表面放出ファイバ・レーザ
一態様では、本開示が、導波路軸に沿って延びるコアと、コアを取り囲む閉じ込め領域とを含む、導波路軸に沿って延びるファイバ導波路を含む物品を開示する。閉じ込め領域は、導波路軸に沿って第1の波長λ1の放射を導くように構成されており、ある経路に沿ってそれ自体に入射した第2の波長λ2の放射の少なくとも一部を透過させるように構成されており、λ1とλ2とは異なる。コアは、λ1の放射と相互作用して、λ2の放射を発生させるように選択されたコア材料を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はファイバ・レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
米国特許法119(e)(1)の下、本出願は、その内容の全体が本願明細書に援用される2006年1月20日出願の「SURFACE−EMITTING FIBER LASER」という名称の米国特許仮出願第60/760519号の優先権を主張するものである。
【0003】
光ファイバは、明確に規定された伝搬軸を有し、一般にコアとコアを取り囲むクラッドとを含む導波路である。コア材料はクラッド材料よりも高い屈折率を有し、光ファイバは、コア−クラッド界面における全内面反射により放射をコアの中に閉じ込めることによって、その放射を導波路軸に沿って導く。ファイバ・レーザは一般に、コアに利得媒質がドープされた光ファイバからなる。ドープされた1本のファイバの両端に配置された1対の反射器(例えばミラーまたはファイバ・ブラッグ格子)が、その中で光フィードバックが起こり得る光共振器を画定する。動作中、利得媒質は、例えばコアの中に導かれたポンプ放射によってポンピングされる。ポンピングされた利得媒質からの放射の放出は、反射器と反射器との間で前後に導かれ、コアに閉じ込められている間に、光共振器内でのフィードバックによって増幅される。一般に、この放射の一部は、少なくとも一方の反射器によって透過され、ファイバの端からファイバを出る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、端からではなくその外周からレーザ放射を放出するファイバ・レーザに関する。実施形態は、ファイバ軸に沿ってポンプ放射を導くことと、横方向のレーザ放射を閉じ込めることの2つの目的を有するフォトニック・バンドギャップ放射閉じ込め構造を利用したファイバ導波路を開示する。
【0005】
第1の態様では、本開示が、導波路軸に沿って延びるコアと、コアを取り囲む閉じ込め領域とを含む、導波路軸に沿って延びるファイバ導波路を含む物品を開示する。閉じ込め領域は、導波路軸に沿って第1の波長λ1の放射を導くように構成されており、ある経路に沿ってそれ自体に入射した第2の波長λ2の放射の少なくとも一部(例えば約10%以上、約25%以上、約50%以上、約75%以上、約90%以上)を透過させるように構成されており、λ1とλ2とは異なる。コアは、λ1の放射と相互作用して、λ2の放射を発生させるように選択されたコア材料を含む。
【0006】
この物品の実施形態は、以下のうちの1つまたは複数の特徴を含むことができる。例えば、ファイバ導波路を、十分なパワーのλ1の放射がコアに導かれたときに、導波路軸に対して直角の方向にλ2の放射を誘導放出するように構成することができる。コアに導かれたλ2の放射が直線偏光されているときには、誘導放出が、導波路軸に関して非対称であり得る。例えば、非対称放出は、導波路軸に関して双極子形の強度パターンを有することができる。誘導放出は、導波路軸に沿って約10λ2以上にわたって延びるファイバ導波路の部分に沿って起こすことができる。いくつかの実施形態では、誘導放出が、導波路軸に沿って約1mm以上にわたって延びるファイバ導波路の部分に沿って起こる。
【0007】
コアは、1μmからから約1,000μmまでの範囲の直径を有することができる。このコアを、λ2またはλ2に近い波長の1つまたは複数の共振器モードをサポートするように構成することができる。この物品は、上記モードの少なくとも1つに関して、約500以上の品質ファクタQ(quality factor)を有することができる。
【0008】
閉じ込め領域は、導波路軸に対して直角の方向に低屈折率領域と交互に並んだ複数の高屈折率領域を有することができる。これらの複数の低屈折率領域は、閉じ込め領域のホーリー(holey)部分に対応することができる。いくつかの実施形態では、交互に並んだ複数の高屈折率部分および低屈折率部分が、高い屈折率を有する第1の材料層と低い屈折率を有する第2の材料層の互層に対応する。この互層は、導波路軸に関して螺旋形の断面を有する構造を画定することができる。この螺旋形構造は、コアの周りを複数回にわたって巻いた異なる材料の少なくとも2つの層からなる多層構造を含むことができる。閉じ込め領域を、λ1の放射に対するフォトニック・バンド・ギャップを提供するように構成することができる。閉じ込め領域を、十分なパワーのλ1の放射がコアに導かれたときにλ2でレーザ発振させるのに十分な光フィードバックを提供するのに十分なλ2の放射を反射するように構成することができる。
【0009】
λ1およびλ2は、約300nmから約15,000nmまでの範囲とすることができる。
コア材料は利得媒質を含むことができる。利得媒質は有機材料とすることができる。利得媒質は色素を含むことができる。いくつかの実施形態では、コア材料が基質材料を含み、利得媒質が、基質材料の中に分散されている。基質材料はポリマーとすることができる。いくつかの実施形態では、コア材料が室温で固体材料である。あるいは、コア材料を室温で流体(例えば液体)とすることもできる。
【0010】
ファイバ導波路は、コアがコア材料を含まない区間を含むことができる。
いくつかの実施形態では、この物品が、λ1の放射を発生させるように構成され、λ1の放射をコアに導くよう配置された光源を含む。光源はレーザ光源とすることができる。
【0011】
一般に、他の態様では、本開示が、導波路軸に沿って波長λ1の放射を導くように構成されており、導波路軸に沿って延びるコアからなり、このコアが、λ1の放射と相互作用して、λ2の放射を発生させるように選択されたコア材料を有するファイバ導波路を提供することを含む方法を開示する。この方法はさらに、ファイバ導波路から導波路軸に対して直角の方向にλ2の放射を放出させるのに十分な強度のλ1の放射をコアの中へ導くことを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、この方法が、λ2の放射を放出するファイバ内の位置を変更するために、ファイバ内の利得媒質の位置を移動させることを含むことができる。
この方法は、上で論じた物品を使用して実施することができ、上で論じた物品に関連した特徴のうちの1つまたは複数の特徴を含むことができる。
【0013】
利点は他にもあるが、実施形態は特に、レーザ放出波面の位置、方向および偏光の制御を提供するファイバ・レーザを含む。このファイバ・レーザは本来的に、さまざまな波長にスケーリング可能である。
【0014】
実施形態は、半径方向のレーザ放出の遠隔供給を含むさまざまな用途に使用することができる。
実施形態はさらに、ファイバ導波路の長さに沿った利得媒質の位置の制御、したがって放出位置の制御を可能にする。
【0015】
ある実施形態では、ファイバ・レーザが、大面積からの横面レーザ放出を提供することができる。このような実施形態は例えば、低プロファイルのレーザ・ジオメトリを必要とする内視鏡光線療法などの用途に使用することができる。
【0016】
実施形態は、多ファイバ、大面積、低プロファイルの柔軟なコヒーレント光源をさまざまな物品に単純に組み込むことを可能にする。例えば、ファイバ・レーザを編んで布地にし、レーザ放出が可能な布地を提供することができる。
【0017】
いくつかの文献が本願明細書に援用される。矛盾する場合には本願明細書が優先する。本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細が、添付図面および以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴および利点は、以下の説明、図面および請求項から明らかとなろう。
【0018】
各種図面の同様の参照符号は同様の要素を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1Aおよび1Bを参照すると、ファイバ・レーザ100は、導波路軸に沿って延びるコア120と、コアを取り囲む閉じ込め領域110(例えば高屈折率層と低屈折率層との互層)とを含む。閉じ込め領域110は、閉じ込め領域を機械的に支持する支持層150によって取り囲まれている。コア120は、利得媒質と、その中に利得媒質が分散された基質とを含む。
【0020】
動作中、コア120の利得媒質は、ポンプ波長λpの放射をコアの中に導くことによってポンピングされる。図1Bに放射線101として示されたポンプ放射は、閉じ込め領域110によってコア120に閉じ込められ、利得媒質によって吸収される。利得媒質は波長λlの光を放出し、この放出光の少なくとも一部は、光フィードバックを提供する閉じ込め領域110によって反射される。放出された放射の少なくとも一部は閉じ込め領域を透過し、ファイバの側壁からファイバ100を出る。半径方向に(すなわち導波路軸199に対して直角に)伝搬するλlの放射が、コア120の中の放射線102によって示されている。ファイバ・レーザ100によって半径方向に放出された光は放射線103によって示されている。ポンプ放射の強度がレーザ発振しきい値よりも大きい場合、利得媒質内で誘導放出が起こり、ファイバ100の側面からのλlの放出はレーザ放射である。
【0021】
このフォトニック・バンド・ギャップ構造は、軸波ベクトルの増大を伴うより短い波長(より高い周波数)へのバンド・エッジの特性シフトによって可能になる2つの役割を果たす。軸波ベクトルk=0に対して定義される垂直入射バンドギャップは、半径方向のレーザ発振作用を実現するために必要な光フィードバックを提供する。同時に、ライト・ライン(light line)に近い軸波ベクトルを有するブルー・シフトしたバンドギャップが、ポンプ放射の誘導を担う。
【0022】
一般に、垂直に入射する放射(例えば半径方向に導かれた放射)に対して、フォトニック・バンド・ギャップ構造は、波長バンドΔλpbgに対して高い(例えば100%に近い)反射率を有する反射スペクトルを示す。Δλpbgは一般に、閉じ込め領域の構造および組成に依存する(後の説明を参照されたい)。閉じ込め領域が、レーザ放出のために必要な光フィードバックを提供し、同時に、ファイバの縁からのレーザ放射の結合を可能にするλlの十分な透過を提供するためには、ポンピングされた利得媒質から放出される波長バンドがΔλpbgと部分的に重なるように、Δλpbgが選択されなければならない。
【0023】
したがって、利得媒質、閉じ込め領域の構造およびポンプ波長は全て、電磁スペクトルの紫外、可視または赤外部分の波長とすることができる所望のレーザ波長λlに基づいて選択される。
【0024】
λpは一般に、使用される利得媒質のタイプによって決まる。λpは一般にλlよりも短く、電磁スペクトルの紫外、可視または赤外部分の波長とすることができる。ポンプ放射は、λpの放射を発生させることができるポンプ放射源によって提供される。いくつかの実施形態では、ポンプ放射源が、λpの放射だけを供給する単色源である。ある実施形態では、ポンプ放射源が、λpを含む複数の波長の放射を供給する広帯域源である。ポンプ放射源は、レーザ光源(例えば固体レーザ、ガス・レーザ、ダイオード・レーザ、ファイバ・レーザ)、または通常光源(例えば発光ダイオードなどの固体光源、蛍光源、白熱光源)とすることができる。ポンプ放射は連続的にまたはパルスとして供給し得る。
【0025】
ポンプ放射の入力パワーは一般に、ファイバ・レーザ100からの所望のレーザ放出強度に基づいて選択される。したがって、ポンプ放射は、ファイバ・レーザ100をレーザ発振させるのに十分な(すなわちレーザ発振しきい値よりも高い)パワーで供給される。ポンプ放射パワーは一般、ファイバ・レーザに損傷を与えるしきい値よりも低い。
【0026】
ポンプ放射は、偏光または非偏光とすることができる。ある実施形態では、ポンプ放射が直線偏光される。直線偏光されたポンプ放射は、半径方向に異方性のレーザ放出を与える。例えば、レーザ放出は、直線偏光されたポンプ放射の偏光方向を向いた(すなわち電界ベクトルに平行な)双極子状の波面を有することができる。
【0027】
次に、ファイバ・レーザ100の構造および組成について説明すると、コア120は一般に、希望に応じて変更し得る直径を有する。一般に、入力ポンプ・パワーが一定の場合、コアが小さいほど、ポンプ放射のパワー密度は大きくなり、したがってしきい値は低くなる。したがって、コアのサイズは、ポンプ放射源の特性に基づいて、動作中に所望のポンプ放射パワー密度が得られるように選択することができる。さらに、コアの直径は、導かれたポンプ放射および/または放出された放射の所望のモード特性に基づいて選択することができる。いくつかの実施形態では、コアの直径が、ファイバがλpの単一モード・ファイバとなるように選択される。
【0028】
実施形態では、コアの直径をおよそλp程度とすることができる。あるいは、ある実施形態では、コアの直径を、約5λp以上(例えば約10λp以上、約20λp以上、約30λp以上、約40λp以上、約50λp以上、約100λp以上)など、より大きなλpとすることができる。いくつかの実施形態では、コアの直径が、約1μmから約1,000μmまでの範囲までの範囲にある(例えば約10μm以上、約50μm以上、約100μm以上、約500μm以下、約200μm以下)。
【0029】
ポンプ放射のパワー密度は、レーザ発振に必要なしきい値パワーよりも高くなければならないが、ファイバが損傷するしきい値を超えてはならない。
利得媒質は一般に、所望の放出波長λlに基づいて選択される。利得媒質は、有機利得媒質または無機利得媒質とすることができる。有機利得媒質の例には、LDS698、DCM、クマリン(coumarin)503、クマリン500、クマリン540A、ローダミン(rhodamine)590、オキサジン(oxazine)720、オキサジン725、LD700(全てエキシトン・インコーポレーテッド社(Exciton,Inc.)[米国オハイオ州デイトン(Dayton)所在]から市販されている)などの有機色素、量子ドット(quantum dot)、共役ポリマーが含まれる。無機利得媒質の例には、希土類イオン:エルビウム、ネオジムおよびプラセオジムが含まれる。
【0030】
