説明

被検知部材の表面状態の検知方法および画像形成装置

【課題】中間転写ベルトなどの表面状態を検知してその交換やメンテナンスの必要性を正確に判断し、無用の交換やメンテナンスを行うことのないようにする。
【解決手段】画像形成装置における像担持体の表面状態の検知方法であって、偏光した光を像担持体23の表面に照射し、その反射光を、第1の方向の偏光軸を持つ第1の偏光板105を介して第1の光電センサ102で受光し、かつ第1の方向とは異なる第2の方向の偏光軸を持つ第2の偏光板106を介して第2の光電センサ103で受光し、第1の光電センサの出力信号S1および第2の光電センサの出力信号S2の両方に基づいて演算を行い、その演算結果に基づいて像担持体23の表面状態を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知部材の表面状態の検知方法および画像形成装置に関する。例えば、複写機、プリンタ、MFP、ファクシミリ、またはこれらの複合機などの画像形成装置において、像担持体やその他のパーツの劣化状態を検知し、交換時期やメンテナンス時期の判断を行うために利用される。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ、複合機またはMFP(Multi Function Peripherals)と呼称される多機能機などの画像形成装置では、感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成し、そのトナー像を中間転写ベルトに一次転写し、それをさらに記録紙に二次転写し、これを定着することにより画像形成を行う。また、フルカラーの画像形成装置において、画像形成速度をあげるために、YMCKの各色の作像ユニットを一列に配置したタンデム方式のプリントエンジンがしばしば用いられる。
【0003】
従来の画像形成装置において、各色の作像ユニットにおける画像形成条件を決定するために、不透明な転写ベルト上に、様々に作像条件をふった各色のトナーパターンを作成し、中間転写ベルト上に設けた反射型のフォトセンサによってそれらトナーパターンのトナー付着量の検出を行う。
【0004】
トナー付着量の検出方法の例が特許文献1に開示されている。それによると、トナーが付着した像担持体に無偏光性の光を照射する発光素子と、像担持体から反射した光のうちのP波成分が第1の偏光フィルタを透過する第1の受光装置と、S波成分が第2の偏光フィルタを透過する第2の受光装置と、第1と第2の受光装置出力をそれぞれ増幅してその差をトナー付着量の情報として出力する信号処理装置とから構成される。
【特許文献1】特開2002−310901
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、例えば発光ダイオードからの赤外光を、偏光板を通して転写ベルト上のトナーパターンに照射する。すると、トナーパターンがカラーであるときは、赤外光をほとんど反射する(図9参照)。その場合に、カラーのトナーパターンにより反射した光は、光の振動方向つまり偏光軸が照射光に対して変化する。そのため、受光部の偏光板によって、偏光軸が照射光とは異なる光と同じ光とを分離して2つのフォトダイオードで検出することが可能である。これによって、カラートナーの付着量を感度よく検出することが可能である。
【0006】
しかし、ブラックトナーの場合には赤外光をほとんど吸収する(図9参照)。そのため、ブラックのトナーパターンでは赤外光の反射が非常に少なくなり、カラーの場合と同様の機構によってブラックトナーの付着量を感度よく検出することが可能である。
【0007】
このような方法によって、中間転写ベルト上のトナーパターンの付着量を検出し、各色の帯電電圧、現像バイアス、露光量といった画像形成条件を制御することにより、画像濃度および階調性の良好な画像を出力することができる。
【0008】
ところが、トナー像が形成される中間転写ベルトに傷がついたり印刷したプリント枚数が多くなると、トナーに含まれる処理剤がベルトの表面に付着してフィルミング状態になることがある。その場合には、センサによるトナー付着量検出特性が図6に示すように正常な場合から大きく変化する。そのため、トナー付着量を最適にするための制御やレジスト補正制御を行うことができなくなる。
【0009】
