説明

表面被覆切削工具

【課題】基材上の被膜の密着性が高いとともに、優れた耐熱性と優れた耐摩耗性と優れた潤滑性とを併せ持つ表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】 本発明の表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成された被膜とを備えるものであって、該被膜は、物理蒸着法により形成され、かつ一以上の層を含み、該一以上の層のうち少なくとも一層は、第1被膜層であり、該第1被膜層は、AlとNとを含み、その熱浸透率が2000J・sec-1・m-1・K-1以上5000J・sec-1・m-1・K-1以下であって、かつ0.2μm以上5μm以下の膜厚であり、第1被膜層は、基材側から順に非晶質領域と結晶質領域とを有し、非晶質領域は、非晶質からなり、かつ0.01μm以上2μm以下の厚みであり、結晶質領域は、六方晶構造を含む結晶構造からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と該基材上に形成された被膜とを備える表面被覆切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の切削工具の動向として、地球環境保全の観点から切削油剤を用いないドライ加工が求められていること、被削材が多様化していること、加工能率を一層向上させるため切削速度がより高速になってきていることなどの理由から、工具刃先温度はますます高温になる傾向にあり、工具材料に要求される特性は厳しくなる一方である。特に工具材料の要求特性として、基材上に形成される被膜の耐熱性はもちろんのこと、切削工具寿命に関係する耐摩耗性の向上や潤滑油剤に代替する被膜の潤滑特性が一段と重要となっている。
【0003】
被膜の放熱性、潤滑性、および耐チッピング性を向上させるために、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼等の硬質基材からなる切削工具の表面に、AlNからなる被膜を形成する技術はよく知られているところである。AlNは、熱伝導率が高いことから、被膜の放熱性を高めることができ、AlNからなる被膜自体に熱がこもらない。しかも、AlNは、潤滑性が優れるとともに硬度が低いという特徴も有しており、かかる特徴により工具の異常摩耗を防ぎ、耐チッピング性を向上させるという利点がある。
【0004】
このような種々の利点を有するAlNは、切削工具の潤滑性と耐チッピング性とを高度に両立させる上では、必須の材料といっても過言ではなく、従来から様々な方法で用いられている。たとえば特許文献1では、最表面に結晶状態が六方晶のAlNを用いる技術が開示されており、特許文献2では、N、O、およびCからなる群より選択される1種以上とAlとの化合物層を物理蒸着法により形成する技術が開示されている。また、特許文献3にも同様に、被膜の表面にAlNを用いる技術が開示されている。このようにAlNからなる被膜を最表面に形成することにより、たしかにその表面の放熱性と潤滑性と耐チッピング性とを高めることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されているいずれのAlNからなる被膜も、AlNの放熱性が高いために、切削時に発生する熱がすぐに(下層がある場合は下層を通じて)工具基材に伝わり、基材の熱亀裂を発生させ、工具寿命が短くなるという問題があった。また、特許文献1〜3に開示されているいずれのAlNからなる被膜も、十分な硬度を有しないことから、その膜の摩耗が早く、結果としてその潤滑効果を十分に得られないものであった。
【0006】
また、さらに潤滑性を向上する試みとして、たとえば特許文献4には、被膜の最表面の潤滑性を向上させるために、AlNからなる最表面の被膜に塩素を含有させる技術が開示されている。また、特許文献5には、被膜の基材側にはTiCN層およびTiCNO層を形成しつつ、被膜の最表面側に耐熱性の高いAl23層および潤滑性の高いAlN層を形成することにより、被膜表面の断熱性と潤滑性とを高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−271133号公報
【特許文献2】特開2005−297143号公報
【特許文献3】特開2006−026783号公報
【特許文献4】特開2005−297142号公報
【特許文献5】特開2003−039210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献4および特許文献5のいずれの技術も、被膜表面の硬度を低下させるという問題を解決し得るものではなく、被膜の最表面は摩耗により早期に消失しやすいものであった。
【0009】
このように被膜の表面側にAlNからなる層を形成することにより、その潤滑性を高める技術は従来からよく用いられている。また、被膜の最表面にAlNからなる層を形成すると、そのAlNからなる層の潤滑作用により耐摩耗性の向上が期待されるものの、その効果を十分に発揮した表面被覆切削工具は未だ提供されていない現状にある。