前述のとおり、ファイバ・レーザ100では、利得媒質が基質材料の中に分散されている。一般に、基質材料は、希望に応じて変更することができる。基質材料は一般に、利得媒質に対する適合性、およびファイバ・レーザの形成において使用される工程に対する適合性に基づいて選択される。基質材料はさらに、その光学特性、特にλpおよびλlに基づいて選択される。例えば、基質材料は一般に、λpおよびλlの比較的に低い吸収を有していなければならない。基質材料は固体または液体材料を含むことができる。固体基質材料の例には、ポリマー(例えば単独重合体または共重合体)および無機ガラスが含まれる。液体基質材料の例には水および有機液体が含まれる。
【0031】
一般に、基質材料中の利得媒質の濃度は、希望に応じて変更することができる。一般に、利得媒質の濃度が高いほど、レーザ発振に必要なしきい入力パワー値は小さくなる。ある種の有機色素など一部の利得媒質では、濃度を非常に高くすると、分子の物理的な近接により放出が低下することがある。いくつかの実施形態では、利得媒質の濃度が10ppm以上(例えば約50ppm以上、約100ppm以上、約500ppm以上、約1,000ppm以上)である。
【0032】
次に、閉じ込め領域の構造および組成について説明すると、閉じ込め領域110は、異なる屈折率を有する材料(例えばポリマー、ガラス)の連続する互層130および140を含む。連続層130および140は、それに沿ってフォトニック結晶ファイバ導波路が電磁放射を導く軸199の周りに螺旋を形成する。一方の層、例えば層140は、屈折率nHおよび厚さdHを有する高屈折率層であり、この層、例えば層130は、屈折率nLおよび厚さdLを有する低屈折率層であり、ここでnH>nLである(例えばnH−nLは、0.01以上、0.05以上、0.1以上、0.2以上、0.5以上またはそれ以上とすることができる)。層130および140は軸199に周りに螺旋を形成するため、軸199から延びる半径方向断面160はそれぞれの層を2度以上横切り、高屈折率層と低屈折率層の互層を含む半径方向プロファイルを提供する。
【0033】
図1Cを参照すると、光学的に、これらの螺旋形の層は、半径方向断面160に沿った屈折率の周期的な変動を与え、周期は、層130および層140の光学的厚さに対応する。すなわち、閉じ込め領域110は2重層光学的周期nHdH+nLdLを有する。
【0034】
一般に、層130および140の厚さ(dHおよびdL)ならびに光学的厚さ(nHdHおよびnLdL)は、閉じ込め領域の所望の光学特性に応じて変更することができる。いくつかの実施形態では、層130の光学的厚さと層140の光学的厚さが同じである。層の厚さは通常、ファイバの所望の光学性能に基づいて(例えばλpおよびλlに従って)選択される。層の厚さと光学性能との間の関係については後に論じる。層の厚さは一般に、1ミクロン未満から数十ミクロンである。例えば、層130および140の厚さは、約0.1μmから20μm(例えば約0.5から5μm)とすることができる。
【0035】
閉じ込め領域110は一般に、さまざまな数(例えば約10以上、約20以上、約30以上、約40以上)の2重層を含むことができる。
層140は一般に、カルコゲン・ガラスなどの高屈折率材料を有する材料を含む。層130は、層140の高屈折率材料よりも低い屈折率を有する材料を含み、一般に機械的に柔軟である。例えば、層130は、PEIなどのポリマーから形成することができる。層130および層140を形成する材料は共線引きすることができることが好ましい。
【0036】
閉じ込め領域110の層130および140の組成に関しては、高屈折率部分(例えば層140)を形成するのに適当な高い屈折率を有する材料には、カルコゲン・ガラス(例えば硫黄、セレンおよび/またはテルルなどのカルコゲン元素を含むガラス)、重金属酸化物ガラス、非晶質合金ならびにこれらの組合せが含まれる。
【0037】
カルコゲン元素の他に、カルコゲン・ガラスは、以下の1種または数種の元素を含むことができる:ホウ素、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、イリジウム、スズ、アンチモン、タリウム、鉛、ビスマス、カドミウム、ランタンおよびハロゲン化物(フッ素、塩素、臭化物、ヨウ素)。
【0038】
カルコゲン・ガラスは、2元または3元ガラス、例えば、As−S、As−Se、Ge−S、Ge−Se、As−Te、Sb−Se、As−S−Se、S−Se−Te、As−Se−Te、As−S−Te、Ge−S−Te、Ge−Se−Te、Ge−S−Se、As−Ge−Se、As−Ge−Te、As−Se−Pb、As−S−Tl、As−Se−Tl、As−Te−Tl、As−Se−Ga、Ga−La−S、Ge−Sb−Se、あるいはこれらに元素に基づくAs−Ga−Ge−S、Pb−Ga−Ge−Sなどの複雑な多成分ガラスとすることができる。カルコゲン・ガラスのそれぞれの元素の比は変更することができる。例えば、ヒ素5〜30モル%、ゲルマニウム20〜40モル%およびセレン30〜60モル%を含む適当な高い屈折率を有するカルコゲン・ガラスを形成することができる。
【0039】
高屈折率の重金属酸化物ガラスの例には、Bi2O3−、PbO−、Tl2O3−、Ta2O3−、TiO2−およびTeO2−を含むガラスが含まれる。
適当な高い屈折率を有する非晶質合金には、Al−Te、R−Te(Se)(R=アルカリ)が含まれる。
【0040】
低屈折率部分(例えば層130)を形成するのに適当な低い屈折率を有する材料には、酸化物ガラス、ハロゲン化物ガラス、ポリマーおよびこれらの組合せが含まれる。カルボナート(例えばポリカーボネート(PC))、スルホン(例えばポリ(エーテルスルホン)(PES))、エーテルイミド(例えばポリ(エーテルイミド)(PEI))およびアクリラート(例えばポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA))類のポリマーならびにフルオロポリマーを含むポリマーも、適合した候補である。
【0041】
適当な酸化物ガラスには、以下の1種または数種の化合物を含むガラスが含まれる:M2O 0〜40モル%(MはLi、Na、K、RbまたはCs)、M’O 0〜40モル%(M’はMg、Ca、Sr、Ba、ZnまたはPb)、M”2O3 0〜40モル%(M”はB、Al、Ga、In、SnまたはBi)、P2O5 0〜60モル%、およびSiO2 0〜40モル%。
【0042】
ファイバ・レーザの諸部分は、任意で、他の材料を含むことができる。例えば、どの部分も、その部分の屈折率を変化させる1種または数種の材料を含むことができる。部分は、その部分の屈折率を増大させる材料を含むことができる。このような材料には例えば、ホウケイ酸ガラスを含む部分の屈折率を増大させることができる酸化ゲルマニウムが含まれる。あるいは、部分は、部分の屈折率を低下させる材料を含むことができる。例えば、酸化ホウ素は、ホウケイ酸ガラスを含む部分の屈折率を低下させることができる。
【0043】
ファイバ・レーザの諸部分は均質または不均質とすることができる。例えば、1つまたは複数の部分は、不均質な部分を形成するためにホスト材料に埋め込まれた1種の材料のナノ粒子(例えば導かれた波長の光を最小限に散乱させる十分に小さな粒子)を含むことができる。これの例は、高屈折率カルコゲン・ガラスのナノ粒子をポリマー・ホストに埋め込むことによって形成された高屈折率ポリマー複合体である。他の例には、無機ガラス基質中のCdSeおよび/またはPbSeナノ粒子が含まれる。
【0044】
ファイバ導波路の諸部分は、ファイバのその部分の機械的、レオロジー的および/または熱力学的ふるまいを変化させる材料を含むことができる。例えば、1つまたは複数の部分が可塑剤を含むことができる。部分は、結晶化を抑制し、またはファイバ内での他の望ましくない相に関するふるまいを抑制する材料を含むことができる。例えば、ポリマー内での結晶化は、架橋材(例えば感光性架橋材)を含めることによって抑制することができる。他の例では、ガラス−セラミック材料が所望の場合に、TiO2、ZrO2などの核生成剤を材料に含めることができる。
【0045】
部分はさらに、ファイバ内の隣接部分間(例えば低屈折率層と高屈折率層の間)の界面に作用するように設計された化合物を含むことができる。このような化合物には接着促進剤および相溶化剤が含まれる。例えば、シリカ・ベースのガラス部分とポリマー部分との間の接着を促進するために、オルガノシラン化合物を使用することができる。例えば、リンまたはP2O5は、カルコゲン・ガラスと酸化物ガラスの両方と相溶し、これらのガラスから形成された部分間の接着を促進することができる。
【0046】
線引き工程を使用して強健なファイバ導波路を製造するときには、所望の光学特性を有する材料を組み合わせたものが全て適当なものになるとは限らない。一般に、レオロジー的に、熱機械的におよび物理化学的に適合する材料を選択しなければならない。フォトニック結晶ファイバ導波路の共線引きの追加の説明が、2002年7月16日に出願された「METHOD OF FORMING REFLECTING DIELECTRIC MIRRORS」という名称の米国特許出願第10/196,403号、および2003年12月10日に出願された「FIBER WAVEGUIDES AND METHODS OF MAKING SAME」という名称の米国特許出願第10/733,873号に出ている。これらの両文献の内容はその全体が本願明細書に援用される。
【0047】
閉じ込め領域110は、第1の波長範囲の放射を、誘電性コア120の中を導波路軸199に沿って伝搬するように導く。この閉じ込め機構は、第1の波長範囲を含むバンドギャップを形成する領域110のフォトニック結晶構造に基づく。この閉じ込め機構は屈折率によって導くものではないため、閉じ込め領域のコアに直接に隣接した部分の屈折率よりも高い屈折率をコアが有する必要はない。逆に、コア120は、閉じ込め領域110の平均屈折率よりも低い平均屈折率を有してもよい。
【0048】
閉じ込め領域110の層130および140は、ブラッグ・ファイバとして知られているものを形成する。螺旋形に巻かれたこれらの層の周期的な光学構造は、平面誘電スタック反射器(ブラッグ・ミラーとしても知られている)の互層に類似している。閉じ込め領域110の層および誘電スタック反射器の平らな互層はともに、フォトニック結晶構造の例である。フォトニック結晶構造は、ジョン・ディー・ジョアノプーロス(John D.Joannopoulos)他著「Photonic Crystals」(プリンストン・ユニバーシティ・プレス(Princeton University Press)、米ニュージャージー州プリンストン(Princeton)、1995年)に概説されている。
【0049】
本願明細書で使用されるとき、フォトニック結晶は、フォトニック結晶中にフォトニック・バンドギャップを生み出す屈折率変調を有する構造である。本願明細書で使用されるとき、フォトニック・バンドギャップは、誘電体構造の中にアクセシブル・エクステンデッド・ステート(accessible extended state)(すなわち伝搬、非局在化状態)がない波長範囲(または逆数をとって周波数範囲)である。この構造は一般に周期的な構造だが、例えばより複雑な「準結晶」を含めることもできる。フォトニック結晶を、バンドギャップ構造から外れた「欠陥」領域と組み合わせることによって、バンドギャップを、光を閉じ込め、導き、かつ/または局在化するために使用することができる。さらに、ギャップの上下の波長に対してアクセシブル・エクステンデッド・ステートがあり、これにより、(前述の構造などの屈折率によって導かれるTIR構造とは対照的に)屈折率が相対的に低い領域にさえも光を閉じ込めることができる。用語「アクセシブル」ステートは、その系のある対称性または保存の法則によって結合がもはや禁止されていない状態を意味する。例えば、2次元系では、偏光が保存され、そのため、同様の偏光の状態だけがバンドギャップから排除される必要がある。(一般的なファイバなどの)均一な断面を有する導波路では、波数ベクトルβが保存され、そのため、フォトニック結晶誘導モードをサポートするためには、所与のβを有する状態だけがバンドギャップから排除される必要がある。さらに、円筒対称性を有する導波路では、「角運動量」屈折率mが保存され、そのため、同じmを有するモードだけがバンドギャップから排除される必要がある。要するに、高対称系では、フォトニック・バンドギャップの要件が、対称性に関係なく全ての状態が排除される「完全な」バンドギャップに比べてかなり緩和される。
【0050】
したがって、EM放射はこの積層の中を伝搬することができないため、積層から形成された反射器は、フォトニック・バンドギャップ内では大きな反射性を有する。同様に、閉じ込め領域110の層は、バンドギャップ内の入射放射線に対して大きな反射性を有するため、これらの層は閉じ込めを提供する。厳密に言えば、フォトニック結晶が、バンドギャップ内で完全な反射性を有するのは、フォトニック結晶内の屈折率変調が無限の広がりを有するときだけである。それ以外では、入射放射は、フォトニック結晶の両側の伝搬モードを結合する一過性のモードを介してフォトニック結晶を「トンネリング」することができる。しかし、理論的には、このようなトンネリングの割合は、フォトニック結晶の厚さ(例えば互層の数)とともに指数関数的に低下する。それはさらに、閉じ込め領域内の屈折率コントラストの大きさとともに低下する。
【0051】
さらに、フォトニック・バンドギャップは、伝搬ベクトルの比較的に小さな領域の上にだけ広がることができる。例えば、積層は、垂直に入射した放射線に対しては大きな反射性を有するが、斜めに入射した放射線に対しては部分的にしか反射しない場合がある。「完全なフォトニック・バンドギャップ」は、全ての可能な波数ベクトルおよび全ての偏光にわたって広がるバンドギャップである。一般に、完全なフォトニック・バンドギャップは、3次元に沿った屈折率変調を有するフォトニック結晶にだけ関連付けられる。
【0052】
閉じ込め領域110などのブラッグ構成に似た構成では、高屈折率層の屈折率および厚さを変更し、かつ/または低屈折率層の屈折率および厚さを変更することができる。閉じ込め領域はさらに、1周期につき3つ以上の層(例えば1周期につき3つまたはそれ以上の層)を含む周期的な構造を含むことができる。さらに、屈折率変調は、閉じ込め領域内のファイバ半径の関数として連続的にまたは不連続に変化させることができる。一般に、閉じ込め領域は、フォトニック・バンドギャップを生み出す任意の屈折率変調に基づくことができる。
【0053】