その結果、中間転写ベルトはある程度の余裕をもって交換やメンテナンスを行う必要があることから、交換やメンテナンスが未だ必ずしも必要でない中間転写ベルトについても、そのユニットを交換しまたはメンテナンスを行うこととなり、無駄な労力と費用が発生する。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、中間転写ベルトなどの表面状態を検知してその交換やメンテナンスの必要性を正確に判断し、無用の交換やメンテナンスを行うことのないようにするための方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る方法は、偏光した光を被検知部材の表面に照射し、その反射光を、第1の方向の偏光軸を持つ第1の偏光板を介して第1の光電センサで受光し、かつ前記第1の方向とは異なる第2の方向の偏光軸を持つ第2の偏光板を介して第2の光電センサで受光し、前記第1の光電センサの出力信号および前記第2の光電センサの出力信号の両方に基づいて演算を行い、その演算結果に基づいて前記被検知部材の表面状態を検知する。
【0012】
本発明に係る方法は、また、画像形成装置における像担持体の表面状態の検知方法であって、偏光した光を前記像担持体の表面に照射し、その反射光を、第1の方向の偏光軸を持つ第1の偏光板を介して第1の光電センサで受光し、かつ前記第1の方向とは異なる第2の方向の偏光軸を持つ第2の偏光板を介して第2の光電センサで受光し、前記第1の光電センサの出力信号および前記第2の光電センサの出力信号の両方に基づいて演算を行い、その演算結果に基づいて前記像担持体の表面状態を検知する。
【0013】
好ましくは、前記演算結果に基づいて前記像担持体の表面状態を検知し、それによって当該像担持体の劣化状態を判断する。
【0014】
また、前記劣化状態の判断に応じて、前記像担持体の交換の必要性またはメンテナンスの必要性を判断する。
【0015】
また、前記像担持体の交換の必要性またはメンテナンスの必要性が有りと判断された場合に、当該像担持体の交換またはメンテナンスが行われるまでの間において、当該像担持体にダメージを与えないようにセーフモードを設定する。
【0016】
本発明に係る装置は、偏光した光を被検知部材の表面に照射する発光部と、前記発光部の照射した光の前記被検知部材の表面による反射光を、第1の方向の偏光軸を持つ第1の偏光板を介して受光する第1の光電センサと、前記反射光を前記第1の方向とは異なる第2の方向の偏光軸を持つ第2の偏光板を介して受光する第2の光電センサと、前記第1の光電センサの出力信号および前記第2の光電センサの出力信号の両方に基づいて演算を行ってその演算結果に基づいて前記被検知部材の表面状態を判断する判断部とを有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、中間転写ベルトなどの表面状態を検知してその交換やメンテナンスの必要性を正確に判断することができ、無用の交換やメンテナンスを行うことのないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明に係る実施形態の画像形成装置1の概略の構成を示す図、図2はIDCセンサ33の配置状態を示す図、図3はIDCセンサ33によってレジストパターンの検出を行っている様子を示す斜視図、図4はIDCセンサ33によって中間転写ベルト23の表面状態を検知するための機能構成の例を示すブロック図、図5は中間転写ベルト23の表面状態に応じてP波とS波の割合が変化する様子を示す図、図6は中間転写ベルト23の表面状態に応じてIDCセンサ33の検出特性が変化する様子を示す図、図7は画像形成装置1のある使用条件において一定の受光量を得るための発光光量の経時変化を示す図、図8はトナー付着量とP波の検出特性との関係を示す図、図9は各色のトナーの分光反射率特性を示す図である。
【0019】
図1において、画像形成装置1は、電子写真方式を用いたデジタル複合機またはプリンタなどであり、タンデム方式のプリントエンジンを内蔵している。
【0020】