【0010】
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、基材上に熱浸透率が低く、かつ硬度の高いAlとNとを含む第1被膜層を優れた密着性で形成することにより、優れた耐熱性と優れた耐摩耗性と優れた潤滑性とを併せ持つ表面被覆切削工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成された被膜とを備えるものであって、該被膜は、物理蒸着法により形成され、かつ一以上の層を含み、該一以上の層のうち、少なくとも一層は第1被膜層であり、該第1被膜層は、AlとNとを含み、その熱浸透率が2000J・sec-1・m-1・K-1以上5000J・sec-1・m-1・K-1以下であって、かつ0.2μm以上5μm以下の膜厚であり、第1被膜層は、基材側から順に非晶質領域と結晶質領域とを有し、非晶質領域は、非晶質からなり、かつ0.01μm以上2μm以下の厚みであり、結晶質領域は、六方晶構造を含む結晶構造からなることを特徴とする。
【0012】
結晶質領域は、2500mgf/μm2以上3800mgf/μm2以下の硬度を有することが好ましい。
【0013】
第1被膜層は、−1GPa以上0GPa以下の残留応力を有することが好ましく、スパッタリング法により形成されることが好ましい。
【0014】
第1被膜層は、Al1-xMexN(0.001≦x≦0.2)からなり、組成式中のMeは、V、Cr、Y、Nb、Hf、Ta、B、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素であることが好ましい。
【0015】
被膜は、第1被膜層以外に、1以上の第2被膜層を含み、該第2被膜層は、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素、または該元素のうちの1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物によって構成されることが好ましい。
【0016】
第2被膜層の1以上は、Cr、Al、Ti、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素、または該元素のうちの1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物によって構成されることが好ましい。
【0017】
第2被膜層は、1nm以上100nm以下の厚みの薄膜層を周期的に積層したした超多層構造を有し、該薄膜層は、Cr、Al、Ti、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素、または該元素のうちの1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物によって構成されることが好ましい。
【0018】
基材は、超硬合金、サーメット、立方晶型窒化硼素焼結体、高速度鋼、セラミックス、またはダイヤモンド焼結体のいずれかにより構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の表面被覆切削工具は、上記のような構成を有することにより、第1被膜層の密着性が高いとともに、優れた耐熱性と優れた耐摩耗性と優れた潤滑性とを併せ持つという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<表面被覆切削工具>
本発明の表面被覆切削工具は、基材とその上に形成された被膜とを備えたものである。このような基本的構成を有する本発明の表面被覆切削工具は、たとえばドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、またはクランクシャフトのピンミーリング加工用チップ等として極めて有用に用いることができる。本発明の表面被覆切削工具は、特にステンレス、インコネル、チタン等の難削材を削る場合にも、被膜が剥離しにくいという特徴を有する。
【0021】
<基材>
本発明の表面被覆切削工具の基材としては、このような切削工具の基材として知られる従来公知のものを特に限定なく使用することができる。たとえば、超硬合金(たとえばWC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいはさらにTi、Ta、Nb等の炭窒化物等を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化硅素、窒化硅素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、およびこれらの混合体など)、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体等をこのような基材の例として挙げることができる。
【0022】