多層構造110は半径方向軸に関して周期的な屈折率変動を有するため、この実施形態では、多層構造110がブラッグ反射器を形成する。適当な屈折率変動はおよそ1/4波長条件である。垂直入射に関しては、最大バンド・ギャップは、それぞれの層が等しい光学的厚さλ/4を有する、すなわち等価にはdH/dL=nL/nHである「1/4波長」スタックに対して得られることはよく知られている。ここで、dおよびnはそれぞれ、高屈折率層および低屈折率層の厚さおよび屈折率を指す。これらはそれぞれ層240および230に対応する。垂直入射はβ=0に対応する。円筒導波路では、所望のモードは一般にライト・ラインω=cβの近くにある(大コア半径限界では、最も低い次数のモードは本質的に、z軸、すなわち導波路軸に沿って伝搬する平面波である)。この場合、1/4波長条件は下式のようになる。
【0054】
【数1】
1/4波長条件は円筒の幾何形状によって変更され、それは、それぞれの層の光学的厚さがその半径方向座標とともになめらかに変化することを要求する可能性があるため、厳密に言えば、この式は正確に最適ではないかもしれない。それにもかかわらず、この式は、特に中間バンドギャップ波長よりも大きなコア半径に対して、多くの望ましい特性を最適化する優れた指針を提供することを本発明の発明者らは見出した。
【0055】
閉じ込め領域110は、螺旋構造を提供するためにコアの周りに複数回巻き付けられた多層構造を含むが、他の構成も可能である。例えば、いくつかの実施形態では、閉じ込め領域が、螺旋層の代わりに、または螺旋層に加えて、環状層を含むことができる。ある実施形態では、閉じ込め領域が2次元屈折率変調を含むことができる。例えば、エム・ディー・ニールセン(M.D.Nielsen)他「Low−loss photonic crystal fibers for data transmission and their dispersion properties」、Opt.Express、12、1372(2004)に記載されているものなどのホーリー・ファイバを使用することができる。
【0056】
以前に説明したとおり、支持層150は、閉じ込め領域110に対する機械的支持を提供する。支持層150の厚さは希望に応じて変更することができる。いくつかの実施形態では、支持層150が閉じ込め領域110よりもかなり厚い。例えば、支持層150は、閉じ込め領域110の約10倍以上(例えば約20倍超、約30倍超または約50倍超)の厚さを有することができる。
【0057】
一般に、支持層150の組成は通常、閉じ込め領域110に対する所望の機械的支持および保護を提供し、同時に、レーザ放射がファイバの側面から放出されるようλlに関して十分に透明であるように選択される。ある実施形態では、支持層150が、閉じ込め領域110とともに共線引きすることができる材料から形成される。いくつかの実施形態では、支持層を、閉じ込め領域110を形成するのに使用された材料と同じ材料(1種または数種)から形成することができる。例えば、層130がポリマーから形成される場合、支持層150は、同じポリマーから形成することができる。
【0058】
一般に、ファイバ・レーザは、異なるさまざまな方法で製造することができる。いくつかの実施形態では、平らな多層物品を丸めて螺旋構造とし、この螺旋構造から得られたプリフォームからフォトニック結晶ファイバを線引きすることによって、レーザ100などのファイバ・レーザを製造することができる。線引きの後、ファイバの中空コアの中に利得媒質を導入することができる。
【0059】
図2Aを参照すると、プリフォームを調製するために、ポリマー・フィルム210の表面211にガラスが付着される220。ガラスは、熱蒸着、化学蒸着またはスパッタリングを含む方法によって付着させることができる。図2Bを参照すると、この付着工程は、ポリマー・フィルム210上のガラス層230からなる多層物品240を与える。
【0060】
図2Cを参照すると、この付着工程に続いて、螺旋管を形成するために、マンドレル255(例えば、ホウケイ酸ガラスなどの中空ガラスまたはポリマー管)の周りに多層フィルム240が巻き付けられる。次いで、プリフォーム被覆物を形成するために、螺旋管の周りに、数枚(例えば3から10枚)のポリマー・フィルムが巻き付けられる。いくつかの実施形態では、このポリマー・フィルムが、多層物品を形成するのに使用されたポリマーまたはガラスと同じポリマーまたはガラスでできている。真空下で、このプリフォーム被覆物が、多層フィルム240および螺旋管の周りに巻き付けられたフィルムを形成するポリマー(1種または数種)およびガラス(1種または数種)のガラス転移温度よりも高い温度まで加熱される。プリフォーム被覆物は、螺旋管の層が互いに融合し、螺旋管が、その周りに巻き付けられたポリマー・フィルムに融合するのに十分な時間、加熱される。加熱温度および加熱時間はプリフォーム被覆物の組成に左右される。例えば、多層フィルムがAs2S3およびPEIからなり、被覆フィルムがPEIからなる場合には、一般に、200〜350℃(例えば約260℃)で15〜20分(例えば約18分)の加熱で十分である。この加熱は、さまざまな層を互いに融合させ、螺旋管および被覆フィルムを統合させる。統合した構造が図2Dに示されている。螺旋管は統合して、丸められた多層フィルム240に対応する多層領域260になる。巻き付けられたポリマー・フィルムは統合して、一体の支持クラッド270になる。統合されたこの構造は、マンドレル255の中空コア250を保持している。
【0061】
支持クラッド270を提供するために螺旋管の周りにポリマー・フィルムを巻き付ける代わりに、螺旋管の外径に一致した内径を有する中空管に螺旋管を挿入することもできる。
【0062】
この統合された構造からマンドレル255が除去されて、中空プリフォームが提供され、この中空プリフォームは次いで線引きされてファイバとなる。プリフォームは、最終的なファイバの組成および(例えばコアの半径と閉じ込め領域の層の厚さとの間の)相対寸法と同じ組成および相対寸法を有する。ファイバの絶対寸法は、使用される線引き比によって決まる。長いファイバ(例えば最長数千メートル)を線引きすることができる。次いで、線引きされたファイバを所望の長さに切断することができる。
【0063】
マンドレルが螺旋管に対する堅固な支持を提供するように、統合は、マンドレルのガラス転移温度よりも低い温度で実施されることが好ましい。これは、真空下で多層フィルムがつぶれないことを保証する。マンドレルの組成は、統合後にマンドレルが多層管の最も内側の層から外れるように選択することができる。あるいは、統合中にマンドレルが多層管の最も内側の層に付着する場合には、マンドレルを化学的に除去する、例えばエッチングによって除去することができる。例えば、マンドレルがガラス毛細管である実施形態では、プリフォームを形成するために、例えばフッ化水素酸を使用してマンドレルをエッチングすることができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、ポリマー・フィルム210の両面にガラスをコーティングすることができる。それぞれのガラス層の厚さが、一面だけに付着させたガラス層の厚さの半分ですむため、その方が有利なことがある。一般に、ガラス層が薄いほど、ガラス層は、多層フィルムを丸める間に起こり得る機械応力損傷を受けにくくなる。
【0065】
いくつかの実施形態では、2枚以上の多層フィルムを調製し、それらを積み重ねてから丸めることができる。このようにすると、フィルムのサイズを増大させることなく閉じ込め領域の層の数を増やすことができる。
【0066】
利得媒質は、プリフォームからファイバを線引きする前または後にコアに導入することができる。いくつかの実施形態では、例えば、プリフォームの中に利得媒質を導入し、ファイバとともに共線引きすることができる。このような場合、基質材料は、ファイバの残りの部分を形成するために使用される材料とともに共線引きすることができる材料でなければならない。
【0067】
あるいは、線引きした後でファイバの中空コアの中に利得媒質を導入することもできる。例えば、基質材料を、コアの中に導入する前に利得媒質を分散させ、または溶解した液体とすることができる。この液体は、ファイバの一端からコアに導入し、次いで、毛管作用または加圧によってファイバの中に引き入れることができる。任意で、コアの中に導入した後に基質材料を凝固させることができる。例えば、ある実施形態では、基質材料を冷却することによって基質材料を凝固させることができる。あるいは、またはそれに加えて、ファイバのコアの中に配置した後に、基質材料を(例えば化学線または熱に当てることによって)重合させることができる。
【0068】
一般に、利得媒質は、フォトニック結晶ファイバの全長に沿って、あるいはファイバの全長の1つまたは複数の部分だけに沿って、コアの中に挿入することができる。さらに、利得媒質は、固相、液相または気相とすることができる。時間の経過とともに、利得媒質の相を、ファイバの中で変化させることもできる。いくつかの実施形態では、ファイバ・レーザの動作前、動作中および/または動作後に、ファイバ内の利得媒質の位置を、ファイバの長さに沿って調整可能に配置することができる。例えば、図3を参照すると、システム300は、ファイバ・レーザ301と、ポンプ放射源320(例えばレーザ)と、ファイバ・レーザの端に結合された圧力変更装置330とを含む。ファイバ・レーザ301は、1本のフォトニック結晶ファイバ305を含み、ファイバ305の部分310が、コアの中に利得媒質を含む。動作中、ポンプ放射源320は、ファイバ・レーザ301にポンプ放射321を供給する。ポンプ放射は、部分310の中の利得媒質と相互作用して、レーザ放射350を発生させ、レーザ放射350は、ファイバ・レーザ301の縁から放出される。利得媒質は基質の中に分散されており、基質は、ファイバ内の圧力に応じて、ファイバ内の位置を変えることができる。したがって、動作中に、使用者は、圧力変更装置330を使用してファイバ内の圧力を変化させ、それによって、ファイバ内の利得媒質の位置を変更することができる。例えば、装置330に結合された側のファイバの端部から利得媒質を遠ざけるためには、ファイバ内の圧力を高めるように装置を動作させることができる。あるいは、利得媒質をポンプ放射源320から遠ざけるためには、装置330を使用して、ファイバのコア内の圧力を低下させ、装置330の方に利得媒質を引き寄せることができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、利得媒質が、(図3の場合のように)それがなければ中空のコアの中に存在し、または他の材料と材料の間に置かれたプラグとして存在する。例えば、液体利得媒質を、この利得媒質が混ざり込むことができないファイバ内の別の流体の間に挟み込むことができる。ある実施形態では、ファイバのコア内の圧力をファイバの両端から制御することによって(例えばファイバの両端に正圧をかけることによって)利得媒質の移動を達成することができる。
【0070】
図4を参照すると、システム400は、その全長に沿った不連続な複数の位置に利得媒質を有するファイバを含むシステムの例である。システム400は、利得媒質を含んだ部分410を有するフォトニック結晶ファイバ401を含む。フォトニック結晶ファイバ401の残りの部分は、システムの動作中にレーザ放射を放出するだけの十分な利得媒質を含まない。したがって、動作中に、ファイバの中に導入されたポンプ放射421は、部分410の利得媒質と相互作用して、レーザ放射411を発生させ、レーザ放射411はファイバの縁から放出される。
【0071】
一般に、それぞれの部分410の利得媒質は、他の部分と同じ利得媒質とし、または他の部分とは異なる利得媒質とすることができる。例えば、ある実施形態では、異なる利得媒質を利用することによって、異なる部分が異なる波長でレーザ発振することができ、それによって、その長さに沿って異なる色の放射を放出するファイバ・レーザを提供することができる。
【0072】
以上に説明したファイバ・レーザなどのファイバ・レーザは、さまざまな用途に使用することができる。例えば、それらをディスプレイ用途に使用することができる。ある実施形態では、ファイバ導波路を所望の形態に成形し、次いでポンピングして、発光ディスプレイを提供することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、ファイバ・レーザを布地の構成要素として使用することができる。例えば、ファイバを編んで生地とし、この生地を次いで、被服または他の布地用途に使用することができる。使用中に、この生地の中のファイバにポンプ放射を供給して、生地からレーザ放射を放出させることができる。
【0074】
ファイバ・レーザを医療用途に使用することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、ファイバ・レーザを、拡散光学断層撮影法(diffuse optical tomography:DOT)の光源として使用することができる。DOTは、光源のアレイで生体組織を照明し、組織を出た光を検出器のアレイで測定することを含む。それぞれの光源位置について、その光源位置からそれぞれの検出器に到達した光の像を記録する。次いで、その組織内での光の伝搬モデルに基づいて、その組織についての情報が決定される。DOTは例えば、デイビット・エー・ボア(David A.Boas)他、「Imaging the Body with Diffuse Optical Tomography」、IEEE Signal Processing Magazine、57〜75ページ、2001年11月に記載されている。この文献の内容は、その全体が、本願明細書に組み込まれる。
【0075】
他の例として、ファイバ・レーザは、3次元生体を断層撮影法によって再構成するために、近赤外励起された蛍光色素の発光が使用される、蛍光分子断層撮影法(fluorescence molecular tomography)の光源としても使用することができる。この技法の例が、ブイ・チアクリストス(V.Ntziachristos)他、「Fluorescence imaging with near−infrared light:new technological advances that enable in vivo molecular imaging」、Eur.Radiol.、(2003)13:195〜208ページに記載されている。この文献の内容は、その全体が、本願明細書に組み込まれる。
【0076】
DOTおよび蛍光分子断層撮影法の再構成分解能の向上は、任意の形状を形成することができる柔軟な大面積レーザとして構成されたファイバ・レーザを使用して提供することができ、事実上多数の点光源であるより高い密度の光源アレイを使用することによって達成することができる。
【0077】