すなわち、画像形成装置1には、Y(イエロー),M(マジェンタ),C(シアン),K(ブラック)の各色の作像ユニット24Y,M,C,Kがタンデム形式で一列に配置されている。各作像ユニット24Y,M,C,Kは、それぞれ、感光体ドラム41、感光体ドラム41の表面を均一に帯電させる帯電チャージャ42、各色の画像データに応じて感光体ドラム41の表面を露光することにより静電潜像を形成する露光部43、静電潜像を各色のトナーで現像してトナー像を形成する現像部44、中間転写ベルト23を挟んで各感光体ドラム41に対向する位置に配置された転写ローラ22、感光体ドラム41の表面に残留するトナーを回収してクリーニングするクリーナ45などからなる。
【0021】
なお、本明細書および図面において、Y,M,C,Kの各色に対応する部材について、それぞれの符号の末尾にY,M,C,Kの符号をそれぞれ付すことがある。
【0022】
中間転写ベルト23は、各感光体ドラム41Y,M,C,Kの上部に沿うように、ローラ25,26の間に張りわたされ、ローラ25の回転によって図1の矢印M1方向に走行する。各転写ローラ22Y,M,C,Kは、各感光体ドラム41Y,M,C,Kに対して中間転写ベルト23を圧接させる圧接位置と、各感光体ドラム41Y,M,C,Kから中間転写ベルト23を離隔(離間または退避ともいう)させる離隔位置との間で、移動可能となっている。中間転写ベルト23が感光体ドラム41Y,M,C,Kに圧接することによって、感光体ドラム41のトナー像が中間転写ベルト23に一次転写される。
【0023】
中間転写ベルト23に一次転写されたトナー像は、二次転写ローラ28によって、給紙カセット27から給紙された転写材である記録紙PAに二次転写される。記録紙PAは、その後、定着部29で定着され、排紙トレイ30に排出される。二次転写ローラ28は、種々の形式または構成の接離駆動装置(接離機構)によって、中間転写ベルト23に対し圧接状態と離隔状態とに位置が切り換えられる。なお、ローラ26の近辺に、ベルトクリーナ31および廃トナーボックス32が設けられている。
【0024】
ローラ25に近い位置には、中間転写ベルト23上のトナー像の濃度を検出する濃度検出手段である、光学式のIDCセンサ(濃度検出センサ)33が設けられている。つまり、IDCセンサ33は、中間転写ベルト23の表面に光を照射し、反射して返ってきた光の量を検知する。IDCセンサ33の発光量を制御することも可能である。
【0025】
中間転写ベルト23上のトナー像の濃度が低いときつまり載っているトナーが少ないときは、中間転写ベルト23で反射した光が多く返ってきて光量が多くなり、トナー像の濃度が高いときつまりトナーが多く載っているときは、光がトナーに遮られて反射光量が低下する。このようにして、IDCセンサ33は、中間転写ベルト23の表面の状態を確認する。IDCセンサ33によって検出されたトナー像の濃度によって、露光部43による光量の制御、現像部44における現像条件の制御などを行って画像調整を行う。実際には、画像調整用に作成したY,M,C,Kの各パターン(トナーパッチ)についての濃度を検出する。
【0026】
本実施形態においては、IDCセンサ33によって、上に述べたようなトナー像の濃度の検出を行う他、中間転写ベルト23の表面状態を検知し、中間転写ベルト23の劣化状態を検知し、また交換の必要性またはメンテナンスの必要性などを判断する。詳しくは後で説明する。
【0027】
なお、本実施形態では、IDCセンサ33は2箇所に設けられているが、1箇所または3箇所以上でもよい。また、IDCセンサ33の取り付け位置および取り付け方法についても、ここで述べた以外の種々の位置または方法を採用してもよい。
【0028】
制御部21は、CPU211、メモリ212、制御用回路213、通信インタフェース214、および磁気記憶装置215などによって構成され、画像データに対して画像処理を行うとともに、画像形成装置1の各部の動作を制御する。
【0029】
なお、画像形成装置1における作像手段または作像方法、各部の構成または構造などは上に述べた例に限らない。また、画像形成装置1として、モノクロ/カラーの複写機、プリンタ、ファクシミリ、またはこれらの複合機などであってよい。
【0030】
図2ないし図4に示すように、IDCセンサ33は、発光素子である発光ダイオード101、受光素子であるフォトダイオード102,103、照射用のP波用の偏光板104、受光用のP波用の偏光板105、および受光用のS波用の偏光板106を有する。
【0031】