このような基材として超硬合金を使用する場合、そのような超硬合金は、組織中に遊離炭素やη相と呼ばれる異常相を含んでいても本発明の効果は示される。なお、これらの基材は、その表面が改質されたものであっても差し支えない。たとえば、超硬合金の場合はその表面に脱β層が形成されていたり、サーメットの場合には表面硬化層が形成されていてもよく、このように表面が改質されていても本発明の効果は示される。
【0023】
<被膜>
本発明の被膜は、物理蒸着法により形成されるものであって、一以上の層を含み、該一以上の層のうち、少なくとも一層は第1被膜層であり、該第1被膜層は、AlとNとを含み、その熱浸透率が2000J・sec-1・m-1・K-1以上5000J・sec-1・m-1・K-1以下であって、基材側から順に非晶質領域と結晶質領域とを有し、非晶質領域は、非晶質からなり、かつ0.01μm以上2μm以下の厚みであり、結晶質領域は、六方晶構造を含む結晶構造からなることを特徴とする。
【0024】
ここで、このような本発明の被膜は、基材上の全面を被覆する態様を含むとともに、部分的に被膜が形成されていない態様をも含み、さらにまた部分的に被膜の一部の積層態様が異なっているような態様をも含む。
【0025】
本発明の被膜は、その全体の厚みが1μm以上30μm以下であることが好ましい。被膜の厚みが1μm未満であると耐摩耗性に劣る場合があり、30μmを超えると被膜に残存する圧縮応力に耐え切れず被膜が自己破壊する場合がある。このような被膜の好ましい厚みは2μm以上20μm以下である。
【0026】
本発明の被膜は、物理蒸着法(PVD法)により形成されるものである。本発明においてこのような物理蒸着法を採用する理由は、基材表面に成膜される被膜として緻密な組織を持つ被膜を形成することが不可欠であり、種々の成膜方法を検討した結果、物理蒸着法により形成される被膜が最適であることが見出されたからである。
【0027】
以下、本発明の被膜を構成する各層を詳細に説明する。
<第1被膜層>
本発明の被膜に含まれる第1被膜層は、AlとNとを含み、その熱浸透率は、2000J・sec-1・m-1・K-1以上5000J・sec-1・m-1・K-1以下であることを特徴とする。従来のAlとNとを含む被膜は、潤滑性の点では優れているものの、その熱浸透率が高いためそれ以外の層および基材が高温になってしまい、熱損傷により工具寿命が短くなりやすいという問題があった。
【0028】
本発明の第1被膜層は、このような従来のAlとNとを含む被膜の欠点を克服したものであり、従来のAlとNとを含む被膜が有する潤滑性を低下させることなく、その断熱性を高めることができ、もって工具自体が高温になることを防止したものである。
【0029】
このような構造を有する本発明の第1被膜層において、耐摩耗性に優れるという長所を持つ結晶質領域に対し、その下層として非晶質領域を形成したことにより、結晶質領域と基材(基材上に中間層が形成される場合は中間層)との組織の整合性がよくなり、被膜の剥離を有効に防止することができ、以って極めて優れた耐摩耗性が示される。
【0030】
上述の数値範囲の熱浸透率を有する第1被膜層を形成することにより、切削で生じた熱が工具基材に伝導することを抑制し、もって工具寿命を長くすることができる。このような第1被膜層の熱浸透率は、3500J・sec-1・m-1・K-1以下であることが好ましく、より好ましくは3000J・sec-1・m-1・K-1以下である。
【0031】
第1被膜層の熱浸透率が2000J・sec-1・m-1・K-1未満であると、第1被膜層の表面側に熱がこもり過ぎてしまい、AlN自体の結晶形の変化、または硬度の低下を招いてしまうという問題があり、その熱浸透率が5000J・sec-1・m-1・K-1を超えると、切削時に生じる熱を遮断することができず、基材が高温になって、変形や熱亀裂を発生させてしまうため好ましくない。
【0032】
ここで、第1被膜層の熱浸透率の値は、サーモリフレクタンス法に基づいて測定された値を採用するものとする。
【0033】
本発明の第1被膜層は、その全体の厚みが0.2μm以上5μm以下であることを特徴とする。第1被膜層の厚みが0.2μm未満であると耐熱性に劣る場合があり、5μmを超えると第1被膜層に残存する圧縮応力に耐え切れず第1被膜層が自己破壊する場合がある。このような第1被膜層の好ましい厚みは0.5μm以上2μm以下である。
【0034】
また、第1被膜層は、基材側から順に非晶質領域と結晶質領域とを有し、特に非晶質からなる非晶質領域の厚みが0.01μm以上2μm以下であることを特徴とする。このような厚みの非晶質領域を第1被膜層の基材側に形成することにより、基材と被膜との密着性を高めるとともに、第1被膜層の熱浸透率を低下させることができる。
【0035】
ここで、非晶質領域は、0.1μm以上1μm以下の厚みであることが好ましく、より好ましくは0.2μm以上0.5μm以下の厚みである。非晶質領域の厚みが0.01μm未満であると、基材と被膜との密着性を十分に担保することができず、非晶質領域の厚みが2μmを超えると、被膜の硬度が低下し、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0036】