ファイバ・レーザは、例えば癌細胞を破壊する薬剤を活性化するために光が使用される光ダイナミック療法(光放射線治療、光線療法または光化学療法とも呼ばれている)に対して使用することができる。薬剤は体内に注入され、どこへでも移動し得るが、内部領域を照明することは外部領域よりも難しい。例えば内視鏡を使用することによって、内部位置に光を供給する目的にファイバ・レーザを使用することができる。例示的な使用が、アール・エム・バーダスドンク(R.M.Verdaasdonk)およびシー・エフ・ピー・バン・スオール(C.F.P.van Swol)、「Laser light delivery systems for medical applications」、Phys.Med.Biol.、42、869〜887ページ(1997)に記載されている。この文献の内容は、その全体が、本願明細書に援用される。
【0078】
ファイバ・レーザは、例えばレーザまたはレーザの部分を機械的に移動させることなく放出方向を制御できることが望ましい用途に使用することもできる。さらに、ファイバ・レーザからのコヒーレント放射を使用して、特定の生物ガスまたは化学ガスを検出することもでき、これらのガスは、そのレーザ放射場に合った特定の分子遷移によって追跡される。
【0079】
(実施例)
さまざまなファイバ・レーザを以下のように製造した。独立した厚さ8μmのPEIフィルムの両面にAs2S3層(厚さ5μm)を熱蒸着し、続いて、このコーティングされたフィルムを丸めて中空多層管にすることによって、中空コア・フォトニック・バンドギャップ・ファイバ・プリフォームを製造した。PEIの厚い保護外層を有するこの巨視的な中空プリフォームを、約260℃で真空加熱することによって統合させ、次いで、約305℃のファイバ線引き塔の中で線引きして、数百メートルのファイバとした。このプリフォームから3種類の異なるファイバを線引きした。1つは、約500nmの基本反射バンドギャップを有し、1つは、約600nmの基本反射バンドギャップを有し、1つは、約690nmの基本反射バンドギャップを有する。
【0080】
t−ブチルペルオキシド(tBP)またはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)と、n−ブチルメルカプタンと、有機色素(0.05〜0.5重量%)とを含む、メタクリル酸メチル(MMA)モノマーとメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)モノマーの混合溶液を調製し、上記の中空コア・フォトニック・バンドギャップ・ファイバの中に挿入した。このファイバを、90℃(tBP)または60℃(AIBN)のオーブンに20時間入れ、重合させた。全ての色素は、エキシトン・インコーポレーテッド社(Exciton,Inc.)社から入手した。使用した色素は以下のとおりである:(1)クマリン503 0.5重量%、(2)クマリン500 0.5重量%、(3)クマリン540A 0.5重量%、(4)ローダミン590 0.1重量%、(5)DCM 0.1重量%、(6)LDS698 0.1重量%、(7)オキサジン720、(8)LD700 0.1重量%、(9)オキサジン725 0.1重量%。色素(1)〜(3)は、約500nmの基本反射バンドギャップを有するファイバに入れた。色素(4)は、約600nmの基本反射バンドギャップを有するファイバに入れた。色素(5)〜(9)は、約690nmの基本反射バンドギャップを有するファイバに入れた。
【0081】
ファイバ・レーザの光ポンプは、公称パルス持続時間9ns、繰返し数10Hzの直線偏光パルスNd:YAGレーザ(Continuum Minilite II)とした。色素の蛍光に従って、第2調波(532nm)と第3調波(355nm)の両方をポンプとして利用した。このポンプ・ビームを、500μmのピンホールによる空間フィルタリングにかけ、このうちの小さな割合のエネルギーをビーム・スプリッタによって分離してポンプ・エネルギーを監視し、半波長板によってポンプ偏光を制御し、焦点距離2.54cm(1インチ)のレンズによってポンプをファイバ・コアに結合した。ポンプ入力エネルギーはエネルギー計(Coherent PM 1000、54−09およびJ3S−10)を使用して測定した。ファイバ・レーザから放出された結果として生じたレーザ光のエネルギーは、積分球(スフェア・オプティクス社(Sphere Optics)から入手)によって集め、ポンプ信号を排除するために前面に高域フィルタが取り付けられた同じエネルギー計を使用して測定した。ポンプ・エネルギーは可変光減衰器を使用して調整した。生成されたレーザ光の放出スペクトルは、直径600μmのマルチモード・ファイバ・プローブによって集めた後、分光計によって測定した。
【0082】
図5を参照すると、ファイバからのレーザ放出スペクトルが示されている。スペクトルの番号は、以前に使用した色素の番号に対応する。スペクトル(1)〜(3)を与えたファイバは355nmの放射でポンピングした。スペクトル(4)〜(9)を与えたファイバは532nmの放射でポンピングした。
【0083】
図6A〜6Cを参照すると、利得媒質としてLDS698を使用したファイバ・レーザのレーザ発振特性が示されている。図6Aは、色素濃度が500ppm、ポンプ・エネルギーがしきい値未満(曲線(A))、1.2EtH(曲線(B))および1.8EtH(曲線(C))(EtHはレーザ発振しきいエネルギー値)のファイバ・レーザの放出スペクトルを示す。図6Aの挿入図は、異なる色素濃度(それぞれ50ppmおよび500ppm)について、スペクトルの半値幅をポンプ・エネルギーの関数として示したものである。図6Bは、レーザ・エネルギーがポンプ・エネルギーに依存していることを示している。具体的には、図6Bは、色素濃度50ppmおよび500ppmのファイバ・レーザについて、それぞれEtH=86nJおよびEtH=100nJであることを示している。図6Cは、色素濃度500ppmのファイバ・レーザについて、放出強度の高分解能プロットを波長の関数として示す。このスペクトルは、モード間隔が約2nm、品質ファクタが640であることを明らかにしている。
【0084】
図7Aおよび7Bを参照すると、利得媒質としてLDS698を使用したファイバ・レーザからのレーザ放出の幾何学的依存性が示されている。図7Aは、このレーザの角強度パターンを、バルク色素との比較で示す。この測定では、ファイバに対して検出器を一定の位置に維持し、ポンプ放射の偏光状態の方向を360℃回転させた。図7Bは、ファイバに対して固定された位置にある検出器によって測定されたレーザ放出の偏光依存性を示す。ここでは、ポンプ放射の偏光を一定に維持し、分析器のパス軸を回転させた。バルク色素によって放出された光の偏光も示されている。レーザ放出の偏光度は0.6と測定され、バルク色素放出の偏光度は0.22であった。
【0085】
いくつかの実施形態を説明した。他の実施形態は特許請求の範囲に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1A】ファイバの導波路軸に対して直角な面から見た、フォトニック結晶ファイバ導波路を含むファイバ・レーザの1実施形態の断面図。
【図1B】ファイバの導波路軸に対して平行な面から見た、図1Aに示されたファイバ・レーザの実施形態の断面図。
【図1C】図1Aに示されたファイバ・レーザの一部分の屈折率プロファイルのグラフ。
【図2A】ファイバ・レーザを製造する方法の1ステップを示す概略図。
【図2B】ファイバ・レーザを製造する方法の1ステップを示す概略図。
【図2C】ファイバ・レーザを製造する方法の1ステップを示す概略図。
【図2D】ファイバ・レーザを製造する方法の1ステップを示す概略図。
【図3】縁放出ファイバ・レーザを含むシステムの概略図。
【図4】レーザ放射を放出する複数の不連続部分を含むファイバ・レーザの概略図。
【図5】さまざまな利得媒質を含むファイバ・レーザの放出スペクトルのグラフである。
【図6A】さまざまなポンプ放射強度でのファイバ・レーザからの放出を示すグラフ。
【図6B】同じ色素を異なる濃度で含むファイバ・レーザの放出エネルギーを、ポンプ強度の関数として示すグラフ。
【図6C】ファイバ・レーザの放出スペクトル。
【図7A】異なるポンプ放射偏光に対するレーザ放出強度の依存性を示すファイバ・レーザの角強度パターン。
【図7B】レーザ放出強度を分析器の方向の関数として示すグラフ。
【技術分野】
【0001】
本開示はファイバ・レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
米国特許法119(e)(1)の下、本出願は、その内容の全体が本願明細書に援用される2006年1月20日出願の「SURFACE−EMITTING FIBER LASER」という名称の米国特許仮出願第60/760519号の優先権を主張するものである。
【0003】
光ファイバは、明確に規定された伝搬軸を有し、一般にコアとコアを取り囲むクラッドとを含む導波路である。コア材料はクラッド材料よりも高い屈折率を有し、光ファイバは、コア−クラッド界面における全内面反射により放射をコアの中に閉じ込めることによって、その放射を導波路軸に沿って導く。ファイバ・レーザは一般に、コアに利得媒質がドープされた光ファイバからなる。ドープされた1本のファイバの両端に配置された1対の反射器(例えばミラーまたはファイバ・ブラッグ格子)が、その中で光フィードバックが起こり得る光共振器を画定する。動作中、利得媒質は、例えばコアの中に導かれたポンプ放射によってポンピングされる。ポンピングされた利得媒質からの放射の放出は、反射器と反射器との間で前後に導かれ、コアに閉じ込められている間に、光共振器内でのフィードバックによって増幅される。一般に、この放射の一部は、少なくとも一方の反射器によって透過され、ファイバの端からファイバを出る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、端からではなくその外周からレーザ放射を放出するファイバ・レーザに関する。実施形態は、ファイバ軸に沿ってポンプ放射を導くことと、横方向のレーザ放射を閉じ込めることの2つの目的を有するフォトニック・バンドギャップ放射閉じ込め構造を利用したファイバ導波路を開示する。
【0005】
第1の態様では、本開示が、導波路軸に沿って延びるコアと、コアを取り囲む閉じ込め領域とを含む、導波路軸に沿って延びるファイバ導波路を含む物品を開示する。閉じ込め領域は、導波路軸に沿って第1の波長λ1の放射を導くように構成されており、ある経路に沿ってそれ自体に入射した第2の波長λ2の放射の少なくとも一部(例えば約10%以上、約25%以上、約50%以上、約75%以上、約90%以上)を透過させるように構成されており、λ1とλ2とは異なる。コアは、λ1の放射と相互作用して、λ2の放射を発生させるように選択されたコア材料を含む。
【0006】
この物品の実施形態は、以下のうちの1つまたは複数の特徴を含むことができる。例えば、ファイバ導波路を、十分なパワーのλ1の放射がコアに導かれたときに、導波路軸に対して直角の方向にλ2の放射を誘導放出するように構成することができる。コアに導かれたλ2の放射が直線偏光されているときには、誘導放出が、導波路軸に関して非対称であり得る。例えば、非対称放出は、導波路軸に関して双極子形の強度パターンを有することができる。誘導放出は、導波路軸に沿って約10λ2以上にわたって延びるファイバ導波路の部分に沿って起こすことができる。いくつかの実施形態では、誘導放出が、導波路軸に沿って約1mm以上にわたって延びるファイバ導波路の部分に沿って起こる。
【0007】
コアは、1μmからから約1,000μmまでの範囲の直径を有することができる。このコアを、λ2またはλ2に近い波長の1つまたは複数の共振器モードをサポートするように構成することができる。この物品は、上記モードの少なくとも1つに関して、約500以上の品質ファクタQ(quality factor)を有することができる。
【0008】
閉じ込め領域は、導波路軸に対して直角の方向に低屈折率領域と交互に並んだ複数の高屈折率領域を有することができる。これらの複数の低屈折率領域は、閉じ込め領域のホーリー(holey)部分に対応することができる。いくつかの実施形態では、交互に並んだ複数の高屈折率部分および低屈折率部分が、高い屈折率を有する第1の材料層と低い屈折率を有する第2の材料層の互層に対応する。この互層は、導波路軸に関して螺旋形の断面を有する構造を画定することができる。この螺旋形構造は、コアの周りを複数回にわたって巻いた異なる材料の少なくとも2つの層からなる多層構造を含むことができる。閉じ込め領域を、λ1の放射に対するフォトニック・バンド・ギャップを提供するように構成することができる。閉じ込め領域を、十分なパワーのλ1の放射がコアに導かれたときにλ2でレーザ発振させるのに十分な光フィードバックを提供するのに十分なλ2の放射を反射するように構成することができる。
【0009】
λ1およびλ2は、約300nmから約15,000nmまでの範囲とすることができる。
コア材料は利得媒質を含むことができる。利得媒質は有機材料とすることができる。利得媒質は色素を含むことができる。いくつかの実施形態では、コア材料が基質材料を含み、利得媒質が、基質材料の中に分散されている。基質材料はポリマーとすることができる。いくつかの実施形態では、コア材料が室温で固体材料である。あるいは、コア材料を室温で流体(例えば液体)とすることもできる。
【0010】
ファイバ導波路は、コアがコア材料を含まない区間を含むことができる。
いくつかの実施形態では、この物品が、λ1の放射を発生させるように構成され、λ1の放射をコアに導くよう配置された光源を含む。光源はレーザ光源とすることができる。
【0011】
一般に、他の態様では、本開示が、導波路軸に沿って波長λ1の放射を導くように構成されており、導波路軸に沿って延びるコアからなり、このコアが、λ1の放射と相互作用して、λ2の放射を発生させるように選択されたコア材料を有するファイバ導波路を提供することを含む方法を開示する。この方法はさらに、ファイバ導波路から導波路軸に対して直角の方向にλ2の放射を放出させるのに十分な強度のλ1の放射をコアの中へ導くことを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、この方法が、λ2の放射を放出するファイバ内の位置を変更するために、ファイバ内の利得媒質の位置を移動させることを含むことができる。
この方法は、上で論じた物品を使用して実施することができ、上で論じた物品に関連した特徴のうちの1つまたは複数の特徴を含むことができる。
【0013】
利点は他にもあるが、実施形態は特に、レーザ放出波面の位置、方向および偏光の制御を提供するファイバ・レーザを含む。このファイバ・レーザは本来的に、さまざまな波長にスケーリング可能である。
【0014】
実施形態は、半径方向のレーザ放出の遠隔供給を含むさまざまな用途に使用することができる。
実施形態はさらに、ファイバ導波路の長さに沿った利得媒質の位置の制御、したがって放出位置の制御を可能にする。