発光ダイオード101は、入力電流に応じた強さの赤外光または可視光などを発する。発光ダイオード101の発した光は、偏光板104を介して中間転写ベルト23の表面に斜め方向から照射される。したがって、中間転写ベルト23への照射光は、偏光板104によって偏光された光であり、本実施形態においてはP波である。
【0032】
照射されたP波は、中間転写ベルト23の表面、またはそこに付着したトナー、またはそこに形成されたトナーパターンによって反射する。このとき、照射光は、反射面の特性に応じて偏光軸が変化する。
【0033】
つまり、鏡面状態の綺麗な表面で反射した場合は、偏光軸は変化することなく、反射光は照射光と同じP波となる。しかし、表面が荒れていて傷や凸凹があったり、表面にトナーが付着していた場合には、照射光の偏光軸は乱されてランダムとなる。つまり、反射面が荒れているほど、反射光はいろいろな方向にランダムに偏光した光となり、その結果、反射光におけるP波とS波とはほぼ同じ量に近づく。
【0034】
このような反射光は、P波用の偏光板105またはS波用の偏光板106を介して、フォトダイオード102,103に入射する。したがって、フォトダイオード102,103は、それぞれ、中間転写ベルト23の表面による反射光のうちの、P波の成分とS波の成分とを受光し、それぞれの光量に応じた出力信号S1,S2を出力する。
【0035】
発光ダイオード101と偏光板104とによって本発明の発光部が構成され、フォトダイオード102と偏光板105とによって本発明の第1の光電センサが構成され、フォトダイオード103と偏光板106とによって本発明の第2の光電センサが構成される。
【0036】
図4において、表面状態を検知しこれに関連する処理動作を行うために、制御部21に、増幅部111,112、演算部113、表面状態判断部114、セーフモード設定部115、および処理部116などが設けられている。
【0037】
増幅部111,112は、フォトダイオード102,103からの出力信号S1,S2を増幅する。
【0038】
演算部113は、増幅部111,112から出力される出力信号S1,S2に対して演算を行う。例えば、2つの出力信号S1,S2の差を求める。
【0039】
表面状態判断部114は、2つのフォトダイオード102,103からの出力信号S1,S2の両方に基づいて演算を行い、その演算結果に基づいて、中間転写ベルト23の表面状態を判断する。
【0040】
セーフモード設定部115は、中間転写ベルト23などの交換の必要性またはメンテナンスの必要性がありと判断された場合に、それらの交換またはメンテナンスが行われるまでの間において、像担持体などにダメージを与えないようにセーフモードを設定する。
【0041】
処理部116は、表面状態判断部114またはセーフモード設定部115からの指令などに基づいて、必要な処理を行い、また必要な情報を操作パネルに表示する。また、可変抵抗器VR1を調整して発光ダイオード101の発光光量を制御する。
【0042】
このような演算部113、表面状態判断部114、セーフモード設定部115、および処理部116は、例えばCPU211に適当なプログラムを実行させることによって実現してもよい。
【0043】
次に、このようなIDCセンサ33を用いた制御動作について説明する。最初に画像調整制御について説明する。
【0044】
まず、例えば、中間転写ベルト23の表面により反射した光は、その表面が綺麗であった場合に、偏光軸が変わることなくP波のままであるので、P波用の偏光板105を介してフォトダイオード102に入射し、出力信号S1となる。フォトダイオード103に入射する光量はほぼゼロである。つまり、出力信号S1は最大であるが、出力信号S2は最小であってほぼゼロである。他方、中間転写ベルト23の表面に濃度の高いトナーパターンが形成されていた場合には、反射光のうちのP波とS波とは同じくらいの量となり、出力信号S1と出力信号S2とはほぼ同じくらいの大きさとなる。トナーパターンの濃度が低くなれば、中間転写ベルト23の表面で直接に反射する光の量が増えるので、それに応じてS波は減ってくる。
【0045】
したがって、出力信号S1と出力信号S2との差(S1 −S2)を求めると、中間転写ベルト23の表面によって直接に反射した光量のみを取り出すことができる。これによって、中間転写ベルト23上のトナーによる遮蔽状態をトナー付着量として検出することができる。このような処理は表面状態判断部114において行われるが、これにこだわることはない。この検出結果に基づいて、感光体ドラム41の帯電電圧、現像バイアス電圧、露光LEDの光量などの調整を行う。
