説明

表面検査装置および表面検査方法

【課題】棒鋼等の長手方向に連続的に存在する表面欠陥を精度よく検出する。
【解決手段】本発明の表面検査装置15は、長尺の被検査材2の表面を照明する照明手段16と、被検査材2の表面を撮像する撮像手段17と、撮像手段17により撮像された画像を処理して欠陥を検出する画像処理手段18とを備えた表面検査装置15において、被検査材2の周囲に撮像手段17との挟み角が異なる2台の照明手段16を配置している。照明手段16を交互に点灯させて欠陥を検出すると、欠陥の位置によりいずれかの照明手段16を点灯させて欠陥を追随して検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の被検査材の表面の欠陥を検査する技術に関し、特に、表面欠陥の位置および形状に依存しないで精度よく欠陥を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、線材、棒鋼、鋼管などは圧延材を熱間または冷間で圧延することによって製造されるのが一般的である。圧延材の圧延速度(通材速度)は、たとえば、100m/secであり非常に速く、通材中に目視にて圧延材の表面疵を見つけるのは非常に難しい。そのため、圧延を行いながら圧延材の欠陥(表面疵)を検査するには、各種非破壊検査装置によって自動的に欠陥発生を検出している。圧延材(被検査材)の表面を検査する方法として、渦流探傷や漏洩磁束探傷などの電磁気的探傷試験が広く用いられているが、被検査材の振動や被検査材の電磁気特性のムラによるノイズ発生などで誤過検出が問題となる場合も多い。
【0003】
これに対し、高速カメラを利用した光学的な自動表面検査装置が、近年開発されてきている。
一般に連続的に製造される円形断面被検査材(線材、棒鋼、鋼管)を光学的に検査する場合、高温物体を撮像する自発光画像を除いては、照明手段を用いて被検査材に照明光を照射する必要がある。照明方法としては、被検査材が貫通するような円形のリング照明を用いる場合がある。撮像系を挟んで上流および下流のどちらか一方側または両側に照明を配置し、長手方向のやや斜めから入射した照明光で被検査材を照射する。被検査材で反射して撮像光学系に入射した光が被検査材の画像となる。被検査材に欠陥があると正常な部分と比較して照明の反射状況が変化するので、画像上で暗部または明部となって認識することができる。
【0004】
ところで、被検査材には、不定期に発生するランダム疵と連続的に発生する連続疵とがある。連続疵は有害性が大きく、早期に発生しないと全量廃却になって、歩留まり低下に繋がる。表面検査装置としては、ランダム疵のみならず連続疵も精度よく検出する必要がある。
従来の表面検査装置として、特開2009−8659号公報(特許文献1)に開示される表面疵検査装置がある。この表面疵検査装置は、渦流探傷または漏洩磁束探傷を行うことにより、被検査材の表面疵候補を検出した後、表面疵候補を含む被検査材表面の所定領域を撮像し、撮像結果を画像処理することにより表面疵の有無を判定する。探傷装置だけでは被検査材の振動や、電磁気特性のムラによるノイズ発生により誤過検出が問題となる場合が多いため、探傷装置は表面疵候補を見つける手段として使用する。撮像手段に用いる照明は、被検査材の搬送方向上流および下流側に配置し、被検査材の撮像を行っている。被検査材に表面疵が存在する場合、正常部と比較して光源からの光の反射、散乱光の強度が変化するので画像上で暗部または明部となって認識することができる。
【0005】
また、別の表面検査装置として、特表2009−507211(特許文献2)に開示される表面傷検査装置がある。この表面傷検査装置は、圧延/引き抜き金属棒などの検査対象物の表面傷を検出する。この装置は、被検査材の表面輝度がほぼ均一となるように複数個の光源を被検査材の周囲360°を覆うように設置し、複数のカメラで表面画像を撮像する。防塵、パッケージ化のため光源から被検査材への入射光の光路と被検査材からカメラへの反射光の光路がなす角が1°近傍となるよう光学系内にミラーを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−8659号公報
【特許文献2】特表2009−507211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示された技術では以下のような問題点がある。