一方、第1被膜層の表面側(基材側とは反対側)には結晶質領域が形成されており、当該結晶質領域は、六方晶構造の結晶構造を含むことを特徴とする。このような結晶質領域を第1被膜層の表面側に形成することにより、工具全体の耐熱性を向上させることができ、もって表面被覆切削工具の耐摩耗性を向上させることができる。ちなみに、六方晶の結晶構造は、XRD(X線回折)により測定し、六方晶AlN面に起因するピークがあることで確認される。
【0037】
このような結晶質領域は、2500mgf/μm2以上3800mgf/μm2以下の硬度を有することが好ましい。このような高硬度の結晶質領域を第1被膜層の表面側に形成することにより、表面被覆切削工具の耐摩耗性を高めることができる。かかる結晶質領域は、3200mgf/μm2以上3600mgf/μm2以下の硬度を有することがより好ましい。
【0038】
結晶質領域の硬度が2500mgf/μm2未満であると、被膜表面の硬度が十分でないことにより摩耗しやすくなる傾向があり、結晶質領域の硬度が3800mgf/μm2を超えると、被膜の潤滑性が低下して、やはり摩耗減少しやすくなる傾向がある。なお、本明細書において、「硬度」とは、インデンテーション硬度を意味するものであり、ナノインデンター(エリオンクス社製)を用いて測定された値を採用する。
【0039】
<残留応力>
第1被膜層は、−1GPa以上0GPa以下の残留応力を有することが好ましい。このような残留応力を有することにより、優れた耐欠損性を有しつつ、第1被膜層の形成時に破壊されず切削加工時にも破壊されないという特性を効果的に発現することができる。
【0040】
このように第1被膜層全体の残留応力を小さな圧縮残留応力とすることにより、被膜の耐剥離性を向上させることができるばかりではなく、衝撃による破壊に対する耐性を向上させることができるため、工具寿命を延長させる効果が顕著となる。このような第1被覆層全体の残留応力は、より好ましくは−0.8GPa以上−0.2GPa以下である。
【0041】
第1被膜層の残留応力が−1GPa未満であると、第1被膜層が圧縮破壊しやすい傾向にあり、第1被膜層の残留応力が0GPaを超えると、衝撃を受けた際に被膜が破壊しやすくなる傾向がある。
【0042】
ここで、上記の残留応力の数値範囲は、第1被膜層全体の残留応力の平均値が−1GPa以上0GPa以下であることを意味するものであり、局所的にその数値範囲を逸脱する箇所があっても、第1被膜層全体の平均値が上述の数値範囲を満たすものである限り、被膜の耐剥離性および靭性を向上させることができる。
【0043】
また、「残留応力」とは、被膜全体の平均残留応力をいい、次のようなsin2ψ法という方法で測定することができる。X線を用いたsin2ψ法は、多結晶材料の残留応力の測定方法として広く用いられている。この測定方法は、「X線応力測定法」(日本材料学会、1981年株式会社養賢堂発行)の54〜66頁に詳細に説明されているが、本発明ではまず並傾法と側傾法とを組み合せてX線の侵入深さを固定し、測定する応力方向と測定位置に立てた試料表面法線を含む面内で種々のψ方向に対する回折角度2θを測定して2θ−sin2ψ線図を作成し、その勾配からその深さ(被膜の表面からの距離)までの残留応力の平均値を求めることができる。
【0044】
より具体的には、X線源からのX線を試料に所定角度で入射させ、試料で回折したX線をX線検出器で検出し、該検出値に基づいて内部応力を測定するX線応力測定方法において、試料の任意箇所の試料表面に対して任意の設定角度でX線源よりX線を入射させ、試料上のX線照射点を通り試料表面で入射X線と直角なω軸と、試料台と平行でω軸を回転させた時に入射X線と一致するχ軸を中心に試料を回転させるときに、試料表面と入射X線とのなす角が一定となるように試料を回転させながら、回折面の法線と試料面の法線とのなす角度ψを変化させて回折線を測定することによって、試料内部(すなわち被膜)の残留応力を求めることができる。
【0045】
なお、上記で用いるX線源としては、X線源の質(高輝度、高平行性、波長可変性等)の点で、シンクロトロン放射光(SR)を用いることが好ましい。
【0046】
なおまた、上記のように残留応力を2θ−sin2ψ線図から求めるためには、被膜のヤング率とポアソン比が必要となる。しかし、該ヤング率はダイナミック硬度計等を用いて測定することができ、ポアソン比は材料によって大きく変化しないため0.2前後の値を用いればよい。
【0047】
一方、本発明でいう圧縮応力(圧縮残留応力)とは、被膜に存する内部応力(固有ひずみ)の一種であって、負の数値(単位:GPa)で表されるものである。一方、本発明でいう引張応力(引張残留応力)とは、これも被膜に存する内部応力の一種であって、正の数値(単位:GPa)で表されるものである。このような圧縮応力および引張応力は、ともに被膜内部に残存する内部応力であることからこれらを単にまとめて残留応力(便宜的に0GPaも含む)と表現することもある。
【0048】