【0046】
なお、トナーパターンとしては、ハーフトーンパターン、ドットパターン(網点)、スクリーンパターン、ベタパターンなど、どのような形態のものであってもよい。また、濃度制御を行う対象となる像担持体としては、上のような中間転写ベルト23に限ることなく、トナー像を重ね合わせるものであれば、ベルト状ではなくドラム状、ローラ状などでもよい。また、像担持体は、感光体ドラム41、その他の部材であってもよい。
【0047】
次に、各色の色重ねずれを調整するために、図3に示すように、中間転写ベルト23上にレジストパターンを作成し、その各色のレジストパターンの書き込み位置をIDCセンサ33により検出する。つまり、発光ダイオード101からの光は、偏光板104を通して中間転写ベルト23上のトナーに照射される。そして、上に述べたトナー付着量の検出の場合と同様にして、P波用のフォトダイオード102に入射した反射光による出力信号S1、つまりこれは中間転写ベルト23の表面での直接の反射光とトナーによる反射光のP波成分との合計に相当するものであり、その出力信号S1のみをメモリに記憶する。メモリに記憶した出力信号S1のデータを用いて、各色のレジストパターンの重心位置から書き込み位置を算出することができる。算出した結果に基づいて、感光体ドラム41を露光するための各色の露光LEDへの書き込みタイミング補正、画像データ位置補正、露光部補正などの調整を行う。これらの調整のための制御は、公知の色重ねずれ補正制御を用いることができる。
【0048】
次に、中間転写ベルト23の表面状態の検知方法について説明する。
【0049】
図5(A)に示すように、中間転写ベルト23の表面状態が緒麗であった場合には、照射されたP波の光はほぼ鏡面反射するために、そのままP波用のフォトダイオード102に入射する。このとき、S波成分は非常に少ないので、S波用のフォトダイオード103に入射する光はごくわずかである。
【0050】
しかし、図5(B)に示すように、中間転写ベルト23の表面に傷やフィルミングがある場合には、績麗な状態と比較して反射した際の乱反射成分が多くなり、S波用のフォトダイオード103に入射する光が増える。
【0051】
したがって、中間転写ベルト23の表面からの反射光におけるP波成分とS波成分との変化量から、中間転写ベルト23の表面状態を検出することができる。このように、出力信号S1と出力信号S2とに対して演算を行い、その演算結果に基づいて、中間転写ベルト23の表面状態を検知する。
【0052】
つまり、中間転写ベルト23上にトナーが付着していない状態において、IDCセンサ33によってその表面状態を検知する。例えば次のいずれかの場合に、中間転写ベルト23の表面状態は正常であると判断する。
(1) P波の出力信号S1が所定値TH1を越えている。
(2) S波の出力信号S2が所定値TH2以下である。
(3) P波の出力信号S1とS波の出力信号S2との差(S1 −S2)が所定値TH3を越えている。
(4) P波の出力信号S1とS波の出力信号S2との比(S1 /S2)が所定値TH4を越えている。
(5) P波の出力信号S1に対するS波の出力信号S2の割合(S2/S1)が所定値TH5以下である。
【0053】
また、上の(1)〜(5)のいずれかによって正常と判断された場合以外の場合、または例えば次の場合に、中間転写ベルト23の表面状態は劣化状態であると判断する。
(6) P波の出力信号S1が所定値TH6以下である。
(7) S波の出力信号S2が所定値TH7を越えている。
(8) P波の出力信号S1とS波の出力信号S2との差(S1 −S2)が所定値TH8以下である。
(9) P波の出力信号S1とS波の出力信号S2との比(S1 /S2)が所定値TH9以下である。
(10) P波の出力信号S1に対するS波の出力信号S2の割合(S2/S1)が所定値TH10を越えている。
【0054】
中間転写ベルト23が劣化状態であると判断された場合は、その旨を操作パネルなどに表示する。また、劣化状態であると判断された場合に、中間転写ベルト23の交換の必要性があると判断し、またはメンテナンスの必要性があると判断してもよい。この場合には、その旨を操作パネルなどに表示し、サービスマンに対して中間転写ベルト23の交換またはメンテナンスを促す。