被検査材の表面の長手方向に連続した欠陥は、照明の照射角度と表面疵との位置関係および表面疵の形状に依存するために明部または暗部となって認識できるが、被検査材の円周方向の輝度分布が一様になるように周囲360°全方向に照明が設置すると欠陥に起因する散乱光の他に、表面からの強い散乱光も通常では存在するために欠陥起因の散乱光が強調されず、欠陥が精度よく検出できない。すなわち、表面欠陥の位置および形状に依存せず、精度よく被検査材表面の欠陥を検出する必要があるにもかかわらず、そのように欠陥を検出することができない。
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべく、鋼材の長手方向に連続的に存在する表面欠陥を精度よく検出できる表面検査装置および表面検査方法を提供することを目的とし、結果として、連続製造される鋼材の大量廃棄を抑制し、歩留まり向上に寄与する表面検査装置および表面検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明は、次の手段を講じた。
本発明の表面検査装置は、長尺の被検査材の表面を照明する照明手段と、被検査材の表面を撮像する撮像手段と、この撮像手段により撮像された被検査材の表面の画像を処理して欠陥を検出する画像処理手段とを備えた表面検査装置において、前記照明手段は、前記被検査材に対する照射角度を変化させて前記被検査材の表面を照明することを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記照明手段は、前記撮像手段から見た前記被検査材への照射角度が異なる複数の光源を備え、前記複数の光源を切り替えて前記被検査材の表面を照明するとよい。
好ましくは、前記表面検査装置は、前記画像処理手段により欠陥が検出されるまでは、照射角度の異なる複数の光源の点灯および消灯を連続的に切り替えて前記被検査材の表面を照明し、前記画像処理手段により欠陥が検出されると、検出された欠陥の位置に基づいて点灯することが決定された光源により前記被検査材の表面を照明するように、前記照明手段を制御する制御手段を備えるとよい。
【0011】
好ましくは、前記表面検査装置は、前記被検査材の進行中に欠陥を検出し、前記複数の照明装置は、第1の照明装置および第2の照明装置を備え、前記照明装置と前記撮像手段とは、前記被検査材の進行方向に対して垂直方向に交わる面上に配置され、前記第1の照明装置は、前記撮像手段との挟み角が0〜45°であって、前記第2の照明装置は、前記撮像手段との挟み角が45〜90°であるとよい。
【0012】
好ましくは、前記表面検査装置は、前記画像処理手段により欠陥が検出されるまでは、前記第1の照明装置および前記第2の照明装置を交互に点灯させて前記被検査材の表面を照明し、欠陥が検出されると、検出された欠陥の位置に基づいて点灯することが決定された前記第1の照明装置および前記第2の照明装置のいずれかにより前記被検査材の表面を照明するように、前記照明手段を制御する制御手段を備えるとよい。
【0013】
好ましくは、前記制御手段は、検出された欠陥の位置が前記撮像手段の視野の中央部である場合には前記第2の照明装置を点灯し、検出された欠陥の位置が前記視野の端部である場合には前記第1の照明装置を点灯するように、前記照明手段を制御するとよい。
好ましくは、前記照明装置および前記撮像手段は、前記面上で対称に配置されるとよい。
【0014】
好ましくは、前記照明手段は、前記撮像手段により撮像したときの被検査材の画像輝度が十分になるように光量を調整するとよい。
好ましくは、前記照明手段は、前記撮像手段により撮像したときの被検査材の画像輝度が対称になるように光量を調整するとよい。
一方、本発明の表面検査方法は、長尺の被検査材の表面を照明して、被検査材の表面を撮像して、撮像された被検査材の表面の画像を処理して欠陥を検出する表面検査方法において、前記被検査材に対する照射角度を変化させて前記被検査材の表面を照明することを特徴とする。
【0015】
好ましくは、被検査材の表面を撮像する撮像手段との挟み角が0〜45°である第1の照明装置および挟み角が45〜90°である第2の照明装置により被検査材の表面を照明し、欠陥が検出されるまでは、前記第1の照明装置および前記第2の照明装置を交互に点灯させて前記被検査材の表面を照明し、欠陥が検出されると、検出された欠陥の位置に基づいて点灯することが決定された前記第1の照明装置および前記第2の照明装置のいずれかにより前記被検査材の表面を照明するとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、鋼材の長手方向に連続的に存在する表面欠陥を精度よく検出でき、結果として、連続製造される鋼材の大量廃棄を抑制し、歩留まり向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】圧延設備の概略図である。
【図2】表面検査装置の概念図である。
