった。この抵抗体実施例は、実施例4(抵抗体ペースト4−1)に匹敵するが、2つの点が異なる。実施例8は、非晶質SiO2添加剤を有し、実施例4と同じガラス、および抵抗体ペースト1と同じ体積%の被覆された導電体含有率を有する。被覆された導電体は、実施例1と同じ方法で作成したが、それぞれ11.93m2/gおよび12.40m2/gとわずかに異なる表面積を有する。
【0075】
実施例9:非晶質SiO2添加剤を有するガラス#4(表1)で被覆されたRuO2の熱処理許容範囲
この実施例は、850℃で焼成した場合のデータを有する実施例5で前述したものであった。抵抗体配合物は、表3の抵抗体ペーストDである。このサンプルに関して、800℃、850℃、および900℃の焼成温度でさらなるデータを収集した。データを以下に示す:
【0076】
【表12】

【0077】
Rの単位は、0.8×0.8mm抵抗体の場合のΩ/□である。TCRはppm/℃の単位で報告される。
【0078】
比較例10:被覆されたRuO2(5000ppmのK)、(表2のガラス30を使用)
この実施例で使用した抵抗体用導電体は、実施例CP−1に記載されるようにして被覆した。5000ppmのKが被覆されたRuO2を、2つの抵抗体ペーストの配合においてガラス#30(表2)と配合した:
【0079】
【表13】

【0080】
2つの抵抗体ペーストは、高剪断ミキサーを使用して750RPMで5分間混合した。次にペーストを、以下のパスを使用して、圧力制御されたロールミルでロールミル粉砕した:2×開放、2×100psi、2×180psi、2×250psi。Ag系導体パッドであらかじめ終端処理した4つの1インチ×1インチアルミナ基体チップ上に、ペーストを乾燥時18ミクロンで印刷した。各チップの8つの印刷した抵抗体からデータを収集した。報告される値は平均されている。サンプルは850℃で焼成した。抵抗体ペースト10−1のΩ/□の単位で測定したシート抵抗は1882.8Ω(CV%=5.44)であった。高温TCR(HTCR)は813.7(シグマ=3.97)であり、低温TCR(CTCR)は833.8(シグマ=4.43)であった。抵抗体ペースト10−2のΩ/□の単位で測定したシート抵抗は117.5Ω(CV%=5.26)であった。HTCRは913.6(シグマ=8.92)であり、CTCRは955.7(シグマ=4.33)であった。
【0081】
表2のガラス#30は、B23を有さず本発明による他のガラス組成物よりもSiO2量が多いガラスの一例である。これらの試験は、不適切なガラスを選択したことによる不適当な抵抗体配合物の例を示している(TCRが大きすぎ、統計値がより悪い値である)。ガラス#30(表2)は、Kで被覆されたRuO2導電体に適した本発明のガラス組成物の例ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1種類以上の被覆されたルテニウム含有成分であって、前記ルテニウム含有成分が、酸化ルテニウムおよび酸化ルテニウム水和物からなる群から選択される1種類以上の成分を含み、前記被覆が、1種類以上の酸性成分、1種類以上の塩基性成分、またはそれらの組み合わせを含む、被覆されたルテニウム含有成分と;
(b)1種類以上のガラスフリットと;
(c)有機ビヒクルと
を含む、組成物。
【請求項2】
被覆されたルテニウム含有成分であって、前記ルテニウム含有成分が、酸化ルテニウムおよび酸化ルテニウム水和物からなる群から選択される1種類以上の成分を含み、前記被覆が、1種類以上の酸性成分、1種類以上の塩基性成分、またはそれらの組み合わせを含む、被覆されたルテニウム含有成分。
【請求項3】
前記酸性成分がB、F、P、Se、またはそれらの組み合わせから選択され、前記塩基性成分がLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記被覆がAg、Al、Cu、Nb、Si、Ta、Ti、Zn、Zr、またはそれらの組み合わせから選択される非酸性または非塩基性成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記1種類以上の被覆されたルテニウム含有成分が、前記1種類以上のルテニウム含有成分の表面上への、噴霧乾燥、インシピエントウェットネス、または沈殿によって被覆される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記1種類以上の被覆されたルテニウム含有成分が、前記1種類以上のルテニウム含有成分の表面上への、噴霧乾燥、インシピエントウェットネス、または沈殿によって被覆される、請求項2に記載の被覆されたルテニウム含有成分。
【請求項7】
前記1種類以上のガラスフリットが実質的に無鉛である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記1種類以上のガラスフリットがアルカリ土類酸化物を含み、前記アルカリ土類酸化物が、前記1種類以上のガラスフリットの重量を基準にして約12重量%〜約54重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記1種類以上のガラスフリットが、前記1種類以上のガラスフリットの重量を基準にして3〜37重量%のSiO2、3〜13重量%のAl23、および11〜38重量%のB23からなる群から選択される1種類以上の成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記1種類以上のガラスフリットが、アルカリ土類ホウケイ酸ガラス、アルカリ土類ホウアルミノケイ酸ガラス、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記1種類以上のガラスフリットが、アルカリ金属およびZnOからなる群から選択される1種類または複数成分を実質的に含有しない、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記1種類以上のガラスフリットが、CuO、TiO2、SiO2、ZrSiO4、Ta25、Nb25、MnO2、およびAg2Oからなる群から選択される1種類の化合物をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
抵抗体の製造方法であって:
(a)ルテニウム含有成分を被覆して、被覆されたルテニウム含有成分を形成するステップであって、前記ルテニウム含有成分が、酸化ルテニウムおよび酸化ルテニウム水和物からなる群から選択される1種類以上の成分を含み、前記被覆が、1種類以上の酸性成分、1種類以上の塩基性成分、またはそれらの組み合わせを含むステップと、
(b)前記被覆されたルテニウム含有成分を焼成して、被覆され、焼成されたルテニウム含有成分を形成するステップと、
(c)前記被覆され、焼成されたルテニウム含有成分をガラスフリットおよび有機ビヒクルと混合してペーストを形成するステップと;
(d)前記ペーストを印刷および焼成して厚膜抵抗体を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
前記被覆され、焼成されたルテニウム含有成分が約5m2/g〜約25m2/gの表面積を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
完成した抵抗体が、(a)約10kΩ/□〜約10MΩ/□のシート抵抗、および(b)約−100ppm/℃〜約+100ppm/℃の範囲内のTCR、およびそれらの組み合わせから選択される性質を有する、請求項13に記載の方法によって形成された抵抗体。

【公表番号】特表2011−523489(P2011−523489A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505223(P2011−505223)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/040937
【国際公開番号】WO2009/129452
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】