なお、このような範囲の残留応力を有する第1被膜層は、物理蒸着法により、基材に衝突して第1被膜層となる原子またはイオンの運動エネルギー量を調節することにより形成することができ、一般にその運動エネルギー量が大きい場合にその絶対値が大きくなる圧縮残留応力を得ることができる。なお、物理蒸着法の詳細は後述する。
【0049】
<他の元素の添加>
本発明の第1被膜層は、その層を構成する化合物(すなわちAlとNとを含む化合物)がV、Cr、Y、Nb、Hf、Ta、B、およびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことが好ましく、その割合は、該化合物に含まれる金属成分(すなわちAl)に対して0.1〜20原子%含むことが好ましい。すなわち、第1被膜層が、Al1-xMexN(0.001≦x≦0.2)からなり、Meは、V、Cr、Y、Nb、Hf、Ta、B、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素であることが好ましい。このような他の元素を含むことにより、結晶質領域中の結晶構造に歪みが入り硬度がさらに向上することから耐摩耗性がより向上したものとなる。しかも、切削加工時において被膜中あるいは被膜と基材間において原子拡散が抑制され、耐酸化性等の耐反応性が良好となる。
【0050】
なお、このような他の元素は、物理蒸着法により第1被膜層を形成する際に、第1被膜層の原料となるターゲット中に所望量包含させることにより、当該層を構成する化合物中に含有させることができる。なお、このような他の元素の含有の態様は、浸入型であってもよいし、置換型であってもよい。
【0051】
<第2被膜層>
本発明において、被膜は、上記の第1被膜層の他に、1以上の第2被膜層を含むことが好ましい。このような第2被膜層は、基材と第1被膜層との間に中間層として形成されていてもよいし、第1被膜層の表面側に最表層として形成されていてもよい。
【0052】
本発明の第2被膜層は、その全体の厚みが1μm以上25μm以下であることが好ましい。第2被膜層の厚みが1μm未満であると耐摩耗性に劣る場合があり、25μmを超えると第2被膜層に残存する圧縮応力に耐え切れず被膜が自己破壊する場合がある。このような第2被膜層の好ましい厚みは1.8μm以上20μm以下である。
【0053】
ここで、第2被膜層は、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素、または該元素のうちの1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物によって構成されるものであることが好ましい。前者の元素に対し窒素を含有すると靭性に優れ、厚膜化しても被膜が破壊しにくいという利点を有し、炭素および窒素を含有することにより、耐クレータ摩耗性を向上させることができる。また、酸素を含有することにより耐酸化性および耐溶着性に優れるため好ましい。なお、第2被膜層がAlとNとを含む場合、第2被膜層は第1被膜層と実質的に同一の組成になるが、少なくとも結晶構造が異なり、さらにその熱浸透率、および厚みが異なる場合もある。
【0054】
上記第2被膜層は、単層であってもよいし、多層であってもよいが、種々の機能を付与するという観点からは多層であることが好ましく、多層の中でも特に超多層構造であることがより好ましい。ここで、「多層」とは2以上の層からなる多重層をいい、「超多層構造」とは、性質および組成の相異なる2以上の層を数nm〜数百nmの厚みで100〜10000層程度積層したもの(通常上下交互または繰り返し積層されるもの)をいう。
【0055】
第2被膜層の1以上は、Cr、Al、Ti、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素、または該元素のうちの1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物によって構成されることが好ましい。
【0056】
第2被膜層は、1nm以上100nm以下の厚みの薄膜層を周期的に積層した超多層構造を有することが好ましく、当該薄膜層は、Cr、Al、Ti、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素、または該元素のうちの1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物によって構成されることがより好ましい。第2被膜層が超多層構造を有する場合、相異なる複数のターゲットを使用し、各層の厚みが数ナノメートルオーダーのレベルであることから、成膜速度に優れ、また、相異なる性質および組成の層を組み合わせることで被膜の硬度や断熱性、耐酸化性、靭性などの膜特性を向上させることができる。
【0057】
<製造方法>