【図3】表面検査装置における照明およびカメラの配置図(その1)である。
【図4】表面検査装置における照明およびカメラの配置図(その2)である。
【図5】表面検査装置における照明およびカメラの配置図(その3)である。
【図6】欠陥検出判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】欠陥追随処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】外側照明および内側照明の切替を説明する図である。
【図9】被検査材の表面を撮像したときの画像である。
【図10】表面疵を撮像したときの輝度の変化図である。
【図11】表面疵を撮像したときの輝度微分絶対値の変化図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る表面検査装置および表面検査方法について説明する。なお、以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
本実施形態に係る表面検査装置および表面検査方法は、長尺の被検査材の表面疵を検査するものであって、たとえば、線材、棒鋼、鋼管の表面疵を検査するものである。線材を例にとり説明する。図1は、線材を製造する圧延設備を示したものである。
【0019】
圧延設備1は、たとえば、鋼材からなる圧延材2を連続圧延して線材を製造するものであり、上流側から下流側に向けて、圧延材2を加熱する加熱炉3、デスケーラ4、粗圧延機5、中間圧延機6、仕上げ圧延機7、巻き取り機8が順番に配設されている。なお、図1の圧延設備1は、圧延材2を連続圧延して棒鋼、鋼管を製造するものであってもよい。
以下の説明において、図1の左側を上流側、図1の右側を下流側とする。
【0020】
加熱炉3は圧延材2を1000〜1200℃程度に加熱する装置であり、加熱炉3で加熱された圧延材2はデスケーラ4に送られる。デスケーラ4は加熱後の圧延材2の表面に形成されたサブスケールを水蒸気の作用、高圧洗浄水の噴き付け、又はメカニカルブラシなどで除去する装置であり、デスケーラ4でサブスケールが除去された圧延材2は粗圧延機5に送られる。粗圧延機5、中間圧延機6および仕上げ圧延機7は、圧延材2を所定の大きさに圧延するもので、仕上げ圧延機7で所定の大きさに圧延された圧延材2は巻き取り機8に送られて、圧延材2がリング状に巻き取られる。
【0021】
粗圧延機5、中間圧延機6、および仕上げ圧延機7は、対になった圧延ロール9、9を備えた複数の圧延スタンド10を備えている。圧延ロール9は円筒状や円柱状に形成されたもので、その外周面(外周部)には様々な形状のカリバー11が形成されている。各圧延スタンド10には、圧延ロール9が様々な方向を向けて配置されている。
この圧延設備1によれば、圧延材2を各圧延スタンド10に通材し、圧延ロール9は圧延材2に対して水平方向、垂直方向等様々な角度から圧延し、当該圧延材2をカリバー11によって角、楕円、丸等に変形させつつ当該圧延材2の断面を順次減少させることにより、圧延材2を所定の大きさに圧延することができる。
【0022】
さて、このような圧延ロール9にて圧延材2を圧延すると、圧延材2の表面に長手方向に長い疵が入ることがある。圧延材2の表面に疵(表面疵)が入ると、表面疵の入った部分を破棄しなければならないため、圧延材2の圧延を行うにあたっては素早く表面疵を検出して対策を講じなければならない。本発明によれば、表面検査装置15や表面検査方法によって、圧延材2の表面疵を素早く検出できるようにしている。
【0023】
表面検査装置15は、仕上げ圧延機7の下流側に配置されている。なお、表面検査装置15は、粗圧延機5と中間圧延機6との間、中間圧延機6と仕上げ圧延機7との間に設けてもよい。以下、表面検査装置15および表面検査方法について詳しく説明する。
図2は、表面検査装置15の概念図を示したものである。図2に示すように、表面検査装置15は、照明手段16と、撮像手段17と、画像処理手段18とを備えている。
【0024】
照明手段16は、長尺の被検査材(圧延材)2の表面を照明するものであって、たとえばLED照明ユニットで構成されていて、被検査材2の周りに所定の間隔をおいて少なくとも2つが配置されている。より詳しくは、照明手段16は撮像手段17との挟み角が所定の角度になるように被検査材2の周りに配置されている。撮像手段17は、被検査材2の表面を撮像するものであってCCDあるいはCMOSを利用したラインカメラ又はエリアカメラ等により構成されており、照明手段16と同様に被検査材2の周りに少なくとも1つが配置されている。画像処理手段18は、撮像手段17にて撮像された被検査材2の表面の画像を処理して欠陥を検出するものであって、コンピュータ等により構成されている。