【0055】
また、劣化状態であると判断された場合に、中間転写ベルト23の交換またはメンテナンスが必要となる時期を算出し、それを操作パネルなどに表示してもよい。そのような時期は、画像形成装置1の使用頻度のデータなどをも含めて算出し、またはメモリに記憶したテーブルから読み取るようにすればよい。
【0056】
なお、上に述べた判断のために、それぞれの所定値THを適当な値に設定しておけばよい。所定値THを種々変更することによって、判断の内容を異ならせることができる。例えば、劣化状態であることの判断、交換またはメンテナンスが必要であるとの判断、交換またはメンテナンスが必要となる時期の算出などにおいて、それぞれ所定値THを異ならせておいてもよい。交換またはメンテナンスが必要となる時期の算出において、所定値THを種々細かく変更することによって、交換またはメンテナンスが必要となる時期を予想するようにしてもよい。
【0057】
このように、偏光板105,106を供えた複数の受光部によって像担持体などのパーツの傷や表面状態を検知し、その結果に基づいて、それらの交換やメンテナンスの必要性を正確に判断することができ、また、それらの交換時期、メンテナンス時期などを判断することができ、そのパーツの寿命を的確に判断することができる。これにより、無駄な部品交換を避けることができる。
【0058】
次に、中間転写ベルト23の表面状態の検知方法の他の例について説明する。
【0059】
図7には、フォトダイオード102,103が一定の受光量を得るための発光ダイオード101の発光光量の経時変化が示されている。この経時変化のデータをメモリに記憶しておく。
【0060】
そして、画像形成装置1の使用に際して、その初期と、所定時間の経過時または所定枚数の印刷時との、少なくとも2つ以上の時期において、フォトダイオード102,103からの反射光量のデータ(出力信号S1,S2)に基づいて演算を行い、その演算結果に基づいて中間転写ベルト23の表面状態の検知を行なう。
【0061】
例えば、中間転写ベルト23の表面が綺麗な状態において、ある一定の受光量Q1が得られる発光光量R1を求めてメモリに記憶しておく。その後、それと同じ一定の受光量Q1を得るために必要な発光ダイオード101の発光光量R2を求める。求めた発光光量R1、R2とメモリに記憶した図7のデータとから、中間転写ベルト23の使用時間、つまり中間転写ベルト23の回転時間を求める。
【0062】
例えば、一定の受光量Q1を得るために必要な発光ダイオード101の発光光量R2は、例えば図4の可変抵抗器VR1を処理部116によって調整すればよい。この場合に、可変抵抗器VR1を例えば0〜256段階に調整する。そして、例えば図7において、発光光量のステップが例えば「100」を越えた場合に、使用不可能であるとし、交換またはメンテナンスが必要であると判断する。
【0063】
なお、所定時間または所定枚数は、画像形成装置1において適時変更可能な値を用いればよい。
【0064】
中間転写ベルト23の表面状態の検知方法のさらに他の例では、図8に示すように、トナーパターンについてトナー付着量の検出を行い、トナーパターンからのP波用のフォトダイオード102の出力信号S1に基づいて、中間転写ベルト23の表面状態を検知することも可能である。
【0065】
また、中間転写ベルト23の表面に傷やフィルミングがある場合に、トナー付着量が少ないときにその影響がでてP波用のフォトダイオード102の出力信号S1が低下する場合には、そのような特性に基づいて中間転写ベルト23の表面状態を検知することが可能である。
【0066】
このように、これらの実施形態によると、中間転写ベルト23といったパーツの寿命を使用状態に応じて直接的に検知を行うことで、それぞれのマシン(画像形成装置)に応じて最適なパーツの交換およびメンテナンスを行なうことができる。
【0067】