本発明の被膜を形成するのに用いられる物理蒸着法(PVD法)としては、従来公知の物理蒸着法を特に限定することなく用いることができる。これは、本発明の被膜を基材表面に成膜するためには結晶性の高い化合物を形成することができる成膜プロセスであることが不可欠であり、種々の成膜方法を検討した結果、物理蒸着法を用いることが最適であることが見出されたからである。物理蒸着法には、たとえばスパッタリング法、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、電子イオンビーム蒸着法等があるが、特に原料元素のイオン化率が高いカソードアークイオンプレーティング法、もしくはスパッタリング法を用いると、生産性が高いので好ましい。
【0058】
物理蒸着法を用いて第1被膜層を形成する場合、成膜温度を制御することにより、第1被膜層の結晶状態を調整することが好ましい。すなわち、第1被膜層を形成し始めるときの成膜温度を550℃以上700℃以下とすることにより、基材側に非晶質領域を形成することができる。一方、非晶質領域を形成した後の成膜温度を450℃以上550℃以下とすることにより、非晶質領域上に結晶質領域を形成することができる。第1被膜層を占める非晶質領域および結晶質領域の厚みは、成膜時間の長短により調整することができ、成膜速度は0.1〜0.6μm/時とすることが好ましい。
【0059】
第1被膜層は物理蒸着法の中でもスパッタリング法を用いて形成することが好ましい。スパッタリング法により第1被膜層を形成すると、該第1被膜層の特に結晶質領域の結晶組織が均質になり、第1被膜層の硬度を高めることができるというメリットがある。このようなスパッタリング法の具体的条件は、たとえば以下のような条件を挙げることができる。
【0060】
すなわち、高周波数のパルスと低周波数のパルスとを交互に印加できるようなパルス化スパッタリング法を採用し、ターゲットとしては目的組成の焼結ターゲットまたは溶成ターゲットを用いる。そして、スパッタカソードに印加するパルス周波数を厚みが20〜70nmとなる毎に制御し、100kHz以下のパルス周波数と300kHz以上のパルス周波数とを交互に印加する。
【0061】
このようにパルス周波数を交互に変化させて印加することにより、ターゲットから飛来する粒子のエネルギーを調整することができる。すなわち、300kHz以上のパルス周波数を印加する割合が高くなると、第1被膜層の結晶が大きく三次元的に成長し、硬度が向上する一方、100kHz以下のパルス周波数を印加する割合が高くなると第1被膜層の結晶成長が抑えられ硬度が低下する傾向を示す。このため、これらのパルス周波数を適切に制御することにより、第1被膜層の結晶性を高く保ちつつ、その結晶成長を抑制することができ、もって均一な結晶構造の第1被膜層を得ることができる。
【0062】
そして、スパッタカソードに印加するパルス周波数を100kHz以下にするときは、基材に印加するバイアスを周波数200kHz以上であって、バイアス電圧を50V以上とすることが好ましく、スパッタカソードに印加するパルス周波数を300kHz以上にするときは、基材に印加するバイアスを周波数100kHz以下であって、バイアス電圧を50Vより小さくすることが好ましい。このように基材に印加するバイアスを調整することにより、第1被膜層の結晶組織を緻密にすることができ、もって被膜の断熱性を高めることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の被膜および各層の厚みは被膜断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)または透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を用いて観察することにより測定し、各層を構成する化合物の組成はX線光電子分光(XPS:X-ray photoelectron spectroscopy)によって確認した。また、結晶構造はX線回折(XRD:X‐ray diffraction)により確認し、入射角0.5°の条件で測定した。また、被膜全体の残留応力は上記のsin2ψ法により測定し、硬度はナノインデンター(エリオンクス社製)を用いて測定した。さらに、熱浸透率は、試験温度24℃、試験湿度30%の環境下で、熱物性顕微鏡(サーマルマイクロスコープTM3(BETHEL社製))を用いて、測定モードを点測定モードにして、検出用レーザに3MHzの測定周波数のものを用いるというサーモリフレクタンス法により行なった。
【0064】
<実施例1〜31および比較例1〜8>
以下のようにして表面被覆切削工具を作成し、その評価を行なった。
【0065】
<表面被覆切削工具の作成>
まず、表面被覆切削工具の基材として、材質がP20超硬であり、形状がSEET13T3AGSN(JIS)である正面フライス加工用の刃先交換型切削チップと、材質がP20超硬であり、形状がCNMG120408(JIS)である旋削加工用の刃先交換型切削チップとを準備し、これらの基材をカソードアークイオンプレーティング・スパッタ装置、またはCVD装置に装着した。
【0066】
続いて、真空ポンプにより該装置のチャンバー内を減圧するとともに、該装置内に設置されたヒーターにより上記基材の温度を600℃に加熱し、チャンバー内の圧力が1.0×10-4Paとなるまで真空引きを行なった。
【0067】