【0015】
ある実施形態では、ファイバ・レーザが、大面積からの横面レーザ放出を提供することができる。このような実施形態は例えば、低プロファイルのレーザ・ジオメトリを必要とする内視鏡光線療法などの用途に使用することができる。
【0016】
実施形態は、多ファイバ、大面積、低プロファイルの柔軟なコヒーレント光源をさまざまな物品に単純に組み込むことを可能にする。例えば、ファイバ・レーザを編んで布地にし、レーザ放出が可能な布地を提供することができる。
【0017】
いくつかの文献が本願明細書に援用される。矛盾する場合には本願明細書が優先する。本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細が、添付図面および以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴および利点は、以下の説明、図面および請求項から明らかとなろう。
【0018】
各種図面の同様の参照符号は同様の要素を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1Aおよび1Bを参照すると、ファイバ・レーザ100は、導波路軸に沿って延びるコア120と、コアを取り囲む閉じ込め領域110(例えば高屈折率層と低屈折率層との互層)とを含む。閉じ込め領域110は、閉じ込め領域を機械的に支持する支持層150によって取り囲まれている。コア120は、利得媒質と、その中に利得媒質が分散された基質とを含む。
【0020】
動作中、コア120の利得媒質は、ポンプ波長λpの放射をコアの中に導くことによってポンピングされる。図1Bに放射線101として示されたポンプ放射は、閉じ込め領域110によってコア120に閉じ込められ、利得媒質によって吸収される。利得媒質は波長λlの光を放出し、この放出光の少なくとも一部は、光フィードバックを提供する閉じ込め領域110によって反射される。放出された放射の少なくとも一部は閉じ込め領域を透過し、ファイバの側壁からファイバ100を出る。半径方向に(すなわち導波路軸199に対して直角に)伝搬するλlの放射が、コア120の中の放射線102によって示されている。ファイバ・レーザ100によって半径方向に放出された光は放射線103によって示されている。ポンプ放射の強度がレーザ発振しきい値よりも大きい場合、利得媒質内で誘導放出が起こり、ファイバ100の側面からのλlの放出はレーザ放射である。
【0021】
このフォトニック・バンド・ギャップ構造は、軸波ベクトルの増大を伴うより短い波長(より高い周波数)へのバンド・エッジの特性シフトによって可能になる2つの役割を果たす。軸波ベクトルk=0に対して定義される垂直入射バンドギャップは、半径方向のレーザ発振作用を実現するために必要な光フィードバックを提供する。同時に、ライト・ライン(light line)に近い軸波ベクトルを有するブルー・シフトしたバンドギャップが、ポンプ放射の誘導を担う。
【0022】
一般に、垂直に入射する放射(例えば半径方向に導かれた放射)に対して、フォトニック・バンド・ギャップ構造は、波長バンドΔλpbgに対して高い(例えば100%に近い)反射率を有する反射スペクトルを示す。Δλpbgは一般に、閉じ込め領域の構造および組成に依存する(後の説明を参照されたい)。閉じ込め領域が、レーザ放出のために必要な光フィードバックを提供し、同時に、ファイバの縁からのレーザ放射の結合を可能にするλlの十分な透過を提供するためには、ポンピングされた利得媒質から放出される波長バンドがΔλpbgと部分的に重なるように、Δλpbgが選択されなければならない。
【0023】
したがって、利得媒質、閉じ込め領域の構造およびポンプ波長は全て、電磁スペクトルの紫外、可視または赤外部分の波長とすることができる所望のレーザ波長λlに基づいて選択される。
【0024】
λpは一般に、使用される利得媒質のタイプによって決まる。λpは一般にλlよりも短く、電磁スペクトルの紫外、可視または赤外部分の波長とすることができる。ポンプ放射は、λpの放射を発生させることができるポンプ放射源によって提供される。いくつかの実施形態では、ポンプ放射源が、λpの放射だけを供給する単色源である。ある実施形態では、ポンプ放射源が、λpを含む複数の波長の放射を供給する広帯域源である。ポンプ放射源は、レーザ光源(例えば固体レーザ、ガス・レーザ、ダイオード・レーザ、ファイバ・レーザ)、または通常光源(例えば発光ダイオードなどの固体光源、蛍光源、白熱光源)とすることができる。ポンプ放射は連続的にまたはパルスとして供給し得る。
【0025】
ポンプ放射の入力パワーは一般に、ファイバ・レーザ100からの所望のレーザ放出強度に基づいて選択される。したがって、ポンプ放射は、ファイバ・レーザ100をレーザ発振させるのに十分な(すなわちレーザ発振しきい値よりも高い)パワーで供給される。ポンプ放射パワーは一般、ファイバ・レーザに損傷を与えるしきい値よりも低い。
【0026】
ポンプ放射は、偏光または非偏光とすることができる。ある実施形態では、ポンプ放射が直線偏光される。直線偏光されたポンプ放射は、半径方向に異方性のレーザ放出を与える。例えば、レーザ放出は、直線偏光されたポンプ放射の偏光方向を向いた(すなわち電界ベクトルに平行な)双極子状の波面を有することができる。
【0027】
次に、ファイバ・レーザ100の構造および組成について説明すると、コア120は一般に、希望に応じて変更し得る直径を有する。一般に、入力ポンプ・パワーが一定の場合、コアが小さいほど、ポンプ放射のパワー密度は大きくなり、したがってしきい値は低くなる。したがって、コアのサイズは、ポンプ放射源の特性に基づいて、動作中に所望のポンプ放射パワー密度が得られるように選択することができる。さらに、コアの直径は、導かれたポンプ放射および/または放出された放射の所望のモード特性に基づいて選択することができる。いくつかの実施形態では、コアの直径が、ファイバがλpの単一モード・ファイバとなるように選択される。
【0028】
実施形態では、コアの直径をおよそλp程度とすることができる。あるいは、ある実施形態では、コアの直径を、約5λp以上(例えば約10λp以上、約20λp以上、約30λp以上、約40λp以上、約50λp以上、約100λp以上)など、より大きなλpとすることができる。いくつかの実施形態では、コアの直径が、約1μmから約1,000μmまでの範囲までの範囲にある(例えば約10μm以上、約50μm以上、約100μm以上、約500μm以下、約200μm以下)。
【0029】
ポンプ放射のパワー密度は、レーザ発振に必要なしきい値パワーよりも高くなければならないが、ファイバが損傷するしきい値を超えてはならない。
利得媒質は一般に、所望の放出波長λlに基づいて選択される。利得媒質は、有機利得媒質または無機利得媒質とすることができる。有機利得媒質の例には、LDS698、DCM、クマリン(coumarin)503、クマリン500、クマリン540A、ローダミン(rhodamine)590、オキサジン(oxazine)720、オキサジン725、LD700(全てエキシトン・インコーポレーテッド社(Exciton,Inc.)[米国オハイオ州デイトン(Dayton)所在]から市販されている)などの有機色素、量子ドット(quantum dot)、共役ポリマーが含まれる。無機利得媒質の例には、希土類イオン:エルビウム、ネオジムおよびプラセオジムが含まれる。
【0030】
前述のとおり、ファイバ・レーザ100では、利得媒質が基質材料の中に分散されている。一般に、基質材料は、希望に応じて変更することができる。基質材料は一般に、利得媒質に対する適合性、およびファイバ・レーザの形成において使用される工程に対する適合性に基づいて選択される。基質材料はさらに、その光学特性、特にλpおよびλlに基づいて選択される。例えば、基質材料は一般に、λpおよびλlの比較的に低い吸収を有していなければならない。基質材料は固体または液体材料を含むことができる。固体基質材料の例には、ポリマー(例えば単独重合体または共重合体)および無機ガラスが含まれる。液体基質材料の例には水および有機液体が含まれる。
【0031】
一般に、基質材料中の利得媒質の濃度は、希望に応じて変更することができる。一般に、利得媒質の濃度が高いほど、レーザ発振に必要なしきい入力パワー値は小さくなる。ある種の有機色素など一部の利得媒質では、濃度を非常に高くすると、分子の物理的な近接により放出が低下することがある。いくつかの実施形態では、利得媒質の濃度が10ppm以上(例えば約50ppm以上、約100ppm以上、約500ppm以上、約1,000ppm以上)である。
【0032】
次に、閉じ込め領域の構造および組成について説明すると、閉じ込め領域110は、異なる屈折率を有する材料(例えばポリマー、ガラス)の連続する互層130および140を含む。連続層130および140は、それに沿ってフォトニック結晶ファイバ導波路が電磁放射を導く軸199の周りに螺旋を形成する。一方の層、例えば層140は、屈折率nHおよび厚さdHを有する高屈折率層であり、この層、例えば層130は、屈折率nLおよび厚さdLを有する低屈折率層であり、ここでnH>nLである(例えばnH−nLは、0.01以上、0.05以上、0.1以上、0.2以上、0.5以上またはそれ以上とすることができる)。層130および140は軸199に周りに螺旋を形成するため、軸199から延びる半径方向断面160はそれぞれの層を2度以上横切り、高屈折率層と低屈折率層の互層を含む半径方向プロファイルを提供する。
【0033】
図1Cを参照すると、光学的に、これらの螺旋形の層は、半径方向断面160に沿った屈折率の周期的な変動を与え、周期は、層130および層140の光学的厚さに対応する。すなわち、閉じ込め領域110は2重層光学的周期nHdH+nLdLを有する。
【0034】
一般に、層130および140の厚さ(dHおよびdL)ならびに光学的厚さ(nHdHおよびnLdL)は、閉じ込め領域の所望の光学特性に応じて変更することができる。いくつかの実施形態では、層130の光学的厚さと層140の光学的厚さが同じである。層の厚さは通常、ファイバの所望の光学性能に基づいて(例えばλpおよびλlに従って)選択される。層の厚さと光学性能との間の関係については後に論じる。層の厚さは一般に、1ミクロン未満から数十ミクロンである。例えば、層130および140の厚さは、約0.1μmから20μm(例えば約0.5から5μm)とすることができる。
【0035】
閉じ込め領域110は一般に、さまざまな数(例えば約10以上、約20以上、約30以上、約40以上)の2重層を含むことができる。
層140は一般に、カルコゲン・ガラスなどの高屈折率材料を有する材料を含む。層130は、層140の高屈折率材料よりも低い屈折率を有する材料を含み、一般に機械的に柔軟である。例えば、層130は、PEIなどのポリマーから形成することができる。層130および層140を形成する材料は共線引きすることができることが好ましい。
【0036】
閉じ込め領域110の層130および140の組成に関しては、高屈折率部分(例えば層140)を形成するのに適当な高い屈折率を有する材料には、カルコゲン・ガラス(例えば硫黄、セレンおよび/またはテルルなどのカルコゲン元素を含むガラス)、重金属酸化物ガラス、非晶質合金ならびにこれらの組合せが含まれる。
【0037】
カルコゲン元素の他に、カルコゲン・ガラスは、以下の1種または数種の元素を含むことができる:ホウ素、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、イリジウム、スズ、アンチモン、タリウム、鉛、ビスマス、カドミウム、ランタンおよびハロゲン化物(フッ素、塩素、臭化物、ヨウ素)。
【0038】
カルコゲン・ガラスは、2元または3元ガラス、例えば、As−S、As−Se、Ge−S、Ge−Se、As−Te、Sb−Se、As−S−Se、S−Se−Te、As−Se−Te、As−S−Te、Ge−S−Te、Ge−Se−Te、Ge−S−Se、As−Ge−Se、As−Ge−Te、As−Se−Pb、As−S−Tl、As−Se−Tl、As−Te−Tl、As−Se−Ga、Ga−La−S、Ge−Sb−Se、あるいはこれらに元素に基づくAs−Ga−Ge−S、Pb−Ga−Ge−Sなどの複雑な多成分ガラスとすることができる。カルコゲン・ガラスのそれぞれの元素の比は変更することができる。例えば、ヒ素5〜30モル%、ゲルマニウム20〜40モル%およびセレン30〜60モル%を含む適当な高い屈折率を有するカルコゲン・ガラスを形成することができる。
【0039】
高屈折率の重金属酸化物ガラスの例には、Bi2O3−、PbO−、Tl2O3−、Ta2O3−、TiO2−およびTeO2−を含むガラスが含まれる。
適当な高い屈折率を有する非晶質合金には、Al−Te、R−Te(Se)(R=アルカリ)が含まれる。
【0040】
低屈折率部分(例えば層130)を形成するのに適当な低い屈折率を有する材料には、酸化物ガラス、ハロゲン化物ガラス、ポリマーおよびこれらの組合せが含まれる。カルボナート(例えばポリカーボネート(PC))、スルホン(例えばポリ(エーテルスルホン)(PES))、エーテルイミド(例えばポリ(エーテルイミド)(PEI))およびアクリラート(例えばポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA))類のポリマーならびにフルオロポリマーを含むポリマーも、適合した候補である。
【0041】
適当な酸化物ガラスには、以下の1種または数種の化合物を含むガラスが含まれる:M2O 0〜40モル%(MはLi、Na、K、RbまたはCs)、M’O 0〜40モル%(M’はMg、Ca、Sr、Ba、ZnまたはPb)、M”2O3 0〜40モル%(M”はB、Al、Ga、In、SnまたはBi)、P2O5 0〜60モル%、およびSiO2 0〜40モル%。
【0042】
ファイバ・レーザの諸部分は、任意で、他の材料を含むことができる。例えば、どの部分も、その部分の屈折率を変化させる1種または数種の材料を含むことができる。部分は、その部分の屈折率を増大させる材料を含むことができる。このような材料には例えば、ホウケイ酸ガラスを含む部分の屈折率を増大させることができる酸化ゲルマニウムが含まれる。あるいは、部分は、部分の屈折率を低下させる材料を含むことができる。例えば、酸化ホウ素は、ホウケイ酸ガラスを含む部分の屈折率を低下させることができる。
【0043】
ファイバ・レーザの諸部分は均質または不均質とすることができる。例えば、1つまたは複数の部分は、不均質な部分を形成するためにホスト材料に埋め込まれた1種の材料のナノ粒子(例えば導かれた波長の光を最小限に散乱させる十分に小さな粒子)を含むことができる。これの例は、高屈折率カルコゲン・ガラスのナノ粒子をポリマー・ホストに埋め込むことによって形成された高屈折率ポリマー複合体である。他の例には、無機ガラス基質中のCdSeおよび/またはPbSeナノ粒子が含まれる。