ところで、中間転写ベルト23の表面に傷ができたりフィルミング状態となった場合には、トナー付着量の制御やレジスト制御を正常に行うことができなくなり、中間転写ベルト23や感光体ドラム41などの像担持体上のトナー付着量が非常に多くなって機内汚れを引き起こし、正常な印字ができなくなる可能性がある。そこで、傷ができたりフィルミング状態となった場合には、像担持体上のトナー付着量が多くならないように、現像バイアスや露光量などに制限を設けるなどし、それらの交換またはメンテナンスが行われるまでの間、画像形成装置1を壊すことなく印字可能状態を維持させるような制御を行う。このような制限下で画像形成装置1を動作させることをセーフモードという。
【0068】
なお、フィルミングが発生した際のメンテナンス方法としては、像担持体などの表面に付着している処理剤などを研磨することにより、それまで通りに使用することが可能となる。
【0069】
次に、画像形成装置1における表面状態検知処理について、その一例をフローチャートによって説明する。
【0070】
図10は画像形成装置1における表面状態検知処理の例を示すフローチャートである。
【0071】
図10において、偏光した光を中間転写ベルト23のような被検知部材の表面に照射し(#11)、その反射光を、偏光軸の互いに異なる偏光板を介した少なくとも2つの光電センサで受光する(#12)。それらの光電センサの出力信号を演算する(#13)。その演算結果に基づいて、被検知部材の表面状態を判断する(#14)。判断の結果、被検知部材が劣化状態であれば(#15でイエス)、被検知部材の交換またはメンテナンスが必要かどうかを判断する(#16)。交換またはメンテナンスが必要であれば、セーフモードを設定し(#17)、交換などが必要である旨の表示を行う(#18)。
【0072】
劣化状態でなければ、必要に応じて正常である旨を表示し(#20)、劣化状態ではあるが交換またはメンテナンスまでは必要でなければ、必要に応じて劣化状態であることを表示する(#19)。
【0073】
上の実施形態において、2つのフォトダイオード102,103からの出力信号S1,S2を用いて演算を行ったが、3つ以上のフォトダイオードからの出力信号を用いて演算を行い、表面状態の検知、劣化状態の判断、および傷やフィルミング状態の判断などを行ってもよい。
【0074】
上に述べた実施形態において、画像形成装置1は、中間転写ベルト23を使ったタンデム方式のフルカラー電子写真装置であるが、像担持体として中間転写ベルト23に限ることはなく、感光体ドラム41、その他であってもよい。
【0075】
また、本発明は、像担持体以外の種々の被検知部材の表面状態を検知することができる。例えば、被検知部材として、像担持体以外に、給紙ローラ、転写ローラ、定着ローラなどの回転体、またはそれ以外の種々の交換部品であってもよい。また、照射光が赤外光である場合について説明したが、カラートナーが反射する波長の可視光であっても同様の効果が得られる。
【0076】
上に述べた実施形態において、制御部21、IDCセンサ33、、または画像形成装置1の全体または各部の構造、構成、回路、形状、寸法、個数、材質、処理内容または処理順序などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る実施形態の画像形成装置の概略の構成を示す図である。
【図2】IDCセンサの配置状態を示す図である。
【図3】レジストパターンの検出を行っている様子を示す斜視図である。
【図4】中間転写ベルトの表面状態を検知する機能構成を示すブロック図である。
【図5】中間転写ベルトの表面状態に応じたP波とS波の変化の様子を示す図である。
【図6】中間転写ベルトの表面状態に応じて検出特性が変化する様子を示す図である。
【図7】一定の受光量を得るための発光光量の経時変化の例を示す図である。
【図8】トナー付着量とP波の検出特性との関係を示す図である。
【図9】各色のトナーの分光反射率特性を示す図である。
【図10】表面状態検知処理の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1 画像形成装置
21 制御部
23 中間転写ベルト(像担持体、被検知部材)
33 IDCセンサ
101 発光ダイオード(発光部)
102 フォトダイオード(第1の光電センサ)
103 フォトダイオード(第2の光電センサ)
104 偏光板(発光部)
105 偏光板(第1の偏光板)
106 偏光板(第2の偏光板)
113 演算部
114 表面状態判断部(判断部)