【0025】
図3は、照明手段(照明装置)16と撮像手段(カメラ)17の配置図である。図3において被検査材2は奥から手前または手前から奥に進行している。図3における照明装置(1)16は、カメラ17との挟み角θ(1)が0〜45°となるように設置され、被検査材2の欠陥(1)を斜めから照射し、欠陥面による散乱光を検出するのに適している。しかし、照明装置(1)16では、欠陥(2)からの散乱光については、欠陥(2)付近の面からの反射光の影響も受けてしまうため、欠陥(2)を強調して検出できない。
【0026】
これに対して、照明装置(2)16は、カメラ17との挟み角θ(2)が45〜90°となるように設置され、被検査材2の欠陥(2)を斜めから照射し、欠陥面による散乱光を検出するのに適している。しかし、照明装置(2)16では、欠陥(1)からの散乱光については、欠陥(1)付近の面からの反射光の影響も受けてしまうため、欠陥(1)を強調して検出できない。
【0027】
このようなことを考慮すると、長手方向に連続して存在する被検査材2の欠陥検出には、照明装置(1)および照明装置(2)を片方ずつ、所定の時間(たとえば0.5秒)毎に切り替えて照射すると、図3に示す欠陥(1)も欠陥(2)も精度よく検出することができるようになるため、効果的である。
さらに、図3の構成に照明装置16を2台追加して配置した図を図4に示す。図4中の照明装置(3)16は照明装置(1)16と、照明装置(4)16は照明装置(2)16と、左右反転した位置(角度)に設置し、上記と同様に欠陥検出を可能にする。さらに、図3の構成では検出できないまたは検出することが困難な欠陥(3)の検出も可能にする。図4に示すように、照明装置16を配置することにより、被検査材2の円周方向90°範囲の欠陥検出が可能となる。
【0028】
さらに、図5は、被検査材2の周囲360°の欠陥を検出できるカメラ17および照明装置16の配置図の一例である。カメラ(1)17と照明装置(1)16との挟み角がθ(1)、カメラ(1)17と照明装置(2)16の挟み角がθ(2)、カメラ(4)17と照明装置(2)16の挟み角がθ(1)となるよう、カメラ(1)17、照明装置(1)16、照明装置(2)16およびカメラ(4)17を配置してある。同様な角度配置をもって、図5に示すように、照明装置(3)16、照明装置(4)16、照明装置(5)16、照明装置(6)16、照明装置(7)16、照明装置(8)16、カメラ(2)17およびカメラ(3)17を設置する。
【0029】
このように配置して、照明装置16の点灯/消灯を切り替える。まず、図5(A)に示すように、照明装置(1)16、照明装置(3)16、照明装置(5)16および照明装置(7)16を消灯し、照明装置(2)16、照明装置(4)16、照明装置(6)16および照明装置(8)16を点灯することにより、カメラ(1)17およびカメラ(3)17により視野の中央付近に存在する欠陥を検出し、カメラ(2)17およびカメラ(4)17により視野の端付近に存在する欠陥を検出する。
【0030】
さらに、図5(B)に示すように、照明装置(1)16、照明装置(3)16、照明装置(5)16および照明装置(7)16を点灯し、照明装置(2)16、照明装置(4)16、照明装置(6)16および照明装置(8)16を消灯することにより、カメラ(1)17およびカメラ(3)17により視野の端付近に存在する欠陥を検出し、カメラ(2)17およびカメラ(4)17により視野の中央付近に存在する欠陥を検出する。
【0031】
このようにして、照明装置16の点灯/消灯を切り替えることにより、被検査材2の周囲360°の欠陥を検出できる。なお、照明装置(1)16だけに注目すると、照明装置(1)16は、カメラ(1)17およびカメラ(4)17の両方に対して照明装置として機能することにより、照明装置16の総台数を少なくできる効果がある。
なお、図2〜図5に示すように、照明装置16およびカメラ17は、被検査材2の進行方向に対して垂直方向に交わる面上に配置されている。この垂直方向は完全な垂直(90°)である必要はなく、かつ、完全な同一面上に配置されている必要はない。照射角度が異なる照明装置16を切り替えて、被検査材2の表面の欠陥の形状および位置に基づいて、撮像された画像に明部または暗部が強調して現れる配置であれば構わない。
【0032】
次に、画像処理手段(コンピュータ)18で実行される欠陥検出判定処理の手順について、図6を参照して説明する。
なお、図6のフローチャートでは、nフレームの平均輝度から欠陥を検出する。例えば撮像レートが10000ライン/秒で0.05秒毎に判定する場合、定数nは500となる。