【0044】
ファイバ導波路の諸部分は、ファイバのその部分の機械的、レオロジー的および/または熱力学的ふるまいを変化させる材料を含むことができる。例えば、1つまたは複数の部分が可塑剤を含むことができる。部分は、結晶化を抑制し、またはファイバ内での他の望ましくない相に関するふるまいを抑制する材料を含むことができる。例えば、ポリマー内での結晶化は、架橋材(例えば感光性架橋材)を含めることによって抑制することができる。他の例では、ガラス−セラミック材料が所望の場合に、TiO2、ZrO2などの核生成剤を材料に含めることができる。
【0045】
部分はさらに、ファイバ内の隣接部分間(例えば低屈折率層と高屈折率層の間)の界面に作用するように設計された化合物を含むことができる。このような化合物には接着促進剤および相溶化剤が含まれる。例えば、シリカ・ベースのガラス部分とポリマー部分との間の接着を促進するために、オルガノシラン化合物を使用することができる。例えば、リンまたはP2O5は、カルコゲン・ガラスと酸化物ガラスの両方と相溶し、これらのガラスから形成された部分間の接着を促進することができる。
【0046】
線引き工程を使用して強健なファイバ導波路を製造するときには、所望の光学特性を有する材料を組み合わせたものが全て適当なものになるとは限らない。一般に、レオロジー的に、熱機械的におよび物理化学的に適合する材料を選択しなければならない。フォトニック結晶ファイバ導波路の共線引きの追加の説明が、2002年7月16日に出願された「METHOD OF FORMING REFLECTING DIELECTRIC MIRRORS」という名称の米国特許出願第10/196,403号、および2003年12月10日に出願された「FIBER WAVEGUIDES AND METHODS OF MAKING SAME」という名称の米国特許出願第10/733,873号に出ている。これらの両文献の内容はその全体が本願明細書に援用される。
【0047】
閉じ込め領域110は、第1の波長範囲の放射を、誘電性コア120の中を導波路軸199に沿って伝搬するように導く。この閉じ込め機構は、第1の波長範囲を含むバンドギャップを形成する領域110のフォトニック結晶構造に基づく。この閉じ込め機構は屈折率によって導くものではないため、閉じ込め領域のコアに直接に隣接した部分の屈折率よりも高い屈折率をコアが有する必要はない。逆に、コア120は、閉じ込め領域110の平均屈折率よりも低い平均屈折率を有してもよい。
【0048】
閉じ込め領域110の層130および140は、ブラッグ・ファイバとして知られているものを形成する。螺旋形に巻かれたこれらの層の周期的な光学構造は、平面誘電スタック反射器(ブラッグ・ミラーとしても知られている)の互層に類似している。閉じ込め領域110の層および誘電スタック反射器の平らな互層はともに、フォトニック結晶構造の例である。フォトニック結晶構造は、ジョン・ディー・ジョアノプーロス(John D.Joannopoulos)他著「Photonic Crystals」(プリンストン・ユニバーシティ・プレス(Princeton University Press)、米ニュージャージー州プリンストン(Princeton)、1995年)に概説されている。
【0049】
本願明細書で使用されるとき、フォトニック結晶は、フォトニック結晶中にフォトニック・バンドギャップを生み出す屈折率変調を有する構造である。本願明細書で使用されるとき、フォトニック・バンドギャップは、誘電体構造の中にアクセシブル・エクステンデッド・ステート(accessible extended state)(すなわち伝搬、非局在化状態)がない波長範囲(または逆数をとって周波数範囲)である。この構造は一般に周期的な構造だが、例えばより複雑な「準結晶」を含めることもできる。フォトニック結晶を、バンドギャップ構造から外れた「欠陥」領域と組み合わせることによって、バンドギャップを、光を閉じ込め、導き、かつ/または局在化するために使用することができる。さらに、ギャップの上下の波長に対してアクセシブル・エクステンデッド・ステートがあり、これにより、(前述の構造などの屈折率によって導かれるTIR構造とは対照的に)屈折率が相対的に低い領域にさえも光を閉じ込めることができる。用語「アクセシブル」ステートは、その系のある対称性または保存の法則によって結合がもはや禁止されていない状態を意味する。例えば、2次元系では、偏光が保存され、そのため、同様の偏光の状態だけがバンドギャップから排除される必要がある。(一般的なファイバなどの)均一な断面を有する導波路では、波数ベクトルβが保存され、そのため、フォトニック結晶誘導モードをサポートするためには、所与のβを有する状態だけがバンドギャップから排除される必要がある。さらに、円筒対称性を有する導波路では、「角運動量」屈折率mが保存され、そのため、同じmを有するモードだけがバンドギャップから排除される必要がある。要するに、高対称系では、フォトニック・バンドギャップの要件が、対称性に関係なく全ての状態が排除される「完全な」バンドギャップに比べてかなり緩和される。
【0050】
したがって、EM放射はこの積層の中を伝搬することができないため、積層から形成された反射器は、フォトニック・バンドギャップ内では大きな反射性を有する。同様に、閉じ込め領域110の層は、バンドギャップ内の入射放射線に対して大きな反射性を有するため、これらの層は閉じ込めを提供する。厳密に言えば、フォトニック結晶が、バンドギャップ内で完全な反射性を有するのは、フォトニック結晶内の屈折率変調が無限の広がりを有するときだけである。それ以外では、入射放射は、フォトニック結晶の両側の伝搬モードを結合する一過性のモードを介してフォトニック結晶を「トンネリング」することができる。しかし、理論的には、このようなトンネリングの割合は、フォトニック結晶の厚さ(例えば互層の数)とともに指数関数的に低下する。それはさらに、閉じ込め領域内の屈折率コントラストの大きさとともに低下する。
【0051】
さらに、フォトニック・バンドギャップは、伝搬ベクトルの比較的に小さな領域の上にだけ広がることができる。例えば、積層は、垂直に入射した放射線に対しては大きな反射性を有するが、斜めに入射した放射線に対しては部分的にしか反射しない場合がある。「完全なフォトニック・バンドギャップ」は、全ての可能な波数ベクトルおよび全ての偏光にわたって広がるバンドギャップである。一般に、完全なフォトニック・バンドギャップは、3次元に沿った屈折率変調を有するフォトニック結晶にだけ関連付けられる。
【0052】
閉じ込め領域110などのブラッグ構成に似た構成では、高屈折率層の屈折率および厚さを変更し、かつ/または低屈折率層の屈折率および厚さを変更することができる。閉じ込め領域はさらに、1周期につき3つ以上の層(例えば1周期につき3つまたはそれ以上の層)を含む周期的な構造を含むことができる。さらに、屈折率変調は、閉じ込め領域内のファイバ半径の関数として連続的にまたは不連続に変化させることができる。一般に、閉じ込め領域は、フォトニック・バンドギャップを生み出す任意の屈折率変調に基づくことができる。
【0053】
多層構造110は半径方向軸に関して周期的な屈折率変動を有するため、この実施形態では、多層構造110がブラッグ反射器を形成する。適当な屈折率変動はおよそ1/4波長条件である。垂直入射に関しては、最大バンド・ギャップは、それぞれの層が等しい光学的厚さλ/4を有する、すなわち等価にはdH/dL=nL/nHである「1/4波長」スタックに対して得られることはよく知られている。ここで、dおよびnはそれぞれ、高屈折率層および低屈折率層の厚さおよび屈折率を指す。これらはそれぞれ層240および230に対応する。垂直入射はβ=0に対応する。円筒導波路では、所望のモードは一般にライト・ラインω=cβの近くにある(大コア半径限界では、最も低い次数のモードは本質的に、z軸、すなわち導波路軸に沿って伝搬する平面波である)。この場合、1/4波長条件は下式のようになる。
【0054】
【数1】
1/4波長条件は円筒の幾何形状によって変更され、それは、それぞれの層の光学的厚さがその半径方向座標とともになめらかに変化することを要求する可能性があるため、厳密に言えば、この式は正確に最適ではないかもしれない。それにもかかわらず、この式は、特に中間バンドギャップ波長よりも大きなコア半径に対して、多くの望ましい特性を最適化する優れた指針を提供することを本発明の発明者らは見出した。
【0055】
閉じ込め領域110は、螺旋構造を提供するためにコアの周りに複数回巻き付けられた多層構造を含むが、他の構成も可能である。例えば、いくつかの実施形態では、閉じ込め領域が、螺旋層の代わりに、または螺旋層に加えて、環状層を含むことができる。ある実施形態では、閉じ込め領域が2次元屈折率変調を含むことができる。例えば、エム・ディー・ニールセン(M.D.Nielsen)他「Low−loss photonic crystal fibers for data transmission and their dispersion properties」、Opt.Express、12、1372(2004)に記載されているものなどのホーリー・ファイバを使用することができる。
【0056】
以前に説明したとおり、支持層150は、閉じ込め領域110に対する機械的支持を提供する。支持層150の厚さは希望に応じて変更することができる。いくつかの実施形態では、支持層150が閉じ込め領域110よりもかなり厚い。例えば、支持層150は、閉じ込め領域110の約10倍以上(例えば約20倍超、約30倍超または約50倍超)の厚さを有することができる。
【0057】
一般に、支持層150の組成は通常、閉じ込め領域110に対する所望の機械的支持および保護を提供し、同時に、レーザ放射がファイバの側面から放出されるようλlに関して十分に透明であるように選択される。ある実施形態では、支持層150が、閉じ込め領域110とともに共線引きすることができる材料から形成される。いくつかの実施形態では、支持層を、閉じ込め領域110を形成するのに使用された材料と同じ材料(1種または数種)から形成することができる。例えば、層130がポリマーから形成される場合、支持層150は、同じポリマーから形成することができる。
【0058】
一般に、ファイバ・レーザは、異なるさまざまな方法で製造することができる。いくつかの実施形態では、平らな多層物品を丸めて螺旋構造とし、この螺旋構造から得られたプリフォームからフォトニック結晶ファイバを線引きすることによって、レーザ100などのファイバ・レーザを製造することができる。線引きの後、ファイバの中空コアの中に利得媒質を導入することができる。
【0059】
図2Aを参照すると、プリフォームを調製するために、ポリマー・フィルム210の表面211にガラスが付着される220。ガラスは、熱蒸着、化学蒸着またはスパッタリングを含む方法によって付着させることができる。図2Bを参照すると、この付着工程は、ポリマー・フィルム210上のガラス層230からなる多層物品240を与える。
【0060】
図2Cを参照すると、この付着工程に続いて、螺旋管を形成するために、マンドレル255(例えば、ホウケイ酸ガラスなどの中空ガラスまたはポリマー管)の周りに多層フィルム240が巻き付けられる。次いで、プリフォーム被覆物を形成するために、螺旋管の周りに、数枚(例えば3から10枚)のポリマー・フィルムが巻き付けられる。いくつかの実施形態では、このポリマー・フィルムが、多層物品を形成するのに使用されたポリマーまたはガラスと同じポリマーまたはガラスでできている。真空下で、このプリフォーム被覆物が、多層フィルム240および螺旋管の周りに巻き付けられたフィルムを形成するポリマー(1種または数種)およびガラス(1種または数種)のガラス転移温度よりも高い温度まで加熱される。プリフォーム被覆物は、螺旋管の層が互いに融合し、螺旋管が、その周りに巻き付けられたポリマー・フィルムに融合するのに十分な時間、加熱される。加熱温度および加熱時間はプリフォーム被覆物の組成に左右される。例えば、多層フィルムがAs2S3およびPEIからなり、被覆フィルムがPEIからなる場合には、一般に、200〜350℃(例えば約260℃)で15〜20分(例えば約18分)の加熱で十分である。この加熱は、さまざまな層を互いに融合させ、螺旋管および被覆フィルムを統合させる。統合した構造が図2Dに示されている。螺旋管は統合して、丸められた多層フィルム240に対応する多層領域260になる。巻き付けられたポリマー・フィルムは統合して、一体の支持クラッド270になる。統合されたこの構造は、マンドレル255の中空コア250を保持している。
【0061】
支持クラッド270を提供するために螺旋管の周りにポリマー・フィルムを巻き付ける代わりに、螺旋管の外径に一致した内径を有する中空管に螺旋管を挿入することもできる。
【0062】
この統合された構造からマンドレル255が除去されて、中空プリフォームが提供され、この中空プリフォームは次いで線引きされてファイバとなる。プリフォームは、最終的なファイバの組成および(例えばコアの半径と閉じ込め領域の層の厚さとの間の)相対寸法と同じ組成および相対寸法を有する。ファイバの絶対寸法は、使用される線引き比によって決まる。長いファイバ(例えば最長数千メートル)を線引きすることができる。次いで、線引きされたファイバを所望の長さに切断することができる。
【0063】
マンドレルが螺旋管に対する堅固な支持を提供するように、統合は、マンドレルのガラス転移温度よりも低い温度で実施されることが好ましい。これは、真空下で多層フィルムがつぶれないことを保証する。マンドレルの組成は、統合後にマンドレルが多層管の最も内側の層から外れるように選択することができる。あるいは、統合中にマンドレルが多層管の最も内側の層に付着する場合には、マンドレルを化学的に除去する、例えばエッチングによって除去することができる。例えば、マンドレルがガラス毛細管である実施形態では、プリフォームを形成するために、例えばフッ化水素酸を使用してマンドレルをエッチングすることができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、ポリマー・フィルム210の両面にガラスをコーティングすることができる。それぞれのガラス層の厚さが、一面だけに付着させたガラス層の厚さの半分ですむため、その方が有利なことがある。一般に、ガラス層が薄いほど、ガラス層は、多層フィルムを丸める間に起こり得る機械応力損傷を受けにくくなる。
【0065】
いくつかの実施形態では、2枚以上の多層フィルムを調製し、それらを積み重ねてから丸めることができる。このようにすると、フィルムのサイズを増大させることなく閉じ込め領域の層の数を増やすことができる。