次に、アルゴンガスを導入してチャンバー内の圧力を3.0Paに保持し、上記基材の基板バイアス電源の電圧を徐々に上げながら−1500Vとし、Wフィラメントを加熱して熱電子を放出させながら基材の表面のクリーニングを30分間行なった。その後、アルゴンガスを排気した。
【0068】
次いで、上記基材上に直接接するようにして表1および表2に記載の第2被膜層を中間層として第1層、第2層、および第3層の順に形成した。なお、表中の「−」と示しているのは、それに該当する層を形成していないことを意味する。中間層は、目的とする組成、すなわち表1および表2に記載の中間層の金属組成の焼結ターゲットまたは溶成ターゲットを用い、Ar、N2、CH4、およびO2ガスを導入して、従来公知の方法により成膜を行なった。
【0069】
なお、表1および表2中、「第1層」、「第2層」、および「第3層」の欄の「組成」はそれぞれの層を構成する化合物の組成を示し、「厚み」はそれぞれの層の厚みを示している。また、表2中の実施例29〜31の第2層は超多層構造を有するものであるが、これらについては従来公知の条件で成膜し、組成の横の括弧内に該層の厚みを形成した。
【0070】
続いて、上記で形成した中間層上に表1および表2に記載の第1被膜層を形成した。かかる第1被膜層は、目的とする組成、すなわち表1および表2記載の第1被膜層の金属組成の焼結ターゲットまたは溶成ターゲットを用い、Ar、およびN2を導入しながら650℃で表1および表2記載の厚みの非晶質領域を形成するという操作の後に、500℃で表1および表2記載の厚みの結晶質領域を形成するという操作を行なうことにより、表1および表2記載の厚みを有するように第1被膜層を形成した。
【0071】
なお、表1および表2中、「第1被膜層」の欄の「組成」は第1被膜層を構成する化合物の組成を示している。表1および表2中の「AlN」は、AlとNとで構成される結晶および非晶質を示し、AlとNとの比は1:1の場合のみに限られるものではなく、これらの原子比から多少外れた比率のものであってもよく、従来公知の原子比を全て含むものであり、両者の原子比は特に限定されない。表1および表2中に示される各組成のいずれに関しても、上記のAlNと同様その組成比が限定されるものではない。
【0072】
なおまた、「製法」の欄の「AIP」はアークイオンプレーティング法により形成したことを示し、「SP」はスパッタリング法により形成したことを示し、「CVD」は公知の化学蒸着法により形成したことを示す。また、「厚み」の欄には、非晶質領域および結晶質領域の各厚みを示すとともに、その合計となる厚みを「合計厚み」の欄に示す。また、「硬度」の欄には、ナノインデンター硬度計を用いて測定されたインデンテーション硬度の値を示し、「残留応力」の欄には第1被膜層全体の平均値の残留応力を示す。
【0073】
なお、第1被膜層をスパッタリング法で形成する場合、650℃で非晶質領域を形成した後に、500℃とした上で、スパッタカソードに印加するパルス周波数を厚みが20〜70nmとなる毎に制御し、100kHz以下のパルス周波数と300kHz以上のパルス周波数とを交互に印加することにより結晶質領域を形成した。
【0074】
なお、第1被膜層の結晶質領域の結晶組織を緻密にするために、結晶質領域を形成するときのパルス周波数とバイアスとを調整した。具体的には、スパッタカソードに印加するパルス周波数を100kHz以下にするときは、基材に印加するバイアスを周波数200kHz以上とするとともに、バイアス電圧を50V以上とし、スパッタカソードに印加するパルス周波数を300kHz以上にするときは、基材に印加するバイアスを周波数100kHz以下にするとともに、バイアス電圧を50Vより小さくした。なお、成膜速度は0.1〜0.6μm/時となるようにスパッタ電力を調整した。
【0075】
続いて、上記で形成した第1被膜層上に表1および表2記載の各最表層を形成した。ただし、表中の最表層の組成の欄に「−」と示すのは、最表層を形成していないことを意味する。かかる最表層は、上記の第2被膜層と同様にして形成することができ、目的とする組成、すなわち表1および表2記載の最表層の金属組成の焼結ターゲットまたは溶成ターゲットを用い、従来公知の方法により表1および表2に記載の厚みを有するように形成した。
【0076】
なお、表1および表2中、「最表層」の欄の「組成」は最表層を構成する化合物の組成を示し、「全体厚み」の欄には被膜全体の厚みを示す。
【0077】
<表面被覆切削工具の耐摩耗性の評価>
上記で作製した実施例1〜31および比較例1〜8の表面被覆切削工具のそれぞれについて、以下の条件による正面フライス試験および連続旋削試験を行なうことにより耐摩耗性の評価を行なった。該評価は、刃先の逃げ面摩耗幅が0.2mmを超えるまでの時間、または被膜に欠損が生じるまでの時間を切削時間として測定することにより行なった。その結果を表3に示す。なお、正面フライス試験および連続旋削試験のいずれも、切削時間が長いものほど耐摩耗性が優れていることを示している。
【0078】
<正面フライス試験の条件>