【0033】
ステップ1(以下、ステップをSと記載)にて、変数aに1を代入し、S2にて、変数iに変数aを代入する。S3にて、変数iが(a+n−1)であるか否かを判定し、そうであると(S3にてYes)処理はS5へ移され、もしそうでないと(S3にてNo)処理はS4へ移される。
S4にて、変数iに1を加算する。その後、処理はS3へ戻される。S5にて、a〜(a+n−1)フレームの輝度平均の微分絶対値を算出する。このとき、輝度平均が算出されるフレーム数としてはnとなる。
【0034】
S6においては、S5にて算出した微分絶対値が閾値を超えているか否かを判定し、そうであると(S5にてYes)処理はS7へ移され、もしそうでないと(S5にてNo)処理はS8へ移される。
欠陥が存在すると判定された際には(S7)、処理はS8へ移される。S8にて、変数aが被検査材2の長さを超えているか否かを判定し、そうであると(S8にてYes)処理は終了し、もしそうでないと(S8にてNo)処理はS9へ移される。S9にて、変数aにnを加算する。その後、処理はS2へ戻される。
【0035】
図6に示した欠陥検出判定方法では、連続するnフレーム(1フレームでも構わないが上述の説明では500フレーム)における輝度の平均値を微分した絶対値が、予め設定された閾値を超えていれば欠陥が存在すると判定する。なお、輝度微分絶対値以外にも、ハイパスフィルタをかけて高周波成分を検出することで欠陥の有無を判定してもよい。このような処理が被検査材2の検査対象の長さを越えるまで繰り返し行われる。
【0036】
このようにして、欠陥が存在すると判定される場合に、検出できた欠陥を追随して検出できるように本実施形態に係る表面検査装置15では以下のように照明を切り替えている。欠陥が存在すると判定されるまでは0.5秒間隔で点灯/消灯を切り替えていた外側の照明装置16および内側の照明装置16について、欠陥が存在すると判定されるといずれか一方のみを点灯し他方を消灯するように切り替える。
【0037】
このような欠陥追随処理(照明制御処理)の手順について、図7を参照して説明する。なお、照明装置16の点灯させたり消灯させたりする制御は、上述した画像処理手段(コンピュータ)18で行われるものとする。照明装置16の制御は、これに限定されるものではなく、他の制御装置であっても構わない。
S11にて、上工程からの被検査材2の通過信号があるか否かを判定し、通過信号があると判定されると(S11にてYes)処理はS12へ移されて、もしそうでないと(S11にてNo)処理はS11へ戻されて通過信号を待つ。上工程からの被検査材2の通過信号がある場合には、まもなくこの表面検査装置15に被検査材2が到着することを示す。
【0038】
S12にて、照明装置16の切替(点灯消灯繰返し)を開始する。このとき、外側の照明装置16(図4に示す照明装置(2)16および照明装置(4)16)と、内側の照明装置16(図4に示す照明装置(1)16および照明装置(3)16)とを0.5秒間隔で点灯/消灯させる。照明装置(2)16および照明装置(4)16は同じタイミングで点灯/消灯し、照明装置(1)16および照明装置(3)16は同じタイミングで点灯/消灯する。
【0039】
S13にて、欠陥検出処理を開始する。S14にて、被検査材2に欠陥が存在するか否かを判定する。判定処理の詳細は図6に示した通りである。被検査材2に欠陥が存在すると(S13にてYes)処理はS16へ移され、もしそうでないと(S13にてNo)処理はS15へ移されて照明装置16の切替(点灯消灯繰返し)が開始される。その後、処理はS13へ戻されて欠陥の検出を継続する。なお、S15にて、既に照明装置16の切替(点灯消灯繰返し)が開始されているときには、切替(点灯消灯繰返し)が継続されることになる。
【0040】
S16にて、欠陥の最大位置xを探索する。このとき探索された位置xは、画像中の被検査材2の幅をwとして0<x<wで算出される。S17にて、探索された欠陥最大位置xが0.35w<欠陥最大位置x<0.65wを満足するか否かを判定する。0.35w<欠陥最大位置x<0.65wであると(S17にてYes)処理はS18へ移され、もしそうでないと(S17にてNo)処理はS19へ移される。
【0041】
S18にて、外側の照明装置16を点灯させて内側の照明装置16を消灯させる。S19にて、外側の照明装置16を消灯させて内側の照明装置16を点灯させる。S18およびS19の処理の後、処理はS20へ移される。
S20にて、被検査材2の通過信号があるか否かを判定し、表面検査装置15を被検査材2が通過していると(S20にてYes)処理はS13へ戻されて欠陥の検出が継続され、表面検査装置15を被検査材2が通過していないと(S20にてNo)処理は終了する。