【0066】
利得媒質は、プリフォームからファイバを線引きする前または後にコアに導入することができる。いくつかの実施形態では、例えば、プリフォームの中に利得媒質を導入し、ファイバとともに共線引きすることができる。このような場合、基質材料は、ファイバの残りの部分を形成するために使用される材料とともに共線引きすることができる材料でなければならない。
【0067】
あるいは、線引きした後でファイバの中空コアの中に利得媒質を導入することもできる。例えば、基質材料を、コアの中に導入する前に利得媒質を分散させ、または溶解した液体とすることができる。この液体は、ファイバの一端からコアに導入し、次いで、毛管作用または加圧によってファイバの中に引き入れることができる。任意で、コアの中に導入した後に基質材料を凝固させることができる。例えば、ある実施形態では、基質材料を冷却することによって基質材料を凝固させることができる。あるいは、またはそれに加えて、ファイバのコアの中に配置した後に、基質材料を(例えば化学線または熱に当てることによって)重合させることができる。
【0068】
一般に、利得媒質は、フォトニック結晶ファイバの全長に沿って、あるいはファイバの全長の1つまたは複数の部分だけに沿って、コアの中に挿入することができる。さらに、利得媒質は、固相、液相または気相とすることができる。時間の経過とともに、利得媒質の相を、ファイバの中で変化させることもできる。いくつかの実施形態では、ファイバ・レーザの動作前、動作中および/または動作後に、ファイバ内の利得媒質の位置を、ファイバの長さに沿って調整可能に配置することができる。例えば、図3を参照すると、システム300は、ファイバ・レーザ301と、ポンプ放射源320(例えばレーザ)と、ファイバ・レーザの端に結合された圧力変更装置330とを含む。ファイバ・レーザ301は、1本のフォトニック結晶ファイバ305を含み、ファイバ305の部分310が、コアの中に利得媒質を含む。動作中、ポンプ放射源320は、ファイバ・レーザ301にポンプ放射321を供給する。ポンプ放射は、部分310の中の利得媒質と相互作用して、レーザ放射350を発生させ、レーザ放射350は、ファイバ・レーザ301の縁から放出される。利得媒質は基質の中に分散されており、基質は、ファイバ内の圧力に応じて、ファイバ内の位置を変えることができる。したがって、動作中に、使用者は、圧力変更装置330を使用してファイバ内の圧力を変化させ、それによって、ファイバ内の利得媒質の位置を変更することができる。例えば、装置330に結合された側のファイバの端部から利得媒質を遠ざけるためには、ファイバ内の圧力を高めるように装置を動作させることができる。あるいは、利得媒質をポンプ放射源320から遠ざけるためには、装置330を使用して、ファイバのコア内の圧力を低下させ、装置330の方に利得媒質を引き寄せることができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、利得媒質が、(図3の場合のように)それがなければ中空のコアの中に存在し、または他の材料と材料の間に置かれたプラグとして存在する。例えば、液体利得媒質を、この利得媒質が混ざり込むことができないファイバ内の別の流体の間に挟み込むことができる。ある実施形態では、ファイバのコア内の圧力をファイバの両端から制御することによって(例えばファイバの両端に正圧をかけることによって)利得媒質の移動を達成することができる。
【0070】
図4を参照すると、システム400は、その全長に沿った不連続な複数の位置に利得媒質を有するファイバを含むシステムの例である。システム400は、利得媒質を含んだ部分410を有するフォトニック結晶ファイバ401を含む。フォトニック結晶ファイバ401の残りの部分は、システムの動作中にレーザ放射を放出するだけの十分な利得媒質を含まない。したがって、動作中に、ファイバの中に導入されたポンプ放射421は、部分410の利得媒質と相互作用して、レーザ放射411を発生させ、レーザ放射411はファイバの縁から放出される。
【0071】
一般に、それぞれの部分410の利得媒質は、他の部分と同じ利得媒質とし、または他の部分とは異なる利得媒質とすることができる。例えば、ある実施形態では、異なる利得媒質を利用することによって、異なる部分が異なる波長でレーザ発振することができ、それによって、その長さに沿って異なる色の放射を放出するファイバ・レーザを提供することができる。
【0072】
以上に説明したファイバ・レーザなどのファイバ・レーザは、さまざまな用途に使用することができる。例えば、それらをディスプレイ用途に使用することができる。ある実施形態では、ファイバ導波路を所望の形態に成形し、次いでポンピングして、発光ディスプレイを提供することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、ファイバ・レーザを布地の構成要素として使用することができる。例えば、ファイバを編んで生地とし、この生地を次いで、被服または他の布地用途に使用することができる。使用中に、この生地の中のファイバにポンプ放射を供給して、生地からレーザ放射を放出させることができる。
【0074】
ファイバ・レーザを医療用途に使用することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、ファイバ・レーザを、拡散光学断層撮影法(diffuse optical tomography:DOT)の光源として使用することができる。DOTは、光源のアレイで生体組織を照明し、組織を出た光を検出器のアレイで測定することを含む。それぞれの光源位置について、その光源位置からそれぞれの検出器に到達した光の像を記録する。次いで、その組織内での光の伝搬モデルに基づいて、その組織についての情報が決定される。DOTは例えば、デイビット・エー・ボア(David A.Boas)他、「Imaging the Body with Diffuse Optical Tomography」、IEEE Signal Processing Magazine、57〜75ページ、2001年11月に記載されている。この文献の内容は、その全体が、本願明細書に組み込まれる。
【0075】
他の例として、ファイバ・レーザは、3次元生体を断層撮影法によって再構成するために、近赤外励起された蛍光色素の発光が使用される、蛍光分子断層撮影法(fluorescence molecular tomography)の光源としても使用することができる。この技法の例が、ブイ・チアクリストス(V.Ntziachristos)他、「Fluorescence imaging with near−infrared light:new technological advances that enable in vivo molecular imaging」、Eur.Radiol.、(2003)13:195〜208ページに記載されている。この文献の内容は、その全体が、本願明細書に組み込まれる。
【0076】
DOTおよび蛍光分子断層撮影法の再構成分解能の向上は、任意の形状を形成することができる柔軟な大面積レーザとして構成されたファイバ・レーザを使用して提供することができ、事実上多数の点光源であるより高い密度の光源アレイを使用することによって達成することができる。
【0077】
ファイバ・レーザは、例えば癌細胞を破壊する薬剤を活性化するために光が使用される光ダイナミック療法(光放射線治療、光線療法または光化学療法とも呼ばれている)に対して使用することができる。薬剤は体内に注入され、どこへでも移動し得るが、内部領域を照明することは外部領域よりも難しい。例えば内視鏡を使用することによって、内部位置に光を供給する目的にファイバ・レーザを使用することができる。例示的な使用が、アール・エム・バーダスドンク(R.M.Verdaasdonk)およびシー・エフ・ピー・バン・スオール(C.F.P.van Swol)、「Laser light delivery systems for medical applications」、Phys.Med.Biol.、42、869〜887ページ(1997)に記載されている。この文献の内容は、その全体が、本願明細書に援用される。
【0078】
ファイバ・レーザは、例えばレーザまたはレーザの部分を機械的に移動させることなく放出方向を制御できることが望ましい用途に使用することもできる。さらに、ファイバ・レーザからのコヒーレント放射を使用して、特定の生物ガスまたは化学ガスを検出することもでき、これらのガスは、そのレーザ放射場に合った特定の分子遷移によって追跡される。
【0079】
(実施例)
さまざまなファイバ・レーザを以下のように製造した。独立した厚さ8μmのPEIフィルムの両面にAs2S3層(厚さ5μm)を熱蒸着し、続いて、このコーティングされたフィルムを丸めて中空多層管にすることによって、中空コア・フォトニック・バンドギャップ・ファイバ・プリフォームを製造した。PEIの厚い保護外層を有するこの巨視的な中空プリフォームを、約260℃で真空加熱することによって統合させ、次いで、約305℃のファイバ線引き塔の中で線引きして、数百メートルのファイバとした。このプリフォームから3種類の異なるファイバを線引きした。1つは、約500nmの基本反射バンドギャップを有し、1つは、約600nmの基本反射バンドギャップを有し、1つは、約690nmの基本反射バンドギャップを有する。
【0080】
t−ブチルペルオキシド(tBP)またはアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)と、n−ブチルメルカプタンと、有機色素(0.05〜0.5重量%)とを含む、メタクリル酸メチル(MMA)モノマーとメタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)モノマーの混合溶液を調製し、上記の中空コア・フォトニック・バンドギャップ・ファイバの中に挿入した。このファイバを、90℃(tBP)または60℃(AIBN)のオーブンに20時間入れ、重合させた。全ての色素は、エキシトン・インコーポレーテッド社(Exciton,Inc.)社から入手した。使用した色素は以下のとおりである:(1)クマリン503 0.5重量%、(2)クマリン500 0.5重量%、(3)クマリン540A 0.5重量%、(4)ローダミン590 0.1重量%、(5)DCM 0.1重量%、(6)LDS698 0.1重量%、(7)オキサジン720、(8)LD700 0.1重量%、(9)オキサジン725 0.1重量%。色素(1)〜(3)は、約500nmの基本反射バンドギャップを有するファイバに入れた。色素(4)は、約600nmの基本反射バンドギャップを有するファイバに入れた。色素(5)〜(9)は、約690nmの基本反射バンドギャップを有するファイバに入れた。
【0081】
ファイバ・レーザの光ポンプは、公称パルス持続時間9ns、繰返し数10Hzの直線偏光パルスNd:YAGレーザ(Continuum Minilite II)とした。色素の蛍光に従って、第2調波(532nm)と第3調波(355nm)の両方をポンプとして利用した。このポンプ・ビームを、500μmのピンホールによる空間フィルタリングにかけ、このうちの小さな割合のエネルギーをビーム・スプリッタによって分離してポンプ・エネルギーを監視し、半波長板によってポンプ偏光を制御し、焦点距離2.54cm(1インチ)のレンズによってポンプをファイバ・コアに結合した。ポンプ入力エネルギーはエネルギー計(Coherent PM 1000、54−09およびJ3S−10)を使用して測定した。ファイバ・レーザから放出された結果として生じたレーザ光のエネルギーは、積分球(スフェア・オプティクス社(Sphere Optics)から入手)によって集め、ポンプ信号を排除するために前面に高域フィルタが取り付けられた同じエネルギー計を使用して測定した。ポンプ・エネルギーは可変光減衰器を使用して調整した。生成されたレーザ光の放出スペクトルは、直径600μmのマルチモード・ファイバ・プローブによって集めた後、分光計によって測定した。
【0082】
図5を参照すると、ファイバからのレーザ放出スペクトルが示されている。スペクトルの番号は、以前に使用した色素の番号に対応する。スペクトル(1)〜(3)を与えたファイバは355nmの放射でポンピングした。スペクトル(4)〜(9)を与えたファイバは532nmの放射でポンピングした。
【0083】
図6A〜6Cを参照すると、利得媒質としてLDS698を使用したファイバ・レーザのレーザ発振特性が示されている。図6Aは、色素濃度が500ppm、ポンプ・エネルギーがしきい値未満(曲線(A))、1.2EtH(曲線(B))および1.8EtH(曲線(C))(EtHはレーザ発振しきいエネルギー値)のファイバ・レーザの放出スペクトルを示す。図6Aの挿入図は、異なる色素濃度(それぞれ50ppmおよび500ppm)について、スペクトルの半値幅をポンプ・エネルギーの関数として示したものである。図6Bは、レーザ・エネルギーがポンプ・エネルギーに依存していることを示している。具体的には、図6Bは、色素濃度50ppmおよび500ppmのファイバ・レーザについて、それぞれEtH=86nJおよびEtH=100nJであることを示している。図6Cは、色素濃度500ppmのファイバ・レーザについて、放出強度の高分解能プロットを波長の関数として示す。このスペクトルは、モード間隔が約2nm、品質ファクタが640であることを明らかにしている。
【0084】
図7Aおよび7Bを参照すると、利得媒質としてLDS698を使用したファイバ・レーザからのレーザ放出の幾何学的依存性が示されている。図7Aは、このレーザの角強度パターンを、バルク色素との比較で示す。この測定では、ファイバに対して検出器を一定の位置に維持し、ポンプ放射の偏光状態の方向を360℃回転させた。図7Bは、ファイバに対して固定された位置にある検出器によって測定されたレーザ放出の偏光依存性を示す。ここでは、ポンプ放射の偏光を一定に維持し、分析器のパス軸を回転させた。バルク色素によって放出された光の偏光も示されている。レーザ放出の偏光度は0.6と測定され、バルク色素放出の偏光度は0.22であった。
【0085】
いくつかの実施形態を説明した。他の実施形態は特許請求の範囲に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1A】ファイバの導波路軸に対して直角な面から見た、フォトニック結晶ファイバ導波路を含むファイバ・レーザの1実施形態の断面図。
【図1B】ファイバの導波路軸に対して平行な面から見た、図1Aに示されたファイバ・レーザの実施形態の断面図。
【図1C】図1Aに示されたファイバ・レーザの一部分の屈折率プロファイルのグラフ。
【図2A】ファイバ・レーザを製造する方法の1ステップを示す概略図。