115 セーフモード設定部(設定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光した光を被検知部材の表面に照射し、
その反射光を、第1の方向の偏光軸を持つ第1の偏光板を介して第1の光電センサで受光し、かつ前記第1の方向とは異なる第2の方向の偏光軸を持つ第2の偏光板を介して第2の光電センサで受光し、
前記第1の光電センサの出力信号および前記第2の光電センサの出力信号の両方に基づいて演算を行い、その演算結果に基づいて前記被検知部材の表面状態を検知する、
ことを特徴とする被検知部材の表面状態の検知方法。
【請求項2】
画像形成装置における像担持体の表面状態の検知方法であって、
偏光した光を前記像担持体の表面に照射し、
その反射光を、第1の方向の偏光軸を持つ第1の偏光板を介して第1の光電センサで受光し、かつ前記第1の方向とは異なる第2の方向の偏光軸を持つ第2の偏光板を介して第2の光電センサで受光し、
前記第1の光電センサの出力信号および前記第2の光電センサの出力信号の両方に基づいて演算を行い、その演算結果に基づいて前記像担持体の表面状態を検知する、
ことを特徴とする像担持体の表面状態の検知方法。
【請求項3】
前記演算結果に基づいて前記像担持体の表面状態を検知し、それによって当該像担持体の劣化状態を判断する、
請求項2記載の像担持体の表面状態の検知方法。
【請求項4】
前記劣化状態の判断に応じて、前記像担持体の交換の必要性またはメンテナンスの必要性を判断する、
請求項3記載の像担持体の表面状態の検知方法。
【請求項5】
前記像担持体の交換の必要性またはメンテナンスの必要性が有りと判断された場合に、当該像担持体の交換またはメンテナンスが行われるまでの間において、当該像担持体にダメージを与えないようにセーフモードを設定する、
請求項4記載の像担持体の表面状態の検知方法。
【請求項6】
偏光した光を被検知部材の表面に照射する発光部と、
前記発光部の照射した光の前記被検知部材の表面による反射光を、第1の方向の偏光軸を持つ第1の偏光板を介して受光する第1の光電センサと、
前記反射光を前記第1の方向とは異なる第2の方向の偏光軸を持つ第2の偏光板を介して受光する第2の光電センサと、
前記第1の光電センサの出力信号および前記第2の光電センサの出力信号の両方に基づいて演算を行ってその演算結果に基づいて前記被検知部材の表面状態を判断する判断部と、
を有することを特徴とする被検知部材の表面状態の検知装置。
【請求項7】
電子写真プロセスにおいて形成されるトナー像を像担持体を経由して転写材に転写するように構成された画像形成装置であって、
偏光した光を前記像担持体の表面に照射する発光部と、
前記発光部の照射した光の前記像担持体の表面による反射光を、第1の方向の偏光軸を持つ第1の偏光板を介して受光する第1の光電センサと、
前記反射光を前記第1の方向とは異なる第2の方向の偏光軸を持つ第2の偏光板を介して受光する第2の光電センサと、
前記第1の光電センサの出力信号および前記第2の光電センサの出力信号の両方に基づいて演算を行ってその演算結果に基づいて前記像担持体の表面状態を判断する判断部と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記判断部は、前記像担持体の劣化状態を判断する、
請求項7記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記判断部は、劣化状態の判断に応じて、前記像担持体の交換の必要性またはメンテナンスの必要性を判断する、
請求項8記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記像担持体の交換の必要性またはメンテナンスの必要性が有りと判断された場合に、当該像担持体の交換またはメンテナンスが行われるまでの間において、当該像担持体にダメージを与えないようにセーフモードを設定する設定部を有する、
請求項9記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−3488(P2008−3488A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175466(P2006−175466)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】