【0042】
以上のような構造およびフローチャートを備えた表面検査装置15を用いた表面検査方法について説明する。なお、この表面検査方法の説明においては、主として、図4に示すように4台の照明装置16が配置されているものとする。
上工程から被検査材2が表面検査装置15に流れてくると(S11にてYes)、外側の照明装置16(図4では照明装置(2)16および照明装置(4)16)と内側の照明装置16(図4では照明装置(1)16および照明装置(3)16)との点灯/消灯が0.5秒ごとに切り替えられる。このとき、特定の0.5秒間のみに着目すると、外側の2台の照明装置16(照明装置(2)16および照明装置(4)16)および内側の2台の照明装置16(照明装置(1)16および照明装置(3)16)のいずれかの一方側の2台の照明装置16のみが点灯されている(S12)。
【0043】
欠陥検出が開始されて(S13)、被検査材2が表面検査装置15を通過している限り(S8にてYesと判定されるまで)S1〜S7の処理にて欠陥が存在するか否かが判定される。欠陥が存在すると判定されると(S6にてYes、S7、S14にてYes)、欠陥最大位置xが探索される(S16)。探索された欠陥最大位置xが0.35w<x<0.65wを満足すると(S17にてYes)、外側の照明装置16を点灯させて内側の照明装置16を消灯させる。欠陥最大位置xが0.35w<x<0.65wを満足しないと(S17にてNo)、外側の照明装置16を消灯させて内側の照明装置16を点灯させる。このように、被検査材2の表面に欠陥を一旦検出すると、0.5秒間隔で点灯と消灯とが繰り返されていた内側の照明装置16および外側の照明装置16は、検出した欠陥を追随して検出できるように、内側の照明装置16および外側の照明装置16のいずれかのみが点灯される。
【0044】
このように照明装置の点灯状態が切り替えられるとき、画像中の被検査材2の幅をw(pixel)とした場合に、0〜0.35w(pixel)または0.65w(pixel)〜w(pixel)に最大欠陥が存在するときに内側の照明装置16を点灯(外側の照明装置16を消灯)して、0.35w(pixel)〜0.65w(pixel)に最大欠陥が存在するときに外側の照明装置16を点灯(内側の照明装置16を消灯)する。たとえば、図8に示すように、欠陥が0.35w〜0.65wに存在する場合には外側の照明装置(2)16および照明装置(4)16を点灯させて中央部付近の欠陥を精度よく検出する。欠陥が0.35w〜0.65w以外に存在する場合には内側の照明装置(1)16および照明装置(3)16を点灯させて端付近の欠陥を精度よく検出する。
【0045】
図9にカメラ17で撮像した画像を示す。図9に示すように、欠陥(4)および欠陥(5)が被検査材2の表面に存在している。図9の下側に示す画像9Aは、内側の照明装置(1)16および照明装置(3)16を点灯させて撮像した画像であって、図9の上側に示す画像9Bは、外側の照明装置(2)16および照明装置(4)16を点灯させて撮像した画像である。
【0046】
図9の下側の画像9Aに示すように、内側の照明装置16を点灯させ外側の照明装置16を消灯させた場合には、欠陥(5)が明確に撮像されていない。一方、図9の上側の画像9Bに示すように、外側の照明装置16を点灯させ内側の照明装置16を消灯させた場合には、欠陥(4)および欠陥(5)が撮像されている。これは、外側の照明装置16は、カメラ17との挟み角θ(1)が45〜90°となるように設置され、被検査材2の中央部付近に存在する欠陥(4)および欠陥(5)を斜めから照射し、欠陥面による散乱光を検出するのに適していることを示している。一方、内側の照明装置16では、被検査材2の中央部付近に存在する欠陥(4)および欠陥(5)からの散乱光については、欠陥付近の面からの反射光の影響も受けてしまうため、欠陥を強調して検出できないことを示している。
【0047】
図9に示す撮像画像を処理して得られる輝度分布を図10に、輝度微分絶対値の分布を図11に、それぞれ示す。
輝度分布10Aおよび輝度微分分布11Aが内側の照明装置16のみを点灯させた画像9Aに、輝度分布10Bおよび輝度微分分布11Bが外側の照明装置16のみを点灯させた画像9Bに、それぞれ対応する。
【0048】
内側の照明装置16のみを点灯させた場合には、輝度分布10Aに示すように欠陥(5)が明確に検出できず、輝度微分分布11Aに示すように閾値で欠陥(5)を検出できていない。一方、外側の照明装置16のみを点灯させた場合には、輝度分布10Bに示すように欠陥(4)および欠陥(5)が明確に検出できて、輝度微分分布11Bに示すように閾値(30程度の輝度微分絶対値)で欠陥(4)および欠陥(5)を検出できている。