【図2B】ファイバ・レーザを製造する方法の1ステップを示す概略図。
【図2C】ファイバ・レーザを製造する方法の1ステップを示す概略図。
【図2D】ファイバ・レーザを製造する方法の1ステップを示す概略図。
【図3】縁放出ファイバ・レーザを含むシステムの概略図。
【図4】レーザ放射を放出する複数の不連続部分を含むファイバ・レーザの概略図。
【図5】さまざまな利得媒質を含むファイバ・レーザの放出スペクトルのグラフである。
【図6A】さまざまなポンプ放射強度でのファイバ・レーザからの放出を示すグラフ。
【図6B】同じ色素を異なる濃度で含むファイバ・レーザの放出エネルギーを、ポンプ強度の関数として示すグラフ。
【図6C】ファイバ・レーザの放出スペクトル。
【図7A】異なるポンプ放射偏光に対するレーザ放出強度の依存性を示すファイバ・レーザの角強度パターン。
【図7B】レーザ放出強度を分析器の方向の関数として示すグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品であって、
該導波路軸に沿って延びるファイバ導波路を備え、該ファイバ導波路は
導波路軸に沿って延びるコアと、
該コアを取り囲む閉じ込め領域であって、該閉じ込め領域は、該導波路軸に沿って第1の波長λ1の放射を導くように構成され、ある経路に沿って該閉じ込め領域に入射したλ1と異なる第2の波長λ2の放射の少なくとも一部を透過させるように構成される、閉じ込め領域とを含み、
該コアが、λ1の放射と相互作用して、λ2の放射を発生させるように選択されたコア材料を含む、
物品。
【請求項2】
前記ファイバ導波路が、十分なパワーのλ1の放射が前記コアに導かれたときに、前記導波路軸に対して直角の方向にλ2の放射を誘導放出するように構成される、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記コアに導かれたλ2の前記放射が直線偏光されているときに、前記誘導放出が、前記導波路軸に対して非対称である、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記非対称放出が、前記導波路軸に対して双極子形の強度パターンを有する、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記誘導放出が、前記導波路軸に沿って約10λ2以上にわたって延びる前記ファイバ導波路の部分に沿って発生する、請求項2に記載の物品。
【請求項6】
前記誘導放出が、前記導波路軸に沿って約1mm以上にわたって延びる前記ファイバ導波路の部分に沿って起こる、請求項2に記載の物品。
【請求項7】
前記コアが、1μmからから約1,000μmまでの範囲の直径を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記コアが、λ2またはλ2に近い波長の1つまたは複数の共振器モードをサポートするように構成される、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記モードの少なくとも1つに関して、約500以上の品質ファクタQを有する、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記閉じ込め領域が、前記導波路軸に対して直角の方向に低屈折率領域と交互に並んだ複数の高屈折率領域を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記複数の低屈折率領域が、前記閉じ込め領域のホーリー部分に対応する、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
交互に並んだ前記複数の高屈折率部分および低屈折率部分が、高い屈折率を有する第1の材料層と低い屈折率を有する第2の材料層の互層に対応する、請求項10に記載の物品。
【請求項13】
前記互層が、前記導波路軸に対して螺旋形の断面を有する構造を画定する、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記螺旋形構造が、前記コアの周りを複数回にわたって巻いた前記異なる材料の少なくとも2つの層からなる多層構造を含む、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記閉じ込め領域が、λ1の放射に対するフォトニック・バンド・ギャップを提供するように構成される、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記閉じ込め領域が、十分なパワーのλ1の放射が前記コアに導かれたときにλ2でレーザ発振させるのに十分な光フィードバックを提供するのに十分なλ2の放射を反射するように構成される、請求項1に記載の物品。
【請求項17】
λ1およびλ2が、約300nmから約15,000nmまでの範囲にある、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記コア材料が利得媒質を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記利得媒質が有機材料である、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記利得媒質が色素を含む、請求項18に記載の物品。
【請求項21】
前記コア材料が基質材料を含み、前記利得媒質が、該基質材料の中に分散されている、請求項18に記載の物品。
【請求項22】
前記基質材料がポリマーである、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
前記コア材料が室温で固体材料である、請求項1に記載の物品。
【請求項24】
前記コア材料が室温で流体である、請求項1に記載の物品。
【請求項25】
前記ファイバ導波路が、前記コアが前記コア材料を含まない区間を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項26】
λ1の放射を発生させるように構成され、λ1の該放射を前記コアに導くよう配置された光源をさらに備える、請求項1に記載の物品。
【請求項27】
前記光源がレーザ光源である、請求項26に記載の物品。
【請求項28】
方法であって、
導波路軸に沿って波長λ1の放射を導くように構成されるファイバ導波路を提供することであって、該ファイバ導波路は、該導波路軸に沿って延びるコアを含み、該コアが、λ1の放射と相互作用して、λ2の放射を発生させるように選択されたコア材料を有する、ファイバ導波路を提供すること、
該ファイバ導波路から該導波路軸に対して直角の方向にλ2の放射を放出させるのに十分な強度のλ1の放射を前記コアの中へ導くこと
を備える、方法。
【請求項29】
λ2の放射を放出する前記ファイバ内の位置を変更するために、前記ファイバ内の利得媒質の位置を移動させることをさらに備える、請求項28に記載の方法。
【請求項1】
物品であって、
該導波路軸に沿って延びるファイバ導波路を備え、該ファイバ導波路は
導波路軸に沿って延びるコアと、
該コアを取り囲む閉じ込め領域であって、該閉じ込め領域は、該導波路軸に沿って第1の波長λ1の放射を導くように構成され、ある経路に沿って該閉じ込め領域に入射したλ1と異なる第2の波長λ2の放射の少なくとも一部を透過させるように構成される、閉じ込め領域とを含み、
該コアが、λ1の放射と相互作用して、λ2の放射を発生させるように選択されたコア材料を含む、
物品。
【請求項2】
前記ファイバ導波路が、十分なパワーのλ1の放射が前記コアに導かれたときに、前記導波路軸に対して直角の方向にλ2の放射を誘導放出するように構成される、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記コアに導かれたλ2の前記放射が直線偏光されているときに、前記誘導放出が、前記導波路軸に対して非対称である、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記非対称放出が、前記導波路軸に対して双極子形の強度パターンを有する、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記誘導放出が、前記導波路軸に沿って約10λ2以上にわたって延びる前記ファイバ導波路の部分に沿って発生する、請求項2に記載の物品。
【請求項6】
前記誘導放出が、前記導波路軸に沿って約1mm以上にわたって延びる前記ファイバ導波路の部分に沿って起こる、請求項2に記載の物品。
【請求項7】
前記コアが、1μmからから約1,000μmまでの範囲の直径を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記コアが、λ2またはλ2に近い波長の1つまたは複数の共振器モードをサポートするように構成される、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記モードの少なくとも1つに関して、約500以上の品質ファクタQを有する、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
前記閉じ込め領域が、前記導波路軸に対して直角の方向に低屈折率領域と交互に並んだ複数の高屈折率領域を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記複数の低屈折率領域が、前記閉じ込め領域のホーリー部分に対応する、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
交互に並んだ前記複数の高屈折率部分および低屈折率部分が、高い屈折率を有する第1の材料層と低い屈折率を有する第2の材料層の互層に対応する、請求項10に記載の物品。
【請求項13】
前記互層が、前記導波路軸に対して螺旋形の断面を有する構造を画定する、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記螺旋形構造が、前記コアの周りを複数回にわたって巻いた前記異なる材料の少なくとも2つの層からなる多層構造を含む、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記閉じ込め領域が、λ1の放射に対するフォトニック・バンド・ギャップを提供するように構成される、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記閉じ込め領域が、十分なパワーのλ1の放射が前記コアに導かれたときにλ2でレーザ発振させるのに十分な光フィードバックを提供するのに十分なλ2の放射を反射するように構成される、請求項1に記載の物品。
【請求項17】
λ1およびλ2が、約300nmから約15,000nmまでの範囲にある、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記コア材料が利得媒質を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記利得媒質が有機材料である、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記利得媒質が色素を含む、請求項18に記載の物品。
【請求項21】
前記コア材料が基質材料を含み、前記利得媒質が、該基質材料の中に分散されている、請求項18に記載の物品。
【請求項22】
前記基質材料がポリマーである、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
前記コア材料が室温で固体材料である、請求項1に記載の物品。
【請求項24】
前記コア材料が室温で流体である、請求項1に記載の物品。
【請求項25】
前記ファイバ導波路が、前記コアが前記コア材料を含まない区間を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項26】
λ1の放射を発生させるように構成され、λ1の該放射を前記コアに導くよう配置された光源をさらに備える、請求項1に記載の物品。
【請求項27】
前記光源がレーザ光源である、請求項26に記載の物品。
【請求項28】
方法であって、
導波路軸に沿って波長λ1の放射を導くように構成されるファイバ導波路を提供することであって、該ファイバ導波路は、該導波路軸に沿って延びるコアを含み、該コアが、λ1の放射と相互作用して、λ2の放射を発生させるように選択されたコア材料を有する、ファイバ導波路を提供すること、
該ファイバ導波路から該導波路軸に対して直角の方向にλ2の放射を放出させるのに十分な強度のλ1の放射を前記コアの中へ導くこと
を備える、方法。
【請求項29】
λ2の放射を放出する前記ファイバ内の位置を変更するために、前記ファイバ内の利得媒質の位置を移動させることをさらに備える、請求項28に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【公表番号】特表2009−524252(P2009−524252A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551467(P2008−551467)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/001704
【国際公開番号】WO2007/084785
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(500219537)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (25)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】77 Massachusetts Avenue, Cambridge, Massachussetts 02139,U.S.A
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/001704
【国際公開番号】WO2007/084785
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(500219537)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (25)
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】77 Massachusetts Avenue, Cambridge, Massachussetts 02139,U.S.A
【Fターム(参考)】
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