基材としては上記の通り材質がP20超硬合金であり、形状がSEET13T3AGSN(JIS)である正面フライス加工用の刃先交換型切削チップを用いて、以下の条件により行なった。
【0079】
被削材:SUS304(加工面サイズ300mm×120mm)
切削速度:100m/分
切り込み:2.0mm
送り:0.15mm/rev
DRY/WET:DRY
<連続旋削試験の条件>
基材としては上記の通り材質がP20超硬合金であり、形状がCNMG120408である旋削加工用刃先交換型切削チップを用い、以下の条件により行なった。
【0080】
被削材:インコネル718丸棒
切削速度:40m/分
切り込み:0.5mm
送り:0.15mm/rev
DRY/WET:WET
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
表3より明らかなように、実施例1〜31の本発明に係る表面被覆切削工具は、比較例1〜8の表面被覆切削工具に比し、優れた耐摩耗性を示し、工具寿命が向上していることが確認できた。
【0085】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0086】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に形成された被膜とを備える表面被覆切削工具であって、
前記被膜は、物理蒸着法により形成され、かつ一以上の層を含み、
前記一以上の層のうち少なくとも一層は、第1被膜層であり、
前記第1被膜層は、AlとNとを含み、その熱浸透率が2000J・sec-1・m-1・K-1以上5000J・sec-1・m-1・K-1以下であって、かつ0.2μm以上5μm以下の膜厚であり、
前記第1被膜層は、前記基材側から順に非晶質領域と結晶質領域とを有し、
前記非晶質領域は、非晶質からなり、かつ0.01μm以上2μm以下の厚みであり、
前記結晶質領域は、六方晶構造を含む結晶構造からなる、表面被覆切削工具。
【請求項2】
前記結晶質領域は、2500mgf/μm2以上3800mgf/μm2以下の硬度を有する、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
【請求項3】
前記第1被膜層は、−1GPa以上0GPa以下の残留応力を有する、請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
【請求項4】
前記第1被膜層は、スパッタリング法により形成される、請求項1〜3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項5】
前記第1被膜層は、Al1-xMexN(0.001≦x≦0.2)からなり、
前記Meは、V、Cr、Y、Nb、Hf、Ta、B、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素である、請求項1〜4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項6】
前記被膜は、前記第1被膜層以外に、1以上の第2被膜層を含み、
前記第2被膜層は、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素、または該元素のうちの1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物によって構成される、請求項1〜5のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
【請求項7】
前記第2被膜層の1以上は、Cr、Al、Ti、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素、または該元素のうちの1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物によって構成される、請求項6に記載の表面被覆切削工具。
【請求項8】
前記第2被膜層は、1nm以上100nm以下の厚みの薄膜層を周期的に積層した超多層構造を有し、
前記薄膜層は、Cr、Al、Ti、およびSiからなる群より選ばれる1種以上の元素、または該元素のうちの1種以上の元素と、炭素、窒素、酸素、および硼素からなる群より選ばれる1種以上の元素との化合物によって構成される、請求項6または7に記載の表面被覆切削工具。
【請求項9】
前記基材は、超硬合金、サーメット、立方晶型窒化硼素焼結体、高速度鋼、セラミックス、またはダイヤモンド焼結体のいずれかにより構成される請求項1〜8のいずれかに記載の表面被覆切削工具。

【公開番号】特開2011−125985(P2011−125985A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288850(P2009−288850)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(503212652)住友電工ハードメタル株式会社 (390)
【Fターム(参考)】