【0049】
さらに、複数の欠陥を検出した場合について説明する。画像9B(外側の照明装置(2)16および照明装置(4)16を点灯)に示すように、欠陥(4)および欠陥(5)の2つの欠陥を検出している。S16にて探索される欠陥最大位置xは、輝度の微分絶対値が最大となる160pixel付近となる。この160pixel付近は、0.35w〜0.65wに存在しているため、点灯と消灯とが切り替えされていた外側の照明装置16および内側の照明装置16は、外側の照明装置16が点灯されて内側の照明装置16が消灯された状態へ移行する(S18)。このように、いずれの照明装置16を点灯させるのかは、検出された欠陥の最大位置xにより決定されている。
【0050】
ここで、図5に示すように照明装置16とカメラ17とを配置とした場合、複数台のカメラ17が配置されている。このため、1つの欠陥を2台のカメラ17で撮像すること、複数の欠陥が同じタイミングで撮像されること、があり得る。このような場合には、評価値(たとえば、上述した輝度の微分絶対値)が最大となる欠陥に対し、追随を実施することで、精度よく欠陥を検出している。
【0051】
さらに、輝度分布10Bに示すように、照明装置(2)16および照明装置(4)16を点灯している時の輝度分布を見ると、右半分の最大値に対して、左半分の最大値は半分以下となっている。このような場合には、図7のフローチャートの照明切替中の外側の照明装置16を点灯する時には光量調整機能があることが、なお好ましい。詳しくは、画像1フレームまたは複数フレームの輝度分布に基づいて欠陥検出するとき、被検査材2の左半分の最大輝度が128以下(飽和する256階調の半分)となる場合には、現在輝度kとすると照明装置16の光源光量を128/k倍になるように調整する。これにより、十分な輝度の画像データに基づいて画像処理を行うことができるため、精度よい欠陥検出が可能になる。また、被検査材2の右半分の最大輝度と対称となるように左半分の光源光量を調整すると、左右対称な画像データに基づいて画像処理を行うことができるため、精度よい欠陥検出が可能になる。これに加え、上述のように十分な輝度となるように光源光量を調整すると、さらに精度よい欠陥検出が可能になる。
【0052】
以上のようにして、本実施形態に係る表面検査装置によると、被検査材の長手方向に連続的に存在する表面欠陥を精度よく検出できる。その結果、連続製造される鋼材の大量廃棄を抑制し、歩留まり向上に寄与することができる。
特に、本実施形態に係る表面検査装置は以下に示す効果がある。
被検査材に対する照射角度が異なる照明装置を切り替えて、表面の欠陥の形状および位置に基づいて、撮像された画像に明部または暗部が強調して現れ、広範囲の欠陥を検出することができる。
【0053】
さらに、表面の欠陥が検出されるまでは連続的に照明を切り替え、検出されると検出された欠陥の位置に応じて欠陥に対し斜照射となる照明を選択して点灯することにより欠陥を確実に追随して検出することができる。さらに、この場合において、複数の欠陥が検出された場合であっても、輝度微分絶対値の最大信号が得られる欠陥に追随して照明を選択するので、欠陥を確実に追随して検出することができる。
【0054】
さらに、照明装置がカメラとの挟み角が0〜45°となる位置と45〜90°となる位置に配置して切り替えているので、1台の照明装置では検出できない欠陥をもう一方の照明で補うことができ、欠陥を確実に検出することができる。さらに、カメラの台数を増やして、被検査材の表面全周をカメラで撮像する場合であっても、カメラおよび照明装置から構成されるユニットを対称に配置することにより、複数のカメラで照明装置を兼用することができる。さらに、照明装置の光量を調整する機能を持つので、照明装置を切り替えた場合であっても、欠陥を確実に検出することができる。
【0055】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
たとえば、上述した実施形態においては少なくとも2台の照明装置を配置しているが、照射角度が異なる2以上の光源を内蔵する1台の照明装置または単光源であっても照射角度を切り替えることのできる機構を備えた1台の照明装置であっても構わない。
【符号の説明】
【0056】
1 圧延設備
2 圧延材(被検査材)
3 加熱炉
4 デスケーラ
5 粗圧延機
6 中間圧延機
7 圧延機
8 巻き取り機
9 圧延ロール
10 圧延スタンド
11 カリバー
15 表面検査装置
16 照明手段(照明装置)
17 撮像手段(カメラ)
18 画像処理手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の被検査材の表面を照明する照明手段と、被検査材の表面を撮像する撮像手段と、この撮像手段により撮像された被検査材の表面の画像を処理して欠陥を検出する画像処理手段とを備えた表面検査装置において、
前記照明手段は、前記被検査材に対する照射角度を変化させて前記被検査材の表面を照明することを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
前記照明手段は、前記撮像手段から見た前記被検査材への照射角度が異なる複数の光源を備え、前記複数の光源を切り替えて前記被検査材の表面を照明することを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項3】
前記表面検査装置は、前記画像処理手段により欠陥が検出されるまでは、照射角度の異なる複数の光源の点灯および消灯を連続的に切り替えて前記被検査材の表面を照明し、前記画像処理手段により欠陥が検出されると、検出された欠陥の位置に基づいて点灯することが決定された光源により前記被検査材の表面を照明するように、前記照明手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の表面検査装置。
【請求項4】
前記表面検査装置は、前記被検査材の進行中に欠陥を検出し、
前記複数の照明装置は、第1の照明装置および第2の照明装置を備え、
前記照明装置と前記撮像手段とは、前記被検査材の進行方向に対して垂直方向に交わる面上に配置され、前記第1の照明装置は、前記撮像手段との挟み角が0〜45°であって、前記第2の照明装置は、前記撮像手段との挟み角が45〜90°であることを特徴とする請求項1に記載の表面検査装置。
【請求項5】
前記表面検査装置は、前記画像処理手段により欠陥が検出されるまでは、前記第1の照明装置および前記第2の照明装置を交互に点灯させて前記被検査材の表面を照明し、欠陥が検出されると、検出された欠陥の位置に基づいて点灯することが決定された前記第1の照明装置および前記第2の照明装置のいずれかにより前記被検査材の表面を照明するように、前記照明手段を制御する制御手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の表面検査装置。
【請求項6】
前記制御手段は、検出された欠陥の位置が前記撮像手段の視野の中央部である場合には前記第2の照明装置を点灯し、検出された欠陥の位置が前記視野の端部である場合には前記第1の照明装置を点灯するように、前記照明手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の表面検査装置。
【請求項7】
前記照明装置および前記撮像手段は、前記面上で対称に配置されることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項8】
前記照明手段は、前記撮像手段により撮像したときの被検査材の画像輝度が十分になるように光量を調整することを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項9】
前記照明手段は、前記撮像手段により撮像したときの被検査材の画像輝度が対称になるように光量を調整することを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の表面検査装置。
【請求項10】
長尺の被検査材の表面を照明して、被検査材の表面を撮像して、撮像された被検査材の表面の画像を処理して欠陥を検出する表面検査方法において、
前記被検査材に対する照射角度を変化させて前記被検査材の表面を照明することを特徴とする表面検査方法。
【請求項11】
被検査材の表面を撮像する撮像手段との挟み角が0〜45°である第1の照明装置および挟み角が45〜90°である第2の照明装置により被検査材の表面を照明し、
欠陥が検出されるまでは、前記第1の照明装置および前記第2の照明装置を交互に点灯させて前記被検査材の表面を照明し、欠陥が検出されると、検出された欠陥の位置に基づいて点灯することが決定された前記第1の照明装置および前記第2の照明装置のいずれかにより前記被検査材の表面を照明することを特徴とする請求項10に記載の表面検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−24809(P2013−24809A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162236(P2011−162236)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】